(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】保護膜形成用シートおよび基板装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230830BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230830BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230830BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H01L21/304 631
C09J7/38
C09J201/00
C09J4/02
(21)【出願番号】P 2021507241
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2020010590
(87)【国際公開番号】W WO2020189447
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2019048936
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森下 友尭
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/066408(WO,A1)
【文献】特開2010-129701(JP,A)
【文献】特開2003-64329(JP,A)
【文献】特開2018-82131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09J 7/38
C09J 201/00
C09J 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項6】
基材と、前記基材上に粘着剤層と硬化性の保護膜形成層とをこの順で有する保護膜形成用シートを、凸状電極を有するワークの凸状電極形成面に貼付して、保護膜形成層と凸状電極とを接触させる工程と、
前記粘着剤層を、硬化前の保護膜形成層から剥離する工程と、
前記保護膜形成層を硬化して、保護膜を形成する工程と、
凸状電極を有するワークから、個片化されたワーク加工物を得る工程と、を有し、
硬化前の保護膜形成層の23℃におけるせん断貯蔵弾性率が3000MPa以下であり、
粘着剤層の23℃における引張貯蔵弾性率が45MPa以下である基板装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成用シートおよび基板装置の製造方法に関する。特に、半導体ウエハ等のワークの表面に形成されている凸状電極と、ワークと、を保護するために好適に使用される保護膜形成用シートおよび凸状電極を有する基板装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MPUやゲートアレー等に用いる多ピンのLSIパッケージをプリント配線基板に実装する場合には、半導体チップとして、その接続パッド部に共晶ハンダ、高温ハンダ、金等からなる凸状電極(バンプ)が形成されたものを用い、所謂フェースダウン方式により、それらのバンプをチップ搭載用基板上の相対応する端子部に対面、接触させ、溶融/拡散接合するフリップチップ実装方法が採用されてきた。
【0003】
この実装方法で用いる半導体チップは、たとえば、回路面にバンプが形成された半導体ウエハの、回路面とは反対側の面を研削し、ダイシングして個片化することにより得られる。このような半導体チップを得る過程においては、通常、半導体ウエハのバンプおよび回路面を保護する目的で、硬化性樹脂フィルムをバンプ形成面に貼付し、このフィルムを硬化させて、バンプ形成面に保護膜を形成する。
【0004】
たとえば、特許文献1には、低誘電材料層が形成されたバンプ形成面に、熱硬化性樹脂層の溶融粘度および粘着剤層のせん断弾性率が所定の範囲内である保護層形成用フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、保護膜形成用フィルムにおいて、粘着剤層からの剥離を容易にするために、保護膜形成層は硬くされていた。そのため、保護膜形成用シートを裁断しようとすると、保護膜形成層に起因する裁断くずが発生する、裁断時に保護膜形成用シートが受ける屈曲による保護膜形成層が割れやすい等の問題があった。
【0007】
そこで、保護膜形成層を柔らかくしたところ、粘着剤層からの剥離が困難になるという問題が生じた。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、保護膜形成層からの剥離が容易な粘着剤層を有する保護膜形成用シート、および、当該保護膜形成用シートを用いて凸状電極を有する基板装置を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、以下の通りである。
[1]基材と、基材上にエネルギー線硬化性の粘着剤層と硬化性の保護膜形成層とをこの順で有する保護膜形成用シートであって、
保護膜形成層は、凸状電極を有するワークの凸状電極形成面に貼付して硬化することにより、凸状電極形成面に保護膜を形成する層であって、
硬化前の保護膜形成層の23℃におけるせん断貯蔵弾性率が3000MPa以下であり、
エネルギー線照射後の粘着剤層の23℃における引張貯蔵弾性率が45MPa以下である保護膜形成用シートである。
【0010】
[2]基材と、基材上に粘着剤層と硬化性の保護膜形成層とをこの順で有する保護膜形成用シートであって、
保護膜形成層は、凸状電極を有するワークの凸状電極形成面に貼付して硬化することにより、凸状電極形成面に保護膜を形成する層であって、
硬化前の保護膜形成層の23℃におけるせん断貯蔵弾性率が3000MPa以下であり、
粘着剤層の23℃における引張貯蔵弾性率が45MPa以下である保護膜形成用シートである。
【0011】
[3]粘着剤層は、水酸基含有アクリル系モノマーに、イソシアネート基を有するエネルギー線硬化性化合物が付加された反応物を有し、
水酸基含有アクリル系モノマー100質量%に対するイソシアネート基を有するエネルギー線硬化性化合物の含有割合が10質量%以下である[1]または[2]に記載の保護膜形成用シートである。
【0012】
[4]基材と、粘着剤層との間に緩衝層を有する[1]から[3]のいずれかに記載の保護膜形成用シートである。
【0013】
[5]基材と、基材上にエネルギー線硬化性の粘着剤層と硬化性の保護膜形成層とをこの順で有する保護膜形成用シートを、凸状電極を有するワークの凸状電極形成面に貼付して、保護膜形成層と凸状電極とを接触させる工程と、
エネルギー線照射後の粘着剤層を、硬化前の保護膜形成層から剥離する工程と、
保護膜形成層を硬化して、保護膜を形成する工程と、
凸状電極を有するワークから、個片化されたワーク加工物を得る工程と、を有し、
硬化前の保護膜形成層の23℃におけるせん断貯蔵弾性率が3000MPa以下であり、
エネルギー線照射後の粘着剤層の23℃における引張貯蔵弾性率が45MPa以下である基板装置の製造方法である。
【0014】
[6]基材と、基材上に粘着剤層と硬化性の保護膜形成層とをこの順で有する保護膜形成用シートを、凸状電極を有するワークの凸状電極形成面に貼付して、保護膜形成層と凸状電極とを接触させる工程と、
粘着剤層を、硬化前の保護膜形成層から剥離する工程と、
保護膜形成層を硬化して、保護膜を形成する工程と、
凸状電極を有するワークから、個片化されたワーク加工物を得る工程と、を有し、
硬化前の保護膜形成層の23℃におけるせん断貯蔵弾性率が3000MPa以下であり、
粘着剤層の23℃における引張貯蔵弾性率が45MPa以下である基板装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保護膜形成層からの剥離が容易な粘着剤層を有する保護膜形成用シート、および、当該保護膜形成用シートを用いて凸状電極を有する基板装置を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、本実施形態に係る保護膜形成用シートの一例の断面模式図である。
【
図1B】
図1Bは、本実施形態に係る保護膜形成用シートの他の例の断面模式図である。
【
図2】
図2は、バンプが形成された半導体ウエハの一例を示す断面模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る保護膜形成用シートをバンプが形成された半導体ウエハのバンプ形成面に貼付する工程を説明するための断面模式図である。
【
図4】
図4は、保護膜形成用シートから剥離された保護膜形成層を硬化して保護膜とする工程を説明するための断面模式図である。
【
図5】
図5は、保護膜が形成された半導体ウエハから、半導体チップを個片化する工程を説明するための断面模式図である。
【
図6】
図6は、個片化した半導体チップから半導体装置を得る工程を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、以下の順序で詳細に説明する。
【0018】
(1.保護膜形成用シート)
本実施形態に係る保護膜形成用シート1は、
図1Aに示すように、基材10上に粘着剤層20および保護膜形成層30がこの順に積層された構成を有している。
【0019】
本実施形態では、保護膜形成用シートは、凸状電極が形成されたワークに貼付されて使用される。たとえば、
図2に示すように、凸状電極としてのバンプ102がワークとしての半導体ウエハ101に形成されたバンプ付き半導体ウエハのバンプ形成面101aに貼付されて使用される。バンプは、半導体ウエハに形成された回路と電気的に接続するように形成されているので、バンプ形成面101aは回路面である。
【0020】
保護膜形成用シートが貼付されたバンプ付き半導体ウエハに所定の処理(たとえば、回路面とは反対側の面である裏面を研削する処理)を行った後、少なくとも、保護膜形成層がバンプに接触した状態で、保護膜形成層をバンプ形成面に残して、保護膜形成用シートを剥離する。
【0021】
保護膜形成層は、剥離前後に、バンプを覆うようにしてバンプ間に広がり、回路面と密着して、少なくともバンプの基部と回路面とを覆う。保護膜形成層が硬化されると、回路面およびバンプにさらに密着してこれらを保護する保護膜を形成する。すなわち、保護膜形成層および保護膜は、どちらも回路面およびバンプを保護する。したがって、保護膜形成層がバンプ形成面に形成された後は、バンプに応力が掛かる場合であっても、バンプクラックを効果的に抑制することができる。
【0022】
保護膜が形成されたバンプ付き半導体ウエハは、複数の半導体チップに個片化される。このとき、各半導体チップはバンプおよび保護膜を有しており、この状態でチップが搭載される基板に実装される。
【0023】
本実施形態では、保護膜形成用シートは、
図1Aに記載の構成に限定されず、本発明の効果が得られる限りにおいて、他の層を有していてもよい。たとえば、
図1Bに示すように、基材と粘着剤層との間に緩衝層40を有していてもよい。後述するが、バンプの高さが高い場合には、保護膜形成用シートは、
図1Bに示す緩衝層40を有していることが好ましい。
【0024】
本実施形態では、保護膜形成用シートにおいて、保護膜形成層以外の構成要素を積層シートということがある。たとえば、
図1Aに示す保護膜形成用シートにおいては、基材および粘着剤層が積層シート50を構成し、
図1Bに示す保護膜形成用シートにおいては、基材、緩衝層および粘着剤層が積層シート50を構成する。以下、保護膜形成用シートの構成要素について詳細に説明する。
【0025】
(2.粘着剤層)
粘着剤層は、保護膜形成層が凸状電極形成面に貼り付けられ、保護膜形成用シートから剥離されるまで、保護膜形成層を支持する。粘着剤層は1層(単層)から構成されていてもよいし、2層以上の複数層から構成されていてもよい。粘着剤層が複数層を有する場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層を構成する層の組み合わせは特に制限されない。
【0026】
粘着剤層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは1μm以上100μm以下、より好ましくは3μm以上50μm以下、さらに好ましくは5μm以上30μm以下である。なお、粘着剤層の厚さは、粘着剤層全体の厚さを意味する。たとえば、複数層から構成される粘着剤層の厚さは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0027】
本実施形態では、粘着剤層は以下の物性を有している。
【0028】
(2.1.引張貯蔵弾性率)
本実施形態では、23℃における粘着剤層の引張貯蔵弾性率が45MPa以下である。引張貯蔵弾性率は、粘着剤層の変形のしやすさ(硬さ)の指標の1つである。23℃における粘着剤層の引張貯蔵弾性率が上記の範囲内であることにより、保護膜形成層から粘着剤層、すなわち、積層シートを剥離する際に、スリップスティック現象が生じにくく、保護膜形成層からの剥離性が良好となる。その結果、保護膜形成層に与えるダメージを抑制することができ、保護膜形成時に基板装置の凸状電極を十分に保護することができる。
【0029】
23℃における粘着剤層の引張貯蔵弾性率は30MPa以下であることが好ましく、20MPa以下であることがより好ましい。また、23℃における粘着剤層の引張貯蔵弾性率は0.4MPa以上であることが好ましく、2MPa以上であることがより好ましい。
【0030】
なお、粘着剤層がエネルギー線硬化性を有している場合、上記の引張貯蔵弾性率は、硬化後の粘着剤層の引張貯蔵弾性率、すなわち、エネルギー線照射後の粘着剤層の引張貯蔵弾性率である。
【0031】
(2.2.粘着力)
本実施形態では、保護膜形成層は粘着剤層から剥離されるので、23℃における粘着剤層の粘着力は保護膜形成層からの剥離力である。当該粘着力は1500mN/25mm以下であることが好ましい。粘着剤層の粘着力が上記の範囲内であることにより、保護膜形成層からの剥離性が良好となる。
【0032】
23℃における粘着剤層の粘着力は1200mN/25mm以下であることが好ましく、1000mN/25mm以下であることがより好ましい。
【0033】
なお、粘着剤層がエネルギー線硬化性を有している場合、上記の粘着力は、硬化後の粘着剤層の粘着力である。
【0034】
(2.3.粘着剤組成物)
粘着剤層は上記の物性を有していれば、粘着剤層の組成は特に限定されないが、本実施形態では、粘着剤層は粘着性樹脂を有する粘着剤組成物から構成されていることが好ましい。
【0035】
粘着性樹脂としては、たとえば、アクリル系樹脂((メタ)アクリロイル基を有する樹脂からなる粘着剤)、ウレタン系樹脂(ウレタン結合を有する樹脂からなる粘着剤)、ゴム系樹脂(ゴム構造を有する樹脂からなる粘着剤)、シリコーン系樹脂(シロキサン結合を有する樹脂からなる粘着剤)、エポキシ系樹脂(エポキシ基を有する樹脂からなる粘着剤)、ポリビニルエーテル、ポリカーボネートが挙げられる。本実施形態では、粘着性樹脂はアクリル系樹脂であることが好ましい。
【0036】
粘着剤組成物は、エネルギー線照射により硬化可能なエネルギー線硬化性粘着剤組成物であってもよいし、非エネルギー線硬化性粘着剤組成物であってもよい。なお、エネルギー線としては、紫外線、電子線等が挙げられ、本実施形態では、紫外線が好ましい。
【0037】
(2.3.1 エネルギー線硬化性粘着剤組成物)
粘着剤組成物がエネルギー線硬化性である場合、粘着剤層の物性を、硬化前後で容易に調節できる。
【0038】
エネルギー線硬化性粘着剤組成物としては、たとえば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(1a)(以降、「粘着性樹脂(1a)」ともいう)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(1);非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(2a)(以降、「粘着性樹脂(2a)」ともいう)を含有する粘着剤組成物(2)が挙げられる。
【0039】
(2.3.1.1 粘着性樹脂(1a))
粘着性樹脂(1a)は、アクリル系樹脂であることが好ましい。アクリル系樹脂としては、たとえば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル系重合体が挙げられる。アクリル系重合体が有する構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0040】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるものが挙げられ、アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0041】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルともいう)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチルともいう)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチルともいう)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリルともいう)、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸イコシル等が挙げられる。
【0042】
粘着剤層の粘着力が向上する点から、アクリル系重合体は、アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有することが好ましい。そして、粘着剤層の粘着力がより向上する点から、アルキル基の炭素数は、4~12であることが好ましく、8~12であることがより好ましい。また、アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0043】
アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。官能基含有モノマーとしては、たとえば、官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となる、または、官能基が不飽和基含有化合物中の不飽和基と反応することにより、アクリル系重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
【0044】
官能基含有モノマー中の官能基としては、たとえば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。本実施形態では、水酸基およびカルボキシ基が好ましく、水酸基がより好ましい。
【0045】
水酸基含有モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0046】
カルボキシ基含有モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0047】
アクリル系重合体を構成する官能基含有モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0048】
アクリル系重合体において、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、構成単位の全質量に対して、1~35質量%であることが好ましく、3~32質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることが特に好ましい。
【0049】
アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。具体的には、たとえば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。他のモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0050】
粘着性樹脂(1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。粘着剤組成物(1)において、粘着性樹脂(1a)の含有量は、粘着剤組成物(1)の総質量に対して、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0051】
(2.3.1.2 エネルギー線硬化性化合物)
粘着剤組成物(1)が含有するエネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0052】
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、たとえば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、たとえば、上記で例示したモノマーが重合してなるオリゴマー等が挙げられる。
【0054】
エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0055】
粘着剤組成物(1)において、エネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着剤組成物(1)の総質量に対して、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが特に好ましい。
【0056】
(2.3.1.3 粘着性樹脂(2a))
粘着剤組成物(2)は、エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(2a)を含有している。本実施形態では、粘着性樹脂(2a)は、官能基を有するアクリル系重合体に、エネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物を付加反応させてなる粘着性樹脂であることが好ましい。
【0057】
官能基を有するアクリル系重合体としては、官能基を有するアクリル系モノマーと官能基を有さないアクリル系モノマーとの共重合体であることが好ましい。
【0058】
官能基を有するアクリル系モノマーは、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーが好ましく、水酸基含有モノマーがより好ましい。
【0059】
水酸基含有モノマーとしては、水酸基含有モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)が挙げられる。
【0060】
本実施形態では、官能基を有するアクリル系モノマーは、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルから選ばれる1種以上が好ましく、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルがより好ましい。
【0061】
官能基を有さないアクリル系モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルともいう)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチルともいう)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチルともいう)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリルともいう)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0062】
本実施形態では、保護膜形成層からの剥離性の観点から、アルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が8~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。
【0063】
エネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物としては、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基から選ばれる1種または2種以上を有する化合物が好ましく、イソシアネート基を有する化合物がより好ましい。
【0064】
エネルギー線硬化性化合物は、1分子中にエネルギー線硬化性基を1~5個有することが好ましく、1~2個有することがより好ましい。
【0065】
エネルギー線硬化性化合物としては、たとえば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0066】
これらの中でも、エネルギー線硬化性化合物は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0067】
エネルギー線硬化性化合物が、イソシアネート基を有する化合物である場合、このイソシアネート基が、アクリル系重合体の水酸基に付加反応する。粘着剤層の引張貯蔵弾性率は、この付加反応の度合いにより容易に調整することができる。
【0068】
本実施形態では、粘着性樹脂(2a)において、水酸基含有モノマーの含有割合を100質量%としたときに、イソシアネート基を有するエネルギー線硬化性化合物の含有割合が0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。エネルギー線硬化性化合物の含有割合を、上述した範囲内とすることにより、硬化後の粘着剤層の23℃における引張貯蔵弾性率を上述した範囲内とすることが容易となる。
【0069】
また、粘着剤組成物(2)は、粘着性樹脂(2a)に加えて、エネルギー線硬化性低分子化合物を含有してもよい。
【0070】
この場合、粘着性樹脂(2a)の含有量は、粘着剤組成物(2)の総質量に対して、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0071】
エネルギー線硬化性低分子化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー及びオリゴマーが挙げられ、粘着剤組成物(1)に含有されるエネルギー線硬化性化合物と同じものが挙げられる。エネルギー線硬化性低分子化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0072】
(2.3.1.4 架橋剤)
粘着性樹脂(1a)および粘着性樹脂(2a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有するアクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(1)および粘着剤組成物(2)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
【0073】
架橋剤は、たとえば、官能基と反応して、粘着性樹脂(1a)または粘着性樹脂(2a)同士を架橋するものである。
【0074】
架橋剤としては、たとえば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフォスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0075】
粘着剤の凝集力を向上させて粘着剤層の粘着力を向上させる点、及び入手が容易である等の点から、架橋剤はイソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
【0076】
架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0077】
粘着剤組成物(1)および粘着剤組成物(2)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(1a)または粘着性樹脂(2a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~10質量部であることが特に好ましい。架橋剤の含有割合を上述した範囲内とすることにより、硬化後の粘着剤層の23℃における引張貯蔵弾性率を上述した範囲内とすることが容易となる。
【0078】
(2.3.1.5 光重合開始剤)
粘着剤組成物(1)および粘着剤組成物(2)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(1)および粘着剤組成物(2)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0079】
光重合開始剤としては、たとえば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル、ジベンジル、ベンゾフェノン、2,4-ジエチルチオキサントン、1,2-ジフェニルメタン、オリゴ2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン、2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
【0080】
また、光重合開始剤としては、たとえば、1-クロロアントラキノン等のキノン化合物;アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
【0081】
光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0082】
粘着剤組成物(1)および粘着剤組成物(2)において、光重合開始剤の含有量は、エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5量部であることが特に好ましい。
【0083】
(2.3.1.6 その他の添加剤)
粘着剤組成物(1)および粘着剤組成物(2)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
【0084】
その他の添加剤としては、たとえば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
【0085】
その他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。粘着剤組成物(1)および粘着剤組成物(2)において、その他の添加剤の含有量は特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0086】
(2.3.2 非エネルギー線硬化性粘着剤組成物)
非エネルギー線硬化性粘着剤組成物としては、たとえば、アクリル系樹脂((メタ)アクリロイル基を有する樹脂)、ウレタン系樹脂(ウレタン結合を有する樹脂)、ゴム系樹脂(ゴム構造を有する樹脂)、シリコーン系樹脂(シロキサン結合を有する樹脂)、エポキシ系樹脂(エポキシ基を有する樹脂)、ポリビニルエーテル、又はポリカーボネート等の粘着性樹脂を含有するものが挙げられ、アクリル系樹脂を含有するものが好ましい。
【0087】
非エネルギー線硬化性粘着剤組成物は、1種または2種以上の架橋剤を含有することが好ましく、架橋剤の種類およびその含有量は、上述したエネルギー線硬化性粘着剤組成物と同様である。
【0088】
(3.保護膜形成層)
保護膜形成層は、ワーク表面から突出している凸状電極およびワークに形成されている回路面を保護するためのシート状又はフィルム状の層であり、硬化により、保護膜を形成する。保護膜形成層は1層(単層)から構成されていてもよいし、2層以上の複数層から構成されていてもよい。保護膜形成層が複数層を有する場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層を構成する層の組み合わせは特に制限されない。
【0089】
保護膜形成層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは1μm以上100μm以下、より好ましくは3μm以上80μm以下、さらに好ましくは5μm以上60μm以下である。なお、保護膜形成層の厚さは、保護膜形成層全体の厚さを意味する。たとえば、複数層から構成される保護膜形成層の厚さは、保護膜形成層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0090】
本実施形態では、保護膜形成層は以下の物性を有している。
【0091】
(3.1.せん断貯蔵弾性率)
本実施形態では、23℃における保護膜形成層のせん断貯蔵弾性率が3000MPa以下である。せん断貯蔵弾性率は、粘着剤層の変形のしやすさ(硬さ)の指標の1つである。23℃における保護膜形成層のせん断貯蔵弾性率が上記の範囲内であることにより、保護膜形成層の裁断時における裁断くずの発生、裁断時の保護膜形成層の割れを抑制することができる。
【0092】
すなわち、本実施形態では、粘着剤層の引張貯蔵弾性率と保護膜形成層のせん断貯蔵弾性率との両方を上述した範囲内とすることにより、保護膜形成層から粘着剤層を剥離する際の剥離性が良好となる。少なくとも一方が上述した範囲外である場合には、保護膜形成層から粘着剤層を剥離する際の剥離性が悪化する。
【0093】
23℃における保護膜形成層のせん断貯蔵弾性率は2750MPa以下であることが好ましく、2000MPa以下であることがより好ましい。また、23℃における保護膜形成層のせん断貯蔵弾性率は100MPa以上であることが好ましく、500MPa以上であることがより好ましい。
【0094】
なお、保護膜形成層は硬化性を有しているが、粘着剤層は保護膜形成層の硬化前に剥離されるので、上記のせん断貯蔵弾性率は、硬化前の保護膜形成層のせん断貯蔵弾性率である。
【0095】
(3.2.保護膜形成層用組成物)
保護膜形成層は上記の物性を有していれば、保護膜形成層の組成は特に限定されないが、本実施形態では、保護膜形成層は、硬化性を有する保護膜形成層用組成物から構成されていることが好ましい。
【0096】
本実施形態では、保護膜形成層用組成物は、硬化性を有していれば特に制限されないが、少なくとも熱硬化性を有していることが好ましい。
【0097】
(3.2.1 熱硬化性保護膜形成層用組成物)
熱硬化性保護膜形成層用組成物としては、たとえば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する保護膜形成層用組成物(1)等が挙げられる。重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。また、熱硬化性成分(B)は、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、本発明において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
【0098】
(3.2.1.1 重合体成分(A))
重合体成分(A)は、保護膜形成層に造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物である。保護膜形成層用組成物(1)が含有する重合体成分(A)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0099】
重合体成分(A)としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂を用いることで、積層シート(粘着剤層)からの保護膜形成層の剥離性が向上する、被着体の凹凸面へ保護膜形成層が追従し易くなる、被着体と熱化性樹脂層との間でボイド等の発生がより抑制できる等の利点がある。
【0100】
熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアセタール、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレンが挙げられる。本実施形態では、ポリビニルアセタールが好ましい。
【0101】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は5000~200000であることが好ましく、8000~100000であることがより好ましい。また、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40~80℃であることが好ましく、50~70℃であることがより好ましい。
【0102】
保護膜形成層用組成物(1)が含有する熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0103】
保護膜形成層用組成物(1)において、全ての成分の総含有量に対する重合体成分(A)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成層の重合体成分(A)の含有量)は、重合体成分(A)の種類によらず、5~85質量%であることが好ましく、5~80質量%であることがより好ましい。
【0104】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、保護膜形成層用組成物(1)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、保護膜形成層用組成物(1)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
【0105】
(3.2.1.2 熱硬化性成分(B))
保護膜形成層用組成物(1)は、熱硬化性成分(B)を含有する。保護膜形成層が熱硬化性成分(B)を含有することにより、熱硬化性成分(B)は、加熱によって保護膜形成層を硬化させて、硬質の保護膜を形成する。
【0106】
熱硬化性成分(B)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0107】
熱硬化性成分(B)としては、たとえば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂等が挙げられる。本実施形態では、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0108】
保護膜形成層用組成物(1)が含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
【0109】
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、たとえば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられ、中でも、多官能系エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が好ましい。
【0110】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する。
【0111】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、たとえば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、たとえば、エポキシ基に(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
【0112】
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
【0113】
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0114】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、保護膜形成層の硬化性、並びに硬化後の保護膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
【0115】
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、300~800g/eqであることがより好ましい。
【0116】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0117】
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
【0118】
熱硬化剤(B2)としては、たとえば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。官能基としては、たとえば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0119】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、たとえば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
【0120】
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、たとえば、ジシアンジアミド(以下、「DICY」と略記することがある)等が挙げられる。
【0121】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有するものでもよい。不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)としては、たとえば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
【0122】
熱硬化剤(B2)における不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0123】
熱硬化剤(B2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、粘着剤層からの保護膜形成層の剥離性が向上する点から、熱硬化剤(B2)は軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0124】
熱硬化剤(B2)のうち、たとえば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
【0125】
熱硬化剤(B2)のうち、たとえば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、たとえば、60~500であることが好ましい。
【0126】
熱硬化剤(B2)としては、たとえば、ノボラック型フェノール樹脂等が好ましい。
【0127】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0128】
保護膜形成層用組成物(1)において、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましく、1~200質量部であることがより好ましい。熱硬化剤(B2)の含有量が下限値以上であることで、保護膜形成層の硬化がより進行し易くなる。また、熱硬化剤(B2)の含有量が上限値以下であることで、保護膜形成層の吸湿率が低減されて、保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0129】
保護膜形成層用組成物(1)において、熱熱硬化性成分(B)の含有量(たとえば、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、50~1000質量部であることが好ましく、100~900質量部であることがより好ましく、150~800質量部であることが特に好ましい。熱硬化性成分(B)の含有割合を、上述した範囲内とすることにより、硬化前の保護膜形成層の23℃におけるせん断貯蔵弾性率を上述した範囲内とすることが容易となる。さらに、粘着剤層の剥離性が向上する。
【0130】
(3.2.1.3 硬化促進剤(C))
保護膜形成層用組成物(1)は、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、保護膜形成層用組成物(1)の硬化速度を調整するための成分である。
【0131】
好ましい硬化促進剤(C)としては、たとえば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられ、中でも、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が好ましい。
【0132】
保護膜形成層用組成物(1)が含有する硬化促進剤(C)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0133】
硬化促進剤(C)を用いる場合、保護膜形成層用組成物(1)において、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の含有量が下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、硬化促進剤(C)の含有量が上限値以下であることで、たとえば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で保護膜形成層中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなり、保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0134】
(3.2.1.4 充填材(D))
保護膜形成層用組成物(1)は、充填材(D)を含有していてもよい。硬化性保護膜形成層の充填材(D)の含有量を調整することにより、硬化性保護膜形成層の濡れ広がり性を調整することができる。すなわち、充填材(D)の含有量を増加させることにより、濡れ広がり性を減少させ、充填材(D)の含有量を低減することにより、濡れ広がり性を増加させることができる。また、保護膜形成層が充填材(D)を含有することにより、保護膜形成層を硬化して得られた保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、保護膜形成層が充填材(D)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減することもできる。
【0135】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。
【0136】
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
【0137】
これらの中でも、無機充填材は、シリカ、アルミナ又は表面改質されたシリカであることが好ましい。より具体的には、エポキシ基で修飾された球状シリカ等が挙げられる。また、前記無機充填材としては、平均粒子径が5nm~800nm、より好ましくは10nm~300nm、更に好ましくは30nm~100nm、特に好ましくは40nm~60nmであることが好ましい。
【0138】
(3.2.1.5 その他の添加剤)
保護膜形成層用組成物(1)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、その他の添加剤として、たとえば、エネルギー線硬化性樹脂、光重合開始剤、カップリング剤、架橋剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤(染料、顔料)、ゲッタリング剤等を含有していてもよい。
【0139】
(3.2.2 エネルギー線硬化性保護膜形成層用組成物)
エネルギー線硬化性保護膜形成層用組成物としては、たとえば、エネルギー線硬化性成分を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成層用組成物が挙げられる。エネルギー線硬化性成分は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化かつ粘着性を有することがより好ましい。
【0140】
エネルギー線硬化性成分は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、保護膜形成層に造膜性や、可撓性等を付与するための成分でもある。
【0141】
エネルギー線硬化性成分としては、たとえば、エネルギー線硬化性基を有する重合体または化合物が好ましい。このような重合体または化合物としては、公知のものが挙げられる。たとえば、上述した粘着剤組成物において例示したエネルギー線硬化性基を有する重合体または化合物が挙げられる。
【0142】
(4.緩衝層)
上述したように、本実施形態に係る保護膜形成用シートは、
図1Bに示す構成を有することも好ましい。すなわち、基材と粘着剤層との間に緩衝層が配置されていてもよい。特に、凸状電極の高さが高い場合、保護膜形成層および粘着剤層を突き抜けた凸状電極が緩衝層に埋め込まれることにより、凸状電極が十分に保護される。
【0143】
緩衝層は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよく、複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0144】
緩衝層の厚さは、保護対象となる半導体ウエハ表面の凸状電極の高さに応じて適宜調節できるが、比較的高さが高い凸状電極の影響も容易に吸収できる点から、50~600μmであることが好ましく、100~500μmであることがより好ましく、150~450μmであることが特に好ましい。
【0145】
ここで、緩衝層の厚さは、緩衝層全体の厚さを意味し、たとえば、複数層からなる緩衝層の厚さとは、緩衝層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0146】
(4.1.緩衝層形成用組成物)
緩衝層は凸状電極の影響を吸収できるように構成されていれば、緩衝層の組成は特に限定されないが、本実施形態では、緩衝層は、以下に示す緩衝層形成用組成物から構成されていることが好ましい。
【0147】
緩衝層形成用組成物としては、たとえば、ポリα-オレフィンを含有する緩衝層形成用組成物、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する緩衝層形成用組成物が挙げられる。
【0148】
ポリα-オレフィンを含有する緩衝層形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、ポリα-オレフィン以外の成分を含有していてもよい。
【0149】
ポリα-オレフィンは、α-オレフィンから誘導された構成単位を有するものであればよい。ポリα-オレフィンの構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。すなわち、ポリα-オレフィンは、1種のモノマーが重合してなる単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが共重合してなる共重合体であってもよい。
【0150】
本実施形態では、ポリα-オレフィンは、エチレン-α-オレフィン共重合体であることが好ましい。
【0151】
ポリα-オレフィンの密度は、890kg/m3以下であることが好ましく、830~890kg/m3であることがより好ましく、850~875kg/m3であることが特に好ましい。また、ポリα-オレフィンの融点は、55℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましい。また、ポリα-オレフィンの190℃でのメルトフローレイト(MFR)は、1~6g/10分であることが好ましく、2.5~4.5g/10分であることがより好ましい。
【0152】
緩衝層形成用組成物におけるポリα-オレフィンの含有量は、80~100質量%であることが好ましい。
【0153】
ウレタン(メタ)アクリレートを含有する緩衝層形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、ウレタン(メタ)アクリレート以外の成分を含有していてもよい。たとえば、重合性モノマー、光重合開始剤等を含有していてもよい。
【0154】
ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子中に少なくとも(メタ)アクリロイル基及びウレタン結合を有する化合物であり、エネルギー線重合性を有する。ウレタン(メタ)アクリレートは、単官能であってもよいし、多官能であってもよいが、少なくとも単官能であることが好ましい。
【0155】
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、オリゴマー、ポリマー、並びにオリゴマー及びポリマーの混合物のいずれであってもよいが、オリゴマーであることが好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0156】
ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましく、5000~65000であることが特に好ましい。
【0157】
本実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、たとえば、ポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物と、を反応させて得られた、末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、さらに水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物を反応させて得られたものが挙げられる。ここで、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、ウレタン結合を有するとともに、分子の末端部にイソシアネート基を有するプレポリマーを意味する。
【0158】
ポリオール化合物としては、たとえば、アルキレンジオール、ポリエーテル型ポリオール、ポリエステル型ポリオール、ポリカーボネート型ポリオール等が挙げられる。本実施形態では、ポリエーテル型ポリオールであることが好ましく、ポリエーテル型ジオールであることがより好ましい。
【0159】
多価イソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2個以上有するものであれば、特に限定されない。本実施形態では、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート又はキシリレンジイソシアネートであることが好ましい。
【0160】
(メタ)アクリル系化合物は、1分子中に少なくとも水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、特に限定されない。本実施形態では、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましく、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることがより好ましく、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルであることが特に好ましい。
【0161】
(5.基材)
本実施形態に係る保護膜形成用シート1の基材10は、粘着剤層および保護膜形成層を支持し、ワークの凸状電極を有する面に保護膜を形成できるように構成されていれば特に制限されない。本実施形態では、たとえば、バックグラインドテープの基材として使用されている各種の樹脂フィルムを用いることができる。
【0162】
具体的には、たとえば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上のポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトンが挙げられる。
【0163】
また、たとえば、ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
【0164】
また、たとえば、上述した樹脂の1種または2種以上が架橋した架橋樹脂;上述した樹脂の1種または2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0165】
基材を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせおよび比率は任意に選択できる。
【0166】
基材は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよく、複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0167】
基材の厚さは、50~200μmであることが好ましい。ここで、基材の厚さは、基材全体の厚さを意味し、たとえば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0168】
基材は、厚さの精度が高いもの、すなわち、部位によらず厚さのばらつきが抑制されたものが好ましい。上述の構成材料のうち、このような厚さの精度が高い基材を構成するのに使用可能な材料としては、たとえば、ポリエチレン、ポリエチレン以外のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
【0169】
基材は、樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0170】
基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。上述した粘着剤層または保護膜形成層がエネルギー線硬化性を有する場合、基材はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0171】
基材は、公知の方法で製造できる。たとえば、樹脂を含有する基材10は、樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0172】
(6.密着層)
本実施形態では、基材と緩衝層との密着性を向上させるために、基材と緩衝層との間に密着層を設けてもよい。
【0173】
密着性を構成する材料としては、たとえば、エチレン-酢酸ビニル共重合体が例示される。密着層の厚みは10~100μmであることが好ましい。
【0174】
(7.保護膜形成用シートの製造方法)
本実施形態に係る保護膜形成用シートを製造する方法は、基材の一方の面に粘着剤層および保護膜形成層を積層して形成できる方法であれば特に制限されず、公知の方法を用いればよい。
【0175】
まず、粘着剤層を形成するための組成物として、たとえば、上述した成分を含有する粘着剤組成物、または、当該粘着剤組成物を溶媒等により希釈した組成物を調製する。同様に、保護膜形成層を形成するための組成物として、たとえば、上述した成分を含有する保護膜形成層用組成物、または、当該保護膜形成層用組成物を溶媒等により希釈した組成物を調製する。保護膜形成用シートが緩衝層を有する場合には、緩衝層形成用組成物を調製すればよい。
【0176】
溶媒としては、たとえば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、トルエン、キシレン、n-プロパノール、イソプロパノール等の有機溶剤が挙げられる。
【0177】
そして、粘着剤組成物等を、基材上に、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の方法により塗布し、加熱し乾燥させて基材上に粘着剤層を形成する。次に、形成した粘着剤層の上に、保護膜形成層用組成物等を公知の方法により塗布し、加熱し乾燥させて、基材上に粘着剤層および保護膜形成層がこの順で形成された保護膜形成用シートを製造する。
【0178】
また、剥離シートの剥離処理面に、粘着剤組成物等を塗布し、加熱し乾燥させて剥離シート上に粘着剤層を形成する。同様に、剥離シートの剥離処理面に、保護膜形成層用組成物等を塗布し、加熱し乾燥させて剥離シート上に保護膜形成層を形成する。その後、剥離シート上の粘着剤層と基材とを貼り合わせて、剥離シートを除去し、粘着剤層と剥離シート上の保護膜形成層とを貼り合わせて、基材上に、粘着剤層、保護膜形成層および剥離シートがこの順に設けられた保護膜形成用シートを製造してもよい。剥離シートは、保護膜形成用シートの使用前に適宜剥離して除去すればよい。
【0179】
保護膜形成用シートが、緩衝層を有している場合には、上記と同様にして、緩衝層用組成物を塗布して、緩衝層を形成することができる。また、保護膜形成用シートが、密着層を有している場合には、上記と同様にして、密着層用組成物を塗布して、密着層を形成することができる。
【0180】
(8.基板装置の製造方法)
本実施形態に係る保護膜形成用シートを用いた基板装置の製造方法の一例として、凸状電極を有するワークを加工して、ワーク加工物を得る方法について説明する。
【0181】
ワークは、本実施形態に係る保護膜形成用シートが貼付されて加工される板状体である。ワークとしては、たとえば、半導体ウエハ、半導体パネルが挙げられる。
【0182】
凸状電極は、ワークの表面から突出して形成されている電極であり、通常、接続電極として機能するバンプ、ピラー電極等が例示される。凸状電極の形状は、特に制限されず、たとえば、球状、柱状、錐状が例示される。また、凸状電極の材質は、導電性を有する材料であれば特に制限されないが、通常、ハンダ系の材料である。また、凸状電極の高さは、特に限定されないが、通常、5~1000μm、好ましくは50~500μmである。
【0183】
本実施形態に係る基板装置の製造方法は、少なくとも以下の工程1から工程4を有する。
工程1:上述した保護膜形成用シートを、凸状電極を有するワークにおける凸状電極を有する面に貼付して、保護膜形成層と凸状電極とを接触させる工程
工程2:粘着剤層を、硬化前の保護膜形成層から剥離する工程
工程3:保護膜形成層を硬化して、保護膜を形成する工程
工程4:凸状電極を有するワークから、個片化されたワーク加工物を得る工程
【0184】
本実施形態では、上記の工程1から工程4を有する基板装置の製造方法の一例として、ワークとしての半導体ウエハの回路面に凸状電極としてのバンプが形成されているバンプ付き半導体ウエハを個片化して、バンプおよび回路が形成された半導体装置を製造する方法を
図1Aから
図6を用いて説明する。
【0185】
バンプ付き半導体ウエハ100は、
図2に示すように、半導体基板101の回路面101aにバンプ102が設けられたバンプ付きウエハである。バンプ102は通常複数設けられる。半導体ウエハ100は、特に限定されないが、シリコンウエハでもよいし、セラミック、ガラス、サファイア系等のウエハであってもよい。
【0186】
(8.1 工程1)
工程1では、まず、
図1Aまたは
図1Bに示す保護膜形成用シート1を準備する。そして、保護膜形成用シート1を、
図3に示すように、保護膜形成層30を貼り合わせ面にして、半導体ウエハ100の表面(バンプ形成面)101aに貼り合わせ、保護膜形成層30とバンプ102とを接触させる。
【0187】
保護膜形成用シート1の半導体ウエハ100への貼り合わせは、30~150℃で行われることが好ましく、40~100℃で行われることがより好ましい。
【0188】
また、保護膜形成用シートの貼付は、加圧しながら行うことが好ましく、たとえば圧着ローラ等の押圧手段により押圧しながら行うことが好ましい。あるいは、真空ラミネータにより、保護膜形成用シートを半導体ウエハ100に圧着してもよい。
【0189】
本実施形態では、保護膜形成用シート1が半導体ウエハ100に貼付された後に、
図3に示すように、バンプ102が、保護膜形成層30を突き抜けて粘着剤層側に突出することが好ましい。このようにバンプ102が粘着剤層側に突出することで、後述するリフローにより、バンプ102をチップ搭載用基板上の電極等に接触させて固定することが容易になる。
【0190】
ただし、バンプ102は、保護膜形成層30を突き抜けずに、保護膜形成層30の内部に埋め込まれた状態になっていてもよい。このような状態であっても、工程3等において、保護膜形成層30を加熱により流動させてバンプ102を突出させればよい。
【0191】
(8.2 工程2)
工程2では、工程1の後に、半導体ウエハ100の表面に貼付されていた粘着剤層20および基材10(積層シート50)を、保護膜形成層30から剥離する。この剥離後、保護膜形成層30は、
図4に示すように、半導体ウエハ100の上に残されたままとなる。
【0192】
粘着剤層20がエネルギー線硬化性を有している場合、工程2において粘着剤層および基材を半導体ウエハ100から剥離する前に、粘着剤層20にエネルギー線を照射して粘着剤層20を硬化させる。粘着剤層20は、エネルギー線照射により硬化することで、引張貯蔵弾性率が上述した範囲内になる。一方、保護膜形成層はまだ硬化されていないため、そのせん断貯蔵弾性率は上述した範囲内にある。したがって、粘着剤層20および保護膜形成層30の両方が、剥離に好適な状態となっているため、保護膜形成層30との界面で粘着剤層20を容易に剥離できるようになる。
【0193】
粘着剤層20にエネルギー線を照射して硬化させるタイミングは特に限定されず、保護膜形成用シートを半導体ウエハ100に貼付する前に予め硬化させてもよい。また、半導体ウエハ100に貼付した後であってもよい。また、粘着剤層20は、たとえば、保護膜形成用シートを半導体ウエハ100に貼付する前、完全に硬化しない程度にエネルギー線を照射して接着力を低下させるとともに、半導体ウエハ100に貼付した後、さらにエネルギー線を照射してさらに硬化させて、接着力を一層低下させてもよい。
【0194】
また、粘着剤層が、エネルギー線硬化性を有していない場合には、粘着剤層の引張貯蔵弾性率が上述した範囲内である。一方、保護膜形成層はまだ硬化されていないため、そのせん断貯蔵弾性率は上述した範囲内にある。したがって、粘着剤層および保護膜形成層の両方が、剥離に好適な状態となっているため、保護膜形成層との界面で粘着剤層を容易に剥離できるようになる。
【0195】
本実施形態に係る製造方法において、半導体ウエハ100は、裏面研削が行われることが好ましい。裏面研削は、保護膜形成用シートを、半導体ウエハ100の回路面101a側に貼付した状態で行う。すなわち、半導体ウエハの裏面研削は、工程1と工程2の間に行う。これにより、保護膜形成用シート1は、保護膜形成層30を支持するためのシートのみならず、裏面研削時にバンプ形成面を保護するバックグラインドシートとしても使用される。
【0196】
半導体ウエハの裏面研削は、たとえば、保護膜形成用シートが貼付された、半導体ウエハの表面(回路面)側をチャックテーブル等の固定テーブル上に固定し、裏面をグラインダー等により研削することで行う。ウエハの研削後の厚みは特に限定はされないが、通常5~450μm、好ましくは20~400μm程度である。
【0197】
また、本実施形態に係る製造方法において、保護膜形成層から、粘着剤層および基材を剥離する前に、半導体ウエハの裏面に保護シートを貼付することが好ましい。半導体ウエハの裏面研削が行われる場合には、
図4に示すように、研削後の裏面に保護シート200を貼付することにより、後述する工程4において、ダイシングシート200として使用される。
【0198】
(8.3 工程3)
工程2で、保護膜形成層から、粘着剤層を剥離した後、半導体ウエハ100の表面に残された保護膜形成層30を加熱する。保護膜形成層30は、熱硬化性樹脂を含有するため、上記加熱により熱硬化され、
図4に示すように、保護膜31となる。
【0199】
上記加熱条件は、保護膜形成層30に含有される熱硬化性樹脂が硬化されれば特に限定されず、たとえば、80~200℃で、30~300分間、好ましくは100~180℃で、60~200分間行われる。
【0200】
(8.4 工程4)
次に、保護膜31がバンプ形成面に形成された半導体ウエハ100から個片化された半導体チップを得る。本実施形態では、
図5に示すように、半導体ウエハ100をダイシングにより分割して、複数の半導体チップ150に個片化する。この工程では、半導体ウエハ100とともに、保護膜31も、半導体チップ150の形状に合わせて分割される。
【0201】
ダイシング方法としては、特に限定されないが、ブレードダイシング、ステルスダイシング、レーザダイシングなどの公知の方法を用いることができる。
【0202】
たとえば、
図5に示すように、半導体ウエハ100の裏面側に貼付されたダイシングシート200により半導体ウエハ100を支持するとともに、半導体ウエハ100の回路面101a側から切り込みを入れることで行う。
【0203】
ダイシングシート200は、半導体ウエハ100より一回り大きく、かつ、その中央領域が半導体ウエハ100に貼付されるとともに、外周領域が半導体ウエハ100に貼付されず、支持部材300に貼付されることが好ましい。支持部材300は、ダイシングシート200を支持するための部材であり、たとえば、リングフレームが挙げられる。
【0204】
本実施形態では、ダイシングの後、半導体チップ150を公知の方法によりピックアップする。ピックアップした半導体チップ150は、
図6に示すように、チップ搭載用基板160に取り付けられた後、リフローにより、バンプ102を介してチップ搭載用基板160に固定される。必要に応じて、半導体チップ150とチップ搭載基板160の間の隙間を封止樹脂により封止して、半導体装置170が製造される。
【0205】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
【実施例】
【0206】
以下、実施例を用いて、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0207】
本実施例における測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0208】
(粘着剤層の引張貯蔵弾性率の測定)
粘着剤層(厚み200μm)の両面にPET系剥離フィルム(リンテック社製:SP-PET381031 厚み:38μm)が貼付された積層体を調製した。粘着剤層に含まれる粘着剤がエネルギー線硬化性である場合には、リンテック社製紫外線照射装置(RAD-2000m/12)を用いて、照度230mW/cm2、積算光量500mJ/cm2の照射条件で紫外線を照射して硬化させた。次に、得られた積層体を4mm×50mmの大きさにカットし、引張貯蔵弾性率を測定するための試料を得た。粘弾性測定装置(オリエンテック社製:レオバイブロン)を用いて、得られた試料に周波数1Hzのひずみを与え、-30~200℃の引張貯蔵弾性率を測定し、それらの値から23℃における引張貯蔵弾性率を算出した。
【0209】
(保護膜形成層のせん断貯蔵弾性率の測定)
保護膜形成層(厚み1000μm)の両面にPET系剥離フィルム(リンテック社製:SP-PET381031 厚み:38μm)が貼付された積層体を調製した。次に、得られた積層体を直径8mmの円板状に裁断して、せん断貯蔵弾性率を測定するための試料を得た。
【0210】
せん断粘度測定装置の試料の設置箇所をあらかじめ90℃に維持し、この設置箇所へ、上記で得られた試料を載置し、試料の上面に測定治具を押し当てることで、試料を設置箇所に固定した。次いで、温度23℃、測定周波数1Hzの条件で、試料のせん断貯蔵弾性率を測定した。
【0211】
(粘着剤層の粘着力の測定)
実施例および比較例で作製した保護膜形成用シートを25mm幅に切断し、被着体であるシリコンミラーウエハに重さ2kgのロールを用いて貼付した。このとき、シリコンミラーウエハはホットプレートで70℃に加熱した。貼付後、23℃、50%RHの環境下で1時間保管した。リンテック社製紫外線照射装置(RAD-2000m/12)を用いて、照射速度15mm/secの条件で、紫外線を照射した後、所定の温度環境下に5分放置させたのちに、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用いて、剥離角度180°、剥離速度100mm/min.の条件で保護膜形成層から粘着剤層を剥離し、粘着力を測定した。
【0212】
(粘着剤層の剥離性評価)
バンプ高さ200μm、ピッチ400μm、直径250μmのバンプ付きウェハ(Waltz製8インチウェハ)に実施例及び比較例で作製した保護膜形成用シートを、リンテック社製ラミネーター(RAD-3510F/12)を用いて貼付した。なお、貼付する際、装置のラミネートテーブルを90℃に設定した。ラミネート後、リンテック社製紫外線照射装置(RAD-2000m/12)を用いて照射速度15mm/secの条件で紫外線を照射した。
【0213】
ウエハ裏面にリンテック製ダイシングテープ(D-676H)をリングフレームとともに貼付し、リンテック社製BGテープ剥離装置(RAD-2700)にて、剥離評価を行った。なお、剥離速度は2mm/sec、テーブル温度は常温に設定し、ヒートシールにはS-32Bを使用した。装置が停止することなく、保護膜形成層から粘着剤層が剥離できれば、「○(良好)」と評価し、装置の停止やヒートシールの脱離、ウエハの破壊が起これば、「×(不良)」と評価した。
【0214】
(保護膜形成層の割れ評価)
実施例および比較例で作製した保護膜形成用シートを30cm×100cmのサイズにカットし、内径3インチ、長さ35cmのプラスチックコアに基材側が外側になるように全量を巻き付けた。5分間静置後、コアから解き保護膜形成層の割れの有無を目視で確認した。保護膜形成層に割れがない場合には「○(良好)」と評価し、保護膜形成層に割れがある場合「×(不良)」と評価した。
【0215】
(基材および緩衝層)
基材として、PET製フィルム(東レ社製「ルミラー(登録商標)」、厚さ100μm)を準備した。小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製「ラボプラストミル」)を用いて、PET製フィルムに対して、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(三井・デュポンポリケミカル社製「エバフレックス(登録商標)EV260」)と、エチレン-α-オレフィンコポリマー(三井化学社製「タフマーDF640」)と、を共押出成形することにより、基材上に、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂からなる密着層、及びエチレン-α-オレフィンコポリマーからなる緩衝層(厚さ400μm)を、この順に積層した。なお、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂の物性値は、密度950kg/m3、融点72℃未満、メルトフローレイト(190℃)6g/10分であった。また、エチレン-α-オレフィンコポリマーの物性値は、密度864kg/m3、融点50℃未満、メルトフローレイト(190℃)3.6g/10分、メルトフローレイト(230℃)6.7g/10分であった。
【0216】
(保護膜形成層)
次の各成分を各配合比(固形分換算)で混合し、固形分濃度が55質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、保護膜形成層用塗布剤を調製した。調製した塗布剤を、PET系剥離フィルム(リンテック社製:SP-PET381031 厚み:38μm)に塗工し、乾燥して厚みが30μmの保護膜形成層Aが形成されたシートを得た。
(a)バインダーポリマー:PVB樹脂 (積水化学工業製,SV-10)配合比が9.9%
(b-1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC製,EXA-4810-1000)配合比が37.8%
(b-2)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製,エピクロンHP-7200,エポキシ当量 254~264g/eq)配合比が25%
(c)ノボラック型フェノール樹脂(昭和電工株式会社製,ショウノールBRG-556)配合比が18.1%
(d)硬化促進剤:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製,キュアゾール2PHZ)配合比が0.2%
(e)シリカフィラー(アドマテックス社製,YA050C-MKK,平均粒径0.05μm)配合比が9%
【0217】
次の各成分を各配合比(固形分換算)で混合し、固形分濃度が55質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、保護膜形成フィルム用塗布剤を調製した。調製した塗布剤をPET系剥離フィルム(リンテック社製:SP-PET381031 厚み:38μm)に塗工し、乾燥して厚みが30μmの保護膜形成層Bが形成されたシートを得た。
(a)バインダーポリマー:PVB樹脂 (積水化学工業製,SV-10)配合比が10.16%
(b-1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC製,EP-4088L)配合比が34.79%
(b-2)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製,エピクロンHP-7200HH)配合比が26.63%
(c)ノボラック型フェノール樹脂(昭和電工株式会社製,ショウノールBRG-556)配合比が19.09%
(d)硬化促進剤:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製,キュアゾール2PHZ)配合比が0.2%
(e)シリカフィラー(アドマテックス社製,YA050C-MKK,平均粒径0.05μm)配合比が9.13%
【0218】
次の各成分を各配合比(固形分換算)で混合し、固形分濃度が55質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、保護膜形成層用塗布剤を調製した。調製した塗布剤を、PET系剥離フィルム(リンテック社製:SP-PET381031 厚み:38μm)に塗工し、乾燥して厚みが30μmの保護膜形成層Cが形成されたシートを得た。
(a)バインダーポリマー:PVB樹脂 (積水化学工業製,KS-10)配合比が10.4%
(b-1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC製,EXA-4810-1000)配合比が34.3%
(b-2)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製,エピクロンHP-7200,エポキシ当量 254~264g/eq)配合比が23.7%
(c)ノボラック型フェノール樹脂(昭和電工株式会社製,ショウノールBRG-556)配合比が22%
(d)硬化促進剤:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製,キュアゾール2PHZ)配合比が0.2%
(e)シリカフィラー(アドマテックス社製,YA050C-MKK,平均粒径0.05μm)配合比が9.4%
【0219】
(実施例1)
(粘着剤層の調製)
2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)80質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)20質量部からなるアクリル系粘着剤(Mw:900000)に対して2-イソシアナートエチルメタクリレート(昭和電工製 カレンズ MOI)をHEA質量部に対して付加率が40%となるように付加した粘着剤を作製した。すなわち、2-イソシアナートエチルメタクリレートの付加部数は8部であった。
【0220】
粘着剤100質量部に対して、光開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製 Irgacure184)を3質量部添加し、架橋剤として、多価イソシアネート化合物(東ソー社製 コロネートL)を0.5質量部添加し、30分間撹拌を行って、粘着剤組成物を調製した。
【0221】
(保護膜形成用シートの製造)
次いで、調製した粘着剤組成物の溶液を、PET系剥離フィルム(リンテック社製SP-PET381031 厚み38μm)に塗布し、乾燥させ厚さ10μmの粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。作製した粘着シートを、上記で作製した基材付き緩衝層の緩衝層側に貼り合わせ、さらに、その粘着シートに保護膜形成層Aが形成されたシートを貼り合わせ、保護膜形成用シートを得た。
【0222】
(実施例2)
2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)96質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)4質量部からなるアクリル系粘着剤(Mw:900000)に対して2-イソシアナートエチルメタクリレート(昭和電工製 カレンズ MOI)をHEA質量部に対して付加率が50%となるように付加した粘着剤組成物を作製した。すなわち、2-イソシアナートエチルメタクリレートの付加部数は2部であった。その他は実施例1と同様に保護膜形成用シートを作製した。
【0223】
(実施例3)
2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)90質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)10質量部からなるアクリル系粘着剤(Mw:900000)に対して2-イソシアナートエチルメタクリレート(昭和電工製 カレンズ MOI)をHEA質量部に対して付加率が40%となるように付加した粘着剤組成物を作製した。すなわち、2-イソシアナートエチルメタクリレートの付加部数は4部であった。その他は実施例1と同様に保護膜形成用シートを作製した。
【0224】
(実施例4)
2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)82質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)18質量部からなるアクリル系粘着剤(Mw:900000)に対して2-イソシアナートエチルメタクリレート(昭和電工製 カレンズ MOI)をHEA質量部に対して付加率が33%となるように付加した粘着剤組成物を作製した。すなわち、2-イソシアナートエチルメタクリレートの付加部数は6部であった。その他は実施例1と同様に保護膜形成用シートを作製した。
【0225】
(実施例5)
2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)90質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)10質量部からなるアクリル系粘着剤(Mw:900000)に対して2-イソシアナートエチルメタクリレート(昭和電工製 カレンズ MOI)をHEA質量部に対して付加率が80%となるように付加した粘着剤組成物を作製した。すなわち、2-イソシアナートエチルメタクリレートの付加部数は8部であった。その他は実施例1と同様に保護膜形成用シートを作製した。
【0226】
(実施例6)
2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)80質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)20質量部からなるアクリル系粘着剤(Mw:900000)に対して2-イソシアナートエチルメタクリレート(昭和電工製 カレンズ MOI)をHEA質量部に対して付加率が40%となるように付加した粘着剤組成物を作製した。すなわち、2-イソシアナートエチルメタクリレートの付加部数は8部であった。
【0227】
粘着剤100質量部に対して、光開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製 Irgacure184)を3質量部添加し、架橋剤として、多価イソシアネート化合物(東ソー社製 コロネートL)を0.5質量部添加し、30分間撹拌を行って、粘着剤組成物を調製した。
【0228】
次いで、調製した粘着剤組成物の溶液を、PET系剥離フィルム(リンテック社製 SP-PET381031 厚み38μm)に塗布し、乾燥させ厚さ10μmの粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。作製した粘着シートを基材付き緩衝層の緩衝層側に貼り合わせ、さらに、その粘着シートに保護膜形成層Bが形成されたシートを貼り合わせ、保護膜形成用シートを得た。
【0229】
(実施例7)
2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)96質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)4質量部からなるアクリル系粘着剤(Mw:900000)を作製した。
【0230】
粘着剤100質量部に対して、架橋剤として、多価イソシアネート化合物(東ソー社製
コロネートL)を4.3質量部添加し、30分間撹拌を行って、粘着剤組成物を調製した。その他は実施例1と同様に保護膜形成用シートを作製した。
【0231】
(比較例1)
2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)80質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)20質量部からなるアクリル系粘着剤(Mw:900000)に対して2-イソシアナートエチルメタクリレート(昭和電工製 カレンズ MOI)をHEA質量部に対して付加率が80%となるように付加した粘着剤組成物を作製した。すなわち、2-イソシアナートエチルメタクリレートの付加部数は16部であった。その他は実施例1と同様に保護膜形成用シートを作製した。
【0232】
(比較例2)
2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)80質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)20質量部からなるアクリル系粘着剤(Mw:900000) に対して2-イソシアナートエチルメタクリレート(昭和電工製 カレンズ MOI)をHEA質量部に対して付加率が60%となるように付加した粘着剤組成物を作製した。すなわち、2-イソシアナートエチルメタクリレートの付加部数は12部であった。その他は実施例1と同様に保護膜形成用シートを作製した。
【0233】
(比較例3)
実施例4と同様にして、粘着剤組成物を調製した。調製した粘着剤組成物の溶液を、PET系剥離フィルム(リンテック社製 SP-PET381031 厚み38μm)に塗布し、乾燥させ厚さ10μmの粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。作製した粘着シートを基材付き緩衝層の緩衝層側に貼り合わせ、さらに、その粘着シートに保護膜形成層Cが形成されたシートを貼り合わせ、保護膜形成用シートを得た。
【0234】
得られた試料(実施例1~7、比較例1~3)に対して、上記の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0235】
【0236】
表1より、23℃における保護膜形成層のせん断貯蔵弾性率および23℃における粘着剤層の引張貯蔵弾性率が上述した範囲内である場合には、粘着剤層の粘着力が適切に制御され、粘着剤層の剥離性が良好であることが確認できた。また、23℃における保護膜形成層のせん断貯蔵弾性率が上述した範囲よりも高い場合には、保護膜形成用シートを屈曲させると、保護膜形成層に割れが生じることが確認できた。
【符号の説明】
【0237】
1…保護膜形成用シート
10…基材
20…粘着剤層
30…保護膜形成層
31…保護膜
40…緩衝層