(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】含水組成物、含水組成物を構成した貼付剤、化粧品又は外皮用医薬品、並びに、これらの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20230831BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230831BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230831BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230831BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230831BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230831BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230831BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230831BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230831BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230831BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230831BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230831BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230831BHJP
A61K 31/4402 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61K9/70 405
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/64
A61Q19/00
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/42
A61K31/4402
(21)【出願番号】P 2021215594
(22)【出願日】2021-12-28
(62)【分割の表示】P 2017152771の分割
【原出願日】2017-07-20
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390011017
【氏名又は名称】ダイヤ製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517277030
【氏名又は名称】金橋ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】守金 眞滋
(72)【発明者】
【氏名】守金 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】吉村 武
(72)【発明者】
【氏名】河野 大地
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-182639(JP,A)
【文献】特表2016-502550(JP,A)
【文献】特開2015-178497(JP,A)
【文献】特開2013-245187(JP,A)
【文献】特開2009-108065(JP,A)
【文献】特表2016-510775(JP,A)
【文献】特開平11-113780(JP,A)
【文献】特開2004-359664(JP,A)
【文献】国際公開第2010/137354(WO,A1)
【文献】特開2017-122073(JP,A)
【文献】特開2004-067587(JP,A)
【文献】特開2000-239118(JP,A)
【文献】特開2005-104929(JP,A)
【文献】特開2008-050273(JP,A)
【文献】特開2017-057189(JP,A)
【文献】特開2000-239146(JP,A)
【文献】特開2013-010737(JP,A)
【文献】特開2008-150311(JP,A)
【文献】特開2008-247807(JP,A)
【文献】特開2012-176903(JP,A)
【文献】特開2012-241005(JP,A)
【文献】特開2005-336127(JP,A)
【文献】特開2012-158567(JP,A)
【文献】特開2010-270083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-9/72
31/00-33/44
47/00-47/69
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水と、
(B)前記水に溶解可能な機能性成分と、を含有する含水組成物であって、
少なくとも、
(C)前記水に溶解可能又は相溶可能な防腐性促進作用を奏する多価アルコールと、
(E)前記水及び/又は前記防腐性促進作用を奏する多価アルコールに溶解可能なパラベ ン類以外の防腐剤と、
を含有してなり、
(E)前記パラベン類以外の防腐剤は、全量に対して、
0.6重量%以上のフェノキシエタノールを含有し、
(C)前記防腐性促進作用を奏する多価アルコールは、
プロピレングリコール、
ブチレングリコール、及び、
グリセリン、
からなる群から選ばれる少なくとも一つの多価アルコールを、
全量に対して、18重量%以上を含有し、
(B)前記機能性成分は、少なくとも、全量に対して、
16重量%以上の水溶性高分子を含有し、
前記水溶性高分子は、前記水に溶解されるとともに、
前記水、前記水溶性高分子、前記多価アルコール、前記パラベン類以外の防腐剤は 、
互いに溶解又は相溶した状態であり、
前記水溶性高分子は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、部分中和型ポ リアクリル酸、カルボキシビニルポリマ、及び、カルボキシアルキルセルロース、 からなる群から選ばれる少なくとも一つの水溶性高分子を含有する、
ことを特徴とする防腐性を有する含水組成物。
【請求項2】
(A)水と、
(B)前記水に溶解可能な機能性成分と、を含有する含水組成物であって、
少なくとも、
(C)前記水に溶解可能又は相溶可能な防腐性促進作用を奏する多価アルコールと、
(E)前記水及び/又は前記防腐性促進作用を奏する多価アルコールに溶解可能なパラベ ン類以外の防腐剤と、
を含有してなり、
(E)前記パラベン類以外の防腐剤は、全量に対して、
0.01重量%以上のカプリル酸グリセリルを含有し、
(C)前記防腐性促進作用を奏する多価アルコールは、全量に対して、
5重量%以上のプロピレングリコールとブチレングリコールと、
5重量%以上のグリセリンと、
を含有し、
(B)前記水に溶解可能な機能性成分は、
イブプロフェンピコノール、及び/又は、ヒア ルロン酸ナトリウムを含有する、
ことを特徴とする防腐性を有する含水組成物。
【請求項3】
(A)水と、
(B)前記水に溶解可能な機能性成分と、を含有する含水組成物であって、
少なくとも、
(C)前記水に溶解可能又は相溶可能な防腐性促進作用を奏する多価アルコールと、
(E)前記水及び/又は前記防腐性促進作用を奏する多価アルコールに溶解可能なパラベ ン類以外の防腐剤と、
を含有してなり、
(E)前記パラベン類以外の防腐剤は、全量に対して、
0.1重量%以上のフェノキシエタノールと、
0.005重量%以上のカプリル酸グリセリルと、
の双方の防腐剤を含有し、
(C)前記防腐性促進作用を奏する多価アルコールは、全量に対して、
5重量%以上のプロピレングリコールとブチレングリコールと、
5重量%以上のグリセリンと、
を含有し、
(B)前記水に溶解可能な機能性成分は、
イブプロフェンピコノール、及び/又は、ヒア ルロン酸ナトリウムを含有する、
ことを特徴とする防腐性を有する含水組成物。
【請求項4】
(B)前記機能性成分は効能付与機能性成分を含有し、
前記効能付与機能性成分は、薬理活性成分、肌改善成分、及び、芳香成分、
からなる群から選ばれる少なくとも一つである、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の防腐性を有する含水組成物。
【請求項5】
(B)前記薬理活性成分は、インドメタシン、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、ジク ロフェナック、ジクロフェナックナトリウム、フェルビナク、ピロキシカム、スプ ロフェン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ケトロラク、リドカイン 、
フルルビプロフェン、メフェナム酸、グリチルリチン酸ジカリウム、及び、サルチ ル酸エステル類、からなる群から選ばれる少なくとも一つの薬理活性成分を含有し 、
前記肌改善成分は、トコフェロール類、プラセンタエキス類、ヒアルロン酸類、エ コンザイム、アルブチン、コラーゲン類、ポリフェノール類、アラントイン、スク ワラン、パンテノール、カミツレエキス、ハマメリスエキス、ラベンダーエキス、 ハトムギエキス、オオバクエキス、米エキス類、サケ卵巣エキス類、サッカロミセ ス、米発酵液、ビタミンC類、ビタミンE類、及び、ビタミン類、からなる群から 選ばれる少なくとも一つの肌改善成分を含有し、
前記芳香成分は芳香を発生する精油成分を含有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の防腐性を有する含水組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の防腐性を有する含水組成物を少なくとも備えた貼付剤、化粧品、または、外皮用医薬品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水組成物に関し、詳しくは、水と機能性成分を含有する含水組成物であって、低減された皮膚感作性が期待できる防腐性を有する含水組成物、その含水組成物を構成した貼付剤、化粧品、又は外皮用医薬品、並びに、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品、医薬品、食料品などの組成物に防腐性を与えるために防腐剤を含有する組成物については種々の提案がなされている。
防腐性は、含水組成物に含有される機能性成分の種類(例えば、タンパク質含有成分、寒天等の天然素材、機能性付与成分、水溶性高分子成分等)、形態(例えば、透明液状、乳化状、ジェル状、ゲル状)、防腐剤が組成物中に溶解されている状態又は溶解されることなく分散状態で含有されている状態、含有量、水性・油性等の構成、貼付剤、化粧品、外皮用薬剤などの製品の種類、等に依存して、著しく異なる。
また、組成物の腐食性は水と機能性成分含有組成物の「水分活性」の差異によっても大きく異なると言われている。水を含有する組成物の水分は、組成物に含有される成分に化学的に結合している結合水、含有成分を溶解している溶解水、含有成分の表面や空隙にしみこんでいる自由水に分類され、この水分活性が組成物の防腐性に密接に関係すると言われている。
【0003】
一般に、水に溶解された機能性成分を備えた含水組成物は、保存中等の経時的に、細菌による腐敗が発生しやすい傾向があり、腐敗による品質低下を防止するために、防腐剤としてパラオキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)、パラオキシ安息香酸プロビル(プロピルパラベン)等のパラベン類を含有した含水組成物が提案されている。
【0004】
例えば、冷却貼付剤としては、特開2000-107219号公報(特許文献1)には、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子と、40重量%以上の水を含有した保水性母材と、該保水性母材内に分散保持された少なくとも表面が親水性を有する繊維とからなり、該繊維の少なくとも一部が上記保水性母材表面に露出している保冷・保湿用ゲルが提案され、保水性母材内に多量に保水することができ保湿能に優れており、また繊維によって該母材内を水分が移動し易く、且つこれらの繊維によって保水性母材から外部への水分の揮散も容易に起き、保冷能にも優れる効果が開示されている。特に、段落0048の実施例1には、パラベン0.1g(0.1重量%)を含有した保水性母材が開示されている。
【0005】
特開2010-13470号公報(特許文献2)には、支持体上に、水、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、難溶性金属塩を含有する薄型水性貼付剤が提案され、人体皮膚に水分保護効果を持続させ、使用性に優れた効果を奏する貼付剤が開示されている。特に、表2の実施例4にプロピルパラベン0.1重量%とメチルパラベン0.05重量%の双方のパラベンを含有する粘着剤が開示されている。
【0006】
国際公開WO2005/105150(特許文献3)には、支持体とその支持体の一面に配置された粘着剤層とを備え、粘着剤層が、水と易溶性寒天とを含み、さらにポリアクリル酸又はポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンを含有する粘着基剤から構成され、粘着基剤が、さらに、ジクロフェナク、インドメタシン、ロキソプロフェンなどの鎮 痛消炎成分を含有する貼付剤が提案されている。特に、段落0076、表1、表3には、防腐剤としてのメチルパラベン0.2質量%を含有する粘着剤層が開示されている。
【0007】
特開2007-145749号公報(特許文献4)パラベン類防腐剤に替えて、パラベン類以外の防腐殺菌剤として、1,2-アルカンジオールとリゾチームとを含有してなる防腐殺菌剤を配合した化粧品、医薬品又は食料品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-107219号公報
【文献】特開2010-13470号公報
【文献】国際公開WO2005/105150
【文献】特開2007-145749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の含水組成物において、防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)及びパラオキシ安息香酸プロビル(プロピルパラベン)等のパラベン類を含有する構成が一般的に提案されている。化粧品又は貼付剤等に使用される含水組成物において、防腐剤として含有されているパラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸プロビル等のパラベン類には、乳幼児、老人などの特に皮膚抵抗の低い(又は弱い)人が使用する場合に、皮膚のかぶれなどの発生等の接触した皮膚の皮膚感作性があることが、最近、報告されている。
【0010】
水に溶解された機能性成分を含有する含水組成物において、パラベン類を配合しない組成物において、又は、パラベン類を著しく少なく微量を含有する組成物であって、充分な防腐性を発揮できるとともに、皮膚感作性の低減が期待できる含水組成物、及び、その含水組成物を備えた化粧品、皮膚外用剤、等が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の含水組成物は、(A)水と、(B)前記水に溶解可能な機能性成分と、を含有する含水組成物であって、少なくとも、(C)前記水に溶解可能又は相溶可能な防腐性促進作用を奏する多価アルコールと、(E)前記水及び/又は多価アルコールに溶解可能なパラベン類以外の防腐剤と、を含有し、前記パラベン類以外の防腐剤が、フェノキシエタノールと、カプリル酸グリセリルと、ポリリシンと、からなる群から選ばれる少なくとも一つのパラベン類以外の防腐剤、を含有してなり、防腐性を有することを特徴とする。
【0012】
防腐性促進作用を奏する多価アルコールとしては、少なくとも、プロピレングリコール、ブチレングリコール及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも一つの多価アルコールを含有する構成が好ましく実施できる。
【0013】
パラベン類以外の防腐剤が、フェノキシエタノールと、カプリル酸グリセリル及び/又はポリリシンの双方の防腐剤を含有する構成が好ましく実施可能である。
【0014】
本発明の含水組成物において、パラベン類の防腐剤を含有しない構成、または、皮膚感作性を奏しない程度の僅かなパラベン類を含有する構成が好ましく実施可能である。
【0015】
本発明の含水組成物を備えた貼付剤は、含水組成物と、シート状保持部材とを備え、前記含水組成物が前記シート状保持部材に付着及び/又は含侵して保持されてなり、前記含水組成物に含有される前記機能性成分は、水に溶解可能な水溶性高分子を含有し、人体皮膚に貼付可能に形成され、防腐性を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の防腐性を有する含水組成物の製造方法は、前記含水組成物は、(A)水と、(B)前記水に溶解可能な機能性成分と、(C)前記水に溶解可能又は相溶可能な防腐性促進作用を奏する多価アルコールと、(E)前記水及び/又は多価アルコールに溶解可能なパラベン類以外の防腐剤と、を含有し、前記パラベン類以外の防腐剤が、フェノキシエタノールと、カプリル酸グリセリルと、ポリリシンと、からなる群から選ばれる少なくとも一つのパラベン類以外の防腐剤、を含有してなり、防腐性を有する含水組成物の製造方法であって、(a)少なくとも、水に可溶である機能性成分を、水に混合溶解し、これにより、機能性成分含有予調液を調製する工程、(c)パラベン類以外の防腐剤と、該防腐剤を溶解可能な水及び/又は多価アルコールとを混合し、これにより、防腐剤が溶解されて含有された防腐剤含有予調液を調製する工程、(e)多価アルコールと、前記(a)により調製された前記機能性成分含有予調液と、前記(c)により調製された前記防腐剤含有予調液を、混合し、これにより、前記機能性成分と前記防腐剤が溶解されている含水組成物を調製する工程、を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の含水組成物を備えた貼付剤の製造方法は、シート状保持部材と該シート状保持部材に付着及び/又は含侵して保持されてなる含水組成物とを備えてなり人体皮膚に貼付可能な貼付剤の製造方法であって、前記含水組成物は、(A)水と、(B)前記水に溶解可能な機能性成分としての水溶性高分子と、を含有し、さらに、少なくとも、(C)前記水に溶解可能又は相溶可能な防腐性促進作用を奏する多価アルコールと、(E)前記水及び/又は多価アルコールに溶解可能なパラベン類以外の防腐剤と、を含有し、前記パラベン類以外の防腐剤が、フェノキシエタノールと、カプリル酸グリセリルと、ポリリシンと、からなる群から選ばれる少なくとも一つのパラベン類以外の防腐剤、を含有してなり、約45℃以下の温度において、柔軟性と粘着性を有する流動性のない状態であるゲル状を有するとともに、防腐性を有し、人体皮膚に貼付可能に構成されてなり、(a)少なくとも、水に可溶である水溶性高分子を、水に混合溶解し、これにより、粘稠性を有するとともに流動性を有する水溶性高分子含有予調液を調製する工程、(c)パラベン類以外の防腐剤と、該防腐剤を溶解可能な水及び/又は多価アルコールとを混合し、これにより、防腐剤が溶解されて含有された防腐剤含有予調液を調製する工程、(e)多価アルコールと、前記(a)により調製された前記水溶性高分子含有予調液と、前記(c)により調製された前記防腐剤含有予調液を、混合し、これにより、前記防腐剤が溶解されているとともに、粘稠性を有するとともに流動性を有する、流動性含水高分子組成物を調製する工程、ここで、該流動性含水高分子組成物は所定の温度に調整される、(f)前記(e)工程の後に、前記流動性含水高分子組成物がゲル化する迄の流動性を維持している時に、前記シート状保持部材に所定の厚さで前記流動性含水高分子組成物を付着及び/又は含侵し、これにより、前記シート状保持部材に保持されたシート状保持部材付流動性含水高分子組成物を調製する工程、(g)前記(f)工程により調製された前記シート状保持部材付流動性含水高分子組成物を所定温度に調整し、これにより、前記流動性含水高分子組成物を、流動性を有しないゲル状態にゲル化された含水組成物を備えた貼付剤を調製する工程、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の含水組成物により、(効果イ:低減された皮膚感作性・優れた防腐性を奏する含水組成物)水と水溶性高分子などの機能性成分を含有するとともに、パラベン類を配合しない含水組成物、又は、パラベン類を著しく少なく微量を含有する含水組成物において、充分な防腐性を発揮できるとともに、皮膚感作性を低減した含水組成物が得られる。特に、乳幼児、老人などの皮膚抵抗の低い人(又は弱い人)が使用する場合に、低減された皮膚感作性が期待されるとともに、優れた防腐性を奏する含水組成物が得られる。
【0019】
本発明の含水組成物を構成した貼付剤により、(効果イ-貼付剤:低減された皮膚感作性・優れた防腐性を奏する貼付剤)皮膚抵抗の低い人(又は弱い人)が皮膚に貼付して使用する場合に、接触した皮膚のかぶれ等の皮膚感作性の低減が期待されるとともに、優れた防腐性を奏する貼付剤が得られるとともに、貼付剤に要求される粘着性、保形性、柔軟性、剥離容易粘着性、剥離残存抑制性等の貼付剤基本性能を有する貼付剤が得られる。特に、乳幼児、老人などの皮膚抵抗の低い人が使用する場合に、低減された皮膚感作性が期待されるとともに、優れた防腐性を奏する貼付剤が得られる。
【0020】
本発明の含水組成物の製造方法により、パラベン以外の防腐剤が機能性成分を溶解している水及び/又は多価アルコールに溶解することが可能となり、充分な防腐性を発揮できるとともに、皮膚感作性を低減した含水組成物が得られる。
【0021】
本発明の含水組成物を備えた貼付剤の製造方法により、(効果オ:貼付剤に要求される基本性能を有するとともに低減された皮膚感作性と優れた防腐性を有する貼付剤の製造方法)パラベン類以外の他の防腐剤を含水組成物に溶解された状態に含有させることができ、これにより、皮膚抵抗の低い人(又は弱い人)が皮膚に貼付して使用する場合に、接触した皮膚のかぶれ等の皮膚感作性の低減が期待されるとともに、優れた防腐性を奏し、特に、貼付剤に要求される粘着性、保形性、柔軟性、剥離容易粘着性、剥離残存抑制性等の貼付剤基本性能を有する貼付剤を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施例の含水組成物を備えた貼付剤の製造方法の製造工程を説明する概略工程説明図である。
【
図2】2種類の防腐剤を配合した場合により生じる防腐性の作用効果を判定する一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の含水組成物は、(A)水と、(B)前記水に溶解可能な機能性成分と、を含有する含水組成物であって、少なくとも、(C)前記水に溶解可能又は相溶可能な防腐性促進作用を奏する多価アルコールと、(E)前記水及び/又は多価アルコールに溶解可能なパラベン類以外の防腐剤と、を含有し、前記パラベン類以外の防腐剤が、フェノキシエタノールと、カプリル酸グリセリルと、ポリリシンと、からなる群から選ばれる少なくとも一つのパラベン類以外の防腐剤、を含有してなり、防腐性を有することを特徴とする。
【0024】
<パラベン類以外の他の防腐剤含有する含水組成物における多価アルコールの防腐性促進作用効果ついて>
本発明の含水組成物において、多価アルコールとして、少なくとも、プロピレングリコール、ブチレングリコール及びグリセリンの内の少なくとも一つの多価アルコールを含有するとともに、防腐剤として、少なくとも、フェノキシエタノール、カプリル酸グリセリル、及び、ポリリシンからなる群から選ばれる少なくとも一つの防腐剤を含有し、多価アルコールと防腐剤との含有により、多価アルコールが防腐剤の防腐性を促進する防腐性促進作用を奏する、構成が実施可能である。
この構成により、上記の(効果イ)を有するとともに、(効果ワ:多価アルコールと他の防腐剤との含有による防腐性促進作用効果)多価アルコールとしてのプロピレングリコール、ブチレングリコール及び/又はグリセリンを含有することにより、これらのパラベン類以外の防腐剤の防腐作用を促進する防腐性促進作用を奏する。換言すれば、これらの多価アルコールと、フェノキシエタノール、カプリル酸グリセリル、ポリリシンなどのパラベン類以外の防腐剤とを併用することにより、パラベン類以外の防腐剤の最少の防腐剤濃度を減少させる効果が得られる。
この効果は、本実験中に見出したことであるが、フェノキシエタノール、カプリル酸グリセリル、又はポリリシンの防腐剤の添加含有において、これらの多価アルコールが何らかの防腐性促進作用を奏しているものと推測される。
【0025】
防腐性の観点において、プロピレングリコールは全含有量に対して3重量%以上を含有し、又は、ブチレングリコールは全含有量に対して3重量%以上を含有し、又は、グリセリンは全含有量に対して5重量%以上を含有する構成が望ましく実施可能であり防腐性促進作用を奏する。多価アルコールとして、プロピレングリコール単独又はブチレングリコール単独の含有量が3重量%未満、又は、グリセリン単独の含有量が5重量%未満の場合には、十分な防腐性促進効果を発揮しない傾向傾向にある。
なお、多価アルコールの含有量が50重量%を超える場合であって、特に、貼付剤として使用する場合には、保形性や剥離後残存物抑制性に劣る傾向がある。
プロピレングリコールとブチレングリコールとの双方を含有するとともにこれらの合計量が3重量%以上を含有する構成も実施可能であり防腐性促進作用を奏する。プロピレングリコールとブチレングリコールとグリセリンとのうちの2種以上であるとともにこれれらの多価アルコール合計量が3重量%以上を含有する構成も実施可能であり防腐性促進作用を奏する。
【0026】
なお、含水組成物が、パラベン類を含有しなく、プロピレングリコール、ブチレングリコール及び/又はグリセリンを含有するとともに上記のパラベン類以外の防腐剤を含有する含水組成物も、優れた防腐性を奏する。
また、含水組成物が、パラベン類の含有量が全量に対して0.05重量%以下を含有するとともに、上記の多価アルコールと、パラベン類以外の防腐剤とを含有する場合においても、防腐性を奏するとともに皮膚感作性の低減が期待できる。
【0027】
公知文献によると、上記の多価アルコールは下記の性質を有する。
プロピレングリコールは、融点-59℃、沸点188.2℃であり、常温でやや粘稠な液状を有し、水に容易混和性・相溶性があり、エタノールに容易混和性・相溶性がある。ジプロピレングリコールは、融点.-39℃、沸点232.2℃であり、常温で粘稠な液状を有し、水に容易混和性・相溶性があり、エタノールに容易混和性・相溶性がある。ブチレングリコールは、別名、1,3-ブチレングリコール、1,3-ブタンジオール、又は、1,3-ジヒドロキシブタンであり、常温で粘稠な液状を有し、水に容易混和性・相溶性があり、エタノールに容易混和性・相溶性がある。グリセリンは、別名、グリセロールであり、融点は約18℃であるが、過冷却になりやすく結晶化は難しく、常温で高粘度な液状を有し、水に容易混和性・相溶性があり、エタノールに容易混和性・相溶性がある。
【0028】
<パラベン類以外の防腐剤を含有する含水組成物について>
本発明の含水組成物において、前記パラベン類以外の防腐剤が、多価アルコールに溶解可能なフェノキシエタノールと、多価アルコールに溶解可能なカプリル酸グリセリルと、水に溶解可能なポリリシンと、からなる群から選ばれる少なくとも一つのパラベン類以外の防腐剤、を含有してなる構成が実施可能である。
【0029】
この構成により、(効果イ-abd:低減された皮膚感作性・優れた防腐性)フェノキシエタノール、カプリル酸グリセリル、及び、ポリリシン、からなる群から選ばれる少なくとも一つの防腐剤を含有してなる構成により、皮膚抵抗の低い人が使用する場合に、接触した皮膚のかぶれ等の皮膚感作性の低減が期待されるとともに、優れた防腐性を奏する、水に溶解された機能性成分を含有する含水組成物、及び、含水組成物を備えた化粧品や貼付剤が得られる。
【0030】
また、パラベン類防腐剤を含有することなく、前記パラベン類以外の防腐剤が、前記水及び/又は前記多価アルコールに可溶なフェノキシエタノール、前記水に難溶であるが前記多価アルコールに可溶なカプリル酸グリセリル、及び、前記水に可溶なポリリシン防腐剤、からなる群から選ばれる少なくとも一つの防腐剤を含有する、構成も実施可能である。これにより、上記の(効果イ-abd:低減された皮膚感作性・優れた防腐性)の皮膚感作性低減の効果を更に著しく奏する含水組成物が得られる。
【0031】
本発明の含水組成物に含有される防腐剤について、公知の物性を表1に記す。公知文献においては、これらの防腐剤について、水、エタノール、及び、プロピレングリコール等への溶解性が開示されているが、他の多価アルコールに対する溶解性のデータを見つけることができなかった。
【0032】
【0033】
<フェノキシエタノールを含有する含水組成物について>
本発明の含水組成物において、パラベン類以外の防腐剤が、フェノキシエタノールを、全含有量に対して、0.2~1.0重量%を含有する構成が望ましく実施可能である。フェノキシエタノールは含水組成物に溶解又は混和されてなる構成がより望ましい。
この構成により、(効果イ-a:フェノキシエタノール含有・低減された皮膚感作性・優れた防腐性)フェノキシエタノールが溶解又は混和されて含有してなる構成により、皮膚抵抗の低い人が使用する場合に、接触した皮膚のかぶれ等の皮膚感作性の低減が期待されるとともに、優れた防腐性を奏する、水に溶解された機能性成分を含有する含水組成物が得られる。
【0034】
また、パラベン類防腐剤を含有することなく、前記パラベン類以外の防腐剤が、フェノキシエタノールの防腐剤を含有する構成も実施可能である。これにより、上記の(効果イ-a:低減された皮膚感作性・優れた防腐性)の皮膚感作性の低減の効果を更に著しく奏する含水組成物が得られる。
【0035】
フェノキシエタノールは、沸点約245℃、凝固点約13度を有し、僅かな芳香を有する無色透明で僅かに粘稠性を有する液体であり、各種有機物の優れた溶媒として汎用されている。また、化粧品分野において、含有成分の酸化を防止するための防腐剤としても使用されている。水への溶解性は20℃において、約2.8重量%である。
これに対して、公知文献によると、パラベン類は、水に溶け難く、水への溶解度において、メチルパラベンは約0.25重量%、エチルパラベンは0.17重量%、プロピルパラベンは0.04重量%、ブチルパラベンは0.02重量%である。すなわち、フェノキシエタノールはパラベン類よりも水に溶けやすい性質を有する。
一般に、公知文献によると、フェノキシエタノールはパラベン類と比べて人体健康に対して安全であるといわれているが、しかしながら、できる限り少ない含有量が望ましい。また、フェノキシエタノール等の防腐剤を化粧品の防腐剤として含有する場合には、その防腐性の効果は当該化粧品に含有されている他の成分の種類により著しく異なる。また、発明者らの実験により、フェノキシエタノールは、常温にてプロピレングリコールに溶解し、ブチレングリコール又はグリセリンには昇温することにより溶解することを確認している。そして、この溶解したフェノキシエタノール溶液を多量の水と混合した場合においても、フェノキシエタノールの分離や析出などは認められなく、水と多価アルコールとの混合溶媒に溶解された状態を維持することを確認した。すなわち、フェノキシエタノールは水及び/又は多価アルコールに所定の割合で可溶であることを確認した。
【0036】
本発明の含水組成物において、発明者が種々の実験を行った結果、フェノキシエタノールの含有量は、組成物の全量に対して0.2重量%~1.0重量%の範囲が望ましく、この範囲において、フェノキシエタノールは、含水組成物において分離することなく、溶解された状態維持するとともに、優れた防腐性を奏することを見出した。さらに望ましくは、フェノキシエタノール含有量は、0.3重量%~0.8重量%の範囲であり、この範囲の含有量においても十分な防腐性を奏することを見出した。フェノキシエタノール含有量が0.2重量%未満の場合には、十分な防腐性が得られない。フェノキシエタノール含有量が1.0重量%を超える場合には、人体の健康に不都合が生じる傾向が推測される。
【0037】
また、常温において、フェノキシエタノールは、水に約2重量%の濃度で溶解し相溶性があり、また、例えば、約50℃への昇温により約3重量%の濃度でも溶解し相溶性があることを確認した。さらに、フェノキシエタノールは、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコールなどの多価アルコールに容易に溶解し相溶性があり、高粘稠性を有するグリセリには昇温してグリセリンの粘稠性を低下させた状態で容易に溶解して相溶性があることを確認した。特に、フェノキシエタノールは、水と多価アルコールとの双方の溶媒の存在において常温においても容易に溶解し相溶性があることを確認した。
また、水に溶解された架橋性水溶性高分子及び/又は非架橋性水溶性高分子と多価アルコールとを含有するとともに、約1.0重量%のフェノキシエタノールを含有する含水組成物において、溶解されているフェノキシエタノールが分離することなく、又、約10℃の低温においても析出することなく、溶解された状態を維持していることを確認した。
【0038】
<カプリル酸グリセリルを含有する含水組成物について>
本発明の含水組成物において、パラベン類以外の防腐剤が、カプリル酸グリセリルを、全含有量に対して、0.01~0.8重量%である構成が望ましく実施可能である。カプリル酸グリセリルは多価アルコールを含有する含水組成物に溶解又は混和されてなる構成がより望ましい。
この構成により、(効果イ-b:カプリル酸グリセリル・低減された皮膚感作性・優れた防腐性)カプリル酸グリセリルが多価アルコールに溶解又は分離なく混和されて含有してなる構成により、皮膚抵抗の低い人が使用する場合に、接触した皮膚のかぶれ等の皮膚感作性の低減が期待されるとともに、優れた防腐性を奏する、水に溶解された機能性成分を含有する含水組成物が得られる。
【0039】
また、特に、パラベン類防腐剤を含有することなく、パラベン類以外の防腐剤としてのカプリル酸グリセリルを含有する構成も実施可能である。これにより、上記の(効果イ-b:低減された皮膚感作性・優れた防腐性)の皮膚感作性低減の効果を更に著しく奏する含水組成物が得られる。
【0040】
カプリル酸グリセリルは、公知文献によると、常温でロウ状の半固体であり、昇温では液状になり、水には不溶であり、エタノールに容易に溶解する。殺菌作用と乳化作用とを兼ね備え、化粧品に汎用されている。
カプリル酸グリセリルの多価アルコールに対する溶解性の公知データは見付からなかったが、発明者が種々の実験を行った結果、カプリル酸グリセリルは、水には不溶であったが、プロピレングリコールに容易に溶解し、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンなどの高粘度の多価アルコールには、これらの多価アルコール又はカプリル酸グリセリルの昇温により互いに溶解し、相溶性、混和性を有することを確認した。すなわち、カプリル酸グリセリルは多価アルコールに溶解可能であることを確認した。また、これらの多価アルコールに溶解されたカプリル酸グリセリルが、水と水に溶解された水溶性高分子とを含有する組成物に混合した状態においても、白濁、分離などのカプリル酸グリセリルの相溶性不良などの混和不良の現象は認められなく、生成した含水組成物の中で、良好に溶解又は混和された状態を維持することを確認した。また、別途、カプリル酸グリセリルはエタノールに溶解又は相溶性、混和性を有することを確認した。
【0041】
発明者が種々の実験を行った結果、カプリル酸グリセリルの含有量は、組成物の全量に対して0.01~0.8重量%の範囲が望ましく、この範囲において、カプリル酸グリセリルは含水組成物において分離することなく、溶解された状態を維持するとともに、優れた防腐性を奏することを見出した。さらに望ましくは、カプリル酸グリセリル含有量は、0.02重量%~0.5重量%の範囲であり、この範囲の含有量においても十分な防腐性を奏することを見出した。カプリル酸グリセリル含有量が0.01重量%未満の場合には、十分な防腐性が得られない。カプリル酸グリセリル含有量が0.8重量%を超える場合には、人体の健康に不都合が生じる傾向が推測される。
【0042】
<ポリリシンを含有する含水組成物について>
本発明の含水組成物において、パラベン類以外の防腐剤として、ポリリシンを全含有量に対して0.01~0.8重量%を含有する構成が望ましく実施可能である。ポリリシンは含水組成物に溶解又は混和されてなる構成がより望ましい。
この構成により、(効果イ-d:パラベン非含・ポリリシン・低減された皮膚感作性・優れた防腐性)ポリリシンが水及び/又は多価アルコールに溶解又は分離なく混和されて含有してなる構成により、皮膚抵抗の低い人が使用する場合に、接触した皮膚のかぶれ等の皮膚感作性の低減が期待されるとともに、優れた防腐性を奏する、水と機能性成分を含有する含水組成物が得られる。
【0043】
また、パラベン類防腐剤を含有することなく、パラベン類以外の防腐剤が、ポリリシンの防腐剤を含有する構成も実施可能である。これにより、上記の(効果イ-d:低減された皮膚感作性・優れた防腐性)における皮膚感作性抑制の効果を更に著しく奏する含水組成物が得られる。
【0044】
ポリリシンは、融点約173℃であり、必須アミノ酸であるL-リジンが直鎖状につながったポリアミノ酸であり、水に可溶である。安定性と健康安全性を有する食品の防腐剤・保存料として汎用されている。
発明者が種々の実験を行った結果、ポリリシンの含有量は、組成物の全量に対して0.01~0.8重量%の範囲が望ましく、この範囲において、ポリリシンは含水組成物において分離することなく、溶解された状態維持するとともに、優れた防腐性を奏することを見出した。さらに望ましくは、ポリリシン抗菌含有量は、0.02重量%~0.5重量%の範囲であり、この範囲の含有量においても十分な防腐性を奏することを見出した。ポリリシン抗菌含有量が0.01重量%未満の場合には、十分な防腐性が得られない。ポリリシン抗菌含有量が0.8重量%を超える場合には、人体の健康に不都合が生じる傾向が推測される。
【0045】
また、水に溶解したポリリシン溶液と、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロパンジオール、ブチレングリコール、グリセリン、ソルビット液等の多価アルコールとを、それぞれ混合した場合においても、ポリリシンの析出が認められなく、ポリリシンの析出や分離などの現象は認められなかった。
さらに、水に溶解したポリリシン溶液を、水と水に溶解された機能性成分と多価アルコールとを含有する組成物に混合した状態においても、白濁などのポリリシンの析出や分離などの現象は認められなく、生成した含水組成物の中で、良好に溶解された状態を維持することを確認した。
【0046】
<フェノキシエタノールと他の防腐剤との双方の防腐剤を含有する含水組成物>
本発明の含水組成物において、パラベン類以外の防腐剤が、フェノキシエタノールと、カプリル酸グリセリル及び/又はポリリシンの防腐剤、の双方の防腐剤を含有する構成が望ましく実施可能である。
この構成により、(効果ロ:フェノキシエタノールと他の防腐剤による防腐相乗効果・低減された皮膚感作性・優れた防腐性)フェノキシエタノールと、カプリル酸グリセリル及び/又はポリリシンの防腐剤との双方の防腐剤を含有してなる構成により、フェノキシエタノールの含有量を更に少なくできるとともに、併用するカプリル酸グリセリル及び/又はポリリシンの他の防腐剤の含有量も著しく少なくすることが可能となり、含有される防腐剤の全含有量が少ない組成物においても、十分な防腐性を奏する、水と機能性成分を含有する含水組成物が得られる。換言すれば、フェノキシエタノールに加えて、カプリル酸グリセリル及び/又はポリリシンの防腐剤との双方の防腐剤を含有してなる構成により、同一防腐剤濃度におけるこれらの防腐剤の単独使用と比べてより優れた防腐性を奏する効果が得られる。
【0047】
図2に、2種類の防腐剤を配合した場合により生じる防腐性の作用効果を判定する一例を説明する図が示される。
防腐性を有する2種類の防腐剤を含有する場合、それにより生じる防腐作用は、相乗作用、相加作用、拮抗作用に大別される。相乗作用とは2種類の防腐剤が相乗的に作用して、本来有する防腐力が更に増強される作用である。相加作用とは、それぞれの防腐剤の防腐力が合わさった作用である。拮抗作用とは、ひとつの防腐剤が他の防腐剤の防腐力を打ち消す作用である。例えば、
図2に示すように、フェノキシエタノールと、カプリル酸グリセリル又はポリリシンについて、それぞれの含有割合を変えて最少防腐剤濃度を測定したグラフから判定される。これによると、フェノキシエタノールのみにおける最少防腐剤濃度は後述の実施例1により、0.2重量%(X点)であり、カプリル酸グリセリルのみ又はポリリシンのみにおける最少防腐剤濃度は後述の実施例2及び実施例3により、それぞれ0.01重量%(Y点)であり、そして、このX点とY点とを結ぶ線直XYを引き、双方の防腐剤を併用したときの最少防腐剤濃度が、この直線XYよりも内側(下側)にある場合(例えば、S点、T点、U点)は双方の防腐剤の併用による防腐力が増強された相乗作用であると判定し、直線XY上にある場合(例えば、P点)は相加作用あると判定し、直線XYよりも外側(上側)にある場合(例えば、R点)は双方の防腐剤を減少させる拮抗作用であると判定することができる。
【0048】
<フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリルの双方の防腐剤を含有する含水について>
本発明の含水組成物において、パラベン類以外の防腐剤の最少の含有量が、全量に対して、フェノキシエタノール含有量をX軸とし、カプリル酸グリセリル含有量をY軸とするXY座標において、フェノキシエタノール含有量をX軸とし、カプリル酸グリセリル含有量をY軸とするXY座標において、X軸におけるフェノキシエタノール含有量が0.17重量%である点MとY軸におけるカプリル酸グリセリル含有量が0.007重量%である点Nとを結ぶ直線MNよりも上側領域にあるように、フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリルとの双方の防腐剤が含有されてなる構成が望ましく実施可能である。
フェノキシエタノールやカプリル酸グリセリルの含有量が多くなるに従って、人体の健康に不都合が生じる傾向が推測され、望ましくは、フェノキシエタノールの最大の含有量が0.9重量%以下であり、カプリル酸グリセリルの最大含有量が0.8重量%以下である構成が望ましく、この範囲においてできる限り少ない含有量が望ましい。
【0049】
この構成により、(効果ロ-ab:フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリルとの防腐相乗効果・低減された皮膚感作性・優れた防腐性)フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリルとの双方の防腐剤を含有してなる構成により、フェノキシエタノールの含有量を少なくできるとともに、併用するカプリル酸グリセリルの含有量も著しく少なくすることが可能となり、含有される防腐剤の全含有量が少ない組成物においても、十分な防腐性を奏する、水と機能性成分を含有する含水組成物を備えた含水組成物が得られる。換言すれば、フェノキシエタノールに加えて、カプリル酸グリセリルとの双方の防腐剤を含有してなる構成により、同一防腐剤濃度におけるこれらの防腐剤の単独使用と比べてより優れた防腐性を奏する効果が得られる。
【0050】
また、特に、パラベン類を含有することなく、フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリルとの双方の防腐剤を含有してなる構成も実施可能である。これにより、上記の(効果ロ-ab:防腐相乗効果・低減された皮膚感作性・優れた防腐性)の皮膚感作性低減の効果を更に著しく奏する含水組成物が得られる。
【0051】
<フェノキシエタノールとポリリシンの双方の防腐剤を含有する含水組成物について>
本発明の含水組成物において、パラベン類以外の防腐剤の最少の含有量が、全量に対して、フェノキシエタノール含有量をX軸とし、ポリリシン含有量をY軸とするXY座標において、フェノキシエタノール含有量をX軸とし、ポリリシン含有量をY軸とするXY座標において、X軸におけるフェノキシエタノール含有量が0.17重量%である点MとY軸におけるポリリシン含有量が0.007重量%である点Nとを結ぶ直線MNよりも上側領域にあるように、フェノキシエタノールとポリリシンとの双方の防腐剤が含有されてなる構成が望ましく実施可能である。
フェノキシエタノールやポリリシンの含有量が多くなるに従って、人体の健康に不都合が生じる傾向が推測され、望ましくは、フェノキシエタノールの最大の含有量が0.9重量%以下であり、ポリリシンの最大含有量が0.8重量%以下である構成が望ましく、この範囲においてできる限り少ない含有量が望ましい。
【0052】
この構成により、(効果ロ-ad:フェノキシエタノールとポリリシンとの併用防腐相乗・低減された皮膚感作性・優れた防腐性)フェノキシエタノールとポリリシンとの双方の防腐剤を含有してなる構成により、フェノキシエタノールの含有量を少なくできるとともに、併用するポリリシンの含有量も著しく少なくすることが可能となり、含有される防腐剤の全含有量が少ない組成物においても、十分な防腐性を奏する、水と機能性成分を含有する含水組成物を備えた含水組成物が得られる。換言すれば、フェノキシエタノールに加えて、ポリリシンとの双方の防腐剤を含有してなる構成により、同一防腐剤濃度におけるこれらの防腐剤の単独使用と比べてより優れた防腐性を奏する効果が得られる。
また、パラベン類を含有することなく、フェノキシエタノールと、ポリリシンの防腐剤との双方の防腐剤を含有してなる構成も実施可能である。これにより、上記の(効果ロ-ad:防腐相乗効果・低減された皮膚感作性・優れた防腐性)の皮膚感作性低減の効果を更に著しく奏する含水組成物が得られる。
【0053】
<フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリルとポリリシンとの複数の防腐剤を含有する含水組成物について>
本発明の含水組成物において、パラベン類以外の防腐剤の最少の含有量が、全量に対して、フェノキシエタノール含有量をX軸とし、カプリル酸グリセリルとポリリシンの合計含有量をY軸とするXY座標において、フェノキシエタノール含有量をX軸とし、カプリル酸グリセリルとポリリシン合計含有量をY軸とするXY座標において、X軸におけるフェノキシエタノール含有量が0.17重量%である点MとY軸におけるカプリル酸グリセリルとポリリシン合計含有量が0.007重量%である点Nとを結ぶ直線MNよりも上側領域にあるように、フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリルとポリリシンとの双方の防腐剤が含有されてなる構成が望ましく実施可能である。
この構成により、(効果ロ-abd:フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリルとポリリシンとの併用防腐相乗・低減された皮膚感作性・優れた防腐性)フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリルとポリリシンとの複数の防腐剤を含有してなる構成により、フェノキシエタノールの含有量を少なくできるとともに、併用するポリリシンとカプリル酸グリセリルの含有量も著しく少なくすることが可能となり、含有される防腐剤の全含有量が少ない組成物においても、十分な防腐性を奏する、水と機能性成分を含有する含水組成物を備えた含水組成物が得られる。換言すれば、フェノキシエタノールに加えて、ポリリシンとカプリル酸グリセリルの双方の防腐剤を含有してなる構成により、同一防腐剤濃度におけるこれらの防腐剤の単独使用と比べてより優れた防腐性を奏する効果が得られる。
【0054】
また、望ましくは、パラベン類を含有することなく、フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリルとポリリシンの防腐剤との複数の防腐剤を含有してなる構成が実施可能である。これにより、上記の(効果ロ-abd:防腐相乗効果・低減された皮膚感作性・優れた防腐性)の皮膚感作性低減の効果を更に著しく奏する含水組成物が得られる。
【0055】
<パラベン類以外の防腐剤と0.05重量%以下のパラベン類とを含有する含水組成物について>
本発明の含水組成物において、含水組成物は、パラベン類以外の防腐剤に加えて、さらに、(F)全量に対して0.05重量%以下のパラベン類を含有する構成が実施可能である。
パラベン類は水に難溶であるとともに多価アルコールに可溶である性質を有するが、本構成においては、パラベン類は水と多価アルコールとを有する含水組成物に溶解された形態で含有される。
この構成により、(効果ハ:パラベン類減少・低減された皮膚感作性・優れた防腐性)皮膚感作性が報告されているパラベン類を従来と比べて著しく少なく微量を含有するとともに、フェノキシエタノール、カプリル酸グリセリル、ポリリシン等の他の防腐剤と併用することにより、パラベン類を著しく少なくして皮膚感作性を低減させるとともに、他の防腐剤の含有量も著しく少なくした組成においても、皮膚抵抗の低い人が使用する場合においても、接触した皮膚のかぶれ等の皮膚感作性の低減が期待されるとともに、優れた防腐性を奏する含水組成物が得られる。
【0056】
パラベン類は皮膚感作性を有するために、パラベン類を含有しない組成物が最も望ましいが、しかしながら、フェノキシエタノール、カプリル酸グリセリル、ポリリシン、等のパラベン類以外の防腐剤を含有する組成物に加えて、できる限り少ない含有量のパラベン類を含有する組成物も実施可能であり、これにより皮膚感作性を低減した含水組成物が得られる。
使用する人によって皮膚感作性が異なるために、明確なパラベン類防腐剤の許容含有量を規定することはできないが、0.05重量%以下であってできる限り少ない含有量のパラベン類防腐剤の含有が望ましく、パラベン類防腐剤の含有量が全量に対して0.05重量%を超える場合には、皮膚感作性が生じる傾向がある。
パラベン類の含有量が全量に対して0.05重量%以下を含有して皮膚感作性を低減するとともに、上記のパラベン類以外の防腐剤を含有する組成物において、上記パラベン類以外の防腐剤を単独含有する組成物と比べて、上記パラベン類以外の防腐剤の最少含有量を減らした組成物においても、優れた防腐性を得ることができる。パラベン類以外の防腐剤が、フェノキシエタノールである場合には0.2重量%の最少含有量を0.1重量%の最少含有量に減らすことができ、カプリル酸グリセリルである場合には0.01重量%の最少含有量を0.005重量%の最少含有量に減らすことができ、ポリリシンである場合には0.01重量%の最少含有量を0.005重量%の最少含有量に減らすことができ、優れた防腐性を得ることができる。
【0057】
<含有される防腐剤の水への溶解状態について>
本発明の含水組成物において、防腐剤が含水組成物に溶解された状態で含有されてなる構成が望ましく実施可能である。
この構成により、前述の「効果イ」、「効果ロ」、「効果ハ」のそれぞれの効果がさらに著しく発揮され、(効果イロハ:溶解された防腐剤含有による防腐剤含有量の低減と低減された皮膚感作性・優れた防腐性)パラベン類以外の他の防腐剤を含有した含水組成物において、含有防腐剤が溶解された状態で含有されることにより、防腐剤の含有量を著しく少なくした組成においても、皮膚抵抗の低い人が使用する場合に、接触した皮膚のかぶれ等の皮膚感作性の低減が期待されるとともに、優れた防腐性を奏する、水と水溶性高分子を含有する含水組成物が得られる。特に、乳幼児、老人などの皮膚抵抗の低い人が使用する場合に、皮膚のかぶれなどの皮膚感作性の著しい改善が期待できる。
【0058】
<機能性成分が水溶性高分子である構成について>
本発明の含水組成物において、機能性成分は、水に溶解可能な水溶性高分子であり、水溶性高分は前記水に溶解されるとともに、水、水溶性高分子、多価アルコール、及び、パラベン類以外の防腐剤は、互いに溶解又は相溶した状態である構成が望ましく実施可能である。
【0059】
機能性成分としての水溶性高分子としては、下記の架橋性水溶性高分子及び/又は非架橋性水溶性高分子が実施可能である。
(a)分子構造的に網目構造に架橋可能な架橋性水溶性高分子を含有し、約18~約30℃の常温付近において、前記架橋性水溶性高分子は、架橋剤が存在する状態において、前記水に溶解された状態で架橋された流動性のないゲル状を有する。
(b)分子構造的に網目構造に架橋可能な架橋性水溶性高分子を含有し、約18~約30℃の常温付近において、前記架橋性水溶性高分子は、架橋剤が存在しない状態において、水に溶解された状態で架橋されない流動性のある粘稠状を有する。
(c)分子構造的に架橋しない非架橋性水溶性高分子を含有し、約18~約30℃の常温付近において、前記非架橋性水溶性高分子は、水に溶解された状態で架橋されない流動性のある粘稠状を有する。
(d)分子構造的に網目構造に架橋可能な架橋性水溶性高分子と分子構造的に架橋しない非架橋性水溶性高分子との双方の水溶性高分子を有し、約18~約30℃の常温付近において、前記架橋性水溶性高分子は、架橋剤が存在する状態において、前記水に溶解された状態で架橋された流動性のないゲル状を有し、前記非架橋性水溶性高分子は、水に溶解された状態で架橋されない流動性のある粘稠状を有する。
【0060】
<架橋性水溶性高分子について>
架橋性水溶性高分子は、架橋する前には水に可溶であるとともに、水に溶解された流動性を有し、架橋後には、水に溶解された状態及び/又は水を含んだ状態で、流動性のない状態であるゲル状になる性質を有する。架橋性水溶性高分子は架橋剤との化学反応により、分子構造的に網目構造に架橋可能な性質を有する。
架橋性水溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、(i)アクリル酸、メタクリル酸、及び、これらの一価の金属塩のうちの少なくとも一つのアクリル酸系単量体を重合して得られる架橋型アクリル酸系ポリマ、(ii)(a)アクリル酸、メタクリル酸、及び、これらの一価の金属塩のうちの少なくとも一つのアクリル酸系単量体と、(b)アクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルのうちの少なくとも一つのアクリル酸アルキル系単量体と、を共重合して得られる架橋型アクリル酸系共重合ポリマ、(iii)ポリアクリル酸を部分的に中和した部分中和型ポリアクリル酸、(iv)架橋型カルボキシビニルポリマ、及び、(v)カルボキシアルキルセルロースナトリウム、及び/又は、ヒドロキシアルキルセルロースナトリウムの架橋型セルロース化合物、(アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロビル基など)からなる群から選ばれる少なくとも一つの架橋性水溶性高分子が実施できる。
部分中和型ポリアクリル酸としては、ポリアクリル酸のカルボン酸基の一部をナトリウム等の一価イオンにより中和した部分中和型のポリアクリル酸ナトリウムが使用される。
【0061】
この構成により、前述の(効果イ:低減された皮膚感作性・優れた防腐性)が得られるとともに、(効果ニ:架橋性水溶性高分子の含有による快適な保水柔軟保形性と低減された皮膚感作性・優れた防腐性)架橋性水溶性高分子の含有により、水に溶解された架橋性水溶性高分子が架橋剤との化学反応により、分子構造において網目構造に架橋された構造となり、流動性状態から流動性のないゲル状態に状態変化して、流動性がなく、外圧に対しても形状を維持できる保形性を有するとともに、多量の十分な水分を保持できる保水性を有し、人体皮膚に付着した場合に快適な保水柔軟保形性を有する流れ落ちの抑制されたゲル状の含水組成物に状態変化せしめる作用効果が得られる。
【0062】
架橋性水溶性高分子は水に容易に溶解され、水に溶解された架橋性水溶性高分子は、多量の水を十分に保持した含水架橋性水溶性高分子となり、粘稠性を有する粘稠性液状になる性質を有する。そして、この含水架橋性水溶性高分子は、水に溶解された状態で、架橋剤と混合された場合に化学的に反応して、化学構造において網目構造に架橋され、流動性がなく、保形性と保水性と柔軟性を有するゲル状の含水組成物に変化する。含水組成物は所定量の結合水と溶解水と自由水とを有する形態となる。
架橋性水溶性高分子の分子量は、特に限定されないが、分子量約1万~約1000万の架橋性水溶性高分子が使用されるが、分子量が多くなるに従って、水に溶解した時の粘稠性が高くなり、架橋後の含水組成物の保水柔軟保形性において硬くなる傾向にあり、また、架橋性水溶性高分子の架橋密度は特に限定されないが、架橋密度が多くなるに従って架橋後の含水組成物の保水柔軟保形性が硬くなる傾向にあり、所望の快適な保水柔軟保形性に対応して、所望の分子量や架橋密度を有する架橋性水溶性高分子の種類、及び、架橋剤の種類が選定されて使用される。
【0063】
架橋性水溶性高分子の含有量が多くなるに従って、架橋化学反応により形成されるゲル状の含水組成物の保形性を維持する効果が増大するとともに保水性も向上するが、架橋性水溶性高分子の含有量が多すぎる場合には保水柔軟保形性において硬くなる傾向にあり、人体皮膚に貼付した場合に貼付違和感を感じる傾向がある。架橋性水溶性高分子の含有量が少なくなるに従って、外圧に対しても形状を維持するゲルの保形性が低下するとともに保水性も低下し、架橋性水溶性高分子の含有量が少なすぎる場合には、ゲルの保形性を維持できるゲル状の含水組成物に状態変化せしめる作用効果が少なくなる傾向にある。
【0064】
<架橋剤について>
架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、などの多価金属イオン性化合物類、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウムマグネシウム、水酸化アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムカリウム(別名:ミョウバン)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、アルミニウムグリシネート(別名:ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、グリシンアルミニウム)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、等の一種単独又は二種以上の任意に組み合わせた架橋剤が使用できる。
このような多価金属イオン性化合物類は、媒体中において溶解されている架橋性水溶性高分子のカルボン酸又はカルボン酸イオンと化学反応して、化学構造的に網目構造の、流動性がなく、保形性と保水性と柔軟性を有するゲル状の含水組成物を生成せしめる作用を有する。
【0065】
架橋剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.001~1重量%であり、望ましくは、0.005~0.5重量%である。の架橋剤の含有量が0.001未満の場合には、架橋性水溶性高分子の架橋反応が不完全になり、含水組成物の望ましいゲル強度や快適な保水柔軟保形性が得られない傾向がある。架橋剤の含有量が1重量%を超える場合には、未反応の架橋剤が残存した含水組成物となり、何らの利益を得ることなく、逆に予期しえない悪影響が生じることがある。
【0066】
<非架橋性水溶性高分子について>
非架橋性水溶性高分子は、含水組成物の柔軟性、粘着性、及び/又は、貼付剤に構成された場合に剥離容易粘着性、等を付与又は制御する機能を奏する。
非架橋性水溶性高分子としては、水に容易に溶解可能な高分子材料が適用され、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリル酸デンプン、ポリアクリル酸アルキル、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アルキルと副モノマとの共重合ポリマ、非架橋型セルロース、ゼラチン、寒天、などが適用できる。
ポリアクリル酸アルキルとしては、例えば、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸エチルヘキシル、ポリアクリル酸オクチル、ポリアクリル酸デシルなどが使用できる。アクリル酸アルキルと共重合される副モノマとしては、例えば、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、アクリル酸ヒドロキシエチル等が使用できる。非架橋型セルロースとしてはカルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなどが使用できる。
【0067】
他の水溶性高分子としては、ヒアルロン酸、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、グルコマンナン、キサンタンガム、グアーガム、ジュランガム、アーネストガム、ローカストビーンガム、ペクチン、アガロース、デキストリン、グルコマンナン、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸の塩類、ポリグルタミン酸の部分中和物、アルギン酸、アルギン酸の塩類なども実施可能である。
【0068】
これらの非架橋性水溶性高分子は、水に可溶又は水と良好な相溶性を有し、それぞれの非架橋性水溶性高分子に特有の粘稠性、柔軟性、粘着性、非粘着性を有するとともに、その非架橋性水溶性高分子の有する特性に対応して、所望の粘稠性、柔軟性、粘着性、剥離容易粘着性、剥離後残存粘着制御性、等を有する含水組成物を得ることができる。例えば、ゼラチン、コラーゲン、寒天などは、粘着性を抑制する性質を有し、貼付剤に構成された場合には剥離容易粘着性や剥離後残存粘着性を制御する剥離後残存粘着剤抑制剤として作用する。
【0069】
非架橋性水溶性高分子の含有量が多くなるに従って、多量の十分な水分を保持可能になり、柔軟性や粘稠性を増す柔軟粘稠性も向上するが、非架橋性水溶性高分子の含有量が多すぎる場合には柔軟性において硬くなる傾向にある。
【0070】
この構成により、前述の(効果イ:低減された皮膚感作性・優れた防腐性)が得られるとともに、(効果ホ:非架橋性水溶性高分子の含有による快適な保水柔軟粘着性)水に溶解された非架橋性水溶性高分子の含有により、多量の十分な水分を保持できる保水性を有するとともに、人体皮膚に付着又は貼付した場合に快適な柔軟性と粘着性とを有する快適な保水柔軟粘着性を有する作用効果が得られる。
【0071】
また、特に、本発明の含水組成物を備えた貼付剤において、(効果ヘ:非架橋性水溶性高分子の含有による剥離容易粘着性・剥離後残存物抑制性)、非架橋性水溶性高分子として、粘着性を抑制できるゼラチン、寒天、などを選択して含有することにより、少なくとも架橋性水溶性高分子と水と非架橋性水溶性高分子を含有する組成物において、適正な押圧力により、人体皮膚に粘ってくっつく貼付時の貼付時粘着性又はタック粘着性、粘着使用中の日常的な動作において剥がれ難い程度の粘着性を有する持続粘着性、皮膚から剥がす時に、皮膚に損傷を与えることなく、皮膚に著しい違和感や刺激を与えることなく剥がすことが可能な剥離容易粘着性、及び、皮膚に貼付された含水生物を備えた貼付剤を皮膚から剥がした時に、含水組成物の一部が皮膚に残存付着しない程度の剥離後残存物抑制性と、を兼ね備えた剥離容易粘着性・剥離後残存物抑制性を有する貼付剤が得られる。
【0072】
これらの非架橋性水溶性高分子は、水に溶解可能であり、含水組成物の粘稠性を増大させる性質を有するが、一方、これらの非架橋性水溶性高分子を含有する含水組成物を備えた貼付剤を人体皮膚に貼付し、一定の経過時間後にその皮膚に貼付された含水組成物を皮膚から剥離した時に、皮膚に付着して残存する含水組成物を抑制することができる作用を有する。
【0073】
<架橋性水溶性高分子を含有する組成物において架橋剤を含有しなく架橋されない状態の含水組成物について>
上記の架橋性水溶性高分子を含有する組成構成において、架橋剤を含有しない構成も実施可能である。この場合、架橋性水溶性高分子は架橋されることなく、常温よりも高温において流動性を有し、温度の低下により流動性のないゲル状を有する状態になり、上記の「効果ホ」の非架橋性水溶性高分子に類似の作用を奏する。
すなわち、含水組成物において、水溶性高分子は、分子構造的に架橋可能な架橋性水溶性高分子を含有し、架橋性水溶性高分子を分子構造的に架橋可能な架橋剤を含有しなく、架橋性水溶性高分子は、前述の(i)架橋型アクリル酸系ポリマ、(ii)架橋型アクリル酸系共重合ポリマ、(iii)架橋型カルボキシビニルポリマ、及び、(iv)架橋型セルロース化合物、からなる群から選ばれる少なくとも一つの架橋性水溶性高分子であり、架橋されない状態で含有されてなり、約50℃よりも高い温度領域で流動するとともに約45℃以下の温度で流動性のないゲル状を有する構成も実施可能である。
【0074】
この構成により、前述の(効果イ:低減された皮膚感作性・優れた防腐性)が得られるとともに、前述の(効果ホ)に類似して、(効果ホ-1:架橋されない状態で含有される架橋性水溶性高分子の含有による快適な保水柔軟粘着性)水に溶解された非架橋性水溶性高分子の含有により、多量の十分な水分を保持できる保水性を有するとともに、人体皮膚に付着又は貼付した場合に快適な柔軟性と粘着性とを有する快適な保水柔軟粘着性を有する含水組成物が得られる。
【0075】
水に溶解された架橋性水溶性高分子は、高温においては、流動性を有する状態であるが、低温になるに従って、流動性のないゲル状になる傾向があり、その境界温度は含有される架橋性水溶性高分子の種類、含有量等により異なり、明確ではなく、例えば、約50℃以上の温度では流動性を有し、約45度以下の温度では流動性のないゲル状になるような架橋性水溶性高分子を含有する構成が望ましい。
【0076】
<水溶性高分子を含有する含水組成物の温度による流動性の変化について>
水と水溶性高分子を含有する含水組成物において、水溶性高分子が架橋性水溶性高分子又は非架橋性水溶性高分子のいずれの場合においても、含水組成物は、高温において流動性を有する状態であり、低温になるに従って流動性のないゲル状になる性質を有する。
特に、水溶性高分子が架橋性水溶性高分子であるとともに架橋剤が含有する場合には、架橋性水溶性高分子は架橋剤との化学反応により、徐々に分子構造において網目構造に架橋された形態となり、流動性のないゲル状になる。この架橋された網目構造になった架橋性水溶性高分子を含有する含水組成物は、高温においても流動性のないゲル状を有し、低温においても、その流動性のないゲル状を維持する。
これに対して、非架橋性水溶性高分及び/又は架橋剤を含有しない架橋性水溶性高分子を含有する組成物の場合には、高温においては流動性を有する状態であるが、低温になるに従って流動性のないゲル状になる。
【0077】
<含水組成物に含有される機能性成分としての効能付与機能性成分について>
含水組成物に含有される機能性成分として、上記の種々の水溶性高分子及び/又は効能付与機能性成分であり、効能付与機能性成分としては、薬理活性成分、肌改善成分、及び、芳香成分、からなる群から選ばれる少なくとも一つである構成が望ましく実施可能である。
本発明の含水組成物において、前述の機能性成分とてして水溶性高分子を含有する構成、又は、機能性成分として含有される水溶性高分子に加えて更に効能付与機能性成分を含有する構成、又は、水溶性高分子を含有することなく効能付与機能性成分を含有する構成、等の構成を有する含水組成物が実施できる。
効能付与機能性成分は、含水組成物に溶解された状態、又は、含水組成物に乳化状態で含有された状態、又は、それらの微粒子が分散含有された状態、で含有される。
【0078】
薬理活性成分としては、特に限定されないが、例えば、インドメタシン、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、ジクロフェナック、ジクロフェナックナトリウム、フェルビナク、ピロキシカム、スプロフェン、イブプロフェン、ケトロラク、リドカイン、フルルビプロフェン、メフェナム酸、グリチルリチン酸ジカリウム、サルチル酸エステル類、などの鎮痛消炎剤、鎮痒剤、皮膚軟化剤、毛髪用剤、浴剤、その他の外皮用薬剤が使用できる。
【0079】
肌改善成分としては、特に限定されないが、例えば、酢酸トコフェロール等のトコフェロール類、プラセンタエキス類、ヒアルロン酸類、エコンザイム、アルブチン、コラーゲン類、ポリフェノール類、アラントイン、スクワラン、パンテノール、カミツレエキス、ハマメリスエキス、ラベンダーエキス、ハトムギエキス、オオバクエキス、米エキス類、サケ卵巣エキス類、サッカロミセス、米発酵液、ビタミンC類、ビタミンE類、その他のビタミン類、などが使用できる。このような肌改善成分を含有する含水組成物は、人体の顔などの皮膚に塗布、付着又は貼付されて使用された時に、その肌改善成分に対応して、美白・美顔、皮膚のシミそばかすの除去・低減、皮膚の皺改善、皮膚の保湿、等の作用効果を奏することができる。
【0080】
芳香を発生する芳香成分としては、特に限定されないが、例えば、一般にアロマテラピーに用いられる精油成分(精油類)を用いることができる。この芳香成分としては、例えば、ワンダー・セラー著「アロマテラピーのための84の精油成分」、フレグランスジャーナル社に記載されているものが挙げられる。例えば、アニス、アンジェリカ、安息香、イモーテル、カモミール、ガーリック、カルダモン、ガルバナム、キャラウェイ、キャロットシード、グアヤックウッド、グレープフルーツ、サイブレス、シダーウッド、スターアニス、セージ、ゼラニウム、セロリ、タイム、タラゴン、テレピン、乳香、バイオレット、パイン、パセリ、フェンネル、ブラックペッパ、ボダイジュ花、レモン、レモングラス、ローズマリー、ローレル、シモツケギク、シモツケソウ、ヤグルマギク、アーモンド、アルニカ、ウイキョウ、エニシダ、クレソン、ゲンチアナ、ショウノウ、スモモ、セイヨウナシ、タイソウ、タンポポ、チモ、チョレイ、トウガシ、ノイバラ、ハッカ、トネリコ、ブクリョウ、メリッサ、モモ、ヤドリギ、ユーカリ、ヨクイニン、ラベンダ、レンギョウ等からの抽出物を挙げることができるが、別段これらに限定されない。
【0081】
(効果リ)効能付与機能性成分を含有してなる含水組成物を、人体の額、腋、首、手足、等の人体の皮膚に塗布、付着又は貼付することにより、含有する効能付与機能性に対応して、鎮痛・消炎効能、鎮痒、等の薬理活性効能、及び、美白・美顔、皮膚のシミそばかすの除去・低減、皮膚の皺改善、皮膚の保湿、肌改善効能、等効能付与効果を奏することができる。
【0082】
<含水組成物に含有される追加成分について>
本発明の含水組成物において、さらに、追加成分を含有し、該追加成分が、(K-1)口に含んだ場合に苦みを感じて誤食を抑制する機能を有する誤食防止成分、(K-2)清涼感を奏する清涼感付与成分、(K-3)温感を奏する温感温感付与成分、及び、(K-4)pHを調整するpH調整成分、からなる群から選ばれる少なくとも一つの追加成分を含有する構成も実施可能である。
【0083】
誤食防止成分としては安息香酸デナトリウム、清涼感付与成分としてはメントール及び/又はハッカ油、温感温感付与成分としてはカプサイシン及び/又はトウガラシ成分、pH調整成分としては特に限定されなくクエン酸、酢酸、酒石酸、水酸化ナトリウム等の汎用の酸性物質又はアルカリ性物質、が実施できる。
誤食防止剤としては、安息香酸デナトリウムが有効であり、少量の安息香酸デナトリウムの含有により、口に含んだ場合に苦みを感じて誤食を抑制する機能を奏する。
安息香酸デナトリウムは融点約166~170℃の固体状粉末であり、水やエタノールに溶ける性質を有し、含水組成物に溶解された状態で含有される。安息香酸デナトリウムを微量配合した組成物を、仮に、口に含んだ場合に、強い苦みを感じる性質を有する。この安息香酸デナトリウムを含有する含水組成物を誤って、口に含んだ時に、強い苦みを感じる。この構成において、(効果チ)安息香酸デナトリウムを含有してなる含水組成物は、口に含んだ場合に苦みを感じて誤食を抑制する作用効果を有し、特に、乳幼児、老人などの健康抵抗の弱い人の使用時において、誤食を抑制する作用効果が得られる。
【0084】
清涼感付与成分としては、例えば、メントール、ハッカ油、脳類が使用できる。
温感付与成分としては、例えば、カプサイシン、トウガラシエキス又はトウガラシ粉末等が使用できる。
【0085】
<含水組成物に含有されるその他の添加剤について>
本発明の含水組成物において、含水組成物の粘着性、柔軟性、保水性、保形性、剥離容易粘着性、剥離後残存物抑制性、等において、所望の性能を得るために、上記の水と水溶性高分子等の機能性成分と多価アルコールと所定の防腐剤に加えて、さらに、粘着付与剤、軟化剤、保湿剤、可塑剤、着色剤、皮膚吸収促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機充填材、界面活性剤、安定化剤、粘稠性調整剤、無機充填材、微粉末、シリコーン油、pH調整剤、その他添加助剤、等の添加剤を含有した構成も実施可能である。
【0086】
例えば、粘着付与剤としては、ロジン、水添ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、ポリテルペン、テルペンフェノール、フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂、その他脂肪族系樹脂(C5系樹脂)、石油系樹脂、脂環式炭化水素樹脂(水添芳香族系樹脂)等が使用できる。
軟化剤、可塑剤としては、ポリブテン、ポリイソブチレン、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジエチルフタレート、液状ロジンエステル、塩素化パラフィン、プロセスオイル、ラノリン、シリコーン、ワセリン、固形パラフィン、流動パラフィン、プラステイペース、ミツロウ、メントール、リモネン、ピネン、ピペリトン、テルピノール、カルベオール、アーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ハッカ油、ゴマ油、ダイズ油、ミンク油、綿実油、トウモロコシ油、サフラワー油、ブドウ油、マカデミアナッツ油、卵黄油、紅花油等が使用できる。
【0087】
着色剤としては、化粧品分野において慣用されている染料、顔料が使用できる。
無機充填材、微粉末、等としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、カオリン、タルク、酸化チタン、マイカ、シリコーン粉末、炭粉末、等の粉末、微粉末などが使用できる。
【0088】
pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、クエン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、酢酸、グルコン酸、マレイン酸、等の有機酸、これらの有機酸のナトリウム塩又はカリウム塩、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カルシウム、ジイソプロパノールアミン、などが使用される。
このようなpH調整剤を含有せしめて、皮膚に悪影響を与えないようにするために、含水組成物のpHを4~10の範囲に調整し、望ましくは、pH5~9の範囲、さらに好ましくは、pH6~8の範囲に調整される。
【0089】
安定化剤としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ノナン酸バニリルアミド、エデト酸ナトリウム、等が使用できる。
界面活性剤としては、各種ポリソルベート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ラウリン酸ポリエチレングリコール、等が使用できる。
【0090】
その他添加助剤としては、ラノリン、流動パラフィン、ミツロウ、リモネン、ピネン、ピペリトン、テルピノール、カルベオール、ホホバ油、アーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ハッカ油、ゴマ油、ダイズ油、ミンク油、綿実油、トウモロコシ油、サフラワー油、ブドウ油、マカデミアナッツ油、卵黄油、紅花油等が使用できる。シリコーン油としては、メチルシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン等が使用できる。
【0091】
本発明において、含水組成物は、さらに、エタノール及び/又はプロピルアルコール等の低級アルコール、及び/又は、界面活性剤を含有する、構成も実施可能である。このような低級アルコールや界面活性剤は、機能性成分、追加成分、防腐剤、又は、その他添加剤など溶解しやすく又は均一分散しやすくするための溶解補助剤として使用される。例えば、
図1の(d)工程において、追加成分が、水、多価アルコール、低級アルコール及び/又は界面活性剤に溶解されて使用される。
薬理活性成分、肌改善成分、芳香成分等の効能付与機能性成分、清涼感付与成分、誤食防止成分等の追加成分、防腐剤、その他の添加剤が水又は多価アルコールに溶解できない場合には、必要最小限の低級アルコール又は界面活性剤を含有使用して、これらの効能付与機能性成分、追加成分、その他の添加剤等を含水組成物の中に溶解又は乳化して、均一に含有せしめた含水組成物を調製することが可能である。効能付与機能性成分、追加成分、防腐剤、その他添加剤を低級アルコール又は界面活性剤を含有使用して、溶解又は均一分散された効能付与機能性成分・追加成分等溶液を調製し、その後、その効能付与機能性成分・追加成分等溶液を多価アルコール-水を含有する組成物と混合し、これにより、効能付与機能性成分や追加成分が均一に含有された含水組成物を調製することができる。エタノールやプロピルアルコール等の低級アルコールの含有量は、含水組成物の全重量に対して約10重量パーセント以下が望ましい。低級アルコールの含有量が約10重量パーセントを超える場合には、これらの低級アルコールは蒸発気化しやすいために、人体皮膚に付着した時に蒸発気化して不快なアルコール臭を感じたり、気化した低級アルコールが人体に悪影響を与える傾向がある。
【0092】
使用される界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、常温又は僅かな昇温で液状であるとともに溶媒としての機能を有する液状界面活性剤が使用できる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリオキシエチレングリコール、ポノオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(アルキル基がオクチル基など)、アルキルグリコシド(アルキル基がオクチル基、デシル基又はドデシル基、など)、ソルビタン脂肪酸エステル(脂肪酸基が、モノラウリン酸、モノステアリン酸、トリステアリン酸、オレイン酸、テトラオレイン酸など)などの非イオン性界面活性剤が使用できる。
【0093】
<含水組成物を備えた化粧品、外用医薬品について>
含水組成物を備えた貼付剤、化粧品、または、外用医薬品などが実施可能である。
貼付剤としては、本発明の含水組成がシート状保持部材に保持された構成を備える人体の額などを冷却する冷却シート、鎮痛消炎用貼付剤、顔などの皮膚状態を改善する肌改善用のパックシート又はフェイスマスクなどが実施可能である。
化粧品又は外用医薬品としては、例えば、本発明の構成を備えた含水組成物を備えるとともに、液状、スプレー状、クリーム状、乳化状、ゲル状等の形態を有し、皮膚に塗布、付着又は貼付して適用する化粧品、外皮用医薬品が実施可能である。
【0094】
<含水組成物を備えた貼付剤について>
含水組成物に含有される機能性成分としての水溶性高分子を含有する含水組成物を、シート状保持部材に付着及び/又は含侵して保持されてなり、含水組成物に含有される機能性成分は、水に溶解可能な水溶性高分子を含有し、人体皮膚に貼付可能に形成され、防腐性を有する貼付剤が実施可能である。
【0095】
含水組成物をシート状保持部材に保持した貼付剤は、人体皮膚に貼付して使用され、使用中には所望の効能を奏し、使用後には人体皮膚から剥がされる。
冷感効能、温感効能、清涼効能、鎮痛効能、消炎効能、皮膚美白効能、皮膚皺改善効能、又は、その他の薬理効能、等の効能を目的として、人体皮膚に貼付して使用される貼付剤において、下記(a)の優れた防腐性を奏するとともに、下記(b)~(f)の貼付剤としての所望性能を最適なバランスで備えることが要望される。
(a)保存中における細菌等による腐敗が防止された防腐性。
(b)硬い感覚などの違和感が抑制されて、人体皮膚に密着し易く、柔らかくしなやかな柔軟性。
(c)皮膚に付着又は貼付された含水組成物が流動することなく又は破損されることなく、形状を維持する保形性。
(d-1)適正な押圧力により、人体皮膚に粘ってくっつく貼付時の貼付時粘着性又はタック粘着性、(d-2)粘着使用中の日常的な動作において剥がれ難い程度の粘着性を有する持続粘着性、及び、(d-3)皮膚から剥がす時に、皮膚に損傷を与えることなく、皮膚に著しい違和感や刺激を与えることなく剥がすことが可能な剥離容易粘着性。
(e)皮膚に付着又は貼付された含水組成物を皮膚から剥がした時に、含水組成物の一部が皮膚に残存付着しない程度の剥離後残存物抑制性。
(f)柔軟性と保形性に加えて、水を蒸散し難い保水性を有する保水柔軟保形性を有する含水組成物及びその含水組成物を備えた貼付剤。
【0096】
このような貼付剤において、所望の貼付剤としての基本性能を得るために、含水組成物に含有される機能性成分として、分子構造的に網目構造に架橋可能な架橋性水溶性高分子と分子構造的に架橋しない非架橋性水溶性高分子との双方の水溶性高分子を有する貼付剤であって、約45℃以下の温度において柔軟性と粘着性を有するとともに流動性のない状態であるゲル状の保形性を有し、防腐性を有し、人体皮膚に貼付して使用される、貼付剤が実施可能である。
架橋性水溶性高分子は、架橋剤の存在下で化学反応により架橋される迄の間には流動性を有し、架橋剤との化学反応により架橋された後には流動性のない状態であるゲル状を有し、非架橋性水溶性高分子は、水に溶解されるとともに架橋されない流動性のある粘稠状を有する。
【0097】
貼付剤に備えられる含水組成物としては、シート状保持部材に付着及び/又は含浸して保持させる前には流動性を有するとともに、シート状保持部材に付着保持させた後には、約45℃以下の温度において柔軟性と粘着性を有する流動性のない状態であるゲル状を有する組成物が使用でき、この性質を奏するために、所望の分子構造的に架橋可能な架橋性水溶性高分子、及び、架橋不可能な非架橋性水溶性高分子等が使用される。
【0098】
含水組成物をシート状保持部材に保持した構成を有する貼付剤を製造する方法としては、架橋性水溶性高分子と架橋剤とを含有する組成物の場合には、架橋性水溶性高分子が架橋されない流動性を有する状態の時に、この流動性含水高分子組成物をシート状保持部材に所定の形状で、付着保持及び/又は含浸保持させ、その後、時間的経過において、架橋性水溶性高分子が架橋されて、流動性含水高分子組成物が流動性のないゲル状態になる。このようにして、ゲル状の含水組成物をート状保持部材に付着保持及び/又は含浸保持した貼付剤が製造される。この場合、流動性含水高分子組成物の温度は、特に限定されることなく、低温、常温、高温などのいずれ温度でも可能である。
例えば、流動性を有する低温で流動性含水高分子組成物をシート状保持部材に所定形態で付着保持及び又は含浸保持させて、その後、常温に至る間の時間的経過において架橋性水溶性高分子を流動性のないゲル状態に変化させる方法が実施できる。
また、流動性を有する低温又は常温で流動性含水高分子組成物をシート状保持部材に所定形態で付着保持及び又は含浸保持させて、その後、所定温度に昇温して架橋性水溶性高分子を流動性のないゲル状態に変化させる方法が実施できる。
【0099】
架橋剤が含有されていない架橋性水溶性高分子又は非架橋性水溶性高分子を含有する組成物の場合には、約50℃よりも高い温度領域で流動するとともに約45℃以下の温度で流動性のないゲル状を有するように、これらの水と水溶性高分子と多価アルコールとの種類、含有量などが所望に調製される。
【0100】
貼付剤に構成される含水組成物に含有される架橋性水溶性高分子及び非架橋性水溶性高分子としては、前述の含水組成物の項において説明した水溶性高分子と同じ架橋性水溶性高分子及び非架橋性水溶性高分子が含有される。
すなわち、架橋性水溶性高分子としては、(i)架橋型アクリル酸系ポリマ、(ii)(a)アクリル酸系単量体、(b)架橋型アクリル酸系共重合ポリマ、(iii)部分中和型ポリアクリル酸、(iv)架橋型カルボキシビニルポリマ、及び/又は、(v)架橋型セルロース化合物、からなる群から選ばれる少なくとも一つの架橋性水溶性高分子を含有する。非架橋性水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリル酸デンプン、ポリアクリル酸アルキル、ポリビニルピロリドン、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アクリル酸アルキルと副モノマとの共重合ポリマ、ゼラチン、及び、寒天、からなる群から選ばれる少なくとも一つの非架橋性水溶性高分子、を含有する。
このような含水組成物は、約45℃以下の温度において柔軟性と粘着性を有するとともに流動性のない状態であるゲル状の保形性を有し、防腐性を有する。
【0101】
本発明の貼付剤に構成される含水組成物としては、(A)水は含水組成物の全含有量に対して20~95重量%を含有し、(B)水溶性高分子は含水組成物の全含有量に対して3~40重量%を含有し、(C)多価アルコールは含水組成物の全含有量に対して5~50重量%を含有する、構成が実施可能である。
【0102】
貼付剤に備えられる含水組成物において、水の含有量が約20~約95重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、水の含有量が約25~約90重量%の範囲である。この範囲の水を含有する含水組成物は、約45℃以下の温度において、最適な柔軟性とゲル状を有する形態になる。
水の含有量が約20重量%未満の含水組成物は、含有する水溶性高分子の全ての水溶性高分子を完全な溶解が不可能になり未溶解の粉末が残存する状態、又は、溶解したとしても高温においても流動性のない状態、又は、常温において柔軟性が低下する状態になる。さらに、含水組成物を備えた貼付剤を人体皮膚に付着又は貼付した時にやや硬い感覚で違和感を感じる等の、人体皮膚に貼付等の使用時の使用感が低下する傾向がある。
水の含有量が約95重量%を超える含水組成物は、約45℃以下の温度においても、流動性を有する状態となり、流動性のないゲル状の状態を得ることが困難になるとともに、人体皮膚への粘着性も低下する傾向にあり、人体皮膚に貼付する観点において不都合が生じる傾向がある。
【0103】
貼付剤に備えられる含水組成物において、水溶性高分子の含有量が約3~約40重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、水溶性高分子の含有量が約3~約30重量%の範囲である。この範囲の水を含有する含水組成物は、約45℃以下の温度において、最適な柔軟性とゲル状を有する形態になる。
水溶性高分子の含有量が約3重量%未満の含水組成物は、約20~45℃の温度において流動性を有する状態であり、保形性に劣る傾向がある。
水溶性高分子の含有量が約40重量%を超える含水組成物は、含有する水溶性高分子の全ての水溶性高分子を完全に溶解することが不可能になり未溶解の粉末が残存する状態、又は、水溶性高分子が溶解したとしても高温においても流動性のない状態になる。さらに、含水組成物は常温において柔軟性が低下して、含水組成物を備えた貼付剤を人体皮膚に付着又は貼付した時にやや硬い感覚で違和感を感じる等の、人体皮膚に貼付等の使用時の使用感が低下する傾向がある。
【0104】
本発明の含水組成物を構成した貼付剤により、(効果イ-貼付剤:低減された皮膚感作性・優れた防腐性を奏する貼付剤)皮膚抵抗の低い人が皮膚に貼付して使用する場合に、接触した皮膚のかぶれ等の皮膚感作性の低減が期待されるとともに、優れた防腐性を奏する貼付剤が得られるとともに、貼付剤に要求される粘着性、保形性、柔軟性、剥離容易粘着性、剥離残存抑制性等の貼付剤基本性能を有する貼付剤が得られる。特に、乳幼児、老人などの皮膚抵抗の低い人が使用する場合に、低減された皮膚感作性が期待されるとともに、優れた防腐性を奏する貼付剤が得られる。
特に、架橋されて網目構造に架橋された流動性のない状態であるゲル状を有する架橋性水溶性高分子を含有し、所定量の結合水・溶解水・自由水を有する水分活性形態の含水組成物を備えた貼付剤においても、前述の(a)~(f)の貼付剤としての基本性能を有するとともに、低減された皮膚感作性と優れた防腐性を奏する貼付剤が得られる。
さらに、含有される水溶性高分子の種類に対応して、前述の(効果ニ:架橋性水溶性高分子の含有による快適な保水柔軟保形性と低減された皮膚感作性・優れた防腐性)、(効果ホ:非架橋性水溶性高分子の含有による快適な保水柔軟粘着性)、(効果ホ:非架橋性水溶性高分子の含有による快適な保水柔軟粘着性)などの効果を奏する貼付剤が得られる。
【0105】
<貼付剤に構成される含水組成物に含有される多価アルコールについて>
本発明の貼付剤の含水組成物に含有される多価アルコールとしては、水に溶解する性質、又は、水と相溶性を有する性質を有する多価アルコールが望ましい。
多価アルコール類としては、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロパンジオール、ブチレングリコール、オクタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビット液、クロタミトン等が使用できる。ソルビット液はソルビトールを水などの溶媒に溶解した粘性液体である。
これらの多価アルコールのうち、プロピレングリコール、ブチレングリコール、及びグリセリンは、特に、フェノキシエタノール、カプリル酸グリセリル、ポリリシン等のパラベン類以外の防腐剤の防腐剤と併用されることにより、これらの防腐剤の防腐性促進作用を奏する作用効果を奏する。
【0106】
多価アルコールは、水よりも大きい粘稠性を有し、水に可溶又は水と良好な相溶性を有し、水と任意の割合で混合されて分離のない均一な液状となる性質を有するとともに、その多価アルコールの有する特性に対応して、所望の柔軟性、粘着性、保水性、保湿性を有する含水組成物を得ることができる。さらに、水に溶け難い水難溶性の防腐剤やその他の水に溶け難い薬理活性成分などを含有する含水組成物の場合に、これらの防腐剤及び/又は薬理活性成分を溶解して、含水組成物に含有させて、それらの防腐剤又は薬理活性成分の効能を効率よく発揮させることができる。
【0107】
すなわち、前述の(効果イ-貼付剤:低減された皮膚感作性・優れた防腐性を奏する貼付剤)が得られるとともに、(効果ト)多価アルコールの含有により、含水組成物を備えた貼付剤を人体皮膚に貼付した時に、粘着性、柔軟性、保水性、保形性、剥離容易粘着性、剥離後残存物抑制性等の全ての性能において、最適なバランス性能を有する状態に調整された貼付剤を得ることができる作用効果が得られ、さらに、(効果ト-a)特に水に難溶性の防腐剤を溶解する溶媒としての作用を兼ね備え、薬理活性成分などの効能付与機能性成分や防腐剤が水難溶性である場合には、これらの成分を溶解して含有させて、防腐剤又は効能付与機能性成分の効能を効率よく発揮させる効果が得られる。
【0108】
貼付剤に構成される含水組成物に含有される多価アルコールの最適な含有量は、多価アルコールの種類や非架橋性水溶性高分子の含有量により異なり、例えば、5~50重量%が望ましく、特に望ましくは、5~40重量%である。この範囲において、上記(効果ト)の効果が最適に得られる。多価アルコールの含有量が5重量%未満の場合には、粘着性、柔軟性、保水性に劣り、最適な物性が得られない傾向があり、50重量%を超える場合には、剥離後残存物抑制性に劣る傾向がある。
【0109】
なお、貼付剤に構成される含水組成物に含有される多価アルコールは、前述の「効果ト」に記載のように、粘着性、柔軟性、保水性、保形性、剥離容易粘着性、剥離後残存物抑制性等の全ての性能において、最適なバランス性能を有する状態に調整する作用を有するとともに、特に、グリセリン、ジプロピレングリコール、ソルビトール、等は、含水組成物の保湿性を高める機能を兼ね備え、また、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどは含水組成物の軟化性及び粘着性を付与する作用、及び、水に難溶性の防腐剤の溶剤としての作用も兼ね備える。
これらの多価アルコールは、水に難溶性の鎮痛消炎成分、肌改善成分、清涼感付与成分、防腐剤などの追加成分を溶解して、含水組成物の中に均一に含有するための溶媒としての機能も奏することができる。常温において高い粘性を有するグリセリンなどの多価アルコールの場合には、昇温により粘性を低下して追加成分を溶解しやすくしたり、又は、エタノールやプロピルアルコールなどの低級アルコールと併用して上記の追加成分を溶解して使用できる。
【0110】
<シート状保持部材について>
本発明の貼付剤に構成されるシート状保持部材としては、特に限定されないが、含水組成物がシート状保持部材から剥離されることなく充分に保持されるものであればよく、例えば、各種の合成繊維及び天然繊維を用いた不織布又は織布等の繊維集合体、紙等の繊維集合体、伸縮可能なゴム素材を含有する伸縮性素材、プラスチック製フィルム素材、等のシート状保持部材を用いることができる。
シート状保持部材としては、特に、空気、水分及び湿気のうちの少なくとも一つを通過可能な微細凹凸表面を有する多孔性材料より構成される構成が望ましく、含水組成物がシート状保持部材の微細凹凸表面の凹凸の内部に入り込む状態で付着又は含浸してして保持され、含水組成物がシート状保持部材から剥がれることなく固着する効果が得られる。
また、シート状保持部材としては、平面方向に伸縮可能に構成されるとともに、シート状保持部材の伸縮に対応して、シート状保持部材に付着保持された含水組成物も伸縮可能に構成された構成が望ましい。伸縮可能なシート状保持部材の場合、シート状保持部材に含水組成物を積層した貼付剤を人体に貼って使用するときに、貼付剤を伸縮自在に人体に貼付可能であり、貼付した後においても人体の動きに対応して貼付剤が自在に伸縮し、シート状保持部材と含水高分子ゲル組成物との境界分離が生じることなく、更に貼付剤が人体から剥がれることなく安定して使用可能となる。
【0111】
この構成により、(効果ヌ)含水組成物をシート状保持部材の表面に付着及び/又は含浸して保持した構成により、前述の(効果イ-貼付剤:低減された皮膚感作性・優れた防腐性を奏する貼付剤)の作用効果が得られるとともに、特に、人体の所望の皮膚に良好に貼付可能であり、更に、含水組成物を付着していないシート状保持部材の裏面は粘着性を有することなく人体手や衣類などに付着しない非粘着性を有する貼付剤が得られる。
【0112】
<剥離シートについて>
本発明の貼付剤において、さらに、シート状保持部材に付着保持された含水組成物を覆って、その含水組成物の表面に積層された剥離シートを備えた構成も実施可能である。この剥離シートは、使用時に、貼付剤から剥離されて、シート状保持部材の表面に付着保持された含水組成物の側が人体皮膚に貼り付けて使用される。剥離シートとしては特に限定なく、含水組成物から、該含水組成物を破損なく離形可能である離形性を有するプラスチックフィルム製のシートなどが構成可能である。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム状シートが使用できる。
【0113】
<含水組成物を備えた貼付剤の製造方法について>
本発明の含水組成物を備えた貼付剤の製造方法は、シート状保持部材と該シート状保持部材に付着及び/又は含侵して保持されてなる含水組成物とを備えてなり人体皮膚に貼付可能な貼付剤の製造方法であって、含水組成物は、(A)水と、(B)前記水に溶解可能な機能性成分としての水溶性高分子と、を含有し、さらに、少なくとも、(C)前記水に溶解可能又は相溶可能な防腐性促進作用を奏する多価アルコールと、(E)前記水及び/又は多価アルコールに溶解可能なパラベン類以外の防腐剤と、を含有し、前記パラベン類以外の防腐剤が、フェノキシエタノールと、カプリル酸グリセリルと、ポリリシンと、からなる群から選ばれる少なくとも一つのパラベン類以外の防腐剤、を含有してなり、約45℃以下の温度において、柔軟性と粘着性を有する流動性のない状態であるゲル状を有するとともに、防腐性を有し、人体皮膚に貼付可能に構成されてなる。
このような貼付剤の製造方法は、以下の工程を備える。
(a)少なくとも、水に可溶である水溶性高分子を、水に混合溶解し、これにより、粘稠性を有するとともに流動性を有する水溶性高分子含有予調液を調製する工程.
(c)パラベン類以外の防腐剤と、該防腐剤を溶解可能な水及び/又は多価アルコールとを混合し、これにより、防腐剤が溶解されて含有された防腐剤含有予調液を調製する工程.
(e)多価アルコールと、前記(a)により調製された前記水溶性高分子含有予調液と、前記(c)により調製された前記防腐剤含有予調液を、混合し、これにより、前記防腐剤が溶解されているとともに、粘稠性を有するとともに流動性を有する、流動性含水高分子組成物を調製する工程、ここで、該流動性含水高分子組成物は所定の温度に調整される.
(f)前記(e)工程の後に、前記流動性含水高分子組成物がゲル化する迄の流動性を維持している時に、シート状保持部材に所定の厚さで前記流動性含水高分子組成物を付着及び/又は含侵し、これにより、前記シート状保持部材に保持されたシート状保持部材付流動性含水高分子組成物を調製する工程.
(g)前記(f)工程により調製された前記シート状保持部材付流動性含水高分子組成物を所定温度に調整し、これにより、前記流動性含水高分子組成物を、流動性を有しないゲル状態にゲル化された含水組成物を調製する工程。
【0114】
上記の貼付剤の製造方法において、望ましくは、下記の構成を備えた製造方法が実施可能である。この含水組成物を備えた貼付剤の製造方法を示す製造工程の概略工程説明図が
図1に示される。但し、
図1は、含水組成物がさらに、後述の追加成分を含有する工程を示す。
前記(B)において、前記水溶性高分子は、(B-1)分子構造的に架橋可能な架橋性水溶性高分子と、(B-2)分子構造的に架橋不可能な非架橋性水溶性高分子を含有し、前記含水組成物は、さらに、(D)前記架橋性水溶性高分子を分子構造的に架橋可能な架橋剤を含有し、以下の工程を備える。
(a-1)少なくとも、架橋性水溶性高分子を水に混合溶解し、これにより、粘稠性を有するとともに流動性を有する架橋性水溶性高分子含有予調液を調製する工程.
(a-2)少なくとも、非架橋性水溶性高分子を水に混合溶解し、これにより、粘稠性を有するとともに流動性を有する非架橋性水溶性高分子含有予調液を調製する工程、
(b)少なくとも、架橋性水溶性高分子を分子構造的に架橋可能な架橋剤を、水に混合溶解し、これにより、架橋剤含有予調液を調製する工程.
(c)パラベン類以外の防腐剤と、該防腐剤を溶解可能な水及び/又は多価アルコールとを混合し、これにより、防腐剤が溶解されて含有された防腐剤含有予調液を調製する工程.
(e)多価アルコールと、前記(a-1)により調製された前記架橋性水溶性高分子含有予調液と、前記(a-2)により調製された前記非架橋性水溶性高分子含有予調液と、前記(b)により調製された前記架橋剤含有予調液と、前記(c)により調製された前記防腐剤含有予調液を、混合し、これにより、前記防腐剤が溶解されているとともに、粘稠性を有するとともに流動性を有する流動性含水高分子組成物を調製する工程.
(f)前記(e)工程の後に、前記流動性含水高分子組成物がゲル化する迄の流動性を維持している時に、シート状保持部材に所定の厚さで前記流動性含水高分子組成物を付着及び/又は含侵し、これにより、前記シート状保持部材に保持されたシート状保持部材付流動性含水高分子組成物を調製する工程.
(g)前記(f)工程の後に、前記シート状保持部材付流動性含水高分子組成物に含有されている前記架橋性水溶性高分子が前記架橋剤との化学反応により網目構造に架橋されて、流動性を有しないゲル状態にゲル化された含水組成物を調製する工程。
なお、
図1の(d)工程において、追加成分などが水及び/又は多価アルコールに溶解不可能である場合には、追加成分などをエタノールやプロピルアルコール等の低級アルコール、及び/又は界面活性剤に溶解混合する工程が実施可能である。
【0115】
上記(a-1)工程、(a-2)工程、(b)工程、(c)工程において、所定温度に降温した温度状態、所定温度に昇温した温度状態、又は、常温状態、のいずれかの状態で混合することが可能である。また、上記(e)工程において、所定温度に降温した温度状態、所定温度に昇温した温度状態、又は、常温状態、のいずれかの状態で混合することが可能である。これにより、混合された架橋性水溶性高分子と非架橋性水溶性高分子とを含む所望の流動性を有する流動性含水高分子組成物が調製される。そして、(g)工程において、所定の温度に降温又は昇温して調整した温度状態、又は、常温状態のいずれかの状態で混合することが可能である。これにより、シート状保持部材付流動性含水高分子組成物に含有されている架橋性水溶性高分子が架橋剤との化学反応により網目構造に架橋して、流動性を有しないゲル状態にゲル化された含水組成物を備えた貼付剤が調製される。なお、常温とは、特別に昇温又は降温しない温度領域を意味し、例えば、通常の作業環境である室温、又は、約18℃~約30℃である。
【0116】
本製造方法において、上記(e)工程、(f)工程、(g)工程において、下記の工程が望ましく実施可能である。
上記(e)工程において、所定温度に昇温した温度状態した状態で混合し、上記(g)工程において、昇温から常温の温度範囲の状態で架橋性水溶性高分子が架橋される製造方法が実施可能である。この場合、(f)工程において、昇温により架橋性水溶性高分子の架橋反応が促進されて短時間に流動性のないゲル状態になる傾向があるため、シート状保持部材に流動性含水高分子組成物を付着及び/又は含侵している間に架橋反応が進行しないような性質を有する架橋剤を使用することが望ましい。
【0117】
本製造方法において、上記(e)工程において、所定温度に降温した温度状態した状態で混合し、上記(g)工程において、降温から常温の温度範囲の状態で架橋性水溶性高分子が架橋される製造方法も実施可能である。すなわち、上記(e)工程において、多価アルコールと、架橋性水溶性高分子含有予調液と、非架橋性水溶性高分子含有予調液と、架橋剤含有予調液と、防腐剤含有予調液を、常温以下の温度になるように調整して混合し、この低温に制御することにより、架橋反応の進行を遅らせる方向に制御し、(f)工程における流動性含水高分子組成物がゲル化する迄の流動性を維持している時間を永くなるように確保して、シート状保持部材に所定の厚さで前記流動性含水高分子組成物を付着及び/又は含侵することを容易にし、そして、上記(g)工程において、常温又は常温以上の雰囲気温度において、シート状保持部材付流動性含水高分子組成物に含有されている架橋性水溶性高分子が架橋剤との化学反応により網目構造に架橋されて、流動性を有しないゲル状態にゲル化された含水組成物を調製する、方法も実施可能である。この場合、常温の温度範囲の状態で架橋反応が起こる性質を有する架橋剤を使用することが望ましい。
【0118】
上記の製造方法において、防腐剤として、パラベン類の防腐剤を含有しない構成、又は、パラベン類含有量を0.05重量%以下に低減した構成が実施可能である。
【0119】
この構成により、(効果オ)パラベン類以外の他の防腐剤を含有した含水組成物を備えた貼付剤において、粘着性、柔軟性、保水性、保形性、剥離容易粘着性、剥離後残存物抑制性等の全ての性能において、最適なバランス性能を有する状態に調整された貼付剤を製造できるとともに、特に、防腐剤が含水組成物に溶解された貼付剤を製造することができ、これにより、より少ない防腐剤の含有においても防腐性能を効率よく発揮できる貼付剤を製造できる。
すなわち、流動性がなく、外圧に対しても形状を維持できる保形性を有するとともに、多量の十分な水分を保持できる保水性を有し、更に、人体皮膚に貼付した場合に硬い等の貼付違和感のない快適な柔軟性を有する快適な保水柔軟保形性を有する含水組成物を備えた貼付剤の製造方法が得られる。この貼付剤を使用して、皮膚抵抗の弱い人が使用する場合に、接触した皮膚のかぶれ等の皮膚感作性の低減が期待されるとともに、優れた防腐性を奏する、水と水溶性高分子を含有する含水組成物を備えた貼付剤の製造方法が得られる。特に、乳幼児、老人などの皮膚抵抗の低い人が使用する場合に、皮膚のかぶれなどの皮膚感作性の著しい改善が期待できる。
さらに、(効果イ-abd:低減された皮膚感作性・優れた防腐性)フェノキシエタノール、及び、カプリル酸グリセリル、ポリリシン、からなる群から選ばれる少なくとも一つの防腐剤を含有してなる構成により、皮膚抵抗の低い人が使用する場合に、接触した皮膚のかぶれ等の皮膚感作性の低減が期待されるとともに、優れた防腐性を奏する、貼付剤の製造方法が得られる。
【0120】
本発明の含水組成物を備えた貼付剤の製造方法において、前述の(B-1)架橋性水溶性高分子、(B-2)非架橋性水溶性高分子、及び、前述の(C)多価アルコールが使用可能である。
(B-1)架橋性水溶性高分子としては、(i)架橋型アクリル酸系ポリマ、(ii)架橋型アクリル酸系共重合ポリマ、(iii)架橋型アクリル酸系ポリマ、(iv)架橋型カルボキシビニルポリマ、及び、(v)架橋型セルロース化合物の架橋型水溶性高分子から選ばれる少なくとも一つの架橋性水溶性高分子であり、架橋性水溶性高分子が前記架橋剤との化学反応により網目構造に架橋される性質を有する架橋性水溶性高分子が使用できる。
(B-2)非架橋性水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、アクリル酸デンプン、ポリアクリル酸アルキル、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アルキルと副モノマとの共重合ポリマ、非架橋型セルロース、ゼラチン、及び、寒天からなる群から選ばれる少なくとも一つの非架橋性水溶性高分子が使用できる。
(C)多価アルコールとしては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、プロパンジオール、グリセリン、及び、ソルビット液からなる群から選ばれる少なくとも一つの多価アルコールが使用できる。
【0121】
この構成により、前述の(効果イ-貼付剤:低減された皮膚感作性・優れた防腐性を奏する貼付剤)が得られるとともに、前述の(効果ト)が得られる。
さらに、多価アルコールは、前述の「効果ト」の作用を有するとともに、特に、グリセリン、ジプロピレングリコール、ソルビトール、等は、含水組成物の保湿性を高める機能を兼ね備え、また、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどは軟化性を付与する作用、及び、水に難溶性の防腐剤の溶剤としての作用も兼ね備える。
【0122】
本発明の含水組成物の製造方法、及び、本発明の含水組成物を備えた貼付剤の製造方法において、前記含水組成物は、さらに、機能性成分としての効能付与機能性成分、及び/又は、追加成分を含有し、前記効能付与機能性成分は、薬理活性成分、肌改善成分、及び、芳香成分、からなる群から選ばれる少なくとも一つの効能付与機能性成分であり、前記追加成分は、(K-1)口に含んだ場合に苦みを感じて誤食を抑制する機能を有する誤食防止成分、(K-2)清涼感を奏する清涼感付与成分、(K-3)温感を奏する温感温感付与成分、及び、(K-4)pHを調整するpH調整成分、からなる群から選ばれる少なくとも一つの追加成分であり、さらに、(d)前記効能付与機能性成分、誤食防止成分、前記清涼感付与成分、前記温感温感付与成分、及び、pH調整成分からなる群から選ばれる少なくとも一つの成分を、水及び/又は多価アルコールに溶解又は混合して、効能付与機能性成分・追加成分含有予調液を調製する工程、を備え、前記(e)において、前記それぞれの予調液に加えて、さらに、前記(d)工程により調製された効能付与機能性成分・追加成分含有予調液を混合し、これにより、前記防腐剤が溶解されているとともに、粘稠性を有するとともに流動性を有する、流動性含水高分子組成物を調製する工程、を備える貼付剤の製造方法が実施可能である。
【0123】
これにより、前記防腐剤が溶解されているとともに、上記の効能付与機能性成分や追加成分は、含水組成物に溶解された状態、又は、含水組成物に乳化状態で含有された状態、又は、それらの微粒子が分散含有された状態、で含有される。
この構成により、(効果リ)効能付与機能性成分や追加成分などを含有してなる含水組成物又は貼付剤は、含有する効能付与機能性成分や追加成分に対応する効能を奏する作用効果が得られる。
【0124】
<防腐剤を含有する含水組成物を備えた貼付剤の製造方法について>
本発明の貼付剤の製造方法において、防腐剤として、下記の種々の防腐剤を含有する含水組成物を構成することができる。
本発明の貼付剤の製造方法において、防腐剤は、全量に対して0.2~1.0重量%のフェノキシエタノール、全量に対して0.01~0.8重量%のカプリル酸グリセリル、及び、全量に対して0.01~0.8重量%のポリリシン、からなる群から選ばれる少なくとも一つのパラベン類以外の防腐剤、を含有し、前記(c)工程において、(c-a)水及び/又は多価アルコールにフェノキシエタノールを溶解する工程、(c-b)多価アルコールにカプリル酸グリセリルを溶解する工程、及び、(c-d)水にポリリシンを溶解する工程、からなる群から選ばれる少なくとも一つの防腐剤含有予調液を調製し、前記(e)工程において、前記防腐剤は、前記流動性含水高分子組成物に溶解された状態を有する。
【0125】
また、防腐剤として、下記の種々の防腐剤を含有する含水組成物を構成することができる。
前記(E)において、前記パラベン類以外の防腐剤の最少の含有量が、全量に対して、フェノキシエタノール含有量をX軸とし、カプリル酸グリセリル及び/又はポリリシンの含有量をY軸とするXY座標において、X軸におけるフェノキシエタノール含有量が0.17重量%である点MとY軸におけるカプリル酸グリセリル及び/又はポリリシンの含有量が0.007重量%である点Nとを結ぶ直線MNよりも上側領域にあるように、フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリル及び/又はポリリシン、との双方の防腐剤が含有されてなり、前記(c)工程において、(c-a)水及び/又は多価アルコールにフェノキシエタノールを溶解する工程と、(c-b)多価アルコールにカプリル酸グリセリルを溶解する工程及び/又は(c-d)水にポリリシンを溶解する工程の防腐剤含有予調液を調製し、前記(e)工程において、前記防腐剤は、前記流動性含水高分子組成物に溶解された状態を有する。
なお、本構成において、防腐剤として、フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリル、フェノキシエタノールとポリリシン、又は、フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリルとポリリシンを含有する構成が実施可能である。
【0126】
すなわち、フェノキシエタノールは水に僅かに溶解するとともに多価アルコールに容易に溶解する性質を有し、カプリル酸グリセリルは水には難溶性であるが多価アルコールには容易に溶解する性質を有し、ポリリシンは水に容易に溶解するが多価アルコールには難溶性を有する。
これらの異なる溶解性を有する防腐剤を含有せしめる場合、(c)工程において、使用する防腐剤の種類に対応して、防腐剤を溶解する溶媒として、水、多価アルコール、又は、水と多価アルコールとの混合溶媒、のいずれかの溶媒を選択使用して、防腐剤が溶解された防腐剤含有予調液を調製する。
そして、(e)工程において、非架橋性水溶性高分子含有予調液と、架橋剤含有予調液と、前記防腐剤含有予調液とが混合された場合に、水及び/又は多価アルコールに溶解された防腐剤が、微粒子状又は懸濁状となって析出分散又は相分離した状態になることなく、防腐剤が流動性含水高分子組成物に溶解された状態を有する架橋剤含有予調液を調製する。
【0127】
この構成により、(効果ロ-貼付剤:フェノキシエタノールと、他の防腐剤含有・低減された皮膚感作性・優れた防腐性)特に、フェノキシエタノールと、カプリル酸グリセリル及び/又はポリリシンとの双方の防腐剤を含有してなる構成により、フェノキシエタノールの含有量を著しく少なくできるとともに、併用する他の防腐剤の含有量も著しく少なくすることが可能となり、含有される防腐剤の全含有量が少ない組成物を備えた貼付剤においても、十分な防腐性を奏する、含水高分子ゲル貼付剤の製造方法が得られる。また、フェノキシエタノールに加えて、カプリル酸グリセリル及び/又はポリリシンの双方の防腐剤を含有してなる構成により、同一防腐剤濃度におけるこれらの防腐剤の単独使用と比べてより優れた防腐性を奏する効果が得られる。
【0128】
本発明の貼付剤の製造方法において、含水組成物は、防腐性促進作用を奏する多価アルコールとして、少なくとも、プロピレングリコール、ブチレングリコール及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも一つの多価アルコールを含有するとともに、前記防腐剤として、少なくとも、フェノキシエタノール、カプリル酸グリセリル、及び、ポリリシンからなる群から選ばれる少なくとも一つの防腐剤を含有し、前記多価アルコールと前記防腐剤との含有により、前記多価アルコールが前記防腐剤の防腐性を促進する作用を奏し、前記(c)工程において、パラベン類以外の防腐剤と、該防腐剤を溶解可能な多価アルコールとを混合し、これにより、防腐剤が溶解されて含有された防腐剤含有予調液を調製する工程を有する、構成が望ましく実施可能である。
この構成により、(効果ワ-貼付剤:多価アルコールと他の防腐剤との含有による防腐性促進効果)を奏する貼付剤を効率よく製造できる。
【0129】
本発明の含水組成物の製造方法及び貼付剤の製造方法において、含水組成物がパラベン類を含有しない構成、又は、皮膚感作性に影響を及ぼさない程度の0.05重量%以下のパラベン類を含有する構成が望ましく実施可能である。
【0130】
本発明の含水組成物の製造方法及び貼付剤の製造方法において、構成される機能性成分、防腐剤、多価アルコール、等の含有成分に関して、これらの構成成分の種類、含有量、性質については、上記の含水組成物及び貼付剤について説明した事項と同じである。
【実施例】
【0131】
以下、本発明について実施例を説明する。
実施例において、調製したそれぞれの含水組成物、又は、含水組成物を備えた貼付剤について、防腐性などを比較検討した。
[防腐性の試験測定方法]:
(a)調製したそれぞれの含水組成物又は貼付剤について、1個の試験試料を調製した。
(b)標準細菌混合菌(大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌)と標準真菌混合菌(クロコウジカビとカンジダ)の2種類の試験菌を準備する。
(c)上記それぞれの試験菌を、減菌リン酸緩衝生理食塩水を用いて、それぞれ、1×1000000個/mL~30×1000000個/mLになるように試験菌液を作成する。
(d)それぞれの含水組成物又は含水組成物を備えた貼付剤の試験試料を減菌バイアル瓶に入れ、試験菌液0.1mlを接種する。この場合、試験試料が含水組成物である場合には、含水組成物をシャーレに容れたものを試験試料とする。試験試料が貼付剤である場合には、20mm×20mm形状のシート状保持部材に含水組成物が付着された貼付剤を試験試料とする。
(e)上記の細菌混合菌と真菌混合菌を接種した含水組成物又は含水組成物を備えた貼付剤を入れた減菌バイアル瓶を25~37℃、湿度95%で保存する。
(f)試験菌液を接種したそれぞれの含水組成物又は貼付剤の試験片を、7日、14日、21日、及び、28日目に取出して生菌数を測定した。
(g)28日目の測定結果において、細菌混合菌に関して接種細菌数の0.01%以下であるとともに、真菌混合菌に関して接種真菌数の0.1%以下の場合である場合を、防腐性良(○)として判定し、これらの菌数を超える場合を防腐性不良(×)として判定した。
【0132】
[貼付剤の粘着性の試験測定方法]:
医薬品製造販売指針の中に掲載されている傾斜式ボールタック試験法により測定した。
種々の貼付剤試料を人体額の皮膚に貼付して垂直状態で30分間維持して貼付剤の脱落等の有無を観察して、脱落なく最適と感じる粘着性を有する貼付剤を最適粘着性を有する最適粘着性貼付剤として選定した。そして、その最適粘着性貼付剤を試験試料として用いて傾斜式ボールタック試験法により測定して、傾斜式ボールタック試験法による基本測定値を規定した。
すなわち、調製した含水組成物を備えた貼付剤を試験試料として、30度の傾斜板に、貼付剤の含水組成物が表面側になるように試験試料を載置し、含水組成物の表面に大きさの異なる鉄球を転がして、一定時間停止するか否かにより粘着力を測定した。そして、最適粘着性貼付剤を試験試料として用いた傾斜式ボールタック試験法による基本測定値と比較して、粘着力が良好と感じる場合を良(○)として判定し、粘着力が不良と感じる場合を(×)として判定した。
[貼付剤の保形性の試験測定方法]:
貼付剤のシート状保持部材側を板に貼りつけた状態で約45度に傾斜し、3分後に、表面側に付着されている含水組成物の流動の可否を観察し、流動又は変形なく形状を維持している良好な場合を良(○)として判定し、流動して形状が変化している場合を不可(×)として判定した。
[貼付剤の柔軟性の試験測定方法]:
調製された貼付剤を人体額に貼付して、快適な柔軟感を感じる場合を良(○)として判定し、不快な硬さ感を感じる場合を不可(×)として判定した。
[貼付剤の剥離容易粘着性の試験測定方法]:
調製された貼付剤を人体額に貼付して、3分後に、額に貼りつけられた貼付剤の端部から徐々に剥がしていき、額の皮膚が不快感を感じることなく容易に剥がすことができた場合を良(○)として判定し、剥がす時の接着力が強すぎて額の皮膚に不快感を感じて容易に剥がすことができなかった場合を不可(×)として判定した。
[剥離後残存物抑制性(剥離残存抑制性)の試験測定方法]:
調製された貼付剤を人体額に貼付して、3分後に、額に貼りつけられた貼付剤の端部から徐々に剥がしていき、何等の異常なく、剥がすことができた場合を良(○)として判定し、貼付剤の含水組成物の一部が破損して、人体額に残存付着した場合を不可(×)として判定した。
【実施例1】
【0133】
水と、機能性成分としての水溶性高分子と、多価アルコールとしての1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンと、防腐剤としてフェノキシエタノールを含有する含水組成物を調製するとともに、その含水組成物を備えた貼付剤を調製し、調製したそれぞれの貼付剤について、防腐性等を比較検討した。
図1に本発明の一実施例の貼付剤の製造方法を説明する概略工程説明図を示す。
図1の概略工程説明図に一致して、以下の工程により含水組成物、及び、その含水組成物を備えた貼付剤を調製した。
【0134】
(a-1)機能性成分としてのポリアクリル酸ナトリウム、部分中和型ポリアクリル酸、架橋型カルボキシビニルポリマ等の架橋性水溶性高分子10gを水に混合溶解して粘稠性を有するとともに流動性を有する架橋性水溶性高分子含有予調液を調製する。
(a-2)機能性成分としてのポリビニルアルコール、非架橋型カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸アルキル等の非架橋性水溶性高分子6gを水に混合溶解して粘稠性を有するとともに流動性を有する非架橋性水溶性高分子含有予調液を調製する。
(b)架橋性水溶性高分子を架橋可能な架橋剤0.5g以下を水に混合溶解して架橋剤含有予調液を調製する。
(c)防腐剤として所定量のフェノキシエタノールをプロピレングリコールに混合溶解して、防腐剤が溶解されて含有された防腐剤含有予調液を調製する。
(d-1)pH調整成分としての酸類(0.1g以下)を水に混合溶解して追加成分含有予調液d1を調製する。
(d-3)誤食防止剤としてのビトレックス原体(0.01g以下、別名:安息香酸デナトリウム)を水に混合溶解して追加成分含有予調液d3を調製する。
(e)多価アルコールとしての1,3-ブチレングリコール5gとプロピレングリコール5gとグリセリン8gの混合多価アルコール、前記(a-1)により調製された架橋性水溶性高分子含有予調液、前記(a-2)により調製された非架橋性水溶性高分子含有予調液、前記(b)により調製された架橋剤含有予調液、前記(c)により調製された防腐剤含有予調液、前記(d-1)により調製された追加成分含有予調液d1、及び、前記(d-3)により調製された追加成分含有予調液d3を混合する。この場合、所定の温度で混合する。これにより、防腐剤が溶解されているとともに、粘稠性を有するとともに流動性を有する流動性含水高分子組成物を調製する。
これにより、含水組成物としての、防腐剤が溶解されているとともに粘稠性を有するとともに流動性を有する流動性含水高分子組成物を調製する。
【0135】
(f)前記(e)工程の後に、流動性含水高分子組成物がゲル化する迄の流動性を維持している時に、シート状保持部材に約0.5mm厚さで前記(e)工程により調製された流動性含水高分子組成物を付着展延及び/又は含浸する。これにより、シート状保持部材に保持されたシート状保持部材付流動性含水高分子組成物を調製する。シート状保持部材としては、縦幅50mm、横幅約130mmの長方形、厚さ約1mmであって、平面方向に伸縮可能な屈曲柔軟性、空気湿度透過性を有する合成繊維を使用した不織布製のシート状保持部材を使用する。
(g)前記(f)工程により調製された前記シート状保持部材付流動性含水高分子組成物を所定温度に調整し、これにより、時間の経過に伴って、シート状保持部材付流動性含水高分子組成物に含有されている架橋性水溶性高分子を前記架橋剤との化学反応により網目構造に架橋させて、流動性含水高分子組成物を、流動性を有しないゲル状態にゲル化された含水組成物を調製する。
なお、前記(e)において、含水組成物の全量が100gとなるように、含水組成物に含有される水の含有量が追加されて混合される。
【0136】
このようにして、水と、架橋性水溶性高分子(10g)と非架橋性水溶性高分子(6g)とを有する水溶性高分子、多価アルコール(18g)と、架橋剤(0.5g以下)と、pH調整成分・誤食防止剤(計0.2g以下)を含有するとともに、種々の含有割合のフェノキシエタノール防腐剤を含有する含水組成物を備えた試料1~7の貼付剤を調製した。なお、本実施例の試料1~7において、防腐剤としてのパラベン類は含有されていない。
また、防腐剤の比較例として、前記(c)工程において、フェノキシエタノールを含有することなく、メチルパラベンとプロピルパラベンとのパラベン類の防腐剤をエタノールに溶解して防腐剤含有予調液pを調製し、その防腐剤含有予調液pを含有する貼付剤を調製した(試料8)。
【0137】
調製したそれぞれの貼付剤に構成される含水組成物は約45℃以下の温度において、柔軟性と粘着性を有し、流動性のない状態であるゲル状を有することを確認した。また、含水組成物は透明状態を有し、含有される防腐剤や他の追加成分が含水組成物に中に均一に含有されていることを確認した。調製したそれぞれの貼付剤について、貼付剤物性の測定結果を表2に示す。表2において、それぞれの成分の含有量は、重量%(wt%)で示す。
【0138】
【0139】
表2において、フェノキシエタノールの含有量が0.2重量%以上の貼付剤(試料4~7)は良好な防腐性を奏し、フェノキシエタノールの含有量が0.2重量%未満(試料1~3)の場合には防腐性に劣ることが解かる。
一方、比較例(従来技術)として、パラベン類の含有量が0.1重量%(試料8)の場合には良好な防腐性を奏することを確認した。
【実施例2】
【0140】
防腐剤としてカプリル酸グリセリルを含有する含水組成物を備えた貼付剤を調製し、調製したそれぞれの貼付剤について、防腐性を比較検討した。
実施例1におけるフェノキシエタノールに替えて、カプリル酸グリセリルを含有した含水組成物を備えた貼付剤を調製した。本実施例において、前記(c)工程は、(c)防腐剤として所定量のカプリル酸グリセリルをプロピレングリコールに混合溶解して、防腐剤が溶解されて含有された防腐剤含有予調液を調製する。この場合、室温でロウ状を有するカプリル酸グリセリルを昇温して、液状になったカプリル酸グリセリルとプロピレングリコールとを混合溶解する。その他の工程は前述の実施例1と同じである。調製したそれぞれの貼付剤について、貼付剤物性の測定結果を表3に示す。なお、本実施例の試料9~14において、防腐剤としてのパラベン類は含有されていない。
【0141】
【0142】
表3において、カプリル酸グリセリルの含有量が0.01重量%以上の貼付剤(試料11~14)は良好な防腐性を奏し、カプリル酸グリセリルの含有量が0.01重量%未満(試料9、10)の場合には防腐性に劣ることが解かる。
【実施例3】
【0143】
防腐剤としてポリリシンを含有する含水組成物を備えた貼付剤を調製し、調製したそれぞれの貼付剤について、防腐性を比較検討した。
実施例1におけるフェノキシエタノールに替えて、ポリリシンを含有した含水組成物を備えた貼付剤を調製した。
本実施例において、前記(c)工程は、(c)防腐剤として所定量のポリリシンを水に混合溶解して、防腐剤が溶解されて含有された防腐剤含有予調液を調製する。その他の工程は前述の実施例1と同じである。
調製したそれぞれの貼付剤について、貼付剤物性の測定結果を表4に示す。なお、本実施例の試料15~20において、防腐剤としてのパラベン類は含有されていない。
【0144】
【0145】
表4において、ポリリシンの含有量が0.01重量%以上の貼付剤(試料17~20)は良好な防腐性を奏し、ポリリシンの含有量が0.01重量%未満(試料15、16)の場合には防腐性に劣ることが解かる。
【実施例4】
【0146】
防腐剤としてフェノキシエタノールと他の防腐剤との双方の防腐剤を含有する含水組成物を備えた含水組成物を備えた貼付剤を調製し、調製したそれぞれの貼付剤について、防腐性を比較検討した。
本実施例において、実施例1と類似の方法により調製した。但し、実施例1の前記(c)工程に替えて、防腐剤の種類に依存して異なり、前記(c)工程は以下の工程を有する。
(c)防腐剤として所定量のフェノキシエタノールをプロピレングリコールに混合溶解して、防腐剤が溶解されて含有されたフェノキシエタノール含有予調液を調製する。
(c)防腐剤として所定量のカプリル酸グリセリルをプロピレングリコールに混合溶解して、防腐剤が溶解されて含有されたカプリル酸グリセリル含有予調液を調製する。
(c)防腐剤として所定量のポリリシンを水に混合溶解して、防腐剤が溶解されて含有されたポリリシン含有予調液を調製する。
(c)防腐剤として所定量の塩化防腐剤を水に混合溶解して、防腐剤が溶解されて含有された塩化防腐剤含有予調液を調製する。
そして、フェノキシエタノール含有予調液と他の所望の防腐剤含有予調液とを混合して、防腐剤含有予調液を調製する。
その他の工程は前述の実施例1と同じである。
調製したそれぞれの貼付剤について、貼付剤物性の測定結果を表5、表6に示す。なお、本実施例において、防腐剤としてのパラベン類は含有されていない。
【0147】
【0148】
表5において、フェノキシエタノール0.2重量%のみ含む試料30は防腐性を奏するが、減量したフェノキシエタノール0.17重量%のみ含む試料31は防腐性を有しない。
また、カプリル酸グリセリル0.01重量%のみ含む試料37は防腐性を奏するが、減量したカプリル酸グリセリル0.007重量%のみ含む試料34は防腐性を有しない
フェノキシエタノール0.1重量%とカプリル酸グリセリル0.003重量%との双方を含む試料32(
図2のQ点)は防腐性を有しないが、フェノキシエタノール0.1重量%とカプリル酸グリセリル0.005重量%との双方を含む試料33(
図2のS点)は防腐性を有するようになる。
フェノキシエタノール0.05重量%とカプリル酸グリセリル0.007重量%との双方を含む試料35(
図2のT点)は防腐性を有するようになり、また、フェノキシエタノール0.15重量%とカプリル酸グリセリル0.003重量%との双方を含む試料36(
図2のU点)は防腐性を有するようになる。
すなわち、
図2において、X点とY点とを結ぶ線XYと、M点とN点とを結ぶ線MNとに囲まれた領域の防腐剤を含有する組成物を備えた貼付剤が、双方の防腐剤の相乗作用により、それぞれの防腐剤の最少防腐剤含有量を減らすことが可能となることが解る。
換言すれば、フェノキシエタノールに加えて、カプリル酸グリセリルの防腐剤との双方の防腐剤を含有してなる構成により、同一防腐剤濃度におけるこれらの防腐剤の単独使用と比べてより優れた防腐性を奏する効果が得られる。
【0149】
【0150】
表6において、フェノキシエタノール0.2重量%のみ含む試料40は防腐性を奏するが、減量したフェノキシエタノール0.17重量%のみ含む試料41は防腐性を有しない。
また、ポリリシン0.01重量%のみ含む試料47は防腐性を奏するが、減量したポリリシン0.007重量%のみ含む試料44は防腐性を有しない
フェノキシエタノール0.1重量%とポリリシン0.003重量%との双方を含む試料42(
図2のQ点)は防腐性を有しないが、フェノキシエタノール0.1重量%とポリリシン0.005重量%との双方を含む試料43(
図2のS点)は防腐性を有するようになる。
フェノキシエタノール0.05重量%とポリリシン0.007重量%との双方を含む試料45(
図2のT点)は防腐性を有するようになり、また、フェノキシエタノール0.15重量%とポリリシン0.003重量%との双方を含む試料46(
図2のU点)は防腐性を有するようになる。
すなわち、
図2において、X点とY点とを結ぶ線XYと、M点とN点とを結ぶ線MNとに囲まれた領域の防腐剤を含有する組成物を備えた貼付剤が、双方の防腐剤の相乗作用により、それぞれの防腐剤の最少防腐剤含有量を減らすことが可能となることが解る。
換言すれば、フェノキシエタノールに加えて、ポリリシンの防腐剤との双方の防腐剤を含有してなる構成により、同一防腐剤濃度におけるこれらの防腐剤の単独使用と比べてより優れた防腐性を奏する効果が得られる。
【実施例5】
【0151】
本実施例は防腐剤として、フェノキシエタノール、カプリル酸グリセリル、ポリリシンを含有する組成物であって、多価アルコールとして、グリセリン、プロピレングリコール、又は、1,3-ブチレングリコールを含有するとともに、機能性成分としての水溶性高分子含有する含水組成物を構成した貼付剤の実施例、及び、多価アルコールを含有することなく多価アルコールに替えて水溶性高分子の含有量を増加した比較例である。
【0152】
実施例1と同じ方法により、架橋剤を含有するとともに、多価アルコールとしてグリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコールの含有量を変えた組成物を備えるとともに、種々の防腐剤を含有する含水組成物を備えた貼付剤を調製する。
本実施例において、前記(c)工程は、(c)防腐剤として所定量の防腐剤を昇温したグリセリン、プロピレングリコール及び/又はブチレングリコールに混合溶解して、防腐剤が溶解されて含有された防腐剤含有予調液を調製する。
前記(e)工程は、(e)多価アルコールとしてのグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコールと、前記(a-1)により調製された架橋性水溶性高分子含有予調液と、前記(a-2)により調製された非架橋性水溶性高分子含有予調液と、前記(b)により調製された架橋剤含有予調液と、前記(c)により調製された防腐剤含有予調液、前記(d-1)により調製された追加成分含有予調液d1、前記(d-2)により調製された追加成分含有予調液d2、前記(d-3)により調製された追加成分含有予調液d3を混合する。この場合、所定の温度で混合する。これにより、防腐剤が溶解されているとともに、粘稠性を有するとともに流動性を有する流動性含水高分子組成物を調製する。
その他の工程は実施例1と類似する。調製したそれぞれの含水組成物を備えた貼付剤について、貼付剤物性の測定結果を表7、表8、表9に示す。なお、本実施例において、防腐剤としてのパラベン類は含有されていない。
【0153】
【0154】
表7から明らかなように、フェノキシエタノール0.2重量%を含有する試料(試料70~79)において、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどの多価アルコール18重量%を含む試料(試料70、71、72)は優れた防腐性を有し、多価アルコールを含有しない試料(試料73)は防腐性に劣る。
グリセリン5重量%を含む試料(試料75)は防腐性を有するが、グリセリン3重量%を含む試料(試料74)は防腐性に劣る。
プロピレングリコール3重量%を含む試料(試料77)は防腐性を有するが、プロピレングリコール1重量%を含む試料(試料76)は防腐性に劣る。
ブチレングリコール3重量%を含む試料(試料79)は防腐性を有するが、ブチレングリコール1重量%を含む試料(試料78)は防腐性に劣る。
すなわち、フェノキシエタノール0.2重量%を含有する組成物において、グリセリンを約5重量%を含む組成物、プロピレングリコール又はブチレングリコールを約3重量%以上を含有する組成物を備えた貼付剤は、防腐性促進効果を奏することが解かる。
【0155】
【0156】
表8から明らかなように、カプリル酸グリセリル0.01重量%を含有する試料(試料80~89)において、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどの多価アルコール18重量%を含む試料(試料80、81、82)は優れた防腐性を有し、多価アルコールを含有しない試料(試料83)は防腐性に劣る。
グリセリン5重量%を含む試料(試料85)は防腐性を有するが、グリセリン3重量%を含む試料(試料84)は防腐性に劣る。
プロピレングリコール3重量%を含む試料(試料87)は防腐性を有するが、プロピレングリコール1重量%を含む試料(試料86)は防腐性に劣る。
ブチレングリコール3重量%を含む試料(試料89)は防腐性を有するが、ブチレングリコール1重量%を含む試料(試料88)は防腐性に劣る。
すなわち、カプリル酸グリセリル0.01重量%を含有するを含有する組成物において、グリセリン5重量%を含む組成物、プロピレングリコール又はブチレングリコールを約3重量%以上を含有する組成物を備えた貼付剤は、防腐性促進効果を奏することが解かる。
【0157】
なお、防腐剤を混合する(c)工程において、多価アルコールを含有しない試料(試料83)の調製において、カプリル酸グリセリルを約10倍量のエタノールに溶解した10パーセント防腐剤濃度の防腐剤含有予調液を調製して使用する。又、多価アルコール含有量が少ない試料(試料84~87)において、多価アルコールを50℃以上に昇温した状態で防腐剤が多価アルコールに溶解又は相溶して透明な状態になった防腐剤含有予調液を調製する。
【0158】
比較例85として、試料85のグリセリン5重量%とカプリル酸グリセリル0.01重量%を含有する試料に関連して、予めカプリル酸グリセリルをグリセリンに溶解させる(c)工程を経ることなく、(e)工程において、(a)工程により調製された前記水溶性高分子含有予調液にカプリル酸グリセリルを混合して強制的に混合してカプリル酸グリセリルを分散させて、カプリル酸グリセリルが完全に水を含む含水高分子予調液に、溶解されることなく、微粒子状態で分散された状態の流動性含水高分子組成物を調製する。このようにして調製された貼付剤の防腐性を測定した結果、防腐性は(×)であった。
すなわち、防腐剤が含水組成物に完全に溶解された状態で含有される場合は、防腐剤が含水組成物に完全に溶解されない状態よりも、若干優れた防腐性を奏する。
【0159】
【0160】
表9から明らかなように、ポリリシン0.01重量%を含有する試料(試料90~99)において、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどの多価アルコール18重量%を含む試料(試料90、91、92)は優れた防腐性を有し、多価アルコールを含有しない試料(試料93)は防腐性に劣る。
グリセリン5重量%を含む試料(試料95)は防腐性を有するが、グリセリン3重量%を含む試料(試料94)は防腐性に劣る。
プロピレングリコール3重量%を含む試料(試料97)は防腐性を有するが、プロピレングリコール1重量%を含む試料(試料96)は防腐性に劣る。
ブチレングリコール3重量%を含む試料(試料99)は防腐性を有するが、ブチレングリコール1重量%を含む試料(試料98)は防腐性に劣る。
すなわち、ポリリシン0.01重量%を含有する組成物において、グリセリン5重量%を含む組成物、プロピレングリコール又はブチレングリコールを約3重量%以上を含有する組成物を備えた貼付剤は、防腐性促進効果を奏することが解かる。
【0161】
本実施例は多価アルコールの含有量が防腐性に与える影響を比較検討するものであり、フェノキシエタノール0.2重量%以上を含有する組成物、カプリルサングリセリル又はポリリシン0.01重量%を含有する組成物において、グリセリン5重量%、プロピレングリコール又はブチレングリコールを約3重量%以上を含有する組成物が、防腐剤の防腐性促進作用を奏することを実証するものであり、その他の貼付剤としての特性については参考として検討したものである。
従って、本実施例において、多価アルコールの含有量が5重量%未満の試料は、いずれも、貼付剤の粘着性及び柔軟性に劣る傾向にあり、貼付剤としては不適切な構成であり、貼付剤としては、多価アルコールの含有量が5重量%を含有する含水組成物を備えた貼付剤が望ましく実施可能である。
【実施例6】
【0162】
水と、機能性成分としての水溶性高分子及び効能付与機能性成分(薬理活性成分、肌改善成分、芳香成分防腐性等)、促進作用を奏する多価アルコール、防腐剤、及び、追加成分(誤食防止成分、清涼感付与成分、温感温感付与成分、pH調整成分等)とを含有する種々の含水組成物と、その含水組成物をシート状保持部材に付着保持した種々の貼付剤を調製した。
図1に示す概略工程説明図に一致して、以下の工程により含水高分子ゲル貼付剤を調製した。
(a-1)ポリアクリル酸ナトリウム、部分中和型ポリアクリル酸、架橋型カルボキシビニルポリマ等の架橋性水溶性高分子を水に混合溶解して粘稠性を有するとともに流動性を有する架橋性水溶性高分子含有予調液を調製する。
(a-2)ポリビニルアルコール、非架橋型カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸アルキル等の所定量の非架橋性水溶性高分子を水に混合溶解して粘稠性を有するとともに流動性を有する非架橋性水溶性高分子含有予調液を調製する。
(b)架橋性水溶性高分子を架橋可能な架橋剤0.5g以下を水に混合溶解して架橋剤含有予調液を調製する。
(c)所定量の防腐剤をプロピレングリコールに混合溶解して、防腐剤が溶解されて含有された防腐剤含有予調液を調製する。
(d-1)pH調整成分としての酸類(0.1g以下)を水に混合溶解して追加成分含有予調液d1を調製する。
(d-2)所定の追加成分をエタノールに溶解して追加成分含有予調液d2を調製する。
(d-3)誤食防止剤としてのビトレックス原体(0.01g以下、別名:安息香酸デナトリウム)を水に混合溶解して追加成分含有予調液d3を調製する。
(e)多価アルコールとしてのグリセリンとプロピレングリコールとの混合多価アルコールと、前記(a-1)により調製された架橋性水溶性高分子含有予調液と、前記(a-2)により調製された非架橋性水溶性高分子含有予調液と、前記(b)により調製された架橋剤含有予調液と、前記(c)により調製された防腐剤含有予調液と、前記(d-1)により調製された追加成分含有予調液d1と、前記(d-2)により調製された追加成分含有予調液d2と、前記(d-3)により調製された追加成分含有予調液d3とを混合する。この場合、所定の温度で混合する。これにより、防腐剤が溶解されているとともに、粘稠性を有するとともに流動性を有する流動性含水高分子組成物を調製する。
(f)前記(e)工程の後に、流動性含水高分子組成物がゲル化する迄の流動性を維持している時に、シート状保持部材に約0.5mm厚さで前記流動性含水高分子組成物を付着展延及び/又はシート状保持部材に含侵する。これにより、前記シート状保持部材に保持されたシート状保持部材付流動性含水高分子組成物を調製する。シート状保持部材としては、縦幅50mm、横幅約130mmの長方形、厚さ約1.5mmであって、平面方向に伸縮可能な屈曲柔軟性、空気湿度透過性を有する合成繊維を使用した不織布製のシート状保持部材を使用する。
(g)前記(f)工程により調製された前記シート状保持部材付流動性含水高分子組成物を所定温度に調整し、これにより、時間の経過に伴って、前記シート状保持部材付流動性含水高分子組成物に含有されている前記架橋性水溶性高分子を前記架橋剤との化学反応により網目構造に架橋させて、前記流動性含水高分子組成物を、流動性を有しないゲル状態にゲル化された含水組成物を備えた貼付剤を調製する。
なお、前記(e)において、含水組成物の全量が100gとなるように、含水組成物に含有される水の含有量が追加されて混合される。
【0163】
このようにして、水と、架橋性水溶性高分子と、非架橋性水溶性高分子と、多価アルコールと、エタノール、架橋剤と、pH調整成分・清涼感付与成分・誤食防止剤などの追加成分を含有するとともに、防腐剤を含有する含水組成物を備えた貼付剤を調製した。なお、含水組成物の全量が100gとなるように水の含有量を調節含有した。
調製したそれぞれの貼付剤に構成される含水組成物は約45℃以下の温度において、柔軟性と粘着性を有し、流動性のない状態であるゲル状を有することを確認した。また、含水組成物は透明状態を有し、含有される防腐剤や他の追加成分が含水組成物に中に均一に含有されていることを確認した。調製したそれぞれの貼付剤について、貼付剤物性の測定結果を表10に示す。なお、本実施例において、防腐剤としてのパラベン類は含有されていない。
【0164】
【0165】
表10から明らかなように、試料51~試料57のいずれの貼付剤も、優れた防腐性を奏する。
試料51、52は、含水組成物をシート状保持部材の片面に付着した貼付剤であり、人体の冷却したい額等に貼付して使用される冷却シートである。
試料53は、含水組成物をシート状保持部材の片面に付着した貼付剤であり、人体の温めたい部位の皮膚に等に貼付して使用される冷温感付与シートである。
試料54、55は、含水組成物をシート状保持部材の片面に付着した貼付剤であり、人体の炎症又は痛む皮膚に貼付して使用される鎮痛消炎シートである。
試料56、57は、含水組成物を、シート状保持部材の片面又は両面に付着、又は、微細空隙を有する不織布製シートに含浸して保持した貼付剤であり、顔などの皮膚に貼付して、保湿、又は、肌荒れ、しみ、ソバカス、を改善して、美肌の目的で使用される肌改善用シートであり、例えば、肌改善用パック用シート、又は、肌改善用フェイスマスクとして使用される。
肌改善用フェイスマスクとしては、例えば、耳架け用の穴と、人体口に相当する部分と目に相当する部分と鼻穴に相当する部分に開口された穴を有するとともに伸縮性を有するシート状保持部材に含水組成物が含侵され、その含水組成物が含侵されて構成された肌改善用パック用シートを、人体の口、目、鼻穴を除く額、頬、顎を覆う人体顔に貼付するとともに、人体の両耳に架けてマスクのように貼付し、貼付により、含水組成物に含有されている肌改善用成分が人体の肌に接触及び/又は皮膚を通じて皮膚内部に浸透し、これにより、含有されている肌改善成分に対応して人体肌が改善される効果が得られる。
【0166】
(実施例6の比較例)
実施例5において、それぞれの含水組成物において防腐剤の含有量が少なく、その他の含有成分が同じであるそれぞれの貼付剤を調製し、その防腐性を測定した結果を表11に示す。なお、本比較例の比較試料51~57において、防腐剤としてのパラベン類は含有されていない。
【0167】
【0168】
表11から明らかなように、比較試料51~57のそれぞれの貼付剤の比較試料において、防腐剤の含有量を少なくした試料は、防腐性に劣る傾向がある。
【実施例7】
【0169】
本実施例は、水溶性高分子と多価アルコールの含有割合を変えた含水組成物を備えた貼付剤について、その物性を比較検討した。
以下の工程により含水組成物を備えた貼付剤を調製した。
(a-1)ポリアクリル酸ナトリウム、部分中和型ポリアクリル酸、架橋型カルボキシビニルポリマ等の所定量の架橋性水溶性高分子を水に混合溶解して粘稠性を有するとともに流動性を有する架橋性水溶性高分子含有予調液を調製する。
(a-2)ポリビニルアルコール、非架橋型カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸アルキル等の所定量の非架橋性水溶性高分子を水に混合溶解して粘稠性を有するとともに流動性を有する非架橋性水溶性高分子含有予調液を調製する。
(b)架橋性水溶性高分子を架橋可能な架橋剤0.5g以下を水に混合溶解して架橋剤含有予調液を調製する。
(c)防腐剤として所定量のフェノキシエタノールとポリリシンをプロピレングリコールに混合溶解して、防腐剤が溶解されて含有された防腐剤含有予調液を調製する。
(d-1)pH調整成分としての酸類(0.1g以下)を水に混合溶解して追加成分含有予調液d1を調製する。
(e)多価アルコールとしての1,3-ブチレングリコールとプロピレングリコールとグリセリンの所定量の混合多価アルコールと、前記(a-1)により調製された架橋性水溶性高分子含有予調液と、前記(a-2)により調製された非架橋性水溶性高分子含有予調液と、前記(b)により調製された架橋剤含有予調液と、前記(c)により調製された防腐剤含有予調液と、前記(d-1)により調製された追加成分含有予調液d1とを混合する。この場合、所定の温度で混合する。これにより、防腐剤が溶解されているとともに、粘稠性を有するとともに流動性を有する流動性含水高分子組成物を調製する。
(f)前記(e)工程の後に、流動性含水高分子組成物がゲル化する迄の流動性を維持している時に、シート状保持部材に約0.5mm厚さで前記流動性含水高分子組成物を付着及び/又は含浸する。これにより、前記シート状保持部材に保持されたシート状保持部材付流動性含水高分子組成物を調製する。シート状保持部材としては、縦幅50mm、横幅約130mmの長方形、厚さ約1mmであって、平面方向に伸縮可能な屈曲柔軟性、空気湿度透過性を有する合成繊維を使用した不織布製のシート状保持部材を使用する。
(g)前記(f)工程により調製された前記シート状保持部材付流動性含水高分子組成物を所定温度に調整し、これにより、時間の経過に伴って、前記シート状保持部材付流動性含水高分子組成物に含有されている前記架橋性水溶性高分子を前記架橋剤との化学反応により網目構造に架橋させて、前記流動性含水高分子組成物を、流動性を有しないゲル状態にゲル化された含水組成物を備えた調剤を調製する。
なお、前記(e)において、含水組成物の全量が100gとなるように、含水組成物に含有される水の含有量が追加されて混合される。
【0170】
このようにして、水と、架橋性水溶性高分子と、非架橋性水溶性高分子と、多価アルコールと、架橋剤と、pH調整成分を含有するとともに、防腐剤としてのフェノキシエタノールとポリリシンを含有する含水組成物を備えた貼付剤を調製した。なお、含水組成物の全量が100gとなるように水の含有量を調節含有した。
調製した貼付剤について、その実施結果を表12に示す。
なお、本実施例において、防腐剤としてのパラベン類は含有されていない。
【0171】
【0172】
表12から以下のことが解る。
水の含有量が20重量%未満の組成物(試料108)場合、全ての水溶性高分子が含水組成物に溶解されることなく、透明性な含水組成物が得られない。水の含有量が95重量%を超える組成物(試料100)場合、45℃において流動性を有し、流動性のないゲル状の含水組成物が得られなく、保形性に劣る傾向がある。
水溶性高分子の含有量が3~40重量%、多価アルコールの含有量が5~50重量%の組成物(試料103、105)の場合は、粘着性、保形性、剥離容易粘着性、剥離残存抑制性、透明性などの全ての物性が良好である。水溶性高分子の含有量が40重量%を超える組成物(試料107、108)の場合は、全ての水溶性高分子が含水組成物に溶解されることなく、透明性な含水組成物が得られない。水溶性高分子の含有量が3重量%未満の組成物(試料100、102)の場合は、45℃において流動性を有し、保形性に劣る傾向がある。
多価アルコールの含有量が50重量%を超える組成物(試料104、106)の場合は、貼付剤を皮膚に貼付した後、その貼付剤を剥がした時に、皮膚に含水組成物の残渣が残った状態が認められ、剥離残存抑制性に劣る傾向にある。多価アルコールの含有量が5重量%未満の組成物(試料101)の場合は、貼付剤を皮膚に貼付した時の粘着性に劣る傾向がある。
【実施例8】
【0173】
本実施例は、防腐剤として、前記(E)前記パラベン類以外の防腐剤に加えて、さらに、(F)パラベン類を含有する含水組成物を備えた貼付剤について、防腐性を比較検討した。
実施例1における貼付剤の製造方法の前記(c)工程において、(c-p)水及び/又は多価アルコールにパラベン類を溶解する工程を有するとともに、(c-a)水又は多価アルコールにフェノキシエタノールを溶解する工程、又は、(c-b)多価アルコールにカプリル酸グリセリルを溶解する工程、又は、(c-d)水にポリリシンを溶解する工程、を溶解する工程、の防腐剤含有予調液を調製する工程を有し、防腐剤が溶解されて含有された防腐剤含有予調液を調製する。その他の工程は前述の実施例1と同じである。パラベン類としては、メチルパラベンとプロピルパラベンの双方のパラベンの等量の混合物を使用した。調製したそれぞれの貼付剤について、貼付剤物性の測定結果を表13に示す。
【0174】
【0175】
表13から以下のことが解る。
パラベン類0.05重量%を含有し、パラベン類以外の防腐剤を含有しない試料(試料117)、フェノキシエタノール0.05重量%を含有する試料(試料111)、カプリル酸グリセリル0.003重量%を含有する試料(試料113)、ポリリシン0.003重量%を含有する試料(試料115)は、防腐性に劣る。
これに対して、パラベン類0.05重量%とフェノキシエタノール0.1重量%とを含有する場合(試料112)、パラベン類0.05重量%とカプリル酸グリセリル0.005重量%とを含有する場合(試料114)、パラベン類0.05重量%とポリリシン0.005重量%とを含有する場合(試料116)、いずれの場合においても、優れた防腐性を有する。
すなわち、全量に対して0.05重量%以下のパラベン類に加えて、上記のパラベン類以外の防腐剤とを併用することにより、上記のパラベン類以外の防腐剤の最少含有量を減少した場合においても優れた防腐性を有する。
【実施例9】
【0176】
防腐性促進作用を奏する多価アルコール、パラベン類以外の防腐剤、効能付与機能性成分としてのイブプロフェンピコノール、その他の追加成分、及び、水を混合して、均一に混合されたクリーム状の含水組成物を調製した。すなわち、(a)水に、機能性成分を、混合し、これにより、機能性成分含有予調液を調製し、(c)パラベン類以外の防腐剤と、該防腐剤を溶解可能な水及び/又は多価アルコールとを混合し、これにより、防腐剤が溶解されて含有された防腐剤含有予調液を調製し、(e)多価アルコールと、前記(a)により調製された前記機能性成分含有予調液と、前記(c)により調製された前記防腐剤含有予調液を、混合し、これにより、前記機能性成分と前記防腐剤が溶解されている含水組成物を調製した。調製したそれぞれの含水組成物について、防腐性等の測定結果を表14に示す。
なお、本実施例においては、防腐剤としてのパラベン類は含有されていない。また、多価アルコールとしてのプロピレングリコールとプチレングリコールとの含有割合は重量において1:1の等量割合の混合された多価アルコールを使用する。
本実施例の含水組成物はクリーム状態を有し、人体顔に塗布して使用され、顔の皮膚状態を改善する外皮用医薬品である。
【0177】
【0178】
表14から以下のことが解る。
フェノキシエタノール0.1重量%を含有する試料(試料120)、カプリル酸グリセリル0.005重量%を含有する試料(試料122)は、防腐性に劣る。これに対して、フェノキシエタノール0.3重量%を含有する試料(試料121)、カプリル酸グリセリル0.01重量%を含有する試料(試料123)は、防腐性に優れる。すなわち、フェノキシエタノール0.3重量%未満を含有する含水組成物は防腐性に劣り、フェノキシエタノール0.3重量%以上を含有する含水組成物は防腐性に優れる。
フェノキシエタノール0.1重量%とカプリル酸グリセリル0.003重量%との双方を含む試料124(
図2のQ点)は防腐性を有しないが、フェノキシエタノール0.1重量%とカプリル酸グリセリル0.005重量%との双方を含む試料125(
図2のS点)は防腐性を有するようになる。すなわち、
図2において、X点とY点とを結ぶ線XYと、、M点とN点とを結ぶ線MNとに囲まれた領域の防腐剤を含有する組成物を備えた貼付剤が、双方の防腐剤の相乗作用により、それぞれの防腐剤の最少防腐剤含有量及び双方の防腐剤の総量含有量を減らすことが可能となることが解る。換言すれば、フェノキシエタノールに加えて、カプリル酸グリセリルの防腐剤との双方の防腐剤を含有してなる構成により、同一防腐剤濃度におけるこれらの防腐剤の単独使用と比べてより優れた防腐性を奏する効果が得られる。
【0179】
また、フェノキシエタノール0.3重量%を含有するとともに多価アルコール10重量%を含有する試料(試料121)は優れた防腐性を奏するが、これに対して、フェノキシエタノール0.3重量%を含有するとともに多価アルコールとしてのグリセリン4重量%含有する試料(試料126)は防腐性に劣る。
カプリル酸グリセリル0.01重量%を含有するとともに多価アルコール10重量%を含有する試料(試料123)は優れた防腐性を奏するが、これに対して、、カプリル酸グリセリル0.005重量%を含有するとともに多価アルコールとしてのプロピレングリコールとプチレングリコール2重量%含有する試料(試料127)は防腐性に劣る。
フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリルとの双方の防腐剤を含有するとともに多価アルコール10重量%を含有する試料(試料125)は優れた防腐性を奏するが、これに対して、フェノキシエタノールとカプリル酸グリセリルとの双方の防腐剤を含有するとともに多価アルコールとしてのグリセリン4重量%を含有する試料(試料128)は防腐性に劣る。
【0180】
すなわち、フェノキシエタノール及び/又はカプリル酸グリセリルを含有する含水組成物において、多価アルコールとして5重量%以上のグリセリンを含有する組成物、又は、プロピレングリコール及び/又はプチレングリコールの3重量%以上の多価アルコールを含有する組成物は優れた防腐性を奏し、これらの多価アルコールがフェノキシエタノール及び/又はカプリル酸グリセリルの防腐性促進作用を奏することが解かる。
【0181】
(実施例10と比較例)
本実施例及び比較例は、機能性成分として、架橋型水溶性高分子や非架橋型水溶性高分子の水溶性高分子を含有する含水組成物、及び、水溶性高分子を含有しない含水組成物を備えた貼付剤について、得られた貼付剤の防腐性を比較検討した。
以下の工程により、含水組成物、及び、その含水組成物を備えた貼付剤を調製した。
(a-1)ポリアクリル酸ナトリウム、部分中和型ポリアクリル酸、架橋型カルボキシビニルポリマ等の所定量の架橋性水溶性高分子を水に混合溶解して粘稠性を有するとともに流動性を有する架橋性水溶性高分子含有予調液を調製する。
(a-2)ポリビニルアルコール、非架橋型カルボキシメチルセルロース等の所定量の非架橋性水溶性高分子を水に混合溶解して粘稠性を有するとともに流動性を有する非架橋性水溶性高分子含有予調液を調製する。
(b)架橋性水溶性高分子を架橋可能な架橋剤0.5g以下を水に混合溶解して架橋剤含有予調液を調製する。
(c)防腐剤として所定量のフェノキシエタノールとポリリシンをプロピレングリコールに混合溶解して、防腐剤が溶解されて含有された防腐剤含有予調液を調製する。
(d-1)pH調整成分としての酸類(0.1g以下)を水に混合溶解して追加成分含有予調液d1を調製する。
(e)多価アルコールとしての1,3-ブチレングリコールとプロピレングリコールとグリセリンの所定量の混合多価アルコールと、前記(a-1)により調製された架橋性水溶性高分子含有予調液と、前記(a-2)により調製された非架橋性水溶性高分子含有予調液と、前記(b)により調製された架橋剤含有予調液と、前記(c)により調製された防腐剤含有予調液と、前記(d-1)により調製された追加成分含有予調液d1とを混合する。この場合、所定の温度で混合する。これにより、防腐剤が溶解されているとともに、粘稠性を有するとともに流動性を有する流動性含水高分子組成物を調製する。
(f)前記(e)工程の後に、流動性含水高分子組成物がゲル化する迄の流動性を維持している時に、シート状保持部材に約0.5mm厚さで前記流動性含水高分子組成物を付着及び/又は含浸する。これにより、前記シート状保持部材に保持されたシート状保持部材付流動性含水高分子組成物を調製する。シート状保持部材としては、縦幅50mm、横幅約130mmの長方形、厚さ約1mmであって、平面方向に伸縮可能な屈曲柔軟性、空気湿度透過性を有する合成繊維を使用した不織布製のシート状保持部材を使用する。
(g)前記(f)工程により調製された前記シート状保持部材付流動性含水高分子組成物を所定温度に調整し、これにより、時間の経過に伴って、前記シート状保持部材付流動性含水高分子組成物に含有されている前記架橋性水溶性高分子を前記架橋剤との化学反応により網目構造に架橋させて、前記流動性含水高分子組成物を、流動性を有しないゲル状態にゲル化された含水組成物を備えた貼付剤を調製する。
なお、前記(e)において、含水組成物の全量が100gとなるように、含組成物に含有される水の含有量が追加されて混合される。
【0182】
このようにして、水と、架橋性水溶性高分子と、非架橋性水溶性高分子と、多価アルコールと、架橋剤と、pH調整成分を含有するとともに、防腐剤としてのフェノキシエタノールとポリリシンを含有する含水組成物を備えた貼付剤を調製した。なお、含水組成物の全量が100gとなるように水の含有量を調節含有した。
なお、上記の(a-1)工程の架橋性水溶性高分子、及び/又は、(a-2)工程の非架橋性水溶性高分子を含有しない試料については、これらの(a-1)工程または(a-2)工程を備えない。
調製したそれぞれの貼付剤について、その実施結果を表15に示す。なお、本実施例及び比較例において、防腐剤としてのパラベン類は含有されていない。
なお、架橋性水溶性高分子を含有しない試料(試料131、133、135、137)の場合、前記(g)工程において、ゲル化されることなく流動性を有する含水組成物がシート状保持部材に含浸して保持された貼付剤を調製した。
【0183】
【0184】
表15から以下のことが解る。
フェノキシエタノール0.2重量%を含有するとともに水溶性高分子3重量%を含有する含水組成物を備えた貼付剤(試料130)、ポリリシン0.01重量%を含有するとともに水溶性高分子3重量%を含有する含水組成物を備えた貼付剤(試料132)、及び、フェノキシエタノール0.1重量%とポリリシン0.005重量%を含有するとともに水溶性高分子3重量%を含有する含水組成物を備えた貼付剤(試料134)は、優れた防腐性を奏するが、これに対して、フェノキシエタノール0.2重量%を含有するとともに水溶性高分子を含有しない含水組成物を備えた貼付剤(試料131)、ポリリシン0.01重量%を含有するとともに水溶性高分子を含有しない含水組成物を備えた貼付剤(試料133)、フェノキシエタノール0.1重量%とポリリシン0.005重量%を含有するとともに水溶性高分子3重量%を含有しない含水組成物を備えた貼付剤(試料135)は防腐性に劣る。すなわち、同じ含有割合のフェノキシエタノールやポリリシンの防腐剤を含有した組成物において、水溶性高分子3重量%を含有する含水組成物を備えた貼付剤(試料130、132、134、136、137)は、優れた防腐性を有するが、これに対して、水溶性高分子を含有しない含水組成物を備えた貼付剤(試料131、133、135)は防腐性に劣る傾向がある。
【0185】
なお、本実施例は水溶性高分子の含有の有無による防腐性を比較検討するものであり、貼付剤として使用するに適さない試料も含まれている。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明によれば、水と水溶性高分子などの機能性成分を含有する含水組成物において、充分な防腐性を発揮できるとともに、皮膚感作性を低減した含水組成物、及び、その含水組成物を備えた貼付剤、化粧品、外皮用医薬品、が得られる。