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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】電動車両駆動システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/02 20060101AFI20230831BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20230831BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20230831BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20230831BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20230831BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20230831BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B60K1/02
B60L9/18 P
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/12
B60K1/04 Z
H02J7/00 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019213409
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021084480
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】塚本 準
(72)【発明者】
【氏名】尾形 永
(72)【発明者】
【氏名】内山 英和
(72)【発明者】
【氏名】木村 正勝
(72)【発明者】
【氏名】須藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】仁田原 知明
(72)【発明者】
【氏名】湯澤 成彰
(72)【発明者】
【氏名】小柴 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】石坂 和也
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-124346(JP,A)
【文献】特開2012-005245(JP,A)
【文献】特開2002-262404(JP,A)
【文献】特開2014-240205(JP,A)
【文献】特開2006-058184(JP,A)
【文献】特開2017-022896(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0307086(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/02
B60L 9/18
B60L 50/60
B60L 53/14
B60L 58/12
B60K 1/04
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に並ぶ一組の車輪を複数組み有する車両の各前記車輪に個別に設けられた駆動ユニットと、
前記駆動ユニットに電力を供給する蓄電池と、
前記駆動ユニットの駆動制御を行う制御部と、
を備え、
前記駆動ユニットは、
電動モータと、
前記電動モータによる回転力を、車軸を介して前記車輪に伝達する伝達機構と、
を備え、
前記電動モータのモータ軸は前記車軸とずれた位置に配置されており、
前記一組の車輪に設けられた各前記駆動ユニットの各前記伝達機構は、前記車両の前記車幅方向の中央寄りに配置されており、
前記伝達機構を挟んで前記車幅方向の両側に前記電動モータが配置されている
ことを特徴とする電動車両駆動システム。
【請求項2】
前記駆動ユニットごとに前記蓄電池を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両駆動システム。
【請求項3】
前記駆動ユニットごとに前記制御部を備えている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動車両駆動システム。
【請求項4】
前記電動モータと前記制御部とが並んで配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電動車両駆動システム。
【請求項5】
前記電動モータは、スイッチトリラクタンスモータであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電動車両駆動システム。
【請求項6】
前記蓄電池の最高直流電圧値が60V未満である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電動車両駆動システム。
【請求項7】
前記蓄電池の残容量及び前記残容量から導き出される前記車両の残走行距離の少なくともいずれか一方を表示する表示器を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電動車両駆動システム。
【請求項8】
前記蓄電池と各前記制御部との接続、遮断を選択的に行うか纏めて行うかの少なくともいずれか一方を行う第1操作部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電動車両駆動システム。
【請求項9】
各前記駆動ユニットを個別に駆動するための第2操作部を備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電動車両駆動システム。
【請求項10】
各前記駆動ユニットの運転モードを切り替える第3操作部を備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の電動車両駆動システム。
【請求項11】
前記蓄電池に外部電力を給電するための給電部と、
前記給電部と前記蓄電池との接続、遮断を行うスイッチ回路を備えることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の電動車両駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動モータのみを走行用の動力源とした電動車両駆動システムが搭載された電動車両が知られている。この種の電動車両駆動システムの中には、電動モータ、この電動モータに電力を供給する蓄電池(バッテリ)、及び電動モータの駆動制御を行う制御部を1つの筐体に収容したものがある。電動車両の車軸に直接電動モータが連結されており、電動モータの回転がそのまま車輪の回転になる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、電動車両駆動システムの中には、電動車両の駆動輪を前輪又は後輪のいずれか一方とし、従動輪を前輪又は後輪のいずれか他方としているものがある。また、電動モータとして、スイッチトリラクタンスモータを採用したものがある。従動輪のホイール内には、減速機、スイッチトリラクタンスモータ等が収容されている。制御部(4WDコントロール・ユニット)は、車両の発進から所定の速度の範囲で、スイッチトリラクタンスモータを駆動する。一方、所定の速度以上ではスイッチトリラクタンスモータの駆動を停止し、従動輪を従動状態にしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-5245号公報
【文献】特開2004-328991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1にあっては、蓄電池まで筐体に収容しているので、車両内での電動モータ、蓄電池、及び制御部のレイアウトの自由度が低下してしまう可能性があった。
また、エンジンを走行用の動力源とする車両(以下、エンジン駆動の車両という)に1つの筐体を搭載させるのが困難で、エンジン駆動の車両を電動車両に変更することが困難であるという課題があった。
さらに、筐体内の1つの部品に不具合が発覚した場合でも筐体ごと全て交換しなければならず、メンテナンス性が悪いという課題があった。
【0006】
上述の特許文献2にあっては、従動輪のホイール内に減速機、スイッチトリラクタンスモータ等を収容しているので、これら減速機、スイッチトリラクタンスモータ等を車両の別の場所に収容することが困難である。このため、減速機、スイッチトリラクタンスモータ等のレイアウトの自由度が低いという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、車両内でのレイアウトの自由度を高めることができるとともに、メンテナンス性も向上できる電動車両駆動システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る電動車両駆動システムは、車幅方向に並ぶ一組の車輪を複数組み有する車両の各前記車輪に個別に設けられた駆動ユニットと、前記駆動ユニットに電力を供給する蓄電池と、前記駆動ユニットの駆動制御を行う制御部と、を備え、前記駆動ユニットは、電動モータと、前記電動モータによる回転力を、車軸を介して前記車輪に伝達する伝達機構と、を備え、前記電動モータのモータ軸は前記車軸とずれた位置に配置されており、前記一組の車輪に設けられた各前記駆動ユニットの各前記伝達機構は、前記車両の前記車幅方向の中央寄りに配置されており、前記伝達機構を挟んで前記車幅方向の両側に前記電動モータが配置されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成において、前記駆動ユニットごとに前記蓄電池を備えてもよい。
【0010】
上記構成において、前記駆動ユニットごとに前記制御部を備えてもよい。
【0011】
上記構成において、前記電動モータと前記制御部とが並んで配置されてもよい。
【0012】
上記構成において、前記電動モータは、スイッチトリラクタンスモータでもよい。
【0013】
上記構成において、前記蓄電池の最高直流電圧値が60V未満でもよい。
【0014】
上記構成において、前記蓄電池の残容量及び前記残容量から導き出される前記車両の残走行距離の少なくともいずれか一方を表示する表示器を備えてもよい。
【0015】
上記構成において、前記蓄電池と各前記制御部との接続、遮断を選択的に行うか纏めて行うかの少なくともいずれか一方を行う第1操作部を備えてもよい。
【0016】
上記構成において、各前記駆動ユニットを個別に駆動するための第2操作部を備えてもよい。
【0017】
上記構成において、各前記駆動ユニットの運転モードを切り替える第3操作部を備えてもよい。
【0018】
上記構成において、前記蓄電池に外部電力を給電するための給電部と、前記給電部と前記蓄電池との接続、遮断を行うスイッチ回路を備えてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電動車両駆動システムによれば、車両内でのレイアウトの自由度を高めることができるとともに、メンテナンス性も向上でき、さらにエンジン駆動の車両を容易に電動駆動に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態における電動車両の模式図。
図2】本発明の実施形態における前輪側の電動車両駆動システムの配置構造を車体の車幅方向側面からみた説明図。
図3】本発明の実施形態における前輪側の電動車両駆動システムの配置構造を車体の前方からみた説明図。
図4】本発明の実施形態における後輪側の電動車両駆動システムを車幅方向側面からみた説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
<電動車両>
図1は、電動車両1の模式図である。以下の説明では、電動車両1の進行方向に対して前方、後方を単に前方、後方と称する。進行方向に直交する電動車両1の車幅方向を単に車幅方向と称する。また、電動車両1を路面F(図2参照)上を走行可能な状態に配置した状態での上下方向を単に上下方向と称する。
図1に示すように、電動車両1は、車体2と、車体2の前方で、かつ車幅方向両側に配置された一組の前輪3a,3bと、車体3の後方で、かつ車幅方向両側に配置された一組の後輪4a,4bと、車体2内に設けられ、前輪3a,3b、及び後輪4a,4bをそれぞれ独立駆動させる電動車両駆動システム5と、を備えている。
【0023】
前輪3a,3b及び後輪4a,4bは、ホイールにタイヤ(いずれも図示しない)を装着したものである。各ホイールに、車軸6が連結されている。また、前輪3a,3bのホイールには、ステアリング7が連結されている。車軸6には、電動車両駆動システム5が連結されている。
【0024】
<電動車両駆動システム>
電動車両駆動システム5は、各車輪3a~4bに個別に設けられた4つの駆動ユニット8a,8b,9a,9b(前輪用駆動ユニット8a,8b、後輪用駆動ユニット9a,9b)と、各駆動ユニット8a~9bに電力を供給する蓄電池12と、各駆動ユニット8a~9bの駆動制御を行う制御部13と、各駆動ユニット8a~9bに接続されたスイッチ回路ユニット10と、各駆動ユニット8a~9b及びスイッチ回路ユニット10の操作を行う操作部11と、車体2の図示しないインストルメントパネル等に設けられた表示器18と、を備えている。蓄電池12及び制御部13は、駆動ユニット8a~9bごとに設けられている。
【0025】
各駆動ユニット8a~9bの基本的構成は、同一である。すなわち、各駆動ユニット8a~9bは、電動モータ14と、電動モータ14による回転力を車軸に伝達する伝達ギア(請求項における伝達機構の一例)15と、を備えている。
【0026】
電動モータ14は、いわゆるスイッチトリラクタンスモータである。スイッチトリラクタンスモータは、ロータとステータとの両方に突極を設けたモータである。スイッチトリラクタンスモータは、ステータに設けられている複数のステータ突極にそれぞれ巻線が巻回されており、この巻線に電流を供給することによりステータ突極を励磁する。そして、ステータ突極に生じた磁気的吸引力によって、ロータに設けられている複数のロータ突極を吸引して回転力を発生させる。
【0027】
伝達ギア15は、例えば互いに噛み合わされる2つの平歯車16a,16bにより構成されている(図2参照)。2つの平歯車16a,16bのうちの一方の平歯車16aは、電動モータ14の図示しないモータ軸に連結されている。2つの平歯車16a,16bのうちの他方の平歯車16bは、車軸6に連結されている。すなわち、電動モータ14は、モータ軸が車軸6と同軸上に配置されておらず、車軸6とずれた位置に配置されている。
このように構成された各駆動ユニット8a~9bは、車幅方向中央寄りに伝達ギア15が配置されている。各駆動ユニット8a~9bの電動モータ14は、伝達ギア15を挟んで車幅方向両側に配置される。
【0028】
蓄電池12としては、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛電池等の電池が挙げられる。蓄電池12の最高直流電圧値は60V未満の安全電圧である。
【0029】
制御部13は、蓄電池12からの電流を所定の通電パターンで、電動モータ14の所定の巻線に選択的に供給する。制御部13は、例えば3相ブリッジ回路を有している。3相ブリッジ回路は、直列に接続された2つの図示しないスイッチング素子からなる回路を高電位側と接地電位との間に並列に接続して構成される。各スイッチング素子は、例えばFET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)、又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)である。
【0030】
なお、通電パターンとは、スイッチング素子をオン状態又はオフ状態にするスイッチングパターンであって、継続的にオンされた状態(「ON」)若しくは継続的にオフ「OFF」された状態(「ON」又は「PWM(Pulse Width Modulation)」以外の期間)又は一定の周期でオンまたはオフに制御された状態(PWM制御された状態)(「PWM」)のいずれかの組み合わせである。
このような制御部13と蓄電池12とは、スイッチ17を介して接続されている。スイッチ17は、制御部13と蓄電池12とを接続、遮断する。
【0031】
スイッチ回路ユニット10は、図示しない外部電源と接続可能な給電部19と、給電部19と各蓄電池12とを個別に接続、遮断するスイッチ回路21と、を備えている。スイッチ回路21は、蓄電池12の個数に応じて4つのスイッチ22により構成されている。
【0032】
操作部11は、スイッチ17の操作を行う第1操作部23と、各駆動ユニット8a~9bを個別に駆動するための第2操作部24と、各駆動ユニット8a~9bの運転モードを切り替える第3操作部25と、スイッチ回路21を操作する第4操作部26と、を備えている。
【0033】
第1操作部23を操作することによって各スイッチ17が操作され、制御部13と蓄電池12との接続、遮断が行われる。第1操作部23は、駆動ユニット8a~9bごとのスイッチ17を個別に操作することも可能である。また、第1操作部23は、各駆動ユニット8a~9bのスイッチ17を纏めて操作することも可能である。
【0034】
例えば、各駆動ユニット8a~9bの全てのスイッチ17を接続することにより、全ての駆動ユニット8a~9bを駆動させることができる。この場合、電動車両1は4輪駆動になる。また、前輪用駆動ユニット8a,8b、又は後輪用駆動ユニット9a,9bのいずれか一方のスイッチ17を接続するとともに、他方のスイッチ17を遮断することにより、前輪用駆動ユニット8a,8b、又は後輪用駆動ユニット9a,9bのいずれかのみ駆動させることができる。この場合、電動車両1は2輪駆動になる。
【0035】
この他、各駆動ユニット8a,9bのうちの左右いずれかの駆動ユニット8a~9bのスイッチ17のみを接続したり、各駆動ユニット8a,9bのうちのいずれか1つのみスイッチ17を接続したりすることも可能である。このようにいずれか1つのみスイッチ17を接続することにより、電動車両1の走行時における右旋回や左旋回をスムーズに行うことが可能になる。
【0036】
第2操作部24は、第1操作部23によってスイッチ17が接続されている駆動ユニット8a~9bに対し、駆動制御を行う。具体的には、各駆動ユニット8a~9bを構成する電動モータ14における図示しないモータ軸の回転数の制御を行う。なお、第2操作部24の操作に対し、第1操作部23の操作を連動させてもよい。つまり、第2操作部24の操作に基づいて第1操作部23が操作され、これによりスイッチ17の接続、遮断を行ってもよい。
【0037】
第3操作部25による各駆動ユニット8a~9bの運転モードとしては、例えばスポーツモード、エコモード、チャージモード等が挙げられる。第3操作部25によって例えばスポーツモードを選択した場合、対応する駆動ユニット8a~9bの電動モータ14に対して進角通電を行ったり、通電幅(PWM制御におけるパルス幅)を大きくしたりする。第3操作部25によってエコモードを選択した場合、対応する駆動ユニット8a~9bの電動モータ14に対して通電幅を小さくする等が行われる。第3操作部25によってチャージモードを選択した場合、対応する駆動ユニット8a~9bの電動モータ14に対し回生動作を行ったり、回生動作の時間を長くしたりする。
【0038】
第4操作部26は、給電部19に図示しない外部コネクタを接続し、各蓄電池12に充電を行う場合に用いられる。第4操作部26は、スイッチ回路21の各スイッチ22を個別に又は纏めて操作することが可能である。全スイッチ22を一度に接続、遮断を行うことにより蓄電池12ごとにスイッチ22を操作する必要がない。このため、給電部19に図示しない外部コネクタを接続した際、各蓄電池12に纏めて充電を行うことができる。また、例えば4つの蓄電池12のうち、残容量の少ない蓄電池12に対応するスイッチ22のみを接続することにより、所望の蓄電池12のみに充電を行うことができる。蓄電池12の残容量は表示器18に表示される。
【0039】
表示器18は、蓄電池12の残容量の表示の他、この残容量から導き出される電動車両1の残走行距離を表示することが可能である。しかしながら、これに限られるものではなく、表示器18に警告等を表示することも可能である。警告とは、例えば各駆動ユニット8a~9bにおける電動モータ14の異常や各部の接続不良等である。また、4つの駆動ユニット8a~9bの負荷状況を表示させることも可能である。
【0040】
表示器18に警告や負荷状況を表示させる場合、各駆動ユニット8a~9bにセンサ等を設け、このセンサからの出力信号に基づく結果を表示器18に表示する。ここで、表示器18に各駆動ユニット8a~9bの負荷状況を表示させる場合、各蓄電池12同士を連結した構成とすることが望ましい。このように構成することで、操作部11は、4つの駆動ユニット8a~9bの負荷状況に応じ、負荷の大きい駆動ユニット8a~9bに優先的に電力を供給する。
【0041】
<電動車両駆動システムの各部の配置構造>
次に、図2から図4に基づいて、電動車両駆動システム5の各部の配置構造について説明する。
図2は、前輪3a,3b側の電動車両駆動システム5の配置構造の説明図であり、車体2の車幅方向側面からみた図である。図3は、前輪3a,3b側の電動車両駆動システム5の配置構造の説明図であり、車体2の前方からみた図である。図4は、後輪4a,4b側の電動車両駆動システム5の配置構造の説明図であり、車体2の車幅方向側面からみた図である。
【0042】
図1から図4に示すように、電動車両駆動システム5では、車幅方向中央寄りに伝達ギア15が配置され、伝達ギア15を挟んで車幅方向両側に電動モータ14が配置されている点は、全ての駆動ユニット8a~9bで同一である。これに対し、電動モータ14及び伝達ギア15の上下前後方向の配置構造や蓄電池12及び制御部13の配置構造は、前輪3a,3b側と後輪4a,4b側とで若干異なっている。
【0043】
図1から図3に示すように、前輪3a,3b側に配置されている前輪用駆動ユニット8a,8bでは、前輪3a,3bに対して若干後方に電動モータ14が配置されている。この電動モータ14の図示しないモータ軸と前輪3a,3bの各車軸6とを伝達ギア15を介して連結している。前輪3a,3b側に配置されている蓄電池12は、前輪3a,3bよりも前方に配置されている。前輪3a,3b側に配置されている制御部13は、電動モータ14の上方にこの電動モータ14と並んで配置されている。
【0044】
図1図4に示すように、後輪4a,4b側に配置されている後輪用駆動ユニット9a,9bでは、後輪4a,4bに対して上方に電動モータ14が配置されている。この電動モータ14の図示しないモータ軸と後輪4a,4bの各車軸6とを伝達ギア15を介して連結している。後輪4a,4b側に配置されている制御部13は、電動モータ14の前方にこの電動モータ14と並んで配置されている。後輪4a,4b側に配置されている蓄電池12は、制御部13よりも前方に配置されている。
【0045】
このような構成のもと、4つの駆動ユニット8a~9bをそれぞれ独立で駆動させて電動車両1を走行させる。4つの駆動ユニット8a~9bは、全てを駆動させて4輪駆動として走行させてもよい。また、4つの駆動ユニット8a~9bのいずれかを駆動させ、この駆動させた車輪3a~4bを駆動輪とし、その他の車輪3a~4bを従動輪としてもよい。例えば、前輪3a,3bを駆動輪とし、後輪4a,4bを従動輪としてもよいし、この逆でもよい。
また、例えば左右いずれか一方の車輪3a~4bを駆動輪とし、他方の車輪3a~4bを従動輪としてもよい。この場合でも直進走行や旋回走行が可能である。また、いずれか1つ又は3つ又は対角にある2つの車輪3a~4bを駆動輪としても走行が可能である。よって、いずれかの駆動ユニット8a~9bや蓄電池12、制御部13に機能失陥が生じた場合でもその他の車輪3a~4bを駆動輪として安全に走行することが可能な電動車両1を提供できる。
【0046】
各駆動ユニット8a~9bを構成する電動モータ14は、いわゆるスイッチトリラクタンスモータである。スイッチトリラクタンスモータは永久磁石等を有しないので、電動モータ14に通電していない状態ではコギングトルクが発生しない。このため、駆動ユニット8a~9bのいずれかの車輪3a~4bを従動輪とした場合であっても、この従動輪に余計な負荷がかかることがない。
【0047】
このように上述の電動車両駆動システム5は、各車輪3a~4bに個別に駆動ユニット8a~9bが設けられている。このため、電動車両駆動システム5の車体2内でのレイアウトの自由度を高めることができる。駆動ユニット8a~9bがそれぞれ別個に設けられているので、いずれかの駆動ユニット8a~9bに不具合が生じた場合、不具合の生じた駆動ユニット8a~9bのみのメンテナンスを行うことが可能である。このため、メンテナンス性も向上できる。
【0048】
また、各駆動ユニット8a~9bは、車幅方向中央寄りに伝達ギア15が配置され、伝達ギア15を挟んで車幅方向両側に電動モータ14が配置されている。このため、車体2内に均等に各駆動ユニット8a~9bを配置できる。また、例えば、エンジン駆動の車両に電動車両駆動システム5を搭載する場合であっても、容易に組み付けできる。具体的には、エンジン駆動の車両の車軸を車幅方向中央で切断し、この切断した箇所に各駆動ユニット8a~9bを組み込むことも可能である。このため、エンジン駆動の車両から電動駆動の車両に容易に変更することができる。
【0049】
電動車両駆動システム5は、駆動ユニット8a~9bごとに蓄電池12や制御部13を備えている。このため、駆動ユニット8a~9bごとに蓄電池12や制御部13の配置場所を決めることができ、電動車両駆動システム5の車体2内でのレイアウトの自由度をさらに高めることができる。駆動ユニット8a~9b、蓄電池12、及び制御部13を1セットとし、1セットごとに電動車両1に組み込むこともできる。このため、電動車両1に組み込みやすい電動車両駆動システム5を提供できる。
【0050】
電動車両駆動システム5は、電動モータ14と制御部13とが並んで配置されている。このため、電動モータ14と制御部13との間の配線をできる限り短くすることができる。この分、電動車両駆動システム5の製造コストを低減できるとともに、電動車両駆動システム5へのノイズを低減できる。
【0051】
電動モータ14は、いわゆるスイッチトリラクタンスモータである。このため、電動モータ14に通電していない状態ではコギングトルクが発生せずに駆動ユニット8a~9bのいずれかの車輪3a~4bを従動輪とした場合であっても、この従動輪に余計な負荷がかかることがない。よって、例えば、電動モータ14と伝達ギア15との間や伝達ギア15と車軸6との間にクラッチを設け、電動モータ14への無通電時に電動モータ14と伝達ギア15との間の連結、伝達ギア15と車軸6との間の連結を切り離す必要がない。このため、電動車両駆動システム5の構成を簡素化できるとともに、電動車両駆動システム5を小型化できる。
【0052】
電動車両駆動システム5は、蓄電池12の最高直流電圧値は60V未満の安全電圧である。このため、高電圧で蓄電池を搭載した電動車両と比較して電気的安全性を向上させることができ、メンテナンス性も向上できる。
表示器18は、蓄電池12の残容量の表示、及びこの残容量から導き出される電動車両1の残走行距離を表示することが可能である。このため、ユーザーフレンドリーな電動車両1を提供できる。また、表示器18に各駆動ユニット8a~9bの負荷状況を表示させる場合、操作部11によって、4つの駆動ユニット8a~9bの負荷状況に応じ、負荷の大きい駆動ユニット8a~9bに優先的に電力を供給させることができる。
【0053】
電動車両駆動システム5は、蓄電池12と制御部13とを接続、遮断するスイッチ17の操作を行う第1操作部23を備えている。このため、必要に応じて蓄電池12と制御部13とを纏めて接続したり、個別に接続したりできる。また、電動車両1の不具合時に瞬時に蓄電池12と制御部13とを遮断できるので、安全性の高い電動車両1を提供できる。
電動車両駆動システム5は、各駆動ユニット8a~9bを個別に駆動するための第2操作部24を備えている。このため、路面状態や走行状態を考慮して、必要な駆動ユニット8a~9bを容易に駆動させることができる。よって、ユーザーフレンドリーな電動車両1を提供できる。
【0054】
電動車両駆動システム5は、各駆動ユニット8a~9bの運転モードを切り替える第3操作部25を備えている。このため、運転者の要望に応じて電動車両1の運転モードを切り替えることで、効率的に電動車両駆動システム5を駆動させることができる。また、路面状況や走行条件により各蓄電池12の残容量や残走行距離に応じて運転モードを切り替えることで、電動車両1の走行距離を増加できる。
【0055】
電動車両駆動システム5は、給電部19と各蓄電池12とを個別に接続、遮断するスイッチ回路21を備えている。また、このスイッチ回路21を操作する第4操作部26を備えている。このため、4つの蓄電池12を備えた電動車両駆動システム5であっても運転者が意識することなく各蓄電池12に満遍なく充電させることができる。
【0056】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、一組の前輪3a,3bと、一組の後輪4a,4bと、を備えた4輪車である電動車両1に、電動車両駆動システム5を搭載した場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、車幅方向に並ぶ一組の車輪を複数組み有するさまざまな車両に電動車両駆動システム5を搭載することができる。例えば、6輪車に電動車両駆動システム5を搭載する場合、駆動ユニット8a~9bを6つ設ければよい。
【0057】
上述の実施形態では、伝達ギア15は、例えば互いに噛み合わされる2つの平歯車16a,16bにより構成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、伝達ギア15は、電動モータ14の回転力を車輪3a~4b(車軸6)に伝達できる構成であればよい。例えば、伝達ギア15として、電動モータ14の図示しないモータ軸と車軸6とをベルトやチェーンで連結する構成としてもよい。
【0058】
上述の実施形態では、前輪3a,3b側に配置された電動モータ14及び伝達ギア15の上下前後方向の配置構造や蓄電池12及び制御部13の配置構造について説明した。また、後輪4a,4b側に配置された電動モータ14及び伝達ギア15の上下前後方向の配置構造や蓄電池12及び制御部13の配置構造について説明した。しかしながら、車幅方向中央寄りに伝達ギア15が配置され、伝達ギア15を挟んで車幅方向両側に電動モータ14が配置されていればよく、他の配置構造については任意に決めることができる。
【0059】
上述の実施形態では、駆動ユニット8a~9bごとに蓄電池12や制御部13を設けた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、蓄電池12や制御部13をそれぞれ1つの筐体に纏めてもよい。
上述の実施形態では、表示器18は、蓄電池12の残容量の表示、及びこの残容量から導き出される電動車両1の残走行距離を表示することが可能である場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、表示器18は、蓄電池12の残容量の表示、又はこの残容量から導き出される電動車両1の残走行距離の少なくともいずれか一方を表示できればよい。
【0060】
上述の実施形態では、第1操作部23は、必要に応じて蓄電池12と制御部13とを纏めて接続したり、個別に接続したりできる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、第1操作部23は、蓄電池12と制御部13との接続、遮断を選択的に行うか纏めて行うかの少なくともいずれか一方の操作ができればよい。
上述の実施形態では、電動モータ14は、いわゆるスイッチトリラクタンスモータである場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、通電により回転力を発生するさまざまな電動モータを採用することが可能である。
【0061】
上述の実施形態では、表示器18は、所望の情報(蓄電池12の残容量、電動車両1の残走行距離、各駆動ユニット8a~9bの負荷状況、警告等)を表示する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、表示器18は、音によって所望の情報を運転者に伝達するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…電動車両、2…車体(車両)、3a,3b…前輪(車輪)、4a,4b…後輪(車輪)、5…電動車両駆動システム、6…車軸、8a,8b…前輪用駆動ユニット(駆動ユニット)、9a,9b…後輪用駆動ユニット(駆動ユニット)、12…蓄電池、13…制御部、14…電動モータ、15…伝達ギア(伝達機構)、18…表示器、19…給電部、21…スイッチ回路、23…第1操作部、24…第2操作部、25…第3操作部
図1
図2
図3
図4