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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】非接触型温度センサ
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/04 20060101AFI20230831BHJP
   H01C 7/02 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
H01C7/04
H01C7/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022071749
(22)【出願日】2022-04-25
【審査請求日】2022-08-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】711004539
【氏名又は名称】蕨 直文
(72)【発明者】
【氏名】蕨 直文
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-293204(JP,A)
【文献】国際公開第2007/122925(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/104868(WO,A1)
【文献】特開平04-293203(JP,A)
【文献】特開平10-261507(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152222(WO,A1)
【文献】特開2003-158146(JP,A)
【文献】特開2014-070953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/00
H01C 7/02
H01C 7/04
G01J 5/00-5/90
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触型温度センサは一対の導体部を備えた絶縁基盤と、前記一対の導体部と電気的に接続できる一対の電極部を備えた感熱機能の組成物抵抗体層を具備したサーミスタとからなり、前記一対の導体部と前記一対の電極部を電気的に接続する為に導電材を介在させ対向する形で配設し、前記導電材に継続した押圧を加え前記絶縁基盤上面と前記組成物抵抗体層との隙間が2mm以下である前記サーミスタの傾きが、3/10以下である事を特徴とした非接触型温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載した非接触型温度センサを具備した製品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁物上に感熱機能の組成物抵抗体層を具備したサーミスタ(図2)と、それを搭載する一対の導体部を備えた絶縁基盤との間隔に関する事と、該サーミスタと該絶縁基盤間に介在する導電材の一種である、金属粒子ペーストのオーミック接触に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁物上に感熱機能のある組成物抵抗体層を具備したサーミスタの電極部と、絶縁基盤上に備えた一対の導体部とを電気的に接続すると、非接触型温度センサが可能となる。
【0003】
非接触型温度センサは、測定の対象物が発している放射線エネルギー(遠赤を含む赤外線や紫外線等)を、非接触で温度を感知し、電気的に接続されたリード線等のユニットを介して温度表示や温度制御を行っている。
【0004】
その非接触型温度センサを利用した製品としては、コピー機、プリンター、オーブンレンジ、体温計、風速センサ等が挙げられる。
【0005】
大きな特徴を従来型の接触式温度センサと比較すると、従来型ではコピー、プリンター等の定着用熱ローラと接している為にローラに少なからずキズを発生させ印刷物にスジが生じる不具合があるが、非接触型温度センサの場合はローラと接していない為にキズを発生させる事が無く、又オーブンレンジでは的を絞って食品の温度観察ができ解凍等に便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開番号W02016/152222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1に示す一例として挙げた非接触型温度センサは、対象物(8、発熱源)から発せられる放射線エネルギ-(7、遠赤を含む赤外線、紫外線)が、対象物側の絶縁基盤下面(5a)から熱伝導によって絶縁基盤上面(5b)へと移動し、移動してきた絶縁基盤上面(5b)の温度をサーミスタの組成物抵抗体層(4)が測定をしているものである。
【0008】
特許文献1は、絶縁物上に感熱機能のある組成物抵抗体層を具備し、一対の電極を備えたサーミスタを絶縁基盤に配設するが、サーミスタと絶縁基盤との間隔が大きくなったり又はサーミスタ本体の勾配が大きくなったりする場合があり、入射してきたエネルギ-に対する測定が不安定となり、温度に対しての精度は低く不正確な制御に至り、結果として歩留まりは低くなる。
【0009】
図3及び図7の模式図は歩留まり低下要因の主な状態である。
【0010】
歩留まり低下のメカニズムは、絶縁物上に電気的に接続された一対の電極部を備えた感熱機能の組成物抵抗体層を具備したサーミスタ(2)は表面実装部品であり、その形状と重さは一例として1.0(長さ)×0.5(幅)×0.3(厚み)[mm](以後1005と記載)の形状では、絶縁物にアルミナを用いると嵩密度が3.5g/cmであれば、体積×嵩密度より0.525mg、また長さ1.6mm、幅0.8mm、厚み0.3mm(以後1608と記載)の形状であれば、1.344mgであり、軽い為に組立加工中の振動、加熱過程の風、組立用治工具の熱膨張による歪みが生む振動の影響を容易に受け、最初に正しい配設が行われても図3の様なサーミスタ本体が勾配を形成した状態になってしまう。
【0011】
また原材料である導電材からの影響も大きく、塗布量差による熱膨張差及び表面張力差、また内包されている気泡や加熱過程で生まれるガス等によりサ-ミスタは、容易に浮き上がる、勾配を形成する現象を生じやすい(図3)(図7)。
【0012】
これらは配設時に一対の導体部(6)を備えた絶縁基盤(5)との接触を向上させる介助材(仮止材)が、絶縁基盤上面(5b)と接する感熱機能の組成物抵抗体層(4)表面を汚染する為に使用できない事が大きな要因である。
【0013】
導電材は二種あり、一つは半田ペースト、二つ目が金属粒子(金、銀、白金等)を有機系、例えばエポキシ樹脂等をフィラ-としたペースト状の金属粒子ペースト、又は無機系材料、例えばガラス等をフィラ-として混ぜ合わせた金属粒子ペースト(銀ペースト、金ペースト等)がある。
【0014】
電気的接続に半田ペーストを用いた場合は、表面張力等により円錐状で固体化し機械的強度の低下や対流現象等(10)を生む勾配が形成され、抵抗値振れ幅(リップリ)が大きくなり、また金属粒子ペーストの場合は内部に含まれた金属粒子の配向性が乱れ(図7)、金属粒子が互いに接触しない非オーミック接触となる事で(図5)、抵抗値振れ幅(リップル)も大きく、更に測定精度の信頼性も劣る。
【0015】
ここで述べる「金属粒子の配向性が乱れる状態」とは、図7に示す加熱により軟化した導電材の一種である金属粒子ペーストが、押圧が無く、又は絶縁基盤との接触を向上させる段落(0012)に記載した介助剤が無い事により勾配を形成し、金属粒子の方向が不揃いとなり、互いの金属粒子の接触がない非オーミック接触に至る事を指している。
【0016】
オーミック接触が生まれるメカニズムを他の表面実装抵抗部品で述べると、片方の電極部には上下、左右側面、特性を引出す面の計5ケ所に電極部があり、電気的に接続する場合は導電材に含まれている介助剤(例えばロジン、フラックス)が5面に対しての濡れ性を高める働きをし、さらに段落(0012)に記載した絶縁基盤との接触を向上させる介助材が介在する事で押圧と同等の効果を生み、部品が浮き上がらない配向性の良いオーミック接触を得られる。
【0017】
しかし図2の様なサーミスタは、電極部が下面1ケ所だけで他の四面(左右、上面、短辺と高さ辺で構成された面)は絶縁物(セラミックス、樹脂等)の為に、導電材内に介助材が存在しても濡れる事は無く弾かれ、更に絶縁基盤との接触を向上させる段落(0012)に記載した介助材が無い事で浮き上がる現象は、半田ペースト、金属粒子ペーストの双方とも回避はできない。
【0018】
これはサーミスタ(2)の重量より導電材(7、半田ペースト、金属粒子ペースト)の表面張力や、内包される気泡の熱膨張力等が大きい事で、段落(0012)に記載した絶縁基盤との接触を向上させる介助剤が無い為に、金属粒子ペーストの場合ではオーミック接触を得られないまま浮き上がりによる勾配を形成し、これはサーミスタの極小化が進む程、例えば1608より小さくなる、1005、長さ0.3、幅0.15、厚み0.3[mm]の03015では、電極部(3)面積が更に小さい事で加速される。
【0019】
図3の様な浮き上がる現象、サーミスタが勾配を形成した状態で配設されると、計測中に軽くなった気体は上昇し対流現象(10)を生み熱が逃げ、抵抗値が飽和するまでの到達時間が嵩み、更に金属粒子ペーストでは非オーミック接続となり、図5の低電流(10μA以下)領域においてI-V特性に障害を生み、周囲温度等の変化により他の電流域でも不安定な抵抗値となる。
【0020】
これらの問題に鑑み本発明は、導電材(7)の一種、金属粒子ペーストはオーミック接触を形成し、尚且つ半田ペーストと金属粒子ペーストの双方の導電材が勾配の形成を抑制する事で、対流(10)の影響がない絶縁基盤(5)とサーミスタ(2)の感熱機能の組成物抵抗体層(4)との隙間の技術開示を行う。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1に記載する発明は、非接触型温度センサは一対の導体部(6)を備えた絶縁基盤(5)と、前記一対の導体部(6)と電気的に接続できる一対の電極部(3)を備えた感熱機能の組成物抵抗体層(4)を具備したサーミスタ(2)とからなり、前記一対の導体部(6)と前記一対の電極部(3)を電気的に接続する為に導電材(7)を介在させ対向する形で配設し、前記導電材(7)に継続した押圧を加えて、前記絶縁基盤上面(5b)と前記組成物抵抗体層(4)との間隔が、好ましくは2.0mm以下で有る事を特徴とする非接触型温度センサである。
【0022】
請求項2に記載する発明は、前記絶縁基盤上面(5b)と前記組成物抵抗体層(4)の間隔が、最も好ましくは0.7mm以下の請求項1に記載した非接触型温度センサである。
【0023】
請求項3に記載する発明は、請求項1乃至請求項2に記載した前記サーミスタの勾配が、3/10以下で形成された非接触型温度センサである。
【0024】
請求項4に記載する発明は、一対の導体部(6)を備えた絶縁基盤(5)と、前記一対の導体部(6)と対向する形で配設する一対の電極部(3)を備えた感熱機能の組成物抵抗体層(4)を具備したサーミスタ(2)と、前記一対の導体部(6)と前記一対の電極部(3)とを電気的に接続する為に介在する導電材(7)とからなり、前記絶縁基盤上面(5b)と前記組成物抵抗体層(4)との間隔が、好ましくは2.0mm以下で有る事を特徴とした非接触型温度センサにおいて、前記導電材(7)の金属粒子ペースト(7a)がオーミク接触を備えた事を特徴とする非接触型温度センサである。
【0025】
サーミスタの電極部(3)と絶縁基盤の導体部(6)を電気的に接続する導電材(7)は、半田ペースト若しくは金、銀、銅、白金等の金属粒子を含んだ金属粒子ペースがあり、何れもオーミック接触が重視され、一例として銀ペーストではナミックス(株)製H9403系等がある。
【0026】
図8は金属粒子ペーストがオーミック接触を備える一例の模式図で、サーミスタが配設された時から加熱(硬化)終了までの間、サーミスタ(2)を介して導電材(7)の金属粒子ペーストに、継続した押圧を加え金属粒子方向が一方向に揃い接点が点接触から線接触、そして面接触となり図6の様なオーミック接触となり、更に配設後の勾配も形成されない。
【0027】
図8の状態で導電材に半田ペーストを用いると、配設後の勾配は抑制され対流(10)現象も抑制される構造となる。
【0028】
発明の効果の観察は、JIS規格等で規定されているものではない為に、ここではI-V特性によるオーミック接触の有無と、測定温度の無負荷抵抗値の振れ幅(リップル現象)を観察し、振れ幅が±1℃未満が最も好ましい温度揺れ幅、±1℃≦振れ幅≦±2℃が好ましい揺れ幅、±2℃を超える場合は使用するには不適切とし、尚且つ非オーミック接触が観察された場合は、好ましい揺れ幅、最も好ましい揺れ幅に関わらす不適切と判断した。
【0029】
またサーミスタの配設状況は、加熱後(硬化後)図9に記載したC-D,C-E間の高さの違いをレーザ変位計で測定し差異を観察し、その違いを勾配として記録した。
【0030】
図4は、85℃抵抗値振れ幅の測定方法の一例の模式図、オーミック接触の有無は、図5のI-V特性の観察をカーブトレーザ若しくはオシロスコープで行い、10μA以下の領域において直線の場合はオーミック接触、曲線の場合は非オーミック接触と判定した。
【発明の効果】
【0031】
表2より、温度振れ幅±2℃以下及びオーミック接触も良好なもの、双方の条件を満たす試料番号は、表2-1の実施例試料番号1乃至表2-5の実施例試料番号25まで、また勾配では、0のものが実施例試料番号1から実施例試料番号20迄、許された勾配は実施例試料番号25の3/10迄が許容できる勾配と観察でき、これらの結果から、隙間の範囲は、下限値が絶縁基盤上面(5b)とサーミスタ(2)の組成物抵抗体層(4)が接触した状態(表2-1)、上限値が、絶縁基盤上面(5b)より2.0mm以下(表2-5)である事が観察できた。
【0032】
また最も好ましい隙間は、表2-1より下限値が絶縁基盤上面(5b)とサーミスタの組成物抵抗体層が接触している状態であり、表2-3より上限値は絶縁基盤上面(5b)とサーミスタの組成物抵抗体層の隙間が0.7mm以下である事が観察できた。
【0033】
発明の効果に用いた実施例は、治工具を用いてウェイト(22)からサーミスタ(2)を介して導電材(7)に継続した押圧を加えオーミック接触を導き、その後抵抗値の振れ幅、サーミスタの配設状況を観察した。
【0034】
サーミスタの配設状況は、加熱(硬化)終了後、図9に示すサーミスタ三隅の高さ違いより勾配を測定し、また配設時にスペーサ(23)を用いる事で、サーミスタ(2)の組成物抵抗体層(4)と絶縁基盤上面(5b)の隙間を調整し、対流(10)現象との温度振れ幅との関係把握ができ、許される勾配は表2-1乃至表2-5より、下限値が0勾配、上限値が表2-5実施例試料番号25より、3/10迄である事が観察できた。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
実施例の配設状況は、表2-1乃至表2-4迄サーミスタの勾配は観察できず対流の発生が無いが、隙間が大きくなる表2-6(2.5mm以上)になると熱が逃げる現象が、温度振れ幅(リップル現象)よりが観察できた。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】非接触型温度センサ構造の一例図
図2】組成物抵抗体層を具備したサーミスタの一例図
図3】特許文献の構造図の一例
図4】測定状態の模式図の一例
図5】V-Iカーブ曲線の例(オーミックと非オーミック接触の差)
図6】オーミック接触の金属粒子ペースト内の配向性模式図の一例
図7】非オーミック接触の金属粒子ペースト内の配向性模式図の一例
図8】押圧を加えた状態図の模式図の一例
図9】勾配の測定方法の模式図の一例
図10】ウェイト、スペーサを用いずに押圧を加える一例図
【発明を実施するための形態】
【0039】
絶縁物上に一対の電極と電気的に接続する感熱機能の組成物抵抗体層を具備したサーミスタ(2)の造り方は、一例として、絶縁物上に一対の電極部となるPt、Au等の金属を少なくとも一種スパッタし、ドライエッチし、アニールし、組成物抵抗体を一対の電極部の一部を残し少なくとも一回スパッタし積層し、金属等をリフトオフし、所定部分をSiOで被覆し、1608、場合によっては2.0(長さ)mm、1.25(幅)mm、厚み0.3mmの2125形状、又は1005形状にダイシングする。
【0040】
スパッタ以外の方法では、一対の電極部を蒸着し形成し、次にリフトオフしシンタリングし、次にメタルマスク等を用いて組成物抵抗体層を電極部の一部を残し印刷し、レべリングし、アニールし電極部(3)の一部を残しガラス被覆しダイシングする方法もある。
【0041】
電極部以外をガラス被覆する場合は、条件によってはガラスが加熱により組成物抵抗体層を侵食し、組成物抵抗体層内のCo、Ni等の重金属の移動が起こり、抵抗値に変動が生じやすい。特に焼結阻害剤のFeが含まれている場合は顕著に起こりやすくなる。
【0042】
図4に記載した一例の模式図の様に発明の効果を観察した。白金測温抵抗体で85℃にコントロールされた油槽を用い、非接触型温度センサが取付けられる孔部分(12)以外は密閉状態とし、油面から発生する放射線エネルギ-を感知し抵抗値の振れ幅を観察する(抵抗値振れ幅は対流、放射、伝導等の影響が顕著に現れる)。
【0043】
また周囲からの電磁波や赤外線等を遮断する為に、暗室及び用いる治工具を出来るだけ艶消黒色で被覆し、外部ファクタによる影響も減らした。
【実施例
【0044】
準備する原材料として、絶縁物上に電気的に接続された一対の電極部(3)を備えた感熱機能の組成物抵抗体層(4)を具備したサーミスタ(2)、実施例では1608形状を用い、他に一例として、一対の導体部を備えた絶縁基盤(5)、好ましくはポリイミド基盤等の赤外線透過率並びに吸収率が高いものであり外部との接続が可能なもの、半田ペースト又は他の導電性ペースト(7)、例えば銀ペーストが必要となる。
【0045】
絶縁基盤の赤外線の吸収率が高い場合は、到達する時間は短いが放熱性は劣る、透過率が高い場合は、サーミスタの感熱機能の組成物抵抗体層を直接暖める事ができ、放熱性は絶縁基盤等の密度や構造に左右される。
【0046】
一例として挙げた図1を作製する副資材としては、一例として記載した図8で説明をすると、サーミスタの上に載せるウェイト(22)、及びそのホルダ(21)、絶縁基盤との隙間を確保する絶縁物板片のスペーサ(23)、加熱温度に耐えるプレート(19)、本発明では熱拡散率が高く熱膨張の小さいものを選定し、例えば単結晶アルミナ、SiC等である。
【0047】
図8において説明をすると、最初にプレート(19)のピン(20)に絶縁基盤(5)を固定し、次に絶縁基盤上の一対の導体部(6)間にスペーサとなる絶縁物板(23)例えば硬質ガラスを仮付けし、次に絶縁基盤上の導体部分(6)に銀ペースト(7)を塗布し(この順序は逆でも良い)、その銀ペースト(7)と接触する様に一対のサーミスタの電極部(3)を対向する様に載せ、絶縁基盤方向に軽く押し、次にホルダ(21)とウェイト(22)を載せ導電材(7)に継続した押圧を加える。またホルダ(21)は覆いとなる為に風除効果もある。
【0048】
この時の銀ペースト(7)は、用いたスペーサ(23)の厚み、又は絶縁基盤上面(5b)より0.2mm以上、0.4mm以下になる様に塗布し、更に絶縁基盤の導体部(6)及びサーミスタ電極部(3)が隠蔽できる体積が必要である。
【0049】
スペーサ(23)は、サーミスタの組成物抵抗体層と絶縁基盤上面(5b)との隙間を調整し、更にウェイトはサーミスタの加熱中の風、振動、導電材の膨張等によるズレ、勾配の発生を防ぎ継続した押圧を目的としている。
【0050】
図8はウェイト(22)がサーミスタ(2)固体別に対応した模式図で、重量は好ましくは1.0g/mm以上が良い。
【0051】
図10に、ウェイト(22)、スペーサ(23)を用いずに押圧と隙間をコントロールする方法の模式図の二例を記載した。
【0052】
図10の左側はスペーサ(23)を使用せず、ウェイト(22)の代わりに絶縁基盤上面(5b)とサーミスタの組成物抵抗体層(4)の隙間を調整できる高さ調整棒体(25)例えばネジであり、棒体の上下を調整する事でサーミスタ(2)の組成物抵抗体層(4)と絶縁基盤上面(5b)の隙間が調整、固定でき、導電材に継続した押圧が加えられオーミック接触を得て電気的に接続できる、右図も同様にスペーサ(23)を使用せず、板材体(26、弾性体を含)の深さをフォミングで調整し、絶縁基盤上面(5b)と組成物抵抗体層(4)との隙間を調整し固定する事で、導電材に継続した押圧を加えオーミック接触を導き電気的に接続させる副資材の治工具である。
【0053】
次に銀ペースト(7)を加熱により軟化、硬化させ、サーミスタ電極部(3)と絶縁基盤の導体部(6)を電気的に接続し、冷却後ホルダ(21)とスペーサ(23)(絶縁物板)を取り外す。
【0054】
実施例おいて絶縁版(23)を仮付けしない場合は、余分な導電材を吸収する為にサーミスタの電極部若しくは絶縁基盤の導体部側又は両方に、スリット、ディンプル又はバンプ状等何れかのバッファ-を施す事が好ましい。
【0055】
図1における「A」は、実施例では用いたスペーサの厚みとなる。
【0056】
図4に記載した85℃に設定された油槽上面(16)より3mm離れた孔(11)の位置に、実施例で作製した非接触型温度センサ(1)を取付け、板材体等で直接外気が当たらない様に覆い(11)を設け、出力される抵抗値の振れ幅(リップル)を測定するが、測定値は油槽温度85℃ではなく、サーミスタ抵抗値が飽和した時から1分間の振れ幅(リップル)を記載したものである。
【0057】
測定の精度を高める為に、予め非接触型温度センサを65℃乃至90℃の範囲において油槽内にラッピングしてから浸漬し各抵抗値を測定し、その後測定に至った。
【0058】
感熱機能の組成物抵抗体層を具備している絶縁物の材質は、例えば結晶質ではアルミナ、ステアタイト、非晶質では硬質ガラス、例えばパイレックス(登録商標)ガラス、eガラス、sガラス、有機物では四フッ化エチレン、PP等があり、実施例ではアルミナを使用した。
【0059】
感熱機能の組成物抵抗体層は、コバルト、マンガン、ニッケル、銅、ランタン及び鉄の中から選ばれた少なくとも二種を含む複合酸化物のNTCサーミスタ、又はチタン酸バリウムに微量の希土類元素を含んだPTCサーミスタがある。
【0060】
実施例で用いた組成物抵抗体層は、体積抵抗率:1.5kΩ・cm、B定数:4200K(25℃/85℃)のNTCサーミスタを使用した。
【0061】
絶縁基盤は、フレキシブルタイプではポリイミド、PET、リジットタイプでは紙フェノール、ガラスエポキシ等の基盤があり、導体部は銅等の金属を中心とした基材で、銅箔、銅線等がある。
【0062】
本発明で述べている「勾配」とは、サーミスタが配設され導電材と接触してから加熱(硬化)を経て電気的に接続され、冷却後、固体別サーミスタ三隅の高さ違いを図9に示したC-D、C-E間で測定し、その値よりX/10勾配と言う形に換算し、表2にはX=「換算した値」として記載した。
【0063】
本発明で述べている「配設」とは、サーミスタの電極部が導電材に接触してから加熱(硬化)終了迄の範囲を指し、「配設状況」とはサーミスタの勾配を指している。
【符号の説明】
【0064】
1 非接触型温度センサ
2 抵抗体層を具備したサーミスタ
3 サーミスタの電極部
4 組成物抵抗体層
5 絶縁基盤
5a 絶縁基盤下面
5b 絶縁基盤上面
6 絶縁基盤の導体部
7 導電材(半田ペースト、金属粒子ペースト)
7a 導電材の中の金属粒子
7b 金属粒子ペースト内の有機物
8 対象物(発熱源)
9 放射エネルギ-(赤外線等)
10 熱の逃げ(対流、放射)
11 密閉用覆い(蓋体)
12 測定用孔
13 リード線
14 油槽筐体
15 油槽
16 油槽上面
17 導電材の中に含まれていた気泡の膨張後
18 計測器(DMM等)
19 プレート
20 絶縁基盤とプレートの位置合わせピン
21 ホルダ
22 ウェイト(サーミスタ固体別に対応)
23 スペーサ(隙間を維持する絶縁物)
24 レーザ変位計
25 棒体(サーミスタ固体別対応押圧調整ネジ等)
26 タップ
27 板材体(サーミスタ固体別に対応)
【要約】

【課題】従来の非接触型温度センサは、サーミスタの電極面を絶縁基盤の導体部面に塗布された導電性ペースト上(半田、又は金属粒子ペースト)に対向する様に配設し電気的に接続するが、ペーストの塗布量差による熱膨張差、表面張力差、また内包された気泡の膨張、発生するガス等により、絶縁基盤より浮き上がる現象が生じ、その隙間から対流が生まれ入射エネルギ-を感知する精度、速度が落ち、更に金属粒子ペーストにおいては非オーミック接触となり測定値に不安が残る。
【解決手段】絶縁基盤からの浮き上がり防止は、サーミスタにウェイト、棒体又は弾性体等用い、サーミスタを介して継続的な押圧を導電材に加え、絶縁基盤上面とサーミスタの感熱機能の組成物抵抗体層の隙間を調整し、金属粒子ペーストではオーミック接続を高め、他の半田及び金属粒子ペースト共に発熱源からのエネルギを効率よく正確に捉え、測定精度を高めた非接触型温度センサである。
【選択図】 図1
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