(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】簡便で工業性に優れた高濃度バイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20230831BHJP
B29B 7/82 20060101ALI20230831BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20230831BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20230831BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20230831BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20230831BHJP
C08L 97/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
C08J3/22 CES
B29B7/82
C08K5/14
C08L1/02
C08L23/00
C08L23/26
C08L97/00
(21)【出願番号】P 2019186917
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】507249247
【氏名又は名称】株式会社バイオマステクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】神谷 雄仁
(72)【発明者】
【氏名】坂口 和久
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-131031(JP,A)
【文献】特表2015-537093(JP,A)
【文献】特開昭61-155436(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0241726(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0233630(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B7/00-11/14
13/00-15/06
B29C31/00-31/10
37/00-37/04
48/00-48/96
71/00-71/02
C08J3/00-3/28
99/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1のポリオレフィンと;
(B)無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ジクロロマレイン酸、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘット酸、無水トリメット酸、および無水ピロメリット酸からなる群から選択される少なくとも1種で変性した変性ポリオレフィンと;
(C)有機過酸化物および第2のポリオレフィンを含むマスターバッチと;
(D)木質系バイオマスと;
の混合物に対し、
二軸押出機において、前記有機過酸化物の分解が開始する温度以上の温度を付与する、温度付与工程を有
し、
前記二軸押出機のL/D(バレル長さ/スクリュー径)が45超65以下である、バイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記第1のポリオレフィンが、エチレン由来の構成単位およびプロピレン由来の構成単位の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1のポリオレフィンと、前記変性ポリオレフィンと、前記第2のポリオレフィンとが同じ構成単位を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記木質系バイオマスが、前記バイオマスポリオレフィン複合材料に対して、60質量%以上含まれる、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記木質系バイオマスが、リグニンおよびセルロースの少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記有機過酸化物が、過酸化アルキル、過酸化ジアシル、過酸化エステルおよび過酸化カーボネートからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記温度付与工程における温度が、190℃超である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記温度付与工程の後、前記有機過酸化物の分解が開始する温度未満に降温して前記混合物の攪拌を行うことを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木粉等のバイオマスをポリオレフィン等の合成樹脂に混練してなる複合材料を成形材料とした成形品は、二酸化炭素の増減に影響を与え難いカーボンニュートラルの性質を持っているため、地球温暖化対策に繋がる等の理由から、利用範囲が広がってきている。
【0003】
最近では、木粉含有率が50%以上、場合によっては60%以上の高濃度の木粉樹脂が要求される場合がある(例えば、特許文献1)。高濃度木粉樹脂にすることで、得られた樹脂をそのまま成形することにより高バイオマス含製品を調製することができ、また、汎用的な石油由来樹脂で希釈して成形加工することにより、低濃度から高濃度の任意のバイオマス濃度組成物が仕上げられる。さらには、汎用樹脂の選択によって各成形物に求められる樹脂特性の調整幅を広く保つことが可能になりコスト的にも優位性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、木粉等のバイオマスの含有率が高まるにつれ、溶融時の流動性が低下し、また、流動を開始するまでの温度が上昇しうるため、成形性が低下したり、生産性に悪影響を及ぼしたりする虞がある。また、得られた成形品の表面状態や形状等に不具合が発生し、品質面で問題が生じる虞がある。
【0006】
そこで、木粉等のバイオマスの含有率が高くても、溶融時の流動性を向上し、流動を開始するまでの温度を低下することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、(A)第1のポリオレフィンと;(B)無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ジクロロマレイン酸、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘット酸、無水トリメット酸、および無水ピロメリット酸からなる群から選択される少なくとも1種で化学変性した変性ポリオレフィンと;(C)有機過酸化物および第2のポリオレフィンを含むマスターバッチと;(D)木質系バイオマスと;の混合物に対し、前記有機過酸化物の分解が開始する温度以上の温度を付与する、温度付与工程を有する、バイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法を提供することによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、木粉等のバイオマスの含有率が高くても、溶融時の流動性を向上し、流動を開始するまでの温度を低下することができる技術を提供することができる。つまりは、高濃度木粉樹脂にすることにより、得られた樹脂を汎用樹脂で希釈して成形することにより、低濃度から高濃度のより幅広いバイオマス濃度組成物と各成形物に求められる樹脂特性の調整幅を広く保つことが可能になりコスト的にも優位性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のバイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法に用いられうる二軸押出機である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
【0011】
<バイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法>
本発明は、(A)第1のポリオレフィン(本明細書中、(A)成分とも称する)と;(B)無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ジクロロマレイン酸、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘット酸、無水トリメット酸、および無水ピロメリット酸からなる群から選択される少なくとも1種で変性した変性ポリオレフィン(本明細書中、(B)成分とも称する)と;(C)有機過酸化物および第2のポリオレフィンを含むマスターバッチ(本明細書中、(C)成分とも称する)と;(D)木質系バイオマス(本明細書中、(D)成分とも称する)と;の混合物に対し、前記有機過酸化物の分解が開始する温度以上の温度を付与する、温度付与工程を有する、バイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法である。かかる構成によれば、木粉等のバイオマスの含有率が高くても、溶融時の流動性を向上し、流動を開始するまでの温度を低下することができる。かかる技術的効果を奏するメカニズムは必ずしも明らかではないが以下のとおりと推測される。無論、本発明の技術的範囲は当該メカニズムに制限されない。
【0012】
まず、加熱混練下における(C)成分の作用によって、(A)成分の一部の分子鎖が切断され流動性が向上する。一方で、(B)成分と(D)成分とが化学的に結合することによって、(B)成分がグラフトしてなる(D)成分が作製され、当該(B)成分がグラフトしてなる(D)成分と、(A)成分とが、(C)成分の分解により発生したフリーラジカルを重合開始剤としてさらにグラフトすることによって(D)成分に熱可塑性が付与される。つまり、溶融時の流動性を向上し、流動を開始するまでの温度を低下することができると考えられる。
【0013】
<バイオマスポリオレフィン複合材料の製造に用いられる成分>
(A)第1のポリオレフィン
第1のポリオレフィン((A)成分)は、バイオマスポリオレフィン複合材料に用いられうるものであれば特に制限はないが、本発明の一実施形態によれば、炭素数2以上20以下のα-オレフィン由来の構成単位を含むことが好ましく、本発明の一実施形態において、炭素数2以上20以下のα-オレフィン由来の構成単位としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン等が好適である。かような形態であることによって汎用樹脂特性に準じた熱流動性を有する複合材料の調製が可能となる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、第1のポリオレフィンは、エチレン由来の構成単位およびプロピレン由来の構成単位の少なくとも一方を含むことが好ましい。かような形態であることによって、より汎用性の高い樹脂の熱流動性に準じる挙動となり、既存の成形加工装置が幅広く利用可能になる。また、該複合材料の燃焼時には水と二酸化炭素が主となり環境面に配慮した原材料となりうる。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、第1のポリオレフィンは、単独重合体(ホモポリマー)であっても、共重合体(コポリマー)であってもよく、コポリマーである場合、ブロックであっても、ランダムであってもよい。特に、熱変形温度及び融点の観点からランダムであることが好ましい。
【0016】
本発明の一実施形態において、第1のポリオレフィンがコポリマーである場合、炭素数2以上20以下のα-オレフィン由来の構成単位が2種類以上となるように適宜選択されればよく、エチレン由来の構成単位およびプロピレン由来の構成単位の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の一実施形態において、第1のポリオレフィンがコポリマーである場合、第1のポリオレフィンは、低温度域での混練によるバイオマス原材料の劣化抑制の観点からエチレン由来の構成単位の比率が全構成単位中で50モル%超のエチレン系ポリマー、プロピレン由来の構成単位の比率が全構成単位中で50モル%超のプロピレン系ポリマーであることが好ましい。
【0018】
本発明の一実施形態において、第1のポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)は、高濃度バイオマスとの複合化の場合、熱流動性が乏しくなりやすい傾向があることから、10~50g/10minであることが好ましく、20~40g/10minであることがより好ましく、25~35g/10minであることがさらに好ましい。かような範囲であることによって、高い熱流動性を有した混練材料を調製できる。第1のポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)はどの基準に準拠してもよいが、好ましくは実施例に記載の方法に準拠する。
【0019】
本発明の一実施形態において、第1のポリオレフィンの密度は、樹脂の力学特性と結晶化度の観点から、890~940kg/m3であることが好ましく、890~910kg/m3であることがさらに好ましい。かような密度範囲であることによって、低い温度域でも均一な溶解性が保たれ混練時の過剰せん断による材料劣化が抑制できると考えられる。密度は、JIS K7112(1999年)(密度勾配管法)に準拠して、測定される値である。
【0020】
本発明の一実施形態において、第1のポリオレフィンの荷重たわみ温度は、70~110℃であることが好ましく、75~85℃であることがよりに好ましい。かような範囲であることによって、低温でのバイオマス混練を可能にし、原材料の過剰加熱及び過剰せん断応力からの劣化を抑制する技術的効果がある。荷重たわみ温度はJIS K7191:2015に準拠し測定される値である。
【0021】
本発明の一実施形態において、第1のポリオレフィンの重量平均分子量は、力学特性と混練による材料複合化の観点から、Mw:log 4.5~5.5(10万前後)程度であることが好ましい。なお、本明細書中、「重量平均分子量」は、ポリスチレンを標準物質とした高温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0022】
本発明の一実施形態において、第1のポリオレフィンは、従来公知の方法を参照し、あるいは組み合わせて合成してもよいし、市販品があるのであればそれを購入して準備をしてもよい。例えば、プライムポリプロ(登録商標)J3021-GR、J2041-GR、J226T、(以上、株式会社プライムポリマー製)、ノバテックMG03E、MG05ES、(以上、日本ポリプロ株式会社製)等が好適である。
【0023】
(B)変性ポリオレフィン
本発明の変性ポリオレフィン((B)成分)は、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ジクロロマレイン酸、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘット酸、無水トリメット酸、および無水ピロメリット酸からなる群から選択される少なくとも1種で変性した変性ポリオレフィンである。中でも、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸で、特に無水マレイン酸で変性した変性ポリオレフィンであることが、入手容易で且つ、安価であり工業性の観点で好ましい。
【0024】
本発明の一実施形態において、変性ポリオレフィンにおけるポリオレフィンは、上記の第1のポリオレフィンと同様のものが好ましく使用されるが、好ましくは、エチレン由来の構成単位およびプロピレン由来の構成単位の少なくとも一方を含む。また、変性ポリオレフィンにおけるポリオレフィンは、第1のポリオレフィンと同様、ホモポリマーであっても、ブロックコポリマーであっても、ランダムコポリマーであってもよいが、耐薬品性の観点でホモポリマーであることが好ましい。
【0025】
本発明の一実施形態において、変性ポリオレフィンの酸価は、オレフィン樹脂との効率的且つ生産性の高いグラフトであれば、5~100mgKOH/gであることが一般的で、使用に関しては20~80mgKOH/gであることがより好ましく、40~60mgKOH/gであることがさらに好ましい。酸価は、分散剤固形分1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数として定義され、JIS K 0070:1992に記載の電位差滴定法に準拠し測定される値である。
【0026】
本発明の一実施形態において、変性ポリオレフィンの分子量(Mw)は、2万~15万前後である。流動性を求める時は、低分子タイプ、一方、力学特性を考慮し、分子量を落としたくない場合はより高分子タイプを選択して使用することがよい。
【0027】
本発明の一実施形態において、変性ポリオレフィンは、従来公知の方法、例えば、上記の第1のポリオレフィンと同様のポリオレフィンを有機過酸化物の存在下にて加熱混合撹拌等により、上記のような不飽和カルボン酸をグラフト重合させて製造してもよいし、あるいは市販品を用いてもよい。変性ポリオレフィンの市販品としては、リケエイド(登録商標)MG-400P、MG-250、PMG-440P(以上、理研ビタミン株式会社製)、ユーメックス1010、1001(以上、三洋化成工業株式会社製)等が好適である。
【0028】
(C)有機過酸化物および第2のポリオレフィンを含むマスターバッチ
有機過酸化物および第2のポリオレフィンを含むマスターバッチにおける有機過酸化物((C)成分)としては、例えば、過酸化アルキル、過酸化ジアシル、過酸化エステル、過酸化カーボネートなどがある。中でも、過酸化ジアシル類であることが好ましい。よって、本発明の一実施形態によれば、前記有機過酸化物が、過酸化アルキル、過酸化ジアシル、過酸化エステルおよび過酸化カーボネートからなる群から選択される少なくとも1種である。かような形態であることによって本発明の技術的効果を効率的に奏することができる。
【0029】
過酸化アルキルとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、tert-ブチルクミル、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキソナン等が挙げられる。
【0030】
過酸化ジアシルとしては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0031】
過酸化エステルとしては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルパーオキシル-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルーパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、tert-アミルパーオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-ブチルパーオキシトリメチルアディペート等が挙げられる。
【0032】
過酸化カーボネートとしては、例えば、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。第2のポリオレフィンは、第1のポリオレフィンと同様、ホモポリマーであっても、ブロックコポリマーであっても、ランダムコポリマーであってもよい。
【0033】
ホモポリマーであることが好ましく、より具体的には、プロピレンの構成単位からなるホモポリマー、エチレンの構成単位からなるホモポリマー等が好適である。本発明の別の実施形態において、第2のポリオレフィンは、プロピレンとエチレンとのコポリマーであってもよい。
【0034】
本発明の一実施形態において、マスターバッチにおける有機過酸化物の含有量は、1~50質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることがよりさらに好ましく、3~5質量%であることがよりさらに好ましい。かような形態であることによって複合材料製造時のハンドリング容易性とコスト面での効果がある。
【0035】
本発明の一実施形態において、有機過酸化物および第2のポリオレフィンを含むマスターバッチは、従来公知の方法により製造してもよいし、また市販品を用いてもよい。有機過酸化物および第2のポリオレフィンを含むマスターバッチの市販品としては、PPM100、PPMX50(以上、株式会社ロンビック製社製)、トリゴノックス301-10PP(以上、化薬アクゾ株式会社製)等が好適である。
【0036】
本発明の一実施形態において、前記第1のポリオレフィンと、前記変性ポリオレフィンと、前記第2のポリオレフィンとが同じ構成単位を含む。かような形態であることによって高い相溶性を発揮する。
【0037】
(D)木質系バイオマス
本発明で用いられうる木質系バイオマス((D)成分)は、バイオマスポリオレフィン複合材料の製造に用いられうるものであれば特に制限されないが、本発明の一実施形態によれば、前記木質系バイオマスが、リグニンおよびセルロースの少なくとも一方を含む。かかる形態であることによって地球温暖化対策に繋がる。
【0038】
本発明の一実施形態において、木質系バイオマスの多くは、セルロース(C6糖類に分類される)、ヘミセルロース(C5糖類に分類される)およびリグニンを含み、その木質系バイオマスの組成は、一般的には、セルロース30~32%程度、ヘミセルロース23~25%程度、リグニン18~20%程度、およびその他からなる。
【0039】
本発明の一実施形態において、木質系バイオマス中、セルロース含有量の下限は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上である。また、木質系バイオマス中、セルロース含有量の上限は、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。
【0040】
本発明の一実施形態において、木質系バイオマス中、ヘミセルロース含有量の下限は、好ましくは16%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上である。また、木質系バイオマス中、ヘミセルロース含有量の上限は、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下である。
【0041】
本発明の一実施形態において、木質系バイオマス中、リグニン含有量は、0質量%に近づくことがよく、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下である。ただ、一般的には、20%~25%は含まれている。
【0042】
本発明の一実施形態において、木質系バイオマスの具体例としては、特に制限はないが、木質系、草本系などの如何なるものであってもよく、ネピアグラス、ベージグラス、ササ、タケ、綿、トウヒ、カバ、稲わらなど;バガス、籾殻などを含む農業廃棄物;製材残材、林地残材、間伐材、廃建材、木くずなどを含む産業廃棄物;古紙などを含む生活系廃棄物などが挙げられる。
【0043】
本発明の一実施形態において、木質系バイオマスの粒子径は、バイオマスポリオレフィン複合材料に適用する通常のサイズであれば特に制限はないが、例えば、60メッシュパス、70メッシュパス、80メッシュパス、100メッシュパスのものなどが好適に使用できる。微粉であることによって、材料調製時の装置内での混練トルクが低く分散が容易になり、均一な海島構造を形成しやすく、且つ反応サイトの増大によりオレフィン樹脂との界面接着が良好になる。しかしながら、極めて微粒になると調製時に装置への投入が困難になり、また周囲への飛散も多くなるためにハンドリングが難しくなる。よって、下限としては、200メッシュオンであることが好ましく、150メッシュオンであることがより好ましいがこれらに制限されるものではない。木質系バイオマスの市販品としては、LIGNOCEL(登録商標)C100、C200(以上、独国レッテンマイヤー社製)、KCフロックW-100GK、W-100F(以上、日本製紙株式会社製)等が好適である。
【0044】
<温度付与工程>
本発明の製造方法は、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分との混合物に対し、前記有機過酸化物の分解が開始する温度以上の温度を付与する、温度付与工程を有する。
【0045】
(混合物)
本発明の一実施形態において、前記混合物は、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分とが最終的に混合されれば、どのような順番で混合してもよいが、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分との混合物前駆体を作製し、一方、(D)成分を準備し、当該混合物前駆体と、(D)成分とを所望の重量比にて投入、混合することによって混合物を作製することがよい。
【0046】
かような形態であることによって添加量の少ないことが好ましい原材料、特に(B)成分、さらには(C)成分が均一に混合される。上記のような方法を行わないで、各材料をそれぞれ別々に投入する場合は、ホッパーシュートや装置に帯電している静電気などでの張り付きなどより、混練装置内に安定的に全材料が投入されない場合がある。または断片的に過剰に投入されるなどにより最終製品の物性にバラつきが生じる虞がある。
【0047】
本発明の一実施形態において、(A)成分は、バイオマスポリオレフィン複合材料において、好ましくは20~60質量%、より好ましくは20~50質量%、さらに好ましくは20~30質量%となるように混合されることが好ましい。かような範囲であることによって、高濃度バイオマスポリオレフィン複合材料になり、原材料コストメリットと物性を含む材料特性を両立することができる。
【0048】
本発明の一実施形態において、(B)成分は、バイオマスポリオレフィン複合材料において、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは1~6質量%、さらに好ましくは2~5質量%となるように混合されることが好ましい。かような範囲であることによって、高濃度バイオマスポリオレフィン複合材料になり、原材料コストメリットと物性を含む材料特性を両立することができる。
【0049】
本発明の一実施形態において、(C)成分は、バイオマスポリオレフィン複合材料において、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.1~2質量%、さらに好ましくは0.5~2質量%となるように混合されることが好ましい。かような範囲であることによって、高濃度バイオマスポリオレフィン複合材料になり、原材料コストメリットと物性を含む材料特性を両立することができる。
【0050】
本発明の一実施形態において、前記木質系バイオマスが、前記バイオマスポリオレフィン複合材料に対して、60質量%以上含まれる。本発明のバイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法によれば、このように木粉等のバイオマスの含有率が高くても、溶融時の流動性を向上し、流動を開始するまでの温度を低下することができる。本発明の一実施形態において、(D)成分は、バイオマスポリオレフィン複合材料において、好ましくは40~80質量%、より好ましくは50質量%超75質量%以下、さらに好ましくは60~73質量%となるように混合されることが好ましい。特に、50質量%超含めることによってバイオマス主原料という観点から好ましい。
【0051】
本発明の一実施形態において、前後述の装置のアッセンブル、脱気部の構成などから、使用する(D)材料は事前に乾燥する必要はなく、一般的な気乾状態(含水率:~13%前後)であればそのまま使用してもよい。
【0052】
(温度付与工程の温度、時間)
本発明の一実施形態において、有機過酸化物の分解温度は、180~230℃であるのが好ましく、190~200℃であるのがさらに好ましい。ここで、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
【0053】
本発明の一実施形態において、前記温度付与工程における温度は、(B)成分の第2のポリオレフィンの溶融温度以上で且つ、前記有機過酸化物の分解が開始する温度以上であれば特に制限はないが、混練装置内でのせん断応力も考慮すると有機過酸化物の分解が開始する温度の+5~30℃、あるいは、+1~5℃程度であってもよい。
【0054】
本発明の一実施形態において、前記温度付与工程における温度は、190℃超である。本発明の一実施形態において、前記温度付与工程における温度が、195℃以上、あるいは、200℃以上である。本発明の一実施形態において、前記温度付与工程における温度は、220℃以下、210℃以下、あるいは200℃以下である。
【0055】
本発明の一実施形態において、前記温度付与工程は、前記(D)成分が炭化または劣化しないように行う。本発明の一実施形態において、有機過酸化物が活性化された後は、前記温度付与工程における温度から降温することが好ましい。よって、本発明の一実施形態において、前記温度付与工程の後、前記有機過酸化物の分解が開始する温度未満に降温して前記混合物の溶融混合を行うことを有する。かかる実施形態によって、前記(D)成分が炭化することをより確実に抑制することができる。
【0056】
(バイオマスポリオレフィン複合材料の製造条件、装置)
本発明のバイオマスポリオレフィン複合材料の製造条件において、前記温度付与工程を有する以外は、従来公知の製造条件が適用できる。本発明の一実施形態において、バイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法は、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分との混合物を混練することを有する。本発明の一実施形態において、バイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法は、混合物に対して真空脱気することを有する。本発明の一実施形態において、バイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法は、混合物に対して圧縮することを有する。本発明の一実施形態において、バイオマスポリオレフィン複合材料の製造は、連続式二軸押出機を用いて行われる。
【0057】
本発明の一実施形態において、
図1に示されるように、バイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法に用いられうる二軸押出機は、バレルを備え、当該バレルは、主に、ホッパーシュート1と、材料投入部6と、樹脂溶解部7と、大気開放部8(大気開放ベント金型を含む)と、混練部9(サイドフィーダー12を含む)と、真空脱気部10(真空脱気ベント金型)と、圧縮部11と、ダイヘッド5とを備える。
【0058】
本発明の一実施形態において、ホッパーシュート1から(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を投入することで、これらが材料投入部6に投入される。(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分との混合物は、バイオマスポリオレフィン複合材料が排出されるダイヘッド5に向かって移動されていく。樹脂溶解部7では、樹脂成分の溶解が実施される。大気開放部8では、大気開放ベント2から混合物中に存在する比較的容易に揮発するガスや水成分が排出される。混練部9では混合物がさらに混練される。サイドフィーダー3からは、混合物から混練によるせん断応力によりさらに発生したガスや水分が除去排出される。真空脱気部10では、混合物を真空脱気することにより、既述のサイドフィーダー3で除去しきれなかった混合物の中に含まれる微量の揮発成分及び水分が、真空ベント口4を通じて除去される。圧縮部11で混合物が圧縮された後、製造されたバイオマスポリオレフィン複合材料がダイヘッド5を通じて排出される。
【0059】
本発明の一実施形態において、二軸押出機のL/D(バレル長さ/スクリュー径)については特に制限はなく、35~65程度、あるいは、45~60程度である。かような形態であることによって、材料の適切な相溶化に必要な滞留時間の確保と生産効率性を両立するものとなる。つまり、かようなL/Dの範囲であることによって混練を十分にでき(材料を相溶させ、界面の接着を強くし、さらに物性を向上させることができる)。また、各バレルでの機能性(サイドフィーダーや真空脱気など)も向上させることができる。また、装置のコストを抑え、モーターの負荷を低減し、メンテナンス、ランニングコストを抑えることができる。
【0060】
本発明の一実施形態において、二軸押出機のスクリュー回転数については特に制限はなく、100~600rpm程度、あるいは、200~500rpm程度である。かような形態であることによって、著しい高せん断条件にならずに、均一混練が行い易い。また、回転数が高すぎる場合は、過剰なせん断応力によって材料の劣化、特にバイオマスの炭化が生じやすい。
【0061】
本発明の一実施形態において、二軸押出機のスクリュー回転は、同方向回転であっても、異方向回転であってもよく、材料に応じて適宜選択することができるが、材料への過剰なせん断トルクの抑制とメンテナンス性の高さから同方向回転であることが好ましい。かような形態であることによって、既存の汎用押出装置を幅広く使用することが可能である。
【0062】
本発明の一実施形態において、有機過酸化物の分解が開始する温度以上の温度を付与する、温度付与工程を行う時点には特に制限はないが、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分における樹脂成分を溶解させる、樹脂溶解部にて行われることが好ましい。
【0063】
本発明の一実施形態において、材料投入部の設定温度は、20~90℃であることが好ましく、60~80℃であることがより好ましい。材料投入部の温度が極めて高い場合は材料投入時に材料中に含まれている水分、付着水分の蒸発が極めて早く、材料投入口から水分が逆流して戻る状態になり、投入部でフィードネックが生じやすい。また、材料投入口の温度が極めて低い場合は、連続して繋がっている樹脂溶解部のバレル温度を吸熱してしまい昇温、保温へのエネルギーロスが懸念される。また、本発明の一実施形態において、材料投入部の起端(つまり、ホッパーシュート側)は、バレルの起端に位置する。例えば、バレルが同じ長さのシリンダー16連結で構成されている場合は、第1シリンダーに位置する。
【0064】
本発明の一実施形態において、樹脂溶解部の設定温度は、180~230℃であることが好ましく、190~205℃であることがより好ましい。樹脂温度が低すぎると樹脂の溶解が不十分になりモーターが過負荷になりやすく、また、後続の混練部においてもバイオマスとの複合化が均一に行えない虞がある。一方、樹脂溶解部での温度が極めて高すぎる場合は、樹脂の劣化、ガス化しやすく、また必要以上に樹脂の溶融粘度が低下し、バレル内のせん断応力がかかりにくい傾向になる。
【0065】
また、本発明の一実施形態において、例えば、バレルが同じ長さのシリンダー16連結で構成されている場合は、溶解部は第2~3シリンダー位置することが好ましい。本発明の実施例において、樹脂溶解部での原料の滞留時間を測定することが困難であるが、2~3秒から12~13秒程度であると考えられる。
【0066】
本発明の一実施形態において、大気開放部の設定温度は、160~230℃であることが好ましく、180~195℃であることがより好ましい。大気開放部において、設定温度が低すぎる場合は、複合化中の材料粘度が低く、材料中の揮発成分が排出されにくい傾向になる。一方、温度が極めて高い場合は、大気開放部より複合化中の材料、特に(A)成分が大気開放部に設置されているベント金型より吐出する、いわゆるベントアップが生じやすく、材料組成が変化してしまい、均一で安定的な複合材料の調製が困難になる虞がある。大気開放部は、ベントアップの抑制などを理由に、必要に応じて複数箇所に分散して設置しても良い。また、本発明の一実施形態において、大気開放部の起端は、例えば、バレルが同じ長さのシリンダー16連結で構成されている場合は第3~6シリンダー程度に位置することが好ましい。
【0067】
本発明の一実施形態において、混練部の設定温度は、140~200℃であることが好ましく、160~190℃であることがより好ましい。かような範囲であることによって、材料劣化の原因になりうる過度の加熱を避け、適当な溶融粘度下にて均一混練が可能になる。本発明の一実施形態において、例えば、バレルが同じ長さのシリンダー16連結で構成されている場合は第5~11シリンダーに位置することが好ましい。
【0068】
混練部途中に設けたサイドフィーダー12挿入部の温度も、樹脂が溶解している温度域である必要があり、設定温度が低すぎると、樹脂が固化してしまい、サイドフィーダー12の回転で粉砕されたフレークがサイドフィーダー12の開口部より飛散する状態になりうる。温度が高すぎると溶融粘度が極めて低くなり、サイドフィーダー12内部に樹脂が侵入し、サイドフィーダー12が過負荷状態になり装置が安定して機能しなくなる虞がある。
【0069】
本発明の一実施形態において、真空脱気部の設定温度は、80~200℃であることが好ましく、100~140℃であることがより好ましい。真空脱気部の温度が極めて低い場合は、複合化されている材料の粘度が著しく高くなり、または固化してしまい効率的に不要な揮発成分及び水分を除去できない虞がある。しかしながら、温度が高すぎる場合は、材料の粘度が低くなりすぎて、脱気部をベントアップにより閉塞してしまう可能性が高く、この場合も効率的な脱気ができない状態になりうる。本発明の一実施形態において、例えば、バレルが同じ長さのシリンダー16連結で構成されている場合は第12~13シリンダーに脱気部が位置することが好ましく、脱気部の真空ベントは必要に応じてトラップを介して複数箇所設けても良い。その場合、ベント部の真空気流は並列にボールバルブを介して接続し、連続生産時におけるトラップのメンテナンスを可能にするレイアウトにすることが望ましい。真空ポンプは油回転式ものでも、水封式のものでも構わない。
【0070】
本発明の一実施形態において、圧縮部の設定温度は、160~200℃であることが好ましく、180~190℃であることがより好ましい。圧縮部における温度が極めて低い場合は、バレル内における樹脂の滞留が生じやすく、上流部の真空脱気部から逆流した樹脂のベントアップを生じたり、また後続のダイヘッドを閉塞してしまう可能性がある。また、温度が極めて高い場合は、粘度低下による圧縮不良や、ガス化が起こりうる。また、本発明の一実施形態において、圧縮部の起端は、例えば、バレルが同じ長さのシリンダー16連結で構成されている場合は第13~16シリンダーに位置することが好ましい。
【0071】
本発明の一実施形態において、ダイヘッドの設定温度は、180~220℃であることが好ましく、190~200℃であることがより好ましい。ダイヘッドの温度が低すぎる場合は、ダイヘッド孔を閉塞してしまう虞があることと、得られるストランドの表面平滑性が低下する傾向になる(シャークスキン状態)。また、ダイヘッドの温度が極めて高い場合は、得られる複合材料の表面温度が高すぎてしまいお互いが融着状態(互着)になる虞がある。更には複合化した材料の冷却時間が長く必要になりペレット状にカットする際も、固化不十分でカット不良が生じる可能性も高い。
【0072】
本発明の一実施形態において、ダイヘッドからのバイオマスポリオレフィン複合材料の突出量は、100~600kg/hであることが好ましく、200~400kg/hであることがより好ましい。
【0073】
本発明の一実施形態において、バレル長さLは、生産量に応じて適宜調整できるが、通常、2~15mであることが好ましく、3~10mであることがより好ましい。本発明の一実施形態において、スクリュー直径Dは、生産量に応じて適宜調整できるが、通常、10~100mであることが好ましく、30~80mであることがより好ましい。かような範囲であることによって、コストを低減でき、設置スペースの場所も小さくすることができるとの観点で好ましい。さらには各スクリューエレメントのデザインと組み合わせパターンによって、より複雑に混練条件を設定でき、各バレルにおける機能性もそれぞれ付与することが可能となっている。
【0074】
本願においては、上記の製造方法によって製造されてなる、バイオマスポリオレフィン複合材料も提供される。
【0075】
本発明の一実施形態において、本発明のバイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法によって得られたバイオマスポリオレフィン複合材料のメルトフローレート(MFR)は、成形加工、特に射出成形での加工性の観点から、3g/10min以上であることが好ましく、5g/10min以上であることがより好ましく、10g/10min以上であることがさらに好ましい。上限としては、20g/10min以下、あるいは、15g/10min以下程度である。かような範囲であることによって、得られたバイオマスポリオレフィン複合材料単一での成形、または、他の希釈樹脂とのドライブレンド材料での射出成形も良好になり、汎用性の高い材料となり得る。本発明のバイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法によって得られたバイオマスポリオレフィン複合材料のメルトフローレート(MFR)はどの基準に準拠してもよいが、好ましくは実施例に記載の方法に準拠する。
【0076】
本発明の一実施形態において、本発明のバイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法によって得られたバイオマスポリオレフィン複合材料の熱流動開始温度は、成形加工性及びバイオマスの劣化、ガス化及び炭化を抑制する観点から、198℃未満であることが好ましく、190℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。下限としては、140℃以上、あるいは、150℃以上程度である。本発明のバイオマスポリオレフィン複合材料の製造方法によって得られたバイオマスポリオレフィン複合材料の熱流動開始温度は、どの基準に準拠してもよいが、好ましくは実施例に記載の方法に準拠する。
【0077】
本願においては、(A)第1のポリオレフィンと;(B)無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ジクロロマレイン酸、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘット酸、無水トリメット酸、および無水ピロメリット酸からなる群から選択される少なくとも1種で変性した変性ポリオレフィンと;(D)木質系バイオマスと;を含む、バイオマスポリオレフィン複合材料における、(C)有機過酸化物および第2のポリオレフィンを含むマスターバッチの流動性向上剤としての使用との発明も提供される。かかる発明の説明は、上記の説明が同様に妥当するので省略する。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の代表的な実施形態を示し、本発明につきさらに説明するが、無論、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、実施例中において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
【0079】
<原材料>
(A):ランダムポリプロピレン(プロピレンとエチレンとのランダムコポリマー)(株式会社プライムポリマー製、プライムポリプロ(登録商標)J3021-GR、MFR=33g/10min(JIS K7210:1999(230℃,2.16kgf))、密度=900kg/m3、荷重たわみ温度78℃)、
(B):無水マレイン酸変性ポリプロピレン(理研ビタミン株式会社製、リケエイド(登録商標)MG-400P、酸価=41.2mgKOH/g)、
(C):有機過酸化物マスターバッチ(株式会社ロンビック製 PPM100、ベース樹脂PP/PE、有機過酸化物配合量=3%)(ポリプロピレン、ポリエチレンの複合体に有機過酸化物が練りこまれているペレットであり、200℃以上での利用を推奨しているもの)、
(D):木粉(リグニンとセルロースとを含む)(独国レッテンマイヤー社製、LIGNOCEL(登録商標) C100、100メッシュパス品、気乾)。
【0080】
<実施例1>
目的物(バイオマスポリオレフィン複合材料)が表1の実施例1の組成となるように、(A)、(B)および(C)成分を混合し、一方、目的物(バイオマスポリオレフィン複合材料)が表1の組成となるように(D)成分を準備し、それぞれ、別々の重量制御フィーダーから同方向回転二軸混練押出装置(以下、二軸混練押出装置)のホッパーシュートに投入した。なお、(A)成分、(B)成分および(C)成分ならびに(D)成分が入る、ホッパーシュートの場所は同じで、重量制御フィーダーが別々に2個備えられている。
【0081】
かように作製された混合物を、以下の条件で、二軸混練押出装置でサイドフィーダーから水分を放出しながら混練を行ってバイオマスポリオレフィン複合材料(高濃度リグノセルロース含有オレフィン複合材料)を製造した。
【0082】
なお、(D)成分に関しては、事前に以下の方法で含水率を測定し、含水量を考慮した上での気乾重量を投入した。すなわち事前乾燥は行わないで使用した。
【0083】
(混練条件)
L/D=56、
スクリュー回転数=240rpm、
バレルの設定温度:材料投入部80℃、樹脂溶解部200℃、大気開放部190℃、混練部190℃、真空脱気部120℃、圧縮部190℃、ダイヘッド195℃。
【0084】
(含水率測定方法)
含水率は、カールフィッシャー水分測定装置(水分気化装置併用(窒素ガスキャリア))、測定温度:120℃)にて測定した。
【0085】
<比較例1>
表1の比較例1の組成となるようにした以外は、実施例1と同様に実験を行った。
【0086】
<物性評価>
実施例、比較例で作製したバイオマスポリオレフィン複合材料 約100gを真空乾燥機にて100℃4時間乾燥して使用し、評価用試料とした。
【0087】
(MFR)
バイオマスポリオレフィン複合材料のMFR(メルトフローレート)は、ASTM D1238準拠(190℃、10kg荷重)にて行った。
【0088】
(熱流動開始温度)
熱流動開始温度は、JIS K7210:1999の附属書C(熱可塑性プラスチックの流れ試験方法)に準拠し、定試験力押出形フローテスタ(昇温法試験)にて測定した。
【0089】
【0090】
なお、上記で説明した実施形態、実施例の全ての組み合わせが、本明細書中に開示されているものとみなす。
【符号の説明】
【0091】
1 ホッパーシュート、
2 大気開放ベント金型、
3 サイドフィーダー、
4 真空ベント金型、
5 ダイヘッド、
6 材料投入部、
7 樹脂溶解部、
8 大気開放部、
9 混練部、
10 真空脱気部、
11 圧縮部、
12 サイドフィーダー。