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特許7340458HPV+悪性腫瘍を有する患者におけるPDL1とTGFベータの遮断の組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】HPV+悪性腫瘍を有する患者におけるPDL1とTGFベータの遮断の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230831BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230831BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230831BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230831BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20230831BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230831BHJP
   C07K 14/71 20060101ALN20230831BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230831BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230831BHJP
   C12N 15/863 20060101ALN20230831BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20230831BHJP
   C12N 15/861 20060101ALN20230831BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20230831BHJP
   C12N 15/869 20060101ALN20230831BHJP
   C12N 15/866 20060101ALN20230831BHJP
   A61K 35/761 20150101ALN20230831BHJP
   A61K 35/763 20150101ALN20230831BHJP
   A61K 35/76 20150101ALN20230831BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/17
A61K48/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/71
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/863 Z
C12N15/867 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/869 Z
C12N15/866 Z
A61K35/761
A61K35/763
A61K35/76
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019561944
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 US2018031501
(87)【国際公開番号】W WO2018208720
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/503,405
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】シュトラウス、ジュリアス ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ガリー、ジェイムズ エル.
(72)【発明者】
【氏名】ヒンリクス、クリスチャン エス.
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506217(JP,A)
【文献】Increased expression of PDL1 by the human papillomavirus 16 E7 oncoprotein inhibits anticancer immunity,Mol Med Rep,2017年03月,Vol. 15, No. 3,p. 1063-1070,doi: 10.3892/mmr.2017.6102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/17
A61K 39/395
A61K 48/00
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象にプログラム細胞死リガンド1(PD-L1トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFベータ経路を遮断する剤又は剤の組み合わせを投与する工程を含み、それによって該対象においてヒトパピローマウイルス(HPV)関連悪性腫瘍を抑制する、該対象においてHPV関連悪性腫瘍を抑制する方法における使用のための、PD-L1とTGFベータ経路を遮断する剤又は剤の組み合わせを含む組成物であって、
該剤又は剤の組み合わせがPD-1を遮断し、TGFベータを捕捉し、
該剤がTGFベータ受容体IIの可溶性細胞外ドメインと融合した、PD-L1に対する完全なヒトIgG1モノクローナル抗体又は抗体断片からなる、二機能性の融合タンパク質であり、かつ
該対象がヒト対象である、
組成物。
【請求項2】
抗体又は抗体断片がアベルマブである、請求項の組成物。
【請求項3】
剤がM7824(MSB0011359C)である、請求項1又は2の組成物。
【請求項4】
融合タンパク質が、該融合タンパク質をコードする核酸として投与される、請求項1~の何れか1項の組成物。
【請求項5】
融合タンパク質をコードする核酸がベクター中にある、請求項の組成物。
【請求項6】
ベクターがプラスミド又はウイルスベターである、請求項の組成物。
【請求項7】
ベクターが、ポックスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス、及びシンドビスウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターである、請求項の組成物。
【請求項8】
ウイルスベクターが、オルソポックス、アビポックス、フォウルポックス、ラクーンポックス、ラビットポックス、カプリポックス、レポリポックス、及びスイポックスからなる群から選択されるポックスウイルスである、請求項の組成物。
【請求項9】
組成物が、該剤と医薬的に許容可能な担体を含む、請求項1~の何れか1項の組成物。
【請求項10】
組成物が、1つ以上の追加の活性剤をさらに含む、請求項の組成物。
【請求項11】
1つ以上の追加の活性剤が、抗がん剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、シクロホスファミド、抗炎症剤、免疫療法、及びその組み合わせからなる群から選択される、請求項10の組成物。
【請求項12】
HPV関連悪性腫瘍が、子宮頸がん、中咽頭がん、直腸がん、肛門がん、膣がん、外陰がん、陰茎がん、及びHPV陽性がんからなる群から選択される、請求項1~11の何れか1項の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する相互参照
本特許出願は、2017年5月9日に出願された米国仮特許出願番号62/503,405の利益を主張し、それは参照として組み込まれる。
【0002】
連邦に支援された研究又は開発に関する記載
本発明はアメリカ国立衛生研究所、米国国立がん研究所による、プロジェクト番号Z01BC010666-12のもとにおける政府支援により行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
転移性又は難治性/再発性のHPV関連悪性腫瘍(子宮頸がん、肛門がん、中咽頭がん、外陰がん、膣がん、陰茎がん、及び扁平上皮直腸がん)は不治であり、標準療法により緩和されることが乏しい。これらの疾患がもたらす奏功率(response rate)は10~15%未満の確率であるために、これらの疾患の多くについて、進行した疾患のための標準的な第二選択療法又は第二選択の化学療法は存在しない(Nascimento de Oliveiraら, Journal of Cancer Therapy, 4: 1095-1099 (2013);Readeら., Gynecologic Oncology, 132: 780-789 (2014);及びHakenbergら, The Adv. Urol., 4(3): 133-138 (2012))。
【0004】
これらの疾患におけるPD-1単剤の阻害からの早期の証拠は、12~21%の範囲内の奏功率を示している。ペンブロリズマブは、HPV陽性及び陰性の疾患において類似する17.7%の奏功率に基づいて、再発性又は転移性の頭頚部扁平上皮がん(HNSCC)のためにFDAに認可されている(Mehraら, J. Clin. Oncol. 34(suppl; abstr 6012) (2016))。特にペンブロリズマブは、転移性子宮頚がんと転移性肛門がんにおいて17%の全奏効率(overall response rate)を有する(Frenelら, J. Clin. Oncol., 35(36): 4035(2017), 及びOttら, Ann. Oncol., 28(5): 1036 (2017))。ペンブロリズマブは単独で、再発性/転移性の子宮頸がんにおいて12.5%の奏功率(Frenelら, J Clin Oncol., 34(suppl; abstr 5515) (2016))、再発性/転移性の扁平上皮肛門がんにおいて20%の奏功率(Frenelら, J Clin Oncol., 34(suppl; abstr 5515) (2016))、及び再発性/転移性の頸部扁平上皮がん(HNSCC)において19.6%の全奏効率(Powellら. J. Clin. Oncol., 33(suppl; abstr TPS3094) (2015))を生み出す。ニボルマブは単独で、難治性の転移性扁平上皮肛門がんにおいて21%の奏功率(Morrisら, J. Clin. Oncol. 34, (suppl; abstr 3503) (2016))、及びHNSCC患者において13.3%の奏功率(Ferrisら, N. Engl. J. Med., 375(19): 1856 (2016))を生み出す。
【0005】
PD-1/PD-L1経路に加えて、幾つかのデータは、TGFベータ経路もまたHPV+悪性腫瘍において役割を果たしているかもしれないと示唆している(Levovitzら, Cancer Res. 74(23): 6833-44 (2014))。しかしながら、TGFベータ経路を標的とする剤は開発されていない、又はHPV関連がんの治療に採用されていない。
【0006】
よってHPV+悪性腫瘍を治療するために新たな剤を同定することの需要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、対象にPD-L1とTGFベータ経路を遮断する剤を投与する工程を含み、それによって該対象においてヒトパピローマウイルス(HPV)関連悪性腫瘍を抑制する、HPV関連悪性腫瘍を抑制する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は少なくとも部分的には、単離されたPD-L1単独の遮断などの現在の治療に対して、PD-L1とTGFベータの経路の遮断は、ヒトパピローマウイルス(HPV)+悪性腫瘍の患者において、有意に高い奏功率をもたらすという本発明者らの発見に根拠を置く。
【0009】
本発明は、対象にPD-L1とTGFベータ経路を遮断する剤を投与する工程を含み、それによって該対象においてHPV関連悪性腫瘍(即ちHPV+悪性腫瘍)を抑制する、HPV関連悪性腫瘍を抑制する方法を提供する。
【0010】
HPV+悪性腫瘍はHPVと関連している任意のがんであってもよい。がんの例には、限定するものではないが、子宮頸がん、中咽頭がん(舌と扁桃腺の基部を含む、喉の奥のがん等の頭頚部がん)、直腸がん(例えば、扁平上皮直腸がん)、肛門がん、膣がん、外陰がん、及び陰茎がんが挙げられる。1態様においてHPV+悪性腫瘍はHPV16感染に関連するがんである。他の態様においてHPV+悪性腫瘍はHPV18感染に関連するがんである。
【0011】
本発明の方法において、PD-L1とTGFベータの経路を遮断する任意の剤を使用することができる。1態様において剤はPD-L1を遮断し、TGFベータを捕捉(sequester)する。例えば剤は:
(1)PD-L1阻害剤:例えば、PD-L1抗体若しくは抗体断片、PD-L1小分子阻害剤、PD-1とそのリガンドであるPD-L1及びPD-L2との相互作用を標的とする抗体、又はPD-1シグナル伝達を阻害する抗体。PD-L1阻害剤の例には、限定するものではないが、BMS-936559、MPDL3280A、MEDI4736、ニボルマブ(BMS-936558又はMDXI106としても知られている)、ペムボロリズマブ、ピディリズマブ、アベルマブ、及びMK-3575が挙げられる(例えば、Sunshineら, Curr. Opin. Pharmacol., 23: 32-38 (2015); Weber, Semin. Oncol., 37(5): 430-4309 (2010);Tangら, Current Oncology Reports, 15(2): 98-104 (2013); Patnaikら, 2012 American Society of Clinical Oncology (ASCO) Annual Meeting, Abstract # 2512);及びClinicalTrials.gov Identifier NCT00730639を参照)。
(2)TGFベータ阻害剤:例えば、TGFベータ抗体又は抗体断片、TGFベータ小分子阻害剤、TGFベータとその受容体との相互作用を標的とする抗体、及びTGFベータ受容体のドミナントネガティブ型。TGFベータ阻害剤の例には、限定するものではないが、ガルニセルティブ(galunisertib)、SB-431542、フレソリムマブ、レルデリムマブ、メテリムマブ、及びTGFベータRIIの可溶性細胞外ドメインが挙げられる。
(3)(1)と(2)の各々からの1つ以上の組み合わせ及び融合タンパク質:例えばM7824(MSB0011359C)(例えば、ClinicalTrials.gov Identifier: NCT02517398を参照)。
【0012】
剤は、PD-L1とTGFベータの経路を遮断する融合タンパク質(二機能性融合タンパク質)であってもよい。融合タンパク質は、互いに直接的に融合した又はリンカーを介して接合(joined)した、2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上)の成分を含んでもよい。リンカーを、アミノ酸長が例えば少なくとも約15(例えば、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、又はその範囲)の、任意の長さの任意の適切なリンカーとすることができる。1態様では、リンカーは、宿主の免疫グロブリン分子内に天然に存在するアミノ酸配列であって、そのリンカーが存在することにより、哺乳動物によるリンカー配列に対する免疫応答を引き起こさないようなものである。例えばリンカーは、GSモチーフを1つ以上(例えば2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、又は10個以上)含んでもよい。
【0013】
1態様において、融合タンパク質は、(i)抗体又は抗体断片(例えば、Fab、scFv、eAd等)、及び(ii)TGFベータ中和捕捉成分(neutralizing trap component)を含む。TGFベータ中和捕捉成分は、抗体又は抗体断片のFc領域と融合する等、任意の適切な様式で抗体又は抗体断片と接合することができる。融合タンパク質の抗体又は抗体断片部分は、ヒトPD-L1抗体又は抗体断片等、任意の適切な抗体又は抗体断片であってもよい。1態様において、抗体又は抗体断片は、ヒトPD-L1に対するIgG1モノクロ-ナル抗体である。融合タンパク質のTGFベータ中和捕捉成分は、例えばトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFベータ)受容体II(TGFベータRII)の細胞外ドメイン等(例えば、TGFベータ1、TGFベータ2、及び/又はTGFベータ3に結合するヒトTGFベータRIIの細胞外ドメイン)、任意の適切なTGFベータ中和捕捉成分であってもよい。
【0014】
具体的な態様において、剤は、TGFベータ捕捉として作用するTGFベータRIIの可溶性細胞外ドメインと融合した、PD-L1に対する完全なヒトIgG1モノクローナル抗体(アベルマブ)からなる二機能性融合タンパク質である、M7824(MSB0011359C)である。如何なる特定の理論に縛られることも望むものではないが、MSB0011359CのTGFベータRII部分は、TGFベータと結合して中和すると考えられており、一方、アベルマブ部分は同時にPD-L1と結合する。これがTGFベータとPD-L1が仲介するシグナル伝達を妨げ、ナチュナルキラー(NK)細胞と細胞傷害性Tリンパ球細胞(CTL)の活性を増加させる。これにより、感受性を有する腫瘍細胞において腫瘍細胞増殖が阻害される。
【0015】
本発明は剤(例えば、融合タンパク質)をコードする核酸もまた提供する。核酸はDNA、cDNA、及び/又はRNAを含んでもよく、一本鎖又は二本鎖であってもよく、天然由来、合成、及び/又は組み換えたものでもよい。更に核酸は、ヌクレオチドアナログ又は誘導体(例えば、イノシン又はホスホロチオエートヌクレオチド(phophorothioate)等)を含んでもよい。コード配列におけるサイレント変異は、遺伝子コードの縮重(即ち冗長性)からもたらされ、それによって、1つ以上のコドンが同じアミノ酸残基をコードすることができる。よって例えば、ロイシンはCTT、CTC、CTA、CTG、TTA又はTTGによりコードされ得;セリンはTCT、TCC、TCA、TCG、AGT又はAGCによりコードされ得;アスパラギンは、AAT又はAACによりコードされ得;アスパラギン酸はGAT又はGACによりコードされ得;システインはTGT又はTGCによりコードされ得;アラニンはGCT、GCC、GCA又はGCGによりコードされ得、グルタミンはCAA又はCAGによりコードされ得;チロシンはTAT又はTACによりコードされ得;及びイソロイシンはATT、ATC又はATAによりコードされ得る。標準的な遺伝子コードを示す表は様々な情報源に見出すことができる(例えば、L. Stryer, 1988, Biochemistry, 第3版, W.H. 5 Freeman and Co., ニューヨーク州)。
【0016】
核酸、及びその核酸を細胞に送達し、及び/又は細胞中でのその核酸の発現を可能とする要素、を含むコンストラクトの一部として、核酸を提供することができる。例えば、剤をコードするヌクレオチド配列(例えば融合タンパク質)を、発現制御配列と作動可能に連結することができる。コード配列に作動可能に連結された発現制御配列は、発現制御配列に適合する条件下でコード配列の発現が達成されるように結合している。発現制御配列には、限定するものではないが、適切なプロモーター、エンハンサー、転写終結因子、タンパク質コード遺伝子の先頭にある開始コドン(即ちATG)、その遺伝子の正しい読み枠を維持してmRNAの適切なトランスロケーションを許容する、イントロンのためのスプライシングシグナル、及び停止コドンが挙げられる。適切なプロモーターには、限定するものではないが、SV40早期プロモーター(SV40 early promotor)、RSVプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(adenovirus major late promotor)、ヒトCMV即時早期Iプロモーター(human CMV immediate early I promotor)、ポックスウイルスプロモ-ター、30Kプロモーター、I3プロモーター、sE/Lプロモーター、7.5Kプロモーター、40Kプロモーター、及びC1プロモーターが挙げられる。T DNAワクチンは、米国特許番号5,589,466;米国特許番号5,973,972の中に述べられており、それらはそれぞれ参照として本明細書に組み込まれる。それらの出願の中で述べられている送達プロトコールに加えて、DNAを送達する代わりの方法が、米国特許番号4,945,050及び5,036,006の中に述べられている。
【0017】
剤(例えば融合タンパク質)をコードする核酸を、インビトロの方法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写に基づく増幅システム(TAS)、自家持続配列複製システム(3SR)及びQβレプリカーゼ増幅システム(QB)等によりクローン化又は増幅することができる。例えば、剤(例えば融合タンパク質)をコードするヌクレオチド配列は、その分子のDNA配列に基づいたプライマーを用いて、cDNAのポリメラーゼ連鎖反応により単離することができる。広範で様々なクローニングとインビトロ増幅の方法論は、本技術分野の当業者に良く知られている。PCRの方法は、例えば、米国特許番号4,683,195;Mullisら, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:263, 1987;及びErlich編, PCR Technology, (Stockton Press, ニューヨーク, 1989)の中に述べられている。ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件下で、望みのポリヌクレオチドの配列から選択されたプローブにより、ゲノム又はcDNAライブラリーをスクリーニングすることによっても、ポリヌクレオチドを単離することができる。
【0018】
本発明はさらに核酸を含むベクターを提供する。適切なベクターの例には、プラスミド(例えばDNAプラスミド)、細菌ベクター、及びウイルスベクター、例えばポックスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス(baculorvirus)、及びシンドビスウイルス等が挙げられる。ベクターがプラスミド(例えばDNAプラスミド)であるときには、そのプラスミドをキトサンと複合化してもよい。ベクターがポックスウイルスベクターであるときには、ポックスウイルスは、オルソポックス(orthopox)、アビポックス(avipox)、フォウルポックス(fowlpox)、ラクーンポックス(raccoon pox)、ラビットポックス(rabbit pox)、カプリポックス(capripox)(例えば、山羊痘(goat pox)及び羊痘(sheep pox))、レポリポックス(leporipox)、及びスイポックス(suipox)(例えば、豚痘(swinepox))からなる群から選択することができる。アビポックス(avipox)ウイルスの例には、フォウルポックス(fowlpox)、ピゲオンポックス(pigeonpox)、及びカナリアポックス(canarypox)例えばALVACが挙げられる。オルソポックス(orthopox)ウイルスの例には、ワクシニア、改変ワクシニアアンカラ(MVA)、Wyeth、NYVAC、TROYVAC、Dry-Vax、POXVAC-TC(シェリング・プラウ・コーポレーション)、及びその誘導体が挙げられる。例えば、Wyeth株の誘導体には、限定するものではないが、機能性K1L遺伝子を欠く誘導体が挙げられる。ベクターが哺乳動物対象(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ブタ、牛、ウマ、又は霊長類(例えばヒト))に投与するためのものであるときには、そのベクター(例えばポックスウイルス)は、標的細胞内で好ましくは低い複製効率(例えば、細胞当たりわずか約1個の子孫、又はより好ましくは細胞当たりわずか0.1個の子孫が作製される)を有する。複製効率は、標的細胞の感染後にウイルス力価を経験的に測定することにより容易に測定することができる。
【0019】
ベクターは、転写制御要素又はエンハンサー等の、適切なプロモーター及び制御要素を含んでもよい。ベクターがポックスウイルスベクターであるときには、限定するものではないが、ワクシニア7.5Kプロモーター、ワクシニア30Kプロモーター、ワクシニア40Kプロモーター、ワクシニアI3プロモーター、合成早期/後期(sE/Lプロモーター)(synthetic early/late (sE/L) promotor)、7.5プロモーター、HHプロモーター、11Kプロモーター、及びPiプロモーターなどのポックスウイルスプロモーターを使用することができる。プロモーターは典型的には構成的プロモーターであるが、本発明のベクターにおいて誘導性プロモーターもまた使用することができる。そのような誘導性のシステムにより遺伝子発現を制御することができる。
【0020】
剤(例えば、融合タンパク質、核酸、又はベクター)を含む細胞もまた、本明細書で提供される。適切な細胞には原核細胞及び真核細胞、例えば、哺乳動物細胞、真菌、および細菌(例えば、大腸菌、サルモネラ菌(例えば、サルモネラ・ティフィムリウム)、又はリステリア菌(例えば、リステリア・モノサイトゲネス))が挙げられる。培地中で哺乳細胞を増殖させる技術は良く知られている(JakobyとPastan (編), 1979, Cell Culture. Methods in Enzymology, volume 58, Academic Press, Inc., Harcourt Brace Jovanovich, ニューヨーク参照)。一般的に使用されている哺乳動物宿主細胞株の例は、VERO及びHeLa細胞、CHO細胞、及びWI38、BHK、及びCOS細胞株であるが、より高い発現、望ましいグリコシル化パターン、又は他の特徴を提供をするように設計された細胞等の細胞株を使用してもよい。
【0021】
組み換えDNAによる宿主細胞の形質転換は、本技術分野の当業者に良く知られている通常の技術により実施することができる。宿主が、限定するものではないが、大腸菌等の原核細胞であるときには、DNAの取り込みをすることができるコンピテント細胞を、指数関数的増殖期の後に採取された細胞から調製し、続いて本技術分野で良く知られている操作を用いてCaCl法により処理することができる。代わりに、MgCl又はRbClを使用してもよい。形質転換を、もし望むならば非酵母菌の宿主細胞のプロトプラストの形成の後に、又は電気穿孔法により行ってもよい。
【0022】
細胞が真核細胞であるときには、リン酸カルシウム共沈殿としてDNAをトランスフェクションする方法、マイクロインジェクション等の一般的な機械的手法、電気穿孔法、リポソーム中に封入されたプラスミドの挿入、又はウイルスベクターによる感染を使用することができる。真核細胞を、剤をコードするポリヌクレオチド配列、及びヘルペスシンプレックスチミジンキナーゼ遺伝子等の選択可能な表現型をコードする第2の外来DNA分子と共形質転換することも可能である。真核細胞を形質転換するためにウイルスベクターを使用する方法は既知である(例えば、Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman編 1982を参照)。
【0023】
剤(例えば、融合タンパク質、核酸、又はベクター)を単独で、又は少なくとも1つの担体(例えば医薬的に許容可能な担体)を含み得る組成物(例えば医薬組成物)として投与してもよい。代わりに又は加えて組成物は、1つ以上の他の活性(例えば、治療又は予防)剤又は薬物を含んでもよい。医薬組成物の中で使用するのに適しうるるような、他の活性剤又は薬物の例には、抗がん剤(例えば、化学療法剤)、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、シクロホスファミド、抗炎症剤、免疫療法、及びその組み合わせが挙げられる。適切な抗がん剤には、限定するものではないが、アルキル化剤、ナイトロジェンマスタード、葉酸拮抗剤、プリン拮抗剤、ピリミジン拮抗剤、紡錘体毒、トポイソメラーゼ阻害剤、アポトーシス誘導剤、血管形成阻害剤、ポドフィロトキシン、ニトロソウレア、シスプラチン、カルボプラチン、インターフェロン、アスパラギナーゼ、タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、メゲストロール、マイトマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イリノテカン、タキソール、ゲルダナマイシン(例えば17-AAG)、並びに本技術分野で知られている様々な抗がんポリペプチド及び抗体が挙げられる。
【0024】
医薬的に許容可能な担体(又は賦形剤)は好ましくは、剤に対して化学的に不活性なもの、及び使用する条件下で有害な副作用又は毒性が無いものである。そのような医薬的に許容可能な担体には、限定するものではないが、水、生理食塩水、CremophorEL(シグマケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、アルコール、及びその組み合わせが挙げられる。担体の選択は、部分的に特定の剤によるのみならず、組成物を投与するのに使用される特定の方法によっても決定されるであろう。従って組成物の広範で様々な適切な製剤がある。
【0025】
本明細書で使用される用語「免疫療法」とは、免疫応答の誘導、促進、又は抑制により疾患を治療することを言う。免疫応答を引き起こす又は促進するように設計された免疫療法は活性化免疫療法と言われ、一方、免疫応答を抑制するように設計された免疫療法は抑制免疫療法と言われる。免疫療法の型として、限定するものではないが、免疫調節剤、細胞に基づいた免疫療法、モノクローナル抗体、放射性医薬品、及びワクチンが挙げられる。がんの免疫療法の戦略は例えば、Waldmann, T.A., Nature Medicine, 9: 269-277 (2003)の中に述べられている。
【0026】
免疫調節剤は、組み換えたもの、合成物、又は限定するものではないが、サイトカイン(例えば、TNF-α、IL-6、GM-CSF、IL-2、及びインターフェロン)、共刺激分子(例えば、B7-1及びB7-2)、ケモカイン(例えば、CCL3、CCL26、CXCL7)、グルカン、及びオリゴデオキシヌクレオチドを含む天然物質でもよい。
【0027】
細胞に基づいた免疫療法は典型的には、対象からの免疫細胞(例えば、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、又は抗原提示細胞(APC))の除去、免疫細胞の改変(例えば活性化)、及び改変された免疫細胞を患者に戻すことを伴う。細胞に基づいた免疫療法は、無症候性又は症候が最小限であるCRPCの治療において使用され、自家の活性細胞の免疫療法である、Sipuleucel-T(PROVENGE(商標))であってもよい(Plosker, G.L., Drugs, 71(1): 101-108 (2011);及びKantoffら, New Engl. J. Med., 363: 411-422 (2010))。
【0028】
幾つかのモノクロ-ナル抗体が、がんの治療のために認可されており、ヒト、ヒト化、又はキメラ抗体に基づいた、ネイキッド(naked)抗体及び抗体-薬物コンジュゲートを含む(Scotttら, Nat Rev Cancer, 12(4): 278-87 (2012);Hardingら, MAbs, 2(3): 256-65 (2010);及びWeinerら, Nature Rev. Immunol., 10(5): 317-327 (2010))。
【0029】
放射性医薬品は放射活性の薬物であり、現在ではがんを含む様々な疾患の治療と診断に使用されている。例えば放射線核種を抗体に標的化して(即ち放射免疫療法)、血液由来のがんを治療することができる(Sharkey, R.M.及びGoldenberg, D.M., Immunotherapy, 3(3): 349-70 (2011))。ヨウ素-125、ヨウ素-131、及びラジウム-223(XOFIGO(商標)として販売されている)を含む幾つかの放射性同位元素が、がんの治療のために認可されている。ラジウム-223は、転移性骨がんとCRPCを治療する放射性医薬品として認可されている。CRPCにおいて、ラジウム-223が抗腫瘍免疫応答を促進することも示されている。
【0030】
ワクチンはがんを予防及び治療するための別の戦略も提示する。多くの異なるがんワクチンのプラットフォームが現在、フェーズII及び/又はフェーズIII臨床試験において評価されており、例えば、ペプチドに基づいたワクチン、組み換えウイルスベクター、殺傷された腫瘍細胞、又はタンパク質で活性化された樹状細胞が挙げられる(例えば、Schlom, J., J. Natl. Cancer. Inst., 104: 599-613 (2012)を参照)。1態様において、ワクチンは、ブラキウリ(Brachyury)転写因子が発現するように遺伝的に改変されている組み換え酵母又はポックスウイルスを含むブラキウリワクチンでもよい(例えば、国際公開番号2014/043518及び国際公開番号2014/043535;及び米国特許8,188,214及び8,613,933を参照)。
【0031】
剤(例えば、融合タンパク質、核酸、又はベクター)又はその組成物は、がんの出現を防ぐのに、がんの増殖を停止させるのに、又はがんを除去するのに有用である。より具体的には、剤は、腫瘍の発生を防ぎ、抑制し、又は遅らせるのに、及び/又は、腫瘍の移動及び/又は他の組織の腫瘍浸潤(転移)を防ぎ、抑制し、又は遅らせるのに、及び/又は個体において全般的にがんの進行を防ぎ又は抑制するのに使用することができる。剤又はその組成物は、例えばその個体における腫瘍負荷を低減することにより;その個体における腫瘍増殖を抑制することにより;個体の生存を増加させることにより;及び/又は個体におけるがんの進行を防ぎ、抑制し、逆転させ、又は遅らせることにより、がんの少なくとも1つの症状を改善するのに使用することもできる。
【0032】
腫瘍は如何なる段階であってもよく、他の療法を受けていてもよい。本発明の方法は、放射耐性腫瘍等の他の型のがん療法に対して耐性であることが証明されている腫瘍等の治療(即ち、腫瘍細胞の破壊又は腫瘍の大きさの低減)に有用である。腫瘍は任意の大きさであってもよい。理想的には本発明の方法は、がん(腫瘍)細胞の死及び/又は腫瘍の大きさの低減をもたらす。例えば、支持細胞、血管新生、線維性マトリックス等の存在のために、腫瘍細胞の死は、実質的な腫瘍の大きさの低減が無くても起こり得ることは理解されるであろう。従って、腫瘍の大きさの低減は好適であるが、がんの治療においては必要とされない。
【0033】
剤を、1つ以上の追加の活性剤(例えば抗炎症剤、及び/又は化学療法剤)と共に投与するときは、その剤と1つ以上の追加の活性剤を哺乳動物に同時投与(coadministration)してもよい。「同時投与」により、1つ以上の追加の活性剤と剤を、その剤が1つ以上の追加の活性剤の効果を促進することができる程に十分に近い時間に投与することを意味する。これに関連して、剤を最初に投与し、1つ以上の追加の活性剤を2番目に投与してもよく、又は逆もまた然りである。代わりに、剤と1つ以上の追加の活性剤を同時投与してもよい。
【0034】
剤と組成物を、非経口、局所(topical)、経口、又は局部(local)投与を含む、任意の適切な経路で投与することもできる。経口、エアロゾル、非経口(例えば、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、及び脊髄内)、直腸内、及び膣内投与のための下記の製剤は単なる例示であり、如何なる意味でも限定するものではない。
【0035】
経口投与に適した製剤は、(a)水、生理食塩水、又はオレンジジュース等の希釈剤中に溶解した有効量の化合物等の液体溶液、(b)それぞれが所定量の活性成分を固体又は顆粒として含むカプセル、小袋(sachet)、錠剤、のど飴(lozenge)、及びトロ-チ;(c)粉薬;(d)適切な液体中の懸濁剤;及び(e)適切な乳剤からなり得る。液体製剤は、水及びアルコール(例えばエタノール、ベンジルアルコール、及びポリエチレンアルコール等)等の希釈剤を、医薬的に許容可能な界面活性剤、懸濁化剤、又は乳化剤の添加の有り又は無しの何れかで含んでもよい。カプセル形態は、例えば、界面活性剤、滑沢剤、及び、非活性充填剤(例えばラクト-ス、スクロース、リン酸カルシウム、及びコーンスターチ)を含む、通常の硬い又は軟らかいシェルのゼラチン型のものであってもよい。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸、微結晶化セルロース、アカシア、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存剤、香味剤、及び医薬的に適合する担体の1つ以上を含み得る。のど飴(lozenge)形態は、香味料(通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント)の中に活性成分を含み、またパスティル(pastille)は、活性成分に加えて、例えば本技術分野で知られている担体を含み、不活性な基剤(例えばゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア)、乳剤、ゲル等の中に活性成分を含む。
【0036】
剤単独で、又は他の適切な成分と組み合わせて、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤とすることができる。これらのエアロゾル製剤を、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の圧縮化を許容できるプロペラント(propellant)中に置くことができる。それらを、ネブライザー又はアトマイザー等の非圧縮調製物の医薬品として製剤することもできる。
【0037】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び、製剤を意図するレシピエントの血液と等張とする溶質を含み得る水性及び非水性の等張滅菌注射溶液、並びに、懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、及び保存剤を含み得る、水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。剤を、医薬担体の中の生理学的に許容可能な希釈剤、例えば滅菌した液体又は液体混合物等(水、生理食塩水、水性デキストロース及び関連糖溶液、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、又はヘキサデシルアルコール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール)、グリセロールケタール(例えば、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール)、エーテル(例えばポリ(エチレングリコール)400)、油、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、又はアセチル化脂肪酸グリセリド等)の中で、医薬的に許容可能な界面活性剤(例えば石鹸又は洗浄剤)、懸濁化剤(例えばペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はカルボキシメチルセルロース)、又は乳化剤、及び他の医薬アジュバントの添加の有り又は無しで、投与され得る。
【0038】
非経口製剤において使用しうる油は、石油、動物油、植物油、又は合成油を含む。油の具体例には、ピーナッツ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ワセリン、及び鉱油が挙げられる。非経口製剤に使用するのに適切な脂肪酸には、オレイン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチルとミリスチン酸イソプロピルは適切な脂肪酸エステルの例である。
【0039】
非経口製剤に使用するのに適切な石鹸は、脂肪アルカリ金属、アンモニウム、及びトリエタノールアミン塩を含み、適切な洗浄剤には、(a)例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハロゲン化物、及びアルキルピリジニウムハロゲン化物等のカチオン性洗浄剤、(b)例えば、アルキル、アリール、及びオレフィンスルホン酸塩、アルキル、オレフィン、エーテル、及びモノグリセリド硫酸塩、及びスルホサクシネート等のアニオン性洗浄剤、(c)例えば、脂肪アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、及びポリオキシエチレン-ポリプロピレンコポリマー等の非イオン性洗浄剤、(d)例えば、アルキル-ベータ-アミノプロピオン酸、及び2-アルキル-1-イミダゾリン4級アンモニウム塩等の両性洗浄剤、及び(3)それらの混合物が挙げられる。
【0040】
適切な保存剤と緩衝剤をそのような製剤において使用することができる。注射部位における刺激を最小化又は除去するために、そのような組成物は、約12から約17の親水性-親油性バランス(HLB)を有する非イオン性洗浄剤を1つ以上含んでもよい。そのような製剤中の洗浄剤の量は、約5重量%~約15重量%の範囲である。適切な洗浄剤には、例えばモノオレイン酸ソルビタン、及びプロピレンオキシドのプロピレングリコールとの縮合により形成され、疎水性塩基を有するエチレンオキシドの高分子量付加物等のポリエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。非経口製剤を、アンプル及びバイアル等の単回投与又は複数回投与の密封容器内に提示することができ、滅菌した液体担体(例えば注射用の水)の使用直前の添加のみを必要とする、フリ-ズドライ(凍結乾燥)した状態で貯蔵することができる。滅菌した粉末、顆粒、及び錠剤から、即時注射溶液と懸濁液を調製することができる。
【0041】
剤を注射可能な製剤として投与することができる。注射可能な組成物のために有効な医薬担体の要件は、本技術分野の当業者に良く知られている。Pharmaceutics and Pharmacy Practice, J. B. Lippincott Co., Philadelphia, Pa., Banker及びChalmers, 編, pages 238-250 (1982),及びASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel, 第4版, pages 622-630 (1986)参照。
【0042】
経皮的な薬物の放出に有用なものを含む局所(topical)製剤は、本技術分野の当業者に良く知られており、本発明の文脈においては皮膚へ適用するのに適している。
【0043】
乳化基剤又は水溶性基剤等の様々な基剤と混合することにより、剤を座薬として投与することができる。膣内投与に適している製剤を、活性成分に加えて本技術分野で適切であると知られている担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又はスプレー製剤として提示してもよい。
【0044】
医薬組成物中の本発明の化合物の濃度を変えることができ、例えば、約1%未満から、通常は約10重量%であるか又は少なくとも約10重量%であり、20重量%~50重量%以上までも、選択された具体的な投与形式に従って、主として液量と粘度により選択することができる。
【0045】
投与可能(例えば、非経口投与)な剤を調製するための方法は、本技術分野の当業者に既知であるか又は明らかであり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science (第17版, Mack Publishing Company, Easton, PA, 1985)の中に詳細に述べられている。
【0046】
述べられた医薬組成物に加えて、シクロデキストリン包接複合体(inclusion complex)等の包接複合体、又はリポソームとして剤を製剤化しうる。リポソームは、剤が特定の組織を標的とするために作用することができる。リポソームを、剤の半減期を増加するのに使用することもまたできる。リポソームの調製のために、例えば、Szokaら, Ann. Rev. Biophys. Bioeng., 9, 467 (1980)、及び米国特許4,235,871、4,501,728、4,837,028及び5,019,369の中に述べられているような多くの方法を利用できる。
【0047】
下記の実施例において本発明をさら説明するが、もちろん、如何なる意味でも本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0048】
実施例1
この実施例はPD-L1とTGFベータの経路の遮断は、HPV関連悪性腫瘍の抑制をもたらすことを示す。
【0049】
M7824(MSB0011359C)は、TGFベータを捕捉する作用をする、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFベータ)受容体IIの可溶性細胞外ドメインと融合した、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)に対する完全なヒトIgG1モノクロ-ナル抗体からなる、二機能性の融合タンパク質である。
【0050】
進行した固形がんにおけるM7824(MSB0011359C)のフェーズ1試験が行われた。NCT02517398は、フェーズ1の、オープンラベルの、3+3の用量漸増研究である。適格な患者は、1、3、10、20、又は30mg/kgでのM7824のQ2Wの投与を、疾患の進行又は受容できない毒性が確認されるまで受けた。第1の目的は、M7824の安全性と最大耐用量(maximum tolerated dose)を決定することであり、第2の目的は、薬動力学(PK)、免疫原性、及びRECISTv1.1ごとの最良総合効果(best overall response)を含む。
【0051】
HPV関連悪性腫瘍の16人の患者(子宮頚がん9人、肛門がん4人、及びP16+頭頚部扁平上皮がん(HNSCC)3人)を含む、進行がんの患者を治療した。HPVの状態は、患者の11人では陽性であり、他の5人では不明であった。グレード3の薬剤関連治療下の有害事象(drug-related treatment-emergent adverse events)(TEAE)は、これら16人の患者の3人において起こった(大腸炎、膀胱炎、及び胃不全麻痺;全て子宮頸がん患者において)。特にこれら3人の患者全ては、疾患低減を伴う臨床利益の証拠も有していた。グレード3の胃不全麻痺に関連する、グレード4の低カリウム血症のTEAEも1例で見られた。それ以外には、他のグレード4~5のTEAEは認められなかった。観察された唯一の用量制限毒性(DLT)は、20mg/kgの用量における大腸炎であり、研究された用量では最大耐用量(MTD)に達しなかった。
【0052】
16人の患者の中で、持続的な完全奏功(CR)を有する1人の患者(子宮頚がん;HPV+)を含む9人(56%)は治療による疾患の低減を有し;4人の患者(HNSCC2人、肛門がん2人;全てHPV+)は持続的な部分奏功(PR)を有し、1人の患者(子宮頚がん;HPV不明)は確認されていないPRを有し、2人の患者(子宮頚がん2人;両者のHPV不明)はPRに近く(-25%、-27%)、及び1人の患者(肛門がん;HPV不明)はより少ない疾患の低減(-9%)を有した。
【0053】
HPV+又は状態不明の患者全般について、6/16(37.5%)は継続する奏功を有し、これらの奏功の5/6は現在までに確認され、既知のHPV+疾患を有する患者について、5/11は(45.5%)は継続している確認された奏功を有する。フェーズ1試験に登録されたHPV関連悪性腫瘍を有する患者のサブセットからの予備的なデータは、HPV+又は状態不明である患者の間で37.5%の全奏効率(overall response rate)(ORR)を伴う対処可能な安全性プロファイル、及び既知のHPV+疾患を有する患者の間で45.5%のORRが確認されたことを示唆している。
【0054】
継続しているフェーズIの臨床試験の結果に基づき、PD-1とTGFベータの経路の二重の遮断(例えばPD-1を遮断し、TGFベータを捕捉するM7824による)は、HPV+悪性腫瘍を有する患者において有意に高い奏功率を生み出す可能性があることは明らかである。この試験からの早期の証拠は、これらの2つの経路の遮断は、進行した又は標準的な第1選択療法に対して不耐性であるHPV+進行がんの患者について、単離されたPD-1単独の遮断を含めて、現在の如何なる治療よりもずっと高い奏功率を生み出すことを示唆している。
【0055】
よって証拠は、これら2つの経路を一斉に遮断すると、進行した又は標準的な第1選択療法に対して不耐性であるHPV+進行がんの患者について、単離されたPD-1単独の遮断を含めて、現在の如何なる治療よりもずっと高い奏功率を生み出すことを示唆している。これら2つの経路の同時遮断は、これらの患者において実質的な臨床利益を有し、近い将来に実質的な臨床的な影響を有するであろう。
【0056】
実施例2
この実施例は、HPV+悪性腫瘍を有する対象におけるM7824のフェーズII試験のためのデザインを提供する。
【0057】
PD-L1とTGFベータの経路は、独立であり且つ補完的な免疫抑制機能を有する、2つの鍵となる免疫回避経路である。PD-L1とTGFベータ経路の二重の標的化は相乗的な抗腫瘍活性をもたらす。
【0058】
論拠 転移性又は難治性/再発性のHPV関連悪性腫瘍(子宮頚がん、肛門がん、及び中咽頭がん等)は不治であり、標準療法により緩和されることが乏しい。単独剤のPD-1阻害剤はこれらの疾患について、12~20%の範囲の奏功率を生み出した。PD-1を遮断するモノクローナル抗体ペンブロリズマブは、フェーズ1bのKEYSTONE012試験における16%の奏功率(28人/174人の患者)に基づき、再発性又は転移性の頸部扁平上皮がん(HNSCC)についてのFDAの認可を最近受けた。奏功率はHPV陽性とHPV陰性のHNSCCの間で類似していた。フェーズ1b試験(KEYSTONE028)は、再発性又は転移性の子宮頸がんの患者において、ペンブロリズマブに対する12.5%の奏功率(3/24患者)と、肛門管の再発性又は転移性の扁平上皮がんの患者において20%の奏功率(5/25)を示した。M7824(MSB0011359C)のフェーズ1試験におけるHPV関連悪性腫瘍の患者の小コホート(small cohort)由来の早期のデータは、PD-L1とTGFベータ経路の両方を標的とするこの剤は、この患者集団における他の単独剤のPD-1/PD-L1阻害剤と比較して、よい高い比率で奏功を生み出すことを示唆している。
【0059】
目的 第1の目的は5つの亜集団:チェックポイント阻害剤未投与(naive to)の肛門がんの患者、チェックポイント阻害剤に対して難治性である肛門がんの患者、チェックポイント阻害剤に対して難治性である子宮頚がんの患者、チェックポイント阻害剤に対して難治性であるP16+頭頚部がんの患者、及びチェックポイント阻害剤未投与の稀なHPV関連腫瘍(扁平上皮直腸がん、外陰部がん、膣がん、陰茎がん)の患者において、再発性又は転移性のHPV陽性悪性腫瘍の患者におけるM7824の客観的奏功率(objective response rate)を決定することである。
【0060】
第2の目的は、限定するものではないが、循環している腫瘍細胞の評価、循環している腫瘍DNAの評価、E6/E7がんタンパク質に対する抗原特異的なT細胞応答の評価、末梢免疫サブセットの解析、T細胞受容体解析、及びHPVタイピングを含む、投与された治療を理解し及び改善するための探索的な免疫学的研究を行うことである。
【0061】
適格性 フェーズII試験のための適格性は、転移性又は難治性/再発性のHPV関連悪性腫瘍、子宮頸がん(99%がHPV+)、P16+中咽頭がん、肛門がん(90%がHPV+)、扁平上皮細胞直腸がん(90%がHPV+)、又はHPV試験陽性の外陰部、膣、及び陰茎のがん(60~70%がHPV+)を有する、18歳以上の患者を含む。HPV試験陽性は、登録(enrolling)前に外陰部、膣、及び陰茎のがんの患者のみに必要とされるであろうが、HPV試験は全ての他の腫瘍型について探索的エンドポイントとして行われ、HPVについて陰性である患者は入れ替えられるであろう。患者が標準治療を拒絶しない限り、事前の第1選択の全身療法は必要とされる。
【0062】
デザイン 全ての患者は1200mgのM7824の60分間に亘る静脈注射投与を、2週間毎に、PD又は毒性が起こるまで受けるであろう。5つのコホート:(1)チェックポイント阻害剤未投与(naive to)の肛門がんの患者、(2)チェックポイント阻害剤に対して難治性である肛門がんの患者、(3)チェックポイント阻害剤に対して難治性である子宮頚がんの患者、(4)チェックポイント阻害剤に対して難治性であるP16+頭頚部がんの患者、(5)チェックポイント阻害剤未投与の稀なHPV関連腫瘍(扁平上皮直腸がん、外陰部がん、膣がん、陰茎がん)の患者、があるであろう。5つの全てのコホートの試験は、シモンの2段階フェーズII試験デザインを使用して行われるであろう。
【0063】
免疫チェックポイント未投与のコホート(肛門及び稀な腫瘍型)の両方について、第1段階では8人の評価可能な患者を登録する(enroll)であろうし、8人のうち2人以上が客観的奏功を有するときには、合計で13人の評価可能な患者が治療されるまで追加(accrual)は継続するであろう。13人のうち奏功を体験する者が4人以上(30.8%)いるときには、これは十分に興味深く、後の試験でさらに研究されることが保証されるであろう。
【0064】
3つ全ての免疫チェックポイント難治性のコホート(肛門、子宮頚部、頭頚部)について、第1段階では8人の評価可能な患者を登録するであろうし、8人のうち1人以上が客観的奏功を有するときには、全体で12人の評価可能な患者が治療されるまで追加は継続するであろう。12人のうち奏功を体験する者が2人(16.7%)以上いるときには、これは十分に興味深く、後の試験でさらに研究されることが保証されるであろう。
【0065】
統計学的考察 この試験の第1の目的は、HPV陽性がんの患者において抗PD-L1/TGFベータ阻害剤の組み合わせに対する客観的奏功率を決定することである。患者は5つのコホート:(1)チェックポイント阻害剤未投与の肛門がんの患者、(2)チェックポイント阻害剤に対して難治性である肛門がんの患者、(3)チェックポイント阻害剤に対して難治性である子宮頚がんの患者、(4)チェックポイント阻害剤に対して難治性であるP16+頭頚部がんの患者、(5)チェックポイント阻害剤未投与の稀なHPV関連腫瘍(扁平上皮直腸がん、外陰部がん、膣がん、陰茎がん)の患者、に登録されるであろう。
【0066】
抗PD-1/PD-L1療法未投与(naive to)の2つのコホート(肛門及び稀な腫瘍型)について、文献由来のデータ(少なくとも肛門がんを有する)は、PD-1/PD-L1単独剤治療についての奏功率は、およそ15~20%であろうと示唆している。この試験は、提案された療法が改善された奏功率と関連しているかもしれないと示そうとするだろう。
【0067】
療法未投与の患者(patients naive to therapy)におけるこの治療の有効性を確立するために、これら2つのコホートにおける第1の目的は、提案された剤の使用は15%の奏功率を除外し、40%と矛盾しない奏功率をもたらすかどうかを決定することであろう。そのために、未投与患者(naive patient)の3つの疾患特異的なコホートの各々は、改善された奏功率である40%(p1=0.40)を支持し、受け入れがたく低い15%(p0=0.15)のPR+CRの比率を除外するために、シモンのミニマックス二段階フェーズII試験デザイン(Simon R, Controlled Clinical Trials 10:1-10, 1989)を使用して実施されるであろう。アルファ=0.15(質が悪い治療を受け入れる確立=0.15)及びベータ=0.20(良い治療を拒絶する確率=0.20)を伴って、コホートを意図的に小さく保つ目的で、各疾患に基づいた未投与のコホート(naive cohort)の第1段階は8人の評価可能な患者を登録するであろうし、8人のうち0人から1人が臨床奏功を有するときには、そのコホートにさらなる患者は追加しないであろう。最初の8人の患者のうち2人以上が奏功を有するときには、各コホートにおいて合計で13人の療法未投与の評価可能である患者が治療されるまで、追加は継続するであろう。患者が奏功を体験したかどうかを決定するには最大数か月要するかもしれないので、第2段階への登録が保証されることを確かにするためには、追加の一時的な中断が必要かもしれない。13人の患者のうち奏功を有する患者が2人又は3人いるときには、これはそのコホートについて興味を持たれない低い奏功率であろう。13人のうち奏功を体験した者が4人(30.8%)以上いるときには、これは十分に興味深く、その型の疾患において後の試験でさらに研究されることが保証されるであろう。帰無仮説の下(奏功率15%)では、早期終了の確率は65.7%である。
【0068】
抗PD-1/PD-L1療法に対して難治性である3つのコホート(肛門、子宮頚部、頭頚部)について、この集団において可能性がある奏功率に関して、出版された文献には限られた情報はあるが、それは低いと予測されている。明らかに5%を超える奏功率の取得には興味を引かれるであろう。
【0069】
療法に対して難治性である患者においてこの治療の有効性を確立するために、これら3つのコホートにおける第1の目的は、提案された剤を使用することは5%の奏功率を除外し、25%と矛盾しない奏功率をもたらすかどうかを決定することであろう。そのために、難治性の患者における3つの疾患特異的なコホートの各々について、25%の改善された奏功率(p1=0.25)を支持し、受け入れがたく低い5%(p0=0.05)のPR+CRの比率を除外するために、シモンのミニマックス二段階フェーズII試験デザイン(Simon R, Controlled Clinical Trials 10:1-10, 1989)を使用して実施されるであろう。アルファ=0.15(質が悪い治療を受け入れる確立=0.10)及びベータ=0.20(良い治療を拒絶する確率=0.20)を伴い、各疾患に基づいたコホートにおける第1段階は8人の評価可能な患者を登録するであろうし、8人のうち0人が臨床奏功を有するときには、そのコホートに患者がさらに追加されることはないであろう。最初の8人の患者のうち1人以上が奏功を有するときには、各コホートにおいて合計で12人の療法に対して難治性である評価可能な患者が治療されるまで、追加は継続するであろう。患者が奏功を体験したかどうかを決定するには最大数か月要するかもしれないので、第2段階への登録が保証されることを確かにするために、追加(accrual)の一時的な中断が必要かもしれない。12人の患者のうち奏功を有する患者が1人いるときには、これはそのコホートについて興味をもたれない低い奏功率であろう。12人のうち奏功を体験した者が2人(16.7%)以上いるときには、これは十分に興味深く、その型の疾患において後の試験でさらに研究されることが保証されるであろう。帰無仮説の下(奏功率5%)では、早期終了の確率は66.3%である。
【0070】
これらの全ての場合において患者は、彼らが治療を受けた後に、HPVの確定試験を受けるであろうことに留意するべきであり;試験に登録された全ての患者のおそらく5~10%は、彼らの臨床診断にも関わらず、HPV陰性であろうと予測される。これらの患者はHPV陽性であると推定される他の患者と入れ替えられるであろうし、その入れ替えられた患者は最終的な解析に含められるであろう者である。これは普通ではないが妥当である状況を意味し得、第2段階への追加はHPV陰性患者の奏功に基づいて行われるが、その入れ替えは奏功者(responder)のためではない。実際に第1段階において適格である患者に不適切な奏功があったときには、これは第2段階の継続に意図せぬ結果をもたらす。たとえ決定が第1段階における誇張された奏功に基づいて、第2段階で1人以上の患者の追加を行ったことを意味してしても、救済策として、その決定がされ次第、知得した新たな情報に基づいて試験は第2段階への追加を終了するであろう。HPV陰性であるか又は他の理由に基づく評価不可能な患者の可能性を許容するために、試験は最大8人まで評価不可能な患者を許容するであろう。
【0071】
1か月当たり、およそ3人の患者をこの試験に登録するかもしれないと予測される。よって最大26人の評価可能な未投与(naive)の患者に加えて、36人の評価可能な難治性の患者(合計で62人の評価可能な患者)が登録されるためには2年が必要であろうと予測される。HPV陰性であると遡及的に決定される患者を含めて、少数の評価不可能な患者を許容するために、追加の上限は70人の患者に設定されるであろう。
【0072】
本明細書で引用された出版物、特許出願、及び特許を含む全ての参照文献は、各参照文献が個々に且つ具体的に参照により本明細書中に組み込まれることが示され、本明細書に完全に記載されているのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1つ」、並びに本発明の記述と関連する類似する指示対象物(特に下記の特許請求の範囲との関連における)の使用は、本明細書中に別段の指示がない限り、又は明確に文脈から否定されない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。1つ以上の項目のリストに続く用語「少なくとも1つ」の使用(例えば「A及びBの少なくとも1つ」)は、本明細書中に別段の指示がない限り、又は明確に文脈から否定されない限り、リストされた項目から選択される1つの項目(A又はB)又はリストされた項目の2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味するものと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」は、特に断りがない限り、非限定的用語(open-ended term)(すなわち、「含むが、限定されない」という意味)と解釈されるべきである。本明細書の数値範囲の言及は、本明細書中に別段の指示がない限り、単にその範囲内に入る各々の別の値を個別に言及する短縮された方法として働くことを意図するものであり、それぞれの別の値は、本明細書に個別に記載されたかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書で述べられる全ての方法は、本明細書中に別段の指示がない限り、又は特に明確に文脈から否定されない限り、任意の適切な順番で実施することができる。本明細書で提供された任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば「など(such as)」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図するものであり、特に特許請求されない限り、本発明の範囲の限定をもたらすものではない。本明細書の言語は、特許請求されない如何なる要素についても、本発明の実施に必須であると示すものと解釈されるべきではない。
【0074】
本発明を実施するための本発明者らに知られている最良の形態を含めて、本発明の好適な態様は本明細書に述べられている。それらの好適な態様の変形は、前記の記載を読んだ当業者にとって自明となり得る。本発明者らは当業者がそのような変形を適切に採用することを予測しており、本発明者らは本発明が、本明細書に明確に述べられた以外のように実施されることを意図している。従って本発明は、適用され得る法律により許可されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲の中で述べられた対象の全ての改変と均等物を含む。さらに、本明細書中に別段の指示がない限り、又は特に明確に文脈から否定されない限り、上記で述べた要素の任意の組み合わせが、その可能な全ての改変において本発明に包含される。