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  • 特許-研磨用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】研磨用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20230831BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20230831BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230831BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230831BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019004529
(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2019127585
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2018008288
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100174285
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮山 聰
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 優一郎
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-118490(JP,A)
【文献】国際公開第2013/108777(WO,A1)
【文献】特開2012-143823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00,3/14
C09G 1/02
H01L 21/304
B24B 3/,21/-39/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカと、
水溶性高分子と、
塩基性化合物と、
水とを含み、
以下に定義するろ過時間指標が14~23であり、
前記水溶性高分子がヒドロキシエチルセルロースである、研磨用組成物。
ろ過時間指標:ろ過処理量を1秒間隔でサンプリングしたとき、ろ過処理量[g]×研磨用組成物の粘度[cP]が100[g・cP]以上となるまでの経過時間[sec]
ここで、前記ろ過処理量は、前記研磨用組成物を外径47mm、孔径0.45μm、空隙率78%、厚さ145μmの混合セルロース製メンブレンフィルターで0.1MPaの圧力で加圧ろ過した際のフィルターの通液後の液の質量である。
【請求項2】
請求項1に記載の研磨用組成物であって、
非イオン性界面活性剤をさらに含む、研磨用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
CMPによる半導体ウェーハの研磨は、多段階の研磨を行うことで、高精度の平滑化・平坦化を実現している。最終段階で行われる仕上げ研磨工程は、微小欠陥やヘイズ(表面曇り)の低減を主な目的としている。
【0003】
半導体ウェーハの仕上げ研磨工程で使用される研磨用組成物は、一般に、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等の水溶性高分子を含有する。水溶性高分子は、半導体ウェーハ表面を親水化させる役割があり、表面への砥粒の付着、過度なケミカルエッチング、砥粒の凝集等による半導体ウェーハへのダメージを抑制する。これによって、微小欠陥やヘイズを低減できることが知られている。
【0004】
特開2015-109423号公報には、シリカ粒子を0.01~0.5質量%と、含窒素塩基性化合物と、水溶性高分子とを含むシリコンウェーハ研磨用組成物が記載されている。この研磨用組成物の水溶性高分子は、水酸基由来の酸素原子数とポリオキシアルキレン由来の酸素原子数の比が、0.8~10である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-109423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
研磨用組成物に一般的に用いられる砥粒や水溶性高分子には異物が含まれており、これらが研磨起因欠陥の原因となる。研磨用組成物の異物を低減するにはフィルターによるろ過が有効である。ろ過を効率的に行うには、砥粒や水溶性高分子の量を減らしたり、水溶性高分子の分子量を小さくしたりして、研磨用組成物の粘度を下げることが有効である。
【0007】
しかし、砥粒や水溶性高分子の量を減らしたり、水溶性高分子の分子量を小さくしたりすると、研磨作用が低下したり、水溶性高分子による半導体ウェーハの保護作用が低下したりすることで、却って研磨起因欠陥が増加する場合がある。このように、砥粒や水溶性高分子の量、水溶性高分子の分子量の調整にはトレードオフが存在する。そのため、研磨用組成物の開発は試行錯誤によるところが大きい。
【0008】
本発明の目的は、研磨起因欠陥を低減できる研磨用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による研磨用組成物は、シリカと、水溶性高分子と、塩基性化合物と、水とを含み、以下に定義するろ過時間指標が14~23である。
ろ過時間指標:ろ過処理量を1秒間隔でサンプリングしたとき、ろ過処理量[g]×研磨用組成物の粘度[cP]が100[g・cP]以上となるまでの経過時間[sec]
ここで、前記ろ過処理量は、前記研磨用組成物を外径47mm、孔径0.45μm、空隙率78%、厚さ145μmの混合セルロース製メンブレンフィルターで0.1MPaの圧力で加圧ろ過した際のフィルターの通液後の液の質量である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、研磨起因欠陥を低減できる研磨用組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、ろ過時間指標とPIDとの関係を示す散布図である。
図2図2は、図1の一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者は、上記の課題を解決するため、種々の検討を行った。その結果、以下の知見を得た。
【0013】
一般に、単位時間あたりのろ過処理量は、流体の粘度に概ね反比例する。そのため、ろ過処理量と流体の粘度との積をとることで、粘度の影響を除いた当該流体のフィルターの通りやすさを評価することができる。
【0014】
本発明者は、種々の研磨用組成物に対してこの「粘度の影響を取り除いたフィルターの通りやすさ」を測定し、「粘度の影響を取り除いたフィルターの通りやすさ」と研磨起因欠陥との間に相関があることを見出した。そして、以下に定義するろ過時間指標が14~23であれば、研磨起因欠陥を少なくできることを明らかにした。
ろ過時間指標:ろ過処理量を1秒間隔でサンプリングしたとき、ろ過処理量[g]×研磨用組成物の粘度[cP]が100[g・cp]以上となるまでの経過時間[sec]
ここで、ろ過処理量は、研磨用組成物を外径47mm、孔径0.45μm、空隙率78%、厚さ145μmの混合セルロース製メンブレンフィルターで0.1MPaの圧力で加圧ろ過した際のフィルターの通液後の液の質量である。
【0015】
本発明は、これらの知見に基づいて完成された。以下、本発明の一実施形態による研磨用組成物を詳述する。
【0016】
本発明の一実施形態による研磨用組成物は、シリカと、水溶性高分子と、塩基性化合物と、水とを含む。
【0017】
シリカは、この分野で常用されるものを使用することができる。シリカは例えば、コロイダルシリカやヒュームドシリカであり、コロイダルシリカが好ましい。シリカの粒径は、特に限定されないが、例えば二次平均粒子径で50~100nmのものを用いることができる。
【0018】
シリカの含有量は、特に限定されないが、例えば研磨用組成物(原液)全体の0.15~20質量%である。研磨用組成物は、研磨時に10~100倍に希釈されて使用される。本実施形態による研磨用組成物は、シリカの濃度が100~5000ppm(質量ppm。以下同じ。)になるように希釈して用いることが好ましい。
【0019】
水溶性高分子は、これに限定されないが、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)等のビニルポリマー、配糖体(グリコシド)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、N,N,N’,N’-テトラキス・ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・エチレンジアミン(ポロキサミン)、ポロキサマー、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、メチルグルコシドのアルキレンオキシド誘導体、多価アルコールアルキレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステル等を用いることができる。
【0020】
水溶性高分子の含有量は、これに限定されないが、例えば研磨用組成物(原液)全体の0.01~1.2質量%である。本実施形態で好ましい水溶性高分子の種類、分子量の範囲等については後述する。
【0021】
塩基性化合物は、ウェーハ表面と効率よく反応し、化学機械研磨(CMP)の研磨特性に貢献する。塩基性化合物は、例えば、アミン化合物、無機アルカリ化合物等である。
【0022】
アミン化合物は、例えば、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム及びその水酸化物、複素環式アミン等である。具体的には、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、ピペラジン塩酸塩、炭酸グアニジン等が挙げられる。
【0023】
無機アルカリ化合物は、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の塩等が挙げられる。無機アルカリ化合物は、具体的には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等である。
【0024】
上述した塩基性化合物は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。上述した塩基性化合物の中でも、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の塩、アンモニア、アミン、アンモニウム塩、及び第四級アンモニウム水酸化物類が特に好ましい。
【0025】
塩基性化合物の含有量(二種以上含有する場合は、その総量)は、特に限定されないが、例えば研磨用組成物(原液)全体の0.01~1.2質量%である。
【0026】
本実施形態による研磨用組成物は、非イオン性界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
【0027】
本実施形態による研磨用組成物に好適な非イオン性界面活性剤は例えば、エチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(ポロキサミン)、ポロキサマー、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンメチルグルコシド等である。
【0028】
エチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレンとしては、例えば、N,N,N’,N’-テトラキスポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエチレンジアミン等が挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等が挙げられる。ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート等が挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン等が挙げられる。ポリオキシアルキレンメチルグルコシドとしては、例えば、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド等が挙げられる。
【0029】
非イオン性界面活性剤の含有量(二種以上含有する場合は、その総量)は、特に限定されないが、例えば研磨用組成物(原液)全体の10~1000ppmである。
【0030】
本実施形態による研磨用組成物は、pH調整剤をさらに含んでいてもよい。本実施形態による研磨用組成物のpHは、好ましくは8.0~12.0である。
【0031】
本実施形態による研磨用組成物は、上記の他、研磨用組成物の分野で一般に知られた配合剤を任意に配合することができる。
【0032】
本実施形態による研磨用組成物は、以下に定義するろ過時間指標が14~23である。 ろ過時間指標:ろ過処理量を1秒間隔でサンプリングしたとき、ろ過処理量[g]×研磨用組成物の粘度[cP]が100[g・cP]以上となるまでの経過時間[sec]
ここで、ろ過処理量は、研磨用組成物を外径47mm、孔径0.45μm、空隙率78%、厚さ145μmの混合セルロース製メンブレンフィルターで0.1MPaの圧力で加圧ろ過した際のフィルターの通液後の液の質量である。
【0033】
ろ過時間指標は、粘度の影響を除いた研磨用組成物のフィルターの通りやすさの指標である。ろ過時間指標が小さいほど、研磨用組成物がフィルターを通りやすいことを意味する。これは、研磨用組成物中に水不溶性成分や凝集粒子が少ないことを意味すると考えられ、ろ過時間指標が小さいほど、研磨誘起欠陥を低減できると考えられる。
【0034】
一方、ろ過時間指標が小さいほど研磨誘起欠陥が少なくなるわけでもない。この原因は明確ではないが、一因として、フィルターを通りやすい直線状の構造の水溶性高分子は半導体ウェーハへの吸着性が弱いため、ろ過時間指標が小さすぎる場合には半導体ウェーハの保護が不十分になることが考えられる。
【0035】
したがって、本実施形態による研磨用組成物のろ過時間指標は14~23である。ろ過時間指標の下限は、好ましくは15であり、さらに好ましくは16である。ろ過時間指標の上限は、好ましくは22であり、さらに好ましくは20である。
【0036】
ろ過時間指標は、研磨用組成物中の水溶性高分子の高次構造の影響を受ける。例えばHECのように網目状の構造の場合にろ過時間指標が大きくなり、PVAのように直線状の構造の場合にはろ過時間指標が小さくなる。水溶性高分子は、一般には分子量が高いほど粘度が高くなる。しかし上述のとおり、ろ過時間指標は粘度の影響を除いた指標であるため、水溶性高分子の分子量は、ろ過時間指標には直接は影響しない。
【0037】
ろ過時間指標を小さくするには、純度が高く、溶解度や分散性が高い水溶性高分子を用いることが好ましい。ろ過時間指標に影響を与える他の因子として、結晶化による析出、塩基性化合物との反応による水不溶性成分の形成、シリカの凝集等が考えられる。そのため、水溶性高分子として、結晶性の低いもの、塩基性化合物との反応性の低いもの、シリカを架橋する作用が小さいものを用いることが好ましい。
【0038】
水溶性高分子の濃度は、ろ過時間指標に直接は影響しない。水溶性高分子の濃度が高いほど研磨用組成物の粘度は高くなるが、ろ過時間指標は粘度の影響を除いた指標であるためである。一方、塩基性化合物との反応や、シリカの凝集に関連して、塩基性化合物やシリカとの質量比がろ過時間指標に影響を与える可能性がある。
【0039】
水溶性高分子の場合と同様に、シリカの濃度も単独ではろ過時間指標に影響しない。一方、シリカの粒径が小さいほど、ろ過時間指標が小さくなる傾向がある。そのため、シリカの粒径は、小さい方が好ましい。シリカの粒径は、好ましくは70nm以下である。
【0040】
本実施形態による研磨用組成物は、シリカ、水溶性高分子、塩基性化合物その他の配合材料を適宜混合して水を加えることによって作製される。本実施形態による研磨用組成物は、あるいは、シリカ、水溶性高分子、塩基性化合物その他の配合材料を、順次、水に混合することによって作製される。これらの成分を混合する手段としては、ホモジナイザー、超音波等、研磨用組成物の技術分野において常用される手段が用いられる。
【0041】
以上で説明した研磨用組成物は、適当な濃度となるように水で希釈した後、半導体ウェーハの研磨に用いられる。
【0042】
本実施形態による研磨用組成物は、シリコンウェーハの仕上げ研磨に特に好適に用いることができる。
【実施例
【0043】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0044】
表1に示す比較例1~6、実施例1~7の研磨用組成物を作製した。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の含有量は、すべて希釈前(原液)のものであり、「%」は質量%を意味し、残部は水である。含有量の欄の「-」は、当該成分を添加していないことを意味する。「スラリー粘度」は、研磨用組成物(原液)の粘度である。ろ過時間指標は、原液をろ過して得られた値である。ろ過処理量の測定には、ADVANTEC社製混合セルロース製メンブレンフィルターA045A047Aを使用した。
【0047】
シリカとして、a(二次平均粒子径70nm)、b(同122nm)、c(同62nm)、d(同55nm)のコロイダルシリカを使用した。a、b、cはまゆ型(会合度が1.7程度から2.2程度)のコロイダルシリカであり、dは真球状(会合度が1.7未満程度)のコロイダルシリカである。ただし、記号は表1と共通である。
【0048】
水溶性高分子として、A:ヒドロキシエチルセルロース(粘度207.5cP)、B:ヒドロキシエチルセルロース(同31.9cP)、C:ヒドロキシエチルメチルセルロース(同163.7cP)、D:アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(同1.4cP)、E:ヒドロキシエチルセルロース(同14.5cP)、F:ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル(同1.1cP)、G:ブテンジオールビニルアルコールポリマー(同1.3cP)を使用した。ただし記号は表1と共通である。水溶性高分子の粘度は、各水溶性高分子の1重量%水溶液の粘度である。
【0049】
水溶性高分子として、アンモニア(NHOH)又は水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を使用した。
【0050】
非イオン性界面活性剤として、I:重量平均分子量775のポリオキシプロピレンメチルグルコシド300ppm、又はII:重量平均分子量775のポリオキシプロピレンメチルグルコシド80ppmと重量平均分子量7240のN,N,N’,N’-テトラキスポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエチレンジアミン90ppmとを使用した。
【0051】
これら実施例及び比較例の研磨用組成物を使用して、12インチのシリコンウェーハの研磨を行った。シリコンウェーハの導電型はP型で、抵抗率が0.1Ωcm以上100Ωcm未満のものを使用した。研磨面は<100>面とした。研磨装置は、株式会社岡本工作機械製作所製のSPP800S片面研磨装置を使用した。研磨パッドは、スエードパッドを使用した。研磨用組成物を31倍に希釈して、600mL/分の供給速度で供給した。定盤の回転速度は40rpm、キャリアの回転速度は39rpm、研磨荷重は100kPaとして、4分間の研磨を行った。
【0052】
研磨後のシリコンウェーハの研磨誘起欠陥(PID)を、ウェーハ表面検査装置MAGICS M5640(Lasertec社製)を用いて測定した。結果を前掲の表1の「PID」の欄に示す。また、ろ過時間指標とPIDとの関係を図1に示す。図2は、図1において、ろ過時間指標が0~50秒の部分を拡大して示す図である。
【0053】
表1、図1及び図2より、ろ過時間指標が14~23の場合に、PIDが500以下と少なくなっていることが分かる。
【0054】
比較例3、4、実施例1~3より、ろ過時間指標は、水溶性高分子の種類によって顕著に変化することが分かる。
【0055】
比較例2は、ろ過時間指標が13と比較的低かった一方で、PIDは1195と比較的多かった。このことから、ろ過時間指標は小さければよいというわけでなく、適切な範囲が存在することが分かる。
【0056】
以上より、PIDが少なくなる研磨用組成物は、そのろ過時間指標が14~23であることが分かる。また、ろ過時間指標は単に研磨用組成物中の異物量や水溶性高分子の分子量や粘度を指標化しているわけではなく、機械研磨作用の大きさや水溶性高分子のウェーハの保護能力など、従来定量化することが困難であった研磨用組成物の諸要素を反映していると考えられる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を説明した。上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
図1
図2