(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】窒化物半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/343 20060101AFI20230830BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20230830BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H01S5/343 610
H01L33/32
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2022009154
(22)【出願日】2022-01-25
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 美帆
(72)【発明者】
【氏名】松倉 勇介
(72)【発明者】
【氏名】ペルノ シリル
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-028076(JP,A)
【文献】特開2001-196702(JP,A)
【文献】特開2012-248625(JP,A)
【文献】国際公開第2017/175860(WO,A1)
【文献】特開2011-151074(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0099244(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00- 5/50
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にn型半導体層を成長させる工程と、
前記n型半導体層上に活性層を成長させる工程と、
前記活性層上に、厚さ方向におけるAl組成比の平均値が70%以上のp型クラッド層を成長させる工程と、
前記p型クラッド層上に、Al組成比が10%以下のp型コンタクト層を成長させる工程と、を備える窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
前記p型クラッド層及び前記p型コンタクト層のそれぞれを成長させる工程において、III族元素の原料ガスの流量F
III[μmol/min]に対するp型不純物の原料ガスの流量F
p[μmol/min]の比率F
p/F
IIIをp/III比と定義するとともに、前記流量F
IIIに対するV族元素の原料ガスの流量F
v[μmol/min]の比率F
v/F
IIIをV/III比と定義したとき、
前記p型クラッド層を成長させる工程においては、成長速度を2.5nm/min以下、p/III比を0.0002以上0.0400以下、及びV/III比を7000以下として前記p型クラッド層を成長させ、
前記p型コンタクト層を成長させる工程においては、成長速度を3.3nm/min以下、p/III比を0.0200以上、V/III比を10000以上として前記p型コンタクト層を成長させる、
窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記p型クラッド層を成長させる工程においては、p/III比を0.0005以上0.0015以下として前記p型クラッド層を成長させる、
請求項1に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記p型クラッド層を成長させる工程においては、V/III比を2000以上6500以下として前記p型クラッド層を成長させる、
請求項1又は2に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記p型コンタクト層を成長させる工程においては、成長速度を1.6nm/min以下として前記p型コンタクト層を成長させる、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記p型コンタクト層を成長させる工程においては、p/III比を、前記p型クラッド層を成長させる工程におけるp/III比の15倍以上として前記p型コンタクト層を成長させる、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記p型コンタクト層を成長させる工程においては、V/III比を、前記p型クラッド層を成長させる工程におけるV/III比の2倍以上として前記p型コンタクト層を成長させる、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記p型コンタクト層を成長させる工程においては、p/III比を0.0200以上0.5以下として前記p型コンタクト層を成長させる、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
基板上にn型半導体層を成長させる工程と、
前記n型半導体層上に活性層を成長させる工程と、
前記活性層上に、Al組成比が
70%未満のp型クラッド層を成長させる工程と、
前記p型クラッド層上に、Al組成比が10%以下のp型コンタクト層を成長させる工程と、を備える窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
前記p型クラッド層及び前記p型コンタクト層のそれぞれを成長させる工程において、III族元素の原料ガスの流量F
III[μmol/min]に対するp型不純物の原料ガスの流量F
p[μmol/min]の比率F
p/F
IIIをp/III比と定義するとともに、前記流量F
IIIに対するV族元素の原料ガスの流量F
v[μmol/min]の比率F
v/F
IIIをV/III比と定義したとき、
前記p型クラッド層を成長させる工程においては、成長速度を3.5nm/min以下、p/III比を0.0002以上0.0500以下、及びV/III比を6000以下として前記p型クラッド層を成長させ、
前記p型コンタクト層を成長させる工程においては、成長速度を6.5nm/min以下、p/III比を0.0100以上、V/III比を3000以上として前記p型コンタクト層を成長させる、
窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記p型クラッド層を成長させる工程においては、p/III比を0.0005以上0.0020以下として前記p型クラッド層を成長させる、
請求項8に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記p型クラッド層を成長させる工程においては、V/III比を2000以上4500以下として前記p型クラッド層を成長させる、
請求項8又は9に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記p型コンタクト層を成長させる工程においては、成長速度を3.3nm/min以下として前記p型コンタクト層を成長させる、
請求項8乃至10のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記p型コンタクト層を成長させる工程においては、p/III比を、前記p型クラッド層を成長させる工程におけるp/III比の10倍以上として前記p型コンタクト層を成長させる、
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記p型コンタクト層を成長させる工程においては、V/III比を、前記p型クラッド層を成長させる工程におけるV/III比を超える値として前記p型コンタクト層を成長させる、
請求項8乃至12のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記p型コンタクト層は、p型のGaNからなる、
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、50%以上のAl組成比のp型AlGaNからなるp型クラッド層と、p型クラッド層上に形成されたp型GaNからなるp型コンタクト層(p型キャップ層)とを備える窒化物半導体発光素子を製造する方法が開示されている。特許文献1に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法は、p型コンタクト層の表面を平坦化すべく、p型コンタクト層の成長速度、p型コンタクト層を形成するための各種原料ガスの流量比等の製造条件を工夫している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、p型コンタクト層の表面状態は、p型コンタクト層の下地の層となるp型クラッド層の構成及び成膜条件によって変わるため、特許文献1に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法においては、p型コンタクト層の表面を平坦化する観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、p型コンタクト層の表面を平坦にすることができる窒化物半導体発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、基板上にn型半導体層を成長させる工程と、
前記n型半導体層上に活性層を成長させる工程と、前記活性層上に、厚さ方向におけるAl組成比の平均値が70%以上のp型クラッド層を成長させる工程と、前記p型クラッド層上に、Al組成比が10%以下のp型コンタクト層を成長させる工程と、を備える窒化物半導体発光素子の製造方法であって、前記p型クラッド層及び前記p型コンタクト層のそれぞれを成長させる工程において、III族元素の原料ガスの流量FIII[μmol/min]に対するp型不純物の原料ガスの流量Fp[μmol/min]の比率Fp/FIIIをp/III比と定義するとともに、前記流量FIIIに対するV族元素の原料ガスの流量Fv[μmol/min]の比率Fv/FIIIをV/III比と定義したとき、前記p型クラッド層を成長させる工程においては、成長速度を2.5nm/min以下、p/III比を0.0002以上0.0400以下、及びV/III比を7000以下として前記p型クラッド層を成長させ、前記p型コンタクト層を成長させる工程においては、成長速度を3.3nm/min以下、p/III比を0.0200以上、V/III比を10000以上として前記p型コンタクト層を成長させる、窒化物半導体発光素子の製造方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、前記の目的を達成するため、基板上にn型半導体層を成長させる工程と、前記n型半導体層上に活性層を成長させる工程と、前記活性層上に、Al組成比が70%未満のp型クラッド層を成長させる工程と、前記p型クラッド層上に、Al組成比が10%以下のp型コンタクト層を成長させる工程と、を備える窒化物半導体発光素子の製造方法であって、前記p型クラッド層及び前記p型コンタクト層のそれぞれを成長させる工程において、III族元素の原料ガスの流量FIII[μmol/min]に対するp型不純物の原料ガスの流量Fp[μmol/min]の比率Fp/FIIIをp/III比と定義するとともに、前記流量FIIIに対するV族元素の原料ガスの流量Fv[μmol/min]の比率Fv/FIIIをV/III比と定義したとき、前記p型クラッド層を成長させる工程においては、成長速度を3.5nm/min以下、p/III比を0.0002以上0.0500以下、及びV/III比を6000以下として前記p型クラッド層を成長させ、前記p型コンタクト層を成長させる工程においては、成長速度を6.5nm/min以下、p/III比を0.0100以上、V/III比を3000以上として前記p型コンタクト層を成長させる、窒化物半導体発光素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、p型コンタクト層の表面を平坦にすることができる窒化物半導体発光素子の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態において、製造される窒化物半導体発光素子の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、
図1を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
(窒化物半導体発光素子1)
本形態は、平均Al組成比が70%以上のp型クラッド層7を備えた窒化物半導体発光素子1(以下、単に「発光素子1」ともいう。)の製造方法に関する。p型クラッド層7の平均Al組成比とは、p型クラッド層7の厚さ方向の各位置におけるAl組成比の平均値である。まず、本形態の製造方法によって製造される発光素子1について説明する。
図1は、本形態の発光素子1の模式図である。なお、
図1における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の発光素子1の寸法比と一致するものではない。
【0012】
発光素子1は、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)又は半導体レーザ(LD:Laser Diode)を構成するものである。本形態において、発光素子1は、紫外領域の波長の光を発する発光ダイオードを構成するものである。特に、本形態の発光素子1は、中心波長が200nm以上365nm以下の深紫外光を発する深紫外LEDを構成するものである。本形態の発光素子1は、例えば殺菌(例えば空気浄化、浄水等)、医療(例えば光線治療、計測・分析等)、UVキュアリング等の分野において用いることができる。
【0013】
発光素子1は、基板2上に、バッファ層3、n型クラッド層4、活性層5、電子ブロック層6、p型クラッド層7、及びp型コンタクト層8を順次備える。また、発光素子1は、n型クラッド層4上に設けられたn側電極11と、p型コンタクト層8上に設けられたp側電極12とを備える。
【0014】
以下において、基板2、バッファ層3、n型クラッド層4、活性層5、電子ブロック層6、p型クラッド層7、及びp型コンタクト層8の積層方向(
図1の上下方向)を上下方向という。また、基板2に対して発光素子1の各層が積層された側(すなわち
図1の上側)を上側といい、その反対側(すなわち
図1の下側)を下側という。なお、上下の表現は便宜的なものであり、例えば発光素子1の使用時における、鉛直方向に対する発光素子1の姿勢を限定するものではない。発光素子1を構成する各層は、上下方向に厚みを有する。
【0015】
発光素子1を構成する半導体としては、例えば、AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)にて表される2~4元系のIII族窒化物半導体を用いることができる。なお、深紫外LEDにおいては、インジウムを含まない窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系の半導体が用いられることが多い。発光素子1を構成する半導体のIII族元素の一部は、ホウ素(B)、タリウム(Tl)等に置き換えてもよい。また、窒素の一部をリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等で置き換えてもよい。
【0016】
基板2は、活性層5が発する光(本形態においては深紫外光)を透過する材料からなる。本形態において、基板2は、サファイア(Al2O3)基板である。また、基板2として、例えば窒化アルミニウム(AlN)基板又は窒化アルミニウムガリウム基板等を用いてもよい。
【0017】
バッファ層3は、基板2上に形成されている。本形態において、バッファ層3は、窒化アルミニウムにより形成されている。なお、基板2が窒化アルミニウム基板又は窒化アルミニウムガリウム基板である場合、バッファ層3は必ずしも設けなくてもよい。
【0018】
n型クラッド層4は、バッファ層3上に形成されている。n型クラッド層4は、n型不純物としてのシリコン(Si)がドープされたAlaGa1-aN(0≦a≦1)からなるn型半導体層である。なお、n型クラッド層4にドープされるn型不純物としては、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)又はテルル(Te)等を用いてもよい。これについては、n型クラッド層4以外の、n型不純物を含む半導体層においても同様である。n型クラッド層4のAl組成比aは、例えば20%以上とすることが好ましく、25%以上70%以下とすることが更に好ましい。なお、Al組成比は、AlNモル分率とも称される。n型クラッド層4の膜厚は、例えば1μm以上4μm以下とすることができる。本形態において、n型クラッド層4は、単層構造であるが、複数層構造としてもよい。
【0019】
活性層5は、n型クラッド層4上に形成されている。活性層5は、複数の井戸層53を有する多重量子井戸構造となるよう形成されている。活性層5は、多重量子井戸構造内で電子及び正孔を再結合させて所定の波長の光を発生させる。本形態において、活性層5は、波長365nm以下の深紫外光を出力するために、バンドギャップが3.4eV以上となるよう構成されている。特に本形態において、活性層5は、中心波長が200nm以上365nm以下、好ましくは260nm以上300nm以下の深紫外光を発生することができるよう構成されている。
【0020】
活性層5は、n型クラッド層4上に組成傾斜障壁層51を有するとともに、組成傾斜障壁層51上に、障壁層52と井戸層53とを3つずつ有する。組成傾斜障壁層51は、AlbGa1-bN(0<b≦1)からなる。組成傾斜障壁層51の上下方向の各位置におけるAl組成比bは、上側の位置程大きくなっている。なお、組成傾斜障壁層51は、上下方向の極一部の領域(例えば組成傾斜障壁層51の上下方向の全体の5%以下の領域)に、上側に向かうにつれてAl組成比bが大きくならない領域を含んでいてもよい。組成傾斜障壁層51は、その下端部のAl組成比がn型クラッド層4のAl組成比aと略同一(例えば差が5%以内)であり、その上端部のAl組成比が組成傾斜障壁層51に隣接する障壁層52のAl組成比と略同一(例えば差が5%以内)であることが好ましい。組成傾斜障壁層51の膜厚は、例えば5nm以上20nm以下とすることができる。組成傾斜障壁層51には、n型不純物としてのシリコンが含まれていてもよい。なお、組成傾斜障壁層51は、必ずしも設けなくてもよい。
【0021】
障壁層52と井戸層53とは、交互に積層されている。活性層5において、組成傾斜障壁層51の上側に隣接する位置に障壁層52が形成されており、活性層5の上端に井戸層53が形成されている。
【0022】
各障壁層52は、AlcGa1-cN(0<c≦1)からなる。各障壁層52のAl組成比cは、例えば75%以上95%以下とすることができる。また、各障壁層52の膜厚はは、例えば2nm以上50nm以下とすることができる。
【0023】
各井戸層53は、AldGa1-dN(0≦d<1)からなる。各井戸層53のAl組成比は、各障壁層52のAl組成比よりも小さい。本形態において、3つの井戸層53は、最も下側に配された井戸層53である最下井戸層54と、最下井戸層54以外の2つの井戸層53である2つの上側井戸層55とで構成が異なっている。
【0024】
最下井戸層54の膜厚は、各上側井戸層55の膜厚よりも大きい。これにより、最下井戸層54が平坦化し、最下井戸層54上に形成される活性層5の各層の平坦性も向上する結果、出力光の単色性を向上させることができる。例えば、最下井戸層54の膜厚は、4nm以上6nm以下、各上側井戸層55の膜厚は、2nm以上4nm以下とすることができる。また、最下井戸層54のAl組成比は、2つの上側井戸層55のそれぞれのAl組成比よりも大きい。これにより、n型クラッド層4と最下井戸層54との間のAl組成比の差が比較的小さくなり、活性層5の各層の結晶性が向上する。その結果、活性層5中のキャリアの移動度が向上し、発光出力が向上する。例えば、最下井戸層54のAl組成比は35%以上55%以下、各上側井戸層55のAl組成比は25%以上45%以下とすることができる。
【0025】
また、最下井戸層54にn型不純物としてのシリコンがドープされていてもよい。この場合、活性層5中におけるVピットの形成が誘発され、当該Vピットがn型クラッド層4側からの転位の進展を止める役割を果たす。なお、上側井戸層55にもシリコン等のn型不純物が含まれていてもよい。また、本形態において、活性層5は、井戸層53を複数備える多重量子井戸構造としたが、井戸層53を1つのみ備える単一量子井戸構造としてもよい。
【0026】
電子ブロック層6は、活性層5からp型半導体層側へ電子がリークするオーバーフロー現象の発生を抑制すること(以後、電子ブロック効果ともいう)によって活性層5への電子注入効率を向上させる役割を有する。電子ブロック層6は、下側から順に、第1層61と第2層62とを積層した積層構造を有する。
【0027】
第1層61は、活性層5上に設けられている。第1層61は、例えばAleGa1-eN(0<e≦1)からなる。第1層61のAl組成比eは、例えば90%以上100%以下とすることができる。第1層61の膜厚は、例えば0.5nm以上5.0nm以下とすることができる。
【0028】
第2層62は、例えばAlfGa1-fN(0<f<1)からなる。第2層62のAl組成比fは、第1層61のAl組成比eよりも小さく、例えば70%以上90%以下とすることができる。第2層62の膜厚は、第1層61の膜厚よりも大きく、例えば15nm以上100nm以下とすることができる。
【0029】
第1層61及び第2層62のそれぞれは、p型不純物の原料ガスを用いずに形成される。すなわち、第1層61及び第2層62のそれぞれは、n型半導体層又はアンドープの半導体層からなる。なお、n型半導体層及びアンドープの半導体層は、p型不純物の原料ガスを用いずに形成された層であるが、不可避的に混入される微量のp型不純物を含み得る。なお、p型クラッド層7のAl組成比が70%以上の場合、電子ブロック層6は第1層61のみにて構成することが好ましい。p型クラッド層7のAl組成比が70%以上の場合は、電子ブロック層6に第2層62を設けなくても電子のオーバーフローを抑制可能であるからである。一方、p型クラッド層7のAl組成比が70%未満の場合、電子ブロック層6は第1層61及び第2層62を含むことが好ましい。また、電子ブロック層6は、必ずしも設けなくてもよい。
【0030】
p型クラッド層7は、第2層62上に形成されている。p型クラッド層7は、p型不純物としてのマグネシウム(Mg)がドープされたAlgGa1-gN(0.7≦g≦1)からなる。なお、p型クラッド層7にドープされるp型不純物としては、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、又は炭素(C)等を用いてもよい。これについては、p型クラッド層7以外の、p型不純物を含む半導体層においても同様である。p型クラッド層7の平均Al組成比は70%以上である。発光素子1の電気抵抗値を低減する観点からは、p型クラッド層7の平均Al組成比は90%以下が好ましい。また、p型クラッド層7の平均Al組成比は、各井戸層53の平均Al組成比よりも35%以上大きいことが好ましい。井戸層53のAl組成比が高くなる程、活性層5から発される深紫外光の波長が短くなり、また、p型クラッド層7のAl組成比が高くなる程、短波長の深紫外光の透過率が上昇するため、p型クラッド層7のAl組成比を井戸層53のAl組成比に応じて高くすることが好ましい。p型クラッド層7の膜厚は、例えば20nm以上40nm以下とすることができる。
【0031】
本形態において、p型クラッド層7は単層であるが、複数層にて構成されていてもよい。この場合において、p型クラッド層7の平均Al組成比が70%以上とは、p型クラッド層7を構成する複数層のそれぞれの平均Al組成比が70%以上であることを意味する。また、p型クラッド層7は、例えば上側の位置程Al組成比が低くなるよう組成が傾斜した層を含んでいてもよい。
【0032】
p型コンタクト層8は、p側電極12が接続された層であり、p型不純物としてのマグネシウムがドープされたAlhGa1-hN(0≦h≦0.1)からなる。p型コンタクト層8のAl組成比hは、10%以下である。すなわち、p型コンタクト層8の上下方向の各位置のAl組成比hは10%以下である。p型コンタクト層8は、p側電極12とのオーミックコンタクトを実現すべく、Al組成比hがなるべく低くなるよう構成されている。かかる観点から、p型コンタクト層8は、p型の窒化ガリウム(GaN)により形成する(すなわちAl組成比hを0とする)ことが好ましい。また、p型コンタクト層8は、Al組成比hが10%以下の層であるため、深紫外光を吸収しやすい。そのため、p型コンタクト層8での深紫外光の吸収を抑制する観点から、p型コンタクト層8の膜厚は40nm以下が好ましく、25nm以下がより好ましい。ここで、p型コンタクト層8の膜厚を過度に薄くすると、p型クラッド層7上にp型コンタクト層8が不均一な厚さで形成され、ウエハの位置によって発光素子1の発光特性が変わり、歩留まりが低下するおそれがある。そのため、p型コンタクト層8の膜厚は3nm以上が好ましい。
【0033】
n側電極11は、n型クラッド層4において上側に露出した面上に形成されている。n側電極11は、例えば、n型クラッド層4の上にチタン(Ti)、アルミニウム、チタン、金(Au)が順に積層された多層膜とすることができる。
【0034】
p側電極12は、p型コンタクト層8上に形成されている。p側電極12は、活性層5から発される深紫外光を反射可能な反射電極である。p側電極12は、活性層5が発する光の中心波長において50%以上の反射率を有する。p側電極12は、例えばロジウム(Rh)又はアルミニウムを含む単層又は多層の金属膜とすることができる。
【0035】
本形態において、発光素子1は、図示しないパッケージ基板にフリップチップ実装されて用いられる。すなわち、発光素子1は、上下方向におけるn側電極11及びp側電極12が設けられた側をパッケージ基板側に向け、n側電極11及びp側電極12のそれぞれが、金バンプ等を介してパッケージ基板に実装される。フリップチップ実装された発光素子1は、基板2側(すなわち下側)から光が取り出される。また、本形態においては、p側電極12が前述のごとく反射電極であるため、活性層5から一旦上側に発された光も、p側電極12に反射されて基板2側から取り出される。なお、これに限られず、発光素子1は、ワイヤボンディング等によりパッケージ基板に実装されてもよい。また、本形態において、発光素子1は、n側電極11及びp側電極12の双方が発光素子1における上側に設けられた、いわゆる横型の発光素子1としたが、これに限られず、縦型の発光素子1であってもよい。縦型の発光素子1は、n側電極11とp側電極12とによって活性層5がサンドイッチされた発光素子1である。なお、発光素子1を縦型とする場合、基板2及びバッファ層3は、レーザーリフトオフ等により除去することが好ましい。
【0036】
(発光素子1の製造方法)
次に、本形態における発光素子1の製造方法について説明する。
本形態においては、有機金属化学気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により、基板2上にバッファ層3、n型クラッド層4、活性層5、電子ブロック層6、p型クラッド層7及びp型コンタクト層8を順にエピタキシャル成長させる。なお、MOCVD法は、有機金属化学気相エピタキシ法(MOVPE:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)と呼ばれることもある。発光素子1を製造する際は、図示しないチャンバ内のサセプタに基板2を設置し、サセプタを回転させながら原料ガスをチャンバ内に導入することで、基板2上に各半導体層が成長する。各半導体層をエピタキシャル成長させための原料ガスとしては、アルミニウム源としてトリメチルアルミニウム(TMA)、ガリウム源としてトリメチルガリウム(TMG)、窒素源としてアンモニア(NH3)、シリコン源としてテトラメチルシラン(TMSi)、マグネシウム源としてビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いることができる。
【0037】
p型クラッド層7のAl組成比によって、p型コンタクト層8の表面を平坦化することができる、p型クラッド層7及びp型コンタクト層8の成膜条件が異なる。本形態においては、p型クラッド層7の平均Al組成比が70%以上の場合において、p型コンタクト層8の表面を平坦化することができるp型クラッド層7及びp型コンタクト層8の成膜条件を採用しており、これについて以下説明する。
【0038】
ここで、p型クラッド層7及びp型コンタクト層8のそれぞれを成長させる工程において、III族元素の原料ガスの流量FIII[μmol/min]に対するp型不純物の原料ガスの流量Fp[μmol/min]の比率Fp/FIIIをp/III比と定義し、流量FIIIに対するV族元素の原料ガスの流量Fv[μmol/min]の比率Fv/FIIIをV/III比と定義する。
【0039】
(p型クラッド層7の成長工程)
p型クラッド層7を成長させる工程においては、成長速度を2.5nm/min以下としてp型クラッド層7を成長させる。p型クラッド層7の成長速度は、p型クラッド層7が1分あたりに上下方向に成長する速度である。なお、本形態において、p型クラッド層7は単層であるが、p型クラッド層7が複数層から形成されている場合は、p型クラッド層7を構成する各層の成長速度が2.5nm/min以下を満たせばよい。p型クラッド層7の成長速度が遅い程、p型コンタクト層8の表面は平坦化する。特に、p型クラッド層7のAl組成比が70%以上の場合、p型クラッド層7のAl組成比が70%未満の場合と比べて、p型クラッド層の成長速度を比較的遅くしなければp型コンタクト層8の表面を平坦化することができない。すなわち、本形態のように、p型クラッド層7の平均Al組成比が70%以上の場合は、p型クラッド層7の成長速度を最大2.5nm/minとすることで、p型コンタクト層8の表面を平坦化することができる。同様の観点から、p型クラッド層7の成長速度の上限値は、2.2nm/minとすることがより好ましい。また、発光素子1の生産性の観点からは、p型クラッド層7の成長速度を0.2nm/min以上とすることが好ましい。
【0040】
そして、p型クラッド層7を成長させる工程においては、p/III比を0.0002以上0.0400以下としてp型クラッド層7を成長させる。p型クラッド層7を成長させる工程におけるp/III比は、トリメチルアルミニウムとトリメチルガリウムとの合計流量[μmol/min]に対するCp2Mgの流量[μmol/min]の割合である。なお、p型クラッド層7を成長させる過程でp/III比が変化する場合は、p型クラッド層7を成長させる工程において、p/III比が0.0002以上0.0400以下を満たしていればよい。p型クラッド層7を成長させる工程におけるp/III比を0.0002以上とすることにより、p型クラッド層7のホール濃度を確保しやすくなり、発光出力が向上する。また、p型クラッド層7を成長させる工程におけるp/III比を0.0400以下とすることにより、p型クラッド層7の結晶性が悪くなることを抑制し、p型クラッド層7におけるホールの移動度を向上させることができる結果、発光出力が向上する。発光出力を向上させる観点から、p型クラッド層7を成長させる工程におけるp/III比は、0.0005以上0.0015以下が好ましい。
【0041】
さらに、p型クラッド層7を成長させる工程においては、V/III比を7000以下としてp型クラッド層7を成長させる。p型クラッド層7を成長させる工程におけるV/III比は、トリメチルアルミニウムとトリメチルガリウムとの合計流量[μmol/min]に対するアンモニアの流量[μmol/min]の割合である。なお、p型クラッド層7を成長させる過程でV/III比が変化する場合は、p型クラッド層7を成長させる工程において、V/III比が7000以下を満たしていればよい。p型クラッド層7を成長させる工程において、V/III比を過度に高くすると、p型クラッド層7の成長工程において供給されるV族元素の原料ガスのうち、p型クラッド層7の成長に寄与しないガスが増える。そのため、p型クラッド層7を成長させる工程におけるV/III比を7000以下とすることにより、歩留まりの低下を抑制することができる。p型クラッド層7を成長させる工程におけるV/III比は、2000以上6500以下とすることがより好ましい。V/III比を2000以上とすることにより、p型クラッド層7の導電性を向上させることができる。一方、V/III比が2000未満となると、p型クラッド層7を成長させる工程において供給されるアンモニアがすべてのNサイトを埋めることができず、形成されるp型クラッド層7においてN原子が存在しない箇所が残存しやすい。N原子が存在しない箇所が残存したp型クラッド層7上にさらに成膜を行うと、N原子が存在しない箇所がピットとなり、発光素子1への通電時にピットを起点としたリーク等が起こり、発光素子1の発光出力が低下する可能性が考えられる。また、V/III比を6500以下とすることで歩留まりの低下を一層抑制できる。
【0042】
その他の条件は、所望の性能を有する発光素子1を得るべく適宜調整することができる。一例として、p型クラッド層7の成長温度は、例えば1000℃以上1100℃以下とすることができる。
【0043】
(p型コンタクト層8の成長工程)
p型コンタクト層8を成長させる工程においては、成長速度を3.3nm/min以下としてp型コンタクト層8を成長させる。p型コンタクト層8の成長速度は、p型コンタクト層8が1分あたりに上下方向に成長する速度である。本形態のようにp型クラッド層7のAl組成比が70%以上の場合、p型コンタクト層8の成長速度を3.3nm/min以下とすることで、p型コンタクト層8の表面を平坦化することができる。また、p型コンタクト層8の表面を一層平坦化する観点から、p型コンタクト層8の成長速度は1.6nm/min以下とすることがより好ましい。また、発光素子1の生産性の観点からは、p型コンタクト層8の成長速度を0.2nm/min以上とすることが好ましい。
【0044】
そして、p型コンタクト層8を成長させる工程においては、p/III比を0.0200以上としてp型コンタクト層8を成長させる。p型コンタクト層8を成長させる工程におけるp/III比は、トリメチルガリウムの流量[μmol/min]に対するCp2Mgの流量[μmol/min]の割合である。p型コンタクト層8を成長させる工程におけるp/III比を0.0200以上とすることにより、p型コンタクト層8のホール濃度を確保しやすくなり、発光出力が向上する。同様の観点から、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるp/III比は、p型クラッド層7を成長させる工程におけるp/III比の15倍以上とすることが好ましい。これは、p型コンタクト層8は、p側電極12と電気的コンタクトをとるべく、p型クラッド層7よりも多くのホールが必要となるためである。また、p型コンタクト層8の結晶性を向上させ、p型コンタクト層8におけるホールの移動度を向上させる観点からは、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるp/III比を0.5以下とすることが好ましい。
【0045】
さらに、p型コンタクト層8を成長させる工程においては、V/III比を10000以上としてp型コンタクト層8を成長させる。p型コンタクト層8を成長させる工程におけるV/III比は、トリメチルアルミニウムとトリメチルガリウムとの合計流量[μmol/min]に対するアンモニアの流量[μmol/min]の割合である。p型コンタクト層8を成長させる工程においてV/III比を10000以上とすることにより、p型コンタクト層8の導電性を向上させることができる。この理由は、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるV/III比を10000以上とすることにより、p型不純物がIII族サイトに入りやすくなり、ホールが形成されやすくなるためであると推測される。同様の観点から、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるV/III比は、p型クラッド層7を成長させる工程におけるV/III比の2倍以上とすることが好ましい。この場合には、上下方向に直交する面方向におけるp型コンタクト層8の成長が促進され、p型コンタクト層8の表面が平坦になり、p型コンタクト層8とp側電極12との電気的コンタクトが一層取りやすくなるものと推測される。ここで、p型コンタクト層8を成長させる工程において、V/III比を過度に高くすると、p型コンタクト層8の成長工程において供給されるV族元素の原料ガスのうち、p型コンタクト層8の成長に寄与しないガスが増える。そのため、歩留まり低下を抑制する観点からは、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるV/III比を100000以下とすることが好ましい。
【0046】
その他の条件は、所望の性能を有する発光素子1を得るべく適宜調整することができる。一例として、p型コンタクト層8の成長温度は、例えば900℃以上1100℃以下とすることができる。
【0047】
なお、基板2上に半導体層をエピタキシャル成長させるに際しては、分子線エピタキシ法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)、ハイドライド気相エピタキシ法(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)等の他のエピタキシャル成長法を用いることも可能である。
【0048】
[第2の実施の形態]
本形態は、平均Al組成比が70%未満のp型クラッド層7を備えた発光素子1の製造方法に関する。まず、本形態の製造方法によって製造される発光素子1について説明する。
【0049】
(発光素子1)
本形態においては、第1の実施の形態と異なる構成につき説明する。なお、第2の実施の形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0050】
本形態において、p型クラッド層7の平均Al組成比は70%未満である。なお、p型クラッド層7の平均Al組成比は、好ましくは40%以上65%以下である。p型クラッド層7の平均Al組成比を40%以上とすることによって、電子のオーバーフローが生じることを抑制でき、p型クラッド層7の平均Al組成比を65%以下とすることによって、発光素子1の電気抵抗値を低減することができる。また、各井戸層53の平均Al組成比は、p型クラッド層7の平均Al組成比の35%未満であることが好ましい。p型クラッド層7の平均Al組成比が70%未満と比較的小さい場合は、p型クラッド層7において深紫外光のうちの短波長の光が吸収されやすくなる。そこで、井戸層53の平均Al組成比をp型クラッド層7の平均Al組成比の35%未満とすることで、活性層5から発される深紫外光の波長を長くでき、p型クラッド層7による短波長の深紫外光の吸収を抑制することができる。
【0051】
本形態の製造方法によって製造される発光素子1のその他の構成は、第1の実施の形態の製造方法によって製造される発光素子の構成と同様である。
【0052】
(発光素子1の製造方法)
次に、本形態における発光素子1の製造方法について説明する。本形態においては、第1の実施の形態と比べ、p型クラッド層7の成長工程及びp型コンタクト層8の成長工程が異なる。そのため、以下これらにつき説明する。
【0053】
(p型クラッド層7の成長工程)
p型クラッド層7を成長させる工程においては、成長速度を3.5nm/min以下としてp型クラッド層7を成長させる。特に、p型クラッド層7の平均Al組成比が70%未満の場合、p型クラッド層7の平均Al組成比が70%以上の場合と比べて、成長速度を比較的速くしてもp型コンタクト層8の表面の平坦化が可能である。すなわち、p型クラッド層7の平均Al組成比が70%未満の場合、p型クラッド層7の成長速度の上限値を3.5nm/minまで上げても、p型コンタクト層8の表面を平坦化することができる。同様の観点から、p型クラッド層7の成長速度の上限値は、3.4nm/minとすることがより好ましい。また、発光素子1の生産性の観点からは、p型クラッド層7の成長速度を0.2nm/min以上とすることが好ましい。
【0054】
そして、p型クラッド層7を成長させる工程においては、第1の実施の形態と同様、p/III比を0.0002以上0.0500以下、好ましくは0.0005以上0.0020以下としてp型クラッド層7を成長させる。
【0055】
さらに、p型クラッド層7を成長させる工程においては、V/III比を6000以下としてp型クラッド層7を成長させる。これにより、p型クラッド層7の成長工程においてV族元素の原料ガスの供給量が過剰となって歩留まりが低下することを抑制することができる。ここで、p型クラッド層7を成長させる工程におけるV/III比が大きい程、上下方向に直交する面方向におけるp型クラッド層7の成長が促進され、p型クラッド層7の平坦性が確保される。また、p型クラッド層7のAl組成比が低い程、p型クラッド層7の平坦性が確保されやすくなる。そのため、p型クラッド層7のAl組成比が比較的低い本形態においては、p型クラッド層7を成長させる工程におけるV/III比を6000以下としてもp型クラッド層7の平坦性を確保することが可能となる。p型クラッド層7を成長させる工程におけるV/III比は、2000以上4500以下とすることがより好ましい。V/III比を2000以上とすることにより、p型クラッド層7の導電性を向上させることができる。一方、V/III比が2000未満となると、p型クラッド層7を成長させる工程において供給されるアンモニアがすべてのNサイトを埋めることができず、形成されるp型クラッド層7においてN原子が存在しない箇所が残存しやすい。N原子が存在しない箇所が残存したp型クラッド層7上にさらに成膜を行うと、N原子が存在しない箇所がピットとなり、発光素子1への通電時にピットを起点としたリーク等が起こり、発光素子1の発光出力が低下する可能性が考えられる。また、V/III比を4500以下とすることで歩留まりの低下を一層抑制できる。
【0056】
(p型コンタクト層8の成長工程)
p型コンタクト層8を成長させる工程においては、成長速度を6.5nm/min以下としてp型コンタクト層8を成長させる。本形態のようにp型クラッド層7のAl組成比が70%未満の場合、p型コンタクト層8の成長速度の上限値を6.5nm/minまで上げでも、p型コンタクト層8の表面を平坦化することができる。また、p型コンタクト層8の表面を一層平坦化する観点から、p型コンタクト層8の成長速度は3.3nm/min以下とすることが好ましい。また、発光素子1の生産性の観点からは、p型コンタクト層8の成長速度を0.2nm/min以上とすることが好ましい。
【0057】
そして、p型コンタクト層8を成長させる工程においては、p/III比を0.0100以上としてp型コンタクト層8を成長させる。これにより、p型コンタクト層8のホール濃度を確保しやすくなり、発光出力が向上する。ここで、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるp/III比が高いほど、上下方向に直交する面方向におけるp型コンタクト層8の成長が促進され、p型コンタクト層8の平坦性が確保される。また、p型クラッド層7のAl組成比が小さい程、p型クラッド層7及びp型コンタクト層8の平坦性が確保されやすくなる。そのため、p型クラッド層7のAl組成比が比較的低い本形態においては、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるp/III比の下限値を0.0100と小さくしても、p型コンタクト層8の平坦性を確保することができる。また、p型コンタクト層8のホール濃度を確保する観点から、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるp/III比は、p型クラッド層7を成長させる工程におけるp/III比の10倍以上とすることが好ましい。これは、p型コンタクト層8は、p側電極12と電気的コンタクトをとるべく、p型クラッド層7よりも多くのホールが必要となるためである。また、p型クラッド層7のAl組成比が比較的低い本形態においては、p型クラッド層7にp型不純物が多くドーピングされることを考慮し、前述のごとく、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるp/III比は、p型クラッド層7を成長させる工程におけるp/III比の10倍以上あることが好ましい。また、p型コンタクト層8の結晶性を向上させ、p型コンタクト層8におけるホールの移動度を向上させる観点からは、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるp/III比を0.5以下とすることが好ましい。
【0058】
さらに、p型コンタクト層8を成長させる工程においては、V/III比を3000以上としてp型コンタクト層8を成長させる。これにより、p型コンタクト層8の導電性を向上させることができる。この理由は、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるV/III比を3000以上とすることにより、p型不純物がIII族サイトに入りやすくなり、ホールが形成されやすくなるためであると推測される。同様の観点から、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるV/III比は、p型クラッド層7を成長させる工程におけるV/III比を超えることが好ましい。この場合には、上下方向に直交する面方向におけるp型コンタクト層8の成長が促進され、p型コンタクト層8の表面が平坦になり、p型コンタクト層8とp側電極12との電気的コンタクトが一層取りやすくなるものと推測される。また、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるV/III比が高いほど、上下方向に直交する面方向におけるp型コンタクト層8の成長が促進され、p型コンタクト層8の平坦性が確保される。また、p型クラッド層7のAl組成比が小さい程、p型クラッド層7及びp型コンタクト層8の平坦性が確保されやすくなる。以上を考慮し、p型クラッド層7のAl組成比が比較的低い本形態においては、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるV/III比を、p型クラッド層7を成長させる工程におけるV/III比を超える値とすることで、p型コンタクト層8の平坦性を確保することができる。ここで、p型コンタクト層8を成長させる工程において、V/III比を過度に高くすると、p型コンタクト層8の成長工程において供給されるV族元素の原料ガスのうち、p型コンタクト層8の成長に寄与しないガスが増える。そのため、歩留まり低下を抑制する観点からは、p型コンタクト層8を成長させる工程におけるV/III比を100000以下とすることが好ましい。
【0059】
[実験例]
本実験例は、p型クラッド層の平均Al組成比が70%以上の発光素子を第1の実施の形態の製造条件に従って製造し、かつ、p型クラッド層の平均Al組成比が70%未満の発光素子を第2の実施の形態に記載の製造条件に従って製造することで、製造される発光素子のp型コンタクト層の表面が平坦化することを示す実験例である。
【0060】
本実験例においては、比較例1~3、及び実施例1~5にかかる発光素子を製造した。比較例1,2及び実施例1,2は、第1の実施の形態と同様にp型クラッド層の平均Al組成比が70%以上の発光素子である。比較例1,2及び実施例1,2は、互いに構造は同様であるが、互いにp型コンタクト層の成膜条件が異なる。比較例3及び実施例3~5は、第2の実施の形態と同様にp型クラッド層の平均Al組成比が70%未満の発光素子である。比較例3及び実施例3~5は、互いに構造は同様であるが、互いにp型コンタクト層の成膜条件が異なる。
【0061】
比較例1,2及び実施例1,2について、各層の厚み及びAl組成比を下記表1に示す。また、p型クラッド層の平均Al組成比が70%未満の発光素子にかかる比較例3及び実施例3~5について、各層の厚み及びAl組成比を下記表2に示す。なお、表1及び表2に記載の各層の厚みは、透過型電子顕微鏡によって測定し、各層のAl組成比は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定したAlの二次イオン強度から推定した値である。
【0062】
【0063】
【0064】
表1及び表2において、組成傾斜障壁層のAl組成比の欄は、組成傾斜障壁層の上下方向の各位置のAl組成比が、組成傾斜障壁層の下端から上端までにかけて55%から85%まで漸増していることを意味している。また、表1のp型コンタクト層の厚みの欄は、比較例1,2及び実施例1,2のそれぞれのp型コンタクト層の厚みが14.4nm以上24.1nm以下の範囲であることを意味している。比較例1,2及び実施例1,2のそれぞれのp型コンタクト層の厚みの詳細は、後述の表3に示す。また、表2のp型コンタクト層の厚みの欄は、比較例3及び実施例3~5のそれぞれのp型コンタクト層の厚みが18.3nm以上19.6nm以下を満たしていることを意味している。比較例3及び実施例3~5のそれぞれのp型コンタクト層の厚みの詳細は、後述の表3にて示す。
【0065】
そして、各比較例及び各実施例のp型クラッド層及びp型コンタクト層の成膜条件を下記表3に示す。また、下記表3においては、各比較例及び各実施例における後述のリーク・ショート発生割合を併せて示している。
【0066】
【0067】
表3に示すごとく、実施例1,2においては、p型コンタクト層の成膜に関し、第1の実施の形態にて示した条件(すなわち、成長速度が3.3nm/min以下、p/III比が0.0200以上、及びV/III比が10000以上の条件)を満たしている。一方、比較例1,2においては、p型コンタクト層の成膜に関し、成長速度、p/III比、及びV/III比のそれぞれが、第1の実施の形態にて示した前述の条件を満たしていない。また、比較例1,2及び実施例1,2のそれぞれは、p型クラッド層の成膜に関し、いずれも第1の実施の形態にて示した条件(すなわち成長速度が2.5nm/min以下、p/III比が0.0002以上0.0400以下、及びV/III比が7000以下の条件)を満たしている。なお、比較例1,2及び実施例1,2におけるp型コンタクト層以外の成膜条件は、第1の実施の形態における製造条件と同様である。
【0068】
また、表3に示すごとく、実施例3~5においては、p型コンタクト層の成膜に関し、第2の実施の形態にて示した条件(すなわち、成長速度が6.5nm/min以下、p/III比が0.0100以上、及びV/III比が3000以上の条件)を満たしている。一方、比較例3においては、p型コンタクト層の成膜に関し、成長速度、p/III比、及びV/III比のそれぞれが、第2の実施の形態にて示した前述の条件を満たしていない。また、比較例3及び実施例3~5のそれぞれは、p型クラッド層の成膜に関し、いずれも第2の実施の形態にて示した条件(すなわち成長速度が3.5nm/min以下、p/III比が0.0002以上0.0500以下、及びV/III比が6000以下の条件)を満たしている。比較例3及び実施例3~5におけるp型コンタクト層以外の成膜条件は、第2の実施の形態における製造条件と同様である。
【0069】
そして、製造された各比較例及び各実施例の発光素子において、リーク・ショート発生割合を測定した。p型コンタクト層の表面の平坦性が低い程、p型コンタクト層とp側電極との密着性が低くなってリーク・ショートが発生しやすくなるため、本実験例においては、リーク・ショート発生割合をp型コンタクト層の表面状態を示す指標として用いた。リーク・ショート発生割合は、その値が低い程、p型コンタクト層の表面が平坦であることを意味する。
【0070】
各比較例及び各実施例の発光素子のリーク・ショート発生割合の測定方法につき説明する。まず、各比較例及び各実施例において、第1の実施の形態にて示したように、n型クラッド層上にn側電極を形成するとともにp型コンタクト層上にp側電極を形成した。そして、n側電極とp側電極との間の順方向電圧を測定し、順方向電圧が3V以下となった場合は、リーク・ショートが発生しているものと判断した。本実験例においては、比較例1~3及び実施例1~5につき、それぞれ1000個以上の発光素子を製作し、リーク・ショート発生割合を測定した。結果は表3に示している。
【0071】
表3から分かるように、p型クラッド層の平均Al組成比が70%以上の場合、比較例1,2においてはリーク・ショート発生割合が高くなっている一方、実施例1,2においてはリーク・ショート発生割合が低くなっている。すなわち、第1の実施の形態にて説明したp型クラッド層及びp型コンタクト層の製造方法に従って発光素子を製造することにより、リーク・ショート発生割合を抑制できていることが分かる。また、p型クラッド層の平均Al組成比が70%以上の場合、実施例2が最もリーク・ショート発生割合が低いことから、p型コンタクト層の成長速度を3.0nm/min未満とすることが好ましく、1.6nm/min以下とすることがより好ましいことが分かる。
【0072】
また、表3から分かるように、p型クラッド層の平均Al組成比が70%未満の場合、比較例3においてはリーク・ショート発生割合が高くなっている一方、実施例3~5においてはリーク・ショート発生割合が低くなっている。すなわち、第2の実施の形態にて説明したp型クラッド層及びp型コンタクト層の製造方法に従って発光素子を製造することにより、リーク・ショート発生割合を抑制できていることが分かる。また、p型クラッド層の平均Al組成比が70%未満の場合、実施例4及び5においてリーク・ショート発生割合を著しく抑制できていることから、p型コンタクト層の成長速度を3.3nm/min以下とすることが好ましいことが分かる。また、実施例4よりも実施例5の方がリーク・ショート発生割合を低くできるため、p型コンタクト層の成長速度を3.0nm/min未満とすることが好ましく、1.70nm/min以下とすることがより好ましいことが分かる。
【0073】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0074】
[1]本発明の第1の実施態様は、基板(2)上にn型半導体層(4)を成長させる工程と、前記n型半導体層(4)上に活性層(5)を成長させる工程と、前記活性層(5)上に、厚さ方向におけるAl組成比の平均値が70%以上のp型クラッド層(7)を成長させる工程と、前記p型クラッド層(7)上に、Al組成比が10%以下のp型コンタクト層(8)を成長させる工程と、を備える窒化物半導体発光素子(1)の製造方法であって、前記p型クラッド層(7)及び前記p型コンタクト層(8)のそれぞれを成長させる工程において、III族元素の原料ガスの流量FIII[μmol/min]に対するp型不純物の原料ガスの流量Fp[μmol/min]の比率Fp/FIIIをp/III比と定義するとともに、前記流量FIIIに対するV族元素の原料ガスの流量Fv[μmol/min]の比率Fv/FIIIをV/III比と定義したとき、前記p型クラッド層(7)を成長させる工程においては、成長速度を2.5nm/min以下、p/III比を0.0002以上0.0400以下、及びV/III比を7000以下として前記p型クラッド層(7)を成長させ、前記p型コンタクト層(8)を成長させる工程においては、成長速度を3.3nm/min以下、p/III比を0.0200以上、V/III比を10000以上として前記p型コンタクト層(8)を成長させる、窒化物半導体発光素子(1)の製造方法である。
これにより、p型コンタクト層の表面が平坦な窒化物半導体発光素子(1)を製造することが可能となる。
【0075】
[2]本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様において、前記p型クラッド層(7)を成長させる工程で、p/III比を0.0005以上0.0015以下として前記p型クラッド層(7)を成長させることである。
これにより、発光出力が高い窒化物半導体発光素子を製造することが可能となる。
【0076】
[3]本発明の第3の実施態様は、第1又は第2の実施態様において、前記p型クラッド層(7)を成長させる工程で、V/III比を2000以上6500以下として前記p型クラッド層(7)を成長させることである。
これにより、高い導電性を有するp型クラッド層を製造することが可能になり、かつ、歩留まりの低下を抑制することができる。
【0077】
[4]本発明の第4の実施態様は、第1乃至第3のいずれか1つの実施態様において、前記p型コンタクト層(8)を成長させる工程で、成長速度を1.6nm/min以下として前記p型コンタクト層(8)を成長させることである。
これにより、p型コンタクト層の表面がより平坦な窒化物半導体発光素子を製造することが可能となる。
【0078】
[5]本発明の第5の実施態様は、第1乃至第4のいずれか1つの実施態様において、前記p型コンタクト層(8)を成長させる工程で、p/III比を、前記p型クラッド層(7)を成長させる工程におけるp/III比の15倍以上として前記p型コンタクト層(8)を成長させることである。
これにより、発光出力が高い窒化物半導体発光素子を製造することが可能となる。
【0079】
[6]本発明の第6の実施態様は、第1乃至第5のいずれか1つの実施態様において、前記p型コンタクト層(8)を成長させる工程で、V/III比を、前記p型クラッド層(7)を成長させる工程におけるV/III比の2倍以上として前記p型コンタクト層(8)を成長させることである。
これにより、高い導電性を有するp型コンタクト層を製造することが可能となる。
【0080】
[7]本発明の第7の実施態様は、基板(2)上にn型半導体層(4)を成長させる工程と、前記n型半導体層(4)上に活性層(5)を成長させる工程と、前記活性層(5)上に、Al組成比が70%未満のp型クラッド層(7)を成長させる工程と、前記p型クラッド層(7)上に、Al組成比が10%以下のp型コンタクト層(8)を成長させる工程と、を備える窒化物半導体発光素子(1)の製造方法であって、前記p型クラッド層(7)及び前記p型コンタクト層(8)のそれぞれを成長させる工程において、III族元素の原料ガスの流量FIII[μmol/min]に対するp型不純物の原料ガスの流量Fp[μmol/min]の比率Fp/FIIIをp/III比と定義するとともに、前記流量FIIIに対するV族元素の原料ガスの流量Fv[μmol/min]の比率Fv/FIIIをV/III比と定義したとき、前記p型クラッド層(7)を成長させる工程においては、成長速度を3.5nm/min以下、p/III比を0.0002以上0.0500以下、及びV/III比を6000以下として前記p型クラッド層(7)を成長させ、前記p型コンタクト層(8)を成長させる工程においては、成長速度を6.5nm/min以下、p/III比を0.0100以上、V/III比を3000以上として前記p型コンタクト層(8)を成長させる、窒化物半導体発光素子(1)の製造方法である。
これにより、p型コンタクト層の表面が平坦な窒化物半導体発光素子を製造することが可能となる。
【0081】
[8]本発明の第8の実施態様は、第7の実施態様において、前記p型クラッド層(7)を成長させる工程で、p/III比を0.0005以上0.0020以下として前記p型クラッド層(7)を成長させることである。
これにより、発光出力が高い窒化物半導体発光素子を製造することが可能となる。
【0082】
[9]本発明の第9の実施態様は、第7又は第8の実施態様において、前記p型クラッド層(7)を成長させる工程で、V/III比を2000以上4500以下として前記p型クラッド層(7)を成長させることである。
これにより、高い導電性を有するp型クラッド層を製造することが可能になり、かつ、歩留まりの低下を抑制することができる。
【0083】
[10]本発明の第10の実施態様は、第7乃至第9のいずれか1つの実施態様において、前記p型コンタクト層(8)を成長させる工程で、成長速度を3.3nm/min以下として前記p型コンタクト層(8)を成長させることである。
これにより、p型コンタクト層の表面がより平坦な窒化物半導体発光素子を製造することが可能となる。
【0084】
[11]本発明の第11の実施態様は、第7乃至第10のいずれか1つの実施態様において、前記p型コンタクト層(8)を成長させる工程で、p/III比を、前記p型クラッド層(7)を成長させる工程におけるp/III比の10倍以上として前記p型コンタクト層(8)を成長させることである。
これにより、発光出力が高い窒化物半導体発光素子を製造することが可能となる。
【0085】
[12]本発明の第12の実施態様は、第7乃至第11のいずれか1つの実施態様において、前記p型コンタクト層(8)を成長させる工程で、V/III比を、前記p型クラッド層(7)を成長させる工程におけるV/III比を超える値として前記p型コンタクト層(8)を成長させることである。
これにより、高い導電性を有するp型コンタクト層を製造することが可能となる。
【0086】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1…発光素子
2…基板
4…n型クラッド層(n型半導体層)
5…活性層
7…p型クラッド層
8…p型コンタクト層