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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】直流電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
H02K13/00 T
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021533028
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2020026965
(87)【国際公開番号】W WO2021010307
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2019132092
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆文
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 康夫
(72)【発明者】
【氏名】山下 大介
(72)【発明者】
【氏名】岡部 形次郎
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203942401(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-1467538(KR,B1)
【文献】特開2015-043685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電動機であって、
整流子と摺接するブラシと、
前記ブラシを保持するブラシホルダベースと、
前記ブラシと接続される可撓性の配線と、
前記配線を介して前記ブラシと接続されるチョークコイルとを備え、
前記ブラシホルダベースは、前記ブラシホルダベースから突出した第1壁部及び第2壁部の間に形成され、前記チョークコイル内に生じる磁束の向きと平行な方向に沿って延在するように、前記配線を拘束する挟持部を有し、
前記ブラシホルダベースには、前記チョークコイルの収容壁が形成されており、
前記第1壁部は、前記収容壁の外側部分を延伸して形成され、
前記第2壁部は、前記収容壁の内側部分である直流電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の直流電動機であって、
前記挟持部は、前記ブラシと前記チョークコイルとの間で、前記配線を拘束する直流電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシ付き直流電動機は、ブラシをバネで整流子へ押し付けて通電することによって出力を発生する。ブラシは、整流子との摺動によって摩耗して短くなるため、ブラシ長さに応じてバネによって追従する必要があり、可撓性配線(ピグテール)で余剰長さを形成し給電部とブラシを電気的に接続する回路を形成する。
【0003】
本技術分野の背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(特開2008-252970号公報)には、アーマチュア軸のコンミュテータに摺接する複数のブラシと、ブラシを出没自在に収納するブラシボックスを取り付けたブラシホルダと、ブラシに一端部が接続され、ブラシホルダ本体に保持されるチョークコイルと、チョークコイルの他端部が電気的に接続され、ブラシホルダに保持されるターミナルとを備えたモータにおいて、ブラシホルダの周壁部に開口部を形成すると共に、ブラシホルダの開口部にチョークコイルの他端部とターミナルとの接続部を露出するよう配索した後で、これらチョークコイルの他端部とターミナルとを所定手段により接続したモータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-252970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ブラシ付き直流電動機は、アクチュエータの中に組み込まれて作動する場合が多く、小型・軽量化の要求が高くなるに従って、直流電動機に許容されるスペースが小さくなり、部品間の距離が小さくなっている。このため、小型のブラシ付き直流電動機において、ピグテールの余剰長さを安定的に固定して、ピグテールの振動による配線の劣化やノイズの発生を抑制する必要がある。また、整流ノイズを低減する部品(例えばチョークコイル)を設け、ピグテールに流れる電流による磁束の影響を受けずに、安定してノイズ除去可能な構造が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、直流電動機であって、整流子と摺接するブラシと、前記ブラシを保持するブラシホルダベースと、前記ブラシと接続される可撓性の配線と、前記配線を介して前記ブラシと接続されるチョークコイルとを備え、前記ブラシホルダベースは、前記ブラシホルダベースから突出した第1壁部及び第2壁部の間に形成され、前記チョークコイル内に生じる磁束の向きと平行な方向に沿って延在するように、前記配線を拘束する挟持部を有し、前記ブラシホルダベースには、前記チョークコイルの収容壁が形成されており、前記第1壁部は、前記収容壁の外側部分を延伸して形成され、前記第2壁部は、前記収容壁の内側部分である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安定したノイズ除去効果が得られる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例の直流電動機の構造を示す断面図である。
図2】本発明の実施例の直流電動機の分解斜視図である。
図3】本発明の実施例のブラシホルダの平面図である。
図4】本発明の実施例のブラシホルダのA-A断面図である。
図5】本発明の実施例のブラシホルダの挟持部の拡大図である。
図6】本発明の実施例のブラシホルダの斜視図である。
図7】本発明の実施例のチョークコイル及びピグテール線の磁束発生の方向を示す斜視図である。
図8】本発明の実施例のチョークコイル及びピグテール線の磁束発生の方向を示す断面図である。
図9】従来のチョークコイル及びピグテール線の磁束発生の方向を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図8を参照して、直流電動機の実施例を説明する。
【0010】
(全体構成) 図1は、直流電動機1の構造を示す断面図であり、図2は、直流電動機1の分解斜視図である。なお、図1及び図2に示すA及びBは直流電動機1の向き、特にブラシホルダ13の向きを表す便宜的なものである。以下ではブラシホルダ13のA側の面を「A面」、ブラシホルダ13のB側の面を「B面」とも称する。なおB面は後述するブラシ14の取り付け面である。
【0011】
直流電動機1は、ケース及び磁気回路を形成する役割を有するヨーク2を有する。ヨーク2の内面にはマグネットステー27及び複数個のマグネット3が装着され、更にマグネット3の内面にはマグネット内面と任意の隙間を保持してアーマチャ4が収容される。アーマチャ4の径方向中央部にはモータギア19に接続されたシャフト5が備えられる。シャフト5は、軸受6及び軸受20を介してフロントブラケット7及びリアブラケット21に回転自在に支持される。フロントブラケット7及びリアブラケット21はヨーク2に取り付けられる。アーマチャ4は、シャフト5にアーマチャコア8及び整流子9が固定されて構成される。アーマチャコア8の周方向外周部に形成された複数のスロット10間に跨ってアーマチャコイル11が巻回される。整流子9は樹脂等の絶縁材により筒状に形成され、整流子9の外周部には導電材からなる複数の整流子片12を備える。整流子片12の一部にはスロット10間に巻回されたアーマチャコイル11が電気的に接合される。
【0012】
ヨーク2の内部にはブラシホルダ13が収容される。ブラシホルダ13には、整流子片12に給電する少なくとも一対のブラシ14とバネ15が配置される。ブラシホルダ13にはさらに、電磁ノイズを除去するためのチョークコイル16が配置される。ブラシ14は直流電動機1の外部給電端子26と電気的に接続される。ブラシ14は、ブラシホルダ13に保持されたバネ15の弾性によって整流子片12の外周面に摺接され、整流子片12を介してアーマチャコイル11に給電する。
【0013】
(ブラシホルダ) 図3はブラシホルダ13をB面側から見た平面図、図4はA-A断面図であり、図5は挟持部30の拡大図であり、図6はブラシホルダ13の斜視図である。
【0014】
ブラシホルダ13は、樹脂等の絶縁材料で略円形状に形成されたブラシホルダベース24に、複数の部品が配置されて構成される。ブラシホルダベース24のブラシ14の取り付け面、すなわちB面には、ブラシ14、バネ15、チョークコイル16、ブラシボックス28及びバネホルダ29などが配置される。ブラシボックス28はブラシ14を保持する。バネホルダ29はバネ15を保持する。ブラシ14は整流子片12に給電する。バネ15はブラシ14を整流子9の外周(整流子片12)に摺接させる。チョークコイル16は電磁ノイズを除去する。チョークコイル16の中心部にはフェライトコア17が設置される。
【0015】
ブラシホルダベース24の内部には、チョークコイル16を接続するための給電端子18がインサートモールド等の方法によって配置されており、給電端子18はブラシホルダベース24のA面及びB面の両方に露出する。図示したブラシホルダ13では、ブラシホルダベース24の内部の給電端子18と直流電動機1の外部給電端子26とを一体に形成しているが、給電端子18と外部給電端子26を別部品で接合して形成してもよい。
【0016】
チョークコイル16は、ブラシホルダベース24のB面側から略垂直に突出する収容壁によって形成される空間に収容され、その一端が給電端子18と接続され、他端が接続部23においてピグテール線25と接続される。そのため給電端子18はピグテール線25及びチョークコイル16を介してブラシ14と電気的に接続され、ブラシ14と摺接する整流子片12を介してアーマチャコイル11に給電する。
【0017】
ピグテール線25は、一端がブラシ14に接続され、他端が接続部23を介してチョークコイル16と接続される。ピグテール線25とブラシ14、及びピグテール線25と接続部23とは溶接などの方法によって接続するとよい。ピグテール線25は、可撓性を有しており、ブラシの摩耗に追従可能なように余剰長さを有している。
【0018】
ブラシ14とチョークコイル16の間には、ピグテール線25を拘束する挟持部30が設けられる。挟持部30は、チョークコイル16の収容壁の外側部分を延伸した第1壁部31と、該収容壁の内側部分である第2壁部32との間に形成され、ピグテール線25の直径より少し狭い空間を形成する。挟持部30は、ブラシホルダベース24の外周側でチョークコイル16の収容壁を延伸して形成される第1壁部31と、ブラシホルダベース24の内側でチョークコイル16の収容壁で構成される第2壁部32との間に形成され、ピグテール線25の直径より少し狭い空間を形成している。このため、ピグテール線25をブラシホルダベース24に組み付けた後の状態では、ピグテール線25は挟持部30によって動かないように拘束される。すなわち、挟持部30は、ピグテール線25の振動変位を抑制しており、ピグテール線25をチョークコイル16の中心線と平行に配置する。すなわち、チョークコイル16内に生じる磁束の向きと平行に延在する。ここで、ピグテール線25とチョークコイル16内に生じる磁束の向きとが平行とは、両者の向きの差が±12°までの誤差を許容してもよい。また、チョークコイル16のインダクタンスの変化が20%まで許容してもよい。
【0019】
図7は磁束発生の方向を示す斜視図であり、図8図5のB-B断面図である。また、図9は従来の構成における断面図である。
【0020】
図7及び図8に示すように、直流電動機1の通電時にチョークコイル16に流れる電流による磁束はチョークコイル16の中心を貫く方向となり、ピグテール線25に流れる電流による磁束はピグテール線25を中心に円を描く方向となる。このため、チョークコイル16に流れる電流による磁束とピグテール線25に流れる電流による磁束とは、互いに直交し、ピグテール線25を流れる電流による磁束のチョークコイル16への干渉を抑制する。
【0021】
一方、図9に示すように、ピグテール線25がチョークコイル16の中心線と平行ではない場合、チョークコイル16に流れる電流による磁束とピグテール線25に流れる電流による磁束とは直交せず、ピグテール線25とチョークコイル16の中心線とのなす角の正弦値に比例して、ピグテール線25に流れる電流による磁束がチョークコイル16の磁束と干渉する。このため、チョークコイル16の素子特性が不安定になり、ノイズの抑制効果が低減する。
【0022】
また、ピグテール線25を挟持部30で拘束しないと、直流電動機1の振動によってピグテール線25が変位し、ピグテール線25に流れる電流による磁束によるチョークコイル16の磁束への干渉の量が時間変化して、ノイズが発生する。
【0023】
以上に説明したように、本発明の実施例の直流電動機1は、整流子9と摺接するブラシ14と、ブラシ14を保持するブラシホルダベース24と、ブラシ14と接続される可撓性の配線(ピグテール線25)と、ピグテール線25を介してブラシ14と接続されるチョークコイル16とを備え、ブラシホルダベース24は、チョークコイル16内に生じる磁束の向きと平行な方向に沿って延在するように、ピグテール線25を拘束する挟持部30を有する。すなわち、挟持部30がピグテール線25を挟み込むので、直流電動機1の振動によるピグテール線25の損傷を抑制でき、チョークコイル16近傍のピグテール線25の振動変位によって発生する磁束変化のチョークコイル16への干渉を抑制し、素子特性を安定化して、安定したノイズ除去効果が得られる。また、ピグテール線25がチョークコイル16内に生じる磁界方向と平行に延在するので、ピグテール線25に流れる電流による磁束の方向をチョークコイル16に流れる電流による磁束の方向と直交させ、配線から受ける磁束干渉を抑制することによって、チョークコイル16の素子特性が安定になり、安定したノイズ除去効果が得られる。さらに、挟持部30がピグテール線25の余剰長さの這い回し部分を拘束するので、後工程でピグテール線25を短く加工するコストを削減できる。
【0024】
また、挟持部30は、ブラシ14とチョークコイル16との間で、ピグテール線25を拘束するので、ブラシ14の振動がチョークコイル16とピグテール線25との接続部23へ伝搬せず、耐振性を向上できる。
【0025】
また、挟持部30は、ブラシホルダベース24から突出した第1壁部31及び第2壁部32の間に形成されるので、ブラシホルダベース24の構造を簡素化しつつ、ピグテール線25を確実に拘束できる。
【0026】
また、ブラシホルダベース24には、チョークコイル16の収容壁が形成されており、第1壁部31は該収容壁の外側部分を延伸して形成され、第2壁部32は該収容壁の内側部分で構成したので、チョークコイル16の収容空間を形成する収容壁に連続する構成で第1壁部31及び第2壁部32を構成して、ブラシホルダベース24の構造を簡素化しつつ、ピグテール線25を確実に拘束できる。
【0027】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。
また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…直流電動機、2…ヨーク、3…マグネット、4…アーマチャ、5…シャフト、6…軸受、7…フロントブラケット、8…アーマチャコア、9…整流子、10…スロット、11…アーマチャコイル、12…整流子片、13…ブラシホルダ、14…ブラシ、15…バネ、16…チョークコイル、17…フェライトコア、18…給電端子、19…モータギア、20…軸受、21…リアブラケット、23…接続部、24…ブラシホルダベース、25…ピグテール線、26…外部給電端子、27…マグネットステー、28…ブラシボックス、29…バネホルダ、30…挟持部、31…第1壁部、32…第2壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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