(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】眼の圧力を測定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/16 20060101AFI20230830BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A61B3/16 300
A61B3/10
A61B3/10 100
A61B3/10 900
A61B3/10 ZDM
(21)【出願番号】P 2021531384
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 FI2019050828
(87)【国際公開番号】W WO2020109656
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-09-29
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】521235028
【氏名又は名称】フォトノ オサケユイチア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】アンッティ コンティオラ
(72)【発明者】
【氏名】アリ サルミ
(72)【発明者】
【氏名】エドワルド ヘーグストローム
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ベイラ カンレ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリ マリネン
(72)【発明者】
【氏名】ヨニ マーキネン
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-038944(JP,A)
【文献】特表2018-529419(JP,A)
【文献】特表2016-518909(JP,A)
【文献】特開2010-172464(JP,A)
【文献】特開2009-273715(JP,A)
【文献】特表2005-500889(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0173711(US,A1)
【文献】米国特許第7871378(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の圧力を測定するためのシステム(112)であって、
移動空気渦輪(111,211,311)を生成するとともに前記移動空気渦輪を前記眼に向けるための励起源(101)と、
前記移動空気渦輪と前記眼の表面との間の相互作用を検出するための検出器(102)と、
前記移動空気渦輪と前記眼の表面との間の検出された相互作用に基づいて前記眼の圧力の推定値を決定するための処理装置(103)と、
を備え、前記励起源は、空気圧パルス源と、前記移動空気渦輪を形成するためのフローガイド(105,205,305)と、を備える、システムにおいて、前記空気圧パルス源(204a~204d,304)は、i)前記フローガイドに接続されるとともに電気火花によって空気圧パルスを生成するためのスパークギャップを有するチャンバ(208)と、ii)前記フローガイドに接続されるとともに化学反応によって空気圧パルスを生成するための化学物質(216)を有するチャンバと、iii)空気圧パルスを生成するために前記フローガイドに接続されたチャンバ内にプラズマ膨張を生成するためのレーザー源(217)
とのうちの一つを備えることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記フローガイド(205)は、前記移動空気渦輪を形成するための開放端を有する管を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記フローガイド(205)は、壁に開口(315)を有するフローガイドチャンバを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記フローガイドチャンバは、円錐台の形状を有し、前記フローガイドチャンバの小さい方の端部の端壁は、前記開口(315)を有し、前記フローガイドチャンバの大きい方の端部は、前記空気圧パルス源(304)に接続されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記検出器(102)は、前記眼の表面の上の前記移動空気渦輪によって生じる表面波を検出するための、光干渉計、光コヒーレンストモグラフィーデバイス、レーザードップラー振動計及び超音波変換器のうちのいずれか一つを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記処理装置(103)は、前記眼の表面の上で検出された表面波の移動速度に基づいて前記眼の圧力の推定値を決定するように構成された、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記検出器(102)は、前記眼の表面の上の前記移動空気渦輪によって生じる前記眼の表面の変位を検出するための、光干渉計、光コヒーレンストモグラフィーデバイス、レーザードップラー振動計及び超音波変換器のうちのいずれか一つを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記処理装置(103)は、前記眼の表面の検出された変位の振動数に基づいて前記眼の圧力の推定値を決定するように構成された、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記検出器(102)は、前記移動空気渦輪が前記眼の表面に当たったときに前記眼の表面で反射した空気圧過渡を検出するための圧力センサを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理装置(103)は、検出された空気圧過渡に基づいて前記眼の圧力の推定値を決定するように構成された、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
眼の圧力を測定するための方法であって、
移動空気渦輪を生成するとともに前記移動空気渦輪を前記眼に向けること(401)と、
前記移動空気渦輪と前記眼の表面との間の相互作用を検出すること(402)と、
前記移動空気渦輪と前記眼の表面との間の検出された相互作用に基づいて前記眼の圧力の推定値を決定すること(403)と、
を備え、前記移動空気渦輪は、空気圧パルスをフローガイドに向けることによって生成される、方法において、前記空気圧パルスを、i)前記フローガイドに接続されたチャンバの電気火花と、ii)前記フローガイドに接続されたチャンバの化学物質の間の化学反応と、iii)前記フローガイドに接続されたチャンバ内にプラズマ膨張を生成するレーザー源
とのうちの一つによって生成することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人間又は動物の眼の圧力を測定するためのシステムに関する。さらに、本開示は、眼の圧力を測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼圧“IOP”は、失明の主な原因の一つである開放隅角緑内障の病因に大きな役割を果たす。世界には何百万人もの開放隅角緑内障の人がおり、その約半数が、無意識のうちに悪影響が及ぼされており、診断を受けていない。開放隅角緑内障の患者数は、人口の高齢化と共に増加し、これが今後10年間で開放隅角緑内障の数を30%増加させると予想される。現在、開放隅角緑内障を治療する方法は、眼圧を下げることである。眼圧測定は、開放隅角緑内障をスクリーニングする実用的な方法である。しかしながら、診断されていない症例を見つけるために人口の大部分をスクリーニングする必要がある。他のタイプの緑内障は、数日で失明を引き起こす可能性のある突然の眼圧上昇を引き起こす狭角緑内障である。人口の一千万人に1人が急性狭角緑内障に罹患しているので、保健センター及び一般医療の他の場所並びに民間医療の部門で眼圧を測定することによって急性狭角緑内障をスクリーニングすることが有利である。したがって、全ての開業医の診療室が眼圧を迅速かつ簡単に測定するためのシステムを有することが有益である。
【0003】
例えば、眼圧を測定するためのゴールドマン眼圧測定法及びマッケイマーグ眼圧測定法は、ほとんどの場合、測定を実行するために局所麻酔薬を必要とし、したがって、例えば、大規模な人口をスクリーニングするのに実用的ではない。非接触空気インパルス眼圧計は、何十年もの間売り出されている。これらの眼圧計の欠点は、眼に向けられるとともに眼に当たる空気インパルスによって眼圧が測定される人間又は動物によって不快感を経験することである。米国特許第6030343号明細書は、角膜から反射される空中超音波ビームに基づく方法を記載している。角膜を変形させる狭帯域超音波トーンバーストによって励起が行われ、眼圧の推定値を取得するために、変形した角膜で反射された超音波トーンバーストの位相シフトが測定される。米国特許出願公開第2004/193033号明細書及び米国特許第5251627号明細書は、音響励起及び超音波励起に基づく非接触測定方法を記載している。衝撃波、すなわち、音速よりも速く移動する外乱を励起に用いることができるとともに眼の表面の衝撃波によって引き起こされる応答に基づいて眼圧を推定することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した非接触眼圧測定方法の多くに関連する不便さは、実際には、眼の表面で適切な励起を実現するために、例えば、衝撃波源のような励起装置を眼にかなり近く配置する必要があることであり、これにより、眼圧を測定している人間又は動物が不快に感じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下において、異なる発明の実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を提供するための簡略化された要約を提示する。要約は、本発明の広範な概要ではない。本発明の重要な要素を特定すること又は本発明の範囲を描写することを意図していない。以下の要約は、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態の更に詳しい説明の前置きとして、本発明のいくつかの概念を簡略化された形態で提示するに過ぎない。
【0006】
この文書では、接頭辞として使用される「幾何学的」という言葉は、必ずしも物理的なオブジェクトの一部ではない幾何学的な概念を意味する。幾何学的概念は、例えば、幾何学的点、直線又は曲線の幾何学的線、幾何学的平面、非平面の幾何学的表面、幾何学的空間又は0次元、1次元、2次元若しくは3次元である他の任意の幾何学的実体であってもよい。
【0007】
本発明によれば、眼の圧力を測定するための新しいシステムを提供する。測定される圧力は、通常、眼の眼圧“IOP”である。本発明によるシステムは、
移動空気渦輪を生成するとともに移動空気渦輪を眼に向けるための励起源と、
移動空気渦輪と眼の表面との間の相互作用を検出するための検出器と、
移動空気渦輪と眼の表面との間の検出された相互作用に基づいて眼の圧力の推定値を決定するための処理装置と、
を備える。
【0008】
励起源は、空気圧パルス源と、移動空気渦輪を形成するためのフローガイドと、を備える。空気圧パルス源は、i)フローガイドに接続されるとともに電気火花によって空気圧パルスを生成するためのスパークギャップを有するチャンバと、ii)フローガイドに接続されるとともに化学反応によって空気圧パルスを生成するための化学物質を有するチャンバと、iii)空気圧パルスを生成するためにフローガイドに接続されたチャンバ内にプラズマ膨張を生成するためのレーザー源とのうちの一つを備える。
【0009】
本発明によるシステムでは、空気圧パルス、したがって、移動空気渦輪は、著しい質量を有する変動要素、例えば、膜を動かすためのピストン又は要素を有することなく生成される。したがって、本発明によるシステムで実行される測定は、変動質量によって妨げられない。これは、ハンドヘルド機器の場合に特に有利である。その理由は、変動質量が測定中にハンドヘルド機器を不利に動かす傾向があるからである。
【0010】
移動空気渦輪を、例えば、閉ループを形成する幾何学的軸線の周りを空気が回転する領域であるポロイダル空気渦輪とすることができる。ポロイダル空気渦輪は、空気渦輪の平面に垂直な方向に移動する傾向があり、したがって、空気渦輪の内側の端の空気は、外側の端の空気よりも前方に速く移動する。速度差が、閉ループを形成する上記幾何学的軸線の周りの空気の回転によって生じる。空気渦輪は、空気中を最大30cm以上移動することができるのに対し、衝撃波の移動距離は、最大20mmである。したがって、本発明による上述した装置の励起源は、例えば、衝撃波を発生させる励起源よりも眼から著しく遠く離れることができる。
【0011】
本発明によれば、眼の圧力を測定するための新しい方法も提供する。本発明による方法は、
移動空気渦輪を生成するとともに移動空気渦輪を眼に向けることと、
移動空気渦輪と眼の表面との間の相互作用を検出することと、
移動空気渦輪と眼の表面との間の検出された相互作用に基づいて眼の圧力の推定値を決定することと、
を備える。
【0012】
移動空気渦輪は、空気圧パルスをフローガイドに向けることによって生成される。空気圧パルスを、i)フローガイドに接続されたチャンバの電気火花と、ii)フローガイドに接続されたチャンバの化学物質の間の化学反応と、iii)フローガイドに接続されたチャンバ内にプラズマ膨張を生成するレーザー源とのうちの一つによって生成する。
【0013】
様々な例示的かつ非限定的な実施形態が、付随の従属請求項に記載されている。
【0014】
構造及び操作方法の両方に関する例示的かつ非限定的な実施形態は、追加の目的及びその利点と共に、添付図面と併せて読む場合の特定の例示的な実施形態の以下の説明から最もよく理解される。
【0015】
本書では、「備える」及び「有する」という動詞を、引用されていない機能の存在を除外も要求もしないオープンな限定として用いる。従属請求項に記載されている特徴は、特に明記しない限り、相互に自由に組み合わせることができる。さらに、本書の全体での一つ(“a”又は“an”)すなわち単数形の使用が複数を除外しないことを理解されたい。
【0016】
本発明の例示的かつ非限定的な実施形態及びそれらの利点は、添付図面を参照して以下で更に詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】眼の圧力を測定するための例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムを示す。
【
図2a】眼の圧力を測定するための例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムの詳細を示す。
【
図2b】眼の圧力を測定するための例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムの詳細を示す。
【
図2c】眼の圧力を測定するための例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムの詳細を示す。
【
図2d】
発明の範囲に属さない例示的なシステムの詳細を示す。
【
図3】
発明の範囲に属さない例示的なシステムの詳細を示す。
【
図4】眼の圧力を測定するための例示的かつ非限定的な実施形態による方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明で提供される特定の例を添付した特許請求の範囲の範囲及び/又は適用可能性を限定するものとして解釈すべきでない。以下の説明に記載されている例のリスト及びグループは、特に明記されていない限り、網羅的なものではない。
【0019】
図1は、眼の圧力を測定するための例示的かつ非限定的な実施形態によるシステム112を示す。このシステムは、移動空気渦輪111を生成するとともに移動空気渦輪を眼112に向けるための励起源101を備える。移動空気渦輪111を、例えば、閉ループを形成する幾何学的軸線114の周りを空気が回転する領域であるポロイダル空気渦輪とすることができる。ポロイダル空気渦輪は、空気渦輪の平面に垂直な幾何学的線113の方向に移動し、したがって、空気渦輪の内縁の空気は、外縁の空気よりも前方に速く移動する。速度差が、幾何学的軸線114の周りの空気の回転によって生じる。励起源101は、空気圧パルス源104と、移動空気渦輪111を形成するためのフローガイド105と、を備える。このシステムは、移動空気渦輪111と眼の表面112との間の相互作用を検出するための検出器102を備える。このシステムは、移動空気渦輪111と眼の表面112との間の検出された相互作用に基づいて眼の圧力の推定値を決定するための処理装置103を備える。
【0020】
移動空気渦輪が眼に接触すると、移動空気渦輪は、空気渦輪が消失するまで眼の表面、例えば、角膜と接触したままである。空気渦輪が眼に接触している間、空気渦輪は、眼と相互作用し、眼の表面を湾曲させるとともに振動させる。目の圧力、例えば、眼圧“IOP”を推定するために目の表面の湾曲及び振動数を用いることができる。高圧の目の振動数は低圧の眼の振動数より大きくなる。
【0021】
例示的で非限定的な実施形態によるシステムでは、検出器102は、眼の表面112の上の移動空気渦輪111によって生じる表面波を検出するための手段を備える。表面波を、例えば、眼の角膜の上の移動空気渦輪111によって生じる膜波の発現とすることができる。表面波を検出するための手段を、例えば、光干渉計、光コヒーレンストモグラフィー装置、レーザードップラー振動計又は超音波変換器とすることができる。眼球112の表面の上の表面波の移動速度は、眼球112の圧力に依存する。したがって、この例示的な場合において、処理装置103を、検出された表面波の移動速度に基づいて眼の圧力を推定するように構成することができる。
【0022】
例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムでは、検出器102は、移動空気渦輪111によって生じる眼の表面の変位を検出するための手段を備える。変位を検出するための手段を、例えば、光干渉計、光コヒーレンストモグラフィー装置、レーザードップラー振動計又は超音波変換器とすることができる。眼112の表面に垂直な方向の変位の振動数は、眼112の圧力に依存する。したがって、この例示的な場合において、処理装置103を、検出された変位の振動数に基づいて眼112の圧力を推定するように構成することができる。他の例として、移動空気渦輪が当たったときに眼の表面が収縮する速度は、眼の圧力に依存する。したがって、処理装置103を、眼の表面の収縮速度に基づいて眼の圧力を推定するように構成することができる。第3の例では、収縮した眼の表面が眼の表面の通常の位置に戻る速度は、眼の圧力に依存する。したがって、処理装置103を、収縮した眼の表面が眼の表面の通常の位置に戻る速度に基づいて眼の圧力を推定するように構成することができる。第4の例では、収縮した眼の表面が眼の表面の通常の位置に戻るまでの遅延は、眼の圧力に依存する。したがって、処理装置103を、収縮した眼の表面が眼の表面の通常の位置に戻るまでの遅延に基づいて眼の圧力を推定するように構成することができる。第5の例では、移動空気渦輪が当たったときの眼の表面が収縮する深さは、眼の圧力に依存する。したがって、処理装置103を、収縮する深さに基づいて眼の圧力を推定するように構成することができる。
【0023】
例示的で非限定的な実施形態によるシステムでは、検出器102は、移動空気渦輪が眼の表面に当たったときに眼の表面で反射した空気圧過渡を検出するための圧力センサ112を備える。空気圧過渡は、眼112の圧力に依存する。したがって、この例示的な場合では、処理装置103を、検出された空気圧過渡に基づいて眼112の圧力を推定するように構成することができる。
【0024】
例示的で非限定的な実施形態によるシステムでは、検出器102は、移動する空気の渦輪が目の表面に接触したときの移動空気渦輪の速度場の閉曲線の周りの線積分で生じる変化を検出するためのシュリーレンイメージング又はシュリーレンイメージングとストリークイメージングとの組合せのための手段を備える。閉曲線を、例えば、移動空気渦輪のシータ軸の周りとすることができる。シータ軸は、空気渦輪の平面に垂直であり、空気渦輪の移動方向に平行である。この例示的な場合において、処理装置103は、上述した線積分の検出された変化に基づいて眼112の圧力を推定するように構成される。
【0025】
上述した技術的解決は非限定的な例にすぎず、移動空気渦輪111と眼112の表面との間の相互作用に基づいて眼圧の推定値を生成するための他の技術的解決も可能であることに留意されたい。さらに、例示的かつ非限定的な実施形態では、圧力測定の信頼性及び精度を改善するために、眼圧の二つ以上の推定値を生成するための二つ以上の異なる技術的解決を用いる。眼圧の最終的な推定値を、例えば、二つ以上の異なる技術的解決によって取得した二つ以上の推定値に基づく所定の数学的規則を用いることによって導き出すことができる。最終的な推定値を、例えば、二つ以上の技術的解決によって取得した二つ以上の推定値の算術平均とすることができる。
【0026】
処理装置103は、一つ以上のプロセッサ回路で実現することができ、一つ以上のプロセッサ回路の各々を、適切なソフトウェアを設けたプログラム可能なプロセッサ回路、例えば、特定用途向け集積回路“ASIC”のような専用のハードウェアプロセッサ、又は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ“FPGA”のような設定可能なハードウェアプロセッサとすることができる。ソフトウェアは、処理装置103のハードウェアに低レベルの制御を提供するコンピュータソフトウェアの特定のクラスであるファームウェアを備えてもよい。ファームウェアは、例えば、オープンソースソフトウェアであってもよい。さらに、処理装置103は、一つ以上のメモリ回路を備えてもよく、一つ以上のメモリ回路の各々を、例えば、ランダムアクセスメモリ“RAM”回路とすることができる。
【0027】
図2aは、眼の圧力を測定するための例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムの励起源201の断面図を示す。断面は、座標系299のxy平面と平行である。励起源201aは、空気圧パルス源204aと、移動空気渦輪211を生成するフローガイド205と、を備える。空気渦輪211の形成は、
図2aの破線のアーチ型の線で示される。空気渦輪211は、座標系299のx軸に平行な幾何学的線に対して略回転対称である。この例示的な場合において、フローガイド205は、移動空気渦輪211を生成するための開放端を有する管を有し、空気圧パルス源204aは、フローガイド205に接続されるとともに電気火花によって空気圧パルスを生成するためのスパークギャップ208を有するチャンバを備える。
【0028】
図2bは、眼の圧力を測定するための例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムの励起源201bの断面図を示す。この例示的な場合において、空気圧パルス源204bは、フローガイドに接続されるとともに化学反応によって空気圧パルスを生成するための化学物質216を有するチャンバを備える。
【0029】
図2cは、眼の圧力を測定するための例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムの励起源201cの断面図を示す。この例示的な場合において、空気圧パルス源204cは、空気圧パルスを生成するためにフローガイドに接続されたチャンバ内にプラズマ膨張を生成するためのレーザー源217を備える。
【0030】
図2dは、眼の圧力を測定するため
のシステムの励起源201dの断面図を示す。この例示的な場合において、空気圧パルス源204dは、フローガイドに接続された、空気圧パルスを生成するためのピエゾ駆動ブロワ218を備える。
【0031】
図3は、眼の圧力を測定するため
のシステムの励起源302の断面図を示す。断面は、座標系399のxy平面と平行である。励起源302は、空気圧パルス源304と、移動空気渦輪311を形成するためのフローガイド305と、を備える。空気渦輪311の形成は、
図3の破線のアーチ型の線で示される。空気渦輪311は、座標系399のx軸に平行な幾何学的線に対して略回転対称である。この例示的な場合において、フローガイド305は、フローガイドチャンバの壁に開口315を有するフローガイドチャンバを備える。フローガイドチャンバは、円錐台の形状を有し、フローガイドチャンバの小さい方の端の端壁は、開口315を備え、フローガイドチャンバの大きい方の端は、空気圧パルス源304に接続されている。この例示的な場合において、空気圧パルス源304は、圧力チャンバ319を備え、圧力チャンバ319は、加圧空気、例えば、交換可能な圧力エアカートリッジと、空気圧パルスを圧力チャンバ319からフローガイド305に放出するためのバルブ320と、を有する。
【0032】
上述した例では、フローガイドを、例えば、空気圧パルス源の壁にある単なる開口とすることができる。
【0033】
図4は、眼の圧力を測定するための例示的かつ非限定的な実施形態による方法のフローチャートを示す。方法は、
移動空気渦輪を生成するとともに移動空気渦輪を眼に向ける動作401と、
移動空気渦輪と眼の表面との間の相互作用を検出する動作402と、
移動空気渦輪と眼の表面との間の検出された相互作用に基づいて眼の圧力の推定値を決定する動作403と、
を備える。
【0034】
移動空気渦輪は、空気圧パルスをフローガイドに向けることによって生成される。空気圧パルスを、i)フローガイドに接続されたチャンバの電気火花と、ii)フローガイドに接続されたチャンバの化学物質の間の化学反応と、iii)フローガイドに接続されたチャンバ内にプラズマ膨張を生成するレーザー源と、iv)フローガイドに接続されたピエゾ駆動ブロワと、v)加圧空気と、空気圧パルスをフローガイドに放出するためのバルブと、を有する圧力チャンバとのうちの一つによって生成する。
【0035】
例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、移動空気渦輪を、眼の表面から少なくとも5cm離れた場所で生成する。例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、移動空気渦輪を、眼の表面から少なくとも7.5cm離れた場所で生成する。例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、移動空気渦輪を、眼の表面から少なくとも10cm離れた場所で生成する。
【0036】
例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、フローガイドは、眼に向けられた管を備える。別の例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、フローガイドは、フローガイドチャンバを備え、フローガイドチャンバは、眼に対向するような開口をフローガイドチャンバの壁に有する。例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、フローガイドチャンバは、円錐台の形状を有し、フローガイドチャンバの小さい方の端の端壁は、開口を有し、フローガイドチャンバの大きい方の端部は、空気圧パルスを受ける。
【0037】
例示的かつ非限定的な実施形態による方法は、眼の表面の上の移動空気渦輪によって生じる表面波を検出することを備える。典型的な状況では、表面波は、目の角膜の上の移動空気渦輪によって生じる膜波の発現である。表面波を、光干渉計、光コヒーレンストモグラフィーデバイス、レーザードップラー振動計、超音波変換器又はその他の適切な装置で検出することができる。例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、眼圧の推定値は、眼の表面の上で検出された表面波の移動速度に基づいて決定される。
【0038】
例示的かつ非限定的な実施形態による方法は、移動空気渦輪によって生じる眼の表面の変位を検出することを備える。変位を、光干渉計、光コヒーレンストモグラフィーデバイス、レーザードップラー振動計、超音波変換器又はその他の適切な装置で検出することができる。例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、眼圧の推定値は、検出された変位の振動数に基づいて決定される。例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、眼圧の推定値は、移動空気渦輪に当たったときに眼の表面が後退する速度に基づいて決定される。例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、眼圧の推定値は、収縮する眼の表面が眼の表面の通常の位置に向かって戻る速度に基づいて決定される。 例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、眼圧の推定値は、収縮する眼の表面が眼の表面の通常の位置に向かって戻るまでの遅延に基づいて決定される。例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、眼圧の推定値は、移動空気渦輪に当たったときの眼の表面の収縮する深さに基づいて決定される。
【0039】
例示的で非限定的な実施形態による方法は、移動空気渦輪が眼の表面に当たったときに眼の表面で反射した空気圧過渡を検出することを備える。例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、眼圧の推定値は、検出された過渡空気圧に基づいて決定される。
【0040】
例示的かつ非限定的な実施形態による方法は、移動空気渦輪が眼の表面に接触したときに移動空気渦輪の速度場の閉曲線の周りの線積分に生じる変化を検出することを備える。閉曲線を、例えば、移動空気渦輪のシータ軸の周りとすることができる。シータ軸は、空気渦輪の平面に垂直であり、空気渦輪の移動方向に平行である。検出を、例えば、シュリーレンイメージング又はシュリーレンイメージングとストリークイメージングとの組合せを用いて行うことができる。例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、眼の圧力は、上述した線積分の検出された変化に基づいて推定される。
【0041】
上述した説明に記載されている非限定的かつ具体的な例は、添付した特許請求の範囲の範囲及び/又は適用可能性を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、この文書に示す例のリスト又はグループは、特に明記されていない限り、網羅的なものではない。