(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】エチレン-プロピレン-非共役ポリエン共重合体を含有するゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/16 20060101AFI20230831BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20230831BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20230831BHJP
C08K 5/47 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
C08L23/16
C08K3/06
C08K5/14
C08K5/47
(21)【出願番号】P 2019555514
(86)(22)【出願日】2019-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2019021034
(87)【国際公開番号】W WO2019230699
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2018102563
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】根上 哲郎
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-110070(JP,A)
【文献】特表2016-514746(JP,A)
【文献】特開昭62-143946(JP,A)
【文献】特開2017-211084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/16
C08K 3/06
C08K 5/14
C08K 5/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-プロピレン-非共役ポリエン共重合体100質量部に対して、
過酸化物架橋剤1~3質量部と、
硫黄0.1~0.8質量部と、
ジベンゾチアジルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、および2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールから選択されるチアゾール系架橋促進剤0.1~0.45質量部とを含有するゴム組成物であって、
前記エチレン-プロピレン-非共役ポリエン共重合体におけるエチレンとプロピレンの含有量の合計に対するプロピレンの含有量の比率が30~55%であることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
170℃における架橋特性t10が0.9分以上、
架橋後の引張強さが15.0MPa以上、
架橋後の伸びが400%以上および
架橋後の100℃、22時間における圧縮永久歪が50%以下である請求項
1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
架橋後の硬度がJIS A硬度で20~90である請求項1
または請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
防振ゴム用である請求項1~
3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
回転変動吸収ダンパのカップリング部用である請求項
4に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン-プロピレン-非共役ポリエン共重合体を含有するゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
防振ゴム等の用途に使用されるゴム材料においては、耐久性と耐熱性が良好であることが求められる。従来、耐久性を向上させるためには、架橋剤として硫黄系架橋剤が選定され、一方、耐熱性を向上させるためには、過酸化物架橋剤が選定されることが多かった。しかし、耐久性と耐熱性とは一般にトレードオフの関係にあるため、両方の性能を両立させることは困難であった。
【0003】
このような状況にあって、硫黄系架橋剤と過酸化物架橋剤とを併用することによって、耐久性と耐熱性との両立を図ろうとする先行技術が存在する。例えば、特許文献1では、天然ゴムあるいはジエン系合成ゴムに、有機過酸化物、硫黄、ベンゾチアゾール系加硫促進剤及びテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドを配合してなる耐久性ゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、両架橋剤は各々成形面における特徴が異なるため、スコーチ、流動、ジョイント不良といった成形加工に起因する各種不良が生じ、結果的に耐久性と耐熱性の両立が困難となり、安定したゴム成形品を得ることができないといった問題があった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、硫黄系架橋剤と過酸化物架橋剤とを併用し、架橋特性および加工性に優れ、架橋後の耐久性および耐熱性に優れたゴム組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ゴム組成物のベースゴムとして、耐熱性、耐寒性、耐久性、ばね定数(E')の温度依存性、反発応力のバランス等に優れたエチレン-プロピレン-非共役ポリエン共重合体(以下適宜、EPDMポリマーと記載することがある。)を採用した。
【0008】
本発明者は、ゴム組成物に用いる配合組成を検討したところ、特定の組成のEPDMポリマーを使用し、特定の架橋促進剤を用い、特定の配合組成とすることにより、上記課題を解消し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のような構成を有している。
【0009】
本発明のゴム組成物は、EPDMポリマー100質量部に対して、過酸化物架橋剤1~3質量部と、硫黄0.1~0.8質量部と、ジベンゾチアジルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、および2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールから選択されるチアゾール系架橋促進剤0.1~0.45質量部とを含有するゴム組成物であって、前記EPDMポリマーにおけるエチレンとプロピレンの含有量の合計に対するプロピレンの含有量の比率が30~55%であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明のゴム組成物は、170℃における架橋特性t10が0.9分以上、架橋後の引張強さが15.0MPa以上、架橋後の伸びが400%以上および架橋後の100℃、22時間における圧縮永久歪が50%未満であることが好ましい。また、架橋後の硬度がJIS A硬度で20~90であることが好ましい。また、本発明のゴム組成物は、防振ゴム用に適性を有しており、特に、回転変動吸収ダンパのカップリング部(アイソレーション部)用に適性を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴム組成物は、硫黄系架橋剤と過酸化物架橋剤とを併用し、架橋特性および加工性に優れ、架橋後の耐久性および耐熱性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に説明する具体例としての実施形態に限定されるわけではない。
【0013】
本実施形態のゴム組成物は、EPDMポリマー、過酸化物架橋剤、硫黄、チアゾール系架橋促進剤を含有するゴム組成物である。ゴム組成物を構成する各成分について以下説明する。
【0014】
(EPDMポリマー)
EPDMポリマーは、耐熱性、耐寒性、耐久性、ばね定数の温度依存性、反発応力のバランス等に優れており、防振ゴム等の用途に適している。また、EPDMポリマーは、加工性、耐候性、耐オゾン性、耐薬品性等にも優れている。
【0015】
EPDMポリマーの中でも、EPDMポリマーにおけるエチレンとプロピレンの含有量(質量)の合計に対するプロピレンの含有量(質量)の比率が30~55%であるゴムを用いる。プロピレン含有量の比率が30%未満であるとエチレン鎖の結晶化により低温性が悪化する懸念がある。一方、プロピレン含有量の比率が55%を超えると、プロピレン鎖の結晶化により低温性が悪化する懸念がある。EPDMポリマーの低温性が悪化すると、低温時の防振性や圧縮永久歪の低下を招くおそれがある。EPDMポリマーは、エチレンとプロピレンの含有量の合計に対するプロピレンの含有量の比率が30~55%であれば、EPDMポリマーを複数種類混合して用いてもよい。すなわち、混合して使用する複数種類のEPDMポリマーのうち、一部の種類がエチレンとプロピレンの含有量の合計に対するプロピレンの含有量の比率30~55%を満足していなくとも、EPDMポリマー全体として、当該数値範囲を満足していればよい。
【0016】
EPDMポリマーの非共役ポリエンとしては、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン等のトリエンなどが挙げられる。非共役ポリエンは、特に限定されないが、非共役ジエンが好ましい。また、架橋反応にあたり高速架橋が可能となる点から、ノルボルネン化合物が特に好ましい。
【0017】
EPDMポリマーのムーニー粘度ML1+4(125℃)は、20~80の範囲が好ましく、20~70の範囲が更に好ましい。EPDMポリマーは非油展ポリマー、油展ポリマーのいずれも用いることができる。
【0018】
(過酸化物架橋剤)
過酸化物架橋剤としては、公知の有機過酸化物を使用することができる。過酸化物架橋剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α'-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエイト、t-ブチルパーオキシベンゾエイト等が挙げられる。過酸化物架橋剤は、EPDMポリマー100質量部に対して、1~3質量部を配合する。EPDMポリマー100質量部に対する過酸化物架橋剤の配合量は、好ましくは1~2.75質量部であり、より好ましくは1.0~2.5質量部であり、さらに好ましくは1.3~2.5質量部である。過酸化物架橋剤が1質量部未満であると圧縮永久歪(ヘタリ性)が低下する懸念があり、3質量部を超えると耐久性が低下する懸念がある。
【0019】
(硫黄)
硫黄系架橋剤としての硫黄は、EPDMポリマー100質量部に対して、0.1~0.8質量部を配合する。EPDMポリマー100質量部に対する硫黄の配合量は、好ましくは0.1~0.6質量部であり、より好ましくは0.1~0.4質量部である。硫黄が0.1質量部未満であると、耐久性の改善効果が小さく、0.8質量部を超えると、ブルーム性、耐熱性(圧縮永久歪)が低下する懸念がある。
【0020】
(チアゾール系架橋促進剤)
本実施形態のゴム組成物では、架橋促進剤として、チアゾール系架橋促進剤を用いる。チアゾール系架橋促進剤は、架橋ゴムの機械的強度や耐久性の向上に優れた効果を有している。チアゾール系架橋促進剤とは、チアゾール構造を有する化合物のうち、ジベンゾチアジルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等である。これらの中でも、耐熱性ならびにスコーチ安定性が良好なジベンゾチアジルジスルフィドが好ましい。
【0021】
チアゾール系架橋促進剤は、過酸化物架橋剤の架橋反応に補助的に作用し、架橋特性t90の遅延を抑えつつ、架橋特性t10を大きく遅延させて、過酸化物架橋剤の架橋速度を適度に調整する働きがある。チアゾール系架橋促進剤は、EPDMポリマー100質量部に対して、0.1~0.6質量部を配合する。EPDMポリマー100質量部に対するチアゾール系架橋促進剤の配合量は、好ましくは0.1~0.45質量部であり、より好ましくは0.1~0.3質量部である。チアゾール系架橋促進剤が0.1質量部未満であると、架橋特性t10を遅延させる(大きくする)効果が小さく、成形性が低下する。一方、チアゾール系架橋促進剤が0.6質量部を超えると、架橋特性t10を遅延させる効果が薄れ、添加量の増加に伴い、架橋阻害が生じるおそれがある。
【0022】
チアゾール系架橋促進剤は、複数種類を併用してもよい。また、本実施形態の効果を阻害しない範囲内で、チアゾール系架橋促進剤と他の種類の架橋促進剤とを併用してもよい。
【0023】
(ゴム組成物)
本実施形態のゴム組成物には、発明の効果を阻害しない範囲内で、EPDMポリマー以外のポリマーを含有させてもよい。また、本実施形態のゴム組成物には、公知の各種添加剤を適宜添加してもよい。公知の添加剤としては、補強剤、無機充填剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、分散剤、難燃剤、粘着性付与剤、離型剤等が挙げられる。
【0024】
本実施形態のゴム組成物は、架橋特性として、170℃における架橋特性t10が0.9分以上であることが好ましい。170℃における架橋特性t10が0.9分以上であると、スコーチ(早期架橋)タイムが長く、架橋特性に優れ、成形加工性に優れている。170℃における架橋特性t10は、1分以上であるとより好ましい。170℃における架橋特性t10は、JIS K 6300-2に準拠して測定することができる。
【0025】
本実施形態のゴム組成物は、架橋後の引張強さが15.0MPa以上であり、架橋後の伸び(切断時伸び)が400%以上であることが好ましい。架橋後の引張強さが15.0MPa以上であり、架橋後の伸びが400%以上であると、機械的強度に優れ、その結果、耐久性にも良好と考えられ、防振ゴム等の用途に用いることができる。架橋後の引張強さは、16.0MPa以上がより好ましく、17.0MPa以上がさらに好ましい。架橋後の伸びは450%以上がより好ましく、500%以上がさらに好ましい。
【0026】
本実施形態のゴム組成物は、架橋後の硬度がJIS A硬度で20~90であることが好ましく、30~70であることがより好ましく、30~60であることがさらに好ましい。以上述べてきた常態物性、すなわち、架橋後の引張強さ、伸びおよび硬度は、優れた耐久性の指標となるものである。
【0027】
本実施形態のゴム組成物は、架橋後の100℃、22時間における圧縮永久歪が50%以下であることが好ましい。圧縮永久歪が50%以下であると、ゴム的特性に優れ、防振ゴム等の用途に用いることができる。架橋後の100℃、22時間における圧縮永久歪は48%以下であることがより好ましい。圧縮永久歪(ヘタリ性)は、優れた耐熱性の指標となるものである。
【0028】
(製造方法)
本実施形態のゴム組成物を製造するには、はじめに、未架橋のゴム組成物の調整を行う。公知の製造装置としては、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー、インターミックス、2本ロール、3本ロールなどが挙げられる。所定の原料を混練し、未架橋ゴム組成物を調製した後、加硫プレス、圧縮成形機、射出成形機等を用いて、一般に約150~200℃に約3~60分間程度加熱することによって、一次架橋(加硫)を行う。必要に応じて、約120~200℃で約1~24時間オーブン加硫などによって、二次架橋(加硫)を行うこともできる。上記の架橋によって、本実施形態のエチレン-プロピレン-非共役ポリエン共重合体を含有するゴム組成物の架橋品を得ることができる。
【0029】
本実施形態のゴム組成物は、耐熱性、耐久性、常態物性、架橋特性、加工性(混練性、ブルーム性)、防振性に優れ、防振ゴム等において重要な特性の向上を図ることができる。本実施形態のゴム組成物の用途としては、例えば、高温環境で耐久性が要求されるエンジン周辺の部材に適性を有している。エンジン周辺の部材としては、例えば、回転変動吸収ダンパ、トーショナルダンパ、カップリング、マウント、グロメット等が挙げられる。
【0030】
自動車用エンジンのクランクシャフト先端に設けられたプーリには、駆動力を補機へ伝達する際にエンジンの回転変動を平滑化する機能を有する回転変動吸収ダンパが設けられる場合がある。回転変動吸収ダンパは、クランクシャフトからハブへ入力されたトルクを、カップリング部において、カップリングゴムの捩り方向剪断変形作用によって回転変動を吸収しながらプーリ本体へ伝達する振動絶縁機能を有している。本実施形態のゴム組成物は、このような回転変動吸収ダンパのカップリング部のカップリングゴムとして特に適性を有している。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0032】
(実施例1~6、参考例7~8、比較例1~8)
実施例に用いた材料は下記のとおりである。
(i)EPDMポリマー:油添EPDM、ランクセス社製Keltan4869C
(ii)EPDMポリマー:EPDM,JSR社製EP35
(iii)過酸化物架橋剤:ジクミルパーオキサイド、日油社製パークミルD
(iv)チアゾール系架橋促進剤:ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、大内新興化学社製ノクセラDM-10
(v)チウラム系架橋促進剤:テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、大内新興化学社製ノクセラTOT-N
【0033】
(特性測定用テストピースの作製)
3Lニーダーおよび12インチオープンロールを用いて混練し、表1および表2に記載の組成のゴム組成物の未架橋生地シートを調製した。その後、圧縮成形機を用いて、一次架橋温度:170℃、架橋時間:各ゴム材のt90の時間(分)で架橋し、2mm厚の架橋ゴムシートを成形した。
【0034】
<評価項目>
(架橋特性)
未架橋ゴムシートを用いて、JIS K 6300-2を参考にして、架橋特性を評価した。試験温度:170℃、試験時間:20分のとき、t10(10%架橋時間)と、t90(90%架橋時間)を測定した。
判定基準:t10が0.9分以上のとき、スコーチタイムが長く、良好(○)と判定した。t10が0.9分未満のとき、スコーチタイムが短く、不良(×)と判定した。また、t90が11分未満のとき、架橋時間が短く、架橋速度が良好(○)と判定した。t90が11~15分のとき、架橋時間が中庸であり、架橋速度が中間(△)と判定した。t90が15分以上のとき、架橋時間が長く、架橋速度が不良(×)と判定した。
【0035】
(常態物性)
架橋ゴムシートについて、以下の常態物性を評価した。
硬度:JIS K 6253を参考に、測定時間を瞬時として、硬度のピーク値を計測した。
引張強さTs(MPa):JIS K 6251に準拠して測定した。
判定基準:引張強さが17.0MPa以上のとき優(◎)、16.0MPa以上17.0MPa未満のとき良(○)、15.0MPa以上16.0MPa未満のとき可(△)、15.0MPa未満のとき不良(×)と判定した。
伸びEb(%):JIS K 6251に準拠して測定した。
判定基準:伸びが500%以上のとき優(◎)、450%以上500%未満のとき良(○)、400%以上450%未満のとき可(△)、400%未満のとき不良(×)と判定した。
【0036】
(耐熱性)
架橋ゴムシートと同条件で架橋した圧縮永久歪用大形試験片(JIS K 6262に準拠)を作成し、圧縮永久歪をJIS K 6262に準拠して測定した。熱老化条件は、100℃、22時間で行なった。
判定基準:圧縮永久歪が50%以下のとき良(○)、50%を超えるとき不良(×)と判定した。
【0037】
(粘弾性特性)
架橋ゴムシートについて、ISO 4664-1に対応するJIS K 6394を参考にして、粘弾性試験を実施した。
試験片の形状および寸法:幅6mm、厚さ2mmの短冊状物。
測定条件:掴み具間隔20mm、平均歪10%、歪振幅±0.1%。
【0038】
(E’の温度依存性)
引張条件下、60℃および120℃において、100Hzにおける貯蔵弾性率E’をUBM社製スペクトロメータ「DVE-V4」を用いて測定し、E’(120℃)/E’(60℃)の比を評価した。E’(120℃)/E’(60℃)の比が0.7以上のとき、E’の温度依存性は良好であると判定した。好ましくは、0.75以上、更に好ましくは0.80以上である。
【0039】
(tanδ)
UBM社製スペクトロメータ「DVE-V4」を用いて、引張条件下で、60℃、100Hzにおけるtanδを測定した。tanδが0.090以上のとき、防振性は良好であると判定した。
【0040】
(混練性)
ゴム組成物の混練性については、下記の項目(1)、(2)を評価し、2項目とも満足するものを○、いずれか1項目以上満たさないものを×と評価した。
(1)混練時間が30分以内であること
(2)生地排出後の混練機の汚染が無いこと
【0041】
(ブルーム性)
一次架橋条件(架橋温度170℃、架橋時間t90(分))で架橋後、24時間放置品の表面を確認した。架橋ゴム試料の表面のブルーム発生の程度(1)~(3)を評価して、判定した。
(1)目視にてテストピース表面にブルームがないとき:○
(2)目視にてテストピース表面にわずかにブルームがあるが、実用上問題がないとき:△
(3)目視にてテストピース表面にブルームがあり、大きな粘着性を伴い、使用困難であるとき:×
【0042】
評価結果を表1および表2に示した。
【0043】
【0044】
【0045】
表1、表2の結果から分かるように、実施例1~6および参考例7~8のゴム組成物は、架橋特性、常態物性、耐熱性、粘弾性特性、混練性、ブルーム性のいずれの性能においても優れていた。一方、比較例1~8のゴム組成物は、架橋特性、常態物性、耐熱性、粘弾性特性、混練性、ブルーム性のいずれかの性能において劣っていた。