(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】メタン化触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/83 20060101AFI20230831BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20230831BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230831BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20230831BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230831BHJP
B01J 37/18 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B01J23/83 Z
B01J23/89 Z
B01J35/04 301L
B01J35/04 301Z
B01J37/02 101Z
B01J37/08
B01J37/18
(21)【出願番号】P 2022210098
(22)【出願日】2022-12-27
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2022129242
(32)【優先日】2022-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】518228345
【氏名又は名称】株式会社広島
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【氏名又は名称】加藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】許 亜
(72)【発明者】
【氏名】吉川 大空
(72)【発明者】
【氏名】國枝 洋尚
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-170430(JP,A)
【文献】特開2007-252991(JP,A)
【文献】特開2022-094211(JP,A)
【文献】特開2022-076978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素と水素から炭化水素化合物を生成する反応を促進する触媒であって、
金属箔の基体と、
前記基体の表面に形成された複数の元素の金属微粒子を含む金属活性層とを備え、
前記元素は、Ni、Ce、Zrを含み、
Niを32原子%以上82.5原子%未満、
CeとZrとを原子割合でZr/Ceが0.6以上1.5以下となる割合で含む触媒。
【請求項2】
請求項1記載の触媒であって、
金属箔の基体に、Ni、Ce、Zrの全てを含む強酸塩粉末層を形成し、これを熱分解することにより製造される触媒。
【請求項3】
請求項2に記載の触媒であって、
CeとZrとを原子割合でZr/Ceが0.8以上1.5以下となる割合で含む触媒。
【請求項4】
請求項3に記載の触媒であって、
Niを60原子%以上含む触媒。
【請求項5】
請求項1記載の触媒であって、
さらに、Ni、Ce、Zrのいずれよりも少ない原子%のRuを含む触媒。
【請求項6】
請求項1記載の触媒であって、
ハニカム構造体に担持された触媒。
【請求項7】
二酸化炭素と水素から炭化水素化合物を生成する反応を促進する触媒であって、
請求項1~6いずれか記載の触媒を第1の触媒とし、
RuおよびTiO
2を含む触媒を第2の触媒とし、
前記第1の触媒および第2の触媒を交互に1層以上積層した触媒。
【請求項8】
二酸化炭素と水素から炭化水素化合物を生成する反応を促進する触媒の製造方法であって、
金属箔の基体を準備するステップと、
前記基体の表面に、Ni、Ce、Zrの全てを含む強酸塩粉末層を形成するステップと、
前記強酸塩粉末層を熱分解して酸化物粒子層を形成するステップと、
前記酸化物粒子層を還元し、Niを32原子%以上82.5原子%未満、CeとZrとを原子割合でZr/Ceが0.6以上1.5以下となる割合とするステップとを備える
触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素と水素からメタンを生成するために用いる触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化をもたらすと言われる二酸化炭素を削減する方法の一つとして、二酸化炭素と水素とを反応させてメタンを生成し、エネルギーとして活用する技術が提案されている。かかる反応を効率良く行うために用いられる触媒として、ルテニウム(Ru)と酸化チタン(TiO2)の合金や、ニッケル(Ni)、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)などの合金などが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
また、触媒の構造としては、ペレット触媒、金属ハニカム触媒などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-34650号公報
【文献】特開2010-22944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に開示されている触媒は、250℃またはそれ以下の低温で高い活性を示すものであるが、一般にメタン化反応は、発熱反応であるため、反応系全体が高温になることがあり、むしろ高温域で高い活性を示す触媒が望まれる。かかる点で特許文献1、2に開示された触媒には改善の余地が残されていた。
また、ルテニウム(Ru)と酸化チタン(TiO2)の合金は、高温での活性は高いものの、非常に高価であるという別の課題があった。
本願は、かかる課題に鑑み、いわゆる貴金属を用いることなく高温活性の高いメタン化触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
二酸化炭素と水素から炭化水素化合物を生成する反応を促進する触媒であって、
Ni、Ce、Zrを含み、
Niを82.5原子%未満、
CeとZrとを原子割合でZr/Ceが0.4以上1.5以下となる割合で含む触媒とすることができる。
実験の結果、かかる構成とすることにより、300℃~350℃という高温で高い活性が得られることが確認された。なお、上述の成分割合は、触媒に含まれる元素全体を100%とした場合の原子%である。本発明では、Ni、Ce、Zr全体を100%とした場合の各元素の割合を意味することになる。また、上記組成は、触媒を製造する際の混合組成(仕込組成)を意味する。
【0006】
本発明において、
CeとZrとを原子割合でZr/Ceが0.6以上1.5以下となる割合で含むことがより好ましい。
【0007】
また本発明の触媒は、
金属箔の基体に、Ni、Ce、Zrの全てを含む強酸塩粉末層を形成し、これを熱分解することにより製造されることが好ましい。
後述する通り、触媒を製造する際には、Niを含む強酸塩粉末層を形成した後、Ce、Zrの一方または双方を含む強酸塩粉末層を形成するという方法(逐次含浸法)と、Ni、Ce、Zrの全てを含む強酸塩粉末層を形成する方法(共含浸法)とが考えられるが、発明者の実験によれば、共含浸法の方が高い活性が得られることが確認された。
【0008】
本発明において、
Niを32原子%以上含み、
CeとZrとを原子割合でZr/Ceが0.8以上1.5以下となる割合で含むことがより好ましい。
【0009】
さらには、
Niを60原子%以上含む
ことがより好ましい。
【0010】
本発明の触媒においては、
さらに、Ni、Ce、Zrのいずれよりも少ない原子%のRuを含んでもよい。
Ruは、例えば、0.6原子%程度としてもよい。
【0011】
本発明の触媒は、
ハニカム構造体に担持してもよい。
こうすることにより、触媒の表面積を増大させることができ、活性を高めることができる。
【0012】
本発明は、
二酸化炭素と水素から炭化水素化合物を生成する反応を促進する触媒であって、
上述したいずれかの触媒を第1の触媒とし、
RuおよびTiO2を含む触媒を第2の触媒とし、
前記第1の触媒および第2の触媒を交互に1層以上積層した触媒としてもよい。
【0013】
RuおよびTiO2を含む触媒(第2の触媒)は、活性が非常に高い特徴がある。二酸化炭素と水素から炭化水素化合物を生成する反応は発熱反応であるため、RuおよびTiO2を含む触媒のみを用いると反応系の温度制御が非常に困難になることがある。上記態様においては、第2の触媒だけでなく、Ni,Ce,Zrを含有する第1の触媒を積層しているため、反応系が高温になり過ぎることを抑制することができるとともに、第2の触媒で発生した熱が第1の触媒の活性化に活用されるという利点もある。
また、第1の触媒と併用することにより、貴金属を主成分とする第2の触媒を単体で用いる場合よりも、コストを抑制することができる利点もある。
【0014】
上記態様において、第1の触媒、第2の触媒の形状等は任意に選択可能であるが、両者が混合されることを抑制するため、例えば、第1の触媒はハニカムに担持した形態とし、第2の触媒はペレット状のものとしてもよい。また、第1の触媒、第2の触媒の層の厚さ、両者の層の数は任意に決めることができる。第1の触媒層、第2の触媒層を同数に限定する必要はなく、いずれかを多くしてもよい。
また、積層の順序も任意に決めることができるが、二酸化炭素と水素の混合ガスが最初に第2の触媒層に供給させる積層順とすることが高い活性を確保する観点からより好ましい。
【0015】
上述した種々の特徴は、必ずしも全てが備えられている必要はなく、適宜、その一部を省略したり、組み合わせたりしてもよい。
また、本発明は、触媒としての態様の他、触媒の製造方法としてもよい。
即ち、二酸化炭素と水素から炭化水素化合物を生成する反応を促進する触媒の製造方法であって、
金属箔の基体を準備するステップと、
前記基体の表面に、Ni、Ce、Zrの全てを含む強酸塩粉末層を形成するステップと、
前記強酸塩粉末層を熱分解して含む酸化物粒子層を形成するステップと、
前記酸化物粒子層を還元するステップとを備える
触媒の製造方法とすることができる。
【0016】
複数の金属元素を含有する触媒を製造する場合、各成分ごとに強酸塩粉末層を形成していく方法(以下、逐次含浸法という)と、一度に複数の成分を含む強酸塩粉末層を形成する方法(以下、共含浸法という)とが考えられる。本発明の触媒も、いずれの方法で製造することも可能であるが、発明者の実験によれば、共含浸法による方が、高い活性を有する触媒を効率的に製造できることが見いだされた。
強酸塩粉末層の形成は、例えば、各成分またはその塩を含む水溶液に基体を浸す方法、またはこれらの水溶液を基体の表面に塗布する方法などによって行うことができる。
基体を構成する金属箔は、例えば、Ni箔としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態における触媒の構造を示す説明図である。
【
図2】実施形態における触媒の積層構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、実施形態における触媒の構造を示す説明図である。
図1(a)には、触媒10の斜視図を示した。触媒10は、基体11を渦巻き状に巻いて構成されている。基体11は、平板状の金属箔11aと、波状の金属箔11bとが一体となっている。かかる構造により、触媒の外観は円柱状のハニカム構造体となり、内部は、波状の金属箔11bによって間隙が保たれるため、これによって中心軸方向に沿った流路が形成される。
【0019】
図1(b)には、基体11の部分拡大図を示した。図示する通り、基体11では、平板状の金属箔11aの片面に、波状の金属箔11bが一体化されている。そして、触媒として機能する金属活性層12は、基体11の表面に担持される。
金属箔11a,11bは、種々の材料を用いることができるが、金属活性層12が良好に担持できるという点で、Ni、ステンレス、及び鉄基合金のいずれかを主成分、即ち50重量%以上とすることが好ましい。また、Niを主成分とすることにより基体自体も触媒として機能し得るため、より高い触媒活性が得られる。
金属箔11a,11bの厚さは、任意に決めるが、例えば、数μm~数百μmの範囲、特に数十μm程度とすることができる。
【0020】
実施形態の触媒10によれば、二酸化炭素と水素を含む混合ガスは、ハニカム構造によって形成された流路に沿って流れ、金属活性層12と接触することで反応が促進される。特に、ハニカム構造体とすることにより、混合ガスと金属活性層12とが接触する表面積を大きくすることができるため、良好な触媒活性を得ることができる。また、ハニカム構造体は、圧力損失が低いため、効率よく混合ガスを流し、反応を促進することができる利点もある。
【0021】
触媒10の形状は、円柱に限らず、角柱あるいは多角注状など種々の形状をとることができる。また、ハニカム構造体に限定されず、平板状の金属箔11aのみを巻回した渦巻き構造体など流路を確保可能な種々の構造を用いることができる。
【0022】
次に金属活性層12について説明する。
金属活性層12は、基体11の表面に担持された粒径が1μm以下の金属微粒子で構成されている。このような金属微粒子で構成することにより、触媒10の表面積をより大きくすることができる。粒径は、1nm以上とすることで、安定した触媒特性が得られやすくなる。
【0023】
実施形態における金属微粒子は、Ni、Ce、Zrを含むものである。
また、上記触媒においては、さらにRuを含んでもよい。ただし、触媒のコストを抑えるため、RuはNi、Ce、Zrのいずれよりも少ない原子%としておくことが好ましい。
【0024】
触媒10は、以下の手順で製造することができる。
まず、触媒10を構成する基体11を準備する。
図1(b)に示したように、平板状の金属箔11aと、波状の金属箔11bとを準備し、両者を一体化すればよい。金属箔11bの波形は、三角波、矩形波、台形波等、種々の形状とすることができる。両者の一体化は、例えば、接着剤などを用いることができる。そして、この基体11を
図1(a)に示したように巻くことでハニカム構造体を構成することができる。
【0025】
次に、以下の手順でハニカム構造体に金属を担持させて金属活性層12を形成する。
まず、基体11をアセトンで超音波洗浄し、乾燥させる。そして、基体11の表面に触媒を構成する金属元素の全てを含む強酸塩水溶液を塗布することで、強酸塩水溶液層を形成する。ここで、実施形態の触媒では、Ni、Ce、Zrを含んでいるから、これらの金属をそれぞれ含む強酸塩を用意し、混合して塗布用の強酸塩水溶液を生成すればよい。塗布に代えて、基体11を、強酸塩水溶液に浸すようにしてもよい。
強酸塩水溶液層の量は、強酸塩水溶液の濃度や浸漬時間等により調整することができる。
【0026】
このように本実施形態では、全ての成分を含む強酸塩水溶液層を形成する方法、即ち共含浸法を用いることが特徴である。触媒自体は、成分ごとに強酸塩水溶液層を形成する方法、即ち逐次含浸法を用いるものとしても製造可能であるが、後述する通り、共含浸法を用いることにより、活性の高い触媒が得られるのである。
【0027】
強酸塩水溶液層を形成した基体11を乾燥させると、基体11の表面に各成分の強酸塩(又はその水和物)の粉末からなる強酸塩粉末層が形成される。目標とする触媒層の厚さに応じて、強酸塩水溶液層の形成、乾燥を繰り返してもよい。
なお、乾燥は、種々の条件で行うことができるが、例えば、乾燥温度60℃、乾燥時間6時間という第一段階の乾燥を行い、その後、乾燥温度120℃、乾燥時間6時間という第二段階の乾燥を行うようにしてもよい。
【0028】
強酸塩粉末層を形成した後、基体11を加熱し、強酸塩粉末層を焼結させると、強酸塩粉末が熱分解され、粒径が数nm~数百nmの酸化物微粒子が生成される。焼結条件は、種々の設定が可能であるが、例えば、空気雰囲気で、焼結温度400~600℃、焼結時間5~12時間とすることができる。
【0029】
最後に、酸化物微粒子層が形成された基体11を還元雰囲気下で加熱することで、酸化物微粒子を還元する。この結果、各元素の金属微粒子が生成され金属活性層12が形成される。還元条件は、種々の設定が可能であるが、例えば、水素雰囲気下、還元温度400~600℃、還元時間1時間以上とすることができる。
【0030】
以上の方法によれば、特別な装置や技術を用いることなく比較的簡易な方法で、基体11の表面に金属活性層12が形成された触媒10が得られる利点がある。
【0031】
図1で示した触媒10は、単体で用いてもよいが、以下に示すように他の触媒と積層して用いることもできる。
図2は、実施形態における触媒の積層構造を示す説明図である。この触媒30は、本体容器内に、第1の触媒として
図1で説明した触媒10を用いている(図中の触媒10[1]~10[4])。また、その上に、第2の触媒20[1]~20[4]が積層されている。第2の触媒20は、Ru-TiO
2からなる触媒であり、ペレット状のものである。第2の触媒としては、貴金属を有し、高い活性のものであれば、Ru-TiO
2以外のものを用いてもよい。また、ペレット状以外の形状、例えば、第2の触媒もハニカム構造としても良い。
【0032】
触媒30に、図の上方から二酸化炭素と水素の混合ガスを供給すると、最初に、第2の触媒20[4]で反応が生じる。第2の触媒20[4]は、Ru-TiO2から高活性の触媒であるから、反応は速やかに生じるとともに、この反応は発熱反応であるから、熱を発生する。発生した熱は、第1の触媒10[4]に伝わり、ここでの反応を促進する。また、第2の触媒20[4]の下側に、第1の触媒10[4]が配置されていることで、触媒全体がRu-TiO2で構成される場合よりも、反応の進行を抑制することができ、発熱量を抑制することも可能となる。
以下、同様にして、第2の触媒20[3]~20[1]での反応と、第1の触媒10[3]~10[1]での反応とが相互に促進、抑制しながら全体として発熱のバランスをとって進行する。
【0033】
実施形態では、第1の触媒、第2の触媒をそれぞれ4層ずつ設ける構成を例示したが、これより少ない層数、または多い総数としてもよい。また、第1の触媒、第2の触媒の層数を異ならせてもよく、例えば、第1の触媒10[1]を省略することで、第1の触媒を3層、第2の触媒を4層としてもよい。各層の厚さについても任意に決めることができる。
もっとも、混合ガスが供給される最初の触媒は、第2の触媒20[4]とすることが反応を円滑に開始させるために、好ましい。
【実施例1】
【0034】
以下、本発明の触媒の実施例を示す。
実施例としての触媒1~11は、以下の方法で製造した。
まず、基体としては、ニッケル箔のハニカム構造体を用い、直径を8mm、高さ10mm、平均壁厚さ0.03mmとして、平均セル密度を2311cpsiとした。そして、この基体を用いて、既に説明した製造方法により、触媒を製造した。
触媒1は、Ni:Ce:Zr=65.3:13.7:21原子%の割合で、硝酸ニッケル(II)六水和物(Ni(NO3)2・6H2O)、硝酸ジルコニウム二水和物(ZrO(NO3)2・2 H2O)、硝酸セリウム(III)六水和物(Ce(NO3)3・6 H2O)の水溶液(濃度30~50%)を用意し、基体をこれに浸漬させた後、空気中60~70℃で6時間以上、90℃で12時間以上乾燥させ、余剰の溶媒を除去した。そして、これを電気箱型炉にセットし、空気中500℃で5~6時間焼結させ、電気管状炉にセットして水素雰囲気中、430℃で1時間還元処理した。触媒1では、Zr/Ce=1.5となっている。
【0035】
触媒2は、Ni:Ce:Zr=48.5:20.3:31.2原子%の割合で同様に製造した。Zr/Ce=1.5となっている。
触媒3は、Ni:Ce:Zr=32:26.9:41.1原子%の割合で同様に製造した。Zr/Ce=1.5となっている。
触媒4は、Ni:Ce:Zr:Ru=64.3:13.5:20.7:1.5原子%の割合で同様に製造した。Ruについては、ニトロシル硝酸ルテニウム(III)溶液(HN4O10Ru、密度1.07g/ml)の水溶液(濃度30~50%)を用いた。触媒4もZr/Ce=1.5となっている。
触媒5はNi:Ce:Zr=65.3:13.7:21原子%の割合で製造した。Zr/Ce=1.5となっている。ただし、触媒5は共含浸法ではなく逐次含浸法を用いた。即ち、まずNiを含有する硝酸ニッケル(II)六水和物水溶液に基体を浸漬させ乾燥させた後、次に、CeおよびZrを含有する硝酸ジルコニウム二水和物、硝酸セリウム(III)六水和物水溶液に基体を浸漬させ乾燥させる。そして、全体を焼結し、還元するという製造方法である。
触媒6は、Ni:Ce:Zr=68.3:22.9:8.8原子%の割合で同様に製造した。Zr/Ce=0.4となっている。触媒6は、触媒1~4と同様、共含浸法によって製造した。
触媒7は、Ni:Ce:Zr=56.8:28.6:14.6原子%の割合で共含浸法により製造した。Zr/Ce=0.5となっている。
触媒8は、Ni:Ce:Zr=59.7:25.0:15.3原子%の割合で共含浸法により製造した。Zr/Ce=0.6となっている。
触媒9は、Ni:Ce:Zr=62.8:21.0:16.2原子%の割合で共含浸法により製造した。Zr/Ce=0.8となっている。
触媒10は、Ni:Ce:Zr=66.3:16.7:17.1原子%の割合で共含浸法により製造した。Zr/Ce=1.0となっている。
触媒11は、Ni:Ce:Zr=17.4:46.7:35.9原子%の割合で共含浸法により製造した。Zr/Ce=0.8となっている。
【0036】
比較例1はNi:Zr=82.3:17.7原子%の割合で同様に製造した。Ceを含まないため、Zr/Ceは定義できない。
比較例2はNi:Ce=87.7:12.3原子%の割合で同様に製造した。Zrを含まないため、Zr/Ce=0である。
比較例3はNi:Ce:Zr=82.5:6.9:10.6原子%の割合で同様に製造した。Zr/Ce=1.5となっている。
比較例4はNi:Ce:Zr=43:7.2:49.8原子%の割合で製造した。Zr/Ce=6.9となっている。比較例6も逐次含浸法で製造した。
【0037】
図3は、触媒2の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)の順に倍率が高くなっている。
図3(b)、
図3(c)のような高い倍率では、表面の状態の差違が視認できるものの、
図3(a)のように低い倍率でみたときは、全体として概ね均一な状態になっていることが把握できる。従って、触媒としての機能も、局所的に微小な変動はあるかも知れないが、概ね全体として均一な活性を示すことが期待される。
【0038】
以上で製造した触媒1~11および比較例1~4の組成、および300℃でのCO2転化率は表1の通りである。CO2転化率は、大気圧下においてで、ハニカム触媒の体積を0.5cm3にし、水素(24ml/min)、二酸化炭素(6ml/min)、窒素(30ml/min)の混合ガスを供給し、の触媒反応実験条件(すなわち、二酸化炭素:水素=1:4、反応ガス(水素と二酸化炭素)のトータル圧力=0.05MPa)での結果である。以下ほかの温度でのCO2転化率(表2)とCH4選択率(表3)も同じ実験条件で得られた結果である。
【0039】
【0040】
上表によれば、比較例1~4のCO2転化率が41~68%であるのに対して、触媒1~11は71%以上と有意に高いことが確認される。
第1に、比較例1、2はNi、Ce、Zrのうちいずれか2成分しか含んでいないことを考慮すると、Ni、Ce、Zrの全成分を含むことが好ましいと言える。また、Zr/Ce=0.4~1.5が好ましいことが確認された。
第2に、触媒1~5は、いずれもZr/Ce=1.5となっている。一方、比較例3もZr/Ce=1.5であるが、Niが82.5原子%と触媒1~5よりも多く含んでいる点で相違する。従って、Niを82.5%未満としながら、Zr/Ce=1.5とすることにより高い活性が得られることが確認された。
【0041】
なお、触媒1と触媒5は同成分ながら、触媒5の方が触媒1よりも活性が若干劣ることから、逐次含浸法よりも共含浸法の方が高い活性が得られることが確認された。
【0042】
また触媒1~4が、80%以上のCO2転化率を示していることを考えると、Zr/Ce=1.5とすることが好ましいと考えられる。
さらに触媒4に示される通り、少量のRuを含むことも好適である。
【0043】
触媒1~11、比較例1~4について、温度200℃~500℃におけるCO
2転化率を表2に示す。
【表2】
【0044】
上記結果によれば、触媒1~11は、温度300~350℃の高温範囲で、71%以上という高いCO2転化率を示していることが分かる。比較例2、3は、350℃では75%以上のCO2転化率を示しているものの、300℃では68%以下に急激に落ち込んでいる。
【0045】
また触媒1~5および8~11の結果から、Zr/Ceを0.6以上1.5以下とすることにより、温度300℃で70%以上、350℃で80%以上という高いCO2転化率を確保できることが分かった。
触媒1~4、9の結果から、Niを32%以上含み、Zr/Ceを0.8以上1.5以下とすることにより、温度300~350℃の高温範囲で、80%以上という高いCO2転化率が確保できることが分かった。
触媒1、4、9の結果から、さらにNiを60%以上含むことにより、温度300~350℃の高温範囲で、82%以上という高いCO2転化率が確保できることが分かった。
【0046】
触媒1~11、比較例1~4について、温度200℃~500℃におけるCH
4選択率を表3に示す。CH
4選択率は、反応によって生成された物質のうちCH
4が占める割合を言う。表3の実験は、二酸化炭素:水素=1:4の混合ガスを供給し、圧力0.05MPの条件での結果である。
【表3】
【0047】
表3に示す通り、触媒1~11は、高い活性を示す温度300~350℃の高温範囲で99%以上のCH4選択率を示しており、非常に効率的にメタンが生成されることが分かる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定され
るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿
論である。
例えば、実施形態では、メタンを生成する触媒を例示したが、これらの触媒は、メタン以外の炭化水素の生成にも有用である。
【符号の説明】
【0049】
10 (第1の)触媒
11 基体
11a,11b 金属箔
12 金属活性層
20 第2の触媒
30 触媒
【要約】
【課題】 二酸化炭素と水素から炭化水素化合物を生成する反応において300℃~350℃で高い活性を示す触媒を提供する。
【解決手段】 二酸化炭素と水素から炭化水素化合物を生成する反応を促進する触媒であって、二酸化炭素と水素から炭化水素化合物を生成する反応を促進する触媒であって、
Ni、Ce、Zrを含み、Niを82.5原子%未満、CeとZrとを原子割合でZr/Ce=0.4~1.5となる割合で含む触媒とする。また、触媒は、ハニカム構造としてもよい。
こうすることにより、300℃~350℃でCO
2転化率が71%という高い活性を示すとともに、200℃~400℃においてCH
4選択率が99%以上という高い効率を示す触媒を提供することができる。
【選択図】
図1