IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インフェクシャス ディズィーズ リサーチ インスティチュートの特許一覧

特許7339942サポニンを含むリポソーム製剤および使用方法
<>
  • 特許-サポニンを含むリポソーム製剤および使用方法 図1
  • 特許-サポニンを含むリポソーム製剤および使用方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】サポニンを含むリポソーム製剤および使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20230830BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 39/21 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 39/04 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20230830BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A61K39/39
A61K39/00 G
A61K39/02
A61K39/00 H
A61K39/21
A61K39/04
A61K47/28
A61K47/69
A61K47/24
A61K9/127
A61P37/04
A61P37/06
A61P35/00
A61P31/00
A61P31/14
A61P31/18
A61P33/06
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2020514284
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 US2018049832
(87)【国際公開番号】W WO2019051149
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】62/556,257
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508296509
【氏名又は名称】アクセス ツー アドバンスト ヘルス インスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,クリストファー,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】リン,スーザン エス.
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-519309(JP,A)
【文献】特表2017-515889(JP,A)
【文献】特表2013-523617(JP,A)
【文献】特表2012-517979(JP,A)
【文献】特表2012-528892(JP,A)
【文献】Journal of Controlled Release,2013年,172,190-200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象に投与するための、QS21であるサポニンと、グルコピラノシル脂質A(GLA)であるリポ多糖と、リン脂質とを含むリポソーム製剤であって、リポ多糖対サポニンの重量比が、2.5対1であり、前記サポニンが、コレステロールに複合体化しており、サポニン対コレステロールの重量比が、1:125である、製剤。
【請求項2】
前記サポニンが、合成である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記リン脂質が、DLPC、DMPC、DPPC、DSPC、DOPC、POPC、DLPG、DMPG、DPPG、DSPG、DOPG、DSTAP、DPTAP、DSPE、DPPE、DMPE、およびDLPEからなる群から選択される、請求項に記載の製剤。
【請求項4】
前記リポ多糖が、以下の式を有し、
【化1】
式中、R、R、R、およびRが、C11アルキルであり、RおよびRが、C13アルキルであり、
またはその薬学的に許容される塩である、請求項1~のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
前記リポ多糖が、式、
【化2】
もしくは
【化3】
、またはそれらの薬学的に許容される塩を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
前記リポ多糖が、以下の式を有し、
【化4】
式中、R、R、R、およびRが、C10アルキルであり、RおよびRが、C8アルキルであり、
またはその薬学的に許容される塩である、請求項1~のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
前記製剤が、ヒト用量での使用に好適な体積である、請求項1~のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
前記体積が、約0.5ml~約1.5mlである、請求項に記載の製剤。
【請求項9】
請求項1~に記載の製剤のいずれか1つを含む、薬学的組成物。
【請求項10】
抗原をさらに含む、請求項に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
請求項1~に記載の製剤のいずれか1つ、および抗原を含む、ワクチン組成物。
【請求項12】
前記抗原が、(i)感染性疾患に関連する少なくとも1つの感染性病原体、(ii)がんに関連する少なくとも1つのエピトープ、生体分子、細胞、もしくは組織、または(iii)自己免疫疾患に関連する少なくとも1つのエピトープ、生体分子、細胞、もしくは組織に由来するか、またはそれと免疫学的に交差反応性であることにより、免疫応答を誘発または増強する、請求項1または1に記載の組成物。
【請求項13】
請求項10~1に記載の組成物から成る、対象における免疫応答の誘発または増強剤。
【請求項14】
抗原と併用して投与される、請求項1記載の免疫応答の誘発または増強剤。
【請求項15】
対象が、がん、感染性疾患、または自己免疫疾患に苦しんでいる、請求項1または請求項1に記載の免疫応答の誘発または増強剤。
【請求項16】
対象が、ヒトである、請求項1~1のいずれか1項に記載の免疫応答の誘発または増強剤。
【請求項17】
ウエストナイルウイルスの治療に使用するためのものではない、請求項1~のいずれかに記載の製剤。
【請求項18】
ウエストナイルウイルスの治療に使用するためのものではない、請求項~1のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
ウエストナイルウイルスの治療に使用するためのものではない、請求項1~1のいずれかに記載の免疫応答の誘発または増強剤。
【請求項20】
抗原と混合され、前記抗原が、ウエストナイルウイルスに関連しないか、またはそれに由来しない、請求項1~のいずれかに記載の製剤。
【請求項21】
抗原と混合され、前記抗原が、ウエストナイルウイルスに関連しないか、またはそれに由来しない、請求項~1のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
抗原と混合され、前記抗原が、ウエストナイルウイルスに関連しないか、またはそれに由来しない、請求項1~1のいずれかに記載の免疫応答の誘発または増強剤。
【請求項23】
TB、HIV、またはマラリアの治療に使用するためのものである、請求項1~のいずれかに記載の製剤。
【請求項24】
TB、HIV、またはマラリアの治療に使用するためのものである、請求項~1のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
TB、HIV、またはマラリアの治療に使用するためのものである、請求項1~1のいずれかに記載の免疫応答の誘発または増強剤。
【請求項26】
抗原と混合され、前記抗原が、TB、HIV、またはマラリアに関連するか、またはそれに由来する、請求項1~のいずれかに記載の製剤。
【請求項27】
抗原と混合され、前記抗原が、TB、HIV、またはマラリアに関連するか、またはそれに由来する、請求項~1のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
抗原と混合され、前記抗原が、TB、HIV、またはマラリアに関連するか、またはそれに由来する、請求項1~1のいずれかに記載の免疫応答の誘発または増強剤。
【請求項29】
前記抗原が、ID93、ID91、またはID97である、請求項2に記載の製剤。
【請求項30】
前記抗原が、ID93、ID91、またはID97である、請求項2に記載の組成物。
【請求項31】
前記抗原が、ID93、ID91、またはID97である、請求項2に記載の免疫応答の誘発または増強剤。
【請求項32】
請求項1~のいずれか1項に記載のサポニン含有リポソーム製剤の製造方法であって、前記サポニンを事前形成されたステロール含有リポソームと混合することを含む、方法。
【請求項33】
前記サポニンが、QS21であり、前記粗サポニン混合物Quil Aを精製して、前記サポニンが得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項34】
前記サポニンが、リポソームとの混合前に緩衝液中に可溶化される、請求項3または3に記載の方法。
【請求項35】
前記事前形成されたステロール含有リポソームが、前記リン脂質および前記ステロールを混合することと、高圧均質化を介して結果として得られる前記リポソームの粒径を低減することと、によって調製される、請求項3~3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月8日出願の米国特許仮出願第62/556,257号の優先権の利益を主張し、その出願全体が、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は一般に、薬学的組成物およびワクチン組成物に関する。より具体的には、本明細書に記載の実施形態は、サポニンおよび任意でリポ多糖(LPS)を含むリポソーム製剤、ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高等生物の免疫系は、外来性作用物質が免疫応答を誘発する一方で、「自己」構成成分は無視または許容されるように、外来性作用物質(または「非自己」)作用物質を見慣れた構成成分または「自己」構成成分から区別することを特徴としている。免疫応答は、伝統的に、形質細胞として知られる分化Bリンパ球によって抗原に特異的な抗体が産生される体液性応答、または様々な種類のTリンパ球がいくつかの機構によって抗原を排除するように作用する細胞媒介性応答のいずれかを特徴としている。例えば、特異的抗原を認識することができるCD4+ヘルパーT細胞は、サイトカインなどの可溶性媒介物質を放出して、免疫応答に参加する免疫系の追加の細胞を動員することによって応答することができる。また、特異的抗原認識もすることができるCD8+細胞傷害性T細胞は、抗原担持細胞または粒子に結合し、それを破壊または損傷することによって応答することができる。免疫学の当該技術分野では、通常、宿主における所望の免疫応答を誘導するための、様々な製剤に従った特定のワクチン組成物を提供することが既知である。
【0004】
ワクチンを宿主に投与することを通して特異的免疫応答を誘発するためのいくつかの戦略には、ウイルス、細菌、または特定の真核生物病原体などの加熱死感染性病原体または弱毒生感染性病原体を用いた免疫化、免疫応答が所望される抗原(複数可)をコードする遺伝子材料の発現を指向することができる非病原性感染性作用物質を用いた免疫化、および特定の病原体に対する免疫を誘導するための、その病原体から単離された免疫原(タンパク質など)を含有するサブユニットワクチン組成物を用いた免疫化が含まれる。(例えば、Liu,1998 Nature Medicine4(5suppl.):515を参照されたい)。特定の抗原について、これらのアプローチのいずれも特に有効ではない1種類以上の望ましい免疫が存在する可能性があり、これには、ヒト免疫不全ウイルス、または他の感染性病原体、がん、自己免疫疾患、もしくは他の臨床病態に対して免疫学的に宿主を保護するのに有効なワクチン組成物の開発が含まれる。
【0005】
ワクチン組成物中では、毒性への潜在性を最小化しながら、任意の所与の抗原に関連する免疫原性を改善するために、様々なアジュバントが用いられている。例えば、キラヤサポニンは、Quillaja saponariaの木の樹皮から抽出されるトリテルペングリコシドの混合物である。粗サポニンは、口蹄疫に対するワクチン組成物中で、ならびにTrypanosoma cruzi plasmodiumなどの寄生原虫に対する実験的なワクチン組成物によって付与される防御免疫、およびヒツジ赤血球に対する体液性応答を増幅する上で、アジュバントとして用いられている(Bomford,Int.Arch.Allerg.appl.Immun.,67:127(1982))。しかしながら、アジュバント活性および毒性に影響を与える、粗混合物中に存在する不均一性および不純物のために、粗サポニンは、獣医学的診療またはヒト用の薬学的組成物での使用には望ましくない。Quil-Aは、キラヤサポニン材料の部分的に精製された水性抽出物であり、トリテルペノイドキラ酸にグリコシド結合している炭水化物部分を化学的な特徴とする。Quil-Aは、粗サポニンに対する改善を示す一方で、それはまた、有意な不均一性を実証することも示されている。QS21は、アジュバント活性を有するQuil-AのHPLC精製された非毒性断片であり、その生成のその方法は、米国特許第5,057,540号に(QA21として)開示されている。
【0006】
腸内細菌リポ多糖(LPS)が、免疫系の強力な刺激物質であることは長く知られているが、アジュバント中でのその使用は、その毒性効果によって縮小されている。しかしながら、LPSの脂質A尾部の合成非毒性誘導体であるグルコピラノシル脂質A(GLA)は、米国特許第8,273,361号に開示されているように、免疫応答を誘導する強力な潜在性を有することが示されている。還元末端グルコサミンからコア炭水化物基およびリン酸塩を除去することによって生成される、LPSの天然に存在する非毒性誘導体であるモノホスホリル脂質A(MPL)については、Ribiら(1986,Immunology and Immunopharmacology of Bacterial Endotoxins,Plenum Publ.Corp.,NY,p407-419)によって記載されている。
【0007】
MPLのさらなる解毒バージョンは、二糖骨格の3位からアシル鎖を除去することにより生じ、これは、3-O-脱アシル化モノホスホリル脂質A(3D-MPL)と呼ばれる。それは、GB2122204Bに教示される方法によって精製および調製することができ、この参考文献はまた、ジホスホリル脂質Aおよびその3-O-脱アシル化変異体の調製についても開示している。例えば、3D-MPLは、直径0.2μm未満の小さな粒径を有するエマルジョンの形態で調製されており、その製造方法は、WO94/21292に開示されている。モノホスホリル脂質Aおよび界面活性剤を含む水性製剤については、WO98/43670A2に記載されている。
【0008】
アジュバントの組み合わせ中に製剤化される細菌LPS由来アジュバントは、細菌源から精製および処理されてもよく、またはあるいは、それらは、合成であってもよい。例えば、合成サポニン、および具体的には合成QS21(SQS21)が、開示されている(Ragupathi et al.Expert Rev Vaccines.2011 April;10(4):463-470)。精製モノホスホリル脂質Aについては、Ribi et at1986(上記)に記載されており、3-O-脱アシル化モノホスホリルまたはSalmonella菌種に由来するジホスホリル脂質Aについては、GB2220211および米国特許第4,912,094号に記載されている。3D-MPLおよびβ(1-6)グルコサミン二糖、ならびに他の精製リポ多糖および合成リポ多糖が、記載されている(WO98/01139、米国特許第6,005,099号、およびEP0729473B1、Hilgers et al.,1986 Int.Arch.Allergy Immunol.,79(4):392-6、Hilgers et at.,1987,Immunology,60(1);141-6、ならびにEP0549074B1)。加えて、GLAの修飾によって設計される合成第二世代脂質アジュバント(SLA)が、記載されている(Paes et al.2016,Vaccine,34(35):4123-4131)。
【0009】
3D-MPLとQuillaja Saponaria molinaの樹皮に由来するサポニンとの組み合わせについては、EP0761231BおよびUS20080279926に記載されている。WO95/17210は、QS21とともに製剤化され、任意で3D-MPLを含む、スクアレン、a-トコフェロール、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(TWEEN(商標)-80)に基づくアジュバントエマルジョン系を開示している。そのような組み合わせが利用可能であるにも関わらず、天然生成物に由来するアジュバントの使用には、高い生産費用、ロット間の非一貫性、大規模生産に関連する困難、および任意の所与の調製物の組成構造における不純物の存在に関する不確実性が伴う。
【0010】
したがって、改善されたワクチン組成物、および具体的にはロット間の一貫性を呈し、かつ望ましくない混入物または未知構造の汚染物を導入することなく工業規模で効率的に製造することができる、高純度で既知組成のアジュバント構成成分を有利に含有する、ワクチン組成物に対する必要性が存在する。本開示は、これらの必要性を満たし、他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、そのいくつかの態様では、リポソーム製剤中の構成成分(複数可)として、サポニンおよび任意でリポ多糖を有利に用いる組成物および方法を対象とする。一態様では、リポソーム製剤は、サポニンおよびリポ多糖(LPS)を含む。別の態様では、リポソーム製剤は、サポニンを含み、LPSは含有しない。別の態様では、リポソーム製剤は、ステロールに複合体化されたサポニン、および任意でLPSを含む。
【0012】
特定の実施形態では、天然由来の精製QS21または合成QS21(例えば、米国特許第5,057,540号、EP0362279B1、WO95/17210を参照されたい)を含むサポニンが提供される。
【0013】
本明細書に記載の本開示の一実施形態に従うと、サポニンは、ステロールに複合体化されており、ステロールは、コレステロールである。
【0014】
本開示のリポソーム製剤中で使用される任意のLPSは、当該技術分野で既知かつ利用可能であるTLR4アゴニストから選択することができる。特定の具体的な実施形態では、TLR4アゴニストは、GLA、MPL、または3D-MPLから選択される。
【0015】
本明細書に記載の本開示の一態様に従うと、以下の構造を有するGLA化合物が提供され、
【化1】
式中、R、R、R、およびRは、C11-C20アルキルであり、RおよびRは、C-C20アルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRは、C11-14アルキルであり、RおよびRは、C12-15アルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRは、C11アルキルであり、RおよびRは、C13アルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRは、C11アルキルであり、RおよびRは、Cアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRは、C10アルキルであり、RおよびRは、Cアルキルである。
【0016】
いくつかの実施形態では、GLAは、以下の構造を有し、本明細書ではSLAと称される。
【化2】
【0017】
いくつかの実施形態では、GLAは、以下の構造を有する(実施例ではGLA*と称される)。
【化3】
【0018】
本明細書に記載の本開示の特定の実施形態では、感染性疾患、がん、または自己免疫疾患に関連する抗原が提供される。
【0019】
別の態様では、本開示は、感染性疾患に関連する少なくとも1つの感染性病原体に由来するか、またはそれと免疫学的に交差反応性である抗原に対する免疫応答を刺激および増強するための方法であって、免疫応答の刺激および増強を必要とする哺乳動物に本開示の組成物を投与することを含む、方法を提供する。特定の実施形態では、本開示は、がんに関連する少なくとも1つのエピトープ、生体分子、細胞、または組織に対する免疫応答を誘発および増強するための方法を提供する。特定の実施形態では、本開示は、自己免疫疾患に関連する少なくとも1つのエピトープ、生体分子、細胞、または組織に対する免疫応答を刺激および増強するための方法を提供する。特定の実施形態では、本開示は、感染性疾患に関連する少なくとも1つのエピトープ、生体分子、細胞、または組織に対する免疫応答を刺激および増強するための方法を提供する。
【0020】
本発明のサポニン含有リポソームの製造方法もまた提供される。
【0021】
本明細書に記載の様々な実施形態の特性の1つ、いくつか、または全てを組み合わせて、本開示の他の実施形態を形成することができることを理解されたい。本開示のこれらの態様および他の態様は、以下の発明を実施するための形態および添付の図面を参照すれば明らかになるだろう。本明細書に開示される全ての参考文献の全体が、あたかもその各々が個々に組み込まれるかのように、これにより参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の例示的な製剤の例示的な製造およびスケールアッププロセスの流れを示す。
図2】経時的なモルモットの生存を描写する。マンテル・コックス検定を実行して、有意性を示すp,0.05での有意性を決定した。線に沿った記号は、単に線を区別するために使用され、個々の動物を示すものではない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は一般に、サポニンおよび任意でリポ多糖(LPS)を含むリポソーム製剤、ならびに薬学的組成物およびワクチン組成物中でそれを使用するための関連する方法を対象とする。特定の態様では、リポソーム製剤は、ステロールに複合体化されたサポニン、および任意でLPSを含み得る。本開示の薬学的組成物およびワクチン組成物は、例えば、QS21、および任意でGLAを含有するリポソーム製剤を含む。別の例では、本開示の薬学的組成物およびワクチン組成物は、ステロールに複合体化されたQS21、および任意でGLAを含有するリポソーム製剤を含み得る。特定の好ましい実施形態では、サポニンは、コレステロールに複合体化している。
【0024】
リポソーム製剤を含有する薬学的組成物およびワクチン組成物は、任意で抗原をさらに含み、抗原は、感染性疾患、がん、または自己免疫疾患に関連している。本開示はまた、感染性疾患、がん、または自己免疫疾患を有する対象における免疫応答を誘発または増強するための薬学的組成物またはワクチン組成物としての、リポソーム製剤の使用も企図する。
【0025】
Quillaja saponaria Molina樹皮の世界的な利用可能性は、ますます限定的になっており、これは、この天然資源が、各用量中に高濃度のサポニンを用いるワクチン組成物の大規模生産には十分でない可能性があることを示唆している(Ragupathi et al.,Expert Rev.Vaccines 2011;10(4):463-470)。さらに、天然サポニンの調達に関連する高価な費用は、その強力なアジュバント活性にも関わらず、その広範な使用における限定因子である。対象的に、本明細書で提供されるリポソーム製剤、薬学的組成物、およびワクチン組成物は、当該技術分野で既知である以前のサポニン含有製剤と比較して、1用量当たりで低濃度範囲内のサポニンを有利に使用する。したがって、本開示の組成物は、ロット間の一貫性を呈し、かつ工業規模で効率的に製造することができる、高純度で既知組成の構成成分を有利に含有する。
【0026】
I.定義
以下の用語は、別段示されない限り、以下の意味を有する。いかなる定義されていない用語も、それらの当該技術分野で認識される意味を有する。
【0027】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その」は、別段文脈が明確に指示しない限り、複数の参照対象を含む。
【0028】
本明細書に記載の本開示の態様および実施形態は、態様および実施形態「を含む」、「からなる」、および「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0029】
本記述では、「約」および「から本質的になる」は、別段示されない限り、示される範囲、値、または構造の±20%を意味する。
【0030】
選択肢(例えば、「または」)の使用は、選択肢の一方、両方、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味することが理解されるべきである。
【0031】
本明細書で使用される場合、「を含む(include)」、「を有する」、および「を含む(comprise)」という用語は、同義に使用され、これらの用語およびそれらの変形は、非限定的なものと解釈されるべきであることが意図される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「巨大分子」という用語は、生物起源または合成起源のペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチド(これらに限定されない)によって例証される大きな分子を指す。
【0033】
「アルキル」という用語は、示される数の炭素原子を含有する、直鎖または分岐鎖、非環状または環状、不飽和または飽和の脂肪族炭化水素を意味する。不飽和アルキルは、隣接する炭素原子との間に少なくとも1つの二重結合または三重結合を含有する。
【0034】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書では任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために互換的に使用される。ポリマーは、直鎖状または分岐状であってもよく、それは、修飾ヌクレオチドまたはアミノ酸を含んでもよく、それは、非ヌクレオチドまたは非アミノ酸によって中断されていてもよい。この用語はまた、天然に、または介入(例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾(標識化構成成分との共役など))によって修飾されているヌクレオチドまたはアミノ酸ポリマーも包含する。この定義には、例えば、ヌクレオチドまたは(例えば、非天然アミノ酸などを含む)アミノ酸の1つ以上の類似体、および当該技術分野で既知の他の修飾を含有する、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドもまた含まれる。
【0035】
「単離された」という用語は、分子がその天然の環境から除去されていることを意味する。
【0036】
「精製された」は、分子が、それがその天然の環境に存在するよりも、ならびに/または実験室条件下で最初に合成および/もしくは増幅されたときよりも純粋な形態で存在するように、その純度が増加していることを意味する。純度は、相対的な用語であり、必ずしも絶対的な純度を意味するものではない。
【0037】
本明細書で互換的に使用される場合、「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、DNAおよびRNAを含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指す。ヌクレオチドは、例えば、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらの類似体、あるいはDNAもしくはRNAポリメラーゼによって、または合成反応によってポリマーに組み込まれ得る、任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組み立て前に付与されても、その後に付与されてもよい。
【0038】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」は一般に、一般に約200ヌクレオチド長であるが必ずしもそうでなくてもよい、短鎖、一般に一本鎖で、一般に合成のポリヌクレオチドを指す。「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は、相互排他的ではない。ポリヌクレオチドについての上記の記述は、オリゴヌクレオチドに対して等しくかつ完全に適用可能である。
【0039】
「個体」または「対象」は、任意の哺乳動物である。哺乳動物には、ヒト、霊長類、家畜、競技用動物、ペット(ネコ、イヌ、ウマなど)、およびげっ歯類が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
本開示の実施には、別段示されない限り、当該技術分野の範囲内である分子生物学、組み換えDNA、生化学、および化学の従来の技術が用いられるだろう。そのような技術は、文献において完全に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press:(1989)、DNA Cloning,Volumes I and II(D.N.Glover ed.,1985)、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait ed.,1984)、Mullisらの米国特許第4,683,195号、Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins eds.1984)、B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984)、専門書、Methods In Enzymology(Academic Press, Inc.,N.Y.)、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989)を参照されたい。
【0041】
II.リポソーム製剤
本開示は、リポソーム製剤を提供する。リポソーム製剤は、サポニン、および任意でLPSを含む。加えて、リポソーム製剤は、任意で少なくとも1つのステロールおよび少なくとも1つのリン脂質を含み得る。
【0042】
A.アジュバント
本明細書で考察されるように、本開示のリポソーム製剤は、サポニン、および任意でLPSを含む。サポニンおよびLPSは一般に、アジュバント活性を持つことが既知である。
【0043】
サポニン
サポニンは、例えば、米国特許第6,544,518号、Lacaille-Dubois,M and Wagner H.(1996 Phytomedicine2:363-386)、米国特許第5,057,540号、Kensil,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst,1996,12(1-2):1-55、およびEP0362279B1に教示されている。Quil A(サポニン)の断片を含む、免疫刺激複合体(ISCOMS)と呼ばれる粒子性構造は、溶血性であり、ワクチン組成物の製造に使用されている(Morein,B.のEP0109942B1)。これらの構造は、アジュバント活性を有することが報告されている(EP0109942B1、WO96/11711)。溶血性サポニンQS21およびQS17(Quil AのHPLC精製断片)は、強力な全身アジュバントとして記載されており、それらの生成方法は、米国特許第5,057,540号およびEP0362279B1に開示されている。これらの参考文献には、全身ワクチン組成物のための強力なアジュバントとして作用するQS7(Quil-Aの非溶血性断片)の使用もまた記載されている。QS21の使用については、Kensilら(1991.J.Immunology146:431-437)にもさらに記載されている。QS21とポリソルベートまたはシクロデキストリンとの組み合わせもまた、既知である(WO99/10008)。QS21およびQS7のQuilAの断片を含む粒子性アジュバント系については、WO96/33739およびWO96/11711に記載されている。全身ワクチン接種研究で使用されている他のサポニンには、GypsophilaおよびSaponariaなどの他の植物種に由来するものが含まれる(Bomford et al.,Vaccine,10(9):572-577,1992)。
【0044】
本明細書で提供されるリポソーム製剤の一実施形態では、サポニンは、Quillaja saponaria Molinaの樹皮に由来する免疫学的に活性なサポニン断片である。そのような一実施形態では、サポニン断片は、QS21である。
【0045】
ますます限定的なQuillaja saponaria Molina樹皮の世界的な供給、およびバッチ間の一貫性を有する高度に精製された免疫学的に活性なサポニン断片の達成に関連する困難のために、合成QS21(SQS21)、QS21-Api、およびQS21-Xylなどの合成サポニンの化学生成が、記載されている(Ragupathi et al.Expert Rev Vaccines.2011 April;10(4):463-470)。合成QS21(SQS21)および天然由来のQS21は、類似したアジュバント活性を持つことが示されている。
【0046】
本明細書で提供されるリポソーム製剤の特定の実施形態では、サポニンは、合成である。そのような一実施形態では、合成サポニンは、合成QS21(SQS21)である。
【0047】
エスチンは、本明細書に開示されるリポソーム製剤の実施形態で使用することができる、サポニンに関連する別の化合物である。エスチンは、Merck指標(12th Ed.、エントリ3737)において、セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum)の木の種子内に生じるサポニンの混合物として記載されている。その単離は、クロマトグラフィーおよび精製(Fiedler,Arzneimittel-Forsch.4,213(1953))によって、ならびにイオン交換樹脂(Erbringらの米国特許第3,238,190)によって記載されている。エスチン(エスシンとしても知られる)の断片は、精製されており、生物学的に活性であることが示されている(Yoshikawa M,et al.(Chem Pharm Bull(Tokyo)1996 August;44(8):1454-1464))。同様にMerck指標(12th Ed.、エントリ3204)にサポニンとして記載されているジギトニンは、Digitalis purpureaの種子に由来し、Gisvold et al.,J.Am.Pharm.Assoc.,1934,23,664、およびRubenstroth-Bauer,Physiol.Chem.,1955,301,621によって記載されている手順に従って精製される。
【0048】
特定の例示的な実施形態では、サポニンは、QS21およびQS7(Aquila Biopharmaceuticals Inc.、Framingham,Mass.)、エスチン、ジギトニン、またはGypsophilaサポニンもしくはChenopodium quinoaサポニンを含む、Quil-Aまたはその誘導体を含む。他の例示的な製剤は、本開示のリポソーム製剤中に2つ以上のサポニン、例えば、以下のQS21、QS7、Quil-A、エスチン、またはジギトニンを含む群の少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0049】
サポニン、および任意でLPSを含むリポソーム製剤は、ヒト対象に投与するための組成物であることが、本明細書で企図される。特定の実施形態では、サポニンの濃度は、1用量当たり約0.5ug~1用量当たり約10ug、または1用量当たり約1μg~1用量当たり約10μgである。いくつかの好ましい実施形態では、サポニンの濃度は、1用量当たり約0.5μg~1用量当たり約8μg、または1用量当たり約1μg~1用量当たり約8μgである。ある構成成分の濃度が、1用量当たり約0.5ug~1用量当たり約10ugである場合、対象に送達される量は、1用量当たり約0.5ug~約10ugであることが、当業者によって理解されるだろう。製剤自体は、対象への送達前に希釈され得る。
【0050】
本明細書で提供される組成物の特定の例示的な実施形態では、サポニンの濃度は、1用量当たり約1μg、1用量当たり約2μg、1用量当たり約3μg、1用量当たり約4μg、1用量当たり約5μg、1用量当たり約6μg、1用量当たり約7μg、1用量当たり約8μg、1用量当たり約9μg、または1用量当たり約10μgである。いくつかの実施形態では、サポニンの濃度は、1用量当たり約1μg~1用量当たり約2μg、1用量当たり約2μg~1用量当たり約3μg、1用量当たり約3μg~1用量当たり約4μg、1用量当たり約4μg~1用量当たり約5μg、1用量当たり約5μg~1用量当たり約6μg、1用量当たり約6μg~1用量当たり約7μg、1用量当たり約7μg~1用量当たり約8μg、1用量当たり約8μg~1用量当たり約9μg、または1用量当たり約9μg~1用量当たり約10μgである。いくつかの態様では、サポニンは、1用量当たり約1μg未満、例えば、1用量当たり約0.5ug~1用量当たり約1ugの濃度である。
【0051】
LPS
本発明の例示的な実施形態では、LPSは、免疫刺激剤である。換言すると、LPSは、単独で、または病状に関連する抗原との併用のいずれかで、対象における免疫応答を誘発することができる。特定の例示的な実施形態では、LPSは、TLR4アゴニストである。本明細書で使用される場合、「TLR4アゴニスト」は、TLR4とのその相互作用を通して、その生物学的活性に影響を与えるアゴニストを指す。特定の好ましい実施形態では、本開示の製剤中で使用されるTLR4アゴニストは、米国特許公開第US2007/021017号、同第US2009/045033号、および同第US2010/037466号に記載のものなどのグルコピラノシル脂質アジュバント(GLA)であり、それらの内容の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
上述のように、GLAは、化学的に合成されるために、それは、実質的に均一な形態(これは、GLA分子に関して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、およびさらにより好ましくは少なくとも96%、97%、98%、または99%純粋なGLA調製物を指す)で調製することができる。
【0053】
例えば、特定の実施形態では、TLR4アゴニストは、式(I)の以下の構造を有する合成GLA、
【化4】
またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
、L、L、L、L、およびLは、同じであるか、または異なり、独立して、-O-、-NH-、または-(CH)-であり、
、L、L、およびL10は、同じであるか、または異なり、独立して、不在であるか、または-C(=O)-であり、
は、酸官能基であり、
およびYは、同じであるか、または異なり、独立して、-OH、-SH、または酸官能基であり、
は、-OHまたは-SHであり、
、R、R、およびRは、同じであるか、または異なり、独立して、C8-13アルキルであり、
およびRは、同じであるか、または異なり、独立して、C6-11アルキルである。
【0054】
合成GLA構造のいくつかの実施形態では、R、R、R、およびRは、C10アルキルであり、RおよびRは、Cアルキルである。特定の実施形態では、R、R、R、およびRは、C11アルキルであり、RおよびRは、Cアルキルである。
【0055】
例えば、特定の実施形態では、TLR4アゴニストは、式(II)の以下の構造を有する合成GLA、またはその薬学的に許容される塩である。
【化5】
【0056】
上記のGLA構造の特定の実施形態では、R、R、R、およびRは、C11-C20アルキルであり、RおよびRは、C12-C20アルキルである。別の特定の実施形態では、GLAは、上記の式を有し、式中、R、R、R、およびRは、C11アルキルであり、RおよびRは、C13アルキルである。別の特定の実施形態では、GLAは、上記の式を有し、式中、R、R、R、およびRは、C10アルキルであり、RおよびRは、Cアルキルである。
【0057】
別の特定の実施形態では、GLAは、上記の式を有し、式中、R、R、R、およびRは、C11-C20アルキルであり、RおよびRは、C-C20アルキルである。特定の実施形態では、R、R、R、およびRは、C11アルキルであり、RおよびRは、Cアルキルである。
【0058】
特定の実施形態では、TLR4アゴニストは、式(III)の以下の構造を有する合成GLA、またはその薬学的に許容される塩である。
【化6】
【0059】
上記のGLA構造の特定の実施形態では、R、R、R、およびRは、C11-C20アルキルであり、RおよびRは、C-C20アルキルである。特定の実施形態では、R、R、R、およびRは、C11アルキルであり、RおよびRは、Cアルキルである。
【0060】
特定の実施形態では、TLR4アゴニストは、式(IV)の以下の構造を有する合成GLAである。
【化7】
【0061】
上記のGLA構造の特定の実施形態では、R、R、R、およびRは、C11-C20アルキルであり、RおよびRは、C-C20アルキルである。特定の実施形態では、R、R、R、およびRは、C11アルキルであり、RおよびRは、Cアルキルである。
【0062】
特定の実施形態では、TLR4アゴニストは、式(V)の以下の構造を有する合成GLA、またはその薬学的に許容される塩である。
【化8】
【0063】
上記のGLA構造の特定の実施形態では、R、R、R、およびRは、C11-C20アルキルであり、RおよびRは、C-C20アルキルである。特定の実施形態では、R、R、R、およびRは、C11アルキルであり、RおよびRは、Cアルキルである。
【0064】
特定の実施形態では、TLR4アゴニストは、以下の構造を有する合成GLA、またはその薬学的に許容される塩である。
【化9】
【0065】
特定の実施形態では、TLR4アゴニストは、以下の造を有する(本明細書ではSLAと称される)合成GLA、またはその薬学的に許容される塩である。
【化10】
【0066】
特定の実施形態では、TLR4アゴニストは、以下の構造を有する合成GLA、またはその薬学的に許容される塩である。
【化11】
【0067】
本明細書で提供されるリポソーム製剤の例示的な実施形態では、LPSは、式(II)に従う構造を有するGLAであり、式中、R、R、R、およびRは、C11アルキルであり、RおよびRは、C13アルキル、またはその薬学的に許容される塩である。本明細書で提供されるリポソーム製剤の例示的な実施形態では、LPSは、式(II)に従う構造を有するGLAであり、式中、R、R、R、およびRは、C10アルキルであり、RおよびRは、C8アルキル、またはその薬学的に許容される塩である。本明細書で提供されるリポソーム製剤のさらに別の例示的な実施形態では、LPSは、MPLである。
【0068】
本明細書に記載の組成物の特定の実施形態では、LPSは、GLAの修飾によって設計される合成第二世代脂質アジュバント(SLA)である。別の実施形態では、弱毒脂質A誘導体(ALD)が、本明細書に記載の組成物に組み込まれる。ALDは、分子がより少ないかまたは異なる脂質Aの有害作用を提示するように改変または構築されている、脂質A様分子である。これらの有害作用には、発熱性、局所シュワルツマン反応性、およびニワトリ胚50%致死用量アッセイ(CELD50)で評価される毒性が含まれる。本開示に従う有用なALDには、モノホスホリル脂質A(MLAまたはMPL)および3-脱アシル化モノホスホリル脂質A(3D-MLAまたは3D-MPL)が含まれる。MLA(MPL)および3D-MLA(3D-MPL)は、既知であり、本明細書で詳細に記載する必要はない。例えば、参照により全ての目的のために本明細書に組み込まれる、米国特許第4,436727号および同第4,912,094号を参照されたい。
【0069】
上記のTLR4アゴニスト化合物中では、全体的な変化は、分子中の官能基に従って決定することができる。例えば、リン酸基は、リン酸基のイオン化状態に応じて、負電荷であっても中性であってもよい。
【0070】
GLA化合物の合成
上述のとおり、本開示は、GLA化合物を提供する。本開示の代表的なGLA化合物は、既知の有機合成技術によって調製することができ、例えば、それらの全体が、参照により全ての目的のために本明細書に組み込まれる、米国特許第8,722,064号および同第8273,361号を参照されたい。
【0071】
本開示の化合物は一般に、遊離塩基または遊離酸として利用することができる。あるいは、本開示の化合物は、酸付加塩または塩基付加塩の形態で使用することができる。本開示の遊離アミノ化合物の酸付加塩は、当該技術分野で周知の方法によって調製することができ、有機酸および無機酸から形成することができる。好適な有機酸には、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、桂皮酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、グリコール酸、グルタミン酸、およびベンゼンスルホン酸が含まれる。好適な無機酸には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、および硝酸が含まれる。
【0072】
同様に、本開示の酸化合物の塩基付加塩は、当該技術分野で周知の方法によって調製することができ、有機酸および無機酸から形成することができる。好適な有機塩基には、トリエチルアミンおよびピリジンが含まれるが、これらに限定されない。好適な無機塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、およびアンモニアが含まれるが、これらに限定されない。したがって、式(I)の「薬学的に許容される塩」は、ありとあらゆる許容される塩形態を包含することが意図される。
【0073】
加えて、プロドラッグもまた、本開示の文脈に含まれる。プロドラッグは、そのようなプロドラッグを患者に投与したときに、インビボで式(I)の化合物を放出する、任意の共有結合した担体である。プロドラッグは一般に、通例的な操作によってまたはインビボでのいずれかで修飾が切断され、親化合物がもたらされるような方法で、官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグには、例えば、ヒドロキシ基、アミン基、またはスルフヒドリル基が、患者に投与したときに切断されて、ヒドロキシ基、アミン基、またはスルフヒドリル基を形成する、任意の基に結合している、本開示の化合物が含まれる。したがって、プロドラッグの代表的な例には、式(I)の化合物のアルコールおよびアミン官能基の酢酸、ギ酸、および安息香酸誘導体が含まれる(が、これらに限定されない)。さらに、カルボン酸(COOH)の場合、メチルエステルおよびエチルエステルなどのエステルを用いることができる。
【0074】
立体異性体に関して、式(I)の化合物は、キラル中心を有してもよく、ラセミ体、ラセミ混合物として、および個々のエナンチオマーまたはジアステレオマーとして生じてもよい。それらの混合物を含む、全てのそのような異性体形態が、本開示に含まれる。さらに、結晶形態の式(I)の化合物のいくつかは、多形として存在してもよく、これは、本開示に含まれる。加えて、式(I)の化合物のいくつかはまた、水または他の有機溶媒と溶媒和化合物を形成することもできる。そのような溶媒和化合物は、同様に本開示の範囲内に含まれる。
【0075】
サポニンおよびLPSを含むリポソーム製剤は、ヒト対象に投与するための組成物であることが、本明細書で企図される。特定の実施形態では、LPSの濃度は、1用量当たり約1μg、1用量当たり約2μg、または1用量当たり約2.5μg~1用量当たり約25μgである。いくつかの好ましい実施形態では、LPSの濃度は、1用量当たり約3μg~1用量当たり約20μgである。
【0076】
本明細書で提供される組成物の特定の例示的な実施形態では、LPSの濃度は、1用量当たり約2.5μg、1用量当たり約3μg、1用量当たり約3.5μ、1用量当たり約4μg、1用量当たり約4.5μg、1用量当たり約5μg、1用量当たり約5.5μg、1用量当たり約6μg、1用量当たり約6.5μg、1用量当たり約7μg、1用量当たり約7.5μg、1用量当たり約8μg、1用量当たり約8.5μg、1用量当たり約9μg、1用量当たり約9.5μg、1用量当たり約10μg、1用量当たり約10.5μg、1用量当たり約11μg、1用量当たり約11.5μg、1用量当たり約12μg、1用量当たり約12.5μg、1用量当たり約13μg、1用量当たり約13.5μg、1用量当たり約14μg、1用量当たり約14.5μg、1用量当たり約15μg、1用量当たり約15.5μg、1用量当たり約16μg、1用量当たり約16.5μg、1用量当たり約17μg、1用量当たり約17.5μg、1用量当たり約18μg、1用量当たり約18.5μg、1用量当たり約19μg、1用量当たり約19.5μg、1用量当たり約20μg、1用量当たり約20.5μg、1用量当たり約21μg、1用量当たり約21.5μg、1用量当たり約22μg、1用量当たり約22.5μg、1用量当たり約23μg、1用量当たり約23.5μg、1用量当たり約24μg、1用量当たり約24.5μg、または1用量当たり約25μgである。
【0077】
特定の実施形態では、LPSの濃度は、1用量当たり約2.5μg~1用量当たり約5μg、1用量当たり約5μg~1用量当たり約7.5μg、1用量当たり約7.5μg~1用量当たり約10μg、1用量当たり約10μg~1用量当たり約12.5μg、1用量当たり約12.5μg~1用量当たり約15μg、1用量当たり約15μg~1用量当たり約17.7μg、1用量当たり約17.5μg~1用量当たり約20μg、1用量当たり約20μg~1用量当たり約22.5μg、または1用量当たり約22.5μg~1用量当たり約25μgである。
【0078】
サポニン対LPSの比
本明細書に記載のリポソーム製剤の例示的な態様では、サポニン対LPSの比は、約1対2.5である。サポニン対LPSの比を有するいくつかの実施形態では、サポニンの濃度は、1用量当たり約1μgであり、LPSの濃度は、1用量当たり約2.5μgである。サポニン対LPSの比を有するいくつかの実施形態では、サポニンの濃度は、1用量当たり約2μgであり、LPSの濃度は、1用量当たり約5μgである。サポニン対LPSの比を有するいくつかの実施形態では、サポニンの濃度は、1用量当たり約3μgであり、LPSの濃度は、1用量当たり約7.5μgである。サポニン対LPSの比を有するいくつかの実施形態では、サポニンの濃度は、1用量当たり約4μgであり、LPSの濃度は、1用量当たり約10μgである。サポニン対LPSの比を有するいくつかの実施形態では、サポニンの濃度は、1用量当たり約約5μgであり、LPSの濃度は、1用量当たり約12.5μgである。サポニン対LPSの比を有するいくつかの実施形態では、サポニンの濃度は、1用量当たり約6μgであり、LPSの濃度は、1用量当たり約15μgである。サポニン対LPSの比を有するいくつかの実施形態では、サポニンの濃度は、1用量当たり約7μgであり、LPSの濃度は、1用量当たり約17.5μgである。サポニン対LPSの比を有するいくつかの実施形態では、サポニンの濃度は、1用量当たり約8μgであり、LPSの濃度は、1用量当たり約20μgである。サポニン対LPSの比を有するいくつかの実施形態では、サポニンの濃度は、1用量当たり約9μgであり、LPSの濃度は、1用量当たり約22.5μgである。サポニン対LPSの比を有するいくつかの実施形態では、サポニンの濃度は、1用量当たり約10μgであり、LPSの濃度は、1用量当たり約25μgである。
【0079】
B.ステロール
ステロールとともにそのクエンチ形態で提示されるサポニンは、ヒト対象におけるT細胞応答を促進する上で有効である。ステロールは、ステロイドアルコールであり、ステロイドに特徴的な4員環構造、および3炭素位にヒドロキシ(-OH)置換またはエステル(-OR)置換を有する任意の分子を指す。ステロールは、植物、動物、および微生物の膜内に天然に存在し、それぞれ植物ステロール、動物ステロール、および菌類ステロールと呼ばれる。ステロールは、他の環炭素の1つ以上でさらに置換されてもよく、また、環内に様々な二重結合を含有してもよい。ステロールの非限定的な例には、コレステロール、クロロギ酸コレステリル、スチグマステロール、シトステロール、エルゴステロール、ラノステロール、デスモステロール、またはカンペステロールが含まれ得る。ステロールは一般に、サポニンと会合して、安定した不溶性複合体を形成する。本明細書に記載の組成物の特定の実施形態では、リポソーム製剤は、サポニン、および任意でLPSを含み、サポニンは、ステロールに複合体化されている。例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、サポニン、および任意でLPSを含み、サポニンは、コレステロールに複合体化されている。
【0080】
ステロールに複合体化されたサポニンを含むリポソーム製剤の特定の実施形態では、サポニン対ステロールの比は、約1:110~1:200である。いくつかの実施形態では、サポニン対ステロールの比は、約1:110~1:150である。いくつかの好ましい実施形態では、サポニン対ステロールの比は、約1:120~1:150である。例示的な実施形態では、サポニン対ステロールの比は、約1:125である。典型的には、ステロールは、サポニンの溶血活性を低減するように作用する。いくつかの態様では、ステロールは、サポニンの溶血活性を50%、60%、70%、80%、90%だけ、またはさらには100%低減するように作用する。
【0081】
他の好ましい実施形態では、本開示はまた、ステロールに複合体化されたサポニン、およびLPSを含むリポソーム製剤も企図し、LPSの濃度は、1用量当たり約10μgまたは1用量当たり約5μgである。特定の実施形態では、サポニンは、ステロールに複合体化されており、サポニンの濃度は、1用量当たり約4μgまたは1用量当たり約2μgである。例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、ステロールに複合体化されたサポニン、およびLPSを含み、サポニンの濃度は、1用量当たり約4μgであり、LPSの濃度は、1用量当たり約10μgである。
【0082】
別の例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、ステロールに複合体化されたサポニン、およびLPSを含み、サポニンの濃度は、1用量当たり約2μgであり、LPSの濃度は、1用量当たり約5μgである。
【0083】
他の好ましい実施形態では、本開示はまた、ステロールに複合体化されたサポニン、およびLPSを含むリポソーム製剤も企図し、サポニンは、Quillaja saponaria Molinaの樹皮に由来する免疫学的に活性なサポニン断片である。好ましい実施形態では、活性サポニン断片は、QS21である。本明細書に記載の組成物の他の実施形態では、サポニンは、合成である。例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、コレステロールに複合体化されたQS21、およびLPSを含む。別の例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、コレステロールに複合体化された合成QS21(SQS21)、およびLPSを含む。
【0084】
C.リン脂質
リポソームは、サブユニットタンパク質ワクチン組成物およびアジュバントの送達に用いられている。リポソームは、所望の脂質濃度、電荷、サイズ、ならびに抗原およびアジュバントの分布または標的化を達成するようにリポソーム製剤を適合させる能力のために、魅力的な送達ビヒクルである。アニオン性、カチオン性、および中性リポソームを含む、多数のリポソームに基づく系が、評価されている。リポソーム製剤の脂質構成成分は、(リン脂質を含む)任意の脂質の少なくとも1つを構成して、安定したリポソーム構造を形成することができることが本明細書で企図される。
【0085】
本明細書で提供される組成物の特定の実施形態では、リポソーム製剤は、少なくとも1つのリン脂質を含む。いくつかの実施形態では、リン脂質は、アニオン性である。いくつかの実施形態では、リン脂質は、カチオン性である。他の実施形態では、リン脂質は、中性電荷を有する。
【0086】
表1は、本開示で使用するための例示的な脂質の非限定的な一覧を提供する。
表1:例示的な脂質
【表1】
【表2】
【0087】
本明細書に記載のリポソーム製剤の特定の例示的な実施形態では、脂質構成成分は、DLPC、DMPC、DPPC、DSPC、DOPC、POPC、DLPG、DMPG、DPPG、DSPG、DOPG、DSTAP、DPTAP、DSPE、DPPE、DMPE、DLPE、DLPS 1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン、DMPS 1,2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン、DPPS:1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン、DSPS 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン、DOPS 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン、POPS 1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン、DLPI 1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-ミオ-イノシトール)、DMPI 1,2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-ミオ-イノシトール)、DPPI 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-ミオ-イノシトール)、DSPI 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホイノシトール、DOPI 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-ミオ-イノシトール)、およびPOPI 1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホイノシトールからなる群から選択される少なくとも1つのリン脂質を含む。リン脂質は、塩形態(例えば、アンモニウムまたはナトリウム塩)であり得ることが、当業者によって理解されるだろう。
【0088】
D.リポソームの特徴
サイズ
本開示は、リポソーム製剤を提供する。本明細書で提供されるリポソームは、X線およびレーザー回折、動的光散乱(DLS)、CryoEM、またはMalvern Zetasizeを含むがこれらに限定されない、当該技術分野における既知の技術によって評価することができる。いくつかの実施形態では、リポソームのサイズは、Z平均直径を指す。
【0089】
本明細書で提供されるリポソームは、1マイクロメートル以下の平均直径(すなわち、数平均直径)を有する。リポソーム粒子の平均粒径(すなわち、数平均直径)は、約900nm以下、約800nm以下、約700nm以下、約600nm以下、約500nm以下、約400nm以下、300nm以下、または200nm以下、例えば、約50nm~約900nm、約50nm~約800nm、約50nm~約700nm、約50nm~約600nm、約50nm~約500nm、約50nm~約400nm、約50nm~約300nm、約50nm~約200nm、約50nm~約175nm、約50nm~約150nm、約50nm~約125nm、約50nm~約100nmであることが特に望ましい。
【0090】
本明細書に記載のリポソームのサイズは、典型的には、約80nmであるか、約85nmであるか、約90nmであるか、約95nmであるか、約100nmであるか、約105nmであるか、約110nmであるか、約115nmであるか、約120nmであるか、約125nmであるか、約130nmであるか、約135nmであるか、約140nmであるか、約145nmであるか、約150nmであるか、約155nmであるか、約160nmであるか、約165nmであるか、約170nmであるか、約175nmであるか、約180nmであるか、約185nmであるか、約190nmであるか、約195nmであるか、または約200nmである。リポソームは、粒子で構成されていることが、当業者によって理解されるだろう。平均粒径は、リポソームを構成する粒子の平均直径を指す。
【0091】
本開示の例示的なリポソーム製剤は、少なくとも0.45ミクロンのフィルターを通して濾過することができる。例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、0.20または0.22ミクロンのフィルターを通して濾過することができる。
【0092】
体積
本開示の特定の実施形態は、サポニンおよびLPSを含むリポソーム製剤を企図し、製剤は、ヒト用量での使用に好適な体積である。いくつかの実施形態では、製剤の体積は、約0.5ml~約1.5mlである。特定の実施形態では、製剤の体積は、約0.5ml、約0.6ml、約0.7ml、約0.8ml、約0.9ml、約1.0ml、約1.1ml、約1.2ml、約1.3ml、約1.4ml、または約1.5mlである。特定の実施形態では、製剤の体積は、約0.5ml~約0.75ml、約0.75ml~約1.0ml、約1.0ml~約1.25ml、または約1.25ml~約1.5mlである。
【0093】
安定性
本明細書で提供されるリポソーム製剤は、安定しており、使用の容易さ、製造性、輸送性、および保管を可能にする。リポソームサイズを含むがこれに限定されない、リポソーム製剤の生理化学的な特徴が、様々な温度で、および様々な条件下で経時的に維持される。
【0094】
時間の関数にわたる粒径の進化は、コロイド安定性の情報を提供する。例示的な安定したリポソーム製剤は、リポソームが、異なる温度(典型的には、摂氏37、25、または5度であるが、これらに限定されない)で、ある期間(例えば、30日間または7日間の期間)にわたって実質的に同じz平均直径サイズを保持するものである。実質的に同じZ平均直径サイズを保持することは、リポソームが、30日間の期間にわたって、その元のサイズの20%、15%、10%、5%以内に留まることを意味する。特に安定したリポソーム製剤は、その粒子が、摂氏25度またはさらには摂氏37度で、30日間の期間にわたって実質的に同じZ平均直径サイズを保持するものである。
【0095】
リポソーム製剤の安定性は、当業者が精通している技術によって測定することができる。いくつかの実施形態では、安定性は、目視観察される。目視検査には、微粒子、綿状性、または凝集体の検査が含まれ得る。典型的には、コロイド安定性は、リポソームの粒径によって(Z平均直径を測定することによってなど)決定され、任意で、経時的な、または様々な温度での、または特定の条件下での、サイズの変化として表される。いくつかの実施形態では、安定性は、粒径の増加を評価することによって決定される。いくつかの実施形態では、安定性は、例えば、動的光散乱(DLS)技術の使用による、多分散指数(PDI)の測定によって決定される。他の実施形態では、安定性は、DLS技術の使用による、ゼータ電位の測定によって決定される。
【0096】
いくつかの実施形態では、リポソームのZ平均直径は、アッセイされる期間にわたって、50%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、12%未満、10%未満、7%未満、5%未満、3%未満、1%未満増加する。
【0097】
いくつかの実施形態では、リポソームの多分散指数は、約0.5で、約0.4で、約0.3で、約0.2で、約0.1で、または約0.1~約0.5で、約0.1~約0.4で、約0.1~約0.3で、もしくは約0.1~約0.2で維持される。
【0098】
III.例示的な製剤
一態様では、リポソーム製剤は、サポニン、および任意でLPSを含有する。別の態様では、リポソーム製剤は、ステロールに複合体化されたサポニン、および任意でLPSを含有する。別の態様では、リポソーム製剤は、サポニンおよびLPSを含有し、サポニンは、ステロールに複合体化されている。
【0099】
特定の実施形態では、サポニンは、1用量当たり約1μg~1用量当たり約8μgの濃度であり、LPSは、1用量当たり約3μg~1用量当たり約20μgの濃度である。
【0100】
例示的な一実施形態では、リポソーム製剤は、サポニン、および任意でLPSを含み、サポニンは、約1:110対1:200の比でステロールに複合体化されている。別の例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、サポニン、および任意でLPSを含み、サポニンは、約1:125の比でステロールに複合体化されている。
【0101】
特定の実施形態では、サポニンは、ステロールに複合体化されており、サポニンは、1用量当たり約4μgの濃度である。特定の実施形態では、サポニンは、ステロールに複合体化されており、サポニンは、1用量当たり約2μgの濃度である。
【0102】
特定の実施形態では、サポニンは、ステロールに複合体化されており、LPSは、存在し、1用量当たり約10μgの濃度である。特定の実施形態では、サポニンは、ステロールに複合体化されており、LPSは、1用量当たり約5μgの濃度で存在する。
【0103】
例示的な実施形態では、サポニンは、ステロールに複合体化されており、サポニンは、1用量当たり4μgの濃度であり、LPSは、存在し、1用量当たり約10μgの濃度である。別の例示的な実施形態では、サポニンは、ステロールに複合体化されており、サポニンは、1用量当たり2μgの濃度であり、LPSは、存在し、1用量当たり約5μgの濃度である。
【0104】
本明細書に記載のリポソーム製剤の好ましい実施形態では、サポニンは、Quillaja saponaria Molinaの樹皮に由来する免疫学的に活性なサポニン断片である。例示的な実施形態では、サポニン断片は、QS21である。
【0105】
特定の実施形態では、サポニンは、合成である。特定の実施形態では、リポソーム製剤は、ステロールに複合体化された合成QS21(QS21)、および任意でLPSを含む。
【0106】
本明細書で提供される製剤の例示的な実施形態では、サポニンは、コレステロールに複合体化されている。
【0107】
本明細書で提供される製剤の例示的な実施形態では、製剤は、DLPC、DMPC、DPPC、DSPC、DOPC、POPC、DLPG、DMPG、DPPG、DSPG、DOPG、DSTAP、DPTAP、DSPE、DPPE、DMPE、およびDLPEからなる群から選択されるリン脂質をさらに含む。
【0108】
例示的な実施形態では、LPSは、式(II)に従う構造を有するGLAであり、式中、R、R、R、およびRは、C11アルキルであり、RおよびRは、C13アルキル、またはその薬学的に許容される塩である。別の例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、サポニンおよびLPSを含み、LPSは、式(II)に従う構造を有するGLAであり、式中、R、R、R、およびRは、C10アルキルであり、RおよびRは、Cアルキル、またはその薬学的に許容される塩である。
【0109】
さらに別の例示的な実施形態では、LPSは、MPLである。
【0110】
特定の実施形態では、リポソーム製剤は、ヒト用量での使用に好適な体積である。例示的な実施形態では、リポソーム製剤の体積は、約0.5ml~約1.5mlである。
【0111】
特定の例示的な実施形態では、ヒト対象に投与するためのリポソーム製剤は、サポニンおよびLPSを含み、サポニンは、1用量当たり約1μg~1用量当たり約10μgの濃度であり、LPSは、1用量当たり約3μg~1用量当たり約25μgの濃度であり、サポニンは、ステロールに複合体化されており、サポニン対ステロールの比は、約1:110~約1:200である。特定の実施形態では、サポニンは、1用量当たり約1μg~1用量当たり約8μgの濃度であり、LPSは、1用量当たり約3μg~1用量当たり約20μgの濃度である。
【0112】
例示的な実施形態では、ヒト対象に投与するためのリポソーム製剤は、サポニンおよびLPSを含み、サポニンは、1用量当たり約1μg~1用量当たり約10μgの濃度であり、LPSは、1用量当たり約3μg~1用量当たり約25μgの濃度であり、サポニンは、ステロールに複合体化されており、サポニン対ステロールの比は、約1:125である。特定の実施形態では、サポニン対LPSの比は、1:2.5である。
【0113】
例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、サポニンおよびLPSを含み、サポニンは、ステロールに複合体化されており、サポニンは、1用量当たり4μgの濃度であり、LPSは、1用量当たり約10μgの濃度であり、サポニンは、ステロールに複合体化されており、サポニン対ステロールの比は、約1:125である。
【0114】
別の例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、サポニンおよびLPSを含み、サポニンは、ステロールに複合体化されており、サポニンは、1用量当たり2μgの濃度であり、LPSは、1用量当たり約5μgの濃度であり、サポニンは、ステロールに複合体化されており、サポニン対ステロールの比は、約1:125である。
【0115】
特定の例示的な実施形態では、ヒト対象に投与するためのリポソーム製剤は、QS21およびLPSを含有し、QS21は、1用量当たり約1μg~1用量当たり約10μgの濃度であり、LPSは、1用量当たり約3μg~1用量当たり約25μgの濃度であり、QS21は、ステロールに複合体化されており、サポニン対ステロールの比は、約1:110~約1:200である。
【0116】
特定の例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、約1:110~約1:200の比でコレステロールに複合体化されたQS21、およびLPSを含有する。特定の実施形態では、約1:110~約1:200の比でコレステロールに複合体化されたQS21、およびLPSを含むリポソーム製剤は、DLPC、DMPC、DPPC、DSPC、DOPC、POPC、DLPG、DMPG、DPPG、DSPG、DOPG、DSTAP、DPTAP、DSPE、DPPE、DMPE、およびDLPEからなる群から選択されるリン脂質をさらに含む。
【0117】
特定の例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、約1:110~約1:200の比でステロールに複合体化されたQS21、および式(II)に従うGLAを含み、式中、R、R、R、およびRは、C11アルキルであり、RおよびRは、C13アルキル、またはその薬学的に許容される塩である。
【0118】
他の例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、約1:110~約1:200の比でコレステロールに複合体化されたQS21、および式(II)に従うGLAを含み、式中、R、R、R、およびRは、C10アルキルであり、RおよびRは、Cアルキル、またはその薬学的に許容される塩である。
【0119】
別の例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、約1:110~約1:200の比でコレステロールに複合体化されたQS21、およびMPLを含む。
【0120】
別の例示的な実施形態では、リポソーム製剤は、サポニン、および任意でリポ多糖を含み、サポニンは、ステロールに複合体化されており、サポニン対ステロールの重量比は、約1:110~約1:200、1:110~約1:150、1:120~約1:150、または約1:125である。リポソーム製剤は、例えば、リン脂質を含んでもよく、リン脂質対ステロールの重量比は、例えば、1:1~約10:1であってもよい。いくつかの態様では、リポソーム製剤は、リン脂質を含み、リン脂質対ステロールの重量比は、約4:1である。サポニンは、例えば、1用量当たり約0.5μg~1用量当たり約10μgの濃度、1用量当たり約1μg~1用量当たり約10μgの濃度、1用量当たり約1μg~1用量当たり約8μgの濃度であり得る。リポ多糖は、任意で存在し、存在する場合、それは、例えば、1用量当たり1.25μg~1用量当たり約25μgの濃度、1用量当たり約3μg~1用量当たり約25μgの濃度であり得るが、異なる投薬量レベルが企図される。サポニンは、例えば、1用量当たり約1μg~1用量当たり約8μgの濃度であってもよく、リポ多糖は、1用量当たり約3μg~1用量当たり約20μgの濃度であってもよい。リポ多糖対サポニンの比は、例えば、約2.5対1であり得る。サポニンは、例えば、1用量当たり約4μgの濃度であってもよく、リポ多糖は、例えば、1用量当たり約10μgの濃度であってもよい。サポニンは、例えば、1用量当たり約2μgの濃度であってもよく、リポ多糖は、例えば、1用量当たり約5μgの濃度であってもよい。製剤は、例えば、約8ug/mlの濃度のサポニン、約20ug/mlの濃度のリポ多糖、約4mg/mlの濃度のリン脂質、および約1mg/mlの濃度のステロールを含んでもよい。製剤は、希釈形態(例えば、2~10倍希釈、またはそれ以上)であっても、濃縮形態(例えば、2~10倍濃縮、またはそれ以上)であってもよい。これらの実施形態のいずれにおいても、サポニンは、Quillaja saponaria Molinaの樹皮に由来する免疫学的に活性なサポニン断片であり得る。サポニンは、例えば、QS21であり得る。これらの実施形態のいずれにおいても、ステロールは、コレステロールであり得るが、他のステロールが企図される。これらの実施形態のいずれにおいても、リポソームは、リン脂質で構成され得る。例えば、DLPC、DMPC、DPPC、DSPC、DOPC、POPC、DLPG、DMPG、DPPG、DSPG、DOPG、DSTAP、DPTAP、DSPE、DPPE、DMPE、DLPE、DLPS、DMPS、DPPS、DSPS、DOPS、POPS、DLPI、DMPI、DPPI、DSPI、DOPI、またはPOPIを含む、任意の好適なリン脂質を使用することができる。本明細書に記載のリポ多糖のいずれも、ならびに当該技術分野で既知の他のものも、使用することができる。投与の直前に、製剤は、ヒト用量での使用に好適な体積であるだろう。例示的な体積には、0.5ml~約1.5mlが含まれる。抗原は、製剤と混合され得る。本明細書に記載の抗原のいずれも、ならびに当該技術分野で既知の他の好適なものも、使用することができる。製剤を使用して、対象における免疫応答を誘発または増強することができる。対象は、例えば、がん、感染性疾患、または自己免疫疾患を含む、いくつかの疾患に罹患している。対象は、ヒトであり得る。1用量当たりで様々な量のサポニンおよびLPS(例えば、5ugのLPS(例えば、GLA)とともに2ugのサポニン、10ugのLPS(例えば、GLA)とともに4ugのサポニン)が、送達され得る。
【0121】
本明細書に記載のサポニン含有リポソーム製剤のいずれかの製造方法であって、サポニンを事前形成されたステロール含有リポソームと混合することを含む、方法もまた提供される。サポニンは、例えば、QS21であってもよく、いくつかの態様では、粗サポニン混合物Quil Aを精製して、サポニンが得られる。いくつかの態様では、サポニンは、リポソームとの混合前に緩衝液中に可溶化される。事前形成されたステロール含有リポソームは、リン脂質およびステロールを混合することと、高圧均質化を介して結果として得られるリポソームの粒径を低減することとによって調製することができる。
【0122】
IV.薬学的組成物およびワクチン組成物
特定の態様では、本明細書に記載のリポソーム製剤は、薬学的組成物またはワクチン組成物に組み込まれる。本明細書に記載のポリペプチド、抗原、ポリヌクレオチド、部分、変異体、融合ポリペプチドなどもまた、薬学的組成物またはワクチン組成物に組み込まれ得る。薬学的組成物は一般に、生理学的許容される担体と組み合わせて、リポソーム製剤を含む。免疫原性組成物とも称されるワクチン組成物は一般に、本明細書に記載のポリペプチド、抗原、およびポリペプチド、ポリヌクレオチド、部分、変異体、融合タンパク質などの1つ以上を含む。
【0123】
好ましい実施形態では、薬学的組成物は、本明細書で提供されるリポソーム製剤、および任意で抗原を含有する。リポソーム製剤および薬学的組成物は、任意で抗原と混合される。そのような実施形態では、リポソーム製剤および薬学的組成物は、それらが抗原との混合に好適であるように製剤化される。いくつかの好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、本明細書で提供されるリポソーム製剤および抗原を含有する。
【0124】
A.抗原
抗原は、任意の標的エピトープ、分子(生体分子を含む)、分子複合体(生体分子を含有する分子複合体を含む)、細胞内組み立て体、対象における免疫反応性の誘発または増強が所望される細胞または組織であり得る。頻繁に、抗原という用語は、目的のポリペプチド抗原を指す。しかしながら、本明細書で使用される場合、抗原はまた、ポリペプチド抗原をコードする核酸分子(例えば、DNAまたはRNA)も指し得る。抗原はまた、目的のポリペプチド抗原をコードする組み換え構築物(例えば、発現構築物)であり得る。好適な抗原には、細菌抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、原虫抗原、植物抗原、がん抗原、またはそれらに対する組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載の抗原は、例えば、感染性疾患、がん、自己免疫疾患、アレルギー、喘息、または抗原特異的免疫応答の刺激が望ましいかもしくは有利である、任意の他の病態に関与し得るか、またはそれに由来し得る。
【0125】
特定の実施形態では、抗原は、感染性疾患に関連する少なくとも1つの感染性病原体に由来し得るか、またはそれと免疫学的に交差反応性である。特定の実施形態では、抗原は、がんに関連する少なくとも1つのエピトープ、生体分子、細胞、または組織に由来し得るか、またはそれと免疫学的に交差反応性である。特定の実施形態では、抗原は、自己免疫疾患に関連する少なくとも1つのエピトープ、生体分子、細胞、または組織に由来し得るか、またはそれと免疫学的に交差反応性である。
【0126】
本発明のリポソーム製剤および薬学的組成物は、組成物が抗原を含有しない場合に、ヒトにおける免疫応答を誘発することができることが理解されるだろう。特定の他の実施形態では、本開示の薬学的組成物およびワクチン組成物は、ヒトまたは他の哺乳動物宿主における免疫応答を誘発することができる抗原または抗原組成物を含有する。抗原または抗原組成物は、それ自体で、または本発明の製剤および組成物と併用したときに、免疫応答を誘発することができる。いくつかの態様では、本発明の製剤は、抗原または抗原組成物がヒトまたは他の哺乳動物における免疫応答を誘発する能力を増強する。
【0127】
抗原または抗原組成物は、N.gonorrheaおよびN.meningitidis(例えば、莢膜多糖およびそれらの共役体、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、アドヘシン)を含むNeisseria菌種;S.pyogenes(例えば、Mタンパク質もしくはそれらの断片、C5Aプロテアーゼ、リポテイコ酸)、S.agalactiae、S.mutans:H.ducreyi、Branhamella catarrhalisとしても知られるM catarrhalisを含むMoraxella菌種(例えば、高分子および低分子のアドヘシンおよびインベイシン);B.pertussis(例えば、パータクチン、百日咳毒素、もしくはそれらの誘導体、繊維状赤血球凝集素、アデニル酸シクラーゼ、線毛)、B.parapertussis、およびB.bronchisepticaを含むBordetella菌種;M.tuberculosis(例えば、ESAT6、抗原85A、抗原85B、もしくは抗原85C)、M.bovis、M.leprae、M.avium、M.paratuberculosis、M.smegmatisを含むMycobacterium菌種;L.pneumophilaを含むLegionella菌種;腸内毒素原性E.coli(例えば、定着因子、熱不安定性毒素もしくはその誘導体、熱安定性毒素もしくはその誘導体)、腸管出血性E.coli、腸管病原性E.coli(例えば、志賀毒素様毒素もしくはその誘導体)を含むEscherichia菌種;V.cholera(例えば、コレラ毒素もしくはその誘導体)を含むVibrio菌種;S.sonnei、S.dysenteriae、S.flexneriiを含むShigella菌種、Y.enterocolitica(例えば、Yopタンパク質)、Y.pestis、Y.pseudotuberculosisを含むYersinia菌種;C.jejuni(例えば、毒素、アドヘシン、およびインベイシン)ならびにC.coliを含むCampylobacter菌種;S.typhi、S.paratyphi、S.choleraesuis、S.enteritidisを含むSalmonella菌種;L.monocytogenesを含むListeria菌種;H.pylori(例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素)を含むHelicobacter菌種;P.aeruginosaを含むPseudomonas菌種;S.aureus、S.epidermidisを含むStaphylococcus菌種;E.faecalis、E.faeciumを含むEnterococcus菌種;C.tetani(例えば、破傷風毒素およびその誘導体)、C.botulinum(例えば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)、C.difficile(例えば、クロストリジウム毒素AもしくはB、およびそれらの誘導体)を含むClostridium菌種;B.anthracis(例えば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)を含むBacillus菌種;C.diphtheriae(例えば、ジフテリア毒素およびその誘導体)を含むCorynebacterium菌種;B.burgdorferi(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.garinii(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.afzelii(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.andersonii(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.hermsiiを含むBorrelia菌種;E.equiおよびヒト顆粒球エーリキア症の作用物質を含むEhrlichia菌種;R.rickettsiiを含むRickettsia菌種;C.trachomatis(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C.pneumoniae(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C.psittaciを含むChlamydia菌種;L.interrogansを含むLeptospira菌種;T.pallidum(例えば、希少外膜タンパク質)、T.denticola、T.hyodysenteriaeを含むTreponema菌種;または他の細菌病原体などの1つ以上の細菌病原体に由来する組成物を含み得る。
【0128】
特定の実施形態では、本開示の薬学的組成物およびワクチン組成物は、ヒトまたは他の哺乳動物宿主における免疫応答を誘発することができる抗原または抗原組成物を含有し、抗原または抗原組成物は、HIV-1(tat、nef、gp120、またはgp160など)、ヒトヘルペスウイルス(gDもしくはその誘導体など)または最初期タンパク質(HSV1もしくはHSV2由来のICP27など)、サイトメガロウイルス((特にヒト)(gBまたはその誘導体など)、ロタウイルス(弱毒生ウイルスを含む)、エプスタイン・バーウイルス(gp350またはその誘導体など)、水痘帯状疱疹ウイルス(gpl、II、およびIE63など)などの1つ以上の感染性ウイルスに由来するか、あるいはB型肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎表面抗原またはその誘導体)、A型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、およびE型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルスに由来するか、あるいはパラミクソウイルス:呼吸器多核体ウイルス(FおよびGタンパク質もしくはそれらの誘導体)、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス(例えば、HPV6、11、16、18など)、フラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルス、デングウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)、またはインフルエンザウイルス(卵内またはMDCK細胞内で成長させた、完全生ウイルスまたは不活化ウイルス、スプリットインフルエンザウイルス、あるいは完全インフルエンザビロソーム(Gluck,Vaccine,1992,10,915-920により記載のもの)またはそれらの精製タンパク質もしくは組み換えタンパク質(HA、NP、NA、もしくはMタンパク質、またはそれらの組み合わせ))などの他のウイルス病原体に由来する組成物を含み得る。
【0129】
特定の他の実施形態では、本開示の薬学的組成物およびワクチン組成物は、ヒトまたは他の哺乳動物宿主における免疫応答を誘発することができる抗原または抗原組成物を含有し、抗原または抗原組成物は、P.falciparumを含むPlasmodium菌種;T.gondii(例えば、SAG2、SAG3、Tg34)を含むToxoplasma菌種;E.histolyticaを含むEntamoeba菌種;B.microtiを含むBabesia菌種;T.cruziを含むTrypanosoma菌種;G.lambliaを含むGiardia菌種;L.majorを含むLeshmania菌種;P.cariniiを含むPneumocystis菌種;T.vaginalisを含むTrichomonas菌種などの1つ以上の寄生虫(例えば、John,D.T.and Petri,W.A.,Markell and Voge’s Medical Parasitology-9th Ed.,2006,WB Saunders,Philadelphia、Bowman,D.D.,Georgis’ Parasitology for Veterinarians-8th Ed.,2002,WB Saunders,Philadelphiaを参照されたい)に由来するか、または(i)線虫感染症(Enterobius vermicularis、Ascaris lumbricoides、Trichuris trichuria、Necator americanus、Ancylostoma duodenale、Wuchereria bancrofti、Brugia malayi、Onchocerca volvulus、Dracanculus medinensis、Trichinella spiralis、およびStrongyloides stercoralisを含むが、これらに限定されない);(ii)吸虫感染症(Schistosoma mansoni、Schistosoma haematobium、Schistosoma japonicum、Schistosoma mekongi、Opisthorchis sinensis、Paragonimus菌種、Fasciola hepatica、Fasciola magna、Fasciola giganticaを含むが、これらに限定されない);ならびに(iii)条虫感染症(Taenia saginataおよびTaenia soliumを含むが、これらに限定されない)などの、哺乳動物に感染することができる蠕虫に由来する組成物を含み得る。したがって、特定の実施形態は、Schisostoma菌種、Schistosoma mansonii、Schistosoma haematobium、および/もしくはSchistosoma japonicumに由来するか、またはC.albicansを含むCandida菌種;C.neoformansを含むCryptococcus菌種などの酵母に由来する抗原を含むワクチン組成物を企図する。
【0130】
特定の好ましい実施形態は、M.tuberculosisもしくはM.lepraeなどのActinobacterium、または別のmycobacterium;Escherichia属、Salmonella属、Neisseria属、Borrelia属、Chlamydia属、Clostridium属、もしくはBordetella属のメンバーなどの細菌;単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1もしくはHIV-2などのHIV)、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、コロナウイルス(SARSもしくはMERSなど)、ロタウイルス、ノロウイルス、ピコルナウイルス(ポリオウイルス、エンテロウイルス、もしくはコクサッキーウイルスなど)、獣医学的病原体、例えば、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、肝炎ウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、フラビウイルスウイルス(デングウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、ジカウイルス、ポワッサンウイルス、もしくはダニ媒介性脳炎ウイルスなど)、ヘニパウイルス(ヘンドラウイルスもしくはニパウイルスなど)、ブニヤウイルス(ハンタウイルスもしくはリフトバレー熱ウイルスなど)、アレナウイルス(ラッサウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、もしくはグアナリトウイルスなど)、フィロウイルス(エボラウイルスもしくはマールブルグウイルスなど)、リッサウイルス(狂犬病ウイルスなど)、呼吸器多核体ウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、およびサイトメガロウイルスなどのウイルス;Aspergillus、Blastomyces、Coccidioides、およびPneumocystiなどの真菌、もしくはC.albicans、C.glabrata、C.krusei、C.lusitaniae、C.tropicalis、およびC.parapsilosisなどのCandida種を含む酵母;原虫、例えば、P.falciparum、P.vivax、P.malariae、およびP.ovaleを含むPlasmodium種などの寄生虫;またはAcanthamoeba、Entamoeba histolytica、Angiostrongylus、Schistosoma mansonii、Schistosoma haematobium、Schistosoma japonicum、Cryptosporidium、Ancylostoma、Entamoeba histolytica、Entamoeba coli、Entamoeba dispar、Entamoeba hartmanni、Entamoeba polecki、Wuchereria bancrofti、Giardia、Toxoplasma gondii、およびLeishmaniaの1つ以上などの別の寄生虫を含む、細菌、ウイルス、または真菌などの少なくとも1つの感染性病原体に由来する抗原を企図する。特定の実施形態では、抗原は、結核、インフルエンザ、アメーバ症、HIV、肝炎、またはリーシュマニア症に関与する抗原に由来するか、またはそれに関連するものであり得る。
【0131】
本開示に従うと、特定の態様では、本明細書に記載の薬学的組成物およびワクチン組成物に含まれる抗原は、ウエストナイルウイルスに由来しないか、またはそれに関連しない。いくつかの態様では、抗原は、TB、HIV、またはマラリアに由来するか、またはそれに関連する。
【0132】
いくつかの実施形態では、抗原は、インフルエンザ関連抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、インフルエンザを引き起こす抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、インフルエンザを引き起こすウイルスに由来する。一実施形態では、抗原は、H5N1に由来する赤血球凝集素(HA)を含む。一実施形態では、抗原は、H5N1に由来するノイラミニダーゼを含む。
【0133】
例えば、特定の実施形態では、抗原は、Borrelia菌種に由来し、抗原は、核酸、病原体由来抗原または抗原調製物、組み換え生成されたタンパク質またはペプチド、およびキメラ融合タンパク質を含み得る。1つのそのような抗原は、OspAである。OspAは、宿主細胞内でのその生合成のために脂質化形態である完全成熟タンパク質(Lipo-OspA)であっても、あるいは非脂質化誘導体であってもよい。そのような非脂質化誘導体は、インフルエンザウイルスの非構造タンパク質(NS1)の最初の81個のN末端アミノ酸を有する非脂質化NS1-OspA融合タンパク質を含み、完全OspAタンパク質、および別のMDP-OspAは、3つの追加のN末端アミノ酸を担持するOspAの非脂質化形態である。
【0134】
他の特異的抗原は、M.tuberculosis、例えば、Th Ra12、Tb H9、Tb Ra35、Tb38-1、Erd14、DPV、MTI、MSL、mTTC2、およびhTCC1に由来する(WO99/51748)。M.tuberculosisのタンパク質にはまた、M.tuberculosisの少なくとも2つ、3つ、もしくは4つ、またはそれ以上のポリペプチドがより大きなタンパク質に融合されている、融合タンパク質およびそれらの変異体も含まれる。特定の融合には、Ra12-TbH9-Ra35、Erd14-DPV-MTI、DPV-MTI-MSL、Erd14DPV-MTI-MSL-mTCC2、Erd14-DPV-MTI-MSL、DPV-MTI-MSL-mTCC2、TbH9-DPV-MTI(WO99151748)が含まれる。使用することができる他の抗原には、参照により全ての目的のために本明細書に組み込まれる、US2010/0129391、WO2008/124647、および米国特許第8,486,414号に記載の抗原、抗原の組み合わせ、および融合タンパク質が含まれる。例示的な一実施形態では、融合タンパク質は、ID93である。例示的な一実施形態では、融合タンパク質は、ID91である。例示的な一実施形態では、融合タンパク質は、ID97である。
【0135】
他の特異的抗原は、Chlamydiaに由来し、それらには、例えば、高分子量タンパク質(HWMP)(WO99/17741)、ORF3(EP366412)、および推定膜タンパク質(Pmp)が含まれる。他のChlamydia抗原は、WO99128475に記載の群から選択され得る。特定の抗原は、S.pneumoniae(例えば、莢膜多糖およびそれらの共役体、PsaA、PspA、ストレプトリジン、コリン結合タンパク質)を含むStreptococcus菌種、ならびにタンパク質抗原ニューモリシン(Biochem Biophys Acta,1989,67,1007、Rubins et al.,Microbial Pathogenesis,25,337-342)、ならびにそれらの突然変異解毒誘導体(WO90/06951、WO99/03884)に由来し得る。他の細菌ワクチン組成物は、H.influenzae B型(例えば、PRPおよびその共役体)、無莢膜型H.influenzaeを含むHaemophilus菌種に由来する抗原、例えば、OMP26、高分子量アドヘシン、P5、P6、タンパク質Dおよびリポタンパク質D、ならびにフィンブリンおよびフィンブリン由来ペプチド(米国特許第5,843,464号)、またはそれらの多重コピー変異体もしくは融合タンパク質を含む。
【0136】
他の特異的抗原は、B型肝炎に由来する。B型肝炎表面抗原の誘導体は、当該技術分野で周知であり、それらには、とりわけ、欧州特許出願第EP-A414374号、同第EP-A-0304578号、および同第EP198474号に明記され記載される、PreS1、PreS2、S抗原が含まれる。
【0137】
他の実施形態では、抗原は、性器疣贅を担うと考えられているヒトパピローマウイルス(HPV)(HPV6またはHPV11、および他のもの)、ならびに子宮頚がんを担うHPVウイルス(HPV16、HPV18、および他のもの)に由来する。特定の抗原は、L1粒子またはカプソメア、ならびにHPV6およびHPV11タンパク質E6、E7、L1、およびL2から選択される1つ以上の抗原を含む融合タンパク質を含む。特定の形態の融合タンパク質は、WO96/26277に開示されるL2E7、およびGB9717953.5(PCT/EP98/05285)に開示されるタンパク質D(1/3)-E7を含む。追加の可能性のある抗原には、HPV16、18、33、58抗原が含まれる。例えば、L1もしくはL2抗原モノマー、またはともにウイルス様粒子(VLP)として提示されるL1もしくはL2抗原、またはVLPまたはカプソメアにおいて単独で提示されるL1単独タンパク質である。そのような抗原、ウイルス様粒子、およびカプソメア自体は、既知である。例えば、WO94/00152、WO94/20137、WO94/05792、およびWO93/02184を参照されたい。
【0138】
他の実施形態では、抗原は、融合タンパク質である。融合タンパク質は、単独で、または例えば、E7、E2、もしくはF5などの融合タンパク質として含まれ、特定の実施形態は、L1E7融合タンパク質を含むVLPを含む(WO96/11272)。特定のHPV16抗原は、タンパク質D担体と融合して、HPV16からタンパク質D-E6もしくはE7融合体を形成する、初期タンパク質E6もしくはF7、またはそれらの組み合わせ、あるいはE6またはE7とL2との組み合わせを含む(WO96/26277)。あるいは、HPV16または18初期タンパク質E6およびE7は、単一分子中、例えば、タンパク質D-E6/E7融合体に提示され得る。組成物は、任意で、例えば、タンパク質D-E6もしくはタンパク質D-E7融合タンパク質またはタンパク質DE6/E7融合タンパク質の形態で、一方または両方のE6およびE7タンパク質前端HPV18を含有する。組成物は、加えて、他のHPV株由来、例えば、HPV31または33由来の抗原を含み得る。
【0139】
抗原はまた、マラリアを引き起こす寄生虫にも由来し得る。例えば、Plasmodia falciparum由来の抗原には、RTS,SおよびTRAPが含まれる。RTSは、B型肝炎表面抗原のpreS2部分の4つのアミノ酸を介してB型肝炎ウイルスの表面(S)抗原に結合した、P.falciparumのスポロゾイト周囲(CS)タンパク質の実質的に全てのC末端部分を含むハイブリッドタンパク質である。その完全な構造は、英国特許出願第9124390.7号の優先権を主張するWO93/10152として公開された、国際特許出願第PCT/EP92/02591号に開示されている。酵母において発現される場合、RTSは、リポタンパク質粒子として生成され、それがHBV由来のS抗原と同時発現される場合、それは、RTS,Sとして知られる混合粒子を生成する。
【0140】
TRAP抗原は、WO90/01496として公開された国際特許出願第PCT/GB89/00895号に記載されている。本開示の実施形態は、抗原調製物がRTS,SとTRAP抗原との組み合わせを含む、マラリアワクチンである。多段階マラリアワクチンの構成成分の候補となる可能性が高い他のマラリア原虫抗原は、P.faciparum MSP1、AMA1、MSP3、EBA、GLURP、RAP1、RAP2、セケストリン(Sequestrin)、PfEMP1、Pf332、LSA1、LSA3、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27125、Pfs16、Pfs48/45、Pfs230、およびPlasmodium菌種のそれらの類似体である。
【0141】
一実施形態では、がんの免疫療法による治療に有用であり得るため、抗原は、がん細胞に由来する。例えば、抗原は、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、膵がん、腎がん、または黒色腫がんのものなどの腫瘍拒絶抗原であり得る。例示的ながんまたはがん細胞由来抗原には、MAGE1、3、およびMAGE4、もしくはWO99/40188に開示されるものなどの他のMAGE抗原、PRAME、BAGE、Lage(NY Eos1としても知られる)SAGEおよびHAGE(WO99/53061)、またはGAGE(Robbins and Kawakami,1996 Current Opinions in Immunology8,pps628-636、Van den Eynde et al.,International Journal of Clinical&Laboratory Research(1997&1998)、Correale et al.(1997),Journal of the National Cancer Institute89,p.293)が含まれる。がん抗原のこれらの非限定的な例は、黒色腫、肺がん、肉腫、および膀胱がんなどの広範囲な腫瘍型において発現される。例えば、米国特許第6,544,518号を参照されたい。
【0142】
他の腫瘍特異的抗原には、GMおよびGM、もしくは担体タンパク質へのそれらの共役体などの腫瘍特異的もしくは腫瘍関連ガングリオシド、または多くのがんの治療に有用な10アミノ酸長の短鎖ペプチドである、全長ゴナドトロピンホルモン放出ホルモン(GnRH、WO95/20600)などの自己ペプチドホルモンが含まれるが、これらに制限されない。別の実施形態では、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、PSCA(例えば、Proc.Nat.Acad.Sci.USA95(4)1735-1740 1998)、PSMAなどの前立腺抗原、または一実施形態では、プロスターゼとして知られる抗原が使用される。(例えば、Nelson,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1999)96:3114-3119、Ferguson,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA1999.96,3114-3119、WO98/12302、米国特許第5,955,306号、WO98/20117、米国特許第5,840,871号および同第5,786,148号、WO00/04149)。他の前立腺特異的抗原は、WO98/137418およびWO/004149から既知である。別のものは、STEAP(PNAS96 14523 14528 7-12 1999)である。
【0143】
本開示の文脈で有用な他の腫瘍関連抗原には、Plu-1(J Biol.Chem274(22)15633-15645,1999)、HASH-1、HasH-2、クリプト(Cripto)(Salomon et al Bioessays199,21:61-70、米国特許第5,654,140号)、およびクリプチン(Criptin)(米国特許第5,981,215号)が含まれる。加えて、がんの療法においてワクチン組成物に特に関連する抗原はまた、チロシナーゼおよびサバイビンも含む。
【0144】
本明細書に開示される実施形態はまた、HER-2/neu発現などの腫瘍関連抗原発現、または他のがん特異的抗原もしくはがん関連抗原を特徴とする任意のがんに対して有用であり得る、がん抗原も含む。
【0145】
がんを有するリスクを有するか、またはリスクがあることが疑われる対象におけるがんの診断は、臨床症状、がんの進行の程度、がんの種類、および他の因子を含む様々な因子に応じて変動し得る、広範な当該技術分野で許容される方法論のいずれかによって達成することができる。がんの診断学の例には、患者試料(例えば、血液、皮膚生検、他の組織生検、外科検体など)の病理組織学的、組織化学的、および免疫病理組織学的検査、定義された遺伝子(例えば、核酸)マーカーのPCR試験、循環がん関連抗原もしくはそのような抗原を担持する細胞、または定義された特異性の抗体の血清学的試験、あるいは当業者が精通している他の方法論が含まれる。例えば、米国特許第6,734,172号、同第6,770,445号、同第6,893,820号、同第6,979,730号、同第7,060,802号、同第7,030,232号、同第6,933,123号、同第6,682,901号、同第6,587,792号、同第6,512,102号、同第7,078,180号、同第7,070,931号、同第JP5-328975号、Waslylyk et al.,1993 Eur.J.Bioch.211(7):18を参照されたい。
【0146】
本開示の特定の実施形態に従う、リポソーム製剤、薬学的組成物、およびワクチン組成物、ならびに方法はまた、自己免疫疾患の予防または療法にも使用することができ、自己免疫疾患には、宿主または対象の免疫系が、「自己」組織、細胞、生体分子(例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、プロテオリピド、脂質、糖脂質、核酸(RNAおよびDNAなど)、オリゴ糖、多糖、プロテオグリカン、もしくはグリコサミノグリカンなど、ならびに対象の細胞および組織の他の分子構成成分)、またはエピトープ(例えば、抗体可変領域相補性決定領域(CDR)によって、もしくはT細胞受容体CDRによって認識されるものなどの免疫学的に定義された特異的認識構造)に対して指向される免疫応答を有害な方法で媒介する、疾患、病態、または障害が含まれる。
【0147】
したがって、自己免疫疾患は、いずれの場合も正常な自己組織に対して指向される、細胞または抗体のいずれかに関与する異常な免疫応答を特徴とする。哺乳動物における自己免疫疾患は一般に、2つの異なるカテゴリ、つまり細胞媒介性疾患(すなわち、T細胞)または抗体媒介性障害のうちの1つに分類することができる。細胞媒介性自己免疫疾患の非限定的な例には、多発性硬化症、関節リウマチ、橋本病、I型糖尿病(若年発症糖尿病)、および自己免疫性ぶどう膜網膜炎が含まれる。抗体媒介性自己免疫障害には、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス(またはSLE)、グレーブス病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性喘息、クリオグロブリン血症、血栓性血小板減少性紫斑病、原発性胆管硬化症、および悪性貧血が含まれるが、これらに限定されない。全身性エリテマトーデスに関連する抗原(複数可)は、小核リボ核酸タンパク質(snRNP)であり、グレーブス病に関連する抗原(複数可)は、サイロトロピン受容体、サイログロブリン、および甲状腺上皮細胞の他の構成成分であり(Akamizu et al.,1996、Kellerman et al.,1995、Raju et al.,1997、およびTexier et al.,1992)、天疱瘡に関連する抗原(複数可)は、デスモグレイン3などのカドヘリン様天疱瘡抗原および他の接着分子であり(Memar et al.,1996:Stanley,1995、Plott et al.,1994、およびHashimoto,1993)、血栓性血小板減少性紫斑病に関連する抗原(複数可)は、血小板の抗原である。(例えば、米国特許第6,929,796号、Gorski et al.(Eds.),Autoimmunity,2001,Kluwer Academic Publishers,Norwell,M A、Radbruch and Lipsky,P.E.(Eds.)Current Concepts in Autoimmunity and Chronic Inflammation(Curr.Top.Microbiol.and Immunol.)2001,Springer,N.Y.を参照されたい)。
【0148】
特定の実施形態では、本開示の組成物は、高齢者ならびに/または免疫抑制された者(腎臓透析を受けている対象、化学療法および/もしくは放射線療法を受けている対象、移植レシピエントなどを含む)の治療に特に適用可能である。そのような個体は一般に、ワクチン組成物に対して減少した免疫応答を呈するため、本開示の組成物の使用は、これらの対象において達成される免疫応答を増強することができる。
【0149】
他の実施形態では、本開示の組成物中で使用される抗原(複数可)には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの病態の予防または療法のための、細菌感染症(例えば、肺炎球菌)によって引き起こされるか、または悪化するものなどの呼吸器疾患に関連する抗原が含まれる。COPDは、慢性気管支炎および/または肺気腫を有する患者における、不可逆的または部分的に可逆的な気道閉塞の存在によって生理学的に定義される(Am J Respir Crit.Care Med.1995 November;152(5Pt2):S77-121)。COPDの悪化はしばしば、細菌(例えば、肺炎球菌)感染症によって引き起こされる(Clin Microbiol Rev.2001 April;14(2):336-63)。
【0150】
好ましい実施形態では、リポソーム製剤は、薬学的組成物中に収容される。別の好ましい実施形態では、リポソーム製剤は、ワクチン組成物中に収容される。例示的な実施形態では、薬学的組成物は、リポソーム製剤および抗原を含む。別の例示的な実施形態では、ワクチン組成物は、リポソーム製剤および抗原を含む。いくつかのそのような例示的な実施形態では、抗原は、感染性疾患、がん、または自己免疫疾患に関連する。例示的な実施形態では、リポソーム製剤および薬学的製剤を使用して、感染性疾患、がん、または自己免疫疾患などの疾患を治療することができる。例示的な実施形態では、リポソーム製剤および薬学的製剤を使用して、感染性疾患、がん、または自己免疫疾患などの疾患を有する、ヒトを含む哺乳動物における増強した免疫応答を誘発することができる。そのような実施形態では、リポソーム製剤および薬学的製剤は、抗原および/または抗原をコードする核酸をさらに含んでも、含まなくてもよい。
【0151】
本明細書に開示される特定の実施形態に従うと、薬学的組成物およびワクチン組成物は、抗原を含む代わりに、抗原をコードする核酸を含み得る。例えば、実施形態では、薬学的組成物およびワクチン組成物は、抗原をコードする核酸配列に作動可能に結合したプロモーターを含む、少なくとも1つの組み換え発現構築物を含有し得る。特定のさらなる実施形態では、組み換え発現構築物は、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターなどのウイルスベクター内に存在する。例えば、Ausubel et al.(Eds.),Current Protocols in Molecular Biology,2006 John Wiley&Sons,NYに従う、本明細書で提供されるポリペプチド抗原の発現のための、そのような発現構築物およびベクターを作製および使用するための組成物および方法は、当該技術分野で既知である。組み換え発現構築物の非限定的な例は一般に、現在開示されている特定の実施形態で使用するための、本明細書で提供されるポリペプチド抗原の発現に適応させることができる教示とともに、例えば、米国特許第6,844,192号、同第7,037,712号、同第7,052,904号、同第7,001,770号、同第6,106,824号、同第5,693,531号、同第6,613,892号、同第6,875,610号、同第7,067,310号、同第6,218,186号、同第6,783,981号、同第7,052,904号、同第6,783,981号、同第6,734,172号、同第6,713,068号、同第5,795,577号、および同第6,770,445号、ならびに他のものに見出すことができる。
【0152】
本明細書で提供される組成物は、典型的には、本発明の製剤および組成物中で免疫刺激剤として作用する、サポニンおよび任意のリポ多糖に加えて、少なくとも1つの追加の免疫刺激剤を含み得る。免疫刺激剤は、抗原に対する免疫応答(抗体媒介性および/または細胞媒介性)を増強または強化する物質である。免疫刺激剤の例には、アジュバント、生分解性マイクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ガラクチド)、およびリポソーム(それに化合物が組み込まれるもの、例えば、Fullertonの米国特許第4,235,877号を参照されたい)が含まれる。ワクチン調製物は一般に、例えば、Powell&Newman,eds.,Vaccine Design(サブユニットおよびアジュバントアプローチ)(1995)に記載されている。
【0153】
例えば、背景(例えば、米国特許第6,544,518号を参照されたい)として、非メチル化CpGジヌクレオチド(「CpG」)を含有する免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、全身経路および粘膜経路の両方によって投与される場合に、アジュバントであることが知られている(WO96/02555、EP468520、Davis et al.,J.Immunol,1998.160(2):870-876、McCluskie and Davis,J.lmmunol.,1998,161(9):4463-6)。CpGは、DNA中に存在するシトシン-グアノシンジヌクレオチドモチーフの略語である。免疫刺激におけるCGモチーフの中心的な役割は、Krieg,Nature374,p546 1995によって解明された。詳細な分析は、CGモチーフが、特定の配列の文脈にある必要があること、およびそのような配列が、細菌DNA中では一般的であるが、脊椎動物DNA中では希少であることを示している。免疫刺激性配列はしばしば、プリン、プリン、C、G、ピリミジン、ピリミジンであり、式中、ジヌクレオチドCGモチーフは、メチル化されていないが、他の非メチル化CpG配列は、免疫刺激性であることが知られおり、特定の実施形態で使用することができる。ワクチン組成物中に製剤化される場合、CpGは、遊離溶液中で遊離抗原とともに投与されても(WO96/02555、McCluskie and Davis(上記))、抗原に共有結合的に共役されても(PCT公開第WO98/16247号)、水酸化アルミニウムなどの担体とともに製剤化されてもよい(例えば、Davis et al(上記)、Brazolot-Millan et al.,Proc.NatLAcad.Sci.,USA,1998,95(26),15553-8)。
【0154】
本開示の組成物中で使用するための他の例示的なオリゴヌクレオチドはしばしば、少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも6つ以上のヌクレオチドによって分離された、2つ以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含有する。本開示のオリゴヌクレオチドは、典型的には、デオキシヌクレオチドである。一実施形態では、オリゴヌクレオチド内の介在ヌクレオチドは、ジチオリン酸、またはより好ましくはホスホロチオエート結合であるが、混合介在ヌクレオチド結合を有するオリゴヌクレオチドを含む、リン酸ジエステルおよび他の介在ヌクレオチド結合が、本開示の範囲内である。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドまたはジチオリン酸を生成するための方法は、米国特許第5,666,153、同第5,278,302号、およびW095/26204に記載されている。
【0155】
オリゴヌクレオチドの他の例は、以下の出版物に開示される配列を有し、本明細書に開示される特定の実施形態では、配列は、好ましくは以下のホスホロチオエート修飾介在ヌクレオチド結合を含有する。
【0156】
CPG7909:Cooper et al.,“CPG7909 adjuvant improves hepatitis B virus vaccine seroprotection in antiretroviral-treated HIV-infected adults.”AIDS,2005 Sep23;19(14):1473-9。
【0157】
CpG10101:Bayes et al.,“Gateways to clinical trials.”Methods Find.Exp.Clin.Pharmacol.2005 Apr;27(3):193-219。VollmerJ.,“Progress in drug development of immunostimula-tory CpG oligodeoxynucleotide ligands for TLR9.”Expert Opinion on Biological Therapy.2005 May;5(5):673-682。
【0158】
代替的なCpGオリゴヌクレオチドは、上記に引用した出版物に記載の好ましい配列の変異体を含んでもよく、それらには、重要でないヌクレオチド配列置換、挿入、欠失、および/または付加がされているという点で異なる。本開示の特定の実施形態で利用されるCpGオリゴヌクレオチドは、当該技術分野で既知の任意の方法(例えば、EP468520)によって合成することができる。好都合であることに、そのようなオリゴヌクレオチドは、自動化合成機を利用して合成することができる。オリゴヌクレオチドは、典型的には、デオキシヌクレオチドである。好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチド内の介在ヌクレオチド結合は、ジチオリン酸、またはより好ましくはホスホロチオエート結合であるが、リン酸ジエステルもまた、現在企図されている実施形態の範囲内である。異なる介在ヌクレオチド結合を含むオリゴヌクレオチド、例えば、混合ホスホロチオエートホホジエステル(phophodiester)もまた、企図される。オリゴヌクレオチドを安定化する他の介在ヌクレオチド結合もまた、使用することができる。
【0159】
B.担体および賦形剤
本開示の薬学的組成物およびワクチン組成物は、様々な周知の貂順のいずれかを使用して製剤化することができる。特定の実施形態では、薬学的組成物およびワクチン組成物は、安定したエマルジョン(例えば、水中油型エマルジョン)または水溶液として調製される。
【0160】
特定の用途では、本明細書に開示される組成物は、経口投与を介して対象に送達することができる。したがって、これらの組成物は、不活性希釈剤とともに、もしくは無防備な食用担体とともに製剤化してもよく、またはそれらは、硬質もしくは軟質シェルゼラチンカプセル内に封入されてもよく、またはそれらは、錠剤に圧縮されてもよく、またはそれらは、食事の食品に直接組み込まれてもよい。
【0161】
特定の状況では、本明細書に開示される組成物を、例えば、米国特許第5,543,158号、米国特許第5,641,515号、および米国特許第5,399,363号(各々の全体が、参照により本明細書に具体的に組み込まれる)に記載のように、非経口、皮下、静脈内、皮内、筋肉内、またはさらには腹腔内送達することが望ましいだろう。遊離塩基または薬学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性物質と好適に混合した水中に調製することができる。分散剤もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中に、ならびに油中に調製することができる。通常の保管および使用条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための保存剤を含有する。
【0162】
注射剤用途に好適な薬学的組成物形態には、無菌注射用溶液または分散剤の即時調製のための無菌水溶液または分散液および無菌粉末が含まれる(その全体が、参照により本明細書に具体的に組み込まれる、米国特許第5,466,468号)。いずれの場合でも、形態は、無菌でなくてはならず、容易な注射針通過性が存在する程度まで流動性でなくてはならない。それは、製造および保管条件下で安定していなくてはならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されていなくてはならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、ならびに/または植物油を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合、必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチメロサールなどによって促進することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましいだろう。注射用組成物の吸収の延長は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、ステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによってもたらすことができる。
【0163】
例えば、水溶液中の非経口投与では、溶液は、まず液体希釈剤を十分な食塩水またはグルコースで等張にして、必要に応じて好適に緩衝されるべきである。これらの特定の溶液は、静脈内、筋肉内、および腹腔内投与に特に好適である。これに関連して、用いることができる無菌水溶性培地は、本開示に照らして、当業者にとって既知のものである。例えば、1回の投薬量は、1mlの等張NaCI溶液中に溶解させ、1000mlの皮下点滴流体に添加するか、または提案された注入部位に注射することができる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Edition,pp.1035-1038および1570-1580を参照されたい)。治療される対象の病態に応じて、投薬量のいくらかの変動が、必然的に生じるだろう。いずれにしても、投与を担う者は、個々の対象に適切な用量を決定する。さらに、ヒト投与では、調製物は、無菌性、発熱性、ならびにFDA生物製剤基準局によって要求される一般的な安全性および純度基準を満たすべきである。
【0164】
無菌注射用溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙される様々な他の成分を有する適切な溶媒に組み込み、その後濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散剤は、様々な無菌活性成分を、塩基性分散媒および上記に列挙される成分から必要な他の成分を含有する無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分に加えて、その以前の無菌濾過溶液からの任意の追加の所望の成分の粉末をもたらす真空乾燥技術および凍結乾燥技術である。
【0165】
本明細書に開示される組成物は、天然形態または塩形態で製剤化され得る。薬学的に許容される塩には、(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)酸付加塩、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機塩、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、およびマンデル酸などの有機塩で形成されるものが含まれる。遊離カルボキシ基で形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、もしくは水酸化第二鉄などの無機塩基、またはイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ヒスチジン、およびプロカインなどの有機塩基に由来し得る。製剤化時、溶液は、投薬量製剤と適合する様式で、かつハンセン病の治療に治療的に有効であるような量で、投与される。製剤は、注射用溶液および薬物放出カプセルなどの様々な剤形で容易に投与される。
【0166】
本明細書で使用される場合、「担体」は、ありとあらゆる溶液、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁剤、ならびにコロイドなどを含む。薬学的活性物質へのそのような培地および薬剤の使用は、当業者に周知である。任意の従来の培地または薬剤が活性成分と適合しない場合を除いて、治療組成物中でのその使用が企図される。補足活性成分もまた、組成物に組み込まれ得る。
【0167】
「薬学的に許容される」という語句は、ヒトに投与したときに、許容できないアレルギー反応または類似の有害反応を生成しない分子実体および組成物を指す。活性成分としてタンパク質を含有する水性組成物の調製は、当業者によく理解されている。典型的には、そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製され、注射前の液体中の溶液または懸濁液に好適な固体形態もまた、調製され得る。調製物はまた、乳化させることもできる。
【0168】
特定の実施形態では、本開示の組成物は、鼻腔内スプレー、吸入、および/または他のエアロゾル送達ビヒクルによって送達することができる。遺伝子、ポリヌクレオチド、およびペプチド組成物を、経鼻エアロゾルスプレーを介して肺に直接送達するための方法は、例えば、(各々の全体が、参照により本明細書に具体的に組み込まれる)米国特許第5,756,353号および米国特許第5,804,212号に記載されている。同様に、鼻腔内微小粒子樹脂(Takenagaら、1998)およびリゾホスファチジル-グリセロール化合物(その全体が、参照により本明細書に具体的に組み込まれる、米国特許第5,725,871号)を使用する薬物の送達もまた、薬学の当該技術分野で周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持体マトリックスの形態の経粘膜的な薬物送達は、(その全体が、参照により本明細書に具体的に組み込まれる)米国特許第5,780,045号に記載されている。
【0169】
あるいは、薬学的組成物またはワクチン組成物は、免疫刺激剤、および所望のポリペプチドがインサイチュで生成されるように、上記のポリペプチドまたは融合ポリペプチドの1つ以上をコードする、DNA分子を含有し得る。そのような組成物中では、融合タンパク質をコードするDNAは、核酸発現系、細菌発現系、およびウイルス発現系を含む、当業者に既知の様々な送達系のいずれかにおいて存在し得る。適切な核酸発現系は、(好適なプロモーターおよび終結シグナルなどの)その患者における発現に必要なDNA配列を含有する。細菌送達系は、その細胞表面上にポリペプチドの免疫原性部分を発現する(Bacillus-Calmette-Guerrinなどの)細菌の投与を伴う。特定の実施形態では、DNAは、非病原体(欠損)複製可能ウイルスの使用を伴い得るウイルス発現系(例えば、ワクチニア、または他のポックスウイルス、レトロウイルス、もしくはアデノウイルス)を使用して導入され得る。そのような発現系にDNAを組み込むための技術は、当業者に周知である。DNAはまた、例えば、Ulmer et al.,Science259:1745-1749(1993)に記載され、Cohen,Science259:1691-1692(1993)によって概説されているように、「ネイキッド」でもあり得る。ネイキッドDNAの取り込みは、細胞に効率的に輸送される生分解性ビーズ上にDNAをコーティングすることによって、増加させることができる。
【0170】
C.キットおよび製造物品
特定の実施形態では、本明細書に記載のリポソーム製剤、薬学的組成物、およびワクチン組成物を含有するキットもまた企図され、これは、1つ以上の容器内に提供され得る。一実施形態では、リポソーム製剤の全ての構成成分は、単一の容器内にともに存在する。特定の実施形態では、薬学的組成物の全ての構成成分は、単一の容器内にともに存在する。特定の実施形態では、ワクチン組成物の全ての構成成分は、単一の容器内にともに存在する。他の実施形態では、薬学的組成物およびワクチン組成物の構成成分は、2つ以上の容器内に存在し得る。好ましい実施形態では、リポソーム製剤は、1つの容器内に提供され、抗原は、別の容器内に提供される。
【0171】
本開示のキットは、本明細書に記載の使用のための指示書、またはバイアル内に収容される材料を混合するための指示書をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、バイアル内の材料は、乾燥または凍結乾燥されている。いくつかの実施形態では、バイアル内の材料は、液体である。
【0172】
そのようなキットの実施形態に従う容器は、任意の好適な容器、入れ物、バイアル、アンプル、管、カップ、箱、ボトル、フラスコ、瓶、単一ウェル装置もしくは複数ウェル装置のウェル、リザーバ、槽など、または本明細書に開示される組成物を配置、保管、および/もしくは輸送し、かつ内容物を取り出すためにアクセスすることができる、他のデバイスであり得る。典型的には、そのような容器は、意図される用途と適合し、かつ収容される内容物の回収が容易に達成され得る材料からなる。そのような容器の非限定的な例には、ゴム製のセプタム、または針もしくはシリンジを使用して内容物を取り除くのに適合した他の密封手段を有するものを含む、ガラスおよび/またはプラスチック製の密封または再密封可能管およびアンプルが含まれる。そのような容器は、例えば、ガラス、または化学的に適合するプラスチックもしくは樹脂からなってもよく、これは、容器からの材料の効率的な回収を可能にし、かつ例えば、紫外光もしくは極高低温などの分解条件から、または微生物汚染物を含む望まれない汚染物の導入から材料を保護する材料からなっても、それでコーティングされてもよい。容器は、好ましくは無菌または無菌化可能であり、本明細書に記載のワクチン組成物および/または免疫学的アジュバント組成物および/または抗原および/または組み換え発現構築物などの懸濁または溶解に使用され得るものなどの、任意の担体、賦形剤、溶媒、またはビヒクルなどと適合する材料からなる。
【0173】
V.本開示の組成物の作製方法
本発明者らは、サポニン(および任意のLPS)を事前形成されたリポソームと混合して、本明細書に記載の製剤を作製するプロセスにおいて、サポニン含有リポソームを作製することができることを有利に発見した。
【0174】
本明細書で提供されるように、例示的なリポソーム製剤の1つの作製方法は、4対1のリン脂質対コレステロール重量比で、LPSをDOPCおよびコレステロールと混合することを伴う。混合ステップは、クロロホルムの存在下、ガラス製の丸底フラスコ内で実行してから、真空下でクロロホルムを蒸発させ、薄膜をリン酸緩衝液で水和させる。特定の実施形態では、LPSは、SLAである。例示的な実施形態では、LPSは、GLAである。いくつかの実施形態では、さらなるステップは、粒径をナノメートル(nm)直径(DLS測定に基づいて、70~130nmの平均粒径)に均一に低減するための、水浴超音波処理(10ml規模の場合)または高圧均質化(100ml以上の規模の場合)を含む。高圧均質化は、20,000psi、10~15℃、および5回の均質化通過で、Microfluidicsの110EHまたは110P微少流体機モデルを使用して実行することができる。
【0175】
特定の実施形態では、QS21は、粗サポニン混合物Quil-AのHPLC精製を介して得られる。好ましい実施形態では、QS21は、リン酸緩衝液中に別個に可溶化され、その後調製されたLPSおよびコレステロールを含有するリポソーム中に混合されてから、無菌濾過され得る。例示的な実施形態では、最終製造製品は、0.22μmのフィルター(Millipore Steripak GP10)で濾過無菌化され、4mg/mLのDOPC、1mg/mLのコレステロール、20ug/mlのGLA、および8mg/mlのQS21を含有する。薬学的組成物またはワクチン組成物は、投与前に1対1の比でリポソーム製剤を抗原と混合することによって調製することができる。製造後、製剤は、5℃で保管され、製造時、ならびに製造日時から1週間後、2週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、および12ヶ月後などの、(DLSを介した)粒径の測定および目視外観を含む安定性監視プログラム下に置かれ得る。加えて、LPS濃度およびQS21濃度は、製造時、ならびに製造日時から6ヶ月後および12ヶ月後などの、荷電化粒子検出器(CAD)を有するHPLCによって測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のリポソーム製剤は、安定性の監視の加速のために、より高い温度(25℃、37℃、および60℃)で保管される。
【0176】
VI.免疫応答の誘発または増強方法
対象における免疫応答の誘発または増強方法であって、免疫応答の誘発または増強を必要とする対象に、本明細書に記載のリポソーム製剤、薬学的組成物、またはワクチン組成物を投与するステップを含む、方法が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、製剤または組成物は、抗原をさらに含み、抗原は、ポリペプチド抗原、またはポリペプチド抗原をコードする核酸分子である。いくつかのそのような実施形態では、製剤または組成物は、ポリペプチド抗原、またはポリペプチド抗原をコードする核酸分子との混合に好適である。
【0177】
本明細書で提供される実施形態では、対象は、哺乳動物(例えば、家畜(ウシ、ブタ、ヤギ、ウマなど)、ペット(ネコ、イヌなど)、およびげっ歯類(ラット、マウスなど)を含む動物)、またはヒトである。一実施形態では、対象は、ヒトである。別の実施形態では、対象は、非ヒト哺乳動物である。別の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、イヌ、ウシ、またはウマである。
【0178】
例示的な実施形態では、本明細書に開示されるリポソーム製剤は、ワクチン組成物に組み込まれる。本明細書に記載のリポソーム製剤を使用して、対象における免疫応答(非特異的応答および抗原特異的応答を含む)を誘発または増強することができる。いくつかの実施形態では、免疫応答は、全身免疫応答を含む。いくつかの実施形態では、免疫応答は、粘膜免疫応答を含む。免疫応答の誘発または増強は、免疫応答の刺激および免疫応答のブーストを含む。
【0179】
したがって、本開示は、免疫応答を開始することができる宿主における免疫応答を改変する(すなわち、統計的に有意な様式で、例えば、当業者が精通している適切な対照と比較して、増加または低下させる)ための組成物を提供する。当業者に既知であるように、免疫応答は、宿主の免疫状態の維持および/または制御に関与する1つ以上の組織、器官、細胞、または分子の構造または機能の任意の改変を含み得る、宿主の免疫状態の任意の能動的な改変であり得る。典型的には、免疫応答は、可溶性免疫グロブリンもしくは抗体;サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン、ホルモン、および成長因子などの可溶性媒介物質、ならびに他の可溶性小ペプチド、炭水化物、ヌクレオチド、および/もしくは脂質媒介物質;免疫系の細胞の機能もしくは構造特性の改変によって決定される細胞活性化状態の変化、例えば、細胞増殖、運動性の改変、特殊活性(特異的遺伝子発現もしくは細胞溶解挙動など)の導入;表面抗原発現プロファイルの改変もしくはアポトーシス(プログラム細胞死)の発生を含む、免疫系の細胞による細胞分化;または免疫応答の存在が検出され得る任意の他の基準の、インビボまたはインビトロ決定を含むがこれらに限定されない、様々な周知のパラメータのいずれかによって検出することができる。したがって、製剤は、抗体産生を増強および/または誘導する(例えば、中和抗体の産生を誘導する、抗原特異的抗体応答を増強する)ように作用し得る。
【0180】
免疫応答はしばしば、例えば、分子および細胞レベルでの宿主の免疫系の細胞および組織による自己構造と非自己構造との識別と見なされ得るが、本開示は、それほど限定的であるべきではない。例えば、免疫応答はまた、免疫系構成成分の典型的な制御などの任意の数の正常な状態に伴い得るか、または自己免疫疾患および変性疾患において観察される不適切な自己免疫応答などの病理学的状態に存在し得る、自己分子、細胞、または組織の免疫認識から生じる免疫系状態の変化も含み得る。別の例として、特定の免疫系活性(抗体および/もしくはサイトカイン産生、または細胞媒介性免疫の活性化など)の上方制御による誘導に加えて、免疫応答はまた、選択される抗原、抗原投与の経路、特異的寛容の誘導、または他の因子の結果であり得る、検出可能な免疫の抑制、減弱、または任意の他の下方制御も含み得る。
【0181】
本開示のワクチン組成物による免疫応答の誘導の決定は、当業者が容易に精通している、いくつかの周知の免疫学的アッセイのいずれかによって確立され得る。そのようなアッセイには、可溶性抗体;サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン、ホルモン、および成長因子などの可溶性媒介物質、ならびに他の可溶性小ペプチド、炭水化物、ヌクレオチド、および/または脂質媒介物質;免疫系の細胞の機能または構造特性の改変によって決定される細胞活性化状態の変化、例えば、細胞増殖、運動性の改変、特殊活性(特異的遺伝子発現または細胞溶解挙動など)の導入;表面抗原発現プロファイルの改変またはアポトーシス(プログラム細胞死)の発生を含む、免疫系の細胞による細胞分化のインビボまたはインビトロ決定が含まれるが、これらに限定されない。これらのアッセイおよび類似のアッセイを手順は、広く既知であり、例えば、Lefkovits(Immunology Methods Manual:The Comprehensive Sourcebook of Techniques,1998、Current Protocols in Immunologyもまた参照されたく、例えば、Weir,Handbook of Experimental Immunology,1986 Blackwell Scientific,Boston,Mass.、Mishell and Shigii(eds.)Selected Methods in Cellular Immunology,1979 Freeman Publishing,San Francisco,Calif.、Green and Reed,1998 Science281:1309、およびこれらの中で引用されている参考文献もまた参照されたい)に見出すことができる。
【0182】
抗原反応性T細胞の増殖の検出は、様々な既知の技術によって達成することができる。例えば、T細胞増殖は、DNA合成の速度を測定することによって検出することができ、抗原特異性は、候補抗原反応性T細胞が曝露される刺激(例えば、所望の特異的抗原パルス抗原提示細胞または対照抗原パルス抗原提示細胞など)を制御することによって決定することができる。増殖するように刺激されているT細胞は、DNA合成の速度の増加を呈する。DNA合成の速度を測定するための典型的な方法は、例えば、T細胞の培養物を、新たに合成されるDNAに組み込まれるヌクレオチド前駆体であるトリチウム標識したチミジンでパルス標識することによる。組み込まれるトリチウム標識したチミジンの量は、液体シンチレーション分光光度計を使用して決定することができる。T細胞増殖を検出するための他の方法には、インターロイキン-2(IL-2)産生、Ca2+流束、または色素取り込み(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニル-テトラゾリウムなど)の増加の測定が含まれる。あるいは、リンホカイン(インターフェロン-ガンマなど)の合成を測定しても、特定の抗原に応答し得るT細胞の相対数を定量化してもよい。
【0183】
抗原特異的抗体の産生の検出は、例えば、放射免疫測定法(RIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、平衡透析法、または固相免疫ブロット法(ウエスタンブロット法を含む)などのインビトロ方法論を使用して、本開示に従うワクチンで治療した宿主由来の試料(例えば、血清、血漿、または血液などの免疫グロブリン含有試料)をアッセイすることによって達成することができる。好ましい実施形態では、ELISAアッセイは、例えば、アッセイの感受性を増強するための、その抗原に特異的な固相モノクローナル抗体による標的抗原の抗原捕獲固定化をさらに含み得る。可溶性媒介物質(例えば、サイトカイン、ケモカイン、リンホカイン、プロスタグランジンなど)の同化作用もまた、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって、例えば、市販の供給源(例えば、Sigma、St.Louis,Mo.、R&D Systems 2006 Catalog,R&D Systems,Minneapolis,Minn.も参照されたい)から容易に入手可能な方法、装置、および試薬を使用して容易に決定することができる。
【0184】
核酸分子がタンパク質抗原をコードする場合、本明細書に開示される薬学的組成物またはワクチン組成物の免疫原性を評価する別の方法は、免疫ブロット法および/またはマイクロアレイによって、患者の血清または粘膜分泌物をスクリーニングするための組み換えタンパク質抗原を発現させることである。タンパク質と患者の試料との間の陽性反応は、その患者が問題のタンパク質に対する免疫応答を開始したことを示す。この方法を使用して、タンパク質抗原における免疫優性抗原および/またはエピトープを特定することもできる。
【0185】
当該技術分野で周知の通例的なアッセイを使用して、任意の数の他の免疫学的パラメータを監視することができる。これらには、例えば、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)アッセイ、二次性インビトロ抗体応答、十分に確立したマーカー抗原系を使用する様々な抹消血液もしくはリンパ球単核細胞亜集団のフロー免疫細胞蛍光分析、免疫組織化学、または他の関連するアッセイが含まれ得る。これらのアッセイおよび他のアッセイは、例えば、Rose et al.(Eds.),Manual of Clinical Laboratory Immunology,5th Ed.,1997 American Society of Microbiology,Washington,D.C.に見出すことができる。
【0186】
したがって、本明細書で提供されるワクチン組成物は、宿主において、T1型Tリンパ球応答、T2型Tリンパ球応答、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答、抗体応答、サイトカイン応答、リンホカイン応答、ケモカイン応答、および炎症性応答から選択される少なくとも1つの免疫応答を誘発または増強することができることが企図される。特定の実施形態では、免疫応答は、1つまたは複数のサイトカインの産生(サイトカインは、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)から選択される)、1つまたは複数のインターロイキンの産生(インターロイキンは、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-16、IL-18、およびIL-23から選択される)、1つまたは複数のケモカインの産生(ケモカインは、ΜΙΡ-1α、ΜΙΡ-1β、RANTES、CCL4、およびCCL5から選択される)、リンパ球応答(メモリーT細胞応答、メモリーB細胞応答、エフェクターT細胞応答、細胞傷害性T細胞応答、およびエフェクターB細胞応答から選択される)の少なくとも1つを含み得る。例えば、WO94/00153、WO95/17209、WO96/02555、米国特許第6,692,752号、米国特許第7,084,256号、米国特許第6,977,073号、米国特許第6,749,856号、米国特許第6,733,763号、米国特許第6,797,276号、米国特許第6,752,995号、米国特許第6,057,427号、米国特許第6,472,515号、米国特許第6,309,847号、米国特許第6,969,704号、米国特許第6,120,769号、米国特許第5,993,800号、米国特許第5,595,888号、Smith et al.,1987 J BiolChem.262:6951、Kriegler et al.,1988 Cell53:45 53、Beutler et al.,1986 Nature320:584、米国特許第6,991,791号、米国特許第6,654,462号、米国特許第6,375,944号を参照されたい。
【0187】
本明細書で提供される組成物の有効性はまた、適切な動物モデルを目的の感染症の病原体に曝露することによってインビボで決定することもできる。
【0188】
本明細書に記載の組成物を使用して、N.gonorrheaおよびN.meningitidis(例えば、莢膜多糖およびそれらの共役体、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、アドヘシン)を含むNeisseria菌種;S.pyogenes(例えば、Mタンパク質もしくはそれらの断片、C5Aプロテアーゼ、リポテイコ酸)、S.agalactiae、S.mutans:H.ducreyi、Branhamella catarrhalisとしても知られるM.catarrhalisを含むMoraxella菌種(例えば、高分子および低分子のアドヘシンおよびインベイシン);B.pertussis(例えば、パータクチン、百日咳毒素、もしくはそれらの誘導体、繊維状赤血球凝集素、アデニル酸シクラーゼ、線毛)、B.parapertussis、およびB.bronchisepticaを含むBordetella菌種;M tuberculosis(例えば、ESAT6、抗原85A、抗原85B、もしくは抗原85C)、M.bovis、M.leprae、M.avium、M.paratuberculosis、M.smegmatisを含むMycobacterium菌種;L.pneumophilaを含むLegionella菌種;腸内毒素原性E.coli(例えば、定着因子、熱不安定性毒素もしくはその誘導体、熱安定性毒素もしくはその誘導体)、腸管出血性E.coli、腸管病原性E.coli(例えば、志賀毒素様毒素もしくはその誘導体)を含むEscherichia菌種;V.cholera(例えば、コレラ毒素もしくはその誘導体)を含むVibrio菌種;S.sonnei、S.dysenteriae、S.flexneriiを含むShigella菌種、Y.enterocolitica(例えば、Yopタンパク質)、Y.pestis、Y.pseudotuberculosisを含むYersinia菌種;C.jejuni(例えば、毒素、アドヘシン、およびインベイシン)ならびにC.coliを含むCampylobacter菌種;S.typhi、S.paratyphi、S.choleraesuis、S.enteritidisを含むSalmonella菌種;L.monocytogenesを含むListeria菌種;H.pylori(例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素)を含むHelicobacter菌種;P.aeruginosaを含むPseudomonas菌種;S.aureus、S.epidermidisを含むStaphylococcus菌種;E.faecalis、E.faeciumを含むEnterococcus菌種;C.tetani(例えば、破傷風毒素およびその誘導体)、C.botulinum(例えば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)、C.difficile(例えば、クロストリジウム毒素AもしくはB、およびそれらの誘導体)を含むClostridium菌種;B.anthracis(例えば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)を含むBacillus菌種;C.diphtheriae(例えば、ジフテリア毒素およびその誘導体)を含むCorynebacterium菌種;B.burgdorferi(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.garinii(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.afzelii(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.andersonii(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.hermsiiを含むBorrelia菌種;E.equiおよびヒト顆粒球エーリキア症の作用物質を含むEhrlichia菌種;R.rickettsiiを含むRickettsia菌種;C.trachomatis(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C.pneumoniae(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C.psittaciを含むChlamydia菌種;L.interrogansを含むLeptospira菌種;T.pallidum(例えば、希少外膜タンパク質)、T.denticola、T.hyodysenteriaeを含むTreponema菌種;または他の細菌病原などの1つ以上の細菌病原体に対する防御免疫を増強することができる。
【0189】
本明細書に記載の組成物を使用して、ウイルスに対する防御免疫を増強することができる。そのようなウイルスおよびウイルス抗原には、例えば、HIV-1(tat、nef、gp120、もしくはgp160など)、ヒトヘルペスウイルス(gDもしくはその誘導体など)または最初期タンパク質(HSV1もしくはHSV2由来のICP27など)、サイトメガロウイルス((特にヒト、gBまたはその誘導体など)、ロタウイルス(弱毒生ウイルスを含む)、エプスタイン・バーウイルス(gp350またはその誘導体など)、水痘帯状疱疹ウイルス(gpl、II、およびIE63など)など、あるいはB型肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎表面抗原またはその誘導体)、A型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、およびE型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルスに由来するか、あるいはパラミクソウイルス:呼吸器多核体ウイルス(FおよびGタンパク質もしくはそれらの誘導体)、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス(例えば、HPV6、11、16、18など)、フラビウイルス(例えば、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、ジカウイルス、ポスワナン(Poswanan)ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス)、またはインフルエンザウイルス(卵内またはMDCK細胞内で成長させた、完全生ウイルスまたは不活化ウイルス、スプリットインフルエンザウイルス、あるいは完全インフルエンザビロソーム(Gluck,Vaccine,1992,10,915-920により記載のもの)またはそれらの精製タンパク質もしくは組み換えタンパク質(HA、NP、NA、もしくはMタンパク質、またはそれらの組み合わせ))が含まれる。本開示に従うと、本明細書に記載の組成物は、ウエストナイルウイルスに対する防御免疫は誘発または増強しない。
【0190】
本明細書に記載の組成物を使用して、P.falciparumを含むPlasmodium菌種;T.gondii(例えば、SAG2、SAG3、Tg34)を含むToxoplasma菌種;E.histolyticaを含むEntamoeba菌種;B.microtiを含むBabesia菌種;T.cruziを含むTrypanosoma菌種;G.lambliaを含むGiardia菌種;L.majorを含むLeshmania菌種;P.cariniiを含むPneumocystis菌種;T.vaginalisを含むTrichomonas菌種などの1つ以上の寄生虫(例えば、John,D.T.and Petri,W.A.,Markell and Voge’s Medical Parasitology-9th Ed.,2006,WB Saunders,Philadelphia、Bowman,D.D.,Georgis’ Parasitology for Veterinarians-8th Ed.,2002,WB Saunders,Philadelphiaを参照されたい)、または(i)線虫感染症(Enterobius vermicularis、Ascaris lumbricoides、Trichuris trichuria、Necator americanus、Ancylostoma duodenale、Wuchereria bancrofti、Brugia malayi、Onchocerca volvulus、Dracanculus medinensis、Trichinella spiralis、およびStrongyloides stercoralisを含むが、これらに限定されない);(ii)吸虫感染症(Schistosoma mansoni、Schistosoma haematobium、Schistosoma japonicum、Schistosoma mekongi、Opisthorchis sinensis、Paragonimus菌種、Fasciola hepatica、Fasciola magna、Fasciola giganticaを含むが、これらに限定されない);ならびに(iii)条虫感染症(Taenia saginataおよびTaenia soliumを含むが、これらに限定されない)などの、哺乳動物に感染することができる蠕虫に対する防御免疫を増強することができる。特定の実施形態では、抗原は、Schisostoma菌種、Schistosoma mansonii、Schistosoma haematobium、および/もしくはSchistosoma japonicumに由来するか、またはC.albicansを含むCandida菌種;C.neoformansを含むCryptococcus菌種などの酵母;M.tuberculosisもしくはM.lepraeなどのActinobacterium、または別のmycobacterium;Escherichia属、Salmonella属、Neisseria属、Borrelia属、Chlamydia属、Clostridium属、もしくはBordetella属のメンバーなどの細菌;単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、肝炎ウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ジカウイルス(ZIKV)、呼吸器多核体ウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、およびサイトメガロウイルスなどのウイルス;HIV-1もしくはHIV-2などのHIV;Aspergillus、Blastomyces、Coccidioides、およびPneumocystiなどの真菌、もしくはC.albicans、C.glabrata、C.krusei、C.lusitaniae、C.tropicalis、およびC.parapsilosisなどのCandida種を含む酵母;原虫、例えば、P.falciparum、P.vivax、P.malariae、およびP.ovaleを含むPlasmodium種などの寄生虫;Acanthamoeba、Entamoeba histolytica、Angiostrongylus、Schistosoma mansonii、Schistosoma haematobium、Schistosoma japonicum、Cryptosporidium、Ancylostoma、Entamoeba histolytica、Entamoeba coli、Entamoeba dispar、Entamoeba hartmanni、Entamoeba polecki、Wuchereria bancrofti、Giardia、およびLeishmaniaの1つ以上などの別の寄生虫を含む、細菌、ウイルス、または真菌などの少なくとも1つの感染性病原体に由来する。
【0191】
本明細書に記載の組成物を使用して、腺がん、脈絡膜黒色腫、急性白血病、聴神経鞘腫、膨大部がん、肛門がん、星細胞腫、基底細胞がん、膵がん(pancreatic cancer)、膀胱がん、気管支がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん(breast cancer)、バーキットリンパ腫、体がん(corpus cancer)、CUP症候群(原発不明のがん)、結腸直腸がん(colorectal cancer)、小腸がん、小腸腫瘍、卵巣がん(ovarian cancer)、子宮内膜がん、上衣腫、上皮がん型、ユーイング腫瘍、胃腸腫瘍、胃がん(gastric cancer)、胆嚢がん(gallbladder cancer)、胆嚢がん(gall bladder carcinoma)、子宮がん、子宮頚がん(cervical cancer)、子宮頚部、膠芽腫、婦人科腫瘍、耳、鼻、および咽喉腫瘍、血液腫瘍、有毛細胞白血病、尿道がん、皮膚がん、皮膚精巣がん、脳腫瘍(神経膠腫)、脳転移、精巣がん、脳下垂体腫瘍、カルチノイド、カポジ肉腫、喉頭がん、胚細胞性腫瘍、骨がん、結腸直腸がん(colorectal carcinoma)、頭頸部腫瘍(耳、鼻、および咽喉領域の腫瘍)、結腸がん、頭蓋咽頭腫、口腔がん(口腔領域および唇のがん)、中枢神経系のがん、肝がん、肝転移、白血病、眼瞼腫瘍、肺がん、リンパ節がん(ホジキン/非ホジキン)、リンパ腫、胃がん(stomach cancer)、悪性黒色腫、悪性腫瘍(neoplasia)、悪性腫瘍(tumor)、胃腸、乳がん(breast carcinoma)、直腸がん(rectal cancer)、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、ホジキン病、菌状息肉症、鼻がん、神経鞘腫、神経芽腫、腎がん、腎細胞がん、非ホジキンリンパ腫、乏突起神経膠腫、食道がん(esophageal carcinoma)、溶骨性がんおよび骨形成性がん、骨肉腫、卵巣がん(ovarial carcinoma)、膵がん(pancreatic carcinoma)、陰茎がん、形質細胞腫、頭頸部の扁平上皮細胞がん(SCCHN)、前立腺がん、咽頭がん、直腸がん(rectal carcinoma)、網膜芽細胞腫、腟がん、甲状腺がん、シュネーベルガー病、食道がん(esophageal cancer)、スピナリオムズ(spinalioms)、T細胞リンパ腫(菌状息肉症)、胸腺腫、尿道がん、泌尿器腫瘍、尿路上皮がん、外陰部がん、ならびに子宮頚がん(cervical carcinoma)を含むがんに由来する少なくとも1つの抗原に対する防御免疫を増強することができる。
【0192】
本明細書に記載の組成物を使用して、多発性硬化症、関節リウマチ、橋本病、I型糖尿病(若年発症糖尿病)、および自己免疫性ぶどう膜網膜炎などの自己免疫疾患1つ以上の抗原に対する防御免疫を増強することができる。抗体媒介性自己免疫障害には、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス(またはSLE)、グレーブス病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性喘息、クリオグロブリン血症、血栓性血小板減少性紫斑病、原発性胆管硬化症、および悪性貧血が含まれるが、これらに限定されない。
【0193】
リポソーム製剤、薬学的組成物、およびワクチン組成物の典型的な投与経路には、経口、局所、非経口、舌下、頬側、直腸、腟内、静脈内、皮内、経皮、経鼻、粘膜内、または皮下が非限定的に含まれる。いくつかの例示的な実施形態では、リポソーム製剤、薬学的組成物、およびワクチン組成物の投与は、筋肉内、眼内、非経口、または肺内である。
【0194】
好ましい実施形態では、本明細書に記載のリポソーム製剤、本明細書に記載の薬学的組成物、および本明細書に記載のワクチン組成物の投与方法は、対象における免疫応答を誘発または増強する。
【0195】
好ましい実施形態では、本明細書に記載のリポソーム製剤、本明細書に記載の薬学的組成物、および本明細書に記載のワクチン組成物の投与方法は、がん、感染性疾患、または自己免疫疾患に苦しんでいる対象における免疫応答を誘発または増強する。
【0196】
例示的な実施形態では、本明細書に記載のリポソーム製剤、本明細書に記載の薬学的組成物、および本明細書に記載のワクチン組成物の投与方法は、がん、感染性疾患、または自己免疫疾患に苦しんでいるヒト対象における免疫応答を誘発または増強する。
【0197】
本開示の治療方法は、単独で、または他の薬剤と組み合わせて本開示の組成物の投与を含んでもよく、したがって、治療ワクチンは、より広い治療処置管理体制の一部としての複数の治療構成成分のうちの1つであってもよいこともまた理解されるだろう。
【0198】
上記の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本明細書で言及され、かつ/または出願データシートに列挙される、米国特許、米国出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許出版物の全ての全体が、参照により本明細書に組み込まれる。様々な特許、出願、および出版物の概念を用いて、さらなる実施形態を提供するために、実施形態の態様は、必要に応じて修正され得る。
【実施例
【0199】
実施例1:Q21をサポニンとし、コレステロールをステロールとし、およびジオレオイルホスファチジルコリンをリン脂質とし、GLA*-LSQ製剤またはSLA-LSQ製剤の、1:125のサポニン対ステロール重量比を有する、リポソーム製剤GLA-LSQ(例えば、LPSとしてのGLA*またはSLA)の合成のための例示的な方法。
【0200】
例示的なGLA*-LSQリポソーム製剤またはSLA-LSQリポソーム製剤を製造するために、GLA*またはSLAを、まずガラス製の丸底フラスコ内のクロロホルム中、ジオレオイルホスファチジルコリンおよびコレステロール(4:1のリン脂質:コレステロール重量比)と混合してから、真空下でクロロホルムを蒸発させ、薄膜をリン酸緩衝液で水和させる。水浴超音波処理(10ml規模の場合)または高圧均質化(100ml以上の規模の場合)は、粒径をナノ寸法(動的光散乱[DLS]測定に基づいて、70~130nmの平均サイズ)に均一に低減する。高圧均質化を、20,000psi、10~15℃、および5回の均質化通過で、Microfluidicsの110EHまたは110P微少流体機モデルを使用して実行する。QS21分子を、粗サポニン混合物Quil-AのHPLC精製を介して得る。QS21を、リン酸緩衝液中に別個に可溶化させ、その後調製されたSLAリポソームまたはGLA*リポソーム中に混合してから、無菌濾過する。このプロセスは現在、再現可能かつ頑強である。例示的な最終製造製品を、0.22μmのフィルター(Millipore Steripak GP10)で濾過無菌化し、4mg/mlのDOPC、1mg/mlのコレステロール、20ug/mlのGLA*またはSLA、および8ug/mlのQS21を含有し、これは現在、投与前に抗原と1:1で混合するように設計されている。製造後、製剤を、5℃で保管し、製造時、ならびに製造日時から1週間後、2週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、および12ヶ月後などの、(DLSを介した)粒径の測定および目視外観を含む安定性監視プログラム下に置く。加えて、GLA*またはSLA濃度およびQS21濃度を、製造時、ならびに製造日時から6ヶ月後および12ヶ月後などの、荷電化粒子検出器(CAD)を有するHPLCによって測定する。IDRIで製造したバッチでは、粒径およびアジュバント濃度の監視は、SLA-LSQ製剤およびGLA*-LSQ製剤の良好な安定性を示す。試料はまた、安定性の監視の加速のために、より高い温度(25℃、37℃、および60℃)でも保管する。
【0201】
実施例2:BCGで準備刺激したモルモットにおけるブーストとしての、ID93+GLA-SEおよびID93+GLA-LSQの比較。
この研究の目的は、BCGで準備刺激したモルモットにおけるID93ワクチンとの使用に最適なアジュバント製剤を決定することである。ID93ワクチンは、病原性および潜在性に関連する4つのMtbタンパク質(Rv2608、Rv3619、Rv3620、およびRv1813)由来の融合タンパク質として製剤化される、組み換えサブユニットワクチン抗原である。最終的な891個のアミノ酸の融合タンパク質は、93KDaの予測質量を有する。ID93を、2つの異なるアジュバント製剤、GLA*-SEおよびGLA*-LSQと併用して試験し、BCGで準備刺激したモルモットにおけるこのワクチンの防御有効性を決定した。BCGで皮内に準備刺激し、3ヶ月間休ませた80匹の雌のモルモットを、研究に使用した。ID93ワクチンを用いた免疫化は、3週間間隔で3回(0日目、21日目、および42日目)であった。3回目の免疫化の10週間後、低用量のエアロゾル(1.17×10cfu/ml)のM.tuberculosis Beijing4619に曝露する。ID93の用量は、10ugであった。アジュバントAは、5ugのGLA*および2ugのQS21を有するGLA*-LSQであった。アジュバントBは、GLA-SE(5ugのGLA)であった。群1は、BCGで準備刺激しない唯一の群であり、食塩水を単独で投与し、群2には、食塩水を投与し、群3には、アジュバントAを投与し、群4には、ID93およびアジュバントAを投与し、群5には、ID93およびアジュバントBを投与した。
【0202】
感染後60日目、ID93-GLA-SEワクチンは、食塩水対照と比較して、BCGで準備刺激した群に類似して、肺および脾臓において細菌負荷が有意に低減した。加えて、ID93-GLA-SE群は、食塩水群と比較して、縦隔リンパ節において細菌が低下した一方で、BCGで準備刺激した群における細菌の低減は、この時点では統計的に有意ではなかった。BCGで準備刺激した群と比較して、改善した生存を示した唯一の群は、ID93+GLA-LSQであった。ID93+GLA-LSQは、感染後30日目および60日目の両方で、食塩水群と比較して、脾臓において細菌が有意に低減したが、肺またはMDLでは細菌の有意な低減はなかった。
【0203】
実施例3:健康な成人対象における、筋肉内投与されるワクチン候補ID93+GLA*-LSQおよびID93+GLA-SEの安全性、許容性、および免疫原性を評価するための、第1相、無作為化、二重盲検臨床試験
【0204】
18~49歳の年齢の70人の健康な成人における、単独で、またはGLA-SEもしくはGLA*-LSQアジュバントとともに製剤化される、ID93組み換えタンパク質抗原の安全性、許容性、および免疫原性を評価するための、無作為化、二重盲検臨床試験が進行中である。4つの治療群の概要を、以下の表1に述べる。対象は、1日目、29日目、および57日目に筋肉内投与される合計3回の用量を受けた。各研究注射の直前および7日後に行った安全性実験室分析を含めて、対象を、約422日間(3回目の研究注射後365日間)監視する。免疫学的アッセイ(1日目および71日目のLuminex、細胞内サイトカイン染色、ならびに1日目および85日目の抗体分析)のために、血液試料を得る。
表1
【表3】
【0205】
グルコピラノシル脂質A(GLA*)は、合成Toll様受容体4(TLR4)アゴニストである。GLAを安定した水中油型エマルジョン(SE)中に製剤化して、アジュバント製剤GLA-SEをもたらす。GLA分子のTLR4活性のために、GLA-SEと組み換えタンパク質抗原(ID93)との組み合わせは、Th1型T細胞応答をもたらす。GLA*-LSQは、GLAおよびサポニンQS-21を含むリポソーム製剤である。リポソームとともに製剤化されるGLAは、頑強な免疫応答を刺激することが示されているが、QS-21などの追加の免疫刺激性リガンドの添加は、Th1免疫応答を増加させる(Christensen D et al.,Expert Rev Vaccines2011;10:513-21)。QS-21は、ソープバーク(soap bark)の木(Quillaja Saponaria)に由来し、IFNγおよびTNFを発現する両方のCD4 T細胞を誘発し、多数の抗原に対する細胞傷害性Tリンパ球を産生することが示されている。
【0206】
GLA*をQS-21(LSQ)を有するリポソーム組成物中に製剤化して、アジュバントGLA*-LSQを生成し、使い捨てバイアル内に8μg/mLのQS-21と組み合わせた20μg/mLのGLA*として供給する。GLA*-LSQは、濁った液体のように見える。各2mLのバイアルは、0.4mLの充填体積を収容し、2~8℃で保管されなくてはならない。以下は、注射再構成手順に関する指示書である。群1:10μgのID93+5μgのGLA*-LSQ:上記の1.25mLのWFIを添加することによって、ID93のバイアルを再構成する(濃度:80μg/mLのID93)。0.2mLの再構成したID93および0.2mLのWFIを、GLA*-LSQの0.4mLのバイアルに添加し、完全に混合する。この最終混合バイアル内の合計体積は、これで0.8mLになる(濃度:20μg/mLのID93、10μg/mLのGLA)。0.5mL超の混合調製物を1mLのシリンジ中に引き出し、筋肉内注射のために、針を23~25ゲージ1~1 1/2インチの針と交換する。いかなる気泡も除去し、シリンジを0.5mL(10μgのID93および5μgのGLA)の送達のために準備する。シリンジおよび用量調製物の標準的な病院方針を遵守して、必要な用量の投与を確実にする。群2:10μgのID93+10μgのGLA*-LSQ:上記の1.25mLのWFIを添加することによって、ID93のバイアルを再構成する(濃度:80μg/mLのID93)。0.15mLの再構成したID93、0.45mLのWFI、および0.2mLのGLA*-LSQを、GLA*-LSQの別個の0.4mLのバイアルに添加し、完全に混合する。この最終混合バイアル内の合計体積は、これで1.2mLになる(濃度:10μg/mLのID93、10μg/mLのGLA)。1.0mL超の混合調製物を2.5または3mLのシリンジ中に引き出し、筋肉内注射のために、針を23~25ゲージ1~1 1/2インチの針と交換する。いかなる気泡も除去し、シリンジを1.0mL(10μgのID93および10μgのGLA)の送達のために準備する。シリンジおよび用量調製物の標準的な病院方針を遵守して、必要な用量の投与を確実にする。群3:10μgのID93+5μgのGLA*-SE:上記の1.25mLのWFIを添加することによって、ID93のバイアルを再構成する(濃度:80μg/mLのID93)。0.2mLの再構成したID93および0.2mLのWFIを、GLA-SEの0.4mLのバイアルに添加し、完全に混合する。この最終混合バイアル内の合計体積は、これで0.8mLになる(濃度:20μg/mLのID93、10μg/mLのGLA)。0.5mL超の混合調製物を1mLのシリンジ中に引き出し、筋肉内注射のために、針を23~25ゲージ1~1 1/2インチの針と交換する。いかなる気泡も除去し、シリンジを0.5mL(10μgのID93および5μgのGLA*)の送達のために準備する。シリンジおよび用量調製物の標準的な病院方針を遵守して、必要な用量の投与を確実にする。群4:10μgのID93単独:上記の1.25mLのWFIを添加することによって、ID93のバイアルを再構成する(濃度:80μg/mLのID93)。0.3mLの再構成したID93および0.9mLのWFIを、空の無菌バイアルに添加し、完全に混合する。この最終混合バイアル内の合計体積は、これで1.2mLになる(濃度:20μg/mLのID93)。0.5mL超の混合調製物を1mLのシリンジ中に引き出し、筋肉内注射のために、針を23~25ゲージ1~1 1/2インチの針と交換する。いかなる気泡も除去し、シリンジを0.5mL(10μgのID93)の送達のために準備する。シリンジおよび用量調製物の標準的な病院方針を遵守して、必要な用量の投与を確実にする。
【0207】
ID93に対するIgG抗体応答によって測定される抗体応答を、記述統計学を使用して研究日(1~85日目)によってまとめる。ベースラインから各訪問までの変化を、提示する。各用量の経時的な免疫学的応答データのグラフを、信頼限界とともに提示する。IgGおよびサイトカインの応答率を、正確な信頼区間とともに提示し、フィッシャー直接確率法を使用して治療群間で比較する。サイトカイン濃度の大きさは、データが正常に分布している場合、分散分析を使用して、またはデータ分布が非ガウス性である場合、適切な非パラメトリック分析方法を使用して、比較する。
図1
図2