(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】建物、複層通気パネル及び通気断熱方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
E04B1/76 200C
(21)【出願番号】P 2023066257
(22)【出願日】2023-04-14
【審査請求日】2023-04-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505237879
【氏名又は名称】株式会社竹内建築研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和男
(72)【発明者】
【氏名】竹内 貴史
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和晴
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特公平03-064660(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3102903(JP,U)
【文献】登録実用新案第3207304(JP,U)
【文献】特開2003-020738(JP,A)
【文献】特開2020-153087(JP,A)
【文献】特開平09-078717(JP,A)
【文献】特開昭55-112959(JP,A)
【文献】特開2021-134653(JP,A)
【文献】登録実用新案第3207041(JP,U)
【文献】特開2014-142151(JP,A)
【文献】特開2003-020743(JP,A)
【文献】実公平05-020812(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76
F24F 3/00 - 3/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を取り囲む側壁部に配置された、板状の外壁断熱材と、
前記内部空間の底部に位置する、板状の床断熱材と、
前記内部空間の天井部に位置する、板状の天井断熱材と、
前記外壁断熱材の外周面に接して前記外壁断熱材を囲み、前記床断熱材の下に構成された床下空間から前記天井断熱材の上に構成された屋根裏空間を繋ぐ複層通気パネル
を備え、前記複層通気パネルが、前記複層通気パネルの外側に位置する外壁材と、前記複層通気パネルを流れる空気流を前記外壁材側の外側通気層と前記外壁断熱材側の内側通気層
を含む複数層に分離する分離層を
有し、前記外側通気層及び前記内側通気層の双方が前記床下空間に共通の導入口を有し、該共通の導入口を介して前記床下空間の空気が前記外側通気層及び前記内側通気層の双方を経由して前記屋根裏空間に導かれることを特徴とする建物。
【請求項2】
前記外壁断熱材に、前記内側通気層にのみ接続される吸気口及び排気口が開孔され、前記内側通気層から前記内部空間へ空気が取り込まれ、前記内部空間から前記内側通気層に空気が排出されることを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記床下空間を取り囲む基礎コンクリートと、
外気を地中経由により前記床下空間に供給する熱交換器
を更に備え、外気が、前記熱交換器、前記床下空間、前記複層通気パネル及び前記屋根裏空間を経由して排気されることを特徴とする請求項2に記載の建物。
【請求項4】
前記屋根裏空間に設けられる気流発生器を更に備え、
前記気流発生器の駆動により、前記外気は、前記熱交換器、前記床下空間、前記複層通気パネル及び前記屋根裏空間を経由して、前記気流発生器から
外部に排気されることを特徴とする請求項3に記載の建物。
【請求項5】
前記分離層は、密閉空気層を有する板状基材と、前記板状基材の両面にそれぞれ付加された外側熱反射層及び内側熱反射層を有することを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項6】
前記
外壁材及び前記分離層は、通気チャネルを有する取付具によって主柱又は間柱に固定されて前記複層通気パネルを構成していることを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項7】
建物の側壁部に配置される外壁断熱材の外周面に接して前記外壁断熱材を囲み、前記建物の床下空間から前記建物の屋根裏空間を繋ぐ複層通気パネルであって、
外側に位置する外壁材と、
前記複層通気パネルを流れる空気流を前記外壁材側の外側通気層と前記外壁断熱材側の内側通気層
を含む複数層に分離する分離層を備
え、
前記外側通気層及び前記内側通気層の双方が共通の導入口を有し、該共通の導入口を介して、前記外側通気層及び前記内側通気層の双方を流れる空気流にすることを特徴とする複層通気パネル。
【請求項8】
空気流を建物の外壁材側の外側通気層と前記建物の内部空間側に設けられた外壁断熱材側の内側通気層を含む複数層に分離して通気させる複層通気パネルを用いた通気断熱方法であって、
外気を建物の床下空間に供給する工程と、
前記床下空間の空気を、前記複層通気パネル
に設けられた前記外側通気層及び前記内側通気層の双方に共通の導入口を介して、前記外側通気層及び前記内側通気層の双方に導入し、前記床下空間の空気を前記外側通気層及び前記内側通気層の双方を経由させることにより、前記建物の屋根裏空間に移動させる工程と、
前記屋根裏空間から外部へ排気する工程と、
を含むことを特徴とする通気断熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物、複層通気パネル及び通気断熱方法に係り、特に、建物の内部空間を外気から断熱し易くして省エネルギ性を高めた建物、この建物の壁に用いて断熱効果に寄与する複層通気パネル及び複層通気パネルを用いた通気断熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギの安定供給や地球温暖化の防止等のため、住宅、事務所、工場、倉庫等の建物の空調管理においても、エアコン等の電力エネルギに頼り切らず、なるべく自然エネルギを利用して省エネルギ化を図る動きが盛んになっている。電力エネルギを用いない例としては、地中熱を利用した空調システムがいくつか提案されている。電力エネルギ等を用いる場合であっても、断熱効果を高め電力エネルギの使用量を減らした省エネルギ性に優れた建物が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された発明の建物では、地中熱を利用して作った空気を居室に供給して省エネルギ化を図っている。また、特許文献2に開示された発明の建物では、外皮において、空気(エア)による断熱を行い、省エネルギ化を図っている。「外皮」とは建築物省エネ法等が対象とする外気等に接する天井(小屋裏又は天井裏が外気に通じていない場合にあっては、屋根)、壁、床及び開口部並びに当該単位住戸以外の建築物の部分に接する部分」を意味する。特に、特許文献2に開示された発明の建物では、地中熱を利用した空気を外壁部に流すことで、断熱効果を上げる技術について開示している。
【0004】
しかし、これら特許文献1及び2に開示された発明の建物では、外壁部における十分な断熱効果を得ることができない。なぜなら、いずれの断熱構造も、冷暖房により所定温度に維持された居室内の熱エネルギが、外壁部を通して直接外部へ放出される構造だからである。例えば、特許文献2に開示された発明の建物では、外壁部において空気による断熱(エア断熱)を試みているが、内部熱エネルギは、外壁部を通して直接外部へ放出される構造であるし、更に、最も外皮寄りの通気層が外気を通すものであるので、十分な断熱効果を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3207041号
【文献】特開2014-142151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたもので、外壁部における断熱効果を向上させ省エネルギ効果を効率良く達成できる建物、この建物の壁に用いて断熱効果に寄与する複層通気パネル及び複層通気パネルを用いた通気断熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1態様は、(a)内部空間を取り囲む側壁部に配置された、板状の外壁断熱材と、(b)内部空間の底部に位置する、板状の床断熱材と、(c)内部空間の天井部に位置する、板状の天井断熱材と、(d)外壁断熱材の外周面に接して外壁断熱材を囲み、床断熱材の下に構成された床下空間から天井断熱材の上に構成された屋根裏空間を繋ぐ複層通気パネルを備える建物であることを要旨とする。第1態様に係る建物の複層通気パネルは、複層通気パネルの外側に位置する外壁材と、複層通気パネルを流れる空気流を外壁材側の外側通気層と外壁断熱材側の内側通気層の複数層に分離する分離層を含む。
【0008】
本発明の第2態様は、建物の側壁部に配置される外壁断熱材の外周面に接して外壁断熱材を囲み、建物の床下空間から建物の屋根裏空間を繋ぐ複層通気パネルに関する。即ち第2態様に係る複層通気パネルは、外側に位置する外壁材と、複層通気パネルを流れる空気流を外壁材側の外側通気層と外壁断熱材側の内側通気層の複数層に分離する分離層を備える。
【0009】
本発明の第3態様は、空気流を建物の外壁材側の外側通気層と建物の内部空間側に設けられた外壁断熱材側の内側通気層を含む複数層に分離して通気させる複層通気パネルを用いた通気断熱方法に関する。即ち、第3態様に係る通気断熱方法は、外気を建物の床下空間に供給する工程と、 床下空間の空気を、複層通気パネルを用いて建物の屋根裏空間に移動させる工程と、屋根裏空間から外部へ排気する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、外壁部における断熱効果を向上させ省エネルギ効果を効率良く達成できる建物、この建物の壁に用いて断熱効果に寄与する複層通気パネル及び複層通気パネルを用いた通気断熱方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係る建物の概要を示す断面図である。
【
図1B】
図1Aの建物の地盤側の構造の概要を示す断面図である。
【
図2A】
図1Aに示した第1実施形態に係る建物の破線の円で囲んだ領域X1の拡大図である。
【
図3】第1実施形態に係る建物の複層通気パネルの例を示す断面図である。
【
図4A】本発明の第1実施形態の第1変形例に係る建物の複層通気パネルの構造例を示す斜視図である。
【
図4B】本発明の第1実施形態の第2変形例に係る建物の複層通気パネルの構造例を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る建物の断熱・除湿原理について説明する図である。
【
図6】第1実施形態に係る建物の冬季環境における断熱・除湿効果について説明する図である。
【
図7】第1実施形態に係る建物の夏季環境における断熱・除湿効果について説明する図である。
【
図8A】本発明の第2実施形態に係る建物の概要を示す断面図である。
【
図8B】
図8Aの外壁断熱材に排気口を設け、排気口に換気扇を取り付けた構造を説明する拡大図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る建物の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1~第3実施形態を順次、例示的に説明する。図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の大きさの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚み、寸法、大きさ等は以下の説明から理解できる技術的思想の趣旨を参酌してより多様に判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0013】
又、以下に示す第1~第3実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための建物、この建物の壁に用いる複層通気パネル及び複層通気パネルを用いた通気断熱方法の例をそれぞれ示すものであって、本発明の技術的思想を以下に示す各構成部品の材質、形状、構造、配置等、更には各工程における条件等に限定するものではないことは勿論である。即ち、本発明の技術的思想は、以下に示す第1~第3実施形態で記載された内容にとどまらず、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
【0014】
更に、以下の説明では、本発明の技術思想を分かり易くするために、以下のような定義規定を置くことにする。即ち、下方向とは、地球上において概ね重力の向かう方向、即ち、物体が自然落下する方向をいい、上方向とは、下方向の反対方向をいうものとする。また、下面とは、下方向に向く面、下部とは、下方向に近い部分のことをいい、逆に、上面とは、上方向に向く面、上部とは、上方向に近い部分のことをいうものとする。更に、左右方向とは、上下方向に垂直で、地面に概ね平行な方向をいい、左方向及び右方向とは、それぞれ、人が地上に立って建物を見ているときに、その左側及び右側をいうものとする。
【0015】
「内部空間」とは、建物の内部に形成される空間のことであり、床下空間、屋根裏空間、及びこれらを繋ぐ通気層を除くものとする。内部空間は、建物が住宅の場合は、居室、寝室、廊下等を含み、また、建物が事務所、工場、倉庫等の場合は、オフィスルーム、作業場、保管室等を含む。「断熱層」は、断熱を主目的とする材料又は空間からなる層のことであり、外壁及び内装壁を除くものとする。
【0016】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る建物は、
図1Aに示すように、内部空間SP1を取り囲む側壁部に配置された板状の外壁断熱材11aと、内部空間SP1の底部に位置する板状の床断熱材11bと、内部空間SP1の天井部に位置する、板状の天井断熱材11cと、複層通気パネル(18,20)を備える。複層通気パネル(18,20)は、外壁断熱材11aの外周面に接して外壁断熱材11aを囲み、床断熱材11bの下に構成された床下空間SP2から天井断熱材11cの上に構成された屋根裏空間(小屋裏)SP3を繋ぐ断熱性の高い通気経路を構成する。
【0017】
ビルやマンション等の大型物件では、水を使ってモルタルで外壁材(外壁タイル)を下地に貼り付けていく湿式工法が採用される。湿式工法の建物に対し、第1実施形態に係る建物は一戸建て等の比較的小さな建物に採用される工法である、外壁材18を、水を使わないで下地に固定する乾式工法を対象としている。即ち、
図1Aに示すように、第1実施形態に係る建物の壁に用いる複層通気パネル(18,20)は、建物の最も外側に位置する外壁材18と、空気流を外壁材18側の「外側通気層」と外壁断熱材11a側の「内側通気層」の複数層に分離する分離層20を含む。なお、
図1Aでは図示を省略しているが、外壁断熱材11aの表面、即ち外壁断熱材11aと内側通気層の間にポリエチレン不織布等の防水シート(透湿防水シート)の層が存在してもよい。更に外壁断熱材11aと防水シートの間に仕切り板(下地面材)等が存在してもよい。内部空間SP1を取り囲む側壁部の天井部の法線方向から見た平面パターンは通常の建物に採用されている種々の平面構造が採用可能である。例えば、矩形、円形の他種々の凹凸多角形等が採用可能である。
【0018】
第1実施形態に係る建物の内部空間SP1は、例えば、住宅の室内等の空間が対応する。床下空間SP2は、
図1Aに示すように地盤Gの表面(地表)の間に設けられ、空気の流れ(通気)やその開閉(オン・オフ)が制御可能な略密閉(以下において「擬密閉」という。)状態に設計されている。屋根裏空間SP3は、内部空間SP1と屋根Rの間に設けられる空間に対応する。内部空間SP1は、建物の骨格を構成する柱(主柱、間柱等)(図示省略)、梁(図示省略)や根太(図示省略)により取り囲まれている。
図1Aでは、柱、梁や根太については図示を省略しているが、
図2A~2C及び
図4Aには、柱30が例示されている(
図1Aと
図2A~2Cとは、断面の位置異なるので完全な符合をしていないことに留意されたい。)。
【0019】
図1Aの領域X1を拡大して示す
図2Aにおいては、柱30の下側に柱30に直交する土台35が、紙面に垂直方向に伸びる構造が示されている。又、
図1Aの領域X3を拡大して示す
図2Cにおいては、柱30の上側に柱30に直交する軒桁37が、紙面に垂直方向に伸びる構造が示されている。そして、柱、梁、根太、野縁、土台、軒桁、母屋等は、木材を想定しているが、鉄骨等の木材以外の材料であってもよい。また、柱や梁の間には、内部空間SP1と外部を断熱する外壁断熱材11a、内部空間SP1と床下空間SP2を断熱する床断熱材11b、及び内部空間SP1と屋根裏空間SP3を断熱する天井断熱材11cが設けられている。そして
図1Aに例示した構造では、外壁断熱材11a、床断熱材11b、及び天井断熱材11cによって内部空間SP1が囲まれている。
【0020】
外壁断熱材11aの内部空間SP1側(視座を変え、内部空間SP1からみて左右方向)には、内壁材としての内部仕上材(内装材)12aが設けられている。図示を省略しているが、外壁断熱材11aと内部仕上材12aの間に防湿シートを挟んでもよい。又、床断熱材11bの内部空間SP1側(視座を変え、内部空間SP1からみて下方向)には、床仕上材12bが設けられ、天井断熱材11cの内部空間SP1側(視座を変え、内部空間SP1からみて上方向)には、天井仕上材12cが設けられている。内部仕上材12a、床仕上材12b及び天井仕上材12cが内部空間SP1に直接接する内装面を構成している。
【0021】
床下空間SP2は、その左右方向側面側が建物の骨格を構成する柱(主柱、間柱等)や梁を支える土台となる壁状の基礎コンクリート13aにより取り囲まれている。また、床下空間SP2の下方向地面側には、防水コンクリート13bが敷き詰められて、基礎コンクリート13aと共に箱状の形状を構成している。
図1Aの領域X1を拡大して示す
図2Aには、基礎コンクリート13aの壁の上に、土台35が設けられた構造が示されている。さらに、床下空間SP2の上方向の内部空間SP1側には、内部空間SP1の床断熱材11bが設けられている。
図1Aでは、床下空間SP2の左右方向となる側面側及び下方向の地面側に床下断熱材14が設けられているが、この床下断熱材14は省略しても構わない。また、床下空間SP2は、通気止め15により密閉状態となっているが、開け閉め可能な床下換気口を設ける等、制御された通気が可能な擬密閉状態であってもよい。
【0022】
屋根裏空間SP3は、その左右方向となる側面側が建物の骨格を構成する柱(主柱、間柱等)、軒桁や梁により取り囲まれている。また、屋根裏空間SP3の下方向の内部空間SP1側には、内部空間SP1の上面(天井)側に位置する天井断熱材11cが設けられている。さらに、屋根裏空間SP3の左右方向となる側面側には、屋根裏空間SP3の空気を外部に排気するための換気扇(ファン)16が設けられている。また、屋根裏空間SP3の上方向となる外部側には、建物の屋根17が設けられている。
図1Aでは、屋根17は、フラットな陸屋根であるが、これに限られず、様々なタイプの屋根に変えることができる。
【0023】
内部空間SP1の左右方向となる側面側に設けられた外壁断熱材(断熱層)11aのさらに外側には、
図1A及び
図2A~2Cに示すように外壁材(サイディングボード)18が設けられている。外壁材18は、各種サイディング、モルタル、タイル、高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート(ALC)、ガルバリウム鋼板(登録商標)等を採用することができる。外壁断熱材(断熱層)11aと外壁材18の間には、内部空間SP1を取り囲むようにして、床下空間SP2と屋根裏空間SP3を繋ぐ多重通気層19が設けられている。多重通気層19は、
図3に示すような積層構造の分離層20により、最も外壁材18側に位置する外側通気層19aと、外壁断熱材11a側に位置する内側通気層19bを含む複数層に分離されている。
【0024】
複層通気パネル(18,20)を構成する分離層20は、例えば、高い断熱性と強度を兼ね備えた板状基材20aと、板状基材20aの外側面に付加された外側熱反射層(熱反射材)20bと、板状基材20aの内側面に内側熱反射層(熱反射材)20cを備えている。板状基材20aは、面材密閉空気層を少なくとも一部に含むように構成してもよい。外側熱反射層20bと内側熱反射層20cとで密閉空気層を構成することで面材密閉空気層としての分離層20が実現できる。ダンボール等も内部に空気層を含むので面材密閉空気層として機能できる。このような面材密閉空気層としての分離層20は、建物と独立した商品(外壁断熱材)として製造、販売することができる。但し、板状基材20aは、密閉空気層を有しないボール紙、プラスチック(樹脂)、金属等であっても構わない。
【0025】
外側熱反射層20b及び内側熱反射層20cは、熱線(遠赤外線)に対する反射率の高い材料層、例えばアルミ箔等の薄い金属層であるのが好ましい。詳細は
図5~
図7等を用いて後述するが、外側熱反射層20b及び内側熱反射層20cを有する分離層20は、非常に高い断熱性を有するので、内部熱エネルギEisは、外壁部から直接外部へ放出されることはない。即ち、内部熱エネルギEisは、内側通気層19bを流れる空気流にすべて吸収され、内側通気層19bの上方に移動する。このため第1実施形態に係る複層通気パネル(18,20)の構造は、外壁部における高い断熱効果を実現し、断熱効果による省エネルギを達成することができる。
【0026】
更に分離層20を有する複層通気パネル(18,20)も、サイディング施工用部材として単独の商品価値がある。即ち、複層通気パネル(18,20)を大量生産で用意し、外壁の乾式サイディング工法に用いて、外壁断熱材(断熱層)11aの上に積層して組み合わせた断熱壁(11a,18,20)を構成することにより、建物の外壁部における断熱効果を向上させる施工を単純化させことができる。特に、気流発生器としての換気扇(ファン)16を屋根裏空間SP3側に設け、床下空間SP2側に地中熱を利用した熱交換器24を有する建物に適用することで、屋根裏空間SP3と床下空間SP2を複層通気パネル(18,20)で接続して断熱壁(11a,18,20)を構成することにより、建物の外壁部における断熱効果を向上させ、内部空間SP1に対する省エネルギ化を図ることができる。
【0027】
図1A及び
図2Bに示すように、内部空間SP1の左右方向となる側面側には、内側通気層19bから内部空間SP1に空気を取り込むための吸気口21が設けられている。また、内部空間SP1の上方向天井側には、内部空間SP1から外部に空気を排気するための排気口22が設けられている。
図1Aでは構造が分かり難いが、排気口22を内部空間SP1と外部を繋ぐようにしてもよく、内部空間SP1と内側通気層19bを繋ぐように構成してもよい。吸気口21及び排気口22は、内部空間SP1に対して24時間換気を行うための要素である。排気口22には、例えば、換気扇(ファン)23が取り付けられており、これにより内部空間SP1の換気を効率よく、かつスムーズに行うようにしている。
【0028】
地盤Gの内部には、
図1Bに示すように地中熱を利用する熱交換器24が4箇所で折れ曲がったほぼU字型に近い配管形状で設けられている。熱交換器24は、外気を地盤Gの内部に循環させることで、外気を地中熱により所定温度(摂氏13℃~15℃)の空気に直接変換するタイプのものである。この熱交換器24は、地盤Gの内部に張り巡らされた直径20mm~200mm程度の配管(熱交換パイプ)、又は複数の配管(熱交換パイプ)の束を主構成要素とする。配管の最も深い部分(地面からの深さ)は、2m以上(例えば、5m程度)であるのが好ましい。また、配管の張り巡らし方については、特に制限されないが、主に建物の下部に配置するのが好ましい。
【0029】
ほぼU字型の熱交換器(配管)24の一端は、
図1Bに示すように、平面パターン上、床下空間SP2から外れた位置の地盤Gの表面から上方に突出しており、外気導入口25aとなっている。外気導入口25aは、配管内に雨水等が入るのを防止するためのカバー26により覆われている。また、外気導入口25aには、配管内に埃や塵等が進入するのを防止するためにフィルタ27が取り付けられている。ほぼU字型に近い熱交換器(配管)24の他端は、外気導入口25aから離間した位置において地盤Gの表面から床下空間SP2に突出しており、外気排気口(床下吸気口)25bとなっている。外気導入口25aから取り込んだ外気は、地中熱により、一年を通して所定温度(摂氏13℃~15℃)の空気に変換され、外気排気口25bから床下空間SP2に導入される。
【0030】
配管(熱交換パイプ)の材質は特に限定されないが、地下地盤Gとの熱交換のため、熱伝導率が高い材質、例えば、直径50mm程度の金属管等から構成されているのが好ましい。また、配管には、圧力調整バルブや外気を取り込むためのファン等が付加されていても構わない。また、
図1Bでは、外気を地盤Gの内部に循環させ、地中熱を外気に直接伝達するシステムであるが、これに代えて、熱媒体として水や不凍液等の液体を介在させる熱交換システムであっても構わない。
【0031】
第1実施形態に係る建物において、床下空間SP2は、制御された通気の可能な擬密閉状態となっている。即ち、配管(熱交換パイプ)内部、床下空間SP2、多重通気層19(外側通気層19a及び内側通気層19bの双方)、及び屋根裏空間SP3は、連続した1つの空間となっている。従って、例えば、気流発生器としての換気扇(ファン)16を駆動させることにより、熱交換器24により外部から床下空間SP2に取り入れられた空気は、床下空間SP2から、多重通気層19(外側通気層19a及び内側通気層19bの双方)を経由して、屋根裏空間SP3に導かれ、さらに、屋根裏空間SP3から外部に排気される。この時、換気扇(ファン)23を駆動させれば、内側通気層19bから、内部空間SP1を経由して外部に至る空気の流れも形成することができる。
【0032】
図2Aの拡大図に示すように、
図1Aの破線の円で囲んだ領域X2において、外壁材18及び分離層20は、取付具29により、それぞれ所定のギャップ(間隔)を介して柱30又は外壁断熱材11aの表面に取り付けられている。取付具29は、所定のピッチ(間隔)で配列された柱(間柱)と柱(間柱)を連結するように水平方向に複数本が平行に伸びる。取付具29には、断面が矩形若しくはC型等の長尺の部材、例えば壁下地材である「横胴縁(よこどうぶち)」と同様な構造物を用いることができる。取付具29と柱(間柱)、取付具29と分離層20、取付具29と外壁材18はそれぞれ胴縁ボルトや胴縁ビス等の金具で留められる。取付具29を固定する金具にはL字型の補助金具等を含めてよい。
【0033】
外壁断熱材11aの表面と間柱の面が外面合わせされている場合、この外面合わせをした面に、防水シートを貼り付けてもよい。外壁断熱材11aと柱30又は間柱を外面合わせした面に防水シートを設けた場合は、この防水シートを挟んで取付具29が固定される。防水シートが柱30又は間柱と取付具29に存在する場合は、取付具29を貫通した胴縁ビス等の金具が防水シートを貫通した後、柱30又は間柱に金具差し込まれることにより、取付具29が固定される。複数本の水平方向に伸びる複数本の取付具29を用いることにより、風圧力に対して強度の低い外壁材18や分離層20を用いる場合であっても、風圧力によって壊れることのない強度を維持して、複層通気パネル(18,20)を主柱、間柱等に固定できる。
【0034】
図1と
図2Aを比較すると分かるように、
図2Aに示した柱30は、柱30が主柱の場合の例で、外壁断熱材11aを貫通するように設けられた構造の例であるので、
図2Aの紙面の手前側方向に向かって、外壁断熱材11aが紙面に垂直方向に伸びている。同様に、
図2Aの紙面の奥の方向に向かって、柱30の位置から外壁断熱材11aが伸びている。
図2Aの拡大図は柱30を切る位置の断面図であり、
図1Aは柱30のない位置で外壁断熱材11aを切る断面図である。なお、取付具29として柱と柱の間を連結する横胴縁を用いる場合には、
図1Aの断面にも現れるが、紙面の都合上、
図1Aでは取付具29の図示を省略している。一方、柱30が主柱より細い間柱を示すとする場合には、内側通気層19b側のみに露出するように、外壁断熱材11aの内側通気層19b側の面に間柱が埋め込まれて外面合わせをする配向の使用では、
図2Aに示した構造で柱30と内部仕上材12aの間に外壁断熱材11aの層があっても良い。ただし、柱30を主柱と奥行きが同じで幅のみが狭い細い間柱の設計の場合には、外面合わせが可能となるので、
図2Aに示した構造と同様に間柱と内部仕上材12aは接触する。
【0035】
即ち、多重通気層19側となる柱30の外側表面には、一定間隔(ピッチ)で縦方向に並んだ複数の取付具29を介して複層通気パネル(18,20)を構成する外壁材18及び分離層20が取り付けられる。取付具29の材質は、特に限定されず、例えば、木材や金属等を用いることができ、発泡樹脂にアルミ心材を一体成形したものでもよい。但し、取付具29が横胴縁のように水平方向に伸び、この取付具29の複数本を縦方向に並列に設ける場合には、
図2A及び
図2Cに示すように、ホール(貫通孔)、スリット、切欠き等の縦方向通気のための外側通気チャネルHa及び内側通気チャネルHbが、複数本の取付具29のそれぞれに設けられている。
【0036】
取付具29は、具体的には内側通気チャネルHbが開孔された内側取付具と、この内側取付具に平行に対峙する外側通気チャネルHaが開孔された外側取付具の2種類のセットで構成する態様が可能である。この2種類のセットを用いる場合は、先ず、柱30の外側表面に内側取付具を金具で取り付けた後、この内側取付具に分離層20を金具で取り付ける。更に、分離層20と内側取付具を貫通するように外側取付具を金具で柱30に外側取付具を内側取付具と同一水平レベルで平行に取り付けた後、この外側取付具に外壁材18を金具で取り付ける。この4段階の作業に対し、分離層20を水平方向に伸びる複数の取付具29で固定して一体化した複層通気パネル(18,20)を商品として購入しておけば、内側取付具と外側取付具を用いた4段階の工程が不要で、サイディングの施工が容易になる。即ち、予め用意した複層通気パネル(18,20)の取付具29の箇所において、柱、間柱等に金具で複層通気パネル(18,20)を一括で固定すれば、一回の作業工程で外壁断熱材11aの上に積層して断熱壁(11a,18,20)が実現できる。防水シートを外壁断熱材11aの外側の面に設けている場合は、防水シートを挟んで、複層通気パネル(18,20)が取付具29の箇所で、柱30又は間柱で固定されて、断熱壁(11a,18,20)が実現できる。
【0037】
図2Bには取付具29の図示を省略しているが、便宜上の省略である。横胴縁の設計と同様に、水平方向に伸びる取付具29を縦方向に一定ピッチで複数本並列に設ける場合には、取付具29が存在することは勿論である。一般に、風圧力に対しての強度計算から、横胴縁は300mm程度から600mm程度のピッチで複数本が取り付けられる。したがって、
図2Bに対応する
図1AのX2の領域にも取付具29が存在し、それぞれの取付具29に外側通気チャネルHa及び内側通気チャネルHbが設けられている。外側通気チャネルHaは、外側空気流F2を流す貫通孔等であり、内側通気チャネルHbは、複層空気流(F2,F3)のうちの内側空気流F3を流す貫通孔等である。内側空気流F3は、内部空間SP1により近い側に位置する外壁断熱材11aの外側表面を流れる。本明細書では外側通気チャネルHa及び内側通気チャネルHbを包括的に称する場合は、通気チャネル(Ha,Hb)と表現する。包括表現をすれば、「通気チャネル(Ha,Hb)を用いることにより、複層通気パネル(18,20)は、床下空間SP2から屋根裏空間SP3までの複層空気流(F2,F3)を流す多重通気層19として機能することができる」と表現できる。
【0038】
外壁材18の下端は、通常、オープン状態になって外気が進入する構造となっているが、第1実施形態に係る建物の擬密閉構造では、基礎コンクリート13aと外壁材18の間に通気止め15を嵌め込み、外気が外側通気層19a及び内側通気層19bの双方に進入しないように工夫している。また、
図2Aに示すように、分離層20の下端は、通気止め15よりも上部に存在するため、床下空間SP2の空気が入力空気流F1として、外側通気層19a及び内側通気層19bの双方に進入するようになっている。
図2Aでは土台35の一部に貫通孔が開孔され、貫通孔を介して入力空気流F1が複層通気パネル(18,20)の下端に導入されることを模式的に示している。既に説明した通り、土台35は、基礎コンクリート13aの上に固定された基材であり、柱30の下端に接続されるように柱30に直交するように紙面に垂直する方向に伸びている。そして、複層通気パネル(18,20)によって、床下空間SP2の空気からなる入力空気流F1が外側空気流F2と内側空気流F3に分離され、それぞれ外側通気層19a及び内側通気層19bに流れる。
【0039】
そして、
図2Bの拡大図に示すように、吸気口21は、内部空間SP1と内側通気層19bを繋いでいるので、内側通気層19bを流れる空気のみが内部空間SP1に進入し、24時間換気が実現される。換気に際しては、まず、
図1Aの左側に示すように、屋根裏空間SP3に設けられた気流発生器としての換気扇(ファン)16を駆動させる。すると、外気は、
図1Bに示した外気導入口25aから熱交換器24の配管内に取り込まれ、地盤Gの内部を循環することで、所定温度の空気に変換される(熱交換工程)。例えば、真冬においては、例えば、5℃~-30℃程度の外気が比較的温暖な空気(13℃~15℃)に変換される。そして、この温暖な空気は、
図1Bに示すように外気排気口25bから、擬密閉空間となる床下空間SP2に導入される。床下空間SP2は熱交換器24を介した空気のみが導入可能な擬密閉空間である。床下空間SP2は、上方向が内部空間SP1に面し、下方向及び左右方向が、例えば、床下断熱材14により覆われているので、擬密閉空間によって温暖な空気を維持し易くなっている。
【0040】
床下空間SP2に導入された温暖な空気は、内部空間SP1の左右方向の側面を覆う外側通気層19a及び内側通気層19bの双方を経由して屋根裏空間SP3に導かれ、かつ屋根裏空間SP3から換気扇16を介して外部に排気される(気流発生工程)。この時、床下空間SP2から外側通気層19a及び内側通気層19bへの空気の移動は、
図2Aに示すように、多重通気層19によって、入力空気流F1が複層空気流(F2,F3)に分離されて、それぞれ外側通気層19a及び内側通気層19bに流れる。従来の「外壁エア断熱方法」として、外気を外壁部の下端に設けた換気口から直接取り入れ、単相のエアカーテンとして外壁部に流す構造が知られているが、第1実施形態に係る建物では、通気止め15により外気を遮断し、床下空間SP2の温暖な空気のみを多重通気層19を有する断熱壁(11a,18,20)に、複層空気流(F2,F3)として流している。多重通気層19を有する断熱壁(11a,18,20)を備え、且つ、外気を直接、複層通気パネル(18,20)に導入しない構造を採用することにより、建物の外壁部における断熱及び除湿効果を、従来の外壁エア断熱方法に比して、より向上させることができる。そして、床下空間SP2や屋根裏空間SP3の断熱及び除湿効果も向上するので、結果的に、建物の外皮における断熱及び除湿効果を、従来の外壁エア断熱方法に比して顕著に向上させることができる。
【0041】
分離層20や外壁材18が縦方向を長手とする長方形の板材の場合は、取付具29は横胴縁型が好ましい。横胴縁型の構造の場合は、複層通気パネル(18,20)の取付具29に外側通気チャネルHa及び内側通気チャネルHbを設けて、床下空間SP2から屋根裏空間SP3へ複層空気流(F2,F3)を流すことができる。しかし、取付具29は、図示した横胴縁型に限定されない。取付具29を、横胴縁とは直交する方向となる縦胴縁型にしてもよい。分離層20や外壁材18が水平向を長手とする長方形の板材の場合は縦胴縁型が好ましい。取付具29を縦胴縁型にする場合は、取付具29は、上方の梁と下方に設けた「縦胴縁取り付け用横胴縁」の間に設けるように、準備が必要になる。縦胴縁型の場合は、隣接する縦の取付具29と縦の取付具29の間を通気チャネルとすることが可能であるので通気チャネルは不要である。縦胴縁型の取付具29の方が、構造的に下地の腐食が起こりにくく、雨漏りも生じにくい。縦胴縁型の場合は、雨水が入り込んだ場合は上から下へと流れて排出され、スムーズに空気と水が移動し、流れが遮られない。しかし、縦胴縁の取付具29に通気チャネルを設けてもよく、取付具29として横胴縁型の構造と共に縦胴縁の構造を用いてもよい。
【0042】
内側通気層19bを流れる内側空気流F3は、例えば、
図1Aの破線の円で囲んだ領域X2を、
図2Bに拡大して示すように、吸気口21を経由して、空気流F4として内部空間SP1に取り込まれる。
図2Aと同様に
図2Bは、柱30を切る位置の断面図であるので、
図1Aに示した柱30のない位置で切った外壁断熱材11aは図示されていない。内部空間SP1に取り込まれた空気は、例えば、
図1Aの換気扇23により排気口22から外部に排気され、又は
図8Aの換気扇33により排気口32から内側通気層19bに排気される。内部空間SP1と吸気口21の間には、空気流F4の通気を確保しつつ、吸気口21の穴を目視に対し顕著にさせないように隠すための蓋材21’が取り付けられている。
【0043】
また、
図2Cに
図1Aの破線の円で囲んだ領域X3を拡大して示すように、外壁材18の上端は、屋根(図示省略)まで達し、分離層20の上端は、屋根よりも下部である屋根裏空間SP3内に存在するため、外側通気層19a及び内側通気層19bの空気流は、屋根裏空間SP3で合流した後に外部に排気される。
図2A及び
図2Bと同様に
図2Cは、柱30を切る位置の断面図であるので、
図1Aの外壁断熱材11aは図示されていない。内部空間SP1の左右方向の側面の外側通気層19a及び内側通気層19bをそれぞれ流れる複層空気流(F2,F3)は、例えば、
図2Cに示すように、合成空気流F5として、屋根裏空間SP3に移動する。屋根裏空間SP3は擬密閉状態に設計され、更には、下方向が内部空間SP1に面し、上方向及び左右方向が、例えば、屋根17や外壁材18により覆われているので、外気の影響を受け難くなっている。屋根裏空間SP3の空気は、例えば、
図1Aの換気扇16により外部に排気される。
【0044】
第1実施形態に係る複層通気パネル(18,20)及びこれを用いた複層通気断熱方法によれば、最も外壁寄りの外側通気層19aには、外気ではなく、擬密閉状態の床下空間SP2の空気が複層通気パネル(18,20)を介して流れるため、外壁部における断熱効果を向上させることができる。また、床下空間SP2の入力空気流F1が、複層通気パネル(18,20)により外側通気層19a及び内側通気層19bに分離して複層空気流(F2,F3)を形成して、屋根裏空間SP3の合成空気流F5となってから外部に排気される。複層通気パネル(18,20)が外側通気層19aと内側通気層19bに分離することにより、冬季に内側通気層19bに生じ易い湿気や夏季に外側通気層19aに生じ易い湿気は、いずれも屋根裏空間SP3を介して外部へ放出される。第1実施形態に係る複層通気パネル(18,20)を有する断熱壁(11a,18,20)による外壁部側での除湿効果により、建物の柱や壁に結露が生じてカビの発生や柱が老朽化する等の悪影響を回避することができる。
【0045】
(断熱・除湿原理)
例えば、
図5に示すように、内部空間SP1の内部熱エネルギEisは、複層通気パネル(18,20)を介して内部空間SP1の側面から外壁部に放出され、内部空間SP1の下面から床下空間SP2に放出され、更に、内部空間SP1の上面から屋根裏空間SP3に放出される。内部空間SP1から床下空間SP2及び屋根裏空間SP3に放出される熱エネルギEisは、床下空間SP2及び屋根裏空間SP3が比較的広く、床下空間SP2及び屋根裏空間SP3には外部温度よりも内部空間SP1の温度に近い空気が流れているため小さい。従って、建物の外壁部における内部熱エネルギEisの放出をできるだけ抑えることが建物の省エネルギ化にとって重要な要素となる。第1実施形態に係る建物は、以下に説明するように、内部熱エネルギEisが外壁部を介して直接外部に放出されず、かつ外部熱エネルギEoutが外壁部を介して直接内部空間SP1側に進入しないような断熱原理を実現する。
【0046】
・冬季環境
図6に示すように、冬季環境においては、地中熱の利用によって、床下空間SP2の温度Tufは、例えば、13℃程度に維持されている。この温度の入力空気流F1は、内側空気流F3として内側通気層19bに進入する。この時点、即ち、外壁材18の下部P1では、内部空間SP1の温度Tis(例えば、20℃程度)と内側空気流F3の温度Tinとの温度差が大きく、内部熱エネルギEisの放出(エネルギロスφloss)が大きい。しかし、第1実施形態に係る建物では、分離層20が高い断熱性を備えているので、内部熱エネルギEisは直接外部に放出されず、ほとんどが内側空気流F3に吸収され、上方に流れていく。例えば、内側空気流F3の温度Tinが15℃程度に上昇し、更に上方に流れていく。
【0047】
同様に、13℃程度の温度の入力空気流F1は、外側空気流F2として、外側通気層19aに進入する。この時点、即ち、外壁材18の下部P1では、外部の温度Tos(例えば、5℃程度)と外側空気流F2の温度Toutとの温度差が大きく、外部の熱エネルギ(冷えた空気)が内部空間SP1側に進入し易くなる。しかし、第1実施形態に係る建物では、分離層20が高い断熱性を備えているので、この外部熱エネルギは内部空間SP1に進入することはなく、ほとんどが外側空気流F2に吸収され、上方に流れていく。例えば、外側空気流F2の温度Toutが10℃程度に下降し、更に上方に流れていく。
【0048】
第1実施形態に係る建物の熱交換原理は、複層空気流(F2,F3)が上方に流れていく過程で常に発生している。即ち、内側空気流F3の温度Tinは、上方にいくほど、内部空間SP1の温度Tis(例えば、20℃程度)に近づいていき、次第に、内部空間SP1の温度Tisと内側空気流F3の温度Tinとの温度差が小さくなり、内部熱エネルギEisの放出(エネルギロスφloss)も小さくなる。同様に、外側空気流F2の温度Toutも、上方にいくほど、外部の温度Tos(例えば、5℃程度)に近づいていき、次第に、外部の温度Tosと外側空気流F2の温度Toutとの温度差も小さくなり、外部熱エネルギが建物内に進入しなくなる。
【0049】
最終的に、外壁材18の上部P2では、内側空気流F3の温度Tinは、内部空間SP1の温度Tis(例えば、20℃程度)と同じになり、内部熱エネルギEisの放出(エネルギロスφloss)が零になる。同様に、外側空気流F2の温度Toutは、外部の温度Tos(例えば、5℃程度)と同じになり、建物内に進入する外部熱エネルギも零になる。これら複層空気流(F2,F3)は、屋根裏空間SP3に移動した後、外部に放出される。
【0050】
・夏季環境
図7に示すように、夏季環境においては、地中熱の利用によって、床下空間SP2の温度Tufは、例えば、25℃程度に維持されている。この温度の入力空気流F1は、内側空気流F3として内側通気層19bに進入する。この時点、即ち、外壁材18の下部P1では、内部空間SP1の温度Tis(例えば、20℃程度)と内側空気流F3の温度Tinとの温度差が大きく、内部熱エネルギEisの放出(エネルギロスφloss)が大きい。しかし、第1実施形態に係る建物では、分離層20が高い断熱性を備えているので、内部熱エネルギEisは直接外部に放出されず、ほとんどが内側空気流F3に吸収され、上方に流れていく。例えば、内側空気流F3の温度Tinが23℃程度に下降し、更に上方に流れていく。
【0051】
同様に、25℃程度の温度の入力空気流F1は、外側空気流F2として、外側通気層19aに進入する。この時点、即ち、外壁材18の下部P1では、外部の温度Tos(例えば、35℃程度)と外側空気流F2の温度Toutとの温度差が大きく、外部の熱エネルギ(熱い空気)が内部空間SP1側に進入し易くなる。しかし、第1実施形態に係る建物では、分離層20が高い断熱性を備えているので、この外部熱エネルギは内部空間SP1に進入することはなく、ほとんどが外側空気流F2に吸収され、上方に流れていく。例えば、外側空気流F2の温度Toutが28℃程度に上昇し、更に上方に流れていく。
【0052】
第1実施形態に係る建物では複層空気流(F2,F3)が上方に流れていく過程で常に発生している。即ち、内側空気流F3の温度Tinは、上方にいくほど、内部空間SP1の温度Tis(例えば、20℃程度)に近づいていき、次第に、内部空間SP1の温度Tisと内側空気流F3の温度Tinとの温度差が小さくなり、内部熱エネルギEisの放出(エネルギロスφloss)も小さくなる。同様に、外側空気流F2の温度Toutも、上方にいくほど、外部の温度Tos(例えば、35℃程度)に近づいていき、次第に、外部の温度Tosと外側空気流F2の温度Toutとの温度差も小さくなり、外部熱エネルギが建物内に進入しなくなる。
【0053】
最終的に、外壁材18の上部P2では、内側空気流F3の温度Tinは、内部空間SP1の温度Tis(例えば、20℃程度)と同じになり、内部熱エネルギEisの放出(エネルギロスφloss)が零になる。同様に、外側空気流F2の温度Toutは、外部の温度Tos(例えば、35℃程度)と同じになり、建物内に進入する外部熱エネルギも零になる。これら複層空気流(F2,F3)は、屋根裏空間SP3に移動した後、外部に放出される。
【0054】
第1実施形態に係る建物では、外壁部の上方(屋根裏空間SP3)に向かうほど、外側通気層19a内の外側空気流F2の温度Toutと内側通気層19b内の内側空気流F3の温度Tinとの温度差が大きくなる。一方、
図6に示す状況で複層通気パネル(18,20)を有しない場合の冬季環境においては、内部空間SP1の水分Moを含んだ空気が内側通気層19bに進入し、内側通気層19b内に結露が生じ易い。また、
図7に示す状況で複層通気パネル(18,20)を有しない場合、夏季環境においては、外部の水分Moを含んだ空気が外側通気層19aに進入し、外側通気層19a内に結露が生じ易い。
【0055】
しかし、複層通気パネル(18,20)を有する第1実施形態に係る建物では、外側通気層19a及び内側通気層19bには、それぞれ、床下空間SP2から屋根裏空間SP3を経由して外部に排気される複層空気流(F2,F3)が常に形成されている。このため、外側通気層19a及び内側通気層19bにおける湿気は、直ちに、屋根裏空間SP3を介して外部へ放出される。第1実施形態に係る建物の外壁部での複層通気パネル(18,20)の除湿原理により、建物の柱や壁に結露が生じてカビの発生や柱が老朽化する等の悪影響を回避することができる。
【0056】
以上のように、第1実施形態に係る建物によれば、ランニングコストがほとんど発生しない地中熱利用の熱交換器と、外壁部の複層通気パネル(18,20)による新たな断熱・除湿原理により、冬季の熱損失及び夏季の熱流入を軽減して建物全体を効率良く冷暖房することができるので、一年中(四季)を通して建物内部を適温に保つことができ、省エネルギ効果を実現することができる。
【0057】
(第1実施形態の第1変形例)
外壁材18、分離層20や取付具29と柱30の相対的位置関係として、種々の態様を例示することが可能である。本発明の第1実施形態の第1変形例に係る建物では、
図4Aに示すように外壁材18と外壁断熱材(図示省略)の外側面の間に主柱、間柱等の柱30が所定の間隔で位置している場合の例示である。そして、防水シート31が外側面から突出した柱30の3側面を囲むように段差形状で貼り付けられている。
図4Aでは防水シート31の裏側に外壁断熱材が存在する。なお、図示を省略しているが、防水シート31と外壁断熱材11aの外側面の間に仕切り板(下地面材)等が含まれていてもよい。第1変形例に係る建物は、
図2Aに示した構造とは異なり、柱30の面と外壁断熱材11aの内側通気層19b側の面とが外面合わせがされていない段差構造である。即ち、柱30の外側の面が外壁断熱材11aの面よりも外側に、柱30の太さ(奥行き)分突出した位置関係になっている。
図4Aに示すような段差構造であっても、
図2Aで説明した場合と同様に、取付具29を防水シート31を介して横胴縁に類似な構造にして用いることができる。
【0058】
図4Aとは異なり、外壁材18と外壁断熱材11aの外側面に取り付けた防水シート31の間に主柱、間柱等の柱30が位置していても構わない。この場合も
図2Aに示した構造とは異なり、柱30の面と外壁断熱材11aの内側通気層19b側の防水シート31の面とが外面合わせがされていない段差構造になる。即ち、柱30の外側の面が防水シート31の面よりも外側に、柱30の太さ(奥行き)分突出して、外壁材18と防水シート31の間に挟まれた位置関係になる。防水シート31の外側に柱30が位置する段差構造であっても、
図2Aで説明した場合と同様に、取付具29を横胴縁に類似な構造にして用いることができる。
【0059】
図4Aに示した取付具29は、例えば、取付具29の長手方向にそった中心線に沿って分離層20を挟み込んだ構造が採用可能である。このためには、柱30の長手方向に定義される中央線の位置に取付具29の長手方向に定義される中央線が位置するような関係になる必要がある。例えば、柱30の側面に、柱30の長手方向に定義される中央線に向かって柄穴を開孔し、この柄穴に取付具29の長手方向に定義される中央線が位置するような関係で柄接ぎをしてもよい。或いは柱30の正面に取付具29の高さ分の幅を有した溝を掘り、取付具29に柱30の太さ(横幅)分の溝を掘って十字相欠接ぎをしてもよい。柄接ぎや十字相欠接ぎ等により、取付具29の中心線が柱30の中央に取り付けられるようにして、
図4Aに示した柱30と図示を省略した他の柱の間を連結するように、取付具29が水平方向に伸びる構造が実現できる。
【0060】
そして取付具29の中央線の位置において、分離層20が縦方向の柄穴による柄接ぎや十字相欠接ぎで分離層20が固定される。或いは、柱30の中央の位置で2分割される取付具29で分離層20を挟み込んで、分離層20を柱30に固定しても良い。
図4Aの外壁材18は、取付具29の外側の面に金具で固定することができる。特に、十字相欠接ぎが可能な柱30の太さ分の溝を有する複層通気パネル(18,20)をサイディング用商品として事前に購入し用意しておけば、防水シート31の上から取付具29を介して、柱、間柱等に金具で固定すれば、単純な作業工程で外壁断熱材11aの上に積層されて、断熱壁(11a,18,20)が簡単に実現できる。
【0061】
図4Aにおいて紙面の裏側となる防水シート31の更に裏側には、図示を省略した外壁断熱材11aを介して内部空間SP1が配置されている。
図2A及び
図2Cと同様に、防水シート31の多重通気層19側には、取付具29を介して外壁材18及び分離層20が取り付けられる。取付具29の材質は、特に限定されず、例えば、木材や金属等を用いることができる。但し、取付具29には、
図4Aに示すように、貫通孔等の縦方向通気のための外側通気チャネルHa及び内側通気チャネルHbが設けられている。
図4Aに示す構造であっても、外側通気チャネルHa及び内側通気チャネルHbを介して、床下空間SP2から屋根裏空間SP3までの複層空気流(F2,F3)を流すことができる。
【0062】
(第1実施形態の第2変形例)
本発明の第1実施形態の第2変形例に係る建物として、
図4Bに示すように、柱30の長手方向に定義される中央線から外側の位置、即ち柱30の太さの1/4程度だけ外側から測った位置に柄穴の中心をずらして、外側取付具29aを非対称に十字相欠接ぎをしてもよい。
図4Bでは十字相欠接ぎの溝等の図示を省略している。第2変形例に係る建物においても、防水シート31が外壁断熱材11aの外側面から3/4程度だけ突出した柱30の3側面を囲むように段差形状で貼り付けられている。なお、図示を省略しているが、防水シート31が外壁断熱材11aの間に仕切り板(下地面材)等が存在していても構わない。十字相欠接ぎをする場合には、防水シート31の十字相欠接ぎの溝の部分に穴を開けてもよい。或いは防水シート31に穴を開けて、柱30の太さの1/4程度だけずれた位置となるように柄接ぎをしてもよい。分離層20の図示を省略しているが、
図4Bに示す構造の場合は、外側取付具29aを、十字相欠接ぎ等する前に、外側取付具29aの内側の面に分離層20を金具で固定しておくのが好ましい。
【0063】
図4Bに示す構造の場合は、分離層20と外壁断熱材11aの表面の防水シート31との間にギャップが生じるので、内側空気流F3を流す内側通気チャネルHbの開孔は不要となり、外側空気流F2を流す外側通気チャネルHaのみを開孔すればよい。但し、複層通気パネル(18,20)の柱30に対する取り付け強度を高めたいときは、縦方向の四角柱をギャップの寸法に合わせて縦胴縁と類似の構造にすればよい。この場合は
図4Bに示した縦胴縁と類似の外側取付具29aと、縦胴縁と類似の内側取付具(図示省略)が互いに直行するように、格子状に用いられた構造になる。第1実施形態の第2変形例に係る建物の場合、十字相欠接ぎが可能な柱30の太さ分の溝を有する複層通気パネル(18,20)をサイディング用商品として事前に購入し、用意しておけば、外側取付具29aを介して、柱、間柱等に金具で固定することにより、単純な作業工程で外壁断熱材11aの上に複層通気パネル(18,20)を取り付けることが可能になるので、断熱壁(11a,18,20)が簡単に実現できる。
【0064】
図4Bに示した例のように、柱30の外側の面を外壁断熱材11aの面より任意の長さ突出させた種々の段差構造であっても、突出させる長さに相当する深さの十字相欠接ぎの溝が設定されていれば、柱30の面に複層通気パネル(18,20)が簡単に取り付けられる。柱30の外側の面を外壁断熱材11aの面より突出させる長さを標準化しておけば、複層通気パネル(18,20)に設ける十字相欠接ぎの溝も事前に設計可能である。即ち、柱30の外側の面を外壁断熱材11aの面より突出させる長さを標準化しておけば、複層通気パネル(18,20)をサイディング用商品として準備出来るので、標準化の範囲で規定される任意の長さ突出させた種々の段差構造であっても、柱30の面に複層通気パネル(18,20)が簡単に取り付けられる。
【0065】
(第2実施形態)
図8Aに示す本発明の第2実施形態に係る建物では、
図1Aに示した構造と同様に、24時間換気を行うための要素として、内側通気層19bから内部空間SP1に空気を取り込むための吸気口21を、内部空間SP1の上部に設けている。しかし、第2実施形態に係る建物では、
図8Aの内部空間SP1の左下側において、内部空間SP1から内側通気層19bに空気を排気するための排気口32を、内部空間SP1の下部に設けている。
図8Bに示すように、排気口32における空気の逆流(内側通気層19bから内部空間SP1への空気の流れ)を防止するために、排気口32には、換気扇(ファン)33を設けてある。
図8Aに矢印で空気の流れを示したように、第2実施形態に係る建物によれば、内部空間SP1における空気の入れ替えをスムーズに行うことが可能となる。
【0066】
即ち、第2実施形態に係る建物によれば、第1実施形態に係る建物と同様に、外壁部に複層通気パネルを設けているので建物の外壁部における断熱及び除湿効果を向上させることができると共に、24時間換気機能を向上させることで、内部空間SP1における冷暖房の負荷を低減し、建物の省エネルギ効果を図ることができる。
【0067】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る建物では、
図9に示すように、建物は、4つの第1内部空間SP11,第2内部空間SP12,第3内部空間SP13及び第4内部空間SP14を有している。ここで、
図9は、
図1Aを簡略的に記載したものであり、第1内部空間SP11,第2内部空間SP12,第3内部空間SP13及び第4内部空間SP14以外は、
図1Aの建物と同じである。建物が住宅や事務所のような場合には、内部空間としての居室は、複数存在するのが一般的である。従って、このような複数の第1内部空間SP11,第2内部空間SP12,第3内部空間SP13及び第4内部空間SP14を有する建物においても、建物の外壁部に第3実施形態に係る建物の内側通気層19a及び外側通気層19bを設けることで、第1実施形態に係る建物と同様に、外壁部に複層通気パネルを設けることにより、建物の外壁部における断熱及び除湿効果を向上させることができる
【0068】
なお、第3実施形態に係る建物においては、建物の第1内部空間SP11,第2内部空間SP12,第3内部空間SP13及び第4内部空間SP14の数は、4つであるが、これに限られることはなく、2つ以上であればよい。また、複数の第1内部空間SP11,第2内部空間SP12,第3内部空間SP13及び第4内部空間SP14のそれぞれに、内側通気層19bから空気を取り込み、かつ外部又は内側通気層19bに空気を排気することで、24時間換気を行うことも可能である。
【0069】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は上記の例示的な第1~第3実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例、及び運用技術が明らかとなろう。
【0070】
例えば、第1実施形態に係る建物では地中熱を利用したシステムについて説明したが、床下空間SP2を地中熱以外の石油ストーブや電気ヒータで暖める床暖房の方式でも構わない。化石燃料によるエネルギや電力エネルギを用いる場合であっても、床下空間SP2に導入された外気が、床下空間SP2で加温された後、複層通気パネル(18,20)による効果を利用して、床下空間SP2から屋根裏空間SP3に導かれてから建物の外部に排出されることにより、断熱効果を向上させ省エネルギ効果を達成することができる。一方、地中熱を利用したシステムに関しては、特に熱交換器を設けることなく、地表面の熱を直接、床下空間SP2に導くようにしても構わない。即ち、
図1Aにおいて、熱交換器24を省略すると共に、床下断熱材14を取り除き、地表面の熱が防水コンクリート13bを介して直接、床下空間SP2に取り込まれるような構成であってもよい。
【0071】
また、床下空間SP2から多重通気層19を経由して屋根裏空間SP3に流れる空気(気流)を発生させる換気扇16については、排気量(送風量)を調整可能なファンであってもよい。また、換気扇16には、開閉自在なシャッタを付加し、屋根裏空間SP3内に雨風が進入しないようにしてもよい。
【0072】
更に、上記の例は、すべて床下空間SP2が擬密閉状態を前提として説明したが、床下空間SP2に開け閉め可能な床下換気口を設け、春季や秋季等、地熱を利用しなくてもよい場合には、床下換気口を開けた開放状態にし、冬季や夏季等、地熱を利用する場合には、床下換気口を閉めた擬密閉状態にする「擬密閉制御可能状態」とすることもできる。又、複層通気パネル(18,20)として二層構造を例示的に説明したが、二層構造に限定されず、分離層20を二層以上設けることにより、三層以上の多重通気層を構成する構造であっても構わない。
【0073】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当と解釈しうる、特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0074】
11a…外壁断熱材、11b…床断熱材、11c…天井断熱材、12a…内部仕上材、12b…床仕上材、12c…天井仕上材、13a…基礎コンクリート、13b…防水コンクリート、14…床下断熱材、15…通気止め、16,23,33…換気扇、17…天井、18…外壁材、19…通気層、19a…外側通気層、19b…内側通気層、20…分離層、21…吸気口、22,32…排気口、24…熱交換器、25a…外気導入口、25b…外気排気口(床下吸気口)、26…カバー、27…フィルタ、29…取付具、29a…外側取付具、30…柱、31…防水シート
【要約】
【課題】断熱効果を向上させ省エネルギ効果を達成できる建物、複層通気パネル及び通気断熱方法を提供する。
【解決手段】内部空間SP1を取り囲む側壁部に配置された外壁断熱材11aと、内部空間SP1の底部に位置する床断熱材11bと、内部空間SP1の天井部の天井断熱材11cと、外壁断熱材11aの外周面に接して外壁断熱材11aを囲み、床断熱材11bの下に構成された床下空間SP2から天井断熱材11cの上に構成された屋根裏空間SP3を繋ぐ複層通気パネル(18,20)を備える建物である。複層通気パネル(18,20)は、外側に位置する外壁材18と、複層通気パネル(18,20)を流れる空気流を外壁材18側の外側通気層と外壁断熱材11a側の内側通気層の複数層に分離する分離層20を含む。
【選択図】
図1A