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特許7340450調節性眼内レンズおよびインプラントの方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】調節性眼内レンズおよびインプラントの方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
A61F2/16
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019523679
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 US2017058810
(87)【国際公開番号】W WO2018081595
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】62/414,571
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319012750
【氏名又は名称】フォーサイト ビジョン6,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FORSIGHT VISION6,INC.
【住所又は居所原語表記】Suite 105,1000 Marina Blvd.,Brisbane,California 94005,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】デ ジュアン,ユージーン,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】オレン,ガイ
(72)【発明者】
【氏名】カーン-ドゥロール,ニコル
(72)【発明者】
【氏名】アティヤ,エフラト
(72)【発明者】
【氏名】モリヤ,アマナ
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】村上 聡
【審判官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/148673(WO,A1)
【文献】特表2016-525432(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の処置のための調節性眼内レンズデバイスであって:
第1の外周領域と、外向きに撓むように構成された中心の調節性表面を含む第1の膜;
円弧に沿って延在し、第1の膜の第1の外周領域に対して相対的に変位を受けるように構成される形状変形膜;
第2の外周領域を有する静的要素であって、静的要素は第1の膜に対向して配置される、前記静的要素;ならびに
固定された体積の光学流体;
を含むレンズ本体であって、第1の膜の内側表面、形状変形膜の内側表面、および静的要素の内側表面は、共同で、固定された体積の光学流体を含有するレンズ本体のシールされたチャンバーを形成する、前記レンズ本体;
安定化システムであって、レンズ本体の後側領域に対して相対的に後側に配置される内側領域、および内側領域から最も外側のエッジ部に放射状に延在する外側領域を有するフランジを含み、レンズデバイスが眼内にインプラントされるときに、レンズ本体の後側に面した表面とフランジの内側領域の前側に面した表面との間に溝が形成され、フランジの少なくとも最も外側のエッジ部は眼の水晶体嚢の内側に配置されるように構成され、溝は水晶体嚢の切嚢によって形成された水晶体嚢エッジ部を受け入れ、および、フランジは、水晶体嚢の内面に係合するように前側に曲がる外側隆起を有する、前記安定化システム;および
レンズデバイスが眼内にインプラントされるときに、眼の毛様体構造と直接接触するように、水晶体嚢の外側に延在するように構成された自由な末端を有する力変換・伝達アームであって、力変換・伝達アームはレンズ本体に対して相対的に可動であって、形状変形膜の内向きの動きを引き起こし、力変換・伝達アームの前側に面した表面は、フランジの最も外側のエッジ部に対して前側の平面にあり、溝は力変換・伝達アームの後側に配置されている、前記力変換・伝達アーム、
を含む、
前記調節性眼内レンズデバイス。
【請求項2】
フランジが、レンズ本体の後側領域から外向きに放射状に延在する一対のフランジをさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
力変換・伝達アームが、互いに対向して配置された第1および第2の力変換・伝達アームを含み、一対のフランジが、第1および第2の力変換・伝達アームの間に配置される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
フランジが、さらに、水晶体嚢からの流出経路を提供するように構成された中断部を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
形状変形膜の内向きの動きがシールされたチャンバーを圧縮する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
形状変形膜が約50μmから約100μmの間の距離を動き、任意に当該距離がレンズ本体の度数の変化を少なくとも±3ディオプトリーだけ引き起こす、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
第1の膜の中心の調節性表面が、シールされたチャンバー内の増大した内部圧力によって、または第1の膜の内側表面への光学流体による圧力の適用によって屈しやすい縮減された厚さの領域である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
静的要素がある光学度数を有する静的レンズである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
レンズ本体に対して相対的な力変換・伝達アームの非対称的な内向きの動きが、第1の膜の中心の調節性表面の外向きの撓みを達成する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
さらに、第2の力変換・伝達アームを含み、第1および第2の力変換・伝達アームが、互いに対向して、かつレンズ本体に対して相対的に対称的に配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
シールされたチャンバー内の光学流体が非圧縮性であり、形状変形膜の内向きの動きによって、第1の膜の外向きの撓みを引き起こすように第1の膜の内側表面を押す、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
光学流体が、可視スペクトルにおける高い透明性および透過の非圧縮性液体またはゲルを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
第1の外周領域内に埋め込まれた複数の内部支持部をさらに含み、該複数の内部支持部は、レンズ本体の光学コンポーネントを、レンズ本体に対して相対的な力変換・伝達アームの動きの間の歪みと安定化システムへのストレスが原因の歪みとから機械的に隔離するように構成された請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
第1の膜がその領域にわたって異なる厚さの膜を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
デバイスが、非調節性レンズである第2の眼内レンズの前側に設置された請求項1に記載のデバイスを含む、眼内にインプラントするためのシステム。
【請求項16】
シールされたチャンバーが光学的に透明なシリコーンエラストマーで形成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
光学流体が、フッ素化シリコーン、芳香族シリコーン、フェニル官能化シリコーン、炭化水素、官能化炭化水素、長鎖炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群から選択される、請求項12に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年10月28日出願の同時係属のU.S.仮出願シリアルNo.62/414,571の優先権の利益を請求し、その内容全体はその全体がここで参照によって本願に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般的には眼科学の分野に、より具体的には調節性眼内レンズなどの眼内レンズ(IOL)を包含する眼科用デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトの健康な若い眼は、要求される通りに遠または近距離の対象物にフォーカスし得る。眼が近見から遠見まで前後に変化する能力は調節と呼ばれる。調節は、毛様体筋が収縮して、それによって水晶体嚢の赤道領域上のチン小帯静止張力を解除するときに起こる。チン小帯張力の解除は、水晶体の内在的な弾性が、前側および後側水晶体表面両方の増大した表面曲率によって、より球体状または球面状の形状に変わることを許す。
【0004】
ヒト水晶体は視覚システムにおけるその機能を劣化させる1つ以上の障害に罹患し得る。よくある水晶体障害は白内障であり、これは正常なら透明な天然の水晶体マトリックスの混濁である。混濁は加齢プロセスからもたらされ得るが、遺伝または糖尿病によってもまた引き起こされ得る。白内障術式においては、患者の混濁した水晶体が透明なレンズインプラントまたはIOLによって置換される。
【0005】
従来の嚢外白内障外科手術においては、水晶体マトリックスが除去され、毛様体および毛様体筋へのチン小帯靭帯接続と一緒に前側および後側カプセルの薄壁を無傷で残す。水晶体コアは、円形切嚢、すなわち水晶体嚢の前側部分の除去から、超音波水晶体乳化術によって除去される。
【0006】
数日から数週の治癒期間後に、水晶体嚢は水晶体嚢の壁の潰れおよび爾後の線維化が原因でIOLの周りを有効に収縮包装する。今日実施されている白内障外科手術は、調節を提供する眼の天然の構造の大部分の回復不能な喪失を引き起こす。水晶体マトリックスは完全に失われ、水晶体嚢のインテグリティーは切嚢によって縮減される。IOLの周りの水晶体嚢の「収縮包装」はチン小帯複合体を損傷し得、その後には毛様体筋が萎縮し得る。それゆえに、従来のIOLは、調節可能であると主張するものであっても、近見にとって充分量の調節を提供するための光軸に沿った十分な軸方向のレンズの空間的変位またはレンズの形状変化を提供することができなくあり得る。
【0007】
白内障外科手術に則ったIOL留置以外にも、人工の「ピギーバック」レンズが健康な水晶体の屈折異常を矯正するために利用され得るということが公知である。加えて、この「ピギーバック」アプローチは、以前に白内障外科手術を受けており、代わりに人工レンズを有するが、追加の屈折矯正を必要とする患者にとって有益であり得る。これらの「ピギーバック」IOLは、以前にインプラントされたIOLまたは天然の水晶体に対して前側に置かれて、偽水晶体のケースにおいては白内障外科手術の屈折結果を改善し、または有水晶体眼のケースにおいては眼の屈折状態を変化させて、通常は強度近視を矯正し得る。一般的には、これらのレンズは毛様体溝または隅角にインプラントされ、非調節性である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある側面においては、眼の処置のための調節性眼内レンズデバイスが記載され、外向きに撓むように構成された外周領域および表面を有する調節性の膜を有するレンズ本体を包含する。レンズ本体は環状要素を有し、調節性の膜の外周に連結される。環状要素は環状要素の円弧に沿って延在する形状変形膜を有する。形状変形膜は調節性の膜の外周領域に対して相対的に変位を受けるように構成される。レンズ本体は環状要素に連結された外周領域を有する静的要素を有する。静的要素は調節性の膜に対向して配置される。レンズ本体は固定された体積の光学流体を有する。調節性の膜の内側表面、形状変形膜の内側表面、および静的要素の内側表面は、共同で、固定された体積の光学流体によって満たされたレンズ本体のシールされたチャンバーを形成する。環状の内部支持部が、第1の側においては調節性の膜の外周領域によってシールされ、第2の側においては静的要素の外周領域によってシールされる。安定化システムが、内部部分と終末端部とを有するハプティックを包含する。ハプティックの内部部分は、レンズ本体の外周領域の近くにおいて環状の内部支持部に連結される。力変換・伝達アームが包含され、これは、レンズ本体の形状変形膜に動作可能に連結された第1の末端と、レンズ本体の光軸が眼の視軸と実質的に整列するようにレンズデバイスが眼内にインプラントされるときに、眼の毛様体構造と係合するように構成された利用可能な自由な末端とを有する。力変換・伝達アームはレンズ本体に対して相対的に可動であって、形状変形膜の内向きの動きを引き起こす。
【0009】
力変換・伝達アームの内向きの動きは、形状変形膜の内向きの動き、およびシールされたチャンバーの変形を引き起こし得る。形状変形膜の内向きの動きは、シールされたチャンバー内の光学流体が調節性の膜の内側表面を押すことを引き起こし得る。内部支持部は、レンズ本体の光学コンポーネントを、レンズ本体に対して相対的な力変換・伝達アームの動きの間の歪みと安定化システムへのストレスが原因の歪みとから機械的に隔離し得る。内部支持部の外側外周は、形状変形膜の内向きの動きの間の形状変形膜の内側表面との接触を避けるための凹状の幾何形状を包含し得る。内部支持部の外側外周は、環状の内部支持部の中心のアパーチャの方へ先細りする楔形状を有するフィーチャを包含し得る。内部支持部は、シールされたチャンバー内に仕切りを形成し得、シールされたチャンバーを変形可能な領域および中心領域に分割する。内部支持部は、内部支持部を貫通して延在するチャネルを包含し得、シールされたチャンバーの変形可能な領域および中心領域の間において流体連通を提供する。変形可能な領域は、レンズ本体の光学部ゾーンの外部またはレンズ本体の光学部ゾーンの内部に位置し得る。形状変形膜の内向きの動きは変形可能な領域を変形させ得る。形状変形膜の内向きの動きはシールされたチャンバーを圧縮し得る。シールされたチャンバー内の光学流体は非圧縮性であり得、形状変形部材の内向きの動きによって、調節性の膜の外向きの撓みを引き起こすように調節性の膜の内側表面を押し得る。形状変形膜は約50μmから約100μmの間の距離を動き得る。形状変形膜の動きはレンズ本体の度数の変化を少なくとも±3ディオプトリーだけ引き起こし得る。形状変形膜を動かすために適用される力は約0.1gfから約1gfの間であり得る。
【0010】
ハプティックの終末端部は、さらに、眼内におけるハプティックの固定を改善するための咬持要素を包含し得る。咬持要素は溝付きエッジ部および/または穴部を包含し得る。ハプティックの終末端部は力変換・伝達アーム上に延在し得る。ハプティックの終末端部は力変換・伝達アームとは異なる平面上に配置され得る。ハプティックの終末端部は力変換・伝達アームに対して前側の平面上に延在し得、眼の毛様体溝または水晶体嚢内に配置されるように構成され得る。ハプティックは柔軟であり得、折りたたみ可能であり得、または形状記憶材料から形成され得る。レンズ本体は、光学部ゾーンの外部に位置する変形可能な部分を包含し得る。変形可能な部分は形状変形膜のある領域であり得る。レンズ本体は、光学部ゾーンの内部に位置する変形可能な部分を包含し得る。変形可能な部分は形状変形膜のある領域であり得る。形状変形膜は環状であり得る。形状変化する膜の外向きの撓みはマニュアル調整可能であり得る。静的要素は、ある光学度数を有する静的レンズであり得る。静的レンズは眼に対して相対的に後側に配置され得、形状変化する部材は眼に対して相対的に前側に配置され得る。形状変化する膜は一定の厚さを有し得る。形状変化する膜の領域は、シールされたチャンバー内の増大した内部圧力によって、または形状変化する膜の内側表面への光学流体による圧力の適用によって屈しやすい縮減された厚さの領域であり得る。
【0011】
光学流体は、可視スペクトルにおける高い透明性および透過の非圧縮性液体またはゲルを包含し得る。光学流体はシリコーン油またはフルオロシリコーン油であり得る。力変換・伝達アームはレンズ本体の形状変形膜と毛様体構造との間に延在するように構成された長さを有し得る。長さは眼内へのデバイスの挿入の間に調整可能であり得る。調整は機械的であり得、または眼に対して相対的なデバイスの回転が原因であり得る。デバイスの外周は、虹彩の後側領域と水晶体嚢の前側領域との間に延在するようにサイズ決めされた最大横断面厚さを有し得る。
【0012】
相互に関係する側面においては、レンズ本体を有する眼の処置のための調節性眼内レンズデバイスが提供される。レンズ本体は、外向きに撓むように構成された外周領域および表面を有する調節性の膜を包含する。環状要素が調節性の膜の外周に連結される。環状要素は環状要素の円弧に沿って延在する形状変形膜を有する。形状変形膜は調節性の膜の外周領域に対して相対的に変位を受けるように構成される。デバイスは、環状要素に連結された外周領域を有する静的要素を包含する。静的要素は調節性の膜に対向して配置される。デバイスは固定された体積の光学流体を包含する。調節性の膜の内側表面、形状変形膜の内側表面、および静的要素の内側表面は、共同で、固定された体積の光学流体によって満たされたレンズ本体のシールされたチャンバーを形成する。デバイスは、第1の側においては調節性の膜の外周領域によってシールされ、第2の側においては静的要素の外周領域によってシールされた、環状の内部支持部を包含する。デバイスは安定化システムを包含し、環状の内部支持部に連結された環状のリング構造とレンズ本体の後側領域から外向きに放射状に延在するフランジとを包含する。デバイスは力変換・伝達アームを包含し、レンズ本体の形状変形膜に動作可能に連結された第1の末端と、レンズ本体の光軸が眼の視軸と実質的に整列するようにレンズデバイスが眼内にインプラントされるときに、眼の毛様体構造と係合するように構成された利用可能な自由な末端とを有する。力変換・伝達アームはレンズ本体に対して相対的に可動であって、形状変形膜の内向きの動きを引き起こす。
【0013】
力変換・伝達アームの内向きの動きは形状変形膜の内向きの動きを引き起こし得、シールされたチャンバーの変形を引き起こす。形状変形膜の内向きの動きは、シールされたチャンバー内の光学流体が調節性の膜の内側表面を押すことを引き起こし得る。内部支持部は、レンズ本体の光学コンポーネントを、レンズ本体に対して相対的な力変換・伝達アームの動きの間の歪みと安定化システムへのストレスが原因の歪みとから機械的に隔離し得る。内部支持部の外側外周は、形状変形膜の内向きの動きの間の形状変形膜の内側表面との接触を避けるための凹状の幾何形状を包含し得る。内部支持部の外側外周は、環状の内部支持部の中心のアパーチャの方へ先細りする楔形状を有するフィーチャを包含し得る。内部支持部はシールされたチャンバー内に仕切りを形成し得、シールされたチャンバーを変形可能な領域および中心領域に分割する。内部支持部は、内部支持部を貫通して延在するチャネルを包含し得、シールされたチャンバーの変形可能な領域および中心領域の間において流体連通を提供する。変形可能な領域はレンズ本体の光学部ゾーンの外部に位置し得る。変形可能な領域はレンズ本体の光学部ゾーンの内部に位置し得る。形状変形膜の内向きの動きは変形可能な領域を変形させ得る。形状変形膜の内向きの動きはシールされたチャンバーを圧縮し得る。シールされたチャンバー内の光学流体は非圧縮性であり得、形状変形部材の内向きの動きによって、調節性の膜の外向きの撓みを引き起こすように調節性の膜の内側表面を押し得る。形状変形膜は約50μmから約100μmの間の距離を動き得る。形状変形膜の動きはレンズ本体の度数の変化を少なくとも±3ディオプトリーだけ引き起こし得る。形状変形膜を動かすために適用される力は約0.1gfから約1gfの間であり得る。
【0014】
外向きに放射状に延在するフランジは、力変換・伝達アームからある距離だけ離れて配置され得る。フランジは、レンズ本体および力変換・伝達アームに対して相対的に後側の位置に配置され得る。フランジの前側表面は力変換・伝達アームと同じ平面上でもまたあり得る。フランジがより前側であるほど、それはレンズを後側方向により多大に引くであろう。力変換・伝達アームは互いに対向して配置された第1および第2の力変換・伝達アームを包含し得る。フランジは互いに対向して配置された第1および第2のフランジを包含し得る。第1および第2のフランジは第1および第2の力変換・伝達アームの間に配置され得る。安定化システムは、さらに、環状のリング構造の近くに位置する溝を包含し得る。溝は、環状要素の後側に面した表面とフランジの前側に面した表面との間に形成され得る。溝は、水晶体嚢の切嚢によって形成された水晶体嚢エッジ部を受け入れるようにサイズ決めされ得る。フランジは、前側方向の方に曲がる外側隆起を包含し得る。フランジは、さらに、水晶体嚢へのアクセスを提供するように構成された中断部を包含し得る。中断部は、フランジを貫通して延在するアパーチャ、またはフランジの外側外周における湾入であり得る。
【0015】
レンズ本体は、光学部ゾーンの外部に位置する変形可能な部分を包含し得る。変形可能な部分は形状変形膜のある領域であり得る。レンズ本体は、光学部ゾーンの内部に位置する変形可能な部分を包含し得る。変形可能な部分は形状変形膜のある領域であり得る。形状変形膜は環状であり得る。形状変化する膜の外向きの撓みは、眼内へのデバイスのインプラント後にマニュアル調整可能であり得る。静的要素は、ある光学度数を有する静的レンズであり得る。静的レンズは眼に対して相対的に後側に配置され得、形状変化する部材は眼に対して相対的に前側に配置され得る。形状変化する膜は一定の厚さを有し得る。形状変化する膜の領域は、シールされたチャンバー内の増大した内部圧力によって、または形状変化する膜の内側表面への光学流体による圧力の適用によって屈しやすい縮減された厚さの領域であり得る。光学流体は、可視スペクトルにおける高い透明性および透過の非圧縮性液体またはゲルを包含し得る。光学流体はシリコーン油またはフルオロシリコーン油であり得る。力変換・伝達アームはレンズ本体の形状変形膜と毛様体構造との間に延在するように構成された長さを有し得る。長さは、眼内へのデバイスの挿入の間に調整可能であり得る。調整は機械的であり得、または眼に対して相対的なデバイスの回転が原因であり得る。デバイスの外周は、虹彩の後側領域と水晶体嚢の前側領域との間に延在するようにサイズ決めされた最大横断面厚さを有し得る。レンズ本体に対して相対的な力変換・伝達アームの非対称的な内向きの動きは、調節性の膜の表面の球面状の外向きの撓みを達成し得る。デバイスは単一の第1の変換・伝達アームを包含し得、またはさらに第2の力変換・伝達アームを包含し得る。第1および第2の力変換・伝達アームは、互いに対向してかつレンズ本体に対して相対的に対称的に配置され得る。
【0016】
相互に関係する側面においては、眼の処置のための調節性眼内レンズ(AIOL)デバイスをインプラントする方法が記載される。方法は切嚢を形成することと;AIOLデバイスをインプラントすることとを包含する。
【0017】
AIOLデバイスはレンズ本体を包含し得る。レンズ本体は、外向きに撓むように構成された外周領域および表面を有する調節性の膜を包含し得る。レンズ本体は、調節性の膜の外周に連結された環状要素を包含し得る。環状要素は、環状要素の円弧に沿って延在する形状変形膜を有する。形状変形膜は調節性の膜の外周領域に対して相対的に変位を受けるように構成される。レンズ本体は、環状要素に連結された外周領域を有する静的要素を包含し得る。静的要素は調節性の膜に対向して配置される。レンズ本体は固定された体積の光学流体を包含し得る。調節性の膜の内側表面、形状変形膜の内側表面、および静的要素の内側表面は、共同で、固定された体積の光学流体によって満たされたレンズ本体のシールされたチャンバーを形成し得る。デバイスは、第1の側においては調節性の膜の外周領域によってシールされ、第2の側においては静的要素の外周領域によってシールされた、環状の内部支持部を包含し得る。デバイスは安定化システムを包含し得る。デバイスは力変換・伝達アームを包含し得、レンズ本体の形状変形膜に動作可能に連結された第1の末端と、レンズ本体の光軸が眼の視軸と実質的に整列するようにレンズデバイスが眼内にインプラントされるときに、眼の毛様体構造と係合するように構成された利用可能な自由な末端とを有する。力変換・伝達アームはレンズ本体に対して相対的に可動であって、形状変形膜の内向きの動きを引き起こす。
【0018】
安定化システムは、環状の内部支持部に連結された環状のリング構造と、レンズ本体の後側領域から外向きに放射状に延在するフランジとを包含し得る。安定化システムは、内部部分と終末端部とを有する安定化ハプティックを包含し得、ハプティックの内部部分は、レンズ本体の外周領域の近くにおいて環状の内部支持部に連結される。デバイスは2つの対向し合う力変換・伝達アームを包含し得る。
【0019】
方法は、さらに、安定化ハプティックを毛様体溝内に配置してデバイスを眼の虹彩から後側に押しやることを包含し得る。方法は、さらに、安定化ハプティックを眼の水晶体嚢の内部に配置することと、力変換・伝達アームを水晶体嚢の外部にインプラントすることとを包含し得る。方法は、さらに、切嚢によって形成された水晶体嚢のエッジ部を安定化ハプティックの前側表面上に延在させることを包含し得る。デバイスの前側の面は水晶体嚢のエッジ部によって眼の虹彩から引き離され得る。方法は、さらに、デバイスの後側表面が切嚢に対して後側に配置され、力変換・伝達アームが切嚢に対して前側に留まるように、インプラント時にデバイスを整置することを包含し得る。デバイスを整置することは、対向し合う力変換・伝達アームを眼に対して相対的に水平に内側-外側の様式で整置して、インプラント後のずれを最小化することを包含し得る。デバイスをインプラントすることは、デバイスをその光軸の周りに回転させることを包含し得る。方法は、さらに、デバイスをその光軸の周りに回転させるが、力変換・伝達アームの最も外側部分と毛様体構造との間にギャップを維持することを包含し得る。ギャップは約0.1mmのサイズを有し得る。方法は、さらに、力変換・伝達アームの最も外側部分が毛様体構造との係合へと楔入するまで、デバイスをその光軸の周りに回転させることを包含し得る。毛様体構造は眼の毛様体筋であり得る。デバイスを回転させることは、毛様体筋に対して相対的な力変換・伝達アームのフィットを調整し得る。デバイスは、眼の角膜切開からデバイスを挿入することによってインプラントされ得る。方法は、さらに、デバイスをアプリケータ内へと巻回することまたは折りたたむことを包含し得、角膜切開からインジェクションされる。アプリケータのチップは横断面直径が約2.5mmであり得る。デバイスは、強膜トンネルまたは強膜切開からデバイスを挿入することによってインプラントされ得る。切嚢は卵形の形状であり得る。切嚢は約6mm×7mmであり得る。方法は、さらに、AIOLデバイスをインプラントする前に眼の毛様体の直径を測定することを包含し得る。直径は、超音波生体顕微鏡法(UBM)、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)、または他の医療イメージング技術によって測定され得る。
【0020】
いくつかの変形においては、次の1つ以上が、いずれかの実現可能な組み合わせで、上の方法、装置、デバイス、およびシステムに任意に包含され得る。デバイス、システム、および方法のより詳細は、付属する図面および下の記載において提示されている。他の特徴および利点は次の記載および図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
これらおよび他の側面は、ここで次の図面の参照によって詳細に記載される。一般的に言って、図は絶対的にまたは相対的に一定比率ではなく、例解的であることを意図されている。フィーチャおよび要素の相対的留置もまた例解的な明瞭性の目的のために改変され得る。
【0022】
図1A図1Aは、混濁した水晶体カプセルを有する眼の一部切り欠き透視図である。
【0023】
図1B図1Bは、従来の3ピースIOLのインプラントによる、円形切嚢および除去された水晶体マトリックスを有する図1Aの眼の一部切り欠き透視図である。
【0024】
図1C図1Cは眼の前側の隅角の横断面図である。
【0025】
図2A図2Aは調節性眼内レンズ(「AIOL」)の実装の透視図である。
【0026】
図2B図2B図2AのAIOLの分解図である。
【0027】
図2C図2C図2BのAIOLの第1の側部の図である。
【0028】
図2D図2Dは、図2BのAIOLの第2の側部の図である。
【0029】
図2E図2Eは、線E-Eに沿って取られた図2DのAIOLの横断面図である。
【0030】
図2F図2Fは、線F-Fに沿って取られた図2AのAIOLの横断面図である。
【0031】
図3A】~
図3B図3A~3Bは、図2AのAIOLの前側レンズ部分の透視図である。
【0032】
図3C図3Cは、線C-Cに沿って取られた図3Bの前側レンズ部分の横断面図である。
【0033】
図3D】~
図3G図3D~3Gは、AIOLの種々の実装の前側レンズ部分の概略図である。
【0034】
図4A】~
図4C図4A~4Cは、虹彩および水晶体嚢に対して相対的に眼内に配置された調節性眼内レンズを例解している。
【0035】
図5A】~
図5B図5A~5Bは、眼内に配置された調節性眼内レンズデバイスの横断面の部分的な透視図である。
【0036】
図6A図6Aは、卵形の切嚢を示す眼の前側の図である。
【0037】
図6B図6Bは、眼内に配置された調節性眼内レンズデバイスを示す図6Aの眼の前側の図であり、虹彩は隠れている。
【0038】
図7A図7Aは、安定化システムを有する調節性眼内レンズデバイスの前側の透視図である。
【0039】
図7B図7B図7Aのレンズデバイスの側面図である。
【0040】
図7C図7C図7Aのレンズデバイスの後側の透視図である。
【0041】
図7D図7Dは、力変換・伝達アームの外側部分上のプロングを組み込んでいるレンズデバイスの前側の透視図である。
【0042】
図8図8は、レンズ選択のための方法の実装を例解するフローチャートである。
【0043】
図9図9は、術間レンズ調整のための方法の実装を例解するフローチャートである。
【0044】
図10図10は、術後レンズ調整のための方法の実装を例解するフローチャートである。
【0045】
図11A】~
図11B図11A~11Bは、複数個の可視化マーカーを有するレンズの実装のそれぞれ上面平面図および側面図を例解している。
【0046】
図11C】~
図11D図11C~11Dは、複数個の可視化マーカーを有するレンズの実装のそれぞれ上面平面図および側面図を例解している。
【0047】
図11E】~
図11L図11E~11Lは、可視化マーカーの種々の構成の上面平面および側面図を例解している。
【0048】
図12図12は、眼内に配置された、水晶体嚢と形状変形膜との間の接触を防ぐ安定化システムを有する調節性眼内レンズデバイスの横断面の部分的な透視図を例解している。
【0049】
図13A図13Aは、調節性眼内レンズデバイスの上面図を例解している。
【0050】
図13B図13Bは、断面A-Aに沿って取られた図13Aのデバイスの部分的な横断面図を例解している。
【0051】
図13C図13Cは、断面A-Aに沿って取られた図13Aのデバイスの部分的な横断面図の別の実装を例解している。
【0052】
図14A図14Aは、調節性眼内レンズデバイスの実装の透視図を例解している。
【0053】
図14B】~
図14C図14B~14Cは、図14Aのデバイスのそれぞれ上面平面図および下面平面図を例解している。
【0054】
図14D】~
図14E図14D~14Eは、図14Aのデバイスの側面図を例解している。
【0055】
図14F図14Fは、線F-Fに沿って取られた図14Bのデバイスの横断面図を例解している。
【0056】
図14G図14Gは、線G-Gに沿って取られた図14Bのデバイスの側部横断面図を例解している。
【0057】
図14H図14H図14Aのデバイスの分解透視図を例解している。
【0058】
図14I図14Iは安定化システムの実装の横断面透視図を例解している。
【0059】
図15A図15Aは、安定化システムを有する調節性眼内レンズデバイスの実装の透視図を例解している。
【0060】
図15B図15B図15Aの線B-Bに沿って取られた横断面図である。
【0061】
図15C図15C図15Aのデバイスの安定化システムである。
【0062】
図16A図16Aは、安定化システムを有する調節性眼内レンズデバイスの実装の透視図を例解している。
【0063】
図16B図16B図16Aの線B-Bに沿って取られた横断面図である。
【0064】
図16C図16C図16Aの線C-Cに沿って取られた横断面図である。
【0065】
図16D図16Dは、図16Aのデバイスの内部支持部および安定化システムである。
【0066】
図16E】~
図16F図16E~16Fは図16Aのデバイスの側部の図である。
【0067】
図17A図17Aは、安定化システムを有する調節性眼内レンズデバイスの実装の透視図を例解している。
【0068】
図17B図17B図17Aの線B-Bに沿って取られた横断面図である。
【0069】
図17C図17C図17Aの線C-Cに沿って取られた横断面図である。
【0070】
図17D図17D図17Aのデバイスの内部支持部である。
【0071】
図17E】~
図17F図17E~17Fは図17Aのデバイスの側部の図である。
【0072】
図18A図18Aは調節性眼内レンズデバイスの実装の透視図を例解している。
【0073】
図18B図18B図18Aのデバイスの上面図である。
【0074】
図18C図18C図18Aの線C-Cに沿って取られた横断面図である。
【0075】
図19A図19Aは、安定化システムを有する調節性眼内レンズデバイスの実装の上面図を例解している。
【0076】
図19B図19Bは、安定化システムを有する調節性眼内レンズデバイスの実装の上面図を例解している。
【0077】
図19C図19Cは、図19Bのデバイスの透視図を例解している。
【0078】
図19D図19D図19Cの線D-Dに沿って取られた横断面図である。
【0079】
図19E図19Eは、後側光学部を支持する図19Bのデバイスの内部支持部である。
【0080】
本願の図面は例示的であるのみであり、一定比率であることは意味されないということは了解されるはずである。
【発明を実施するための形態】
【0081】
本開示は、一般的には眼科学の分野に、より具体的には調節性眼内レンズ(AIOL)などの眼内レンズ(IOL)を包含する眼科用デバイスに関する。AIOLの動的性質は、若い調節可能な天然の眼とちょうど同様に、フォーカス度数の大きい連続的な範囲を可能にする。本願に記載されるデバイスは、天然の水晶体によって典型的に用いられる眼組織、例えば毛様体、毛様体突起、およびチン小帯と機械的および機能的に相互作用することによって、遠方から近くまでの調節可能な範囲全般に渡ってフォーカス度数を提供して、調節および無調節を成し遂げ得る。これらの組織によって生み出される力は、本願に記載されるデバイスへと機能的に変換・伝達され、度数変化がより有効に調節することを引き起こす。本願に記載されるデバイスは、インプラントの前に、間に、および後のいずれかの時間においてサイズおよびフィットを調整されるように構成される。本願に記載されるデバイスは、病気の天然の水晶体を置換するように眼内にインプラントされ得る。しかしながら、デバイスが、天然の水晶体(有水晶体患者)または患者の水晶体嚢内の以前にインプラントされた眼内レンズ(偽水晶体患者)の補足としてもまたインプラントされ得るということは了解されるはずである。
【0082】
図1Aおよび1Cの参照によると、ヒトの眼10は、角膜12、虹彩14、毛様体溝16、毛様体筋18、チン小帯20、水晶体嚢22内に含有される水晶体21を包含する。調節は、毛様体筋18が収縮して、それによって水晶体嚢22の赤道領域上のチン小帯静止張力を解除するときに起こる。チン小帯張力の解除は、水晶体21の内在的な弾性が、前側の水晶体表面23および後側の水晶体表面24の増大した表面曲率によって、より球体状または球面状の形状に変わることを許す。加えて、ヒト水晶体は視覚システムにおけるその機能を劣化させる1つ以上の障害に罹患し得る。よくある水晶体障害は白内障であり、これは正常なら透明な天然の水晶体マトリックス26の混濁からなる。混濁は加齢プロセスからもたらされ得るが、遺伝、糖尿病、または外傷によってもまた引き起こされ得る。図1Aは、混濁した水晶体核26を有する水晶体嚢22を含む水晶体カプセルを示している。
【0083】
白内障術式においては、患者の混濁した水晶体が透明なレンズインプラントまたはIOL30によって置換される。図1Bに図示されている従来の嚢外白内障外科手術においては、水晶体マトリックス26が除去され、毛様体および毛様体筋18へのチン小帯靭帯接続と一緒に前側および後側カプセルの薄壁を無傷で残す。水晶体コアは、図1Bに例解されている円形切嚢、すなわち水晶体嚢の前側部分23の除去から、超音波水晶体乳化術によって除去される。図1Bは、ちょうど水晶体嚢22へのインプラント後の従来の3ピースIOL30を図示している。水晶体嚢22は、数日から数週間の治癒期間後に、水晶体嚢22の壁の潰れおよび爾後の線維化が原因で従来の3ピースIOL30の周りを有効に収縮包装し得る。今日実施されている白内障外科手術は、調節を提供する眼の天然の構造の大部分の回復不能な喪失を引き起こす。水晶体マトリックス26は完全に失われ、水晶体嚢22のインテグリティーは切嚢によって縮減される。水晶体嚢の線維化は、その水晶体嚢内に置かれたレンズの動的な動きを限定する。それゆえに、従来のIOLは、調節可能であると主張するものであっても、近見にとって充分量の調節を提供するための光軸に沿った十分な軸方向のレンズの空間的変位またはレンズの形状変化を提供することができなくあり得る。
【0084】
レンズの組み合わせをインプラントして、有水晶体IOLのケースにおいては既存のレンズの屈折異常に対処し、または偽水晶体患者のケースにおいては白内障外科手術後の標準的なIOLの屈折結果を改善することが公知である。これらの「ピギーバック」IOLは、以前にインプラントされたIOLまたは天然の水晶体に対して前側に置かれて、偽水晶体のケースにおいては白内障外科手術の屈折結果を改善し、または有水晶体眼のケースにおいては眼の屈折状態を変化させて、通常は強度近視を矯正し得る。一般的には、これらのレンズは毛様体溝にインプラントされ、非調節性である。図1Cに最良に示されている通り、毛様体溝16は虹彩14の基部の後側表面と毛様体の前側表面との間の空間である。
【0085】
調節性IOLは、白内障を患ってはいないが、それらの近視、遠視、および老眼を矯正するためのメガネおよびコンタクトへのそれらの依存度を縮減したい患者にとってもまた有益である。近視性、遠視性、および乱視性の眼の大きい異常を矯正するために用いられる眼内レンズは「有水晶体眼内レンズ」と呼ばれ、水晶体を除去することなしにインプラントされる。いくつかのケースにおいては、白内障が全く存在しない場合であっても、(有水晶体IOLではなく)無水晶体IOLが水晶体摘出および置換外科手術によってインプラントされる。この外科手術の間には、白内障外科手術に非常に類似であるプロセスによって、水晶体が摘出され、IOLがそれを置換する。屈折レンズ交換は白内障外科手術のように水晶体置換を伴い、レンズ挿入のために眼に小さい切開を作ること、局所麻酔の使用を要求し、およそ30分間続く。本願に記載される調節性IOLは屈折レンズ交換のために患者に用いられ得る。
【0086】
本願には、調節性IOL(「AIOL」)が記載され、これは例えば1ディオプトリー(1D)から3Dまで最高で約5Dまたは6Dまでの範囲の所望の光学度数変化を達成し得る。下でより詳細に記載される通り、本願に記載されるデバイスは、眼内に配置されるように構成された1つ以上の力変換・伝達アームを包含する調節可能な機構を包含し得、その結果、それらは1つ以上の毛様体構造の動きを活用し、動きを機能的な力へと変換・伝達して、水晶体嚢の動きとは独立の様式で調節および無調節のためにレンズ本体の形状変化を駆動する。本願に記載されるデバイスは、さらに、例えば水晶体嚢内に配置されるように構成される調節可能な機構とは別個の安定化システムを包含し得る。本願に記載されるデバイスは、上に記載されている水晶体嚢線維化が原因で起こりがちな公知の問題を取り除く。本願に記載されるデバイスは、毛様体筋、毛様体、毛様体突起、およびチン小帯を包含するがこれに限定されない毛様体構造の1つまたは組み合わせの動きを活用するように構成され得るということは了解されるはずである。簡潔にするために、用語「毛様体構造」は、本願においては、レンズ本体の調節を成し遂げるための力変換・伝達アームによってその動きが活用され得る1つ以上の毛様体構造のいずれかを言うために用いられ得る。
【0087】
本願に記載されるデバイスは病気の天然の水晶体を置換するために眼内にインプラントされ得る。いくつかの実装において、本願に記載されるデバイスは屈折レンズ交換術式によって無水晶体IOLとしてインプラントされ得る。本願に記載される眼内レンズは、天然の水晶体(有水晶体患者)または患者の水晶体嚢内の以前にインプラントされた眼内レンズ(偽水晶体患者)の補足としてもまたインプラントされ得る。本願に記載されるレンズは、U.S.特許公開No.2009/0234449、2009/0292355、2012/0253459、およびPCT公開No.WO2015/148673に記載されている眼内レンズとの組み合わせで用いられ得、これらはそれぞれそれらの全体が参照によって本願に組み込まれる。そのため、本願に記載されるレンズは、独立して、またはいわゆる「ピギーバック」レンズとして用いられ得る。ピギーバックレンズは、有水晶体または偽水晶体眼の残留する屈折異常を矯正するために用いられ得る。天然の水晶体を置換するために用いられる主要なIOLは一般的にはより厚く、通常は、±10Dから±25Dの範囲であり得る度数を有する。より厚くより大きい度数のレンズは一般的には調節しない。対照的に、補足的なレンズは有意な光学度数をシステムに提供する必要はない。補足的なレンズは主要なIOLと比較して比較的薄くあり得、より多くの調節を受け得る。より薄いレンズの形状変化および動きは、厚い主要なレンズに対して相対的に一般的により容易に遂行される。本願に記載されるAIOLは独立して用いられ得、ピギーバックレンズとして天然の水晶体またはインプラントされたIOLとの組み合わせで用いられる必要はない。本願に記載されるAIOLの1つ以上のコンポーネントは、毛様体溝16内に、毛様体突起上に、水晶体嚢22内に、またはその組み合わせで配置されるように構成され得る。
【0088】
ここで図2Aから2Fに目を向けると、調節性眼内レンズ(「AIOL」)100はレンズ本体105および1つ以上の力変換・伝達アーム115を包含し得、これらのそれぞれは下でより詳細に記載される。下でより詳細に記載される通り、力変換・伝達アーム115は毛様体構造の1つ以上の動きを活用するように構成され、その結果、それらはレンズ本体105に対して相対的に双方向的に可動であって、レンズ本体105の調節可能な形状変化を成し遂げる。例えば、本開示をいずれかの具体的な理論または作業モードに限定することなしに、毛様体筋18は実質的に環状構造または括約筋である。天然の状況において、眼が遠距離の対象物を見やっているときには、毛様体内の毛様体筋18は弛緩し、毛様体筋18の内部直径がより大きくなる。毛様体突起はチン小帯20を引っ張り、これは翻って水晶体カプセル22をその赤道部の周りにおいて引っ張る。これは天然の水晶体が平坦化するかまたはより凸状でなくなることを引き起こし、これは無調節と呼ばれる。調節の間には、毛様体筋18は収縮し、(毛様体リング直径CRD)毛様体筋18によって形成されるリングの内部直径はより小さくなる。毛様体突起はチン小帯20上の張力を解除し、その結果、天然の水晶体はその天然のより凸状の形状に跳ね戻り、眼は近い距離にフォーカスし得る。毛様体筋18(または1つ以上の毛様体構造)のこの内向きの/前側の動きは、レンズ本体105の形状変化を引き起こすように力変換・伝達アーム115によって活用され得る。
【0089】
なお図2Aから2Fでは、レンズ本体105は、一般的にリング形状の外周領域または環状要素104、前側光学部145、静的要素150、および固定された体積の光学流体156によって満たされた固定された体積のシールされたチャンバー155を包含し得る。環状要素104は、前側端部領域、後側端部領域107、および介在する赤道部領域108を包含し得る。環状要素104の前側端部領域は前側光学部145に連結され得、環状要素104の後側端部領域は静的要素150に連結され得、その結果、前側光学部145が静的要素150に対向して配置される。図3A~3Bもまた環状要素104の後側端部領域107および赤道部領域108を例解している。レンズ本体105の前側光学部145は、外周領域144によって囲まれた中心の動的膜143を包含し得る。外周領域144はレンズ本体105の環状要素104に連結されるかまたはそれと一体であり得る。前側光学部145の動的膜143は形状変化を受けるように構成され、一方で、外周領域144は形状変化に抵抗するようにまたは形状変化を受けないように構成され得る。静的レンズであり得る静的要素150も、形状変化を受けずにあり得る。
【0090】
本願において用いられる用語「前側」および「後側」は、理解および明瞭性のために、参照、位置、方向、または整置の相対的な枠を指示するために用いられる。用語の使用は、レンズの構造および/またはインプラントにとって限定的であることを意図されない。例えば、眼の解剖学的構造に対して相対的に、前側光学部145がAIOL100の光軸Aに沿って前側に配置され得、かつ静的要素150がAIOL100の光軸Aに沿って後側に配置され得るように、眼内におけるレンズ本体105の整置は様々であり得る。しかしながら、眼の解剖学的構造に対して相対的に、前側光学部145は後側に配置され得、静的要素150は前側に配置され得る。
【0091】
レンズ本体105の環状要素104の赤道部領域108は少なくとも1つの形状変形膜140を包含し得る(図2E~2Fに最良に示されている)。前側光学部145、動的膜143、前側光学部145の外周領域144、形状変形膜140、および静的要素150の内側表面同士は、共同で、固定された体積のシールされたチャンバー155を形成し得、固定された体積の光学流体156によって満たされる。形状変形膜140は少なくとも1つの力変換・伝達アーム115に隣り合って配置される。下でより詳細に記載される通り、力変換・伝達アーム115の動きは形状変形膜140の動きを引き起こし、それによって光学流体156およびシールされたチャンバー155を変形させて、レンズ本体105の動的膜143の形状の変化を引き起こす。
【0092】
前側光学部145は、シリコーン、ポリウレタン、またはフレキシブルアクリル樹脂などの光学的に透明な低モジュラスポリマー系材料から形成された柔軟な光学部であり得る。上で言及された通り、前側光学部145は、外向きに撓むように構成された中心の動的膜143を囲む外周領域144を包含し得る。動的膜143は、レンズの光軸Aが動的膜143を貫通して延在するようにレンズ本体105に対して相対的に配置され得る。動的膜143を囲む前側光学部145の外周領域144はレンズ本体105の環状要素104に連結されるかまたはそれと一体であり得る。いくつかの実装において、前側光学部145の外周領域144は環状要素104の前側端部領域に連結されるかまたはそれと一体であり得る(図3Cを見よ)。前側光学部145は、それが平面状の要素であるような一定の厚さを有し得る。代替的には、前側光学部145は変動する厚さを有し得る。例えば、動的膜143は外周領域144と比較して縮減された厚さを有し得る。外周領域144の横断面厚さと比較して動的膜143のより薄い横断面厚さは、それを、その内側表面への力の適用によって比較的屈しやすくし得る。例えば、シールされたチャンバー155の変形の間に前側光学部145の内側表面に適用される増大した力によって、動的膜143はレンズ100の光軸Aに沿って外向きに撓み得、同時に外周領域144はその形状を維持する。動的膜143は、シールされたチャンバー155内の光学流体156によって前側光学部145の内部表面上に適用される圧力が原因で屈し、外側の面(例えば、前側の面)の外向きの撓みを引き起こすように構成され得る。前側光学部145の外側外周領域144は、光学部145の内側の動的膜143よりも多大な厚さを有し得、シールされたチャンバー155内の光学流体156によって適用されるかかる内部圧力による形状変化に対してより抵抗性であり得る。前側光学部145の外側外周領域144は、内側の動的膜143が近見のために形状変化させられるときであっても、遠方視力矯正を提供し得る。動的膜143は実質的に一定の厚さを有し得る。代替的には、動的膜143は変動する厚さを有し得る。例えば、動的膜143は、線形勾配の厚さ、湾曲した勾配の厚さ、角丸のまたは直角の角を包含するステップを有する2、3、またはより多くの厚さを有し得る。動的膜143は、複数の材料、例えば、動的膜143の中心の近くにおいて柔軟に曲がるように構成された材料と光学部ゾーンを補強し歪みを限定するように構成された他の材料とをもまた包含し得る。それゆえに、前側光学部145の動的膜143は、外側外周領域144の材料よりも外向きの撓みに対して比較的弱い材料から形成され得る。光学部145の種々の領域は、比較的シームレスで中断なしの外側の面を提供するように射出または圧縮成形され得る。領域同士の材料は一般的に不変であり得るが、動的膜143は異なる剛性または弾性を有し得、これは、それが外周領域144よりも遠くに外向きに撓むことを引き起こす。
【0093】
例えば、その全体が参照によって本願に組み込まれるU.S.公開No.2009/0234449に記載される通り、前側光学部145は、様々な多焦点能力を有するように構成されて、本願に記載されるAIOLの着用者により広い範囲の距離に渡って向上した視力を提供し得る。本願において用いられる「光学部ゾーン」は、一般的に、レンズの光軸Aを囲むレンズ本体105のある領域を言い、視覚にとって光学的に透明である。本願において用いられる「調節性ゾーン」は、一般的に、フォーカスのための形状変化を受けることができるレンズ本体105の領域を言う(例えば、動的膜143)。光学部ゾーンは矯正度数を有するように構成されるが、光学部ゾーン全体は同じ矯正度数を有さずにあり得る。例えば、前側光学部の動的膜143および外周領域144はそれぞれ光学部ゾーン内に配置され得る。動的膜143は矯正度数を有し得、一方で、外周領域144は矯正度数を有さずにあり得る。または、例えば、動的膜143によって画定される直径は光学度数を有し得、外周領域144は動的膜143のものよりも多大なまたは少ない度数を有し得る。動的膜143は総体的な光学部ゾーンに等しいかまたはそれよりも小さくあり得、多焦点レンズを作り出し得る。レンズ本体105の調節性ゾーンは総体的な光学部ゾーンに等しいかまたはそれよりも小さくあり得る。
【0094】
上で言及された通り、なお図2A~2Fでは、レンズ本体105の環状要素104の赤道部領域108は少なくとも1つの形状変形膜140を包含し得る。形状変形膜140は、環状要素104の赤道部領域108の円弧長さに沿って、環状要素104の前側端部領域と環状要素104の後側端部領域107との間において延在し得る。円弧長さは、単体でまたは他の形状変形膜140との組み合わせでのどちらかで、変形膜140の内向きの(または外向きの)動きによって動的膜143の受動的な形状変化を引き起こすために十分なものであり得る。調節の間のAIOL100の光軸Aの方への一般的に内向きの方向の形状変形膜140の動きは、いずれかの軸において総体的な光学部ゾーン直径に影響を及ぼすことなしに、動的膜143の外向きのしないまたは撓みを引き起こし得る。形状変形膜140は柔軟性を有し得、その結果、それは可動であり、レンズ本体105の環状要素104、静的要素150、および前側光学部145に対して相対的に変位を受け得る。例えば、形状変形膜140は環状要素104の隣り合う領域よりも柔軟であり得、その結果、それは環状要素104および前側光学部145の外周領域144に対して相対的に選択的に可動である。形状変形膜140は静止位置を有し得る。形状変形膜140の静止位置は様々であり得る。いくつかの実装において、静止位置は、形状変形膜140が、前側光学部145に対して平行な平面Pに対して一般的に直角に配置されるときであり、その結果、それは光軸Aに対して平行である垂直に整置された横断面プロファイルを有する(図2Fを見よ)。形状変形膜140の静止位置はレンズ本体105の光軸Aに対して相対的に傾斜もまたし得る。図13A~13Bに示されている通り、側部の変形膜140の横断面は環状構造104に対して相対的に角度Θで周縁において傾斜し得る。いくつかの実装において、角度Θは45~89度の間である。いくつかの実装において、Θは80~89度である。代替的には、変形膜140の横断面プロファイルは、レンズ本体105の光軸Aから周縁において突出する曲線的構造であり得る(図13Cを見よ)。周縁の突出する側部変形膜140は周縁において0.05mm~0.5mmだけ突出し得る。いくつかの実装において、曲線的突出部は、環状構造104の赤道部領域108に対して相対的に、レンズ本体105の光軸Aから離れるように0.1mm~0.3mmだけ延在する。下でより詳細に記載される通り、1つ以上の側部変形膜140の形状および相対的配列は、レンズに弱い力の、小さい動きの、高度に調節可能な機能を提供する。
【0095】
形状変形膜140の動きは、それが形状変形膜140への力の適用によって第1の方向に(例えば、一般的にレンズ本体105の光軸Aの方へ)動くような圧縮、潰れ、湾入、伸張、変形、方向転換、変位、ヒンジ動作、または他の型の動きであり得る。形状変形膜140の動きは光学部ゾーンの内部または外部に位置し得る。形状変形膜140上の力の解除時に、膜140および/またはAIOL100の他のコンポーネント(例えば、シールされたチャンバー155を満たす光学流体156)は、形状変形膜140がその静止位置の方に戻るような弾性記憶を有し得る。眼内のAIOL100の連結に依存して、形状変形膜140は、AIOL100の光軸Aから遠ざかる向きにもまた引き離され得る。
【0096】
形状変形膜140はそれぞれの力変換・伝達アーム115に隣り合って在るか、またはそれに連結される。いくつかの実装においては、毛様体筋収縮が原因で力変換・伝達アーム115がAIOL100の光軸Aの方へ内向きに動かされると、力変換・伝達アーム115は形状変形膜140の外側表面に当接し、外側表面上に力を適用する。それゆえに、形状変形膜140と力変換・伝達アーム115との間の接触は可逆的接触であり得、その結果、力変換・伝達アーム115は毛様体筋収縮によって外側表面上に押しやられ、膜140に当接し、それを内向きに押しやる。毛様体筋弛緩によって、形状変形膜140はその静止位置に戻り、力変換・伝達アーム115はその静止位置に戻る。可動コンポーネント(すなわち、動的膜および/または形状変形膜)のエラストマー的性質は、それらの静止位置への力変換・伝達アーム115の戻りを引き起こし得る。他の実装においては、図2Fに最良に示される通り、形状変形膜140はそのそれぞれの力変換・伝達アーム115に連結されるかまたはそれと一体であり得る。他の実装と同様に、毛様体筋収縮によって、力変換・伝達アーム115および形状変形膜140は協調的に静止位置から一般的に内向きに変位した位置へと動き、動的膜143の形状変化を引き起こす。
【0097】
各変形膜140の数および円弧長さは様々であり得、デバイスの総体的な直径および厚さ、内部体積、材料の屈折率などに依存し得る。一般的には、環状要素104は十分な硬質性および嵩をAIOLに提供し、その結果、それはインプラントの間にハンドリングおよび操作され得、同時に、変形膜(単数または複数)140は十分に柔軟であって、力変換・伝達アームがシールされたチャンバー155の形状を変化させることを許す。AIOL100の総体的な直径および厚さに依存して、形状変形膜140の円弧長さは少なくとも約2mmから約8mmであり得る。いくつかの実装において、AIOLは、約2mmから約8mmの間の円弧長さを有する単一の形状変形膜140を有する。単一の形状変形膜140は、約0.1重量グラム(gf)ほども低い力の適用によって約10μmおよび約100μmの間を動いて、動的膜143の少なくとも1D、または1.5D、または2D、または2.5D、または3Dの変化を達成するように設計され得る。別の実装において、AIOLは、それぞれ約3mmおよび約5mmの間である円弧長さを有する2つの対向し合う形状変形膜140を有し得る。形状変形膜140は、それぞれ約0.25重量グラムから1.0重量グラムの適用によって約25μmおよび約100μmの間を動いて、動的膜143の少なくとも1Dの変化を達成するように設計され得る。これは以下でより詳細に記載される。
【0098】
形状変形膜140はある程度の力の適用によってレンズ本体の残りに対して相対的に動き得、または潰れ得る。一般的には、非常に低い力が、信頼できる光学特性を伴って、十分なディオプトリー変化を引き起こすためのミクロンの動きを引き起こすために十分であるように、AIOLは設計される。調節を成し遂げるためのレンズ本体105の動的膜143の動きを達成するために適用される力は約0.1重量グラム(gf)ほども低くあり得る。いくつかの実装において、適用される力は約0.1gfから約5.0gfの間または約0.25gfから約1.0gfの間または約1.0gfから約1.5gfの間であり得る。調節を達成するために適用される力に応答して、レンズ本体105の中心部分(例えば、動的膜143)に対して相対的なレンズ本体105の変形可能な領域(例えば、形状変形膜140)の動きは、約50μmほども小さくあり得る。適用される力に応答して、動的膜143に対して相対的なレンズ本体の形状変形膜140の動きは、約50μmから約500μmの間、約50μmから約100μmの間、約50μmから約150μmの間、または約100μmから約150μmの間であり得る。形状変形膜140の動きのこれらの範囲(例えば50μm~100μm)をもたらす適用される力の範囲(例えば約0.1gfから約1gf)は、本願に記載されるデバイスに、少なくとも±1D、好ましくは約±3ディオプトリー(D)よりも多大なダイナミックレンジ内である調節性能力を提供し得る。いくつかの実装において、度数は約100~150μmの動きについて±4Dおよび±6Dの間である。本願に記載されるデバイスは、形状変形膜140の約100μmの動きおよび形状変形膜140に適用される少なくとも約0.25gfの力について少なくとも±1Dである調節性範囲を有し得る。他の実装において、デバイスは、約50μmの動きおよび少なくとも約1.0gfについて少なくとも±1Dである調節性範囲を有し得る。他の実装において、デバイスは、約100μmの動きおよび少なくとも約1.0gfについて少なくとも±3Dである調節性範囲を有し得る。他の実装において、デバイスは、約50μmの動きおよび少なくとも約0.1gfについて少なくとも±3Dである調節性範囲を有し得る。
【0099】
本願に記載されるミクロンの動きは、(例えばデバイスの1つの側からの)非対称的なミクロンの動きであり得、またはデバイスの対向し合う側同士から対称的なもしくは光軸に対して相対的にデバイスの周りに一様に分布したミクロンの動きであり得る。ミクロンの動きが非対称的であるかまたは対称的であるかにかかわらず、達成される動的膜143の外向きの撓みは球面状である。本願に記載されるミクロンの動きは形状変形膜140同士の合計の集合的な動きでもまたあり得る。そのため、レンズ100が単一の形状変形膜140を包含する場合には、その単一の膜が、所望のディオプトリー変化(例えば少なくとも1Dから約3Dの変化)を達成するための所望のミクロンの動き(例えば50μm~100μm)ができる。レンズ100が2つの形状変形膜140を包含する場合には、膜同士が一緒に50μm~100μmの間の動きを達成して、少なくとも1Dのディオプトリー変化を達成することができる。本願に記載されるデバイスによって達成されるディオプトリー変化は、少なくとも約1Dから最高でおよそ5Dまたは6Dまでの変化であり得る。いくつかの実装において、例えば黄斑変性を有する患者について、ディオプトリー変化は7Dおよび10Dの間であり得る。
【0100】
上で言及されている通り、なお図2A~2Fでは、レンズ本体105は環状要素104に連結された静的要素150を包含し得る。静的要素150は環状要素104の後側端部領域107に連結し得、一方で、前側光学部145は環状要素104の前側端部領域に連結され得、その結果、静的要素150および前側光学部145はAIOL100の光軸Aに沿って互いに対向して位置する。静的要素150が環状要素104と連結するやり方は様々であり得る。例えば、図2E~2Fに示されている通り、静的要素150は、第1の側における平坦な表面151と、反対の第2の側における湾曲した表面152と、環状要素104の後側端部領域107と嵌合するように構成されたシール表面154を有する周縁の接続リング153とを有し得る。平坦な表面151がレンズ本体105のシールされたチャンバー155に面した内側表面を形成し、湾曲した表面152が眼の流体との接触をしているように、静的要素150はレンズ本体105の外部に配置され得る。代替的には、平坦な表面151が眼の流体との接触をしており、湾曲した表面152がレンズ本体105のシールされたチャンバー155に面した内側表面を形成するように、静的要素150はレンズ本体105の内部に配置され得る。周縁の接続リング153が環状要素104の赤道部領域108からある距離だけ離間されるように、周縁の接続リング153のシール表面154は環状要素104の後側端部領域107に接続し得る。静的要素150の内部の平坦な表面151は前側光学部145の外周領域144の内側表面に当接し得る。
【0101】
静的要素150は光学的に透明であり得、AIOL100の光学部に影響を及ぼすことなしに支持部機能を提供し得る。そのため、静的要素150はゼロ度数を有し得、レンズ本体105への後側支持部を形成し得る。静的要素150はシリコーン、ウレタン、アクリル樹脂材料、低モジュラスエラストマー、またはその組み合わせから形成され得る。静的要素150は、正視状態に矯正するための静的な光学部であるかもしくはそれを包含し得、または無水晶体患者のための適当な度数(通常は±10Dから±30D)であり得る。AIOL100が別個のカプセル内IOLと併せて(例えば「ピギーバック」レンズとして)用いられている場合には、眼の光学システムの残留する屈折または他の光学的異状を矯正するために、度数は約-5Dから約+5Dの範囲であり得る。静的要素150は、平凸、凸平、両凸、凹凸、またはいずれかの他の組み合わせであり得る。例えば柔軟なレンズと連係したいずれかの異状を縮減または補正するために、静的要素150(または、後側に配置されたレンズ)はトーリックレンズ、球面レンズ、非球面レンズ、回折レンズ、または両方のいずれかの組み合わせであり得る。静的要素150およびそれを囲む流体(それが眼の流体であるかまたはシールされたチャンバー155内の光学流体156であるかにかかわらず)の相対的な屈折率が、いずれかの所与の形状について静的要素150の度数を決定するであろう。
【0102】
AIOL100は、組み上がったレンズ100に機械的安定性を提供するための補強部および/または支持部の種々の組み合わせのいずれかを包含し得る。例えば、補強部は、前側レンズ145および/または静的要素150の周縁領域であり得る。補強部は光学的に透明であるかまたは混濁しているかどちらかであり得る。補強構造は硬質ポリマーから形成され得、シリコーン、ポリウレタン、PMMA、PVDF、PDMS、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリカーボネートなど、またはその組み合わせを包含するが、これに限定されない。レンズ100の他の領域も1つ以上の補強部または支持部を包含し得る。いくつかの実装においては、支持部がレンズ本体105の少なくともある外部部分を囲むように、1つ以上の支持部はシールされたチャンバー155の外部に配置され得る。例えば、外部支持部は、レンズ本体105の外周の周りに延在する一般的に環状の要素であり得、中心の開口部を有し得、その中に前側光学部145の少なくとも動的膜143が整列し、その結果、動的膜143は外向きの変形のために利用可能である。
【0103】
他の実装において、AIOL100は1つ以上の内部支持部110を包含し、内部支持部はAIOL100内に、例えばレンズ本体105のシールされたチャンバー155内にまたはそれに面して位置する(図3A~3Cを見よ)。1つ以上の内部支持部110は、前側光学部145の外側外周領域144の内部側の厚化した部分であり得る。1つ以上の内部支持部110はAIOLに連結された別個のコンポーネントでもまたあり得る。1つ以上の内部支持部110は、前側光学部145の外周領域144に連結および/または内部に埋め込まれ得る。内部支持部110は、レンズ本体105の光学コンポーネントを、力変換・伝達アーム115、形状変形膜140、および動的膜143などのAIOL100の動くパーツの動きの間の光学的歪みから機械的に隔離するように働き得る。デバイスの動くパーツの偶発的動きを防ぐために、内部支持部110は、形状変形膜140または前側光学部145の動的膜143よりも固い、厚い、および/または硬質である材料(単数または複数)から形成され得る。代替的には、内部支持部110は形状変形膜140または前側光学部145の動的膜143と同じ材料から作られ得、支持部構造の幾何形状が原因で、機械的隔離機能を遂行し得る。支持部110は硬質ポリマーから形成され得、シリコーン、ポリウレタン、PMMA、PVDF、PDMS、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリカーボネートなど、またはその組み合わせを包含するが、これに限定されない。例えば、内部支持部110は、硬質または半硬質骨格インサートを有するシリコーン、または複数のシリコーンの組み合わせであり得る。
【0104】
図3A~3Cは、複数個の内部支持部110a、110b、110c、110dを有する外周領域144を包含するレンズ本体105の実装を例解している。内部支持部110は、AIOL100の中心の縦断平面Pに対して一般的に平行に在る比較的平面状の要素であり得る。各支持部110の外側領域はレンズ本体105の環状要素104の赤道部領域108に隣り合って配置され得、前側光学部145の動的膜143の方へ内向きに延在し得る。支持部110の外側領域は環状要素104の赤道部領域108に連結されるかもしくはそれと一体であり得、または支持部110の外側領域は環状要素104の赤道部領域108から離間され得る。図3Aは、変形膜140が赤道部領域108の円弧長さに沿って延在するところの近くにおいて環状要素104の赤道部領域108から離間されている、支持部110bを有する実装を例解している。変形膜140が内向きの調節可能な動きの間に支持部110bに尚早に当接または接触しないように、変形膜140からのこの離間は許容度を提供する。別の例として、図3Dは、それらがレンズ本体105の環状要素104の赤道部領域108に連結されるか、それと一体であるか、またはさもなければそれと連接するように、内側支持部110aおよび110cの2つの外側領域が外側外周領域の円弧に沿ってレンズ本体105を支持するということを示している。例えば形状変形膜140が環状要素104の円弧長さに沿って延在するところの近くにおいて、他の2つの内側支持部110bおよび110dの外側領域は、レンズ本体105の環状要素104の赤道部領域108からある距離だけ離間される。これは形状変形膜140の妨げのない内向きの動きを可能にし、内側支持部110b、110dとそれぞれの形状変形膜140との間の接触を防ぐ。類似に、図3Gの内側支持部110は、支持部110b、110dの外側領域がレンズ本体105の環状要素104の赤道部領域108に連結されるか、それと一体であるか、またはさもなければそれと連接し、一方で、支持部110a、110cの外側領域が、形状変形膜140が位置するところの近くにおいてレンズ本体105の環状要素104の赤道部領域108からある距離だけ離間されるということを示している。
【0105】
前側光学部145の外周領域144上における内部支持部110の分布は、支持部110が形状変形膜140の動きに干渉しないことを保証し得る。例えば、図3Eは、それらの外側領域が、形状変形膜140および力変換・伝達アーム115が位置するところの間において環状要素104と連結するように、内部支持部110a、110b、および110cが分布するということを示している。類似に、外側領域が、形状変形膜140および力変換・伝達アーム115が位置するところの間において環状要素104と連結するように、図3Fに示されている実装の内部支持部110a、110b、110c、および110dは分布する。
【0106】
レンズ本体105の外周領域またはレンズ本体105の中心領域に近いかどうかにかかわらず、形状変形膜140に対して相対的な1つ以上の内部支持部110の分布および離間は、レンズの動くパーツとのそれらの接触を最小化し得る。内部支持部110の形状は、内部支持部110と形状変形膜140との間の接触をもまた最小化または限定し得る。例えば、図3Cに最良に示されている通り、支持部110b、110dの外側領域は支持部が環状要素104に連結するところの近くにおいてベベル加工され得、その結果、ベベル111は形状変形膜140の内向きの動きを可能にし、同時に膜140と支持部の外側外周との間の接触を避ける。ベベル111は、約10~80度の間である角度を有する単一のベベルであり得る。1つ以上の支持部の外側領域はベベルを包含する必要はないということは了解されるはずである。形状変形膜140と1つ以上の内部支持部110との間の接触は、ベベルを組み込むこと以外に他のやり方で避けられ得る。例えば、1つ以上の支持部110は、接触を避けるために形状変形膜140から(例えば、外周に沿っておよび/または外周から離れて)ある距離だけ離間され得る。それらがレンズ本体の中心の方へある距離だけ延在し、安定性および支持を提供するが、一般的に前側光学部145の中心の動的膜143の手前で止まるように、内部支持部110は外側領域からそれらの内側領域の間のある長さをもまた有し得る。そのため、レンズ本体105の周りに分布した内部支持部110は、前側光学部145の外側外周領域144から前側光学部145の動的膜143まで、中心の厚さが減少していることを作り出すことに資し得る。
【0107】
言及された通り、1つ以上の支持部110のそれぞれの総体的な形状は様々であり得る。内部支持部110は、種々の形状のいずれかを有し得、多角形、ピラミッド形、三角形、長方形、四角、台形、および種々の曲線的形状のいずれかを包含するが、これに限定されない。いくつかの実装において、1つ以上の支持部110はレンズ本体105の外周の近くにおけるより広い寸法と前側光学部145の中心の動的膜143の近くにおけるより狭い寸法とを有し得る。他の実装において、1つ以上の支持部110は細長い棒形状であり得る。前側光学部145の外周領域144は、単一の内側支持部110、2、3、4、5、6、またはより多くの別個の内部支持部110を包含し得る。それゆえに、内部支持部110の分布、サイズ、形状、および数は様々であり得る。
【0108】
レンズ本体105は、満たされた固定された体積のシールされたチャンバー155を包含し得、形状変形膜140、前側光学部145、および静的要素150の内側に面した表面同士によって共同で形成され、固定された体積の光学流体156によって満たされる。外周領域144の1つ以上の内側支持部110の内側に面した表面および前側光学部145の動的膜143の内側に面した表面もまた、シールされたチャンバー155の一部を形成する。それゆえに、1つ以上の支持部110の分布、サイズ、形状、および数は、シールされたチャンバー155の総体的な形状に影響する。再び図3A~3Gでは、隣り合う内部支持部110同士は互いからある距離だけ離間され得、シールされたチャンバー155を貫通する複数個のコリドー112を支持部のピラー間に形成する。支持部のピラーは、図3Dに示される通り、比較的狭いコリドー112を形成するような形状であり得る。これらのより狭いコリドー112は、一般的にHまたはX形状を有するシールされたチャンバー155を作り出し得る。支持部のピラーは、図3E~3Gに示されているなどの比較的広いコリドー112を形成するような形状であり得る。これらのより広いコリドー112は、プラス、十字、星、クローバー、四つ葉(quadrafoil)、五つ葉、ネフロイド、または他の形状の一般的形状を有するシールされたチャンバー155を作り出し得る。
【0109】
シールされたチャンバー155を満たす光学流体156は非圧縮性の光学流体であり得、シールされたチャンバー155の体積は光学流体156の体積と実質的に同一であり得る。そのため、チャンバー155を満たす光学流体156は、実質的な外部の力がAIOL100に適用されない静止状態においては、動的膜143または変形膜140どちらかの有意な外向きの撓みを引き起こさない。いくつかの実装においては、シールされたチャンバー155は光学流体156によってやや過剰に満たされ得、その結果、動的膜143が静止においていくらかの外向きの撓みを有する。動的膜143の小さい程度の静止した外向きの撓みは、レンズの光学的アーチファクトを縮減し得る。しかしながら、静止した外向きの撓みがいかに多分に動的膜143に存在しようとも、膜143は形状変形膜140への圧縮力の適用によって追加の外向きの撓みをなお受けて、調節を提供し得る。シールされたチャンバー155の内部の圧力は、シールされたチャンバー155の外部の圧力に実質的に等しくあり得る。シールされたチャンバー155内の光学流体156は非圧縮性であるので、その形状はチャンバー155の形状に沿って変形する。1つの場所におけるチャンバー155の変形(例えば、形状変形膜140のマイクロメートルの内向きの動き)は、固定された体積のシールされたチャンバー155内に含有される非圧縮性の光学流体156が、シールされたチャンバー155を形成する内側に面した表面を押すことを引き起こす。シールされたチャンバー155の受動的な変形が第2の場所において起こって、十分な調節性変化を作り出す。前側光学部145の動的膜143は、外周領域144などの前側光学部145の他のパーツと比較して、力の適用によって(例えば、相対的な厚さおよび/または弾性が原因で)外向きに撓むように構成される。それゆえに、形状変形膜140の内向きの動きは、光学流体156を押しやってチャンバー155と共に変形させ、前側光学部145の内側に面した表面を押させる。これは、動的膜143の外側表面の外向きの撓みおよび形状変化をもたらして、光学部ゾーンの調節可能な部分がより凸状になることを引き起こし、AIOL100の度数を増大させる。内部支持部110は十分な安定性をレンズ本体105に提供し、その結果、形状変形膜140への圧縮力の適用は、光学部の最小限の歪みによるマイクロメートルの動きを引き起こす。
【0110】
レンズ本体105のシールされたチャンバー155内に含有される光学流体156は、調節されない静止状態における静止の間および調節の間の両方において、実質的に光学部ゾーン内に留まる。光学流体156はレンズ本体105内に留まり、シールされたチャンバー155の形状の変形と共に形状が変形することによって、動的膜143の調節可能な形状変化に寄与し得る。動的膜143のこの形状変化は、例えばチャンバーの1つのパーツから別のものへの、シールされたチャンバー155内の光学流体156の実際の流動なしに起こり得るということは了解されるはずである。むしろ、形状変形膜140に適用されている力は、シールされたチャンバー155を第1の領域において変形させ、これが少なくとも第2の領域におけるシールされたチャンバー155の受動的な変形を引き起こし得る。シールされたチャンバー155は固定された体積を有し、変形可能である。シールされたチャンバー155を満たす光学流体156は、シールされたチャンバー155の形状に依存して、それと共に形状を変化させる。チャンバー155の1つ以上の部分の内向きの変形、例えばレンズ本体105の外周領域の近くの形状変形膜140の動きは、シールされたチャンバー155の内部の非圧縮性の光学流体156がその内側表面を押すことが原因で、チャンバー155の別の部分の受動的な外向きの変形、例えば前側光学部145の動的膜143の外向きの膨らみを引き起こし得る。光学流体156はAIOLの別個のチャンバー同士の間を流動する必要はなく、むしろ、光学流体156は、シールされたチャンバー155の変化する形状と共に形状を変化させて、前側光学部145の光学部ゾーンの調節可能な部分が外向きに撓むことを引き起こし得、AIOL100の度数を増大させ得る。本願の他所に記載される通り、力変換・伝達アーム115同士(または、非対称的な機構のケースにおいては単一の力変換・伝達アーム115)の非常に小さい動きは、動的膜143の形状を変化させるための形状変形膜140の即時的な小さい動きと十分なディオプトリー変化とをもたらす。それらの非常に小さい動きが少なくとも一対の対向し合う力変換・伝達アーム115が原因で対称的であるかまたは単一の力変換・伝達アーム115が原因で非対称的であるかにかかわらず、達成される動的膜143の外向きの撓みは球面状かつ対称的である。
【0111】
再び図2A~2Fでは、AIOL100は、本願の他所に記載されるディオプトリー変化を引き起こすためにレンズ本体105に対して相対的に前後に動くように構成された1つ以上の力変換・伝達アーム115を包含し得る。本願に記載されるAIOLは、毛様体構造上に配置された力変換・伝達アーム115上に直接的に適用される毛様体の動きをレンズの形状変化に活用するために特に適している。力変換・伝達アーム115は、毛様体構造によって適用される力を、上に記載されているレンズ本体105の可動パーツの形状変化に活用および変換・伝達するように構成される。各力変換・伝達アーム115は、外側接触部分135と、レンズ本体105の外周または赤道部領域に動作可能に連結された内側領域137とを包含し得る(図2E~2Fを見よ)。力変換・伝達アーム115が弛緩した形状変形膜140に対して相対的に動き得るように、各力変換・伝達アーム115の内側領域137は、形状変形膜140との接触をしてまたはそれに隣り合って配置され得る。例えば、力変換・伝達アーム115は、静止の間には膜140から離間され得、調節の間には内向きに動かされて膜140に当接し、膜140を内向きに押しやり得、それから、無調節の間には、力の解除によって、膜140から離れるように動いて膜140を内向きの変形させる力から解放し得る。そのため、調節性の力が囲んでいる眼組織によって適用されるかどうかに依存して、力変換・伝達アーム115の内側領域137は形状変形膜140との可逆的接触に至り得る。代替的には、力変換・伝達アーム115および膜140が互いに協調的に動くように、各力変換・伝達アーム115の内側領域137は形状変形膜140の外側表面に物理的に連結されるかまたはそれと一体であり得る。
【0112】
いくつかの実装において、力変換・伝達アーム115の内側領域137は、同じ平面に沿って取られたレンズ本体105の環状要素104の横断面厚さよりも狭い、レンズ本体105の前側表面とレンズ本体105の後側表面との間の平面に沿って取られた横断面厚さを有し得る。これは、環状要素104に当接することなしに、力変換・伝達アーム115の内側領域137が環状要素104の前側端部領域および後側端部領域の間において変形膜140をある距離だけ内向きに変位させることを可能にし得る。変形可能な膜140に隣り合って配置された内部支持部110との接触をなすことなしに、力変換・伝達アーム110の内側領域137の横断面厚さは、アーム115の内向きの動きをもまた可能にし得る(図2Fを見よ)。しかしながら、力変換・伝達アーム115の内側領域137の横断面厚さは環状要素104よりも狭い必要はないということは了解されるはずである。力変換・伝達アーム115の外側接触部分135は内側領域137よりも大きい横断面厚さを有し得るが、そうである必要はない。しかしながら、力変換・伝達アーム115の外側接触部分135が内側領域137と同じ横断面厚さをもまた有し得るということは了解されるはずである。外側接触部分135は丸みがかったまたは湾曲した輪郭をもまた有し得る。
【0113】
力変換・伝達アーム115の接触部分135は、損傷を引き起こすことなしに毛様体構造の1つ以上とのそれらの接続を改善するフィーチャを組み込み得る。一般的には、接触部分135は、毛様体構造に穿孔することまたは外傷を引き起こすことを避ける。いくつかの実装において、接触部分135は毛様体構造に干渉し得、同時に、隣り合う眼組織と係合するための無外傷性の表面を提供し、その結果、動きは組織自体には外傷を引き起こすことなしに伝達され得る。外側接触部分135は1つ以上の凹み、湾入、溝、歯、櫛歯、または他の表面フィーチャを有するようにもまた成形されて、例えば、毛様体突起またはチン小帯突起などの眼組織との接触および/または噛合を改善し得る。
【0114】
いくつかの実装において、外側接触部分135は1つ以上の凹み136を包含し得る。凹み136は、接触部分135が連係する眼の領域の輪郭に合致する輪郭を有し得る。例えば、接触部分135が調節および無調節の間に1つ以上の毛様体構造と当接、接触、係合、機能的に連結、または密接に連係し得るように、AIOL100のインプラント時に、力変換・伝達アーム115の外側接触部分135は水晶体嚢22の外部に留まり得る。接触部分135の凹み136は、これらの眼組織の1つ以上の部分を受け入れるようにサイズ決めされ得る。例えば、図5Aに示されている通り、凹み136は毛様体筋18の毛様体突起の一般的に凸状の解剖学的構造と係合し得る。眼の凸状の解剖学的構造は外側接触部分135の凹み136内に静止し得、眼の毛様体溝内におけるAIOL100のより良好な固定を提供する。凹み136は外側接触部分135内において中心合わせされかつ対称的であり得、その結果、それは、同じ長さを有する凹み136のどちらかの側における上部および下部リップ部134を作り出す。代替的には、凹み136はある程度非対称的であり得、その結果、それは、やや短い下部リップ部134と比較してやや長い上部リップ部134を作り出す(図3Bを見よ)。いくつかの実装において、上部リップ部134は、毛様体突起が凹み136によって受け入れられるときに毛様体溝のある部分内に延在するために十分な長さを有し得る。下部リップ部134は上部リップ部134より長くもまたあり得る。接触部分135の外側表面は、先鋭化またはベベル加工されたエッジ部をもまた上部および/または下部エッジ部に有し得、その結果、接触部分135が横断面において一般的にS形状を有する。外側接触部分135は、表面テクスチャを提供する複数個のより小さい溝を外側接触部分135の表面に作り出す単一よりも多くの凹み136をもまた包含し得、力変換・伝達アーム115と囲んでいる解剖学的構造との間の摩擦を改善し得る。
【0115】
加えて、いくつかの実装においては、外側接触部分135は、力変換・伝達アーム115の下部リップ部134から後側に延在する複数個のプロング138を包含し得る(図7Dを見よ)。プロング138がチン小帯および/または毛様体突起の間に延在し得るように、プロング138は円錐形、楔、槍、鉤、または他の形状などの種々の形状のいずれかを有し得る。プロング138は先鋭であり得るが、そうである必要はない。いくつかの実装において、プロング138は無外傷性の端部で終結し得、その結果、それらは眼組織を損傷または引裂しない。プロング138は柔軟であり得、その結果、それらはチン小帯または突起の間により容易に配置可能である。他の実装において、プロング138は比較的硬質である。眼内における力変換・伝達アーム115の固定を提供するために、プロング138は、隣り合うチン小帯および/または突起同士の間に少なくともある距離だけ延在するために十分な長さを有し得る。
【0116】
外側部分135は、それが、環状の毛様体構造の対応する円弧長さと係合するように構成された円弧長さに沿って延在するような、総体的な形状を有し得る(図3Aを見よ)。外側部分135の円弧長さは内側領域137の円弧長さよりも長くあり得、その結果、力変換・伝達アーム115がフレア状の形状を帯びる。外側部分135の円弧長さは、内側領域137の円弧長さよりもやや短いかまたは一般的に同じでもまたあり得、その結果、力変換・伝達アーム115がそれぞれ長方形形状または先細り形状を帯びる。いくつかの実装において、力変換・伝達アーム115はより広くあり得、その結果、それらはより長い円弧長さを有する。アーム115による小さい(ミクロ範囲の)内向きの動きによってであっても、より広いアーム115は、より狭い力変換・伝達アーム115よりも多くの材料を変位させ得る。レンズ本体のより多大な円周に沿って延在する(すなわち、より長い円弧長さを有する)力変換・伝達アーム115は、前側から後側の方向により薄くなされ得、より短い円弧長さに沿って延在しかつより多大な厚さを前側から後側の方向に有するアームと同じ量の変位を、各動きによってなおもたらし得る。それが、より小さい開口部からのインプラントのための「タコス」形状へとより容易に折りたたまれ得るかまたは押しやられ得るという点で、より薄い力変換・伝達アーム115はより厚いアームよりも利点を有する。各力変換・伝達アーム115は、内向きの動きによって十分な調節を提供するように構成された領域と、アーム115、それゆえにAIOL100の折りたたみまたは曲がりを促進するための横断面寸法とを包含し得る。例えば、いくつかの実装において、各アーム115は中心領域116を有し得、これは、中心領域116のどちらかの側部の横断面寸法と比較してより薄い横断面寸法を前側から後側方向に有する(図18A~18Bを見よ)。これは、力変換・伝達アーム115、それゆえにAIOL100が、これらの中心領域116を貫通して延在する中心軸Aに沿って中心で折りたたまれることを可能にする。
【0117】
いくつかの実装において、力変換・伝達アーム115は内側部分137および外側部分135を有する一単位の要素である。外側部分135は力変換・伝達アーム115の周縁端部上にキャッピングされた別個の要素でもまたあり得、その結果、力変換・伝達アーム115は一緒に連結された2つのコンポーネントから形成される。図14Fは、外側部分135が内側部分137にキャッピングする別個の要素から形成される実装を例解している。外側部分135は、具体的な患者にとって好適なカスタマイズされた長さを有するように製造され得る。例えば、レンズ本体105と力変換・伝達アーム115の内側部分137とは標準サイズコンポーネントとして製造され得、外側部分135は、患者について取られた測定に従ってサイズ決めされた厚さおよび/または長さを有するように別個に製造され得る。それゆえに、カスタマイズされた外側部分135を内側部分137に連結することは、特定の患者の直径に対してサイズ決めされたレンズ100の総体的な直径を提供する。さらに、外側部分135は、内側部分137の材料よりも有意により軟質である材料から形成され得、その結果、外側部分135は、本願の他所に記載される通り水晶体嚢の外部のデリケートな眼組織に当接するためのより軟質な接触表面を提供する。
【0118】
本願に記載される種々のコンポーネントおよびフィーチャがいくつもの組み合わせのいずれかでAIOL100に組み込まれ得るということは了解されるはずである。そのため、具体的な図面で示される具体的なフィーチャの記載は、フィーチャが本願に記載されるAIOL100の別の実装に組み込まれ得るという点において、限定的であることを意図されていない。例えば、長さおよびフィットのカスタマイズを提供するために内側部分137とは別個のコンポーネントであり得る外側部分135は、外側部分135について記載される種々のフィーチャのいずれかを包含し得るが、それである必要はなく、プロング、溝、凹み、および同類を包含するが、これに限定されない。
【0119】
力変換・伝達アーム115の接触部分135が毛様体構造の少なくとも1つ(すなわちチン小帯、毛様体突起、毛様体筋、および/または毛様体)と静止しての接触または毛様体筋18の収縮時の直ちの接触どちらかをして、調節および無調節の間の光学部の形状変化を駆動するように、AIOL100はインプラントされ得る。好ましい実装においては、力変換・伝達アーム115の接触部分135が毛様体頂部との静止した接触または直ちの接触をして在るように、AIOL100はインプラントされる。別の好ましい実装においては、力変換・伝達アーム115の接触部分135が毛様体との静止したまたは直ちの接触をして在るように、AIOL100はインプラントされる。いくつかの場合において、AIOL100は、それが毛様体構造に対して相対的に一般的にオーバーサイジングであるようにサイズ決めされる。これは、調節の間の力変換・伝達アーム115と毛様体構造との間の接触を保証し得る。いくつかの実装において、AIOLは少なくとも約0.80mm、0.75mm、0.70mm、0.65mm、0.60mm、0.55mm、または0.05mmだけオーバーサイジングであって、力変換・伝達アーム115との毛様体接触を保証する。AIOLはオーバーサイジングである必要はなく、いくつかの状況においては、AIOLのオーバーサイジングは避けられ得るということは了解されるはずである。例えば、AIOLのフィットが具体的な患者にとって好適かつ最適化されているということを保証するために、AIOLの平面における毛様体直径の正確な測定を利用することができる。
【0120】
本願に記載される力変換・伝達アーム115は固定された長さを有し得る。固定された長さの力変換・伝達アーム115は、術前測定に基づいて各患者にとって適当である選択されたサイズを有し得る。代替的には、力変換・伝達アーム115の長さは調整可能であり得る。力変換・伝達アーム115の長さの調整は、眼内への挿入の前に、間に、またはいずれかの時間の後に行われ得る。力変換・伝達アーム115の長さの調整と共に、1つ以上の毛様体構造に対して相対的な力変換・伝達アーム115の位置は様々であり得る。いくつかの実装において、力変換・伝達アーム115はAIOL100の平面に対して一般的に平行に延在し得、またはAIOL100の平面に対して相対的に傾斜し得る。
【0121】
毛様体筋の収縮、およびAIOL100の光軸Aの方への毛様体構造の1つ以上の内向きの/前側の動きは、力変換・伝達アーム115の接触部分135に力を適用する。力変換・伝達アーム115は変形膜140に対して相対的に十分に硬質であって、眼の1つ以上の動くパーツ(例えば、1つ以上の毛様体構造)によって適用される力を伝達して、変形膜140の内向きの動きを引き起こす。いくつかの実装において、力変換・伝達アーム115は、硬質ポリマー、例えばシリコーン、ポリウレタン、PMMA、PVDF、PDMS、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリカーボネートなど、またはその組み合わせであり得る。いくつかの実装において、力変換・伝達アーム115は硬質材料によって補強された要素であり得る。例えば、力変換・伝達アーム115は、内側の硬質要素、例えばシリコーンエラストマー、ポリウレタン、PMMA、PVDF、PDMS、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどを有し得、これが、より軟質な材料、例えばシリコーンエラストマー、ポリウレタン、または疎水性もしくは親水性であるフレキシブルアクリル樹脂材料によってカバーされる。いくつかの実装において、力変換・伝達アーム115は、外側接触部分135から内側接触部分137の間に延在する内側の硬質要素を包含し得る。他の実装において、内側の硬質要素は、外側部分135と内側部分137との間の力変換・伝達アーム115の部分的な長さに沿ってのみ延在する。例えば、毛様体構造を損傷しないようにより軟質な無外傷性の表面を提供するために、内側の硬質要素は、力変換・伝達アーム115が毛様体構造との接触をなす外側接触部分135までずっと延在する必要はない。力変換・伝達アーム115による形状変形膜140の内向きの動き時に、力変換・伝達アーム115の内側の硬質要素がレンズ本体105の外部に留まるように、内側の硬質要素は内側接触部分137までずっと延在する必要もまたない。一般的には、力が毛様体構造によって力変換・伝達アーム115に適用されるときにそれらがそれらの形状を維持し、かつその力を伝達して形状変形膜140を動かすことによってそれらが潰れないまたは変形しない様式で、力変換・伝達アーム115はある材料から形成および/またはサイズ決めされる。上に記載されている通り、形状変形膜140の動きはシールされたチャンバー155の形状変化を引き起こし、これが、シールされたチャンバー155を満たす光学流体の形状を変化させる。光学流体がレンズ本体105の内側表面を押すときに、それは前側光学部145の動的膜143の外向きの撓みを引き起こす。この外向きの撓みはより球面状または凸状のレンズ本体105の形状をもたらし、それによって近見フォーカスにとって好適なレンズの度数を増大させる。
【0122】
力変換・伝達アーム115および形状変形膜140の数は様々であり得る。図2A~2Fに示されている通り、AIOL100は、2つの形状変形膜140と隣り合って在る、デバイスの対向し合う側部に配置された2つの力変換・伝達アーム115を包含し得る。代替的には、AIOL100は、所望のディオプトリー変化を達成するように前側光学部145の動的膜143の形状を変化させるために十分な様式で可動な、単一の力変換・伝達アーム115を包含し得る。AIOL100は、レンズ本体105の周りに分布した2つよりも多くのアーム、例えば3、4、またはより多くの力変換・伝達アーム115をもまた包含し得る。力変換・伝達アーム115は、AIOL100の外周の周りに対称的な様式でまたは非対称的な様式で分布し得る。力変換・伝達アーム115の数が形状変形膜140の数に合致する必要はないということは了解されるはずである。例えば、AIOL100は、環状要素104の赤道部領域108の円弧長さに沿って延在する単一の形状変形膜140と、単一の形状変形膜140の異なる領域との接触をなすように構成されたまたはそれらに連結された1つよりも多くの力変換・伝達アーム115とを包含し得る。
【0123】
AIOL100は安定化システム120をもまた包含し得る。ひとたびデバイスがインプラントされ、形状変化を受けていると、安定化システム120は、デバイスの光学部の整列を維持してデバイスの動きに抵抗するように構成され得る。力変換・伝達アーム115とは違って、安定化システム120はAIOL100の調節を引き起こさない。かつ、力変換・伝達アーム115は安定化システム120からは独立であり、眼内においてAIOL100を所定位置に固定する、中心合わせする、安定化する、および/または保持するためには必要ではないので、本願に記載されるAIOL100は、動的膜のディオプトリー変化を提供するために十分な単一の非対称的な力変換・伝達アーム115を組み込み得る。
【0124】
安定化システム120は、デバイス100の外周領域または存在する場合には外部支持部に連結され得、例えば、接着、連結、またはレンズ本体105の一部として成形され得る。いくつかの実装においては、それが前側カプセルなどの水晶体嚢のある部分との安定化および係合を提供し得るように、安定化システム120はデバイス100の後側領域に連結され得る。
【0125】
安定化システム120は様々であり得る。いくつかの実装において、安定化システム120は、安定化ハプティック、静的ハプティック、リング様要素、フランジ要素、または他の安定化フィーチャの1つ以上を包含する。いくつかの実装において、安定化システム120は、後側端部などのリング様構造171のある領域から外向きに延在するフランジ172を有するリング様構造171を包含し得る(例えば、図7A~7C、図11A~11L、図14A~14H、図15A~15C、および図16A~16Fを見よ)。フランジ172がその後側端部上においてレンズ本体105に対して後側に延在するように、リング様構造171の前側端部は静的要素150の周縁の接続リング153に連結され得る。例えば、リング様構造171の外側直径は、静的要素150の周縁の接続リング153の内側直径内に受け入れられるようにサイズ決めされ得る。しかしながら、安定化システム120とレンズ本体105との間の他の連結配列が本願において考慮されるということは了解されるはずである。リング様構造171およびフランジ172は、環状要素104または環状の内部支持部などのレンズ本体105の他の部分に連結されるかまたはそれと一体であり得、静的要素150に連結される必要はない。一般的には、レンズ本体105への安定化システム120の連結は、その結果、フランジ172が、レンズ100の光軸Aに沿って、レンズ本体105および力変換・伝達アーム115に対して相対的に後側の位置に配置される。加えて、安定化システム120およびそのコンポーネント、例えばフランジ172は、力変換・伝達アーム115および形状変形膜140の動きに干渉しない様式でレンズ本体105に連結される。例えば、図7A図11A図14A図15A、および図16Aに示されている通り、安定化リング171は、力変換・伝達アーム115の場所の間においてレンズ本体105の周辺部から外向きに延在する一対のフランジ172を包含し得る。いくつかの実装においては、フランジ172は外側隆起を有し得るが、それらは力変換・伝達アーム115に対して相対的に90度配置されるので、これはアーム115の調節可能な動きに干渉することなしに安定性を提供し得る。フランジ172またはリング様構造171に適用される力は、シールされたチャンバー155の変形または動的膜143の形状変化を引き起こす様式で安定化システム120によってレンズ100まで伝達されることはない。フランジ172はレンズ本体105および力変換・伝達アーム115に対して相対的に後側の位置に配置され得る。フランジ172の前側表面は力変換・伝達アーム115と同じ平面上でもまたあり得る。フランジ172がより前側であるほど、フランジ172はより多大にレンズ本体105を後側方向に引き得る。
【0126】
安定化システム120は、さらに、その後側表面から突出するリング173を包含し得る。例えば、リング173は、フランジ172を有するリング様構造171の後側表面から延在し得る。リング173は狭い一般的に四角いエッジ部176を有し得る(図14Iを見よ)。安定化システム120のリング173は、それが水晶体嚢22内に配置され得るようにレンズ100に対して相対的に配置され得る。リング173は約5mmである内側直径と約6mmである外側直径とを有し得、それによっておよそ1mmの平坦な後側表面を作り出す。リング173は約50μm~約700μmの間である高さを有し得る。そのため、リング173のエッジ部176は一般的に四角または長方形形状である。リング173のエッジ部176は後側カプセルとの接触のための360度の表面を作り出し得る。リング173のエッジ部176は、後側カプセルの混濁(PCO)に寄与する中心の後側カプセルの方への水晶体上皮細胞遊走に対して、バリアを提供し得る。リング173のエッジ部176は四角以外に他の形状を有し得る。しかしながら、PCOの問題を防ぐために、エッジ部176は、レンズ100と後側カプセル(capsular)との間において比較的先鋭な接触部位を提供する。
【0127】
レンズ100の他の部分、例えばレンズ本体105、静的要素150、または安定化システム120の他の領域が類似のエッジ部を組み込んで、PCOのリスクを最小化するようなやり方で後側カプセルと係合し得るということは了解されるはずである。加えて、フィーチャの組み合わせが用いられて、限定されたPCOを有する健康なカプセル環境を維持するために水晶体嚢内およびレンズの周りにおける流体の流動を促し得る。例えば、安定化システム120はレンズ赤道部と係合し得、同時に、静的要素150およびレンズ本体105が前側および後側カプセルと係合してカプセル壁の潰れを防ぐ。別の態様においては、安定化システム120は複数のカプセル表面と係合するように構成され得、それによって他のレンズコンポーネントからの支援なしにカプセルを開いたままにする。
【0128】
安定化システム120のリング様構造171は形状が一般的に円柱状であり得、フランジ172は一般的に卵形のまたは楕円形の外側寸法を有し得、その結果、フランジ172が、レンズ本体105の外周に沿う少なくとも2つの領域においてリング様構造171の外側直径を越えて延在する。リング様構造171の前側端部は、静的要素150の周縁の接続リング153に連結され得、フランジ172は、後側端部においてレンズ本体105の外部に留まるように寸法決めされ得、少なくとも2つの領域においてレンズ本体105の外側直径を越えて延在する。フランジ172が力変換・伝達アーム115に対して相対的に安定化支持を提供するように、フランジ172がレンズ本体105の外側直径を越えて外に延在する少なくとも2つの領域はレンズ本体105に対して相対的に整置され得る。例えば、レンズ100が一対の対向し合う力変換・伝達アーム115を包含する場合には、フランジ172は、フランジ172が対向し合う力変換・伝達アーム115の場所の間においてレンズ本体105から外向きに延在するようにレンズ本体105に対して相対的に配列され得る(例えば、図7A図11A~11B、図14A~14C、図15A~15C、および図16Aを見よ)。フランジ172が卵形および楕円形以外に他の形状を有し得るということは了解されるはずである。例えば、フランジ172は円柱状でもまたあり得、360度に渡ってリング様構造171およびレンズ本体105の外側直径を越えて外向きに延在するように構成された外側直径を有し得る。代替的には、フランジ172は、それがレンズ本体105の外側直径を越えて延在する2つよりも多くの場所、例えば3、4、5、またはより多くの場所を有し得る。リング様構造171およびフランジ172は360度の支持および安定化をレンズ100に提供し得る。
【0129】
上で言及された通り、リング様構造171は一対のフランジ172を組み込み得、それらは、力変換・伝達アーム115の場所の間に配置されるかまたはそれに対して相対的に90度回転させられる。フランジ172の最も外側のエッジ部は前側に突き出てよく、その結果、チャネルまたは溝174が、フランジ172の内側領域の近くにおいて、例えば環状要素104の後側表面とフランジ172の前側表面との間に形成される(図15A~15Cおよび16A~16Bを見よ)。リング様構造171が水晶体嚢内に配置されるときに、フランジ172のこの外側隆起は、水晶体嚢の後側に面した内部表面と係合して、レンズ100を水晶体嚢に対して相対的に後側方向に押しやることを助け得る。加えて、嚢切開(capsularhexis)のエッジ部は溝174内に受け入れられ、保持され得る。いくつかの実装において、エッジ部はフランジ172の溝174と環状要素104の後側に面したエッジ部との間に捕捉され得る。
【0130】
本願の他所に記載される通り、力変換・伝達アーム115は水晶体嚢22の外部に延在して毛様体構造と係合するように構成され、その結果、毛様体筋収縮からの生理的な力は、水晶体嚢22のカプセル機構または動きとは独立である様式でレンズの光学度数の変化を引き起こし得る。環状要素104の後側端部領域107から外向きに延在するフランジ172は水晶体嚢22の内部に留まり得、同時に、一般的に環状要素104の赤道部領域108または前側端部領域から延在する力変換・伝達アーム115は、水晶体嚢22の外部に延在して毛様体構造と係合する。フランジ172は、前側の切嚢Cによって形成された水晶体嚢22のエッジ部の後側に面した表面と係合するように配列されて、眼内におけるレンズ100の固定を改善し得る。切嚢Cによって形成された水晶体嚢22のエッジ部は、環状要素104の後側表面とフランジ172の前側表面との間に形成された溝174内に受け入れられ得る(図7B、および図14D~14Gをもまた見よ)。それゆえに、切嚢Cはレンズ位置を固定することに資し得る。
【0131】
フランジ172は、ハンドリングにおける融通性、および外科医がフランジ172に対して後側のレンズ100および水晶体嚢22の部分にアクセスすることの許容を提供する中断部を有し得る。これは、外科医が水晶体嚢をクリーニングし、粘弾性物質を除去し、レンズの位置を調整することを必要とするケース、または外科医が器具を用いてAIOLに対して後側の環境を操作するいずれかの他の術式において好ましくあり得る。いくつかの実装において、中断部は、フランジ172のある領域を貫通して延在する1つ以上のアパーチャ175を包含し得る(図11A、および図16A、16Dをもまた見よ)。中断部は、フランジ172の外側外周における1つ以上の湾入178または溝または他のフィーチャをもまた包含し得る(図14A~14Hを見よ)。湾入178は、眼内への容易な挿入を可能にし得、カニューレまたは当分野において公知の他の器具を用いる水晶体嚢22の内部からの粘弾性物質の取り出しを可能にし得る。
【0132】
形状変形膜140は力変換・伝達アーム115を介して毛様体構造によって付与される小さい力に対して敏感であるので、前側カプセル部分内のレンズ100の後側端部領域のインプラントは、切嚢Cのエッジ部と形状変形膜140との間の偶発的接触をもたらし得る。かかる接触は、望ましくない光学的帰結を有する度数変化を引き起こし得る。それゆえに、安定化システム120は眼内のレンズ位置を安定化し得、切嚢Cのエッジ部との接触に至ることから形状変形膜140を保護し得る。一般的には、インプラントによって、切嚢Cの平面は形状変形膜140の平面と交差するであろう。安定化システム120の少なくともある部分は、形状変形膜140および切嚢Cエッジ部が交差するところの間において延在するように設計され得る。それゆえに、安定化システム120の部分は、切嚢Cエッジ部が接触するための表面を提供し、それによって、エッジ部が、AIOL100の光学的なまたは調節可能な変化を引き起こすための形状変形膜140と接触することを防ぐ。
【0133】
図12は、切嚢Cのエッジ部と形状変形膜140との間の接触を防ぐ安定化システム120の実装を例解している。安定化システム120はレンズ本体105の後側領域の近くに配置され得る。安定化システム120は、その最も外側終末に配置された保護リム部1210を有するシールド部1205を包含し得る。シールド部1205およびリム部1210の実際の形状および構成は様々であり得るということは了解されるはずである。シールド部1205は、レンズ本体105の外部に配置されるように構成された一般的に環状形状の要素であり得る。シールド部1205はレンズ本体105の後側の側部の外側外周に連結され得る。シールド部1205は、環状要素104の後側領域107と環状要素104の赤道部領域108の少なくともある部分とを覆って、静的要素150の周縁の接続リング153に連結されるかまたはそれから別様に延在し得る。それゆえに、シールド部1205は、レンズ本体105の後側に面した表面と環状要素104の赤道部領域108の少なくともある部分との上に、周縁領域の環状のキャップを形成する。形状変形膜140は環状要素の赤道部領域108の円弧長さに沿って延在するので、シールド部1205は形状変形膜140の少なくともある部分をもカバーする。保護リム部1210はシールド部1205のある領域(シールド部1205が形状変形膜140の部分をカバーする領域)から外向きに延在し得、それによって、シールド部1205のその領域に対して相対的に角度を形成する。形状変形膜140の部分をカバーするシールド部1205の領域は形状変形膜140と一般的に平行に整列し得、その結果、それは形状変形膜140をカバーするが、接触することを避ける。保護リム部1210は、それが形状変形膜140に当接するかまたは連結されるその内側接触領域137の近くにおいて、それが力変換・伝達アーム115の下側の表面(または後側に面した表面)の少なくともある長さに沿って延在するような幅を有し得る。保護リム部1210は、それが沿って延在する力変換・伝達アーム115の長さと一般的に平行に延在し得、その結果、保護リム部1210はそれがシールド部1205から外向きに延在するところに対して相対的におよその90度の角度を形成する。保護リム部1210の幅は様々であり得、それゆえに、それが力変換・伝達アーム115下において延在する長さは様々であり得る。一般的には、そこからそれが延在するシールド部1205と共に、保護リム部1210の幅は、水晶体嚢22の前側表面のある部分と係合するために十分であり、その結果、切嚢Cのエッジ部が、保護リム部1210とシールド部1205とが出会う領域内に据わる。これは形状変形膜140と切嚢Cのエッジ部との間の接触を防ぐ。安定化システム120が、上に記載されている通り保護リム部1210および1つ以上のフランジ172の組み合わせを包含し得るということは了解されるはずである。それゆえに、安定化システム120は、コンポーネントが切嚢Cのエッジ部上に延在するように、水晶体嚢22の外部に留まるように構成された1つ以上のコンポーネント(例えば保護リム部1210)を有し得、安定化システム120は、切嚢Cのエッジ部がコンポーネント上に延在するように、水晶体嚢22の内部に留まるように構成された1つ以上のコンポーネント(例えば、フランジ172または安定化ハプティック)を有し得る。
【0134】
いくつかの実装において、安定化システム120は1つ以上の安定化ハプティック160を包含する(例えば、図2B~2F、図17A~17F、図19A~19Eを見よ)。少なくとも1つの形状変形膜140の場所から離れて、または形状変形膜140の動きに干渉しない様式で、安定化ハプティック160はレンズ本体105の環状要素104に連結されるかまたはそれと一体であり得る。例えば、AIOL100は2つの対向し合う形状変形膜140を包含し得、安定化システム120は、2つの形状変形膜140の間である場所において環状要素104上に配置またはそれに連結された一対の安定化ハプティック160を組み込み得る。そのため、インプラントによって安定化システム120のハプティック160に適用される力は、シールされたチャンバー155の変形または動的膜143の形状変化を引き起こす様式で安定化システム120によってAIOL100に伝達はされない。ハプティック160が環状要素104の前側端部領域および後側端部領域107の間において環状要素104の赤道部領域108から延在するように、ハプティック160の内部部分161は、環状要素104に連結されるかまたはそれと一体であり得る。代替的には、ハプティック160の内部部分161は、図2Cなどに示されているAIOLの光軸に沿ってより前側またはより後側に位置する環状要素104のある領域に連結されるかまたはそれと一体であり得る。代替的には、ハプティック160は上に記載されている通り静的要素150に接続または一体化され得る。いくつかの実装においては、一般的に力変換・伝達アーム115よりも後側に整置される場所において、ハプティック160はそれらがレンズ本体105から外向きに延在するように、レンズ本体105に対して相対的に配置される(図2Aを見よ)。この実装においては、安定化ハプティック160の1つ以上は、力変換・伝達アーム115の運動の間のデバイス100の安定性を維持するように水晶体嚢22内に配置および係合されて、デバイスの前側の、後側の、回転的な動きを防ぎおよび/または限定し得る。他の実装においては、力変換・伝達アーム115よりも一般的に前側に整置される場所において、ハプティック160はそれらがレンズ本体105から外向きに延在するように、レンズ本体105に対して相対的に配置される(図17Aおよび19Cを見よ)。この実装においては、1つ以上の安定化ハプティック160が毛様体溝内に配置および係合されて、力変換・伝達アーム115の運動の間のデバイス100の安定性を維持して、デバイスの前側のおよび回転の動きを防ぎおよび/または限定し得る。いくつかの実装においては、ハプティック160の内部領域161が第1の力変換・伝達アーム115の第1の側の近くにおいて連結され、その終末端部162が第1の力変換・伝達アーム115の第1の側から離れて他の力変換・伝達アーム115の方へAIOL100の円周の周りに延在するように、安定化ハプティック160のそれぞれは力変換・伝達アーム115に対して相対的に配列される(図17Aを見よ)。他の実装においては、内部領域161が第1の力変換・伝達アーム115の第1の側の近くにおいて連結され、その終末端部162が第1の側から同じ力変換・伝達アーム115の反対の部位の方へ力変換・伝達アーム115上に延在するように、安定化ハプティック160のそれぞれは力変換・伝達アーム115に対して相対的に配列される(図19Aを見よ)。力変換・伝達アーム115上に延在するように配置された終末端部162を有するAIOL100は、AIOL100の幅を縮減し、眼内の所定位置へのAIOL100のより容易な挿入および操作を提供する。どちらかの実装において、安定化ハプティック160は力変換・伝達アーム115の平面に対して相対的に前側に傾斜し得、その結果、それらの終末端部162は、AIOL100が少なくとも部分的に水晶体嚢内に配置されるときに毛様体溝と係合し得る。それから、安定化ハプティック160は、さらに水晶体嚢内へAIOL100を後側方向に押しやり得る。安定化ハプティック160の終末端部162が力変換・伝達アーム115と同じ四分弧上もしくは内に延在するかまたは力変換・伝達アーム115間に延在するかにかかわらず、後側に向かう圧力をAIOL100に適用することによって、ハプティック160は、力変換・伝達アーム115が虹彩との接触に至ることを防ぐことに資する。
【0135】
各ハプティック160は曲線に沿ってループになり得、その結果、ハプティック160は、それらの総体的な長さのより多大な部分に沿って眼組織と係合するように構成される。ハプティック160は力変換・伝達アーム115と同軸または同一平面であり得る。ハプティック160は、力変換・伝達アーム115とは異なる軸に沿って、例えば力変換・伝達アーム115からオフセットしてまたは力変換・伝達アーム115に対して相対的に角度付きでもまた配置され得る。いくつかの実装において、ハプティック160は、力変換・伝達アーム115に対して相対的に0~20度の範囲の角度または他の度の角度で配置され得る。各ハプティック160はAIOLの平面から離れるように傾斜し得、その結果、各ハプティック160の終末端部162は、それが環状要素104に連結するところの近くのハプティック160の内部領域161とは異なる平面上に据わる。例えば、図2B~2Dは、2つのハプティック160と2つの対向し合う力変換・伝達アーム115とを有するAIOLの実装を示している。この実装においては、力変換・伝達アーム115のそれぞれが内側接触部分137および外側接触部分135の間において一般的にAIOLの中心の平面に沿って配設されるように、力変換・伝達アーム115はレンズ本体105の環状要素104に対して相対的に一般的に中心において連結される。この実装において、2つのハプティック160のそれぞれは2つの力変換・伝達アーム115間において環状要素104のある領域に連結される。各ハプティック160の内部領域161は、前側および後側表面の間において環状要素104の中心の平面に対してやや後側である場所において、配置または環状要素104に連結される。各ハプティック160は内部領域161から終末端部162の方へ湾曲し、その結果、各ハプティック160の終末端部162が、ハプティック160の内部領域161の平面に対して後側である平面上に配置される。これは、力変換・伝達アーム115の接触部分135がハプティック160の終末端部162と比較してより前側に配列されることをもたらし、その結果、それらは眼内の異なる解剖学的な場所にインプラントされ得る。例えば、力変換・伝達アーム115の接触部分135はそれらが毛様体頂部18または毛様体溝との接触をなすように眼内に配置され得、ハプティック160は力変換・伝達アーム115よりも後側に、例えば水晶体嚢22内へと延在し得る。しかしながら、1つ以上のハプティック160が力変換・伝達アーム115と同じ平面に配置され得るということは了解されるはずである。代替的には、ハプティック160は、レンズを後側の位置に偏らせる働きの際に前側に傾斜し得る(図17A~17Fおよび19Cを見よ)。虹彩との接触を最小化するために、ハプティック160は、レンズ本体105および力変換・伝達アーム115を毛様体溝または水晶体嚢に置かれ得る終末端部162に対して相対的に後側に保持するために用いられ得る。
【0136】
本願に記載される安定化システムのいずれかは、力変換・伝達アーム115と同軸または同一平面であるように配列され得、または力変換・伝達アーム115とは異なる軸に沿って配列され得、その結果、安定化システム120は力変換・伝達アーム115からオフセットされるか、またはハプティック160で上に記載されている通りそれらに対して傾斜する。類似に、安定化システム120は力変換・伝達アーム115に対して相対的に傾斜し得、その結果、安定化システム120の少なくともある部分がAIOLの平面から離れるように傾斜し、その結果、安定化システムの少なくともある部分が安定化システムの別の部分とは異なる平面上に据わる。
【0137】
本願に記載される安定化システムのいずれかが、シリコーンエラストマー、ポリウレタン、PMMA、PVDF、PDMS、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、または疎水性もしくは親水性であるフレキシブルアクリル樹脂材料、あるいはそれらの材料のいずれかの組み合わせから形成され得るということは了解されるはずである。その安定化機能を提供し、同時に挿入および操作のための柔軟性を維持するために、安定化システムは、より硬質の構造によって補強されるより軟質な本体を有し得る。
【0138】
本願に記載される安定化システム120の1つ以上の部分は、眼内における固定を改善するための咬持要素を組み込み得る。いくつかの実装において、安定化システム120はハプティック160を包含し、咬持要素がそれらの終末端部162の近くに配置されて、眼内におけるハプティック160の固定を改善し得る。ハプティック160は種々のハプティック設計のいずれかまたはハプティック設計の組み合わせであり得、開いたループ、閉じたループ、プレート型、プレートループ、モノブロックプレート型、jループ、cループ、改変Jループ、マルチピース、シングルピース、角度付き、平面状、オフセットなどを包含するが、これに限定されない。本願において考慮されるハプティック160は、Rayner設計のハプティック(Rayner Intraocular Lenses Ltd、イースト・サセックス、UK)、NuLens設計のハプティック(NuLens Ltd.、イスラエル)、Staarレンズ設計(Staar Surgical、モンロビア、CA)、および他を包含し得る。いくつかの実装において、安定化システム120は、1つ以上のハプティック160または360度フランジ172を包含するかどうかにかかわらず、生体適合性ポリマー、例えばシリコーン、ポリウレタン、PMMA、PVDF、PDMS、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、PEEKなど、またはかかる材料の組み合わせから形成され得る。安定化システム120は折りたたみ可能であるような材料から形成、または可能であるように構成され得る。いくつかの実装において、安定化システム120は形状記憶材料から形成される。
【0139】
本願に記載されるAIOLは内部的および/または外部的に改善された機械的安定性を有し、これはより効率的な形状変化をもたらす。形状変化は、それが所望のところにおいて(すなわち、形状変形膜140および動的膜143において)のみ起こり、所望の形状変化を弱めるであろうデバイス内の他所における歪みまたは膨らみを引き起こすことがないという点で、より効率的である。部分的には、形状変化の効率性は動くパーツの機械的隔離が原因である。下でより詳細に記載される通り、1つ以上の内部支持部110は十分な硬質性をAIOL100に提供して、動くパーツを機械的に隔離して、デバイスの他のパーツの偶発的膨らみまたは歪みなしに形状変化を有効かつ効率的に実装する。本願に記載されるAIOL100の内側に面した領域は、縮減された角、丸みがかったエッジ部、およびより少数のデッドゾーンを有し得、達成される形状変化の効率を改善する。
【0140】
図16A~16Fおよび図17A~17Fは内部支持部110を有するAIOLの実装を例解している。内部支持部110は、光学部要素(前側および後側)を、安定化システム120によって付与されるストレスから機械的に隔離して、光学的な歪みを限定するように機能し得る。図16Dおよび図17Dに最良に示されている通り、内部支持部110は中心のアパーチャ113を画定するリング様要素であり得る。アパーチャ113は、その中に静的レンズ要素150の少なくともある部分を受け入れるようにサイズ決めされる内側直径を有し得る。本願の他所に記載される通り、静的要素150は、第1の側における平坦な表面151と、反対の第2の側における湾曲した表面152と、シール表面154を有する周縁の接続リング153とを有し得る。静的要素150の外周シール表面154は、内部支持部110のアパーチャ113を囲む後側に面した一般的に平面状の表面に当接し、シールし得る。静的要素150の周縁の接続リング153は中心のアパーチャ113の内側直径によって係合され得る。それゆえに、静的要素150は内部支持部110のアパーチャ113によって保持され得、湾曲した表面152はアパーチャからAIOL100の後側の側の方で利用可能である。前側光学部145の外周領域144は、アパーチャ113を囲む内部支持部110の平面状の前側に面した表面上に配置され得る。そのため、アパーチャ113を囲む内部支持部110の平面状の部分は前側光学部の外周領域144と静的要素150のシール表面154との間に捕捉される。内部支持部110は、レンズ本体105の外側外周に一般的に合致する外側外周を有し得る。レンズ本体105の環状要素104は内部支持部110の外側外周に連結される(図16Bおよび17Bを見よ)。内部支持部110の外側外周は周縁の膜140の内部にある距離だけ離間され得、その結果、力変換・伝達アーム115の動きによって、周縁の膜140はある距離だけ内向きに押しやられて、調節可能な形状変化を引き起こし得る。それゆえに、環状要素104は内部支持部の前側表面上の第1の場所において連結され得、環状要素104は内部支持部110の後側表面上の第2の場所において連結され得、その結果、周縁の膜140が第1の場所と第2の場所との間の距離にまたがる(図16Cおよび17Cを見よ)。第1および第2の場所の間の距離は外側外周の近くの楔形状のフィーチャ117の幅によって画定される。これらのフィーチャ117の存在は、力変換・伝達アーム115の動きを限定し、インジェクションなどによる眼内へのインプラントの間の引裂のリスクを縮減する。フィーチャ117は一般的に楔形状を有し得、その結果、フィーチャ117のより厚い部分は、周縁の膜140に面してより周縁に配置され、中心のアパーチャ113の方へ先細りする。フィーチャ117の外側に面した表面は、凹状であるかまたは別様に内向きに傾斜して、周縁の膜140が力変換・伝達アーム115の動きの間のフィーチャ117との接触を避けるということを保証し得る。フィーチャ117は楔形状である必要はないということは了解されるはずである。例えば、図18Cおよび図19Eは、横断面がより四角または長方形であるフィーチャ117を有する内部支持部110の他の実装を例解しており、その結果、それらは中心のアパーチャ113の方へ先細りしない。
【0141】
一般的には、内部支持部110の材料は、特にAIOL100が安定化ハプティック160によって付与されるストレス下に置かれるときに、光学部要素を機械的に隔離するために十分な硬質性を有する。図17A~17FはAIOL100の実装を例解しており、デバイスの光学部部分を安定化ハプティック160によって付与されるストレスから機械的に隔離するように構成される内部支持部110を有する。内部支持部110は、安定化ハプティック160の動きの間であっても中心エリアの光学的な歪みを防ぐように構成され、その結果、安定化ハプティック160は動的膜143または前側光学部143などのデバイスの光学部部分に全く形状変化を付与しない。形状変形膜140および動的膜143などのAIOL100の他の部分に対して相対的な内部支持部110の強さは、挿入の間のレンズの操作およびハンドリングの間の増大した耐久性を提供する。
【0142】
構成の如何にかかわらず、内部支持部110は、AIOL100の調節可能な動きが所望される領域以外の領域における、効率を減ずるレンズの動きを限定し得る。内部支持部110は、全ての毛様体によって誘発される圧力を中心の動的膜143の方へフォーカスさせるように機能する。内部支持部110はAIOL100の動的エリアを機械的に隔離し、AIOL100の非動的エリアを構造的に補強し、それによって、調節にとって所望のところ、-力変換・伝達アーム115の動きによる側部の変形膜140、および流体で満たされたチャンバー155内の増大した圧力による動的膜143、のみに形状変化をフォーカスする。内部支持部110の幾何形状および硬質性は、他のレンズ領域が流体で満たされたカプセルの増大した内部圧力によって変形することを機械的に防ぐ用をなす。内部支持部110は、種々の材料のいずれかまたは材料の組み合わせから形成され得、それらは混濁しているかまたは透明であり得るが、AIOL100の可動パーツよりも一般的に硬質である。いくつかの実装において、AIOL100の各コンポーネントは同じ材料から形成され、これは製造の観点から利点を提供する。種々のコンポーネントの材料は同じ(すなわちシリコーン)であり得るが、種々のコンポーネントの機械的特性は、コンポーネントがAIOLのために何の機能を果たすか(すなわち、形状変化または力伝達または中心合わせおよび安定化)に応じて固有であり得る。AIOLの1つのコンポーネントはAIOLの別のコンポーネントよりも硬質であり得るが(例えば、周縁の膜140と比較して内部支持部110)、両方のコンポーネントは同じ材料であり得る。より硬質のコンポーネントは、より硬質でないコンポーネントと比較してそのコンポーネントの幾何形状および寸法の違いが原因で、より硬質であり得る。そのため、内部支持部110および膜140、143は同じシリコーン材料から形成され得るが、膜140、143は内部支持部110と比較して有意に減少した厚さを有するので、膜140、143は圧縮力の適用によって容易に変形させられ、一方で、内部支持部110は容易に変形させられない。いくつかの実装において、内部支持部110はシリコーンエラストマー(例えばシリコーンPDMS70-90ショアA)であり得、膜140、143はシリコーンエラストマー(例えばシリコーンPDMS20-50ショアA)であり得る。加えて、内部支持部110は、膜140、143に対して相対的により高い硬質性および剛性を付与する幾何形状を包含し得る。
【0143】
本願に記載されるAIOLの種々のコンポーネントおよびフィーチャは種々の組み合わせのいずれかで組み込まれ得る。そのため、具体的な図面で示される具体的なフィーチャの記載は、フィーチャが本願に記載されるAIOLの別の実装に組み込まれ得るという点において、限定的であることを意図されていない。例えば、本願に記載されるAIOLは、本願に記載される安定化システムの1つ以上のフィーチャを組み込む安定化システムを包含し得る。さらに、安定化システムのフィーチャを有するAIOLは、例えば力変換・伝達アーム115または形状変形膜140で記載される種々のフィーチャのいずれかと組み合わせられ得る。
【0144】
小量の力(例えば、0.1~1.0重量グラム(gf)ほども少し)の適用と力変換・伝達アーム115のマイクロメートル範囲の動き(例えば、共同で、各側からまたは単一の側から最高でおよそ25μm~100μm)とによる前側光学部145の形状変化が原因で、本願に記載されるAIOLは、望ましい範囲の光学度数またはディオプトリー(D)(例えば最高でおよそ5Dの変化)を達成し得る。そのため、本願に記載されるAIOLは小さい力を活用し、非対称的な力であっても調節時に球面状の結果を達成し得るような機械的隔離による信頼できる光学を提供する。圧縮性の領域は、変形膜140の動きによって変形を受けて動的膜143の受動的な外向きの撓みを引き起こすシールされたチャンバー155の領域であり得る。圧縮性の領域は、変形膜140が内向きに変位する距離である長さL、レンズの光軸に沿った変形膜140の横断面高さである高さH、およびレンズ100の光軸Aに対して直角な形状変形膜140の横断面長さである円弧長さWを有し得る。形状変形膜140の変位は体積圧縮Vをもたらし、これはL*H*Wの積と相関する。2つの形状変形膜140と2つの力伝達アーム115を有するレンズ100のケースにおいては、規模Lの毛様体の動きによって圧縮された流体の体積Vは大体2*L*H*Wであるであろう。弾性変形および複雑な幾何形状と連係した非効率性ゆえに、実際の体積はこの理想化された計算よりもやや少なくあり得る。撓んでいるレンズの体積は:
V=πh(3a+h)/6
によって記述され得、式中、レンズ高さ(h)はピタゴラスの等式:(r-h)+a=rから計算され得る。ゆえに:h=r-√(r-a)。例として、シールされたチャンバー155内の光学流体の屈折率が1.4でありかつレンズの直径が3mmである場合には、高さ(H)0.37mmおよび円弧長さ(W)3.0mmを有する2つの対向し合う変形膜140の28μmの動き(L)は、光学流体によって前側光学部145に適用される十分量の圧力を作り出して、1Dレンズを形成する。レンズの直径が3mmである場合には、高さ(H)0.37mmおよび円弧長さ(W)3.0mmを有する2つの変形膜140の84μmの動きは、光学流体によって動的膜143に適用される十分量の圧力を作り出して、3Dレンズを形成し得る。下では、追加の例が下の表1および2において提供されている。表1は、ディオプトリー(D)による度数変化、動的膜143の直径、動的膜143の外向きの撓みの曲率、および撓んでいるレンズの体積または外向きの撓み内に作り出された空間を占める光学流体の体積を包含するデバイスパラメータを、1.382屈折率(RI)の光学流体によって満たされたデバイスについて例解している。表2は、ディオプトリー(D)による度数変化、動的膜143の直径、動的膜143の外向きの撓みの曲率、および撓んでいるレンズの体積または外向きの撓み内に作り出された空間を占める光学流体の体積を包含するデバイスパラメータを、1.43屈折率(RI)の光学流体によって満たされたデバイスについて例解している。曲率は0Dという初期度数に基づいて計算される。曲率は表面プロフィロメータまたは白色光干渉計によって直接的に測定され得る。曲率は、測定された度数変化および公知の屈折率に基づいてもまた推量され得る。
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
いくつかの実装において、デバイスは2.5mmの動的光学部直径を有し、1.382RIを有する油によって満たされる。このデバイスは、約0.26gfの適用時に約20ミクロンの動きによって約1.4D、約0.58gfの適用時に約40ミクロンの動きによって約2.6D、約0.85gfの適用時に約60ミクロンの動きによって約3.5D、約1.1gfの適用時に約80ミクロンの動きによって約4.7D、および約1.4gfの適用時に約100ミクロンの動きによって約6.3Dという調節を達成し得る。
【0148】
本願に記載されるAIOL100は改善した形状変化効率を有する。この改善した効率は、シールされたチャンバー155(それゆえに、チャンバー155を満たす光学流体156)の大いに縮減された体積と、多分により薄い最大横断面寸法とを、特にAIOL100の外周領域の近くにおいて可能にする。非光学的な外周領域における最小化された横断面寸法によってであっても、有効ディオプトリー変化(例えば±3または±4ディオプトリー)はより大きい体積を有するレンズに匹敵する。いくつかの実装において、チャンバー155、それゆえに光学流体156の体積は約8.5mm未満から下は約2mmまでであり得る。いくつかの実装において、体積は3mmから約6mmの間であり得る。約0.2mmから約0.3mmの範囲であるチャンバー155内の光学流体156の対応する変位をもたらす膜140のミクロン範囲の変位によって、小さい体積は、±4ディオプトリーの範囲の十分なディオプトリー変化を提供し得る。達成される光学流体156の変位は、所望の調節性の範囲(例えば3または4D)、形状変化膜の直径、およびAIOL内の材料の屈折率に依存する。レンズは、側部の膜の設計、生理的プロセスの限定、および最大効率の力学によってかかる「調節された状態」を達成するように設計され得る。
【0149】
本願に記載されるAIOLは当分野において公知の種々の外科手術方法に従ってインプラントされ得る。デバイスの特徴およびコンポーネントに依存して、それらは種々の技術を用いてまたは種々の実装を用いてインプラントされ得る。本願に記載されるデバイスは、単独で、または別の眼内レンズもしくは患者の天然の水晶体との組み合わせで用いられ得る。レンズ本体の度数、ならびに力変換・伝達アームおよび/または安定化システムの相対的な位置は、インプラントの前、インプラントの間、またはインプラントのいずれかの時間の後に調整および/または微調整され得る。デバイスの少なくともある部分が水晶体カプセルの外部に、例えばカプセルに対して前側かつ虹彩に対して後側に配置されるように、本願に記載されるデバイスはインプラントされ得る。本願に記載されるデバイスは、レンズ本体の中心部分が眼の光軸と整列するようにインプラントされ得る。力変換・伝達アームは毛様体または毛様体筋の頂部などの1つ以上の毛様体構造に対して相対的に配置され得る。力変換・伝達アームは毛様体構造が静止した調節されていない状態であるときに、レンズ本体の変形可能な領域を包含するレンズ本体の圧縮を引き起こすことなしに毛様体構造に当接する(または、当接することなしに、非常に密接に毛様体構造に連係する)ように配置され得る。しかしながら、毛様体筋の収縮によってレンズ本体が調節を受け、毛様体筋の弛緩によってレンズ本体が無調節を受け、レンズ本体の材料がそれらの静止状態に迅速に戻るように、力変換・伝達アームは毛様体構造に十分密接に配置され得る。力変換・伝達アームの相対的位置および長さは、上に記載されている種々の方法に従って、本願に記載される調整のための種々のフィーチャの1つ以上を用いて調整され得る。眼内のデバイスをさらに安定化するため、およびデバイスが虹彩の方へ前側に湾曲することを防ぎ、そこにおいて虹彩接触を最小化するために、安定化システムは、毛様体溝内に、毛様体突起上に、または水晶体嚢のある部分内に配置され得る。レンズ本体の静止度数もまた、本願に記載される種々の方法に従って、本願に記載される度数調整のための種々のフィーチャの1つ以上を用いて、さらなる調整および微調整を受け得る。
【0150】
本願に記載されるデバイスのコンポーネントの寸法は様々であり得る。いくつかの実装において、レンズ本体105の総体的な光学部ゾーン部分は、約2.5mm、約3.0mm、約3.5mm、約4.0mm、約4.5mm、約5.0mm、約5.5mm、約6.0mm、約6.5mm、またはより多大な直径である直径を有し得る。いくつかの実装において、調節性の直径、または形状変化を受ける中心の光学部ゾーンの領域(例えば動的膜143)は、直径が1.0mm~6.0mmである。いくつかの実装において、動的膜143は直径が1.5mm~3.5mmである。いくつかの実装において、動的膜143は直径が1.7mm~2.5mmである。いくつかの実装において、AIOL100は折りたたみ可能であり得、その結果、デバイスは、それ以外は折りたたみ可能でない硬質のAIOLよりも小さい切開から眼内にインプラントされ得る。例えば、柔軟なまたは折りたたみ可能な安定化システム120を有するデバイスは、それがインプラント後に安定化システム120の展開または膨張の後に達成する直径よりも小さい第1の直径を、インプラントの間に有し得る。いくつかの実装において、デバイスは支持部を包含し得、支持部は柔軟な材料(単数または複数)から作られ得、その結果、支持部はデバイスのインプラントの間に曲がり得る。他の実装において、デバイスはデバイスの一部に沿って柔軟に曲がるかまたは折りたたみ得る。上に記載されている通り、AIOLは1つ以上の内部支持部110を包含し得、内部支持部110同士は互いからある距離だけ離間され得、シールされたチャンバー155を貫通するコリドー112を支持部のピラー間に形成し、種々の形状のいずれか(例えば、H形状、X形状、または他の形状)を有するシールされたチャンバー155をもたらす。図3D~3Gは、AIOLの1つ以上のコリドー112に沿って潜在的な折りたたみ線Fの例を示している。他の折りたたみ線が存在する。本願に記載されるAIOLはこれらのコリドー112の1つ以上に沿って折りたたまれ得、その結果、隣り合う内部支持部110同士が互いの上面に折りたたまれる。上に記載されている通り、それらの中心領域116に沿った折りたたみを促進するために、力変換・伝達アーム115はより薄い中心領域116を包含し得る(図18A~18Cを見よ)。本願に記載されるAIOLをこの様式で折りたたむこと、または柔軟なAIOLの巻回は、デバイスがより小さい切開からインプラントされることを可能にする。さもなければ、これは、折りたたむように構成されてはいない支持部などの硬質のコンポーネントを有するAIOLによっては可能ではないであろう。インプラントにとって必要とされる切開の総体的なサイズを縮減することに加えて、本願に記載されるAIOLを折りたたむことおよび/または巻回することは、典型的な挿入器具または最小限に侵襲的なインプラント器具の使用を可能にする。本願に記載されるAIOLは、小さい切開からの眼内への挿入を可能にする狭い横断面厚さをもまた有し得る。いくつかの実装において、AIOL100は、およそ2.5mmから約0.5mmほども薄い前側および後側端部の間の横断面厚さを有し得る。いくつかの実装において、デバイスは約1.3mmという横断面最大厚さを有する。下でより詳細に記載される通り、本願に記載されるデバイスは、約4mm未満である切開からインプラントされるように構成される。例えば、デバイスは、小さい切開、例えば約3.5mmよりも多大ではない透明角膜切開から挿入され得る。
【0151】
図4A~4C、および図5A~5Bもまた、安定化システム120を包含するAIOL100の後側部分と静的要素150の少なくともある部分とが切嚢Cから水晶体嚢22の前側領域に挿入されるような、眼内にインプラントされたAIOL100の実装を例解している。力変換・伝達アーム115を包含するAIOL100の前側部分および前側光学部145は水晶体嚢22の外部に延在する。そのため、前側カプセルは毛様体頂部に対して相対的なAIOL100の整置に資する。切嚢Cによって作り出された水晶体嚢22のエッジ部は安定化システム120の前側の面上に延在し得る(システム120が、安定化ハプティック160、フランジ172、および/または360度の安定化を提供するリング様構造の1つ以上を包含するかどうかにかかわらない)。例えば、いくつかの実装において、水晶体嚢22のエッジ部は1つ以上の安定化ハプティック160の前側の面上に延在し得、安定化ハプティック160の内部領域161が環状要素104に連結するところの近くにおいてレンズ本体105の環状要素104に当接し得る。代替的には、水晶体嚢22のエッジ部はフランジ172の前側の面上に延在し得、フランジ172の前側表面と環状要素104の後側表面との間において溝174に滑り込み得る。上に記載されている通り、かつ図15A~15Cおよび16A~16F)に示されている通り、フランジ172の前側表面は、前側カプセルの水晶体嚢の後側に面した内部表面と係合するように構成された前側に延在する外側隆起を有し得る。代替的には、図12において示されている安定化システム120で上に記載されている通り、切嚢Cによって形成された水晶体嚢22のエッジ部は、フランジ172の上かつシールド部1205の保護リム部1210の下において延在し得る。安定化機構120にかかわらず、切嚢Cによって作り出された水晶体嚢のエッジ部は力変換・伝達要素115の後側の面の下にたくし込まれ得、その結果、力変換・伝達要素115が水晶体嚢22の外部に延在し、安定化システム120の少なくともある部分は水晶体嚢22の内部に留まる。この上下二連様式でのAIOL100のインプラントは、追加の安定化支持を提供して、AIOL100を眼の視軸に対して整置し、虹彩14の方へのAIOL100の動きを防ぐ。一般的には、本願に記載されるAIOLは、インプラント時に、およそ0.05mm~0.5mmである虹彩14からのクリアランスを維持し得る。水晶体嚢22のエッジ部は一般的に後側に向かう力を安定化システム120の前側の面上に提供し、AIOLを虹彩14から引き離す。この力は、力変換・伝達アーム115の接触部分135と眼の毛様体構造との間の係合が原因の一般的に前側に向かう力によって相殺される。
【0152】
本願に記載されるAIOLは上下二連構成を用いてインプラントされる必要はないということは了解されるはずである。本願の他所に記載される通り、安定化ハプティック160は毛様体溝内に配置され得、AIOLのちょうど後側部分が水晶体嚢内に配置され得る。安定化ハプティック160を毛様体溝内に配置することは、さらなる安定化のために、かつデバイスの外周部分を虹彩から離れたままにすることに資するために、後側方向の圧力をAIOL100上に提供し得る。
【0153】
なお図5A~5Bでは、AIOL100の最大横断面厚さTはおよそ2.5mm以下であり得、その結果、デバイスは、およそ3.5mmの長さを有する透明角膜切開から挿入され得る。いくつかの実装において、レンズの光軸Aの平面に沿って取られた最大横断面厚さTは約0.5mmおよび1.5mmの間の厚さである。いくつかの実装において、レンズの光軸Aの平面に沿って取られたAIOLの最大横断面厚さTはおよそ1.3mmであり、3.5mmの透明角膜切開からインプラント可能である。
【0154】
調節を達成するために、本願に記載されるAIOLは毛様体筋との直接的接触に頼っている。それゆえに、AIOLの外周領域の少なくともある部分は、水晶体嚢と虹彩との間のこの狭い空間にフィットするようにサイズ決めされなければならない。本願の他所に記載される通り、虹彩に悪影響することなしにこの直接的係合を提供するために、本願に記載されるAIOLは外周領域の近くにおいて薄い最大横断面寸法を有する。外周領域の横断面寸法を最小化することは、AIOLの内部体積を大いに縮減する。加えて、シールされたチャンバーの内側に面した表面は、AIOLの効率をさらに改善するために縮減された角を有する。多分により大きい内部体積を有するAIOLと比較してそれらのより小さい総体的な横断面寸法および内部体積にもかかわらず、AIOLのコンポーネントの改善された効率は、それらを有効なディオプトリー変化(例えば±4ディオプトリー)ができるようにする。非光学的な外周領域(すなわち、レンズの光学部領域の外部に在るAIOL100の領域)の厚さプロファイルは虹彩との接触を避けるように最小化され得る。図4A~4Bは、虹彩14に対する外周領域の相対的位置を示す、水晶体嚢22内に配置された調節性眼内レンズの実装を例解している。図16A~16F、および図17A~17Fもまた、この外周領域の近くにおける最大横断面寸法が最小化されているAIOLの実装を例解している。後側方向の光学部ゾーンの近くにおけるAIOL100の厚さ(例えば、後側の静的要素150の湾曲した表面152)は、水晶体嚢22内へと延在し、虹彩14への影響を少し有するかまたは全く有さない。図16Eおよび17Eに最良に示されている通り、AOIL100の外周領域(すなわち、水晶体嚢内へ、後側に突き出る後側の静的要素150を除外する)の最大横断面厚さTは約500umから約700umの間であり得る。図16Fおよび17Fに最良に示されている通り、AOIL100の外周領域(すなわち、水晶体嚢内へ、後側に突き出る後側の静的要素150を除外する)の最大横断面厚さT’は約700umから約950umの間であり得る。
【0155】
AIOLは2.5mmチップを有するアプリケータ内へと折りたたまれるかまたは巻回され得るが、他のアプリケータが本願において考慮されるということは了解されるはずである。一般的に、大きい強膜切開は避けられるべきである。しかしながら、本願に記載されるAIOLは約6mmおよび7mmの間の長さの強膜トンネルまたは強膜切開からインプラントされ得る。
【0156】
いくつかの実装においては、上に記載されている通り、AIOLは上下二連様式でインプラントされる。インプラントの上下二連様式はレンズ位置を安定化し、上に記載されている通り虹彩接触を限定する。上下二連インプラントは、デバイスの光軸Aの周りのAIOL100の偶発的回転をもまた防ぐ。光軸Aの周りのAIOL100の回転は、水平に整置された力変換・伝達アーム100が、より毛様体構造から離れてずれやすい垂直な整置の方へ動くことを引き起こし得、これはAIOLの調節機構を損ない得る。例として、AIOL100は2つの対向し合う力変換・伝達アーム115を包含し得、各力変換・伝達アーム115の接触部分135が毛様体筋18(例えば、毛様体頂部)の収縮時に静止した接触または直ちの接触どちらかをして、調節および無調節の間の光学部の形状変化を駆動するようにインプラントされ得る。上で言及された通り、AIOLは例えば0.05mm~0.5mmだけオーバーサイジングであり得る(ただし、そうである必要はない)。オーバーサイジングは、毛様体構造と力変換・伝達アームとの間の接触を保証するために用いられ得る。しかしながら、ある種の状況においては、レンズのずれおよび沈下または毛様体直径の術後変化が原因で、オーバーサイジングは接触を保証するには十分でなくあり得る。例えば、およそ0.05mmのギャップが毛様体構造と第1の側における力変換・伝達要素115の接触部分135との間に、別の0.05mmギャップが第2の側における力変換・伝達要素115の接触部分135と毛様体構造との間に存在し得るように、AIOLが整置され得る。最適に中心合わせされるときに、ギャップは各側において実質的に等しいままに留まる。対向し合う力変換・伝達要素115が眼に対して(および互いに対して)相対的に垂直に整置されるように、AIOLがインプラントされる場合には、AIOL100は重力が原因で沈下するかまたは下の方にずれ得、その結果、上方または頭側のギャップがおよそ0.1mmまで増大し、下方または尾側のギャップが0の方へ減少し、毛様体構造との静止した接触をして留まる。対向し合う力変換・伝達アーム115が眼に対して(および互いに対して)相対的に水平に(内側-外側に)整置されるようなAIOL100のインプラントはAIOL100のずれを最小化し、力変換・伝達アーム115と毛様体構造との間の最適な離間が使用の間に維持される。水晶体嚢22の内部への安定化ハプティック160および水晶体嚢22の外部への力変換・伝達アーム115のインプラントは、レンズの調節機構を動作不能にし得る光軸Aの周りのAIOL100の回転を限定し、デバイスの偏心を避ける。眼内のAIOLの整置は、0.05mm~0.5mmよりも多大なオーバーサイジングとの組み合わせによって、中心合わせを向上させ、眼構造との接触を保証し得る。オーバーサイジングは本願に記載されるAIOLの適切な留置およびフィットにとって必要ではないということは了解されるはずである。例えば、AIOLの平面における患者の毛様体直径が正確にイメージングおよび測定されて、フィットの問題を克服するためのオーバーサイジングの必要を避け得る。
【0157】
水平に整置された力変換・伝達アーム115が毛様体筋との係合へと楔入するように、本願に記載されるAIOLは、捻りまたは回転によって所定位置にインプラントされ得る。これはインプラントの間のフィットの調整を可能にする。図6Aは切嚢を示す眼の前側の図である。この図には描かれていないが、前側の図からは、毛様体筋18は一般的に卵形の形状を天然に有する。AIOL100は、小さい角膜切開から、前眼房を通って、虹彩を過ぎて、後眼房内に挿入され得る。ひとたび後眼房の内部においては、AIOL100は展開および/または巻解し得る。AIOLは、デバイスの後側表面が切嚢の内部に(後側に)配置されかつ力変換・伝達アーム115が切嚢の外部に(前側に)留まるように整置され得る。力変換・伝達アーム115のそれぞれが毛様体構造(例えば、毛様体溝または毛様体頂部)上において所定位置に楔入するまで、AIOLは毛様体筋に対して相対的にデバイスの光軸Aの周りに回転させられ得る。力変換・伝達アーム115は、それらが一般的に眼に対して相対的に水平なまたは内側-外側の整置で配置されるように、所定位置に楔入する。力変換・伝達アーム115は、毛様体筋18との接触へと楔入するように回転させられ得、または接触部分135と眼組織との間に小さいギャップを維持するように回転させられ得る。ギャップは例えば0.1mmギャップであり得る。ひとたび力変換・伝達アーム115が眼に対して一般的に水平に整置されると、切嚢Cによって形成された水晶体嚢22のエッジ部は安定化ハプティック160の前側表面上に延在させられる。この様式で水晶体嚢22内にハプティック120を確保することは、AIOL100の前側の面を虹彩14から引き離す。AIOLの狭い横断面厚さTは、虹彩14に対して相対的により多大なクリアランスをもまた提供する。安定化ハプティック120が毛様体溝内にフィットするように設計される実装においては、AIOLの後側端部領域107または最も後側の表面は水晶体嚢22のエッジ部内に配置され得、安定化ハプティック160は毛様体溝内において前側に配置されて、それによってAIOL100を後側方向に押す。
【0158】
切嚢Cは卵形形状であり得、任意に、切嚢Cのエッジ部から外向きに放射状に、かつ眼の光軸Aから離れるように延在する1つ以上のスリットSを組み込み得る(図6Aを見よ)。前側カプセルとAIOLの後側表面との間の干渉を除去または最小化することによって、卵形の切嚢Cおよび任意のスリットSは、AIOL100が水晶体嚢22内にさらに沈み込み、より後側に配置されることを許す。これは、力変換・伝達アーム115が毛様体頂部18により直ちにアクセスおよび楔入することを許す。前側カプセルはAIOLの動きを制限し得、同時に、それがより後側の場所に配置されることを許す。いくつかの実装において、卵形の切嚢Cは6mm×7mmであり得る。
【0159】
一般的に、AIOLの回転的なインプラントは、力変換・伝達アーム115の接触部分135と毛様体構造との間の最適な配置を達成することを可能にし得る。回転的なインプラントは、力変換・伝達アーム115の長さを調整する必要を避け得る。しかしながら、フィットおよび/または光学度数を改善するために、眼内へのインプラント後に、AIOLはさらに調整され得るということは了解されるはずである。例えば、力変換・伝達アーム115の長さが調整され得、力変換・伝達アーム115がレンズ本体105から離れるように延在する角度も同様であり得る。レンズ本体105の基本度数を変化させるために、デバイスの1つ以上の部分がインサイチュで膨張または収縮させられ得る。いくつかの実装においては、例えば、レンズ本体105の形状変化を引き起こすためのネジまたは別の機械的フィーチャをレンズ本体105に挿入することによって、レンズ本体105の膨張および/または収縮は機械的に行われ得る。いくつかの実装において、レンズ本体105の膨張および/または収縮は、レンズ本体105のシールされたチャンバー155内に光学流体156をインジェクションすることおよび/またはそこから取り出すことによって行われ得る。光学流体156の量は、カスタマイズされたシリンジ針または圧送機構を受け入れるように構成された一方向弁を有する外部ポートから、シールされたチャンバー155内の光学流体156をインジェクションすることおよび/または取り出すことによって変化させられ得る。材料にエネルギーを適用することによって、前側光学部145(または静的要素150)上の張力もまた調整され得る。例えば、材料は熱活性化によってブレブを作り出し得る感熱性材料であり得る。レンズ本体105の張力および体積の変化は、ブレブ、湾入、または平坦化が材料の活性化によって形成されるかどうかに依存して起こり得る。静的レンズもまたこのやり方で改変され得る。
【0160】
図8に示されている通り、患者はそれらの毛様体の直径を測定することによって術前評価され得る(ボックス805)。毛様体の直径は超音波生体顕微鏡法(UBM)、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)、または他の医療イメージング技術によって測定され得る。患者の光学度数ニーズは術前測定され得る(ボックス810)。これらの測定は、最適な力変換・伝達アーム115寸法と光学度数とを有するレンズ100を選択するために用いられ得る(ボックス815)。図9に示されている通り、毛様体直径の術前測定(ボックス905)ならびに患者にとって適切な寸法および光学度数を有するレンズの選択(ボックス910)の後に、レンズ100は白内障除去外科手術に則ってインプラントおよび配置され得る(ボックス915)。力変換・伝達アーム115の接触部分135と標的の毛様体構造との間の係合の術間評価(単数または複数)が行われ得る(ボックス920)。いくつかの実装においては、力変換・伝達アーム115の調整が行われ得(ボックス925)、係合のさらなる術間評価(単数または複数)が行われ得る(矢印926)。本願の他所に記載される通り、力変換・伝達アーム115はインサイチュでサイズを調整され得る。所望のフィットが達成されるまで、レンズの光学的なフィットの術間評価が行われ得る(ボックス930)。いくつかの実装においては、光学度数が調整され得る(ボックス935)。レンズの光学度数は本願の他所に記載される通りインサイチュで調整されて、より球面状のまたは円柱状のレンズを作り出し得る。調整後には、所望の度数が達成されるまで、レンズの光学的なフィットのさらなる術間評価が行われ得る(矢印936)。それから、手術は標準的な外科手術によって続行し得る(ボックス940)。図10図9に記載されている方法に類似の術後レンズ調整の実装を例解している。毛様体直径の術前測定(ボックス1005)ならびに患者にとって適切な寸法および光学度数を有するレンズの選択(ボックス1010)後に、レンズ100は白内障除去外科手術に則ってインプラントおよび配置され得る(ボックス1015)。手術は標準的な外科手術によって続行し得る(ボックス1020)。力変換・伝達アーム115の接触部分135と標的の毛様体構造との間の係合の術後評価(単数または複数)が行われ得る(ボックス1025)。いくつかの実装においては、力変換・伝達アーム115の調整が行われ得(ボックス1030)、係合のさらなる術後評価(単数または複数)が行われ得る(矢印1036)。所望のフィットが達成されるまで、レンズの光学的なフィットの術後評価が行われ得る(ボックス1035)。いくつかの実装において、レンズの光学度数はインサイチュで調整され得る(ボックス1040)。調整後には、所望の度数が達成されるまで、レンズの光学的なフィットのさらなる術後評価が行われ得る(矢印1046)。術間に行われるかまたは術後に行われるかにかかわらず、レンズのフィットおよび度数の評価および調整は多分に互いから完全に独立であり得、その結果、どちらかが他のものなしに行われ得るということは了解されるはずである。ある種の状況においては、レンズ度数はレンズのフィットの評価なしに評価および調整され得る。他の状況において、レンズのフィットはレンズ度数の評価なしに評価および調整され得る。
【0161】
AIOLの位置は当分野において公知のイメージング技術を用いて術間および術後評価され得る。AIOLの1つ以上のコンポーネントは、UBMなどのイメージング技術を用いる評価の間に明瞭に可視ではないシリコーンなどの材料から形成され得る。従って、AIOLはレンズの位置の評価に資するための1つ以上の可視化マーカー1100を組み込み得る。マーカー1100は、1つ以上の型のイメージング手続きによって可視である材料から作られ得る。いくつかの実装において、マーカー1100はポリイミドから形成され得、レンズ100の1つ以上の領域上または内に位置し得る。例えばシリコーンなどの別の材料から形成されたレンズの残りの1つ以上のコンポーネントと比較して、可視化マーカー1100の材料はイメージングによって見かけ上相違し得る。マーカー1100は、レンズ本体105、力伝達アーム115、静的要素150、または安定化システム120を補強するために記載されている構造などの内部骨格構造と一体化され得る。代替的には、マーカー1100はレンズの機能に寄与せずにあり得るが、特に可視化を向上させるために追加される追加のコンポーネントであり得る。代替的には、マーカー1100は、当分野に公知の眼内イメージング技術によって容易に同定可能であるレンズコンポーネントのいずれかへの幾何形状的改変であり得る。例えば、ディボット部またはスルーホールがシリコーン構造中に置かれ得、これはそれ以外は連続的な表面を有する。かかるマーカー1100は、適当なフィットを保証するためにレンズ100の測定を取る際に医師の手引きとなり得る。各構造の位置を他のレンズコンポーネントおよび天然に現れる解剖学的な構造に対して相対的に明らかにするやり方で、高度に可視のマーカー1100はレンズの異なるエリアに戦略的に置かれ得る。マーカー1100はレンズ内の動的な動きを可視化するためにもまた有用であり得る。例えば、それらの相対的位置がレンズの調節可能な状態に依存するように、2つのマーカーが配置され得る。それゆえに、調節可能から無調節的な状態へと移行しているレンズを示すために、マーカーの診断イメージングが用いられ得る。
【0162】
可視化マーカー1100は、術者がAIOLの正しい平面を可視化することを支援し得、最も長い軸に沿って力変換・伝達アーム115のイメージを捕捉し得る。可視化マーカー1100は、イメージの捕捉および分析を支援して、力変換・伝達アーム115の距離とそれらの垂直な位置とを毛様体突起に対して相対的に明瞭に同定し得る。可視化マーカー110は、インプラント後に調節の間の力変換・伝達アーム115の動きを分析することにもまた資し得る。図11A~11Lは、レンズ100上の種々の点に配置された1つ以上の可視化マーカー1100を組み込むレンズ100の実装を例解している。可視化マーカー1100は、眼の解剖学的構造に対して相対的なレンズの種々のコンポーネントの整置および位置に関する追加の情報を提供するための、種々の形状およびサイズのいずれかを有し得る。図11A~11Bは、複数個の可視化マーカー1100を有するレンズ100の実装のそれぞれ上面平面図および側面図を例解している。この実装においては、レンズ100は、力変換・伝達アーム115の外側接触領域135の近くにおける第1の可視化マーカー1100aと力変換・伝達アーム115の内側接触部分137の近くにおける第2の可視化マーカー1100bとを包含し得る。第3の可視化マーカー1100cが、レンズの別の場所に、例えば安定化システム120の一部の上に、例えばフランジ172またはレンズの別の部分、例えば後側要素150のリング上に位置し得る。図11C~11Dは、複数個の可視化マーカー1100を有するレンズ100の別の実装のそれぞれ上面平面図および側面図を例解している。レンズ100は、可視化マーカー1100a、1100b、1100cの3セットを包含し得る。可視化マーカー1100a、1100b、1100cのそれぞれは変動する幅または厚さを有し得、その結果、どこで横断面が取られるかに依存して、それらはイメージングによって相異なる横断面図またはパターンを提供する。例えば、力変換・伝達アーム115の外側接触領域135の近くに配置された可視化マーカー1100aは狭い部分1105およびより広い部分1110を有し得る。類似に、力変換・伝達アーム115の内側接触部分137の近くに配置された第2の可視化マーカー1100bは狭い部分1105およびより広い部分1110を有し得る。安定化システム120のフランジ172に沿って配置された第3の可視化マーカー1100cもまた狭い部分1105およびより広い部分1110を有し得る。レンズが横断面をイメージングされるときに、これらの狭いおよび広い部分はそれぞれ短および長のパターンを提供する。例えば、図11Eの複数個の可視化マーカー1100a、1100b、1100cの横断面イメージは、線F-Fに沿って取られるときに、第1の側においては「長-短-長」、反対側においては「短-短-長」であるパターンを提供する(図11Fを見よ)。しかしながら、図11Gの複数個の可視化マーカー1100a、1100b、1100cの横断面イメージが線H-Hに沿って取られる場合には、マーカーによって提供されるパターンは「短-長-短」および「長-短-長」に変化する(図11Hを見よ)。類似に、図11Iの複数個の可視化マーカー1100a、1100b、1100cの横断面イメージが線J-Jに沿って取られる場合には、提供されるパターンは「短-短-長」および「長-短-短」に変化する。そして、図11Kの複数個の可視化マーカー1100a、1100b、1100cの横断面イメージが線L-Lに沿って取られる場合には、提供されるパターンは「短-長-短」および「短-長-短」に変化する、などである。
【0163】
本願において開示されるデバイスの種々のコンポーネントの調製にとって好適な材料または材料の組み合わせがここでは提供されている。他の好適な材料が考慮されるということは了解されるはずである。U.S.特許公開No.2009/0234449、2009/0292355、および2012/0253459は本願に記載されるデバイスのある種のコンポーネントを形成することにとって好適な他の材料のさらなる例を提供しており、それらはそれぞれそれらの全体が参照によって本願に組み込まれる。それらが同じ材料から形成されるという点で、レンズ本体105の1つ以上のコンポーネントは互いと一体であり得る。例えば、内部支持部110は前側光学部145の外周領域144の厚化した領域であり得る。類似に、形状変形膜140および環状要素104は互いと一体であり得、所望の機能を提供するための厚さまたは柔軟性などのある種の物理的特性を有する。代替的には、レンズ本体105のコンポーネントの1つ以上は当分野において公知の技術によって一緒に連結され得る。そのため、レンズ本体105の1つ以上のコンポーネントは同じ材料または異なる材料から形成され得る。支持部110、外周領域144、動的膜145、および形状変形膜140の1つ以上は、光学的に透明な低モジュラスエラストマー、例えばシリコーン、ウレタン、フレキシブルアクリル樹脂、またはフレキシブル非エラスティックフィルム、例えばポリエチレン、およびハロゲン化エラストマー、例えばフルオロシリコーンエラストマーから形成され得る。生体適合性の光学流体は、可視スペクトルにおいて透明かつ透過性である非圧縮性液体またはゲル、例えばシリコーン流体およびゲル、官能化シリコーン流体およびゲル(例えば、ハロゲン、すなわちフッ素化シリコーン、芳香族、すなわちフェニル官能化シリコーンなど)、炭化水素および官能化炭化水素、例えば長鎖炭化水素、ハロゲン化炭化水素、例えばフッ素化および部分的フッ素化炭化水素、その屈折率(RI)が水溶性または水膨潤性ポリマー、バイオポリマー膨潤性添加剤、例えばセルロース、およびナノ構造を形成して屈折率を増大させる無機または有機添加剤の追加によって増大した流体およびゲル両方の水系システムであり得る。いくつかの実装において、シールされたチャンバー155内の光学流体は1.37よりも高い屈折率を有する。他の実装において、シールされたチャンバー155内の光学流体は1.37~1.57の間の屈折率を有する。他の実装において、シールされたチャンバー155内の光学流体は1.37~1.60の間の屈折率を有する。第1の実装においては、シールされたチャンバー155を満たす光学流体はフルオロシリコーン油であり、シールされたチャンバー155を形成するコンポーネント(例えば、形状変形膜140、静的要素150、内側支持部110、外周領域144、および前側光学部145の動的膜143の内側に面した表面)はシリコーンエラストマーから形成される。第2の実装においては、シールされたチャンバー155を満たす光学流体はシリコーン油であり、シールされたチャンバー155を形成するコンポーネントはフルオロシリコーンエラストマーから形成される。第3の実装においては、シールされたチャンバー155を満たす光学流体は芳香族またはフェニル置換の油、例えばフェニルシリコーン油であり、シールされたチャンバー155を形成するコンポーネントはフルオロシリコーンエラストマーなどのハロゲン化シリコーンエラストマーから形成される。材料の組み合わせは、レンズの安定性を最適化し、膨潤を防ぎ、至適な屈折率を維持するように選ばれる。いくつかの実装において、力変換・伝達アーム115は、硬質ポリマー、例えばシリコーン、ポリウレタン、PMMA、PVDF、PDMS、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリカーボネートなど、またはその組み合わせであり得る。いくつかの実装において、力変換・伝達アーム115はPMMAによって補強された要素であり得る。いくつかの実装において、AIOLは、後側の静的要素150および力変換・伝達アーム115を包含する全シリコーン材料から形成される。安定化システム120はより硬質のシリコーンから形成され得、またはポリイミドから形成され得るかもしくはそれを組み込み得る。例えば、安定化ハプティック160およびフランジ172はポリイミドであり得る。
【0164】
種々の実装においては、記載は図の参照によってなされる。しかしながら、ある種の実装は、それらの特定の詳細の1つ以上なしに、または他の公知の方法および構成との組み合わせで実施され得る。記載においては、実装の徹底した理解を提供するために、特定の構成、寸法、およびプロセスなどの数々の特定の詳細が提示される。他の場合においては、不必要に記載を不明瞭にしないために、周知のプロセスおよび製造技術は具体的に詳細(detain)に記載はされなかった。本明細書における「1つの態様」、「ある態様」、「1つの実装」、「ある実装」、または同類と言うことは、記載される具体的なフィーチャ、構造、構成、または特徴が少なくとも1つの態様または実装に包含されるということを意味する。それゆえに、本明細書の種々の箇所(placed)における表現「1つの態様」、「ある態様」、「1つの実装」、「ある実装」、または同類の出現は、必ずしも同じ態様または実装を言っていない。さらにその上、具体的なフィーチャ、構造、構成、または特徴は、1つ以上の実装においていずれかの好適な様式で組み合わせられ得る。
【0165】
本願に記載されるデバイスおよびシステムは種々の特徴のいずれかを組み込み得る。本願に記載されるデバイスおよびシステムの1つの実装の要素または特徴は、代替的に、または本願に記載されるデバイスおよびシステムの別の実装の要素もしくは特徴、ならびにU.S.特許公開No.2009/0234449、2009/0292355、2012/0253459、およびPCT特許公開No.WO2015/148673に記載されている種々のインプラントおよび特徴との組み合わせで組み込まれ得、これらの全体は参照によってそれぞれ本願に組み込まれる。簡潔にするために、それらの組み合わせのそれぞれの明示的記載は省かれ得るが、種々の組み合わせは本願において考慮される。加えて、本願に記載されるデバイスおよびシステムは眼内に配置され得、特に図に示されている通りまたは本願に記載される通りにインプラントされる必要はない。種々のデバイスは、種々の異なる方法に従って、種々の異なるデバイスおよびシステムを用いてインプラント、配置、および調整などされ得る。種々のデバイスはインプラントの前に、間に、およびいずれかの時間の後に調整され得る。種々のデバイスがいかにインプラントおよび配置され得るかのいくつかの代表的な記載が提供されている。しかしながら、簡潔にするために、各インプラントまたはシステムでの各方法の明示的記載は省かれ得る。
【0166】
記載中の相対的な用語の使用は、相対的な位置または方向または整置を指示し得、限定的であることを意図されてはいない。例えば、「遠位」は参照点から離れる第1の方向を指示し得る。類似に、「近位」は第1の方向とは反対の第2の方向のある場所を指示し得る。用語「前」、「側部」、および「後ろ」の使用、ならびに「前側」、「後側」、「尾の」、「頭の」、および同類は、参照の枠を確立するために用いられ、種々の実装において本願に記載されるデバイスのいずれかの使用または整置を限定することを意図されてはいない。
【0167】
本明細書は多くの特定の事項を含有するが、同時に、それらは、請求されるものまたは請求され得るものの範囲の限定としてではなく、むしろ具体的な態様に特定の特徴の記載として解釈されるべきである。別個の態様の文脈において本明細書に記載されるある種の特徴同士は、組み合わせで単一の態様にもまた実装され得る。逆に、単一の態様の文脈において記載される種々の特徴は、別個にまたはいずれかの好適な部分の組み合わせで複数の態様にもまた実装され得る。その上、特徴がある種の組み合わせで働くと上に記載され、もともとその通り請求され得ても、請求される組み合わせからの1つ以上の特徴がいくつかのケースにおいては組み合わせから削除され得、請求される組み合わせは部分の組み合わせまたは部分の組み合わせの変形を対象とし得る。類似に、作業が図面において具体的な順序で図示されているが、同時に、これは、望ましい結果を達成するために、かかる作業が示されている具体的な順序でもしくは一連の順序で行われることまたは全ての例解されている作業が行われることを要求すると理解されるべきではない。少数の例および実装のみが開示されている。記載されている例および実装ならびに他の実装への変形、改変、ならびに改良が、開示されているものに基づいてなされ得る。
【0168】
上の記載および請求項においては、「の少なくとも1つ」または「の1つ以上」などの表現、次に要素または特徴の接続的なリストが現れ得る。用語「および/または」もまた、2つ以上の要素または特徴のリストにおいて現れ得る。それが用いられる文脈と別様に暗黙的または明示的に矛盾しない限り、かかる表現は、リストされている要素もしくは特徴のいずれかを単体で、または記載されている要素もしくは特徴のいずれかを他の記載されている要素もしくは特徴のいずれかとの組み合わせで意味することを意図されている。例えば、表現「AおよびBの少なくとも1つ」;「AおよびBの1つ以上」;ならびに「Aおよび/またはB」は、それぞれ「A単独、B単独、または一緒にAおよびB」を意味することを意図される。類似の解釈が、3つ以上の項目を包含するリストについてもまた意図される。例えば、表現「A、B、およびCの少なくとも1つ」;「A、B、およびCの1つ以上」;ならびに「A、B、および/またはC」は、それぞれ、「A単独、B単独、C単独、一緒にAおよびB、一緒にAおよびC、一緒にBおよびC、または一緒にAおよびBおよびC」を意味することを意図される。
【0169】
用語「に基づく」の使用は、上においておよび請求項において「に少なくとも部分的に基づく」を意味することを意図され、その結果、記載されていない特徴または要素もまた許容可能である。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図11H
図11I
図11J
図11K
図11L
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図14H
図14I
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図17F
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E