特許 7340469 ビールテイスト飲料

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-08-30

(45)【発行日】2023-09-07

(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料

(51)【国際特許分類】

   A23L 2/52 20060101AFI20230831BHJP

   A23L 2/00 20060101ALI20230831BHJP

   A23L 2/56 20060101ALI20230831BHJP

【ＦＩ】

A23L2/52

A23L2/00 B

A23L2/56

【請求項の数】 7

(21)【出願番号】P 2020012861

(22)【出願日】2020-01-29

(65)【公開番号】P2021114981

(43)【公開日】2021-08-10

【審査請求日】2020-12-02

【審判番号】

【審判請求日】2022-06-22

【早期審査対象出願】

(73)【特許権者】

【識別番号】303040183

【氏名又は名称】サッポロビール株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100088155

【弁理士】

【氏名又は名称】長谷川 芳樹

(74)【代理人】

【識別番号】100128381

【弁理士】

【氏名又は名称】清水 義憲

(74)【代理人】

【識別番号】100176773

【弁理士】

【氏名又は名称】坂西 俊明

(74)【代理人】

【識別番号】100223424

【弁理士】

【氏名又は名称】和田 雄二

(74)【代理人】

【識別番号】100215957

【弁理士】

【氏名又は名称】田村 明照

(72)【発明者】

【氏名】蝦名 史子

【合議体】

【審判長】磯貝 香苗

【審判官】中村 和正

【審判官】加藤 友也

(56)【参考文献】

【文献】特表２０１８－５３１６０１（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許出願公開第２０１５／００１７２８０（ＵＳ，Ａ１）

【文献】特開２０１６－１８５１４０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１５－１２２９７０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１５－１１６１８７（ＪＰ，Ａ）

【文献】Ｊ．Ｉｎｓｔ．Ｂｒｅｗ．，１９８６年，Ｖｏｌ．９２，ｐｐ．２２５－２２８

【文献】食の科学，１９７７年，Ｎｏ．３６，ｐｐ．２８－３２

【文献】山野善正 総編集，おいしさの科学事典，初版，２００３年，ｐｐ．１２２－１２３

【文献】Ｂｒａｕｉｎｄｕｓｔｒｉｅ，１９８２年，６７（１７），ｐｐ．１０８５－１０９４

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

A23L2/00-2/84

C12G1/00-3/08

C12H1/00-6/04

C12C1/00-13/10

C12F3/00-5/00

C12J1/00-1/10

C12L3/00-11/00

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

酢酸エチル及びエタノールを含有し、
前記酢酸エチルの含有量が、１ｍｇ／Ｌ以上８０ｍｇ／Ｌ以下であり、
前記エタノールの含有量が、０．００５ｖ／ｖ％以上０．７５ｖ／ｖ％未満であり、
プロピレングリコールの含有量が１００ｍｇ／Ｌ以上１０００ｍｇ／Ｌ以下である、ビールテイスト飲料。

【請求項2】

グリセリンの含有量が０ｍｇ／Ｌ以上９０００ｍｇ／Ｌ以下である、請求項１に記載のビールテイスト飲料。

【請求項3】

グリセリンの含有量が０ｍｇ／Ｌ超９０００ｍｇ／Ｌ以下である、請求項１又は２に記載のビールテイスト飲料。

【請求項4】

前記酢酸エチルの含有量が、２５ｍｇ／Ｌ以上である、請求項１～３のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。

【請求項5】

前記エタノールの含有量が、０．５０ｖ／ｖ％未満である、請求項１～４のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。

【請求項6】

前記エタノールの含有量が、０．０５ｖ／ｖ％以上０．５０ｖ／ｖ％未満である、請求項１～５のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。

【請求項7】

ビールテイスト飲料に、酢酸エチルを１ｍｇ／Ｌ以上８０ｍｇ／Ｌ以下含有させること、エタノールを０．００５ｖ／ｖ％以上０．７５ｖ／ｖ％未満含有させること、及びプロピレングリコールを１００ｍｇ／Ｌ以上１０００ｍｇ／Ｌ以下含有させること、を含む、ビールテイスト飲料のマイルド感を向上させる方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、ビールテイスト飲料に関する。

【背景技術】

【0002】

近年、アルコール含有量が１ｖ／ｖ％未満であるビールテイスト飲料（ビールテイストノンアルコール飲料）の市場が拡大している。また、ビールテイスト飲料らしい香味特徴を有するビールテイストノンアルコール飲料の製造方法が種々開示されている。例えば、特許文献１には、ビール及び／又は発泡酒を希釈してアルコール濃度を１ｖ／ｖ％未満とするとともに視覚的及び香味的にビール様の特徴を付与する添加物を配合することを特徴とする低アルコールビール様飲料の製造方法が開示されている。また例えば、特許文献２には、未発酵のビールテイスト飲料の製造方法であって、該飲料中の酢酸エチルの含有量が１～１５ｍｇ／Ｌの範囲内に調整されるか、および／または、該飲料中の酢酸イソアミルの含有量が０．５～１０ｍｇ／Ｌの範囲内に調整されるように原材料を調合し、かつ、苦味成分を添加することを含んでなる、製造方法が開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】国際公開第２００４／０１８６１２号

【文献】特開２０１７－２１６８９１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

しかしながら、微量のエタノールと酢酸エチルを組み合わせることによるビールテイスト飲料の香味への影響はこれまで知られていなかった。

【0005】

本発明は、ビールテイスト飲料らしいマイルド感が優れるビールテイスト飲料（ビールテイストノンアルコール飲料）の提供を目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明者らは、特定量の酢酸エチル、及び特定量のエタノールを含有させたビールテイストノンアルコール飲料は、ビールテイスト飲料らしいマイルド感が向上することを見出した。本発明は、この新規な知見に基づくものである。

【0007】

本発明は、酢酸エチル及びエタノールを含有し、上記酢酸エチルの含有量が、１ｍｇ／Ｌ以上８０ｍｇ／Ｌ以下であり、上記エタノールの含有量が、０．００５ｖ／ｖ％以上０．７５ｖ／ｖ％未満である、ビールテイスト飲料に関する。

【0008】

本発明に係るビールテイスト飲料は、特定量の酢酸エチル、及び特定量のエタノールを組み合わせて含有しているため、ビールテイスト飲料らしいマイルド感に優れる。

【0009】

上記ビールテイスト飲料は、プロピレングリコール及びグリセリンの含有量が、それぞれ０ｍｇ／Ｌ以上９０００ｍｇ／Ｌ以下であってよい。これにより、本発明による効果がより一層発揮される。

【0010】

上記ビールテイスト飲料は、プロピレングリコールの含有量が０ｍｇ／Ｌ超９０００ｍｇ／Ｌ以下である、又はグリセリンの含有量が０ｍｇ／Ｌ超９０００ｍｇ／Ｌ以下であるものであってよい。これにより、ビールテイスト飲料らしいマイルド感に顕著に優れると共に、ビールテイスト飲料らしい適度なアルコール感、及びビールテイスト飲料らしいキレも優れたものになる。

【0011】

上記ビールテイスト飲料において、上記酢酸エチルの含有量は、２５ｍｇ／Ｌ以上であってよい。これにより、ビールテイスト飲料らしいマイルド感に顕著に優れると共に、ビールテイスト飲料らしい適度なアルコール感にも顕著に優れたものになる。

【0012】

上記ビールテイスト飲料において、上記エタノールの含有量は、０．５０ｖ／ｖ％未満であってよく、０．０５ｖ／ｖ％以上０．５０ｖ／ｖ％未満であってよい。これにより、ビールテイスト飲料らしいマイルド感に優れると共に、ビールテイスト飲料らしい適度なアルコール感にも優れたものになる。

【0013】

本発明はまた、ビールテイスト飲料に、酢酸エチルを１ｍｇ／Ｌ以上８０ｍｇ／Ｌ以下含有させること、及びエタノールを０．００５ｖ／ｖ％以上０．７５ｖ／ｖ％未満含有させること、を含む、ビールテイスト飲料のマイルド感を向上させる方法にも関する。

【発明の効果】

【0014】

本発明によれば、ビールテイスト飲料らしいマイルド感に優れるビールテイスト飲料（ビールテイストノンアルコール飲料）を提供することができる。本発明によればまた、ビールテイスト飲料のマイルド感を向上させる方法を提供することができる。

【発明を実施するための形態】

【0015】

以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。

【0016】

〔ビールテイスト飲料〕
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、酢酸エチル及びエタノールを含有し、酢酸エチルの含有量が、１ｍｇ／Ｌ以上８０ｍｇ／Ｌ以下であり、エタノールの含有量が、０．００５ｖ／ｖ％以上０．７５ｖ／ｖ％未満である。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、特定量の酢酸エチル、及び特定量のエタノールを組み合わせて含有しているため、ビールテイスト飲料らしいマイルド感に優れる。

【0017】

本明細書において「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコール度数が１ｖ／ｖ％未満であるノンアルコール飲料（ビールテイストノンアルコール飲料）である。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。

【0018】

本実施形態に係るビールテイスト飲料の酢酸エチル含有量は、１ｍｇ／Ｌ以上８０ｍｇ／Ｌ以下であればよい。ビールテイスト飲料らしいマイルド感がより一層向上するという観点から、本実施形態に係るビールテイスト飲料の酢酸エチル含有量は、２ｍｇ／Ｌ以上、３ｍｇ／Ｌ以上、４ｍｇ／Ｌ以上、５ｍｇ／Ｌ以上、６ｍｇ／Ｌ以上、７ｍｇ／Ｌ以上、８ｍｇ／Ｌ以上、９ｍｇ／Ｌ以上、１０ｍｇ／Ｌ以上、１５ｍｇ／Ｌ以上、２０ｍｇ／Ｌ以上、２５ｍｇ／Ｌ以上、３０ｍｇ／Ｌ以上、又は３５ｍｇ／Ｌ以上であってよい。同様の観点から、本実施形態に係るビールテイスト飲料の酢酸エチル含有量は、７５ｍｇ／Ｌ以下、７０ｍｇ／Ｌ以下、６５ｍｇ／Ｌ以下、６０ｍｇ／Ｌ以下、５５ｍｇ／Ｌ以下、５０ｍｇ／Ｌ以下、４５ｍｇ／Ｌ以下、又は４０ｍｇ／Ｌ以下であってよい。

【0019】

本実施形態に係るビールテイスト飲料の酢酸エチル含有量は、例えば、３ｍｇ／Ｌ以上８０ｍｇ／Ｌ以下であってもよい。酢酸エチル含有量がこの範囲内にあると、ビールテイスト飲料らしいマイルド感に加えて、ビールテイスト飲料らしい適度なアルコール感にも優れる。マイルド感及びアルコール感の観点から、本実施形態に係るビールテイスト飲料の酢酸エチル含有量は、例えば、５ｍｇ／Ｌ以上７０ｍｇ／Ｌ以下であってよく、１０ｍｇ／Ｌ以上６０ｍｇ／Ｌ以下であってよく、２５ｍｇ／Ｌ以上５５ｍｇ／Ｌ以下であってよく、３０ｍｇ／Ｌ以上５０ｍｇ／Ｌ以下であってよく、３５ｍｇ／Ｌ以上４５ｍｇ／Ｌ以下であってよく、３５ｍｇ／Ｌ以上４０ｍｇ／Ｌ以下であってよい。

【0020】

ビールテイスト飲料の酢酸エチル含有量は、例えば、改訂ＢＣＯＪビール分析法（公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、２０１３年増補改訂）の「８．２２ 低沸点香気成分」に記載の方法によって測定することができる。

【0021】

本実施形態に係るビールテイスト飲料の酢酸エチル含有量は、例えば、常法によりビールテイスト飲料を製造する際、含有量が上記範囲になるように酢酸エチルを添加する方法、酢酸エチルの含有量が高くなる、又は低くなるような原料種類又は酵母種類を適宜選択する方法、醸造条件の制御（例えば、発酵温度及び発酵期間等）により酢酸エチルの生成量を制御する方法、及びこれらを任意に組み合わせた方法により調整することができる。酢酸エチルを添加する方法において、酢酸エチルの添加は、例えば、酢酸エチルそのものを添加してもよく、酢酸エチルを含有する香料組成物等を添加してもよい。

【0022】

本実施形態に係るビールテイスト飲料のエタノール含有量（アルコール度数）は、０．００５ｖ／ｖ％以上０．７５ｖ／ｖ％未満であればよい。ビールテイスト飲料らしいマイルド感がより一層向上するという観点から、本実施形態に係るビールテイスト飲料のエタノール含有量は、０．０１ｖ／ｖ％以上、０．０２ｖ／ｖ％以上、０．０３ｖ／ｖ％以上、０．０４ｖ／ｖ％以上、０．０５ｖ／ｖ％以上、０．０６ｖ／ｖ％以上、０．０７ｖ／ｖ％以上、０．０８ｖ／ｖ％以上、０．０９ｖ／ｖ％以上、又は０．１０ｖ／ｖ％以上であってよい。同様の観点から、本実施形態に係るビールテイスト飲料のエタノール含有量は、０．７０ｖ／ｖ％以下、０．６０ｖ／ｖ％以下、０．５０ｖ／ｖ％以下、０．５０ｖ／ｖ％未満、０．４０ｖ／ｖ％以下、又は０．３０ｖ／ｖ％以下であってよい。

【0023】

本実施形態に係るビールテイスト飲料のエタノール含有量は、例えば、０．０４ｖ／ｖ％以上０．５０ｖ／ｖ％未満であってよい。エタノール含有量がこの範囲内にあると、ビールテイスト飲料らしいマイルド感に加えて、ビールテイスト飲料らしい適度なアルコール感にも優れる。マイルド感及びアルコール感の観点から、本実施形態に係るビールテイスト飲料のエタノール含有量は、０．０５ｖ／ｖ％以上０．５０ｖ／ｖ％未満であってよく、０．０６ｖ／ｖ％以上０．５０ｖ／ｖ％未満であってよく、０．０８ｖ／ｖ％以上０．５０ｖ／ｖ％未満であってよく、０．１０ｖ／ｖ％以上０．５０ｖ／ｖ％未満であってよい。

【0024】

本実施形態に係るビールテイスト飲料のエタノール含有量は、例えば、０．００５ｖ／ｖ％以上０．５０ｖ／ｖ％未満であってよく、０．００５ｖ／ｖ％以上０．０５ｖ／ｖ％未満であってよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、エタノール含有量がこの範囲内にあれば、ビールテイスト飲料らしいマイルド感が充分に向上するため、アルコール含有量の低いビールテイスト飲料として調製することができる。

【0025】

ビールテイスト飲料のエタノール含有量（アルコール度数）は、例えば、国税庁所定分析法（訓令）「３清酒 ３－４アルコール分」に記載されている振動式密度計法に基づいて測定することができる。

【0026】

本実施形態に係るビールテイスト飲料のエタノール含有量は、例えば、アルコールの添加により上記範囲内に調整してもよく、醸造により得られた発酵液からアルコールを除去して上記範囲内に調整してもよく、これらを併用して上記範囲内に調整してもよい。添加するアルコールに特に制限はなく、例えば、蒸留アルコール（例えば、原料用アルコール、スピリッツ、ウォッカ）であってもよく、醸造により得られた発酵液であってもよい。醸造により得られた発酵液からアルコールを除去する方法に特に制限はなく、例えば、蒸留、透析等の常法に従って実施することができる。

【0027】

本実施形態に係るビールテイスト飲料は、プロピレングリコールを含有していてもよく、含有していなくてもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料がプロピレングリコールを含有する場合は、プロピレングリコール含有量は、０ｍｇ／Ｌ超９０００ｍｇ／Ｌ以下であることが好ましい。プロピレングリコール含有量がこの範囲内にあると、ビールテイスト飲料らしいマイルド感が顕著に優れると共に、ビールテイスト飲料らしい適度なアルコール感、及びビールテイスト飲料らしいキレのいずれにも優れる。同様の観点から、プロピレングリコール含有量は、１０ｍｇ／Ｌ以上、２０ｍｇ／Ｌ以上、３０ｍｇ／Ｌ以上、４０ｍｇ／Ｌ以上、５０ｍｇ／Ｌ以上、６０ｍｇ／Ｌ以上、７０ｍｇ／Ｌ以上、８０ｍｇ／Ｌ以上、９０ｍｇ／Ｌ以上、又は１００ｍｇ／Ｌ以上であってよく、８０００ｍｇ／Ｌ以下、７０００ｍｇ／Ｌ以下、６０００ｍｇ／Ｌ以下、５０００ｍｇ／Ｌ以下、４０００ｍｇ／Ｌ以下、３０００ｍｇ／Ｌ以下、又は２０００ｍｇ／Ｌ以下であってよい。

【0028】

ビールテイスト飲料のプロピレングリコール含有量は、例えば、ＧＣ－ＭＳ法により測定することができる。

【0029】

本実施形態に係るビールテイスト飲料のプロピレングリコール含有量は、例えば、プロピレングリコールの添加により調整することができる。添加するプロピレングリコールは、プロピレングリコールそのものであってもよく、プロピレングリコールを含有する香料組成物、食品添加物等であってもよい。

【0030】

本実施形態に係るビールテイスト飲料は、グリセリンを含有していてもよく、含有していなくてもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料がグリセリンを含有する場合は、グリセリン含有量は、０ｍｇ／Ｌ超９０００ｍｇ／Ｌ以下であることが好ましい。グリセリン含有量がこの範囲内にあると、ビールテイスト飲料らしいマイルド感が顕著に優れると共に、ビールテイスト飲料らしい適度なアルコール感、及びビールテイスト飲料らしいキレのいずれにも優れる。同様の観点から、グリセリン含有量は、１０ｍｇ／Ｌ以上、２０ｍｇ／Ｌ以上、３０ｍｇ／Ｌ以上、４０ｍｇ／Ｌ以上、５０ｍｇ／Ｌ以上、６０ｍｇ／Ｌ以上、７０ｍｇ／Ｌ以上、８０ｍｇ／Ｌ以上、９０ｍｇ／Ｌ以上、又は１００ｍｇ／Ｌ以上であってよく、８０００ｍｇ／Ｌ以下、７０００ｍｇ／Ｌ以下、６０００ｍｇ／Ｌ以下、５０００ｍｇ／Ｌ以下、４０００ｍｇ／Ｌ以下、３０００ｍｇ／Ｌ以下、又は２０００ｍｇ／Ｌ以下であってよい。

【0031】

ビールテイスト飲料のグリセリン含有量は、例えば、ＧＣ－ＭＳ法により測定することができる。

【0032】

本実施形態に係るビールテイスト飲料のグリセリン含有量は、例えば、グリセリンの添加により調整することができる。添加するグリセリンは、グリセリンそのものであってもよく、グリセリンを含有する香料組成物、食品添加物等であってもよい。

【0033】

本実施形態に係るビールテイスト飲料が、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される少なくとも１種を含有する場合は、プロピレングリコール及びグリセリンの総含有量（いずれか一方のみを含有する場合は、その含有量）が０ｍｇ／Ｌ超９０００ｍｇ／Ｌ以下であることが好ましい。プロピレングリコール及びグリセリンの総含有量（いずれか一方のみを含有する場合は、その含有量）は、１０ｍｇ／Ｌ以上、２０ｍｇ／Ｌ以上、３０ｍｇ／Ｌ以上、４０ｍｇ／Ｌ以上、５０ｍｇ／Ｌ以上、６０ｍｇ／Ｌ以上、７０ｍｇ／Ｌ以上、８０ｍｇ／Ｌ以上、９０ｍｇ／Ｌ以上、又は１００ｍｇ／Ｌ以上であってよく、８０００ｍｇ／Ｌ以下、７０００ｍｇ／Ｌ以下、６０００ｍｇ／Ｌ以下、５０００ｍｇ／Ｌ以下、４０００ｍｇ／Ｌ以下、３０００ｍｇ／Ｌ以下、又は２０００ｍｇ／Ｌ以下であってよい。

【0034】

本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦原料を含有していてもよく、原料として麦原料を含有していなくてもよい。本明細書において麦原料とは、麦又は麦加工物をいう。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦が挙げられる。麦加工物としては、例えば、麦エキス、麦芽、モルトエキスが挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキス分を抽出することにより得られる。麦芽は麦を発芽させることにより得られる。モルトエキスは、麦芽から糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。

【0035】

本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料としてホップを含有していてもよく、原料としてホップを含有していなくてもよい。ホップには、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスが含まれ、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品も含まれる。

【0036】

本実施形態に係るビールテイスト飲料は、麦芽比率（水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合）が０重量％以上１００重量％以下であってよい。麦芽比率は、１０重量％以上、２０重量％以上、３０重量％以上、４０重量％以上、５０重量％以上、６０重量％以上、６５重量％以上、６６重量％以上、６７重量％以上、７０重量％以上、８０重量％以上、９０重量％以上、９５重量％以上、９９重量％以上、又は１００重量％であってよい。また、麦芽比率は、１００重量％未満、９０重量％以下、９５重量％以下、９０重量％以下、８０重量％以下、７０重量％以下、６０重量％以下、又は５０重量％以下であってよい。

【0037】

本実施形態に係るビールテイスト飲料は、本発明の効果を損なわない範囲で、飲料に通常配合される着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類等を含んでいてもよい。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素を挙げることができる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲン、デンプンを挙げることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムＫ、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームを挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンＣ、ビタミンＥ、ポリフェノールを挙げることができる。酸味料としては、例えば、リン酸、乳酸、ＤＬ－リンゴ酸、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、ＤＬ－酒石酸、Ｌ－酒石酸、ＤＬ－酒石酸ナトリウム、Ｌ－酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、ＤＬ－リンゴ酸ナトリウムを挙げることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムを挙げることができる。

【0038】

本実施形態に係るビールテイスト飲料の苦味価（ＢＵ）は、例えば、０．０以上５０．０以下であってよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料のＢＵは、例えば、４０．０以下、３０．０以下、２０．０以下，又は１５．０以下であってよく、１．０以上、２．０以上、３．０以上、４．０以上、５．０以上、又は１０．０以上であってよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料の苦味価は、改訂ＢＣＯＪビール分析法（公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、２０１３年増補改訂）の「８．１５ 苦味価」に記載されている方法によって測定することができる。苦味価は、例えば、原料の種類及び使用量を調整することにより、上記範囲で適宜設定することができる。

【0039】

本実施形態に係るビールテイスト飲料は、非発泡性であってもよく、発泡性であってもよい。ここで、非発泡性とは、２０℃におけるガス圧が０．０４９ＭＰａ（０．５ｋｇ／ｃｍ^２）未満であることをいい、発泡性とは、２０℃におけるガス圧が０．０４９ＭＰａ（０．５ｋｇ／ｃｍ^２）以上であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は０．２９４ＭＰａ（３．０ｋｇ／ｃｍ^２）程度としてもよい。

【0040】

本実施形態に係るビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製（アルミニウム製又はスチール製など）のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。

【0041】

本実施形態に係るビールテイスト飲料は、例えば、原料を混合して製造してもよく（調合による方法）、酵母等による発酵を経て製造してもよい。

【0042】

一実施形態に係る製造方法は、例えば、水と、酢酸エチルと、アルコール（例えば、原料用アルコール、スピリッツ及びウォッカ等の蒸留アルコール、醸造により得られた発酵液）と、必要に応じて、プロピレングリコール、グリセリン及び／又は各種添加剤（例えば、着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類等）と、を原料タンクに配合する配合工程を含む。配合工程は、酢酸エチル及びエタノール、並びに必要に応じてプロピレングリコール及びグリセリンの含有量を上記範囲内に調整することの他は、常法に従って実施することができる。酢酸エチルは、酢酸エチルそのものを配合してもよく、酢酸エチルを含む香料組成物、食品添加物として配合してもよい。

【0043】

本実施形態に係る製造方法は、配合工程において各成分を混合して得た混合液をろ過するろ過工程と、ろ過工程でろ過したろ過液を殺菌する第一の殺菌工程と、第一の殺菌工程で殺菌した殺菌済みのろ過液をビン、缶、ペットボトル等の容器に充填する充填工程と、充填工程で容器に充填されたろ過液を容器ごと殺菌する第二の殺菌工程と、を更に含んでいてもよい。

【0044】

配合工程は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機等により撹拌しながら混合してもよい。また、ろ過工程は、例えば、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。第一の殺菌工程は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行ってもよく、同様の処理を行うことができるのであれば、これに限定されることなく適用可能である。充填工程は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填してもよい。第二の殺菌工程は、所定の温度及び所定の時間でろ過液を容器ごと加熱することにより行うことができる。第一又は第二の殺菌工程は、非加熱の殺菌工程としてもよい。非加熱の殺菌工程としては、紫外線（ＵＶ）殺菌等が挙げられる。殺菌工程を行わない無殺菌充填を行うことも可能である。

【0045】

他の実施形態における製造方法は、例えば、仕込工程、発酵工程、及びアルコール度数調整工程を備える。

【0046】

仕込工程では、原料及び仕込水（仕込工程で使用される水）を用いて、発酵前液を得る。つまり、仕込工程は、発酵に用いられる発酵前液を調製する工程である。仕込工程は、糖含有液を煮沸する煮沸工程、原料液中の固形分を除去する除去工程、原料液を冷却する冷却工程をこの順に含んでいてよい。

【0047】

煮沸工程では、糖含有液を煮沸して煮沸後液（煮沸後の糖含有液）を得る。糖含有液とは、酵母によるアルコール発酵が可能な成分を含有するものである。糖含有液としては、例えば、麦汁、シロップが挙げられる。麦汁とは、上述の麦原料の糖化を経て得られる液であり、未発酵のものである。麦汁は、例えば、上述の麦原料等の原料と水とを混合する工程、原料と水とを含む液を常法により糖化して糖化液を得る工程、及び糖化液をろ過する工程を経て得ることができる。

【0048】

煮沸工程では、原料液にホップを添加してよい。添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。

【0049】

除去工程では、煮沸後液中の固形分を除去して精製液を得る。除去工程は、例えば、煮沸後液に含まれる不溶性の固形分を沈殿させることにより行うことができる。固形分としては、煮沸工程により生じた熱凝固物、煮沸工程でホップを添加した場合には、ホップのかす等が挙げられる。除去工程は、ワールプール中で実施してよい。冷却工程では、酵母による発酵が可能な温度まで精製液を冷却して発酵前液を得る。

【0050】

発酵工程では、発酵前液を酵母により発酵させて発酵後液を得る。発酵工程では、酵母を添加してアルコール発酵が行われる。より具体的には、発酵前液に酵母を接種して発酵させ、酵母により生成するアルコールを含む発酵後液を得る。

【0051】

アルコール度数調整工程は、エタノール含有量を上記範囲内に調整する工程である。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコール度数が低いため、例えば、発酵工程において、発酵期間を短くする等してアルコールの生成を抑えることによって、アルコール度数を調整してもよく、発酵工程において、通常のビール等のビールテイスト飲料と同様に発酵を行ってアルコールを生成させた後に、アルコールを除去又は低減させることによって、アルコール度数を調整してもよい。アルコールを除去又は低減させる方法に特に制限はなく、例えば、蒸留、透析等の常法に従って実施することができる。

【0052】

本実施形態に係る製造方法では、発酵工程後の発酵後工程として、発酵後液をろ過する工程を備えていてもよい。ろ過工程を実施することにより、発酵後液から不溶性の固形分、酵母等を除去することができる。

【0053】

本実施形態に係る製造方法では、他の発酵後工程として、発酵後液（又はろ過工程後の発酵後液）に対して加熱（殺菌）、各種添加剤（例えば、着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類）の添加等を行ってもよい。

【0054】

酢酸エチルの含有量の調整は、例えば、酢酸エチルを原料液に添加することにより実施することができる。本明細書において、原料液とは、ビールテイスト飲料のもととなる液を意味する。原料液には、各工程で使用又は製造される液（例えば、糖含有液、煮沸後液、精製液、発酵前液、発酵後液）が含まれる。また、酢酸エチルの含有量が高くなる、又は低くなるような原料種類又は酵母種類を適宜選択する方法、醸造条件の制御（例えば、発酵温度及び発酵期間等）により酢酸エチルの生成量を制御する方法によって、酢酸エチルの含有量の調整を行ってもよい。

【0055】

本実施形態に係る製造方法において、アルコール度数調整工程を通常のビール等のビールテイスト飲料と同様に発酵を行ってアルコールを生成させた後に、アルコールを除去又は低減させることによって実施する場合、酢酸エチルの含有量の調整は、アルコール度数調整後に実施するのが好ましい。例えば、アルコールを除去又は低減させた原料液に酢酸エチルを添加することで、酢酸エチルの含有量を調整してよい。

【0056】

原料液に添加する酢酸エチルは、酢酸エチルそのものであってもよく、酢酸エチルを含む香料組成物、食品添加物であってもよい。

【0057】

〔ビールテイスト飲料のマイルド感を向上させる方法〕
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料らしいマイルド感が向上するという効果を奏する。したがって、本発明の一実施形態として、ビールテイスト飲料に、酢酸エチルを１ｍｇ／Ｌ以上８０ｍｇ／Ｌ以下含有させること、及びエタノールを０．００５ｖ／ｖ％以上０．７５ｖ／ｖ％未満含有させること、を含む、ビールテイスト飲料のマイルド感（ビールテイスト飲料らしいマイルド感）を向上させる方法が提供される。本実施形態に係る方法における具体的な態様等は、上述したビールテイスト飲料における具体的な態様等を制限なく適用できる。

【実施例】

【0058】

以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。

【0059】

［試験例１］
〔ビールテイスト飲料の調製〕
酢酸エチル、プロピレングリコール、グリセリン、スピリッツ（アルコール度数：６５．５度）及び水を表１～３に示す組成となるように混合し、容器に充填して試験例１－１～１－５、試験例２－１～２－６、及び試験例３－１～３－８のビールテイスト飲料（ビールテイストノンアルコール飲料）を調製した。

【0060】

〔官能評価〕
調製したビールテイスト飲料に対して、「ビールテイスト飲料らしいマイルド感（以下、単に「マイルド感」ともいう。）」及び「ビールテイスト飲料らしい適度なアルコール感（以下、単に「アルコール感」ともいう。）」の評価項目について官能評価を実施した。また、試験例３－１～３－８のビールテイスト飲料に対しては、「ビールテイスト飲料らしいキレ（以下、単に「キレ」ともいう。）」の評価項目についても官能評価を実施した。官能評価は、選抜された識別能力のあるパネル５名により実施した。いずれの評価項目も評点１～５の５段階で評価し、その平均値を評価スコアとした。

【0061】

「ビールテイスト飲料らしいマイルド感」は、ビールテイスト飲料らしい飲みごたえを維持しつつ、口当たりの良いまろやかな感覚であり、評点が高いほどこれを強く感じることを示す。「ビールテイスト飲料らしい適度なアルコール感」は、アルコール臭さや刺激臭が無く、ノンアルコールビールとして適度な酔い感を感じる感覚であり、評点が高いほどこれを強く感じることを示す。「ビールテイスト飲料らしいキレ」は、爽快感や清涼感を感じさせるとともに雑味等の後味が口の中に残らない感覚であり、評点が高いほどこれを強く感じることを示す。結果を表１～３に示す。

【0062】

なお、「マイルド感」及び「アルコール感」については、試験例１－１のビールテイスト飲料の評点をそれぞれ１点及び１点として固定し、これらを基準として他のビールテイスト飲料を評価した。「キレ」については、試験例３－１のビールテイスト飲料の評点を３点として固定し、これを基準として他のビールテイスト飲料を評価した。「マイルド感」は、評価スコアが２．７以上のビールテイスト飲料を合格とした。

【0063】

【表1】

【0064】

【表2】

【0065】

【表3】

【0066】

表１及び表２に示すとおり、酢酸エチルの含有量が、１ｍｇ／Ｌ以上８０ｍｇ／Ｌ以下であり、エタノールの含有量が、０．００５ｖ／ｖ％以上０．７５ｖ／ｖ％未満である、試験例１－２～１－４及び試験例２－２～２－５のビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料らしいマイルド感に優れていた。中でもエタノールの含有量が０．０４ｖ／ｖ％以上である試験例１－３～１－４及び試験例２－２～２－５のビールテイスト飲料は、「アルコール感」の評価スコアが３以上であり、ビールテイスト飲料らしいマイルド感に加えて、ビールテイスト飲料らしい適度なアルコール感にも優れていた。また中でも酢酸エチルの含有量が２５ｍｇ／Ｌ以上である試験例２－５のビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料らしいマイルド感、及びビールテイスト飲料らしい適度なアルコール感のいずれも顕著に優れていた。

【0067】

表３に示すとおり、酢酸エチル及びエタノールに加えて、プロピレングリコール又はグリセリンを更に含有し、その含有量が９０００ｍｇ／Ｌ以下である、試験例３－２～３－３及び３－６～３－７のビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料らしいマイルド感が顕著に優れると共に、ビールテイスト飲料らしい適度なアルコール感、及びビールテイスト飲料らしいキレのいずれも優れていた。

【0068】

［試験例２］
〔ビールテイスト飲料の調製〕
酢酸エチル、スピリッツ（アルコール度数：６５．５度）、果糖ブドウ糖液糖、酸味料、苦味量、カラメル色素及び水を表４に示す組成となるように混合し、炭酸水でガス圧を２．３ｋｇ／ｃｍ^２に調整し、容器に充填して試験例４－１～４－３のビールテイスト飲料（ビールテイストノンアルコール飲料）を調製した。

【0069】

調製したビールテイスト飲料に対して、試験例１と同様にして、官能評価を実施した。なお、「マイルド感」及び「アルコール感」について、試験例１－１のビールテイスト飲料の評点をそれぞれ１点及び１点として固定し、これらを基準として他のビールテイスト飲料を評価した。結果を表４に示す。

【0070】

【表4】

【0071】

表４に示すとおり、酢酸エチルの含有量が、１ｍｇ／Ｌ以上８０ｍｇ／Ｌ以下であり、エタノールの含有量が、０．００５ｖ／ｖ％以上０．７５ｖ／ｖ％未満である、試験例４－２～４－３のビールテイスト飲料は、各種添加剤を含む場合であっても、ビールテイスト飲料らしいマイルド感に優れていた。