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特許7340301ワイヤ張力調整方法及びワイヤ張力調整装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ワイヤ張力調整方法及びワイヤ張力調整装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
H01L21/60 301J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022563905
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2021038988
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-54947(JP,A)
【文献】再公表特許第2018/168888(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディングヘッドに回転自在に取り付けられて先端が上下方向に移動可能なボンディングアームと、
前記ボンディングアームに取り付けられ、前記先端に保持されたボンディングツールに挿通されたワイヤの把持、解放を行うワイヤクランパと、
空気流によって前記ワイヤに張力を印加するワイヤテンショナと、
前記ワイヤテンショナに供給する空気の流量を検出する空気流量検出器と、
前記ボンディングアームの前記先端の高さ位置を検出する高さ位置検出器と、
前記ボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントを発生するばね部材と、を含むワイヤボンディング装置の前記ワイヤに印加される張力を調整するワイヤ張力調整方法であって、
前記ワイヤクランパで前記ワイヤを把持した状態で前記ワイヤテンショナに空気を供給し、前記高さ位置検出器によって、前記ワイヤの張力による前記ボンディングアームの回転方向の回転モーメントと前記ばね部材による前記ボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントとが釣り合う前記ボンディングアームの前記先端の前記高さ位置を検出する高さ検出工程と、
検出した前記高さ位置に基づいて前記ワイヤテンショナに供給する空気の流量を調整することにより前記ワイヤに印加される張力を調整する調整工程と、を含むこと、
を特徴とするワイヤ張力調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤ張力調整方法であって、
前記高さ検出工程は、前記ワイヤテンショナに供給する空気の流量を基準空気流量として前記ボンディングアームの前記先端の前記高さ位置を検出し、
前記調整工程は、検出した前記ボンディングアームの前記先端の前記高さ位置と、前記ボンディングアームの前記先端の基準高さ位置との比率に基づいて、前記ワイヤテンショナに供給する空気の流量を補正して、前記ワイヤに印加される張力を調整すること、
を特徴とするワイヤ張力調整方法。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤ張力調整方法であって、
前記調整工程の後、補正した流量の空気を前記ワイヤテンショナに供給して前記高さ検出工程を実行し、検出した前記ボンディングアームの前記先端の前記高さ位置と前記基準高さ位置との差が閾値範囲を超えている場合に、前記高さ検出工程と、前記調整工程を再度実行すること、
を特徴とするワイヤ張力調整方法。
【請求項4】
請求項1に記載のワイヤ張力調整方法であって、
前記高さ検出工程は、前記ワイヤテンショナに供給する空気の複数の流量において前記ボンディングアームの前記先端の前記高さ位置を複数回検出し、
前記調整工程は、各流量において検出した前記ボンディングアームの前記先端の各前記高さ位置と、各流量における前記ボンディングアームの前記先端の各基準高さ位置との各比率を算出し、
算出した各前記比率に基づいて前記ワイヤテンショナに供給する空気の各流量を補正し、補正した各流量に対する前記ボンディングアームの前記先端の各前記基準高さ位置を規定する近似曲線を生成し、
生成した前記近似曲線に基づいて前記ワイヤに印加される張力を調整すること、
を特徴とするワイヤ張力調整方法。
【請求項5】
請求項4に記載のワイヤ張力調整方法であって、
前記ワイヤテンショナに補正した各流量の空気を供給して前記ボンディングアームの前記先端の各前記高さ位置を検出し、各流量において検出した各前記高さ位置と各流量における各前記基準高さ位置とのそれぞれの差が各閾値範囲を超えている場合に、前記高さ検出工程と、前記調整工程を再度実行すること、
を特徴とするワイヤ張力調整方法。
【請求項6】
ボンディングヘッドに回転自在に取り付けられて先端が上下方向に移動可能なボンディングアームと、
前記ボンディングアームに取り付けられ、前記先端に保持されたボンディングツールに挿通されたワイヤの把持、解放を行うワイヤクランパと、
空気流によって前記ワイヤに張力を印加するワイヤテンショナと、
前記ワイヤテンショナに供給する空気の流量を検出する空気流量検出器と、
前記ボンディングアームの前記先端の高さ位置を検出する高さ位置検出器と、
前記ボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントを発生するばね部材と、を含むワイヤボンディング装置の前記ワイヤに印加される張力を調整するワイヤ張力調整方法であって、
前記ワイヤクランパで前記ワイヤを把持した状態で、前記ワイヤテンショナに供給する空気の流量を変化させながら、前記高さ位置検出器によって、前記ワイヤの張力による前記ボンディングアームの回転方向の回転モーメントと前記ばね部材による前記ボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントとが釣り合う前記ボンディングアームの前記先端の複数の前記高さ位置と空気の複数の流量とを検出する検出工程と、
検出した各流量に対する検出した前記ボンディングアームの前記先端の各前記高さ位置を規定する近似曲線を生成し、生成した前記近似曲線に基づいて前記ワイヤに印加される張力を調整する調整工程と、を含むこと、
を特徴とするワイヤ張力調整方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のワイヤ張力調整方法であって、
前記ばね部材は、2枚のばね板を十字型に交差させた十字板ばねであり、前記ボンディングアームは2枚の前記ばね板の交差する線に沿った軸の回りに回転自在に前記ボンディングヘッドに取り付けられていること、
を特徴とするワイヤ張力調整方法。
【請求項8】
ボンディングヘッドに回転自在に取り付けられて先端が上下方向に移動可能なボンディングアームと、
前記ボンディングアームに取り付けられ、前記先端に保持されたボンディングツールに挿通されたワイヤの把持、解放を行うワイヤクランパと、
空気流によって前記ワイヤに張力を印加するワイヤテンショナと、
前記ワイヤテンショナに供給する空気の流量を検出する空気流量検出器と、
前記ボンディングアームの前記先端の高さ位置を検出する高さ位置検出器と、
前記ボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントを発生するばね部材と、を含むワイヤボンディング装置に用いられ、
前記ワイヤに印加される張力を調整するワイヤ張力調整装置であって、
前記ワイヤクランパで前記ワイヤを把持した状態で前記ワイヤテンショナに空気を供給し、前記高さ位置検出器によって、前記ワイヤの張力による前記ボンディングアームの回転方向の回転モーメントと前記ばね部材による前記ボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントとが釣り合う前記ボンディングアームの前記先端の前記高さ位置を検出し、
検出した前記高さ位置に基づいて前記ワイヤテンショナに供給する空気の流量を調整することにより前記ワイヤに印加される張力を調整すること、
を特徴とするワイヤ張力調整装置。
【請求項9】
請求項8に記載のワイヤ張力調整装置であって、
前記ワイヤテンショナに供給する空気の流量を基準空気流量として前記高さ位置検出器によって前記ボンディングアームの前記先端の前記高さ位置を検出し、
検出した前記ボンディングアームの前記先端の前記高さ位置と、前記ボンディングアームの前記先端の基準高さ位置との比率に基づいて、前記ワイヤテンショナに供給する空気の流量を補正して、前記ワイヤに印加される張力を調整すること、
を特徴とするワイヤ張力調整装置。
【請求項10】
請求項9に記載のワイヤ張力調整装置であって、
前記空気流量検出器で検出した前記ワイヤテンショナに供給する空気の複数の流量において前記高さ位置検出器で前記ボンディングアームの前記先端の前記高さ位置を複数回検出し、
各流量において検出した前記ボンディングアームの前記先端の各前記高さ位置と、各流量における前記ボンディングアームの前記先端の各前記基準高さ位置との各比率を算出し、
算出した各前記比率に基づいて前記ワイヤテンショナに供給する空気の各流量を補正し、補正した各流量に対する前記ボンディングアームの前記先端の各前記基準高さ位置を規定する近似曲線を生成し、
生成した前記近似曲線に基づいて前記ワイヤに印加される張力を調整すること、
を特徴とするワイヤ張力調整装置。
【請求項11】
ボンディングヘッドに回転自在に取り付けられて先端が上下方向に移動可能なボンディングアームと、
前記ボンディングアームに取り付けられ、前記先端に保持されたボンディングツールに挿通されたワイヤの把持、解放を行うワイヤクランパと、
空気流によって前記ワイヤに張力を印加するワイヤテンショナと、
前記ワイヤテンショナに供給する空気の流量を検出する空気流量検出器と、
前記ボンディングアームの前記先端の高さ位置を検出する高さ位置検出器と、
前記ボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントを発生するばね部材と、を含むワイヤボンディング装置に用いられ、
前記ワイヤに印加される張力を調整するワイヤ張力調整装置であって、
前記ワイヤクランパで前記ワイヤを把持した状態で、前記ワイヤテンショナに供給する空気の流量を変化させながら前記高さ位置検出器によって、前記ワイヤの張力による前記ボンディングアームの回転方向の回転モーメントと前記ばね部材による前記ボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントとが釣り合う前記ボンディングアームの前記先端の複数の前記高さ位置を検出するとともに前記空気流量検出器によって前記ワイヤテンショナに供給する空気の複数の流量を検出し、
検出した各流量に対する検出した前記ボンディングアームの前記先端の各前記高さ位置を規定する近似曲線を生成し、生成した前記近似曲線に基づいて前記ワイヤに印加される張力を調整すること、
を特徴とするワイヤ張力調整装置。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか1項に記載のワイヤ張力調整装置であって、
前記ワイヤボンディング装置の前記ばね部材は、2枚のばね板を十字型に交差させた十字板ばねであり、前記ボンディングアームは2枚の前記ばね板の交差する線に沿った軸の回りに回転自在に前記ボンディングヘッドに取り付けられていること、
を特徴とするワイヤ張力調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤボンディング装置のワイヤに印加される張力の調整方法及びワイヤ張力調整装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの電極と基板の電極とを金属のワイヤで接続するワイヤボンディング装置が用いられている。ワイヤボンディング装置では、ボンディング中にワイヤに所定の張力を与えるワイヤテンショナが用いられる。ワイヤテンショナは、スプール側からキャピラリ側にワイヤが貫通するワイヤ通路が設けられ、このワイヤ通路に上向きに空気を流し、上向きの空気流によってワイヤを上方向に引っ張ることによりワイヤに張力を印加する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6149235号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワイヤテンショナによってワイヤに印加される張力は空気の流量によって変化し、流量が多いと張力が大きくなり流量が少ないと張力が小さくなる。
【0005】
ワイヤボンディングにおいて、所定形状のワイヤループ形状を形成するには、ワイヤの張力を所定の大きさに調整することが必要となる。この調整は、ワイヤの一端を電子天秤に固定した状態でワイヤテンショナに空気を流し、空気の流量とワイヤに印加される張力との関係を測定することによって行われることが多い。
【0006】
しかし、ワイヤボンディング装置にワイヤテンショナを組み込んだ後に、ワイヤボンディング装置に電子天秤を取付けてワイヤの張力を測定することが困難な場合がある。この場合、ワイヤテンショナを取り外して張力の調整をすることが必要となり、張力の調整に時間と手間が掛かってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本開示は、ワイヤボンディング装置にワイヤテンショナを組み込んだ状態で簡便にワイヤに印加される張力の調整を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のワイヤ張力調整方法は、ボンディングヘッドに回転自在に取り付けられて先端が上下方向に移動可能なボンディングアームと、ボンディングアームに取り付けられ、先端に保持されたボンディングツールに挿通されたワイヤの把持、解放を行うワイヤクランパと、空気流によってワイヤに張力を印加するワイヤテンショナと、ワイヤテンショナに供給する空気の流量を検出する空気流量検出器と、ボンディングアームの先端の高さ位置を検出する高さ位置検出器と、ボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントを発生するばね部材と、を含むワイヤボンディング装置のワイヤに印加される張力を調整するワイヤ張力調整方法であって、ワイヤクランパでワイヤを把持した状態でワイヤテンショナに空気を供給し、高さ位置検出器によって、ワイヤの張力によるボンディングアームの回転方向の回転モーメントとばね部材によるボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントとが釣り合うボンディングアームの先端の高さ位置を検出する高さ検出工程と、検出した高さ位置に基づいてワイヤテンショナに供給する空気の流量を調整することによりワイヤに印加される張力を調整する調整工程と、を含むこと、を特徴とする。
【0009】
このように、本開示のワイヤ張力調整方法は、ボンディングアームの先端の高さ位置を検出し、検出した高さ位置に基づいてワイヤテンショナに供給する空気の流量を調整してワイヤに印加される張力を調整するので、ワイヤボンディング装置にワイヤテンショナを組み込んだ状態で簡便にワイヤに印加される張力の調整を行うことができる。
【0010】
本開示のワイヤ張力調整方法において、高さ検出工程は、ワイヤテンショナに供給する空気の流量を基準空気流量としてボンディングアームの先端の高さ位置を検出し、調整工程は、検出したボンディングアームの先端の高さ位置と、ボンディングアームの先端の基準高さ位置との比率に基づいて、ワイヤテンショナに供給する空気の流量を補正して、ワイヤに印加される張力を調整してもよい。
【0011】
これにより、簡便にワイヤ張力の調整を行うことができる。
【0012】
本開示のワイヤ張力調整方法において、調整工程の後、補正した流量の空気をワイヤテンショナに供給して高さ検出工程を実行し、検出したボンディングアームの先端の高さ位置と基準高さ位置との差が閾値範囲を超えている場合に、高さ検出工程と、調整工程を再度実行してもよい。
【0013】
これにより、より正確にワイヤに印加される張力の調整を行うことができる。
【0014】
本開示のワイヤ張力調整方法において、高さ検出工程は、ワイヤテンショナに供給する空気の複数の流量においてボンディングアームの先端の高さ位置を複数回検出し、調整工程は、各流量において検出したボンディングアームの先端の各高さ位置と、各流量におけるボンディングアームの先端の各基準高さ位置との各比率を算出し、算出した各比率に基づいてワイヤテンショナに供給する空気の各流量を補正し、補正した各流量に対するボンディングアームの先端の各基準高さ位置を規定する近似曲線を生成し、生成した近似曲線に基づいてワイヤに印加される張力を調整してもよい。
【0015】
このように、ワイヤテンショナに供給する空気の流量に対するボンディングアーム先端の高さ位置を規定する近似曲線を生成し、生成した近似曲線に基づいてワイヤの張力を調整するので、ワイヤの線径、材質などに応じてボンディングに必要なワイヤの張力を設定することができる。
【0016】
本開示のワイヤ張力調整方法において、ワイヤテンショナに補正した各流量の空気を供給してボンディングアームの先端の各高さ位置を検出し、各流量において検出した各高さ位置と各流量における各基準高さ位置とのそれぞれの差が各閾値範囲を超えている場合に、高さ検出工程と、調整工程を再度実行してもよい。
【0017】
これにより、より正確にワイヤに印加される張力の調整を行うことができる。
【0018】
本開示のワイヤ張力調整方法は、ボンディングヘッドに回転自在に取り付けられて先端が上下方向に移動可能なボンディングアームと、ボンディングアームに取り付けられ、先端に保持されたボンディングツールに挿通されたワイヤの把持、解放を行うワイヤクランパと、空気流によってワイヤに張力を印加するワイヤテンショナと、ワイヤテンショナに供給する空気の流量を検出する空気流量検出器と、ボンディングアームの先端の高さ位置を検出する高さ位置検出器と、ボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントを発生するばね部材と、を含むワイヤボンディング装置のワイヤに印加される張力を調整するワイヤ張力調整方法であって、ワイヤクランパでワイヤを把持した状態で、ワイヤテンショナに供給する空気の流量を変化させながら、高さ位置検出器によって、ワイヤの張力によるボンディングアームの回転方向の回転モーメントとばね部材によるボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントとが釣り合うボンディングアームの先端の複数の高さ位置と空気の複数の流量とを検出する検出工程と、検出した各流量に対する検出したボンディングアームの先端の各高さ位置を規定する近似曲線を生成し、生成した近似曲線に基づいてワイヤに印加される張力を調整する調整工程と、を含むこと、を特徴とする。
【0019】
このように、ワイヤテンショナに供給する空気の流量とボンディングアームの先端の高さ位置とを同時に検出してワイヤテンショナに供給する空気の流量に対するボンディングアーム先端の高さ位置を規定する近似曲線を生成するので、簡便に近似曲線を生成することができる。また、生成した近似曲線に基づいてワイヤの張力を調整するので、ワイヤの線径、材質などに応じてボンディングに必要なワイヤの張力を設定することができる。
【0020】
本開示のワイヤ張力調整方法において、ばね部材は、2枚のばね板を十字型に交差させた十字板ばねであり、ボンディングアームは2枚のばね板の交差する線に沿った軸の回りに回転自在にボンディングヘッドに取り付けられてもよい。
【0021】
これにより、簡便な構成でボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントを発生するばね部材を構成することができる。
【0022】
本開示のワイヤ張力調整装置は、ボンディングヘッドに回転自在に取り付けられて先端が上下方向に移動可能なボンディングアームと、ボンディングアームに取り付けられ、先端に保持されたボンディングツールに挿通されたワイヤの把持、解放を行うワイヤクランパと、空気流によってワイヤに張力を印加するワイヤテンショナと、ワイヤテンショナに供給する空気の流量を検出する空気流量検出器と、ボンディングアームの先端の高さ位置を検出する高さ位置検出器と、ボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントを発生するばね部材と、を含むワイヤボンディング装置に用いられ、ワイヤに印加される張力を調整するワイヤ張力調整装置であって、ワイヤクランパでワイヤを把持した状態でワイヤテンショナに空気を供給し、高さ位置検出器によって、ワイヤの張力によるボンディングアームの回転方向の回転モーメントとばね部材によるボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントとが釣り合うボンディングアームの先端の高さ位置を検出し、検出した高さ位置に基づいてワイヤテンショナに供給する空気の流量を調整することによりワイヤに印加される張力を調整すること、を特徴とする。
【0023】
本開示のワイヤ張力調整装置において、ワイヤテンショナに供給する空気の流量を基準空気流量として高さ位置検出器によってボンディングアームの先端の高さ位置を検出し、検出したボンディングアームの先端の高さ位置と、ボンディングアームの先端の基準高さ位置との比率に基づいて、ワイヤテンショナに供給する空気の流量を補正して、ワイヤに印加される張力を調整してもよい。
【0024】
本開示のワイヤ張力調整装置において、空気流量検出器で検出したワイヤテンショナに供給する空気の複数の流量において高さ位置検出器でボンディングアームの先端の高さ位置を複数回検出し、各流量において検出したボンディングアームの先端の各高さ位置と、各流量におけるボンディングアームの先端の各基準高さ位置との各比率を算出し、算出した各比率に基づいてワイヤテンショナに供給する空気の各流量を補正し、補正した各流量に対するボンディングアームの先端の各基準高さ位置を規定する近似曲線を生成し、生成した近似曲線に基づいてワイヤに印加される張力を調整してもよい。
【0025】
本開示のワイヤ張力調整装置は、ボンディングヘッドに回転自在に取り付けられて先端が上下方向に移動可能なボンディングアームと、ボンディングアームに取り付けられ、先端に保持されたボンディングツールに挿通されたワイヤの把持、解放を行うワイヤクランパと、空気流によってワイヤに張力を印加するワイヤテンショナと、ワイヤテンショナに供給する空気の流量を検出する空気流量検出器と、ボンディングアームの先端の高さ位置を検出する高さ位置検出器と、ボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントを発生するばね部材と、を含むワイヤボンディング装置に用いられ、ワイヤに印加される張力を調整するワイヤ張力調整装置であって、ワイヤクランパでワイヤを把持した状態で、ワイヤテンショナに供給する空気の流量を変化させながら高さ位置検出器によって、ワイヤの張力によるボンディングアームの回転方向の回転モーメントとばね部材によるボンディングアームの回転方向と逆方向の回転モーメントとが釣り合うボンディングアームの先端の複数の高さ位置を検出するとともに空気流量検出器によってワイヤテンショナに供給する空気の複数の流量を検出し、検出した各流量に対する検出したボンディングアームの先端の各高さ位置を規定する近似曲線を生成し、生成した近似曲線に基づいてワイヤに印加される張力を調整すること、を特徴とする。
【0026】
本開示のワイヤ張力調整装置において、ワイヤボンディング装置のばね部材は、2枚のばね板を十字型に交差させた十字板ばねであり、ボンディングアームは2枚のばね板の交差する線に沿った軸の回りに回転自在にボンディングヘッドに取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本開示は、ワイヤボンディング装置にワイヤテンショナを組み込んだ状態で簡便にワイヤに印加される張力の調整を行うができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態のワイヤ張力調整装置の構成とワイヤボンディング装置の構成とを示す系統図である。
図2図1に示すワイヤボンディング装置のボンディングアームの構成を示す斜視図である。
図3図2に示す十字板ばねの構成を示す拡大斜視図である。
図4図1に示すワイヤテンショナの断面図である。
図5】実施形態のワイヤ張力検出装置が検出する各項目を示した系統図である。
図6】ボンディングアームの回転方向の中立位置θ0からの回転角度θに対する十字板バネの発生する回転モーメントM1の変化を示すグラフである。
図7】ボンディングアームの先端の高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hに対する十字板ばねの発生する回転モーメントM1とワイヤに印加される張力Tとの変化を示すグラフである。
図8】ワイヤテンショナに供給する空気の流量Gに対するボンディングアームの先端の高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hとワイヤに印加される張力Tとの変化を示すグラフである。
図9】実施形態のワイヤ張力調整装置の動作を示すフローチャートである。
図10】実施形態のワイヤ張力調整装置の第1動作の詳細を示すフローチャートである。
図11】ワイヤテンショナに供給する空気の流量Gに対するボンディングアームの先端の高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hの変化とワイヤに印加される張力Tの変化とを示すグラフである。
図12】実施形態のワイヤ張力調整装置の第2動作を示すフローチャートである。
図13】ワイヤテンショナに供給する空気の流量Gに対するボンディングアームの先端の高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hの変化とワイヤに印加される張力Tの変化とを示すグラフである。
図14】実施形態のワイヤ張力調整装置の近似曲線のチェック動作を示すフローチャートである。
図15】実施形態のワイヤ張力調整装置の第3動作を示すフローチャートである。
図16図15に示す第3動作の詳細を示すフローチャートである。
図17】ワイヤテンショナに供給する空気の流量Gに対するボンディングアームの先端の高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hの変化とワイヤに印加される張力Tの変化とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら実施形態のワイヤ張力調整装置60とワイヤ張力調整装置60が取り付けられるワイヤボンディング装置100の構成について説明する。最初に図1を参照しながらワイヤボンディング装置100の構成について説明する。ワイヤボンディング装置100は、ボンディングツールであるキャピラリ30によって半導体チップ32の電極または基板31の電極の上にワイヤ18をボンディングする。
【0030】
図1に示すように、ワイヤボンディング装置100は、ベース10と、XYテーブル11と、ボンディングヘッド12と、Z方向モータ13と、ボンディングアーム14と、超音波振動子16と、キャピラリ30と、ワイヤクランパ17と、ボンディングステージ19と、ワイヤテンショナ40と、ワイヤスプール50と、エアガイド55と、制御部65と、を備えている。尚、以下の説明では、ボンディングアーム14の延びる方向をY方向、水平面でY方向と直角方向をX方向、上下方向をZ方向として説明する。また、ボンディングアーム14の側を前方またはY方向マイナス側、ボンディングヘッド12の側を後方またY方向プラス側、図1において紙面手前側をX方向プラス側、紙面の向こう側をX方向マイナス側、上方向をZ方向プラス側、下方向をZ方向マイナス側として説明する。
【0031】
XYテーブル11は、ベース10の上に取り付けられて上側に搭載される機器をXY方向に移動させる。
【0032】
ボンディングヘッド12は、XYテーブル11の上に取り付けられてXYテーブル11によってXY方向に移動する。ボンディングヘッド12には、ボンディングアーム14がばね部材である十字板ばね20によって回転軸23の周りに回転自在に取り付けられ、内部にはZ方向モータ13が取り付けられている。
【0033】
Z方向モータ13は、ボンディングヘッド12の内部に固定される固定子13aと、ボンディングアーム14の後端部14rから後方に向かって延びる可動子取付け板14bに固定子13aと対向するように取り付けられた可動子14mとで構成されている。
【0034】
ボンディングアーム14は、本体14aと、本体14aのY方向前方に取りけられた超音波ホーン15とで構成されている。超音波ホーン15の前端15f、つまり、ボンディングアーム14の先端14fにはボンディングツールであるキャピラリ30が取付けられている。本体14aの前端部には、超音波振動子16が取付けられている。超音波ホーン15は、ボンディングアーム14の前端部に取り付けられた超音波振動子16の超音波振動を増幅して前端15fに取り付けられたキャピラリ30を超音波加振する。キャピラリ30には内部に上下方向に貫通する貫通孔が設けられており、貫通孔にはワイヤ18が挿通されている。
【0035】
また、ボンディングアーム14の前端側の上面には、ワイヤクランパ17が取り付けられている。ワイヤクランパ17は、キャピラリ30の取り付けられている超音波ホーン15の前端15fまで延びて、先端部がX方向に開閉してワイヤ18の把持、開放を行う。
【0036】
ボンディングステージ19は、上面に半導体チップ32が実装された基板31を吸着固定するとともに、図示しないヒータによって基板31と半導体チップ32とを加熱する。
【0037】
ベース10に固定された上部フレーム10aには、キャピラリ30にワイヤ18を供給するワイヤスプール50と、ワイヤスプール50から繰り出されたワイヤ18の送り方向をZ方向に変換するエアガイド55とが取り付けられている。
【0038】
次に図2、3を参照しながらボンディングアーム14と十字板ばね20の詳細構造について説明する。
【0039】
図2に示すように、本体14aの後端部14rは、X方向プラス側とマイナス側とにそれぞれ広がる三角形の取付け用リブ14cが設けられている。取付け用リブ14cの後端には、十字板ばね20が取付けられる取付け座14dが設けられており、ボンディングアーム14の後端部14rは、取付け座14dに取付けられた十字板ばね20によってボンディングヘッド12のY方向前方の構造部材12aに取付けられている。また、本体14aの後端部14rからY方向後方に向かって板状のZ方向モータ13の可動子取付け板14bが延びている。可動子取付け板14bには可動子14mが取付けられている。可動子取付け板14bと可動子14mとはボンディングヘッド12の内部に収容されている。
【0040】
図3に示すように、十字板ばね20は、ボルト孔21b、22bが設けられた水平ばね板21と垂直ばね板22とを十字型に交差するように組み合わせたものである。図2に示すように、水平ばね板21の後端(Y方向プラス側)はボンディングヘッド12の構造部材12aにボルト21aによって固定され、先端(Y方向マイナス側)は、ボンディングアーム14の取付け座14dの下面にボルト(図示せず)によって固定されている。また、垂直ばね板22の上端はボルト22aによってボンディングアーム14の取付け座14dの後端の垂直面に固定されており、下端はボンディングヘッド12の構造部材12aにボルト(図示せず)で固定されている。そして、水平ばね板21と垂直ばね板22との交差するX方向に延びる線がボンディングアーム14の回転軸23となり、十字板ばね20はボンディングアーム14を回転軸23の周りに回転自在に支持する。
【0041】
このように、ボンディングアーム14は、後端部14rがX方向に延びる回転軸23の回りに回転自在に取付けられている。また、ボンディングヘッド12の内部には、可動子14mと対向するように固定子13aが取り付けられている。図1中の矢印91に示すように、固定子13aが可動子14mを十字板ばね20の回転軸23の周りに回転させると、超音波ホーン15の前端15fに取り付けられたキャピラリ30は矢印92に示すようにZ方向に移動する。
【0042】
次に図4を参照しながら空気流によってワイヤ18に張力Tを印加するワイヤテンショナ40の構造の詳細について説明する。図4に示すように、ワイヤテンショナ40は、本体部41と、上ディフューザ部45と、筒部43と、ノズル部47と、下ディフューザ部48と、接続ポート49とで構成されている。本体部41の中央には、接続ポート49に連通するキャビティ42が設けられている。
【0043】
上ディフューザ部45と、筒部43と、ノズル部47と、下ディフューザ部48とにはそれぞれ中心にワイヤ18が挿通する貫通穴が設けられている。上ディフューザ部45と、筒部43と、ノズル部47と、下ディフューザ部48は、各中心の貫通穴が連通するように上から下に向かって順次本体部41に接続されている。各貫通穴は上下方向に連通してワイヤ通路44を構成する。
【0044】
筒部43は下部が本体部41のキャビティ42に連通し上部が本体部41の上面に延びるように本体部41の内部に取り付けられている。ノズル部47は、キャビティ42の下端から下側に向かって延びるように本体部41の内部に取り付けられている。そして、筒部43の下端とノズル部47の上端にはキャビティ42に連通する隙間46が設けられている。
【0045】
図4中の矢印94に示すように接続ポート49からキャビティ42に流入した空気の一部は、隙間46から筒部43の貫通穴に流入し、上ディフューザ部45の貫通穴を上方向に流れ、上ディフューザ部45の上端から大気に放出される。また、一部の空気は隙間46からノズル部47の貫通穴に流入して下側に向かって流れ、下ディフューザ部48の下端から大気に放出される。ノズル部47の貫通穴の直径は筒部43の貫通穴の直径よりも小さいので、接続ポート49から流入した空気の大部分は、ワイヤ通路44を通って上方向に流れる。この上方向に流れる空気の流体抵抗により図4中の矢印95に示すようにワイヤ18に対して上向きの張力Tが印加される。従って、ワイヤテンショナ40に流入する空気の流量Gが大きいほどワイヤ18に印加される張力Tは大きくなる。
【0046】
図1に戻って、ボンディングアーム14の本体14aの後端部14rからY方向後方に向かって延びる可動子取付け板14bの側面に沿うように、ボンディングヘッド12の内部にはボンディングアーム14の先端14fの高さ位置Hを検出する高さ位置検出器71が取り付けられている。
【0047】
また、ワイヤテンショナ40の接続ポート49に接続される空気配管59には、ワイヤテンショナ40に供給される空気の流量Gを検出する空気流量検出器72と空気の流量Gを調節する空気流量調節弁73とが取り付けられている。
【0048】
ワイヤボンディング装置100は、ボンディングアーム14の先端14fの上下方向の駆動と、XY方向の駆動と、ワイヤクランパ17の開閉と、を制御する制御部65を備えている。制御部65は、内部に情報処理を行うCPU66と制御プログラムや制御データを格納するメモリ67とを含むコンピュータで構成されている。高さ位置検出は71の検出した高さ位置Hは、制御部65に入力され、制御部65は高さ位置検出器71から入力された高さ位置Hに基づいてZ方向モータ13を駆動してボンディングアーム14の先端14fを上下方向に駆動する。また、ボンディングスケジュールに応じてワイヤクランパ17の開閉動作を行う。
【0049】
ワイヤ張力調整装置60は、高さ位置検出器71からの高さ位置Hと、空気流量検出器72の検出した空気の流量Gとに基づいて、空気流量調節弁73を駆動してワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを調整することにより、ワイヤ18に印加される張力Tを調整する。図1に示すようにワイヤ張力調整装置60は、内部に情報処理を行うCPU61と動作プログラムやデータ等を格納するメモリ62とを備えるコンピュータで構成される。また、ワイヤ張力調整装置60は、制御部65と接続されてデータの授受を行う。
【0050】
次に図5から図8を参照しながら、高さ位置検出器71で検出した高さ位置Hに基づいて、ワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを調整してワイヤ18に印加される張力Tを調整する原理について説明する。
【0051】
以下の説明では、図5に示すように、ボンディングアーム14が十字板ばね20から回転モーメントM1を受けずに静止している状態を中立状態として説明する。中立状態では、ボンディングアーム14は、図5に示すように、ほぼ水平の位置でもよいし、少し上下に移動した位置でもよい。後で説明するように、図9図15に示す中立位置調整工程において、ボンディングアーム14が中立状態にある場合に高さ位置検出器71の検出する中立位置H0が0となるように調整される。この際、ボンディングアーム14の回転方向の中立位置θ0も0に調整される。
【0052】
十字板ばね20は、ボンディングアーム14の回転方向と逆方向の回転モーメントM1を発生する。ワイヤボンディング装置100では、十字板ばね20は、図6の実線aに示すように、ボンディングアーム14の回転方向の中立位置θ0からの回転角度θに比例して回転方向と逆方向の回転モーメントM1を発生する。図5に示すように、反時計回りの回転モーメントM1は、回転方向の中立位置θ0からの時計回りの回転角度θと十字板ばね20の回転のばね定数をKmとして下記の式1のようになる。
M1=θ×Km ・・・・・ (式1)
【0053】
図5、6に示すように、ワイヤテンショナ40に空気を流すとワイヤ18には上方向に張力Tが加わる。この際、ワイヤクランパ17を閉としてワイヤクランパ17でワイヤ18を把持すると、ワイヤ18に印加される上方向の張力Tにより、ワイヤクランパ17の先端とボンディングアーム14の先端14fとが上方向に引っ張られ、十字板ばね20には、回転軸23とワイヤ18とのY方向の距離をLとして下記の式2の回転モーメントM2が加わる。回転モーメントM2は、ボンディングアーム14の回転方向の時計回りの回転モーメントである。
M2=T×L ・・・・・ (式2)
【0054】
また、ボンディングアーム14の先端14fが高さ方向の中立位置H0からZ方向に高さ位置Hだけ変位すると、ボンディングアーム14は回転軸23の周りに下記の式4に示す角度だけ時計回りに回転角度θだけ変位する。
θ=H/L ・・・・ (式3)
【0055】
ワイヤテンショナ40に空気を流すとワイヤ18には上方向に張力Tが加わり、ボンディングアーム14の先端14fが高さ位置Hで静止した場合には、ワイヤ18の張力Tによるボンディングアーム14の回転方向の回転モーメントM2と、十字板ばね20によるボンディングアーム14の回転方向と逆方向の回転モーメントM1とは釣り合うので、M1=M2となる。
【0056】
式1、3より
M1=θ×Km=(H/L)×Km ・・・・ (式4)
また、式2、4より、
T=M2/L=M1/L=(H/L)×Km/L
=H×Km/L
=C×H ・・・・・・・・・・ (式5)
ここで、Cは定数である。
よって、
T∝H ・・・・・・・・・・ (式6)
のように、張力Tと高さ位置Hとは比例する。
【0057】
従って、図7の実線b、破線cに示すように、ワイヤ18に印加される張力Tと十字板ばね20の発生する回転モーメントM1は、いずれもボンディングアーム14の先端14fの高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hに比例する。
【0058】
また、ワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gとワイヤ18に印加される張力Tとの間には、図8の実線dに示すような相関関係がある。この相関関係は、例えば、ワイヤテンショナ40の工場出荷時等に予め電子天秤を用いて計測したものである。式5のように張力Tはボンディングアーム14の先端14fの高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hに比例するから、張力Tを式5で高さ位置Hに変換することにより、図8の実線dをワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gに対するボンディングアーム14の先端14fの高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hの相関関数に変換することができる。
【0059】
従って、ある流量Gの空気をワイヤテンショナ40に供給し、高さ位置検出器71でボンディングアーム14の先端14fの高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hを検出し、式5により張力Tに変換して流量Gに対する張力Tを算出することができる。
【0060】
ワイヤ張力調整装置60は、この原理を応用し、予め計測したワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gとワイヤ18に印加される張力Tとの相関関係を図8に示すような空気の流量Gに対するボンディングアーム14の先端14fの高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hの相関関数に変換した特性曲線e(図11参照)をメモリ62の中に格納し、高さ位置検出器71で検出した高さ位置Hと、空気流量検出器72の検出した空気の流量Gとに基づいて、空気流量調節弁73を駆動してワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを調整することにより、ワイヤ18に加わる張力Tを調整する。
【0061】
以下、図9から図11を参照しながらワイヤ張力調整装置60の第1動作について説明する。ワイヤ張力調整装置60はメモリ62の中に図11中に実線で示すワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gに対するボンディングアーム14の先端14fの高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hの相関関係を示す特性曲線eを格納している。特性曲線eは工場出荷時等に予め計測された空気の流量Gに対するワイヤ18の張力Tの特性曲線(図8に示す実線d)を空気の流量Gに対する高さ位置Hの相関関係に変換した曲線である。また、以下の説明では、ワイヤテンショナ40は、図11の一点鎖線fで示すように空気の流量G対して特性曲線eよりも高さ位置Hが小さい特性を有するとして説明する。
【0062】
図9のステップS101に示すように、ワイヤ張力調整装置60のCPU61は、中立位置調整工程を実行する。中立位置調整工程は、ボンディングアーム14を十字板ばね20から回転モーメントM1を受けずに静止している中立状態とする工程である。中立位置調整工程は、例えば、Z方向モータ13を停止してボンディングアーム14がほぼ水平位置で停止するまでボンディングアーム14の上に錘を乗せるようにしてもよい。ワイヤ張力調整装置60のCPU61は高さ位置検出器71で検出した高さ位置Hが一定の値から変化しなくなった場合に中立状態に調整されたと判断して、その際の高さ位置検出器71の出力した高さ位置Hを中立位置H0とする。そして、中立位置H0を高さ位置Hの検出の基準位置として0にセットする。これにより、高さ位置検出器71が検出する高さ位置Hは、ボンディングアーム14の先端14fの高さ方向の中立位置H0からのZ方向の変位量となる。尚、超音波ホーン15にキャピラリ30を取り付けた状態でボンディングアーム14がほぼ水平位置で静止している場合には、ワイヤ張力調整装置60のCPU61は、その状態で高さ位置検出器71から入力された高さ位置Hを中立位置H0とし、中立位置H0を高さ位置Hの検出の基準位置として0にセットする。
【0063】
次にCPU61は、図9のステップS102に進んでボンディングアーム14の先端14fの高さ位置検出工程を実行し、その後、図9のステップS103に進んで調整工程を実行する。高さ位置検出工程は、ワイヤクランパ17でワイヤ18を把持した状態でワイヤテンショナ40に空気を供給してボンディングアーム14の先端14fの高さ位置Hを検出する。調整工程は、検出した高さ位置Hに基づいてワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを調整することによりワイヤ18に印加される張力Tを調整する。以下、図10、11を参照しながら第1動作における高さ位置検出工程と、調整工程の詳細について説明する。図10に記載のステップS201からステップS203が高さ検出工程を示し、ステップS204からステップS206が調整工程を示す。
【0064】
図10のステップS201に示すように、ワイヤ張力調整装置60のCPU61はワイヤクランパ17を閉とする信号をワイヤボンディング装置100の制御部65に出力する。ワイヤボンディング装置100の制御部65は、ワイヤ張力調整装置60からワイヤクランパ17を閉とする信号が入力されたら、ワイヤクランパ17を閉としてワイヤクランパ17によりワイヤ18を把持した状態に保持する。
【0065】
CPU61は、図10のステップS202に進み、空気流量検出器72でワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを検出しながら空気流量調節弁73を駆動して流量Gを図11に示す基準空気流量G1に設定する。ここで、基準空気流量G1は自由に設定することができる。
【0066】
CPU61は、図10のステップS203に進み、高さ位置検出器71からボンディングアーム14の先端14fの高さ位置Hを検出する。先に説明したように、ワイヤテンショナ40に空気を流すとワイヤ18には上方向に張力Tが加わり、ボンディングアーム14の先端14fが高さ位置Hで静止した場合には、ワイヤ18の張力Tによるボンディングアーム14の回転方向の回転モーメントM2と、十字板ばね20によるボンディングアーム14の回転方向と逆方向の回転モーメントM1とは釣り合う。従って、高さ位置検出器71は、ワイヤ18の張力Tによるボンディングアーム14の回転方向の回転モーメントM2と十字板ばね20によるボンディングアーム14の回転方向と逆方向の回転モーメントM1とが釣り合うボンディングアーム14の先端14fの複数の高さ位置を検出する。先に述べたように、ワイヤテンショナ40は、図11の一点鎖線fで示すように空気の流量G対して特性曲線eよりも高さ位置Hが小さい特性を有するので、ワイヤテンショナ40に基準空気流量G1の空気を供給した際に高さ位置検出器71が検出する高さ位置H1は基準高さ位置HS1よりも小さい値となる。ここで、高さ位置H1は、ボンディングアーム14の先端14fの高さ方向の中立位置H0からのZ方向変位である。
【0067】
次にCPU61は、図10のステップS204に進む。CPU61はステップS204において、メモリ62に格納した図11に実線で示す特性曲線eを参照して、ワイヤテンショナ40に基準空気流量G1の空気を供給した際の基準高さ位置HS1を算出する。ここで、基準高さ位置HS1はワイヤ18に印加される張力TS1に対応する。そして、CPU61は、高さ位置検出器71で検出した高さ位置H1と基準高さ位置HS1との比率α1を下記の式6のように算出する。
α1=HS1/H1 ・・・・・・・ (式6)
【0068】
次に、CPU61は、図10のステップS205において、算出した比率α1を用いてワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを補正する。例えば、図11に示すように、ワイヤテンショナ40によりワイヤ18に張力TS1を印加する場合には、ワイヤテンショナ40に供給する空気の流量を流量(G1×α1)に補正する。そして、図10のステップS206において、ワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを補正した流量(G1×α1)とする。これにより、ワイヤ18には、張力TS1が印加され、その際に高さ位置検出器71の検出する高さ位置Hは基準高さ位置HS1となる。これにより、ワイヤ18に印加される張力を張力TS1に調整することができる。
【0069】
CPU61は、図10のステップS206を実行すると調整工程を終了する。図10に示す第1動作では、調整工程の後に図10のステップS207で空気の流量Gを補正した後の高さ位置Hを検出し、図10のステップS208で検出した高さ位置Hと基準高さ位置HS1との差が閾値範囲内かどうか判断する。ここで、閾値範囲は、例えば、図11に破線d1、d2で示す範囲であり、補正後の空気の流量(G1×α1)において、CPU61は、検出した高さ位置Hが上限閾値HS11と下限閾値HS12の間にあるかどうかを判断する。CPU61は、図10のステップS208でYESと判断した場合には、第1動作を終了する。そして、必要な張力Tが指定された場合には、図8の実線dに示すような、予め測定したワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gとワイヤ18に印加される張力Tとの相関関係を示す特性曲線から、ワイヤ18に指定された張力Tを印加する空気流量Gを算出し、算出した空気の流量Gに比率α1を掛けて流量Gを流量(G×α1)に補正してワイヤテンショナ40に供給する。
【0070】
一方、CPU61は、図10のステップS208でNOと判断した場合には、図10のステップS201に戻って高さ検出工程と調整工程とを繰り返して実行する。これにより、より正確にワイヤ18に印加される張力Tの調整を行うことができる
【0071】
以上、説明したように、ワイヤ張力調整装置60は、高さ位置検出器71で検出した高さ位置Hと、空気流量検出器72で検出した空気の流量Gとに基づいて、ワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを調整することにより、ワイヤ18に加わる張力Tを調整することができる。このため、ワイヤボンディング装置100にワイヤテンショナ40を組み込んだ状態で簡便にワイヤ18に印加される張力Tの調整を行うことができる。
【0072】
次に図12、13を参照しながらワイヤ張力調整装置60の第2動作について説明する。先に図9図11を参照して説明した第1動作と同様の動作については簡単に説明する。ワイヤ張力調整装置60はメモリ62の中に図13中に実線で示すワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gに対するボンディングアーム14の先端14fの高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hの相関関係を示す特性曲線pを格納している。特性曲線pは工場出荷時等に予め計測された空気の流量Gに対するワイヤ18の張力Tの特性曲線(図8に示す実線d)を空気の流量Gに対する高さ位置Hの相関関係に変換した曲線である。第2動作では、図12に示すステップS301からS306が高さ検出工程であり、ステップS307~S314が調整工程である。第2動作は、高さ検出工程でワイヤテンショナ40に供給する空気の複数の流量Gnにおいてボンディングアーム14の先端14fの高さ位置Hnを複数回検出し、調整工程で各流量Gnにおいて検出したボンディングアーム14の先端14fの各高さ位置Hnと、各流量Gnにおけるボンディングアーム14の先端14fの各基準高さ位置HSnとの各比率αnを算出し、算出した各比率αnに基づいてワイヤテンショナ40に供給する各流量Gnを補正し、補正した各流量(Gn×αn)に対するボンディングアーム14の先端14fの各基準高さ位置HSnを規定する近似曲線qを生成し、生成した近似曲線qに基づいてワイヤ18に印加される張力Tを調整する。以下、各工程の詳細について説明する。尚、以下の説明では、5つの流量G1~G5で複数の高さ位置H1~H5を検出する場合について説明する。ここで、図13に示すように、複数の高さ位置H1~H5はワイヤ18に印加される張力T1~T5に対応し、複数の基準高さ位置HS1~HS5はワイヤ18に印加される張力TS1~TS5に対応する。
【0073】
CPU61は、高さ検出工程を開始する。CPU61は、図12のステップS301に示すように、カウンタNを初期値の1にセットする。そして、図12のステップS302に進んで、先に説明した図10のステップS201と同様、ワイヤクランパ17を閉としてワイヤクランパ17でワイヤ18を把持した状態とする。
【0074】
次に、CPU61は、ワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを図13に示す複数の流量G1~G5の内の最初の流量G1に設定する。そして、CPU61は、図12のステップS304に進んで、高さ位置検出器71でその際の高さ位置H1を検出し、流量G1とともにメモリ62に格納する。そしてCPU61は、図12のステップS305に進んで、カウンタNが最終値のNendになったかどうか判断する。本例では、Nend=5である。そして、CPU61は、ステップS305でNOと判断した場合には、図12のステップS306でカウンタNを1だけインクレメントして図12のステップS303に戻り、ワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを2番目の流量G2に設定し、図12のステップS304で高さ位置検出器71によって高さ位置H2を検出する。以下、同様に、CPU61は、図12のステップS303からS306を繰り返して実行し、図13に示す各流量G1~G5における高さ位置検出器71で検出した各高さ位置H1~H5を取得してメモリ62に格納する。
【0075】
そして、図12のステップS305でYESと判断したら高さ検出工程を終了して図12のステップS307に進んで調整工程を開始する。
【0076】
CPU61は、図12のステップS307でカウンタNを1にリセットする。
そして、図12のステップS308に進んで、1番目の高さ位置H1をメモリ62から読み出す。次に図12のステップS309に進んで、メモリ62に格納した特性曲線pを参照して流量G1における基準高さ位置HS1を算出する。ここで、図13に示すように、基準高さ位置HS1はワイヤ18に印加される張力TS1に対応する。そして、CPU61は、1番目の高さ位置H1と1番目の基準高さ位置HS1との比率α1を算出する。ここで、α1=HS1/H1である。そして、図12のステップS310に進んで1番目の流量G1を補正し、補正後の流量(G1×α1)を算出してメモリ62に格納する。そしてCPU61は、図12のステップS311に進んで、カウンタNが最終値のNendになったかどうか判断する。そして、図12のステップS311でNOと判断した場合には、図12のステップS312でカウンタNを1だけインクレメントして図12のステップS308に戻る。そして、ステップS309で2番目の高さ位置H2をメモリ62から読み出し、メモリ62に格納した特性曲線pを参照して2番目の基準高さ位置HS2を算出する。ここで、図13に示すように、基準高さ位置HS2はワイヤ18に印加される張力TS2に対応する。そして、CPU61は、2番目の高さ位置H2と2番目の基準高さ位置HS2との比率α2=HS2/H2を算出する。そして、ステップS310で2番目の流量G2を補正し、補正後の流量(G2×α2)を算出してメモリ62に格納する。
【0077】
以下、同様に、CPU61は、メモリ62からN番目の高さ位置Hnを読み出してメモリ62に格納した特性曲線pを参照してN番目の比率αn=HSn/Hnを算出し、N番目の流量Gnを補正して補正後の流量(Gn×αn)をメモリ62に順次格納する。そして、CPU61は、カウンタNがNend(本例では、Nend=5)となったら図12のステップS311でYESと判断して図12のステップS313に進む。
【0078】
図12のステップS313でCPU61は、補正した各流量(Gn×αn)に対するボンディングアーム14の先端14fの各基準高さ位置HSnを読み出す。そして、CPU61は読み出した[(Gn×αn),HSn](n=1~5)の座標を通る近似曲線qを生成する。図11に示すように、近似曲線qは、ワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gに対するボンディングアーム14の先端14fの高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hを示す曲線である。
【0079】
先に式5で説明したように、張力Tと高さ位置Hとは比例するから、ワイヤテンショナ40でワイヤ18に張力Taを印加する場合には、張力Taに比例係数をかけて高さ位置Haに変換し、図13に示す近似曲線qに基づいてワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gaを算出することにより、ワイヤ18の張力Tを張力Taに調整することができる。
【0080】
CPU61は、図12のステップS314において、外部から張力Taが入力されると、図13に示すように、張力Taに比例係数をかけて高さ位置Haに変換し、近似曲線qに基づいてワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gaを算出する。そして、図1に示す空気流量検出器72で空気の流量Gを検出しながら空気流量調節弁73を動作させてワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを流量Gaに調整する。これにより、ワイヤ張力調整装置60は、ワイヤ18に印加される張力Tを入力された張力Taに調整することができる。
【0081】
このように、第2動作は、ワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gに対するボンディングアーム14の先端14fの高さ位置Hを規定する近似曲線qを生成し、生成した近似曲線qに基づいてワイヤ18の張力Tを調整するので、ワイヤ18の線径、材質などに応じてボンディングに必要なワイヤ18の張力Tを設定することができる。
【0082】
尚、近似曲線qは、[(Gn×αn),HSn](n=1~5)の各座標を直線で接続した折れ線としてもよい。
【0083】
また、CPU61は、図12のステップS313で近似曲線qを生成した後、図14に示すように、近似曲線qのチェック動作を実行してもよい。
【0084】
CPU61は、図14のステップS321に示すように、メモリ62からN番目の基準高さ位置HSnを読み出す。そして、図14のステップS322に進んで、生成した近似曲線qに基づいて基準高さ位置HSnに対応する流量Ganを算出する。そして、CPU61は、ステップS323で、図1に示す空気流量検出器72で空気の流量Gを検出しながら空気流量調節弁73を動作させてワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを流量Ganに調整する。そして、CPU61は、図14のステップS324に進んで図1に示す高さ位置検出器71によりボンディングアーム14の先端14fの高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hnを検出する。
【0085】
CPU61は、図14のステップS325に進んで検出した高さ位置Hnと基準高さ位置HSnとの差を算出し、算出した差が図11を参照して説明した閾値範囲内かどうかを判断する。そして、図14のステップS325でYESと判断した場合には、図14のステップS326に進んでNがNendかどうか判断する。そして、ステップS326でNOと判断した場合には、図14のステップS321に戻って図14のステップS321~S327を繰り返し実行する。そして、ステップS326でYESと判断した場合にはチェック動作を終了する。
【0086】
一方、CPU61は、図14のステップS325でNOと判断した場合には、図14のステップS328に進み、図12のステップS301にジャンプし、再度、高さ検出工程と調整工程とを実行するようにしてもよい。
【0087】
このように、チェック動作を実行することにより、近似曲線qの精度を向上させ、より正確にワイヤ18に印加される張力Tの調整を行うことができる。
【0088】
次に、図15から図17を参照しながら、ワイヤ張力調整装置60の第3動作について説明する。先に説明した第1動作、第2動作と同様のステップについては簡単に説明する。
【0089】
図15に示すように、第3動作は、ステップS101に示す中立位置調整工程と、ステップS401の検出工程と、ステップS402の調整工程とを含んでいる。中立位置調整工程は、先に図9を参照して説明した中立位置調整工程と同一であるから説明は省略する。
【0090】
検出工程は、ワイヤクランパ17でワイヤ18を把持した状態で、ワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを変化させながらボンディングアーム14の先端14fの複数の高さ位置Hと空気の複数の流量Gとを検出する。調整工程は、検出した各流量GSnに対するボンディングアーム14の先端14fの各高さ位置HSnを規定する近似曲線rを生成し、生成した近似曲線rに基づいてワイヤ18に印加される張力Tを調整する。
【0091】
次に図16、17を参照しながら第3動作の検出工程と調整工程の詳細について説明する。図16のステップS501~S508検出工程であり、図16のステップS509~S510が調整工程である。以下の説明では、5つの基準高さ位置HS1~HS5となる5つの流量GS1~GS5を検出する場合について説明する。この場合、先に説明した動作2と同様、Nendは5である。複数の基準高さ位置HS1~HS5は自由に設定できる。ここで、図17に示すように、複数の基準高さ位置HS1~HS5はワイヤ18に印加される張力TS1~TS5に対応する。
【0092】
CPU61は、図16のステップS501でカウンタNを初期値の1に設定、ステップS502で空気の流量Gを初期値に設定する。初期値は自由に設定できるが、例えば、図17に示すような5つの基準高さ位置HS1~HS5となる5つの流量GS1~GS5を検出する場合、0からGS1の間で自由に設定してもよい。
【0093】
CPU61は、図16のステップS503に示すように、空気流量検出器72で空気の流量Gを検出するとともに、ステップS504に示すように、高さ位置検出器71でボンディングアーム14の先端14fの高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hを検出する。そして、図16のステップS505で検出した高さ位置Hが1番目の基準高さ位置HS1と一致するかどうかを判断する。ここで、図17に示すように基準高さ位置HS1はワイヤ18に印加される張力TS1に対応する。
【0094】
そして、CPU61は、図16のステップS505でNOと判断した場合には、図16のステップS506に進んで空気の流量をΔGだけ増加させて、図16のステップS503に戻る。そして、ステップS503、S504で空気の流量Gとボンディングアーム14の先端14fの高さ位置Hとを検出する。
【0095】
このように、CPU61は、高さ位置検出器71で検出したボンディングアーム14の先端14fの高さ位置Hが1番目の基準高さ位置HS1となるまで図16のステップS503からS506を繰り返して実行し、空気の流量GをΔGずつ増加させながら空気の流量Gと高さ位置Hとを検出する。
【0096】
そして、CPU61は、図16のステップS505において高さ位置検出器71で検出した高さ位置Hが1番目の基準高さ位置HS1と一致しており、ステップS505でYESと判断したら図16のステップS507に進んで、その際の空気の流量Gを1番目の基準高さ位置HS1に対応する1番目の流量GS1としてメモリ62に格納する。
【0097】
そして、CPU61は、図16のステップS508に進んでカウンタNがNendであるかどうか判断する。そして、ステップS508でNOと判断した場合には、図16のステップS503に戻って高さ位置検出器71で検出した高さ位置Hが2番目の基準高さ位置HS2となるまで空気の流量GをΔGずつ増加させ、図16のステップS505でYESと判断した場合には、図16のステップS507でその際の流量Gを2番目の基準高さ位置HS2に対応する2番目の流量GS2としてメモリ62に格納する。ここで、基準高さ位置HS2はワイヤ18に印加される張力TS2に対応する。
【0098】
以下、同様に、CPU61は、空気の流量GをΔGずつ増加させて空気の流量Gと高さ位置Hとを検出して、N番目の基準高さ位置HSnに対応するN番目の流量GSnをメモリ62に格納していく。
【0099】
そして、図16に示すステップS508でYESと判断したら検出工程を終了して図16のステップS509に進んで調整工程を開始する。
【0100】
図16のステップS509で、CPU61は、メモリ62に格納したN番目の基準高さ位置HSnに対応するN番目の流量GSn(n=1~5)を読み出す。そして、先に説明した第2動作と同様、CPU61は読み出した[GSn,HSn](n=1~5)の座標を通る近似曲線rを生成する。近似曲線rは、ワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gに対するボンディングアーム14の先端14fの高さ方向の中立位置H0からの高さ位置Hを示す曲線である。
【0101】
CPU61は、先に説明した第2動作と同様、図16のステップS510において、外部から張力Taが入力されると、図17に示すように、張力Taに比例係数をかけて高さ位置Haに変換し、近似曲線rに基づいて空気の流量Gaを算出する。そして、図1に示す空気流量検出器72で空気の流量Gを検出しながら空気流量調節弁73を動作させてワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを流量Gaに調整する。これにより、ワイヤ張力調整装置60は、ワイヤ18に印加される張力Tを入力された張力Taに調整することができる。
【0102】
このように、第3動作は、ワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gとボンディングアーム14の先端14fの高さ位置Hとを同時に検出してワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gに対するボンディングアーム14の先端14fの高さ位置Hを規定する近似曲線rを生成するので、簡便に近似曲線rを生成することができる。また、生成した近似曲線rに基づいてワイヤ18の張力Tを調整するので、ワイヤ18の線径、材質などに応じてボンディングに必要なワイヤ18の張力Tを設定することができる。
【0103】
尚、CPU61は、図16のステップS509で近似曲線rを生成した後、図14に示すように、近似曲線rのチェック動作を実行し、検出した高さ位置Hnと基準高さ位置HSnとの差を算出し、算出した差が図11を参照して説明した閾値範囲内でない場合には、図16のステップS501に戻って検出工程と調整工程を再度実行するようにしてもよい。これにより、近似曲線rの精度を向上させることができる。
【0104】
以上説明したように、実施形態のワイヤ張力調整装置60は、ボンディングアーム14の先端14fの高さ位置Hを検出し、検出した高さ位置Hに基づいてワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを調整してワイヤ18に印加される張力Tを調整するので、ワイヤボンディング装置100にワイヤテンショナ40を組み込んだ状態で簡便にワイヤ18に印加される張力Tの調整を行うことができる。
【0105】
尚、近似曲線rは、[GSn,HSn](n=1~5)の各座標を直線で接続した折れ線としてもよい。
【0106】
以上説明した第3動作の例では、ワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gを変化させながらボンディングアーム14の先端14fの複数の基準高さ位置HSnに対応する複数の流量GSnを検出することとして説明したが、高さ位置Hに対応する空気の流量Gの組を複数検出できればこれに限らない。例えば、空気の流量Gを一定の割合で増加させ、所定の時間間隔で空気の流量Gと高さ位置Hとを複数回検出し、検出した流量Gと高さ位置Hとの複数の組に基づいてワイヤテンショナ40に供給する空気の流量Gに対するボンディングアーム14の先端14fの高さ位置Hを規定する近似曲線rを生成してもよい。
【0107】
以上の説明では、ボンディングアーム14は、十字板ばね20でボンディングヘッド12に回転自在に固定されているとして説明したが、ボンディングアーム14は回転方向と逆方向の回転モーメントM1を発生するばね部材でボンディングヘッド12に回転自在に取り付けられていればよく、十字板ばね20に限定されない。例えば、ボンディングアーム14が回転シャフトの周りに回転自在となるようにボンディングヘッド12に取り付けられており、回転シャフトの外周にコイルばねをはめ込んで一端をボンディングアーム14に固定し、他端をボンディングヘッド12に固定するように構成してもよい。さらに、板バネや、ねじりコイルバネを適用し、ボンディングアーム14を回転自在に保持するものであってもよい。
【0108】
また、以上の説明ではワイヤ張力調整装置60のCPU61が図9、10、12、14-16の各ステップを実行するとして説明したが、これに限らず、各ステップをマニュアルで実行してもよい。また、ワイヤ張力調整装置60のCPU61が図9、10、12、14-16の各ステップを実行することは、または、マニュアルとで各ステップを実行することは、ワイヤ張力調整方法の実施形態でもある。
【符号の説明】
【0109】
10 ベース、10a 上部フレーム、11 XYテーブル、12 ボンディングヘッド、12a 構造部材、13 Z方向モータ、13a 固定子、14 ボンディングアーム、14a 本体、14b 可動子取付け板、14c 取付け用リブ、14d 取付け座、14f 先端、14m 可動子、14r 後端部、15 超音波ホーン、15f 前端、16 超音波振動子、17 ワイヤクランパ、18 ワイヤ、19 ボンディングステージ、20 十字板ばね、21 水平ばね板、21a,22a ボルト、21b,22b ボルト孔、22 垂直ばね板、23 回転軸、30 キャピラリ、31 基板、32 半導体チップ、40 ワイヤテンショナ、41 本体部、42 キャビティ、43 筒部、44 ワイヤ通路、45 上ディフューザ部、46 隙間、47 ノズル部、48 下ディフューザ部、49 接続ポート、50 ワイヤスプール、55 エアガイド、59 空気配管、60 ワイヤ張力調整装置、61,66 CPU、62,67 メモリ、65 制御部、71 高さ位置検出器、72 空気流量検出器、73 空気流量調節弁、100 ワイヤボンディング装置。
【要約】
ワイヤボンディング装置(100)のワイヤ(18)に印加される張力(T)を調整するワイヤ張力調整装置(60)であって、ワイヤクランパ(17)でワイヤ(18)を把持した状態でワイヤテンショナ(40)に空気を供給してボンディングアーム(14)の先端(14f)の高さ位置(H)を検出し、検出した高さ位置(H)に基づいてワイヤテンショナ(40)に供給する空気の流量(G)を調整することによりワイヤ(18)に印加される張力(T)を調整する。
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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