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特許7340341シミュレーションシステム、シミュレーション方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】シミュレーションシステム、シミュレーション方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20230831BHJP
   E04H 1/00 20060101ALI20230831BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20230831BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20230831BHJP
【FI】
G06F30/13
E04H1/00 ESW
G06F30/10
G06F30/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019044220
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020149160
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】高棹 滋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 克己
(72)【発明者】
【氏名】安達 匡
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-146569(JP,A)
【文献】国際公開第2018/084216(WO,A1)
【文献】特開2003-228599(JP,A)
【文献】特開2014-153849(JP,A)
【文献】特開2003-203194(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052099(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/13
E04H 1/00
G06F 30/10
G06F 30/20
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設される建物の設計データであって、前記建物の敷地の外周線の位置情報が含まれるデータである、新築建物設計データを取得する新築建物設計データ取得部と、
前記新築建物設計データが示す前記建物の建設予定位置を含む位置の位置特定操作を受け付ける位置入力部と、
前記位置入力部に対する前記位置特定操作において特定される前記建物の建設予定位置について、前記建設予定位置の周辺の位置の既存建物である周辺既存建物の輪郭形状情報を含む地図データおよび前記建設予定位置の標高と前記周辺既存建物の位置の標高とを含む標高データを取得する地図データ取得部と、
前記地図データ取得部によって取得される前記地図データが示す地図上に、前記新築建物設計データ取得部によって取得される前記新築建物設計データが示す前記建物を配置するデータ合成部と、
前記地図データが示す前記建設予定位置の外周線のうち道路に隣接する外周線の部分と、前記新築建物設計データが示す前記敷地の外周線の少なくとも一部分とが一致するように、前記地図に対する前記建物の相対位置および相対角度の少なくとも一方を修正する修正部とを備える
シミュレーションシステム。
【請求項2】
前記修正部は、
前記地図データ取得部によって取得される前記地図データが示す前記地図に含まれる前記建設予定位置に、前記建物とは異なる既存建物が存在する場合に、
前記既存建物を消去する、
請求項1に記載のシミュレーションシステム。
【請求項3】
前記地図データ取得部によって取得される前記地図データおよび標高データに含まれる前記建設予定位置の標高データと前記周辺既存建物の情報とに基づいて、前記建設予定位置と前記周辺既存建物とを3次元表示処理すると共に、
前記新築建物設計データに基づいて、前記建物を前記建設予定位置上に3次元表示処理する3次元表示処理部を更に備える、
請求項2に記載のシミュレーションシステム。
【請求項4】
前記周辺既存建物の高さ情報には、前記周辺既存建物の階数情報が含まれ、
前記3次元表示処理部は、前記周辺既存建物の位置の標高データと、前記周辺既存建物の階数情報とに基づいて、前記周辺既存建物を3次元表示処理する、
請求項3に記載のシミュレーションシステム。
【請求項5】
前記地図データ取得部は、
前記周辺既存建物の属性の情報および住所番地の情報が除かれたものであって、都道府県市区町村の境界線の情報が除かれたものであって、前記建設予定位置に隣接する道路と前記建設予定位置との境界線の情報が含まれるものを、前記地図データおよび標高データとして取得する、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム。
【請求項6】
前記地図データ取得部は、
地図データベースにおいて更新された前記地図データおよび標高データを、前記地図データベースから取得する、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム。
【請求項7】
前記地図データ取得部は、
前記地図データベースにおいて前記建設予定位置の標高データと前記周辺既存建物の位置の標高データとが前記地図データに対して付加されたものを、前記地図データおよび標高データとして前記地図データベースから取得する、
請求項に記載のシミュレーションシステム。
【請求項8】
前記地図データが示す前記建設予定位置の外周線が、前記地図データに含まれていないか、あるいは、不明瞭である場合、
前記修正部は、
前記地図に対する前記建物の相対位置および相対角度の少なくとも一方の修正を実行する前に、
前記地図データが示す前記建設予定位置の外周線を追加する、
請求項に記載のシミュレーションシステム。
【請求項9】
コンピュータが、建設される建物の設計データであって、前記建物の敷地の外周線の位置情報が含まれるデータである新築建物設計データを、データベースから取得する新築建物設計データ取得ステップと、
コンピュータが、位置入力部に対する操作であって、前記新築建物設計データが示す前記建物の建設予定位置を含む位置の位置特定操作を受け付ける位置入力ステップと、
コンピュータが、前記位置入力ステップにおける前記位置特定操作において特定される前記建物の建設予定位置について、前記建設予定位置の周辺の位置の既存建物である周辺既存建物の輪郭形状情報を含む地図データおよび前記建設予定位置の標高と前記周辺既存建物の位置の標高とを含む標高データを、データベースから取得する地図データ取得ステップと、
コンピュータが、前記地図データ取得ステップにおいて取得される前記地図データが示す地図上に、前記新築建物設計データ取得ステップにおいて取得される前記新築建物設計データが示す前記建物を配置するデータ合成ステップと、
コンピュータが、前記地図データが示す前記建設予定位置の外周線のうち道路に隣接する外周線の部分と、前記新築建物設計データが示す前記敷地の外周線の少なくとも一部分とが一致するように、前記地図に対する前記建物の相対位置および相対角度の少なくとも一方を修正する修正ステップと
を備えるシミュレーション方法。
【請求項10】
コンピュータに、
建設される建物の設計データであって、前記建物の敷地の外周線の位置情報が含まれるデータである、新築建物設計データを取得する新築建物設計データ取得ステップと、
前記新築建物設計データが示す前記建物の建設予定位置を含む位置の位置特定操作を受け付ける位置入力ステップと、
前記位置入力ステップにおける前記位置特定操作において特定される前記建物の建設予定位置について、前記建設予定位置の周辺の位置の既存建物である周辺既存建物の輪郭形状情報を含む地図データおよび前記建設予定位置の標高と前記周辺既存建物の位置の標高とを含む標高データを取得する地図データ取得ステップと、
前記地図データ取得ステップにおいて取得される前記地図データが示す地図上に、前記新築建物設計データ取得ステップにおいて取得される前記新築建物設計データが示す前記建物を配置するデータ合成ステップと、
前記地図データが示す前記建設予定位置の外周線のうち道路に隣接する外周線の部分と、前記新築建物設計データが示す前記敷地の外周線の少なくとも一部分とが一致するように、前記地図に対する前記建物の相対位置および相対角度の少なくとも一方を修正する修正ステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシミュレーションシステム、シミュレーション方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、周辺建物の影響を含めた、建物の内部における空気流値のシミュレーションを行うシミュレーションシステムが記載されている。特許文献1に記載された技術では、入出力部が、建物に関する建物データと、近接領域を取り囲む周辺領域に配置された周辺建物を特定可能な周辺建物データとを受け付け、計算部が、周辺建物データに基づいて近接領域の空気流値を求める。
特許文献1には、周辺建物の位置および形状が、周辺建物の外郭の平面的な形状が示された住宅地図情報から特定される例が記載されている。
また、特許文献1には、建物データが、建物の建設地情報(例えば建物の建設地(敷地)の形状の情報)、建物の外装部や内部構成の情報などを含む旨が記載されている。建物の建設地情報(例えば建物の建設地(敷地)の形状の情報)は、通常、その建物の建設地(敷地)の測量を行うことによって得られる。建物の外装部や内部構成の情報としては、通常、その建物の設計データが用いられる。
つまり、特許文献1に記載されているような建物の内部における空気流値のシミュレーションが行われる場合には、住宅地図情報と、測量により得られた情報と、建物の設計データとを合成することによって、その建物と周辺建物との相対位置関係が得られる。
ところで、住宅地図における建物の敷地の形状・位置と、測量により得られたその建物の建設地(敷地)の形状・位置とは、通常一致しない。
そのため、特許文献1に記載されているような建物の内部における空気流値のシミュレーションが行われる場合に、住宅地図情報と、測量により得られた情報と、建物の設計データとを合成しただけでは、その建物と周辺建物との相対位置関係を正確に得ることができないおそれがある。当然のことながら、その建物と周辺建物との相対位置関係を正確に得ることができない場合には、周辺建物の影響を高精度に反映したその建物の内部の空気流値のシミュレーションを行うことができない。
【0003】
特許文献2には、複数の通風状態を重ね合わせることにより建物の総合的な通風状態を算出する通風評価システムが記載されている。
ところで、特許文献2には、建物の総合的な通風状態を算出するために、地図情報を利用するか否か、建物の建設地(敷地)の測量結果を利用するか否か、および、建物の設計データを利用するか否かについて記載されていない。
【0004】
特許文献3には、住宅の開口部が屋外から受ける天空光の量を求め、求めた光の量から特定の照明器具の照明能力に換算することで、開口部を照明器具に見立てて屋内の昼光の明るさを予測する屋内明るさの予測方法が記載されている。
ところで、特許文献3には、屋内の昼光の明るさを予測するために、地図情報を利用するか否か、建物の建設地(敷地)の測量結果を利用するか否か、および、建物の設計データを利用するか否かについて記載されていない。
【0005】
特許文献4には、目的の敷地に対して建物の配置を決めるために敷地を複数に分割して日照の度合いをシミュレーションする日照シミュレーションシステムが記載されている。
ところで、特許文献4には、日照の度合いをシミュレーションするために、地図情報を利用するか否か、および、建物の建設地(敷地)の測量結果を利用するか否かについて記載されていない。
また、特許文献4に記載された技術では、日照の度合いをシミュレーションするために設計データが利用されるのではなく、日照の度合いのシミュレーションの結果が、住宅(建物)の設計に利用される。
【0006】
特許文献5には、緯度、経度、季節および時刻から太陽位置を演算し、建物開口部の方向から開口部に対する太陽位置を演算し、天空光による開口部の輝度を基準として開口部に光源を設定し、開口部をグリッドに分割してグリッドごとに日照障害物の影になるかどうかを判定し、影にならないと判定されたグリッドを使って開口部から床面に照射される照度分布または熱量分布を演算する住宅用日照シミュレーション方法が記載されている。
ところで、特許文献5には、建物全体を設計することなく住宅用日照シミュレーションが行われる旨が記載されているものの、住宅用日照シミュレーションを行うために、地図情報を利用するか否か、および、建物の建設地(敷地)の測量結果を利用するか否かについて記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-010495号公報
【文献】特許第3847159号公報
【文献】特許第3878844号公報
【文献】特許第4152097号公報
【文献】特許第4401377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した問題点に鑑み、本発明は、周辺既存建物の影響を高精度に反映した新築建物の環境設計シミュレーションを行うことができるシミュレーションシステム、シミュレーション方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、建設される建物の設計データであって、前記建物の敷地の外周線の位置情報が含まれるデータである、新築建物設計データを取得する新築建物設計データ取得部と、前記新築建物設計データが示す前記建物の建設予定位置を含む位置の位置特定操作を受け付ける位置入力部と、前記位置入力部に対する前記位置特定操作において特定される前記建物の建設予定位置について、前記建設予定位置の周辺の位置の既存建物である周辺既存建物の輪郭形状情報を含む地図データおよび前記建設予定位置の標高と前記周辺既存建物の位置の標高とを含む標高データを取得する地図データ取得部と、前記地図データ取得部によって取得される前記地図データが示す地図上に、前記新築建物設計データ取得部によって取得される前記新築建物設計データが示す前記建物を配置するデータ合成部と、前記地図データが示す前記建設予定位置の外周線のうち道路に隣接する外周線の部分と、前記新築建物設計データが示す前記敷地の外周線の少なくとも一部分とが一致するように、前記地図に対する前記建物の相対位置および相対角度の少なくとも一方を修正する修正部とを備えるシミュレーションシステムである。
【0010】
本発明の一態様のシミュレーションシステムでは、前記修正部は、前記地図データ取得部によって取得される前記地図データが示す前記地図に含まれる前記建設予定位置上に、前記建物とは異なる既存建物が存在する場合に、前記既存建物を消去してもよい。
【0011】
本発明の一態様のシミュレーションシステムは、前記地図データ取得部によって取得される前記地図データおよび標高データに含まれる前記建設予定位置の標高データと前記周辺既存建物の情報とに基づいて、前記建設予定位置と前記周辺既存建物とを3次元表示処理すると共に、前記新築建物設計データに基づいて、前記建物を前記建設予定位置上に3次元表示処理する3次元表示処理部を更に備えていてもよい。
【0012】
本発明の一態様のシミュレーションシステムでは、前記周辺既存建物の高さ情報には、前記周辺既存建物の階数情報が含まれ、前記3次元表示処理部は、前記周辺既存建物の位置の標高データと、前記周辺既存建物の階数情報とに基づいて、前記周辺既存建物を3次元表示処理してもよい。
【0014】
本発明の一態様のシミュレーションシステムでは、前記地図データ取得部は、前記周辺既存建物の属性の情報および住所番地の情報が除かれたものであって、都道府県市区町村の境界線の情報が除かれたものであって、前記建設予定位置に隣接する道路と前記建設予定位置との境界線の情報が含まれるものを、前記地図データおよび標高データとして取得してもよい。
【0015】
本発明の一態様のシミュレーションシステムでは、前記地図データ取得部は、地図データベースにおいて更新された前記地図データおよび標高データを、前記地図データベースから取得してもよい。
【0016】
本発明の一態様のシミュレーションシステムでは、前記地図データ取得部は、前記地図データベースにおいて前記建設予定位置の標高データと前記周辺既存建物の位置の標高データとが前記地図データに対して付加されたものを、前記地図データおよび標高データとして前記地図データベースから取得してもよい。
【0018】
本発明の一態様のシミュレーションシステムでは、前記地図データが示す前記建設予定位置の外周線が、前記地図データに含まれていないか、あるいは、不明瞭である場合、前記修正部は、前記地図に対する前記建物の相対位置および相対角度の少なくとも一方の修正を実行する前に、前記地図データが示す前記建設予定位置の外周線を追加してもよい。
【0019】
本発明の一態様は、コンピュータが、建設される建物の設計データであって、前記建物の敷地の外周線の位置情報が含まれるデータである新築建物設計データを、データベースから取得する新築建物設計データ取得ステップと、コンピュータが、位置入力部に対する操作であって、前記新築建物設計データが示す前記建物の建設予定位置を含む位置の位置特定操作を受け付ける位置入力ステップと、コンピュータが、前記位置入力ステップにおける前記位置特定操作において特定される前記建物の建設予定位置について、前記建設予定位置の周辺の位置の既存建物である周辺既存建物の輪郭形状情報を含む地図データおよび前記建設予定位置の標高と前記周辺既存建物の位置の標高とを含む標高データを、データベースから取得する地図データ取得ステップと、コンピュータが、前記地図データ取得ステップにおいて取得される前記地図データが示す地図上に、前記新築建物設計データ取得ステップにおいて取得される前記新築建物設計データが示す前記建物を配置するデータ合成ステップと、コンピュータが、前記地図データが示す前記建設予定位置の外周線のうち道路に隣接する外周線の部分と、前記新築建物設計データが示す前記敷地の外周線の少なくとも一部分とが一致するように、前記地図に対する前記建物の相対位置および相対角度の少なくとも一方を修正する修正ステップとを備えるシミュレーション方法である。
【0020】
本発明の一態様は、コンピュータに、建設される建物の設計データであって、前記建物の敷地の外周線の位置情報が含まれるデータである、新築建物設計データを取得する新築建物設計データ取得ステップと、前記新築建物設計データが示す前記建物の建設予定位置を含む位置の位置特定操作を受け付ける位置入力ステップと、前記位置入力ステップにおける前記位置特定操作において特定される前記建物の建設予定位置について、前記建設予定位置の周辺の位置の既存建物である周辺既存建物の輪郭形状情報を含む地図データおよび前記建設予定位置の標高と前記周辺既存建物の位置の標高とを含む標高データを取得する地図データ取得ステップと、前記地図データ取得ステップにおいて取得される前記地図データが示す地図上に、前記新築建物設計データ取得ステップにおいて取得される前記新築建物設計データが示す前記建物を配置するデータ合成ステップと、前記地図データが示す前記建設予定位置の外周線のうち道路に隣接する外周線の部分と、前記新築建物設計データが示す前記敷地の外周線の少なくとも一部分とが一致するように、前記地図に対する前記建物の相対位置および相対角度の少なくとも一方を修正する修正ステップとを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、周辺既存建物の影響を高精度に反映した新築建物の環境設計シミュレーションを行うことができるシミュレーションシステム、シミュレーション方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態のシミュレーションシステムの一例などを示す図である。
図2】地図データ取得部によって取得される地図データが示す地図、新築建物設計データ取得部によって取得される新築建物設計データが示す建物などの一例を説明するための図である。
図3】データ合成部によって実行される処理の一例などを説明するための図である。
図4】修正部によって実行される処理の一例などを説明するための図である。
図5】3次元表示処理部によって実行される処理の一例を説明するための図である。
図6】第1実施形態のシミュレーションシステムにおいて実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のシミュレーションシステム、シミュレーション方法およびプログラムの実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態のシミュレーションシステム1の一例などを示す図である。詳細には、図1(A)は第1実施形態のシミュレーションシステム1の一例を示しており、図1(B)は第1実施形態のシミュレーションシステム1の適用例を示している。
図1に示す例では、シミュレーションシステム1が、新築建物の環境設計シミュレーションを実行する。シミュレーションシステム1は、位置入力部10と、地図データ取得部11と、新築建物設計データ取得部12と、データ合成部13と、修正部14と、3次元表示処理部15と、シミュレーション部16と、出力部17とを備えている。
位置入力部10は、新築建物の環境設計シミュレーションが行われる位置を特定する操作(例えば、住所の入力操作、地図の表示画面上の1点を例えばマウスなどによって指定する操作など)を受け付ける。
地図データ取得部11は、位置入力部10に対する位置特定操作において特定される位置を含む地図データおよび標高データを取得する。詳細には、図1(B)に示す例では、地図データ取得部11が、シミュレーションシステム1の外部に配置された地図データベースD1から、地図データおよび標高データを取得する。
図1に示す例では、地図データ取得部11が、地図データベースD1から、例えば数百メートル×数百メートルの範囲の地図データおよび標高データを取得する。そのため、新築建物の環境設計シミュレーションに不要な地図データおよび標高データ(冗長な地図データおよび標高データ)が地図データベースD1から取得され、シミュレーションシステム1における処理負荷が大きくなってしまうおそれを抑制することができる。また、後述する修正部14による処理負荷を抑制することができる。
他の例では、地図データ取得部11が、地図データベースD1から、数百メートル×数百メートルとは異なる大きさの範囲の地図データおよび標高データを取得してもよい。
【0025】
図1に示す例では、新築建物設計データ取得部12が、建設される建物(新築建物)の設計データである新築建物設計データを取得する。
詳細には、図1(B)に示す例では、新築建物設計データ取得部12が、シミュレーションシステム1の外部に配置された新築建物設計データベースD2から、新築建物設計データを取得する。
他の例では、新築建物設計データベースD2がシミュレーションシステム1の内部に配置され、新築建物設計データ取得部12がその新築建物設計データベースD2から新築建物設計データを取得してもよい。
【0026】
図1に示す例では、データ合成部13が、地図データ取得部11によって取得される地図データと、新築建物設計データ取得部12によって取得される新築建物設計データとを合成する。詳細には、データ合成部13は、地図データ取得部11によって取得される地図データが示す地図MP図2(A)、図2(B)および図3(A)参照)上に、新築建物設計データ取得部12によって取得される新築建物設計データが示す建物BG(図2(C)および図3(A)参照)を配置する。
修正部14は、データ合成部13によって合成が実行された後に、地図MP(地図データが示す地図MP)に対する建物BG(新築建物設計データが示す建物BG)の相対位置および相対角度を修正する。
他の例では、修正部14が、データ合成部13によって合成が実行された後に、地図MP(地図データが示す地図MP)に対する建物BG(新築建物設計データが示す建物BG)の相対位置のみを修正してもよい。
更に他の例では、修正部14が、データ合成部13によって合成が実行された後に、地図MP(地図データが示す地図MP)に対する建物BG(新築建物設計データが示す建物BG)の相対角度のみを修正してもよい。
【0027】
図1に示す例では、3次元表示処理部15は、新築建物設計データが示す建物BGなどの3次元表示処理を実行する。
シミュレーション部16は、新築建物設計データが示す建物BGの環境設計シミュレーションを実行する。シミュレーション部16は、日射シミュレーション部16Aと、通風シミュレーション部16Bと、日照シミュレーション部16Cと、採光シミュレーション部16Dとを備えている。
日射シミュレーション部16Aは、例えば特許第4761787号公報に記載されているような日射シミュレーションを実行する。通風シミュレーション部16Bは、例えば特許文献1に記載されているような通風シミュレーションを実行する。日照シミュレーション部16Cは、例えば特許文献5に記載されているような日照シミュレーションを実行する。採光シミュレーション部16Dは、例えば特許文献2に記載されているような採光シミュレーションを実行する。
出力部17は、例えばシミュレーション部16によって実行された環境設計シミュレーションの結果などを出力する。出力部17は、例えば環境設計シミュレーションの結果などをディスプレイ(図示せず)などに表示する。
他の例では、出力部17が、例えば環境設計シミュレーションの結果などを印刷によって出力してもよい。
【0028】
図2は地図データ取得部11によって取得される地図データが示す地図MP、新築建物設計データ取得部12によって取得される新築建物設計データが示す建物BGなどの一例を説明するための図である。詳細には、図2(A)は地図データ取得部11によって取得される地図データが示す地図MPの一部の一例を示している。図2(B)は図2(A)に示す地図MP中の建設予定位置CSを拡大して示している。図2(C)は新築建物設計データ取得部12によって取得される新築建物設計データが示す建物BGであって、図2(B)に示す建設予定位置CSに建設予定の建物BGを示している。
【0029】
図2に示す例では、地図データ取得部11によって取得される地図データが示す地図MPに、新築建物設計データ取得部12によって取得される新築建物設計データが示す建物BGの建設予定位置CSが含まれる。
詳細には、地図データ取得部11によって取得される地図データおよび標高データに、建設予定位置CSの標高データおよび位置情報が含まれる。つまり、地図データ取得部11によって取得される地図データには、建設予定位置CSの外周線CSLの形状の情報(外周線CSLの位置情報)が含まれる。更に、地図データ取得部11によって取得される地図データおよび標高データには、建設予定位置CSの周辺の位置の既存建物である周辺既存建物SB1~SB6の情報が含まれる。
周辺既存建物SB1の情報には、周辺既存建物SB1の位置の標高データと、周辺既存建物SB1の高さ情報と、周辺既存建物SB1の輪郭T1の形状の情報(輪郭形状情報)とが含まれる。周辺既存建物SB1は、土地SL1上に配置されている。
周辺既存建物SB2の情報には、周辺既存建物SB2の位置の標高データと、周辺既存建物SB2の高さ情報と、周辺既存建物SB2の輪郭T2の形状の情報とが含まれる。周辺既存建物SB2は、土地SL2上に配置されている。
周辺既存建物SB3の情報には、周辺既存建物SB3の位置の標高データと、周辺既存建物SB3の高さ情報と、周辺既存建物SB3の輪郭T3の形状の情報とが含まれる。周辺既存建物SB3は、土地SL3上に配置されている。
周辺既存建物SB4の情報には、周辺既存建物SB4の位置の標高データと、周辺既存建物SB4の高さ情報と、周辺既存建物SB4の輪郭T4の形状の情報とが含まれる。周辺既存建物SB4は、土地SL4上に配置されている。
周辺既存建物SB6の情報には、周辺既存建物SB6の位置の標高データと、周辺既存建物SB6の高さ情報と、周辺既存建物SB6の輪郭T6の形状の情報とが含まれる。周辺既存建物SB6は、土地SL6上に配置されている。土地SL5、SL7上には、周辺既存建物が配置されていない。
周辺既存建物SB1の高さ情報には、周辺既存建物SB1の階数情報が含まれ、周辺既存建物SB2の高さ情報には、周辺既存建物SB2の階数情報が含まれ、周辺既存建物SB3の高さ情報には、周辺既存建物SB3の階数情報が含まれる。また、周辺既存建物SB4の高さ情報には、周辺既存建物SB4の階数情報が含まれ、周辺既存建物SB6の高さ情報には、周辺既存建物SB6の階数情報が含まれる。
更に、地図データ取得部11によって取得される地図データには、建設予定位置CSに隣接する道路RDと建設予定位置CSとの境界線RDBの情報が含まれる。
また、新築建物設計データ取得部12によって取得される新築建物設計データには、建物BGの敷地STの外周線STLの位置情報(形状の情報も含む)が含まれる。建物BGの敷地STの外周線STLの位置情報は、例えば測量を行うことによって得られ、新築建物設計データベースD2に予め格納されている。
他の例では、新築建物設計データ取得部12によって取得される新築建物設計データに、建物BGの敷地STの外周線STLの位置情報(形状の情報も含む)が含まれなくてもよい。
【0030】
図1および図2に示す例では、地図データ取得部11が、プライバシーに配慮し、周辺既存建物SB1、SB2、SB3、SB4、SB6の属性(例えば公共施設の建物であるか、あるいは、個人所有の建物であるか等)の情報および住所番地の情報が除かれたものを、地図データベースD1から地図データおよび標高データとして取得する。
また、地図データ取得部11は、都道府県市区町村の境界線の情報(つまり、建物BGの環境設計シミュレーションに不要な情報)が除かれたものを、地図データベースD1から地図データおよび標高データとして取得する。そのため、都道府県市区町村の境界線の情報が地図データおよび標高データとして取得される場合よりも、地図データおよび標高データを取得する負荷を抑制することができ、地図データ取得部11によって取得された地図データおよび標高データの記憶容量を抑制することができる。
【0031】
例えば周辺の土地SL1~SL7の形質の変更、周辺既存建物SB1、SB2、SB3、SB4、SB6の改築などが行われた場合には、地図データおよび標高データが、地図データベースD1において更新される。
すなわち、例えば周辺の土地SL1~SL7の形質の変更、周辺既存建物SB1、SB2、SB3、SB4、SB6の改築などが行われた場合には、地図データ取得部11によって取得された地図データおよび標高データが、シミュレーションシステム1において更新されるのではなく、地図データベースD1において更新された地図データおよび標高データが、地図データ取得部11によって地図データベースD1から取得される。
そのため、シミュレーションシステム1は、シミュレーションシステム1において地図データおよび標高データの更新が行われる場合よりも、シミュレーションシステム1における処理負荷を抑制することができる。
【0032】
図1および図2に示す例では、地図データベースD1に格納されている地図データおよび標高データは、例えばデジタル地図調整業者によって製作された地図データに、建設予定位置CSの標高データと周辺既存建物SB1~SB6の位置の標高データとが付加されて、一元化されたものである。
つまり、地図データ取得部11は、地図データベースD1において建設予定位置CSの標高データと周辺既存建物SB1~SB6の位置の標高データとが地図データに対して付加されたものを、地図データおよび標高データとして地図データベースD1から取得する。
そのため、シミュレーションシステム1は、シミュレーションシステム1によって標高データの取得および付加が行われる場合よりも、シミュレーションシステム1における処理負荷を抑制することができる。
【0033】
図3はデータ合成部13によって実行される処理の一例などを説明するための図である。詳細には、図3(A)はデータ合成部13による処理が実行された後の状態の一例を示しており、図3(B)は修正部14による処理が実行された後の状態の一例を示している。
図3(A)に示す例では、データ合成部13が、地図データ取得部11によって取得された地図データと、新築建物設計データ取得部12によって取得された新築建物設計データとを合成する。詳細には、データ合成部13は、地図データ取得部11によって取得された地図データが示す地図MP図2(A)および図2(B)参照)上に、新築建物設計データ取得部12によって取得された新築建物設計データが示す建物BG(図2(C)参照)を配置する。
上述したように、住宅地図における建物の敷地の形状・位置と、測量により得られたその建物の建設地(敷地)の形状・位置とは、通常一致しない。
そのため、データ合成部13による処理が実行された後の状態の図3(A)に示す例においても、地図データ取得部11によって取得された地図データが示す地図MP中の建設予定位置CSの外周線CSLと、新築建物設計データ取得部12によって取得された新築建物設計データが示す建物BGの敷地STの外周線STLとがずれている。
つまり、図3(A)に示す状態では、地図データが示す地図MP図2(A)および図2(B)参照)に含まれる周辺の土地SL1~SL7(図2(A)参照)、周辺既存建物SB1、SB2、SB3、SB4、SB6(図2(A)参照)、道路RD(図2(A)参照)等と、新築建物設計データが示す建物BG(図2(C)および図3(A)参照)との相対位置関係が不正確である。
仮に、周辺の土地SL1~SL7、周辺既存建物SB1、SB2、SB3、SB4、SB6、道路RD等と建物BGとの相対位置関係が不正確な状態(図3(A)に示す状態)で建物BGの環境設計シミュレーションが実行されると、当然のことながら、周辺既存建物SB1、SB2、SB3、SB4、SB6の影響を高精度に反映した建物BGの環境設計シミュレーション結果は得られない。
【0034】
そこで、第1実施形態のシミュレーションシステム1では、修正部14が、地図MPに対する建物BGの相対位置および相対角度を修正する処理を実行する。
詳細には、図3(B)に示す例では、修正部14が、図3(A)に示す地図MPに対する建物BGの相対位置および相対角度を修正する処理を実行する。
具体的には、図3(A)および図3(B)に示す例では、修正部14は、新築建物設計データが示す敷地STおよび建物BGを移動させることなく、地図データが示す地図MP(および地図MPに含まれる建設予定位置CS等)を、敷地STおよび建物BGに対して左下向き(図3(A)および図3(B)の左下向き)に移動させると共に、反時計回りに回転させる。
その結果、図3(A)および図3(B)に示す例では、地図データが示す地図MPに含まれる建設予定位置CSの外周線CSLの右上部分CSPと、新築建物設計データが示す敷地STの外周線STLの右上部分STPとが一致する。
すなわち、図3(B)に示す例では、修正部14は、地図データが示す建設予定位置CSの外周線CSLの右上部分CSPと、新築建物設計データが示す敷地STの外周線STLの右上部分STPとが一致するように、地図MPに対する建物BGの相対位置および相対角度を修正する。
【0035】
図2および図3に示す例では、地図データが示す建設予定位置CSの外周線CSLの右上部分CSPは、建設予定位置CSに隣接する道路RDと建設予定位置CSとの境界線RDBに相当する。つまり、建設予定位置CSの外周線CSLの右上部分CSPの位置情報の精度が比較的高いと考えられる。
そのため、図3(B)に示す例では、新築建物設計データが示す敷地STの外周線STLに一致させる部分として、建設予定位置CSの外周線CSLの右上部分CSPが利用される。
【0036】
図2および図3に示す例では、地図データが示す建設予定位置CSの明瞭な外周線CSLが、地図データ取得部11によって取得される地図データに含まれているため、上述したように、修正部14は、建設予定位置CSの外周線CSLの右上部分CSPと敷地STの外周線STLの右上部分STPとが一致するように、地図MPに対する建物BGの相対位置および相対角度の修正を実行する。
一方、地図データ取得部11によって取得される地図データによっては、地図データが示す建設予定位置CSの外周線CSLが、地図データに含まれていないか、あるいは、不明瞭である場合がある。
そのような場合に、修正部14は、地図MPに対する建物BGの相対位置および相対角度の修正を実行する前に、地図データが示す建設予定位置CSの外周線CSLを追加する。
そのため、地図データ取得部11によって取得される地図データが示す建設予定位置CSの外周線CSLが地図データに含まれていない場合や、不明瞭である場合であっても、シミュレーションシステム1は建物BGの環境設計シミュレーションを実行することができる。
【0037】
また、地図データ取得部11によって取得される地図データによっては、地図データが示す地図MPに含まれる建設予定位置CS上に、新築建物設計データが示す建物BGとは異なる既存建物EBG(図2(A)および図2(B)参照)が存在する場合もある。
そこで、第1実施形態のシミュレーションシステム1では、地図データ取得部11によって取得される地図データが示す地図MPに含まれる建設予定位置CS上に、新築建物設計データ取得部12によって取得される新築建物設計データが示す建物BGとは異なる既存建物EBGが存在する場合に、修正部14は、その既存建物EBGを消去する処理を実行する。
【0038】
図4は修正部14によって実行される処理の一例などを説明するための図である。詳細には、図4(A)は既存建物EBGを消去する処理が修正部14によって実行される前の状態の一例を示しており、図4(B)は既存建物EBGを消去する処理が修正部14によって実行された後の状態の一例を示している。
図2および図3に示す例では、地図データ取得部11によって取得される地図データが示す地図MPに含まれる建設予定位置CS上に、新築建物設計データ取得部12によって取得される新築建物設計データが示す建物BGとは異なる既存建物EBGが存在する。
そこで、図4(A)および図4(B)に示すように、修正部14は、地図データが示す地図MPに含まれる建設予定位置CS上に存在する既存建物EBGを消去する処理を実行する。
そのため、第1実施形態のシミュレーションシステム1では、建設予定位置CS上に実在しない既存建物EBGが、建物BGの環境設計シミュレーションに悪影響を与えるおそれを回避することができる。
図3および図4に示す例では、データ合成部13による処理(図3(A)に示す処理)および修正部14による地図MPに対する建物BGの相対位置および相対角度の修正(図3(B)に示す処理)が実行された後に、修正部14による既存建物EBGの消去(図4(A)および図4(B)に示す処理)が実行される。
他の例では、データ合成部13による処理(図3(A)に示す処理)および/または修正部14による地図MPに対する建物BGの相対位置および相対角度の修正(図3(B)に示す処理)が実行される前に、修正部14による既存建物EBGの消去(図4(A)および図4(B)に示す処理)が実行されてもよい。
【0039】
図5は3次元表示処理部15によって実行される処理の一例を説明するための図である。
図5に示す例では、3次元表示処理部15が、地図データ取得部11によって取得された地図データに含まれる建設予定位置CSの標高データおよび位置情報に基づいて、建設予定位置CSを3次元表示処理すると共に、新築建物設計データ取得部12によって取得された新築建物設計データに基づいて、建物BGを建設予定位置CS上に3次元表示処理している。
また、図5に示す例では、3次元表示処理部15が、地図データ取得部11によって取得された地図データおよび標高データに含まれる建設予定位置CSの周辺の周辺既存建物SB1~SB4の情報(詳細には、周辺既存建物SB1~SB4の位置の標高データ、周辺既存建物SB1~SB4の高さ情報、および、周辺既存建物SB1~SB4の輪郭T1~T4の形状の情報)に基づいて、周辺既存建物SB1~SB4を3次元表示処理している。
図5に示す例では、建設される建物BGと周辺既存建物SB1~SB4とが、3次元表示処理部15によって3次元表示処理されているため、シミュレーションシステム1の利用者は、建設される建物BGと周辺既存建物SB1~SB4との関係を容易に把握することができる。
【0040】
詳細には、図5に示す例では、3次元表示処理部15が、周辺既存建物SB1~SB4の高さ情報として、周辺既存建物SB1~SB4の階数情報を利用している。
つまり、3次元表示処理部15は、周辺既存建物SB1~SB4の位置の標高データと、周辺既存建物SB1~SB4の階数情報とに基づいて、周辺既存建物SB1~SB4を3次元表示処理している。
そのため、3次元表示処理部15は、処理負荷を抑制しつつ、周辺既存建物SB1~SB4を3次元表示処理することができる。
【0041】
また、第1実施形態のシミュレーションシステム1の3次元表示処理部15は、例えばシミュレーションシステム1の利用者の入力操作に応じて、周辺既存建物SB1~SB4の屋根の形状などを変更する機能を有する。
更に、3次元表示処理部15は、例えばシミュレーションシステム1の利用者の入力操作に応じて、周辺既存建物SB1~SB4の位置の高さ(標高)を、地図データ取得部11によって取得された地図データおよび標高データが示す高さ(標高)から、利用者が指定する任意の高さ(標高)に変更する機能を有する。
また、3次元表示処理部15は、例えばシミュレーションシステム1の利用者の入力操作に応じて、周辺既存建物SB1~SB4の高さを、地図データ取得部11によって取得された地図データおよび標高データに含まれる周辺既存建物SB1~SB4の階数情報に相当する高さから、利用者が指定する任意の高さに変更する機能を有する。
【0042】
図6は第1実施形態のシミュレーションシステム1において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図6に示す例では、ステップS0において、位置入力部10が、新築建物の環境設計シミュレーションが行われる位置を特定する操作(位置特定操作)を受け付ける。
次いで、ステップS1では、地図データ取得部11が地図データベースD1から、ステップS0における位置特定操作において特定された位置を含む地図データおよび標高データを取得する。
次いで、ステップS2では、新築建物設計データ取得部12が新築建物設計データベースD2から、新築建物設計データを取得する。
次いで、ステップS3では、データ合成部13が、ステップS1において取得された地図データが示す地図上に、ステップS2において取得された新築建物設計データが示す建物を配置する。つまり、ステップS3では、データ合成部13が、ステップS1において取得された地図データと、ステップS2において取得された新築建物設計データとを合成する。
次いで、ステップS4では、修正部14が、地図に対する建物の相対位置および相対角度を修正する。
次いで、ステップS5では、3次元表示処理部15が、新築建物設計データが示す建物などの3次元表示処理を実行する。
次いで、ステップS6では、シミュレーション部16が、新築建物設計データが示す建物の環境設計シミュレーションを実行する。
【0043】
上述したように、第1実施形態のシミュレーションシステム1では、新築建物設計データが示す建物BGが、地図データが示す地図MP上に配置された後に、修正部14が、地図MPに対する建物BGの相対位置および相対角度を修正する。その結果、新築建物設計データが示す建物BGと、地図データが示す地図MPとの相対位置関係のずれが低減する。
そのため、第1実施形態のシミュレーションシステム1は、周辺既存建物SB1~SB6の影響を高精度に反映した建物BGの環境設計シミュレーションを行うことができる。
【0044】
<第2実施形態>
以下、本発明のシミュレーションシステム、シミュレーション方法およびプログラムの第2実施形態について説明する。
第2実施形態のシミュレーションシステム1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態のシミュレーションシステム1と同様に構成されている。従って、第2実施形態のシミュレーションシステム1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態のシミュレーションシステム1と同様の効果を奏することができる。
【0045】
上述したように第1実施形態のシミュレーションシステム1では、シミュレーション部16が、日射シミュレーション部16Aと、通風シミュレーション部16Bと、日照シミュレーション部16Cと、採光シミュレーション部16Dとを備えている。
一方、第2実施形態のシミュレーションシステム1では、シミュレーション部16が、日射シミュレーション部16A、通風シミュレーション部16B、日照シミュレーション部16Cおよび採光シミュレーション部16Dのいずれか1つのみを備えている。
つまり、第2実施形態のシミュレーションシステム1は、新築建物設計データ取得部12によって取得される新築建物設計データが示す建物BGの日射シミュレーション、通風シミュレーション、日照シミュレーションおよび採光シミュレーションのいずれかを実行する。
第2実施形態のシミュレーションシステム1は、周辺の土地SL1~SL7および周辺既存建物SB1~SB6の影響を高精度に反映した建物BGの日射シミュレーション、通風シミュレーション、日照シミュレーションおよび採光シミュレーションのいずれかを実行することができる。
【0046】
<第3実施形態>
以下、本発明のシミュレーションシステム、シミュレーション方法およびプログラムの第3実施形態について説明する。
第3実施形態のシミュレーションシステム1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態のシミュレーションシステム1と同様に構成されている。従って、第3実施形態のシミュレーションシステム1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態のシミュレーションシステム1と同様の効果を奏することができる。
【0047】
上述したように第1実施形態のシミュレーションシステム1は、新築建物の環境設計シミュレーションを実行する。シミュレーションシステム1は、地図データ取得部11と、新築建物設計データ取得部12と、データ合成部13と、修正部14と、3次元表示処理部15と、シミュレーション部16と、出力部17とを備えている。
一方、第3実施形態のシミュレーションシステム1は、新築建物の環境設計シミュレーションを実行する。シミュレーションシステム1は、地図データ取得部11と、新築建物設計データ取得部12と、データ合成部13と、修正部14と、出力部17とを備えているものの、3次元表示処理部15およびシミュレーション部16を備えていない。
つまり、第3実施形態のシミュレーションシステム1は、第3実施形態のシミュレーションシステム1の外部に配置されたシミュレーション部16において高精度な建物BGの環境設計シミュレーションを実行するために必要な合成データ(地図データと新築建物設計データとを合成したデータであって、地図MPに対する建物BGの相対位置および相対角度が修正されたデータ)を生成する前処理システムとして機能する。
【0048】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を適宜組み合わせてもよい。
【0049】
なお、上述した実施形態におけるシミュレーションシステム1が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0050】
1…シミュレーションシステム、10…位置入力部、11…地図データ取得部、12…新築建物設計データ取得部、13…データ合成部、14…修正部、15…3次元表示処理部、16…シミュレーション部、16A…日射シミュレーション部、16B…通風シミュレーション部、16C…日照シミュレーション部、16D…採光シミュレーション部、17…出力部、D1…地図データベース、D2…新築建物設計データベース、MP…地図、CS…建設予定位置、CSL…外周線、CSP…部分、EBG…既存建物、ST…敷地、STL…外周線、STP…部分、BG…建物、SL1、SL2、SL3、SL4、SL5、SL6、SL7…周辺の土地、SB1、SB2、SB3、SB4、SB6…周辺既存建物、T1、T2、T3、T4、T6…輪郭、RD…道路、RDB…境界線
図1
図2
図3
図4
図5
図6