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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】粉体吹き付け装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 3/025 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
A61C3/025
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019097734
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020191939
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390011121
【氏名又は名称】株式会社モリタ東京製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】荒川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】塚越 悠紀
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-104149(JP,A)
【文献】実開昭57-193353(JP,U)
【文献】特開2007-029525(JP,A)
【文献】特表2001-519697(JP,A)
【文献】登録実用新案第3073535(JP,U)
【文献】特開2001-204741(JP,A)
【文献】特開2004-000514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 3/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科にて用いられる対象物に吹き付けられる粉体を収容する粉体収容部と、
空気と前記粉体収容部から供給された粉体とが混合した混合物である空気粉体混合物を排出する排出部と、
前記空気粉体混合物の排出が行われる際に操作者により操作される排出用被操作部と、
を備え、
空気のみを排出できるように構成され、又は、前記空気粉体混合物における前記粉体の割合よりも小さい割合で当該粉体が含まれる混合物である小割合混合物を排出できるように構成され
前記排出用被操作部を押圧し第1の状態とすることで、前記空気のみの排出又は前記小割合混合物の排出を行えるように構成され、当該排出用被操作部をさらに押圧し第2の状態とすることで、前記空気粉体混合物の排出を行えるように構成された粉体吹き付け装置。
【請求項2】
前記空気粉体混合物の元となる空気は、前記粉体吹き付け装置の外部から当該粉体吹き付け装置へ供給され、
前記粉体吹き付け装置へ供給される空気の圧力を調整する圧力調整機構を更に備える請求項1に記載の粉体吹き付け装置。
【請求項3】
排出される前記空気粉体混合物の圧力に関する表示を行う表示手段をさらに備え、
前記粉体吹き付け装置は、筒状に形成され一方向に伸びる筒状部分を有し、
前記一方向における位置を比べた場合に、前記圧力調整機構と前記排出用被操作部との間に、前記表示手段が位置する請求項2に記載の粉体吹き付け装置。
【請求項4】
排出される前記空気粉体混合物の圧力に関する表示を行う表示手段をさらに備え、
前記粉体吹き付け装置は、筒状に形成され一方向に延びる筒状部分を有し、
前記圧力調整機構、前記排出用被操作部、および、前記表示手段は、前記筒状部分に設けられるとともに、当該筒状部分の軸心を挟んで相対する2つの領域のうちの一方の領域側に設けられている請求項2に記載の粉体吹き付け装置。
【請求項5】
筒状に形成され一方向に延びるように形成され、前記排出部を支持する筒状部分が設けられ、
前記粉体収容部は、前記筒状部分の外周面から前記一方向と交差する方向に向かって突出した状態で設けられている請求項1に記載の粉体吹き付け装置。
【請求項6】
記排出用被操作部は、前記筒状部分を挟み前記粉体収容部が設置されている側とは反対側に設けられている請求項に記載の粉体吹き付け装置。
【請求項7】
前記粉体収容部は、筒状に形成され、
前記粉体収容部の軸方向に沿って当該粉体収容部および前記排出用被操作部を投影した場合に、当該粉体収容部と当該排出用被操作部との間に重なりが生じるように、当該粉体収容部と当該排出用被操作部とが設けられている請求項に記載の粉体吹き付け装置。
【請求項8】
空気が通り、前記排出部に向かう空気流路と、
合流部にて前記空気流路に合流し、前記粉体収容部からの粉体を当該空気流路に供給する供給流路と、
前記空気流路における空気の流れを遮断する弁と、
をさらに備え、
前記弁は、前記空気流路のうちの前記合流部よりも上流側に位置する部分にて空気の流れを遮断する請求項1に記載の粉体吹き付け装置。
【請求項9】
歯科にて用いられる対象物に吹き付けられる粉体を収容する粉体収容部と、
空気が通る空気流路と、
前記空気流路を通った空気を排出する排出部と、
前記空気流路と前記粉体収容部とを接続し、当該粉体収容部から当該空気流路へ供給される粉体が通る供給流路と、
前記空気流路における空気の流れを遮断する空気用弁と、
前記供給流路に設けられ、当該供給流路における粉体の流れを遮断し又は当該供給流路を通る粉体の量を可変させる粉体用弁と、
を備える粉体吹き付け装置。
【請求項10】
前記空気用弁および前記粉体用弁の両者に連動するように設けられ、操作者が当該空気用弁および当該粉体用弁に対する操作を行う際に触れる被操作部がさらに設けられ、
操作者が共通の前記被操作部を操作することによって、当該操作者が前記空気用弁および前記粉体用弁の両者に対する操作を行える請求項9に記載の粉体吹き付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体吹き付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、歯科用金属をアルミナサンドブラスト処理する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭59-135051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯科にて用いられる対象物に対しては、粉体の吹き付けなどの様々な処理が行われる。この様々な処理を、処理毎に個別に用意された装置ではなく、複数の処理を行うことができる装置で行えれば、作業者の作業負担が軽減される。
本発明の目的は、歯科にて用いられる対象物に対する処理を行う作業者の作業負担を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明が適用される粉体吹き付け装置は、歯科にて用いられる対象物に吹き付けられる粉体を収容する粉体収容部と、空気と粉体収容部から供給された粉体とが混合した混合物である空気粉体混合物を排出する排出部と、を備え、空気のみを排出できるように構成され、又は、空気粉体混合物における粉体の割合よりも小さい割合で粉体が含まれる混合物である小割合混合物を排出できるように構成された粉体吹き付け装置である。
ここで、空気粉体混合物の元となる空気は、粉体吹き付け装置の外部から粉体吹き付け装置へ供給され、粉体吹き付け装置へ供給される空気の圧力を調整する圧力調整機構を更に備えることを特徴とすることができる。
また、排出される空気粉体混合物の圧力に関する表示を行う表示手段と、空気粉体混合物が排出される際に操作者により操作される排出用被操作部と、をさらに備え、粉体吹き付け装置は、筒状に形成され一方向に伸びる筒状部分を有し、一方向における位置を比べた場合に、圧力調整機構と排出用被操作部との間に、表示手段が位置することを特徴とすることができる。
また、排出される空気粉体混合物の圧力に関する表示を行う表示手段と、空気粉体混合物が排出される際に操作者により操作される排出用被操作部と、をさらに備え、粉体吹き付け装置は、筒状に形成され一方向に延びる筒状部分を有し、圧力調整機構、排出用被操作部、および、表示手段は、筒状部分に設けられるとともに、筒状部分の軸心を挟んで相対する2つの領域のうちの一方の領域側に設けられていることを特徴とすることができる。
【0006】
また、空気粉体混合物の排出が行われる際に操作者により操作される排出用被操作部を更に備え、排出用被操作部を第1の状態とすることで、空気のみの排出又は小割合混合物の排出を行えるように構成され、排出用被操作部を第1の状態とは異なる第2の状態とすることで、空気粉体混合物の排出を行えるように構成されたことを特徴とすることができる。
また、排出用被操作部を押圧し第1の状態とすることで、空気のみの排出又は小割合混合物の排出を行えるように構成され、排出用被操作部をさらに押圧し第2の状態とすることで、空気粉体混合物の排出を行えるように構成されたことを特徴とすることができる。
また、筒状に形成され一方向に延びるように形成され、排出部を支持する筒状部分が設けられ、粉体収容部は、筒状部分の外周面から一方向と交差する方向に向かって突出した状態で設けられていることを特徴とすることができる。
また、粉体が排出される際に操作者により操作される排出用被操作部をさらに備え、排出用被操作部は、筒状部分を挟み粉体収容部が設置されている側とは反対側に設けられていることを特徴とすることができる。
また、粉体収容部は、筒状に形成され、粉体収容部の軸方向に沿って粉体収容部および排出用被操作部を投影した場合に、粉体収容部と排出用被操作部との間に重なりが生じるように、粉体収容部と排出用被操作部とが設けられていることを特徴とすることができる。
また、空気が通り、排出部に向かう空気流路と、合流部にて空気流路に合流し、粉体収容部からの粉体を空気流路に供給する供給流路と、空気流路における空気の流れを遮断する弁と、をさらに備え、弁は、空気流路のうちの合流部よりも上流側に位置する部分にて空気の流れを遮断することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、歯科にて用いられる対象物に対する処理を行う作業者の作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】歯科用診療装置および粉体吹き付け装置を示した図である。
図2】粉体吹き付け装置の内部構造を示した図である。
図3】粉体吹き付け装置を上方から眺めた場合における粉体吹き付け装置の内部構造を示した図である。
図4】(A)、(B)は、空気用弁、粉体用弁の構造を説明する図である。
図5】(A)、(B)は、排出用被操作部、空気用弁、粉体用弁の動きを説明する図である。
図6】粉体の吹き付けが行われる際の粉体吹き付け装置の状態を示した図である。
図7】粉体吹き付け装置の他の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、歯科用診療装置1および粉体吹き付け装置100を示した図である。
粉体吹き付け装置100は、補綴物など歯科にて用いられる対象物に対する粉体(粒体)の吹き付けを行う。これにより、例えば、対象物の接着面を荒らすことができ、対象物を相手方に接着する際の接着強度を高められる。
粉体の種類は、特に問わないが、粉体としては、例えば酸化アルミニウムなどの金属粉を用いることができる。また、粉体のサイズも特に問わず、様々なサイズの粉体を用いることができる。
【0010】
粉体吹き付け装置100には、装置本体としての役割を果たす筒状部分110が設けられている。粉体吹き付け装置100の各種の機能部は、この筒状部分110により支持される。
筒状部分110は、円筒状に形成され、一方向(図中、符号1Aで示す方向)へ延びるように形成されている。また、筒状部分110は、一方向(筒状部分110の長手方向)における一方に、一端部111を有し、他方に、他端部112を有する。
【0011】
また、粉体吹き付け装置100には、筒状に形成され粉体を収容する粉体収容部120が設けられている。
粉体収容部120は、筒状部分110に対して着脱可能になっており、粉体の補充や、他の種類の粉体や他の粒径の粉体への交換を行えるようになっている。
さらに、粉体吹き付け装置100には、空気と粉体収容部120から供給された粉体とが混合した混合物(以下、「空気粉体混合物」と称する)を排出する排出部130が設けられている。
【0012】
空気粉体混合物の元となる空気は、粉体吹き付け装置100の外部から粉体吹き付け装置100へ供給される。
具体的には、空気粉体混合物の元となる空気は、歯科用診療装置1から供給される。粉体吹き付け装置100は、歯科用診療装置1に接続され、空気粉体混合物の元となる空気は、この歯科用診療装置1から粉体吹き付け装置100へ供給される。
【0013】
より具体的には、歯科用診療装置1へは、不図示の真空ポンプやコンプレッサー等から空気(圧縮空気)が供給される。そして、本実施形態では、この空気が、歯科用診療装置1を介して粉体吹き付け装置100へ供給される。
なお、本実施形態では、歯科用診療装置1から粉体吹き付け装置100へ空気を供給する場合を説明したが、真空ポンプや、コンプレッサー等から粉体吹き付け装置100へ直接空気を供給してもよい。
【0014】
歯科用診療装置1には、患者を下方から支持する診療用椅子2、患者の口腔への光照射を行う歯科用照明装置3、患者がうがいに用いるコップに水を供給する供給装置(スピットン装置)5が設けられている。
供給装置5の符号5Aで示す部分に、空気排出部が設けられており、粉体吹き付け装置100は、この空気排出部に接続され、この空気排出部から粉体吹き付け装置100へ空気が供給される。
【0015】
図2は、粉体吹き付け装置100の内部構造を示した図である。
粉体吹き付け装置100には、圧力調整機構(圧力調整部)140が設けられている。
圧力調整機構140は、歯科用診療装置1から粉体吹き付け装置100へ供給される空気の圧力を調整する。付言すると、圧力調整機構140は、粉体吹き付け装置100の外部から粉体吹き付け装置100へ供給される空気の圧力を調整する。
【0016】
圧力調整機構140は、円柱状に形成され、さらに、筒状部分110の軸方向と直交する方向に沿って配置されている。さらに、圧力調整機構140は、筒状部分110の他端部112に設けられている。
圧力調整機構140には、圧力の調整を行う操作者の操作を受け付ける調整用受け付け部141が設けられている。操作者は、この調整用受け付け部141に対する操作を行って、圧力の調整を行う。具体的には、操作者は、円柱状の調整用受け付け部141を周方向に回転させて、圧力の調整を行う。
【0017】
本実施形態では、歯科用診療装置1から供給される空気の圧力が高くなっている。このため、本実施形態では、圧力調整機構140を用いて減圧を行う。
さらに、本実施形態では、操作者が、調整用受け付け部141に対する操作を行って、圧力調整機構140から下流側へ供給される空気の圧力を変更する。これにより、対象物に対して空気粉体混合物を吹き付ける際の圧力を変更できる。
ここで、圧力調整機構140としては、公知のものを用いればよく特に限定されず、例えば、既存のレギュレータを用いることができる。
【0018】
このように圧力の変更が可能であると、使用する粉体に応じて圧力を変更できるようになる。言い換えると、使用する粉体に適した圧力とすることができる。
付言すると、本実施形態のように圧力の変更が可能であると、様々な種類の粉体を使用できるようになり、使用する粉体の選択肢が拡がる。そして、この場合、対象物の表面粗さを、様々な表面粗さとすることができる。
【0019】
さらに、粉体吹き付け装置100には、圧力調整機構140を経た後の空気が通る空気流路151が設けられている。この空気流路151は排出部130に接続され、これにより、排出部130からの空気の排出が行われる。
さらに、本実施形態では、粉体収容部120からの粉体を空気流路151に供給する供給流路(後述)が設けられている。
【0020】
さらに、粉体吹き付け装置100には、圧力調整機構140を経た後の空気の圧力に関する表示を行う表示手段の一例としての圧力計160が設けられている。言い換えると、粉体吹き付け装置100には、排出される空気粉体混合物の圧力に関する表示を行う圧力計160が設けられている。
圧力計160は、空気流路151を通る空気からの圧力を受けるようになっており、圧力計160は、空気流路151内における空気の圧力を把握して表示する。
ここで、圧力計160としては、公知のものを使用すればよく、特に限定されるものではない。
【0021】
さらに、粉体吹き付け装置100には、空気粉体混合物が排出される際に操作者により操作される排出用被操作部170が設けられている。
排出用被操作部170は、操作者により押圧される被押圧部171を有する。この被押圧部171は、板状に形成され筒状部分110の外周面114に対向配置されている。
また、被押圧部171は、筒状部分110の他端部112側に位置する回転軸172を中心に回転可能となっている。
【0022】
付言すると、排出用被操作部170は、筒状部分110の他端部112側に位置する端部174が筒状部分110に取り付けられており、さらに、この筒状部分110に取り付けられた箇所を中心として回転可能となっている。
本実施形態では、排出用被操作部170が操作者により押圧されると、排出用被操作部170のうち、筒状部分110の一端部111側に位置する端部175が、筒状部分110に接近する。
【0023】
圧力調整機構140の調整用受け付け部141、排出用被操作部170、および、圧力計160(圧力の表示部分)は、筒状部分110の外周面114上に設けられている。
また、圧力調整機構140の調整用受け付け部141、排出用被操作部170、および、圧力計160(圧力の表示部分)は、筒状部分110の軸心110G(筒状部分110の軸心110Gを通る平面110H(図2の紙面に対して直交する平面))を挟んで相対する2つの領域のうちの一方の領域2A側に設けられている。
【0024】
さらに、本実施形態では、筒状部分110の延び方向である一方向(筒状部分110の長手方向)における位置を比べた場合に、圧力調整機構140と排出用被操作部170との間に、圧力計160が位置する。
また、本実施形態では、粉体収容部120は、筒状部分110の外周面114から上記一方向と交差する方向に向かって突出している。
さらに、本実施形態では、排出用被操作部170は、筒状部分110を挟み粉体収容部120が設置されている側とは反対側に設けられている。
【0025】
また、本実施形態では、粉体収容部120の軸方向(図中矢印2Xで示す方向)に沿って(向けて)且つこの軸方向に対して直交する仮想の平面2Yに対して、粉体収容部120および排出用被操作部170を投影した場合に、粉体収容部120と排出用被操作部170との間に重なりが生じるように、粉体収容部120と排出用被操作部170とが設けられている。
【0026】
図3は、粉体吹き付け装置100を上方から眺めた場合における粉体吹き付け装置100の内部構造を示した図である。
本実施形態では、上記のとおり、圧力調整機構140から排出部130に向かう空気流路151が設けられている。
さらに、粉体(粉体収容部120からの粉体)を空気流路151に供給する供給流路152が設けられている。なお、この供給流路152は、図中符号3Aで示す箇所から下方(図中紙面の奥側方向)へさらに延びており、粉体収容部120に接続されている。
【0027】
供給流路152は、合流部154にて空気流路151に合流し、粉体収容部120からの粉体を空気流路151に供給する。
また、本実施形態では、空気流路151における空気の流れを遮断する空気用弁180が設けられている。空気用弁180は、空気流路151のうち、合流部154よりも上流側に位置する部分にて、空気の流れを遮断する。
【0028】
また、この空気用弁180は、排出用被操作部170(図2参照)が操作者により操作されることで開閉する(詳細は後述)。
さらに、本実施形態では、供給流路152における粉体の流れを遮断する粉体用弁190が設けられている。この粉体用弁190も、排出用被操作部170が操作者により操作されることで開閉する(詳細は後述)。
【0029】
本実施形態では、粉体用弁190の方が、空気用弁180よりも合流部154に近い側に位置する。付言すると、粉体用弁190の方が、空気用弁180よりも、筒状部分110の一端部111側に位置する。
また、排出用被操作部170の回転軸172(図2参照)に対する位置を比べた場合に、粉体用弁190の方が、空気用弁180よりも回転軸172から離れた側に位置する。
【0030】
本実施形態では、排出用被操作部170(図2参照)が操作されると(排出用被操作部170が筒状部分110に向けて押圧されると)、まず、空気用弁180が開放される(詳細は後述)。
これにより、空気が空気用弁180を通過し、排出部130から空気が排出される。付言すると、この時点では、粉体用弁190は開放されておらず、排出部130からは空気のみが排出される。
【0031】
そして、本実施形態では、排出用被操作部170がさらに操作(押圧)されると、粉体用弁190も開放され、粉体が空気流路151に供給される。付言すると、粉体収容部120内に収容されている粉体が、空気流路151側へ吸引され、粉体が空気流路151に供給される。
これにより、空気流路151を流れる空気に粉体が混ざるようになり、排出部130から空気粉体混合物が排出される。
【0032】
本実施形態のように、空気のみを排出可能な構成であると、対象物に対する処理を行う作業者の作業負担を軽減できる。
ここで、対象物への粉体の吹き付け後、この対象物に対して空気を吹き付けるなどして、対象物に付着した粉体を除去する必要が生じる。
本実施形態のように、空気のみが吹き付け可能であると、作業者は、空気を吹き付けるための専用装置を別途操作せずに、対象物に対する空気の吹き付けを行えるようになる。この場合、作業者の作業負担が軽減される。
【0033】
ここで、対象物に付着した粉体の除去は、例えば、対象物を液体に入れて超音波洗浄を実施することでも行える。
ところで、この場合、空気粉体混合物の吹き付けにより対象物の表面から水分が除去され、水分に起因する接着強度の低下を抑えることが可能になっているにも関わらず、対象物に対して水分が供給されることになる。
これに対し、本実施形態の構成では、この超音波洗浄を省略できる可能性が生じ、さらに、空気を吹き付けるための専用装置を操作せずに済む。
【0034】
図4(A)、(B)は、空気用弁180、粉体用弁190の構造を説明する図である。付言すると、図4(A)、(B)は、図3の矢印IV方向から空気用弁180、粉体用弁190を見た場合の断面図である。
図4(A)に示すように、空気用弁180は、球状の弁体181と、この弁体181が接触する弁座182と、この弁座182に向けて弁体181を付勢する付勢部材183とを備える。さらに、弁体181を移動させる移動部材184を備える。
【0035】
弁座182は、Oリング(環状部材)により構成されている。
また、移動部材184の一部は、筒状部分110の外周面114から突出している。付言すると、移動部材184には、筒状部分110の外周面114よりも外側に突出した突出部184Aが設けられている。
【0036】
図4(B)は、粉体用弁190の構造を説明する図である。
粉体用弁190には、供給流路152を横切る円柱状の弁体191が設けられている。さらに、この弁体191を図中矢印4Aで示す方向へ付勢する付勢部材193が設けられている。
本実施形態では、この弁体191の一部が、筒状部分110の外周面114から突出している。付言すると、弁体191には、筒状部分110の外周面114よりも外側に突出した突出部191Aが設けられている。
【0037】
さらに、弁体191には、弁体191の径方向に沿って延びる貫通孔191Xが形成されている。
本実施形態では、排出用被操作部170が操作されていないときには、供給流路152を弁体191(弁体191のうちの貫通孔191X以外の部分)が横切っており、これにより、供給流路152における粉体の移動が規制される。
【0038】
図5(A)、(B)は、排出用被操作部170、空気用弁180、粉体用弁190の動きを説明する図である。
本実施形態では、排出用被操作部170が操作者により操作されていないときには、排出用被操作部170は、図4(A)、(B)に示す状態となっている。
【0039】
そして、本実施形態では、排出用被操作部170が上方から押圧され、排出用被操作部170が、図5(A)に示す第1の状態(当初の状態よりも筒状部分110側に接近した状態)となると、空気用弁180が開放される。
これにより、空気用弁180を空気が通過するようになり、排出部130から空気が排出される。付言すると、この時点においては、粉体用弁190は開放されていないため、排出部130からは、空気のみが排出される。
【0040】
より具体的には、排出用被操作部170が、図5(A)に示す第1の状態となると、移動部材184によって、下方に向けて弁体181が押圧され、弁体181が弁座182から離れる。
これにより、空気流路151内の空気が下流側へ流れるようになる。より具体的には、空気流路151内の空気のうちの弁体181よりも上流側に位置していた空気が、弁体181の脇を通って弁体181を通過し、下流側へ流れる。
【0041】
その後、本実施形態では、排出用被操作部170がさらに押圧され、図5(B)に示すように、排出用被操作部170が、上記の第1の状態とは異なる第2の状態となる。
これにより、粉体用弁190も開放され、粉体が空気流路151に供給される。これにより、排出部130からは、空気粉体混合物が排出される。
【0042】
より具体的には、第2の状態となると、図5(B)に示すように、供給流路152上に、弁体191の貫通孔191Xが位置するようになり、弁体191よりも上流側に位置していた粉体が、この貫通孔191Xを通って下流側へ移動する。
これにより、粉体が空気流路151に供給され、空気粉体混合物が排出部130から排出される。
【0043】
本実施形態では、1つの排出用被操作部170に対する操作を行うだけで、空気のみの排出と、空気粉体混合物の排出とを切り替えることができる。
この場合、例えば、空気のみの排出のための専用の被操作部、空気粉体混合物の排出のための専用の被操作部を各々設ける場合に比べ、操作者は、より簡易な操作で、空気のみの排出と、空気粉体混合物の排出とを切り替えることができる。
【0044】
また、本実施形態のように、空気のみの排出を行えると、圧力の調整を行う作業者の作業負担が軽減される。
ここで、粉体吹き付け装置100における圧力の調整は、空気を排出しながら且つ圧力計160を参照しながら(圧力を把握しながら)行うことが好ましい。この場合、この調整により設定される圧力を、粉体吹き付け装置100が実際に使用される際の圧力とすることができるようになる。
【0045】
ところで、この際に(空気の排出を伴う調整の際に)、空気粉体混合物が排出される構成であると、粉体が周囲に飛散しないようにしながら圧力の調整を行う必要が生じ、作業者の作業負担が増す。
これに対し、本実施形態のように、空気のみの排出を行える構成であると、粉体が周囲に飛散しないようになり、作業者の作業負担が軽減される。
【0046】
また、本実施形態では、上記のとおり、筒状部分110(図2参照)の長手方向における位置を比べた場合に、圧力調整機構140と排出用被操作部170との間に、表示手段としての圧力計160が位置する。
この場合、例えば、作業者が、右手で圧力調整機構140に対する操作を行い且つ左手で排出用被操作部170に対する操作を行っている際に、この操作者の正面に、圧力計160が位置するようになる。
この場合、操作者の正面から外れた箇所に圧力計160が位置する場合に比べ、操作者の作業負担が軽減される。
【0047】
また、本実施形態では、上記の通り、筒状部分110の軸心110G(図2参照)を挟んで相対する2つの領域のうちの一方の領域2A側に、圧力調整機構140(の調整用受け付け部141)、排出用被操作部170、および、圧力計160(の圧力表示部分)の3つの機能部が、設けられている。
この場合、この3つの機能部のうちの何れかが、他方の領域2B側に位置する場合に比べ、圧力の調整を行う際の操作者の作業負担が軽減される。
【0048】
さらに、本実施形態では、上記の通り、粉体収容部120は、一方向に延びる筒状部分110の外周面114から突出した状態で設けられている。より具体的には、粉体収容部120は、上記一方向と交差する方向に向かって突出している。
【0049】
粉体収容部120がこのように突出している構成では、操作者が操作する際、操作者は、図6(粉体の吹き付けが行われる際の粉体吹き付け装置100の状態を示した図)に示す形で、粉体吹き付け装置100を把持できるようになる。
この場合、粉体収容部120が設けられていない場合に比べ、操作者は、より安定的に粉体吹き付け装置100を把持できるようになる。
【0050】
さらに、本実施形態では、粉体収容部120の軸方向に沿って(図6の矢印6Aで示す方向に向けて)、且つ、この軸方向と直交する仮想の平面2Yに向けて、粉体収容部120および排出用被操作部170を投影した場合に、粉体収容部120と排出用被操作部170との間に重なりが生じる。
【0051】
これにより、本実施形態では、図6に示すように、親指と、薬指や小指とで粉体収容部120を挟んで把持した際に、人差し指や中指の対向位置に、排出用被操作部170が位置するようになる。
これにより、人差し指や中指の対向位置以外の箇所に、排出用被操作部170が位置する場合に比べ、粉体吹き付け装置100の操作性が向上する。
【0052】
(その他)
図2、3等にて示した本実施形態の構成では、空気用弁180を粉体用弁190よりも回転軸172に近い側に配置することで、空気用弁180が先に開放され、粉体用弁190が後に開放されるようにした。
ところで、空気用弁180を先に開放し、粉体用弁190を後に開放する構成は、これに限られない。
【0053】
例えば、筒状部分110の軸方向における、空気用弁180の位置と粉体用弁190の位置とを揃えたうえで、移動部材184の突出部184A(図4(A)参照)の突出量を、弁体191の突出部191A(図4(B)参照)の突出量よりも大きくするようにしてもよい。
また、その他に、排出用被操作部170側に、突出量が互いに異なる2つの突出部を設け、この突出部の各々を用いて、空気用弁180の開放、粉体用弁190の開放を行ってよい。
【0054】
排出用被操作部170側に2つの突出部を設ける場合、例えば、空気用弁180を開放するための突出部の突出量を、粉体用弁190を開放するための突出部の突出量よりも大きくする。これにより、空気用弁180を先に開放し、粉体用弁190を後に開放することができる。
また、排出用被操作部170側に2つの突出部を設ける場合、上記にて説明した構成と同様、空気用弁180を粉体用弁190よりも回転軸172に近い側に配置することでも、空気用弁180を先に開放し、粉体用弁190を後に開放することができる。
【0055】
また、上記では、排出用被操作部170が第1の状態のときに、空気のみが排出され、排出用被操作部170が第2の状態のときに、空気粉体混合物が排出される場合を説明した。
ところで、これに限らず、例えば、排出用被操作部170が第1の状態のときには、含有される粉体の量が少ない混合物である小割合混合物が排出されるようにしてもよい。
言い換えると、排出用被操作部170が第1の状態のときには、上記にて説明した空気粉体混合物(第2の状態のときに排出される空気粉体混合物)における粉体の割合よりも小さい割合で粉体が含まれる混合物である小割合混合物が排出されるようにしてもよい。
【0056】
排出用被操作部170が第1の状態のときに、小割合混合物が排出されるようにするには、例えば、排出用被操作部170が第1の状態のときに(図5(A)に示す状態のときに)、図7(粉体吹き付け装置100の他の構成例を示した図)に示すように、弁体191の貫通孔191Xの一部が、供給流路152上に位置するようにする。
このように、小割合混合物および空気粉体混合物の排出を行えると、対象物に対して単位時間当たりに吹き付けられる粉体の量を変更することができる。
【符号の説明】
【0057】
100…粉体吹き付け装置、120…粉体収容部、130…排出部、140…圧力調整機構、160…圧力計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7