(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 21/38 20060101AFI20230830BHJP
B63B 11/04 20060101ALI20230830BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B63H21/38 B
B63B11/04 B
F02M37/00 H
(21)【出願番号】P 2021179316
(22)【出願日】2021-11-02
(62)【分割の表示】P 2017176714の分割
【原出願日】2017-09-14
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】503218067
【氏名又は名称】住友重機械マリンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】角田 勇人
(72)【発明者】
【氏名】溝越 貴章
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205532897(CN,U)
【文献】特開2009-241903(JP,A)
【文献】特許第6197089(JP,B1)
【文献】特開平11-200973(JP,A)
【文献】特開2007-331670(JP,A)
【文献】特開2011-112362(JP,A)
【文献】中国実用新案第206325502(CN,U)
【文献】婦木正已,“中小形,中速機関における船内A,Cブレンド油の使用について”,日本舶用機関学会誌,日本,日本舶用機関学会,1980年,第15巻第2号,p.220-225,DOI:10.5988/jime1966.15.220,ISSN 1884-4758(online),0388-3051(print)
【文献】大阪商船三井船舶株式会社工務部,“りおぐらんで丸(準高速貨物船)”,関西造船協会誌,日本,関西造船協会,1968年03月,第127号,p.57-62,DOI: 10.14856/kansaiks.127.0_57,ISSN 2433-104X(online),0389-9101(print)
【文献】“船舶インシデント調査報告書”,日本,運輸安全委員会(海事専門部会),2015年08月27日,p.1-6
【文献】天野義一,“舶用ディーゼル発電機のA/Cブレンド油ならびに低質油使用について”,日本舶用機関学会誌,日本,日本舶用機関学会,1980年,第15巻第2号,p.225-230,DOI:10.5988/jime1966.15.225,ISSN 1884-4758(online),0388-3051(print)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/38,
B63B 11/04,49/00,79/15,79/40,
F02M 37/00,
G01F 9/00,
F02D 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1燃料を貯留する第1燃料タンクと、
前記第1燃料とは異なる第2燃料を貯留する第2燃料タンクと、
前記第1燃料タンクから前記第1燃料を排出する第1燃料経路と、
前記第2燃料タンクから前記第2燃料を排出する第2燃料経路と、
前記第1燃料経路及び前記第2燃料経路の後段に設けられて、前記第1燃料経路及び前記第2燃料経路からの燃料を合流させる合流経路と、
前記合流経路からの燃料を導入して燃焼させる燃焼機関と、
前記合流経路よりも前段において、前記第1燃料の消費量を測定する第1の流量計と、
前記合流経路よりも前段において、前記第2燃料の消費量を測定する第2の流量計と、
少なくとも前記第1燃料経路上または前記第2燃料経路上に設けられて、燃料を貯留する中間タンクと、
前記中間タンクにおける前記燃料の液面を測定する液面計と、
を有し、
前記第1の流量計、または前記第2の流量計は、前記中間タンクよりも前段に設けられ
て、前記液面計との組み合わせによって前記第1燃料の消費量または前記第2燃料の消費量を測定する、船舶。
【請求項2】
前記中間タンクがオーバーフローした際の返送経路をさらに有する、請求項1に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関し、特に燃料の種類に応じた消費量を算出するものに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶において燃料タンクから供給される燃料油の消費量を計測する方法として、従来から燃料タンクに設けられる液面計を用いた方法が用いられている。一方、特許文献1では、液面計を用いずに燃料油の消費量を計測する自動車用の燃料残量計測装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、海運業界において燃費報告に関する法整備等が進められ、燃料油の種類毎に燃料の消費量を高い精度で計測して報告することが求められるようになってきた。しかしながら、従来の船舶では燃料油の消費量を種類毎に高い精度で計測することは求められていなかった。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、燃料油の種類毎に消費量を精度良く測定することが可能な船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る船舶は、第1燃料油を貯留する第1燃料油タンクと、前記第1燃料油とは異なる第2燃料油を貯留する第2燃料油タンクと、前記第1燃料油タンクから前記第1燃料油を排出する第1燃料油経路と、前記第2燃料油タンクから前記第2燃料油を排出する第2燃料油経路と、前記第1燃料油経路及び前記第2燃料油経路の後段に設けられて、前記第1燃料油経路及び前記第2燃料油経路からの燃料油を合流させる合流経路と、前記合流経路からの燃料油を導入して燃焼させる燃焼機関と、前記合流経路よりも前段において、前記第1燃料油の消費量を測定する第1燃料油消費量測定部と、前記合流経路よりも前段において、前記第2燃料油の消費量を測定する第2燃料油消費量測定部と、を有する。
【0007】
上記の船舶によれば、互いに異なる2種類の燃料油が合流経路を経て燃焼機関に対して供給される場合に、合流経路よりも前段に第1燃料油消費量測定部が設けられると共に、合流経路よりも前段に第2燃料油消費量測定部が設けられる。したがって、燃料油の種類毎に、その消費量を精度良く測定することが可能となる。
【0008】
ここで、前記第1燃料油消費量測定部及び前記第2燃料油消費量測定部の一方は、前記合流経路よりも前段の経路上に設けられた、前記合流経路へ流れる燃料油の量を測定する流量計である態様とすることができる。
【0009】
上記のように、第1燃料油消費量測定部及び第2燃料油消費量測定部の一方が合流経路へ流れる燃料油の量を測定する流量計であることで、流量計により燃料油の移動量を直接測定することができ、流量計が設けられている経路での燃料油の消費量を精度良く測定することが可能となる。
【0010】
また、前記第1燃料油経路上に、前記第1燃料油を貯留する中間タンクをさらに有し、前記第1燃料油消費量測定部は、前記第1燃料油タンクからの前記第1燃料油の排出量を測定する流量計と、前記中間タンクでの前記第1燃料油の貯留量を測定する貯留量測定部と、を有する態様とすることができる。
【0011】
上記のように、第1燃料油経路上に中間タンクが設けられている場合、第1燃料油タンクからの排出量を測定する流量計と、中間タンクでの第1燃料油の貯留量を測定する貯留量測定部と、を組み合わせることで、中間タンクでの第1燃料油の消費量を精度良く測定することが可能となる。
【0012】
前記流量計は、質量流量計である態様とすることができる。また、前記流量計は、体積流量計と温度または密度測定部とである態様とすることができる。流量計を上記の構成とすることで、流量計が設けられている経路での燃料油の消費量を精度良く測定することが可能となる。
【0013】
また、前記貯留量測定部は、前記中間タンク内での前記第1燃料油の液面を測定する液面計と、温度または密度測定部とである態様とすることができる。
【0014】
貯留量測定部が中間タンク内での第1燃料油の液面を測定する液面計と、温度または密度測定部とであることで、液面計を用いて中間タンク内の第1燃料油の貯留量をより簡単に測定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、燃料油の種類毎に消費量を精度良く測定することが可能な船舶が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る船舶に含まれる燃料油管理システムの概略構成図である。
【
図2】第2実施形態に係る船舶に含まれる燃料油管理システムの概略構成図である。
【
図3】第3実施形態に係る船舶に含まれる燃料油管理システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る船舶1に含まれる燃料油管理システム2の概略構成図である。燃料油管理システム2は、船舶1で使用される燃料油の管理を行うシステムであり、船舶1内に設けられる。
図1に示すように、燃料油管理システム2は、第1燃料油タンク11と、第2燃料油タンク12と、第1燃料油消費量測定部13と、第2燃料油消費量測定部14と、燃焼機関15と、を有する。
【0019】
燃料油管理システム2では、上記のように少なくとも2種類の燃料油(第1燃料油及び第2燃料油)が個別に貯留される2つの燃料油タンクが設けられている。すなわち、第1燃料油タンク11及び第2燃料油タンク12には、互いに異なる種類の燃料油が貯留される。これらの燃料油タンクから供給される2種類の燃料油は、同一の燃焼機関15に対して供給される。燃焼機関15とは、燃料油を燃焼して消費する機関であり、例えば、主機、発電機、ボイラ等が挙げられる。
【0020】
したがって、燃料油管理システム2では、第1燃料油タンク11から供給される第1燃料油が流れる第1燃料油経路L1と、第2燃料油タンク12から供給される第2燃料油が流れる第2燃料油経路L2と、第1燃料油経路L1からの第1燃料油及び第2燃料油経路L2からの第2燃料油の両方が流れる合流経路L3と、を有する。第1燃料油経路L1を流れる第1燃料油は、合流経路L3を経て燃焼機関15へ供給される。また、第2燃料油経路L2を流れる第2燃料油は、合流経路L3を経て燃焼機関15へ供給される。燃焼機関15へ供給する燃料油の種類及びその供給量は、図示しない制御部により制御される。制御部からの指示に基づいて、バルブが開閉されたりポンプが作動したりすることによって、燃焼機関15へ供給する燃料油の種類及び供給量が制御される。
【0021】
第1燃料油消費量測定部13は、第1燃料油経路L1又はそれよりも前段に設けられる。第1燃料油消費量測定部13は、第1燃料油の消費量、すなわち、第1燃料油経路L1を経て燃焼機関15へ供給された第1燃料油の重量を測定する機能を有する。第1燃料油経路L1から燃焼機関15へ供給された第1燃料油の量を測定する方法としては、概略、流量計等を用いて第1燃料油経路L1を流れて燃焼機関15へ供給される第1燃料油の流量(体積)を測定し、当該流量から重量を算出する方法と、液面計等を用いて第1燃料油タンク11に貯留される第1燃料油の体積変化を測定し、当該体積変化から重量を算出する方法と、が挙げられる。燃料油の体積から重量を算出する場合には、燃料油の密度が必要になるが、密度は温度によって変化するため、その補正のために温度に係る情報が必要となる。流量計には、体積流量計と質量流量計とがある。体積流量計は、求めた体積流量を質量流量に変換するための密度を温度補正するための温度センサ(温度測定部)または密度センサ(密度測定部)を適宜設けるが、質量流量計は直接質量を測定できるので温度センサ等は必要ない。液面計は体積しか測定できないので、温度センサ(温度測定部)または密度センサ(密度測定部)等を設ける。ただし、第1燃料油消費量測定部13の装置構成は、適宜変更することができる。また、密度センサは密度を直接計測できるので温度補正をする必要はない。さらに、密度センサは、γ線が物質を透過する際の吸収度合を計測するもの、密度の変化による自由振動数の変化を利用して計測するもの等が市販されている。
【0022】
第2燃料油消費量測定部14は、第2燃料油経路L2又はそれよりも前段に設けられる。第2燃料油消費量測定部14は、第2燃料油の消費量、すなわち、第2燃料油経路L2を経て燃焼機関15へ供給された第2燃料油の重量を測定する機能を有する。したがって、第1燃料油消費量測定部13と同様に、第2燃料油消費量測定部14は、第2燃料油経路L2での流量計又は第2燃料油タンク12での液面計と、第2燃料油の温度を計測する温度センサと、を含む。ただし、第2燃料油消費量測定部14の装置構成は、適宜変更することができる。
【0023】
上記の燃料油管理システム2を含む船舶では、互いに異なる複数種類(燃料油管理システム2では、2種類)の燃料油が合流経路L3を経て燃焼機関に対して供給される場合に、各燃料油が個別に流れる経路又はそれよりも前段において、燃料油の消費量を測定する燃料油消費量測定部が設けられる。燃料油管理システム2の場合には、第1燃料油経路L1又はその前段(すなわち、合流経路L3よりも前段)に第1燃料油消費量測定部13が設けられ、第2燃料油経路L2又はその前段(すなわち、合流経路L3よりも前段)に第2燃料油消費量測定部14が設けられる。したがって、燃料油の種類毎に、その消費量を精度良く測定することが可能となる。
【0024】
近年、環境規制の一環としてCO2排出量を把握するために燃費報告制度に関する欧州規則(EU-MRV規則)が採択されたように、海運業界において燃料の種類毎にCO2発生量が違うため燃料油の種類毎に消費量を精度よく測定することが求められている。しかしながら、従来の船舶では、自船での燃費管理等を目的として燃料油の消費量を測定することは行われていた。しかしながら、上記のEU-MRV規則のように燃料油の種類毎に消費量の管理を高い精度で行うことが法的に求められていなかったため、特に、複数種類の燃料油を燃焼機関で使用する場合に、種類毎の燃料油の消費量の測定を高い精度で行われておらず、種類毎に消費量の測定を行うための装置構成も設けられていなかった。
【0025】
これに対して、本実施形態に係る燃料油管理システム2を含む船舶1では、合流経路L3において各燃料油が合流するよりも前段で燃料油の消費量を測定することで、燃料油の消費量をその種類毎に個別に精度良く測定することを実現する。燃焼機関15において燃料油を使用する場合、実際には互いに異なる燃料油の一方を燃焼機関15へ供給する。したがって、合流経路L3において種類毎の燃料油の消費量を測定することも可能ではある。ただし、合流経路L3においては、燃料油の切り替え時等に複数種類の燃料油が混合される可能性もあるため、燃料油の種類毎に消費量を精度良く測定することが難しいと考えられる。これに対して、本実施形態に係る燃料油管理システム2を含む船舶1では、合流経路L3よりも前段に燃料油の消費量を測定する構成とすることで、混合された燃料油の消費量が測定されることを回避することができる。
【0026】
また、第1燃料油消費量測定部13又は第2燃料油消費量測定部14として、燃料油経路に設けられた流量計を含む場合、燃焼機関15へ供給される燃料油の流量を直接的に測定することもできるため、燃料油の消費量を精度良く測定することが可能となる。
【0027】
一方、第1燃料油消費量測定部13又は第2燃料油消費量測定部14として、燃料油タンクに設けられた液面計を含む場合、燃料油タンクにおける燃料油の液面の変動から燃料油の消費量を測定することができると共に、燃料油経路側には新たな測定計等を設けることが不要となるため、経路の取り回し等を自由に行うことができる。ただし、液面計によるタンク内での燃料油の液面変動の測定に基づく燃料油の消費量の算出には誤差が含まれる場合がある。例えば、タンク底面積が大きい場合には、燃料油の僅かな消費は液面変動から正確に測定できない場合がある。したがって、タンク内での液面計を用いた燃料油の消費量の算出は、タンクの底面積がある程度小さい場合に好適に用いられる。
【0028】
(第2実施形態)
第1実施形態では、2種類の燃料油(第1燃料油及び第2燃料油)が、それぞれの燃料油タンクから1つの燃焼機関15に対して供給される場合について説明した。しかしながら、実際には、燃料油を貯留するタンクと燃焼機関との間に清浄機(Purifier)等が設けられるため、その後段に清浄後の燃料油を貯留するためのタンク(中間タンク)が設けられる場合がある。また、船舶は、燃焼機関を複数有し、複数の燃焼機関に対して、同一の燃料油タンクから燃料油を供給することがある。第2実施形態では、2種類の燃料油を複数の燃焼機関に対して供給し、且つ、各燃料油の経路上に中間タンクが設けられる場合について説明する。
【0029】
図2は、第2実施形態に係る燃料油管理システム3を含む船舶1Aについて説明する図である。
図2では、第1燃料油に対応する燃料油がディーゼル油(Diesel Oil:D.O.)であり、第2燃料油に対応する燃料油が重質燃料油(Heavy Fuel Oil:HFO)である場合について説明する。また、
図2では、燃焼機関15として、発電機15A(G/E)、主機15B(M/E)、及び、ボイラ15C(BLR)の3つの燃焼機関が設けられている。以下、ディーゼル油をDOと記載し、重質燃料油をHFOと記載する場合がある。
【0030】
図2に示す船舶1Aの燃料油管理システム3のうち、まず、ディーゼル油(DO)側の流路について説明する。まず、第1燃料油タンクに相当するタンクとして、DO貯留タンク11A(D.O. Storage Tank)が設けられる。このDO貯留タンク11AからのDOは、経路L11を経て清浄機21(Purif.)へ導入される。また、清浄機21による清浄後のDOは、経路L12を経て中間タンクであるDOサービスタンク22(D.O. Service Tank)へ導入される。また、DOサービスタンク22からDO貯留タンク11Aに対して、DOサービスタンク22においてDOがオーバーフローした場合の返送経路L13が設けられる。このように、DO側では、DO貯留タンク11A、清浄機21、及びDOサービスタンク22を含む循環経路が形成される。
【0031】
DOサービスタンク22から分岐した一部のDOが、発電機15A及び主機15Bに対して燃料油を供給する合流経路L31に対して経路L14を経て供給される。また、経路L11から分岐した一部のDOが、ボイラ15Cに対して燃料油を供給する合流経路L32に対して経路L15を経て供給される。
【0032】
上記のDO側の経路のうち、経路L11~L15がDOのみが流れる経路であり、第1燃料油経路に相当する。これらの経路のうち、DOのみが流れて合流経路L31に対して接続する経路が経路L14となる。また、DOのみが流れて合流経路L32に対して接続する経路が経路L15となる。したがって、
図2に示すように、経路L14及び経路L15上に、それぞれ流量計131及び流量計132を設けることで、DO側の循環経路から分岐して燃焼機関15(発電機15A、主機15B、及び、ボイラ15C)に接続する合流経路L31,L32に流れるDOの流量、すなわち、DOの消費量を測定することができる。このように、流量計131,132がDO(第1燃料油)側の燃料油消費量測定部(第1燃料油消費量測定部)として機能する。なお、DOの消費量(重量)を算出するために、DOの温度を測定するための温度計が別途設けられていても良い。
【0033】
DO側の経路に設けられる流量計131,132による測定の結果(及び、必要に応じて温度計による測定の結果)は、
図2に示す演算・記録部40に対して送られ、演算・記録部40によりこれらの測定結果を取りまとめて、DOの消費量を算出する構成とすることができる。この場合、演算・記録部40もDO(第1燃料油)側の燃料油消費量測定部(第1燃料油消費量測定部)として機能する。
【0034】
次に、重質燃料油(HFO)側の流路について説明する。まず、第2燃料油タンクに相当するタンクとして、HFO貯留タンク12A(HFO Storage Tank)が設けられる。このHFO貯留タンク12AからのHFOは、経路L21を経て中間タンクであるHFO静置タンク(HFO Settling Tank)31へ導入される。また、HFO静置タンク31からのHFOは、経路L22を経て清浄機32(Purif.)へ導入される。また、清浄機32による清浄後のHFOは、経路L23を経て中間タンクであるHFOサービスタンク33(HFO Service Tank)へ導入される。また、HFOサービスタンク33からHFO静置タンク31に対して、HFOサービスタンク33においてHFOがオーバーフローした場合の返送経路L24が設けられる。このように、HFO側では、HFO貯留タンク12Aよりも後段において、HFO静置タンク31、清浄機32、及びHFOサービスタンク33を含む循環経路が形成される。
【0035】
HFOサービスタンク33から分岐した一部のHFOが、発電機15A及び主機15Bに対して燃料油を供給する合流経路L31に対して経路L25を経て供給される。また、HFO静置タンク31から分岐した一部のHFOが、ボイラ15Cに対して燃料油を供給する合流経路L32に対して経路L26を経て供給される。
【0036】
上記のHFO側の経路のうち、経路L21~L26がHFOのみが流れる経路であり、第2燃料油経路に相当する。これらの経路のうち、HFOのみが流れて合流経路L31に対して接続する経路が経路L25となる。また、HFOのみが流れて合流経路L32に対して接続する経路が経路L26となる。したがって、
図2に示すように、経路L25及び経路L26上に、それぞれ流量計141及び流量計142を設けることで、HFO側の循環経路から分岐して燃焼機関15(発電機15A、主機15B、及び、ボイラ15C)に接続する合流経路L31,L32に流れるHFOの流量、すなわち、HFOの消費量を測定することができる。このように、流量計141,142がHFO(第2燃料油)側の燃料油消費量測定部(第2燃料油消費量測定部)として機能する。なお、HFOの消費量(重量)を算出するために、HFOの温度を測定するための温度計が別途設けられていても良い。
【0037】
HFO側の経路に設けられる流量計141,142による測定の結果(及び、必要に応じて温度計による測定の結果)は、
図2に示す演算・記録部40に対して送られ、演算・記録部40によりこれらの測定結果を取りまとめて、HFOの消費量を算出する構成とすることができる。この場合、演算・記録部40もHFO(第2燃料油)側の燃料油消費量測定部(第2燃料油消費量測定部)として機能する。
【0038】
また、201,202,203はポンプであり、それぞれ燃料油の供給のために作動する。
【0039】
図2に示す例では、DO及びHFOのいずれにおいても、合流経路L31,L32に対して接続する経路上に流量計を設けて、この流量計を利用して、燃料油の消費量を測定している。このように、燃料油の消費量を測定するための燃料油消費量測定部として流量計を用いた構成とすることで、DO及びHFOそれぞれの消費量を精度良く測定することができる。
【0040】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態に係る燃料油管理システム4を含む船舶1Bについて説明する図である。燃料油管理システム4は、第2実施形態に係る燃料油管理システム3と比較して、HFO側の燃料油消費量測定部の構成が異なるが、その他の構成は燃料油管理システム3と同じである。したがって、構成が同じ部分については説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0041】
重質燃料油(HFO)側の流路についても、燃料油管理システム3と同じである。すなわち、HFO側では、HFO貯留タンク12Aよりも後段において、HFO静置タンク31、清浄機32、及びHFOサービスタンク33を含む循環経路が形成される。また、HFOサービスタンク33から分岐した一部のHFOが、発電機15A及び主機15Bに対して燃料油を供給する合流経路L31に対して経路L25を経て供給される。また、HFO静置タンク31から分岐した一部のHFOが、ボイラ15Cに対して燃料油を供給する合流経路L32に対して経路L26を経て供給される。
【0042】
ここで、第3実施形態に係る燃料油管理システム4では、流量計と液面計とを組み合わせてHFOの消費量を測定する。まず、経路L21上に流量計を設けることで、HFO貯留タンク12Aから排出されるHFOの量を測定する。一方、HFO貯留タンク12Aの後段の中間タンクであるHFO静置タンク31及びHFOサービスタンク33については、それぞれ液面計144,145を設けることで、液面の高さを利用して各タンクに貯留されるHFOの量を測定する。これらの結果から、HFO貯留タンク12Aから排出されるHFOの量から、HFO静置タンク31及びHFOサービスタンク33に貯留されるHFOの増加量を差し引いた量が、燃焼機関である発電機15A、主機15B及びボイラ15CにおけるHFOの消費量になる。この測定結果に基づくHFOの消費量の算出は、第2実施形態と同様に演算・記録部40で行う構成とすることができる。
【0043】
このように、流量計143と、液面計144,145を組み合わせて、燃料油の消費量を測定する構成としてもよい。この場合、流量計143は、HFO貯留タンク(燃料油タンク)からの燃料油の排出量を測定する流量計として機能することになる。また、液面計144,145は、中間タンクでの燃料油の貯留量を測定する貯留量測定部として機能することになる。なお、上述のように液面計のみでは体積しか測定できないため、液面計と温度センサ(温度測定部)または密度センサ(密度測定部)とを組み合わせて設けられる。
【0044】
第3実施形態に係る燃料油管理システム4では、第2実施形態に係る燃料油管理システム3と比較して以下の効果が得られる。まず、第2実施形態に係る燃料油管理システム3では、流量計141がポンプ202よりも上流側に設けられている。この場合、流量計の配置によっては流量計の圧力損失がポンプ202の吸込性能を満足しない場合がある。そのため、システム全体としての動作が困難となる場合がある。これに対して、第3実施形態に係る燃料油管理システム4では、ポンプ202とHFOサービスタンク33との間に流量計を配置する必要がなくなるため、上記のような問題を回避することができる。また、第3実施形態に係る燃料油管理システム4では、第2実施形態に係る燃料油管理システム3と比較して、流量計を1つ減らすことができ、流量計の設置及び管理に係るコストを減らすことができる。
【0045】
なお、第3実施形態では、HFO静置タンク31及びHFOサービスタンク33については液面計144,145でタンク内のHFOの貯留量(体積)を測定しているが、HFO貯留タンク12Aについては、流量計143を用いてタンクから排出されるHFOの量を測定している。この構成に代えて、HFO貯留タンク12Aについても、液面計を用いてタンクから排出されるHFOの量を測定する構成としてもよい。ただし、上述のように、タンクの容量が大きい場合には、液面計による体積の測定には誤差が含まれる可能性がある。したがって、タンクの容量等に基づいて、液面計及び流量計の何れを用いるかを選択することで、消費量の測定をより高い精度で行うことが可能となる。第3実施形態で示す構成では、HFO貯留タンク12Aに対して、HFO静置タンク31及びHFOサービスタンク33は容量が比較的小さくなる場合が多いため、上記で説明したようにHFO静置タンク31及びHFOサービスタンク33について液面計を用いてタンク内のHFOの量を測定する構成としても、測定精度を十分高く保つことができると考えられる。
【0046】
なお、第3実施形態では、第2燃料油側となるHFO側において、中間タンクでの燃料油の貯留量を測定する場合について説明したが、当然ながら第1燃料油側、すなわち、DO側において同様の構成を採用してもよい。また、両方の燃料油側において中間タンクでの燃料油の貯留量を測定する構成としてもよい。ただし、
図2及び
図3に示す例では、DO貯留タンク11Aに対してオーバーフローしたDOを返送する返送経路L13が設けられている。このような構成の場合、流量計143のように、DO貯留タンク11Aからの経路L11上に流量計を設けるだけでは、DO貯留タンク11Aから排出されるDOを正確に測定することができない。そのため、流量計等の配置を適宜変更する必要がある。その点について、次の変形例で説明する。
【0047】
(変形例)
図4は、第3実施形態に係る燃料油管理システム4の変形例として、燃料油管理システム4におけるHFO側の経路を一部変更した例を示した図である。
図4では、
図3に示した燃料油管理システム3におけるHFOの経路と比較して、中間タンクが1つ追加されていると共に、そのタンクと他のタンク等の間に経路が追加されている。また、この経路の変更に対応して、HFO側の燃料油消費量測定部の構成が異なっている。
【0048】
図4に示す変形例では、燃料油管理システム4と同様に、HFO貯留タンク12Aよりも後段において、HFO静置タンク31、清浄機32、及びHFOサービスタンク33を含む循環経路が形成される(清浄機32は、
図4では記載を省略している)。また、HFOサービスタンク33から分岐した一部のHFOが、発電機15A及び主機15Bに対して燃料油を供給する合流経路L31に対して経路L25を経て供給される。また、HFO静置タンク31から分岐した一部のHFOが、ボイラ15Cに対して燃料油を供給する合流経路L32に対して経路L26を経て供給される。
【0049】
一方、
図4に示す変形例においては、HFO静置タンク31がオーバーフローした場合に、HFO静置タンク31及びHFOサービスタンク33から一部のHFOを導入するサブタンク34が設けられている。HFO静置タンク31及びHFOサービスタンク33とサブタンク34との間には、経路L27が設けられる。また、サブタンク34のHFOは、経路L28を経てHFO貯留タンク12A、又は、経路L21上であって且つ流量計143よりも前段に返送される(
図4では、経路L21に返送する例を示している)。
【0050】
このような構成とした場合、
図3に示す構成と比較すると、中間タンクとしてのサブタンク34が増えている。そのため、液面計146を設けることで、液面の高さを利用して、サブタンク34に貯留されるHFOの量(体積)を測定することで、サブタンク34に貯留されるHFOを考慮してHFOの消費量を算出することができる。
【0051】
一方、流量計143では、HFO貯留タンク12Aから排出されるHFOの量が測定されるが、この測定結果には、サブタンク34を経て返送されたHFOの量が含まれる。したがって、流量計143による測定結果と、液面計144,145,146で測定される中間タンクに貯留されるHFOの量と、からHFOの消費量を算出した場合、サブタンク34を経て返送されたHFOの量の分だけ誤差が含まれることになる。
【0052】
そこで、
図4に示す変形例の構成では、サブタンク34から流量計143の前段に返送されるHFOの量を測定するための流量計147を経路L28上に設ける。そして、流量計143による測定結果から流量計147による測定結果を差し引くことで、HFO貯留タンク12Aに当初から貯留されていたHFOのうち、後段に排出されたHFOの量を求めることができる。したがって、この流量計143による測定結果から流量計147による測定結果を差し引いた結果から、液面計144,145,146で測定される中間タンクに貯留されるHFOの増加量を差し引くと、燃焼機関である発電機15A、主機15B及びボイラ15CにおけるHFOの消費量が得られる。
【0053】
なお、サブタンク34からのHFOが流量計143よりも後段の経路L21等に返送される場合には、流量計147による測定結果を用いなくてもよくなるので、流量計147を省略することができる。
【0054】
このように、燃料油を貯留するタンク(ここでは、HFO貯留タンク12A)と燃焼機関との間に中間タンクが設けられる場合や、貯留タンクと燃焼機関との間の経路が複雑になる場合には、経路の設定に応じて、流量計の設置場所を変更することで、燃料油の消費量を正確に測定することが可能となる。
【0055】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、互いに異なる2種類の燃料油を、合流経路を介して燃焼機関に供給する構成について説明したが、燃焼機関に供給する燃料油の種類は3種類以上であってもよい。その場合でも、2種類以上の燃料油が合流する合流経路よりも前段において、燃料油の種類毎に燃料油消費量測定部を設けることで、各燃料油に関して消費量を精度良く測定することが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1,1A,1B…船舶、2,3,4…燃料油管理システム、11…第1燃料油タンク、12…第2燃料油タンク、13…第1燃料油消費量測定部、14…第2燃料油消費量測定部、15…燃焼機関。