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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/46 20060101AFI20230831BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20230831BHJP
   C08L 75/06 20060101ALI20230831BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20230831BHJP
   C09D 175/06 20060101ALI20230831BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230831BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20230831BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20230831BHJP
【FI】
C08G18/46 038
C08G18/79 010
C08L75/06
C08L83/04
C09D175/06
C09D7/65
C09D7/20
C08J7/04 A CER
C08J7/04 CEZ
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019168879
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021046475
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】紺野 貴史
(72)【発明者】
【氏名】前津 成俊
(72)【発明者】
【氏名】渡部 淳
(72)【発明者】
【氏名】畑中 慎太郎
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-001897(JP,A)
【文献】特開2012-187541(JP,A)
【文献】特開昭60-047013(JP,A)
【文献】特開昭61-243823(JP,A)
【文献】特開平04-130119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とポリシロキサン誘導体(C)とを含む組成物であって、前記ポリオール化合物(A)が、下記式(1)
【化1】
[式中のR1~R3は、同一又は異なって、下記式(1a)
【化2】
(式(1a)中、L1、L2は、同一又は異なって、炭素数1~10アルキレン基を示し、mは0以上の数を示す。但し、mはR1~R3について同時に0でない。破線のついた結合手が式中の窒素原子に結合する)で表される基である]
で表される化合物であって、数平均分子量(標準ポリスチレン換算)が800未満である化合物(1a)を含み、
前記イソシアネート化合物(B)が、下記式(2)
【化3】
[式(2)中、L3~L5は、同一又は異なって、水素原子、NCO基又は下記式(2')で表される基を有する炭素数1~10アルキル基を示す。但し、L3~L5は同時に水素原子ではない。
【化4】
式(2')中、L6およびL7は、同一又は異なって、炭素数1~10アルキレン基を示す。破線のついた結合手が式(2)中のL3~L5の炭素原子に結合する)で表される基である]
で表される化合物(b)を含み、
無機粒子の含有量が、前記組成物の不揮発分総重量100重量%に対して、10重量%以下である、組成物。
【請求項2】
ポリオール化合物(A)が、更に、水酸基価(KOHmg/g)が30~300であるポリオール(a2)を、前記化合物(1a)1重量部に対して、0.01~1.5重量部の範囲で含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中のイソシアネート化合物(B)のNCO基と、ポリオール化合物中のOH基との当量比(NCO/OH)が、0.9~1.5の範囲である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
更に、ポリシロキサン誘導体(C)を、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計100重量部に対して0.1~0.5重量部含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
更に、下記式(3)
【化5】
(式(3)中、R4、R6は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、R5は炭素数1~5のアルキレン基を示す。sは1以上の整数を示し、tは0又は1を示す。sが2以上の整数である場合、複数のR5は同一であってもよく異なっていてもよい)
で表される溶剤を含有する、請求項1~4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記イソシアネート化合物(B)が、前記ポリオール化合物(A)100重量部に対して、40~140重量部である、請求項1~5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
コーティング剤である、請求項1~の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~の何れか1項に記載の組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項に記載の硬化物からなる被膜が、表面の少なくとも一部を被覆するプラスチック成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂成形用の組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、柔軟性、伸縮性、及び強度を備える。そのため、ポリウレタン樹脂成形用の組成物は、コーティング剤等に使用されている。
【0003】
前記コーティング剤として、例えば、車両用部材や電子デバイス等を構成するプラスチック基材を被覆する用途に使用されるコーティング剤には、基材への密着性、硬度、及び耐擦傷性などを備える被膜を形成できることが求められている。このようなコーティング剤としては、例えば、特許文献1、2に記載されている組成物が知られている。
【0004】
しかし、近年、日焼け止め剤等の薬剤がポリウレタン樹脂からなる被膜に接触すると、被膜が剥離したり、被膜の外観が劣化することが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平04-130119号公報
【文献】特開2011-137145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、基材への密着性、硬度、耐擦傷性、及び薬剤耐性に優れた硬化物を形成可能な組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、基材への密着性、硬度、耐擦傷性、及び薬剤耐性に優れた硬化物を提供することにある。
本発明の他の目的は、基材への密着性、硬度、耐擦傷性、及び薬剤耐性に優れた硬化物によって、表面の少なくとも一部が被覆されてなる車両用部材を提供することにある。
本発明の他の目的は、基材への密着性、硬度、耐擦傷性、及び薬剤耐性に優れた硬化物によって、表面の少なくとも一部が被覆されてなる筐体、及び前記筐体を備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、イソシアヌレート骨格を有するポリオール化合物とイソシアヌレート骨格を有するポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリウレタン樹脂は、基材への密着性、硬度、及び耐擦傷性に優れるとともに、薬剤耐性にも優れることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを含む組成物であって、前記ポリオール化合物(A)が、下記式(1)
【化1】
[式中のR1~R3は、同一又は異なって、下記式(1a)
【化2】
(式(1a)中、L1、L2は、同一又は異なって、炭素数1~10アルキレン基を示し、mは0以上の数を示す。但し、mはR1~R3について同時に0でない。破線のついた結合手が式中の窒素原子に結合する)で表される基である]
で表される化合物であって、数平均分子量(標準ポリスチレン換算)が800未満である化合物(1a)を含み、
前記イソシアネート化合物(B)が、下記式(2)
【化3】
[式(2)中、L3~L5は、同一又は異なって、水素原子、NCO基又は下記式(2’)で表される基を有する炭素数1~10アルキル基を示す。但し、L3~L5は同時に水素原子ではない。

【化4】
式(2’)中、L6およびL7は、同一又は異なって、炭素数1~10アルキレン基を示す。破線のついた結合手が式(2)中のL3~L5の炭素原子に結合する)で表される基である]
で表される化合物(b)を含む、組成物を提供する。
【0009】
本発明は、また、ポリオール化合物(A)が、更に、水酸基価(KOHmg/g)が30~300であるポリオール(a2)を、前記化合物(1a)1重量部に対して、0.01~1.5重量部の範囲で含有する、前記組成物を提供する。
【0010】
本発明は、また、組成物中のイソシアネート化合物(B)のNCO基と、ポリオール化合物中のOH基との当量比(NCO/OH)が、0.9~1.5の範囲である、前記組成物を提供する。
【0011】
本発明は、また、更に、ポリシロキサン誘導体(C)を、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計100重量部に対して0.1~0.5重量部含有する、前記組成物を提供する。
【0012】
本発明は、また、更に、下記式(3)
【化5】
(式(3)中、R4、R6は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、R5は炭素数1~5のアルキレン基を示す。sは1以上の整数を示し、tは0又は1を示す。sが2以上の整数である場合、複数のR5は同一であってもよく異なっていてもよい)
で表される溶剤を含有する、前記組成物を提供する。
【0013】
本発明は、また、コーティング剤である、前記組成物を提供する。
【0014】
本発明は、また、前記組成物の硬化物を提供する。
【0015】
本発明は、また、前記硬化物からなる被膜が、表面の少なくとも一部を被覆するプラスチック成形品を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の組成物は、基材への密着性、硬度、耐擦傷性、及び薬剤耐性に優れた硬化物を形成することができる。そのため、本発明の組成物を、基材を被覆するコーティング剤として使用すれば、基材に前記特性を付与することができる。
【0017】
本発明の組成物の硬化物によって、表面の少なくとも一部が被覆されてなるプラスチック成形品は、高い表面硬度を有し、耐擦傷性及び薬剤耐性に優れる。そのため、前記プラスチック成形品を、例えば日焼け止め剤等が付着した手で触っても、表面を被覆する前記プラスチック硬化物が剥がれたり、白濁したりすることはなく優れた外観、密着性、硬度、及び耐擦傷性を、長期に亘って保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
[組成物]
本発明の組成物は、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを含む。本発明の組成物は、前記成分以外にも他の成分を含んでいてもよい。
【0020】
(ポリオール化合物(A))
前記ポリオール化合物(A)は、水酸基を複数有する化合物である。ポリオール化合物(A)は、少なくとも下記式(1)
【化6】
[式中のR1~R3は、同一又は異なって、下記式(1a)
【化7】
(式(1a)中、L1、L2は、同一又は異なって、炭素数1~10アルキレン基を示し、mは0以上の数を示す。但し、mはR1~R3について同時に0でない。破線のついた結合手が式中の窒素原子に結合する)で表される基である。]
で表されるポリエステルポリオール化合物(1a)を含む。
【0021】
1、L2における炭素数1~10アルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
【0022】
前記L1としては、なかでも、炭素数1~3アルキレン基が好ましい。
【0023】
前記L2としては、なかでも、炭素数1~8アルキレン基が好ましく、炭素数4~6アルキレン基が特に好ましい。また、前記アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基が好ましい。
【0024】
前記mは、式(1a)の括弧で示される単位の重合度の平均値であり、0以上の数であって、例えば、0~7、好ましくは0~4、より好ましくは0~3、更に好ましくは0~2、特に好ましくは1~2である。
【0025】
化合物(1a)の数平均分子量(Mn:標準ポリスチレン換算)は、800未満であり、好ましくは570~630、より好ましくは580~620、更に好ましくは590~610である。
【0026】
また、化合物(1a)の分子量分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1.0~1.5が好ましく、より好ましくは1.0~1.3、更に好ましくは1.0~1.2以下である。
【0027】
化合物(1a)の水酸基価(KOHmg/g)は、例えば200~400であり、なかでも、得られる硬化物の硬度及び薬剤耐性を向上することができる点で、好ましくは260~300、より好ましくは270~290、更に好ましくは275~285である。
尚、水酸基価はJIS-K1557に記載の水酸基価測定方法にて測定することができる。
【0028】
化合物(1a)は、例えば、下記式(1')の水酸基を起点にしてラクトンを開環重合させることにより製造することができる。式(1')中のL1は、式(1a)中のL1と同じである。
【化8】
【0029】
前記ラクトンとしては、例えば、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等を挙げることができる。
【0030】
前記ポリオール化合物(A)は、化合物(1a)以外にも他のポリオール化合物を含んでもよい。他のポリオール化合物としては、例えば、化合物(1a)以外のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
前記他のポリオール化合物としては水酸基価(KOHmg/g)が30~300であるポリオール(a2)が挙げられる。ポリオール(a2)が含まれることにより、得られる硬化物の柔軟性が向上する傾向がある。
【0032】
前記ポリオール(a2)の水酸基価(KOHmg/g)は、30~300であることが好ましく、より好ましくは40~270、更に好ましく50~250である。
水酸基価(KOHmg/g)が30より小さいと得られる硬化物について良好な耐擦傷性、薬剤耐性が得られにくい傾向があり、水酸基価(KOHmg/g)が300を超えると柔軟性が不足する傾向がある。
尚、水酸基価はJIS-K1557に記載の水酸基価測定方法にて測定することができる。
【0033】
前記ポリオール(a2)の数平均分子量(Mn:標準ポリスチレン換算)は、例えば、400~2500が好ましく、より好ましくは450~2400、更に好ましくは500~2300、特に好ましくは500~2200である。ポリオール(a2)の分子量分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、例えば、1~3である。
【0034】
前記ポリオール(a2)は、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、及び/又はこれらの共重合体であることが好ましく、分子中に水酸基を2個有することがより好ましい。
【0035】
前記ポリカーボネートポリオールは、例えば、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ホスゲン等の炭酸誘導体と、ジオールとを反応させて得ることができる。
【0036】
前記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール等の脂環式骨格を有しない脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式骨格を有する脂肪族ジオール等を挙げることができる。
【0037】
前記ポリエステルポリオールは、ラクトンを開環重合させて、或いはジオールとジカルボン酸類を反応させて、得ることができる。
【0038】
前記ラクトンを開環重合させて得られるポリエステルポリオール(ポリラクトンポリオール)を得るために用いられるラクトンとしては、例えば、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等を挙げることができる。
【0039】
前記ジオールとしては、前記ポリカーボネートポリオールを形成するために用いられるジオールと同様のものを挙げることができる。
【0040】
前記ジカルボン酸類としては、例えば、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、クエン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シトラコン酸、1,10-デカンジカルボン酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等を挙げることができる。
【0041】
前記共重合体は、前記のラクトン、ジオール、ジカルボン酸類、及び炭酸誘導体を共重合させて得ることができる。
【0042】
ポリオール化合物(A)におけるポリオール(a2)の含有量は、特に限定されないが、得られる硬化物の柔軟性を向上できる点で、ポリオール化合物(1a)1重量部に対して0.01~1.5重量部が好ましく、より好ましくは0.03~1.2重量部、更に好ましくは0.05~1.0重量部、特に好ましくは0.08~0.9重量部である。
【0043】
ポリオール化合物(A)におけるポリオール(a2)の含有量は、特に限定されないが、得られる硬化物の柔軟性を向上できる点で、ポリオール化合物(1a)1モルに対して0.01~2.5モルが好ましく、より好ましくは0.03~2.0モル、更に好ましくは0.05~1.5モル、特に好ましくは0.08~1.0モルである。
【0044】
尚、ポリオール化合物(A)の数平均分子量及び分子量分散度は、実施例に記載の装置及び条件により測定することができる。
【0045】
(イソシアネート化合物(B))
前記イソシアネート化合物(B)は、少なくとも下記式(2)で表されるイソシアネート化合物(b)を含む。
【化9】
[式(2)中、L3~L5は、同一又は異なって、水素原子、NCO基又は下記式(2’)で表される基を有する炭素数1~10アルキル基を示す。但し、L3~L5は同時に水素原子ではない。
【化10】
式(2’)中、L6およびL7は、同一又は異なって、炭素数1~10アルキレン基を示す。破線のついた結合手が式(2)中のL3~L5の炭素原子結合する)で表される基である。]
【0046】
前記L3~L5における炭素数1~10アルキレン基としては、式(1a)中のL2と同様の例を挙げることができる。
【0047】
前記L3~L5としては、炭素数3~8アルキレン基が好ましく、炭素数4~8アルキレン基がより好ましい。また、前記アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基が好ましい。
【0048】
前記L6およびL7における炭素数1~10アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状又は分岐鎖アルキル基を挙げることができる。なかでも、直鎖状アルキル基が好ましい。
【0049】
前記イソシアネート化合物(b)におけるNCO含有量は、例えば、17~25重量%、好ましくは18~24重量%、より好ましくは19~23重量%である。
【0050】
前記イソシアネート化合物(B)は、前記イソシアネート化合物(b)以外にも他のイソシアネート化合物を1種又は2種以上含有していてもよい。
他のイソシアネート化合物としては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;
前記脂肪族ポリイソシアネートの三量体(イソシアネート化合物(b)を除く)、アロファネート体、ビウレット体又はアダクト体;
トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;
芳香族ポリイソシアネートを水添して得られるポリイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;
前記芳香族ポリイソシネート又は前記脂環式ポリイソシアネートの三量体、アロファネート体、ビウレット体又はアダクト体等を挙げることができる。
【0051】
前記イソシアネート化合物(B)は、得られる硬化物の硬度及び薬剤耐性を向上できる点で、イソシアネート化合物(b)を、イソシアネート化合物(B)全量の例えば60重量%以上(より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上)含有することが好ましい。
【0052】
(組成物)
本発明の組成物は、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを含む。
これらの含有量は、イソシアネート化合物(B)が有するイソシアネート基(NCO基)と、ポリオール化合物(A)が有する水酸基(OH基)の当量比(NCO/OH)が、得られる硬化物の硬度及び薬剤耐性を向上できる点で、0.2~2.0の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5~1.5、更に好ましくは0.7~1.3、特に好ましくは0.9~1.2である。
【0053】
また、前記組成物中におけるイソシアネート化合物(B)の含有量は、得られる硬化物の硬度及び薬剤耐性を向上できる点で、ポリオール化合物(A)100重量部に対して、40~140重量部が好ましく、より好ましくは50~130重量部、更に好ましくは60~120重量部である。
【0054】
本発明の組成物は、必要に応じて、更に無機粒子、有機粒子、添加剤等を含有してもよい。
【0055】
(無機粒子)
本発明の組成物が更に含んでいてもよい無機粒子としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、合成マイカ、タルク、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、カオリン、ベントナイト、珪藻土、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、ガラスビーズ、ガラス繊維、グラファイト、カーボンナノチューブ、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等を挙げることができる。なかでも、塗膜の耐薬品性及び耐擦傷性を向上できる点から、シリカが好ましい。
【0056】
(有機粒子)
本発明の組成物が更に含んでいてもよい有機粒子としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、アクリルビーズ、ウレタンビーズ等を挙げることができる。なかでも、塗膜の触感(ソフトフィール性)を向上できる点から、ウレタンビーズが好ましい。
【0057】
これら無機粒子及び有機粒子は区別なく1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
無機粒子及び有機粒子の粒径は、特に限定されないが、良好な外観の点から、例えば0.01nm~1μmが好ましい。
【0059】
(添加剤)
本発明の組成物が更に含んでいてもよい添加剤としては、例えば、界面活性剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、消泡剤、湿潤剤、分散剤、粘弾性調整剤、チクソトロピー性付与剤、防腐剤、膜形成剤、可塑剤、浸透剤、香料、殺菌剤、防かび剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、艶消し剤等を挙げることができる。
【0060】
なかでも、表面調整剤が、塗膜表面を平滑にする点から好ましい。
表面調整剤としては、例えば、ポリシロキサン誘導体(C)が挙げられる。
【0061】
ポリシロキサン誘導体(C)としては、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格を有する化合物が挙げられる。なかでも、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが好ましく、特に、ポリエチレンオキサイド(或いは、ポリプロピレンオキサイド)付加ポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0062】
ポリシロキサン誘導体(C)の含有量は、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計100重量部に対して、例えば、0.1~0.5重量部である。
【0063】
本発明の組成物にける無機粒子や添加剤の含有量は、特に限定されないが、前記組成物の不揮発分総重量(100重量%)に対して、好ましくは10重量%以下である。
【0064】
(溶剤)
本発明の組成物は、また、溶剤を添加して粘度を調整することができる。前記溶剤は、例えば、下記式(3)で表される。
【化11】
(式(3)中、R4、R6は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、R5は炭素数1~5のアルキレン基を示す。sは1以上の整数を示し、tは0又は1を示す。sが2以上の整数である場合、複数のR5は同一であってもよく異なっていてもよい。)
【0065】
4、R6における炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0066】
5における炭素数1~5のアルキレン基としては、式(1a)中のL2と同様の例を挙げることができる。
【0067】
式(3)で表される溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の、モノ又はポリ(オキシC1-6アルキレン)グリコール;
エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の、モノ又はポリ(オキシC1-6アルキレン)グリコールモノ(C1-4アルキルエーテル);
エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルブチルエーテル等の、モノ又はポリ(オキシC1-6アルキレン)グリコールジ(C1-4アルキルエーテル);
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブタノールアセテート等の、モノ又はポリ(オキシC1-6アルキレン)グリコールモノ(C1-4アルキルエーテル)モノ(C1-4アルキルエステル)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
式(3)で表される溶剤としては、なかでも、溶解性が高く取り扱いに優れる点で、前記モノ又はポリ(オキシC1-6アルキレン)グリコールモノ(C1-4アルキルエーテル)モノ(C1-4アルキルエステル)が好ましく、特にモノ又はポリ(オキシエチレン)グリコールモノエチルエーテルモノアセテートが好ましい。
【0069】
本発明の組成物には、上記式(3)で表される溶剤以外の他の溶剤を使用してもよい。他の溶剤としては、例えば、酢酸エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)などのエステル系溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;アセトンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、ジクロロメタン、クロロホルムなどハロゲン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶剤などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
本発明の組成物における溶剤(例えば、式(3)で表される溶剤)の含有量は、組成物中の固形分濃度が、例えば70~99重量%(好ましくは80~95重量%)となる範囲である。
また、前記溶剤の含有量は、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計100重量部に対して、5~20重量部含有するのが好ましく、より好ましくは7~17重量部、更に好ましくは9~15重量部含有する。
【0071】
本発明の組成物は、上記成分を混合することにより製造することができる。尚、本発明の組成物をコーティング剤として使用する場合には、2液型コーティング剤として使用することが好ましく、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを別個に保管して、使用時に混合することが好ましい。
【0072】
本発明の組成物は、上記構成を有するため、加熱処理を施すことで、ポリオール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とがウレタン結合して、硬化物(=ポリウレタン樹脂からなる硬化物)を形成することができる。
【0073】
前記加熱処理条件は、例えば100~150℃で、0.5~12時間程度である。加熱処理終了後は、更に、室温(1~30℃)の温度で12~60時間程度熟成してもよい。
【0074】
このようにして得られる硬化物は、基材(例えば、PET等のプラスチック基材)への密着性、及び耐擦傷性に優れる。
【0075】
前記硬化物は高硬度を有し、鉛筆硬度(JIS K5600に準拠した方法による)は、例えばH以上、好ましくは2H以上、特に好ましくは3H以上、更に好ましくは4H以上である。また、前記硬化物のマルテンス硬さ(ISO14577に準拠した押し込み試験により求められる;単位はN/mm2)は、例えば5.0を超え、75.0以下、好ましくは5.3~60.0である。
【0076】
前記硬化物は薬剤耐性に優れ、例えば、日焼け止め剤が付着しても、硬化物の表面が膨潤したり、白濁することがない。すなわち、耐サンスクリーン性に優れる。
【0077】
前記硬化物は上記特性を兼ね備える。そのため、前記硬化物を形成する前記組成物は、押出成形品、射出成形品や圧縮成形品等のプラスチック成形品のコーティング剤や、フィルム等の成形品の材料として好適である。尚、前記プラスチック成形品とは、例えば、家電製品(冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビ等)の筐体、電子機器(パソコン、携帯電話、スマートフォン等)の筐体、楽器(ピアノ、エレクトーン、電子楽器等)を構成する部材;自動車や鉄道車両等の車両用部材(インスツルメントパネル、ドアトリム、ヘッドライニング、トノーカバー等の内装材や、バンパー等の外装材)等が挙げられる。
【0078】
また、前記プラスチック成形品を形成するプラスチックには熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0079】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル;塩化ビニル樹脂などの塩化ビニル系樹脂;ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212等のポリアミド;ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等のポリフェニレンエーテル;PAN樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、AES樹脂、AXS樹脂等のアクリロニトリルの単独又は共重合体;(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、及びこれらの樹脂の変性品や誘導体、更にはこれらの樹脂を含むポリマーブレンドやポリマーアロイ等が挙げられる。
【0080】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アリル樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
【0081】
[プラスチック成形品]
本発明の硬化物からなる被膜を表面の少なくとも一部に備えるプラスチック成形品は、耐擦傷性、薬剤耐性等に優れる。
【0082】
前記被膜の厚みは、特に制限されることはなく、例えば20~150μm程度である。
【0083】
また、前記組成物自体を材料としたプラスチック成形品も、前記硬化物からなる表面を備えるため、同様に、耐擦傷性、薬剤耐性等に優れる。
【実施例
【0084】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0085】
合成例1
還流用冷却管、温度計、混気ガス導入管、攪拌装置を備えた五つ口フラスコに、窒素ガス雰囲気下で、1306gのトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと、1694gのε-カプロラクトンと、6mgのオクチル酸第一スズを投入した後、内温を170℃に昇温した。
ガスクロマトグラフィーによる分析で、ε-カプロラクトンの濃度が1.0%未満となっていることを確認した後に、冷却して五つ口フラスコから取り出した。得られた化合物(1a-1)の数平均分子量(Mn)は611、分子量分散度(Mw/Mn)は1.2、粘度は14.3[Pa・s/25℃]であった。
【0086】
尚、得られた化合物の分子量の測定は、高速GPC装置を用いて、ポリスチレン標品との比較から数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を求め、分子量分散度(Mw/Mn)を算出した。
測定条件は下記の通りである。
測定装置:高速GPC装置「HLC-8220GPC」、東ソー(株)製
移動相:テトラヒドロフラン
【0087】
実施例1
50mLガラス容器内に、表1に記載の通り、ポリオール化合物(A)、イソシアネート化合物(B)、表面調整剤、及び溶剤を仕込み、混合、脱泡を行った。
【0088】
得られた組成物を、アプリケーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100#100、東洋紡(株)製)に膜厚が90μmとなるように塗布し、オーブンにより120℃で2時間、硬化、乾燥を行い、更に23℃、50%RHの恒温恒湿条件下で48時間養生を行うことにより、硬化被膜/PETフィルム積層体を得た。
【0089】
実施例2~5、比較例1~6
組成物の処方を表1に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして組成物を得て、硬化物/PETフィルム積層体を得た。
【0090】
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化被膜について、鉛筆硬度、マルテンス硬さ、耐擦傷性、耐サンスクリーン性を下記方法で評価した。
【0091】
(鉛筆硬度)
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化被膜側表面の鉛筆硬度をJIS K5600に準拠した方法で評価した。
すなわち、積層体の硬化側表面を鉛筆(鉛筆の芯)でこすり、表面に傷が確認できたものをNG(不良)とした。具体的には、ある硬さの鉛筆を用いて評価を行い、傷がつかなかった場合に、1つ上の硬さの鉛筆で評価を行うという作業を繰り返した。傷が確認できたらその1つ下の硬さで再評価し、また、傷が確認できなかったら、再度1つ上の硬さの鉛筆を用いて評価した。2回以上の再現性が確認できた場合、傷がつかない最も硬い鉛筆の硬度をその硬化被膜の鉛筆硬度とした。
評価用鉛筆:三菱鉛筆(株)製「鉛筆硬度試験用鉛筆」
荷重:750gf
引き掻き記距離:7mm以上
引き掻き角度:45°
測定環境:23℃、50%RH
尚、試験に使用する積層体は、23℃、50%RHの恒温恒湿機にて24時間調湿したものを用いた。
【0092】
(マルテンス硬さ)
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化被膜側表面のマルテンス硬さは、島津ダイナミック超微小硬度計DUH-211((株)島津製作所製)を用いて測定した。マルテンス硬さは、試験荷重と圧子の侵入した表面積の商により求められる値であり、表面硬度の指標となる。
【0093】
(耐擦傷性)
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化被膜側表面の耐擦傷性は、ラビングテスター(標準型、日本理化工業(株)製)にスチールウール(B-204、ボンスター業務用#0000)を取付け、500gの荷重をかけた状態で被膜上を往復(10往復又は20往復)させることで擦傷試験を行った。
光沢計(Gloss Meter VG7000、日本電色工業(株)製)を用いて、硬化被膜側表面の擦傷試験前の初期光沢(60度グロス)(G0)と、擦傷試験2分後の光沢(60度グロス)(G1)を測定し、下記式により光沢(グロス)の保持率を算出することで擦傷耐性を評価した。
擦傷試験後の光沢(グロス)の保持率=(G1)/(G0)×100 (%)
また、擦傷後の積層体を23℃、50%RHの恒温恒湿条件下に24時間静置し、静置した後の被膜の光沢(60度グロス)(G2)を測定し、下記式により初期光沢(60度グロス、G0)に対する光沢(グロス)の保持率を算出することで擦傷回復性を評価した。
擦傷回復性=(G2)/(G0)×100 (%)
【0094】
◎:光沢(グロス)の保持率が90%以上
○:光沢(グロス)の保持率が90%未満、80%以上
△:光沢(グロス)の保持率が80%未満
×:塗膜が剥離して光沢(グロス)の測定が不能
【0095】
(耐サンスクリーン性(浸漬法))
実施例及び比較例で得られた積層体の試験片[矩形、2cm2]の硬化被膜側表面全体を、スライドガラス上に計量した0.4gの日焼け止めクリーム(Neutrogena社製「UltraSheer Dry-Touch SPF45」)を接触させた(硬化被膜と日焼け止めクリームの接触面積:0.1g/cm2)。
前記硬化被膜全体をポリ塩化ビニリデンフィルムで覆い、80℃のオーブン内に5時間静置した後、日焼け止めクリームを拭き取り、硬化被膜の接着状態を下記基準で評価した。硬化被膜が剥離しにくいほど基材への密着性に優れることを示す。
【0096】
(判定基準)
○:硬化被膜は剥離しなかった
△:硬化被膜の一部が剥離した
×:硬化被膜が完全に剥離した
【0097】
耐サンスクリーン性試験後、硬化試験片の被膜側表面を裏側にして平面上に静置し、各頂点の平面からの高さ(mm)を測定した。各頂点(4箇所)の高さの合計値をカール(mm)として評価した。
【0098】
(耐サンスクリーン性(点適法))
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化被膜側表面に0.025g/cm2となるように日焼け止めクリーム(Neutrogena社製「UltraSheer Dry-Touch SPF45」)を塗布し、50℃のオーブン内で1時間静置した後、日焼け止めクリームを拭き取り、硬化被膜の外観を下記基準で評価した。
【0099】
(判定基準)
◎:硬化被膜について外観にほとんど変化が無い
○:硬化被膜に薬液痕が残る
△:硬化被膜が膨潤する
×:硬化被膜が膨潤し、且つ白化する
【0100】
上記結果を下記表1にまとめて示す。
【0101】
実施例1~5に示した、ポリオール化合物(A)として、ポリオール化合物(1a)、又はポリオール化合物(1a)とポリオール(a2)を用いて得られた硬化被膜は、何れも、鉛筆硬度が4H又はHであって硬度に優れ、耐擦傷性が◎又は○、且つ耐サンスクリーン性が◎又は○を示し、密着性、耐擦傷性及び薬剤耐性について優れるものであった。
【0102】
比較例1及び2に示した、ポリオール化合物(1a)に代えてイソシアヌレート骨格を有しないトリオールを用いた硬化被膜は、耐擦傷性が◎と優れるものの、耐サンスクリーン性(接着性)が×又は△であって、密着性に劣るものであった。
また、比較例3~6に示した、ポリオール化合物(A)としてポリオール化合物(1a)を使用せずポリオール(a2)のみ使用した硬化被膜は、耐擦傷性及び耐サンスクリーン性の評価のいずれかについて×又は△となる場合があり、密着性、耐擦傷性又は薬剤耐性のいずれかが不十分であった。
【0103】
【表1】
【0104】
1a-1:合成例1により得られた化合物(1a-1)
a2-1:商品名「PLACCEL 205U」(ポリカプロラクトンジオール、Mn662、Mw/Mn1.4、水酸基価207~217、(株)ダイセル製)
a2-2:商品名「PLACCEL CD205PL」(ポリカーボネートジオール、Mn677、Mw/Mn1.8、水酸基価215~235、(株)ダイセル製)
a2-3:商品名「PLACCEL 220EC」(ポリカーボネートポリエステルジオール、Mn2166、Mw/Mn2.5、水酸基価54~58、(株)ダイセル製)
a2-4:商品名「PLACCEL CD210」(ポリカーボネートジオール、Mn1355、Mw/Mn2.3、水酸基価107~117、(株)ダイセル製)
a2-5:商品名「ETERNACOL UM90(3/1)」(ポリカーボネートジオール、Mn1096、Mw/Mn2.1、水酸基価115~135、宇部興産(株)製)
【0105】
1:商品名「PLACCEL 305」(ポリカプロラクトントリオール、Mn640、Mw/Mn1.4、(株)ダイセル製)
2:商品名「PLACCEL CD305」(ポリカーボネートトリオール、Mn600、Mw/Mn1.9、(株)ダイセル製)
【0106】
B:商品名「タケネートD-170N」(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、三井化学(株)製)
【0107】
表面調整剤:エーテル変性ポリジメチルシロキサン、BYK-306(ビックケミー・ジャパン(株)製)
溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、東京化成工業(株)製試薬