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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】人工透析廃液中和処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20230830BHJP
   C02F 1/66 20230101ALI20230830BHJP
【FI】
A61M1/16 160
C02F1/66 510K
C02F1/66 530B
C02F1/66 530C
C02F1/66 530D
C02F1/66 530G
C02F1/66 530K
C02F1/66 530L
C02F1/66 530P
C02F1/66 540D
C02F1/66 540G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021153195
(22)【出願日】2021-09-21
(65)【公開番号】P2023045024
(43)【公開日】2023-04-03
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】521414070
【氏名又は名称】西村 秀作
(73)【特許権者】
【識別番号】521414081
【氏名又は名称】株式会社ニシ工業
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 秀作
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-003262(JP,A)
【文献】登録実用新案第3130927(JP,U)
【文献】特開2020-195997(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0162743(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
C02F 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工透析装置から排出される人工透析廃液を中和処理する人工透析廃液中和処理装置であって、
機器類を支持するための支持機構と、
前記支持機構の下端部に設けられ、前記人工透析装置から排出される人工透析廃液を採水する採水タンクと、
前記支持機構内の前記採水タンクよりも高い位置に設けられ、人工透析廃液を中和するための中和槽と、
前記支持機構内の前記中和槽よりも高い位置に設けられ、前記採水タンクから揚水して前記中和槽に人工透析廃液を移送するための、第1及び第2の減圧タンクと、
前記第1及び第2の減圧タンク内を減圧するためのポンプと、
前記第1及び第2の減圧タンクの上部に設けられ、これらの内部を前記ポンプによる吸引と、大気開放とに切り替えるための弁機構と、
前記第1及び第2の減圧タンクの底部に夫々設けられた、第1及び第2のチャッキ弁と、
前記採水タンクと、前記第1及び第2の減圧タンクとを夫々連通する第1及び第2の管路と、
前記第1及び第2の減圧タンクの前記第1及び第2のチャッキ弁の出口側と前記中和槽とを夫々連通する中和槽入口管路と、
前記中和槽と排水口とを連通する中和槽出口管路と、
前記弁機構の開閉を制御し、前記採水タンクから前記第1及び第2の減圧タンクへの揚水、前記第1及び第2の減圧タンクから前記中和槽への落差による供給を、前記第1及び第2の減圧タンクで交互に行わせる制御部と
を具備することを特徴とする人工透析廃液中和処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の人工透析廃液中和処理装置であって、
前記中和槽入口管路に介挿され、前記中和槽入口管路より大径とされたパイプと、当該パイプ内に配設された複数の仕切板と、前記パイプ内に人工透析廃液を導入するための入口部及び排出するための出口部とを具備し、
前記パイプ内を人工透析廃液が、前記第1及び第2の減圧タンクから前記中和槽への落差により通過する際に、人工透析廃液と薬液とをミキシングするミキシング機構を具備したことを特徴とする人工透析廃液中和処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の人工透析廃液中和処理装置であって、
前記採水タンクと前記中和槽出口管路とを連通するバイパス管路を具備したことを特徴とする人工透析廃液中和処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の人工透析廃液中和処理装置であって、
前記制御部は、前記中和槽での中和処理が不十分な人工透析廃液が生じた場合、前記バイパス管路を経由して前記中和槽出口管路から前記採水タンクに当該中和処理が不十分な人工透析廃液を戻すよう制御することを特徴とする人工透析廃液中和処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工透析廃液をフロアーから直接バキューム方式によって吸引し連続処理する方法で中和処理する人工透析廃液中和処理装置及び一般中和処理装置に準ずる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から腎臓に疾患のある患者等に対して、人工透析装置による人工透析が行われており、この人工透析装置から排出された人工透析廃液を処理する装置についても各種提案されている。
【0003】
透析施設からの排水を公共下水道に放流するためには、環境基準及び各市町村の基準値内のpH(例えば、pH5.0からpH9.0)とすることが求められている。人工透析装置による透析を行う場合、酸性の液やアルカリ性の液を通流して洗浄等の処理を行う必要がある。このような人工透析廃液について、例えば大規模な病院においては、室外に設置した専用の人工透析廃液中和処理装置を用いて中和処理を行っている。一方、例えばビル内に設けられた比較的小規模なビル内診療施設(例えば、10床程度。)では、排出される廃液について、同一フロアーにて中和等の処理を行う必要が生じる場合があり、その処理が困難であるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-269014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したとおり、従来はビル内に設けられた比較的小規模なビル内診療施設等において、同一フロアー等で人工透析廃液を中和処理することのできる装置が無く、その開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたもので、人工透析廃液をビル内等の同一フロアーで中和処理することのできる人工透析廃液中和処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の人工透析廃液中和処理装置は、人工透析装置から排出される人工透析廃液を排水管から中和処理する人工透析廃液中和処理装置であって、機器類を支持するための支持機構と、前記支持機構の下端部に設けられ、前記人工透析装置から排出される人工透析廃液を採水する採水タンクと、前記支持機構内の前記採水タンクよりも高い位置に設けられ、人工透析廃液を中和するための中和槽と、前記支持機構内の前記中和槽よりも高い位置に設けられ、前記採水タンクから揚水して前記中和槽に人工透析廃液を移送するための、第1及び第2の減圧タンクと、前記第1及び第2の減圧タンク内を減圧するためのポンプと、前記第1及び第2の減圧タンクの上部に設けられ、これらの内部を前記ポンプによる吸引と、大気開放とに切り替えるための弁機構と、前記第1及び第2の減圧タンクの底部に夫々設けられた、第1及び第2のチャッキ弁と、前記採水タンクと、前記第1及び第2の減圧タンクとを夫々連通する第1及び第2の管路と、前記第1及び第2の減圧タンクの前記第1及び第2のチャッキ弁の出口側と前記中和槽とを夫々連通する中和槽入口管路と、前記中和槽と排水口とを連通する中和槽出口管路と、前記弁機構の開閉を制御し、前記採水タンクから前記第1及び第2の減圧タンクへの揚水、前記第1及び第2の減圧タンクから前記中和槽への落差による供給を、前記第1及び第2の減圧タンクで交互に行わせる制御部とを具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の人工透析廃液中和処理装置によれば、人工透析廃液をビル内等の同一フロアーで中和処理することのできる人工透析廃液中和処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る人工透析廃液中和処理装置の全体構成を模式的に示すブロック図。
図2】実施形態に係る人工透析廃液中和処理装置のミキシング装置の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態に係る人工透析廃液中和処理装置について詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る人工透析廃液中和処理装置100の全体構成を模式的に示すブロック図である。図1に示すように、人工透析廃液中和処理装置100は、例えば、フレーム、筐体等からなり、装置を構成する機器類を支持、収納するための支持機構101を備えている。
【0012】
上記支持機構101の中で最も低い位置には、採水タンク110が設けられている。この採水タンク110には、人工透析廃液流入配管111が設けられており、図示しない人工透析装置からの人工透析廃液が、この人工透析廃液流入配管111から、流入するようになっている。
【0013】
また、採水タンク110には、人工透析廃液流出配管112と、バイパス配管128が設けられている。人工透析廃液流出配管112は、採水タンク110に流入した人工透析廃液のうち、中和処理が不要な排液をそのまま流すためのものである。人工透析廃液流出配管112には、排出弁113が設けられている。また、バイパス配管128は、中和処理か不十分な場合、後述する中和槽120からの人工透析廃液を採水タンク110に戻すためのものである。
【0014】
採水タンク110には、流入した人工透析廃液のpHを苦呈するための図示しないpH測定器や、水位の異常(上限及び加減)を検知するための図示しない水位計等が設けられている。
【0015】
支持機構101の採水タンク110より高い位置には、人工透析廃液を中和するための中和槽120が設けられている。また、支持機構101の中和槽120より高い位置には、複数(本実施形態では2つ)の減圧タンク130a、130bが設けられている。さらに、支持機構101には、複数(本実施形態では2つ)の薬液タンク140a、140bが設けられている。減圧タンク、薬液タンクの数は2つに限られるものではなく、3つ以上としてもよい。
【0016】
2つの減圧タンク130a、130bには、採水タンク110から揚水するための揚水配管131a、131bがそれぞれ設けられている。また、減圧タンク130a、130bには、これらの内部を減圧するための吸引ポンプ150が減圧配管151を介して接続されている。減圧配管151は、途中で分岐してそれぞれ減圧タンク130a、130bに接続されており、これらの分岐した減圧配管151には、それぞれ減圧用弁152a、152bが介挿されており、これらを開閉することによって減圧するタンクを選択することができるようになっている。
【0017】
また、減圧タンク130a、130bには、それぞれ内部を大気開放するための大気開放配管153a、153bが設けられており、これらの大気開放配管153a、153bには、それぞれ大気開放弁154a、154bが介挿されている。減圧タンク130a、130bの底部には、それぞれチャッキ弁132a、132bが設けられており、これらのチャッキ弁132a、132bを介して揚水した人工透析廃液を中和槽120に送るための中和槽入口配管121が接続されている。
【0018】
前述したとおり、減圧タンク130a、130bは、中和槽120より高い位置に配置されており、減圧タンク130a、130bから中和槽120への人工透析廃液の移送は、落差により行われる。また、本実施形態では、中和槽入口配管121には、落差を利用して人工透析廃液と薬液とをミキシングするミキシング装置122が介挿されている。
【0019】
中和槽120には、モータの回転によって撹拌する撹拌プロペラ123、pH計測器124が設けられている。また中和槽120の上側端部には、監視槽125が設けられており、ここにもpH計測器124、水位計126が設けられている。そして、この監視槽125内でpHが確認された廃液のみが中和槽出口配管127を通って公共下水道に排水されるようになっている。中和槽出口配管127には、中和槽出口配管127から採水タンク110に透析廃液を戻すためのバイパス配管128が接続されており、中和槽出口配管127には、流路を切り替える為の流路切り替え弁129が介挿されている。
【0020】
中和槽120には、薬液タンク140a、140bから中和槽120に薬液を供給するための薬液供給配管141a、141bが接続されている。これらの薬液供給配管141a、141bには、それぞれ薬液を送るための薬液ポンプ142a、142bが設けられている。また、薬液タンク140a、140bには、前述したミキシング装置122に薬液を供給するための薬液供給配管143a、143bが接続されている。これらの薬液供給配管143a、143bには、それぞれ薬液を送るための薬液ポンプ144a、144bが設けられている。
【0021】
また、人工透析廃液中和処理装置100には、コンピュータ等からなる制御部160が設けられており、この制御部160によって、各弁の開閉制御、各駆動部分の制御が行われる。
【0022】
上記構成の人工透析廃液中和処理装置100は、例えば、ビル内に設けられた比較的小規模なビル内診療施設等にける人工透析において、同一フロアー等で人工透析廃液を中和処理する際に使用される。
【0023】
人工透析装置では、昼間の人工透析中には、透析に伴う人工透析廃液が発生するが、この人工透析廃液については中和処理する必要がない。この場合、排出弁113が開かれて人工透析廃液流出配管112から人工透析廃液がそのまま排水される。一方、人工透析を行わない夜間においては、アルカリ性の薬液、例えば次亜塩素酸、酸性の薬液、例えば酢酸などを用いて、洗浄、消毒を実施する。この洗浄、消毒の際の人工透析廃液を人工透析廃液中和処理装置100によって、pH5.0からpH9.0、より好ましくはpH6.0からpH8.0程度に中和して公共下水道に流す。この場合、人工透析廃液流出配管112の排出弁113は閉じられる。
【0024】
上記のように、人工透析廃液中和処理装置100は、ビル内の人工透析装置が設置されたフロアーと同一のフロアーに設置される。この場合、人工透析装置から排出される人工透析廃液を採水タンク110に採水するために、採水タンク110は、支持機構101の中で最も低い位置に配置されている。
【0025】
この採水タンク110内に中和処理が必要な人工透析廃液が流入した場合、吸引ポンプ150により、減圧配管151を介して減圧タンク130a、130b内を減圧し、採水タンク110内の人工透析廃液を減圧タンク130a、130b内に揚水する。この際、減圧配管151に介挿された減圧用弁152a、152bを一定時間間隔で交互に開き、交互に減圧タンク130a、130b内に揚水する。そして、一方に揚水している間に、他方に揚水した人工透析廃液を落下させて中和槽120に送水することによって、連続的に採水タンク110からの揚水と中和槽120への送水を行う。
【0026】
すなわち、例えば減圧タンク130aに揚水する際は、減圧用弁152aを開き、大気開放弁154aを閉じる。これと同時に減圧タンク130b側では、減圧用弁152bを閉じ、大気開放弁154bを開くことによって、減圧タンク130b内に揚水した人工透析廃液を落下させて中和槽120に送水する。この際、チャッキ弁132a、132bは、減圧して揚水する際に自動的に閉じ、常圧として人工透析廃液を落下させる際に自動的に開く。
【0027】
このように、複数の減圧タンク130a、130bを用いることによって、低い位置に設置された採水タンク110から連続的に揚水することができる。また、減圧タンク130a、130bを用いて吸い上げることにより、例えば、揚水中にエアーが混入したような場合にも、問題なく揚水を行うことができる。また、例えば10床程度の人工透析の場合、洗浄液の流量が最大で毎分5リットル程度となる事が想定されるが、例えば、減圧タンク130a、130bの容量を2リットル程度とし、20秒毎にこれらの減圧タンク130a、130bを切り替えて使用することによって、対応することができる。なお、この場合、吸引ポンプ150としては、例えば、最大風量毎分40リットル、揚程4メートル程度の性能のものを使用することができる。
【0028】
減圧タンク130a、130bに揚水された人工透析廃液は、途中ミキシング装置122内を通り、薬液とミキシングされてある程度中和された状態で中和槽120に送水される。ここで、図2にミキシング装置122の構成を示す。ミキシング装置122は、中和槽入口配管121等の他の配管類より大径のチューブ200を具備している。このチューブ200内に、半円状複数の仕切板203を対向する内壁面に沿って交互に複数設けた構成となっており、入口201から入った人工透析廃液が出口202から出るまでの間、仕切板203沿って蛇行して流れることにより、ミキシング装置122の入口201側に設けられた薬液流入口201a,201bから添加された薬液とミキシングされる。この場合、人工透析廃液及び薬液は、落差によって流れる間に、モータ等の駆動機構を使用せずにミキシングを行うことができる。
【0029】
中和槽120内に流入した人工透析廃液は、pH計測器124でpHを監視しながら、中和のための薬液が薬液タンク140a,140bから添加され、撹拌プロペラ123で撹拌されて所定範囲のpHに調整される。そして、監視槽125内でさらにpH計測器124によるpHの確認の後、監視槽125から中和槽出口配管127を通って下水に流される。この時、監視槽125において、所定のpH範囲内に入っていることが確認できなかった場合は、流路切り替え弁129が閉じられ、人工透析廃液が採水タンク110に戻されるようになっている。これによって、基準を満たさないpHの人工透析廃液が下水に流されることを確実に防止することができる。
【0030】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
100……人工透析廃液中和処理装置、101……支持機構、110……採水タンク、111……人工透析廃液流入配管、112……人工透析廃液流出配管、113……排出弁、120……中和槽、121……中和槽入口配管、122……ミキシング装置、123……撹拌プロペラ、124……pH計測器、125……監視槽、126……水位計、127……中和槽出口配管、128……バイパス配管、129……流路切り替え弁、130a,130b……減圧タンク、131a、131b……揚水配管、132a、132b……チャッキ弁、140a,140b……薬液タンク、141a、141b、143a、143b……薬液供給配管、142a、142b、144a、144b……薬液ポンプ、150……吸引ポンプ、151……減圧配管、152a、152b……減圧用弁、153a、153b……大気開放配管、154a、154b……大気開放弁、160……制御部。
図1
図2