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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】潤滑組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20230830BHJP
   C10M 101/02 20060101ALN20230830BHJP
   C10M 133/12 20060101ALN20230830BHJP
   C10N 40/12 20060101ALN20230830BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20230830BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20230830BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M101/02
C10M133/12
C10N40:12
C10N30:04
C10N30:10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021500871
(86)(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019068751
(87)【国際公開番号】W WO2020011948
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】62/697,710
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア,ホセ・ルイス
(72)【発明者】
【氏名】レーアー,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ヨー,スン・ミン
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-2710(JP,A)
【文献】特開2006-117733(JP,A)
【文献】特開2007-238723(JP,A)
【文献】特開2018-48222(JP,A)
【文献】国際公開第2014/057641(WO,A1)
【文献】特開2002-53888(JP,A)
【文献】特表2021-524534(JP,A)
【文献】特表2013-514416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油および1つ以上の添加剤を含む潤滑組成物であって、前記組成物が、
前記潤滑組成物の重量で少なくとも0.4重量%および最大で1.0重量%の硫酸灰分(ASTM D 874に準拠)と、
少なくとも4.0mgKOH/gおよび最大で12mgKOH/gの全塩基数(TBN)値(ASTM D 2896に準拠)と、
前記潤滑組成物の重量で1重量%~20重量%の範囲の前記基油によってもたらされる全芳香族含量と、
前記潤滑組成物の重量で0.4重量%以下の前記基油によってもたらされる硫黄含量と、を有し、
前記基油は、(i)APIグループI鉱物基油である第1の基油と、(ii)APIグループII基油である第2の基油と、のブレンドを含
前記APIグループI鉱物基油が、前記潤滑組成物の重量で5重量%~40重量%のレベルで存在し、
前記APIグループII基油が、潤滑組成物の重量で50重量%以上のレベルで存在し、
前記潤滑組成物が、前記潤滑組成物の重量で1.5~3.0重量%のレベルで存在するアミン系酸化防止剤を含み、
当該アミン系酸化防止剤が、
式(I)のアミンを含み
【化1】
であり、
ここで、R は、水素、アルキル、アラルキル、またはアルカリル基であり、R は、水素、アルキル、またはアルカリル基であり、ただし、R が水素または8個未満の炭素原子を有するアルキル基である場合、R はアルキル鎖に少なくとも8個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルカリル基である、
潤滑組成物。
【請求項2】
前記APIグループI鉱物基油が、ブライトストックである、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
前記APIグループI鉱物基油の粘度が、100℃で8mm/秒以上である、請求項1または2に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
式中、RおよびRが、4~50個の炭素原子を有するアルキル基から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項5】
スエンジンにおける、請求項1~のいずれか一項に記載の潤滑組成物の使用であって
改善された堆積物制御(PCT試験またはTEOST MHT試験(ASTM D7097-09)に準拠)、および/または
改善された清浄度(PCT試験またはTEOST MHT試験(ASTM D7097-09)に準拠)、を提供するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にガスエンジンオイルとしての使用のための潤滑組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発電では、ガスエンジンは、ほぼ全負荷状態で継続的に動作し、潤滑油のメンテナンスおよび/または交換のためにのみ停止する。その結果、使用中の潤滑剤は、持続的な高温高圧環境にさらされる。これらの動作条件は、比較的深刻な潤滑油の酸化およびニトロ化プロセスを引き起こし得、アルカリ予備(塩基価)の枯渇、粘度の増加、ピストンアセンブリなどの重要なエンジン部品の清浄度の低下につながり、燃料および潤滑油の消費量の増加につながり、最終的にはエンジンの信頼性の問題につながる可能性がある。
【0003】
市販の低灰ガスエンジンオイル製品には、典型的には、最大で約9mgKOH/gのTBN(全塩基価)値を有する、約0.5重量%および1.0重量%未満の硫酸灰分値が使用される。そのような市販の製品の例は、Exxon Mobil Corporationから入手可能なMobil Pegasusu 605、Mobil Pegasusu 705、およびMobil Pegasusu 1005である。
【0004】
それらの技術データシートによると、Mobil Pegasusu 605の硫酸灰分(ASTM D 874に準拠)は、0.5であり、TBN値(ASTM D 2896に準拠)は、7.1であり、Mobil Pegasusu 705の硫酸灰分は、0.5であり、TBN値は、5.6であり、Mobil Pegasusu 1005の硫酸灰分は、0.5であり、TBN値は、5.3である。
【0005】
本発明の目的は、特にガスエンジンオイルにおける使用のための潤滑組成物の酸化安定性を改善することである。
【0006】
本発明の別の目的は、ガスエンジンにおける使用のための潤滑組成物の清浄度性能を改善することである。
【0007】
本発明の別の目的は、特にガスエンジンにおける使用のための潤滑組成物の酸化安定性および清浄度性能の両方を改善することである。
【発明の概要】
【0008】
上記または他の目的の1つ以上は、基油および1つ以上の添加剤を含む潤滑組成物を提供することによって本発明によって得ることができ、組成物は、
潤滑組成物の重量で少なくとも0.4重量%および最大で1.0重量%の硫酸灰分(ASTM D 874に準拠)と、
少なくとも4.0mgKOH/gおよび最大で15mgKOH/g、好ましくは6.0mgKOH/g~12mgKOH/gの全塩基価(TBN)値(ASTM D2896に準拠)と、
潤滑組成物の重量で1重量%~20重量%、好ましくは3重量%~15重量%の範囲の基油によってもたらされる全芳香族含量と、
潤滑組成物の重量で0.4重量%以下の基油によってもたらされる硫黄含量(ASTM D5453に準拠して測定したとき)と、を有し、
基油は、(i)APIグループI鉱物基油およびAPIグループII鉱物基油、ならびにこれらの混合物から選択される鉱物基油である第1の基油と、(ii)APIグループII基油およびAPIグループIII基油から選択される第2の基油と、のブレンドを含み、好ましくは、第1の基油は、第2の基油のものとは異なるAPIグループに属する。
【0009】
ここで驚くべきことに、本発明による潤滑組成物は、改善された酸化安定性、塩基価保持、堆積物制御、およびエンジン清浄度性能を示すことが見出された。これにより、ODI(オイル排出間隔)が長くなり、これは、ガスエンジンのダウンタイムが少なく、メンテナンスコストが低いことを考えると非常に望ましいことである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による潤滑剤組成物の硫酸灰分は、潤滑剤組成物の重量で少なくとも0.4重量%および最大で1.0重量%である。
【0011】
本発明の潤滑組成物では、塩基価の値は、少なくとも4mgKOH/g、好ましくは少なくとも4.3mgKOH/g、より好ましくは少なくとも5.0mgKOH/gである。典型的には、塩基価は、12.0mgKOH/g未満、好ましくは10.0mgKOH/g未満である。
【0012】
本発明の潤滑組成物では、基油によってもたらされる全芳香族含量は、潤滑組成物の重量で1重量%~20重量%の範囲、好ましくは1重量%~15重量%の範囲である(IPB368に準拠して測定したとき)。基油によってもたらされる全芳香族含量が潤滑組成物の重量で4重量%~13重量%の範囲にある場合、堆積物制御、エンジン清浄度、および酸化安定性に関して特に良好な結果を達成することができる。
【0013】
本発明の潤滑組成物では、基油に由来する最大硫黄含量(%)は、潤滑組成物の重量で0.4重量%、好ましくは0.3重量%、より好ましくは0.25重量%である(ASTM D5453に準拠して測定したとき)。
【0014】
さらに、組成物は、潤滑組成物の重量で最大で0.3重量%のカルシウム含量(ASTM D 4951に準拠)を有することが好ましい。典型的には、カルシウム含量は、潤滑組成物の重量で0.05重量%超、より好ましくは0.1重量%超、さらにより好ましくは0.15重量%超である。
【0015】
さらに、本発明によれば、潤滑組成物は、潤滑組成物の重量で最大で0.04重量%のP含量(DIN 51363 T2に準拠)を有することが好ましい。典型的には、P含量は、潤滑組成物の重量で0.01重量%を超える。
【0016】
本発明の潤滑組成物に使用される基油は、基油を含み、基油は、(i)第1の基油および(ii)第2の基油のブレンドを含む。
【0017】
第1の基油は、APIグループI鉱物基油、APIグループII鉱物基油、およびこれらの混合物から選択される鉱物基油である。
【0018】
第2の基油は、APIグループII基油およびAPIグループIII基油、ならびにこれらの混合物から選択される。
【0019】
本明細書の好ましい特徴として、第1の基油は、第2の基油のものとは異なるAPIグループに属する。
【0020】
第1の基油が第2の基油とは異なるAPIグループに属する場合、堆積物制御および酸化安定性に関して特に良好な結果を達成できることが見出されている。堆積物制御の良好な結果は、エンジンの清浄度特性の改善につながる。
【0021】
好ましくは、第1の基油は、APIグループIの鉱物基油である。
【0022】
好ましくは、第2の基油は、APIグループII基油、好ましくはAPIグループII鉱物基油である。本明細書の一実施形態では、第1の基油は、APIグループI鉱物基油であり、第2の基油は、APIグループII基油、好ましくはAPIグループII鉱物基油である。
【0023】
本明細書の別の実施形態では、第1の基油は、APIグループI鉱物基油であり、第2の基油は、APIグループIII基油である。
【0024】
本明細書のさらなる実施形態では、第1の基油は、APIグループII鉱物基油であり、第2の基油は、APIグループIII基油である。
【0025】
本明細書のさらなる実施形態では、第1の基油は、APIグループII鉱物基油であり、第2の基油は、APIグループII基油、好ましくは非鉱物基油である。
【0026】
第1の基油は、鉱物基油でなければならないが、第2の基油は、鉱物基油である必要はない。第2の基油は、例えば、鉱物基油であり得るか、または合成基油などの非鉱物基油であり得る。
【0027】
一実施形態では、第1の基油は、APIグループI鉱物基油が、潤滑組成物の重量で40重量%以下、好ましくは30重量%以下のレベルで潤滑組成物中に存在するグループI鉱物基油である。好ましくは、APIグループI鉱物基油は、5重量%以上のレベルで潤滑組成物中に存在する。好ましい実施形態では、APIグループI鉱物基油は、潤滑組成物の重量で10重量%~30重量%のレベルで存在する。APIグループI鉱物基油は、異なるAPIグループI鉱物基油の混合物を含むことができ、APIグループI鉱物基油のレベルへの上記の言及は、潤滑組成物中のAPIグループI鉱物基油の全レベルに対するものである。
【0028】
潤滑組成物がグループII基油を含むとき、グループII基油の全レベルは、好ましくは、潤滑組成物の重量で少なくとも50重量%のレベルである。本発明の一実施形態では、第1の基油は、グループII基油である。第1の基油がグループII基油である場合、それは、好ましくは、潤滑組成物の重量で少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも40重量%、および最大で80重量%のレベルで存在する。
【0029】
潤滑組成物がグループIII基油を含むとき、グループIII基油の全レベルは、好ましくは、潤滑組成物の重量で少なくとも50重量%である。
【0030】
APIグループII基油は、異なるAPIグループII基油の混合物を含むことができ、APIグループII基油のレベルへの上記の言及は、潤滑組成物中のAPIグループII基油の全レベルに対するものである。同様に、APIグループIII基油は、異なるAPIグループIII基油の混合物を含むことができ、APIグループIII基油のレベルへの上記の言及は、潤滑組成物中のAPIグループIII基油の全レベルに対するものである。
【0031】
本明細書の潤滑組成物に使用することができる鉱物基油の種類に関して、制限はない。様々な従来の鉱油は、本明細書で便宜的に使用され得る。鉱油は、液体石油油、およびパラフィン系、ナフテン系、またはパラフィン系/ナフテン系混合タイプの溶剤処理または酸処理された鉱油が含まれ、これらは水素化仕上げプロセスおよび/または脱蝋によってさらに精製することができる。
【0032】
本明細書の好ましい実施形態では、APIグループI鉱物基油は、ブライトストックであり、これは、好ましくは、潤滑組成物の重量で10重量%以下のレベルで存在する。ブライトストックは、好ましくは、100℃で25mm/秒以上、好ましくは30mm/秒以上の動粘度を有する(ASTM D445に準拠して測定したとき)。
【0033】
本明細書の別の好ましい実施形態では、APIグループI鉱物基油の100℃での動粘度は、8mm/秒以上、好ましくは10mm/秒以上である(ASTM D445に準拠)。
【0034】
APIグループII基油は、100℃で6.0mm/秒以上、好ましくは6.5mm/秒以上、より好ましくは10mm/秒以上の動粘度を有することが好ましい(ASTM D445に準拠)。
【0035】
APIグループIII基油は、100℃で4mm/秒以上、好ましくは8mm/秒以上の動粘度を有することが好ましい(ASTM D445に準拠)。
【0036】
本発明における「グループI」、「グループII」、「グループIII」、「グループIV」、および「グループV」基油は、カテゴリI、II、III、IV、およびVの米国石油協会(API)の定義による潤滑油基油を意味する。これらのAPIカテゴリは、API Publication 1509、15th Edition、Appendix E、April 2002に定義されている。
【0037】
本明細書における使用のための好適なグループIII基油は、フィッシャー-トロプシュ由来の基油である。フィッシャー-トロプシュ由来の基油は、当技術分野で知られている。「フィッシャー-トロプシュ由来」という用語は、基油がフィッシャー-トロプシュ法の合成生成物であるか、またはそれに由来することを意味する。フィッシャー-トロプシュ由来の基油は、GTL(気体から液体)基油とも称され得る。本発明の潤滑組成物において第2の基油として便宜的に使用され得る好適切フィッシャー-トロプシュ由来の基油は、例えば、EP 0 776 959、EP 0 668 342、WO97/21788、WO00/15736、WO00/14188、WO00/14187、WO00/14183、WO00/14179、WO00/08115、WO99/41332、EP 1 029 029、WO01/18156、およびWO01/57166に開示されているものである。
【0038】
本明細書の好ましい実施形態では、第1の基油は、グループI鉱物基油であり、第2の基油は、フィッシャー-トロプシュ由来の基油である。本明細書における使用のための好ましいフィッシャー-トロプシュ由来の基油は、Shell Oil Companyから市販されている「GTL 8」であり、GTL 8は、ASTM D445に準拠して測定したとき、100℃で約8mm/秒の動粘度を有する。
【0039】
上記の第1の基油および第2の基油に加えて、潤滑組成物は、他の種類の基油、例えば、ポリアルファオレフィン(PAO)などのグループIV基油および二塩基酸エステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール(PAG)およびアルキルナフタレンなどのグループV基油をさらに含み得る。
【0040】
ポリアルファオレフィン基油(PAO)およびそれらの製造は、当技術分野でよく知られている。本発明の潤滑組成物に使用することができる好ましいポリアルファオレフィン基油は、線状C~C32、好ましくはC~C16、アルファオレフィンに由来することができる。上記ポリアルファオレフィンの特に好ましい原料は、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、および1-テトラデセンである。
【0041】
本明細書に記載の基油の混合物も、使用することができる。
【0042】
本発明の潤滑組成物に組み込まれる基油の全量は、潤滑組成物の全重量に対して、好ましくは60~99重量%の範囲であり、より好ましくは70~98重量%の範囲の量であり、最も好ましくは80~95重量%の範囲の量である。
【0043】
典型的には、潤滑組成物の100℃での動粘度(ASTM D445に準拠)は、8cSt以上、典型的には9.0~21.9cSt、好ましくは9.3超えおよび16.3cSt未満である。
【0044】
本明細書の好ましい実施形態では、潤滑組成物は、アミン系酸化防止剤を含む。好ましくは、アミン系酸化防止剤は、全潤滑組成物の重量に基づいて、1~4重量%、好ましくは1.5~3.0重量%の量で存在する。驚くべきことに、アミン系酸化防止剤と基油(第1の基油と第2の基油のブレンドを含む基油)との組み合わせが、改善された酸化安定性および改善された堆積物制御を提供することが見出された。次に、改善された堆積物制御は、改善されたエンジン清浄度を提供する。
【0045】
本発明による好ましい実施形態では、潤滑組成物は、以下の式を有するアミン系酸化防止剤を含み、
【0046】
【化1】
【0047】
式中、Rは以下であり、
【0048】
【化2】
【0049】
は水素、アルキル、アラルキル、またはアルカリル基であり、Rは水素、アルキルまたはアルカリル基であり、ただし、Rが水素または8個未満の炭素原子を有するアルキル基である場合、RはアルキルまたはRに存在するアルキル鎖中に少なくとも8個の炭素原子を含有するアルカリル基である。
好ましい実施形態では、RおよびRは、ヒドロカルビル基である。したがって、Rは、好ましくは、ヒドロカルビル型のアルキルまたはアルカリル基である。
【0050】
好ましくは、Rは、4~50個の炭素原子、好ましくは6~40個の炭素原子、最も好ましくは8~30個の炭素原子を含有するアルキル基であり、ただし、Rが8個未満の炭素原子を有するアルキル基である場合、RはアルキルまたはRに存在するアルキル鎖中に少なくとも8個の炭素原子を含有するアルカリル基である。
【0051】
好ましくは、Rは、4~50個の炭素原子、好ましくは6~40個の炭素原子、最も好ましくは8~30個の炭素原子を含有するアルキル基である。
【0052】
本明細書における使用のための市販のアミン系酸化防止剤の好適な例は、Infineum UKから市販されているInfineum C9452、BASFから市販されているIrganox L57、およびVanderbilt Company Inc.から市販されているVanlube SLを含む。
【0053】
ガスエンジンオイル組成物において上記で定義された第1の基油および第2の基油を含む基油ブレンドとアミン系酸化防止剤との組み合わせは、優れた堆積物制御および酸化安定性特性を提供することが見出された。次に、改善された堆積物制御は、改善されたエンジン清浄度特性につながる。
【0054】
本発明による潤滑組成物は、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、分散剤、洗浄剤、過塩基性洗浄剤、極圧添加剤、摩擦調整剤、粘度調整剤、注入点降下剤、金属不動態化剤、腐食防止剤、解乳化剤、消泡剤、シール適合剤、および添加剤希釈剤基油などの1つ以上の添加剤をさらに含み得る。
【0055】
当業者は、上記および他の添加剤に精通しているので、これらはここではさらに詳細には考察されていない。そのような添加剤の特定の例は、例えば、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、third edition、volume 14、pages 477~526に記載されている。
【0056】
便宜的に使用できる酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤(上記のアミン系酸化防止剤以外)を含む。好適な酸化防止剤の例は、フェニルナフチルアミンおよびジフェニルアミンである。
【0057】
便宜的に使用できる耐摩耗添加剤は、ジアルキル-、ジアリール-および/またはアルキルアリール-ジチオリン酸亜鉛から選択されるジチオリン酸亜鉛化合物などの亜鉛含有化合物、モリブデン含有化合物、ホウ素含有化合物、および置換または非置換のチオリン酸などの無灰耐摩耗添加剤、ならびにこれらの塩を含む。
【0058】
そのようなモリブデン含有化合物の例は、便宜的に、モリブデンジチオカルバメート、例えば、WO98/26030に記載されているような三核モリブデン化合物、モリブデンの硫化物、およびモリブデンジチオリン酸を含み得る。
【0059】
便宜的に使用され得るホウ素含有化合物は、ホウ酸エステル、ホウ酸化脂肪アミン、ホウ酸化エポキシド、アルカリ金属(または混合アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属)ホウ酸塩、およびホウ酸化過塩基性金属塩を含む。
【0060】
使用される分散剤は、好ましくは無灰分散剤である。無灰分散剤の好適な例は、ポリブチレンスクシンイミドポリアミンおよびマンニッヒ塩基型分散剤である。
【0061】
使用される洗浄剤は、好ましくは、過塩基性洗浄剤または、例えば、サリチル酸塩、スルホン酸塩、および/またはフェネート型の洗浄剤を含有する洗浄剤混合物である。
【0062】
本発明の潤滑組成物において便宜的に使用され得る粘度調整剤の例は、スチレン-ブタジエン星状共重合体、スチレン-イソプレン星状共重合体、およびポリメタクリレート共重合体、およびエチレン-プロピレン共重合体を含む。分散剤粘度調整剤は、本発明の潤滑組成物に使用され得る。
【0063】
好ましくは、組成物は、少なくとも0.1重量%の流動点降下剤を含有する。一例として、アルキル化ナフタレンおよびフェノールポリマー、ポリメタクリレート、マレイン酸塩/フマル酸塩共重合体エステルは、効果的な流動点降下剤として便宜的に使用され得る。好ましくは、0.3重量%以下の流動点降下剤が使用される。
【0064】
さらに、アルケニルコハク酸またはそのエステル部分などの化合物、ベンゾトリアゾールベースの化合物およびチオジアゾールベースの化合物は、腐食防止剤として本発明の潤滑組成物において便宜的に使用され得る。
【0065】
ポリシロキサン、ジメチルポリシクロヘキサン、およびポリアクリレートなどの化合物は、消泡剤として本発明の潤滑組成物において便宜的に使用され得る。
【0066】
シール固定剤またはシール適合剤として本発明の潤滑組成物において便宜的に使用され得る化合物は、例えば、市販の芳香族エステルを含む。
【0067】
本発明の潤滑組成物は、1つ以上の添加剤を基油と混合することによって、便宜的に調製され得る。
【0068】
上記の添加剤は、典型的には、潤滑組成物の全重量に基づいて、0.01~35.0重量%の範囲の量で、潤滑組成物の全重量に基づいて、好ましくは0.05~25.0重量%の範囲の量で、より好ましくは1.0~20.0重量%で存在する。
【0069】
別の態様では、本発明は、
改善された酸化安定性(特にIP48/97(2004)試験に準拠)、および/または
改善された堆積物制御(特にPCT試験またはTEOST MHT試験(ASTM D7097-09)に準拠)、および/または
改善された清浄度(特にPCT試験またはTEOST MHT試験(ASTM D7097-09)に準拠)を提供するために、特にガスエンジンにおいて、本発明による潤滑組成物の使用を提供する。
【0070】
本発明による潤滑組成物は、概して、装置を潤滑するのに有用であるが、特に内燃エンジンのエンジンオイルとしての使用に有用である。これらのエンジンオイルは、乗用車エンジン、ディーゼルエンジン、船舶用ディーゼルエンジン、ガスエンジン、2サイクルおよび4サイクルエンジンなど、特、特にガスエンジンを含む。
【0071】
本発明は、いかようにも本発明の範囲を限定することを意図するものではない以下の実施例を参照して以下に説明される。
【実施例
【0072】
ガスエンジンにおける使用のための様々な潤滑組成物が配合された。
【0073】
表1および表2は、試験された完全に配合されたガスエンジンオイル配合物の組成および特性を示し、成分の量は、完全に配合された配合物の全重量に基づいて、重量%で与えられる。
【0074】
試験された全てのガスエンジンオイル配合物は、いわゆるSAE J300仕様(2004年5月に改訂されたように、SAEはSociety of Automotive Engineersを表す)を満たすSAE40配合物として配合された。
【0075】
試験された全てのガスエンジンオイル配合物は、1つ以上の基油、添加剤パッケージ、および、存在する場合は、アミン系酸化防止剤の組み合わせを含有していた。添加剤パッケージは、試験した全ての組成物で同じだった。
【0076】
使用した添加剤パッケージは、「添加剤パッケージ1」または「添加剤パッケージ2」のいずれかであった。両方の添加剤パッケージは、酸化防止剤、亜鉛ベースの耐摩耗添加剤、無灰分散剤、過塩基性洗浄剤混合物、流動点降下剤、および約10ppmの消泡剤を含む添加剤の組み合わせを含有していた。
【0077】
「基油1」は、商品名「RLOP600N」でChevron Corporationから市販されているAPIグループII鉱物基油であった。基油1は、約6.447cSt(mm-1)の100℃での動粘度(ASTM D445)、約41.15cSt(mm-1)の40℃での動粘度(ASTM D445)、0.3%の全芳香族含量(IP368に準拠して測定したとき)、および0.004%の硫黄含量(ASTM D5453に準拠して測定したとき)を有する。
【0078】
「基油2」は、商品名「RLOP220N」でChevron Corporationから市販されているAPIグループII鉱物基油であった。基油2は、約12.04cSt(mm-1)の100℃での動粘度(ASTM D445)、約103.8cSt(mm-1)の40℃での動粘度(ASTM D445)、0.3%の全芳香族含量(IP368に準拠して測定したとき)、および0.003%の硫黄含量(ASTM D5453に準拠して測定したとき)を有する。
【0079】
「基油3」は、「APE CORE SN150」の商品名でExxon Mobilから市販されているAPIグループI鉱物基油であった。基油3は、約5.3cSt(mm-1)の100℃での動粘度(ASTM D445)、約31.7cSt(mm-1)の40℃での動粘度(ASTM D445)、29.8%の全芳香族含量(IP368に準拠して測定したとき)、および0.54%の硫黄含量(ASTM D5453に準拠して測定したとき)を有する。
【0080】
「基油4」は、「LUKOIL PERM SN500」の商品名でLukoilから市販されているAPIグループI鉱物基油であった。基油4は、約10.94cSt(mm-1)の100℃での動粘度(ASTM D445)、約102cSt(mm-1)の40℃での動粘度(ASTM D445)、35.2%の全芳香族含量(IP368に準拠して測定したとき)、および0.55%の硫黄含量(ASTM D5453に準拠して測定したとき)を有する。
【0081】
「基油5」は、「APE CORE SN600」の商品名でExxon Mobilから市販されているAPIグループI鉱物基油であった。基油5は、約12.02cSt(mm-1)の100℃での動粘度(ASTM D445)、約111.7cSt(mm-1)の40℃での動粘度(ASTM D445)、41.1%の全芳香族含量(IP368に準拠して測定したとき)、および0.73%の硫黄含量(ASTM D5453に準拠して測定したとき)を有する。
【0082】
「基油6」は、APE CORE 2500 BSの商品名でExxon Mobilから市販されているAPIグループIブライトストックであった。基油6は、約31.28cSt(mm-1)の100℃での動粘度(ASTM D445)、約478.7cSt(mm-1)の40℃での動粘度(ASTM D445)、56.9%の全芳香族含量(IP368に準拠して測定したとき)、および1.05%の硫黄含量(ASTM D5453に準拠して測定したとき)を有する。
【0083】
「基油7」は、Motiva Star 12の商品名でMotivaから市販されているAPIグループII基油であった。基油7は、約12.09cSt(mm-1)の100℃での動粘度(ASTM D445)、約111.4cSt(mm-1)の40℃での動粘度(ASTM D445)、6.4%の全芳香族含量(IP368に準拠して測定したとき)、および0.0016%の硫黄含量(ASTM D5453に準拠して測定したとき)を有する。
【0084】
「Aminic AO」は、Infineum C9452の商品名でInfineum UKから市販されているアミン系酸化防止剤であった。
【0085】
以下の表1および表2に示される実施例および比較例の組成物は、基油を添加剤パッケージおよび、存在する場合は、アミン系酸化防止剤と、従来の潤滑剤ブレンド手順を使用して混合することにより得られた。
【0086】
以下の表1および表2に示される実施例および比較例の組成物は、酸化安定性、粘度増加、堆積物制御などの特定の特性を測定するために、いくつかの標準的な試験方法に供された。使用した試験方法は、次のとおりである:
(i)熱酸化エンジンオイルシミュレーション試験による適度に高温のピストン堆積物を判定するための標準試験方法-「TEOST MHT」試験(ASTM D7097-09に準拠)、
(ii)潤滑油の酸化特性を判定するための標準試験方法(IP48/97(2004)に準拠)、(iii)次の試験条件を使用してピストン堆積物を測定するためのパネルコーカー試験(PCT ISP法または「PCT」試験)(GFC Lu-29-A-15およびPSA 01563_10_00802に基づく方法):試験温度:288℃;試験期間:24時間;オイルフロー1ml/分;エアフロー:12l/h;評価に使用した試験結果:メリット-合計:0~10(高いほど良い)。
【0087】
試験結果は、以下の表1および表2に示される:
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
考察
表1および表2の結果から分かるように、本発明による潤滑組成物は、改善された堆積制御および改善された酸化安定性特性を示した。
【0091】
表1および表2の結果から分かるように、グループIおよびIIの基油の組み合わせを含有する配合物では、堆積物制御が改善され、したがって、基油によってもたらされる芳香族化合物を1重量%未満含有する組成物と比較して、エンジンの清浄度が改善される。
【0092】
表1および表2の結果から、グループIおよびグループIIの基油の組み合わせを含有する配合物では、1つの基油のみを含有する組成物よりも酸化安定性が改善していることも分かる(IP48酸化結果)。
【0093】
表1および表2の結果から、グループIおよびグループIIの基油の組み合わせを含有する潤滑配合物にアミン系酸化防止剤を添加すると、酸化安定性および堆積物制御がさらに改善していることも分かる。
【0094】
比較例3a(グループII基油のみを含有)からも、配合物中の基油がいくらかの芳香族化合物を含有している場合でも、清浄度は改善されるが、単一の基油の使用によって酸化安定性は改善されないことが分かる。
以下に実施態様項を記載する。
態様1
基油および1つ以上の添加剤を含む潤滑組成物であって、前記組成物が、
前記潤滑組成物の重量で少なくとも0.4重量%および最大で1.0重量%の硫酸灰分(ASTM D 874に準拠)と、
少なくとも4.0mgKOH/gおよび最大で12mgKOH/gの全塩基数(TBN)値(ASTM D 2896に準拠)と、
前記潤滑組成物の重量で1重量%~20重量%の範囲の前記基油によってもたらされる全芳香族含量と、
前記潤滑組成物の重量で0.4重量%以下の前記基油によってもたらされる硫黄含量と、を有し、
前記基油は、(i)APIグループI鉱物基油およびAPIグループII鉱物基油、ならびにこれらの混合物から選択される鉱物基油である第1の基油と、(ii)APIグループII基油およびAPIグループIII基油から選択される第2の基油と、のブレンドを含む、潤滑組成物。
態様2
前記第1の基油が、前記第2の基油のものとは異なるAPIグループに属する、態様1に記載の潤滑組成物。
態様3
前記第1の基油が、APIグループI鉱物基油である、態様1または2に記載の潤滑組成物。
態様4
前記APIグループI鉱物基油が、前記潤滑組成物の重量で5重量%~40重量%のレベルで存在する、態様1~3のいずれかに記載の潤滑組成物。
態様5
前記第2の基油が、APIグループII基油である、態様1~4のいずれかに記載の潤滑組成物。
態様6
前記第2の基油がAPIグループII鉱物基油である、態様1~5のいずれかに記載の潤滑組成物。
態様7
前記APIグループII基油が、前記潤滑組成物の重量で50重量%以上のレベルで存在する、態様5または6に記載の潤滑組成物。
態様8
前記APIグループI鉱物基油が、ブライトストックである、態様2~7のいずれかに記載の潤滑組成物。
態様9
前記APIグループI鉱物基油の粘度が、100℃で8mm /秒以上である、態様2~8のいずれかに記載の潤滑組成物。
態様10
前記潤滑組成物が、アミン系酸化防止剤を含む、態様1~9のいずれかに記載の潤滑組成物。
態様11
前記アミン系酸化防止剤が、前記潤滑組成物の重量で1重量%~5重量%、好ましくは1~4重量%、より好ましくは1.5~3.0重量%のレベルで存在する、態様10に記載の潤滑組成物。
態様12
前記アミン系酸化防止剤が、前述の式(I)のアミンを含む、態様10または11に記載の潤滑組成物。
態様13
式中、R およびR が、4~50個の炭素原子、好ましくは6~40個の炭素原子、より好ましくは8~30個の炭素原子を有するアルキル基から選択される、態様12に記載の潤滑組成物。
態様14
特にガスエンジンにおける、態様1~13のいずれか一項に記載の潤滑組成物の使用であって、
改善された酸化安定性(特にIP48/97(2004)試験に準拠、および/または
改善された堆積物制御(特にPCT試験またはTEOST MHT試験(ASTM D7097-09)に準拠)、および/または
改善された清浄度(特にPCT試験またはTEOST MHT試験(ASTM D7097-09)に準拠)、を提供するための使用。