(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20230831BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
C08J5/04
C08J5/24
(21)【出願番号】P 2020527101
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 KR2018015006
(87)【国際公開番号】W WO2019107991
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】10-2017-0161580
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520087103
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウォン ソク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ウォク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ユ ジュン
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-278126(JP,A)
【文献】特表2014-517092(JP,A)
【文献】特表2014-516822(JP,A)
【文献】特開平09-078998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08-15/14
C08J5/04-5/10
5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヤーン(yarn
)の中間材をノズルに通過させて、組糸にして棒状に形成された連続繊維補強熱可塑性複合材料であって、
前記ノズルは、入口端および出口端を有し、前記出口端の直径に対する前記入口端の直径の比が1.5~5であり、前記出口端の直径に対する長さの比が2~10であり、
前記複合材料は、気孔率が1~10体積%であり、
前記複合材料は、前記複合材料の断面を基準に下記数式1を満足し、
【数1】
前記数式1において、P及びAはそれぞれ前記複合材料の断面の周縁の長さ及び断面の面積であり、
前記ヤーンは、1~3mmの直径を有し、
前記組糸は、前記ヤーン2~10個が投入されて組糸になることを特徴とする、連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料。
【請求項2】
前記連続繊維は、ガラス繊維または炭素繊維であることを特徴とする、請求項
1に記載の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料。
【請求項3】
(a)複数のヤーン(yarn
)状の中間材を加熱部に連続的に投入するステップと、
(b)前記中間材を前記中間材に含まれている熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱し、少なくとも前記中間材表面の熱可塑性樹脂の一部を溶融させるステップと、
(c)前記溶融された中間材の2個以上をノズルに通過させて組糸にして棒状に成形するステップと、
を含む、連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法であって、
前記ノズルは、入口端および出口端を有し、前記出口端の直径に対する前記入口端の直径の比が1.5~5であり、前記出口端の直径に対する長さの比が2~10であり、
前記複合材料は、気孔率が1~10体積%であり、
前記複合材料は、前記複合材料の断面を基準に下記数式1を満足し、
【数2】
前記数式1において、P及びAはそれぞれ前記複合材料の断面の周縁の長さ及び断面の面積であり、
前記ヤーンは、1~3mmの直径を有し、
前記組糸は、前記ヤーン2~10個が投入されて組糸になることを特徴とする、連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記中間材は、前記連続繊維の含有量が30~60重量%及び前記熱可塑性樹脂の含有量が40~70重量%であることを特徴とする、請求項
3に記載の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)における加熱は、前記熱可塑性樹脂の融点より20~40℃高い温度で行われることを特徴とする、請求項
3または4に記載の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記ノズルは断面の形状に屈曲がないか、1以上の凹凸が形成されることを特徴とする、請求項
3~5のいずれか1項に記載の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記ノズルを介して吐出される前記棒を回転させてらせん状に形成させることを特徴とする、請求項
3~6のいずれか1項に記載の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
【請求項8】
前記ノズルは多段に形成され、出口の方に向かって直径が減少することを特徴とする、請求項
3~7のいずれか1項に記載の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料及びその製造方法に関し、より詳しくは、熱可塑性樹脂射出製品の補強材として活用可能な連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続繊維が補強されたポリマー棒は、構造的補強材として多様な用途に使用されてきた。代表的に、鉄筋を代替してコンクリートの内部に挿入される補強筋として使用されており、最近はインサート射出工程に導入され、射出成形部品の内部に挿入される補強用インサートとして活用されることで、多様な射出部品の機械的物性を上げながら、軽量化を成し遂げるために使用されている。また、3Dプリント装置にも導入されて、既存の熱可塑性樹脂のみで積層構造物を製作していた方式では、樹脂の内部に連続繊維を添加し、連続繊維が補強された帯または棒状の複合材料を積層して構造物を製作することで、高い機械的物性を具現する製品を製作しようとする試みが行われている。
【0003】
一般に、連続繊維が補強されたポリマーを棒または帯状に製作する最も伝統的な方法は引抜成形工法であり、ガラス繊維または炭素繊維を溶融状態の樹脂に含浸させた後、引抜力を加えてノズルを通過させることで、円形の断面またはその他の多様な断面形状の棒を製作することである。引抜成形は、高い生産性と優れた品質の具現が可能であるが、大量生産に適合した製造方法では、大型及び高価の引抜成形装置を必要とするため、大量生産が維持されなければ経済性のある生産単価を確保することができない。よって、多品種少量生産が必要な製品群の場合には、適していない工程である。
【0004】
韓国公開特許第2016-0054661号公報は、連続繊維の形態を有する補強繊維に熱可塑性樹脂を含浸させた後、円形状に巻いてから一定の長さに切って形成することを特徴とする一方向連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材を開示しているが、一般に生産される薄いフィルム状の熱可塑性樹脂複合素材をロール成形機に投入して、巻いてロッド(rod)状に成形する過程は、フィルムが乾燥せずに砕けるかしわくちゃになる不良や、工程中に繊維が切れる問題がある。これを解決するためには、多数のロール成形機が必要であり、ロール成形機の入口と出口の口径が必ず一定の割合で維持されるべきであって、多数のロール成形機の温度も個別に制御する必要があるなど、多少複雑な工程が求められる。
【0005】
韓国登録特許第0766954号公報は、自己含浸された突起を有する繊維強化ポリマー補強筋及びその製造方法に関し、繊維強化ポリマー補強筋を製造する方法として、典型的な引抜成形工程を利用している。この特許は、連続繊維を樹脂に含侵させた後、引抜力を加えてノズルを通過させることで円形断面の棒を製作しており、この際、表面に突起を形成するために第2の繊維、第3の繊維が第1の繊維の外周面に沿って巻かれるようにする技術を開示しているが、引抜成形工程に加えて繊維を巻く(braiding)工程を連動する必要があるため、高価な装置が別途に必要である。引抜成形装置は大型装置であり、大量生産が維持されなければ経済性のある製品単価を確保することができず、追加される装置も高価な大型の装置であって、莫大な初期投資が必要な技術である。
【0006】
韓国登録特許第1714772号公報は、形成可能なプラスチック材料からなる素材を利用して3D立体物を製造する3D立体物の製造ロボットに関し、使用される素材としてストランド(strand)、ヤーン(yarn)、トウ(tow)、バンドル(bundle)、バンド(band)、またはテープ(tape)を例示しているが、投入される材料を圧密(compaction)などの任意の成形工程については言及しておらず、実際の製品への適用に対する事例を提示していないため、強度及び剛性、断面及び表面の均一性など、補強材として使用可能な品質が具現可能かどうかを確認することができない。
【0007】
R.Matsuzakら(R.Matsuzak et al.,Scientific Reports(Nature),Vol.6(2016)23058)は、3Dプリンタで連続繊維補強複合材料を使用する方法であり、製作品の強度及び剛性を増加させる技術を開示しているが、連続繊維の束と樹脂を個別に供給して瞬間的に含浸させる工程を使用しており、3Dプリンタのノズル部分で熱を加えて供給される熱可塑性樹脂を溶かし、個別に供給される連続繊維に瞬間的に含浸させる方式は、含浸工程が追加されるため3Dプリンタ装置が肥大になって、生産速度を上げることが難しい問題がある。熱可塑性樹脂の含浸状態は、複合材料の強度及び剛性を左右するため、高温及び高圧の状態を長時間維持させて優れた含浸状態を維持する必要があり、3Dプリンタ装置の内部に高温及び高圧状態を作る装置を搭載したら、3Dプリンタ装置の維持及び活用を難しくし単価を上げることになり、また高速生産性の具現が難しく、低品質の問題を引き起こすことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本発明は前記問題点を解決しようと案出されたものであり、多様な熱可塑性射出製品の補強材の生産及び3Dプリンタを活用した繊維補強熱可塑性プラスチック部品の製作に適用可能な連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を簡単な方法で優れた機械的物性を有するように製造する方案を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、複数のヤーン(yarn)またはテープ(tape)の中間材が組糸になって棒状に形成された連続繊維補強熱可塑性複合材料を提供する。
【0010】
また、前記複合材料は、気孔率が1~10体積%であることを特徴とする連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を提供する。
【0011】
また、前記複合材料は、前記複合材料の断面を基準に下記数式1を満足することを特徴とする連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を提供する。
【0012】
【0013】
数式1において、P及びAは、それぞれ上記複合材料の断面の周縁の長さ及び断面の面積である。
【0014】
また、前記テープは0.1~1.0mmの厚さ及び3~30mmの幅を有することを特徴とする、連続繊維補強熱可塑性複合材料を提供する。
【0015】
また、前記組糸は、前記ヤーンまたはテープ2~10個が投入されて組糸になることを特徴とする、連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を提供する。
【0016】
また、前記連続繊維は、ガラス繊維または炭素繊維であることを特徴とする、連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を提供する。
【0017】
上記他の課題を解決するために、本発明は、(a)複数のヤーン(yahn)またはテープ(tape)状の中間材を加熱部に連続的に投入するステップと、(b)前記中間材を前記中間材に含まれている熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱し、少なくとも前記中間材表面の熱可塑性樹脂の一部を溶融させるステップと、(c)前記溶融された中間材の2個以上をノズルに通過させて組糸にして棒状に成形するステップと、を含む、連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法を提供する。
【0018】
また、前記中間材は、前記連続繊維の含有量が30~60重量%、及び前記熱可塑性樹脂の含有量が40~70重量%であることを特徴とする、連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法を提供する。
【0019】
また、前記ステップ(b)における加熱は、前記熱可塑性樹脂の融点より20~40℃高い温度で行われることを特徴とする、連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法を提供する。
【0020】
また、前記ノズルは断面形状に屈曲がないか、1以上の凹凸が形成されたことを特徴とする、連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法を提供する。
【0021】
また、前記ノズルを介して吐出される前記棒を回転させてらせん状に形成させることを特徴とする、連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法を提供する。
【0022】
また、前記ノズルは、出口端部の直径に対する入口端部の直径の比が1.5~5、及び出口端部の直径に対する長さの比が2~10であることを特徴とする、連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法を提供する。
【0023】
また、前記ノズルは多段に形成され、出口の方に向かって直径が減少することを特徴とする連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
このような本発明によれば、連続繊維が熱可塑性樹脂に予め含浸されているヤーン(yahn)またはテープ(tape)状の中間材を使用して組糸にする工程を用いることで、引抜成形装置及び熱可塑性樹脂含浸装置を備えなくても、簡単な組糸工程のみで高い生産性及び優れた品質を具現できる連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料及びその製造方法を提供することができる。
【0025】
また、本発明は、連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の製造方法は、組糸になる中間材の投入量及びノズル形状の変形のみで多様なサイズと断面形状を有するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による連続繊維補強熱可塑性複合材料の製造過程を示すフローチャートである。
【
図2】本発明による連続繊維補強熱可塑性複合材料の製造過程を示す模式図である。
【
図3】本発明で使用される中間材の各形態に応じて加熱装置に投入される様子を示す写真である。
【
図4】本発明の多様な内径、長さ、及び断面形状を有するノズルを例示的に示す図である。
【
図5】本発明によって製造された連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料の多様な形状を示す写真である。
【
図6】本発明の一実施形態によるノズル内部の断面を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるノズルの形状を示す図である。
【
図8】本発明の試験例における曲げ強度を測定する様子を示す写真である。
【
図9】本発明の実施例10による中間材の断面の写真である。
【
図10】本発明の実施例10による棒状の複合材料の断面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。本発明を説明するにあたって、関連する公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明確にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。明細書全体にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」という際、これは特に反対する記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素を更に含むことを意味する。 本発明者らは、多様な熱可塑性射出製品の補強材の生産及び3Dプリンタを活用した繊維補強熱可塑性プラスチック部品の製作に適用可能な連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を簡単な方法で優れた機械的物性を有するようにする方法について研究を重ねた結果、連続繊維が熱可塑性樹脂に予め含浸されているヤーン(yahn)またはテープ(tape)状の中間材を使用して組糸にする工程を使用することで、引抜成形装置及び熱可塑性樹脂含浸装置を備えなくても、簡単な組糸工程のみで高い生産性及び優れた品質を具現し得ることを発見し、本発明に至った。
【0028】
よって、本発明は、複数のヤーン(yahn)またはテープ(tape)の中間材が組糸になって棒状に形成された連続繊維補強熱可塑性複合材料を開示する。
【0029】
本発明による連続繊維補強熱可塑性複合材料の製造は、(a)複数のヤーン(yahn)またはテープ(tape)状の中間材を加熱部に連続的に投入するステップと、(b)前記中間材を前記中間材に含まれている熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱し、少なくとも前記中間材表面の熱可塑性樹脂の一部を溶融させるステップと、(c)前記溶融された中間材の2個以上をノズルに通過させて組糸にして棒状に成形するステップと、を含んで行われる。
【0030】
以下、本発明による連続繊維補強熱可塑性複合材料の製造過程を介して本発明を詳細に説明する。
【0031】
図1及び
図2は、本発明による連続繊維補強熱可塑性複合材料の製造過程を示すフローチャート及び模式図である。
【0032】
図1及び
図2を参照すると、本発明による連続繊維補強熱可塑性複合材料の製造方法は、ノズルが備えられた加熱装置を用いて、(a)中間材を加熱装置の加熱部に投入するステップ(S100)と、(b)中間材を溶融させるステップ(S200)と、(c)溶融した中間材をノズルに通過させるステップ(S300)と、を含む。
【0033】
本発明において、加熱装置100に投入される中間材200は、連続繊維が補強された熱可塑性複合樹脂であって、熱可塑性樹脂に特に制限されないが、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂などが使用されてもよく、好ましくはポリプロピレン樹脂を含む。それによって、前記中間材が費用対比の強度及び衝撃吸収性能をいずれも向上させるのに有利である。前記ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン単独またはポリプロピレンと他の種類のモノマーが共重合された樹脂を含んでもよく、例えば、ポリプロピレン単独重合樹脂、プロピレン-エチレン共重合樹脂、プロピレン-ブテン共重合樹脂、エチレン-プロピレン-ブテン共重合樹脂、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるいずれかを含む。
【0034】
また、前記連続繊維は、樹脂の強度及び剛性を向上させるための繊維強化複合材料の製造において、当業界で一般的に使用される材料であってもよいが、好ましくは、ガラス繊維または炭素繊維である。
【0035】
前記連続繊維補強熱可塑性樹脂複合中間材200を構成する連続繊維は、内部で途切れずに連続した形状で存在することを意味する。例えば、UDシート(unidirection sheet)内の連続繊維のように、上記連続繊維は連続工程で製造されたものであってもよい。よって、上記中間材はこのような連続工程に連続繊維が連続的に供給されて製造される連続繊維補強熱可塑性樹脂複合中間材である。
【0036】
図3は、本発明で使用される中間材の各形態によって加熱装置に投入される様子を示す写真である。
【0037】
図3を参照すると、本発明において、前記中間材はヤーン(yahn)(図
3(A))またはテープ(tape)(図
3(B))状である。
【0038】
上記ヤーンは、複合材の技術分野で一般的には連続繊維が補強されたヌードル(noodle)状の熱可塑性複合材料を意味し、一般的に引抜成形されて販売される複合材料が使用される。例えば、ヤーンは熱可塑性複合材料の市場でよく販売される長繊維複合素材(LTF)の生産過程の途中で製造される中間材であって、本発明では直径1~3mmのサイズを有するものが好ましく使用される。
【0039】
上記テープ状は、例えば、シート状の複合材がスリッティング(slitting)されたものであり、本発明では0.1~1.0mmの厚さ及び3~20mmの幅を有するものが好ましく使用されるが、より好ましくは、0.2~0.8mmの厚さ及び5~25mmの幅を有するものが好ましく使用され、更に好ましくは、0.3~0.7mmの厚さ及び5~20mmの幅を有するものが使用され、最も好ましくは、0.4~0.6mmの厚さ及び5~15mmの幅を有するものが使用される。前記テープ状の中間材の幅が過度に大きければ、前記加熱装置に投入する際に複合材がしわくちゃになるか、工程中に繊維が途切れる現象が発生する虞がある。
【0040】
本発明では、このような連続繊維が熱可塑性樹脂に予め含浸されているヤーン(yahn)またはテープ(tape)状の中間材を使用して組糸にする工程を使用することで、引抜成形装置及び熱可塑性樹脂含浸装置を別途に備えていないことになる。
【0041】
ここで、前記ヤーンまたはテープは、前記ヤーンの直径またはテープの直径及び幅の範囲で前記加熱装置に2~10個が同時に投入されてもよいが、好ましくは3~8個、より好ましくは3~6個が同時に投入される。組糸にする中間材の投入量(ヤーンまたはテープの個数)が増加するほど曲げ強度が減少する傾向を示し、組糸効率が低下する可能性があるが、本発明では、後述する実験の結果、3~6個が投入されて組糸になったガラス繊維強化ポリプロピレン棒において、前記投入量の範囲で常に300MPa以上の高い曲げ強度を示し、構造用補強筋として十分に使用可能であることを確認した。
【0042】
一方、前記中間材200は、前記連続繊維が30~60重量%、及び前記熱可塑性樹脂が40~70重量%の含有量比で形成される。前記連続繊維の含有量が一定範囲に満たない場合、求められる剛性補強効果の具現が難しい虞があり、その含有量が過度であれば、組糸及びノズル吐出工程の際に樹脂の粘度が上昇して成形が困難になる虞がある。
【0043】
このようなヤーンまたはテープ状の中間材200は、互いに絡み合わずに加熱装置100の加熱部に投入されるよう、多数のボビンクリール(bobbin creel)300に巻き取られている状態で連続的に解かれて加熱装置100に投入される。
【0044】
前記加熱装置100の加熱部に投入された中間材200は、加熱部で加熱されて溶融される。つまり、前記中間材200に含まれている熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱して、少なくとも前記中間材200の表面の熱可塑性樹脂の一部を溶融させることになり、これを介して複数個の中間材200は予備組糸になる。
【0045】
この際、前記加熱部100の温度は、中間材200を構成する熱可塑性樹脂の融点以上に設定されるべきであるが、好ましくは、当該熱可塑性樹脂の融点より20~40℃高い温度である。例えば、融点160℃のポリプロピレン樹脂の場合、加熱部100の温度は180~220℃に設定してもよい。加熱部100の温度が融点未満であるか、融点に過度に近接して設定されれば、複合材料の表面の熱可塑性樹脂が完全に解けていない状態でノズルに投入されて、組糸性能が低下し、機械的物性が低下する虞があり、加熱部100の温度が過度に高く設定されれば、工程コストの増加に比べ機械的物性の増加効果が大きくない虞がある。
【0046】
このような前記加熱部100の熱源としては特に制限されないが、例えば、ハロゲンランプ、熱風機、レーザヒーターなどが熱源として使用されてもよい。
【0047】
前記加熱部100で溶融されて予備組糸になった中間材は、ノズル400を通過して最終組糸になって、棒状に成形される。つまり、加熱部100を通過し少なくとも表面の熱可塑性樹脂が溶融された中間材がノズル400に投入されて、ノズル内部の断面積が加熱部の断面積よりも減少し、圧力を受けることで組糸になって棒状に成形される。
【0048】
このようなノズル400の材質としては、特に制限されないが、例えば、リン(P)を0.05~0.5重量%含有するリン青銅(phosphor bronze)素材で加工されて耐熱性及び耐食性が優秀でありながら耐摩耗性に優れた(硬度100HB以上)ものが使用されてもよい。また、ノズル400内部の表面が研磨されて、平均表面粗さRaが1μm以下の水準に精密に仕上げられたものが使用されてもよいが、この場合、ノズル400を通過する複合材料がノズル400内部で圧着される際、複合材料とノズル面との間の滑りの過程で摩擦による材料の損傷を最小限に抑えることができる。
【0049】
本発明において、前記ノズル400は
図4に示すように、加熱装置100に取り外し可能で、多様な内径、長さ、及び断面形状で製作されたものが使用され、多様な出口の口径が適用されることで、中間材200の投入量に合わせて成形される棒状の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料500の断面のサイズを変化させることができる。一方、
図4において、(d)及び(i)は、ノズルの内部断面が入口の端部から出口の端部に向かって次第に狭くなる形状を示している。
【0050】
また、前記ノズル400において、内径断面の形状が凹凸のない円形のような単純な形態(
図5(A)及び
図5(D)参照)のみならず、円形の周縁に凹凸、例えば、リブ(rib)や溝(groove)が形成されたノズルを適用したり、吐出される棒を回転させて引き出す場合、形成される棒の表面に螺旋の模様またはねじれ形状を形成させることができる(
図5(B)及び
図5(C)参照)。
【0051】
このようなノズル400の多様な形状によって、最終的に製造される複合材料は、断面を基準に下記数式1を満足することができる。
【0052】
【0053】
数式1において、P及びAはそれぞれ前記複合材料の断面の周縁の長さ及び断面の面積である。
【0054】
一方、本発明において、ノズル400の内部断面は入口の端部から出口の端部に向かって次第に狭くなる形状であるが、本発明に基づいてヤーンまたはテープ状の中間材の組糸効率を考慮する場合、好ましくは、出口端部の直径L1に対する入口端部の直径L2の比が1.5~5、及び出口端部の直径L1に対する長さL3の比が2~10であることが使用される(
図6を参照)。
【0055】
他方、ノズル400を通過する際に、複合材料の圧密による負荷が原因で発生する生産性の低下、及び圧密が十分に行われないことで発生する気孔率の増加による機械的物性の低下を改善し得るノズルシステムが考慮される。つまり、本発明において、前記ノズル400は多段に形成され、出口の方に行くほど直径が減少するものが使用されて、複合材料の圧密時間を調節することで、圧密が円滑に行われながら機械的物性をより向上させるようにすることができる(
図7を参照)。
【0056】
このような本発明によって製造された連続繊維補強熱可塑性複合材料500は、一定水準、つまり、1~10体積%水準の気孔率を有するが、好ましくは、1~5体積%水準の気孔率を有する。1体積%未満の気孔率を有するように製造する場合は、必要以上の温度に加熱することが要求されるが、これは最終的に製造される棒状の複合材料500において、更なる強度の向上を成し遂げずに生産性の低下に繋がる虞がある。また、10体積%を超過する気孔率を有するように製造する場合は、生産性は向上するが、求められる機械的物性を満足することが難しい。
【0057】
以上、本発明によって製造される連続繊維補強熱可塑性複合材料は、従来の不良率が高い多数のロール成形機を使用せずに、ノズルを利用してヤーンまたはテープ状の中間材を使用して組糸にする工程を使用することで、引抜成形装置及び熱可塑性樹脂含浸装置を備えずに、簡単な組糸工程のみで、高い生産性及び優れた品質を具現することができる。
【0058】
また、本発明による複合材料は、連続繊維が熱可塑性樹脂に予め含浸されているヤーン(yahn)またはテープ(tape)状の中間材を使用して組糸にする工程で製造されるため、小規模多品種の生産が必要な製品群で高い生産性と安価なコストで、補強筋用材料、3Dプリンタ用材料など、各種用途に合わせた棒状の複合材料の製品を製作することができるようになる。
【0059】
以下、本発明の実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0060】
実施例1
連続繊維補強熱可塑性樹脂複合中間材(ガラス繊維強化ポリプロピレン、ガラス繊維の含有量:50wt%)であって、それぞれヤーン状(直径:1.2mm)に用意し、加熱装置の加熱部に6個を投入(
図3(A)を参照)した後、熱を加えてノズルを通過させて組糸にして成形し、棒状の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料(直径約7mm)を製造した。加熱部の温度は180℃、生産速度は0.5m/sに設定した。
【0061】
実施例2
中間材をテープ状(厚さ:0.5mm、幅:12mm)に用意し、加熱装置の加熱部に3個を投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で棒状の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を製造した。
【0062】
実施例3
実施例2で中間材を4個投入したことを除いては、実施例2と同様の方法で棒状の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を製造した。
【0063】
実施例4
実施例2で中間材を5個投入したことを除いては、実施例2と同様の方法で棒状の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を製造した。
【0064】
実施例5
実施例2で中間材を6個投入(
図3(B)を参照)したことを除いては、実施例2と同様の方法で棒状の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を製造した。
【0065】
実施例6
実施例3で加熱部の温度を170℃に設定したことを除いては、実施例3と同様の方法で棒状の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を製造した。
【0066】
実施例7
実施例3で加熱部の温度を190℃に設定したことを除いては、実施例3と同様の方法で棒状の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を製造した。
【0067】
実施例8
実施例3で加熱部の温度を200℃に設定したことを除いては、実施例3と同様の方法で棒状の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を製造した。
【0068】
実施例9
実施例3で加熱部の温度を210℃に設定したことを除いては、実施例3と同様の方法で棒状の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を製造した。
【0069】
実施例10
実施例3で加熱部の温度を220℃に設定したことを除いては、実施例3と同様の方法で棒状の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料を製造した。
【0070】
試験例
前記実施例1~10によって製造された棒状の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料に対し、下記方法に従って曲げ強度(
図8を参照)及び気孔率を測定し、その結果を下記表1に示した。この際、実施例5による中間材の断面の写真、及び棒状の複合素材の断面の写真をそれぞれ
図9及び
図10に示した。
【0071】
[曲げ強度の測定方法]
曲げ強度の測定は、ASTM D4474の試験規格を準拠して行っており、
図8のように製作された棒状の連続繊維補強熱可塑性樹脂複合材料に3点曲げ荷重を印加して、最大荷重点を測定した。
【0072】
[気孔率の測定方法]
気孔率の測定は、ASTM D2734の試験規格を準拠して行っており、下記数式2に従って測定し、計算した。複合材料の理論的な理想密度と実験的に測定した実測密度を比較することにより、下記数式2によって計算される。互いに異なるサンプルを利用して3回以上測定した後、平均値で気孔率を計算した。
【0073】
【0074】
【0075】
表1、
図9、及び
図10を参照すると、直径1.2mm水準のヤーン状の中間材、または厚さ0.5mm及び幅12mm水準のテープ状の中間材を3~6個組糸にして製造された複合材料の場合、5体積%以下の水準の良好な気孔率を示しながら、殆どの曲げ強度が300MPa以上で優れた機械的物性を示すことが分かる。ただし、加熱部の温度が熱可塑性樹脂の融点に近い場合(実施例6を参照)、曲げ強度が相対的に低下し、加熱部の温度が一定水準以上であれば、温度上昇に対比して曲げ強度の上昇の程度が大きくないことから、本発明による組糸工程には好ましい加熱温度の範囲が存在することが分かる。
【0076】
これまで本発明の好ましい実施例を詳細に説明した。本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せずに、他の具体的な形態に容易に変形することができることを理解できるはずである。
【0077】
よって、本発明の範囲は、上述した詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味、範囲及びその均等概念から導き出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されるべきである。