(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ユーザの疲労を判断する方法及び検知装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20230831BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20230831BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61B5/16 200
A61B5/0245 A
A61B5/11 200
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022067579
(22)【出願日】2022-04-15
【審査請求日】2022-08-12
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】506187511
【氏名又は名称】國立中興大學
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲寛▼鋸
(72)【発明者】
【氏名】蘇 峻葦
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-033565(JP,A)
【文献】特表2019-534088(JP,A)
【文献】特開2017-086195(JP,A)
【文献】特開2009-240404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 - 5/03
A61B 5/06 - 5/22
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知装置により実行され、ユーザの疲労を判断する方法であって、
前記検知装置は、複数の心拍関連比率の第1の範囲によってそれぞれ定義される複数の運動モードを記憶し、前記運動モードのそれぞれは変動閾値と所定の運動期間とを有し、該方法は、
A)複数の心拍測定値をもたらすように、連続する時間インスタンスで前記ユーザの心拍を測定するステップと、
B)前記心拍測定値のそれぞれに対して、前記心拍測定値から前記ユーザの安静時心拍数を差し引いた結果値の、前記ユーザの最大心拍数から前記安静時心拍数を差し引いた結果値に対する比率を参照比率として計算するステップと、
C)最後の1つの前記心拍測定値に基づいて計算された前記参照比率
が前記心拍関連比率の第1の範囲のいずれに該当するかに基づいて、前記運動モードの1つを選択するステップと、
D)前記運動モードの前記1つの前記所定の運動期間に等しい長さを有する過去の期間で、連続的に測定された前記ユーザの複数の速度測定値を得るステップと、
E)前記速度測定値の平均を平均速度として計算するステップと、
F)前記平均速度より少なくとも変動比率分大きい又は小さい前記速度測定値の数を、前記速度測定値の総数で割って、異常速度比率を得るステップと、
G)前記平均速度が所定の速度より大きいかどうかと、前記異常速度比率が所定の比率より小さいかどうかと、を判断するステップと、
H)前記平均速度が前記所定の速度より大きいかどうかの判断と、前記異常速度比率が前記所定の比率より小さいかどうかの判断と、の両方が肯定的である場合において、前記最後の1つの前記心拍測定値に基づいて計算された前記参照比率が、過去の1つの前記心拍測定値に基づいて計算された前記参照比率より、少なくとも前記運動モードの前記1つの前記変動閾値分大きいかどうかを判断するステップであって、前記過去の1つの前記心拍測定値は、前記最後の1つの前記心拍測定値より前記運動モードの前記1つの前記所定の運動期間分早く測定されたものである、ステップと、
I)ステップHで行われた判断が肯定的である場合において、前記ユーザが疲れていることを示す第1の通知を出力するステップと、を備える、方法。
【請求項2】
ステップCの前に、
J)事前に定義された期間において前記ユーザの複数の加速度測定値を得るステップと、
K)前記事前に定義された期間における前記加速度測定値のすべてが所定の加速度閾値より小さいかどうかを判断するステップと、
L)前記事前に定義された期間における前記加速度測定値のすべてが前記所定の加速度閾値より小さいと判断された場合において、前記最後の1つの前記心拍測定値に基づいて計算された前記参照比率に基づいて、前記ユーザの疲労を判断し、前記ユーザの前記疲労に関連する第2の通知を出力するステップと、
M)前記事前に定義された期間における前記加速度測定値のすべてが前記所定の加速度閾値より小さ
いかどうかの判断
が否定的である場合において、ステップCからステップIを実行するステップと、をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検知装置は、複数の心拍関連比率の第2の範囲によってそれぞれ定義される複数の疲労レベルをさらに記憶し、ステップLは、
前記最後の1つの前記心拍測定値に基づいて計算された前記参照比率が前記心拍関連比率の第2の範囲のいずれに該当するかを判断するステップと、
前記最後の1つの前記心拍測定値に基づいて計算された前記参照比率が該当する前記心拍
関連比率の第2の範囲の1つに対応する前記疲労レベルの1つにユーザがあると判断するステップと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記事前に定義された期間は20分である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記所定の加速度閾値は20cm/s
2である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記変動比率は20%である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の速度は10km/hであり、前記所定の比率は1/6である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記運動モードのそれぞれの前記変動閾値は10%である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ユーザの疲労を判断する検知装置であって、
複数の心拍測定値をもたらすように、連続する時間インスタンスで前記ユーザの心拍を測定するように構成される心拍測定ユニットと、
複数の位置を得るために連続する時間インスタンスで前記ユーザがどこに位置するかを検知するように構成され、且つ、前記位置に基づいて前記ユーザの複数の速度測定値を計算するようにさらに構成される位置決めユニットと、
表示ユニットと、
前記心拍測定ユニットと前記位置決めユニットと前記表示ユニットとに電気的に接続し、複数の心拍関連比率の第1の範囲によってそれぞれ定義される複数の運動モードを記憶し、前記運動モードのそれぞれは変動閾値と所定の運動期間とを有し、疲労判断手順を実行するように構成される処理ユニットと、を備え、
前記疲労判断手順は、
a)前記心拍測定ユニットから、前記ユーザの前記心拍測定値を得るステップと、
b)前記心拍測定値のそれぞれに対して、前記心拍測定値から前記ユーザの安静時心拍数を差し引いた結果値の、前記ユーザの最大心拍数から前記安静時心拍数を差し引いた結果値に対する比率を参照比率として計算するステップと、
c)最後の1つの前記心拍測定値に基づいて計算された前記参照比率
が前記心拍関連比率の第1の範囲のいずれに該当するかに基づいて、前記運動モードの1つを選択するステップと、
d)前記運動モードの前記1つの前記所定の運動期間に等しい長さを有する過去の期間で、前記位置決めユニットにより連続的に測定された前記ユーザの複数の速度測定値を、前記位置決めユニットから得るステップと、
e)前記速度測定値の平均を平均速度として計算するステップと、
f)前記平均速度より少なくとも変動比率分大きい又は小さい前記速度測定値の数を、前記速度測定値の総数で割って、異常速度比率を得るステップと、
g)前記平均速度が所定の速度より大きいかどうかと、前記異常速度比率が所定の比率より小さいかどうかと、を判断するステップと、
h)前記平均速度が前記所定の速度より大きいかどうかの判断と、前記異常速度比率が前記所定の比率より小さいかどうかの判断と、の両方が肯定的である場合において、前記最後の1つの前記心拍測定値に基づいて計算された前記参照比率が、過去の1つの前記心拍測定値に基づいて計算された前記参照比率より、少なくとも前記運動モードの前記1つの前記変動閾値分大きいかどうかを判断するステップであって、前記過去の1つの前記心拍測定値は、前記最後の1つの前記心拍測定値より前記運動モードの前記1つの前記所定の運動期間分早く測定されたものである、ステップと、
i)ステップhで行われた判断が肯定的である場合において、前記表示ユニットを制御して、前記ユーザが疲れていることを示す第1の通知を出力するステップと、を含む、
検知装置。
【請求項10】
前記処理ユニットに電気的接続し、前記ユーザの加速度測定値を連続的に測定するように構成される加速度測定ユニットをさらに備え、
前記処理ユニットにより実行される前記疲労判断手順は、ステップcの前に、
事前に定義された期間で測定された前記ユーザの複数の加速度測定値を、前記加速度測定ユニットから得るステップと、
前記事前に定義された期間における前記加速度測定値のすべてが所定の加速度閾値より小さいかどうかを判断するステップと、
前記事前に定義された期間における前記加速度測定値のすべてが前記所定の加速度閾値より小さいと判断された場合において、前記最後の1つの前記心拍測定値に基づいて計算された前記参照比率に基づいて、前記ユーザの疲労を判断し、前記表示ユニットを制御して第2の通知を出力するステップと、
前記事前に定義された期間における前記加速度測定値のすべてが前記所定の加速度閾値より小さ
いかどうかの判断
が否定的である場合において、前記疲労判断手順のステップcからステップiを実行するステップと、をさらに含む、請求項9に記載の検知装置。
【請求項11】
前記処理ユニットは、複数の心拍関連比率の第2の範囲によってそれぞれ定義される複数の疲労レベルをさらに記憶し、
前記最後の1つの前記参照比率が前記心拍関連比率の第2の範囲のいずれに該当するかを判断し、且つ、
前記最後の1つの前記心拍測定値に基づいて計算された前記参照比率が該当する前記心拍
関連比率の第2の範囲の1つに対応する前記疲労レベルの1つにユーザがあると判断し、前記疲労レベルの前記1つに対応する前記第2の通知を出力する、ことにより前記ユーザの疲労を判断するように構成される、請求項10に記載の検知装置。
【請求項12】
前記事前に定義された期間は20分である、請求項10に記載の検知装置。
【請求項13】
前記所定の加速度閾値は20cm/s
2である、請求項10に記載の検知装置。
【請求項14】
前記変動比率は20%である、請求項9に記載の検知装置。
【請求項15】
前記所定の速度は10km/hであり、前記所定の比率は1/6である、請求項9に記載の検知装置。
【請求項16】
前記運動モードのそれぞれの前記変動閾値は10%である、請求項9に記載の検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人間の生理学的情報に基づいて、ユーザの疲労を判断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートウェアラブルデバイスの普及に伴い、スマートウォッチやスマートブレスレットは多くの人が日常的に身につけるアクセサリーとなっている。また、これらの人々の多くは、スマートウォッチやスマートブレスレットに記録された生理学的データを個人の健康管理の参考に使用している。
【0003】
従来のスマートウォッチは通常、運動時間とカロリー消費量とに関する後続の分析の基礎として、心拍を記録する。しかし、従来のスマートウォッチは、心拍を測定し記録している間に、ユーザにリアルタイムでフィードバック(例えば、過度の疲労)を提供することができず、これによって、ユーザは運動を適切に調整したり、適時に停止したりすることができない。ユーザは、後で従来のスマートウォッチを確認するときにしか、自分の身体的状態を知ることができない。
【0004】
特許文献1に開示された移動車両用の従来の補助システムは、ドライバー状態検出装置と、警告装置と、を含む。ドライバー状態検出装置は、心拍検出モジュールと、記憶モジュールと、計算モジュールと、を含む。心拍検出モジュールは、ドライバーの心拍又は心拍の変化を検出するように用いられ、ドライバーに着用されるウェアラブルデバイスに配置されることができる。
【0005】
従来の補助システムは、ユーザの心拍数が所定の範囲外にある場合に通知を発行することができるが、ユーザが運動している際に不適切な通知を発行しがちである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本開示の目的は、従来技術の欠点の少なくとも1つを軽減することができ、ユーザの疲労を判断する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一の実施形態によれば、該方法は検知装置により実行され、検知装置は、複数の心拍関連比率の第1の範囲によってそれぞれ定義される複数の運動モードを記憶し、運動モードのそれぞれは変動閾値及び所定の運動期間とを有する。該方法は、
複数の心拍測定値をもたらすように、連続する時間インスタンスでユーザの心拍を測定するステップと、
心拍測定値のそれぞれに対して、心拍測定値からユーザの安静時心拍数を差し引いた結果値の、ユーザの最大心拍数から安静時心拍数を差し引いた結果値に対する比率を参照比率として計算するステップと、
最後の1つの心拍測定値に基づいて計算された参照比率に基づいて、運動モードの1つを選択するステップと、
運動モードの1つの所定の運動期間に等しい長さを有する過去の期間で、連続的に測定されたユーザの複数の速度測定値を得るステップと、
速度測定値の平均を平均速度として計算するステップと、
平均速度より少なくとも変動比率分大きい又は小さい速度測定値の数を、速度測定値の総数で割って、異常速度比率を得るステップと、
平均速度が所定の速度より大きいかどうかと、異常速度比率が所定の比率より小さいかどうかと、を判断するステップと、
平均速度が所定の速度より大きいかどうかの判断と、異常速度比率が所定の比率より小さいかどうかの判断と、の両方が肯定的である場合において、最後の1つの心拍測定値に基づいて計算された参照比率が、過去の1つの心拍測定値に基づいて計算された参照比率より、少なくとも運動モードの1つの変動閾値分大きいかどうかを判断するステップであって、過去の1つの心拍測定値は、最後の1つの心拍測定値より運動モードの1つの所定の運動期間分早く測定されたものである、ステップと、
最後の1つの心拍測定値に基づいて計算された参照比率が、過去の1つの心拍測定値に基づいて計算された参照比率より、少なくとも運動モードの1つの変動閾値分大きいと判断された場合に、ユーザが疲れていることを示す通知を出力するステップと、を含む。
【0009】
本開示の他の目的は、ユーザの心拍を監視する検知装置が提供される。
【0010】
本開示の一の実施形態によれば、監視装置は、心拍測定ユニットと、位置決めユニットと、表示ユニットと、処理ユニットと、を含む。
【0011】
心拍測定ユニットは、複数の心拍測定値をもたらすように、連続する時間インスタンスでユーザの心拍を測定するように構成される。
【0012】
位置決めユニットは、複数の位置を得るために連続する時間インスタンスでユーザがどこに位置するかを検知するように構成され、且つ、位置に基づいてユーザの複数の速度測定値を計算するようにさらに構成される。
【0013】
処理ユニットは、心拍測定ユニットと位置決めユニットと表示ユニットとに電気的に接続し、複数の心拍関連比率の範囲によってそれぞれ定義される複数の運動モードを記憶する。運動モードのそれぞれは変動閾値と所定の運動期間とを有する。処理ユニットは、疲労判断手順を実行するように構成される。疲労判断手順は、
心拍測定ユニットから、ユーザの心拍測定値を得るステップと、
心拍測定値のそれぞれに対して、心拍測定値からユーザの安静時心拍数を差し引いた結果値の、ユーザの最大心拍数から安静時心拍数を差し引いた結果値に対する比率を参照比率として計算するステップと、
最後の1つの心拍測定値に基づいて計算された参照比率に基づいて、運動モードの1つを選択するステップと、
運動モードの1つの所定の運動期間に等しい長さを有する過去の期間で、位置決めユニットにより連続的に測定された複数の速度測定値を、位置決めユニットから得るステップと、
速度測定値の平均を平均速度として計算するステップと、
平均速度より少なくとも変動比率分大きい又は小さい速度測定値の数を、速度測定値の総数で割って、異常速度比率を得るステップと、
平均速度が所定の速度より大きいかどうかと、異常速度比率が所定の比率より小さいかどうかと、を判断するステップと、
平均速度が所定の速度より大きいかどうかの判断と、異常速度比率が所定の比率より小さいかどうかの判断と、の両方が肯定的である場合において、最後の1つの心拍測定値に基づいて計算された参照比率が、過去の1つの心拍測定値に基づいて計算された参照比率より、少なくとも運動モードの1つの変動閾値分大きいかどうかを判断するステップであって、過去の1つの心拍測定値は、最後の1つの心拍測定値より運動モードの1つの所定の運動期間分早く測定されたものである、ステップと、
最後の1つの心拍測定値に基づいて計算された参照比率が、過去の1つの心拍測定値に基づいて計算された参照比率より、少なくとも運動モードの1つの変動閾値分大きいと判断された場合に、ユーザが疲れていることを示す通知を出力するステップと、を含む。
【0014】
本開示の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照する以下の実施形態の詳細な説明において明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一の実施形態に係るユーザの疲労を判断する方法のステップが示されているフローチャートである。
【
図2】本開示の一の実施形態に係るユーザの疲労を判断する検知装置のブロック図である。
【
図3】本開示の一の実施形態に係る運動モードを判断する例が示されている心拍測定値のチャートである。
【
図4】本開示の一の実施形態に係る安静時のユーザの疲労レベルを判断する例が示されている心拍測定値のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本開示の一の実施形態に係るユーザの疲労を判断する方法のステップが示されているフローチャートである。該方法は、
図2に示されている検知装置により実行される。
【0017】
図2を参照し、検知装置は、心拍測定ユニット1と、加速度測定ユニット2と、位置決めユニット3と、表示ユニット4と、処理ユニット5と、を含む。検知装置は、ユーザに着用されるウェアラブルデバイスであってもよいが、これに限定されない。
【0018】
心拍測定ユニット1は、複数の心拍測定値をもたらすように、連続する時間インスタンスでユーザの心拍を測定するように構成される。本実施形態において、心拍測定ユニット1は光学式心拍センサである。
【0019】
加速度測定ユニット2は、ユーザの複数の加速度測定値を連続的に測定するように構成される。加速度測定ユニット2は、加速度計であってもよいが、これに限定されない。
【0020】
位置決めユニット3は、複数の位置を得るために連続する時間インスタンスでユーザがどこに位置するかを検知するように構成され、且つ、位置に基づいてユーザの複数の速度測定値を計算するようにさらに構成される。例えば、位置決めユニット3は、ユーザの位置を得るための全地球測位システム(GPS)センサと、速度測定値を計算するための計算装置(例えば、プロセッサ、モバイルプロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラなど)と、を含む。
【0021】
表示ユニット4は、通知を出力するように構成される。本実施形態において、表示ユニット4は、表示画面であるが、これに限定されない。
【0022】
処理ユニット5は、心拍測定ユニット1と、加速度測定ユニット2と、位置決めユニット3と、表示ユニット4と、に電気的に接続する。処理ユニット5は、複数の運動モードと、複数の疲労レベルと、を記憶する。運動モードは、複数の心拍関連比率の第1の範囲によってそれぞれ定義される。疲労レベルは、複数の心拍関連比率の第2の範囲によってそれぞれ定義される。運動モードのそれぞれは、変動閾値と、所定の運動期間と、を有する。
【0023】
本実施形態において、処理ユニット5は、5つの運動モードを記憶し、詳細は以下の表1に示されている。
【0024】
【0025】
本実施形態において、処理ユニット5は、5つの疲労レベルを記憶し、詳細は以下の表2に示されている。
【0026】
【0027】
処理ユニット5は、ユーザの心拍測定値と加速度測定値と速度測定値とに基づいて、ユーザの疲労を判断するための疲労判断手順を実行するように構成される。
【0028】
処理ユニット5は、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、デュアルコアモバイルプロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、無線周波数集積回路(RFIC)、システムオンチップ(SoC)などであってもよい。
【0029】
一の実施形態に係るユーザの疲労を判断する方法(すなわち、処理ユニット5により実行される疲労判断手順)は、以下のステップを含む。
【0030】
ステップS1において、処理ユニット5は、心拍測定ユニット1により連続的に測定されたユーザの複数の心拍測定値を得る。
【0031】
ステップS2において、心拍測定値のそれぞれに対して、処理ユニット5は、心拍測定値からユーザの安静時心拍数を差し引いた結果値の、ユーザの最大心拍数から安静時心拍数を差し引いた結果値に対する比率を参照比率として計算する。
【0032】
最大心拍数は、人の心臓血管系が運動中に通常対処できる上限(すなわち、心臓が拍動できる最大速度)であり、一般に年齢とともに低下する。最大心拍数は、220から年齢数を減算することにより推定することができる。安静時心拍数は、人が安静にしているときの正常な心拍数である。10歳以上の子供及び高齢者を含む成人の安静時心拍数は、1分間に60回から100回の範囲にある。よく訓練された成人アスリートの安静時心拍数は、一分間に40回から60回の範囲にある。本実施形態において、最大心拍数及び安静時心拍数は、ユーザにより入力されてもよい。いくつかの実施形態において、処理ユニット5は、複数の参照最大心拍数と、参照最大心拍数にそれぞれ対応する複数の参照安静時心拍数と、を予め記憶してもよく、参照最大心拍数の1つと参照安静時心拍数の対応する1つとの各ペアは、異なる年齢にそれぞれ対応する。処理ユニット5は、ユーザに入力された年齢に応じて、参照最大心拍数の1つと参照安静時心拍数の対応する1つとを選択し、選択された参照最大心拍数と参照安静時心拍数とを、ユーザの最大心拍数と安静時心拍数として使用する。いくつかの実施形態において、ユーザの加速度が所定の値(例えば、20cm/s2)より小さい状態が所定の時間(例えば、20分)継続したときに、心拍測定ユニット1により測定された心拍測定値の平均を計算することによって、安静時心拍数を求めてもよい。
【0033】
ステップS3において、処理ユニット5は、加速度測定ユニット2から、事前に定義された期間において測定されたユーザの複数の加速度測定値を得る。本実施形態において、事前に定義された期間は20分である。
【0034】
ステップS4において、処理ユニット5は、事前に定義された期間における加速度測定値のすべてが所定の加速度閾値より小さいかどうかを判断する。加速度測定値のすべてが所定の加速度閾値より小さいと判断された場合に、ステップS6へ進み、そうでない場合に、ステップS5へ進む。本実施形態において、所定の加速度閾値は20cm/s2である。
【0035】
ステップS4は、ユーザが運動しているか休んでいるかを判断するように用いられることに留意されたい。加速度測定値のすべてが所定の加速度閾値より小さいと判断された場合において、ユーザは休んでいると判断される。
【0036】
事前に定義された期間における加速度測定値のすべてが所定の加速度閾値より小ではないと判断された場合に、ステップS5において、処理ユニット5は運動中のユーザの疲労を判断する。具体的には、ステップS5はサブステップS51からサブステップS57を含む。
【0037】
サブステップS51において、処理ユニット5は、最後の1つの心拍測定値に基づいてステップS2で計算された参照比率(以下、「最後の参照比率」と称する)に基づいて、運動モードの1つを選択する。具体的には、処理ユニット5は、まず、最後の参照比率が心拍関連比率の第1の範囲のいずれに該当するかを判断し、最後の参照比率が該当する心拍関連比率の第1の範囲の1つに対応する運動モードの1つを選択する。
【0038】
サブステップS52において、処理ユニット5は、位置決めユニット3が運動モードの該1つの所定の運動期間に等しい長さを有する過去の期間で、連続的に測定されたユーザの複数の速度測定値を得る。
【0039】
サブステップS53において、処理ユニット5は、サブステップS52で得た速度測定値の平均を平均速度として計算する。
【0040】
サブステップS54において、処理ユニット5は、平均速度より少なくとも変動比率分大きい又は小さい速度測定値の数を、速度測定値の総数で割ることにより、異常速度比率を得る。本実施形態において、変動比率は20%であるが、これに限定されない。
【0041】
サブステップS55において、処理ユニット5は、平均速度が所定の速度より大きいかどうかと、異常速度比率が所定の比率より小さいかどうかと、を判断する。平均速度が所定の速度より大きいかどうかの判断と、異常速度比率が所定の比率より小さいかどうかの判断と、の両方が肯定的である場合に、サブステップS56へ進み、そうでない場合に、この方法は終了する。本実施形態において、所定の速度は10km/hであり、所定の比率は1/6であるが、これらに限定されない。
【0042】
なお、サブステップS55において、平均速度が所定の速度より大きいかどうかを判断することは、ユーザが場所を移動している(例えば、ジョギングまたはサイクリングなどの運動をしている)かどうかを判断し、異常速度比率が所定の比率より小さいかどうかを判断することは、速度測定値から過度の速度変化が判明したときにユーザの疲労を判断することを回避するためである。すなわち、サブステップS55は、ユーザがスピードアップまたはスピードダウンしている最中に、ユーザの疲労を判断することを回避することができ、これにより、ユーザの疲労について誤って判断する可能性が低減される。
【0043】
平均速度が所定の速度より大きく、且つ、異常速度比率が所定の比率より小さい場合に、サブステップS56において、処理ユニット5は、最後の参照比率が過去の1つの参照比率(以下、「過去の参照比率」と称する)より、少なくとも運動モードの該1つの変動閾値分大きいかどうかを判断し、過去の参照比率は、最後の1つの心拍測定値より運動モードの該1つの所定の運動期間分早く測定された1つの心拍測定値に基づいて計算されたものである。最後の参照比率が過去の参照比率より少なくとも運動モードの該1つの変動閾値分大きいと判断された場合に、サブステップS57へ進み、そうでない場合に、この方法は終了する。
【0044】
サブステップS57において、処理ユニット5は、表示ユニット4を制御して、ユーザが疲れていることを示す第1の通知を出力する。
【0045】
ステップS4で加速度測定値のすべてが所定の加速度閾値より小さいと判断された場合に、ステップS6において、処理ユニット5は、安静時のユーザの疲労を判断する。具体的には、ステップS6は、サブステップS61からサブステップS63を含む。
【0046】
サブステップS61において、処理ユニット5は、最後の参照比率が心拍関連比率の第2の範囲のいずれに該当するかを判断する。
【0047】
サブステップS62において、処理ユニット5は、最後の参照比率が該当する心拍関連比率の第2の範囲の1つに対応する疲労レベルの1つにユーザがあると判断する。
【0048】
サブステップS63において、処理ユニット5は、表示ユニット4を制御して、疲労レベルの該1つに対応する第2の通知を出力する。
【0049】
本開示の方法は、ユーザの疲労を継続的に判断するように、繰り返されてもよい。なお、該方法のステップ又はサブステップは、必ずしも上記の順序に従って実行されるとは限らず、一部のステップ又はサブステップは同時に実施されてもよい。
【0050】
図1、
図3、及び以下の表3を参照し、運動モードの1つを判断するための例示的なフローを以下に説明する。ステップS4において、事前に定義された期間(20分)におけるユーザの加速度測定値の少なくとも1つが所定の加速度閾値(20cm/s
2)より大きいと判断され、サブステップS55において、平均速度が所定の速度(10km/h)より大きく、且つ、異常速度比率が所定の比率(1/6)より小さいと判断されると、フローはサブステップS56に進んで最後の参照比率が過去の参照比率より大きいかどうかを判断する。例えば、ステップS1で133、152、175、188、及び168の5つの心拍測定値を順次に得て、最大心拍数は220であり、安静時心拍数は60である。従って、5つの心拍測定値の参照比率はそれぞれ46%、58%、72%80%、及び68%であり(ステップS2)、5つの心拍測定値に対応する運動モードはそれぞれ運動モード2、運動モード3、運動モード4、運動モード4、及び運動モード5である(表1を参照)。なお、第1から第5の心拍測定値の任意の2つの間に測定され、本実施例に示されていない1つ以上の心拍測定値が存在してもよい。
【0051】
【0052】
第2の心拍測定値を例として、第2の心拍測定値に対応する運動モードは運動モード3(表1を参照)であるため、サブステップ56は、第2の心拍測定値の参照比率(58%)が、30分(すなわち、運動モード3の所定の運動期間)前に測定された心拍測定値に対応する過去の参照比率より、少なくとも10%大きいかどうかを判断する。ここで、第1の心拍測定値133は、第2の心拍測定値152より所定の運動期間(すなわち、30分)分早く測定されたものであると想定されるため、過去の参照比率は46%である。過去の参照比率(46%)と比較し、第2の心拍測定値の参照比率(58%)は12%増加しており、10%(運動モード3の変動閾値)を超えている。従って、検知装置の表示ユニット4は、ユーザが疲れていることを示す第1の通知を出力する(サブステップS57)。
【0053】
図1、
図4、及び表4を参照し、ユーザの疲労レベルの1つを判断するための例示的なフローを以下に説明する。事前に定義された期間(20分)におけるユーザの加速度測定値のすべてが所定の加速度閾値(20cm/s
2)より小さい場合に、フローはステップS6へ進んで安静時のユーザの疲労レベルを判断する。例えば、ステップS1で80、76、74、70、及び71の5つの心拍測定値を順次に得て、最大心拍数は220であり、安静時心拍数は60である。従って、5つの心拍測定値の参照比率はそれぞれ13%、10%、9%、6%、及び7%であり(ステップS2)、5つの心拍測定値に対応する疲労レベルはそれぞれ「極めて疲れた」、「とても疲れた」、「とても疲れた」、「疲れた」、及び「疲れた」である。具体的には、第2の心拍測定値76について、参照比率10%は心拍関連比率の第2の範囲における「8%<参照比率≦11%」に該当するため(表2を参照)、第2の心拍測定値の疲労レベルは「とても疲れた」と判断される。なお、第1から第5の心拍測定値の任意の2つの間に測定され、本実施例に示されていない1つ以上の心拍測定値が存在してもよい。
【0054】
【0055】
特に指定がない限り、共通の対象を記述するために序数的形容詞「第一」、「第二」、「第三」などを使用することは、単に同様の対象の異なる具体例が参照されていることを示し、そのように記述された対象が時間的、空間的、階級的、又はその他の方法で、所定の順序に従わなければならないということを暗示する意図はないことに留意されたい。
【0056】
上記の説明によれば、本開示の実施形態はユーザの疲労を判断する方法及び検知装置を提供する。該方法および検知装置の利点は、以下の通りである。まず、心拍測定値の参照比率に基づいて運動モードを選択し、後続の判断に用いられる閾値は運動モードに応じて動的に決められるため、不変の閾値を用いたケースと比較して、誤って判断する可能性が低減される。また、平均速度が所定の速度より大きく、且つ、異常速度比率が所定の比率より小さいという場合でのみ疲労判断が行われるため、ユーザが速度を上げたり下げたりしているときに誤って疲労を判断することを回避することができる。さらに、この方法は、まず、加速度測定値に基づいてユーザが運動しているか休んでいるかを判断し、運動中及び休憩中にそれぞれ異なるロジックフローを採用してユーザが疲れているかどうかを判断し、このようにして判断されたユーザの疲労はより実際の状況に一致する。
【0057】
上記の説明では、説明の目的のために、実施形態の完全な理解を提供するために多数の特定の詳細が述べられた。しかしながら、当業者であれば、一又はそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。また、本明細書における「一実施形態」「一つの実施形態」を示す説明において、序数などの表示を伴う説明は全て、特定の態様、構造、特徴を有する本開示の具体的な実施に含まれ得るものであることと理解されたい。更に、本明細書において、時には複数の変化例が一つの実施形態、図面、又はこれらの説明に組み込まれているが、これは本明細書を合理化させるためのもので、本開示の多面性が理解されることを目的としたものであり、また、一実施形態における一又はそれ以上の特徴あるいは特定の具体例は、適切な場合には、本開示の実施において、他の実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例と共に実施され得る。
【0058】
以上、本発明の実施形態および変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【符号の説明】
【0059】
1 心拍測定ユニット
2 加速度測定ユニット
3 位置決めユニット
4 表示ユニット
5 処理ユニット