(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】アルデヒドIIIからアルコールを得る方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/141 20060101AFI20230831BHJP
C07C 31/125 20060101ALI20230831BHJP
C07C 29/80 20060101ALI20230831BHJP
C07C 47/21 20060101ALI20230831BHJP
C07C 45/74 20060101ALI20230831BHJP
B01J 23/04 20060101ALI20230831BHJP
B01J 23/86 20060101ALI20230831BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
C07C29/141
C07C31/125
C07C29/80
C07C47/21
C07C45/74
B01J23/04 Z
B01J23/86 Z
C07B61/00 300
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018223400
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-08-16
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディルク フリダッグ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート フランケ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル グラス
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン ブーク
(72)【発明者】
【氏名】コリンナ ヘクト
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト デルクス
(72)【発明者】
【氏名】ウド レンツ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ヒラー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ エーラス
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ミュンツナー
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0075621(US,A1)
【文献】特開昭57-116022(JP,A)
【文献】特開2017-125005(JP,A)
【文献】特表2012-520838(JP,A)
【文献】特開2016-153389(JP,A)
【文献】特開2000-038359(JP,A)
【文献】特開昭62-051632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和C
nおよびC
2nアルコール(式中、n=5である)を調製する方法であって、
a)異性体C
nアルデヒド(式中、n=5である)の混合物を準備し、非分岐アルデヒドの比率が、準備された前記C
nアルデヒド(式中、n=5である)に基づいて少なくとも20重量%である方法工程と、
b)前記異性体C
nアルデヒド(式中、n=5である)を、a)で準備された前記混合物よりも直鎖アルデヒドの比率が高い第1の流れと、a)で準備された前記混合物よりも分岐アルデヒドの比率が高い第2の流れとに少なくとも部分的に分離するための蒸留を実施する方法工程と、
c)a)で準備された前記混合物よりも直鎖アルデヒドの比率が高い前記第1の流れの中に存在する前記アルデヒドのアルドール縮合を実施して、C
nおよびα,β-不飽和C
2nアルデヒドの混合物を得る方法工程と、
d)c)で得られた前記C
nおよびα,β-不飽和C
2nアルデヒドの混合物を、b)で得られた、a)で準備された前記混合物よりも分岐C
nアルデヒド(式中、n=5である)の比率が高い前記第2の流れと混合する方法工程と、
e)d)で得られた前記C
nおよびα,β-不飽和C
2nアルデヒドの混合物ならびにC
nアルデヒド(式中、n=5である)を水素で水素化して、飽和C
nおよびC
2nアルコールの混合物を得る方法工程と、
f)前記C
nおよびC
2nアルコールの混合物を分離する方法工程と、
を含
み、
工程a)で使用される前記C
n
アルデヒド(式中、n=5である)は、ヒドロホルミル化触媒の存在下で合成ガスを用いて4個の炭素原子を有する異性体オレフィンをヒドロホルミル化して指定のアルデヒドを形成することによって調製し、
前記ヒドロホルミル化において、ロジウムを中心原子として含み、かつリガンド(1)と錯体を形成する触媒系を使用することを特徴とする、方法。
【化1】
【請求項2】
工程c)の前記アルドール縮合が、水酸化ナトリウム水溶液の存在下で実施されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)による前記C
nアルデヒドの前記アルドール縮合が、水酸化ナトリウム水溶液およびカルボン酸のナトリウム塩からなり、かつナトリウム含量が0.6~1.75質量%でありpHが12.5~13.5の範囲である連続触媒相(プロセス液)中で、反応体アルデヒドを平均直径(ザウター径)0.2mm~2mmの液滴に分散させる少なくとも1つの混合モジュールを含む管型反応器中で実施されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程c)による前記C
nアルデヒドの前記アルドール縮合が、100~150℃の温度範囲で実施されることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程c)による前記C
nアルデヒドの前記アルドール縮合の間、前記反応器中の反応圧力が、0.2~1.0MPaの範囲であることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程e)による前記水素化が、170℃~200℃の温度範囲、15×10
5Pa~30×10
5Paの圧力で、少なくともニッケルおよび銅を活性成分として含有する担持触媒上で、実施されることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程e)による前記水素化が、5~100バールの範囲の圧力で、120~220℃の間の水素化温度で、水素を用いて実施されることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CnおよびC2nアルコールを調製する方法であって、CnアルコールとC2nアルコールとの比が、使用するアルデヒドの蒸留分離によって制御される、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールは、産業において重要な役割を果たしている。これは多くの場合、潤滑油、脂肪、可塑剤、薬剤、化粧品および香味料を調製するための中間体として使用される。また、アルコールは、溶剤、不凍剤または燃料添加剤として直接使用される。
【0003】
可塑剤は、例えばプラスチックなどの多数の産業上重要な製品に加え、塗料、コーティング組成物、シーラントなどの熱可塑性を改良するために大量に使用される。重要な部類の可塑剤は、とりわけ、フタル酸エステル、トリメリト酸エステル、リン酸エステルなどを含めたエステル可塑剤である。エステル可塑剤を生成するために使用されるアルコールは、一般的に、可塑剤アルコールと呼ばれる。良好な性能特性を有するエステル可塑剤を生成するために、約5~12個の炭素原子を有する可塑剤アルコールが必要である。
【0004】
可塑剤の分野におけるフタレートの考察により、新規のフタレート非含有可塑剤に対する要望が高まっている。しかし、この場合、各可塑剤は、用途に応じてその特性に関する狭い基準を満たさなければならない。ここでの例としては、可塑剤の粘性または揮発性が挙げられる。可塑剤の必須特性の制御は、この場合、可塑剤の生成に典型的に使用されるエステル化反応にはあまり依存せず、むしろ使用する原料、特に使用するアルコールに依存する。ここでの必須要素は、例えば、使用するアルコールの炭素原子の数またはその異性体分布である。この目的のために、例えば4、5または6個の炭素原子を有するアルコールが好適である。しかし、同時に、記載のC8、C10およびC12アルコールを生成することも必要である。
【0005】
アルコールを得るために最も知られている経路の1つとして、ヒドロホルミル化反応があり、この反応でアルケンがアルデヒドに変換され、これは次いで水素化を経て、対応するアルコール(Cnアルコール)が生成される。ここでの例外は、プロペンおよび非分岐ブテンのヒドロホルミル化である。ここで、得られるアルデヒドは、通常、さらなる反応工程のアルドール反応を経て、長鎖不飽和アルデヒドが生成される。次いでこれも水素化を経て、得られた長鎖アルコール(C2nアルコール)は、フタレート含有可塑剤の生成の大部分に使用される。
【0006】
例えば、欧州特許第1004563号は、オレフィンのヒドロホルミル化、一部のアルデヒドのアルドール縮合および後続の水素化反応によるアルコールの調製を記載している。しかし、得られるアルコールの組成の特異的制御は、この方法では不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これにより生じる課題は、一方では、生成されるアルコールの異性体分布を制御することであるが、他方では、特にCnアルコールとC2nアルコールの比を制御することでもある。
【0009】
本発明の目的は、上述の必要条件を満たし、得られるアルコールの組成の選択的な制御を可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、CnアルコールとC2nアルコールの比が、アルドール反応および水素化の反応体流の選択的な制御によって決定される、CnおよびC2nアルコールを調製する方法によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による方法の基本的な順序を示す図である。
【
図2】下位工程に細分した二カラムシステムの手段によるC
nおよびC
2nアルコールの混合物の分離の詳細な順序を示す図である。
【
図3】低沸点溶剤流(6)を分離するために隔壁カラム(K)を使用する場合の順序を示す図である。
【
図4】水素化e)からの粗生成物流の分離も隔壁カラムによって達成される、好ましい実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
したがって、本発明は、飽和CnおよびC2nアルコール(式中、n=4、5および6である)を調製する方法であって、
a)異性体Cnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)の混合物を準備し、非分岐アルデヒドの比率が、準備されたCnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)に基づいて少なくとも20重量%である方法工程と、
b)異性体Cnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)を、a)で準備された混合物よりも直鎖アルデヒドの比率が高い第1の流れと、a)で準備された混合物よりも分岐アルデヒドの比率が高い第2の流れとに少なくとも部分的に分離するための蒸留を実施する方法工程と、
c)a)で準備された混合物よりも直鎖アルデヒドの比率が高い第1の流れの中に存在するアルデヒドのアルドール縮合を実施して、Cnおよびα,β-不飽和C2nアルデヒドの混合物を得る方法工程と、
d)c)で得られたCnおよびα,β-不飽和C2nアルデヒドの混合物を、b)で得られた、a)で準備された混合物よりも分岐Cnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)の比率が高い第2の流れと混合する方法工程と、
e)d)で得られたCnおよびα,β-不飽和C2nアルデヒドの混合物ならびにCnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)を水素で水素化して、飽和CnおよびC2nアルコールの混合物を得る方法工程と、
f)CnおよびC2nアルコールの混合物を分離する方法工程と、
を含む、方法に関する。
【0013】
本発明によるプロセス連鎖は、驚くべき様式で、可塑剤の生成に直接使用することができる飽和CnおよびC2nアルコールの調製を可能にする。特にこの場合、例えばCnアルコールの異性体分布は、エステル化の後に、有利な特性スペクトルを有する可塑剤をもたらすものであり、C
n
アルコールの含水量が非常に少なく、無水物エステル化反応またはエステル交換においてさらなる前処理をせずに使用することができることが判明した。
【0014】
本発明による方法の基本的な順序を
図1に示す。第1の工程では、異性体C
nアルデヒド(式中、n=4、5および6である)で構成される流れが作られ(1)、a)で準備された混合物よりも直鎖アルデヒドの比率が高い第1の流れ(1a)と、a)で準備された混合物よりも分岐アルデヒドの比率が高い第2の流れ(1b)とに蒸留分離される。異性体C
nアルデヒド(式中、n=4、5および6である)を含む、直鎖アルデヒドの比率が高い第1の流れ(1a)を、アルドール縮合を実施する目的で反応器に導入し、C
nおよびα,β-不飽和C
2nアルデヒドの混合物を得る。アルドール縮合から得られた、C
nおよびα,β-不飽和C
2nアルデヒドの混合物を含む生成物流を、蒸留分離との関連において得られた、異性体C
nアルデヒド(式中、n=4、5および6である)を含む、分岐アルデヒドの比率が高い流れ(1b)と混合し、水素を用いて、C
nおよびα,β-不飽和C
2nアルデヒドの混合物ならびに異性体C
nアルデヒド(式中、n=4、5および6である)(反応体流(2))の水素化を実施する目的で、反応体流(2)としてさらなる反応器中に移し、飽和C
nおよびC
2nアルコールの混合物を得る。
【0015】
主要成分とするC
n
およびC
2n
アルコールの各留分を、熱分離によってこの混合物から得る。
【0016】
原則として、当業者に公知の全てのCnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)は、純粋な形態または混合物の形態のいずれであっても、本発明による方法における使用に好適であり、基本的な前提条件は、非分岐アルデヒドの比率が、使用されるCnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)に基づいて少なくとも20重量%であることである。
【0017】
特に本発明による方法では、同一の鎖長のアルデヒド流が使用される。非分岐アルデヒドの比率は、使用されるCnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)に基づいて少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%である。特に、非分岐アルデヒドの比率は、使用されるCnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)に基づいて40~99.5重量%であり、特に好ましくは非分岐アルデヒドの比率は、使用されるCnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)に基づいて95~99.5重量%である。
【0018】
工業規模のプロセスとの関連において、多くの該アルデヒドまたはその混合物が、対応するオレフィンからヒドロホルミル化によって得られる。
【0019】
これに応じて、本発明の好ましい実施形態では、工程a)で準備されるCnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)は、3~5個の炭素原子を有する異性体オレフィンを、ヒドロホルミル化触媒の存在下で合成ガスを用いてヒドロホルミル化して指定のアルデヒドを形成することによって調製する。
【0020】
適当なヒドロホルミル化の方法は、当業者に公知であり、例としてHydroformylation Fundamentals,Processes and Applications in Organic Synthesis Volume 1 & 2 Edition 1,Franke Borner,Willey VCH Verlag GmbH & Co.に記載されている。
【0021】
一般的に、プロセスは、ロジウムまたはコバルト触媒を使用し、有機ホスフィンまたはホスファイトなどの錯体安定化添加剤も使用し、または使用せずに、操作される。温度および圧力は、触媒またはオレフィンに応じて広い限界範囲内で変化しうる。オレフィンのヒドロホルミル化の説明は、例えば、J.Falbe,New Syntheses with Carbon Monoxide,Springer-Verlag,Heidelberg-New York,1980、99頁ffおよびKirk-Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Volume 17,4th Edition,John Wiley & Sons,902~919頁(1996)に記載されている。
【0022】
ヒドロホルミル化の反応混合物は、有利には、本発明による方法で使用する前に、先ず触媒から取り出す。コバルト触媒を使用した場合、これは、圧力の解放、水または酸性水溶液の存在下でのヒドロホルミル化混合物中に残留しているコバルトカルボニル化合物の酸化、および水性相の除去によって達成することができる。脱コバルト法は周知であり、例えば、J.Falbe,Ioc.cit.,Kirk-Othmer,Ioc.cit.,164,175,BASF-Verfahrenを参照されたい。
【0023】
ロジウム化合物をヒドロホルミル化触媒として使用する場合、例えば、薄膜蒸発によって蒸留残渣として除去することができる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、国際出願第2017/080690号に記載の方法に従ってヒドロホルミル化を実施する。
【0025】
この場合、ヒドロホルミル化において、ロジウムを中心原子として含み、かつリガンド(1)と錯体を形成する触媒系を使用する。
【0026】
【0027】
リガンド(1)のIUPAC名は、3,3’-ジ-tert-ブチル-5,5’-ジメトキシ-[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジイルテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ビス(ホスファイト)である。
【0028】
ヒドロホルミル化は、特に120℃から140℃の間の温度で達成される。圧力は、好ましくは、15×105Paから25×105Paの間である。
【0029】
操作継続時間を延長するために、式(2)の有機アミンの存在下でヒドロホルミル化を実施する。
【0030】
【0031】
式中、Ra、Rb、Rc、Rd、ReおよびRfは、同一または異なる炭化水素基を表し、これらは互いに結合していてもよい。有機アミンは、好ましくは、少なくとも1つの2,2,6,6-テトラメチルピペリジン単位を含む。具体的には、有機アミンは、ジ-4-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)セバケートであってもよい。
【0032】
第1の反応混合物中のロジウム濃度を1ppmwから1000ppmwの間に定めることが推奨される。リガンド/ロジウム比は1:1から100:1の間であるべきであり、式(1)による有機リン化合物に加えて均一系触媒系の一部としてのさらなるリガンドの供給はない。生産工程において、不純物のせいで、3,3’-ジ-tert-ブチル-5,5’-ジメトキシ-[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジイルテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ビス(ホスファイト)以外の有機リン化合物が、触媒系の一部としてロジウムに錯体形成することを除外することはできない。しかし、このような不純物は、指示リガンド/ロジウム比で無視することができる。この記述は、リガンド(1)のみに関し、さらなるリガンドを意図的に供給する必要はない。
【0033】
本発明による方法で使用する異性体Cnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)は、工程b)による異性体Cnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)の蒸留によって、a)で準備された混合物よりも直鎖アルデヒドの比率が高い第1の流れ(1a)と、a)で準備された混合物よりも分岐アルデヒドの比率が高い第2の流れ(1b)とに、少なくとも部分的に分離される。
【0034】
流れは、整流カラムによって分割される。これは、従来技術に従って達成され、供給(1)を、2つの個々の流れ(1a)および(1b)に分離する。
(1a)と(1b)の比は、以下の手法に従って、所望の異性体分布のC2nアルコールとCnアルコールが所望の量で形成されるように選択される。
質量流C2nアルコール(5)=Feed*Split*(Xn_Aldol*FeedS_w_n+Xi_Aldol*FeedS_w_i)*(2*M_Cn_al-18)/(2*M_Cn_al+2)*X_Hydr*X_Dist
質量流Cnアルコール(4)=Feed*Split*((1-Xn_Aldol)*FeedS_w_n)+Feed*(1-Split)*FeedD_w_n/M_Cn_al*M_Cn_ol*X_n_Hydr*X_n_Dist+Feed*Split*((1-Xi_Aldol)*FeedS_w_i)+Feed*(1-Split)*FeedD_w_i/M_Cn_al*M_Cn_ol*X_i_Hydr*X_i_Dist
質量流(1b)=Feed*(1-Split)
直鎖アルコール(4)の比率=Feed*Split*((1-Xn_Aldol)*FeedS_w_n)+Feed*(1-Split)*FeedD_w_n/M_Cn_al*M_Cn_ol*X_n_Hydr*X_n_Dist/(Feed*Split*((1-Xn_Aldol)*FeedS_w_n)+Feed*(1-Split)*FeedD_w_n/M_Cn_al*M_Cn_ol*X_n_Hydr*X_n_Dist+Feed*Split*((1-Xi_Aldol)*FeedS_w_i)+Feed*(1-Split)*FeedD_w_i/M_Cn_al*M_Cn_ol*X_i_Hydr*X_i_Dist)
Feed =供給(1)
Split =供給(1)に基づく%比率(1a)
FeedS_w_n =流れ(1a)中の直鎖アルデヒドCnの%濃度
FeedS_w_i =流れ(1a)中の分岐アルデヒドCnの%濃度
FeedD_w_n =流れ(1b)中の直鎖アルデヒドCnの%濃度
FeedD_w_i =流れ(1b)中の分岐アルデヒドCnの%濃度
Xn_Aldol =アルドール反応(B)中の直鎖アルデヒドCnに基づくC2nアルドール反応生成物の収率
Xi_Aldol =アルドール反応(B)の分岐アルデヒドCnに基づくC2nアルドール反応生成物の収率
M_Cn_al =アルデヒドCnのモル質量
X_Hydr =対応するアルコールに水素化されるC2nアルドール反応生成物の収率
X_Dist =蒸留におけるC2nアルコールの収率
X_n_Hydr =対応するアルコールに水素化される直鎖Cnアルデヒドの収率
X_i_Hydr =対応するアルコールに水素化される分岐Cnアルデヒドの収率
X_n_Dist =蒸留における直鎖Cnアルコールの収率
X_i_Dist =蒸留における分岐Cnアルコールの収率
Cnアルコールの異性体分布は、熱分離を用いて限界範囲内でさらにシフトすることができる。この目的のために、Cnアルコールの調節質量流のみに基づいて、以下を適用して量を制御する。
M_Dist=-1*(M_Feed *(Prod_w_n-Feed_w_n)/(Dist_w_n- Prod_w_n))
この場合、以下の限界が適用される。
Dist_w_n < Feed_w_n < Prod_w_n
M_Feed =Cnアルコールの質量流
Prod_w_n =生成物(図(2&3)の(4))の直鎖アルデヒドCnの%濃度
Feed_w_n =供給物(図(2&3)の(8))の直鎖アルデヒドCnの%濃度
Dist_w_n =蒸留物(図(2&3)の(10))の直鎖アルデヒドCnの%濃度
M_Dist =排出されるCnアルコール(図(2&3)の(10))の質量流
いずれの位置もアルコール成分のみを指し、二次成分は考慮せず、質量流から差し引かれる。
【0035】
本発明によれば、流れ(1a)中の異性体Cnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)は、特に水酸化ナトリウム水溶液の存在下で、アルドール縮合することによって、Cnおよびα,β-不飽和C2nアルデヒドの混合物に変換される。適当なプロセスは、例えば、DE19957522A1、DE102009045139A1、DE102009001594A1から公知である。
【0036】
アルドール縮合は、特に好ましくは、水酸化ナトリウム水溶液およびカルボン酸のナトリウム塩からなり、かつナトリウム含量が0.6~1.75質量%でありpHが12.5~13.5の範囲である連続触媒相(プロセス液)中で、反応体アルデヒドを平均直径(ザウター径)0.2mm~2mmの液滴に分散させる少なくとも1つの混合モジュールを含む管型反応器中で実施される。
【0037】
プロセス液を形成するために、本発明による方法において水酸化ナトリウム水溶液を使用する。水酸化ナトリウム水溶液は、リターン液(return liquor)と共にプロセス液を形成する。リターン液は、水酸化ナトリウムと共に、カルボン酸、主にペンタン酸の、ナトリウム塩を含む。カルボン酸塩は、本質的にカニッツァーロ反応によって形成された。
【0038】
本発明による方法において、反応器入口におけるプロセス液のナトリウム含量は0.60~1.75質量%、特に1.1~1.20質量%である。プロセス液のナトリウム濃度を調節するために、水酸化ナトリウム水溶液を2.5質量%超の濃度でリターン液に供給する。反応系に少量の水を導入するために、比較的高濃度の水酸化ナトリウム水溶液の使用を優先する。本発明による方法において、5~30質量%の範囲、例えば10質量%の濃度の水酸化ナトリウム水溶液の使用を優先する。
【0039】
本発明による方法は、少なくとも1つの混合モジュール、好ましくは複数の混合モジュールを有する管型反応器中で実施する。特に、混合モジュールの数は、1~30個、より特定すると10~20個である。
【0040】
混合モジュールは、静的ミキサー、すなわち直接の固有エネルギーを必要としない受動素子を意味する。
【0041】
管型反応器は、好ましくは縦に整列している管からなる。該管型反応器を通る流れは、底部から上部またはその逆であってもよい。また、工業用反応器は、平行に配列される複数の管からなっていてもよく、これらはU字管によって互いに接続されている。
【0042】
混合モジュールは、好ましくは、反応器入口に存在する。混合モジュール間には空隙が存在する。混合モジュール(複数可)の外側の反応器の全体積の体積による比率は、20~80%、特に30~60%である。混合モジュールは、互いから同じ距離または異なる距離を有してもよい。ミキサーモジュール間の距離は、好ましくは、流れの方向で短縮する。ミキサーモジュールの互いからの距離は、意図的な空塔速度、反応体と触媒相の間の相比、反応進行およびミキサーの種類に応じて、混合モジュール長さの0.2~5倍、特に混合モジュール長さの0.5~2倍である。
【0043】
混合モジュールは、静的ミキサーまたは2つ以上、好ましくは2つの静的ミキサーの配列からなる。
【0044】
ミキサーモジュールが2つの同一の静的ミキサーからなる場合、これらは、好ましくは、反応器の縦軸周りをねじれて、特に45°から最大90°の角度でねじれて配列される。混合要素は、好ましくは、2つの管径の距離でミキサーモジュール中に配列される。
【0045】
また、混合モジュールは、異なる設計の静的ミキサーからなっていてもよい。2つの静的ミキサーからなるミキサーモジュールの場合、第1の静的ミキサーが、第2の静的ミキサーより小さな水力直径を有することが有利でありうる。この場合、第1の静的ミキサーが非常に小さな液滴を生成し、第2の静的ミキサーは、より大きな水力直径が選択された結果、液滴集合体の合体を防止する。
【0046】
ミキサーモジュールの混合要素の水力直径は、好ましくは、流れの方向で短縮する。
【0047】
ミキサーモジュールは、反応器中で同じであっても異なっていてもよく、すなわち、これらの設計が同じであっても異なっていてもよい。
【0048】
使用する混合要素は、全て静的ミキサーであってもよく、これらは、意図される反応条件下で、触媒相中の有機相を、平均ザウター径が0.2~2.0mmの範囲の液滴に分散することができる。
【0049】
本発明による方法において使用される静的ミキサーは、2種の不混和性の低粘性液体(これらは市販されている)の分散に好適な混合要素であってもよい。本発明によれば、Cnアルデヒドのアルドール縮合は、100~150℃の範囲、より特定すると110~140℃の範囲、特に好ましくは120~140℃の温度範囲で実施される。
【0050】
反応は、指定の温度範囲で、等温的に、断熱的に、またはポリトロープ的に実施することができる。例えば、反応器入口の温度は120℃であってもよく、反応器出口の温度は140℃であってもよい。
【0051】
反応器中の反応圧力は、少なくともプロセス液および有機物質(反応体および生成物)の両方がそれぞれ液相として存在するような十分な高さである。圧力は、0.2~1.0MPaの範囲、好ましくは0.3~0.5MPaの範囲である。
【0052】
本発明による方法において、反応器入口におけるプロセス液と反応体の比[kg/kg]は、5~40の範囲、特に10~15の範囲である。
【0053】
工業用反応器中の反応体およびプロセス液の混合物の平均空塔速度(両相の流量は同じと仮定する)は、0.5~4m/sの範囲、特に1~2.5m/sの範囲である。
【0054】
反応器中の反応混合物の平均滞留時間は、40~360s、特に60~180sである。
【0055】
本発明による方法において、プロセス液中に分散される有機相の液滴は、ミキサーモジュールから出るとき、平均ザウター径が0.2~2mm、特に0.6~1.3mmである。
【0056】
ローディング因子は、0.2~0.8の範囲である。
【0057】
得られたアルデヒドは、本発明による方法でさらに使用する前に、任意選択により処理してもよい。
【0058】
その一方法は、反応生産物を冷却し、液相から有機相を分離することである。相分離は、好ましくは、60~130℃の範囲、特に70~120℃の範囲、より特定すると90~110℃の温度範囲で達成される。選択した温度に応じた分離時間は、3~10分である。90℃超の温度で、分離時間は8分未満である。分離時間は、価値ある有機生成物の相が透明になり、微量の不均一水を含まなくなるまでの時間と定義される。
【0059】
重質水性相を軽質有機相から分離するために、重力のみを使用して相分離を促進する分離装置を使用してもよい。また、これらのいわゆる重力分離装置は、分離性能を改善するための合体促進法として内部を備えうる。内部の使用は、合体および沈降プロセスを加速する。合体助剤として、例えば、プレート、ランダムパッキング、メッシュパッキングまたは繊維床分離装置を使用することが可能である。重力分離装置は、横置き容器または直立容器として構成されうる。
【0060】
重力分離装置の代替として、液液分離の遠心原理に従って操作する分離装置を使用することも可能である。ここでの重質相は、回転ドラム中の遠心力の手段によって分離される。
【0061】
本発明による方法において重質水性相を分離するために、重力分離装置、好ましくは内部を備えた横置き容器として構成された重力分離装置の使用が優先される。
【0062】
分離した液相の一部を排出して反応水を除き、他部は反応器中に再循環させる。排出流と共に、副生成物(ナトリウム塩)として形成されたカルボン酸の一部および水酸化ナトリウムも除去される。この流れは、廃水処理プラントに送達することができる。しかし、例えばDE 198 49 922およびDE 198 49 924に記載されるように、この流れを後処理し、一部をプロセス中に再循環させることも可能である。
【0063】
有機相が、Cnおよびα,β-不飽和C2nアルデヒドに加えて、カルボン酸塩、水酸化ナトリウムおよび溶存水などの他の副生成物を含む場合、ウォータースクラビングによって微量の塩基および一部のカルボン酸塩を除去することができる。得られた水抽出物は、新鮮な塩基を構成するのに使用することができる。
【0064】
こうして得られたCnおよびα,β-不飽和C2nアルデヒドを、工程d)に従って、b)で得られた、a)で準備された混合物よりも分岐アルデヒドの比率が高い第2の流れ(1b)と混合して、反応体流(2)が得られる。
【0065】
2つの副流の混合は、当業者に公知の適当な静的または動的ミキサーによって確保される。ここでは、2つの流れは、好ましくは、例えば、Sulzer製のCompaX(商標)モジュールなどの静的ミキサーによって組み合わされる。この位置で、適当なポンプが、動的ミキサーとしても作用することができる。
【0066】
混合によって得られる反応体流(2)は、アルドール反応で得られたCnおよびα,β-不飽和C2nアルデヒドならびに出発混合物よりも分岐アルデヒドの比率が高いCnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)を含む工程b)の蒸留で得られた留分を混合物の形態で含む。この混合物を、本発明による方法の工程e)に従って水素を用いて水素化し、飽和CnおよびC2nアルコールの混合物を得る。水素化は、例えば欧州特許第3037400号で公知のように、同様にそれ自体が公知のプロセスに従って、例えば170℃~200℃の温度範囲、15×105Pa~30×105Paの圧力で、少なくともニッケルおよび銅を活性成分として含有する担持触媒上で達成される。
【0067】
水素化触媒は、好ましくは、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素またはこれらの混合物をベースとする支持材料からなり、水素化活性金属、特に銅、コバルト、ニッケル、クロムの群からの少なくとも1つの元素がこの支持材料に適用される。
【0068】
支持体前駆体として酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムを使用することが可能である。好ましい支持体前駆体は、酸化アルミニウム、特に酸化γ-アルミニウムである。触媒は、1種以上の水素化活性金属を含有してもよい。本発明による触媒は、好ましくは、銅、クロム、ニッケルの金属を含有する。触媒は、特に好ましくは、水素化活性金属として、銅、クロムおよびニッケルの3種の金属の組合せを含有する。
【0069】
水素化活性金属の総量は、還元処理触媒(reduced catalyst)に基づいて、金属として計算して1~40質量%の範囲、特に5~25質量%の範囲である。
【0070】
本発明による触媒は、有利には、例えば錠、シリンダ、ストランド押出物またはリングなどの、水素化において低い流動抵抗をもたらす形態で調製される。触媒の調製の間に、予備支持材料が、典型的には、適当な形態に作製される。成形された予備支持材料も市販されている。
【0071】
本発明による方法において、水素化は、固定床に懸濁した、配列した微細化または成形した触媒上で連続的にまたはバッチ式で実施することができる。生成物/反応体の相が反応条件下で主に液体状態である、固定床に配列した触媒上での連続的な水素化が優先される。
【0072】
水素化が、固定床に配列した触媒上で連続的に実施される場合、水素化前に触媒を活性形態に変換することが有利である。これは、温度プログラムに従って水素含有ガスを使用した触媒の還元によって達成することができる。この場合、還元は、任意選択により、例えば、DE 199 33 348に記載されるような触媒上を通る液相の存在下で実施することができる。
【0073】
本発明による水素化の方法は、細流相(trickle phase)または好ましくは並流中の三相反応器中の液相中で実施され、液体反応体/生成物流中に、それ自体が公知である様式で、水素が細かく分布される。均一な液体分布、改善された反応熱の除去、および高い空時収量のために、反応器は、好ましくは、空の反応器の断面1m2当たり、毎時、15~120、特に25~80m3の高液体ローディングで操作する。反応器を等温的にかつストレートパス(straight pass)で操作すると、特殊液空間速度(LHSV)は0.1から10h-1の間の値を仮定しうる。
【0074】
本発明による方法は、5~100バールの範囲、好ましくは5から40バールの間、特に好ましくは10~25バールの範囲の圧力で水素を用いて実施される。水素化温度は、120から220℃の間、特に140から190℃の間である。
【0075】
水素化に使用される水素は、例えばメタンまたは窒素などの不活性ガスを含有してもよい。純度98%超、特に99%超の水素の使用が優先される。
【0076】
本発明による方法では、さまざまな方法の変形形態が選択されうる。方法は、一段式または多段式で、断熱的にまたはほとんど等温的に、すなわち、10℃未満の温度上昇で実施することができる。後者の場合、全ての反応器、有利には管型反応器は、断熱的にまたはほとんど等温的に操作してよく、また、1つ以上が断熱的に、他はほとんど等温的に操作してよい。また、ストレートパスでまたは生成物をリサイクルさせて、水の存在下でカルボニル化合物またはカルボニル化合物の混合物を水素化することも可能である。
【0077】
α,β-不飽和C2nアルデヒドおよびアルドール反応における未反応のCn出発アルデヒドに加えて、水素化は、第2の流れ(1b)中に存在する分岐アルデヒドの比率が高いCnアルデヒドも、対応するアルコールに変換する。
【0078】
本発明によれば、飽和CnおよびC2nアルコールの混合物の分離は、工程f)による水素化の結果としてもたらされ、この場合、CnアルコールおよびC2nアルコールの分離は、さまざまな組合せの伝統的な蒸留塔もしくは隔壁カラム、または両方のカラム型の組合せによって、少なくとも1つの二カラムシステムの手段によって、あるいは少なくとも1つの隔壁カラムの手段によって達成することができる。
【0079】
本発明の特に好ましい実施形態において、両方の場合において、価値のある生成物としてCnおよびC2nアルコールを得るために、二カラムシステムまたは隔壁カラムが使用される。
【0080】
さまざまな方法の変形形態を、以下でより詳細に説明する。
【0081】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの二カラムシステムが使用される。第1のカラムでは、方法の過程において、Cnアルコール(例えば、2-メチルブタノール)および水と共に形成されたアルカン(ブテンの場合、主にノナン)が、オーバーヘッドを介して取り出される。そこで相分離が生じ、有機相がカラムに戻り流として再び供給される。この共沸乾燥の手段によって、底部の含水量は1000ppm未満で得られる。
【0082】
第2のカラムでは、Cnアルコールがオーバーヘッドを介して取り出され、そのようにして高沸点溶剤から分離される。適当なカラムの操作モードによって、C5アルコールの異性体組成物を追加的に制御してもよい。
【0083】
図2は、以下の下位工程に細分した二カラムシステムの手段によるC
nおよびC
2nアルコールの混合物の分離の詳細な順序を示す。
I. 工程e)の水素化(3)の、低沸点溶剤流(6)および高沸点溶剤流(15)への粗生成物流の蒸留分離(G)。この場合、低沸点溶剤流(6)は、主要生成物としての出発アルデヒドのアルコールおよびさらなる物質またはα,β-不飽和C
2nアルデヒドおよび不均一水から形成されたアルコールより低沸点を有する共沸混合物を含む。高沸点溶剤流(15)は、主要生成物としてのα,β-不飽和C
2nアルデヒドから形成されたアルコールおよび高沸点溶剤またはC
2nアルコールより高沸点を有する共沸混合物を含む。
II. 分離装置(F)による蒸留留分(6)からの不均一水(7)の除去。
III. 有機相(8)の、Fから低沸点溶剤流(9)および高沸点溶剤流(12)への蒸留分離(H)。低沸点溶剤流(9)は、最高沸点のC
nアルコールより低沸点を有する物質または共沸混合物を含み、縮合後は不均一水(11)を含有しうる。高沸点溶剤流は、主にC
nアルコールおよび最高沸点のC
nアルコールより高沸点を有する物質または共沸混合物を含む。
IV. 相分離(E)による不均一水(11)の除去。有機相を再度、戻り流(19)としてカラム(H)に供給する。得られた一部の有機相(10)はシステムから追い出される。
V. 高沸点溶剤流(12)の、低沸点溶剤流(4)および高沸点溶剤流(14)への蒸留分離(I)。低沸点溶剤流(4)は、主に所望の異性体分布を有するC
nアルコールを含む。高沸点溶剤流(14)は、主に最高沸点のC
nアルコールより高い沸点を有する物質または共沸混合物を含む。
VI. 高沸点溶剤流(15)の、C
2nアルコールを含む低沸点溶剤流(5)および高沸点溶剤流(18)への蒸留分離。低沸点溶剤流(5)は、主にC
2nアルコールを含む。高沸点溶剤流(18)は、主に最高沸点C
2nアルコールより高い沸点を有する物質または共沸混合物を含む。
【0084】
カラムに使用された温度プロファイルを、それぞれの場合において、本発明による方法の水素化(工程b)からの生成物流の各組成に応じて調節する。
【0085】
例えば、生成物流(3)は、以下の組成を有しうる。
【0086】
【0087】
この組成の場合、カラム(G)は、好ましくは最高圧力0.2バール(絶対圧力)および圧力低下0.1バールで操作され、底部温度176℃および上部温度65℃または対応する同値が維持される。カラム(H)は、特に最高圧力1.05バール(絶対圧力)および圧力低下0.03バールで、底部温度137℃および上部温度94℃、または対応する同値で操作される。カラム(I)は、一般的に、最高圧力1.08バール(絶対圧力)および圧力差0.03バールで、底部温度178℃および上部温度134℃、または対応する同値で維持される。
【0088】
カラム(J)は、圧力0.15バール(絶対圧力)および圧力差0.006バールで、底部温度175℃および上部温度158℃、または対応する同値で操作される。
【0089】
指定の温度プロファイルは、例示的なものと見なす。特に変化する供給組成と関連する、さらなる構成を、本発明との関連において含む。
【0090】
本発明のさらに同様の好ましい実施形態では、少なくとも1つの隔壁カラムが使用される。隔壁カラムでは、二カラムシステムに記載される分離操作を1つのカラムにまとめることができる。アルカン/2-メチルブタノール/水混合物の例もオーバーヘッドから得られ、同様の相分離を経て、有機相が戻り流として再度カラムに戻される。隔壁の領域中の側部取り出し口を介して、仕様に適合するC
nアルコールを取り出す。側部取り出し口におけるC
nアルコールの異性体比は、有機相の蒸留物中の還元およびカラムの底部のアルコール比率によって特定の限界範囲内で制御することができる。
図3は、低沸点溶剤流(6)を分離するために隔壁カラム(K)を使用する場合の順序を示す。
【0091】
この関連において、
図2に示すカラムHおよびIを組み合わせて隔壁カラム(K)が形成される(
図3参照)。隔壁カラム(K)は、最高圧力1.05バール(絶対圧力)および圧力低下0.06バール、底部温度180℃、上部温度118℃、および生成物温度134℃、または対応する同値で維持される。
【0092】
図4は、水素化e)からの粗生成物流の分離も隔壁カラムによって達成される、さらに好ましい実施形態を示す。この場合、C
2nアルコールが隔壁領域中の側部取り出し口を介して取り出される。
【0093】
本発明による方法は、アルデヒドからのCnおよびC2nアルコールの生成に有利な方法ならびにオレフィンからの上流ヒドロホルミル化の場合に好適である。
【0094】
使用する異性体Cnアルデヒド(式中、n=4、5および6である)の場合、n=5が特に好ましい。既に上で考察したように、このようなアルデヒドは、対応する異性体オレフィンのヒドロホルミル化によって得ることができる。後者の場合、これらは、具体的には、3~5個の炭素原子を有するオレフィン、すなわちプロペン、ブテンおよびペンテンであり、各位置異性体(ブテンおよびペンテンの場合)は、指定の名称によって含まれる。異性体オレフィンは、特に好ましくはブテンである。後者の場合、これらは、本発明による方法によってペンタノール混合物およびデカノール混合物に変換される。
【0095】
可塑剤合成に関しては、ペンタノール混合物の異性体分布は、特に興味深い。
【0096】
例として、また、好ましい実施形態として、得られたペンタノール混合物は、好ましくは、60mol%未満のn-ペンタノールを含む。異性体ペンタノール混合物中のn-ペンタノールの最小含量は、好ましくは、少なくとも2mol%、好ましくは少なくとも10mol%、より好ましくは20mol%超であり、より優先的には22.5mol%超またはさらには25mol%超、より好ましくは27.5mol%超、30mol%またはさらには35mol%超である。直鎖n-ペンチル基に加えて、分岐ペンチル基を含むペンタノールが特に優先される。分岐ペンチル基は、好ましくは、メチルブチル基である。これに応じて、分岐ペンチル基が、少なくとも50mol%の程度、好ましくは少なくとも60mol%の程度、さらに好ましくは少なくとも70mol%の程度、それよりさらに好ましくは少なくとも80mol%の程度、さらにより好ましくは少なくとも90mol%の程度、特に少なくとも95mol%の程度でメチルブチル基からなる、ペンタノール混合物が優先される。
【0097】
分岐異性体ペンチル基が、2-メチルブチル基の大部分を有する場合、有利である。したがって、好ましい実施形態では、少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも60mol%、より好ましくは少なくとも70mol%、さらに好ましくは少なくとも80mol%、特に好ましくは少なくとも90mol%、特に少なくとも95mol%の分岐異性体ペンチル基は、2-メチルブチル基である。好ましいペンタノール混合物は、好ましくは、存在する全ペンチル基に基づいて、20~95mol%、好ましくは30~85mol%、特に40~75mol%の2-メチルブチル基を含む。
【0098】
特に好ましい実施形態において、ペンタノール混合物は、少なくとも75mol%の程度、より好ましくは少なくとも90mol%の程度、特に少なくとも95mol%の程度の、好ましくは独占的に2-メチルブチル基および/または直鎖ペンチル基を含むペンタノールからなり、このペンタノール混合物中の2-メチルブチル基と直鎖ペンチル基とのモル比は、好ましくは、99:1から40:60の範囲、特に70:30から40:60の範囲である。
【0099】
所望の生成物特性、特に上記の異性体分布は、特に、蒸留による方法工程b)に記載のアルデヒドの部分的異性体分離によって、ならびに工程f)で指定され、使用された二カラムまたは隔壁カラムシステムによるCnおよびC2nアルコールの混合物の分離を実施するためのパラメータによって調節される。
【0100】
さらなる解説がなくても、当業者は、上述を最大限に活用することができると考えられる。したがって好ましい実施形態および実施例は、単に説明的な開示として解釈すべきであり、開示はいかなる意味でも決して限定的ではない。本発明は、以下で実施例を使用してより詳細に解明される。本発明の代替の実施形態も同様に得られる。
【実施例】
【0101】
実施例を実施し、各パラメータを決定するために、Cn/C2nシステム(式中、n=5)に基づいて、以下の基本仮定を使用した。
【0102】
変換度Xi1およびXi2は、以下の計算方法によって計算した。
【0103】
【0104】
n-ペンタナールの比率は、生成物(Sn1)中のC5-アルデヒドに基づいて、以下の計算方法によって計算した。
【0105】
【0106】
2-プロピルヘプテナールの比率は、生成物(Sn2)中の不飽和C10-アルデヒドに基づいて、以下の計算方法によって計算した。
【0107】
【0108】
実施例における化学組成は、ガスクロマトグラフィーによって決定した。この目的のために、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたAgilent製の7890Aガスクロマトグラフを使用した。使用したカラムは、HP-5(5%フェニルメチルシロキサン)(325℃)(30m×320μm×0.25μm)であった。以下の温度プログラム(50℃で2分、次いで10℃/分で150℃まで、次いで40℃/分で250℃まで、そして10分の保持段階。注入量0.5μl、注入器温度250℃、窒素キャリヤーガス、流量105ml/分、スプリット50:1)を分析に適用した。
実施例1:
アルドール反応前の特定の異性体比の分離を評価するために、シミュレーション研究を実施した。
【0109】
シミュレーションには、PSRK(予測ソアベ-レーリッヒワン: predictive Soave-Redlich-Kwong)法を用いたAspen Plus V7.3を使用した。カラムをRadfracモデルとしてシミュレートし、30%から最大70%までのn-ペンタナール画分を有するオーバーヘッド生成物の分離が可能になるように構成する。特に、50%のn-ペンタナール画分を検討すべきである。加えて、底部の生成物は、95~100%のn-ペンタナール画分を含有するべきである。異性体分布を達成するために、50個の理論段を有するカラムを使用する。
【0110】
計算には、以下の出発濃度を検討し、これらは液体状態で計測する。カラムシミュレーションの結果も提示する。
【0111】
【0112】
実施例2: 撹拌反応器中での、α,β-不飽和C10アルデヒドへの縮合を含むn-ペンタナールのアルドール反応
α,β-不飽和C10アルデヒドを撹拌反応器中で調製した。この反応器は、2.1リットルの体積を有する抽出塔の形態をとっていた。反応器は、10個の混合室に分けられ、これらの混合室はそれぞれ、4-ブレードスターラーを備え、これらは共通スターラーシャフトに搭載されていた。触媒相は、回路用ポンプによって回路中の反応器を通過させた。2%の水酸化ナトリウム水溶液を触媒相として使用した。触媒回路は、全ての実験において80l/hであった。反応体は、98.3質量%のn-ペンタナールを含み、残りの比率は二次成分で構成されていた。反応体を、反応器入口直前の触媒回路に8l/hで連続供給した。
【0113】
反応器出口で得られた二相混合物を、相分離容器中で有機生成物相および触媒相に分離した。
【0114】
システムを、窒素雰囲気下、4バールの圧力で操作し、3時間の定常状態操作の後、以下の結果が決定された。
【0115】
【0116】
実施例3: 流管中での、α,β-不飽和C10アルデヒドへの縮合を含むn-ペンタナールおよび2-メチルブタナールのアルドール反応
長さ3メートル、内径17.3mmのDN15管の中でα,β-不飽和C10アルデヒドを調製した。この管の体積は6.8リットルであった。全体積の約50%を、チャネル径2mmの静的ミキサーで充填した。混合要素は、開口クロスチャネルを形成する鋸歯状ラメラによって形成される。チャネルは、互いに90°でオフセットされる一混合距離の距離で管中に配列される。ポンプを活用して、触媒相の80l/hの連続循環をこの管に通して作った。2.1%の水酸化ナトリウム水溶液を触媒相として使用した。
【0117】
反応体は、98.7質量%のn-ペンタナールを含み、残りの100%に達するまでの比率は、二次成分で構成されていた。静的ミキサーの開始直前に、反応体を触媒回路に8l/hで連続供給した。
【0118】
反応器出口で得られた二相混合物を、相分離容器中で有機生成物相および触媒相に分離した。
【0119】
システムを、窒素雰囲気下、4バールの圧力で操作し、3時間の定常状態操作の後、以下の結果が決定された。
【0120】
【0121】
実施例4
実施例3で生成した反応体を、50質量%のn-ペンタナールおよび50質量%の2-メチルブタナールからなるC5アルデヒド混合物と混合して、その後、約7.3%のC5アルデヒド混合物および92.7%のアルドール縮合生成物が供給質量中に存在するようにした。次いで、この混合物を水素化した。水素化では、DE102009045718A1の実施例1と同様の循環システムを使用した。これと同様に、直径1.5mmおよび長さ3~5mmのストランド押出物としてのAl2O3上にCu(6質量%)/Ni(3.1質量%)/Cr(0.6質量%)で構成された触媒105gを使用した。反応条件は、180℃および25バール絶対圧力であった。供給した反応体は、循環速度40l/hで100ml/hであり、排ガス速度は60Nl/hであった。
【0122】
【0123】
実施例5
水素化からの生成物流の精製の評価のために、シミュレーション研究を実施した。この目的のために、C10およびC5アルコールからなる生成物流を、
図2に従って個々の留分に分離する。この目的のために使用したものは、PSRK(予測ソアベ-レーリッヒワン: predictive Soave-Redlich-Kwong)法を使用したAspen Plus V7.3であった。カラムをRadfracモデルとしてシミュレートし、約99.9%の純度の生成物の分離が可能になるようにカラムを構成する。生成物の品質を達成するために、異なる仕様を持つ4つのカラムを準備する。
【0124】
【0125】
水を添加することによって(カラムIの供給)、低沸点溶剤の分離が有利になる。したがって、水はカラム中に蓄積せず、水性相が形成され、各カラムの上部で水はデカンターに除去される。
【0126】
【0127】
実施例6
4つのカラムを使用する分離の代替として、隔壁カラム(同様にAspen Plus V7.3、PSRKおよびRadfracを使用してシミュレートしたもの)を活用して分離を実施してもよい。例えば、カラム2および3を31段階の隔壁カラムと置き換えて、出発アルデヒドのアルコールを中間留分として取り出すことができる。
【0128】
この場合、隔壁は、31個のプレートのうちの14個にわたって延伸する。生成物は、15個目の段階で排出される。下から隔壁に衝突する蒸気流を2本のカラムセグメントと同じ比率で供給し、一方で、75%の液体流が、生成物側に、25%が供給側に向かって通る。
【0129】
カラム1のオーバーヘッド生成物が隔壁カラムに向かって通る場合、以下の生成物分布が生じる。
【0130】
【0131】
結果は、記載の手順によるCnアルコールおよびC2nアルコールの量の制御が可能であり、Cnの異性体分布も対応する様式で制御することができることを示す。
【符号の説明】
【0132】
1 ヒドロホルミル化の生成物
1a ヒドロホルミル化生成物よりも直鎖アルデヒドの比率が高い流れ
1b ヒドロホルミル化生成物よりも分岐アルデヒドの比率が高い流れ
2 アルドール縮合生成物とヒドロホルミル化生成物よりも分岐アルデヒドの比率が高い流れとの混合物
3 水素化生成物(例えば、n=5の場合、主に水、ブタン、ブテン、C5アルデヒド、2-メチルブタノール、ペンタノール、ノナン、α,β-不飽和C10アルデヒド、C10アルデヒド、α,β-不飽和C10アルコール、C10アルコール、10個超の炭素原子を有するC10+オリゴマー)
4 Cnアルコール(例えば、n=5の場合、主に2-メチルブタノール、ペンタノール)
5 C2nアルコール(例えば、n=5の場合、主にC10アルコール)
6 不均一水の比率を有するC10アルコールが欠乏した低沸点溶剤流(例えば、n=5の場合、主に水(不均一)、ブタン、ブテン、C5アルデヒド、2-メチルブタノール、ペンタノール、ノナン、α,β-不飽和C10アルデヒド、C10アルデヒド、α,β-不飽和C10アルコール)
7 水性相
8 均一水の比率を有するC10アルコールが欠乏した有機相(例えば、n=5の場合、主に水(均一)、ブタン、ブテン、C5アルデヒド、2-メチルブタノール、ペンタノール、ノナン、α,β-不飽和C10アルデヒド、C10アルデヒド、α,β-不飽和C10アルコール)
9 低沸点溶剤流(例えば、n=5の場合、主に水(均一)、ブタン、ブテン、C5アルデヒド、2-メチルブタノール、ペンタノール、ノナン)
10 均一水を有する有機相(例えば、n=5の場合、主に水(均一)、ブタン、ブテン、C5アルデヒド、2-メチルブタノール、ペンタノール、ノナン)
11 水性相
12 高沸点溶剤流(例えば、n=5の場合、主に2-メチルブタノール、ペンタノール、α,β-不飽和C10アルデヒド、C10アルデヒド、α,β-不飽和C10アルコール)
14 高沸点溶剤流(例えば、n=5の場合、主にα,β-不飽和C10アルデヒド、C10アルデヒド、α,β-不飽和C10アルコール)
15 高沸点溶剤流(例えば、n=5の場合、主にC10アルコール、10個超の炭素原子を有するC10+オリゴマー)
18 高沸点溶剤流(例えば、n=5の場合、主に10個超の炭素原子を有するC10+オリゴマー)
19 戻り流