(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】樹脂組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 77/10 20060101AFI20230831BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230831BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20230831BHJP
C08G 69/26 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
C08L77/10
C08K3/013
C08K7/14
C08G69/26
(21)【出願番号】P 2019107262
(22)【出願日】2019-06-07
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】523168917
【氏名又は名称】グローバルポリアセタール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】小林 政之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智則
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-106906(JP,A)
【文献】特開2015-105321(JP,A)
【文献】特開平10-130497(JP,A)
【文献】特開2001-164109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/10
C08K 3/013
C08K 7/14
C08G 69/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミド樹脂97~30質量部と(B)ポリアミド樹脂3~70質量部とを含み、
前記(A)ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の
70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の
70モル%以上がアジピン酸に由来し、
前記(B)ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の
70モル%以上が
1,10-デカンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の
70モル%以上がテレフタル酸に由来する、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)ポリアミド樹脂の融点が290℃以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)ポリアミド樹脂のガラス転移温度が120℃以上である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、強化繊維を、(A)ポリアミド樹脂と(B)ポリアミド樹脂の合計100質量部に対し、30~300質量部含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記強化繊維が、ガラス繊維を含む、請求項
4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)ポリアミド樹脂97~51質量部に対し、前記(B)ポリアミド樹脂を3~49質量部含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物を4mm厚さのISO引張り試験片に成形し、80℃の条件下に20分静置した後の、ISO178に準拠した曲げ強さの保持率である(静置後の曲げ強さ/静置前の曲げ強さ)×100が76%以上である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物を4mm厚さのISO引張り試験片に成形し、80℃の条件下に20分静置した後の、ISO178に準拠した曲げ弾性率の保持率である(静置後の曲げ弾性率/静置前の曲げ弾性率)×100が78%以上である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項10】
エンジン部品に用いる、請求項
9に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロン6やナイロン66に代表される結晶性のポリアミド樹脂は、靭性、耐化学薬品性、電気特性等の優れた特性や溶融成形加工の容易性から、エンジニアリングプラスチックとして自動車部品、機械部品、電機・電子機器部品等の用途に幅広く使用されている。
特に、キシリレンジアミンとアジピン酸とから得られるMXD6はポリアミド6やポリアミド66等に比べて高い曲げ強さおよび高い曲げ弾性率を有するので、各種工業用材料として特に有用である。このようなポリアミド樹脂(MXD6)として、例えば、特許文献1には、ジアミン成分に由来する構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来するものであり、かつジカルボン酸成分に由来する構成単位が主としてアジピン酸に由来するものであるポリアミド樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のとおり、MXD6は曲げ弾性率および曲げ強度が高いが、近年の技術革新に伴い、さらに、高温環境下でもその物性が高い値で保持できることが求められる。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、機械的強度に優れ、かつ、高温環境下でもその機械的強度を高い値で保持できる樹脂組成物および、前記樹脂組成物を用いた成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、メタキシリレンジアミンとアジピン酸等から形成されるポリアミド樹脂に、直鎖脂肪族ジアミンとテレフタル酸等から形成されるポリアミド樹脂を所定の比率でブレンドすることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>(A)ポリアミド樹脂97~30質量部と(B)ポリアミド樹脂3~70質量部とを含み、前記(A)ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%超がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%超がアジピン酸に由来し、前記(B)ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%超が直鎖脂肪族ジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%超がテレフタル酸に由来する、樹脂組成物。
<2>前記(B)ポリアミド樹脂の融点が290℃以上である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記(B)ポリアミド樹脂のガラス転移温度が120℃以上である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記(A)ポリアミド樹脂は、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がアジピン酸に由来し、前記(B)ポリアミド樹脂は、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が炭素数5~12の直鎖脂肪族ジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がテレフタル酸に由来する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記(A)ポリアミド樹脂は、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がアジピン酸に由来し、前記(B)ポリアミド樹脂は、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が1,10-デカンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がテレフタル酸に由来する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>さらに、強化繊維を、(A)ポリアミド樹脂と(B)ポリアミド樹脂の合計100質量部に対し、30~300質量部含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記強化繊維が、ガラス繊維を含む、<6>に記載の樹脂組成物。
<8>前記(A)ポリアミド樹脂97~51質量部に対し、前記(B)ポリアミド樹脂を3~49質量部含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>前記樹脂組成物を4mm厚さのISO引張り試験片に成形し、80℃の条件下に20分静置した後の、ISO178に準拠した曲げ強さの保持率である(静置後の曲げ強さ/静置前の曲げ強さ)×100が76%以上である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>前記樹脂組成物を4mm厚さのISO引張り試験片に成形し、80℃の条件下に20分静置した後の、ISO178に準拠した曲げ弾性率の保持率である(静置後の曲げ弾性率/静置前の曲げ弾性率)×100が78%以上である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<12>エンジン部品に用いる、<11>に記載の成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、機械的強度に優れ、かつ、高温環境下でもその機械的強度を高い値で保持できる樹脂組成物および、前記樹脂組成物を用いた成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0008】
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂97~30質量部と(B)ポリアミド樹脂3~70質量部とを含み、前記(A)ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%超がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%超がアジピン酸に由来し、前記(B)ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%超が直鎖脂肪族ジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%超がテレフタル酸に由来することを特徴とする。
(A)ポリアミド樹脂は、機械的強度に優れるが、高温環境下で使用すると機械的強度が劣ってしまう場合があった。一方、(B)ポリアミド樹脂は、本来的に機械的強度が低い傾向にある樹脂であるが、(A)ポリアミド樹脂にブレンドすると、高温環境下で使用したときに、(A)ポリアミド樹脂が本来的に有する高い機械的強度を保持できることを見出した。また、(B)ポリアミド樹脂の含有量が多いと、機械的強度そのものが低下してしまう。本発明では、(A)ポリアミド樹脂と(B)ポリアミド樹脂のブレンド比を調整することにより、この点を回避し、本発明を完成するに至った。
【0009】
<(A)ポリアミド樹脂>
本発明の樹脂組成物は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%超がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%超がアジピン酸に由来するポリアミド樹脂(A)を含む。
【0010】
(A)ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来することが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来する。
【0011】
メタキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
特に、メタキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、パラキシリレンジアミンが好ましい。
【0012】
(A)ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がアジピン酸に由来し、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上がアジピン酸に由来する。
【0013】
また、アジピン酸以外のジカルボン酸としては、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の直鎖脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0014】
(A)ポリアミド樹脂の好ましい実施形態は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がアジピン酸に由来する形態である。
【0015】
本発明で用いる(A)ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位とから構成されるが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。ここで主成分とは、(A)ポリアミド樹脂を構成する構成単位のうち、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計数が全構成単位のうち最も多いことをいう。本発明では、(A)ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましい。
【0016】
本発明の樹脂組成物に用いられる(A)ポリアミド樹脂は、数平均分子量(Mn)の下限が、6,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましく、15,000以上であることが一層好ましく、20,000以上であることがより一層好ましい。上記Mnの上限は、35,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、28,000以下がさらに好ましい。
【0017】
本発明で用いる(A)ポリアミド樹脂は、融点が200℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることがさらに好ましい。前記融点の上限値としては、289℃以下が実際的であり、250℃以下であってもよい。
ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。前記ガラス転移温度の上限値としては、特に定めるものではないが、119℃以下が実際的であり、100℃以下であってもよい。
ポリアミド樹脂(A)の融点およびガラス転移温度は、以下の方法に従って測定される。ポリアミド樹脂(B)についても同様である。
熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で25℃から予想される融点以上の温度まで昇温し、吸熱ピークのトップの温度を融点とする。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移温度を求める。測定装置は、例えば、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC-60」を用いることができる。
【0018】
<(B)ポリアミド樹脂>
本発明の樹脂組成物は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%超が直鎖脂肪族ジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%超がテレフタル酸に由来するポリアミド樹脂(B)を含む。
(B)ポリアミド樹脂は、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が直鎖脂肪族ジアミンに由来することが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上が直鎖脂肪族ジアミンに由来する。
【0019】
直鎖脂肪族ジアミンは、炭素数5~12の直鎖脂肪族ジアミンであることが好ましく、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミンであることがより好ましく、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミンおよび1,10-デカンジアミンであることがさらに好ましく、1,10-デカンジアミンであることが一層好ましい。
【0020】
直鎖脂肪族ジアミン以外のジアミンとしては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0021】
(B)ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がテレフタル酸に由来することが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上がテレフタル酸に由来する。
【0022】
また、テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、ピメリン酸、スベリン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の直鎖脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0023】
(B)ポリアミド樹脂の好ましい実施形態は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が1,10-デカンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がテレフタル酸に由来する形態である。
【0024】
本発明で用いる(B)ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位とから構成されるが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。ここで主成分とは、(B)ポリアミド樹脂を構成する構成単位のうち、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計数が全構成単位のうち最も多いことをいう。本発明では、(B)ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましい。
【0025】
本発明で用いる(B)ポリアミド樹脂は、数平均分子量(Mn)の下限が、6,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましく、15,000以上であることが一層好ましく、20,000以上であることがより一層好ましい。上記Mnの上限は、35,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、28,000以下がさらに好ましい。
【0026】
本発明で用いる(B)ポリアミド樹脂は、融点が290℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、310℃以上であることがさらに好ましい。前記融点の上限値としては、特に定めるものではないが、330℃以下が実際的である。
ポリアミド樹脂(B)のガラス転移温度は、120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。前記ガラス転移温度の上限値としては、特に定めるものではないが、170℃以下が実際的である。
【0027】
<(A)ポリアミド樹脂と(B)ポリアミド樹脂のブレンド比>
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂97~30質量部と(B)ポリアミド樹脂3~70質量部とを含み、(A)ポリアミド樹脂97~51質量部に対し、(B)ポリアミド樹脂を3~49質量部含むことが好ましく、(A)ポリアミド樹脂97~70質量部に対し、(B)ポリアミド樹脂を3~30質量部含むことがより好ましく、(A)ポリアミド樹脂93~70質量部に対し、(B)ポリアミド樹脂を7~30質量部含むことがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。本発明では、(A)ポリアミド樹脂と(B)ポリアミド樹脂の合計量が100質量部としたときに、上記範囲を満たすことがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、また、強化繊維を含まない場合、(A)ポリアミド樹脂と(B)ポリアミド樹脂の合計が、樹脂組成物の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、強化繊維を含む場合、(A)ポリアミド樹脂と(B)ポリアミド樹脂の合計が、樹脂組成物の強化繊維を除いた成分の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましい。
(A)ポリアミド樹脂および(B)ポリアミド樹脂は、それぞれ1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0028】
また、本発明では、(A)ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がアジピン酸に由来し、かつ、(B)ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が炭素数5~12の直鎖脂肪族ジアミン(好ましくは、1,10-デカンジアミン)に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がテレフタル酸に由来する組み合わせであることが特に好ましい。
【0029】
<強化繊維>
本発明の樹脂組成物は強化繊維を含むことが好ましい。
強化繊維は、有機強化繊維であっても、無機強化繊維であってもよく、無機強化繊維が好ましい。
強化繊維は、植物繊維、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、アラミド繊維等が好ましく、炭素繊維およびガラス繊維から選択されることがより好ましく、ガラス繊維であることがさらに好ましい。
【0030】
ガラス繊維としては、一般的に供給されるEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、および耐アルカリガラス等のガラスを溶融紡糸して得られる繊維が用いられるが、ガラス繊維にできるものであれば使用可能であり、特に限定されない。本発明では、Eガラスを含むことが好ましい。
【0031】
ガラス繊維は、例えば、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理剤の付着量は、ガラス繊維の0.01~1質量%であることが好ましい。さらに必要に応じて、脂肪酸アミド化合物、シリコーンオイル等の潤滑剤、第4級アンモニウム塩等の帯電防止剤、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の被膜形成能を有する樹脂、被膜形成能を有する樹脂と熱安定剤、難燃剤等の混合物で表面処理されたものを用いることもできる。
【0032】
本発明の樹脂組成物に用いるガラス繊維は、市販品として入手できる。市販品としては、例えば、日本電気硝子(NEG)社製、T-275H、T-286H、T-756H、T-289、T-289DE、T-289H、T-296GH;オーウェンスコーニング社製、DEFT2A、PPG社製、HP3540;日東紡社製、CSG3PA-810S、CSG3PA-820;セントラルグラスファイバー社製、EFH50-31(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0033】
強化繊維の断面は、円形および非円形(楕円形、長円形、長方形、長方形の両短辺に半円を合わせた形状、まゆ型等)のいずれであってもよく、円形であることが好ましい。本発明は、強化繊維として、円形断面を有するものを用いた場合に、特に、難燃性や機械的強度の向上効果が顕著である。
ここでの円形は、幾何学的な意味での真円に加え、本発明の技術分野において通常円形と称されるものを含む趣旨である。
非円形断面の強化繊維は、特開2012-214819号公報の段落0048~0052に記載の扁平形状である強化繊維が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0034】
本発明の樹脂組成物中の強化繊維は、数平均繊維長(カット長)が100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましい。上限値としては、10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明の樹脂組成物に用いる強化繊維は、その数平均繊維径が1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。上限値としては、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物における強化繊維(好ましくはガラス繊維)の含有量は、(A)ポリアミド樹脂と(B)ポリアミド樹脂の合計100質量部に対し、30質量部以上であることが好ましく、60質量部以上含むことがより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。また、前記強化繊維の含有量の上限値としては、(A)ポリアミド樹脂と(B)ポリアミド樹脂の合計100質量部に対し、300質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましく、150質量部以下であってもよく、さらには130質量部以下であってもよい。
本発明の樹脂組成物における強化繊維(好ましくはガラス繊維)の含有量は、下限値が、樹脂組成物の25質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましい。前記含有量の上限値は、65質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、機械的強度が顕著に向上する傾向にある。一方、強化繊維の量を上記上限値以下とすることにより、成形性がより向上する傾向にある。
本発明の成形品は、強化繊維を、1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0037】
<核剤>
本発明の樹脂組成物は、結晶化速度を調整するために、核剤を含んでいてもよい。核剤の種類は、特に、限定されるものではないが、タルク、窒化ホウ素、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、窒化珪素、チタン酸カリウムおよび二硫化モリブデンが好ましく、タルクおよび窒化ホウ素がより好ましく、タルクがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物が核剤を含む場合、その含有量は、ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の合計100質量部に対し、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~8質量部がより好ましく、0.1~6質量部がさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、核剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0038】
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、脂肪族カルボン酸アミド、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、ワックスなどが挙げられる。
ワックスとしては、ポリオレフィンワックスまたはケトンワックス、アミドワックス、エステルワックス、パラフィンワックスが好ましく、ケトンワックスがより好ましい。
離型剤の詳細は、特開2017-115093号公報の段落0034~0039の記載、特開2018-184575号公報の段落0068~0091の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0039】
本発明の樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.05~5質量部であることが好ましく、0.1~4質量部であることがより好ましく、0.2~3質量部であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、離型剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0040】
<着色剤>
本発明の樹脂組成物は、着色剤を含んでいてもよい。
着色剤としては、無機顔料(カーボンブラックなどの黒色顔料、酸化鉄赤などの赤色顔料、モリブデートオレンジなどの橙色顔料、酸化チタンなどの白色顔料)、有機顔料(黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料など)などが挙げられる。
着色剤の含有量は、樹脂組成物の0.01~2質量%であることが好ましい。着色剤は1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0041】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。このような添加剤としては、強化繊維以外の充填剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの成分の含有量は、樹脂組成物の5質量%以下の範囲であることが好ましい。
なお、本発明の樹脂組成物は、各成分の合計が100質量%となるように、樹脂成分、および、強化繊維等の必要に応じて配合される他の添加剤の含有量が調整される。
【0042】
<樹脂組成物の特性>
本発明の樹脂組成物は、ISO178に準拠して、ISO引張り試験片(4mm厚)に成形したときの、23℃の温度における曲げ強さが350MPa以上であることが好ましく、360MPa以上であることがより好ましく、370MPa以上であることがさらに好ましい。前記曲げ強さの上限値は、特に定めるものではないが、500MPa以下が実際的である。
本発明の樹脂組成物は、4mm厚さのISO引張り試験片に成形し、80℃の条件下に20分静置した後の、ISO178に準拠した曲げ強さの保持率である、(静置後の曲げ強さ/静置前の曲げ強さ)×100が76%以上であることが好ましく、78%以上であることがより好ましい。上限値としては、特に定めるものではないが、例えば、85%以下が実際的である。
本発明の樹脂組成物は、4mm厚さのISO引張り試験片に成形し、90℃の条件下に20分静置した後の、ISO178に準拠した曲げ強さの保持率である、(静置後の曲げ強さ/静置前の曲げ強さ)×100が65%以上であることが好ましい。上限値は、特に定めるものではないが、例えば、76%以下が実際的である。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、ISO178に準拠して、ISO引張り試験片(4mm厚)に成形したときの、23℃の温度で曲げ弾性率が15GPa以上であることが好ましく、18GPa以上であることがより好ましい。前記曲げ弾性率の上限値は、特に定めるものではないが、30GPa以下が実際的である。
本発明の樹脂組成物は、4mm厚さのISO引張り試験片に成形し、80℃の条件下に20分静置した後の、ISO178に準拠した曲げ弾性率の保持率である、(静置後の曲げ弾性率/静置前の曲げ弾性率)×100が78%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。上限値は、特に定めるものではないが、例えば、85%以下が実際的である。
本発明の樹脂組成物は、4mm厚さのISO引張り試験片に成形し、90℃の条件下に20分静置した後の、ISO178に準拠した曲げ弾性率の保持率である、(静置後の曲げ弾性率/静置前の曲げ弾性率)×100が60%以上であることが好ましく、62%以上であることがより好ましい。上限値は、特に定めるものではないが、例えば、75%以下が実際的である。
曲げ強さおよび曲げ弾性率は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0044】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明において、樹脂組成物の製造方法は、特に定めるものではなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。具体的には、各成分を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどで溶融混練することによって樹脂組成物を製造することができる。
【0045】
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、樹脂組成物を製造することもできる。
さらに、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって、ペレットを製造することもできる。
【0046】
<成形品の製造方法>
本発明の成形品は、本発明の樹脂組成物から形成される。
本発明の成形品の製造方法は、特に定めるものではない。
例えば、本発明の成形品は、各成分を溶融混練した後、直接に各種成形法で成形してもよいし、各成分を溶融混練してペレット化した後、再度、溶融して、各種成形法で成形してもよい。
【0047】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
【0048】
本発明の成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、歯車状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。
【0049】
本発明の成形品の利用分野については特に定めるものではなく、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム等の日用品、防衛および航空宇宙製品等に広く用いられる。
特に、本発明の成形品は、エンジン部品に好ましく用いられる。具体的には、エンジンカバー、エアインテークパイプ、タイミングベルトカバー、インテークマニホールド、フィラーキャップ、スロットルボディ、クーリングファンなどが例示される。
また、本発明の成形品は、特開2019-065122号公報の段落0165に記載されている各種用途にも好ましく用いられる。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0051】
<ポリアミド樹脂(A)>
MXD6:三菱ガス化学社製、#6000、融点237℃、ガラス転移温度85℃
<ポリアミド樹脂(B)>
10T:1,10-デカンジアミンとテレフタル酸から構成されるポリアミド樹脂、製造元:ユニチカ株式会社、品番:ゼコットXN400、融点315℃、ガラス転移温度150℃。上記融点およびガラス転移温度は以下の方法で測定した。
熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で25℃から予想される融点以上の温度まで昇温し、吸熱ピークのトップの温度を融点とした。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移温度を求めた。
測定装置は、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC-60」を用いた。
【0052】
<核剤>
5000A:タルク、林化成社製、ミクロンホワイト5000A
<強化繊維>
T-296GH:円形断面ガラス繊維、日本電気硝子株式会社製
<離型剤>
T-1:ジステアリルケトン、花王社製、カオワックスT-1
<着色剤>
CBMB:カーボンブラックマスターバッチ、三菱ケミカル製、カーボンブラック#45(ファーネスブラック、DBP吸収量53g/100cm3)
【0053】
実施例1~4、参考例1、2
<コンパウンド>
後述する下記表1に記載のペレット(樹脂組成物)を製造した。
具体的には、後述する下記表1に示す各成分であって、ガラス繊維以外の成分を表1に示す割合(単位は、質量部である)をそれぞれ秤量し、ドライブレンドした後、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)のスクリュー根元から2軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE-W-1-MP)を用いて投入した。また、ガラス繊維については振動式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE-V-1B-MP)を用いて押出機のサイドから上述の二軸押出機に投入し、樹脂成分等と溶融混練し、ペレットを得た。二軸押出機の温度設定は、330℃とした。
【0054】
<曲げ強さおよび曲げ弾性率>
上記ペレットを120℃で3時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製、「NEX140III」)にて、シリンダー温度320℃、金型温度130℃の条件で、ISO引張り試験片(4mm厚)を射出成形した。
成形品を、80℃または90℃の環境下に20分静置した後、前記80℃または90℃の環境下で、曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
具体的には、ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、曲げ強さ(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。結果を下記表1に示す。
さらに、曲げ強さ保持率および曲げ弾性率保持率を以下の通り算出した。
曲げ強さ保持率=(静置後の曲げ強さ/静置前の曲げ強さ)×100(単位:100%)
曲げ弾性率保持率=(静置後の曲げ弾性率/静置前の曲げ弾性率)×100(単位:100%)
【0055】
【0056】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、参考例1、2と比較して、高温下での機械的強度の保持率が向上した(実施例1~4)。特に、参考例1、2でも、23℃での機械的強度は高く、(A)ポリアミド樹脂(MXD6)に(B)ポリアミド樹脂(10T)を所定の割合で配合することにより、特異的に、高温下での機械的強度を高く保持できることが分かった。