(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】ポリウレタン-ウレア樹脂溶液及び物品
(51)【国際特許分類】
C08L 75/12 20060101AFI20230830BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20230830BHJP
C08K 5/5435 20060101ALI20230830BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20230830BHJP
C09D 175/00 20060101ALI20230830BHJP
C09J 175/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C08L75/12
C08K5/29
C08K5/5435
C08G18/00 B
C09D175/00
C09J175/00
(21)【出願番号】P 2022547966
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2022027737
(87)【国際公開番号】W WO2023037762
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2021146179
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】星野 七海
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠正
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/163900(WO,A1)
【文献】特開平10-130615(JP,A)
【文献】特開2011-037928(JP,A)
【文献】特開2009-001713(JP,A)
【文献】国際公開第2012/074030(WO,A1)
【文献】特開2011-068736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/00- 75/16
C08K 3/00- 13/08
C08G 18/00- 18/87
C09D 175/00-175/16
C09J 175/00-175/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分(A)に由来する構成単位、ジイソシアネート成分(B)に由来する構成単位、及びポリアミン成分(C)に由来する構成単位を有する、その末端に活性アミノ基を持ったポリウレタン-ウレア樹脂と、
任意に用いられる多官能ポリイソシアネート成分(D)と、
エポキシ基を有する化合物(E)と、を含有し、
前記ポリウレタン-ウレア樹脂の末端アミノ基濃度が、20~200μEQ/gであり、
前記ポリウレタン-ウレア樹脂が、反応性OH基を有する前記ポリオール成分(A)と反応性NCO基を有する前記ジイソシアネート成分(B)をNCO/OH=1.6~2.2(mol/mol)の比率で反応させた反応物であるウレタンプレポリマー(PP)と、反応性アミノ基を有する前記ポリアミン成分(C)とを、(C)/(PP)=1.05~1.5(mol/mol)の比率で反応させた反応物(但し、モノアミンを反応させた反応物を除く)であり、
前記多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量が、前記ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して、下記式(1)で表される量であり、
前記エポキシ基を有する化合物(E)の含有量が、前記ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して、下記式(2)で表される量であるポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
「多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量(質量部)」
=(X×N)/(C
NCO×100) ・・・(1)
X:
1.0~65.0
C
NCO:多官能ポリイソシアネート成分(D)のNCO基含有率(%)
N:ポリウレタン-ウレア樹脂の不揮発分(質量部)
「エポキシ基を有する化合物(E)の含有量(質量部)」
=Y×C
EPO×N÷100・・・(2)
Y:0.001~0.1
C
EPO:エポキシ基を有する化合物(E)のエポキシ当量(g/EQ)
N:ポリウレタン-ウレア樹脂の不揮発分(質量部)
【請求項2】
ポリオール成分(A)に由来する構成単位、ジイソシアネート成分(B)に由来する構成単位、及びポリアミン成分(C)に由来する構成単位を有する、その末端に活性アミノ基を持ったポリウレタン-ウレア樹脂と、
任意に用いられる多官能ポリイソシアネート成分(D)と、
エポキシ基を有する化合物(E)と、を含有し、
前記ポリウレタン-ウレア樹脂の末端アミノ基濃度が、100~150μEQ/gであり、
前記ポリウレタン-ウレア樹脂が、反応性OH基を有する前記ポリオール成分(A)と反応性NCO基を有する前記ジイソシアネート成分(B)をNCO/OH=1.6~2.2(mol/mol)の比率で反応させた反応物であるウレタンプレポリマー(PP)と、反応性アミノ基を有する前記ポリアミン成分(C)とを、(C)/(PP)=1.05~1.5(mol/mol)の比率で反応させた反応物(但し、モノアミンを反応させた反応物を除く)であり、
前記多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量が、前記ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して、下記式(1)で表される量であり、
前記エポキシ基を有する化合物(E)の含有量が、前記ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して、下記式(2)で表される量であるポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
「多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量(質量部)」
=(X×N)/(C
NCO
×100) ・・・(1)
X:0.0~65.0
C
NCO
:多官能ポリイソシアネート成分(D)のNCO基含有率(%)
N:ポリウレタン-ウレア樹脂の不揮発分(質量部)
「エポキシ基を有する化合物(E)の含有量(質量部)」
=Y×C
EPO
×N÷100・・・(2)
Y:0.001~0.1
C
EPO
:エポキシ基を有する化合物(E)のエポキシ当量(g/EQ)
N:ポリウレタン-ウレア樹脂の不揮発分(質量部)
【請求項3】
ポリオール成分(A)に由来する構成単位、ジイソシアネート成分(B)に由来する構成単位、及びポリアミン成分(C)に由来する構成単位を有する、その末端に活性アミノ基を持ったポリウレタン-ウレア樹脂と、
任意に用いられる多官能ポリイソシアネート成分(D)と、
エポキシ基を有する化合物(E)と、を含有し、
前記ポリウレタン-ウレア樹脂の末端アミノ基濃度が、20~200μEQ/gであり、
前記ポリウレタン-ウレア樹脂が、反応性OH基を有する前記ポリオール成分(A)と反応性NCO基を有する前記ジイソシアネート成分(B)をNCO/OH=1.6~2.2(mol/mol)の比率で反応させた反応物であるウレタンプレポリマー(PP)と、反応性アミノ基を有する前記ポリアミン成分(C)とを、(C)/(PP)=1.05~1.5(mol/mol)の比率で反応させた反応物(但し、モノアミンを反応させた反応物を除く)であり、
前記多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量が、前記ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して、下記式(1)で表される量であり、
前記エポキシ基を有する化合物(E)の含有量が、前記ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して、下記式(2)で表される量である、
セパレーターレスで巻き取り可能な粘着シートを製造するために用いられるポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
「多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量(質量部)」
=(X×N)/(C
NCO
×100) ・・・(1)
X:0.0~65.0
C
NCO
:多官能ポリイソシアネート成分(D)のNCO基含有率(%)
N:ポリウレタン-ウレア樹脂の不揮発分(質量部)
「エポキシ基を有する化合物(E)の含有量(質量部)」
=Y×C
EPO
×N÷100・・・(2)
Y:0.001~0.1
C
EPO
:エポキシ基を有する化合物(E)のエポキシ当量(g/EQ)
N:ポリウレタン-ウレア樹脂の不揮発分(質量部)
【請求項4】
前記エポキシ基を有する化合物(E)が、エポキシ変性シランカップリング剤(E-1)である請求項1
~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
【請求項5】
側鎖に水酸基を有する樹脂をさらに含有する請求項1
~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
【請求項6】
前記側鎖に水酸基を有する樹脂が、水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、及びポリヒドロキシウレタンからなる群より選択される少なくとも一種であり、
前記側鎖に水酸基を有する樹脂の含有量が、前記ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して、10質量部以下である請求項5に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
【請求項7】
前記ポリオール成分(A)の水酸基価が、30.0~200.0mgKOH/gである請求項1
~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
【請求項8】
前記ジイソシアネート成分(B)が、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートの少なくともいずれかである請求項1
~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
【請求項9】
前記ポリアミン成分(C)が、室温で液状のジアミンである請求項1
~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
【請求項10】
前記ポリウレタン-ウレア樹脂の重量平均分子量が、5,000~150,000である請求項1
~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
【請求項11】
アルコール系溶剤を含む有機溶剤をさらに含有し、
前記有機溶剤中の前記アルコール系溶剤の含有量が、10~90質量%である請求項1
~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
【請求項12】
前記アルコール系溶剤が、イソプロピルアルコールである請求項11に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
【請求項13】
エステル系溶剤及びアルコール系溶剤を含む有機溶剤をさらに含有し、
前記エステル系溶剤と前記アルコール系溶剤の質量比が、50/50~10/90である請求項1
~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
【請求項14】
前記アルコール系溶剤が、イソプロピルアルコールである請求項13に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
【請求項15】
非加熱乾燥皮膜の金属表面からの剥離強度が1~200mN/mm
2であり、
100℃以上に加熱して形成した加熱乾燥皮膜の金属表面からの剥離強度が、前記非加熱乾燥皮膜の金属表面からの剥離強度の10倍以上である、又は剥離強度測定時に少なくとも一部が材破する請求項1
~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
【請求項16】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液を含む、塗料、インキ、コーティング剤、ホットメルト接着剤、フィルム、及びシートのいずれかの物品。
【請求項17】
セパレーターレスで巻き取り可能な粘着シートの製造方法であって、
ポリオール成分(A)に由来する構成単位、ジイソシアネート成分(B)に由来する構成単位、及びポリアミン成分(C)に由来する構成単位を有する、その末端に活性アミノ基を持ったポリウレタン-ウレア樹脂と、
任意に用いられる多官能ポリイソシアネート成分(D)と、
エポキシ基を有する化合物(E)と、を含有し、
前記ポリウレタン-ウレア樹脂の末端アミノ基濃度が、20~200μEQ/gであり、
前記ポリウレタン-ウレア樹脂が、反応性OH基を有する前記ポリオール成分(A)と反応性NCO基を有する前記ジイソシアネート成分(B)をNCO/OH=1.6~2.2(mol/mol)の比率で反応させた反応物であるウレタンプレポリマー(PP)と、反応性アミノ基を有する前記ポリアミン成分(C)とを、(C)/(PP)=1.05~1.5(mol/mol)の比率で反応させた反応物(但し、モノアミンを反応させた反応物を除く)であり、
前記多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量が、前記ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して、下記式(1)で表される量であり、
前記エポキシ基を有する化合物(E)の含有量が、前記ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して、下記式(2)で表される量であるポリウレタン-ウレア樹脂溶液を乾燥させた後、セパレーターレスで巻き取ることを含む粘着シートの製造方法。
「多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量(質量部)」
=(X×N)/(C
NCO
×100) ・・・(1)
X:0.0~65.0
C
NCO
:多官能ポリイソシアネート成分(D)のNCO基含有率(%)
N:ポリウレタン-ウレア樹脂の不揮発分(質量部)
「エポキシ基を有する化合物(E)の含有量(質量部)」
=Y×C
EPO
×N÷100・・・(2)
Y:0.001~0.1
C
EPO
:エポキシ基を有する化合物(E)のエポキシ当量(g/EQ)
N:ポリウレタン-ウレア樹脂の不揮発分(質量部)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン-ウレア樹脂溶液、及びそれを用いた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、及びウレタン系粘着剤等が一般的である。これらの粘着剤は、例えば、食品や化粧品等の包装材、車両、ラッピングフィルム、スマートフォン用の保護フィルム、及び医療用のメディカルテープ等の高付加価値製品等に利用されている。なかでも、ラッピングフィルムや保護フィルム等の製品に対しては、優れた意匠性、透明性、及び光学特性等が要求される。但し、これらの製品を構成する基材に用いられるアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、及びポリカーボネート樹脂等は、いずれも耐薬品性に乏しい材料である。
【0003】
なお、顔料やフィラー等を分散させた粘着剤を用いて構成される、液晶ディスプレイと筐体を貼着するとともに、筐体内の光源からの光漏れを防止するために用いられる遮光性粘着テープ等が提案されている(特許文献1)。
【0004】
アクリル系粘着剤は粘着力に優れる一方で、残留モノマーによる臭気等が懸念されている。また、粘着力が強いため、被着体に貼着した後の再剥離性がさほど良好であるとは言えず、ラッピングフィルムや保護フィルム等の製品に用いると再剥離が困難になる等の課題があった。また、シリコーン系粘着剤は適用温度範囲が広く、耐候性・耐薬品性も良好である。しかし、被着体を汚染しやすいとともに、低分子量のシリコーン樹脂が揮発して電子デバイス等の機器の表面に吸着しやすく、電気系統に不具合を生じさせる等の懸念があった。このため、スマートフォン等の電子部材用の保護フィルム等にシリコーン系粘着剤を展開するのは困難であった。
【0005】
これに対して、ウレタン系粘着剤は、微粘着性であるとともに、再剥離性も比較的優れており、かつ、含有成分も揮発しにくいといった利点がある。しかし、ウレタン系粘着剤は粘着力の面でやや劣るため、市場規模の面でアクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤には及ばないものである。
【0006】
ウレタン系粘着剤に関連する従来技術としては、例えば、非極性フィルムに対しても十分な粘着性を示す、ウレタン基及びウレア基を有するポリウレタン/ウレア粘着剤組成物、及びそれを用いた塗工物が提案されている(特許文献2)。また、再剥離性等が良好であるとともに、被着体の凹凸への追随性が良好であり、かつ、粘着力の剥離速度依存性の低いポリウレタン粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着シート等が提案されている(特許文献3)。さらに、初期粘着性が良好であるとともに、糊残りせずに貼り直し可能な、反復使用しうる強粘着型粘着体を任意の形状で製造することができる粘着剤組成物が提案されている(特許文献4)。また、ウレタンプレポリマーと、モノアミン及びジアミンを含むアミン化合物とを反応させて得たポリウレタンポリウレア樹脂を用いた2液硬化型の組成物が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-175967号公報
【文献】特開2000-328034号公報
【文献】特開2006-182795号公報
【文献】特開2009-167272号公報
【文献】国際公開第2017/163900号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献3及び4で提案された粘着剤組成物を用いて粘着フィルム等の物品を製造しようとする場合、巻き取り時に離型フィルム等のセパレーターを用いる必要があった。また、特許文献4で提案された粘着剤組成物は強粘着性であることから、再剥離はさほど容易であるとはいえなかった。さらに、特許文献2~4で提案された粘着剤組成物を用いて製造される粘着シートは、金属基材の表面(金属表面)に対する密着性はさほど良好であるとはいえず、さらなる改良の余地があった。また、特許文献5で提案された組成物を粘着剤等として用いる場合には、再剥離時に糊残りが生じやすいといった課題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、金属等の表面に対する密着性に優れた、セパレーターレスで巻き取り可能な粘着シート等の製品を容易に製造することができるとともに、加温によって剥離強度を選択的に高めることも可能なポリウレタン-ウレア樹脂溶液を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記のポリウレタン-ウレア樹脂溶液を用いて得られる塗料、インキ、コーティング剤、フィルム、及びシート等の物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示すポリウレタン-ウレア樹脂溶液が提供される。
[1]ポリオール成分(A)に由来する構成単位、ジイソシアネート成分(B)に由来する構成単位、及びポリアミン成分(C)に由来する構成単位を有する、その末端に活性アミノ基を持ったポリウレタン-ウレア樹脂と、任意に用いられる多官能ポリイソシアネート成分(D)と、エポキシ基を有する化合物(E)と、を含有し、前記ポリウレタン-ウレア樹脂の末端アミノ基濃度が、20~200μEQ/gであり、前記ポリウレタン-ウレア樹脂が、反応性OH基を有する前記ポリオール成分(A)と反応性NCO基を有する前記ジイソシアネート成分(B)をNCO/OH=1.6~2.2(mol/mol)の比率で反応させた反応物であるウレタンプレポリマー(PP)と、反応性アミノ基を有する前記ポリアミン成分(C)とを、(C)/(PP)=1.05~1.5(mol/mol)の比率で反応させた反応物(但し、モノアミンを反応させた反応物を除く)であり、前記多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量が、前記ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して、下記式(1)で表される量であり、前記エポキシ基を有する化合物(E)の含有量が、前記ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して、下記式(2)で表される量であるポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
「多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量(質量部)」
=(X×N)/(CNCO×100) ・・・(1)
X:0.0~65.0
CNCO:多官能ポリイソシアネート成分(D)のNCO基含有率(%)
N:ポリウレタン-ウレア樹脂の不揮発分(質量部)
「エポキシ基を有する化合物(E)の含有量(質量部)」
=Y×CEPO×N÷100・・・(2)
Y:0.001~0.1
CEPO:エポキシ基を有する化合物(E)のエポキシ当量(g/EQ)
N:ポリウレタン-ウレア樹脂の不揮発分(質量部)
[2]前記エポキシ基を有する化合物(E)が、エポキシ変性シランカップリング剤(E-1)である前記[1]に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
[3]側鎖に水酸基を有する樹脂をさらに含有する前記[1]又は[2]に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
[4]前記側鎖に水酸基を有する樹脂が、水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、及びポリヒドロキシウレタンからなる群より選択される少なくとも一種であり、前記側鎖に水酸基を有する樹脂の含有量が、前記ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して、10質量部以下である前記[3]に記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
[5]前記ポリオール成分(A)の水酸基価が、30.0~200.0mgKOH/gである前記[1]~[4]のいずれかに記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
[6]前記ジイソシアネート成分(B)が、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートの少なくともいずれかである前記[1]~[5]のいずれかに記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
[7]前記ポリアミン成分(C)が、室温で液状のジアミンである前記[1]~[6]のいずれかに記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
[8]前記ポリウレタン-ウレア樹脂の重量平均分子量が、5,000~150,000である前記[1]~[7]のいずれかに記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
[9]アルコール系溶剤を含む有機溶剤をさらに含有し、前記有機溶剤中の前記アルコール系溶剤の含有量が、10~90質量%である前記[1]~[8]のいずれかに記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
[10]エステル系溶剤及びアルコール系溶剤を含む有機溶剤をさらに含有し、前記エステル系溶剤と前記アルコール系溶剤の質量比が、50/50~10/90である前記[1]~[8]のいずれかに記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
[11]非加熱乾燥皮膜の金属表面からの剥離強度が1~200mN/mm2であり、100℃以上に加熱して形成した加熱乾燥皮膜の金属表面からの剥離強度が、前記非加熱乾燥皮膜の金属表面からの剥離強度の10倍以上である、又は剥離強度測定時に少なくとも一部が材破する前記[1]~[10]のいずれかに記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液。
【0011】
また、本発明によれば、以下に示す物品が提供される。
[12]前記[1]~[11]のいずれかに記載のポリウレタン-ウレア樹脂溶液を含む、塗料、インキ、コーティング剤、ホットメルト接着剤、フィルム、及びシートのいずれかの物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属等の表面に対する密着性に優れた、セパレーターレスで巻き取り可能な粘着シート等の製品を容易に製造することができるとともに、加温によって剥離強度を選択的に高めることも可能なポリウレタン-ウレア樹脂溶液を提供することができる。また、本発明によれば、上記のポリウレタン-ウレア樹脂溶液を用いて得られる塗料、インキ、コーティング剤、フィルム、及びシート等の物品を提供することができる。本発明のポリウレタン-ウレア樹脂溶液は、例えば、車輌外装材などの高付加価値かつ需要の高い用途に展開可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<ポリウレタン-ウレア樹脂溶液>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の一実施形態であるポリウレタン-ウレア樹脂溶液は、その末端に活性アミノ基を持ったポリウレタン-ウレア樹脂と、エポキシ基を有する化合物(E)とを含有する。また、ポリウレタン-ウレア樹脂溶液は、多官能ポリイソシアネート成分(D)を任意成分としてさらに含有してもよい。ポリウレタン-ウレア樹脂は、ポリオール成分(A)に由来する構成単位、ジイソシアネート成分(B)に由来する構成単位、及びポリアミン成分(C)に由来する構成単位を有する。そして、ポリウレタン-ウレア樹脂の末端アミノ基濃度は、20~200μEQ/gである。ポリウレタン-ウレア樹脂の末端に存在する活性アミノ基(末端アミノ基)の少なくとも一部が架橋することで三次元構造が形成されると考えられるが、本実施形態のポリウレタン-ウレア樹脂溶液はコーティングが可能な組成物であり、塗料、インキ、コーティング剤等として有用である。以下、本実施形態のポリウレタン-ウレア樹脂溶液の詳細について説明する。
【0014】
(ポリオール成分(A))
ポリオール成分(A)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を用いることができる。ポリオール成分(A)の具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールエーテル、ポリオキシテトラメチレンポリオキシエチレングリコール等のポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリ2-メチル-1,3-プロパンジオールアジペート、ポリ3-メチル-1,5-ペンタンジオールアジペート、ポリネオペンチルグリコールアジペート等の縮合系ポリエステルポリオール;ジオール類等を開始剤として使用し、ラクトンを開環重合させて得られる、ポリラクトンジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリメチルバレロラクトンジオール等のラクトン系ポリエステルポリオール;ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリネオペンチルカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体等のポリカーボネートポリオール;等を挙げることができる。
【0015】
ポリオール成分(A)は、プロピレンオキサイド変性されたポリエーテルポリオールが好ましく、プロピレンオキサイド成分が多いポリプロピレングリコールが特に好ましい。
このようなポリオール成分(A)は、その構造上柔軟性に優れているとともに、結晶性が崩れているので、粘着性を付与する成分として特に有効である。
【0016】
ポリオール成分(A)の水酸基価は、30.0~200.0mgKOH/gであることが好ましく、35.0~160.0mgKOH/gであることがさらに好ましく、50.0~115.0mgKOH/gであることが特に好ましい。ポリオール成分(A)の水酸基価が30.0mgKOH/g未満であると、ベタつきやすくなる傾向にある。一方、水酸基価が200.0mgKOH/g超であると、タック感が不足する傾向にある。
【0017】
(ジイソシアネート成分(B))
ジイソシアネート成分(B)は、その分子構造中に2つのイソシアネート基(NCO)を有する化合物である。ジイソシアネート成分(B)としては、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等を挙げることができる。但し、芳香族ジイソシアネートは、ポリアミン成分(C)との反応性が高く、反応の制御がやや困難になる場合がある。また、芳香族基を有するポリウレタン-ウレア樹脂は有機溶剤に溶解しにくくなることがあり、ゲル化しやすくなる場合がある。さらに、タック感がやや不足する場合もあるので、ジイソシアネート成分(B)は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0018】
脂肪族ジイソシアネートとしては、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等を挙げることができる。また、これらのブロック体のイソシアネートを用いることもできる。反応性及び物性等の総合的な観点から、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0019】
ポリウレタン-ウレア樹脂は、通常、ウレタンプレポリマー(PP)と、反応性アミノ基を有するポリアミン成分(C)との反応物である。このウレタンプレポリマー(PP)は、反応性OH基を有するポリオール成分(A)と反応性NCO基を有するジイソシアネート成分(B)をNCO/OH=1.6~2.2(mol/mol)の比率で反応させた反応物である。なお、この比率(NCO/OH)は、ポリオール成分(A)中の反応性OH基の量(mol)に対する、ジイソシアネート成分(B)中の反応性NCO基の量(mol)の比の値である。NCO/OH比の値が小さすぎると、ウレタンプレポリマー(PP)の分子量が大きくなるとともに、ポリウレタン-ウレア樹脂の分子量も大きくなるので、粘着力が強くなりすぎて再剥離が困難になる場合がある。なお、残留モノマーの低減や生産性等の観点から、NCO/OH=1.8~2.0(mol/mol)とすることが好ましい。
【0020】
(ポリアミン成分(C))
ポリアミン成分(C)としては、室温(25℃)で液状のジアミンや固体のジアミンを用いることができる。なかでも、室温(25℃)で液状のジアミンを用いることが好ましい。末端に活性アミノ基を持ったジアミン構造を有するポリウレタン-ウレア樹脂を形成するために、通常、ウレタンプレポリマー(PP)とジアミン成分(C)を、ジアミン成分(C)過剰で反応させる。室温で固体のジアミンをウレタンプレポリマー(PP)と常温で反応させると、反応の進行に伴ってジアミンが溶解し、アミノ基とイソシアネート基の比率が部分的に崩れて反応に不具合が生ずる場合がある。また、室温で固体のジアミンとウレタンプレポリマー(PP)を加温しながら反応させると、反応速度が速くなりすぎるとともに、反応熱も発生するので、予期せぬ三次元化が引き起こされる可能性もある。このため、室温で液状のジアミンをポリアミン成分(C)として用いることが好ましい。
【0021】
ポリウレタン-ウレア樹脂は、ウレタンプレポリマー(PP)と、反応性アミノ基を有するポリアミン成分(C)とを、(C)/(PP)=1.05~1.5(mol/mol)の比率で反応させた反応物である。なお、この比率((C)/(PP))は、ウレタンプレポリマー(PP)の量(mol)に対する、ポリアミン成分(C)の量(mol)の比の値である。但し、上記の反応物(ポリウレタン-ウレア樹脂)には、ポリアミン成分(C)だけでなく、モノアミンもウレタンプレポリマー(PP)に反応させて得られる反応物は含まれない。ウレタンプレポリマー(PP)に、ポリアミン成分(C)だけでなくモノアミンも反応させると、両末端に活性アミノ基を有しないポリウレタン-ウレア樹脂が形成されやすくなる。このような両末端に活性アミノ基を有しないポリウレタン-ウレア樹脂は、多官能ポリイソシアネート成分(D)やエポキシ基を有する化合物(E)との反応点を有しない。このため、粘着剤等として用いる場合において、再剥離時に糊残りが生じやすいとともに、粘着シート等の製品を製造する際にセパレーターレスで巻き取ることが困難になる。加温による粘着強度を考慮すると、(C)/(PP)=1.05~1.25(mol/mol)とすることがさらに好ましく、(C)/(PP)=1.10~1.20(mol/mol)とすることが特に好ましい。
【0022】
また、ウレタンプレポリマー(PP)と反応させるポリアミン成分(C)が、その分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミンと、その分子構造中に3以上のアミノ基を有するポリアミンとを含むと、得られる反応物(ポリウレタン-ウレア樹脂)の分子構造が三次元化しやすくなる。このため、多官能ポリイソシアネート成分(D)や、エポキシ変性シランカップリング剤(E-1)等のエポキシ基を有する化合物(E)と接触させると粘度が過度に上昇することがあるとともに、凝集物(いわゆる「ブツ」)が発生しやすくなる場合がある。したがって、ウレタンプレポリマー(PP)と反応させるポリアミン成分(C)は、実質的にジアミンのみであることが好ましい。
【0023】
室温で液状のジアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、及び芳香族ジアミンを用いることができる。このようなジアミンとしては、エチレンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3-シクロヘキシルジアミン、ダイマージアミン、ポリエーテルジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、ポリ(プロピレングリコール)ジアミン、及びこれらの水添物等を挙げることができる。なかでも、イソホロンジアミン、1,3-シクロヘキシルジアミン、ダイマージアミンなどの脂環基を有するジアミンが好ましい。
【0024】
室温で固形のジアミンとしては、その融点が35℃以上(好ましくは50℃以上)のジアミンを用いることができる。このようなジアミンとしては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ジアミノビフェニル、2,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、2,4-ジアミノフェノール、2,5-ジアミノフェノール、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,3-トリレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,5-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、3,4-トリレンジアミン等の芳香族ジアミン;1,12-ドデカンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン等の脂肪族ジアミンを挙げることができる。
【0025】
特許文献3に記載された粘着剤組成物に用いられるポリウレタンの両末端は水酸基であることから、イソシアネートと硬化反応させる際にエージングが必要とされる。これに対して、本実施形態のポリウレタン-ウレア樹脂溶液の場合、末端アミノ基濃度が20~200μEQ/gであるポリウレタン-ウレア樹脂を用いるので、多官能ポリイソシアネート成分(D)を硬化剤として含有させることで、エージングを不要にすることができる。なお、粘着性の観点から、ポリウレタン-ウレア樹脂の末端アミノ基濃度は30~150μEQ/gであることがさらに好ましい。また、エポキシ基を有する化合物(E)のエポキシ基との反応で生成する水酸基によってより優れた金属密着性を発揮させるには、ポリウレタン-ウレア樹脂の末端アミノ基濃度は100~150μEQ/gであることが特に好ましい。なお、ポリウレタン-ウレア樹脂の「末端アミノ基濃度」は、0.01mol/L塩酸を用いた電位差滴定(中和滴定)法により測定される物性値である。
【0026】
ポリウレタン-ウレア樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000~150,000であることが好ましい。ポリウレタン-ウレア樹脂は、前述の通り、ウレタンプレポリマーと、ポリアミン成分(C)とを反応させた反応物である。ポリウレタン-ウレア樹脂の重量平均分子量が5,000未満であると、ポリアミン成分(C)が十分に反応していない可能性があり、物性がやや不足することがある。一方、ポリウレタン-ウレア樹脂の重量平均分子量が150,000超であると、塗料として用いる場合に糸引きが発生しやすくなり、成膜しにくくなることがある。なお、粘着性をより高めるには、ポリウレタン-ウレア樹脂の重量平均分子量は、10,000~150,000であることがさらに好ましい。
【0027】
(多官能ポリイソシアネート成分(D))
本実施形態のポリウレタン-ウレア樹脂溶液は、多官能ポリイソシアネート成分(D)をさらに含有することが好ましい。すなわち、多官能ポリイソシアネート成分(D)は任意成分である。多官能ポリイソシアネート成分(D)は、硬化剤として作用しうる成分である。このため、多官能ポリイソシアネート成分(D)を含有させることで、エージングや加温による硬化を必要とせずに粘着シート等の製品を製造しうるポリウレタン-ウレア樹脂溶液とすることができる。
【0028】
多官能ポリイソシアネート成分(D)は、2官能超のイソシアネート基を有するポリイソシアネートである。多官能ポリイソシアネート成分(D)としては、ジフェニルメタンジイソシアネート系、トルエンジイソシアネート系、及びヘキサメチレンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系;これらのトリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット変性体、及びヌレート変性体;ポリメリックMDI;末端イソシアネートプレポリマー;等を挙げることができる。また、これらのブロック体のポリイソシアネートを用いることもできる。なかでも、ヘキサメチレンジイソシアネート系やイソホロンジイソシアネート系のトリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット変性体、及びヌレート変性体が意匠性及び物性面で好ましい。
【0029】
多官能ポリイソシアネート成分(D)は、ポリウレタン-ウレア樹脂の末端アミノ基以外にも、例えばアルコール系溶剤と反応する可能性がある。さらに、多官能ポリイソシアネート成分(D)は、ウレタン結合やウレア結合とも反応する可能性があるので、所期の物性とならない場合もある。このため、ポリウレタン-ウレア樹脂溶液中の多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量を適切に設計することが好ましい。具体的には、多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量を、ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して、下記式(1)で表される量とすることが好ましい。すなわち、下記式(1)中のXの値が0.0~65.0となるような多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量とすることが好ましい。
「多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量(質量部)」
=(X×N)/(CNCO×100) ・・・(1)
X:0.0~65.0
CNCO:多官能ポリイソシアネート成分(D)のNCO基含有率(%)
N:ポリウレタン-ウレア樹脂の不揮発分(質量部)
【0030】
また、熱による粘着性向上のためには、上記式(1)中のXの値が0.0~50.0となるような多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量とすることが好ましい。さらに、エポキシ基を有する化合物(E)との反応のバランスを考慮すると、上記式(1)中のXの値が1.0~45.0となるような多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量とすることが好ましい。さらに、初期の粘着性を向上させるためには、上記式(1)中のXの値が5.0~30.0となるような多官能ポリイソシアネート成分(D)の含有量とすることが好ましい。Xの値が65.0超であると、後述するエポキシ基を有する化合物(E)との反応点が減少するので、金属表面への密着性を向上させることが困難になることがある。さらに、Xの値が80.0超であると、過剰の多官能ポリイソシアネート成分(D)の反応が完結しない可能性があるとともに、分子構造が過剰に三次元化して塗工が困難になることがある。
【0031】
(エポキシ基を有する化合物(E))
本実施形態のポリウレタン-ウレア樹脂溶液は、エポキシ基を有する化合物(E)を含有する。エポキシ基を有する化合物(E)は、ポリウレタン-ウレア樹脂の末端アミノ基と反応して水酸基(-OH基)を生成する。このため、生成した水酸基によって、金属表面等に対する密着性に優れた粘着シート等の物品が得られると推測される。
【0032】
エポキシ基を有する化合物(E)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、アミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ビキシレノール型エポキシ樹脂、エポキシ変性シランカップリング剤等を挙げることができる。なかでも、エポキシ基を有する化合物(E)として、エポキシ変性シランカップリング剤(E-1)を用いることが、ガラス表面に対する密着性に特に優れた粘着シート等の物品を製造することができるために好ましい。
【0033】
ポリウレタン-ウレア樹脂溶液に含有させるエポキシ基を有する化合物(E)の量は、多官能ポリイソシアネート成分(D)との競争反応を考慮するとともに、各種基材への密着性を向上させる観点から、適切に制御する必要がある。具体的には、エポキシ基を有する化合物(E)の含有量を、ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して、下記式(2)で表される量とすることが好ましい。すなわち、下記式(2)中のYの値が0.001~0.1となるようなエポキシ基を有する化合物(E)の含有量とすることが好ましい。
「エポキシ基を有する化合物(E)の含有量(質量部)」
=Y×CEPO×N ・・・(2)
Y:0.001~0.1
CEPO:エポキシ基を有する化合物(E)のエポキシ当量(g/EQ)
N:ポリウレタン-ウレア樹脂の不揮発分(質量部)
【0034】
また、金属表面に対する密着性をさらに向上させる観点から、上記式(2)中のYの値が0.005~0.1となるようなエポキシ基を有する化合物(E)の含有量とすることが好ましく、0.005~0.05となるようなエポキシ基を有する化合物(E)の含有量とすることがさらに好ましい。Yの値が0.001未満であると、金属表面への密着性を向上させることが困難になる。一方、Yの値が0.1超であると、未反応のエポキシ基を有する化合物(E)が残存しやすくなり、粘着性が過度に高まって再剥離が困難になる。
【0035】
(その他の成分)
ポリウレタン-ウレア樹脂溶液には、必要に応じて、その他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、シランカップリング剤(但し、前述の「エポキシ変性シランカップリング剤(E-1)」を除く)等を挙げることができる。なかでも、イソシアネート基やアクリロイル基を有するシランカップリング剤を用いると、ポリウレタン-ウレア樹脂の末端アミノ基と反応させることができるために好ましい。ポリウレタン-ウレア樹脂溶液中、シランカップリング剤の含有量は、ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して1質量部以下とすることが、金属やガラスとの密着性を高めることができるために好ましい。なお、シランカップリング剤の含有量を、ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して1質量部超とすると、部材によっては初期の剥離強度が高くなりすぎることがある。
【0036】
ポリウレタン-ウレア樹脂溶液には、側鎖に水酸基を有する樹脂をさらに含有させることが好ましい。側鎖に水酸基を有する樹脂を含有させることで、塗工する基材との密着性がさらに向上した粘着シート等の物品を製造しうるポリウレタン-ウレア樹脂溶液とすることができる。側鎖に水酸基を有する樹脂としては、水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシウレタン等を挙げることができる。なかでも、ポリヒドロキシウレタンは、ポリウレタン-ウレア樹脂溶液と比較的なじみやすいために好ましい。ポリウレタン-ウレア樹脂溶液中、側鎖に水酸基を有する樹脂の含有量は、相溶性等の観点から、ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して10質量部以下とすることが好ましく、7質量部以下とすることがさらに好ましく、5質量部以下とすることが特に好ましく、1質量部以下とすることが最も好ましい。
【0037】
(有機溶剤)
本実施形態のポリウレタン-ウレア樹脂溶液は、通常、有機溶剤を含有する。すなわち、ポリウレタン-ウレア樹脂は有機溶剤に溶解している。ポリウレタン-ウレア樹脂溶液は、アルコール系溶剤を含む有機溶剤を含有することが好ましい。また、有機溶剤中の前記アルコール系溶剤の含有量は、10~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることが、塗工粘度を調整しやすいためにさらに好ましい。有機溶剤中のアルコール系溶剤の含有量が10質量%未満であると、ポリウレタン-ウレア樹脂が溶解しにくくなることがあり、多官能ポリイソシアネート成分(D)を添加した段階で塗工しにくくなる場合がある。有機溶剤中のアルコール系溶剤の含有量が90質量%超であると、多官能ポリイソシアネート成分(D)と反応しやすくなるとともに、ポリウレタン-ウレア樹脂が溶解しにくくなって濁りが生ずる場合がある。
【0038】
また、ポリウレタン-ウレア樹脂溶液は、エステル系溶剤及びアルコール系溶剤を含む有機溶剤を含有することが好ましい。そして、有機溶剤中のエステル系溶剤とアルコール系溶剤の質量比は、50/50~10/90であることが好ましく、50/50~20/80であることがさらに好ましい。エステル系溶剤及びアルコール系溶剤を含む有機溶剤を含有させることで、アクリル樹脂やポリスチレン樹脂等の耐薬品性に乏しい基材に塗工した場合であっても、これらの基材が白化や溶解しにくくなる。なお、エステル系溶剤に代えて、ケトン系溶剤やアミド系溶剤を用いると、アクリル樹脂やポリスチレン樹脂等の耐薬品性に乏しい基材は白化したり、溶解したりする場合がある。なお、脂肪族系炭化水素溶剤を用いると、ポリウレタン-ウレア樹脂が溶解しにくくなることがあり、濁りやすくなる場合がある。
【0039】
アルコール系溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール等の他;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤等を挙げることができる。なかでも、アルコール系溶剤としてはイソプロピルアルコールが好ましい。エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル等を挙げることができる。なかでも、エステル系溶剤としては酢酸エチルが好ましい。
【0040】
有機溶剤は、アルコール系溶剤及びエステル系溶剤以外のその他の有機溶剤を含んでいてもよい。その他の有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶剤;n-ヘキサン等の脂肪族系炭化水素溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム系溶剤;等を挙げることができる。
【0041】
本実施形態のポリウレタン-ウレア樹脂溶液を加熱することなく乾燥させて形成される非加熱乾燥皮膜の金属表面からの剥離強度は、通常、1~200mN/mm2である。そして、ポリウレタン-ウレア樹脂溶液を120℃以上に加熱して形成した加熱乾燥皮膜の金属表面からの剥離強度は、上記の非加熱乾燥皮膜の金属表面からの剥離強度の好ましくは10倍以上であるか、又は剥離強度測定時に少なくとも一部が材破する(剥離することができずに破れる)。すなわち、本実施形態のポリウレタン-ウレア樹脂溶液は、加熱することなく乾燥させることで、セパレーターレスで巻き取り可能な、再剥離しうる微粘着性が発現するものであり、かつ、任意に加温することで剥離強度を選択的に高めることも可能なものである。
【0042】
(ポリウレタン-ウレア樹脂溶液の製造方法)
本実施形態のポリウレタン-ウレア樹脂溶液は、以下のような手順で製造することができる。ポリオール成分(A)とジイソシアネート成分(B)を反応させて、その両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る。得られたウレタンプレポリマーにポリアミン成分(C)を反応させる鎖伸長反応を行い、その末端に活性アミノ基を有するポリウレタン-ウレア樹脂を得る。得られたポリウレタン-ウレア樹脂、エポキシ基を有する化合物(E)、及び必要に応じて用いられる多官能ポリイソシアネート成分(D)を混合する。さらに、必要に応じて、イソシアネート基及びアクリロイル基等の反応性基を有するシランカップリング剤等を添加することで、目的とするポリウレタン-ウレア樹脂溶液を得ることができる。なお、ウレタンプレポリマーを製造する際には、必要に応じて、金属触媒やアミン塩等の反応触媒を用いることができる。
【0043】
ポリウレタン-ウレア樹脂溶液を製造するに際しては、必要に応じて触媒を用いることができる。触媒としては、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸亜鉛、テトラn-ブチルチタネート等の金属と有機又は無機酸との塩;有機金属誘導体;トリエチルアミン等の有機アミン;ジアザビシクロウンデセン系触媒;等を挙げることができる。
【0044】
フィラーや添加剤を含有させてポリウレタン-ウレア樹脂溶液の物性を調整したり、耐久性付与したりすることもできる。フィラーとしては、有機フィラー及び無機フィラーを用いることができる。より具体的には、シリカ、シリコーン樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、シリコーン変性ウレタン系樹脂微粒子、ポリエチレン微粒子、ポリカーボネート系樹脂微粒子等をフィラーとして用いることができる。添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ガス変色安定剤、金属不活性剤、着色剤、防黴剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、及び滑剤等を挙げることができる。
【0045】
<物品>
本発明の一実施形態である物品は、前述のポリウレタン-ウレア樹脂溶液を含む、塗料、インキ、コーティング剤、ホットメルト接着剤、フィルム、及びシートのいずれかである。すなわち、本実施形態の物品は、前述のポリウレタン-ウレア樹脂溶液を含んで構成されている。前述の通り、本実施形態のポリウレタン-ウレア樹脂溶液は、加温による硬化やエージングを塗工時に実施しなくてもセパレーターレスで巻き取り可能な、経済的かつ環境に配慮された樹脂溶液である。また、初期には貼り直し可能な程度の微粘着性を示す一方で、加温することで特に金属基材の表面等に対して選択的に強粘着性を発現させることができる。さらには、必要に応じて配合する有機溶剤を選択することで、耐薬品性の乏しい基材に塗工した場合であっても意匠性や透明性を損なうことがない。
【0046】
このため、このポリウレタン-ウレア樹脂溶液によって構成される本実施形態の物品は、塗料、インキ、コーティング剤、ホットメルト接着剤、フィルム、及びシート等として好適である。フィルムやシートについては、加温の有無により、粘着性を適宜調整することができ、特に金属基材に対してより強力に接着させることができる。このため、フィルムやシートは、例えば、電子部材、外装用途、衛生用品、メディカル向けや車輌外装材などの高付加価値かつ需要の高い用途向けの材料として好適である。また、ホットメルト接着剤は、例えば、加飾フィルム、ラッピングフィルム、アパレル用品、及び電子部材向けの粘着剤や感熱性接着剤として好適である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0048】
<使用材料>
表1及び2に示す略号で表される各種材料を用意した。
【0049】
【0050】
【0051】
<ウレタンプレポリマーの合成>
(合成例1)
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。この反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリエーテルポリオール1(POL1)100部、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)22.2部を仕込んだ。窒素気流下、100℃で5時間反応させて、NCO基含有率3.437%のウレタンプレポリマー(PP1)を得た。得られたPP1酢酸エチル(EtAc)40.7部に溶解して、最終的に不揮発分75%、NCO基含有率2.578%であるPP1の溶液を得た。
【0052】
(合成例2~12)
表3の中段に示す種類及び量(単位:部)の各成分を用いたこと以外は、前述の合成例1と同様にして、不揮発分75%であるウレタンプレポリマーの溶液を得た。
【0053】
【0054】
<ポリウレタン-ウレア樹脂の製造>
(製造例1)
イソホロンジアミン(IPDA)9.9部、EtAc113.4部、及びイソプロピルアルコール(IPA)154.2部を混合してジアミン溶液を得た。得られたジアミン溶液にPP1の溶液162.9部を滴下し、25℃で1時間反応させて、赤外吸収スペクトル分析により測定される遊離イソシアネート基の吸収(2,270cm-1)が消失したことを確認した。なお、IPDA(ポリアミン成分(C))と、PP1(ウレタンプレポリマー(PP))との反応比率((C)/(PP))は、1.17(mol/mol)であった。これにより、末端アミノ基濃度(樹脂固形分1g当たりの末端のアミノ基濃度)が128.6μEQ/gであるポリウレタン-ウレア樹脂(PUA(A))の溶液(不揮発分(固形分):30%)を得た。ポリウレタン-ウレア樹脂の末端アミノ基濃度は、得られた樹脂をIPAに溶解させて調製した試料を測定対象とし、0.01mol/L塩酸を用いた電位差滴定(中和滴定)法により測定した。
【0055】
(製造例2~19)
表4-1及び4-2の中段に示す種類及び量(単位:部)の各成分を用いたこと以外は、前述の製造例1と同様にして、ポリウレタン-ウレア樹脂の溶液を得た。なお、製造例11、12、14、15、及び17については溶液とはならず、ゲル化した。
【0056】
【0057】
【0058】
<ポリウレタン-ウレア樹脂溶液の調製(1)>
(実施例1)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。この反応器内の内部を窒素ガスで置換しながら、PUA(A)の溶液440.5部、及びエポキシ基を有する化合物であるビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(PEPO1)6.9部(Y=0.02763)を仕込んだ。EtAc及びIPAを添加して粘度及び不揮発分を調整し、ポリウレタン-ウレア樹脂溶液(PU1)を得た。
【0059】
(実施例2~21、比較例1~10)
表5-1、5-2、及び6の中段に示す種類及び量(単位:部)の各成分を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、ポリウレタン-ウレア樹脂溶液を得た。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
<粘着フィルムの製造>
コロナ処理を施した塗工面を有するA4サイズのOPフィルムを用意した。このOPフィルムの塗工面に、調製した各ポリウレタン-ウレア樹脂溶液を乾燥膜厚が5μmとなるようにそれぞれ塗工した。80℃で2分間乾燥した直後、300gの鉄の棒に、OPフィルムが背面(溶液を塗工した面が外側)となるように巻き取って、粘着フィルムを製造した。
【0064】
<評価(1)>
(セパレーターレスでの巻き取り性)
セパレーターを介在させることなく鉄の棒に巻き取った粘着フィルムを室温(25℃)で1週間放置した後、垂直に持ち上げて粘着フィルムを広げ、以下に示す評価基準にしたがって巻き取り性を評価した。また、鉄の棒に巻き取った粘着フィルムを40℃で1週間放置した後にも同様に評価した。結果を表7及び8に示す。
◎:セパレーターを使用せずとも容易に広げることができた。
○:力をかけて広げることができた。
△:塗工面が背面にとられた、又は背面に糊残りがあった。
×:広げることができなかった、又は剥離困難であった。
【0065】
(金属表面からの剥離強度)
上記の巻き取り性(25℃、1週間後)の評価が「◎~△」であった粘着フィルムを75mm×25mm幅の鉄板に貼り合わせて、剥離強度測定用の試料片を得た。引張試験装置(型名「オートグラフ AGS-100A」、島津製作所社製)を使用し、粘着フィルムの剥離強度(180°ピール、引張速度:300mm/分)を測定した。結果を表7及び8に示す。
【0066】
(熱融着性)
上記の「剥離強度」を測定する際に作製した剥離強度測定用の試料片を120℃で1分間加熱して熱融着サンプルを得た。引張試験装置を使用して熱融着サンプルからの粘着フィルムの剥離強度(180°ピール、引張速度:300mm/分)を測定し、以下に示す評価基準にしたがって熱融着性を評価した。結果を表7及び8に示す。
◎:粘着フィルムが材破した。
○:粘着フィルムが部分的に材破した。
△:材破せずに剥離した。
×:剥離強度に変化なし。
【0067】
(基材への影響)
A4サイズの透明なポリスチレンフィルムに、調製した各ポリウレタン-ウレア樹脂溶液を乾燥膜厚が5μmとなるようにそれぞれ塗工した。80℃で2分間乾燥した直後のフィルムを観察し、以下に示す評価基準にしたがって基材(フィルム)への影響を評価した。結果を表7及び8に示す。
◎:フィルム外観に変化が認められなかった。
○:フィルム外観に若干の変化(濁り)が認められた。
△:フィルム外観に明確な変化(白化)が認められた。
×:溶解する等して粘着フィルムをすることができなかった。
【0068】
【0069】
【0070】
<評価(2)>
(ガラス表面からの剥離強度)
PU5及びPU18~21をそれぞれ用いて製造した粘着フィルムを75mm×25mm幅のガラス板に貼り合わせて、剥離強度測定用の試料片を得た。引張試験装置を使用し、粘着フィルムの剥離強度(180°ピール、引張速度:300mm/分)を測定した。結果を表9に示す。
【0071】
(熱融着性)
上記の「剥離強度」を測定する際に作製した剥離強度測定用の試料片を、それぞれ「100℃で1分間」及び「40℃で1晩」加熱して熱融着サンプルを得た。引張試験装置を使用して熱融着サンプルからの粘着フィルムの剥離強度(180°ピール、引張速度:300mm/分)を測定し、以下に示す評価基準にしたがって熱融着性を評価した。結果を表9に示す。
◎:粘着フィルムが材破した。
○:粘着フィルムが部分的に材破した。
△:材破せずに剥離した。
×:剥離強度に変化なし。
【0072】
【0073】
<ポリウレタン-ウレア樹脂溶液の調製(2)>
(実施例22~24)
PU6、PU18、及びPU19各100部に対し、側鎖に水酸基を有する樹脂であるHPU1をそれぞれ添加して、ポリウレタン-ウレア樹脂溶液(PU6H、PU18H、及びPU19H)を得た。配合(単位:部)を表10に示す。
【0074】
<粘着PETフィルムの製造>
コロナ処理を施した塗工面を有するA4サイズのPETフィルムを用意した。このPETフィルムの塗工面に、調製した各ポリウレタン-ウレア樹脂溶液を乾燥膜厚が5μmとなるようにそれぞれ塗工した。80℃で2分間乾燥した直後、300gの鉄の棒に巻き取って、粘着PETフィルムを製造した。
【0075】
<評価(3)>
(ガラス表面、PETフィルムとの剥離強度)
製造した粘着PETフィルムを75mm×25mm幅のガラス板に貼り合わせて、剥離強度測定用の試料片を得た。引張試験装置を使用し、粘着PETフィルムの剥離強度(180°ピール、引張速度:300mm/分)を測定した。結果を表10に示す。
【0076】
(熱融着性)
上記の「剥離強度」を測定する際に作製した剥離強度測定用の試料片を、それぞれ「100℃で1分間」及び「40℃で1晩」加熱して熱融着サンプルを得た。引張試験装置を使用して熱融着サンプルからの粘着フィルムの剥離強度(180°ピール、引張速度:300mm/分)を測定し、以下に示す評価基準にしたがって熱融着性を評価した。結果を表10に示す。
◎:粘着PETフィルムが材破、又は、部分的に材破した。
○:粘着PETフィルムは材破しなかったが、剥離強度は10倍以上であった。
×:剥離強度に変化なし。
【0077】
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のポリウレタン-ウレア樹脂溶液は、塗料、インキ、コーティング剤、ホットメルト接着剤、フィルム、及びシート等の物品を構成する材料として有用である。さらに、本発明のポリウレタン-ウレア樹脂溶液を用いて製造される粘着シートは、巻き取り時に離型紙や離型フィルムなどのセパレーターを必要としないので、極めてエコノミーかつエコロジーである。