(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】リチウム2次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20230831BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20230831BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230831BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230831BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0565
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/64 A
(21)【出願番号】P 2022577908
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2021002992
(87)【国際公開番号】W WO2022162822
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】522369728
【氏名又は名称】TeraWatt Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】新井 寿一
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-526893(JP,A)
【文献】特表2020-524889(JP,A)
【文献】特表2020-510292(JP,A)
【文献】特表2019-537226(JP,A)
【文献】特開2019-145299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M 4/00- 4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極活物質を有しない負極と、セパレータとを備えるリチウム2次電池の製造方法であって、
前記セパレータの一方の面にゲル電解質を塗布する工程と、
前記ゲル電解質の表面に、前記負極を形成する工程と、を含み、
前記負極は、前記ゲル電解質より薄い、
リチウム2次電池の製造方法。
【請求項2】
前記負極の厚さが0.5μm以上6.0μm以下である、請求項1に記載のリチウム2次電池の製造方法。
【請求項3】
前記ゲル電解質は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、並びにこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2のいずれかに記載のリチウム2次電池の製造方法。
【請求項4】
前記ゲル電解質は溶媒として、下記式(A)で表される1価の基及び下記式(B)で表される1価の基のうち少なくとも一方を有する化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウム2次電池の製造方法。
【化1】
【化2】
(式中、波線は、1価の基における結合部位を表す。)
【請求項5】
前記ゲル電解質の厚さは、6μm以上15μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウム2次電池の製造方法。
【請求項6】
前記負極を形成する工程は、前記ゲル電解質の表面に剥離紙を有する負極材料を貼り付ける工程と、前記剥離紙を除去する工程と、を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウム2次電池の製造方法。
【請求項7】
前記負極を形成する工程は、蒸着法又は鍍金により前記ゲル電解質の表面に前記負極を形成する工程である、請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウム2次電池の製造方法。
【請求項8】
前記ゲル電解質を含む正極材料を、前記セパレータの他方の面に塗布して前記正極を形成する工程を更に含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のリチウム2次電池の製造方法。
【請求項9】
前記正極の表面上に、厚さ1.0μm以上6.0μm以下の正極集電体を形成する工程を更に含む、請求項8に記載のリチウム2次電池の製造方法。
【請求項10】
前記正極集電体を形成する工程は、前記正極の表面に剥離紙を有する正極集電体材料を貼り付ける工程と、前記剥離紙を除去する工程と、を含む、請求項9に記載のリチウム2次電池の製造方法。
【請求項11】
前記正極集電体を形成する工程は、蒸着法又は鍍金により前記正極の表面に前記正極集電体を形成する工程である、請求項9に記載のリチウム2次電池の製造方法。
【請求項12】
エネルギー密度が500Wh/kg以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載のリチウム2次電池の製造方法。
【請求項13】
正極と、負極活物質を有しない負極と、セパレータとを備えるリチウム2次電池であって、
前記セパレータの一方の面にゲル電解質が塗布されており、
前記ゲル電解質の表面に、前記負極が形成されており、
前記負極は、前記ゲル電解質より薄い、
リチウム2次電池。
【請求項14】
前記負極の厚さが0.5μm以上6.0μm以下である、請求項13に記載のリチウム2次電池。
【請求項15】
前記ゲル電解質が、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、並びにこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項13又は請求項14のいずれかに記載のリチウム2次電池。
【請求項16】
前記ゲル電解質は溶媒として、下記式(A)で表される1価の基及び下記式(B)で表される1価の基のうち少なくとも一方を有する化合物を含む、請求項13~15のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【化3】
【化4】
(式中、波線は、1価の基における結合部位を表す。)
【請求項17】
前記ゲル電解質の厚さが6μm以上15μm以下である、請求項13~16のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項18】
前記ゲル電解質を含む正極が前記セパレータの他方の面に形成されている、請求項13~17のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項19】
前記ゲル電解質を含む正極上に、厚さ1.0μm以上6.0μm以下の正極集電体を更に備える、請求項18に記載のリチウム2次電池。
【請求項20】
エネルギー密度が500Wh/kg以上である、請求項13~19のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム2次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光又は風量当の自然エネルギーを電気エネルギーに交換する技術が注目されている。これに伴い、安全性が高く、かつ多くの電気エネルギーを蓄えることができる蓄電デバイスとして、様々な2次電池が開発されている。
【0003】
その中でも、正極及び負極の間をリチウムイオンが移動することで充放電を行うリチウム2次電池は、高電圧及び高エネルギー密度を示すことが知られている。典型的なリチウム2次電池として、正極及び負極にリチウム元素を保持することのできる活物質を有し、正極活物質及び負極活物質の間でのリチウムイオンの授受によって充放電をおこなうリチウムイオン2次電池が知られている。
【0004】
また、高エネルギー密度化の実現を目的として、負極活物質に、炭素系材料のようなリチウム元素を挿入することができる材料ではなく、リチウム金属を用いるリチウム2次電池が開発されている。例えば、特許文献1には、室温で少なくとも1Cのレートでの放電時に、1000Wh/Lを越える体積エネルギー密度及び/又は350Wh/kgを越える質量エネルギー密度を実現するために、10μm~20μm程度の厚みのリチウム金属アノードを備えるリチウム2次電池が開示されている。特許文献1は、かかるリチウム2次電池において、負極活物質としてのリチウム金属上に更なるリチウム金属が直接析出することにより充電がされる旨を開示している。
【0005】
また、更なる高エネルギー密度化や生産性の向上等を目的として、負極活物質を用いないリチウム2次電池が開発されている。例えば、特許文献2には、正極、負極、これらの間に介在された分離膜及び電解質を含むリチウム2次電池において、前記負極は、負極集電体上に金属粒子が形成され、充電によって前記正極から移動され、負極内の負極集電体上にリチウム金属を形成する、リチウム2次電池が開示されている。特許文献2は、そのようなリチウム2次電池は、リチウム金属の反応性による問題と、組み立ての過程で発生する問題点を解決し、性能及び寿命が向上されたリチウム2次電池を提供することができることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2019-517722号公報
【文献】特表2019-505971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2に記載のような、負極活物質を有しない負極を備えるアノードフリー型リチウム2次電池は、負極活物質を有する負極を備えるリチウム2次電池と比べて、原理的にエネルギー密度が高いものの、従来のリチウム2次電池では、未だ、エネルギー密度が不十分であり、更にエネルギー密度を高めたリチウム2次電池を提供することが望まれている。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、エネルギー密度が高いリチウム2次電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池の製造方法は、正極と、負極活物質を有しない負極と、セパレータとを備え、上記セパレータの一方の面にゲル電解質を塗布する工程と、上記ゲル電解質の表面に、上記負極を形成する工程と、を含み、上記負極は、上記ゲル電解質より薄い、方法である。
【0010】
かかるリチウム2次電池の製造方法によれば、負極活物質を有しない負極を用いるため、負極活物質を有するリチウム2次電池と比較して、電池全体の体積及び質量が小さく、エネルギー密度が原理的に高いリチウム2次電池を製造することができる。
【0011】
そして、セパレータの一方の面にゲル電解質を塗布し、ゲル電解質の表面上に、それよりも更に薄い負極を形成することで、従来のリチウム2次電池より軽いリチウム2次電池を製造することができる。これは、セパレータの一方の面にゲル電解質を塗布することにより負極とセパレータの間の接着力が向上したことが要因である。かかる接着力の向上により、従来ではその取扱いが困難であった薄い負極を用いてリチウム2次電池を製造することができるため、リチウム2次電池のエネルギー密度が一層優れたものとなる。ただし、その要因は上記のものだけに限定されず、発明を実施するための形態において詳述する。
【0012】
上記リチウム2次電池の製造方法において、好ましくは、上記負極の厚さが0.5μm以上6μm以下である。そのような方法によれば、ゲル電解質との接着力を維持した上で、リチウム2次電池のエネルギー密度を一層優れたものにすることができる。
【0013】
上記ゲル電解質は、好ましくは、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、並びに、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む。そのような方法によれば、負極とセパレータの間の電気伝導率を維持した上で、ゲル電解質による接着性が向上し、リチウム2次電池のエネルギー密度を一層優れたものにすることができる。
【0014】
上記リチウム2次電池の製造方法において、好ましくは、上記ゲル電解質が、溶媒として、下記式(A)で表される1価の基及び下記式(B)で表される1価の基のうち少なくとも一方を有する化合物を含む。ただし、下記式中、波線は、1価の基における結合部位を表す。
【化1】
【化2】
そのような方法によれば、負極表面において固体電解質界面層(SEI層)の形成が促進されるため、負極上にデンドライト状のリチウム金属が成長することが抑制され、電池のサイクル特性が一層安定化される。
【0015】
上記リチウム2次電池の製造方法において、好ましくは、上記ゲル電解質が6μm以上15μm以下である。そのような方法によれば、ゲル電解質による接着性を維持した上で、リチウム2次電池のエネルギー密度を一層優れたものにすることができる。
【0016】
上記リチウム2次電池の製造方法における負極を形成する工程は、好ましくは、上記ゲル電解質の表面に剥離紙を有する負極材料を貼り付ける工程と、上記剥離紙を除去する工程と、を含む。そのような方法によれば、従来の負極より薄い(0.5μm以上6.0μm以下)負極を備えるリチウム2次電池を製造することが容易になる。これは、剥離紙上に形成された負極を用いることにより薄い負極を直接取り扱う必要が無くなり、更に、セパレータの一方の面にゲル電解質を塗布することにより負極とセパレータの間の接着力が向上し、負極を剥離紙から容易にはがせることが要因である。したがって、負極が薄く形成され、リチウム2次電池のエネルギー密度が一層優れたものとなる。ただし、その要因は上記のものだけに限定されず、発明を実施するための形態において詳述する。
【0017】
また、上記負極を形成する工程は、蒸着法又は鍍金により上記ゲル電解質の表面に上記負極を形成する工程であってもよい。そのような方法によれば、従来の負極より薄い(0.5μm以上6.0μm以下)負極を備えるリチウム2次電池を製造することが容易になる。これは、セパレータの一方の面にゲル電解質を塗布することにより負極とセパレータの間の接着力が向上することが要因である。したがって、ゲル電解質の表面に薄い負極が安定的に形成され、リチウム2次電池のエネルギー密度が一層優れたものとなる。
【0018】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池の製造方法は、好ましくは、上記ゲル電解質を含む正極材料を、上記セパレータの他方の面に塗布して上記正極を形成する工程を更に含む。そのような方法によれば、正極と後述する正極集電体との間の接着性が向上するため、従来の正極集電体より薄い正極集電体を用いることができ、リチウム2次電池のエネルギー密度を一層優れたものにすることができる。
【0019】
上記リチウム2次電池の製造方法は、好ましくは、厚さ1.0μm以上6.0μm以下の正極集電体を形成する工程を更に含む。そのような方法によれば、正極集電体の厚さを一層薄くすることができるため、リチウム2次電池のエネルギー密度を一層優れたものにすることができる。
【0020】
上記正極集電体を形成する工程は、好ましくは、上記正極の表面に剥離紙を有する正極集電体材料を貼り付ける工程と、前記剥離紙を除去する工程と、を含む。そのような方法によれば、従来の正極集電体より薄い(1.0μm以上6.0μm以下)正極集電体を備えるリチウム2次電池を製造することが容易になり、リチウム2次電池のエネルギー密度を一層優れたものにすることができる。
【0021】
上記正極集電体を形成する工程は、蒸着法又は鍍金により上記正極の表面に上記正極集電体を形成する工程であってもよい。そのような方法によれば、従来の正極集電体より薄い正極集電体(1.0μm以上6.0μm以下)を備えるリチウム2次電池を製造することが容易になり、リチウム2次電池のエネルギー密度を一層優れたものにすることができる。
【0022】
上記リチウム2次電池の製造方法は、好ましくは、エネルギー密度が500Wh/kg以上のリチウム2次電池を製造する。
【0023】
上記リチウム2次電池の製造方法は、好ましくは、リチウム金属が前記負極の表面に析出し、及び、その析出したリチウムが電解溶出することによって充放電が行われるリチウム2次電池を製造する。そのような方法によれば、リチウム2次電池のエネルギー密度を一層優れたものにすることができる。
【0024】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池は、正極と、負極活物質を有しない負極と、セパレータと、を備え、上記セパレータの一方の面にゲル電解質が塗布されており、上記ゲル電解質の表面に、上記負極が形成されており、上記負極は、上記ゲル電解質より薄い。そのようなリチウム2次電池は、電池全体において負極が占める体積及び質量が小さいため、従来のリチウム2次電池に比べてエネルギー密度が高い。
【0025】
上記負極の厚さは、好ましくは、0.5μm以上6.0μm以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池のエネルギー密度は一層優れたものとなる。
【0026】
上記ゲル電解質は、好ましくは、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、並びに、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む。そのような態様によれば、負極とセパレータの間の電気伝導率を維持した上で、ゲル電解質による接着性が向上するため、薄い負極を形成することができ、リチウム2次電池のエネルギー密度は一層優れたものとなる。
【0027】
上記リチウム2次電池において、好ましくは、上記ゲル電解質が、溶媒として、上記式(A)で表される1価の基及び上記式(B)で表される1価の基のうち少なくとも一方を有する化合物を含む。ただし、上記式中、波線は、1価の基における結合部位を表す。そのような態様によれば、負極表面において固体電解質界面層(SEI層)の形成が促進されるため、負極上にデンドライト状のリチウム金属が成長することが抑制され、電池のサイクル特性が一層安定化される。
【0028】
上記ゲル電解質の厚さは、好ましくは、6μm以上15μm以下である。そのような態様によれば、ゲル電解質による接着性を維持した上で、リチウム2次電池のエネルギー密度が高くなる。
【0029】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池は、好ましくは、上記ゲル電解質を含む正極が上記セパレータの他方の面に形成されている。そのような態様によれば、正極と後述する正極集電体との間の接着性が向上するため、従来の正極集電体より薄い正極集電体を用いることができ、リチウム2次電池のエネルギー密度を一層優れたものとなる。
【0030】
上記正極集電体は、好ましくは、厚さ1.0μm以上6.0μm以下である。そのような態様によれば、正極集電体の厚さを一層薄くなり、リチウム2次電池のエネルギー密度を一層優れたものとなる。
【0031】
上記リチウム2次電池は、好ましくは、エネルギー密度が500Wh/kg以上である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、エネルギー密度が高いリチウム2次電池及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第1の本実施形態に係るリチウム2次電池の概略断面図である。
【
図2】同リチウム2次電池の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】同リチウム2次電池の使用の概略断面図である。
【
図4】第2の本実施形態に係るリチウム2次電池の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0035】
[第1の本実施形態]
(リチウム2次電池)
図1は、第1の本実施形態に係るリチウム2次電池100の概略断面図である。リチウム2次電池100は、負極活物質を有しない負極110と、ゲル電解質120と、セパレータ130と、正極140、正極集電体150とを備える。負極110と正極140とはセパレータ130を介して互いに対向するように配置されている。セパレータ130と負極110との間には、ゲル電解質120が配置されている。すなわち、セパレータ130の一方の面には、ゲル電解質120が配置されており、セパレータ130の他方の面には、正極140が配置されている。まず、各構成要素の詳細について説明する。
【0036】
(負極)
負極110は、負極活物質を有しない。すなわち、負極110は、リチウム及びリチウムのホストとなる活物質を有しないものである。したがって、リチウム2次電池100は、負極活物質を有する負極を備えるリチウム2次電池と比較して、電池全体の体積及び質量が小さく、エネルギー密度が原理的に高い。ここで、リチウム2次電池100は、リチウム金属が負極110上に析出し、及び、その析出したリチウム金属が電解溶出することによって充放電が行われる。
【0037】
本明細書中、「リチウム金属が負極上に析出する」とは、負極の表面、又は負極の表面に形成された後述する固体電解質界面層(SEI層)、及び後述するコーティング剤によりコーティングされた負極110の少なくとも1箇所に、リチウム金属が析出することを意味する。本実施形態のリチウム2次電池において、リチウム金属は、主として、負極の表面、又はSEI層の表面に析出すると考えられるが、析出する箇所はこれに限られない。
【0038】
本明細書において、「負極活物質」とは、リチウムイオン、又はリチウム金属を負極110に保持するための物質を意味し、リチウム元素(典型的にはリチウム金属)のホスト物質と換言してもよい。そのような保持の機構としては、特に限定されないが、例えば、インターカレーション、合金化、及び金属クラスターの吸蔵等が挙げられ、典型的には、インターカレーションである。
【0039】
そのような負極活物質としては、特に限定されないが、例えば、リチウム金属及びリチウム金属を含む合金、炭素系物質、金属酸化物、並びにリチウムと合金化する金属及び該金属を含む合金等が挙げられる。上記炭素系物質としては、特に限定されないが、例えば、グラフェン、グラファイト、ハードカーボン、メソポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーン等が挙げられる。上記金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン系化合物、酸化スズ系化合物、及び酸化コバルト系化合物等が挙げられる。上記リチウムと合金化する金属としては、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、及びガリウムが挙げられる。
【0040】
本明細書において、負極が「負極活物質を有しない」とは、負極における負極活物質の含有量が、負極全体に対して10質量%以下であることを意味する。負極における負極活物質の含有量は、負極全体に対して、好ましくは5.0質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%以下であってもよい。負極が負極活物質を有さず、又は、負極における負極活物質の含有量が上記の範囲内にあることにより、リチウム2次電池100のエネルギー密度が原理的に高いものとなる。
【0041】
より詳細には、負極110は、電池の充電状態によらず、リチウム金属以外の負極活物質の含有量が、負極全体に対して10質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%以下であってもよい。また、負極110は、初期充電前、及び/又は放電終了時において、リチウム金属の含有量が、負極全体に対して10質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%以下であってもよい。
【0042】
したがって、「負極活物質を有しない負極を備えるリチウム2次電池」は、アノードフリー2次電池、ゼロアノード2次電池、又はアノードレス2次電池と換言することができる。また、「負極活物質を有しない負極を備えるリチウム2次電池」は、「リチウム金属以外の負極活物質を有せず、初期充電前及び/又は放電終了時においてリチウム金属を有しない負極を備えるリチウム2次電池」、「初期充電前及び/又は放電終了時においてリチウム金属を有しない負極集電体を備えるリチウム2次電池」、又は「リチウム金属析出のための負極集電体からなる負極を備えるリチウム2次電池」等と換言してもよい。なお、ここで、「初期充電前及び/又は放電終了時」との語は、「初期充電前」又は「放電終了時」との語に置き換えてもよい。
この観点から、本実施形態のリチウム2次電池は、従来型のリチウムイオン電池(LIB)やリチウム金属電池(LMB)とは、異なる構成を有するものといえる。なお、ここで、リチウムイオン電池とは、リチウム元素を負極に保持するためのホスト物質を負極に含むリチウム電池を意味し、リチウム金属電池とは、初期充電前(電池の組み立て時)において負極にリチウム金属箔を有するリチウム電池を意味する。
【0043】
本明細書において、電池が「初期充電前である」とは、電池が組み立てられてから第1回目の充電をするまでの状態を意味する。また、電池が「放電終了時である」とは、典型的には、電池の電圧が1.0V以上3.8V以下(好ましくは、1.0V以上3.0V以下)である状態を意味する。
【0044】
また、リチウム2次電池100において、電池の電圧が4.2Vの時の負極110上に析出しているリチウム金属の質量M4.2に対する、電池の電圧が3.0Vの時の負極110上に析出しているリチウム金属の質量M3.0の比M3.0/M4.2は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下であり、更に好ましくは10%以下である。
【0045】
典型的なリチウム2次電池において、負極の容量(負極活物質の容量)は、正極の容量(正極活物質の容量)と同程度となるように設定されるが、リチウム2次電池100において、負極110はリチウム元素のホスト物質である負極活物質を有しないため、その容量を規定する必要がない。したがって、リチウム2次電池100は、負極による充電容量の制限をうけないため、原理的にエネルギー密度を高くすることができる。
【0046】
負極110としては、負極活物質を有せず、集電体として用いることができれば、特に限定されないが、例えば、Cu、Ni、Ti、Fe、及び、その他Liと反応しない金属、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種からなるものが挙げられる。なお、負極110にSUSを用いる場合、SUSの種類としては従来公知の種々のものを用いることができる。上記のような負極材料は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。なお、本明細書中、「Liと反応しない金属」とは、リチウム2次電池の動作条件においてリチウムイオン又はリチウム金属と反応して合金化することがない金属を意味する。
【0047】
負極110は、好ましくはCu、Ni、Ti、Fe、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種からなるものであり、より好ましくは、Cu、Ni、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種からなるものである。負極110は、更に好ましくは、Cu、Ni、これらの合金、又は、ステンレス鋼(SUS)である。このような負極を用いると、電池のエネルギー密度、及び生産性が一層優れたものとなる傾向にある。
【0048】
負極110は、リチウム金属を含有しない電極である。したがって、製造の際に可燃性及び反応性の高いリチウム金属を用いなくてよいため、リチウム2次電池100は、安全性、生産性、及びサイクル特性に優れるものである。
【0049】
本実施形態において、負極110の平均厚さは、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは0.8μm以上であり、更に好ましくは1.0μm以上であり、より更に好ましくは1.5μm以上である。負極の平均厚さが上記の範囲であると、リチウム2次電池が安定に動作する傾向にある。また、負極の平均厚さは好ましくは6.0μm以下であり、より好ましくは5.0μm以下であり、更に好ましくは4.0μm以下であり、より更に好ましくは3.0μm以下である。そのような厚さを有する負極を用いて電池を作製すれば、リチウム2次電池100における負極110の占める体積が減少するため、リチウム2次電池100のエネルギー密度を一層向上させることができる。
【0050】
本実施形態において、厚さは公知の測定方法により測定することができる。例えば、リチウム2次電池を厚さ方向に切断し、露出した切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することで測定することが可能である。
【0051】
本実施形態における「平均厚さ」及び「厚さ」は、3回以上、好ましくは5回以上の測定値の相加平均を算出することにより求められる。
【0052】
(負極コーティング剤)
負極110において、ゲル電解質120に対向する表面の一部又は全部がコーティング剤でコーティングされていても良い。コーティング剤として用いる化合物としては、特に限定されないが、N、S、及びOからなる群より選択される元素が各々独立に2つ以上結合した芳香環を含む化合物、すなわち、芳香環にN、S、又はOが独立に2つ以上で結合している構造を有する化合物であることが好ましい。芳香環としては、ベンゼン、ナフタレン、アズレン、アントラセン、及びピレン等の芳香族炭化水素、並びに、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、及びピラジン等のヘテロ芳香族化合物が挙げられる。この中でも、芳香族炭化水素が好ましく、ベンゼン、及びナフタレンがより好ましく、ベンゼンが更に好ましい。また、上述した負極コーティング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
上述した化合物を負極110の表面にコーティングすれば、電池のサイクル特性が一層向上する傾向にある。その要因は、上述した化合物がコーティングされることで、負極の表面においてリチウム金属が不均一に析出することを抑制し、負極上に析出するリチウム金属がデンドライト状に成長することが抑制されることにあると推察される。
【0054】
(ゲル電解質)
ゲル電解質120は、ポリマー、電解質、及び溶媒を含有する混合物であり、リチウムイオンの導電経路として作用する。ゲル電解質は負極110とセパレータ130の間に配置されている。
【0055】
一般的に、負極活物質を有しない負極を備えるリチウム2次電池は、典型的なリチウム2次電池と比較して、リチウム2次電池の総重量が小さく、原理的にエネルギー密度が高い。しかしながら、単に、負極活物質を有しない負極を用いただけでは、負極とセパレータとの間の接着力が低く、また、薄い負極の取り扱いが困難であることに起因して、負極を厚く形成する必要があり、その結果、電池の総重量及び総体積が増えることで、エネルギー密度が低下することを、本発明者らは見出した。そして、鋭意研究を重ねた結果、ゲル状の電解質(ゲル電解質)を負極110とセパレータ130の間に配置することにより、負極110とセパレータ130との接着性を向上させ、薄い負極をゲル電解質に直接貼り付けることを容易にし、リチウム2次電池のエネルギー密度を高くすることができることを、本発明者らは見出した。すなわち、ゲル電解質120を導入することにより、イオン伝導性を害しないで、負極110とセパレータ130の間の接着性を向上することができた結果、ゲル電解質120よりも更に薄い負極110を形成してもリチウム2次電池が安定に動作することが可能になったと考えられる。
【0056】
ゲル電解質120に含まれるポリマーとしては、イオン伝導性を有するゲルを形成するものであれば特に限定されないが、好ましくはポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、ナイロン-6、ポリプロピレン、及びポリビニリデンが挙げられる。より好ましくは、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、及びポリビニルフルオライドが挙げられ、更に、好ましくは、ポリエチレンオキサイド、及びポリプロピレンオキサイドが挙げられる。上述のポリマーは、1種を単独で、又は2種以上を自由に組み合わせて用いることができる。
【0057】
上記のポリマーは、負極や正極集電体の材料として用いられる金属箔より比重が低いため、厚さに比して重量が小さい。更に、上記ポリマーを用いた場合、一層確実にゲル電解質の粘度と形態を保持することができるため、薄い負極を貼り付けることが一層容易になる。したがって、ゲル電解質120そのものの重量は小さいことに加え、ゲル電解質120は、負極110とセパレータ130の接着力を一層向上させ、負極110の厚さを薄くすることができるため、上記ポリマーが含まれたゲル電解質120を用いることにより、リチウム2次電池100のエネルギー密度を一層大きくできると推察される。
【0058】
上記のポリマーの含有量は、特に限定されないが、例えば、ゲル電解質120の質量部を100とした場合、5質量部以上90質量部以下であってもよく、15質量部以上70質量部以下であってもよく、30質量部以上60質量部以下であってもよい。また、ポリマーは2種以上の混合物を使用することも可能である。その場合は、例えば、ポリマー混合物の含有量が、ゲル電解質120の質量部を100とした場合において、5質量部以上90質量部以下であってもよく、15質量部以上70質量部以下であってもよく、30質量部以上60質量部以下であってもよい。
【0059】
ゲル電解質120に含まれる電解質としては、塩であれば特に限定されないが、例えば、Li、Na、K、Ca、及びMgの塩等が挙げられる。電解質としては、好ましくはリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、特に限定されないが、LiI、LiCl、LiBr、LiF、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CF3CF3)2、LiBF2(C2O4)、LiB(O2C2H4)2、LiB(O2C2H4)F2、LiB(OCOCF3)4、LiNO3、及びLi2SO4等が挙げられ、好ましくは、LiN(SO2F)2(LiFSI)が挙げられる。上記の電解質は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0060】
ゲル電解質120における電解質の濃度は、特に限定されないが、ポリマーを含有していない溶液状態において、好ましくは0.5M以上であり、より好ましくは0.7M以上であり、更に好ましくは0.9M以上であり、更により好ましくは1.0M以上である。電解質の濃度が上記の範囲内にあることにより、SEI層が一層形成されやすくなり、また、内部抵抗が一層低くなる傾向にある。電解質の濃度の上限は特に限定されず、電解質の濃度は15.0M以下であってもよく、10.0M以下であってもよく、5.0M以下であってもよい。
【0061】
ゲル電解質に含まれる溶媒としては、フッ素化溶媒又は非フッ素溶媒を用いることができる。フッ素化溶媒としては、好ましくは、下記式(A)で表される1価の基及び下記式(B)で表される1価の基のうち少なくとも一方を有する化合物を用いる。ただし、下記式中、波線は、1価の基における結合部位を表す。
【化3】
【化4】
【0062】
そのようなフッ素化溶媒として、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1、2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、テトラフルオロエチルテトラフルオロプロピルエーテル等が挙げられる。更に、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルペンタン、メチル-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、エチル-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエーテル等のフッ素化溶媒を用いることもできる。なお、これらのフッ素化溶媒の誘導体を用いてもよい。
【0063】
上述の非フッ素溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、及び12-クラウン-4等が挙げられる。また、ゲル電解質は、上述した非フッ素溶媒において、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換されたものを含有してもよい。なお、これらの非フッ素溶媒及び、フッ素置換された非フッ素溶媒の誘導体を用いてもよい。
【0064】
上述のフッ素化溶媒と非フッ素溶媒は、1種を単独で又は、2種以上を任意の割合で自由に組み合わせて用いることができる。フッ素化溶媒と非フッ素溶媒の含有量の割合としては、特に限定されないが、例えば、溶媒全体に対するフッ素化溶媒の割合として、20~100%を占めてよく、溶媒全体に対する非フッ素溶媒の割合としては、0~80%を占めてもよい。
【0065】
上記の溶媒と電解質からなる電解液の含有量は、特に限定されないが、例えば、ゲル電解質120の質量部を100とした場合、10質量部以上95質量部以下であってもよく、30質量部以上80質量部以下であってもよく、40質量部以上70質量部以下であってもよい。
【0066】
ゲル電解質120の平均厚さは、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは12μm以下であり、更に、好ましくは10μm以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池100におけるゲル電解質120の占める体積が減少するため、リチウム2次電池100のエネルギー密度が一層向上する。また、ゲル電解質120の平均厚さは、好ましくは6μm以上であり、より好ましくは7μm以上であり、更に、好ましくは8μm以上である。そのような態様によれば、負極110とセパレータ130との接着力が一層確実に向上し、負極110を貼り付けることを容易にすることができる。なお、負極110をゲル電解質120の表面に貼り付ける際には、剥離紙上に形成された負極110を用いてもよい。
【0067】
なお、上述したゲル電解質の組成に、更にフィラーを混合することも可能である。フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、シリカ、チタン酸カリウム、及びAl2O3のような金属酸化物、LiF及びAlF3のような金属フッ化物、CaCO3のような金属炭酸塩、Ca(OH)2及びMg(OH)2のような金属水酸化物、AlN及びBNのような窒化物、並びに、カルボキシメチルセルロース及び炭素繊維のような繊維材料が挙げられる。
【0068】
フィラーの粒形は、特に限定されず、例えば、5μm以上15μm以下であってもよく、6μm以上10μm以下であってもよく、7μm以上8μm以下であってもよい。なお、その含有量は、ゲル電解質のイオン伝導性、及び接着性を害しない範囲であれば、特に限定されない。
【0069】
(セパレータ)
セパレータ130は、正極140と負極110とを隔離することにより電池が短絡することを防ぎつつ、正極140と負極110との間の電荷キャリアとなるリチウムイオンのイオン伝導性を確保するための部材であり、電子導電性を有さず、リチウムイオンと反応しない材料により構成される。また、セパレータ130は電解液を保持する役割も担う。セパレータ130は、上記役割を担う限りにおいて限定はないが、例えば、多孔質のポリエチレン(PE)膜、ポリプロピレン(PP)膜、又はこれらの積層構造により構成される。
【0070】
また、セパレータ130は、セパレータ被覆層により被覆されていてもよい。セパレータ被覆層は、セパレータ130の両面を被覆していてもよく、片面のみを被覆していてもよい。セパレータ被覆層は、イオン伝導性を有し、リチウムイオンと反応しない部材であれば特に限定されないが、セパレータ130と、セパレータ130に隣接する層とを強固に接着させることができるものであると好ましい。そのようなセパレータ被覆層としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、スチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースの合材(SBR-CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(Li-PAA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、及びアラミドのようなバインダーを含むものが挙げられる。セパレータ被覆層は、上記バインダーにシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硝酸リチウム等の無機粒子を添加させてもよい。なお、セパレータ130は、セパレータ被覆層を有しないセパレータであってもよく、セパレータ被覆層を有するセパレータであってもよい。
【0071】
セパレータ被覆層を含めたセパレータ130の平均厚さは、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは25μm以下であり、更に好ましくは20μm以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池100におけるセパレータ130の占める体積が減少するため、リチウム2次電池100のエネルギー密度が一層向上する。また、セパレータ130の平均厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは7μm以上であり、更に好ましくは10μm以上である。そのような態様によれば、正極140と負極110とを確実に隔離することができ、電池が短絡することを一層抑止することができる。
【0072】
(正極)
正極140としては、正極活物質を有する限り、一般的にリチウム2次電池に用いられるものであれば、特に限定されないが、リチウム2次電池の用途によって、公知の材料を適宜選択することができる。正極140は、正極活物質を有するため、安定性及び出力電圧が高い。
【0073】
本明細書において、「正極活物質」とは、リチウム元素(典型的には、リチウムイオン)を正極140に保持するための物質を意味し、リチウム元素(典型的には、リチウムイオン)のホスト物質と換言してもよい。
【0074】
そのような正極活物質としては、特に限定されないが、例えば、金属酸化物及び金属リン酸塩が挙げられる。上記金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化コバルト系化合物、酸化マンガン系化合物、及び酸化ニッケル系化合物等が挙げられる。上記金属リン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、リン酸鉄系化合物、及びリン酸コバルト系化合物が挙げられる。典型的な正極活物質としては、LiCoO2、LiNixCoyMnzO(x+y+z=1)、LiNixMnyO(x+y=1)、LiNiO2、LiMn2O4、LiFePO、LiCoPO、LiFeOF、LiNiOF、及びTiS2が挙げられる。上記のような正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0075】
正極140は、上記の正極活物質以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、特に限定されないが、例えば、ゲル電解質、公知の導電助剤、バインダー、及び無機固体電解質が挙げられる。
【0076】
正極140におけるゲル電解質としては、上述したゲル電解質120と同様の材料を用いることができる。そのような態様によれば、ゲル電解質の機能により正極と正極集電体との接着力が向上し、薄い正極集電体を貼り付けることが可能となり、電池のエネルギー密度を一層優れたものにすることができる。また、正極集電体を正極の表面に貼り付ける際には、剥離紙上に形成されている正極集電体を用いてもよい。
【0077】
正極140における導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)、カーボンナノファイバー(CF)、及びアセチレンブラック等が挙げられる。また、バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂、及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0078】
正極140における、正極活物質の含有量は、正極140全体に対して、例えば、50質量%以上100質量%以下であってもよい。導電助剤の含有量は、正極140全体に対して、例えば、0.5質量%以上30質量%以下あってもよい。バインダーの含有量は、正極140全体に対して、例えば、0.5質量%以上30質量%以下であってもよい。ゲル電解質の含有量は、正極140全体に対して、例えば、0.5質量%以上30質量%以下であってもよく、好ましくは5質量%以上20質量%以下であってもよく、より好ましくは8質量%以上15質量%以下であってもよい。無機固体電解質の含有量は、正極140全体に対して、例えば、0.5質量%30質量%以下であってもよい。
【0079】
正極140の平均厚さは、好ましくは20μm以上100μm以下であり、より好ましくは30μm以上80μm以下であり、更に好ましくは40μm以上70μm以下である。
【0080】
(正極集電体)
正極140の片側には、正極集電体150が配置されている。正極集電体は、電池においてリチウムイオンと反応しない導電体であれば特に限定されない。そのような正極集電体としては、例えば、アルミニウムが挙げられる。なお、正極集電体150は設けなくてもよく、その場合、正極自身が集電体として働く。
【0081】
本実施形態において、正極集電体の平均厚さは、好ましくは1μm以上15μm以下であり、より好ましくは2μm以上10μm以下であり、更に、好ましくは3μm以上6μm以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池100における正極集電体の占める体積が減少するため、リチウム2次電池100のエネルギー密度が一層向上する。
【0082】
(電解液)
リチウム2次電池100は、電解液を有していてもよい。リチウム2次電池100において、電解液は、セパレータ130に浸潤させてもよく、正極集電体150と、正極140と、セパレータ130と、ゲル電解質120と、負極110との積層体と共に密閉容器に封入してもよい。電解液は、電解質及び溶媒を含有し、イオン伝導性を有する溶液であり、リチウムイオンの導電経路として作用する。このため、電解液を含む態様によれば、電池の内部抵抗が一層低下し、エネルギー密度、容量、及びサイクル特性が一層向上する。
【0083】
電解液の溶媒としては、特に限定されないが、上述したゲル電解質に含まれる溶媒と同様のものであると好ましい。上述したゲル電解質に含まれるフッ素化溶媒を用いると、適度な厚さを有するイオン伝導性の高い固体電解質界面層(SEI層)が形成されやすくなるため、サイクル特性が一層向上するとされている。上述したゲル電解質に含まれる溶媒は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0084】
電解液に含まれる電解質としては、塩であれば特に限定されないが、例えば、上述したゲル電解質に含まれるようなものであると好ましい。電解質の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.5M以上であり、より好ましくは0.7M以上であり、更に好ましくは0.9M以上であり、更により好ましくは1.0M以上である。電解質の濃度が上記の範囲内にあることにより、SEI層が一層形成されやすくなり、また、内部抵抗が一層低くなる傾向にある。電解質の濃度の上限は特に限定されず、電解質の濃度は10.0M以下であってもよく、5.0M以下であってもよく、2.0M以下であってもよい。
【0085】
(リチウム2次電池の製造方法)
リチウム2次電池100の製造方法としては、上述の構成を備えるリチウム2次電池を製造することができる方法であれば特に限定されないが、例えば
図2に示すような方法が挙げられる。ここで、
図2は、リチウム2次電池100の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0086】
まず、
図2に示すとおり、各構成部材を準備する(ステップ1)。必要に応じて、表面上に0.5μm以上6μm以下の負極(金属箔、例えば、電解Cu箔)が形成された剥離紙を準備する。剥離紙上に負極を形成する方法は、公知の方法でよく、例えば、蒸着、鍍金であってもよい。この際、必要に応じて負極表面を上述したコーティング剤でコーティングしてから大気下で乾燥させることで、コーティング処理をしてもよい。
【0087】
また、上述した正極材料を、公知の製造方法により、又は市販のものを購入することにより準備する。例えば、上述した正極活物質、上述したゲル電解質、公知の導電助剤、及び公知のバインダーを混合し、正極混合物を準備する。その配合比は、例えば、上記正極混合物全体に対して、正極活物質が50質量%以上99質量%以下、ゲル電解質が0.5質量%以上30質量%以下、導電助剤が0.5質量%以上30質量%以下、バインダーが0.5質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0088】
また、必要に応じて、剥離紙を有していてもよい所定の厚さ(例えば、1μm以上6μm以下、あるいは1μm以上15μm以下)の正極集電体(金属箔、例えば、Al箔)を準備する。剥離紙上に正極集電体を形成する方法は、公知の方法でよく、例えば、蒸着、鍍金であってもよい。
【0089】
また、上述した構成を有するセパレータ130を準備する。セパレータ130は従来公知の方法で製造してもよく、市販のものを用いてもよい。
【0090】
更に、上述した構成を有するゲル電解質120の材料を、公知の製造方法により、又は市販のものを購入することにより準備する。例えば、上述したポリマー、上述した溶媒、上述した電解質、及び公知のフィラーを混合し、ゲル電解質120を準備することができる。その混合比は、例えば、上記ゲル電解質120全体に対して、ポリマーが5質量%以上50質量%以下、溶媒と電解質を含む電解液が5質量%以上70質量%以下、フィラーが0質量%以上65質量%以下であってもよい。
【0091】
次に、セパレータ130の一方の面側に負極を形成する(ステップ2)。まず、上記のように調製したゲル電解質120をセパレータ130の一方の面に塗布する。次に、負極110がゲル電解質120より薄くなるように、ゲル電解質120の表面に、負極110を形成する。
【0092】
負極の形成方法としては、例えば、ゲル電解質120の表面に剥離紙を有する負極材料を貼り付ける工程と、かかる剥離紙を除去する工程と、を含む方法であると好ましい。あるいは、蒸着法又は鍍金によりゲル電解質120の表面に直接金属薄膜を形成し、これを負極110としてもよい。
【0093】
次に、セパレータ130の他方の面(ゲル電解質及び負極を形成していない面)に、上記のとおり準備した正極混合物を塗布して、正極を形成する(ステップ3)。
【0094】
さらに、正極上(セパレータ130と接していない正極140の面)に、正極集電体を形成してもよい(ステップ4)。正極集電体の形成方法としては、例えば、上記のとおり準備した剥離紙を有する正極集電体を正極上に貼り付ける工程と、この剥離紙を除去する工程を含む方法であると好ましい。これにより、正極140上に薄い正極集電体150を形成することができる。あるいは、蒸着法又は鍍金により正極140の表面に直接金属薄膜を形成し、これを正極集電体150としてもよい。
【0095】
なお、上記負極又は正極集電体が備え得る剥離紙に代えて、高分子からなるフィルム(例えば、ポリエチレンフィルム、PETフィルム)を用いてもよい。
【0096】
本実施形態における蒸着としては、負極又は正極集電体を所定の厚さに形成することができる方法であれば、特に限定されず、例えば、CVD法、PVD法、真空蒸着法、スパッタ、PLD法、及び金属ナノ粒子コーティング法等を適用することができる。蒸着による負極又は正極集電体の形成において、蒸着時間、及び蒸着条件を適宜調整することにより、所望の厚さを有する負極又は正極集電体を得ることができる。
【0097】
上述の鍍金としては、負極又は正極集電体を所定の厚さに形成することができる方法であれば、特に限定されず、例えば、無電解メッキ、及び電解メッキ等を適用することができる。鍍金による負極又は正極集電体の形成において、鍍金時間、及び鍍金条件を適宜調整することにより、所望の厚さを有する負極又は正極集電体を得ることができる。
【0098】
以上のステップ1、ステップ2、ステップ3及びステップ4により、
図1に示される、正極集電体150、正極140、セパレータ130、ゲル電解質120及び負極110がこの順に積層された積層体を得る。得られた積層体を密閉容器に封入することでリチウム2次電池100が得られる。密閉容器としては、特に限定されないが、例えば、ラミネートフィルムが挙げられる。密閉容器内に、上記の積層体と共に上述した電解液を添加してもよい。
【0099】
上記製造方法によれば、従来製造が困難であった0.5μm以上6μm以下の厚みの負極110を備えるリチウム2次電池を製造することができる。これにより、リチウム2次電池のエネルギー密度を一層優れたものにすることができる。また、従来製造が困難であった1μm以上6μm以下の厚みの正極集電体150を備えるリチウム2次電池を製造することができる。これにより、リチウム2次電池のエネルギー密度を更に一層向上させることができる。
【0100】
なお、
図2に示すフローチャートの手順は、リチウム2次電池100を製造することができるのであれば、適宜変更可能である。例えば、各構成の準備工程(ステップ1)では各構成部材の準備は入れ替わっても又は同時に行われていてもよいし、または、各構成の積層工程の直前に準備することでも構わない。また、負極形成工程と正極形成工程(及び正極集電体の形成工程)とは互いに入れ替わってもよい。
【0101】
(リチウム2次電池の使用)
図3に本実施形態のリチウム2次電池の1つの使用態様を示す。リチウム2次電池300は、リチウム2次電池100において、正極集電体150及び負極110に、リチウム2次電池を外部回路に接続するための正極端子320及び負極端子310がそれぞれ接合されている。リチウム2次電池300は、負極端子310を外部回路の一端に、正極端子320を外部回路のもう一端に接続することにより充放電される。
【0102】
負極端子310及び正極端子320の間に、負極端子310から外部回路を通り正極端子320へと電流が流れるような電圧を印加することでリチウム2次電池300が充電される。リチウム2次電池300を充電することにより、負極上にリチウム金属の析出が生じる。
【0103】
リチウム2次電池300は、電池の組み立て後の第1回目の充電(初期充電)により、負極110の表面(負極110とゲル電解質120との界面)に固体電解質界面層(SEI層)が形成されていてもよい。形成されるSEI層としては、特に限定されないが、例えば、リチウムを含む無機化合物、及びリチウムを含む有機化合物等を含んでいてもよい。SEI層の典型的な平均厚さは、1nm以上10μm以下である。
【0104】
充電後のリチウム2次電池300について、負極端子310及び正極端子320を接続するとリチウム2次電池300が放電される。これにより、負極上に生じたリチウム金属の析出が電解溶出する。
【0105】
[第2の本実施形態]
(リチウム2次電池)
図4は、第2の本実施形態に係るリチウム2次電池の概略断面図である。略円柱型の電池である第2の本実施形態のリチウム2次電池400は、その中心部から外側に向けて正極集電体450と、正極440と、セパレータ430と、ゲル電解質420と、負極活物質を有しない負極410とを備える。
【0106】
正極集電体450、正極440、セパレータ430、ゲル電解質420、及び負極410の構成、及びその好ましい態様は、第1の本実施形態のリチウム2次電池100と同様であり、リチウム2次電池400は、リチウム2次電池100と同様の効果を奏するものである。リチウム2次電池400は、リチウム2次電池100が備えるような電解液を備えていてもよい。負極410は、その厚みが十分薄いことから、このように折り曲げた形状とすることも容易である。
【0107】
[変形例]
上記本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその本実施形態のみに限定する趣旨ではなく、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な変形が可能である。
【0108】
例えば、第1の本実施形態のリチウム2次電池100において、負極110の両面にゲル電解質120を形成し、以下の順番:正極集電体/正極/セパレータ/ゲル電解質/負極/ゲル電解質/セパレータ/正極/正極集電体;で各構成が積層(複数層でもよい)されるようにしてもよい。そのような態様によれば、リチウム2次電池の容量を一層向上させることができる。
【0109】
本実施形態のリチウム2次電池は、正極集電体及び/又は負極に、外部回路へと接続するための端子を取り付けてもよい。例えば10μm以上1mm以下の金属端子(例えば、Al、Ni等)を、正極集電体及び負極の片方又は両方にそれぞれ接合してもよい。接合方法としては、従来公知の方法を用いればよく、例えば超音波溶接を用いてもよい。
【0110】
なお、本明細書において、「エネルギー密度が高い」又は「高エネルギー密度である」とは、電池の総体積又は総質量当たりの容量が高いことを意味するが、好ましくは1000Wh/L以上又は500Wh/kg以上であり、より好ましくは1100Wh/L以上又は550Wh/kg以上である。
【0111】
また、本明細書において、「サイクル特性に優れる」とは、通常の使用において想定され得る回数の充放電サイクルの前後において、電池の容量の減少率が低いことを意味する。すなわち、初期充電の後の1回目の放電容量と、通常の使用において想定され得る回数の充放電サイクル後の放電容量とを比較した際に、充放電サイクル後の放電容量が、初期充電の後の1回目の放電容量に対してほとんど減少していないことを意味する。
【実施例】
【0112】
以下、本発明の実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0113】
[実施例1]
以下のようにして、リチウム2次電池を作製した。
まず、市販の、剥離紙を備えた厚さ2μmの電解Cu箔を準備した。
【0114】
セパレータとして、厚さ12μmのポリエチレン微多孔膜セパレータを準備した。
【0115】
次に、ジメトキシエタン(DME)と1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTFE)とを、それぞれが体積で2:8の割合となるように混合した後、LiN(SO2F)2(LiFSI)を1.2Mとなるよう溶解した。かかる溶液に、ポリエチレンオキサイドを等質量部(電解液:ポリエチレンオキサイド=1:1)で混合することにより、ゲル電解質を調製した。そして、調製したゲル電解質をセパレータ上に塗布することにより、セパレータ上に厚さ10μmのゲル電解質を形成した。形成したゲル電解質の表面(セパレータと反対側の面)に、上記で準備した剥離紙を有する厚さ2μmの負極を貼り付けた。剥離紙を除去することにより、ゲル電解質の表面に、厚さ2μmの負極を形成した。
【0116】
次に、正極活物質としてLiNi0.85Co0.12Al0.03O2を86質量部、導電助剤としてカーボンナノチューブ(CNT)を1質量部、及びバインダーとしてポリビニリデンフロライド(PVDF)を3質量部混合したものを、上記ゲル電解質10質量部と混合し、負極が形成されていないセパレータの表面に塗布することで、セパレータ上に正極を形成した。正極の表面(セパレータと反対側の面)に、厚さ12μmのAl箔を貼り付けることで、正極の表面に、厚さ12μmの正極集電体を形成した。
【0117】
以上のようにして正極集電体、正極、セパレータ、ゲル電解質及び負極が、この順に積層された積層体を得た。更に、正極集電体及び負極に、それぞれ100μmのAl端子及び100μmのNi端子を超音波溶接で接合した後、ラミネートの外装体に挿入封止することにより、リチウム2次電池を得た。
【0118】
[実施例2]
正極集電体である厚さ3μmAl箔を、剥離紙を用いて貼り付けた以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。なお、正極集電体は以下のようにして正極上に形成した。まず、形成した正極の表面(セパレータと反対側の面)に、準備した剥離紙を有する厚さ3μmのAl箔を貼り付けた。次に、剥離紙を除去することにより、正極の表面に、厚さ3μmの正極集電体を形成した。
【0119】
[比較例]
以下のようにして負極と正極を作製し、ゲル電解質は調製しなかった。
負極の作製方法としては、まず、厚さ8μmの電解Cu箔を、スルファミン酸を含む溶剤で洗浄した後に、更に、エタノールで超音波洗浄した後、乾燥させた。
【0120】
次に、正極を作製した。正極活物質としてLiNi0.85Co0.12Al0.03O2を96質量部、導電助剤としてカーボンブラックを2質量部、及びバインダーとしてポリビニリデンフロライド(PVDF)を2質量部混合したものを、12μmのAl箔の片面に塗布し、プレス成型した。得られた成型体を、打ち抜き加工により、所定の大きさに打ち抜き、正極を得た。
【0121】
セパレータは、実施例1と同様にして準備した。
【0122】
電解液として、ジメトキシエタン(DME)と1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTFE)とを、それぞれが体積で2:8の割合となるように混合した溶媒に、LiN(SO2F)2(LiFSI)を1.2Mとなるよう溶解したものを準備した。
【0123】
以上のようにして得られた正極が形成された正極集電体、セパレータ、及び負極を、この順に、正極がセパレータと対向するように積層することで積層体を得た。更に、実施例1と同様、正極集電体及び負極に、それぞれ100μmのAl端子及び100μmのNi端子を超音波溶接で接合した後、ラミネートの外装体に挿入した。次いで、外装体に上記のようにして調製した電解液を注入した後、かかる外装体を封止することにより、ゲル電解質を有しないリチウム2次電池を得た。
【0124】
[エネルギー密度の評価]
実施例及び比較例で作製したリチウム2次電池のエネルギー密度を評価した。作製したリチウム2次電池の充放電容量と平均放電電圧の積を電池の総重量で割った値をエネルギー密度(Wh/kg)とする。エネルギー密度が高いほど電池の性能は優れるものとなる。
【0125】
【0126】
本実施形態の製造方法により製造した実施例1及び2のリチウム2次電池は、負極を0.5μm以上6.0μm以下としても、安定に充放電できた。また、表1に示すとおり、実施例1及び2のエネルギー密度は、いずれも500Wh/kg以上であり、比較例に比べて、高いエネルギー密度を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明によれば、エネルギー密度が高いリチウム2次電池を得ることができるため、様々な用途に用いられる蓄電デバイスの製造方法として、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0128】
100、300、400…リチウム2次電池、110、410…負極活物質を有しない負極、120、420…ゲル電解質、130、430…セパレータ、140、440…正極、150、450…正極集電体、310…負極端子、320…正極端子。