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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】転写用基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20230831BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20230831BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H01L33/48
H01L21/52 F
G09F9/00 338
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019118763
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021005632
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】浅田 圭介
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-064113(JP,A)
【文献】特表2015-500561(JP,A)
【文献】国際公開第2018/077961(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/193435(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0285086(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0138071(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/447-21/449
H01L 21/52
H01L 21/58 -21/607
H01L 33/00 -33/64
G09F 9/00 - 9/46
H05K 3/30
H05K 7/12
H05K 13/00 -13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体の第1面から突出した複数の突起部と、
前記弾性体の前記第1面から内部に窪み、第1方向に延伸する溝部と、を含み、
前記複数の突起部の各々は、粘着力を有するヘッド面を含み、
前記溝部は、前記複数の突起部の間に設けられている素子の転写用基板。
【請求項2】
前記溝部は、前記弾性体の一方の端面から他方の端面まで設けられている請求項1に記載の素子の転写用基板。
【請求項3】
前記溝部の深さは、前記突起部の高さよりも小さい請求項1又は請求項に記載の素子の転写用基板。
【請求項4】
前記溝部の断面形状は矩形である請求項1乃至請求項のいずれか一に記載の素子の転写用基板。
【請求項5】
前記溝部の側面はテーパーを含む請求項1乃至請求項のいずれか一に記載の素子の転写用基板。
【請求項6】
前記溝部は曲面を含む請求項1乃至請求項のいずれか一に記載の素子の転写用基板。
【請求項7】
前記弾性体はゴムである請求項1乃至請求項のいずれか一に記載の素子の転写用基板。
【請求項8】
前記弾性体はシリコーンゴムである請求項1乃至請求項のいずれか一に記載の素子の転写用基板。
【請求項9】
前記弾性体の前記第1面と反対側の第2面に支持体が設けられている請求項1乃至請求項のいずれか一に記載の素子の転写用基板。
【請求項10】
前記支持体は石英である請求項に記載の転写用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子が形成された素子基板から素子をピックアップし、素子を駆動する回路が形成された回路基板に素子を転写する際に用いる素子の転写用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の中小型ディスプレイにおいては、液晶やOLED(Organic Light Emitting Diode)を用いたディスプレイが既に製品化されている。なかでも、自発光型素子であるOLEDを用いたOLEDディスプレイは、液晶ディスプレイと比べて、高コントラストでバックライトが不要という利点を有する。しかしながら、OLEDは有機化合物で構成されるため、有機化合物の劣化によってOLEDディスプレイの高信頼性を確保することが難しい。
【0003】
一方、次世代ディスプレイとして、マトリクス状に配列された画素内に微小なマイクロLEDを配置した、いわゆるマイクロLEDディスプレイの開発が進められている。マイクロLEDは、OLEDと同様の自発光型素子であるが、OLEDと異なり、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などを含む無機化合物で構成される。そのため、OLEDディスプレイと比較すると、マイクロLEDディスプレイは高信頼性を確保しやすい。さらに、マイクロLEDは、発光効率が高く、高輝度である。したがって、マイクロLEDディスプレイは、高信頼性、高輝度、高コントラストの次世代ディスプレイとして期待されている。
【0004】
マイクロLEDは、一般的なLEDと同様にサファイア等の基板の上に形成され、基板をダイシングすることによって個々のマイクロLEDに分離される。マイクロLEDディスプレイにおいては、回路基板(バックプレーン、TFT基板ともいう)の画素内にダイシングされたマイクロLEDを配置する必要がある。回路基板にマイクロLEDを配置する方法の一つとして、転写用基板を用いて、素子基板から複数のマイクロLEDをピックアップした後、転写用基板を回路基板と貼り合わせ、複数のマイクロLEDを回路基板に転写する方法が知られている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2016/0240516号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0047306号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、転写用基板の大きさは回路基板の大きさよりも小さく、ピックアップできるマイクロLEDの数は限られる。そのため、転写工程を繰り返す必要があるが、既にマイクロLEDが接着されている回路基板に対して、さらにマイクロLEDを転写する場合、回路基板に既に接着されていたマイクロLEDが転写用基板と接触し、回路基板からマイクロLEDが剥離されて転写用基板に再ピックアップされるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、回路基板に接着されている素子の再ピックアップを抑制する転写用基板を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る素子の転写用基板は、素子の転写用基板は、弾性体の第1面から突出した複数の突起部と、弾性体の第1面から内部に窪み、第1方向に延伸する溝部と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略斜視図である。
図2A】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略断面図である。
図2B】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略断面図である。
図2C】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略部分拡大図である。
図3A】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略断面図である。
図3B】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略断面図である。
図3C】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略部分拡大図である。
図4A】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略断面図である。
図4B】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略断面図である。
図4C】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略部分拡大図である。
図5A】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略断面図である。
図5B】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略断面図である。
図5C】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略部分拡大図である。
図6】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略斜視図である。
図7A】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略断面図である。
図7B】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略断面図である。
図7C】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略部分拡大図である。
図8】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略斜視図である。
図9A】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略断面図である。
図9B】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略断面図である。
図9C】本発明の一実施形態に係る転写用基板の概略部分拡大図である。
図10】本発明の一実施形態に係る素子の転写方法に用いる素子基板の概略斜視図である。
図11】本発明の一実施形態に係る素子の転写方法に用いる回路基板のレイアウト構成を示すブロック図である。
図12】本発明の一実施形態に係る素子の転写方法に用いる回路基板のTFTの概略断面図である。
図13】本発明の一実施形態に係る素子の転写方法のフローチャートである。
図14A】本発明の一実施形態に係る素子の転写方法を示す概略断面図である。
図14B】本発明の一実施形態に係る素子の転写方法を示す概略断面図である。
図14C】本発明の一実施形態に係る素子の転写方法を示す概略断面図である。
図14D】本発明の一実施形態に係る素子の転写方法を示す概略断面図である。
図14E】本発明の一実施形態に係る素子の転写方法を示す概略断面図である。
図14F】本発明の一実施形態に係る素子の転写方法を示す概略断面図である。
図14G】本発明の一実施形態に係る素子の転写方法を示す概略断面図である。
図14H】本発明の一実施形態に係る素子の転写方法を示す概略断面図である。
図15】本発明の一実施形態に係る素子の転写方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者が、発明の主旨を保ちつつ適宜変更することによって容易に想到し得るものについても、当然に本発明の範囲に含有される。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
本発明の各実施形態において、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、説明における上下関係が逆になる場合があってもよい。例えば、基板上の素子という表現は、基板と素子との上下関係を説明しているに過ぎず、基板と素子との間に他の部材が配置されていてもよい。
【0012】
本明細書において、「αはA、B又はCを含む」、「αはA,B及びCのいずれかを含む」、「αはA,B及びCからなる群から選択される一つを含む」、といった表現は、特に明示が無い限り、αがA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0013】
本明細書において、素子とは、例えば、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)、レーザーダイオード(LD)、ミニLED、又はマイクロLEDなどであるが、これに限られない。
【0014】
本明細書において、ミニLEDとは、例えば、大きさが100μm以上のLEDとし、マイクロLEDとは、例えば、大きさが数μm以上100μm未満のLEDとしている。ただし、本明細書においては、いずれのサイズのLEDも用いることができ、表示装置の一画素の大きさに応じて使い分けることができる。
【0015】
<第1実施形態>
図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る素子の転写用基板について説明する。
【0016】
[構造]
図1は、本発明の一実施形態に係る転写用基板10の概略斜視図である。図2A及び図2Bは、本発明の一実施形態に係る転写用基板10の概略断面図である。具体的には、図2Aは、図1のA-A’線に沿って切断した概略断面図であり、図2Bは、図1のB-B’線に沿って切断した概略断面図である。また、図2Cは、本発明の一実施形態に係る転写用基板10の概略部分拡大図である。具体的には、図2Cは、図2Aの円15で囲まれた転写用基板10の断面部分を拡大した概略部分拡大図である。
【0017】
転写用基板10は、支持体100及び支持体100の上に設けられた弾性体200を含む。弾性体200は、第1面201及び第1面201の反対側に位置する第2面202を含む。弾性体200の第1面201には、複数の突起部210及び複数の溝部220が設けられている。なお、弾性体200の第1面201は、溝部220の上面をいう。すなわち、突起部210は、弾性体200の第1面201から突出した部分であり、溝部220は、弾性体200の第1面201から内部に窪んだ部分である。また、支持体100は、弾性体200の第2面202に設けられている。
【0018】
転写用基板10の大きさは、素子が形成された基板(以下、「第1基板」とする。また、「素子基板」ということもある。)又は回路が形成された基板(以下、「第2基板」とする。また、「回路基板」ということもある。)を考慮して適宜決定することができる。転写用基板10の大きさは、例えば、50mm角であるが、これに限られない。また、転写用基板10の形状は、例えば、矩形であるが、これに限られない。転写用基板10の形状は、多角形、円形、又は楕円形とすることもできる。
【0019】
転写用基板10は、支持体100の端面と弾性体200の端面とが揃っていることが好ましいが、これに限られない。支持体100を弾性体200よりも大きく設けることもでき、弾性体200よりも小さく設けることもできる。支持体100は、支持体100に力が加えられた場合に、弾性体200に均一に力を伝達するように設けられていることが好ましい。
【0020】
突起部210は、第1方向(図1のX方向)及び第2方向(図1のY方向)に一定の幅を有し、弾性体200の第1面に対して垂直方向(X方向及びY方向に対して垂直方向)に一定の高さを有するように、弾性体200の第1面から突出して設けられている。突起部210の第1方向及び第2方向の幅は、第1基板からピックアップする素子の大きさを考慮して適宜決定することができる。また、突起部210の高さ(又は垂直方向の距離)は、第1基板からピックアップする素子の高さを考慮して適宜決定することができる。突起部210の高さは、例えば、弾性体200の第1面201から1μm~100μm、好ましくは5μm~50μm、特に好ましくは10μm~20μmである。突起部210の高さが100μmを超えると、ピックアップされた素子を第2基板に転写する場合に、突起部210が垂直方向以外へ変形しやすくなるため、第2基板に対して素子を接着する位置がずれやすくなる。また、突起部の高さが1μmより小さいと、第1基板から素子をピックアップする場合に、突起部210だけでなく、弾性体200の第1面201又は溝部220にも素子が密着してしまう。したがって、突起部210の高さの範囲は、上記範囲であることが好ましい。
【0021】
突起部210の上面211(以下、「ヘッド面211」とする)を有する。ヘッド面211は、素子と接してピックアップする機能を有する。そのため、ヘッド面211は、第1基板から素子を剥離することができる粘着力を有する。また、ヘッド面211は、可能な限り平坦であることが好ましく、ヘッド面211の表面粗さは、好ましくは1μm以下である。ヘッド面211が平坦であると、ヘッド面211と素子との接触面積が増加するため、ヘッド面211と素子との密着力を高めることができる。言い換えると、ヘッド面211の表面粗さを小さくすることでヘッド面211の粘着力を高めることができる。
【0022】
突起部210は、第1方向及び第2方向に一定の幅を有する。突起部210の断面形状は矩形であるが、これに限られない。例えば、突起部210の断面形状は、多角形、円形、又は楕円形などの形状が可能である。すなわち、突起部210は、多角柱、円柱、又は楕円柱など、様々な形状が可能である。また、突起部310は、ヘッド面211に向かってテーパーが設けられていてもよい。
【0023】
突起部210の本数や間隔は、ピックアップする素子の大きさや転写される第2基板の素子の配置の間隔を考慮して適宜決定することができる。例えば、突起部210は、マトリクス状に配置することができる。
【0024】
各溝部220は、第1方向に直線状に延伸して設けられている。また、複数の溝部220が第2方向に配列されている。すなわち、溝部220は、第1方向においては、弾性体の一方の端面から他方の端面まで延伸して設けられ、第2方向においては、突起部210の間に設けられている。溝部220の深さ(又は垂直方向の距離)は、例えば、1μm以上30μm以下であり、好ましくは2μm以上10μm以下であり、特に好ましくは2μm以上3μm以下である。溝部220の深さが浅すぎると、突起部210が素子をリリースする場合に、溝部220の底面が第2基板に接着されていた素子と接し、溝部220が素子をピックアップしてしまう。また、溝部220の深さが深すぎると、転写用基板10の剛性を十分に保持することができない。したがって、溝部220の深さの範囲は、上記範囲であることが好ましい。なお、溝部220の深さは、突起部210の高さよりも小さくしてもよい。
【0025】
溝部220の断面形状は矩形であり、側面及び底面を含む。溝部220の幅は素子の大きさに応じて適宜決定することができる。溝部220の幅は、例えば、1μm以上30μm以下であり、好ましくは2μm以上10μm以下であり、特に好ましくは2μm以上3μm以下である。また、溝部220の本数や間隔は、素子の大きさや第2基板の素子の配置の間隔を考慮して適宜決定することができる。さらに、溝部220は底面に向かってテーパーが設けられていてもよい。
【0026】
[材質]
支持体100は、弾性体200を支持し、転写用基板10の剛性を高める機能を有する。そのため、支持体100は、弾性体200よりも固い材質であることが好ましい。支持体100の材質としては、例えば、石英、ガラス、サファイア、シリコン、又はステンレスなどを用いることができる。なお、転写用基板10の剛性が弾性体200のみで十分である場合には、転写用基板10に支持体100を設けない構成とすることもできる。
【0027】
弾性体200は、素子をピックアップ又はリリースする場合に、素子からの反発力を吸収する機能を有する。すなわち、弾性体200は、力が加えられると変形し、力が取り除かれると元に戻る性質を有する。弾性体200の材質としては、例えば、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム(SI)、ポリウレタンゴム(PUR)、フッ素ゴム(FPM)、ニトリルゴム(NBR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、イソブチエン・イソプレンゴム(IIR)などであり、これらのゴムを単独又は混合して使用することができる。特に、高い耐熱性を必要とする場合には、弾性体200の材質としては、シリコーンゴム又はフッ素ゴムであることが好ましい。なお、本明細書におけるシリコーンゴムには、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane:PDMS)が含まれるものとする。
【0028】
また、弾性体200には、加硫材、充填剤、軟化剤、着色剤、劣化防止剤などの添加物が含まれていてもよい。加硫材としては、硫黄、硫黄化合物、過酸化物などを用いることができる。充填剤としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、珪酸、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムなどを用いることができる。軟化剤としては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。着色剤としては、カーボンブラック、チタンホワイト、群青、フタロシアニン、ベンガラ、クロム酸鉛などを用いることができる。劣化防止剤としては、フェノール、ワックスなどを用いることができる。
【0029】
さらに、弾性体200には、加硫助剤又は加硫促進剤が含まれていてもよい。加硫助剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、亜鉛華、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどを用いることができる。加硫促進剤としては、チアゾール類、チラウム類、スルフェンアミド類、ジチオカルバミン酸塩類などを用いてもよい。
【0030】
弾性体200の第2面202には支持体100が設けられるが、弾性体200と支持体100とは、接着剤を用いて接着されていてもよい。接着剤としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、又はウレタン系樹脂などを用いることができる。
【0031】
本実施形態に係る素子の転写用基板10によれば、弾性体200の第1面201に溝部220が設けられているため、素子との接触面積は、ヘッド面211よりも第1面201の方が小さい。そのため、既に素子が接着された第2基板に対して、さらに転写用基板10を用いて素子を転写する場合、転写用基板10の第1面201に第2基板に接着された素子が接しても、接触面積が小さいため、第1面201が素子を再ピックアップすることがない。したがって、素子の転写工程での不良が抑制され、歩留まりが向上する。
【0032】
[変形例]
図3図5を用いて、本実施形態に係る素子の転写用基板の変形例について説明する。なお、以下では、変形例に係る転写用基板の概略斜視図を省略し、概略断面図及び概略部分拡大図を用いて説明するが、便宜上、図1と同様に、A-A’線は突起部を含む切断面を表し、B-B’線は突起部を含まない切断面を表すものとする。
【0033】
図3A及び図3Bは、本発明の一実施形態に係る転写用基板10Aの概略断面図である。具体的には、図3Aは、A-A’線に沿って切断した概略断面図であり、図3Bは、B-B’線に沿って切断した概略断面図である。また、図3Cは、本発明の一実施形態に係る転写用基板10Aの概略部分拡大図である。具体的には、図3Cは、図3Aの円15Aで囲まれた転写用基板10Aの断面部分を拡大した概略部分拡大図である。
【0034】
転写用基板10Aは、転写用基板10とは溝部の断面形状が異なる。転写用基板10Aの溝部220Aの断面形状は三角形である。溝部220Aの断面形状は、図3A図3Cに示すような二等辺三角形に限られない。三角形は、正三角形、直角三角形、鋭角三角形、又は鈍角三角形であってもよい。また、三角形の角は必ずしも尖っている必要はなく、丸まっていてもよい。さらに、図示しないが、溝部220A間に平坦な面を設けず、隣接する2つの溝部220Aを連結して稜線を形成するように溝部220Aを設けることもできる。
【0035】
変形例の転写用基板10Aによれば、弾性体200の第1面201に溝部220Aが設けられているため、素子との接触面積は、ヘッド面211よりも第1面201の方が小さい。そのため、既に素子が接着された第2基板に対して、さらに転写用基板10Aを用いて素子を転写する場合、転写用基板10の第1面201に第2基板に接着された素子が接しても、接触面積が小さいため、第1面201が素子を再ピックアップすることがない。さらに、溝部220Aの断面形状が三角形であり、溝部220Aは底面を有しない。そのため、溝部220Aも素子を再ピックアップすることがない。したがって、素子の転写工程での不良が抑制され、歩留まりが向上する。
【0036】
図4A及び図4Bは、本発明の一実施形態に係る転写用基板10Bの概略断面図である。具体的には、図4Aは、A-A’線に沿って切断した概略断面図であり、図4Bは、B-B’線に沿って切断した概略断面図である。また、図4Cは、本発明の一実施形態に係る転写用基板10Bの概略部分拡大図である。具体的には、図4Cは、図4Aの円15Bで囲まれた転写用基板10Bの断面部分を拡大した概略部分拡大図である。
【0037】
転写用基板10Bは、転写用基板10とは溝部の断面形状が異なる。転写用基板10Bの溝部220Bの断面形状は半円形である。また、溝部220B間の凸部の断面形状も半円形である。なお、溝部220Bの断面形状は、半円形に限られず、半楕円形でもよい。すなわち、溝部220Bは曲面で形成されていればよい。溝部220B間の凸部も同様である。
【0038】
変形例の転写用基板10Bによれば、弾性体200の第1面201に溝部220Bが設けられているため、素子との接触面積は、ヘッド面211よりも第1面201の方が小さい。そのため、既に素子が接着された第2基板に対して、さらに転写用基板10Bを用いて素子を転写する場合、転写用基板10の第1面201に第2基板に接着された素子が接しても、接触面積が小さいため、第1面201が素子を再ピックアップすることがない。さらに、溝部220Bが曲面であり、溝部220Bの底面は平坦ではない。また、溝部220B間の凸部も曲面であり、第1面201は平坦な面でない。そのため、溝部220Bも素子を再ピックアップすることがない。したがって、素子の転写工程での不良が抑制され、歩留まりが向上する。
【0039】
図5A及び図5Bは、本発明の一実施形態に係る素子の転写用基板10Cの概略断面図である。具体的には、図5Aは、A-A’線に沿って切断した概略断面図であり、図5Bは、B-B’線に沿って切断した概略断面図である。また、図5Cは、本発明の一実施形態に係る転写用基板10Cの概略部分拡大図である。具体的には、図5Cは、図5Aの円15Cで囲まれた転写用基板10Cの断面部分を拡大した概略部分拡大図である。
【0040】
転写用基板10Cは、転写用基板10とは溝部の断面形状が異なる。転写用基板10Cは、第1溝部220-1C及び第2溝部220-2Cを含む。第2溝部220-2Cの深さは、第1溝部220-1Cの深さよりも深い。突起部210間には、第1溝部220-1C及び第2溝部220-2Cを複数設けることもできる。また、第1溝部220-1Cと第2溝部220-2Cとを交互に設けることもできる。
【0041】
変形例の転写用基板10Cによれば、弾性体200の第1面201に第1溝部220-1C及び第2溝部220-2Cが設けられているため、素子との接触面積は、ヘッド面211よりも第1面201の方が小さい。そのため、既に素子が接着された第2基板に対して、さらに転写用基板10Aを用いて素子を転写する場合、転写用基板10の第1面201に第2基板に接着された素子が接しても、接触面積が小さいため、第1面201が素子を再ピックアップすることがない。したがって、素子の転写工程での不良が抑制され、歩留まりが向上する。さらに、2つの異なる深さの溝部を設けることにより、突起部210の圧縮歪みを分散することができる。すなわち、転写用基板10Cでは、突起部210が圧縮した場合のズレが小さい。したがって、高精度で素子をピックアップすることができる。
【0042】
その他、図示しないが、溝部220を第1方向に直線状に延伸するのではなく、曲線状で延伸することもできる。例えば、溝部220を第1方向に波線状に延伸することができる。
【0043】
また、溝部220のような一方向に延伸した窪みの代わりに、凹部を多数設け、凹凸を有する第1面201とすることもできる。さらに、弾性体200の第1面に梨地加工を施し、凹凸を有する第1面201とすることもできる。このような態様においては、第1面201の表面粗さは、ヘッド面211の平均粗さよりも大きくなるため、素子との接触面積は、ヘッド面211よりも第1面201の方が小さくなる。したがって、このような態様においても、第1面201での素子を再ピックアップを抑制することができる。
【0044】
以上からわかるように、本発明の一実施形態に係る素子の転写用基板は、第1基板上の素子をピックアップする手段である突起部と、第2基板上の素子をピックアップしない手段である溝部を含むということもできる。
【0045】
上記の構成は、変形例も含めてあくまで一実施形態に過ぎず、本発明は上記の構成に限定されるものではない。
【0046】
<第2実施形態>
図6及び図7を用いて、第1実施形態とは異なる、本発明の一実施形態に係る素子の転写用基板について説明する。なお、以下では、第1実施形態と同様の構成については説明を省略し、主に、第1実施形態の構成とは異なる点について説明する。
【0047】
図6は、本発明の一実施形態に係る転写用基板20の概略斜視図である。図7A及び図7Bは、本発明の一実施形態に係る転写用基板20の概略断面図である。具体的には、図7Aは、図6のA-A’線に沿って切断した概略断面図であり、図7Bは、図6のC-C’線に沿って切断した概略断面図である。なお、C-C’線は、A-A’線に直交する。また、図7Cは、本発明の一実施形態に係る転写用基板20の概略部分拡大図である。具体的には、図7Cは、図7Aの円25で囲まれた転写用基板20の断面部分を拡大した概略部分拡大図である。
【0048】
転写用基板20は、支持体100及び支持体100の上に設けられた弾性体200を含む。弾性体200は、第1面201及び第1面201の反対側に位置する第2面202を含む。弾性体200の第1面201には、複数の突起部210及び複数の突起部210の間の溝部230が設けられている。すなわち、転写用基板20は、第1実施形態に係る転写用基板10とは溝部の形状が異なる。
【0049】
転写用基板20の溝部230は、格子状に設けられている。すなわち、第1方向に直線状に延伸する溝(第1溝)と第2方向に直線状に延伸する溝(第2溝)とが直交して設けられている。図6及び図7に示す転写用基板20は、第1溝と第2溝とは、深さ、幅、及び断面形状がいずれも同じであるが、これに限られない。第1溝と第2溝とは、深さ、幅、又は断面形状が異なっていてもよい。また、第1溝又は第2溝は底面に向かってテーパーが設けられていてもよい。例えば、第1溝の断面形状を矩形として、第2溝の断面形状を円形とすることもできる。第1溝及び第2溝の深さ、幅、又は断面形状は、素子の大きさや第2基板の素子の配置の間隔を考慮して適宜決定することができる。
【0050】
図6及び図7に示す転写用基板20は、第1溝及び第2溝が等間隔で配列し、第1溝と第2溝とが直交(90°で交差)している。そのため、第1溝及び第2溝で囲まれた第1面201の形状は正方形である。一方、第1溝又は第2溝の間隔を変え、第1溝及び第2溝で囲まれた第1面201の形状を長方形にすることもできる。また、溝部230は、第1溝と第2溝とが90°以外の角度で交差するようにし、第1溝及び第2溝で囲まれた第1面201の形状を平行四辺形又はひし形とすることもできる。
【0051】
本実施形態に係る素子の転写用基板20によれば、弾性体200の第1面201に溝部230が設けられているため、素子との接触面積は、ヘッド面211よりも第1面201の方が小さい。そのため、既に素子が接着された第2基板に対して、さらに転写用基板10を用いて素子を転写する場合、転写用基板10の第1面201に第2基板に接着された素子が接しても、接触面積が小さいため、第1面201が素子を再ピックアップすることがない。また、転写用基板20の溝部230は、第1溝と第1溝と異なる方向に第2溝とを含む。そのため、第1面201が素子に接した場合であっても、第1溝だけでなく第2溝でも間隙を形成し、第1面201と素子との間が真空状態で保持されることを防止することができる。したがって、素子の転写工程での不良が抑制され、歩留まりが向上する。
【0052】
<第3実施形態>
図8及び図9を用いて、第1実施形態及び第2実施形態とは異なる、本発明の一実施形態に係る素子の転写用基板30について説明する。なお、以下では、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については説明を省略し、主に、第1実施形態及び第2実施形態の構成とは異なる点について説明する。
【0053】
図8は、本発明の一実施形態に係る転写用基板30の概略斜視図である。図9A及び図9Bは、本発明の一実施形態に係る素子の転写用基板30の概略断面図である。具体的には、図9Aは、図8のA-A’線に沿って切断した概略断面図であり、図9Bは、図8のB-B’線に沿って切断した概略断面図である。また、図9Cは、本発明の一実施形態に係る素子の転写用基板30の概略部分拡大図である。具体的には、図9Cは、図9Aの円35で囲まれた転写用基板30の断面部分を拡大した概略部分拡大図である。
【0054】
転写用基板30は、支持体100、第1弾性体240、第2弾性体250、及び第3弾性体260を含む。第1弾性体240、第2弾性体250、及び第3弾性体260は、支持体100の上に設けられている。
【0055】
複数の第1弾性体240は、支持体100の上にマトリクス状に配置されている。複数の第2弾性体250は、第2方向(図8のY方向)に、第1弾性体240の間に配置されている。第3弾性体260は、第1方向(図8のX方向)に、隣接する第1弾性体240の間に配置されている。
【0056】
第1弾性体240は、第1方向及び第2方向に一定の長さを有し、第1方向及び第2方向に対して垂直な第3方向に一定の長さを有する。図8及び図9に示す第1弾性体240では、第3方向の長さが、第1方向の長さ及び第2方向の長さよりも大きいが、これに限られない。第1弾性体240の第1及方向の長さ及び第2方向の長さが、第3方向の長さよりも小さくてもよい。また、図8及び図9に示す第1弾性体240は四角柱(直方体)であるが、これに限られない。第1弾性体240の形状は、例えば、三角柱、五角柱などの多角柱、円柱又は楕円柱とすることができる。
【0057】
第1弾性体240の第3方向の上面は、素子と接してピックアップするヘッド面241として機能する。ヘッド面241は、第1基板から素子を剥離することができる粘着力を有する。
【0058】
第2弾性体250は、第2方向及び第3方向に一定の長さを有し、第1方向に延伸した構造を有する。第2弾性体250の第3方向の長さは、第1弾性体240の第3方向の長さよりも小さい。第2弾性体250の第1方向の長さは、支持体100の幅と同じであるか、又はそれ以下であればよい。
【0059】
第3弾性体260は、第2方向及び第3方向に一定の長さを有し、第1方向に延伸した構造を有する。第3弾性体260の第3方向の長さは、第1弾性体240の第3方向の長さよりも小さく、第2弾性体250の第3方向の長さと同じである。第3弾性体260の第1方向の長さは、第2弾性体250の第1方向の長さよりも小さい。
【0060】
第2弾性体250及び第3弾性体260は、それらの間に間隙が設けられているため、素子を吸着しにくい構造となっている。言い換えると、転写用基板30のヘッド面241以外の部分は粘着力が小さいということもできる。
【0061】
第1弾性体240、第2弾性体250、及び第3弾性体260は、第1実施形態に係る弾性体200と同様の材質で形成することができる。第1弾性体240、第2弾性体250、及び第3弾性体260は、同じ材質で形成されていてもよく、異なる形成されていてもよい。
【0062】
第1弾性体240、第2弾性体250、及び第3弾性体260は、支持体100の上に弾性体の膜を形成し、レーザーやエッチングで加工し、形成することができる。あるいは、予め、第1弾性体240、第2弾性体250、及び第3弾性体260を加工し、それらを支持体100に接着剤を介して接着してもよい。
【0063】
本実施形態に係る素子の転写用基板30によれば、支持体100の上に第1弾性体240を設け、第1弾性体240のヘッド面241で素子をピックアップする。また、第1弾性体240の間に、第2弾性体250及び第3弾性体260を設けて支持体100の上に凹凸を設け、ヘッド面241以外の部分の素子との接触面積を小さくする。そのため、既に素子が接着された第2基板に対して、さらに転写用基板30を用いて素子を転写する場合、転写用基板30の第2弾性体250又は第3弾性体260に素子が接しても、素子を再ピックアップすることがない。したがって、素子の転写工程での不良が抑制され、歩留まりが向上する。
【0064】
<第4実施形態>
図10図15を用いて、本発明の一実施形態に係る素子の転写方法について説明する。具体的には、本実施形態では、第1実施形態に係る素子の転写用基板10を用いて、素子が形成された素子基板(第1基板)から素子を駆動する回路が形成された回路基板(第2基板)へ素子を転写する方法について説明する。
【0065】
[1.素子基板(第1基板)]
図10は、本発明の一実施形態に係る素子の転写方法に用いる素子基板60の概略斜視図である。
【0066】
図10に示すように、素子基板60は、支持基板600及び複数の素子610を含む。また、複数の素子610は、支持基板600の上にマトリクス状に配置されているが、これに限られない。複数の素子610は、支持基板600の上に千鳥状に配置されていてもよい。
【0067】
支持基板600は、石英、ガラス、シリコンなどの剛性基板、ポリイミド、アクリル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの可撓性基板を用いることができる。また、支持基板600は、基板に限られず、フィルム又はシートであってもよい。
【0068】
支持基板600は、素子を作製するために用いられる基材又はウェハであってもよい。シリコン半導体を用いる素子の場合には、支持基板600としてシリコンウェハを用いることができる。また、化合物半導体を用いる素子の場合には、支持基板600としてサファイア基板を用いることができる。
【0069】
また、支持基板600は、ダイシングフィルム又はダイシングシートであってもよい。できる。基材又はウェハの上に素子を形成した後、ダイシングフィルム又はダイシングシートを貼り付け、基材又はウェハのダイシングを行う。この場合、ダイシングフィルム又はダイシングシートが支持基板600である。また、素子610には、素子が形成された基材又はウェハが含まれる。
【0070】
さらに、基材又はウェハのダイシング後の素子610を、別の基板、フィルム又はシートに配置し、これを支持基板600とすることもできる。
【0071】
素子基板60は転写元となる基板である。素子基板60は、上述の構成に限定されることなく、転写用基板10がピックアップできるように、支持基板600上に転写する素子610が分離されて配置されていればよい。
【0072】
[2.回路基板(第2基板)]
図11は、本発明の一実施形態に係る素子の転写方法に用いる回路基板70のレイアウト構成を示すブロック図である。具体的には、図11は、表示装置用の回路基板70であり、基板700の上に設けられた領域及び接続関係を示す。なお、本実施形態で用いる回路基板は表示装置用に限られない。
【0073】
基板700としては、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、ポリイミド基板、アクリル基板、シロキサン基板、又はフッ素樹脂基板などの透光性基板を用いることができる。また、透光性を必要としない場合には、シリコン基板、炭化シリコン基板、又は化合物半導体基板などの半導体基板や、ステンレス基板などの導電性基板を用いることもできる。
【0074】
図11に示すように、基板700の上には、画素領域710、ドライバ回路領域720及び端子領域730が設けられている。ドライバ回路領域720及び端子領域730は、画素領域710の周辺に設けられている。
【0075】
画素領域710は、マトリクス状に配置された複数の、赤色発光画素710R、緑色発光画素710G、及び青色発光画素710Bを含む。各画素には、画素回路711が設けられている。なお、図示しないが、各画素には、素子610と電気的に接続する電極が設けられる。また、図示しないが、素子610と電極とを接着するため、電極の上には導電性接着剤が設けられている。
【0076】
ドライバ回路領域720は、ゲートドライバ回路720G及びソースドライバ回路720Sを含む。画素回路711とゲートドライバ回路720Gとは、ゲート配線721を介して接続される。また、画素回路711とソースドライバ回路720Sとは、ソース配線722を介して接続される。赤色発光画素710R、緑色発光画素710G、及び青色発光画素710Bは、ゲート配線721とソース配線722とが交差する位置に設けられている。
【0077】
端子領域730は、外部機器との接続のための端子部730Tを含む。端子部730Tとゲートドライバ回路720Gとは、接続配線731を介して接続される。また、端子部730Tとソースドライバ回路720Sとは、接続配線732を介して接続される。外部装置と接続したフレキシブルプリント回路基板(FPC)などが端子部730Tに接続されることで、外部機器と回路基板70とが接続される。外部機器からの信号により、回路基板に設けられた各画素回路711を駆動することができる。
【0078】
次に、画素回路711、ゲートドライバ回路720G、及びソースドライバ回路720Sを構成する薄膜トランジスタ(TFT)について、図12を用いて説明する。
【0079】
図12は、本発明の一実施形態に係る素子の転写方法に用いる回路基板70におけるTFT800の概略断面図である。
【0080】
図12に示すように、TFT800は、基板700の上に、下地層810、ゲート電極層820、ゲート絶縁層830、半導体層840、ソース電極層850S、ドレイン電極層850D、保護層860、ソース配線層870S、及びドレイン配線層870Dを含む。
【0081】
下地層810の上に、ゲート電極層820、ゲート絶縁層830、半導体層840が順に設けられる。半導体層840の一端にはソース電極層850Sが設けられ、他端にはドレイン電極層850Dが設けられる。ソース電極層850S及びドレイン電極層850Dは、半導体層840の上面及び側面において、半導体層840と電気的に接続している。半導体層840、ソース電極層850S、及びドレイン電極層850Dの上に、保護層860、ソース配線層870S、及びドレイン配線層870Dが設けられる。ソース配線層870S及びドレイン配線層870Dは、保護層860に設けられた開口を介して、それぞれソース電極層850S及びドレイン電極層850Dに接続される。なお、説明の便宜上、850Sをソース電極層といい、850Dをドレイン電極層というが、各々の電極層のソースとしての機能とドレインとしての機能とが入れ替わってもよい。ソース配線層870S及びドレイン配線層870Dも同様である。
【0082】
下地層810、ゲート絶縁層830、及び保護層860としては、例えば、酸化シリコン(SiO)、酸化窒化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、窒化酸化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)、窒化酸化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウム(AlN)を用いることができる。ここで、SiO及びAlOは、酸素(O)よりも少ない量の窒素(N)を含有するシリコン化合物及びアルミニウム化合物である。また、SiN及びAlNは、窒素よりも少ない量の酸素を含有するシリコン化合物及びアルミニウム化合物である。
【0083】
ゲート電極層820、ソース電極層850S、ドレイン電極層850D、ソース配線層870S、及びドレイン配線層870Dとしては、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、及びこれらの合金又は化合物を用いることができる。
【0084】
半導体層840としては、例えば、アモルファスシリコン又はポリシリコンなどのシリコン半導体、ZnO又はIGZOなどの酸化物半導体を用いることができる。
【0085】
また、図示しないが、ソース配線層870S及びドレイン配線層870Dの上に、上述したTFT800の凹凸を平坦化する絶縁層を設けることもできる。平坦化する絶縁層としては、例えば、アクリル樹脂やポリイミド樹脂などの有機絶縁材料を用いることができる。素子610と電気的に接続する電極は、平坦化する絶縁層上に設けることができ、ソース電極層850S又はドレイン電極層850Dと電気的に接続される。
【0086】
[3.転写方法]
図13は、本発明の一実施形態に係る素子の転写方法のフローチャートである。
【0087】
本実施形態に係る素子の転写方法は、転写用基板10を用いて第1素子基板60Rから第1素子610Rをピックアップする工程(S100)と、回路基板70にピックアップした第1素子610Rを接着する工程(S200)と、転写用基板10を用いて第2素子基板60Gから第2素子610Gをピックアップする工程(S300)と、回路基板70にピックアップした第2素子610Gを接着する工程(S400)と、を含む。
【0088】
以下では、図14及び図15を用いて、素子の転写方法について詳細に説明する。
【0089】
図14A図14Hは、本発明の一実施形態に係る素子の転写方法を示す概略断面図である。
【0090】
図14Aは、ステップS100において、転写用基板10が第1素子基板60Rに押し当てられた状態を示す。転写用基板10の突起部210のヘッド面211が第1素子基板60Rの第1素子610Rと接している。また、突起部210は、第1素子610Rからの反発力を受けて圧縮されている。そのため、この状態における突起部210の長さ(高さ)は、定常状態の突起部210の長さと比較して、小さくなっている。
【0091】
図14Bは、ステップS100において、転写用基板10が第1素子基板60Rから離れた状態を示す。第1素子610Rとヘッド面211との粘着力は、第1素子610Rと支持基板600との粘着力よりも大きい。そのため、突起部210と接していた第1素子610Rは、支持基板600から離れ、転写用基板10の突起部210にピックアップされる。また、突起部210の長さは、定常状態の長さに戻っている。
【0092】
図14Cは、ステップS200において、第1素子610Rをピックアップした転写用基板10が回路基板70に押し当てられた状態を示す。回路基板70には導電性接着剤790が設けられている。導電性接着剤790は、例えば、導電性フィラーを含有した接着剤である。また、導電性接着剤790は、熱硬化型接着剤であってもよく、光硬化型接着剤であってもよい。導電性接着剤790は、第1素子610Rを回路基板70に固定するとともに、第1素子610Rと回路基板70に設けられた配線とを電気的に接続する。
【0093】
転写用基板10がピックアップした第1素子610Rは、導電性接着剤790と接する。なお、導電性接着剤790の大きさや高さにはある程度のばらつきが存在する。そのため、導電性接着剤790のばらつきを考慮して第1素子610Rを回路基板70に接着するためには、ある程度の力を加えて転写用基板10を回路基板70に押し当てる必要がある。突起部210は、第1素子610Rからの反発力を受けて圧縮されている。そのため、この状態における突起部210の長さは、定常状態の突起部210の長さと比較して、小さくなっている。
【0094】
図14Dは、ステップS200において、転写用基板10が回路基板70から離れた状態を示す。第1素子610Rと導電性接着剤790との粘着力は、第1素子610Rとヘッド面211との粘着力よりも大きい。そのため、突起部210にピックアップされていた第1素子610Rは、突起部210から離れ、回路基板70に転写される。また、突起部210の長さは、定常状態の長さに戻っている。
【0095】
図14Eは、ステップS300において、転写用基板10が第2素子基板60Gに押し当てられた状態を示す。転写用基板10の突起部210のヘッド面211が第2素子基板60Gの第2素子610Gと接している。また、突起部210は、第2素子610Gからの反発力を受けて圧縮されている。そのため、この状態における突起部210の長さは、定常状態の突起部210の長さと比較して、小さくなっている。なお、ここで用いる転写用基板10は、第1素子610Rをピックアップした転写用基板10と同じでなくてもよい。第2素子610Gのピックアップ用に別の転写用基板10を用いてもよい。
【0096】
図14Fは、ステップS300において、転写用基板10が第2素子基板60Gから離れた状態を示す。第2素子610Gとヘッド面211との粘着力は、第2素子610Gと支持基板600との粘着力よりも大きい。そのため、突起部210と接していた第2素子610Gは、支持基板600から離れ、転写用基板10の突起部210にピックアップされる。また、突起部210の長さは、定常状態の長さに戻っている。
【0097】
図14Gは、ステップS400において、第2素子610Gをピックアップした転写用基板10が回路基板70に押し当てられた状態を示す。第2素子610Gは、第1素子610Rが接着されていない導電性接着剤790と接する。ここでも、ある程度の力を加えて転写用基板10が回路基板70に押し当てられるため、突起部210は、第2素子610Gからの反発力を受けて圧縮されている。そのため、この状態における突起部210の長さは、定常状態の突起部210の長さと比較して、小さくなっている。
【0098】
図14Hは、ステップS400において、転写用基板10が回路基板70から離れた状態を示す。第2素子620Gと導電性接着剤790との粘着力は、第2素子620Gとヘッド面211との粘着よりも大きい。そのため、突起部210にピックアップされていた第2素子610Gは、突起部210から離れ、回路基板70に転写されている。また、突起部210の長さは、定常状態の長さに戻っている。
【0099】
同様のステップを繰り返し、転写用基板10を用いて、第3素子基板60Bから第3素子610Bをピックアップし、ピックアップした第3素子610Bを回路基板70に接着することもできる。第1素子610Rを赤色マイクロLED、第2素子610Gを緑色マイクロLED、及び第3素子610Bを青色マイクロLEDとし、回路基板70の画素内に、第1素子610R、第2素子610G、及び第3素子610Bを接着することで、フルカラー表示の表示装置とすることができる。
【0100】
また、第1素子610R、第2素子610G、及び第3素子610Bをマイクロ紫外LEDとし、光が射出される側に、赤色蛍光体、緑色蛍光体、及び青色蛍光体を設け、マイクロ紫外LEDから射出された紫外光を蛍光体で変換することでフルカラー表示の表示装置とすることもできる。
【0101】
図15は、本発明の一実施形態に係る素子の転写方法を示す概略断面図である。具体的には、図15は、図14Gに示す状態よりも現実に近い状態を示したものである。
【0102】
図15に示すように、導電性接着剤790に接着された第1素子610Rは、導電性接着剤790の大きさのばらつきや、接着された第1素子610Rの位置や向きのばらつきによって、様々な状態を取り得る。そのため、第2素子610Gをピックアップした転写用基板10を回路基板70に押し当てた際に、転写用基板10の弾性体200の第1面201が第1素子610Rと接する場合がある。本実施形態においては、転写用基板10の弾性体200に溝部220が設けられているため、第1面201の粘着性が弱く、第1素子610Rが再ピックアップされることを抑制することができる。
【0103】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0104】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0105】
10、10A、10B、10C、20、30:転写用基板、 15、15A、15B、15C、25、35:円、 60:素子基板、 60R:第1素子基板 、60G:第2素子基板、 60B:第3素子基板、 70:回路基板、 100:支持体、 200:弾性体、 201:第1面、 202:第2面、 210:突起部、 211:ヘッド面、 220、220A、220B:溝部、 220-1C:第1溝部、 220-2C:第2溝部、230:溝部、240:第1弾性体、 250:第2弾性体、 260:第3弾性体、 310:突起部、 600:支持基板、 610:素子、 610R:第1素子、 610G:第2素子、 610B:第3素子、 700:基板、 710:画素領域、 710R:赤色発光画素、 710G:緑色発光画素、 710B:青色発光画素、 711:画素回路、720:ドライバ回路領域、 720G:ゲートドライバ回路、 720S:ソースドライバ回路、 721:ゲート配線、 722:ソース配線、 730:端子領域、 730T:端子部、 731、732:接続配線、 790:導電性接着剤、 810:下地層、 820:ゲート電極層、 830:ゲート絶縁層、 840:半導体層、 850D:ドレイン電極層、 850S:ソース電極層、 860:保護層、 870D:ドレイン配線層、 870S:ソース配線層
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図14H
図15