(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】減速機付きモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20230831BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2019178215
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大堀 竜
(72)【発明者】
【氏名】山浦 慎司
(72)【発明者】
【氏名】川崎 敦史
(72)【発明者】
【氏名】金井 猛
(72)【発明者】
【氏名】米川 孝二
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-112225(JP,A)
【文献】特開2016-86539(JP,A)
【文献】特開2016-164016(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007022192(DE,A1)
【文献】実開平6-80361(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸を含む減速機構が収納されるギアケースを有する減速部と、
前記減速機構に連結され前記出力軸の軸方向と直交する方向を軸方向とする回転軸を有し、前記回転軸を介して前記減速機構に動力を伝達するモータ部と、を備え、
前記減速部は、
外部電源が接続されるコネクタ部と、
前記コネクタ部に接続され前記モータ部に前記外部電源の電力を供給する給電部と、
を有し、
前記ギアケースは、
一面が開口されたケース部と、
前記ケース部の開口を閉塞するカバーと、
前記ギアケース内の圧力を所定値内に保つための圧力補正部と、
を有し、
前記カバーは、前記コネクタ部と前記給電部とを跨るように設けられた傾斜部を有し、
前記圧力補正部は、前記傾斜部と一体成形され、前記ギアケースの内外を連通し、かつ前記出力軸と直交するとともに前記回転軸に沿う仮想平面の面方向に向けて開口された呼吸部を有し、
前記呼吸部は、
前記モータ部側に向けて開口されているとともに前記仮想平面の面方向からみて前記傾斜部に沿って長く形成されて
おり、
前記コネクタ部、前記給電部、及び前記圧力補正部が一方向に並んで配置され、かつ前記一方向と直交する第二方向からみて前記コネクタ部、前記給電部、及び前記圧力補正部が重ならないように配置されている
ことを特徴とする減速機付きモータ。
【請求項2】
前記圧力補正部は、前記回転軸の軸方向及び前記出力軸の軸方向のそれぞれに直交する方向において、前記コネクタ部と前記給電部との間に配置されていることを特徴とする請求項1
に記載の減速機付きモータ。
【請求項3】
前記モータ部は、コイルが巻回されたステータを有するブラシレスモータであり、
前記減速部は、前記モータ部への給電を制御する制御基板を有し、
前記給電部は、前記コイルと前記制御基板とを接続する端子を有することを特徴とする請求項
1又は請求項
2に記載の減速機付きモータ。
【請求項4】
前記コネクタ部及び前記給電部の少なくともいずれか一方は、前記呼吸部よりも前記回転軸の軸方向に沿って突出しており、
前記呼吸部の少なくとも一部は、前記コネクタ部及び前記給電部よりも前記ギアケースから前記出力軸の軸方向に向かって突出している
ことを特徴とする請求項
1から請求項
3のいずれか1項に記載の減速機付きモータ。
【請求項5】
前記呼吸部の開口方向が水平方向に沿うように配置された状態において、前記圧力補正部は、前記呼吸部の下部に設けられ前記呼吸部から開口方向に沿って突出する段差部を有し、
前記段差部は、前記モータ部が収容されているモータ収容部と前記圧力補正部との間に、前記回転軸の軸方向に隙間を形成するとともに、水勾配を有することを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の減速機付きモータ。
【請求項6】
前記呼吸部の開口方向が水平方向に沿うように配置された状態において、前記圧力補正部は、前記呼吸部の下部に設けられ前記呼吸部から開口方向に沿って突出する段差部を有し、
前記段差部は、前記コネクタ部側に向けて下り勾配となる水勾配を有することを特徴とする請求項
1から請求項
4のいずれか1項に記載の減速機付きモータ。
【請求項7】
前記段差部は、前記コネクタ部とは反対側の端部が開口されていることを特徴とする請求項
6に記載の減速機付きモータ。
【請求項8】
前記呼吸部は、前記段差部における前記水勾配の下り方向とは反対側に配置されていることを特徴とする請求項
5から請求項
7のいずれか1項に記載の減速機付きモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ワイパモータとして用いられる減速機付きモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両のフロントガラス等に付着した埃や雨滴等を払拭するために、ワイパブレードが装着されたワイパアームを、フロントガラス上における所定の範囲内で揺動動作させるワイパモータが知られている。
この種のワイパモータは、駆動源としてのモータ部と、モータ部の回転駆動力を減速して出力する減速機構を有する減速部と、を備えている。
【0003】
減速機構は、例えばモータ部の回転軸に連結されるウォーム軸、ウォーム軸に噛み合わされるウォームホイール、及びウォームホイールに固定される出力軸を備えている。この出力軸にワイパ機構が取り付けられる。
減速部は、減速機構を収納するギアケースを備えている。ギアケースには、このギアケースの内部と外部との温度差やこの温度差に起因する圧力差を抑制するために呼吸部(通気孔)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワイパモータでは、車体に取り付ける際のレイアウトによって出力軸の向きが変更される。このため、呼吸部を介してギアケース内に雨滴等が侵入しないように、呼吸部の位置を変更する必要があった。この結果、レイアウトのバリエーションごとに呼吸部の位置を変更したギアケースを用意する必要があり、製造コストが嵩むという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、ギアケースの汎用性を高め、製造コストを低減できる減速機付きモータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る減速機付きモータは、出力軸を含む減速機構が収納されるギアケースを有する減速部と、前記減速機構に連結され前記出力軸の軸方向と直交する方向を軸方向とする回転軸を有し、前記回転軸を介して前記減速機構に動力を伝達するモータ部と、を備え、前記減速部は、外部電源が接続されるコネクタ部と、前記コネクタ部に接続され前記モータ部に前記外部電源の電力を供給する給電部と、を有し、前記ギアケースは、一面が開口されたケース部と、前記ケース部の開口を閉塞するカバーと、前記ギアケース内の圧力を所定値内に保つための圧力補正部と、を有し、前記カバーは、前記コネクタ部と前記給電部とを跨るように設けられた傾斜部を有し、前記圧力補正部は、前記傾斜部と一体成形され、前記ギアケースの内外を連通し、かつ前記出力軸と直交するとともに前記回転軸に沿う仮想平面の面方向に向けて開口された呼吸部を有し、前記呼吸部は、前記モータ部側に向けて開口されているとともに前記仮想平面の面方向からみて前記傾斜部に沿って長く形成されており、前記コネクタ部、前記給電部、及び前記圧力補正部が一方向に並んで配置され、かつ前記一方向と直交する第二方向からみて前記コネクタ部、前記給電部、及び前記圧力補正部が重ならないように配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成において、前記圧力補正部は、前記回転軸の軸方向及び前記出力軸の軸方向のそれぞれに直交する方向において、前記コネクタ部と前記給電部との間に配置されてもよい。
【0012】
上記構成において、前記モータ部は、コイルが巻回されたステータを有するブラシレスモータであり、前記減速部は、前記モータ部への給電を制御する制御基板を有し、前記給電部は、前記コイルと前記制御基板とを接続する端子を有してもよい。
【0013】
上記構成において、前記コネクタ部及び前記給電部の少なくともいずれか一方は、前記呼吸部よりも前記回転軸の方向に沿って突出しており、前記呼吸部の少なくとも一部は、前記コネクタ部及び前記給電部よりも前記ギアケースから前記回転軸と直交する方向に向かって突出してもよい。
【0014】
上記構成において、前記呼吸部の開口方向が水平方向に沿うように配置された状態において、前記圧力補正部は、前記呼吸部の下部に設けられ前記呼吸部から開口方向に沿って突出する段差部を有し、前記段差部は、前記モータ部が収容されているモータ収容部と前記圧力補正部との間に、前記回転軸の軸方向に隙間を形成するとともに、水勾配を有してもよい。
【0015】
上記構成において、前記呼吸部の開口方向が水平方向に沿うように配置された状態において、前記圧力補正部は、前記呼吸部の下部に設けられ前記呼吸部から開口方向に沿って突出する段差部を有し、前記段差部は、前記コネクタ部側に向けて下り勾配となる水勾配を有してもよい。
【0016】
上記構成において、前記段差部は、前記コネクタ部とは反対側の端部が開口されてもよい。
【0017】
上記構成において、前記呼吸部は、前記段差部における前記水勾配の下り方向とは反対側に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、呼吸部の開口方向を回転軸の軸方向とすることで、ギアケースの汎用性を高め、減速機付きモータの製造コストを低減できる。つまり、例えば減速機付きモータをワイパモータとして使用する場合等、レイアウトの都合によりモータ部の回転軸を鉛直方向に沿って配置することが殆どない。このため、呼吸部の開口方向を回転軸の軸方向とすることで、呼吸部の開口方向を水平方向とすることができる。この結果、減速機付きモータのレイアウトに関わらず呼吸部の開口方向が水平方向を向くことになり、雨滴等の水が呼吸部を覆ってしまうことや、水が呼吸部を介してギアケース内に侵入してしまうことを防止できる。よって、ギアケースの汎用性を高め、減速機付きモータの製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態におけるワイパモータをモータ部側からみた斜視図。
【
図2】本発明の実施形態におけるワイパモータを減速部側からみた斜視図であり、ギアケースを取り外した状態を示す。
【
図3】本発明の実施形態におけるギアケースを上方からみた平面図。
【
図5】本発明の実施形態におけるカバーをモータ部側からみた側面図。
【
図7】本発明の実施形態における圧力補正部の作用説明図。
【
図8】本発明の実施形態の変形例における圧力補正部の補正部本体をモータ部側からみた側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
<ワイパモータ>
図1は、ワイパモータ(請求項の減速機付きモータの一例)1をモータ部2側からみた斜視図である。
図2は、ワイパモータ1を減速部3側からみた斜視図であり、ギアケース4を取り外した状態を示す。
ワイパモータ1は、例えば図示しない車両のフロントウィンドウを払拭する図示しないフロントワイパ(ワイパ装置)を駆動させるものである。
図1、
図2に示すように、ワイパモータ1は、モータ部2と、モータ部2に連結されモータ部2の動力を受けて駆動する減速部3と、減速部3内に設けられモータ部2の駆動制御を行うコントローラ部5と、を備えている。
【0022】
<モータ部>
モータ部2は、いわゆるブラシレスモータである。モータ部2は、略有底筒状のモータケース6と、モータケース6の内周面に嵌合固定されたステータ7と、ステータ7の径方向内側に設けられ、ステータ7に対して回転自在に設けられたロータ8と、を備えている。なお、以下の説明では、ステータ7の径方向をモータ径方向と称し、ロータ8の回転軸線をモータ軸線C1と称し、ロータ8の回転方向をモータ周方向と称する。
【0023】
モータケース6は、鉄等の金属からなる板状の部材を、例えば深絞り等のプレス加工等により形成されている。モータケース6の開口端には、モータ径方向の外側に屈曲延出するフランジ部6aが形成されている。このフランジ部6aに挿通されたボルト9により、モータケース6と減速部3の後述するギアケース4とが締結固定される。
【0024】
ステータ7は、略円筒状に形成されたステータコア10と、ステータコア10に巻回された3相のコイル11と、を備えている。ステータコア10は、例えば複数の電磁鋼板を積層して形成されている。なお、ステータコア10は、複数の電磁鋼板を積層して形成する場合に限られるものではなく、例えば軟磁性粉を加圧成形することにより形成してもよい。このように形成されたステータコア10の外周面が、モータケース6の内周面に嵌合される。
【0025】
ステータコア10は、図示しない複数のティースを有している。複数のティースは、モータ軸線C1の方向からみてモータ径方向に沿って延び、かつモータ周方向に沿って並んで配置されている。各ティースには、樹脂製の図示しないインシュレータが装着されている。このインシュレータの上から各ティースにコイル11が巻回されている。コイル11は、コントローラ部5から供給される電力によって、各ティースにロータ8を回転させるための鎖交磁束を発生させる。
【0026】
ロータ8は、モータ軸線C1回りに回転する回転軸12と、回転軸12の外周面に嵌合固定されている略円柱状のロータコア13と、を備えている。回転軸12は、円柱の棒状に形成されている。回転軸12の一端(図示しない)は、モータケース6の底部に回転自在に支持されている。回転軸12の他端12aは、モータケース6から減速部3に向かって突出されている。回転軸12の他端12aは、減速部3の後述するギアケース4に設けられた軸受14Aに回転自在に支持されている。
【0027】
ロータコア13は、例えば複数の電磁鋼板を積層して形成されている。なお、ロータコア13は、複数の電磁鋼板を積層して形成する場合に限られるものではなく、例えば軟磁性粉を加圧成形することにより形成してもよい。
ロータコア13のモータ径方向の略中央には、モータ軸線C1方向に貫通する図示しない貫通孔が形成されている。この貫通孔に回転軸12が圧入等により固定されている。なお、貫通孔に対して回転軸12を挿入し、接着剤等を用いて回転軸12にロータコア13を固定してもよい。
【0028】
ロータコア13の外周面には、図示しない永久磁石が設けられている。永久磁石は、N極とS極とがモータ周方向に沿って互い違いになるように着磁されている。このような永久磁石の磁束とステータ7の鎖交磁束との間に生じる磁気的な吸引力や反発力によって、ロータ8がモータ軸線C1回りに回転する。
【0029】
<減速部>
減速部3は、モータケース6に固定されるギアケース4と、ギアケース4内に収納される減速機構15と、を備える。減速機構15は、回転軸12の他端12aから延びるように回転軸12と一体成形され、モータ軸線C1と同軸上に配置されたウォーム軸16と、ウォーム軸16に噛み合わされるウォームホイール17と、を備えている。ウォーム軸16の回転軸12とは反対側端は、ギアケース4に設けられた軸受14Bに回転自在に支持されている。ウォーム軸16における各軸受14A,14Bの間に、螺旋状に形成された歯部16aが形成されている。この歯部16aがウォームホイール17に噛み合わされる。なお、ウォーム軸16は、回転軸12とは別体として構成し、ウォーム軸16と回転軸12とを連結することで一体化してもよい。
【0030】
ウォームホイール17は、略円板状に形成されている。ウォームホイール17の外周面に、ウォーム軸16の歯部16aに噛み合わさる歯部17aが形成されている。なお、以下の説明では、ウォームホイール17の回転軸線を出力軸線(請求項の第二方向の一例)C2と称する。ここで、ウォーム軸16の回転軸線はモータ軸線C1と一致しているので、出力軸線C2は、モータ軸線C1と直交する。
【0031】
ウォームホイール17の径方向略中央には、出力軸線C2に沿って突出する出力軸18が一体化されている。出力軸18のウォームホイール17とは反対側の先端には、例えば図示しないフロントワイパ(ワイパ装置)と連結されるスプライン18aが形成されている。なお、減速部3のギアケース4についての詳細は後述する。
【0032】
ここで、ワイパモータ1は、モータ軸線C1に沿い、出力軸線C2と直交する仮想平面VPが水平方向に沿うように配置されている。つまり、出力軸18は、鉛直方向に沿って延びている。また、本実施形態では、ワイパモータ1は、ウォームホイール17から下方に向かって出力軸18が突出されているものとする。以下、出力軸18の突出方向を下方と称し、出力軸18の突出方向とは反対側を上方と称して説明する場合がある。
【0033】
<コントローラ部>
コントローラ部5は、ウォームホイール17の上方に配置されたコントローラ基板(請求項の制御基板の一例)19と、ステータ7のコイル11に給電を行う給電部20と、外部電源から延びる外部コネクタが接続される複数の外部接続端子21と、を主構成としている。
【0034】
コントローラ基板19は、例えばエポキシ基板である。コントローラ基板19の上面19aには、コンデンサ22等の雑防素子が実装されている。また、コントローラ基板19の上面19aに、外部接続端子21が実装されている。外部接続端子21は、コントローラ基板19の上面19aから上方に向かって突出された後、モータ部2側に向かって屈曲延出されている。外部接続端子21のモータ部2側の先端21aに、図示しない外部コネクタが接続される。
【0035】
また、コントローラ基板19の上面19aに、雑防素子を構成するチョークコイル23を介して給電部20が実装されている。給電部20は、コントローラ基板19のモータ部2側に配置され、かつ一部が外部接続端子21と水平方向に沿って並ぶように配置されている。
【0036】
給電部20は、樹脂製のホルダ部24と、基端25aがチョークコイル23に接続された給電端子(請求項の端子の一例)25と、を備えている。ホルダ部24は、ステータコア10のモータ軸線C1方向の端部に配置された略円環状のカバー部26と、カバー部26のステータコア10とは反対側の端面に一体成形されたブロック状の給電部本体(請求項の給電部の一例)27と、を備えている。給電部本体27が、外部接続端子21と水平方向に沿って並んで配置されている。
【0037】
カバー部26は、ステータコア10のモータ軸線C1方向の端部から突出されたコイル11の一部(コイルエンド)、及びステータコア10の図示しないティースに装着されたインシュレータを覆うように形成されている。このようなカバー部26のモータ径方向の外周部に給電部本体27が一体化されることにより、給電部本体27と外部接続端子21とが水平方向に沿って並んで配置される。
【0038】
給電部本体27には、給電端子25が取り付けられている。給電端子25は、基端25aからモータ部2側に向かって僅かに延出された後、下方に向かって屈曲延出されている。給電端子25の下方に向かって突出する先端25b(
図5参照)に、コイル11の端末部が接続された図示しないコイル側端子が接続されている。これにより、図示しない外部電源の電力が給電部20及びコイル側端子を介して各コイル11に選択的に供給される。なお、コイル11は3相のため、給電端子25は3本設けられている。
【0039】
<ギアケース>
ここで、
図1から
図7に基づいて、ギアケース4について詳述する。
図3は、ギアケース4を上方からみた平面図である。
図1から
図3に示すように、ギアケース4は、例えばアルミダイキャスト等の放熱性の優れた材料に形成されている。一面が開口された箱状で減速機構15及びコントローラ基板19が収納されるケース本体28と、ケース本体28の開口を閉塞するカバー29と、を備えている。本実施形態では、ケース本体28が下側に位置するように配置され、ケース本体28の開口が上側を向くように配置されている。以下の説明では、ケース本体28が下側に位置するように配置され、ケース本体28の開口が上側を向くように配置されているものとして説明する。
【0040】
ケース本体28は、下側に位置する底部28aと開口面が仮想平面VPの面方向に沿うように形成されている。ケース本体28の下側に位置する底部28aには、減速機構15の出力軸18に対応する位置に、略円筒状の出力軸支持部30が突設されている。出力軸支持部30には、滑り軸受50(
図2参照)が設けられている。この滑り軸受50を介し、出力軸支持部30に出力軸18が回転自在に支持されている。出力軸18のスプライン18aは、出力軸支持部30から突出されている。このように、本実施形態では、出力軸線C2が上下方向(鉛直方向)に沿うように、かつモータ軸線C1が水平方向に沿うように、図示しない車体にワイパモータ1が取り付けられる。
【0041】
ケース本体28には、モータ部2側の側面28bに、略円筒状のモータ収容部31が一体成形されている。モータ収容部31は、このモータ収容部31の軸心がモータ軸線C1と一致している。ケース本体28のモータ部2側の側面28bは、モータ収容部31を介して内外が連通されている。モータ収容部31のモータ部2側の開口端には、モータ径方向の外側に屈曲延出するフランジ部31aが形成されている。このフランジ部31aとモータケース6のフランジ部6aとが重なり合うようにして、ボルト9によってケース本体28とモータケース6とが締結固定される。
【0042】
ケース本体28の外周部には、3つのボルト座32がモータ部2側の側面28bを避けるようにして周方向にほぼ等間隔で配置されている。各ボルト座32にカバー29の上からボルト35を締結させることにより、ケース本体28とカバー29とが一体化される。
【0043】
図4は、カバー29の斜視図である。
図5は、カバー29をモータ部2側からみた側面図である。
図3から
図5に示すように、カバー29は、仮想平面PVに沿い、かつケース本体28の開口の形状に対応するように形成された板状のカバー本体33を有している。具体的には、カバー本体33は、給電部本体27及び給電端子25を覆うように配置された給電側平坦部36と、外部接続端子21を覆うように配置され、かつ給電側平坦部36よりもケース本体28側(下側)に配置された外部電源側平坦部37と、給電側平坦部36と外部電源側平坦部37とに跨るように傾斜している傾斜部38と、が一体成形されたものである。
【0044】
また、カバー本体33の外周部には、ケース本体28のボルト座32に対応する位置に、ボルト座34が形成されている。ボルト座34は、ケース本体28の厚さ方向(ワイパモータ1の上下方向)からみて外側が開口するように略C字状に形成されている。このようなボルト座34に、ボルト35が挿通される。
【0045】
カバー本体33におけるケース本体28側の裏面には、複数の支持柱49が突設されている。支持柱49は、コントローラ基板19を支持するものである。支持柱49のケース本体28側の端面にコントローラ基板19が載置されるようにして、カバー本体33にコントローラ基板19が固定される。
カバー本体33の給電側平坦部36には、内面のモータ部2寄りに、給電部本体27が支持されている。
【0046】
カバー本体33の外部電源側平坦部37には、モータ部2側の側縁でかつ上面37a側に、略筒状のコネクタ部39が一体成形されている。コネクタ部39は、開口方向がモータ軸線C1に沿うように形成されている。コネクタ部39は、モータ軸線C1の方向からみて仮想平面VPの面方向に長い略長円形状である。コネクタ部39に図示しない外部電源から延びるコネクタが接続される。このようなコネクタ部39内に、外部接続端子21の先端21aが臨まされている。
【0047】
ここで、外部電源側平坦部37は、給電側平坦部36よりもケース本体28側(下側)に配置されているうえ、外部電源側平坦部37の上面37aにコネクタ部39が一体成形されている。一方、給電側平坦部36の内面に給電部本体27が支持されている。このため、コネクタ部39と給電部20の給電部本体27は、一方向(仮想平面PVの面方向)に並んで配置されている。以下、これらコネクタ部39と給電部20の給電部本体27との並び方向をX方向(請求項の第一方向の一例)と称する。X方向は、仮想平面VPの面方向にも沿っており、本実施形態では水平方向にも沿っている。
【0048】
<圧力補正部>
傾斜部38の上面38aには、モータ部2寄りに圧力補正部40が設けられている。圧力補正部40は、ギアケース4(カバー29)の内部と外部との温度差やこの温度差に起因する圧力差を抑制するためのものである。圧力補正部40は、傾斜部38の上面38aに一体成形された略直方体のブロック状の補正部本体41を有している。補正部本体41は、X方向で対向する2つの側面41a,41bと、モータ軸線C1の方向で対向する前面41c及び後面41dと、2つの側面41a,41bのうちのコネクタ部39側の側面41bと前面41c及び後面41dのうちモータ部2とは反対側の後面41dとの間に形成された切欠き面41eと、傾斜部38とカバー29の厚さ方向(上下方向)で対向する上面41fと、を有する。
【0049】
補正部本体41は、傾斜部38のX方向の幅全体に渡って形成されている。2つの側面41a,41b、前面41c、後面41d、及び切欠き面41eは、給電側平坦部36の上面36a、外部電源側平坦部37の上面37aと直交している。また、前面41c、後面41dは、傾斜部38の上面38aとも直交している。2つの側面41a,41bの法線方向はほぼ一致している。また、前面41cの法線方向、及び後面41dの法線方向もほぼ一致している。
【0050】
補正部本体41の上面41fは、給電側平坦部36側に位置し、給電側平坦部36の上面aと略平行な第1上面41gと、第1上面41gのコネクタ部39側の側縁から傾斜部38の上面38aと略平行にコネクタ部39に至る間に延びる第2上面41hと、を有する。2つの側面41a,41bのうちのコネクタ部39とは反対側の側面41a、第1上面41g及び第2上面41hのほぼ全体は、カバー本体33の給電側平坦部36の上面36aよりも上方に突出されている。
【0051】
このように圧力補正部40(補正部本体41)は、傾斜部38の上面38aに配置されている。傾斜部38は、給電側平坦部36と外部電源側平坦部37との間に配置されている。つまり、圧力補正部40は、給電部20とコネクタ部39との間に配置されている。給電部20、圧力補正部40、及びコネクタ部39は、この順でX方向に並んで配置されている。また、給電部20、圧力補正部40、及びコネクタ部39は、X方向と直交する出力軸線C2の方向からみて重ならないように配置されている。
【0052】
補正部本体41は、モータ部2側の前面41cが傾斜部38のモータ部2側の側縁からモータ部2とは反対側に若干離間するように配置されている。このため、補正部本体41のモータ部2側には、傾斜部38の一部がモータ部2側に向かって突出された段差部42が形成された形になる。段差部42の上面42aは、コネクタ部39側に向けて下り勾配である。段差部42の上面42aは、コネクタ部39側がこのコネクタ部39の外周面と連結されている。一方、段差部42における上面42aのコネクタ部39とは反対側の端部は、給電側平坦部36の上面36aと滑らかに連結されている。換言すれば、段差部42は、コネクタ部39とは反対側の端部が開口されている。
【0053】
図6は、
図5のA-A線に沿う断面図である。
図4から
図6に示すように、補正部本体41の前面41cには、膜配置凹部43が形成されている。膜配置凹部43は、モータ軸線C1の方向からみて補正部本体41の第2上面42hに沿うように斜めに細長い略長方形状に形成されている。膜配置凹部43の底面43aは、補正部本体41の前面41cと略平行である。膜配置凹部43の底面43aには、膜配置凹部43の内側面43bよりもやや内側に、この内側面43bに沿うよう形成された枠体44がモータ部2側に向かって突設されている。
【0054】
枠体44は、モータ部2側(先端側)に向かうに従って先細りとなるように断面形状が台形形状である。枠体44の先端には、多孔質膜45が固定されている。多孔質膜45は、空気を通し、かつ水を通しにくい素材でシート状である。多孔質膜45は、膜配置凹部43の形状に対応するように、略長方形状に形成されている。多孔質膜45によって、膜配置凹部43の開口が閉塞されている。枠体44への多孔質膜45の固定方法としては例えば熱溶着が挙げられる。この他、接着剤等を用いて枠体44に多孔質膜45を固定してもよい。
【0055】
膜配置凹部43の底面43aのうち、枠体44よりも内側で、かつ膜配置凹部43の長手方向略中央を中心にしてコネクタ部39とは反対側の半分には、呼吸孔(請求項の呼吸部の一例)46が形成されている。換言すれば、膜配置凹部43の底面43aのうち、長手方向略中央を中心にして上側の半分に、呼吸孔46が形成されている。呼吸孔46の上側の一部は、カバー本体33の給電側平坦部36の上面36aよりも上方に位置している。
呼吸孔46は、補正部本体41内を貫通し、圧力補正部40介してカバー29の内外を連通させている。呼吸孔46は膜配置凹部43の底面43aに形成されているので、補正部本体41の前面41cからみて呼吸孔46はモータ部2側向けて開口されている。換言すれば、呼吸孔46は、仮想平面PVの面方向に向けて開口されている。
【0056】
<ワイパモータの動作>
次に、ワイパモータ1の動作について説明する。
ワイパモータ1は、外部接続端子21を介して図示しない外部電源からコントローラ基板19に供給された電力が、給電端子25を介してモータ部2の各コイル11に選択的に供給される。すると、ステータ7に所定の鎖交磁束が形成され、この鎖交磁束とロータ8の図示しない永久磁石との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、ロータ8が継続的に回転する。
ロータ8が回転すると、回転軸12と一体に形成されているウォーム軸16が回転し、さらにウォーム軸16に噛み合いされているウォームホイール17が回転する。そして、ウォームホイール17と一体化された出力軸18が回転し、所望の電装品(例えばフロントワイパ)が駆動される。
【0057】
<圧力補正部への多孔質膜の取り付け方法>
次に、圧力補正部40への多孔質膜45の取り付け方法について説明する。
まず、多孔質膜45が取り付けられる側の補正部本体41の前面41cと対向する後面41dを、図示しない治具上にセットする。この状態で前面41cに形成されている膜配置凹部43内に多孔質膜45を配置し、図示しない治具によって多孔質膜45の上からこの多孔質膜45を枠体44に押し付ける。枠体44に多孔質膜45を例えば熱溶着させる場合、枠体44に多孔質膜45を押し付けた状態で多孔質膜45の枠体44に接触する箇所を加熱する。枠体44に多孔質膜45を例えば接着固定する場合、多孔質膜45の枠体44に接触する箇所に接着剤等を塗布した後に、枠体44に多孔質膜45を押し付ける。これらのようにして、圧力補正部40への多孔質膜45の取り付けが完了する。
【0058】
ここで、枠体44に多孔質膜45を押し付ける力は、補正部本体41の後面41dを載置する図示しない治具が受ける。このように、前面41cと後面41dとが対向され、前面41cの法線方向、及び後面41dの法線方向がほぼ一致している。このため、後面41dがセットされる図示しない治具によって、枠体44に多孔質膜45を押し付ける際の力を確実に受けることができる。
【0059】
<圧力補正部の作用>
次に、圧力補正部40の作用について説明する。
圧力補正部40には、呼吸孔46が形成されているので、この呼吸孔46を介してギアケース4の内部と外部との温度差やこの温度差に起因する圧力差が抑制される。また、呼吸孔46は、外側が多孔質膜45で覆われているので、空気を通しつつ呼吸孔46を介してギアケース4内に水が侵入してしまうことが防止される。
【0060】
なお、ギアケース4の内外での圧力差を抑制するための圧力補正部40の仕様は、規格によって決定される。この際、圧力補正部40が規格を満足するか否かは、多孔質膜45の取付面の大きさ、つまり、膜配置凹部43の開口面の大きさによって決定される。
多孔質膜45が取り付けられた圧力補正部40の気密試験等は、図示しない治具によって補正部本体41の2つの側面41a,41bを把持して行われる。2つの側面41a,41bは対向しており、かつ2つの側面41a,41bの法線方向はほぼ一致している。このため、図示しない治具によって補正部本体41を容易に把持できるとともに、把持した状態を容易に安定させることができる。
【0061】
ここで、圧力補正部40が被水された場合について説明する。
圧力補正部40は、補正部本体41からモータ部2側に向かって突出された段差部42を有している。この段差部42によって、補正部本体41とモータ収容部31との間に隙間S(
図3参照)が形成される。このため、補正部本体41とモータ収容部31との間に入り込んだ水がこの水の表面張力が作用して補正部本体41とモータ収容部31との間に留まってしまうことが防止される。ここで、段差部42のモータ軸線C1方向の幅Hは、補正部本体41とモータ収容部31との間に入り込んだ水が表面張力によって留まってしまうことを防止できる程度の幅である。
【0062】
次に、
図7に基づいて、段差部42に水が伝ってきた場合について説明する。
図7は、圧力補正部40の作用説明図であり、圧力補正部40をモータ部2側からみた平面図である。
図7に示すように、段差部42の上面42aは、コネクタ部39側に向けて下り勾配である。つまり、段差部42の上面42aは水勾配を有しており、段差部42に入り込んだ水は、コネクタ部39側へと流れる。段差部42の上面42aは、コネクタ部39側がこのコネクタ部39の外周面と連結されているので、段差部42の上面42aには、コネクタ部39側に水が溜まる可能性がある(例えば
図7に示す水W参照)。ここで、呼吸孔46は、膜配置凹部43の底面43aのうち、長手方向略中央を中心にして上側の半分に、呼吸孔46が形成されている。このため、段差部42の上面42aに溜まった水が呼吸孔46を覆ってしまうことや、水が呼吸孔に侵入してしまうことが防止される。
【0063】
なお、給電側平坦部36の上面36aと段差部42の上面42aとの角度θは、約30°程度が好ましい。このような角度とすることにより、膜配置凹部43の底面43aのうち、長手方向略中央を中心にして上側の半分に呼吸孔46を形成しておけば、水が呼吸孔46を覆ってしまうことや、水が呼吸孔から侵入してしまうことを可能な限り防止できる。
【0064】
また、呼吸孔46の上側の一部は、カバー本体33の給電側平坦部36の上面36aよりも上方に位置している。このため、補正部本体41、コネクタ部39、及びモータ収容部31によって袋小路となった段差部42上の上面42a上に水Wが溜まった場合であっても、水面から呼吸孔46の一部が突出するので、呼吸孔46が完全に水没してしまうことがない。
【0065】
ところで、本実施形態では、出力軸線C2が上下方向(鉛直方向)に沿うように、かつモータ軸線C1が水平方向に沿うように、図示しない車体にワイパモータ1が取り付けられる。ギアケース4は、ケース本体28が下側に位置するように配置され、ケース本体28の開口が上側を向くように配置されている。呼吸孔46は、仮想平面PVの面方向に向けて開口されている。このため、上方に向かって出力軸18が突出されるようにワイパモータ1を配置した場合であっても、呼吸孔46の開口方向が変わらない。つまり、出力軸18の突出向きを変更した場合であっても呼吸孔46の開口方向が上を向いたり下を向いたりすることがないので、水が呼吸孔46を覆ってしまうことや、呼吸孔46を介してギアケース4内に水が侵入してしまうことを確実に抑制できる。なお、ワイパモータ1は、レイアウトの都合によりモータ軸線C1が鉛直方向に沿うような場合が殆どない。
【0066】
このように、上述の実施形態では、ギアケース4のカバー29に、呼吸孔46の開口方向が仮想平面PVの面方向となるように設けられている。より具体的には、呼吸孔46の開口方向をモータ軸線C1に沿う方向とすることにより、図示しない車体にワイパモータ1を取り付ける場合に、呼吸孔46の開口方向を常に水平方向にすることができる。このため、ワイパモータ1の取り付け向きによってギアケース4を変更する必要がなくなり、ギアケース4の汎用性を高めることができる。この結果、ワイパモータ1の製造コストを低減できる。
【0067】
また、呼吸孔46をモータ部2側に向けて開口することにより、給電部本体27やコネクタ部39の熱を、呼吸孔46を介して速やかにギアケース4の外側に排出することができる。このため、放熱性の優れたワイパモータ1を提供できる。ここで、一般にワイパモータ1を車内に配置する際には、厚みのあるモータ部を下側に配置することがレイアウト上好まれる。よって、呼吸孔46をモータ部2側に開口させることで、呼吸孔46が下向きに配置されるため、水が呼吸孔46上に留まることを抑制できる。
圧力補正部40の補正部本体41には、膜配置凹部43に枠体44を突設させ、この枠体44に多孔質膜45を取り付けるようにしている。このため、多孔質膜45を補正部本体41に押し付ける際の接圧を容易かつ十分に確保することができる。よって、補正部本体41に多孔質膜45を接着固定しやすくなり、多孔質膜45の取り付け作業性を向上できる。
【0068】
圧力補正部40は、モータ軸線C1の方向からみて給電部20(給電部本体27)とコネクタ部39との間に配置されている。また、圧力補正部40は、出力軸線C2の方向からみて給電部20(給電部本体27)とコネクタ部39との間に配置されている。換言すれば、給電部20、圧力補正部40、及びコネクタ部39は、この順でX方向に並んで配置されている。また、給電部20、圧力補正部40、及びコネクタ部39は、X方向と直交する出力軸線C2の方向からみて重ならないように配置されている。このため、カバー29の厚さ方向の寸法T(
図5参照)をできる限り小さくすることができる。よって、ワイパモータ1をできる限り薄型化できる。
【0069】
給電部20の給電部本体27には、給電端子25が取り付けられている。給電端子25を介してコントローラ基板19とステータ7のコイル11とが接続されている。このため、給電端子25を介す分、モータ部2とコントローラ部5とのレイアウトの自由度を高めることができる。また、ブラシレスモータは、ブラシ付のモータよりも給電端子25の数が多い場合があるが、給電部20、圧力補正部40、及びコネクタ部39をX方向に並べて配置することで、ワイパモータ1をできる限り薄型化できる。
【0070】
圧力補正部40の補正部本体41は、傾斜部38の上面38aに一体成形されている。補正部本体41の2つの側面41a,41bのうちのコネクタ部39とは反対側の側面41a、第1上面41g及び第2上面41hのほぼ全体は、カバー本体33の給電側平坦部36の上面36aよりも上方に突出されている。補正部本体41の前面41cに形成された膜配置凹部43は第2上面42hに沿うように斜めに細長い略長方形状に形成されている。そして、呼吸孔46の上側の一部は、カバー本体33の給電側平坦部36の上面36aよりも上方に位置している。このため、補正部本体41、コネクタ部39、及びモータ収容部31によって袋小路となった段差部42上の上面42a上に水Wが溜まった場合であっても、水面から呼吸孔46の一部が突出するので、呼吸孔46が完全に水に塞がれてしまうことがない。よって、呼吸孔46の呼吸機能を維持することができ、また、ワイパモータ1が被水することによる損傷をできる限り抑制できる。
【0071】
圧力補正部40は、補正部本体41からモータ部2側に向かって突出された段差部42を有している。この段差部42によって、補正部本体41とモータ収容部31との間に隙間S(
図3参照)が形成される。このため、補正部本体41とモータ収容部31との間に入り込んだ水がこの水の表面張力が作用して補正部本体41とモータ収容部31との間に留まってしまうことを防止できる。
【0072】
段差部42の上面42aは、コネクタ部39側に向けて下り勾配である。つまり、段差部42の上面42aは水勾配を有している。このため、段差部42に入り込んだ水を積極的に任意の方向へと排出することができる。ここで、給電部20はコイル11の近く、つまりモータ部2の径方向端部に配置するのが好ましい。ゆえに、給電部20よりもコネクタ部39を上に配置するとワイパモータ1が大きくなる。よって、給電部20よりコネクタ部39を下方に配置し、段差部42をコネクタ部39側に下り勾配とすることで、ワイパモータ1を小型化することができる。具体的には、段差部42の上面42aのうち、コネクタ部39側に積極的に水を導く一方、膜配置凹部43のうちコネクタ部39とは反対側(段差部42の下り勾配とは反対側)の上方に呼吸孔46を形成している。よって、段差部42に入り込んだ水が呼吸孔46を覆ってしまうことや、水が呼吸孔46から侵入してしまうことを確実に抑制できる。
【0073】
段差部42における上面42aのコネクタ部39とは反対側の端部は、給電側平坦部36の上面aと滑らかに連結されている。つまり、段差部42は、コネクタ部39とは反対側の端部が開口されている。このため、段差部42に入り込んだ水をコネクタ部39とは反対側に排出することも可能である。すなわち、段差部42のコネクタ部39とは反対側の端部を開口させることにより、補正部本体41の前面41c側に水が留まってしまうことを極力防止できる。
【0074】
[変形例]
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上記実施形態において、モータ部2は、いわゆるブラシレスモータである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、モータ部2にブラシ付きモータを適用することも可能である。
【0075】
上述の実施形態では、減速機付きモータの一例として、ワイパ駆動用のワイパモータ1を示した。しかしながら、これに限られるものではなく、他の各種電装部品を駆動する用途として用いても構わない。
【0076】
上述の実施形態では、ギアケース4は、ケース本体28が下側に位置するように配置され、ケース本体28の開口が上側を向くように配置されている場合について説明した。そして、ワイパモータ1は、ウォームホイール17から下方に向かって出力軸18が突出されているものとする場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ケース本体28が上側に位置するように配置され、ケース本体28の開口が下側を向くように配置されてもよい。そして、ウォームホイール17から上方に向かって出力軸18が突出されるように、ワイパモータ1が配置されてもよい。
【0077】
上述の実施形態では、圧力補正部40の補正部本体41は、略直方体のブロック状である場合について説明した。また、補正部本体41の前面41cに形成された膜配置凹部43は、モータ軸線C1の方向からみて補正部本体41の第2上面42hに沿うように斜めに細長い略長方形状に形成されている場合について説明した。しかしながら、以下で説明するように、補正部本体41を略三角柱状に形成してもよい。
【0078】
図8は、変形例における圧力補正部40の補正部本体141をモータ部2側からみた側面図である。なお、上述の実施形態と同一態様には同一符号を付して説明を省略する。また、上述の実施形態と同様の構成には、同一名称を用いて説明を省略する。
図8に示すように、補正部本体41は、モータ軸線C1の方向で対向する前面141a及び後面(後面は
図8では図示しない)と、カバー本体33の給電側平坦部36の上面36aと連なり、この上面36aと同一平面上の上面141bと、上面141bのコネクタ部39側の端部に連結され上下方向に面する側面141cと、を有する。
【0079】
補正部本体141の前面141aには、膜配置凹部143が形成されている。膜配置凹部143は、モータ軸線C1の方向からみて前面141aの形状に対応するように、略三角形状に形成されている。膜配置凹部143の底面143aには、膜配置凹部143の内側面143bよりもやや内側に、この内側面143bに沿うよう形成された枠体144がモータ部2側に向かって突設されている。
【0080】
枠体144の先端に、多孔質膜145が固定されている。多孔質膜145は、膜配置凹部143の形状に対応するように、略三角形状に形成されている。多孔質膜45によって、膜配置凹部143の開口が閉塞されている。膜配置凹部143の底面143aのうち、枠体144よりも内側には、膜配置凹部143のコネクタ部39寄りでかつ上面141b寄りに、呼吸孔(請求項の呼吸部の一例)146が形成されている。呼吸孔146は、モータ軸線C1の方向からみて円形状である。
【0081】
上述の
図8で示す変形例によれば、前述の実施形態と同様の効果を奏する。また、膜配置凹部143及び多孔質膜145を略三角形状とすることにより、できる限り多孔質膜145の面積を大きくすることができる。この分、圧力補正部40としての規格を満足しやすくできる。
【0082】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…ワイパモータ(減速機付きモータ)、2…モータ部、3…減速部、4…ギアケース、7…ステータ、11…コイル、12…回転軸、15…減速機構、18…出力軸、19…コントローラ基板(制御基板)、20…給電部、25…給電端子(端子)、27…給電部本体(給電部)、28…ケース本体(ケース部)、29…カバー、31…モータ収容部、38…傾斜部、39…コネクタ部、40…圧力補正部、42…段差部、44,144…枠体、45,145…多孔質膜、46,146…呼吸孔(呼吸部)、C1…モータ軸線(回転軸の軸方向)、C2…出力軸線(第二方向)、S…隙間、VP…仮想平面