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特許7340434配筋検査システム、配筋検査方法、及び配筋検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】配筋検査システム、配筋検査方法、及び配筋検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/14 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
G01B11/14 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019216954
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085838
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】賀川 義昭
(72)【発明者】
【氏名】村田 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】竹之井 勇
(72)【発明者】
【氏名】水田 武利
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173276(JP,A)
【文献】特開2019-027855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の工事において鉄筋を検査する配筋検査システムであって、
前記鉄筋の距離画像を取得する第1の画像取得部と、
前記鉄筋の静止画像を取得する第2の画像取得部と、
前記距離画像及び前記静止画像を演算処理する制御部とを備え、
前記制御部は、
計測対象の鉄筋を選定し、
前記鉄筋を計測する基準となる計測線を設定し、
前記静止画像を用いて、前記計測線上で前記計測対象の鉄筋のエッジを抽出し、
前記距離画像から、前記抽出されたエッジの座標を決定し、
前記決定されたエッジの座標を用いて、前記鉄筋の間隔及び直径の少なくとも一つを計測し、
前記計測対象として選定された鉄筋を前記距離画像から選定し、
前記距離画像において、前記選定された鉄筋に対応する部分を細くした細線を生成し、
前記生成された細線の位置を、前記計測対象として選定された鉄筋の位置として決定することを特徴とする配筋検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の配筋検査システムであって、
前記制御部は、
ユーザによる指定を受け付けた3点を含む面を決定し、
前記決定された面から所定の範囲内に位置する鉄筋を計測対象の鉄筋として選定し、
前記決定された面内で前記計測線を設定することを特徴とする配筋検査システム。
【請求項3】
請求項1に記載の配筋検査システムであって、
前記制御部は、前記細線と前記計測線との交点の位置を、前記鉄筋の位置として決定することを特徴とする配筋検査システム。
【請求項4】
請求項3に記載の配筋検査システムであって、
前記制御部は、前記静止画像を2値化した2値化画像を生成し、
前記決定された鉄筋の位置を参照し、前記生成された2値化画像を用いて、前記計測線上の鉄筋のエッジを抽出することを特徴とする配筋検査システム。
【請求項5】
建造物の工事において鉄筋を検査するために、計算機が実行する配筋検査方法であって、
前記計算機は、前記鉄筋の距離画像を取得する第1の画像取得部と、前記鉄筋の静止画像を取得する第2の画像取得部と、前記距離画像及び前記静止画像を演算処理する制御部とを有し、
前記配筋検査方法は、
前記制御部が、計測対象の鉄筋を選定する手順と、
前記制御部が、前記鉄筋を計測する基準となる計測線を設定する手順と、
前記制御部が、前記静止画像を用いて、前記計測線上で前記計測対象の鉄筋のエッジを抽出する手順と、
前記制御部が、前記距離画像から、前記抽出されたエッジの座標を決定する手順と、
前記制御部が、前記決定されたエッジの座標を用いて、前記鉄筋の間隔及び直径の少なくとも一つを計測する手順と、
前記制御部が、前記計測対象として選定された鉄筋を前記距離画像から選定する手順と、
前記制御部が、前記距離画像において、前記選定された鉄筋に対応する部分を細くした細線を生成する手順と、
前記制御部が、前記生成された細線の位置を、前記計測対象として選定された鉄筋の位置として決定する手順とを実行することを特徴とする配筋検査方法。
【請求項6】
建造物の工事における鉄筋の検査を計算機に実行させる配筋検査プログラムであって、
前記計算機は、前記鉄筋の距離画像を取得する第1の画像取得部と、前記鉄筋の静止画像を取得する第2の画像取得部と、前記距離画像及び前記静止画像を演算処理する制御部とを有し、
前記配筋検査プログラムは、
計測対象の鉄筋を選定する手順と、
前記鉄筋を計測する基準となる計測線を設定する手順と、
前記静止画像を用いて、前記計測線上で前記計測対象の鉄筋のエッジを抽出する手順と、
前記距離画像から、前記抽出されたエッジの座標を決定する手順と、
前記決定されたエッジの座標を用いて、前記鉄筋の間隔及び直径の少なくとも一つを計測する手順と、
前記計測対象として選定された鉄筋を前記距離画像から選定する手順と、
前記距離画像において、前記選定された鉄筋に対応する部分を細くした細線を生成する手順と、
前記生成された細線の位置を、前記計測対象として選定された鉄筋の位置として決定する手順と前記制御部に実行させることを特徴とする配筋検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配筋検査システムに関し、建築工事の現場における鉄筋の検査に好適な配筋検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場の配筋工程においては、現場の作業員が、配筋された鉄筋の径、本数、ピッチを計測し、設計図面と比較確認する必要がある。この作業は手作業による作業が一般的でその工数は膨大であり、作業の省力化の取り組みが行われている。
【0003】
本技術分野の背景技術として、特開2010-122008(特許文献1)、特開2019-2737(特許文献2)がある。特許文献1には、異形鉄筋の径長を含む配筋情報を取得する配筋情報取得装置であって、撮影された前記異形鉄筋の画像データを取得する手段と、前記画像データにおける1ピクセルあたりの長さである1ピクセル長を特定する手段と、前記画像データにおける前記異形鉄筋の径長のピクセル数をカウントする手段と、前記径長のピクセル数と、前記1ピクセル長とを乗ずることによって、前記径長を算出する手段と、を備えることを特徴とする配筋情報取得装置が記載されている(請求項1参照)。特許文献1に記載された配筋情報取得装置では、デジタルカメラを用いて当該2本を含む異形鉄筋を撮影し、携帯端末(配筋情報取得装置)を用いて撮影画像から異形鉄筋の本数、径長及びピッチ(間隔)等の配筋情報を求め、径長の分布から各鉄筋の種類(規格、公称直径や呼び径)を推定する。
【0004】
また、特許文献2には、第1視点から撮影された三次元空間の中の平面に配列された複数の鉄筋の第1画像と、前記第1視点とは異なる第2視点から撮影された前記平面に配列された複数の前記鉄筋の第2画像とにより、撮影基準点に対する複数の前記鉄筋の前記三次元空間における位置情報を取得するステレオ撮影部と、前記ステレオ撮影部により取得された前記鉄筋の前記位置情報に基づいて、複数の前記鉄筋が配列された前記平面を特定する配列平面特定部と、前記配列平面特定部により特定された前記平面に配列された複数の前記鉄筋を検査対象として、前記鉄筋の検査を行う検査部と、を備えた配筋検査装置が記載されている(請求項1参照)。特許文献2に記載された配筋検査装置によると、背景バーの挿入等をしなくとも検査対象となる鉄筋を容易に特定することができるため、検査の作業効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-122008号公報
【文献】特開2019-2737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1では単独のデジタルカメラを用いている。この場合、鉄筋までの距離が不明であることから鉄筋から2mの距離で撮影するという制約を設けている。また、複数の鉄筋が重なって撮影されることを防ぐために白いボードを計測対象と計測対象外の鉄筋の間に設置しなければならない。このような条件は2mの距離をとれない場合では計測ができない、また白いボードを設置するための工数が必要となる。
【0007】
特許文献2ではステレオカメラを用いている。この場合、特許文献1で問題となる撮影距離の制限や撮影のために白いボードを挿入する作業は必要ない。しかし、ステレオ撮影という複数の画像からお互いの特徴点をマッチングして同じものが写っている箇所を探し距離を算出する手法を用いているため、鉄筋が光ってハレーションを起こしている場合、陰に隠れて暗い部分などはマッチングがうまくいかず距離が算出できない、もしくは誤った距離を算出する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、建造物の工事において鉄筋を検査する配筋検査システムであって、前記鉄筋の距離画像を取得する第1の画像取得部と、前記鉄筋の静止画像を取得する第2の画像取得部と、前記距離画像及び前記静止画像を演算処理する制御部とを備え、前記制御部は、計測対象の鉄筋を選定し、前記鉄筋を計測する基準となる計測線を設定し、前記鉄筋を計測する基準となる計測線を設定し、前記静止画像を用いて、前記計測線上で前記計測対象の鉄筋のエッジを抽出し、前記距離画像から、前記抽出されたエッジの座標を決定し、前記決定されたエッジの座標を用いて、前記鉄筋の間隔及び直径の少なくとも一つを計測し、前記計測対象として選定された鉄筋を距離画像から選定し、前記距離画像において、前記選定された鉄筋に対応する部分を細くした細線を生成し、前記生成された細線の位置を、前記計測対象として選定された鉄筋の位置として決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、配筋の状態を簡単に計測できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1の配筋検査システムの構成を示す図である。
図2】実施例1の鉄筋検査システムの計測処理のフローチャートである。
図3】実施例1のカメラ画像の記録を示す図である。
図4】実施例1の計測対象の鉄筋を示す図である。
図5】実施例1の計測線の描画を示す図である。
図6】実施例1の鉄筋本数の計測を示す図である。
図7】実施例1の鉄筋間ピッチの計測と鉄筋径の計測を示す図である。
図8】実施例1の鉄筋間ピッチの計測と鉄筋径の計測を示す図である。
図9】実施例1の鉄筋間ピッチの計測と鉄筋径の計測を示す図である。
図10】実施例1の計測結果の表示・記録を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施例1の配筋検査システムの構成を示す図である。
【0012】
本実施例の配筋検査システムは、タブレット端末100で構成される。タブレット端末100は、TOFカメラ111、RGBカメラ112、記憶装置113、ユーザインタフェース114、CPU120を有する計算機である。本実施例の配筋検査システムは、タブレット端末100以外の携帯情報端末(例えば、スマートフォンや、携帯型コンピュータ)でも構成できる。
【0013】
TOFカメラ111は、撮影した光の飛行時間を利用して三次元データを含む距離画像を取得可能なTime-of-Flightカメラである。TOFカメラ111に代えて、レーザ光を照射して距離画像を取得する距離画像センサを用いてもよい。RGBカメラ112は、被写体のカラーの静止画像を撮影するカメラであるが、ユーザが被写体を視認できれば白黒の静止画像でもよい。RGBカメラ112は、動画像を撮影するものでもよいが、撮影された動画像の一つのフレーム(静止画像)を用いればよい。TOFカメラ111及びRGBカメラ112は、配筋検査システムと一体に構成されるとよいが、配筋検査システムは、これらのカメラに代えて、外付けのカメラで撮影した距離画像及び静止画像を入力可能なインタフェースを有してもよい。
【0014】
CPU120は、記憶装置113に格納されたプログラムを実行し、計測処理を行う演算装置である。具体的には、CPU120は、プログラムを実行することによりTOFカメラ画像表示機能121、RGBカメラ画像表示機能122、TOFカメラ画像記録機能123、RGBカメラ画像記録機能124、計測対象選定機能125、計測線描画機能126、鉄筋本数計測機能127、鉄筋間ピッチ計測機能128、鉄筋径計測機能129、及び計測結果表示・記録機能130を実行する。なお、CPU120がプログラムを実行して行う処理の一部をハードウェア(例えば、FPGA、ASIC)で実行してもよい。
【0015】
TOFカメラ画像表示機能121は、TOFカメラ111の画像を表示する機能である。RGBカメラ画像表示機能122は、通常のデジタルカメラと同様に可視光を画像化できるカメラの画像を表示する機能である。TOFカメラ画像記録機能123は、TOFカメラ111の画像を記憶装置113に記録する機能である。RGBカメラ画像記録機能124は、RGBカメラ112の画像を記憶装置113に記録する機能である。計測対象選定機能125は、TOFカメラ111が取得した画像及びRGBカメラ112が取得した画像の少なくとも一方において計測対象とする鉄筋を選定する機能である。計測線描画機能126は、その上で計測を行う計測線を指定する機能である。鉄筋本数計測機能127は、計測対象選定機能125で選定された鉄筋かつ計測線描画機能126で指定された計測線と交わる鉄筋の本数を数える機能である。鉄筋間ピッチ計測機能128は、鉄筋本数計測機能127で本数を数えた鉄筋と隣り合う鉄筋との距離を計測する機能である。鉄筋径計測機能129は、鉄筋本数計測機能127で本数を数えた鉄筋の径を計測し、鉄筋の種類を決定する機能である。計測結果表示・記録機能130は、鉄筋本数計測機能127、鉄筋間ピッチ計測機能128及び鉄筋径計測機能129による計測結果を記憶装置113に記録し、ユーザインタフェース114上に表示する機能である。
【0016】
記憶装置113は、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶素子であるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMはDRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、CPU120が実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。
【0017】
ユーザインタフェース114は、ユーザに入出力機能を提供する。入力機能は、ユーザからの入力を受け付けるタッチパネルなどの入力インタフェースである。出力機能は、プログラムの実行結果をオペレータが視認可能な形式で出力する表示パネルなどの出力インタフェースである。
【0018】
次に、図2から図7を用いて、本発明の一実施例における処理を説明する。
【0019】
ユーザは、図3に示すようにタブレット端末100のTOFカメラ画像表示機能121とRGBカメラ画像表示機能122を起動して、TOFカメラ111とRGBカメラ112を用いて対象の鉄筋401の撮影位置を決定する。ユーザは、撮影位置を決定した後、ユーザインタフェース114上にある記録ボタン301を操作し、TOFカメラ画像記録機能123及びRGBカメラ画像記録機能124を用いてTOFカメラ画像501及びRGBカメラ画像502を記録する(S201)。撮影されたTOFカメラ画像501及びRGBカメラ画像502は、タブレット端末100の記憶装置113に保存される。
【0020】
次に、図4に示すように、画像の撮影後、ユーザは、タブレット端末100のユーザインタフェース114上にある計測選定ボタン302を操作し、計測対象選定機能125を起動する。計測対象選定機能125を用いると、計測対象の鉄筋を面によって指定できる。例えば、計測対象選定機能上に表示されたRGBカメラ画像において、ユーザが点A601、B602及びC603をタップによって指定すると、その3点を通る平面を構成し、その平面上にある物体をTOFカメラ画像501から抽出し、対象鉄筋抽出画像503を生成する(S202)。生成された対象鉄筋抽出画像503は、記憶装置113に保存される。生成された対象鉄筋抽出画像503は、計測対象の鉄筋401の部分が白色で、その他の部分が黒色で塗りつぶされた画像である。この際、使用者が選択した点によって構成された平面上の物体だけでなく、当該平面から所定の誤差範囲内の物体を抽出するとよい。
【0021】
なお、ステップS202では、計測対象選定機能125は、ユーザインタフェース114を用いたユーザによる鉄筋の指定を受け付けることによって、計測対象とする鉄筋(計測対象とする鉄筋を含む面)を選定するが、計測対象選定機能125が自動的に計測対象とする鉄筋を選定してもよい。例えば、距離画像を用いて最前面に配列された鉄筋を選定してもよい。
【0022】
次に、図5に示すように、ユーザは、タブレット端末100のユーザインタフェース114上にある計測線描画ボタン303を操作し、計測線描画機能126を起動する。本数、鉄筋間ピッチ、及び鉄筋径を計測したい鉄筋の並びに沿って画面を2点タップすることで計測線604が設定され、計測線604が描画される(S203)。以後は、設定された計測線604に沿って計測が行われる。図5では、水平方向の計測線604が設定されたが、垂直方向の計測線604が設定されても、斜め方向の計測線604が設定されてもよい。すなわち、計測対象の鉄筋に垂直な方向の計測線604を設定するとよい。
【0023】
なお、ステップS203では、計測線描画機能126は、ユーザインタフェース114上用いたユーザによる計測線604の指定を受け付けるが、計測線描画機能126が自動的に計測線604を設定してもよい。例えば、RGBカメラ画像の中心を通る線を計測線604に設定してもよい。
【0024】
次に、図6に示すように、計測線604の描画後、鉄筋本数計測機能127が自動的に起動する。鉄筋本数計測機能127において、生成された対象鉄筋抽出画像503を用いて、計測線604の始点605から終点606に沿って黒色から白色に変化する回数を計数する。図6の例では、計測線に沿った黒色から白色への2回変化しているので、鉄筋の本は2本と計数できる。(S204)
【0025】
次に、図7から図9を参照して鉄筋間ピッチの計測(S205)及び鉄筋径の計測(S206)について説明する。TOFカメラ111は、その特性上、画像上にノイズが多く、鉄筋の端を正確に抽出できない。よって、対象鉄筋抽出画像503は、鉄筋の数の計測(S204)には利用できるが、鉄筋間ピッチの計測(S205)や鉄筋径の計測(S206)に利用すると誤差が大きくなる可能性がある。そこで以下のような方法で計測対象の鉄筋の領域を正確に抽出する。
【0026】
まず、図7に示すように、対象鉄筋抽出画像503を細線化処理によって、鉄筋の領域を確実に示す細線化処理済対象鉄筋抽出画像504を生成する。これは対象鉄筋抽出画像503をそのまま用いると、TOFカメラ111のノイズによって鉄筋以外の場所を鉄筋と判断する可能性があるからである。次に、細線化処理済対象鉄筋抽出画像504を計測線604の上下(計測線604を垂直方向に設定したときは左右)数ピクセルの領域を残して黒く塗りつぶした画像である局所的細線化処理済対象鉄筋抽出画像505を生成する。
【0027】
この画像を用いてRGBカメラ画像502にグラブカット処理を実行する。グラブカット処理は、画像領域分割に利用されるアルゴリズムで写真画像から背景と前景物を分離するために利用される。グラブカット処理を実行する際に、前景物の場所を示す情報を入力することで、その場所の画像の情報に基づいて処理を繰り返しながら前景の領域を分割する。これにより、RGBカメラ画像502から鉄筋と判断できる領域が抽出される。RGBカメラ画像502は、TOFカメラ画像501と異なりノイズが少ないため、鉄筋の領域を正確に抽出できる。
【0028】
図8に示すように、RGBカメラ画像502に局所的細線化処理済対象鉄筋抽出画像505を前景情報として入力してグラブカット処理を実行する。それによりグラブカット画像506を生成する。同時に前景として抽出された領域を白にそれ以外の領域を黒にしたグラブカット鉄筋領域抽出画像507を生成する。
【0029】
図9を参照して、鉄筋間ピッチと鉄筋径を計測する方法を説明する。グラブカット鉄筋領域抽出画像507と計測線604とを重ねたときの2本の鉄筋(それぞれ鉄筋1 402と鉄筋2 403と称する)の鉄筋領域の端と計測線604の交点を図の左側から点P(711)、点Q(712)、点R(713)、点S(714)とする。ここで、点Q(712)から点R(713)の距離である鉄筋間ピッチ(l1)、点P(711)から点Q(712)の距離である鉄筋径(l2)を求める。RGBカメラ112の焦点700から鉄筋1 402までの距離をL1、RGBカメラ112の焦点700から鉄筋2 403までの距離をL2とする。なお、TOFカメラ111の焦点位置とRGBカメラ112の焦点位置とは一般的に異なるが、カメラの位置差はカメラから被写体までの距離より小さいため、誤差の範囲内で取り扱える。なお、カメラの位置差はカメラから被写体までの距離より小さいため、誤差として取り扱ってもよい。また、カメラから被写体までの距離が近い場合は、既知であるカメラの位置差を用いて、計算される座標位置を補正してもよい。
【0030】
L1は、点P(711)と点Q(712)の中点715の位置のTOFカメラ画像501から取得できる。同様に、L2は、点R(713)と点S(714)の中点716の位置のTOFカメラ画像501から取得できる。L1及びL2はRGBカメラ112の焦点700からの距離であるので、RGBカメラ112の焦点700を原点とした座標系を定義する。この座標系では、RGBカメラ112の焦点700を原点としてRGBカメラ画像502の投影面に沿って右方向にx軸(701)を、下方向にy軸(702)を、RGBカメラ画像502の中心に向かってz軸(703)を定義する。RGBカメラ112の性能として、カメラの横ピクセル数をA、縦ピクセル数をB、水平方向視野角をα、垂直方向視野角をβとする。また、点P(711)は画像の左上から横にa1ピクセル、縦にb1ピクセルの画像上に位置し、点Q(712)は画像の左上から横にa2ピクセル、縦にb2ピクセルの画像上に位置し、点R(713)は画像の左上から横にa3ピクセル、縦にb3ピクセルの画像上に位置し、点S(714)は画像の左上から横にa4ピクセル、縦にb4ピクセルの画像上に位置する。座標系上の点P(711)の座標値を(x1,y1,z1)、点Q(712)の座標値を(x2,y2,z2)、点R(713)の座標値を(x3,y3,z3)、点S(714)の座標値を(x4,y4,z4)は下式で表される。
【0031】
【数1】
【0032】
ここから、鉄筋間ピッチである点Pと点Qの中点から点Rと点Sの中点までの距離(l1)、鉄筋径である点Pと~点Qの距離(l2)はそれぞれ下式で計算できる。
【0033】
【数2】
【0034】
図10のように計測された鉄筋本数、鉄筋間ピッチ、鉄筋径は、タブレット端末100のユーザインタフェース114上に表示される。ここで鉄筋径は、計測された径の長さを表示してもいいし、計測された径から特定される鉄筋の種類(D13、D16など)を表示してもよい。また、ユーザインタフェース114上にある記録ボタン304を操作することで、これらの情報がタブレット端末100の記憶装置113に保存される。この情報は配筋検査後の帳票という形で保存されてもよい。
【0035】
以上に説明したように、本発明の実施例によると、建造物の工事において鉄筋を検査する配筋検査システムであって、鉄筋の距離画像を取得する第1の画像取得部(例えばTOFカメラ111)と、鉄筋の静止画像を取得する第2の画像取得部(例えばRGBカメラ112)と、距離画像及び静止画像を演算処理する制御部(例えばCPU120)とを備え、制御部は、計測対象の鉄筋を選定し(S202)、鉄筋を計測する基準となる計測線604を設定し(S203)、静止画像を用いて、計測線604上で計測対象の鉄筋のエッジを抽出し(S204)、抽出されたエッジの座標を距離画像から決定し、決定されたエッジの座標を用いて、鉄筋の間隔及び直径の少なくとも一つを計測する(S205、S206)ので、配筋の状態を簡単に計測できる。
【0036】
また、制御部は、ユーザによる指定を受け付けた3点を含む面を決定し、決定された面から所定の範囲内に位置する鉄筋を計測対象の鉄筋として選定し(S202)、決定された面内で計測線604を設定する(S203)ので、鉄筋が手前側と奥側とに重なり合って配置されていても、鉄筋にマーカ等の目印をつけることなく的確に計測対象の鉄筋を選定できる。
【0037】
また、制御部は、計測対象として選定された鉄筋を距離画像から選定し、選定された鉄筋に対応する部分を細くした細線を距離画像において生成し、生成された細線の位置を計測対象として選定された鉄筋の位置として決定する(S205、S206)ので、ノイズが多く含まれる距離画像を用いても、鉄筋を正確に抽出でき、鉄筋間ピッチや鉄筋の径を正確に計測できる。
【0038】
また、制御部は、細線と計測線との交点の位置を、鉄筋の位置として決定するので、鉄筋の位置を正確に定められ、鉄筋までの距離を正確に計測できるので、鉄筋間ピッチや鉄筋の径を正確に計測できる。
【0039】
また、制御部は、静止画像を2値化した2値化画像を生成し、決定された鉄筋の位置を参照し、生成された2値化画像を用いて計測線上の鉄筋のエッジを抽出する。すなわち、ノイズが多く含まれる距離画像か定められる鉄筋の位置を用いて静止画像において鉄筋のエッジを定めるので、鉄筋の領域を正確に抽出でき、鉄筋間ピッチや鉄筋の径を正確に計測できる。
【0040】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0041】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0042】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0043】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0044】
100…タブレット端末
111…TOFカメラ
112…RGBカメラ
113…記憶装置
114…ユーザインタフェース
120…CPU
121…TOFカメラ画像表示機能
122…RGBカメラ画像表示機能
123…TOFカメラ画像記録機能
124…RGBカメラ画像記録機能
125…計測対象選定機能
126…計測線描画機能
127…鉄筋本数計測機能
128…鉄筋間ピッチ計測機能
129…鉄筋径計測機能
130…計測結果表示・記録機能
図1
図2
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図10