(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】局部洗浄装置及び水洗便器
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
E03D9/08 Z
E03D9/08 F
(21)【出願番号】P 2019220399
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】田村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】小栗 基義
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173287(JP,A)
【文献】特開2019-196644(JP,A)
【文献】特開平10-195957(JP,A)
【文献】特開平8-338056(JP,A)
【文献】特開2018-28225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
退避状態においてケーシングに収納され、前記ケーシングに設けられたノズル開口部を通じて前方に進出した状態において先端部から局部用の洗浄水を吐出する局部洗浄ノズルと、
前記ノズル開口部を開閉し、前記ノズル開口部を開くと、自身の少なくとも一部が前記ケーシングの内部に引き込まれるシャッタと、
前記ケーシングの内部に設けられ、前記ケーシングの内部に引き込まれた前記シャッタの少なくとも一部を対象としたクリーニングを実行するクリーニング機構と、
を備える、局部洗浄装置。
【請求項2】
前記クリーニング機構は、前記シャッタに向けて洗浄液を吐出してクリーニングを実行する、
請求項1に記載の局部洗浄装置。
【請求項3】
前記クリーニング機構は、
前記シャッタの表面と裏面をそれぞれクリーニングするように構成されている、
請求項1または請求項2に記載の局部洗浄装置。
【請求項4】
前記クリーニング機構は、
前記シャッタの開状態で、前記シャッタの表面をクリーニングし、
前記シャッタの閉状態で、前記シャッタの裏面をクリーニングするように構成されている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。
【請求項5】
前記ケーシングに設けられた2つの開口部をそれぞれ開閉する2つの前記シャッタが設けられ、
2つの前記シャッタをそれぞれクリーニングするクリーニング機構が設けられている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。
【請求項6】
前記シャッタを前記ケーシングの内部に移動させるように案内するガイド部が設けられている、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。
【請求項7】
人を検知する使用者検知手段を備え、
前記クリーニング機構は、
前記使用者検知手段によって検知した人が使用する前に、前記シャッタを事前にクリーニングする事前クリーニング動作を行うように構成されている、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。
【請求項8】
前記ケーシングの内部に、開状態の前記シャッタを収納するシャッタ収納部が設けられ、
前記クリーニング機構は、
前記シャッタとともに前記シャッタ収納部をクリーニングするように構成されている、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。
【請求項9】
前記局部洗浄ノズルの進退に連動して、前記シャッタが前記局部洗浄ノズルに非接触で開閉動するように構成されている、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の局部洗浄装置を備える、
水洗便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、局部洗浄装置及びこれを備えた水洗便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水洗便器には、用便後に局部を洗浄するための局部洗浄装置を備えたものがある。局部洗浄装置は、リモコン操作などに応じ、ノズル開口部を通じて便器本体の内側とケーシング(カバーケース)及びノズルカバーの間で進退・出没する局部洗浄ノズルを備えている(例えば、特許文献1参照)。そして、例えば、局部洗浄ノズルが進出とともにノズル開口部を開閉するシャッタを押圧傾動させて開き、便器本体の内側に進出した局部洗浄ノズルの先端部から洗浄水が吐出することによって局部を洗浄することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の水洗便器においては、シャッタに汚れが発生した場合に、拭き掃除などを行ってシャッタをきれいにするという手間と労力が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の局部洗浄装置の一態様は、退避状態においてケーシングに収納され、前記ケーシングに設けられたノズル開口部を通じて前方に進出した状態において先端部から局部用の洗浄水を吐出する局部洗浄ノズルと、前記ノズル開口部を開閉し、前記ノズル開口部を開くと、自身の少なくとも一部が前記ケーシングの内部に引き込まれるシャッタと、前記ケーシングの内部に設けられ、前記ケーシングの内部に引き込まれた前記シャッタの少なくとも一部を対象としたクリーニングを実行するクリーニング機構と、を備える構成とした。
【0006】
本開示の水洗便器の一態様は、上記の一態様の局部洗浄装置を備える構成とした。
【0007】
なお、本開示において、「クリーニング」とは、例えば局部洗浄装置を普通に使用する上で「きれいな状態にする動作」を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置を示す側面図であり、シャッタがノズル開口部を閉じた状態を示す図である。
【
図3】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置を示す側面図であり、シャッタがノズル開口部を開いた状態を示す図である。
【
図4】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置を示す上方側からの斜視図であり、ノズル開口部を開き、シャッタ収納部に収納されたシャッタを洗浄している状態を示す図である。
【
図5】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置を示す上方側からの斜視図であり、ノズル開口部を閉じたシャッタの裏面を洗浄している状態を示す図である。
【
図6】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置を示す前方側からの斜視図であり、ノズル開口部をシャッタで閉じた状態を示す図である。
【
図7】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置を示す前方側からの斜視図であり、シャッタを開動してノズル開口部を徐々に開いた状態、及びこの開動時にシャッタを洗浄している状態を示す図である。
【
図8】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置を示す前方側からの斜視図であり、シャッタを開動してノズル開口部を徐々に開いた状態、及びこの開動時にシャッタを洗浄している状態を示す図である。
【
図9】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置を示す前方側からの斜視図であり、シャッタを開動してシャッタ収納部に収納した状態を示す図である。
【
図10】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置のガイド部、及びガイド部で案内されるシャッタの移動軌跡を示す図である。
【
図11】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置のガイド部、及びガイド部で案内されるシャッタの円弧状の移動軌跡を示す図である。
【
図12】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置を示す上方側からの斜視図であり、ノズル開口部を開き、シャッタ収納部に収納されたシャッタを洗浄している状態を示す図である。
【
図13】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置を示す側面図であり、ノズル開口部を開き、シャッタ収納部に収納されたシャッタを洗浄している状態を示す図である。
【
図14】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置の変更例を示す前方側からの斜視図である。
【
図15】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置の変更例を示す上方側からの斜視図である。
【
図16】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置の変更例を示す前方側からの斜視図である。
【
図17】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置の変更例を示す上方側からの斜視図である。
【
図18】一実施形態の水洗便器の局部洗浄装置の変更例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1から
図17を参照し、本開示の一実施形態に係る局部洗浄装置及びこれを備えた水洗便器について説明する。ここで、本実施形態では、便器に着座した使用者から見た場合の前後の向きを前後方向、左右の向きを幅方向、上下の向きを上下方向として説明を行う。
【0010】
本実施形態の水洗便器1は、
図1に示すように、便器本体4と、便器本体4の前後方向T1の後部側に設けられ、例えば使用者によるリモコン操作を検知して便器本体4内に洗浄水を吐出させる洗浄機能部10と、便座11a、便蓋11bと、用便後に局部を洗浄するための局部洗浄装置2と、を備えて構成されている。
【0011】
便器本体4は、便鉢のボウル部4aと、ボウル部4aの上部に設けられ、便器本体4の内側に突出しつつ外周縁を形成するリム部4bと、を備えて形成されている。
【0012】
洗浄機能部10は、便器本体4の後部側に設けられ、且つケーシング(カバーケース)5内に収容して設けられている。洗浄機能部10は、例えばリモコン操作によって洗浄水流路を開閉制御するコントロールバルブ、電磁バルブなどの開閉弁を備え、この開閉弁によって便器本体4のリム部4bに洗浄水を流すリム吐水、便器本体4のボウル部4a、封水部4cに洗浄水を流すジェット吐水の切替、吐水流量の制御が行えるように構成されている。
【0013】
便座11a及び便蓋11bはそれぞれ、ケーシング5に着脱可能に接続し、幅方向T2に延びる回動軸O1周り(上下方向)に回動自在に設けられている。
【0014】
局部洗浄装置2は、
図1、
図2、
図3に示すように、洗浄機能部10とともにケーシング5の内部に収納して設けられ、例えばリモコン操作によって便器本体4内に進出(出没)する局部洗浄ノズル7と、ケーシング5に設けられたノズル開口部3を開閉し、汚物、洗浄水の飛沫などが局部洗浄ノズル7にかかったり、内部に入り込むことを防止するためのシャッタ12と、を備えている。
【0015】
より具体的に、本実施形態の局部洗浄装置2は、ケーシング5のベース5aの前側の左右中央に配置されたノズルユニット13と、局部を洗浄するための温水をノズルユニット13に供給する温水供給ユニットと、温風によって洗浄後の局部を乾燥させるための温風乾燥ユニット(温風乾燥機構)と、脱臭ユニット(脱臭機構)と、を備えている。
【0016】
ノズルユニット13は、肛門洗浄用ノズル及びビデ用ノズルの一対の局部洗浄ノズル7と、一対の局部洗浄ノズル7を内包するノズルカバー6と、を備えている。本実施形態の一対の局部洗浄ノズル7は、前方に向かうに従い漸次下方に傾斜し、互いに軸線O2方向を同方向に向けて平行に配設されている。各局部洗浄ノズル7は、下方に位置する先端部に局部洗浄用の洗浄水を吐出する吐出孔16を備え、後端側から供給されて内部を流通した局部洗浄用の洗浄水が吐出孔16から所定の方向に吐出するように構成されている。
【0017】
一対の局部洗浄ノズル7はそれぞれ、略円柱棒状に形成され、ベース5aの前面中央に形成されたノズル開口部3に対し、軸線O2方向(前方に向かうに従い漸次下方に傾斜する方向)に進退自在に設けられている。これら一対の局部洗浄ノズル7はそれぞれ、洗浄時にノズル開口部3から前方に進出して便器本体4の内側に突出し、洗浄後にノズル開口部3を通じてノズルカバー6及びケーシング5内に退避して保持される。
【0018】
例えば、一対の局部洗浄ノズル7はそれぞれ個別に、ノズル進退機構によって軸線O2方向に進退する。本実施形態のノズル進退機構は、ラックとピニオンとモータとを備え、各局部洗浄ノズル7の下面にラックを一体に設け、このラックをモータの回転軸に取り付けたピニオンに噛合して構成されている。
【0019】
これにより、リモコン操作などに応じてモータ及びピニオンが一方向に回転すると、局部洗浄ノズル7が軸線O2方向前方に進出移動し、ノズル開口部3を通じて便器本体4の内側に突出する。リモコン操作などに応じてモータ及びピニオンが他方向に回転すると、局部洗浄ノズル7が軸線O2方向後方であり、ケーシング5の内側に退避移動し、ノズル開口部3を通じて局部洗浄ノズル7がノズルカバー6及びケーシング5内に収容される。
【0020】
局部洗浄装置2は、シャッタユニット20を備え、シャッタユニット20には、一対の局部洗浄ノズル7がケーシング5内に退避した状態でノズル開口部3を閉じて(
図2参照)、汚物、洗浄水の飛沫などが局部洗浄ノズル7にかかったり、内部に入り込むことを防止し、局部洗浄ノズル7が進出する際にノズル開口部3を開く(
図3参照)シャッタ12が具備されている。
【0021】
本実施形態のシャッタユニット20は、
図2から
図9に示すように、ケーシング5に設けられ、例えば、ラックとピニオンとモータを備えたシャッタ進退機構によって局部洗浄ノズル7の軸線O2方向に沿う略前後方向T1に進退する進退部材21と、ヒンジ22によって進退部材21の先端部側に回転自在に接続されたシャッタ12と、ケーシング5の内部に設けられ、進退部材21とともに後退したシャッタ12を収納するシャッタ収納部23と、シャッタ収納部23に一体に設けられたクリーニング機構24と、を備えて構成されている。
【0022】
本実施形態の進退部材21は、第1進退部材21aと第2進退部材21bとからなり、シャッタ進退機構の駆動によって局部洗浄ノズル7の軸線O2方向に沿って進退する第1進退部材21aの先端部に第2進退部材21bの後端部を回転可能にピン接続して構成されている。進退部材21は、第2進退部材21bの先端部をヒンジ22によってシャッタ12の後端部の幅方向T2中央に回転可能に接続して配設されている。
【0023】
シャッタ進退機構は、例えば、ラックとピニオンとモータとを備え、第1進退部材21aにラックを一体に設け、ラックをモータの回転軸に取り付けたピニオンに噛合して構成されている。なお、本実施形態のシャッタユニット20は、シャッタ進退機構が故障などした場合であっても、ノズル7が進出してシャッタ12を押圧するなどしてシャッタ12を開動可能に構成されていることが好ましい。
【0024】
これにより、リモコン操作などに応じてモータ及びピニオンが一方向に回転すると、
図9、
図8、
図7、
図6の順で示すように、第1進退部材21aが軸線O2方向前方に進出移動し、第1進退部材21aにピン接続した第2進退部材21bが進出移動し、シャッタ収納部23からシャッタ12が外側に押し出されるとともに幅方向T2に延びる回動軸O3周りに回動してノズル開口部3を閉じる。
【0025】
リモコン操作などに応じてモータ及びピニオンが他方向に回転すると、
図6、
図7、
図8、
図9の順で示すように、第1進退部材21aが軸線O2方向後方に退避移動し、第1進退部材21aにピン接続した第2進退部材21bが退避移動し、シャッタ12が幅方向T2に延びる回動軸O3周りに回動しつつシャッタ収納部23の内部に引き込まれて収納される。
【0026】
本実施形態において、シャッタ12は、
図5、
図9に示すように、シャッタ収納部23に引き込まれて収容した状態で、局部洗浄ノズル7の軸線O2方向に沿うように、表面12aを上方に、裏面を下方にそれぞれ向けて配設される。
【0027】
ここで、シャッタ進退機構は、
図10に示すように、シャッタ12の開閉移動(や第2進退部材21bの進退移動)をガイドするガイド部25を備えることが好ましい。
【0028】
図11に示すように、シャッタ12の開閉移動(や第2進退部材21bの進退移動)をガイドするガイド部25を円弧状(円弧(及び直線)の組合せ)に形成し、シャッタ12(第2進退部材21b)の移動軌跡を円弧状(円弧(及び直線)の組合せ)としてもよい。なお、本実施形態のガイド部25は、シャッタ12の回動軸(回動軸O3)の移動をガイドするように構成されている。言い換えれば、本実施形態では、ガイド部25がシャッタ12の回動ではない移動をガイドするように構成されている。
【0029】
シャッタ進退機構は、進退部材21を進出させてシャッタ収納部23からシャッタ12を外側に押し出すとともに、シャッタ12の表面12aを押圧し、ノズル開口部3を閉じた閉状態(閉姿勢)でシャッタ12を保持するシャッタ閉保持機構を備えている。なお、シャッタ閉保持機構は、例えば、バネによってシャッタ12を閉状態に保持するように構成してもよく、特にその構成を限定する必要はない。必ずしもシャッタ12を閉状態でしっかりと強固に保持しなくてもよい。
【0030】
一方、本実施形態のクリーニング機構24は、
図12及び
図13(
図4から
図9)に示すように、シャッタ収納部23の上部に一体に設けられ、シャッタ収納空間を形成するシャッタ収納部23の内面に開口する複数の吐出口26と、複数の吐出口26に連通し、シャッタクリーニング用の洗浄水W1を給送する洗浄水流路27と、洗浄水流路27にホースなどを接続して洗浄水W1を供給する洗浄水供給手段と、を備えて構成されている。
【0031】
本実施形態では、複数の吐出口26が幅方向T2に所定の間隔をあけてシャッタ収納部23の一側端から他側端まで整列して配設されている。
【0032】
上記のように構成したクリーニング機構24は、例えば、シャッタ収納部23のシャッタ収納空間にシャッタ12が収納されると、自動的に洗浄水供給手段が駆動し、洗浄水流路27を通じて複数の吐出口26からシャッタクリーニング用の洗浄水W1が吐出される。
【0033】
そして、
図4、
図12、
図13に示すように、吐出した洗浄水W1が、シャッタ12の上方を向く表面12aの略全面をシャッタ12の後端部側から先端部に向けて流れ、さらに、シャッタ12の下方を向く裏面12bの略全面に対してもシャッタ12の後端部側から先端部に向けて流れることにより、シャッタ12に付着した飛沫(汚物や洗浄水の飛沫)などが取り除かれ、シャッタ12をきれいにすることができる。
【0034】
このとき、シャッタ12が収納された状態において、表面12aが前方に向かうに従い下方に傾斜していることによって、洗浄水W1が表面12a上を流れやすくなっている。シャッタ12の裏面12bとシャッタ収納部23の下面との間に所定の間隔の隙間が形成されていることにより、裏面12bに洗浄水W1を接触させて流すことができる。
これにより、シャッタの表面及び裏面の略全面を、クリーニング機構24から吐出した洗浄水W1によってきれいにすることができる。
【0035】
なお、使用者の洗浄操作ボタンなどを操作することによって任意のタイミングで洗浄水W1を吐出し、シャッタ12をクリーニングするように構成してもよい。シャッタクリーニング用の洗浄水W1は、シャッタ12をクリーニングすることが可能な液体であれば、特に限定する必要はなく、水だけでなく、例えば、次亜塩素酸水やオゾン水、界面活性剤含有水など、殺菌(滅菌)剤や洗剤を含む水、液体などであってもよい。さらにこれらの組合せであってもよい。
【0036】
一方、クリーニング機構24は、
図4、
図5に示すように、シャッタ収納部23に収納した状態で、シャッタ12の表面12aに洗浄水W1を吐出して表面12aをきれいにし、シャッタ収納部23からシャッタ12を引き出した状態で、シャッタ12の裏面12bに洗浄水W1を吐出して裏面12bをきれいにするように構成してもよい。
【0037】
クリーニング機構24は、
図6から
図9に示すように、シャッタ収納部23からシャッタ12を押し出した閉姿勢の状態からシャッタ進退機構の駆動によってシャッタ収納部23にシャッタ12を引き込んで開姿勢の状態に移動する間に、あるいは開姿勢から閉姿勢に移動する間に、シャッタ12の動作、姿勢に応じてシャッタ12の表面12aに洗浄水W1を吐出し、シャッタ12の表面12a、裏面12bを順にきれいにするように構成してもよい。
【0038】
なお、
図4、
図5では、シャッタ12を収納した状態でクリーニング機構24がシャッタ12の後端部に配置され、
図6から
図9では、クリーニング機構24がシャッタ12の前側に配置されている。
【0039】
クリーニング機構24は、トイレルームに入った使用者(人)を検知した使用者検知手段の検知結果を受けるとともに、水洗便器1を使用する前の段階で閉姿勢のシャッタ12をクリーニングし、シャッタ12を予め洗浄水W1で濡らしておくように構成してもよい。言い換えると、使用者検知手段によって検知した人が水洗便器1を使用する前に、シャッタを事前にクリーニングする事前クリーニング動作を行うように構成してもよい。表と裏の両面12a、12bを濡らしておくことが好ましいが、特に汚れが付着しやすい表面12aのみを濡らしてくようにしてもよく、裏面12bのみを濡らしておくようにしてもよい。同時にノズル7の事前クリーニングや便器の鉢面の事前クリーニングを行ってもよい。
【0040】
クリーニング機構24は、シャッタ収納部23にシャッタ12を収納した状態、及び/又はシャッタ収納部23からシャッタ12を押し出した状態で、共通の吐出口26から洗浄水W1を吐出し、シャッタ12だけでなく、シャッタ収納部23の内面をきれいにするように構成してもよい。但し、吐出口26を共通とせずに、それぞれの吐出口を設けるようにしてもよい。このように構成した場合には、シャッタ12を押し出した状態で、シャッタ収納部23の底面を伝って洗浄水W1がシャッタ12の裏面12bまで流れることによって、きれいにすることができる。
【0041】
そして、本実施形態の局部洗浄装置2及びこれを備えた水洗便器1においては、まず、局部洗浄ノズル7を進退させるノズル進退機構と、シャッタ12を開閉するためのシャッタ進退機構とを備えることによって、局部洗浄ノズル7をシャッタ12に当接させないように、シャッタ12を自在に開閉制御することが可能になる。
【0042】
これにより、局部洗浄ノズル7が当接することに起因してシャッタ12や局部洗浄ノズル7に汚れ等が付着するという不都合を解消することができる。なお、本実施形態のシャッタ12は、局部洗浄ノズル7の進退に連動し、局部洗浄ノズル7に非接触で開閉動するように構成されている。
【0043】
本実施形態の局部洗浄装置2及び水洗便器1においては、クリーニング機構24を備え、シャッタ12に向けてシャッタクリーニング用の洗浄水W1を吐出し、シャッタ12に付着した飛沫などを流して除去したり、シャッタ12に対して殺菌処理(滅菌処理)などを施すことが可能になる。
【0044】
これにより、局部洗浄ノズル7のノズル開口部3を開閉し、飛沫などが付着しやすいシャッタ12(や局部洗浄ノズル7)をきれいな状態に保つことが可能になる。
【0045】
クリーニング機構24が、シャッタ収納部23に収納したシャッタ12の表面12aに洗浄水W1を吐出して表面12aをきれいにし、シャッタ収納部23からシャッタ12を引き出した状態で、シャッタ12の裏面12bに洗浄水W1を吐出して裏面12bをきれいにするように構成することで、シンプルな構成でシャッタ全体(両面)を好適に洗浄でき、シャッタ12をきれいな状態ですることができる。共通の吐出口26を利用することでシャッタ全体(両面)を好適に洗浄できることで、クリーニング機構24を省サイズにすることができる。
【0046】
クリーニング機構24が、閉姿勢の状態から開姿勢の状態に移動する間に、あるいは開姿勢から閉姿勢に移動する間に、シャッタ12の動作、姿勢に応じてシャッタ12の表面12a、裏面12bに順に洗浄水W1を吐出し、シャッタ12の表面12a、裏面12bを順にきれいにするように構成することで、シャッタ12の開閉動に連動してシャッタ12の洗浄を行うことができる。
【0047】
これにより、局部洗浄ノズル7を使用してシャッタ12に付着した飛沫などを速やかに洗浄、除去したり、速やかにシャッタ12を殺菌処理することができる。洗浄のための時間を別途必要としないで済む。さらに、シャッタ12の略全面に対して近距離から洗浄水W1を吐出できるため、優れた洗浄効果を得ることができる。よって、効果的且つ効率的にシャッタ12をクリーニングすることが可能になる。
【0048】
クリーニング機構24が、トイレルームに入った使用者(人)を検知した検知結果を受けるとともに、水洗便器1を使用する前の段階で閉姿勢のシャッタ12をクリーニングし、シャッタ12を予め濡らしておくように構成することによって、飛沫などをシャッタ12に付着しにくくすることができる。使用後のシャッタ12のクリーニングで飛沫などを除去しやすくすることができる。これにより、さらに効果的にシャッタ12をきれいな状態で保つことが可能になる。
【0049】
クリーニング機構24が、シャッタ収納部23にシャッタ12を収納した状態、及び/又はシャッタ収納部23からシャッタ12を押し出した状態で、吐出口26から洗浄水W1を吐出し、シャッタ12だけでなく、シャッタ収納部23の内面をきれいにするように構成する。
【0050】
これにより、シャッタ12を洗浄してきれいにするとともに、ケーシング5内に設けたシャッタ収納部23もきれいにすることができる。よって、シャッタ12から取り除いた飛沫などがシャッタ収納部23に残ってしまうことを防止でき、シャッタ12とともにシャッタ収納部23もきれいな状態で保つことが可能になる。
【0051】
本実施形態の局部洗浄装置2及び水洗便器1においては、シャッタ進退機構がシャッタ12や第2進退部材21bの開閉移動、進退移動をガイドするガイド部25を備えることによって、シャッタ12や第2進退部材21bの移動軌跡を安定させることができ、シャッタ12や第2進退部材21bを好適に開閉移動、進退移動させることが可能になる。
【0052】
シャッタ12や第2進退部材21bの開閉移動、進退移動をガイドするガイド部25を円弧状(円弧の組合せ)に形成し、シャッタ12や第2進退部材21bの移動軌跡を円弧状(円弧の組合せ)とすることによって、シャッタ12や第2進退部材21bの移動領域、すなわち、シャッタ12の開閉に要する占有領域を小さく、省スペース化することができ、且つ、より円滑にシャッタ12や第2進退部材21bを開閉移動、進退移動させることが可能になる。
【0053】
本実施形態の局部洗浄装置2及び水洗便器1においては、シャッタ進退機構がシャッタ12の表面12aを押圧し、ノズル開口部3を閉じる閉姿勢でシャッタ12を保持するシャッタ保持部を備えることにより、ノズル開口部3を閉じた閉姿勢の状態のシャッタ12が重力などの作用によって回動軸O3周りにゆらゆらと回動、揺動することを防止でき、しっかりとノズル開口部3を閉じることができる。
【0054】
シャッタ保持部が、使用者の手動操作などによって、ノズル開口部3を閉じた閉姿勢のシャッタ12を保持した状態を解除し、閉姿勢の状態のシャッタ12が回動軸O2周りに回動自在(揺動自在)に切替できるように構成されている。
【0055】
これにより、局部洗浄ノズル7の進退に関わらず、使用者の手動操作などによって、シャッタ収納部23から外側に押し出されたシャッタ12を、ノズル開口部3を開閉するように自在に軸線O3周りに回動することが可能になる。これにより、使用者が自在にシャッタ12を開閉操作することができ、例えば、シャッタ12の動力故障によって局部洗浄ノズル7を使用できなくなることがなく、取扱性をよくすることができる。
【0056】
本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0057】
例えば、本実施形態では、シャッタ12の全体がケーシング5の内部に引き込まれて収納されるものとして説明、図示した。これとは異なり、開姿勢でシャッタ12の一部がケーシング5の内部に配されるように構成してもよい。この場合においても、本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0058】
本実施形態では、クリーニング機構24がシャッタ12やシャッタ収納部23に洗浄水W1を吐出し、シャッタ12やシャッタ収納部23をきれいにするように構成されているものとした。これとは異なり、クリーニング機構24は、例えば、UV(紫外線)を照射し、殺菌(滅菌、除菌)することによってシャッタ12やシャッタ収納部23をきれいな状態で保つように構成してもよい。本実施形態のような洗浄水W1の吐水とUVの照射を併用してシャッタ12やシャッタ収納部23をきれいな状態で保つように構成してもよい。
この場合においても、本実施形態と同様にして、すなわち、閉姿勢、開姿勢のシャッタ12にUVを照射したり、開閉移動に連動してUVを照射することによって、本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0059】
図14、
図15に示すように、ビデ洗浄用と肛門洗浄用の2つの局部洗浄ノズル7、8と、ビデ洗浄用と肛門洗浄用の2つの局部洗浄ノズル7、8をそれぞれ進退させるための2つのノズル開口部3を設け、これら2つのノズル開口部3をそれぞれ開閉する2つのシャッタ12を設けて構成してもよい。この場合においても、本実施形態と同様に、それぞれのシャッタ12をクリーニング機構24できれいにできるように構成すればよい。このように構成することによって、一方の局部洗浄ノズル7(8)の使用時に他方の局部洗浄ノズル8(7)側のノズル開口部3からケーシング5内に飛沫などが入り込むことを防止できる。本実施形態では、ノズル用の開口部3が2つあるものとして説明を行ったが、開口部の1つは、温風乾燥や脱臭用の開口であってもよい。3つ以上の開口部とシャッタ12を備えて構成してもよい。
【0060】
図16、
図17に示すように、ケーシング5の内部に収納して脱臭機構及び/又は温風乾燥機構を設け、脱臭機構及び/又は温風乾燥機構の動作時にシャッタ12が半開するように構成してもよい。なお、
図16、
図17において、符号30は脱臭機構の空気取り入れ口(開口部)、又は温風乾燥機構の温風吹き出し口(開口部)を示す。この場合には、脱臭機構及び/又は温風乾燥機構の動作時にケーシング5の内部に飛沫などが入り込むことを抑止できる。基本的に温風乾燥用の開口と脱臭用の開口は個別に設けられ、温風乾燥用の開口と脱臭用の開口を備える場合、ノズル(7、8)を挟んで一方の側に温風乾燥用の開口と脱臭用の開口の一方の開口、他方の側に他方の開口が配設される。
【0061】
本実施形態では、局部洗浄ノズル7、8を進退させるノズル進退機構と、シャッタ12を開閉するためのシャッタ進退機構とがそれぞれ、ラックピニオン機構で構成されているものとしたが、ノズル進退機構とシャッタ進退機構とは、局部洗浄ノズル7、8、進退部材21を進退させることが可能であればよく、本実施形態のようにラックピニオン機構に限定しなくてもよい。例えば、ピストンシリンダ(直動アクチュエータ)などで構成してもよい。
【0062】
本実施形態では、ノズル進退機構とシャッタ進退機構がそれぞれ個別に設けられているものとしたが、構成要素を兼用してノズル進退機構とシャッタ進退機構を構成してもよい。
【0063】
本実施形態では、クリーニング機構24の吐出口26が幅方向T2に所定の間隔をあけて整列配置されているものとした。クリーニング機構24、この吐出口26、UV照射手段は、特にその数、位置を限定する必要はない。
【0064】
本実施形態では、シャッタ12の表面12aと裏面12bの両面をクリーニングするものとして説明を行ったが、シャッタ12の表面12aのみ、シャッタ12の裏面12bのみをクリーニングするように構成してもよい。
【0065】
さらに、
図18に示すように、シャッタ12の一部のみをケーシング5の内部に引き込んで収納し、シャッタ12の収納された部分にクリーニング機構24から洗浄水W1を吐水し、シャッタ12の全面(表面12aや裏面12b)のクリーニングを行うように構成してもよい。この場合には、シャッタ12の全てを収納する場合に比べ、構造の小型化、シンプル化を図ることができる。ちなみに、
図18においては、シャッタ12の基端部の上方にクリーニング機構24が配置され、且つノズル7に押圧されてシャッタ12が開動するように構成されている。これとは異なり、ノズル7で押圧してシャッタ12を開動するように構成しなくもよい。クリーニング機構24の位置は、
図18のように限定しなくてもよく、シャッタ12を好適にクリーニングすることができるように適宜設定すればよい。
【符号の説明】
【0066】
1 水洗便器、2 局部洗浄装置、3 ノズル開口部、4 便器本体、5 ケーシング(カバーケース)、7 局部洗浄ノズル、10 洗浄機能部、11 便座部、12 シャッタ、12a 表面、12b 裏面、13 ノズルユニット、16 吐出孔、20 シャッタユニット(シャッタ開閉機構)、21 進退部材、22 ヒンジ、23 シャッタ収納部、24 クリーニング機構、25 ガイド部、26 吐出口、27 洗浄水流路、30 開口部、O1 軸線、O2 軸線、O3 軸線、T1 前後方向、T2 幅方向、W1 シャッタクリーニング用の洗浄水