IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘルスオール ラボラトリー, インク.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】高吸収性材料及びそれを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/20 20160101AFI20230830BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20230830BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20230830BHJP
   A61K 31/729 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/731 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/736 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A23L33/20
A23L29/244
A23L29/256
A61K31/729
A61K31/731
A61K31/736
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/12
A61P43/00 121
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021531624
(86)(22)【出願日】2019-08-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 US2019046077
(87)【国際公開番号】W WO2020033939
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】62/717,644
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521061678
【氏名又は名称】ヘルスオール ラボラトリー, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】リジュン サン
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-518008(JP,A)
【文献】特開2005-185211(JP,A)
【文献】特開平09-234004(JP,A)
【文献】国際公開第2015/011988(WO,A1)
【文献】特開2012-080806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天、カラギーナン、及び、コンニャクガムからなる、化学的な架橋結合を全く含まない多孔性の構造を有する高吸収性材料。
【請求項2】
少なくとも10重量%の寒天を含む、請求項1に記載の高吸収性材料。
【請求項3】
少なくとも20重量%のカラギーナンを含む、請求項1又は2に記載の高吸収性材料。
【請求項4】
寒天、コンニャクガム、及びκ-カラギーナンを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の高吸収性材料。
【請求項5】
寒天、κ-カラギーナン、及びコンニャクガムを、10:1:1、1:1:1、1:1:2、1:2:1、2:1:1、又は、2:5:5の重量比で含む、請求項4に記載の高吸収性材料。
【請求項6】
寒天、κ-カラギーナン、及びコンニャクガムを、1:1:1、1:1:2、又は1:2:1の重量比で含む、請求項4又は5に記載の高吸収性材料。
【請求項7】
中性pH条件又はヒトの胃のpH条件下で、かつ室温で又はヒトの体温で、再水和時に、前記高吸収性材料が、2時間未満、1.5時間未満、1時間未満、30分未満、又は15分未満に体積を膨張させ、かつ明確な形状を少なくとも24時間、少なくとも36時間、又は少なくとも48時間維持する、請求項1~6のいずれか1項に記載の高吸収性材料。
【請求項8】
前記高吸収性材料が、脱イオン水中でその自重の少なくとも10倍、かつ、最大で200倍の吸収率を有するか、又は人工胃液中でその自重の少なくとも5倍、かつ、最大で100倍の吸収率を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の高吸収性材料。
【請求項9】
前記高吸収性材料が、脱イオン水中でその自重の少なくとも20倍、かつ、最大で200倍の吸収率を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の高吸収性材料。
【請求項10】
前記高吸収性材料が、脱イオン水中でその自重の少なくとも30倍、かつ、最大で200倍の吸収率を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の高吸収性材料。
【請求項11】
前記高吸収性材料が、脱イオン水中でその自重の少なくとも40倍、かつ、最大で200倍の吸収率を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の高吸収性材料。
【請求項12】
前記高吸収性材料が、脱イオン水中でその自重の少なくとも50倍、かつ、最大で200倍の吸収率を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の高吸収性材料。
【請求項13】
前記高吸収性材料が、脱イオン水中で少なくとも5倍、かつ、最大で150倍の体積膨張率を有するか、又は人工胃液中で少なくとも5倍、かつ、最大で100倍の体積膨張率を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の高吸収性材料。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の高吸収性材料を含む、規定食用組成物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の高吸収性材料を含む、ボリュメトリクス食。
【請求項16】
代謝異常と関連する疾患又は病態を予防又は治療に使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の高吸収性材料、請求項14に記載の規定食用組成物、又は請求項15に記載のボリュメトリクス食。
【請求項17】
前記代謝異常と関連する疾患又は病態が、糖尿病、肥満、過体重、高コレステロール、及び高血圧である、請求項16に記載の高吸収性材料、規定食用組成物、又はボリュメトリクス食。
【請求項18】
食欲を抑制する、満腹感を高める、又はカロリー摂取量を低下させることに使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の高吸収性材料、請求項14に記載の規定食用組成物、又は請求項15に記載のボリュメトリクス食。
【請求項19】
寒天、カラギーナン、及び、コンニャクガムからなる高吸収性材料を調製する方法であって、
水に寒天、カラギーナン、及び、コンニャクガムを添加して混合物を形成させること、
溶液を形成するために前記混合物を、80℃~100℃の温度に加熱すること、
前記溶液を放冷してゲルを形成させること、
前記ゲルを凍結させること、及び、
前記ゲルを乾燥させて、高吸収性材料を得ること、を含む、前記方法。
【請求項20】
乾燥させた前記ゲルを粉砕して前記高吸収性材料を粉末の形態で得ることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記乾燥工程が、凍結ゲルを直接凍結乾燥することを含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記乾燥工程が、凍結ゲルを解凍すること、及び50℃~60℃の温度で乾燥させることを含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項23】
前記乾燥工程が、
凍結ゲルを解凍すること、
解凍したゲルを濾過して、濾過ケーキを得ること、及び、
前記濾過ケーキを乾燥させること、を含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項24】
前記濾過ケーキが、空気乾燥、熱乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる2018年8月10日に出願された米国仮特許出願第62/717,644号の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本開示は、寒天、カラギーナン、寒天及び1種以上の水溶性天然多糖の混合物、又はカラギーナン及び1種以上の水溶性天然多糖の混合物から調製される高吸収性材料、並びにそのような高吸収性材料を調製する方法に関する。高吸収性材料は、食品産業及び健康補助食品産業の分野で、又は送達用ビヒクルとしてさまざまな用途を有する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
生活水準の向上、ライフスタイルの高速化、並びに、同時に、運動の減少及び不規則な食事に伴い、肥満又は過体重人口が、驚くべきペースで増加している。The New England Journal of Medicineによって最近公表された研究は、現在の小児の57.3%が、35歳までに肥満となるであろうと予測した。そのような厳しい予測は、肥満の破壊的な健康問題を際立たせる。肥満は、世界中で主要な社会的かつ経済的な重荷であり、肥満関連疾患の健康管理に費やされる1年あたり2兆ドルの原因となっている。肥満は、糖尿病、高血圧、高コレステロール、並びにさまざまな心血管疾患及び脳血管疾患などの多くの医学的な併発症の根本原因である。現在では、肥満の健康リスクはよく認識されており、肥満と戦うための主要な手段として、健康な食事及び運動による体重管理が、広く関心を集めている。大規模な研究によって、高炭水化物及び高脂肪食が、肥満の主因であることが示唆されている。摂取された食品が、多すぎるカロリーを含有する場合、体は、通常使用するカロリーよりも多くのカロリーを受け入れ、過剰のカロリーが、脂肪の形態で保存されることとなり、それにより、肥満に繋がる。従って、食品によるカロリー摂取量を制御することが、体重管理における重要な戦略となる。
【0004】
市場には多くの異なる種類の減量食が存在する。その中で、1つのクラスは、食物繊維を含み、場合によっては、他の必須栄養素の追加もされている主要な機能性成分を含有する。これらの最適化された食品は、高カロリー食を置き換えて、カロリー摂取量を減少させかつ満腹感を増加させるために用いられる。従って、本技術分野においては、天然多糖を含む改良された食用品であって、該食用品が少量摂取された場合に、該天然多糖が満腹感を誘導することができる、前記食用品を開発することが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
(概要)
一態様において、本明細書で提供されるものは、寒天、カラギーナン、寒天及び1種以上の水溶性天然多糖の組合せ、又はカラギーナン及び1種以上の水溶性天然多糖の組合せを含む、高吸収性材料である。ある実施態様において、前記高吸収性材料は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%(wt%)の寒天を含む。ある実施態様において、前記高吸収性材料は、少なくとも20%(wt%)のカラギーナンを含む。前記寒天又はカラギーナン及び前記1種以上の水溶性天然多糖は、前記高吸収性材料において化学的架橋結合を全く形成せず、むしろ低温ゲル化(cryogelation)又は低温構造化(cryostructuing)によって誘導される強力な分子相互作用を形成し、高度に多孔性のネットワーク構造をもたらす。多孔性のネットワーク構造は、ヒト胃の条件を模した中性及び低pH溶液中での乾燥及び再水和プロセスにおいて、高度に安定かつ可逆的である。本高吸収性材料は、室温で(例えば、15℃~25℃の温度で)又はヒトの体温で(例えば、35℃~41℃の温度で)、かつ中性pH条件又はヒトの胃のpH条件下で高い膨潤能を有する。再水和時に、中性pH条件又はヒトの胃のpH条件下で、高吸収性材料は、2時間未満、1.5時間未満、1時間未満、30分未満、又は15分未満で(例えば、25分未満で)急速に体積を膨張させることができ、かつ明確な形状(well-defined shape)を少なくとも24時間、少なくとも36時間、又は少なくとも48時間維持することができる。ある実施態様において、再水和時に、中性pH条件又はヒトの胃のpH条件下で、高吸収性材料は、25分未満で急速に体積を膨張させることができ、かつ明確な形状を少なくとも24時間維持することができる。
【0006】
ある実施態様において、高吸収性材料の膨潤能は、以下の式:
完全に再水和された試料の重量/乾燥試料の重量
により計算される吸収率によって測定される。例えば、本明細書で開示される高吸収性材料は、脱イオン水中でその自重の少なくとも10倍又は最大で200倍の吸収率を有するか、又は人工胃液中でその自重の少なくとも5倍又は最大で100倍の吸収率を有する。ある実施態様において、高吸収性材料の体積膨張能は、式:
完全に再水和された試料の体積/乾燥試料の体積
により計算される体積膨張率によって測定される。例えば、本明細書で開示される高吸収性材料は、脱イオン水中で少なくとも5倍又は最大で150倍の体積膨張率を有するか、又は人工胃液中で少なくとも5倍から最大で100倍の体積膨張率を有する。ある実施態様において、前記1種以上の水溶性天然多糖は、これらに限定されないが、コンニャクガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、及びグアーガムカラギーナン、アルギン酸(アルギン酸ナトリウムなど)、ペクチン、ゲランガム、キトサン、アラビアゴム、並びに可溶性デンプンを含む。本高吸収性材料は、本明細書で開示されるプロセスにより得ることができる。
【0007】
別の態様において、本明細書で提供されるものは、上述の高吸収性材料を含む規定食用組成物である。別の態様において、本明細書で提供されるものは、本明細書で開示される高吸収性材料又は規定食用組成物を含むボリュメトリクス食である。
【0008】
別の態様において、本明細書で提供されるものは、代謝異常と関連する疾患又は病態を予防又は治療する方法である。該方法は、代謝異常と関連する疾患又は病態を患っているか又は該疾患又は病態のリスクが高い対象に、有効量の上述の高吸収性材料、該高吸収性材料を含む規定食用組成物、又はボリュメトリクス食を経口投与することを含む。ある実施態様において、前記代謝異常と関連する疾患又は病態としては、糖尿病、肥満、過体重、高コレステロール、及び高血圧が挙げられるが、これらに限定されない。
【0009】
別の態様において、本明細書で提供されるものは、対象において、食欲を抑制する、満腹感を高める、又はカロリー摂取量を低下させる方法である。該方法は、それを必要としている対象に、有効量の上述の高吸収性材料、該高吸収性材料を含む規定食用組成物、又はボリュメトリクス食を経口投与することを含む。
【0010】
さらに別の態様において、本明細書で提供されるものは、寒天、カラギーナン、寒天及び1種以上の水溶性天然多糖の組合せ、又はカラギーナン及び1種以上の水溶性天然多糖の組合せを含む高吸収性材料を調製する方法である。該方法は、水に寒天、カラギーナン、寒天及び1種以上の水溶性天然多糖の組合せ、又はカラギーナン及び1種以上の水溶性天然多糖の組合せを添加して混合物を形成させる工程、該1種以上の多糖が完全に溶解するまで、該混合物を、撹拌しながら80℃~100℃の温度に加熱する工程、該混合物を20℃~45℃まで放冷して、2~10時間の期間にわたってゲルを形成させる工程、予形成されたゲルを凍結温度を下回る温度で少なくとも4時間凍結させる工程、及び該凍結ゲルを乾燥させて、前記高吸収性材料を得る工程、を含む。ある実施態様において、前記乾燥工程は、前記ゲルを解凍すること、及び常圧下50~60℃で乾燥することを含む(「解凍乾燥」)。ある実施態様において、前記乾燥工程は、解凍することなく凍結乾燥によって前記凍結ゲルを直接乾燥することを含む(「凍結乾燥」)。ある実施態様において、前記方法は、前記乾燥させたゲルを粉砕して、前記高吸収性材料をさまざまなメッシュサイズの粉末の形態で得ることをさらに含む。ある実施態様において、前記1種以上の水溶性天然多糖は、コンニャクガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム及びグアーガムカラギーナン、アルギン酸(アルギン酸ナトリウムなど)、ペクチン、ゲランガム、キトサン、アラビアゴム、並びに可溶性デンプンを含むが、これらに限定されない。
【0011】
関連する態様において、本明細書で提供されるものは、上述の方法によって製造される高吸収性材料である。開示される方法によって製造される高吸収性材料は、食品又は健康補助食品産業で及び/又は治療薬剤及び/又は栄養素用の送達用ビヒクルとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
(図面の簡単な説明)
図1図1は、再水和前後の高吸収性材料の試料番号22~32の光学顕微鏡像を示す。
【0013】
図2図2は、試料番号27の吸水及び体積膨張の動態を示す。
【0014】
図3図3は、解凍乾燥プロセスで得た試料番号22、23、24、及び27の乾燥状態のSEM画像を示す。
【0015】
図4図4は、液体窒素による急速冷凍によって調製された水和解凍乾燥試料番号22~32(pH=7)のSEM画像を示す。
【0016】
図5図5は、液体窒素急速冷凍によって調製された水和解凍乾燥試料番号22~27、31、及び32のSEM画像を示す(pH=1)。
【0017】
図6図6は、液体窒素急速冷凍によって調製された水和凍結乾燥試料番号22~27のSEM画像を示す(pH=7)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
本明細書で開示されるものは、少なくとも20%(wt%)の寒天又はカラギーナン、及び任意に1種以上の水溶性天然多糖を含む高吸収性材料である。ある実施態様において、前記水溶性天然多糖としては、コンニャクガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム及びグアーガムカラギーナン、アルギン酸(アルギン酸ナトリウムなど)、ペクチン、ゲランガム、キトサン、アラビアゴム、並びに可溶性デンプンが挙げられるが、これらに限定されない。高吸収性材料は、室温で(例えば、15℃~25℃の温度で)又はヒトの体温で(例えば、35℃~41℃の温度で)、かつ/又は中性pH条件又はヒトの胃のpH条件下で、優れた膨潤能(吸水率及び体積膨張率双方の観点で)を有する。ある実施態様において、本明細書で開示される高吸収性材料は、ヒトの胃の条件を模した中性及び低pH溶液下での乾燥及び再水和プロセスにおいて安定かつ可逆的な高度に多孔性の構造を有する。再水和時に、中性pH条件又はヒトの胃のpH条件下で、高吸収性材料は、急速に(25分未満で)体積を膨張させることができ、かつ明確な形状を少なくとも24時間維持することができる。ある実施態様において、本明細書で開示される高吸収性材料は、例えば、胃のpHなどの酸性のpH下で安定であり、かつ対象において誘導される満腹作用が延長されるように、酸性の胃のpH下で、構造及び体積を維持する。
【0019】
本明細書で使用される場合、膨潤能は、以下の式:
吸収率=水又は特定のバッファー中で飽和するまで膨潤させた高吸収性材料の湿重量/高吸収性材料の乾燥重量
によって測定される吸収率、及び以下の式:
体積膨張率=飽和するまで水又は特定のバッファーに浸された完全に水和させた高吸収性材料の体積/出発乾燥高吸収性材料の体積
によって測定される体積膨張率によって表される。ある実施態様において、吸収率及び/又は体積膨張率は、室温で測定される。ある実施態様において、吸収率及び/又は体積膨張率は、約37℃で測定される。ある実施態様において、吸収率及び/又は体積膨張率は、中性のpHで測定される。ある実施態様において、吸収率及び/又は体積膨張率は、生理的pHで測定される。ある実施態様において、吸収率及び/又は体積膨張率は、胃のpHで測定される。ある実施態様において、本明細書で開示されるプロセスによって得られる高吸収性材料は、膨潤前の乾燥高吸収性材料の重量の少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、少なくとも110倍、少なくとも120倍、少なくとも130倍、少なくとも140倍、少なくとも150倍、少なくとも160倍、少なくとも170倍、少なくとも180倍、少なくとも190倍、又は少なくとも200倍の吸水率を有する。ある実施態様において、本明細書で開示されるプロセスによって得られる高吸収性材料は、膨潤前の乾燥高吸収性材料の重量の、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍、少なくとも35倍、少なくとも40倍、少なくとも45倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、又は少なくとも100倍の胃液吸収率を有する。ある実施態様において、本明細書で開示されるプロセスによって得られる高吸収性材料は、膨潤前の乾燥高吸収性材料の重量の少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、少なくとも110倍、少なくとも120倍、少なくとも130倍、少なくとも140倍、又は少なくとも150倍の水中での体積膨張率を有する。ある実施態様において、本明細書で開示されるプロセスによって得られる高吸収性材料は、膨潤前の乾燥高吸収性材料の重量の少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍、少なくとも35倍、少なくとも40倍、少なくとも45倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、又は少なくとも100倍の胃液中での体積膨張率を有する。
【0020】
寒天、コンニャクガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、グアーガムなどの種々の水溶性天然多糖が、ゼロカロリー(ヒト酵素で不消化性)の食物繊維として健康上の利益を有することが知られている。これら食物繊維材料を使用してカロリー摂取量、肥満、及び他の健康問題を制御する試みが、広範な取組みによって行われている。しかしながら、これら天然多糖材料の使用を伴う応用の大部分は、水又は胃液での再水和時にある一定の形状を維持しないか、又は劣った吸水能及び体積膨張能を有するかのいずれかである。従って、これらは、胃のシステムによって急速に排除されてしまい、満腹を誘導するのに非常に有効であるわけではない。
【0021】
本明細書で開示されるものは、既知の健康上の利益及び/又は食品用途の品質(すなわち、ゲル化強度、所望のテクスチャなど)を有する水溶性天然多糖から作られており、そのために結果として得られる複合天然多糖が、室温(25℃前後)又は体温(37℃前後)での水又は胃液での再水和時の大量の水の急速な吸収、並びに水又は胃液中での急速な体積の膨張及びある形状及び非凝集状態の維持を含むがこれらに限定されない所望の機能性を有する、新規の高吸収性材料である。開示される高吸収性材料は、満腹感を誘導するのに有効であり、体重管理及び糖尿病などの他の健康問題の予防又は治療に大いに応用される。
【0022】
開示される高吸収性材料は、最適化された天然多糖の組合せ(組成比及び総質量濃度)を含む。化学的修飾や架橋結合を用いることなく天然多糖分子間の相互作用を誘導及び/又は強化する一連の物理的処理及び脱水を受けると、高吸収性材料は、多孔性の構造を形成し長い期間にわたってそれを維持することができる。乾燥プロセスにおいて吸水能及び体積膨張機能を低下させることなくゲルマトリックス構造を維持できる限り、任意の脱水プロトコルを用いることができる。
【0023】
開示される高吸収性材料を得るために、さまざまな天然多糖の組合せ(組成比及び総質量濃度)を含む種々のパラメーターを試験し、さまざまな加工方法を実施して、さまざまな吸水並びに体積膨張及び形状維持特性を有する一連の複合天然多糖を製造した。様々な吸水性、体積膨張性、及び形状安定性を有するこれらの天然多糖複合材料は、種々の用途に使用することができる。開示される高吸収性材料及び技術の利点のいくつかの例を、以下にまとめる。
【0024】
第一に、溶液における及びゲル化プロセスにおけるある天然多糖の相乗効果を、多糖、選択される多糖の特定の比率範囲、及び材料の質量濃度範囲の選択によって達成することができる。
【0025】
第二に、高吸収性材料は、吸着剤比及び体積膨張に関して増加した安定性及び高い膨潤能を提供するマトリックス構造のために、再水和時に、優れた体積膨張の性質を有し、明確な形状を有する。従来の技術及び材料とは異なって、開示される技術及び材料は、修飾されたか又は合成された(synethic)ポリマーや化学的な架橋結合を用いていない。本明細書で開示されるように、材料のゲル強度は、ゲルの凍結処理によって強化することができる。
【0026】
最後に、最終生成物が、再水和時に水を吸収しある形状へと体積を膨張させるのに使用することができる脱水形態にあるために、構造的な完全性及び機能性を維持しつつ複合ゲルから水を除去することができるプロセスを開発することは重要である。上述の基準を満たす多くの見込みがある脱水方法のうちで、開示されるものは、解凍乾燥方法及び凍結乾燥方法である。解凍乾燥では、予形成されたゲルは、解凍され、その後、大気圧下で、ある温度(例えば、50~60℃)でゲル構造を融解させることなく乾燥される。凍結乾燥では、予形成されたゲルが、真空下で直接凍結乾燥される。双方の方法は、良好ないし非常に良好な吸水特性及び体積膨張特性を有する試料を与える。ある実施態様において、凍結乾燥試料は、より多孔性の高い構造及びより高い吸水能を有する一方で、解凍乾燥試料は、乾燥状態においてより密な構造を有するが、その吸水能は、凍結乾燥試料のものよりも低いものの、再水和時に多孔性の構造を取り戻すことができる。
【0027】
人体に無毒であり、カロリーが低く、かつ人体の胃酸及び酵素によって消化及び分解されることができない様々な高品質水溶性食物繊維が存在する。これらには、海の藻類から抽出される寒天及びカラギーナンなどの海藻多糖、植物から抽出されるコンニャク粉、グアーガム、ペクチン、ローカストビーンガム、タマリンド多糖ガムなど、微生物発酵によって抽出されるキサンタンガム、ゲランガムなどの微生物多糖が含まれる。これらの天然多糖は、腸の蠕動、緩下、解毒を促進して腸の疾患を予防する機能;食後の血糖上昇の速度を低下させ糖尿病のリスクを低下させる機能;コレステロールを低下させて心血管及び脳血管疾患のリスクを低下させる機能;並びに中性脂肪及び脂質の代謝を向上させて体脂肪の蓄積を阻害する機能を有する。しかしながら、これらの天然多糖を、食品に直接用いる場合には、摂取後の胃内でのその吸水及び膨潤能は小さく、不十分な満腹作用となってしまう。別の問題は、これらの多糖が胃液に急速に溶解してしまい、胃内に残る時間が短くなり、従って、該多糖は、持続的な満腹作用を長期にわたって達成することができないことである。
【0028】
寒天は、紅藻から抽出される水溶性多糖である。室温では、寒天は、水を吸収して膨潤することができるが、水に溶解するには80℃超に加熱する必要がある。寒天溶液を32~42℃まで冷却すると、それは、ゲルへと凝固し始め、固体化した寒天ゲルは、それが再び溶融できるようになるためには75℃以上に加熱する必要がある。従って、寒天は、多くの用途において、独特の有益性を示す。加えて、他の天然のゲル化剤と比較して、寒天は、自己ゲル化特性を有し、即ち、これは、ゲル化プロセスの間に追加の物質を何ら必要としない。従って、寒天ゲルは、純粋に天然物である。さらに、寒天は、人体で消化及び吸収することができず、従って、食品、生物学的用途、及び医薬品に広く用いられている。カラギーナンは、紅藻から抽出される別の水溶性多糖である。構造的な差に基づいて、カラギーナンは、3つの主クラス:カッパ、イオタ、及びラムダに分けられる。κ-カラギーナンは、水中で室温で膨潤することができるが、70℃超の温度で水に溶解できるのみである。カラギーナン溶液を、20~25℃まで冷却すると、それは、ゲルへと凝固しはじめ(又はKClを添加した場合には、それは、より高い温度でゲルを形成することができ)、固体化したカラギーナンゲルは、それが再び溶融できるようになるためには47℃以上に加熱する必要がある。コンニャクガム(コンニャクグルコマンナン、KGM)は、Amorphophallus Konjac種に由来し、これは、1.6:1.0のモル比でβ-1,4で互いに連結されたマンノース及びグルコースの残基でできた高分子多糖である。これは、200,000~2,000,000ダルトンの分子量を有する僅かに分岐した多糖である(KGMの実際の分子量は、コンニャクの品種に依存する)。上述のように、ある種類の多糖分子は、溶液中で互いに相互作用して、ゲル化プロセスにおいて相乗効果を生じさせることができる。例えば、カラギーナン及びコンニャクガムも含有する寒天の混合溶液中では、温度を80℃超に上昇させた場合、寒天分子及びカラギーナン/コンニャクガム分子は、ランダムコイルの形態で存在する。溶液の温度が低下していくと、寒天分子及び場合により一部のカラギーナン/コンニャクガム分子のランダムコイルが、互いに相互作用しはじめ、二重らせん構造を形成する;温度をさらに低下させた場合、二重らせんは、さらに互いに相互作用して自己組織化することとなる;また、温度をゲル化温度まで低下させた場合、それは、寒天分子及びカラギーナン/コンニャクガム分子で構成される三次元的多孔性ネットワーク構造を形成することができる。ゲルを長期間さらに凍結させた場合、最初のゲル化工程でゲルマトリックス組み込まれていない任意の多糖分子、特に、カラギーナン/コンニャクガム分子が、低温ゲル化作用によって先に形成された寒天ゲルネットワーク(nextwork)と相互作用するよう誘導される可能性がある。その結果、複合材料が、大量の水分子を閉じ込めることができる高度に安定な多孔性の構造を有して形成される。三次元多孔性ネットワーク構造を維持しつつ水分子を除去することによって、高吸収性材料を得ることができる。
【0029】
一般的に、高温の寒天を、1種以上の水溶性天然多糖と混合する場合、寒天分子分子は、溶液の温度が低下するにつれて、該他の天然多糖分子と相互作用し得る。多糖の分子構造が異なるために、異なる天然多糖分子及び寒天分子間の相互作用は、異なる。また、結果として生じる三次元多孔性ネットワーク構造及び該寒天及び1種以上の水溶性天然多糖分子から作られる複合材料の性質も異なる。該寒天分子及び該1種以上の天然多糖分子によって形成される三次元多孔性ネットワーク構造を維持しつつ水分子を除去することによって、高吸収性材料を得ることができる。
【0030】
本明細書で開示されるものは、寒天及び1種以上の水溶性天然多糖をさまざまな比率及び質量濃度で合わせる工程、該混合物を水中で加熱して、該寒天及び1種以上の水溶性天然多糖を完全に溶解させる工程、及び該混合物を冷却してゲルを形成する工程、及びさらに凍結温度を下回る温度での低温ゲル化によって該ゲルを安定化させる工程を含む、高吸収性材料を得るプロセスである。得られる高吸収性材料は、高度に多孔性の構造を有し、大量の水分子を吸収することができる。三次元的ネットワーク構造を維持しながら室温又は体温で脱水させると、得られる高吸収性材料は、室温又は体温でかつ中性又は胃の条件下で、大量の水を吸収すること、体積を膨張させること、及び明確な形状を維持することができる。胃で容易に分解可能な未処理の水溶性天然多糖とは異なって、本明細書で開示される高吸収性材料は、ヒトの体温での胃の環境においてさえ、その三次元ネットワーク構造を長期間維持することができる。言い換えれば、本明細書で開示される高吸収性材料は、水溶液に再溶解させるには胃の環境温度(約37℃)よりも高い温度を必要とし、それにより減量食として使用される場合の胃液内での水溶性多糖の速い代謝及び解離の問題を効果的に克服する。本明細書で開示される高吸収性材料は、胃液中の生理的条件下で優れた膨潤能及び保水性を有しており、これらによって、該高吸収性材料の規定食材料及び/又は送達用ビヒクルとしての幅広い用途が可能となる。
【0031】
本明細書で開示される高吸収性材料は、健康管理産業及び食品産業においてさまざまな用途を有する。例えば、高吸収性材料を、患者の満腹感を増加させて、それによりカロリー及び炭水化物の摂取量を減少させることができる、治療食又は栄養補助食品として用いることができる。そのような食事又は栄養補助食品は、療法と組み合わせて用いられる場合、肥満及び糖尿病に対する治療効果を強化することができ;かつ単独で用いられる場合であっても、肥満及び糖尿病などの特定の疾患の発症を予防又は遅延させることができる。ある実施態様において、本明細書で開示される高吸収性材料を、医療用材料の調製(prepararation)のために医薬品を増量(loading)するためのビヒクルとして用いることができる。
【0032】
普及している規定食戦略のひとつに、ボリュメトリクス食があり、これは、「2018年のU.S. News & World Report社のベスト規定食ランキング(the 2018 U.S. News & World Report’s Best Diet Rankings)」において一連の健康専門家によって評価された40種の規定食のうちで、体重減少に関して第2位とされており、総合では第5位を分け合っている。ボリュメトリクス食の主要な概念は、果実、野菜、及びスープなどのカロリーが低くかつ繊維又は水が多い天然の食品を食することである。ボリュメトリクス食は、体重管理並びに肥満及び糖尿病の予防において非常に有効であることが判明しているが、この戦略の明らかな弱点は、大きい体積及び高い含水量を有するが、ある必須栄養素を欠く可能性のある各食品に含有される栄養素の多様性である。しかしながら、ボリュメトリクス食の2つの重要な特徴は、低いカロリー密度及び高い含水量である。本明細書で使用される、「カロリー密度」という用語は、食品の質量単位基準あたりの提供される総カロリーを意味する。低いカロリー密度を有する食事とは、同じ質量又は同じ重量について、低いカロリー密度の食事が、通常食よりも少ないカロリーを提供することを意味する。
【0033】
本明細書で開示される高吸収性材料の用途のいくつかの例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:(1)本明細書で開示される高吸収性材料を、ヒトが摂取する水、果汁、ミルク、飲料、スープ、プディングなどの冷たい又は温かい液体食又は飲料に添加することができる;(2)本明細書で開示される高吸収性材料を、粉末、錠剤、カプセル剤の形態、又は任意の他の適当な形態で直接摂取して、その後、適切な量の液体を飲んで、胃内での液体吸収及び膨潤を可能とすることができる;(3)本明細書で開示される高吸収性材料を、例えば、パン、ケーキ、ビスケット、エネルギーバー、及び他の食品などのさまざまな食用品に原材料として添加して、低カロリーで食物繊維が豊富な機能性食品及び/又はボリュメトリクス食を作り、長期にわたり満腹感を誘導することができる。本明細書で開示される高吸収性材料は、ドライパウダー形態をとることができ、かつ優れた膨潤能を有しているので、少量の摂取(約5g~20g)で、十分な満腹作用を達成することができる。また、高吸収性材料は、通常の輸送及び保存条件下で安定である。従って、高吸収性材料を、薬物及び他の栄養素を送達するビヒクルとしても使用し得る。
【0034】
ある実施態様において、高吸収性材料、又は該高吸収性材料を含む規定食用組成物は、マクロ栄養素及びマイクロ栄養素などの1種以上の追加の必須栄養素をさらに含む。そのような栄養素としては、種々のタンパク質及び活性ペプチド、ビタミン、並びに微量元素、並びにミネラル、並びにプレバイオティクスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
別の態様において、本明細書で開示されるものは、寒天、寒天及び1種以上の水溶性天然多糖の組合せを含む高吸収性材料を調製する方法である。本方法は:水に寒天、寒天及び1種以上の水溶性天然多糖の組合せを添加して、混合物を形成させる工程、該混合物を、該1種以上の多糖が完全に溶解するまで撹拌しながら80℃~100℃の温度に加熱する工程、該混合物を20℃~45℃まで放冷して、2~10時間の期間にわたってゲルを形成させる工程(該ゲル化工程の温度及び時間は、用いられる材料に応じて最適化することができる)、予形成されたゲルを凍結温度を下回る温度で少なくとも4時間凍結させる工程(該低温ゲル化工程の温度及び時間は、用いられる材料に応じて最適化することができる)、及び該凍結ゲルを解凍して、常圧下50~60℃で乾燥させること(解凍乾燥と呼ぶ)、又は凍結乾燥(lyophilization)によって該凍結ゲルを乾燥させること(凍結乾燥(freeze-dry)と呼ぶ)、又はゲルマトリックス構造を傷つけて吸水能及び体積膨張機能を低下させることなく水を除去することができる任意の乾燥方法によって、該ゲルを乾燥させ、前記高吸収性材料を得る工程を含む。ある実施態様において、前記方法は、前記乾燥させたゲルを粉砕して、特定の用途の要求に応じたサイズとしたさまざまなメッシュの粉末の形態で前記高吸収性材料を得ることをさらに含む。ある実施態様において、前記乾燥工程は、前記凍結ゲルを凍結乾燥又は真空凍結乾燥することを含む。ある実施態様において、前記乾燥工程は、前記凍結ゲルを解凍し、該解凍したゲルを濾過して、濾過ケーキを得ること、及び該濾過ケーキを乾燥させることを含む。前記濾過ケーキは、これらに限定されないが、空気乾燥、熱乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせなどの任意の適当な方法によって乾燥させることができる。
【0036】
乾燥させたゲルを、保管及び応用を容易とするために粉末形態へとさらに粉砕することができる。本明細書に記載されるように、冷却プロセスの間、寒天、及び1種以上の天然多糖は、三次元構造を形成することができる。ある実施態様において、三次元多孔性構造が、SEM画像により示されるように形成される。脱水及び膨潤の後に、この三次元構造の形状及び形態を維持することができる。実施例に示されるように、膨潤した高吸収性材料は、明確な形状を有する非流動性のゲル状であった。このように、開示されるプロセスによって得られる高吸収性材料は、体積膨張及び形状安定性及び保水性の観点で優れた膨潤能を有する。これらに限定されないが、コンニャクガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム及びグアーガムカラギーナン、アルギン酸(アルギン酸ナトリウムなど)、ペクチン、ゲランガム、キトサン、アラビアゴム、並びに可溶性デンプンなどのさまざまな水溶性天然多糖を使用することができる。
【0037】
実施例で示されるように、高吸収性材料の様々な試料が、広範な吸水能を示しており、組成、モル比、及び濃度が、高吸収性材料の性質に影響を及し得ることを示唆していた。開示される高吸収性材料は、高度に安定かつ均一な構造を特徴としており、異なる天然多糖の分子が、互いに相互作用して、不均質な構造的特徴を示すことが期待されるであろうさまざまなポリマーの単純な物理的混合物ではなくむしろ新たなユニークな物質を形成することを示唆している。異なる組成物、比率、及び濃度で作られた異なる複合天然多糖材料は、明らかに、異なる構造を有しており、この構造が、吸水率及び体積膨張率及び形状安定性などのこれらの異なった機能を説明する。液体窒素での急速冷凍及びそれに続く凍結乾燥によって、さまざまな複合天然多糖材料の多孔性の構造的特徴が捉えられた。
【0038】
以下の実施例は、発明のさまざまな実施態様を説明するよう意図される。従って、記載される特定の実施態様は、本発明の範囲に対する限定として解釈されるべきではない。当業者には、発明の範囲から逸脱することなくさまざまな等価物、変更、及び改変を成し得ることが明らかとなるであろう。また、そのような等価な実施態様が、本明細書に含まれるべきであることが理解される。さらに、本開示に引用された全ての引例は、あたかも本明細書に完全に述べられているかのように、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0039】
(実施例)
(実施例1:材料及び方法)
(人工胃液の調製(米国薬局方に準拠):)
2.0gの塩化ナトリウム、3.2gのペプシン(1500U/mg)、及び7.0mlの濃塩酸を、蒸留水に添加し、体積を1000mlに調整した。
【0040】
(吸収率試験:)
1.0gの乾燥高吸収性材料を、ビーカー内の250gの蒸留水と混合し、該混合物を、25℃で3時間静置した。その後、ビーカー内の該試料を、120メッシュのふるいの上に注ぎ、25℃で1時間保持して、水を自然にしたたり落とした。ふるいの上に残った湿った試料を回収し、秤量した。吸収率を、以下のように計算した:
吸収率=ふるいから回収された湿った試料の重量/初期乾燥試料の重量
【0041】
同様に、人工胃液中での試料高吸収性材料の吸収率を、上述の手順を用いて試験した。蒸留水の代わりに、1.0gの乾燥試料を、人工胃液と混合し、37℃で3時間静置した。その後、湿った試料を回収し、秤量し、吸収率を、上述の通り計算した。
【0042】
(ゲル強度試験:)
1.5gの寒天を、98.5gの脱イオン水に添加した。混合物を、撹拌し、該寒天が、完全に溶解するまで90℃に加熱し、その後、20℃まで冷却して、寒天ゲルを形成させた。そのゲルを、使用前に24時間静置した。1.5gのκ-カラギーナンを、98.3gの脱イオン水に添加した。混合物を、撹拌し、κ-カラギーナンが、完全に溶解するまで、90℃に加熱した。0.2gの塩化カリウムを添加し、その後、20℃まで冷却して、カラギーナンゲルを形成させた。このゲルを、使用前に24時間静置した。調製した寒天ゲル及びカラギーナンゲルを、テクスチャ分析装置(Stable Micro Systems、TA.XT. Plus Texture Analyser, 英国)を用いて、ゲル強度に関して試験した。試験設定は、プローブP/0.5、加圧速度1.5mm/s、運転速度(running speed)1.0mm/s、回復速度1.5mm/sであり、加圧距離は、20mmであった。
【0043】
本明細書で使用した寒天ゲル及びカラギーナンゲルは、それぞれ、1000g/cm2及び1200g/cm2の測定ゲル強度を有していた。
【0044】
(粘度試験:)
2.0gの水溶性天然多糖を、198gの脱イオン水に添加した。混合物を、該多糖が、完全に溶解するまで室温で撹拌した。溶液の粘度を、Brookfield粘度計を用いて25℃で測定した。本明細書で使用した出発材料の測定粘度を、以下の表1に列挙する。
【表1】
【0045】
(実施例2)
本実施例は、寒天、κ-カラギーナン、及びコンニャクガムの単純混合物の吸収率を示す。同量の寒天、κ-カラギーナン、及びコンニャクガム粉末(各1g)を混合して、単純混合物(試料番号1)を形成させ、該単純混合物の吸収率を、実施例1に記載した方法を用いて測定した。3セットの実験を、並行して実施し、測定値の平均を採用した。本混合物は、4.0の吸水率及び2.6の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は、非流動性のゲル状であった。
【0046】
(実施例3)
本実施例は、寒天、κ-カラギーナン、及びコンニャクガムによって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。同量の寒天、κ-カラギーナン、及びコンニャクガム粉末(各1g)を、197gの脱イオン水に添加し、混合物を形成させた。その混合物を、多糖が完全に溶解するまで撹拌しながら95℃まで加熱し、その後、ゆっくり冷却して、ゲルを形成させた。該ゲルを、10℃で2時間保ち、その後、-20℃の冷凍庫内で10時間凍結させ、凍結ゲルを得た。その凍結ゲルを凍結乾燥して、含水量を15~18%まで低下させ、粉砕して、それにより、試料番号2を得た。あるいは、凍結ゲルを解凍し、濾過し、濾過ケーキを、常圧下50℃で乾燥して、含水量を15~18%まで低下させ、その後、粉砕して、試料番号3を得た。試料の吸収率を、実施例1に記載したように測定した。3セットの実験を並行して実施し、測定値の平均を採用した。試料番号2は、88.6の吸水率及び31.5の人工胃液吸収率を有していた。試料番号3は、97.2の吸水率及び34.5の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は双方とも、非流動性のゲル状であった。
【0047】
(実施例4)
本実施例は、寒天、κ-カラギーナン、及びコンニャクガムによって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。0.75gの寒天、0.75gのκ-カラギーナン、及び1.5gのコンニャクガム粉末を、197gの脱イオン水に添加して、混合物を形成させた。混合物を、実施例3で記載したものと同じ方法で処理して、試料番号4(直接凍結乾燥)及び試料番号5(解凍及び乾燥)をそれぞれ得た。試料番号4は、79.7の吸水率及び29.5の人工胃液吸収率を有していた。試料番号5は、95.3の吸水率及び34.1の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は双方とも、非流動性のゲル状であった。
【0048】
(実施例5)
本実施例は、寒天、κ-カラギーナン、及びコンニャクガムによって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。1.5gの寒天、0.75gのκ-カラギーナン、及び0.75gのコンニャクガム粉末を、197gの脱イオン水に添加して、混合物を形成させた。混合物を、実施例3で記載したものと同じ方法で処理して、試料番号6(直接凍結乾燥)及び試料番号7(解凍及び乾燥)をそれぞれ得た。試料番号6は、67.4の吸水率及び23.8の人工胃液吸収率を有していた。試料番号7は、68.9の吸水率及び26.0の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は双方とも、非流動性のゲル状であった。
【0049】
(実施例6)
本実施例は、寒天、κ-カラギーナン、及びコンニャクガムによって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。0.5gの寒天、1.0gのκ-カラギーナン、及び0.5gのコンニャクガム粉末を、198gの脱イオン水に添加して、混合物を形成させた。混合物を、実施例3で記載したものと同じ方法で処理して、試料番号8(直接凍結乾燥)及び試料番号9(解凍及び乾燥)をそれぞれ得た。試料番号8は、105.4の吸水率及び23.7の人工胃液吸収率を有していた。試料番号9は、121.0の吸水率及び27.6の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は双方とも、非流動性のゲル状であった。
【0050】
(実施例7)
本実施例は、寒天、κ-カラギーナン、及びコンニャクガムによって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。0.25gの寒天、0.5gのκ-カラギーナン、及び0.25gのコンニャクガム粉末を、199gの脱イオン水に添加して、混合物を形成させた。混合物を、実施例3で記載したものと同じ方法で処理して、試料番号10(直接凍結乾燥)及び試料番号11(解凍及び乾燥)をそれぞれ得た。試料番号10は、165.1の吸水率及び21.8の人工胃液吸収率を有していた。試料番号11は、195.0の吸水率及び26.5の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は双方とも、非流動性のゲル状であった。
【0051】
(実施例8)
本実施例は、寒天、κ-カラギーナン、及びコンニャクガムによって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。1.0gの寒天、2.0gのκ-カラギーナン、及び1.0gのコンニャクガム粉末を、196gの脱イオン水に添加して、混合物を形成させた。混合物を、実施例3で記載したものと同じ方法で処理して、試料番号12(解凍及び乾燥)を得た。試料番号12は、73.2の吸水率及び36.0の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は、非流動性のゲル状であった。
【0052】
(実施例9)
本実施例は、寒天、κ-カラギーナン、及びコンニャクガムによって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。2.0gの寒天、4.0gのκ-カラギーナン、及び2.0gのコンニャクガム粉末を、192gの脱イオン水に添加して、混合物を形成させた。混合物を、実施例3で記載したものと同じ方法で処理して、試料番号13(解凍及び乾燥)を得た。試料番号13は、69.0の吸水率及び26.0の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は、非流動性のゲル状であった。
【0053】
(実施例10)
本実施例は、寒天、κ-カラギーナン、及びローカストビーンガムによって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。1.5gの寒天、0.75gのκ-カラギーナン、及び0.75gのローカストビーンガム粉末を、197gの脱イオン水に添加して、混合物を形成させた。混合物を、実施例3で記載したものと同じ方法で処理して、試料番号14(解凍及び乾燥)を得た。試料番号14は、52.0の吸水率及び23.8の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は、非流動性のゲル状であった。
【0054】
(実施例11)
本実施例は、寒天、κ-カラギーナン、コンニャクガム、及びキサンタンガムによって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。1.0gの寒天、1.0gのκ-カラギーナン、0.4gのコンニャクガム粉末、及び0.6gのキサンタンガム粉末を、197gの脱イオン水に添加して、混合物を形成させた。混合物を、実施例3で記載したものと同じ方法で処理して、試料番号15(解凍及び乾燥)を得た。試料番号15は、78.0の吸水率及び27.5の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は、非流動性のゲル状であった。
【0055】
(実施例12)
本実施例は、寒天、κ-カラギーナン、及びタマリンドシードガムによって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。0.8gの寒天、0.8gのκ-カラギーナン、及び0.4gタマリンドシードガム粉末を、198gの脱イオン水に添加して、混合物を形成させた。混合物を、実施例3で記載したものと同じ方法で処理して、試料番号16(直接凍結乾燥)を得た。試料番号16は、48.0の吸水率及び20.5の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は、非流動性のゲル状であった。
【0056】
(実施例13)
本実施例は、寒天、κ-カラギーナン、及びグアーガムによって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。0.8gの寒天、0.8gのκ-カラギーナン、及び0.4gのグアーガム粉末を、198gの脱イオン水に添加して、混合物を形成させた。混合物を、実施例3で記載したものと同じ方法で処理して、試料番号17(直接凍結乾燥)を得た。試料番号17は、57.0の吸水率及び21.8の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は、非流動性のゲル状であった。
【0057】
(実施例14)
本実施例は、寒天によって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。2.0gの寒天を、198gの脱イオン水に添加して、混合物を形成させた。混合物を、実施例3で記載したものと同じ方法で処理して、試料番号18(解凍及び乾燥)を得た。試料番号18は、68.0の吸水率及び18.5の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は、非流動性のゲル状であった。
【0058】
(実施例15)
本実施例は、κ-カラギーナンによって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。2.0gのκ-カラギーナンを、198gの脱イオン水に添加して、混合物を形成させた。混合物を、実施例3で記載したものと同じ方法で処理して、試料番号19(直接凍結乾燥)を得た。試料番号19は、32.7の吸水率及び15.6の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は、非流動性のゲル状であった。
【0059】
(実施例16)
本実施例は、寒天及びコンニャクガムによって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。1.0gの寒天及び1.0gのコンニャクガム粉末を、198gの脱イオン水に添加して、混合物を形成させた。混合物を、実施例3で記載したものと同じ方法で処理して、試料番号20(解凍及び乾燥)を得た。試料番号20は、36.0の吸水率及び20.5の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は、非流動性のゲル状であった。
【0060】
(実施例17)
本実施例は、κ-カラギーナン及びコンニャクガムによって形成される高吸収性材料の吸収率を示す。1.0gのκ-カラギーナン及び1.0gのコンニャクガム粉末を、198gの脱イオン水に添加して、混合物を形成させた。混合物を、実施例3で記載したものと同じ方法で処理して、試料番号21(直接凍結乾燥)を得た。試料番号21は、27.0の吸水率及び17.8の人工胃液吸収率を有していた。本吸収試験において形成された膨潤試料は、非流動性のゲル状であった。
【0061】
実施例2~17で得た全試料の特性を、以下の表2にまとめる。
【表2】
【0062】
(実施例18)
本実施例は、以下の表3に示されるような追加の高吸収性材料試料の調製及び特性評価を示す。
【表3】
【0063】
このバッチの試料は、各成分を秤量し、表3に示される比率及び質量濃度で脱イオン水に添加し、全成分が完全に溶解するまで100℃に加熱し撹拌することによって調製された。各溶液を20℃に冷却し、20℃のインキュベーター内に6時間保管して、安定なゲルを形成させた。6時間後、試料を、-20℃の冷凍庫に移し、10時間保管し、それにより、低温安定化されたゲルを得た。10時間後、低温安定化されたゲルを室温で解凍し、過剰の水を濾過して除き、試料を、50℃のインキュベーター内でさらに空気乾燥した。あるいは、-20℃での低温ゲル化の10時間後に、試料を乾くまで凍結乾燥した。ここで、ゲルは、その中心が-40℃に達するまで予備凍結させ、かつ試料が乾くまで凍結乾燥プロセスの間ずっと試料を-10℃未満に保った。乾燥試料を20メッシュに粉砕して、粉末化高吸収性材料を得た。種々のpH条件での吸収率を、上述のように測定した。
【0064】
表3に示されるように、一般に、凍結乾燥は、解凍乾燥よりも高い吸水率をもたらした。乾燥プロセスが、ゲル形成(20℃、6時間)及び低温ゲル化による安定化(-20℃、10時間)の後であるために、凍結方法によって異なる構造が生じることはなさそうである。しかしながら、解凍乾燥プロセスの間には、水が融解して細孔の一部が崩される可能性がある。再水和時に細孔の大部分を再形成することができるものの、細孔の一部が、再建されない可能性がある。これは、おそらく、細孔の壁を形成する表面のうちの一部が、互いに、再水和時に分離できないほど強力に結合してしまうためであろう。対照的に、凍結乾燥プロセスの間は、水は固体形態のままであり、昇華によって除去されるために、細孔構造はより良好に維持され得る。また、材料の種類も、高吸収性材料の異なった性質に寄与していた。表3に示されるように、試料番号22~25は、2つの異なる乾燥方法によって調製された試料で顕著に異なる性質を示し、それらの細孔構造が、乾燥方法により影響されやすく、一方で、試料番号26及び27は、より影響されにくいことを示唆した。
【0065】
(実施例19)
本実施例は、試料番号22~32の体積膨張及び形状安定性を示す。
【0066】
試料番号22~32を、脱イオン水に24時間浸し、各試料の粒子の画像を、図1に示されるように、再水和の前後にLeica光学顕微鏡(モデルMZ125)を用いて撮影した。
【0067】
試料番号22は、低い体積膨張を示したが、明確な形状を有していた。試料番号23は、低ないし中程度の体積膨張を示し、明確な形状を有していた。試料番号24は、シート様の膨張を示し、相互連結された繊維の束のようであったが、明確なゲルマトリックス形状を有しなかった。試料番号25は、低ないし中程度の体積膨張を示し、形状は、積み上げたシートのようであった。試料番号26は、高い体積膨張を示したが、相互連結された不均質のシート構造を有しているようであった。試料番号27は、大きな体積膨張を示した。完全に膨潤した後に、試料番号27は、均質なゲルマトリックス構造を有しているようである明確な形状を有していた。試料番号28は、高い体積膨張を示したが、相互連結された不均質のシート構造を有しているようであった。試料番号29は、良好な体積膨張、及び明確な均質なゲルマトリックス構造としての良好な形状構造を示した。試料番号30及び31は、試料番号29と類似しており、良好な体積膨張、及び明確な均質なゲルマトリックス構造としての良好な形状構造を示した。試料番号32は、試料番号24と類似しており、シート様の膨張を示し、相互連結された繊維の束のようであったが、明確なゲルマトリックス形状を有しなかった。
【0068】
このように、さまざまな試料の体積が、再水和時に膨張し、体積膨張の度合いは、一般に、重量で測定される吸水率と相関していた。しかしながら、全ての試料が、再水和時に、明確な形状有していたわけではない。例えば、試料番号24、28、及び33、並びに、より程度は低いが、試料番号26は、再水和形態において、より自由な構造を有していた。対照的に、試料番号27は、最も維持される形状を有していた。
【0069】
(実施例20)
本実施例は、試料番号27の吸水率及び体積膨張動態分析を示す。
【0070】
吸水及び体積膨張の動態分析を、試料番号27に対して行った。試料番号27の乾燥粒子を、脱イオン水(pH7)中で膨潤させた。図2に、さまざまな時点での粒子の長さを示す。この動態分析によって、試料粒子が、再水和時に急速に体積膨張して、6分未満でその大きさを2倍超とし、19分で体積を16倍膨張させ、最終的に、乾燥粒子の元の体積の約120倍となる体積に到達することが示された。膨張の大部分は、100分以内に完了した(最大膨張体積の90%に到達した)。
【0071】
(実施例21)
本実施例は、さまざまな試料の走査電子顕微鏡撮像(SEM)分析を示す。
【0072】
解凍乾燥調製で得た試料番号22~32を、スパッタコーターによってPtで被覆し、JOEL JSM-7001走査型電子顕微鏡で撮像した。図3は、解凍乾燥で得た試料番号22、23、24、及び27のSEM画像を示す。
【0073】
異なる試料が、さまざまな表面特徴を示したものの、そのような特徴が、所与の複合性多糖材料(composite nature polysaccharide material)に固有のものであるかどうかを決定することは困難である。これは、粒子表面が、粉砕プロセスによって影響を受ける可能性があるためである。図3は、解凍乾燥で得た試料番号22、23、24、及び27のSEM画像を、それぞれ2種類の倍率及び視野で示す。試料番号27、及びより程度は低いが、試料番号24は、他の2つの試料と比較して、同様な平行に組織化された表面構造を示した。しかしながら、吸水及び体積膨張などの機能との本観察事項の相関は、不明である。概して、解凍乾燥によって調製される試料は、多孔性の構造を何ら示さなかった。しかしながら、吸水率測定及び体積膨張によって、これらの試料は、再水和時に水を吸収し体積を膨張させるかなりの能力を示し、複合多糖材料(composite polysaccharide material)のマトリックス構造が、解凍乾燥プロセスにおいて大部分保存され、かつ再水和時に、完全に又は実質的に確立され得ることを示唆した。
【0074】
(実施例22)
本実施例は、異なるpH条件:それぞれ、pH 7及びpH 1での急速冷凍及び凍結乾燥によって調製される水和試料の走査電子顕微鏡撮像(SEM)分析を示す。
【0075】
水和状態での構造的な特徴を捉えるために、表3の解凍乾燥試料を、脱イオン水(pH=7又はpH=1)に少なくとも12時間浸し、液体窒素中で急速冷凍し、乾くまで凍結乾燥し、スパッタリングによって白金で被覆し、JOEL JSM-7001走査型電子顕微鏡で撮像した。各試料について、いくつかの粒子を撮像し、所与の試料の観察された構造的特徴の最も代表的な画像を示す。各試料について、2つの異なる視野を、それぞれ、図4(pH 7)及び図5(pH 1)に示す。
【0076】
図4に示されるように、pH 7で、試料番号22は、比較的密な構造を有しており、右の写真は、表面に、本試料で認められたあるレベルの吸水を担っている可能性のあるいくらかの層状の構造的特徴を示した。試料番号23は、一方の面(左)に交差層状の細孔構造を示し、他方の面(右)に繊維状の細孔構造を示した。右の写真は、ふくれた外観を与えるものの、孔径は、非常に小さいようであった。試料番号24は、平行層状の構造(左)を示した。右の拡大図は、各層が、小さい細孔のネットワークを含むことを示した(右)。試料番号25は、平行層状の構造を示した(左)。右の拡大図は、各層が、幅が約1~5μm、長さが5~10μmである細孔のネットワークを含んでいたことを示し(右)、これらの細孔は、互いに連結され、絡み合っていた。試料番号26は、非常に多孔性の構造を示したが、細孔構造的パターンは、それほど明確ではなかった(左)。その表面は、まさに、交差層状の細孔のパターンを示した(右)。試料番号27は、非常に深いようである特徴的な平行層状の大きな細孔(幅が10~20μm、長さが100~200μm)を示した(右)。別の断面図(左)において、平行層状の大きな細孔は、多くの薄い繊維によって連結されているようであった。試料番号28は、一方の面(左)に交差層状の細孔パターンを示し、他方の面(右)にふくれた緩んだ平行な繊維構造を示す非常に多孔性の構造を有していた。試料番号29は、一方の面(左)に魚鱗のパターンに似ている多孔性の構造を有し、他方の面(右)に層状のシートを有していた。試料番号30は、一方の面(左)で絡み合いかつ他方(右)で平行に整列しているようである多孔性の構造を有していた。試料番号31は、平行層(左)及びハチの巣様の細孔(右)の構造的特徴を有していた。試料番号32は、一方の面(左)に緩んだ層状の構造的特徴を有し、他方の面(右)により密に詰まった層構造を有していた。
【0077】
図5に示されるように、pH 1の溶液中で水和された試料の構造的特徴は、pH 7の溶液中で水和された試料で観察されたものと概して類似していたが、孔径は、より小さいようであった(例えば、pH 7及びpH 1での試料番号25の孔径を比較)。図5は、試料番号22~27、31、及び32を示す。図5に示されていない他の試料も、それらのpH 7での相当品に構造が類似していた。これらの分析は、観察された構造的特徴が、異なる条件下で安定であったこと、及び高度に再現性のある構造的特徴が、おそらく各複合天然多糖の固有の性質であったことを強く。
【0078】
(実施例23)
本実施例は、凍結乾燥によって調製される水和試料の走査電子顕微鏡撮像(SEM)分析を示す。試料を、凍結乾燥することによって調製した(表3の最後の2列を参照されたい)。簡単に述べると、表3に示される比率及び質量濃度で各成分を秤量して脱イオン水に添加し、100℃まで加熱し、全成分が完全に溶解するまで攪拌することによって、試料を調製した。各溶液を、20℃に冷却し、20℃のインキュベーター中で6時間保管して、安定なゲルを形成させた。6時間後、試料を、-20℃の冷凍庫に移して10時間保管し、それにより、低温安定化されたゲルを得た。10時間後、この低温安定化されたゲルを、その中心が-40℃に達するまで予備凍結させ、凍結乾燥を行った。試料が乾くまで凍結乾燥プロセスの間ずっと、試料を-10℃未満に保った。
【0079】
表3(最後の2列)の凍結乾燥した試料の水和状態での構造的特徴を捉えるために、試料粒子を、12時間超脱イオン水(pH=7)に浸し、液体窒素中で急速冷凍し、乾くまで凍結乾燥し、スパッタリングによって白金で被覆し、JOEL JSM-7001走査型電子顕微鏡で撮像した。各試料について、いくつかの粒子を撮像した。所与の試料の観察された構造的特徴の最も代表的な画像を示す。図6では、各試料について、2つの異なる視野を示す。
【0080】
凍結乾燥で得た試料番号22は、比較的密な構造を有し、右の写真は、表面にいくらかの層状の構造的特徴を示した。この特徴は、本試料で認められたあるレベルの吸水性の一因となっている可能性がある。凍結乾燥で得た試料番号23は、左の図の左上の角に交差層状の細孔構造を示し;断面で見た場合(左の図の中央)、相互連結された細孔構造が、明らかであった。右の写真は、異なる視野での繊維状の細孔構造を示す(右)。凍結乾燥で得た試料24は、表面に微細な平行層状の構造を示した(左)。右の切断した断面は、各層が、細孔のネットワークを含んでいたことを示す(右)。凍結乾燥で得た試料25は、表面に平行層状の構造を示した(左)。右の拡大図は、各層が、幅が約1~5μm、長さが5~10μmである細孔のネットワークを含んでいたことを示し(右)、これらの細孔は、互いに連結され、絡み合っていた。凍結乾燥で得た試料番号26は、非常に多孔性の構造を示したが、細孔構造的パターンは、それほどしっかりと規定されていなかった(左)。その表面は、まさに、交差層状の細孔のパターンを示した(右)。凍結乾燥で得た試料番号27は、特徴的な相互連結された細孔パターンを示した(左)。平行層状のものも、表面にはっきりと見えた(右)。
【0081】
まとめると、本実施例の凍結乾燥した試料の構造的特徴及び細孔パターンは、解凍乾燥によって調製される対応する試料で観察されたものに類似していたが、凍結乾燥によって調製される試料の孔径及び全体的な乾燥体積は、解凍乾燥によって調製されるそれらの対応物よりも大きく、試料番号22~25については、特に大きかった。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
寒天及び1種以上の水溶性天然多糖を含む高吸収性材料であって、該寒天及び該1種以上の水溶性天然多糖が、化学的な架橋結合を全く含まない多孔性の構造を形成する、前記高吸収性材料。
(態様2)
前記1種以上の水溶性天然多糖が、コンニャクガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、及びグアーガムカラギーナン、アルギン酸、ペクチン、ゲランガム、キトサン、アラビアゴム、可溶性デンプン、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1記載の高吸収性材料。
(態様3)
中性pH条件又はヒトの胃のpH条件下で、かつ室温で又はヒトの体温で、再水和時に、前記高吸収性材料が、2時間未満、1.5時間未満、1時間未満、30分未満、又は15分未満に体積を膨張させ、かつ明確な形状を少なくとも24時間、少なくとも36時間、又は少なくとも48時間維持する、態様1又は2記載の高吸収性材料。
(態様4)
前記高吸収性材料が、脱イオン水中でその自重の少なくとも10倍又は最大で200倍の吸収率を有するか、又は人工胃液中でその自重の少なくとも5倍又は最大で100倍の吸収率を有する、態様1~3のいずれか1項記載の高吸収性材料。
(態様5)
前記高吸収性材料が、脱イオン水中で少なくとも5倍又は最大で150倍の体積膨張率を有するか、又は人工胃液中で少なくとも5倍から最大で100倍の体積膨張率を有する、態様1~4のいずれか1項記載の高吸収性材料。
(態様6)
態様1~5のいずれか1項記載の高吸収性材料を含む、規定食用組成物。
(態様7)
態様1~5のいずれか1項記載の高吸収性材料を含む、ボリュメトリクス食。
(態様8)
代謝異常と関連する疾患又は病態を予防又は治療する方法であって、代謝異常と関連する疾患又は病態を患っているか又は該疾患又は病態のリスクが高い対象に、有効量の態様1~5のいずれか1項記載の高吸収性材料、態様6記載の規定食用組成物、又は態様7記載のボリュメトリクス食を経口投与することを含む、前記方法。
(態様9)
前記代謝異常と関連する疾患又は病態が、糖尿病、肥満、過体重、高コレステロール、及び高血圧を含む、態様8記載の方法。
(態様10)
対象において、食欲を抑制する、満腹感を高める、又はカロリー摂取量を低下させる方法であって、それを必要としている対象に、有効量の態様1~5のいずれか1項記載の高吸収性材料、態様6記載の規定食用組成物、又は態様7記載のボリュメトリクス食を経口投与することを含む、前記方法。
(態様11)
高吸収性材料を調製する方法であって:
水に寒天及び1種以上の水溶性天然多糖を添加して混合物を形成させること;
該1種以上の多糖が完全に溶解するまで、該混合物を、80℃~100℃の温度に加熱すること;
該混合物を放冷してゲルを形成させること;
該ゲルを凍結させること;及び
該ゲルを乾燥させて、該高吸収性材料を得ること
を含む、前記方法。
(態様12)
前記乾燥させたゲルを粉砕して前記高吸収性材料を粉末の形態で得ることをさらに含む、態様11記載の方法。
(態様13)
前記乾燥工程が、前記凍結ゲルを直接凍結乾燥することを含む、態様11又は12記載の方法。
(態様14)
前記乾燥工程が、前記凍結ゲルを解凍すること、及び50℃~60℃の温度で乾燥させることを含む、態様11又は12記載の方法。
(態様15)
前記乾燥工程が:
前記凍結ゲルを解凍すること;
該解凍したゲルを濾過して、濾過ケーキを得ること;及び
該濾過ケーキを乾燥させること
を含む、態様11又は12記載の方法。
(態様16)
前記濾過ケーキが、空気乾燥、熱乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、態様15記載の方法。
(態様17)
前記1種以上の水溶性天然多糖が、コンニャクガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、及びグアーガムカラギーナン、アルギン酸、ペクチン、ゲランガム、キトサン、アラビアゴム、可溶性デンプン、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様11記載の方法。
(態様18)
態様11~17のいずれか1項記載の方法によって得られる、高吸収性材料。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】