(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20230831BHJP
B27B 17/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B25F5/00 Z
B27B17/00 L
(21)【出願番号】P 2019148565
(22)【出願日】2019-08-13
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 久人
(72)【発明者】
【氏名】前野 武士
(72)【発明者】
【氏名】湯月 颯輝
(72)【発明者】
【氏名】武内 紀之
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-075669(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1370035(KR,B1)
【文献】特開2016-093848(JP,A)
【文献】国際公開第2007/080003(WO,A1)
【文献】中国実用新案第205310190(CN,U)
【文献】特開2016-007680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0323593(US,A1)
【文献】米国特許第09138884(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
B27B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
前記本体ケースに設けられた作業器具
およびファンと、
前記作業器具
および前記ファンを駆動させるモータと、
前記モータに電力を供給するバッテリと、を備え、
前記本体ケース内の冷却ルートに前記モータが設置され、
前記本体ケースには、前記冷却ルートに通じている吸気口
および排気口が開口し、
前記ファンを回転させることで、外部空間から前記吸気口を通じて前記本体ケース内に吸引された空気が、前記冷却ルートを流れて前記排気口から前記外部空間に排気されるように構成されており、
前記吸気口と前記冷却ルートとの間にエアフィルタが収容され
、
前記エアフィルタは、前記バッテリの前方に配置されており、
前記本体ケースには、前記エアフィルタを出入自在なフィルタ着脱口が開口し、
前記吸気口は、前記本体ケースの外面に開口しており、
前記フィルタ着脱口は、前記吸気口と異なる部位に配置され
、
前記バッテリは、前記本体ケースに着脱自在であり、
前記バッテリを前記本体ケースに取り付けた状態では、前記バッテリによって前記フィルタ着脱口が覆われていることを特徴とする電動作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動作業機であって、
前記エアフィルタは、前記本体ケース内に入り込んで、前記吸気口に隣接して配置されていることを特徴とする電動作業機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電動作業機であって、
前記エアフィルタは、前記モータの下方に配置されていることを特徴とする電動作業機。
【請求項4】
請求項1に記載の電動作業機であって、
前記バッテリの一部と前記エアフィルタの一部とが上下方向に重なっていることを特徴とする電動作業機。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の電動作業機であって、
前記本体ケース内において、前記モータの前方には、前記モータの駆動を制御する制御基板が収容されていることを特徴とする電動作業機。
【請求項6】
請求項1から
請求項5のいずれか一項に記載の電動作業機であって、
前記本体ケースの外面には、開閉部材が開閉自在に設けられており、
前記開閉部材を閉じた状態では、前記開閉部材によって前記フィルタ着脱口が覆われていることを特徴とする電動作業機。
【請求項7】
請求項6に記載の電動作業機であって、
前記開閉部材は、前記本体ケースに着脱自在であることを特徴とする電動作業機。
【請求項8】
請求項1から
請求項7のいずれか一項に記載の電動作業機であって、
前記吸気口は、前記本体ケースの左右方向の側面に開口していることを特徴とする電動作業機。
【請求項9】
請求項8に記載の電動作業機であって、
前記吸気口は、前記側面の下部に開口していることを特徴とする電動作業機。
【請求項10】
請求項1から
請求項9のいずれか一項に記載の電動作業機であって、
前記本体ケースの下面に
前記排気口が開口していることを特徴とする電動作業機。
【請求項11】
請求項1から
請求項10のいずれか一項に記載の電動作業機であって、
前記作業器具は、前記本体ケースの左右方向の一方の部位に配置され、
前記吸気口は、前記本体ケースの左右方向の他方の部位に配置されていることを特徴とする電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式のチェンソー(電動作業機)としては、本体ケースに吸気口が開口しており、吸気口から本体ケース内の冷却ルートに空気を取り込むことで、冷却ルートに設置されたモータを冷却するように構成されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来のチェンソーでは、切断作業時に生じた切り屑や粉塵などのダストが吸気口から冷却ルートに入り込み易い。そして、冷却ルートにダストが堆積すると、モータの冷却効率が低下するとともに、場合によってはモータの駆動効率が低下する。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、モータを効率良く冷却できるとともに、冷却ルートにダストが入り込み難くなり、メンテナンスを容易に行うことができる電動作業機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、電動作業機であって、本体ケースと、前記本体ケースに設けられた作業器具およびファンと、前記作業器具および前記ファンを駆動させるモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、を備え、前記本体ケース内の冷却ルートに前記モータが設置されている。前記本体ケースには、前記冷却ルートに通じている吸気口および排気口が開口し、前記ファンを回転させることで、外部空間から前記吸気口を通じて前記本体ケース内に吸引された空気が、前記冷却ルートを流れて前記排気口から前記外部空間に排気されるように構成されている。前記吸気口と前記冷却ルートとの間にエアフィルタが収容され、前記エアフィルタは、前記バッテリの前方に配置されている。前記本体ケースには、前記エアフィルタを出入自在なフィルタ着脱口が開口し、前記吸気口は、前記本体ケースの外面に開口しており、前記フィルタ着脱口は、前記吸気口と異なる部位に配置されている。前記バッテリは、前記本体ケースに着脱自在であり、前記バッテリを前記本体ケースに取り付けた状態では、前記バッテリによって前記フィルタ着脱口が覆われている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電動作業機では、吸気口から冷却ルートに空気が流入するときに、エアフィルタによって空気中のダストが取り除かれ、冷却ルートにダストが入り込み難いため、電動作業機のメンテナンスを容易に行うことができる。
本発明の電動作業機では、フィルタ着脱口を通じてエアフィルタを本体ケース内に容易に着脱できるため、電動作業機のメンテナンスを容易に行うことができる。
本発明の電動作業機では、フィルタ着脱口が吸気口と異なる部位に配置されるため、本体ケースに吸気口を設定するときに、モータの冷却効率を考慮して、吸気口の位置や大きさを設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るチェンソーを示した側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るチェンソーにおいてバッテリを外した状態の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るチェンソーの吸気構造を示した断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るチェンソーを示した底面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るチェンソーの排気構造を示した断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るチェンソーにおいてエアフィルタを外した状態の断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るエアフィルタを示した斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態のチェンソーの変形例を示した図で、開閉部材を有する構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態の一例について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、樹木や板などを切断するためのチェンソーに、本発明を適用した構成を例として説明する。以下の説明では、チェンソーの切断部側を前側として、トップハンドル側を上側としている。
【0010】
本実施形態のチェンソー1は、
図1に示すように、本体ケース10と、本体ケース10に設けられた切断部20と、切断部20を駆動させるモータ30と、モータ30に電力を供給するバッテリ40と、モータ30の駆動を制御する制御基板50と、を備えている。
【0011】
本体ケース10は、樹脂製の箱体である。本体ケース10の上面に形成されたトップハンドル12が形成されている。また、本体ケース10の左側面には、本体ケース10の前部から後部に延びている横ハンドル13が取り付けられている。
【0012】
トップハンドル12は、作業者がチェンソー1を持つときに把持する部位である。トップハンドル12と本体ケース10の上面との間の空間に作業者の手が差し込まれる。
トップハンドル12には、作業者が把持した状態で、後記するソーチェン22の回転を増減させるための操作手段であるトリガーレバー12aが設けられている。
【0013】
本体ケース10内には、
図3に示すように、冷却ルート60である吸入流路61が形成されている。吸入流路61には、モータ30が設置されている。モータ30は、公知の電動式モータであり、出力軸31が左右方向に延びている。出力軸31の先端部にファン32が取り付けられている。
【0014】
モータ30は、
図5に示すように、本体ケース10内に設けられたモータケース35内に収容されている。モータケース35の右側部には、吸気穴(図示せず)が開口している。また、モータケース35の左側部には、冷却ルート60である排気流路62が形成されている。排気流路62は、後記する排気口75に通じている。
【0015】
冷却ルート60には、
図3に示すように、モータ30の他に制御基板50が設置されている。制御基板50は、電子回路がプリントされた四角形の基板に、CPUやメモリなどの電子部品を取り付けたものである。制御基板50は、図示しないケーブルによってモータ30に電気的に接続されている。
制御基板50は、両面を前後に配置した状態で、本体ケース10の前部に収容されている。制御基板50は、モータケース35およびモータ30の前方で吸入流路61内に設置されている。
【0016】
本体ケース10の後端面には、
図2に示すように、バッテリ40が着脱自在に設置されるバッテリ着脱部16が設けられている。バッテリ着脱部16には、バッテリ40を保持する保持部17と、バッテリ40の下部が収容されるバッテリケース18と、が形成されている。
【0017】
保持部17は、本体ケース10の後端部と、本体ケース10の後端部から上方に向けて延びている板状の部位とによって形成されている。保持部17は、上部よりも下部が前方に配置されるように傾斜している(
図1参照)。
【0018】
保持部17の後面17aは、上端部から下端部に向かうに連れて漸次前方に変位した傾斜面となっている。保持部17の上端部には、トップハンドル12の後端部が連結されている。保持部17の後面17aには、バッテリ40を着脱するための着脱機構が設けられるとともに、接続端子が設けられている。
【0019】
バッテリ40は、公知のバッテリであり、上下方向に延びている直方体のケースに、リチウムイオン蓄電池などの二次電池を収容したものである。バッテリ40の上部には、保持部17の上端部に係合する連結用レバー41が設けられている。
【0020】
図1に示すように、バッテリ40をバッテリ着脱部16に取り付けた状態では、バッテリ40の長手方向が本体ケース10の高さ方向に配置される。
バッテリ40の高さは、本体ケース10の後部の高さよりも大きく形成されている。バッテリ40をバッテリ着脱部16に取り付けた状態では、バッテリ40の上端部がトップハンドル12の後端部よりも上方に突出している。本実施形態のバッテリ40は、作業に適した十分な高出力および充電容量を備えている。
【0021】
バッテリ着脱部16にバッテリ40を取り付けるときには、
図2に示すように、バッテリ40を保持部17に対して下方に向けてスライドさせることで、バッテリ40を保持部17に取り付けることができる。さらに、バッテリ40を押し下げていくと、
図1に示すように、バッテリ40の連結用レバー41が保持部17の上端部に係合して、バッテリ40がバッテリ着脱部16に連結される。
また、保持部17の後面17aに設けられた接続端子にバッテリ40の接続端子が接続される。これにより、バッテリ40から制御基板50およびモータ30に電力が供給される。
【0022】
バッテリ着脱部16からバッテリ40を取り外すときには、連結用レバー41を引くと、保持部17と連結用レバー41との係合状態が解除され、バッテリ40を保持部17に対して上方に向けてスライド可能となる。
【0023】
バッテリケース18は、
図2に示すように、バッテリ着脱部16の下端部に形成されている。バッテリケース18は、バッテリ40の下部が収容される筒状の部位である。
バッテリ40の下部は、バッテリケース18の上側の開口部から挿入される。そして、バッテリ着脱部16にバッテリ40が取り付けられた状態では、
図1に示すように、バッテリ40の下端部がバッテリケース18の下側の開口部から下方に突出している。
【0024】
本体ケース10の右側部には、
図2に示すように、前方に突出している切断部20が設けられている(
図4参照)。切断部20は、切断作業用の作業器具である。切断部20は、ガイドバー21およびソーチェン22を備えている。
ガイドバー21は、前後方向に延びている板状部材であり、ガイドバー21の後端部が本体ケース10の右側部に取り付けられている(
図4参照)。
ガイドバー21の外周部には、環状のソーチェン22が巻回されている。ソーチェン22の後端部は、
図1に示すように、モータ30の出力軸31に連結された駆動ギヤに係合されている。
モータ30を駆動させて、駆動ギヤ(図示せず)を回転させると、ソーチェン22がガイドバー21の外周に沿って回転する。
【0025】
チェンソー1によって樹木や板などの切断対象物を切断する場合には、作業者は右手でトップハンドル12を把持するとともに、左手で横ハンドル13を把持して、チェンソー1を携帯する。
作業者がトリガーレバー12aを引くと、モータ30が駆動して、ソーチェン22が回転する。これにより、ソーチェン22によって切断対象物を切断できる。
【0026】
本体ケース10の左側面の下部には、吸気口70が開口している。切断部20は本体ケース10の右側の部位に配置され、吸気口70は本体ケース10の左側の部位に配置されている。
【0027】
吸気口70は、滞留室80を介して冷却ルート60である吸入流路61に通じている。吸気口70は、外部空間から吸入流路61に空気を取り入れるための開口部である。
吸気口70には、網状のルーバー71が形成されている。吸気口70は、ルーバー71によって複数の開口部に区画されている。ルーバー71によって、吸気口70を大きなダストが通過し難くなっている。さらに、ルーバー71の形状は、下方から上方に向けて空気が流れて吸い込まれるように形成されているため、重力方向に落ちようとするダストが吸気口70に入り難い。
【0028】
滞留室80は、
図3に示すように、本体ケース10の下部に配置されている。滞留室80は、モータ30の下方に配置されている。滞留室80は、底部と前後左右の壁部とによって本体ケース10内に区画されている。滞留室80の上面には上側開口部81が形成されている。滞留室80の左側面には吸気口70(
図1参照)が開口している。
滞留室80は、吸気口70を介して外部空間に通じているとともに、上側開口部81を介して冷却ルート60である吸入流路61に通じている。
【0029】
本体ケース10の下面には、
図4に示すように、排気口75が開口している。排気口75は、
図5に示すように、モータケース35内に設けられた冷却ルート60である排気流路62に通じている。排気口75は、網状に形成されている。排気口75は、複数の開口部に区画されている。
【0030】
図3に示すように、モータ30が駆動して出力軸31が回転し、モータケース35内でファン32が回転すると、モータケース35の吸気穴(図示せず)からモータケース35内に空気が吸引される。
これにより、冷却ルート60である吸入流路61に吸引作用が生じることになり、滞留室80および吸気口70(
図1参照)を通じて外部空間から吸入流路61に空気が吸引される。
また、モータケース35内の空気は、
図5に示すように、冷却ルート60である排気流路62および排気口75を通じて外部空間に排出される。
【0031】
本実施形態のチェンソー1では、
図3に示すように、吸気口70(
図1参照)から滞留室80内に横方向に空気が流入する。その後、空気は滞留室80内で横方向から上方に向けて曲げられて(直角に曲げられて)、流れの向きを変えて滞留室80の上側開口部81から吸入流路61に流入する。
【0032】
滞留室80から吸入流路61に流入した空気は、吸入流路61の前部に流れた後に、モータケース35内の冷却ルート60である吸入流路61に流入する。このとき、空気が制御基板50の周辺を流れることで制御基板50が冷却される。このように、本実施形態のチェンソー1では、外部空間から本体ケース10内に流入した空気が、最初に制御基板50を冷却した後にモータ30を冷却するように構成されている。
【0033】
本実施形態のチェンソー1では、
図6に示すように、バッテリ着脱部16にフィルタ着脱口90が開口している。フィルタ着脱口90は、保持部17の後面17aの下部に開口している。また、フィルタ着脱口90は、滞留室80の後面に開口している。フィルタ着脱口90は、後記するエアフィルタ100を滞留室80に出入するための開口部である。
【0034】
本実施形態のチェンソー1では、
図1に示すように、本体ケース10の左側面に滞留室80に通じる吸気口70が開口し、
図6に示すように、本体ケース10の後面に滞留室80に通じるフィルタ着脱口90が開口している。このように、本体ケース10では、フィルタ着脱口90と吸気口70とが異なる部位に配置されている。
図3に示すように、バッテリ着脱部16にバッテリ40を取り付けた状態では、フィルタ着脱口90がバッテリ40の下端部に覆われる。
【0035】
本実施形態のチェンソー1では、滞留室80の上部にエアフィルタ100が収容されている。このように、エアフィルタ100が本体ケース10内に入り込んでおり、エアフィルタ100は吸気口70に隣接して配置されている。
また、滞留室80の上側開口部81はエアフィルタ100によって塞がれている。このように、吸気口70と吸入流路61との間にエアフィルタ100が配置されている。
【0036】
エアフィルタ100は、空気中のダストを除去するものである。エアフィルタ100は、
図7に示すように、枠体110と、枠体110に貼り付けられた濾過材120と、枠体110の後縁部から下方に向けて突出している蓋板130と、を備えている。エアフィルタ100は、側面視でL字形状に形成されている。
【0037】
枠体110は、四角形の外枠の内部が格子状に区画されたものであり、複数の開口部が形成されている。枠体110には通気性を有する膜状の濾過材120が取り付けられており、枠体110の各開口部は濾過材120によって塞がれている。
【0038】
図6に示すように、滞留室80の上側開口部81の左右の縁部の内面には、前後方向に延びている溝部82,82が形成されている。そして、エアフィルタ100の枠体110の左右の縁部を、フィルタ着脱口90側から両溝部82,82に挿入して、枠体110を前方に押し込むことで、
図3に示すように、エアフィルタ100を滞留室80に挿入できる。
【0039】
エアフィルタ100を滞留室80に取り付けた状態では、上側開口部81が枠体110および濾過材120によって塞がれている。そして、エアフィルタ100の枠体110および濾過材120の下方に滞留室80が配置されている。
【0040】
本実施形態のエアフィルタ100は、モータ30の下方に配置されている。また、本実施形態では、バッテリ40の下端部の最前部40aとエアフィルタ100の後端部101とが上下方向に重なっている。
【0041】
本実施形態では、エアフィルタ100を滞留室80に収容したときに、枠体110および濾過材120が後端部から前端部に向かうに連れて下向きに傾斜している。
このように、本実施形態のエアフィルタ100は、枠体110および濾過材120がモータ30(モータケース35)の下部を避けるように、水平面に対して45度以下の角度で傾斜している。
【0042】
蓋板130は、
図7に示すように、枠体110の後縁部から下方に向けて延びている平板状の部位である。蓋板130の後面の上部には、後方に向けて突出した突起部131が形成されている。
図3に示すように、滞留室80内にエアフィルタ100を取り付けた状態では、蓋板130によってフィルタ着脱口90が塞がれる。
【0043】
本体ケース10にエアフィルタ100を取り付けるときには、
図6に示すように、作業者はバッテリ着脱部16からバッテリ40(
図2参照)を取り外して、フィルタ着脱口90を露出させる。
続いて、作業者は、エアフィルタ100の枠体110をフィルタ着脱口90から滞留室80に押し込む。
【0044】
図3に示すように、蓋板130によってフィルタ着脱口90が塞がれる位置まで、エアフィルタ100が滞留室80に押し込まれると、枠体110および濾過材120によって滞留室80の上側開口部81が塞がれる。
さらに、バッテリ着脱部16にバッテリ40が取り付けられると、バッテリ40の下部によって蓋板130の外側が覆われる。これにより、作業時にエアフィルタ100がフィルタ着脱口90から外れないようになる。
【0045】
本体ケース10からエアフィルタ100を取り外すときには、
図6に示すように、作業者はバッテリ着脱部16からバッテリ40を取り外して、エアフィルタ100の蓋板130を外部に露出させる。
続いて、作業者が蓋板130の突起部131を後方に引っ張ってエアフィルタ100を滞留室80から引き出すことで、エアフィルタ100を本体ケース10から取り外すことができる。
【0046】
以上のようなチェンソー1(電動作業機)は、
図1に示すように、本体ケース10と、本体ケース10に設けられた切断部20(作業器具)と、切断部20を駆動させるモータ30と、を備えている。本体ケース10内の冷却ルート60にモータ30が設置されている。本体ケース10には、冷却ルート60に通じている吸気口70が開口している。吸気口70と冷却ルート60との間にエアフィルタ100が収容されている。本体ケース10には、エアフィルタ100を出入自在なフィルタ着脱口90が開口している。吸気口70は、本体ケース10の外面に開口している。そして、フィルタ着脱口90は、吸気口70と異なる部位に配置されている。
【0047】
本実施形態のチェンソー1では、吸気口70から冷却ルート60に空気が流入するときに、エアフィルタ100によって空気中のダストが取り除かれ、冷却ルート60にダストが入り込み難くなる。これにより、本体ケース10内のメンテナンスの頻度を少なくすることができるため、チェンソー1のメンテナンスを容易に行うことができる。
本実施形態のチェンソー1では、フィルタ着脱口90を通じてエアフィルタ100を本体ケース10内に容易に着脱できるため、エアフィルタ100を容易に清掃できる。
【0048】
本実施形態のチェンソー1では、吸気口70とフィルタ着脱口90とが異なる部位に配置されているため、吸気口70の位置や大きさをエアフィルタ100の形状や取付構造に合わせて設定する必要がなくなり、エアフィルタ100の形状や取付構造に影響されることなく、制御基板50やモータ30の冷却効率を考慮して、吸気口70の位置や大きさを設定できる。
【0049】
本実施形態のチェンソー1では、通気性を有するエアフィルタ100を本体ケース10内に入り込ませて、吸気口70に隣接して配置することで、本体ケース10をコンパクトに構成することができる。また、滞留室80に収容されるエアフィルタ100を本体ケース10内に入り込ませて、吸気口70に隣接して配置することで、本体ケース10をコンパクトに構成することができる。そして、吸気口70から流入した空気中のダストを滞留室80に溜めておき、エアフィルタ100を取り外して滞留室80からダストを排除することができる。また、空気中のダストがエアフィルタ100に付着し難い構造とすることもできる。
【0050】
本実施形態のチェンソー1では、
図3に示すように、エアフィルタ100の濾過材120が滞留室80の上部に収容されている。つまり、濾過材120の下方に空間が形成されている。
この構成では、吸気口70から流入した空気は、滞留室80を介してエアフィルタ100に達するため、空気中のダストがエアフィルタ100に付着し難い。これにより、エアフィルタ100は、下方から上方に向けて空気を吸い込むので、ダストが入り難い。また特に、エアフィルタ100の下側に滞留室80があるので、エアフィルタ100にダストが付着しても落ちやすいので、エアフィルタ100は汚れ難い。さらに、エアフィルタや吸気口70がチェンソー1の下側に配置されるので、ダストをチェンソー1の下側に溜めることができる。
特に、本実施形態では、吸気口70から滞留室80に横方向に流入した空気は、滞留室80内で横方向から上方に向けて曲げられて(直角に曲げられて)、流れの向きを変えて、エアフィルタ100に達するため、エアフィルタ100にダストが付着するのを効果的に防ぐことができる。
また、この構成では、チェンソー1を床面に置いたときの衝撃や作業時の振動によって、エアフィルタ100に付着したダストが落ち易いため、エアフィルタ100の清掃または交換の間隔を長くすることができる。
【0051】
本実施形態のチェンソー1では、
図1に示すように、吸気口70が本体ケース10の側面に開口していて、エアフィルタ100が吸気口70に隣接しているので本体ケース10の側面の空いたスペースを有効利用することができる。また、エアフィルタ100がモータ30の下方に配置されているので、本体ケース10の側面の空いたスペースを有効利用することができる。さらに、エアフィルタ100をバッテリ40下部の前方に配置した場合には、本体ケース10の側面の空いたスペースを有効利用することができる。このようにして、本体ケース10をコンパクトに形成することができる。
【0052】
本実施形態のチェンソー1では、エアフィルタ100がモータ30の下方に配置されていて、本体ケース10内のモータ30の下方の空いたスペースを有効利用しているので、本体ケース10をコンパクトに形成することができる。また、モータ30とエアフィルタ100が上下方向に重なって配置されているので、さらに本体ケース10をコンパクトに形成することができる。さらに、枠体110および濾過材120は、
図3に示すように、モータ30(モータケース35)の下部を避けるように、水平面に対して傾斜しているので、本体ケース10を更にコンパクトに形成することができる。
また、本実施形態のチェンソー1は、
図1に示すように、モータ30に電力を供給するバッテリ40を備えており、エアフィルタ100がバッテリ40の下部の前方に配置されていて、本体ケース10内のバッテリ40の下部の前方の空いたスペースを有効利用しているので、本体ケース10をコンパクトに形成することができる。また、バッテリ40の下端部の最前部とエアフィルタ100の後端部とが上下方向に重なっているので、本体ケース10を更にコンパクトに形成することができる。
また、本体ケース10内のモータ30の下方のバッテリ40の下部の前方の空いたスペースを有効利用しているので、本体ケース10をコンパクトに形成することができる。
これらの構成では、バッテリ40の前方およびモータ30の下方の空間を有効に利用してエアフィルタ100を配置できるため、本体ケース10をコンパクトに構成することができる。
【0053】
本実施形態のチェンソー1では、
図3に示すように、本体ケース10内においてモータ30の前方にモータ30の駆動を制御する制御基板50が収容されている。また、本実施形態のチェンソー1では、モータケース35の吸気穴(図示せず)を制御基板50の近くに設置している。
このようにすると、吸気口70から吸入流路61に排他的(密閉的)に流入させた空気(冷却専用に流入させた空気)を、制御基板50の周辺(制御基板50に設置された冷却用フィン等の特に冷却したい場所)に流入させた後に、モータ30に設置されたファン32が空気を吸引することができる。これにより、制御基板50を効果的に冷却できる。また、エアフィルタ100をモータ30の下方でバッテリ40の下部の前方の空いたスペースに設置し、制御基板50をモータ30の前方に収容しているので、本体ケース10をコンパクトに形成することができる(本体ケース10内の各部品のレイアウト性が良い)。
【0054】
本実施形態のチェンソー1では、バッテリ40を本体ケース10に着脱自在であり、本体ケース10にバッテリ40を取り付けた状態では、バッテリ40によってフィルタ着脱口90が覆われる。
この構成では、本体ケース10にバッテリ40を取り付けることで、バッテリ40によってフィルタ着脱口90を塞ぐことができるため、簡素な構造でフィルタ着脱口90を形成することができる。また、既存の部品(バッテリ40)をフィルタ着脱口90の開閉として利用するので、新たな部品を設置する必要がない。また、場合によっては、バッテリ40でフィルタ着脱口90を閉塞する構造にして、フィルタ着脱口90から空気を吸い込み難い構造とすることも可能である。この構造では、出来る限りにエアフィルタ100を通過した空気のみを本体ケース10に入れることができる。また、場合によっては、バッテリ40によってエアフィルタ100を抑えることができる構造にして、エアフィルタ100の脱落を簡素な構成で防ぐことができる。
【0055】
本実施形態のエアフィルタ100は、濾過材120が取り付けられた枠体110を備えている。また、枠体110には上下方向に延びている蓋板130が形成されており、蓋板130がフィルタ着脱口90を塞いでいる。この構成では、蓋板130でフィルタ着脱口90を塞いで、フィルタ着脱口90から空気を吸い込み難くすることができる。また、場合によっては、蓋板130を本体ケース10に対する位置決めとして機能させることもできる。また、蓋板130によってフィルタ着脱口90を塞ぐため、フィルタ着脱口90を大きく開口させることもでき、この場合には、エアフィルタ100を容易に脱着させることができる。また、場合によっては、蓋板130を下方に突出させて、
図6に示すように、エアフィルタ100を本体ケース10から取り外して、フィルタ着脱口90から滞留室80内のダストを排出し易くすることが可能である。
【0056】
本実施形態のチェンソー1では、
図4に示すように、切断部20が本体ケース10の右側(一方側)の部位に配置され、吸気口70が本体ケース10の左側(他方側)の側面の下部に開口しているため、切断部20で発生した切り屑が吸気口70に流入し難い。
【0057】
本実施形態のチェンソー1では、
図5に示すように、冷却ルート60である排気流路62に通じている排気口75が本体ケース10の下面に開口している。この構成では、排気口75から排出された空気が作業者に吹き付けられるのを防ぐことができる。また、吸気口70が本体ケース10の左右方向の側面に開口し、エアフィルタ100がモータ30の下方に設置され、排気口75がモータ30の下方で本体ケース10の下面に開口しているため、本体ケース10をコンパクトに形成することができる。
【0058】
以上、本発明の本実施形態の一例について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
本実施形態では、
図4に示すように、本体ケース10の左側面の下部に吸気口70が開口しているが、吸気口の位置や大きさは限定されるものではない。例えば、本体ケース10の右側面や下面に吸気口を開口させてもよい。
【0059】
本実施形態では、
図3に示すように、モータ30の下方にエアフィルタ100が配置されているが、エアフィルタ100の配置や形状は限定されるものではない。例えば、モータ30の前後、左右または上方にエアフィルタ100を配置してもよい。
また、本実施形態では、滞留室80の上部にエアフィルタ100が収容されているが、エアフィルタ100の収容位置は限定されるものではない。
【0060】
本実施形態では、本体ケース10の外面に着脱自在なバッテリ40によってフィルタ着脱口90が覆われているが、
本発明の参考例としては、例えば、
図8に示すように、本体ケース10の外面に開閉自在な開閉部材150を設け、開閉部材150を閉じた状態では、開閉部材150によってフィルタ着脱口90が覆われるように構成してもよい。また、開閉部材150は、本体ケース10に着脱自在であることが好ましい。この構成では、フィルタ着脱口90を開閉部材150によって簡単に覆うことができる。また、場合によっては、エアフィルタ100にフィルタ着脱口90を塞ぐための蓋板を設ける必要がなくなる。
【0061】
本実施形態では、
図1に示すように、吸気口70が滞留室80を介して冷却ルート60に通じているが、本体ケース10内に滞留室80を設けなくてもよい。
【0062】
本実施形態では、モータ30の前方に制御基板50が配置されているが、本体ケース10内におけるモータ30および制御基板50の配置は限定されるものではない。また、本実施形態では、冷却ルート60である吸入流路61に制御基板50が設けられているが、冷却ルート60である排気流路62(
図5参照)に制御基板50を設けてもよい。
【0063】
本実施形態では、
図2に示すように、筒状のバッテリケース18が設けられているが、バッテリケース18を設けなくてもよい。
【0064】
本実施形態では、チェンソー1において、
図1に示すように、高電圧(40V以上、好ましくは50V以上、より好ましくは60V以上)のバッテリ40を採用しており、電流による熱の損失が少ないため、バッテリ40に対してモータ30から積極的に冷却風の流れを送り出さなくても良好な作業が行える。また、高電圧のバッテリ40の採用により、モータ30による冷却風の流れを集中的に制御基板50やモータ30等に対して送り出すことが可能なので、制御基板50やモータ30等に熱による不具合が起こり難い。
【0065】
本実施形態では、本発明を適用したチェンソー1について説明しているが、本発明を適用可能な電動作業機は限定されるものではなく、刈払機、ヘッジトリマー、ブロワなどの各種の電動作業機に適用可能である。チェンソー等のように木材等を切断する場合には、特に作業機の潤滑用や木材に含まれたオイルや水分を含んだ切り子が本体ケース内に侵入することを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0066】
1 チェンソー
10 本体ケース
12 トップハンドル
13 横ハンドル
16 バッテリ着脱部
17 保持部
18 バッテリケース
20 切断部
21 ガイドバー
22 ソーチェン
30 モータ
31 出力軸
32 ファン
35 モータケース
40 バッテリ
41 連結用レバー
50 制御基板
60 冷却ルート
61 吸入流路
62 排気流路
70 吸気口
71 ルーバー
75 排気口
80 滞留室
81 上側開口部
82 溝部
90 フィルタ着脱口
100 エアフィルタ
110 枠体
120 濾過材
130 蓋板
131 突起部