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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】DCDCコンバータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020150759
(22)【出願日】2020-09-08
(65)【公開番号】P2022045199
(43)【公開日】2022-03-18
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 翔
(72)【発明者】
【氏名】林 祐一
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/234846(WO,A1)
【文献】特開2018-099014(JP,A)
【文献】特開2009-183080(JP,A)
【文献】特開2015-162951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上アーム側に入力側スイッチ(Q1)を有する第1ハーフブリッジ回路(32)と、
下アーム側に出力側スイッチ(Q4)を有する第2ハーフブリッジ回路(33)と、
前記第1ハーフブリッジ回路及び前記第2ハーフブリッジ回路を接続するリアクトル(31)と、を備えるDCDCコンバータ(10)に適用され、前記入力側スイッチ及び前記出力側スイッチをスイッチング制御することにより、電源(11)から入力される入力電圧を変圧して給電対象(12)に出力するDCDCコンバータの制御装置(50)において、
前記電源から前記DCDCコンバータへの入力電圧に基づいて、前記入力側スイッチの前記スイッチング制御を行う第1制御部(60)と、
前記電源から前記給電対象に供給する電力を目標電力に制御するための前記出力側スイッチのオン時間を算出し、算出した前記オン時間に基づいて、前記出力側スイッチの前記スイッチング制御を行う第2制御部(70)と、
前記オン時間が取り得る範囲の最小値に基づいて定められる所定電力よりも前記目標電力が小さい場合、前記オン時間の短縮によらず前記電源の出力電力の低減処理を行う低減部(62,63)と、を備えるDCDCコンバータの制御装置。
【請求項2】
前記オン時間は第2オン時間であり、
前記第1制御部は、前記電源から入力される電圧を降圧して前記リアクトルに供給するための前記入力側スイッチの第1オン時間を前記入力電圧に基づいて算出し、算出した前記第1オン時間に基づいて、前記入力側スイッチの前記スイッチング制御を行い、
前記低減部は、前記低減処理として、前記目標電力が前記所定電力以上の場合よりも前記第1オン時間を短縮する処理を行う請求項1に記載のDCDCコンバータの制御装置。
【請求項3】
前記第1制御部は、前記入力電圧及び前記DCDCコンバータから前記給電対象に供給される出力電圧に基づいて、前記第1オン時間を算出し、
前記低減部は、前記入力電圧、前記出力電圧及び前記目標電力のうち少なくとも1つに基づいて、前記第1オン時間を短縮する請求項2に記載のDCDCコンバータの制御装置。
【請求項4】
前記低減部は、前記目標電力が前記所定電力以上の状態から、前記目標電力が前記所定電力よりも小さい状態に移行した場合、前記電源から前記給電対象に供給する電力が前記目標電力になるまで前記第1オン時間を漸減させることにより、前記第1オン時間を短縮する請求項2に記載のDCDCコンバータの制御装置。
【請求項5】
前記電源は燃料電池であり、
前記低減部は、低減処理として、前記燃料電池へ酸素を供給する酸素供給部(80)の酸素供給量を、前記目標電力が前記所定電力以上の場合よりも低減する処理を行う請求項1に記載のDCDCコンバータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DCDCコンバータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、電源から入力される電圧を変圧して給電対象に出力するDCDCコンバータが知られている。DCDCコンバータは、上アーム側に入力側スイッチを有する第1ハーフブリッジ回路と、下アーム側に出力側スイッチを有する第2ハーフブリッジ回路と、第1ハーフブリッジ回路及び第2ハーフブリッジ回路を接続するリアクトルとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-98973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DCDCコンバータは、電源からDCDCコンバータへの入力電圧に基づいて、入力側スイッチのスイッチング制御を行う。また、DCDCコンバータは、電源から給電対象に供給する電力を目標電力に制御するための出力側スイッチのオン時間を算出し、算出したオン時間に基づいて、出力側スイッチのスイッチング制御を行う。
【0005】
本願発明者は、上述した制御において、以下の問題が生じることを見出した。
【0006】
出力側スイッチがオン時間が取り得る範囲の最小値によって駆動される場合、電源の出力電力が所定電力とされる。そのため、目標電力が所定電力未満とされる状態では、オン時間による制御だけでは電源の出力電力を目標電力まで低減することができないという問題が生じる。
【0007】
この問題に対処すべく、間欠動作を実施することが考えられる、間欠動作では、DCDCコンバータは、複数のスイッチング周期のうち1スイッチング周期のみ入力側スイッチ及び出力側スイッチをオンオフし、電源から給電対象に供給する電力を所定電力とする。一方、DCDCコンバータは、残りのスイッチング周期において入力側スイッチ及び出力側スイッチをオフし、電力の出力を一時停止する。これにより、電源から給電対象に供給する電力が目標電力まで低減される。しかしながら、この場合、電源の出力電力の変動が大きくなる懸念がある。変動が大きくなると、例えば、電力の供給が一時停止されている期間において、電源が高電位状態となり、電源の劣化が促進される可能性がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、電源の出力電力の変動を抑制することができるDCDCコンバータの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上アーム側に入力側スイッチを有する第1ハーフブリッジ回路と、下アーム側に出力側スイッチを有する第2ハーフブリッジ回路と、前記第1ハーフブリッジ回路及び前記第2ハーフブリッジ回路を接続するリアクトルと、を備えるDCDCコンバータに適用され、前記入力側スイッチ及び前記出力側スイッチをスイッチング制御することにより、電源から入力される入力電圧を変圧して給電対象に出力するDCDCコンバータの制御装置において、前記電源から前記DCDCコンバータへの入力電圧に基づいて、前記入力側スイッチの前記スイッチング制御を行う第1制御部と、前記電源から前記給電対象に供給する電力を目標電力に制御するための前記出力側スイッチのオン時間を算出し、算出した前記オン時間に基づいて、前記出力側スイッチの前記スイッチング制御を行う第2制御部と、前記オン時間が取り得る範囲の最小値に基づいて定められる所定電力よりも前記目標電力が小さい場合、前記オン時間の短縮によらず前記電源の出力電力の低減処理を行う低減部と、を備える。
【0010】
本発明によれば、オン時間がとり得る範囲の最小値に基づいて定められる所定電力よりも目標電力が小さい場合、オン時間の短縮によらない低減処理が行われる構成とした。これにより、電源から給電対象に供給する電力を目標電力まで低減しつつ、間欠動作の実施が抑制される。その結果、電源の出力電力の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る電源システムの全体構成図。
図2】通常モードのスイッチング制御を示す機能ブロック図。
図3】通常モードにおけるスイッチング制御の一例を示すタイムチャート。
図4】比較例1のスイッチング制御を示すタイムチャート。
図5】比較例2のスイッチング制御を示すタイムチャート。
図6】低出力モードのスイッチング制御を示す機能ブロック図。
図7】低減係数と各パラメータとの関係を示す対応表。
図8】低出力モードにおけるスイッチング制御の一例を示すタイムチャート。
図9】制御装置が実施する処理の手順を示すフローチャート。
図10】第2実施形態に係る低出力モードの処理手順を示すフローチャート。
図11】第3実施形態に係る電源システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明に係るDCDCコンバータの制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1に示すように、電源システム100は、DCDCコンバータ10と、電源11と、「給電対象」としての電気負荷12とを備えている。DCDCコンバータ10は、電源11から入力される電圧を変圧して電気負荷12に供給する。本実施形態において、電源11は燃料電池である。なお、給電対象は、電気負荷12に限らず、例えば蓄電池であってもよい。
【0014】
DCDCコンバータ10は、昇降圧チョッパ回路であり、第1~第4スイッチQ1~Q4と、リアクトル31とを備えている。本実施形態において、各スイッチQ1~Q4は、IGBTである。各スイッチQ1~Q4には、フリーホイールダイオード(以下、単にダイオード)が逆並列に接続されている。
【0015】
第1スイッチQ1の低電位側端子であるエミッタには、第2スイッチQ2の高電位側端子であるコレクタと、リアクトル31の第1端とが接続されている。リアクトル31の第2端には、第3スイッチQ3のエミッタと、第4スイッチQ4のコレクタとが接続されている。第4スイッチQ4のエミッタには、第2スイッチQ2のエミッタが接続されている。DCDCコンバータ10において、第1スイッチQ1及び第2スイッチQ2が第1ハーフブリッジ回路32を構成し、第1スイッチQ1が「入力側スイッチ」に相当する。また、第3スイッチQ3及び第4スイッチQ4が第2ハーフブリッジ回路33を構成し、第4スイッチQ4が「出力側スイッチ」に相当する。
【0016】
電源11の正極端子と第1スイッチQ1のコレクタとは、第1高電位側経路21Hにより接続され、電源11の負極端子と第2スイッチQ2のエミッタとは、第1低電位側経路21Lにより接続されている。また、電気負荷12の正極端子と第3スイッチQ3のコレクタとは、第2高電位側経路22Hにより接続され、電気負荷12の負極端子と第4スイッチQ4のエミッタとは、第2低電位側経路22Lにより接続されている。
【0017】
電源システム100は、入力電圧センサ41、出力電圧センサ42及び電流センサ43を備えている。入力電圧センサ41は、第1高電位側経路21Hと第1低電位側経路21Lとの間の電位差(具体的には、電源11からの入力電圧)を検出する。出力電圧センサ42は、第2高電位側経路22Hと第2低電位側経路22Lとの間の電位差(具体的には、電気負荷12への出力電圧)を検出する。電流センサ43は、リアクトル31の通電電流を検出する。各センサ41~43の検出値は、電源システム100が備える制御装置50に入力される。
【0018】
制御装置50は、各センサ41~43の検出値に基づいて各スイッチQ1~Q4のスイッチング制御を行い、これにより電源11の入力電圧を変圧して電気負荷12に出力する。スイッチング制御では、第1,第2スイッチQ1,Q2の一方がオンされ、他方がオフされる。また、第3,第4スイッチQ3,Q4の一方がオンされ、他方がオフされる。本実施形態では、各スイッチQ1~Q4のスイッチング周期が互いに同一のスイッチング周期に設定されている。
【0019】
制御装置50には、上位のECU51から、DCDCコンバータ10の目標入力電圧Vin*、DCDCコンバータ10の目標出力電圧Vout*、及び電源11から電気負荷12に対する供給電力の目標値である目標電力P*が入力される。
【0020】
制御装置50は、電源11の目標電力P*に基づいて、リアクトル31の目標電流IL*を設定する。制御装置50は、目標電流IL*の値に応じて、通常モードのスイッチング制御又は電源11の出力電力Pが通常モードよりも低い低出力モードのスイッチング制御を実施する。
【0021】
なお、制御装置50が提供する機能は、例えば、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実施するコンピュータ、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって提供することができる。
【0022】
図2は、通常モードのスイッチング制御を示す機能ブロック図である。制御装置50は、第1制御部60及び第2制御部70を備えている。通常モードにおいて、第1制御部60は、目標入力電圧Vin*及び出力電圧センサ42の検出電圧Voutrに基づいて、第1,第2スイッチQ1,Q2を制御する電圧制御を実施する。一方、第2制御部70は、電源11から電気負荷12に供給する電力Pを目標電力P*に制御するために、第3,第4スイッチQ3,Q4を制御する電力制御を実施する。以下では、DCDCコンバータ10の入力電圧を第1ハーフブリッジ回路32により降圧し、降圧された電圧を第2ハーフブリッジ回路33により昇圧して電気負荷12に出力する動作について説明する。
【0023】
第1制御部60は、電圧比算出部61及び第1オン時間算出部62を備えている。電圧比算出部61は、出力電圧センサ42の検出電圧Voutrを目標入力電圧Vin*で除算した電圧比(降圧比)を、第1オン時間算出部62に出力する。第1オン時間算出部62は、電圧比算出部61において算出された電圧比に所定の係数Kを乗算することにより、第1デューティ比Duty1を算出する。ここで、係数Kは、0~1の実数であり、本実施形態では、0.5よりも大きくてかつ1未満の値(例えば0.95)に設定されている。第1デューティ比Duty1は、1スイッチング周期Tswのうち、第1スイッチQ1のオン時間の比率及び第2スイッチQ2のオフ時間の比率を定める値である。
【0024】
第2制御部70は、偏差算出部71及びフィードバック制御部72を備えている。偏差算出部71には、リアクトル31の目標電流IL*が入力される。ここで、目標電流IL*は、目標電力P*をリアクトル31に印加される電圧(例えば、Vin*×Duty1)で除算することにより算出される。偏差算出部71は、リアクトル31の目標電流IL*から、電流センサ43の検出電流ILrを減算することにより、電流偏差ΔILを算出する。フィードバック制御部72は、偏差算出部71において算出された電流偏差ΔILを0にフィードバックするための操作量として、第2デューティ比Duty2を算出する。ここで、第2デューティ比Duty2は、1スイッチング周期Tswのうち、第4スイッチQ4のオン時間の比率及び第3スイッチQ3のオフ時間の比率を定める値である。
【0025】
図3に、通常モードにおけるスイッチング制御の一例を示す。図3において、(a)は第1スイッチQ1の操作状態を示し、(b)は第4スイッチQ4の操作状態を示し、(c)は電流センサ43の検出電流ILrの推移を示す。第1スイッチQ1の操作状態が反転された状態が、第2スイッチQ2の操作状態となる。第4スイッチQ4の操作状態が反転された状態が、第3スイッチQ3の操作状態となる。
【0026】
通常モードでは、1スイッチング周期Tswのうち第1デューティ比Duty1によって定まる期間に亘り、第1スイッチQ1がオンされ、第2スイッチQ2がオフされる。また、1スイッチング周期Tswのうち第2デューティ比Duty2によって定まる期間に亘り、第4スイッチQ4がオンされ、第3スイッチQ3がオフされる。これにより、1スイッチング周期Tswにおいて、第1期間T1~第3期間T3が出現する。
【0027】
第1期間T1では、第1,第4スイッチQ1,Q4がオンされ、第2,第3スイッチQ2,Q3がオフされる。これにより、電源11の正極端子、第1高電位側経路21H、第1スイッチQ1、リアクトル31、第4スイッチQ4、第2低電位側経路22L及び電気負荷12の負極端子を含む経路に電流が流れる。この場合、電流センサ43の検出電流ILrが漸増する。
【0028】
第2期間T2では、第1,第3スイッチQ1,Q3がオンされ、第2,第4スイッチQ2,Q4がオフされる。これにより、電源11の正極端子、第1高電位側経路21H、第1スイッチQ1、リアクトル31、第3スイッチQ3のダイオード、第2高電位側経路22H及び電気負荷12の正極端子を含む経路に電流が流れる。この場合、電流センサ43の検出電流ILrが漸増する。
【0029】
ここで、第2期間T2における電流センサ43の検出電流ILrの増加速度は、第1期間T1における電流センサ43の検出電流ILrの増加速度よりも小さい。これは、第2期間T2におけるリアクトル31の両端における電圧差が、第1期間T1におけるリアクトル31の両端における電圧差よりも小さいためである。なお、本実施形態において、第1,第2期間T1,T2が「第1オン時間」に相当し、第2期間T2が「第2オン時間」に相当する。
【0030】
第3期間T3では、第2,第3スイッチQ2,Q3がオンされ、第1,第4スイッチQ1,Q4がオフされる。これにより、電源11の負極端子、第1低電位側経路21L、第2スイッチQ2、リアクトル31、第3スイッチQ3、第2高電位側経路22H及び電気負荷12の正極端子を含む経路に電流が流れる。この場合、電流センサ43の検出電流ILrが漸減する。
【0031】
第2制御部70の第2デューティ比Duty2が調節されることにより、1スイッチング周期Tswにおいてリアクトル31に流れる平均電流Iaveが目標電流IL*に制御される。これにより、電源11から電気負荷12に供給される電力Pも目標電力P*に制御される。
【0032】
ここで、図2に示す処理のみでは、以下に説明する問題が発生する。この問題について図4及び図5を用いて説明する。
【0033】
図4に、目標電流IL*が所定電流値Imin未満に設定される軽負荷状態におけるスイッチング制御の比較例1を示す。比較例1では、通常モードにおける制御が実施される。図4(a)~(c)は、先の図3(a)~(c)に対応している。
【0034】
第2デューティ比Duty2が取り得る範囲の下限値Duty2minとされた場合、リアクトル31の平均電流Iaveは所定電流値Iminとされる。軽負荷状態では、所定電流値Iminよりも小さい目標電流IL*が設定される。なお、本実施形態において、所定電流値IminにVin*×Duty1を乗算した値が「所定電力」に相当する。
【0035】
第2制御部70は、リアクトル31の平均電流Iaveを目標電流IL*まで低減すべく、第2デューティ比Duty2をその下限値Duty2minまで低減する。しかしながら、リアクトル31の平均電流Iaveは、所定電流値Iminまでしか低減されないため、所定電流値Iminよりも小さい目標電流IL*まで低減することができないという問題が生じる。
【0036】
図5に、軽負荷状態におけるスイッチング制御の比較例2を示す。比較例2では、上述した問題に対処すべく、間欠動作が実施される。図5(a)~(c)は、先の図3(a)~(c)に対応している。
【0037】
比較例2の間欠動作では、3スイッチング周期3Tswのうち1スイッチング周期Tswにおいて、第1スイッチQ1をオンしつつ第2スイッチQ2をオフする期間と、第4スイッチQ4をオンしつつ第3スイッチQ3をオフする期間とを設ける。この期間では、電源11からは所定電力が供給される。一方、残りのスイッチング周期では、第1~第4スイッチQ1~Q4をオフする。この期間では、電源11からの電力の供給は一時停止される。これにより、リアクトル31の平均電流Iaveが、所定電流値Iminよりも小さい目標電流IL*まで低減される。しかしながら、この場合、電源11の出力電力Pの変動が大きくなる懸念がある。電源11の出力電力Pの変動が大きくなると、第1~第4スイッチQ1~Q4がオフされる期間において、電源11が高電位状態とされることがある。これにより、電源11の劣化が促進される可能性がある。
【0038】
そこで、本実施形態では、軽負荷状態において、図2に示す制御に代えて、図6に示す低出力モードのスイッチング制御が実施される。低出力モードでは、第2制御部70により実施される電力制御に加えて、第1制御部60においても電力制御が実施される。
【0039】
図6は、低出力モードにおけるスイッチング制御を示す機能ブロック図である。図6において、先の図2に示した構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0040】
低出力モードにおいて、第2制御部70が実施する制御は、通常モードの第2制御部70が実施する制御と同様である。このため、軽負荷状態では、第2デューティ比Duty2が下限値Duty2minに設定される。
【0041】
第1制御部60は、低減係数算出部63を備えている。低減係数算出部63は、電源11の目標電力P*、目標出力電圧Vout*及び目標入力電圧Vin*に基づいて、低減係数fを算出する。ここで、低減係数fは、0~1の実数であり、図2に示した係数Kよりも小さく算出される。低減係数fは、電源11の目標電力P*、目標出力電圧Vout*及び目標入力電圧Vin*のうち少なくとも1つと関係付けられることにより、低減係数fが規定されたマップ情報又は数式情報に基づいて算出されればよい。本実施形態において、低減係数fは、電源11の目標電力P*、目標出力電圧Vout*及び目標入力電圧Vin*に基づいて算出される。
【0042】
詳しくは、低減係数fは、所定電流値Iminから目標電流IL*までリアクトル31の通電電流を低減するべく算出される値であり、図7に示すように、電源11の目標電力P*、目標出力電圧Vout*及び目標入力電圧Vin*との対応関係を有する。電源11の目標電力P*が大きいほど、低減係数fが大きく算出される。これは、目標電力P*が大きいほど、目標電流IL*も大きく設定されるためである。目標出力電圧Vout*が大きいほど、低減係数fが大きく算出される。これは、目標出力電圧Vout*が大きいほど、所定電流値Iminが小さくされるためである。目標入力電圧Vin*が大きいほど、低減係数fが小さく算出される。これは、目標入力電圧Vin*が大きいほど、所定電流値Iminが大きくされるためである。
【0043】
第1オン時間算出部62は、電圧比算出部61において算出された電圧比に低減係数fを乗算することにより、第3デューティ比Duty3を算出する。第3デューティ比Duty3は、第1デューティ比Duty1と同様に、1スイッチング周期Tswのうち、第1スイッチQ1のオン時間の比率及び第2スイッチQ2のオフ時間の比率を定める値である。本実施形態において、第1オン時間算出部62及び低減係数算出部63が「低減部」に相当し、電圧比に低減係数fを乗算することが「低減処理」に相当する。
【0044】
図8に、低出力モードにおけるスイッチング制御の一例を示す。図8(a)~(c)は、先の図3(a)~(c)に対応する。図8において、先の図3に示した構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0045】
低出力モードでは、1スイッチング周期Tswのうち第3デューティ比Duty3によって定まる期間に亘り、第1スイッチQ1がオンされ、第2スイッチQ2がオフされる。低減係数fは係数Kよりも小さいため、1スイッチング周期Tswのうち第3デューティ比Duty3によって定まる期間は、第1デューティ比Duty1によって定まる期間よりも短い。そのため、リアクトル31の通電電流が漸増する期間である第1,第2期間T1,T2が通常モードよりも低減される。これにより、リアクトル31の平均電流Iaveを、所定電流値Iminよりも小さい目標電流IL*まで低減することができる。そのため、電源11の出力電力Pも目標電力P*まで低減される。
【0046】
図9に、制御装置50が実施する処理の手順を示す。この処理は所定周期で繰り返し実行される。
【0047】
ステップS10では、リアクトル31の目標電流IL*が所定電流値Imin未満であるか否かを判定する。
【0048】
ステップS10において否定判定した場合、軽負荷状態ではないと判定し、ステップS11に進む。ステップS11では、通常モードのスイッチング制御を実施する。通常モードでは、第1制御部60による電圧制御及び第2制御部70による電力制御が実施される。
【0049】
一方、ステップS10において肯定判定した場合、軽負荷状態であると判定し、ステップS12に進む。ステップS12では、低出力モードに設定する。低出力モードでは、第2制御部70により実施される電力制御に加えて、第1制御部60でも、第3デューティ比Duty3の制御による電力制御が実施される。
【0050】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0051】
軽負荷状態であると判定された場合、低出力モードのスイッチング制御が実施される構成とした。これにより、間欠動作が実施されずに、リアクトル31の平均電流Iaveを目標電流IL*まで低減することができる。そのため、電源11の出力電力Pを低減しつつ、電源11の出力電力Pの変動を抑制することができ、ひいては電源11の劣化を抑制することができる。
【0052】
低出力モードでは、通常モードにおける係数Kよりも小さい低減係数fが算出される。これにより、リアクトル31の通電電流が漸増する期間が通常モードよりも低減される。そのため、リアクトル31の平均電流Iaveを、所定電流値Imin未満の目標電流IL*まで的確に低減することができる。その結果、電源11の出力電力Pを的確に低減することができる。
【0053】
低出力モードでは、低減係数fが目標電力P*、目標出力電圧Vout*及び目標入力電圧Vin*に基づいて算出される構成とした。これにより、第2デューティ比Duty2がその下限値Duty2minに制御された状態において、リアクトル31の平均電流Iaveを目標電流IL*まで低減するのに必要な第3デューティ比Duty3を的確に算出することができる。
【0054】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。第1実施形態では、低出力モードにおいて低減係数fを低減係数算出部63によって算出したが、本実施形態では、低出力モードにおいて低減係数fを図10に示す処理によって算出する。
【0055】
図10に、先の図9のステップS12に相当する低出力モードの処理手順を示す。ステップS20では、電源11の出力電力Pが目標電力P*より大きいか否かを判定する。ステップS20において肯定判定した場合、ステップS21に進む。
【0056】
ステップS21では、低減係数fを所定値だけ低減する。続くステップS22では、低減された低減係数fを用いて、第3デューティ比Duty3を算出する。第1ハーフブリッジ回路32では、低減された第3デューティ比Duty3によりスイッチング制御が実施される。その後再びステップS20に戻る。そのため、ステップS20において電源11の出力電力Pが目標電力P*以下とされるまでの間、ステップS21において低減係数fが漸減される。本実施形態において、ステップS21及び第1オン時間算出部62が「低減部」に相当し、ステップS22が「低減処理」に相当する。
【0057】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。第3実施形態では、図11に示すように、電源システム100は酸素供給部80を備え、低減処理として、先の図6における電圧比に低減係数fを乗算する処理に代えて、酸素供給量Mを低減する処理が行われる。
【0059】
酸素供給部80は、燃料電池である電源11に酸素を供給する。電源11は、酸素供給部80から供給された酸素と、水素ガス等の燃料とを反応させて発電を行う。このため、酸素供給部80から供給される酸素が多いほど、電源11の出力電力Pは大きくなる。
【0060】
制御装置50は、酸素供給部80と接続されており、酸素供給部80が電源11へと供給する酸素供給量Mを制御する。
【0061】
本実施形態では、通常モード及び低出力モードそれぞれにおいて図2に示す処理が実行され、図6に示す処理は実行されない。制御装置50が実行する先の図9に示す処理のうち、ステップS12の処理が変更されている。詳しくは、ステップS12において、低出力モードの処理として、酸素供給量Mを通常モードにおける酸素供給量Mよりも低減する処理を行う。これにより、間欠動作が実施されずに、電源11の出力電力Pを的確に低減することができる。そのため、電源11の出力電力Pの変動を抑制することができ、ひいては電源11の劣化を抑制することができる。本実施形態において、ステップS12が「低減部」及び「低減処理」に相当する。
【0062】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0063】
・電源11としては、燃料電池に限らず、例えば蓄電池(具体的には2次電池)であってもよい。
【0064】
・DCDCコンバータ10を構成するスイッチとしては、IGBTに限らず、例えばボディダイオードを有するNチャネルMOSFETであってもよい。
【0065】
・第1~第3実施形態において、第1ハーフブリッジ回路32の上下アームにスイッチを備える構成に代えて、上アーム側にスイッチ及び下アーム側に整流素子を備える構成であってもよい。ここで、整流素子は、第1低電位側経路21Lからリアクトル31の第1端へと向かう方向の電流の流通を許容するものであればよく、例えば、ダイオードである。
【0066】
・第1~第3実施形態において、第2ハーフブリッジ回路33の上下アームにスイッチを備える構成に代えて、上アーム側に整流素子及び下アーム側にスイッチを備える構成であってもよい。
【0067】
第1~第3実施形態において、軽負荷状態であると判定された場合、低減処理に加えて、間欠動作が実施されてもよい。この場合であっても、数スイッチング周期の間において、低減処理が実施されることにより、間欠動作が実施される回数を低減することができる。そのため、電源11の出力電力Pの変動を抑制することができ、ひいては電源11の劣化を抑制することができる。
【0068】
・第1実施形態のステップS10では、リアクトル31の目標電流IL*が所定電流値Imin未満であるか否かを判定したが、軽負荷状態であるか否かの判定はこれに限られない。例えば、目標電力P*が所定電力Pmin未満であるか否かを判定してもよい。ここで、所定電力Pminは、例えば、所定電流値IminにVin*×Duty1を乗算した値である。
【0069】
・第2実施形態のステップS20において、電源11の出力電力Pが目標電力P*より大きいか否かの判定に代えて、電源11の出力電力Pと目標電力P*との差が所定値より大きいか否かを判定してもよい。電源11の出力電力Pと目標電力P*との差が所定値より大きい場合、ステップS21に進む。一方、電源11の出力電力Pと目標電力P*との差が所定値以下の場合、本処理を終了する。これにより、電源11の出力電力Pと目標電力P*との差が所定値以下となるまで、低減係数fが漸減される。
【0070】
・先の図2及び図6において、偏差算出部71には、リアクトル31の目標電流IL*に代えて、目標電力P*が入力されてもよい。偏差算出部71は、目標電力P*から、電源11から電気負荷12に供給する電力Pを減算することにより、電力偏差ΔPを算出する。フィードバック制御部72は、偏差算出部71において算出された電力偏差ΔPを0にフィードバックするための操作量として、第2デューティ比Duty2を算出する。
【0071】
・先の図2及び図6において、電圧比算出部61には、目標入力電圧Vin*に代えて、入力電圧センサ41の検出電圧Vinrが入力されてもよい。
【0072】
・先の図2及び図6において、電圧比算出部61には、出力電圧センサ42の検出電圧Voutrに代えて、目標出力電圧Vout*が入力されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…DCDCコンバータ、32,33…第1,第2ハーフブリッジ回路、50…制御装置、60,70…第1,第2制御部、63…低減係数算出部、Q1,Q4…第1,第4スイッチ。
図1
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