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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】電池容器
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/107 20210101AFI20230830BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20230830BHJP
   H01M 50/152 20210101ALI20230830BHJP
   H01M 50/159 20210101ALI20230830BHJP
   H01M 50/167 20210101ALI20230830BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20230830BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20230830BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20230830BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20230830BHJP
【FI】
H01M50/107
H01M50/119
H01M50/152
H01M50/159
H01M50/167
H01M50/586
H01M50/591 101
H01M10/04 W
H01M10/0587
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022058953
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2023-05-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390003193
【氏名又は名称】東洋鋼鈑株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 具実
(72)【発明者】
【氏名】藍原 武志
(72)【発明者】
【氏名】瀬上 幸太
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 興
(72)【発明者】
【氏名】大堀 圭
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-95341(JP,A)
【文献】特開2015-176646(JP,A)
【文献】特開2021-160745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 50/50-50/598
H01M 10/00-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の缶胴と缶蓋とを備え、
有底筒状に成形された前記缶胴の開口周縁部に、前記缶蓋の周縁部が接合され、
前記缶胴の底部が、容器外方に凸又は容器内方に凸の湾曲面を含むように成形され、
前記缶蓋が、容器内方に凸又は容器外方に凸であり、かつ、前記底部の湾曲面に成形された部位と同様に湾曲する湾曲面を含むように成形されていることを特徴とする電池容器。
【請求項2】
前記缶胴と前記缶蓋とが二重巻締によって接合される請求項1に記載の電池容器。
【請求項3】
前記缶胴の開口周縁部の端部側と、前記缶蓋の周縁部の端部側との少なくともいずれか一方に折り返し部が形成されている請求項2に記載の電池容器。
【請求項4】
前記缶胴と前記缶蓋とが電気的に絶縁された状態で接合される請求項1~3のいずれか一項に記載の電池容器。
【請求項5】
等幅に形成された正極材、負極材、及びセパレータが、セパレータ/負極材/セパレータ/正極材、又はセパレータ/正極材/セパレータ/負極材の順に重ねられ、幅方向の両端を揃えて重ねられた前記セパレータに対して、幅方向の一端側に前記正極材がずらされるとともに、幅方向の他端側に前記負極材がずらされた状態で巻き取られてなり、一方の巻取端面が前記缶胴の前記底部の湾曲面に対応して湾曲し、他方の巻取端面が前記缶蓋の湾曲面に対応して湾曲する電池要素が封入される請求項4に記載の電池容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池要素が封入される電池容器に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池に代表される二次電池は、一般に、正極集電体に正極活物質が積層された正極材、負極集電体に負極活物質が積層された負極材、及び電解液が含浸されたセパレータを電池要素とし、これらが種々の容器に封入された構造とされている。
【0003】
例えば、特許文献1は、樹脂層が設けられたステンレス鋼板からなる二枚の外装材を接合部で貼り合わせて、かかる外装材に設けられた収容部に電池要素を封入してなる電池を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-94374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の電池にあっては、充放電を行ったりする際に、温度の上昇や電池要素からガスが発生するなどして、容器内の圧力が上昇してしまうことがある。そのような場合に、内圧上昇によって容器が変形してしまうのは好ましくない。
【0006】
本発明者らは、このような事情に鑑みて、内圧が上昇しても変形し難い電池容器を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電池容器は、金属製の缶胴と缶蓋とを備え、有底筒状に成形された前記缶胴の開口周縁部に、前記缶蓋の周縁部が接合され、前記缶胴の底部が、容器外方に凸又は容器内方に凸の湾曲面を含むように成形され、前記缶蓋が、容器内方に凸又は容器外方に凸であり、かつ、前記底部の湾曲面に成形された部位と同様に湾曲する湾曲面を含むように成形されている構成としてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内圧が上昇しても変形し難い電池容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る電池容器の概略を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る電池容器の概略を示す平面図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4】電池要素の一例を模式的に示す説明図である。
図5】接合される前の缶胴と缶蓋の一例を示す説明図である。
図6】二重巻締工程の一例を示す説明図である。
図7】二重巻締工程の他の一例を示す説明図である。
図8】電池容器の内部圧力P[MPa]に対する缶蓋の中央部の鉛直方向の変位δ[mm]を示すグラフである。
図9】電池容器の内部圧力P[MPa]に対する底部の中央部の鉛直方向の変位δ[mm]を示すグラフである。
図10】電池容器と電池要素との接触状態の一例について、断面の一部を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
[電池容器]
図1は、本実施形態に係る電池容器の概略を示す正面図であり、図2は、同平面図、図3は、図2のA-A断面図である。
これらの図に示す電池容器1は、金属製の缶胴2と缶蓋3とを備え、有底筒状に成形された缶胴2の開口部周縁に、缶蓋3の周縁部を接合することによって、電池要素10が封入されるように構成されている。
なお、図3では、電池容器1に封入される電池要素10の図示を省略している。
【0012】
電池要素10の詳細については後述するが、缶胴2と缶蓋3は、電池要素10に含まれる電解液に対する耐腐食性などを考慮して、必要に応じて、ニッケルめっき処理、スズめっき処理、亜鉛メッキ処理などの表面処理が施された金属板を用いて成形するのが好ましい。金属板としては、例えば、スチール、ティンフリースチール、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金又はその他の合金、異種金属の積層によるクラッド板などからなる金属板を用いることができる。缶胴2と缶蓋3は、このような金属板を用いて、プレス加工、DI(Draw&Ironing)加工などによって、それぞれ所望の形状に成形することができる。缶胴2と缶蓋3は、同種の金属板を用いて成形してもよく、異種の金属板を用いて成形してもよい。異種の金属板を用いる場合、例えば、リチウムイオン電池において、正極となる缶蓋3(又は缶胴2)が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるのが好ましく、負極となる缶胴2(又は缶蓋3)が、表面処理を施されたスチールからなるのが好ましく、特にニッケルめっき処理を含む表面処理を施されたスチールからなるのが好ましい。
【0013】
図示する例において、缶胴2は、底部21と、底部21の周縁から立ち上がる側壁部22とを含む有底筒状に成形されるとともに、底部21が、容器外方に凸の湾曲面を含むように成形されている。
【0014】
このような湾曲面を含むように底部21を成形するにあたり、底部21は、曲率半径が一定の球面状、又は部位によって曲率半径が変化する非球面状に形成してもよく、球面状又は非球面状に形成された湾曲面を含む円錐台形状に成形してもよい。湾曲面の曲率半径は、用いる金属板の種類、板厚にもよるが、好ましくは35~300mmであり、より好ましくは50~100mmである。特に図示しないが、底部21は、容器内方に凸の湾曲面を含むように成形することもできる。
【0015】
また、底部21が、容器外方に凸の湾曲面を含むように成形されている場合には、底部21を下にして電池容器1を載置する際の安定性を考慮して、底部21の中央部の所定の範囲を平面状に成形したり、底部21を糸底形状21aとするなどして、底部21の一部に内側に凸となる凹部を成形したりすることもできる。
【0016】
一方、缶蓋3は、容器内方に凸であり、かつ、缶胴2の底部21の湾曲面に成形された部位と同様に湾曲する湾曲面を含むように成形されている。
ここで、「同様に湾曲する」とは、缶蓋3の湾曲面に成形された部位と、缶胴2の底部21の湾曲面に成形された部位とが、完全に一致するように湾曲していることまでは要求されず、缶蓋3を缶胴2に接合した状態で、缶蓋3と、缶胴2の底部21の湾曲面に成形された部位との間の間隔Sが、加工精度の範囲内で略等間隔となるように、缶蓋3の湾曲面に成形された部位が湾曲していればよいという意味に解するものとする。
【0017】
また、図示するように、缶蓋3の中央部3aは、平面状に形成してもよい。特に図示しないが、底部21が、容器内方に凸の湾曲面を含むように成形される場合には、缶蓋3は、容器外方に凸の湾曲面を含むように成形することができる。
【0018】
[電池要素]
次に、電池容器1に封入される電池要素10の一例について説明する。
図4に、電池要素10の一例を模式的に示すに、電池要素10は、例えば、正極集電体に正極活物質が積層された正極材11、負極集電体に負極活物質が積層された負極材12、及び電解液が含浸されるセパレータ13を長尺な帯状に形成し、これらを捲回機にセットして、セパレータ13/負極材12/セパレータ13/正極材11の順に重ねて、巻芯に巻き取ることによって作製することができる。
なお、図4では、電池要素10の巻き取られた終端側の一部を切り欠いて示している。電池要素10は、セパレータ13/正極材11/セパレータ13/負極材12の順に重ねられてもよい。
【0019】
正極材11、負極材12、及びセパレータ13は、通常、等幅に形成されるが、図4に示す電池要素10の一例にあっては、幅方向の両端を揃えて重ねられたセパレータ13に対して、幅方向の一端側に正極材11が数mm程度ずらされるとともに、幅方向の他端側に負極材12が数mm程度ずらされた状態で巻き取られている。これにより、セパレータ13によって隔てられた状態が維持されたまま、電池要素10の一方の巻取端面(図4において、下側の巻取端面)側に負極材12が突出し、電池要素10の他方の巻取端面(図4において、上側の巻取端面)側に正極材11が突出するようにしている。
【0020】
そして、このようにして正極材11、負極材12、及びセパレータ13を巻き取る際に、これらを巻芯の軸方向の一方側に徐々に偏らせていくことによって(すなわち、巻きずれを意図的に制御することによって)、電池要素10の一方の巻取端面が、缶胴2の底部21の湾曲面に対応して湾曲し、電池要素10の他方の巻取端面が、缶蓋3の湾曲面に対応して湾曲するように、巻き取られるようにしている。
【0021】
ここで、図4に示す電池要素10の一例では、巻芯が抜かれた中央部10aが中空状になっている。
【0022】
このようにして作製された電池要素10は、缶胴2に収容されて、適量の電解液を注入してセパレータ13に含浸させてから、缶蓋3を缶胴2に接合することによって、電池容器1に封入される。その際、図10に部分的に示すように、電池要素10の一方の巻取端面側に突出する負極材12の端縁12aが屈曲して、缶胴2の底部21の傾斜に沿って圧着されるとともに、電池要素10の他方の巻取端面側に突出する正極材11の端縁11aが屈曲して、缶蓋3の傾斜に沿って圧着された状態で、電池要素10が電池容器1内に固定されるように各部の寸法などを適宜調整する。特に、電池要素10の厚み(巻取端面間の距離)に応じて、缶蓋3と缶胴2の底部21との間の間隔Sを適宜調整する(図10(b)参照)。このようにして、図4に一例として示す電池要素10を電池容器1に封入することによって、一方の巻取端面側に突出する負極材12が缶胴2と十分な導通面積を以て電気的に接続され、他方の巻取端面側に突出する正極材11が缶蓋3と十分な導通面積を以て電気的に接続されて、缶胴2側が負極、缶蓋3側が正極の電池が構築される。
【0023】
なお、電池要素10を構成する正極集電体、負極集電体、正極活物質、負極活物質、電解液、セパレータは、この種の電池に用いられるものから適宜選択することができ、必要に応じて、缶胴2側が正極、缶蓋3側が負極となるように、電池要素10を作製する際の巻き取り方を変更できるのはいうまでもない。
【0024】
[接合構造]
次に、缶胴2に缶蓋3を接合する接合構造について説明する。
【0025】
前述したようにして、図4に一例として示す電池要素10を電池容器1に封入して、缶胴2側が負極、缶蓋3側が正極の電池が構築されるようにする場合、缶胴2と缶蓋3とが電気的に絶縁された状態で接合されることが求められる。
【0026】
このような場合には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの絶縁性の樹脂材料を用いて、缶胴2と缶蓋3とを接合した際に互いに接触する部位に、絶縁層20,30を形成するのが好ましい(図6図7参照)。これらの樹脂材料などからなる絶縁フィルムを、缶胴2と缶蓋3との接合部に挟み込むことによって、缶胴2と缶蓋3とが電気的に絶縁された状態で接合されるようにしてもよい。
【0027】
また、図5に、接合される前の缶胴2と缶蓋3の一例を示すように、缶胴2は、その開口周縁部に、外側に広がったフランジ部23が形成されるように成形することができる。一方、缶蓋3は、缶胴2に形成されたフランジ部23にかぶさるような形状を有するカール部31が、その周縁部に形成されるように成形することができる。そして、缶胴2に缶蓋3を接合するには、缶胴2のフランジ部23と、缶蓋3のカール部31とを、図6に示すように巻き締めることによって、それぞれが二重に折り返された状態で圧着される二重巻締によって、缶胴2と缶蓋3とが接合されるようにするのが好ましい。
なお、図5には、接合される前の缶胴2と缶蓋3のそれぞれの縦断面を示している。
【0028】
図6は、二重巻締工程の一例を示す説明図であり、缶胴2のフランジ部23と、缶蓋3のカール部31とを巻き締めるには、まず、缶胴2のフランジ部23の上に、缶蓋3のカール部31をかぶせた状態で(図6(a)参照)、図示しないファースト巻締ロールを用いてファースト巻締めを行う。その際、缶胴2の径方向内側に向かって、缶胴2のフランジ部23が折り返されていくとともに、その折り返された内側に、缶蓋3のカール部31が巻き込まれていく(図6(b)参照)。次いで、図示しないセカンド巻締ロールを用いてセカンド巻締めを行い、折り返された缶胴2のフランジ部23の内側に、缶蓋3のカール部31が巻き込まれた状態で、これらを圧着することによって二重巻締が完了する(図6(c)参照)。
【0029】
また、図6に示す一例のようにして、缶胴2のフランジ部23と、缶蓋3のカール部31とを巻き締める際には、図6(b)に矢印で示すように、缶胴2のフランジ部23の端面が、缶蓋3のカール部31に形成された絶縁層30に食い込んで、当該絶縁層30を破壊してしまったり、缶蓋3のカール部31の端面が、缶胴2のフランジ部23に形成された絶縁層20に食い込んで、当該絶縁層20を破壊してしまったりすることが懸念される。
【0030】
このような不具合が懸念される場合、例えば、缶胴2のフランジ部23の端面によって、缶蓋3のカール部31に形成された絶縁層30が破壊されることが懸念される場合には、フランジ部23の端部側、すなわち、缶胴2の開口周縁部の端部側に、折り返し部23aを形成しておくのが好ましい。缶蓋3のカール部31の端面によって、缶胴2のフランジ部23に形成された絶縁層20が破壊されることが懸念される場合には、カール部31の端部側、すなわち缶蓋3の周縁部の端部側に、折り返し部31aを形成しておくのが好ましい。かかる折り返し部23a,31aは、フランジ部23とカール部31のそれぞれの端部側を180°に折り返した後に平らに押しつぶす、ヘミング曲げとも呼ばれる加工方法によって、端部が丸められるように形成することができる。
【0031】
図7に、缶胴2のフランジ部23の端部側と、缶蓋3のカール部31の端部側との両方に折り返し部23a,31aを形成して、これらを巻き締める二重巻締工程の一例を示す。このような一例によれば、缶胴2のフランジ部23と、缶蓋3のカール部31とは、それぞれの端部が、折り返し部23a,31aによって丸められているため、二重巻締に際して、互いの絶縁層20,30を破壊してしまったりすることを有効に回避することができる。
【0032】
このように、缶胴2の開口周縁部の端部側と、缶蓋3の周縁部の端部側との少なくともいずれか一方に、必要に応じて、折り返し部23a,31aを形成しておくことによって、二重巻締に際して、互いの絶縁層20,30を破壊してしまったりすることを有効に回避することができる。折り返し部23a,31aを形成するにあたり、その折り返す方向は、図7に示す一例とは逆向きであってもよい。
【0033】
また、このような折り返し部23a,31aを形成する場合には、折り返されたフランジ部23の端面やカール部31の端面が露出することなく、折り返し部23a,31aの全体が絶縁層20,30で覆われるように、折り返し部23a,31aを形成した後に、絶縁層20,30を形成するのが好ましい。
【0034】
なお、缶胴2と缶蓋3との接合部には、密封性を高めたり、接合強度を高めたりするなどの目的で、シーリングコンパウンドや嫌気性接着剤などを塗工しておくこともできる。
【0035】
以上のような本実施形態によれば、缶胴2の底部21が、容器外方に凸又は容器内方に凸の湾曲面を含むように成形されているとともに、缶蓋3が、容器内方に凸又は容器外方に凸であり、かつ、缶胴2の底部21の湾曲面に成形された部位と同様に湾曲する湾曲面を含むように成形されていることによって、内圧が上昇しても変形し難い電池容器1を提供することができる。
【0036】
また、本実施形態における電池容器1は、図4に一例として示す電池要素10を封入して電池を構築する用途に、特に好適に用いることができる。例えば、前述したようにして、封入された電池要素10の一方の巻取端面側に突出する負極材12と缶胴2とを電気的に接続し、他方の巻取端面側に突出する正極材11と缶蓋3とを電気的に接続することによって電池を構築した場合には、内圧上昇によって、缶胴2の底部21や缶蓋3が膨らむように変形してしまうと、負極材12と缶胴2との間の通電効率が低下してしまったり、正極材11と缶蓋3との間の通電効率が低下してしまったりするが、本実施形態によれば、そのような不具合を有効に回避することができる。
【0037】
また、本実施形態における電池容器1は、例えば、缶胴2側が負極、缶蓋3側が正極の電池として構築した場合に、一方の電池容器1の缶蓋3と他方の電池容器1の缶胴2の底部21とが接するように複数の電池容器1を積み重ねて、直列に接続した状態で使用することもできる。そのような場合に、容器外方に凸の湾曲面を含むように底部21を成形するとともに、底部21の中央部を糸底形状21aに成形し、これに対向する缶蓋3の接合部を除く部位を容器内方に凸の湾曲面に成形することで、積み重ねられた一方の電池容器1の缶蓋3と、他方の電池容器1の底部21の糸底形状21aに成形された部位との間に空隙が形成されるようにすることができる。
【0038】
このようにして、積み重ねられた電池容器1の間に空隙が形成されることにより、次のような利点もある。すなわち、電池容器1には、容器内の圧力が過度に上昇したときに、圧を逃がすための安全弁を設けるのが好ましいが、底部21の中央部に糸底形状21aに成形された部位の内側凹部に、そのような安全弁を設けることによって、その動作を妨げることなく、当該空隙を介して過度に上昇した内圧を有効に逃がすことができる。安全弁としては、例えば、溝状のスコア部を底部21の中央部に糸底形状21aに成形された部位の内側凹部に刻設しておき、容器内の圧力が過度に上昇したときに、当該スコア部が破断して圧を逃がすように構成することができる。
【実施例
【0039】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0040】
[実施例1]
表面にニッケルめっき処理が施されたスチール板(ニッケルめっき鋼板)を用いて、缶胴2と缶蓋3を成形した。缶胴2の底部21は、容器外方に凸の湾曲面を含むように成形し、当該湾曲面を半径60mmの球面に成形した。底部21の厚みは、0.200mmであった。缶蓋3は、容器内方に凸の湾曲面を含むように成形し、当該湾曲面を缶胴2の底部21と同様の半径60mmの球面に成形した。缶蓋3の厚みは、0.300mmであった。
次いで、缶胴2の開口周縁部に、缶蓋3の周縁部を二重巻締によって接合した。缶胴2に缶蓋3が接合された電池容器1の直径は約66mm、高さは約20mmであった。
【0041】
缶胴2に缶蓋3が接合された電池容器1を水平に設置するとともに、缶胴2の底部21の中央部に、エアコンプレッサーに接続されたホースを気密に接続し、電池容器1の内部圧力P[MPa]に対する缶蓋3の中央部の鉛直方向の変位δ[mm]を測定した。その結果を図8に示す。
【0042】
同様に、缶胴2に缶蓋3が接合された電池容器1を水平に設置するとともに、缶蓋3の中央部に、エアコンプレッサーに接続されたホースを気密に接続し、電池容器1の内部圧力P[MPa]に対する底部21の中央部の鉛直方向の変位δ[mm]を測定した。その結果を図9に示す。
【0043】
また、缶胴2と缶蓋3との接合部から缶蓋3がめくれはじめるまで(缶蓋3がバックリングするまで)、内部圧力Pを高めていったところ、1.88MPaまで耐えることができた。
【0044】
[比較例1]
缶胴の底部を平面状に成形し、缶蓋の接合部を除く部位を平面状に成形した以外は、実施例1と同様に成形された缶胴と缶蓋とを二重巻締によって接合した。
【0045】
実施例1と同様にして、内部圧力P[MPa]に対する缶蓋の中央部の鉛直方向の変位δ[mm]を測定した。その結果を図8に示す。
【0046】
実施例1と同様にして、内部圧力P[MPa]に対する底部の中央部の鉛直方向の変位δ[mm]を測定した。その結果を図9に示す。
【0047】
実施例1と同様にして缶蓋がバックリングするまで内部圧力Pを高めていったところ、0.59MPaで缶蓋のバックリングが認められた。
【0048】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0049】
例えば、前述した実施形態では、平面視した形状が円形状とされた電池容器1の例を図示して説明したが、電池容器1は、必要に応じて、平面視した形状が四角形状などの多角形状とすることもできる。
【0050】
また、電池容器1に封入される電池要素10は、図4に示す一例には限定されない。例えば、等幅に形成された正極材11、負極材12、及びセパレータ13が、それぞれの幅方向の両端を揃えて重ねられた状態で巻き取られてなり、正極材11に接続されたタブと、負極材12に接続されたタブとが、電池容器1の外側に引き出されて、正極端子、又は負極端子となるように構成された電池要素が封入されるようにしてもよい。このような電池要素を封入する場合には、缶胴2と缶蓋3とが電気的に絶縁された状態で接合される必要はない。さらに、正極材11に接続されたタブと、負極材12に接続されたタブとが、それぞれ缶蓋3(又は缶胴2)と、缶胴2(又は缶蓋3)とに接続されて、缶蓋3(又は缶胴2)側が正極、缶胴2(又は缶蓋3)側が負極の電池が構築されるようにすることもできる。このような態様は、図4に一例として示す電池要素10にも適用でき、前述したような電池要素10の巻取端面を介した導通と、タブを介した導通とを併用することで、電池容器1と電池要素10との導通状態をより良好ならしめることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 電池容器
2 缶胴
20 絶縁層
21 底部
23 フランジ部(缶胴の開口周縁部)
23a 折り返し部
3 缶蓋
30 絶縁層
31 カール部(缶蓋の周縁部)
31a 折り返し部
10 電池要素
11 正極材
12 負極材
13 セパレータ
【要約】
【課題】内圧が上昇しても変形し難い電池容器を提供する。
【解決手段】金属製の缶胴2と缶蓋3とを備え、有底筒状に成形された缶胴2の開口部周縁に、缶蓋3の周縁部が接合される電池容器1において、湾曲面を含むように缶胴2の底部21を成形し、缶胴2の底部21の湾曲面に成形された部位と同様に湾曲する湾曲面を含むように缶蓋3を成形する。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10