(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】半導体部材の製造方法及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20230830BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230830BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230830BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20230830BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H01L29/78 658E
H01L29/78 652H
H01L29/78 653C
H01L29/78 652M
H01L29/78 652T
H01L21/20
H01L21/265 Z
(21)【出願番号】P 2020157540
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】横山 昇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和幸
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-047602(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0038850(US,A1)
【文献】特表2011-512022(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0190919(US,A1)
【文献】特開2017-084852(JP,A)
【文献】特開2020-047623(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0091335(US,A1)
【文献】特許第5150048(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0072397(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1971851(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0036713(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/20
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形の第1半導体層を含む半導体基板の第1質量を測定し、
前記第1半導体層の上面に第1開口を形成し、
前記第1開口が形成された前記半導体基板の第2質量を測定し、
前記第1開口の内部に第2導電形の第2半導体層を形成する際に、前記第2半導体層における第2導電形の不純物濃度を、前記第1質量と前記第2質量との質量差に応じて変化させる、半導体部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1開口の形成において、
前記第1開口が形成される位置に対応して設けられた第2開口を有する第1層を、前記上面の上に形成し、
前記上面に沿う第1方向における前記第2開口の長さを測定し、
前記第1層をマスクとして用いて前記第1開口を形成し、
前記第2半導体層を形成する際に、前記第2半導体層における第2導電形の前記不純物濃度を、さらに前記長さに応じて変化させる、請求項1記載の半導体部材の製造方法。
【請求項3】
前記第2半導体層は、半導体材料を含む第1ガスと、第2導電形の不純物を含む第2ガスと、を前記半導体基板に供給して形成され、
前記第2半導体層を形成する際に、前記第2ガスの流量又は圧力を前記質量差に応じて変化させることで、前記第2半導体層における第2導電形の前記不純物濃度を変化させる、請求項1又は2に記載の半導体部材の製造方法。
【請求項4】
前記第1開口は、前記上面に沿う第1方向において複数形成される、請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体部材の製造方法。
【請求項5】
前記第1半導体層及び前記第2半導体層は、シリコン、炭化シリコン、及び窒化ガリウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体部材の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の半導体部材の製造方法を実施し、
前記第1半導体層の前記上面及び前記第2半導体層の上面に、第2導電形の第1半導体領域を形成し、
前記第1半導体層の上にゲート電極を形成し、
前記第1半導体領域の上面に第1導電形の第2半導体領域を形成し、
前記第2半導体領域の上に、前記第2半導体領域と電気的に接続される第1電極を形成し、
前記第1半導体層の下に、前記第1半導体層と電気的に接続される第2電極を形成する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体部材の製造方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(MOSFET)などの半導体装置は、電力変換等の用途に用いられる。複数の第1導電形の半導体領域と複数の第2導電形の半導体領域が、交互に設けられたスーパージャンクション構造を有する半導体装置がある。このような半導体装置について、第1導電形の半導体領域に含まれる不純物量と、第2導電形の半導体領域に含まれる不純物量と、の不純物量差は、小さいことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、不純物量差を低減可能な、半導体部材の製造方法及び半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体部材の製造方法では、第1導電形の第1半導体層を含む半導体基板の第1質量を測定する。前記第1半導体層の上面に第1開口を形成する。前記第1開口が形成された前記半導体基板の第2質量を測定する。前記第1開口の内部に第2導電形の第2半導体層を形成する際に、前記第2半導体層における第2導電形の不純物濃度を、前記第1質量と前記第2質量との質量差に応じて変化させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る製造方法により製造されるスーパージャンクション構造を有する半導体装置を表す断面図である。
【
図2】実施形態に係る半導体部材の製造方法を表す断面図である。
【
図3】実施形態に係る半導体部材の製造方法を表す断面図である。
【
図4】実施形態に係る半導体装置の製造方法を表す断面図である。
【
図5】実施形態に係る半導体装置の製造方法を表す断面図である。
【
図6】実施形態に係る半導体装置の製造方法を表す断面図である。
【
図7】参考例に係る製造方法及び実施形態に係る製造方法の特性を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下の説明及び図面において、n+、n-及びp+、p、p-の表記は、各不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、「+」が付されている表記は、「+」及び「-」のいずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に高く、「-」が付されている表記は、いずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に低いことを示す。これらの表記は、それぞれの領域にp形不純物とn形不純物の両方が含まれている場合には、それらの不純物が補償しあった後の正味の不純物濃度の相対的な高低を表す。
以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0008】
図1は、実施形態に係る製造方法により製造されるスーパージャンクション構造を有する半導体装置を表す断面図である。
図1に表した半導体装置100は、n
+形(第1導電形)ドレイン領域1、n
-形ドリフト領域2、p
-形(第2導電形)ピラー領域3、p形ベース領域4、n
+形ソース領域5、p
+形コンタクト領域6、ゲート電極10、ドレイン電極21、及びソース電極22を含む。
【0009】
実施形態の説明では、XYZ直交座標系を用いる。ドレイン電極21からn+形ドレイン領域1に向かう方向をZ方向(第1方向)とする。Z方向に対して垂直であり、相互に直交する2方向をX方向(第2方向)及びY方向(第3方向)とする。また、説明のために、ドレイン電極21からn+形ドレイン領域1に向かう方向を「上」と言い、その反対方向を「下」と言う。これらの方向は、ドレイン電極21とn+形ドレイン領域1との相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0010】
ドレイン電極21は、半導体装置100の下面に設けられている。n+形ドレイン領域1は、ドレイン電極21の上に設けられ、ドレイン電極21と電気的に接続されている。n-形ドリフト領域2は、n+形ドレイン領域1の上に設けられている。n-形ドリフト領域2は、n+形ドレイン領域1を介して、ドレイン電極21と電気的に接続されている。n-形ドリフト領域2におけるn形不純物濃度は、n+形ドレイン領域1におけるn形不純物濃度よりも低い。
【0011】
p-形ピラー領域3は、n-形ドリフト領域2の上に設けられている。n-形ドリフト領域2は、p-形ピラー領域3とX方向において並ぶn-形ピラー領域2nを含む。p形ベース領域4は、p-形ピラー領域3の上に設けられている。p形ベース領域4におけるp形不純物濃度は、p-形ピラー領域3におけるp形不純物濃度よりも高い。n+形ソース領域5及びp+形コンタクト領域6は、p形ベース領域4の上に設けられている。p+形コンタクト領域6におけるp形不純物濃度は、p形ベース領域4におけるp形不純物濃度よりも高い。
【0012】
ゲート電極10は、n-形ピラー領域2nの上に設けられている。ゲート電極10は、X方向において、n-形ピラー領域2nの一部、p形ベース領域4、及びn+形ソース領域5とゲート絶縁層10aを介して対向している。
【0013】
ソース電極22は、n+形ソース領域5、p+形コンタクト領域6、及びゲート電極10の上に設けられ、n+形ソース領域5及びp+形コンタクト領域6と電気的に接続されている。ゲート電極10とソース電極22との間には、絶縁層15が設けられている。ゲート電極10は、ソース電極22とは電気的に分離されている。
【0014】
ソース電極22は、例えば、第1金属層22a及び第2金属層22bを含む。第1金属層22aは、n+形ソース領域5の上面、p+形コンタクト領域6の上面、及び絶縁層15の表面に沿って設けられている。第2金属層22bは、第1金属層22aの上に設けられている。
【0015】
n-形ピラー領域2n、p-形ピラー領域3、p形ベース領域4、n+形ソース領域5、p+形コンタクト領域6、及びゲート電極10は、X方向において複数設けられている。複数のn-形ピラー領域2n及び複数のp-形ピラー領域3が、X方向において交互に設けられている。複数のn-形ピラー領域2n及び複数のp-形ピラー領域3は、いわゆるスーパージャンクション構造を構成している。各n-形ピラー領域2n、各p-形ピラー領域3、各p形ベース領域4、各n+形ソース領域5、各p+形コンタクト領域6、及び各ゲート電極10は、Y方向に延伸している。
【0016】
半導体装置100の動作を説明する。
ドレイン電極21に、ソース電極22に対して正の電圧が印加された状態で、ゲート電極10に閾値より高い電圧を印加する。p形ベース領域4にチャネル(反転層)が形成される。電子は、チャネル及びn-形ドリフト領域2を通ってドレイン電極21へ流れる。これにより、半導体装置100がオン状態になる。その後、ゲート電極10に印加される電圧が閾値よりも低くなると、p形ベース領域4におけるチャネルが消滅し、半導体装置100がオフ状態になる。
【0017】
半導体装置100がオフ状態であり、かつソース電極22の電位に対してドレイン電極21に正の電位が印加されているとき、n-形ピラー領域2nとp形ベース領域4のpn接合面から、Z方向に沿って空乏層が広がる。また、n-形ピラー領域2nとp-形ピラー領域3のpn接合面から、X方向に沿って空乏層が広がる。n-形ピラー領域2n及びp-形ピラー領域3によるX方向への空乏層の広がりにより、半導体装置100の耐圧を高めることができる。又は、半導体装置100の耐圧を維持したまま、n-形ドリフト領域2におけるn形不純物濃度を高め、半導体装置100のオン抵抗を低減できる。
【0018】
半導体装置100の各構成要素の材料の一例を説明する。
n+形ドレイン領域1、n-形ドリフト領域2、p-形ピラー領域3、p形ベース領域4、n+形ソース領域5、及びp+形コンタクト領域6は、半導体材料として、シリコン、炭化シリコン、及び窒化ガリウムからなる群より選択された少なくとも1つを含む。半導体材料としてシリコンが用いられる場合、n形不純物として、ヒ素、リン、またはアンチモンを用いることができる。p形不純物として、ボロンを用いることができる。
ゲート電極10は、ポリシリコンなどの導電材料を含む。ゲート絶縁層10a及び絶縁層15は、酸化シリコンなどの絶縁材料を含む。ドレイン電極21及び第2金属層22bは、銅、アルミニウムなどの金属を含む。第1金属層22aは、チタン、窒化チタン、タングステンなどの、バリアメタルとして機能する金属を含む。
【0019】
実施形態に係る半導体部材の製造方法を説明する。
図2及び
図3は、実施形態に係る半導体部材の製造方法を表す断面図である。
n
+形半導体層1a及びn
-形半導体層2a(第1半導体層)を含む半導体基板Subを用意する。n
-形半導体層2aは、n
+形半導体層1aの上に設けられている。半導体基板Subは、n
+形半導体層1aを含まず、n
-形半導体層2aのみを含んでも良い。n
+形半導体層1aからn
-形半導体層2aに向かう方向は、Z方向に平行である。n
-形半導体層2aの上面は、X方向及びY方向に平行である。半導体基板Subの熱酸化又は化学気相堆積(CVD)により、
図2(a)に表したように、n
-形半導体層2aの上面に絶縁層IL1(第1層)を形成する。
【0020】
絶縁層IL1が形成された半導体基板Subの質量(第1質量)を測定する。質量は、例えば、Lam社のMetryxシリーズ、又は温度・気圧がコントロールされた環境下に設置された電子天秤により、測定できる。絶縁層IL1の上に、フォトレジストPRを形成する。フォトリソグラフィ及び反応性イオンエッチング(RIE)により、絶縁層IL1をパターニングする。これにより、
図2(b)に表したように、n
-形半導体層2aの上面に、開口OP2(第2開口)を有する絶縁層IL1が設けられる。開口OP2は、X方向において複数形成される。各開口OP2は、Y方向に延伸している。
【0021】
アッシングによりフォトレジストPRを除去する。開口OP2のX方向における長さを測定する。長さは、例えば、測長SEM(Critical Dimension-Scanning Electron Microscope:CD-SEM)により測定される。絶縁層IL1をマスクとして用いて、RIEにより、n
-形半導体層2aの上面に開口OP1(第1開口)を形成する。開口OP1が形成される位置は、開口OP2の位置に対応する。
図3(a)に表したように、開口OP1は、X方向において複数形成される。各開口OP1は、Y方向に延伸している。
【0022】
開口OP1が形成された半導体基板Subの質量(第2質量)を測定する。第2質量は、絶縁層IL1の質量を含む。
図3(b)に表したように、開口OP1の内部に、p
-形半導体層3a(第2半導体層)をエピタキシャル成長させる。
【0023】
エピタキシャル成長では、半導体基板Subを加熱しながら、シリコンを含む第1ガスと、p形不純物を含む第2ガスと、を半導体基板Subが載置された処理空間に供給する。例えば、第1ガスとして、シラン、クロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシランなどのガスが用いられる。第2ガスとして、ジボラン、トリボラン、クロロボランなどのガスが用いられる。絶縁層IL1へのシリコンの堆積を抑制するために、エッチングガスがさらに供給されても良い。エッチングガスとして、塩酸ガスを用いることができる。
【0024】
p-形半導体層3aを形成する際に、p-形半導体層3aにおけるp形不純物濃度を、第1質量と第2質量の質量差に応じて変化させる。具体的には、質量差が大きいほど、p-形半導体層3aにおけるp形不純物濃度を低くする。
【0025】
p-形半導体層3aにおけるp形不純物濃度を変化させる方法として、以下の方法がある。
1つ目の方法では、p-形半導体層3aを形成する際に、第2ガスの流量を調整する。質量差が大きいほど、第2ガスの流量を小さくする。流量に代えて圧力を調整しても良い。例えば、質量差が大きいほど、p-形半導体層3aを形成する空間における第2ガスの圧力を低くする。流量が大きいほど、又は圧力が高いほど、形成される半導体層へのp形不純物の供給量が増大する。これにより、p-形半導体層3aにおけるp形不純物濃度を変化させることができる。
2つ目の方法では、最初に、p形不純物を含む不純物層を開口OP1の内壁に沿って形成する。次に、アンドープ又はp形不純物濃度の低い半導体層を開口OP1の内部に形成する。その後、熱処理により、不純物層から、アンドープ又は低濃度の半導体層にp形不純物が拡散することで、p-形半導体層3aが形成される。不純物層を形成する際に、質量差に応じて、第2ガスの流量を調整することで、p-形半導体層3aにおけるp形不純物濃度を変化させることができる。
第2ガスの流量又は圧力の調整に代えて、希釈ガス又はエッチングガスの流量又は圧力を調整しても良い。希釈ガスとして、水素ガスを用いることができる。
又は、第2ガスの流量又は圧力の調整に加えて、希釈ガス又はエッチングガスの流量又は圧力を調整しても良い。
【0026】
図4~
図6は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を表す断面図である。
まず、上述した半導体部材の製造方法により、n
-形半導体層2a及びp
-形半導体層3aを含む半導体部材を製造する。絶縁層IL1を除去する。化学機械研磨(CMP)により、n
-形半導体層2a及びp
-形半導体層3aの上面を平坦化する。n
-形半導体層2aの上面及びp
-形半導体層3aの上面にp形不純物をイオン注入し、p形半導体領域4a(第1半導体領域)を形成する。フォトリソグラフィ及びRIEにより、
図4(a)に表したように、n
-形半導体層2aの上に開口OP3を形成する。開口OP3は、p形半導体領域4aを貫通し、n
-形半導体層2aに達する。開口OP3は、X方向において複数形成される。各開口OP3は、Y方向に延伸している。
【0027】
熱酸化により、開口OP3の内壁及びp形半導体領域4aの上面に沿って絶縁層IL2を形成する。CVDにより、絶縁層IL2の上に、開口OP3を埋め込む導電層を形成する。ケミカルドライエッチング(CDE)、RIE、又はウェットエッチングにより、この導電層の上面を後退させる。これにより、
図4(b)に表したように、開口OP3内にゲート電極10が形成される。
【0028】
p形半導体領域4aの上面にn形不純物をイオン注入し、n
+形半導体領域5a(第2半導体領域)を形成する。CVDにより、n
+形半導体領域5a及びゲート電極10の上に絶縁層IL3を形成する。フォトリソグラフィ及びRIEにより、絶縁層IL2の一部及び絶縁層IL3の一部を除去し、
図5(a)に表したように、開口OP4を形成する。開口OP4を通して、n
+形半導体領域5aの一部が露出する。
【0029】
開口OP4を通して、n
+形半導体領域5aの一部にp形不純物をイオン注入し、p
+形コンタクト領域6を形成する。スパッタリングにより、n
+形半導体領域5aの上面、p
+形コンタクト領域6の上面、及び絶縁層IL3の表面に沿って、第1金属層22aを形成する。スパッタリングにより、
図5(b)に表したように、第1金属層22aの上に第2金属層22bを形成する。第1金属層22a及び第2金属層22bを含むソース電極22(第1電極)が形成される。
【0030】
n
+形半導体層1aが所定の厚さになるまで、n
+形半導体層1aの下面を研削する。スパッタリングにより、
図6に表したように、n
+形半導体層1aの下面に、ドレイン電極21(第2電極)を形成する。n
+形半導体層1aを含まない半導体基板Subを用いた場合は、n
-形半導体層2aの下面を研削する。研削した下面にn形不純物をイオン注入し、n
+形の半導体領域を形成する。その後に、スパッタリングによりドレイン電極21を形成する。以上により、実施形態に係る半導体装置100が製造される。
【0031】
図6に表した構造において、n
+形半導体層1aは、半導体装置100のn
+形ドレイン領域1に対応する。n
-形半導体層2aは、n
-形ドリフト領域2に対応する。p
-形半導体層3aは、p
-形ピラー領域3に対応する。p形半導体領域4aは、p形ベース領域4に対応する。n
+形半導体領域5aは、n
+形ソース領域5に対応する。絶縁層IL2は、ゲート絶縁層10aに対応する。絶縁層IL3は、絶縁層15に対応する。
【0032】
上述した製造方法における処理の順序は、適宜変更可能である。例えば、ゲート電極10を形成した後に、p形半導体領域4aが形成されても良い。n+形半導体領域5aの形成後かつ絶縁層IL3の形成前に、p+形コンタクト領域6が形成されても良い。また、上述した製造方法に、適宜別の処理が追加されても良い。例えば、第2金属層22bの一部の上に、パッシベーション層として、シリコン窒化層、ポリイミド樹脂などの絶縁層が形成されても良い。n-形半導体層2aの上に、別の半導体領域が形成されても良い。
【0033】
実施形態の効果を説明する。
上述したように、半導体装置100がオフ状態のとき、n-形ピラー領域2nとp-形ピラー領域3のpn接合面から、X方向に沿って空乏層が広がる。n-形ピラー領域2n及びp-形ピラー領域3が空乏化することで、半導体装置100の耐圧が向上する。n-形ピラー領域2n及びp-形ピラー領域3の空乏化を促進させるためには、n-形ピラー領域2nに含まれるn形不純物の量と、p-形ピラー領域3に含まれるp形不純物の量と、の間の不純物量差が小さいことが好ましい。n-形ピラー領域2nの幅(X方向における長さ)、n-形ピラー領域2nにおけるn形不純物濃度、p-形ピラー領域3の幅、及びp-形ピラー領域3におけるp形不純物濃度は、当該差が小さくなるように設計される。
【0034】
n
-形ピラー領域2nのn形不純物量及びp
-形ピラー領域3のp形不純物量は、
図3(a)に表した開口OP1のサイズに応じて変化する。例えば、開口OP1の断面積が大きいほど、p
-形半導体層3aの断面積が大きくなり、開口OP1同士の間のn
-形半導体層2aの断面積が小さくなる。この結果、n
-形ピラー領域2nのn形不純物量が減少し、p
-形ピラー領域3のp形不純物量が増加する。開口OP1の断面積が設計値からずれるほど、n
-形ピラー領域2nのn形不純物量とp
-形ピラー領域3のp形不純物量との不純物量差が大きくなる。
【0035】
実施形態に係る製造方法では、開口OP1が形成されていないときの半導体基板Subの第1質量と、開口OP1が形成された後の半導体基板Subの第2質量と、を測定する。第1質量と第2質量との質量差の大きさは、開口OP1の断面積と相関する。開口OP1の断面積が大きいほど、質量差が大きくなる。質量差に応じて、p-形半導体層3aにおけるp形不純物濃度を変化させることで、不純物量差を小さくできる。
【0036】
例えば、n-形ピラー領域2nのn形不純物量とp-形ピラー領域3のp形不純物量が等しいときの質量差(第1公称値)が、予め設定される。p-形半導体層3aを形成する際に、n-形ピラー領域2nのn形不純物量とp-形ピラー領域3のp形不純物量を等しくするための、第2ガスの流量(公称流量)が予め設定される。第1質量及び第2質量が測定されると、その質量差を算出する。第1公称値に対する、測定結果に基づく質量差の変化量(第1変化量)を算出する。第1変化量に応じて、第2ガスの流量を、公称流量から変化させる。測定結果に基づく質量差が第1公称値よりも大きいほど、第2ガスの流量を公称流量に比べて小さくする。測定結果に基づく質量差が第1公称値よりも小さいほど、第2ガスの流量を公称流量に比べて大きくする。
【0037】
例えば、第1変化量と流量の補正量との関係を示すデータが、予め設定される。第1変化量が算出されると、当該データを参照し、第1変化量に対応した補正量を取得する。取得した補正量に基づいて、公称流量を補正する。p-形半導体層3aを形成する際に、補正された流量で第2ガスを供給する。
【0038】
実施形態に係る製造方法によれば、不純物量差が低減された半導体部材が製造される。この半導体部材を用いることで、不純物量差を低減可能な半導体装置100を製造できる。
【0039】
比較例に係る製造方法として、製造済みの半導体部材又は半導体装置の分析結果に基づき、p-形半導体層3aのp形不純物濃度を調整する方法が挙げられる。具体的には、半導体部材又は半導体装置において、n-形ピラー領域2nの幅及びp-形ピラー領域3の幅を測定し、その測定結果に基づいて、その後の製造工程におけるp-形半導体層3aのp形不純物濃度を調整する。すなわち、比較例に係る製造方法では、p-形半導体層3aのp形不純物濃度が、フィードバック制御される。
【0040】
実施形態に係る製造方法によれば、第1変化量は、p-形半導体層3aの形成前に算出できる。第1変化量に基づいて、その後に形成されるp-形半導体層3aのp形不純物濃度を調整できる。すなわち、第1変化量に基づいて、p-形半導体層3aのp形不純物濃度を、フィードフォワード制御できる。製造途中における測定結果に基づいてp-形半導体層3aのp形不純物濃度をフィードフォワード制御することで、比較例に係る製造方法に比べて、不純物量差を低減できる。また、特性の劣る半導体装置が製造されることを抑制でき、半導体部材及び半導体装置の歩留まりを向上できる。
【0041】
p-形半導体層3aにおけるp形不純物濃度を、第1変化量に加えて、開口OP2の幅に応じて変化させても良い。開口OP2の幅は、絶縁層IL1をマスクとして用いて形成される開口OP1の幅と相関する。開口OP2の幅が広いほど、開口OP1の幅も広くなり、開口OP1の断面積が大きくなる。
【0042】
n-形ピラー領域2nのn形不純物量とp-形ピラー領域3のp形不純物量を等しくするために好ましい開口OP2の幅(第2公称値)が、予め設定される。開口OP2を形成した後、開口OP2の幅を測定する。第2公称値に対する、測定された幅の変化量(第2変化量)を算出する。第1変化量及び第2変化量に応じて、第2ガスの流量を、公称流量から変化させる。
【0043】
例えば、第1変化量、第2変化量、及び流量の補正量の関係を示すデータが、予め設定される。第1変化量及び第2変化量が算出されると、当該データを参照し、第1変化量及び第2変化量に対応した補正量を取得する。取得した補正量に基づいて、第2ガスの流量を、公称流量から補正する。p-形半導体層3aを形成する際に、補正された流量で第2ガスを供給する。
【0044】
質量差は、開口OP1の幅だけではなく、開口OP1の深さ(Z方向における長さ)にも依存する。質量差の一部が、開口OP1の深さのばらつきに起因する可能性もある。開口OP1が深くなると、p-形ピラー領域3のZ方向における長さが長くなる。これに応じて、p-形ピラー領域3と並ぶn-形ピラー領域2nのZ方向における長さも長くなる。従って、開口OP1の深さのばらつきは、不純物量差への影響が小さい。第1変化量及び第2変化量に応じてp-形半導体層3aにおけるp形不純物濃度を変化させることで、不純物量差をさらに小さくできる。
【0045】
開口OP1を形成する際には、エッチング量のばらつきが生じる。開口OP2の幅のみに基づいて開口OP1の断面積を予測すると、エッチング量のばらつきにより、質量差に基づく予測に比べて精度が低下する。このため、開口OP2の幅の測定結果のみに応じてp-形半導体層3aにおけるp形不純物濃度を変化させると、質量差のみに応じてp-形半導体層3aにおけるp形不純物濃度を変化させた場合に比べて、不純物量差が大きくなる傾向にある。従って、開口OP2の幅及び質量差に応じて、p-形半導体層3aにおけるp形不純物濃度を変化させることが好ましい。
【0046】
図7(a)は、参考例に係る製造方法の特性を表すグラフである。
図7(b)は、実施形態に係る製造方法の特性を表すグラフである。
実施形態に係る製造方法では、第1質量、第2質量、及び開口OP2の幅を測定する。参考例に係る製造方法では、開口OP2の幅のみを測定し、第1質量又は第2質量は測定しない。
【0047】
図7(a)のグラフは、以下の手順により得られる。
半導体装置の製造過程において、開口OP2の幅を測定する。p
-形半導体層3aは、公称流量で第2ガスを供給して形成される。製造された半導体装置の電気特性から、n
-形半導体層2aに含まれるn形不純物量とp
-形半導体層3aに含まれるp形不純物量の比が算出できる。具体的には、製造された半導体装置について、ゲート電極10に電圧を印加していないときの耐圧値(ブレークダウンボルテージ)と、ゲート電極10に電圧を印加したときの耐圧値と、を測定し、これらの比を測定する。過去の量産データにおいて得られた、当該比に関するシミュレーション結果を参照する。シミュレーション結果から、当該比に対応する、n
-形半導体層2aに含まれるn形不純物量とp
-形半導体層3aに含まれるp形不純物量との比を得る。これを実測値とする。実測値は、(Np/Nn-1)の数式で、単位%で表すことができる。プラスの符号は、p形不純物量がn形不純物量よりも多い状態を表す。マイナスの符号は、n形不純物量がp形不純物量よりも多い状態を表す。
【0048】
公称流量で第2ガスを供給したときの、p-形半導体層3aにおけるp形不純物量を予測する。この予測結果に基づいて、不純物量比の予測値を算出する。具体的には、不純物量比の予測値は、(Np1/Nn1-1)で表される。Np1は、p-形半導体層3aにおいて予測されるp形不純物量である。Nn1は、予め規定されたn-形半導体層2aにおけるn形不純物量である。Np1は、開口OP1の断面積とp-形半導体層3aにおいてp形不純物濃度の積である。開口OP1の断面積は、測定された幅を有する開口OP2を通して開口OP1を形成したときの、予測される断面積である。p形不純物濃度は、公称流量で第2ガスを供給したときの値である。Nn1は、n-形半導体層2aにおけるn形不純物濃度と、開口OP1同士の間のn-形半導体層2aの断面積と、の積である。n-形半導体層2aにおけるn形不純物濃度は、半導体基板Subを供給するメーカから提供される。又は、水銀プローブもしくはCV測定により、半導体製造装置による処理前に、n-形半導体層2aにおけるn形不純物濃度を測定しても良い。開口OP1同士の間のn-形半導体層2aの断面積は、ゲート電極10のピッチと開口OP1の深さの公称値から、予測された開口OP1の断面積を減じた値である。
【0049】
図7(b)のグラフは、
図7(a)のグラフと同様の手順により得られる。
半導体装置の製造過程において、第1質量、第2質量、及び開口OP2の幅を測定する。p
-形半導体層3aは、公称流量で第2ガスを供給して形成される。製造された半導体装置の電気特性から、n
-形半導体層2aに含まれるn形不純物量とp
-形半導体層3aに含まれるp形不純物量の比が算出できる。これを実測値とする。
第1変化量及び第2変化量に対応した流量で第2ガスを供給したときの、n
-形半導体層2aにおけるn形不純物量及びp
-形半導体層3aにおけるp形不純物量を予測する。(Np1/Nn1-1)で表される不純物量比の予測値を算出する。
【0050】
図7(a)及び
図7(b)において、横軸は不純物量比の予測値を表し、縦軸は不純物量比の実測値を表す。実線は、予測値と実測値が一致する線を表している。
図7(a)及び
図7(b)の結果を比較すると、実施形態に係る製造方法については、予測値に対する実測値のばらつきが、参考例に係る製造方法よりも小さいことが分かる。具体的には、参考例に係る製造方法について、実測値に対する予測値の決定係数R
2は、0.53であった。実施形態に係る製造方法について、実測値に対する予測値の決定係数R
2は、0.84であった。実測値に対する予測値のばらつきが小さいほど、p
-形半導体層3aのp形不純物濃度をフィードフォワード制御したときに、不純物量差を低減できる。実施形態に係る製造方法によれば、参考例に係る製造方法に比べて、不純物量差を低減できる。これにより、例えば、歩留まりを改善できる。
【0051】
上述した質量差の算出、第1変化量の算出、第2変化量の算出、補正量の取得、第2ガスの流量の補正などは、汎用又は専用のコンピュータにより実行される。又は、これらの処理は、人により実行されても良い。
【0052】
上述した実施形態に係る製造方法に、適宜別の工程が追加されても良い。例えば、n
-形半導体層の形成及び
図2(a)~
図3(b)に表した工程のセットが複数回実行され、n
-形ピラー領域2n及びp
-形ピラー領域3に相当する領域が形成されても良い。この場合も、絶縁層IL1の形成後及びn
-形半導体層への開口の形成後にそれぞれ質量を測定し、質量差に応じてp
-形半導体層におけるp形不純物濃度を調整する。これにより、例えば、不純物量差の小さな半導体装置100が製造される。
【0053】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1:n+形ドレイン領域、 1a:n+形半導体層、 2:n-形ドリフト領域、 2a:n-形半導体層、 2n:n-形ピラー領域、 3:p-形ピラー領域、 3a:p-形半導体層、 4:p形ベース領域、 4a:p形半導体領域、 5:n+形ソース領域、 5a:n+形半導体領域、 6:p+形コンタクト領域、 10:ゲート電極、 10a:ゲート絶縁層、 15:絶縁層、 21:ドレイン電極、 22:ソース電極、 22a:第1金属層、 22b:第2金属層、 100:半導体装置、 IL1~IL3:絶縁層、 OP1~OP4:開口、 PR:フォトレジスト、 Sub:半導体基板