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▶ キノイン・ジヨージセル・エーシユ・ベジエーセテイ・テルメーケク・ジヤーラ・ゼー・エル・テーの特許一覧

特許7340534トレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Bを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】トレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Bを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/41 20060101AFI20230831BHJP
   C07C 59/72 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 31/5575 20060101ALN20230831BHJP
   A61P 7/02 20060101ALN20230831BHJP
   A61P 9/10 20060101ALN20230831BHJP
   A61P 9/12 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
C07C51/41
C07C59/72
A61K31/5575
A61P7/02
A61P9/10 103
A61P9/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020547125
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 HU2019050007
(87)【国際公開番号】W WO2019171093
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P1800089
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(73)【特許権者】
【識別番号】594129552
【氏名又は名称】キノイン・ジヨージセル・エーシユ・ベジエーセテイ・テルメーケク・ジヤーラ・ゼー・エル・テー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】イレーン・ホルトバージ
(72)【発明者】
【氏名】イシュトバーン・ラースローフィ
(72)【発明者】
【氏名】ゾルターン・ヴァルガ
(72)【発明者】
【氏名】イムレ・ユハシュ
(72)【発明者】
【氏名】イモラ・リッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジュジャンナ・カルドス
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522839(JP,A)
【文献】特表2011-506599(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0152548(US,A1)
【文献】特表2007-501281(JP,A)
【文献】国際公開第2016/038532(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0045470(US,A1)
【文献】特表2016-504303(JP,A)
【文献】Organic Process Research & Development,2009年,Vol.13, No.2,pp.242-249
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Bを製造するための方法であって:
a.トレプロスチニルをメタノールに溶解させ、
b.工程a)の溶液に、ジエタノールアミンまたはそのメタノール溶液を添加し、
c.工程b)の反応混合物を、溶解するまで撹拌し、
d.工程c)における塩の形成の完了後に、非プロトン性溶媒の第1の部分を溶液に添加し、
e.工程d)の溶液をろ過し、
f.工程e)のろ液にトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Bを種晶添加し、
g.工程f)で得られた結晶懸濁液に、非プロトン性溶媒の第2の部分を添加し、
h.工程g)の懸濁液を、晶析が完了するまで撹拌し、
i.結晶を分離し、洗浄し、乾燥させる
工程を含み、
非プロトン性溶媒は、エーテル、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、およびアセトニトリルから選択される、前記方法。
【請求項2】
トレプロスチニルおよびジエタノールアミンの溶解を25~50℃で実行することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
トレプロスチニルおよびジエタノールアミンの溶解を30~40℃で実行することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
メチルターシャリーブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、アセトン、酢酸エチルまたはアセトニトリルを非プロトン性溶媒として適用することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
メチルターシャリーブチルエーテルを非プロトン性溶媒として適用することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
トレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Aまたは多形形態AおよびBの混合物を多形形態Bに転移させるための方法であって:
a.トレプロスチニルジエタノールアミン塩をメタノールに溶解させ、
b.工程a)の溶液に、非プロトン性溶媒の第1の部分を添加し、
c.工程b)の溶液をろ過し、
d.工程c)のろ液にトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Bを種晶添加し、
e.工程d)で得られた結晶懸濁液に、非プロトン性溶媒の第2の部分を添加し、
f.工程e)の懸濁液を、晶析が完了するまで撹拌し、
g.結晶を分離し、洗浄し、乾燥させる
工程を含み、
非プロトン性溶媒は、
エーテル、極性ケトン系溶媒、エステル系溶媒、およびアセトニトリルから選択される、前記方法。
【請求項7】
メチルターシャリーブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、アセトン、酢酸エチル、またはアセトニトリルを非プロトン性溶媒として適用することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
メチルターシャリーブチルエーテルを非プロトン性溶媒として適用することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
トレプロスチニルジエタノールアミンの溶解を25~50℃で行うことを特徴とする、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
トレプロスチニルジエタノールアミンの溶解を30~40℃で行うことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【化1】
式(II)のトレプロスチニルは、血小板凝集阻害および血管拡張作用を有する合成プロスタサイクリン誘導体である。それは、皮下、静脈内、または吸入および経口形態で適用することができる唯一のプロスタサイクリン誘導体である。
【0002】
その治療分野には、肺動脈高血圧症(Pulmonary Arterial Hypertension、PAH)(非特許文献1)および慢性血栓塞栓性肺高血圧症の治療が含まれる。
(非特許文献2、ダウンロード:2017年2月15日)。
【0003】
【化2】
【0004】
式(III)のトレプロスチニルナトリウム塩は、注射用用途ではRemodulin(登録商標)という名称で、吸入目的ではTyvaso(登録商標)という名称で市販されている。
【0005】
式(I)のトレプロスチニルジエタノールアミン塩は、錠剤として製剤化されたOrenitram(登録商標)の活性成分である。
【0006】
【化3】
【0007】
結晶質トレプロスチニルジエタノールアミン塩の2種の多形形態(形態AおよびB)は、特許文献1に最初に記載された。多形形態は、それらの融点、X線粉末回折パターン、DSC(示差走査熱量測定)およびTGA(熱重量分析)曲線、ならびにそれらの吸湿特性によって特徴付けられた。
【0008】
それには、以下のことが述べられていた。
・ 準安定性の形態Aは吸湿性であり、103℃で融解し、DSC曲線から103℃の吸熱ピークが示され、TGAによって示されるように、結晶は溶媒和された溶媒を含有しない。
・ より安定な形態Bは、はるかに吸湿性が低く、107℃で融解し、DSC曲線から107℃での吸熱ピークが示され、TGA曲線から100℃で最小限の重量損失が示される。
・ 形態AおよびBは、異なる粉末回折図を示す。より安定な結晶形態Bの特性ピークは17.2°シータである。
・ 様々な有機溶媒(1,4-ジオキサン、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、トルエン)で作られた懸濁液中の形態Aは、異なる温度で撹拌すると形態Bに転移する。
【0009】
刊行物、非特許文献3は、2種の多形体の物性およびそれらを製造するために実行された実験について詳細に記載している。最初に単離された準安定性の形態Aは、静置すると熱力学的により安定な形態Bに転移する。
様々な比率の幾つかの溶媒-貧溶媒(antisolvent)混合物が調査された。イソプロパノール:メチルtert-ブチルエーテル(TBME)の混合物からは主に形態Aが得られたが、結晶懸濁液を数時間撹拌すると、形態Aは形態Bに転移した。しかしながら、スケールアップしたときにはこの転移は起こらなかった。
溶液に形態Bが種晶添加され、幾つかの温度段階で制御されて冷却が極めて遅い場合、エタノール:アセトン=7:1からの晶析(収率85~90%)、およびエタノール:酢酸エチル=7:1混合物からの晶析(収率>90%)によって、形態Bが一様に生じる。
【0010】
特許文献2は、結晶質トレプロスチニルジエタノールアミン塩を介した高純度トレプロスチニルNa塩の製造について開示している。
トレプロスチニルの酢酸エチル中溶液に、無水エタノール、ジエタノールアミンを添加した。この透明な溶液を60~75℃で30~60分間撹拌し、55±5℃に冷却し、1%の量のトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Bを種晶添加した。析出した結晶を、温度を保持しながら1時間撹拌し、次いで結晶懸濁液を20~22℃に冷却した。16~24時間の撹拌後に結晶をろ過によって収集し、酢酸エチルで洗浄し、乾燥させ、収率は88%であった。
トレプロスチニルジエタノールアミン結晶の融点が>104℃であった場合、形態Bが得られた。
得られたトレプロスチニルジエタノールアミン結晶の融点が<104℃であった場合、形態AおよびBの混合物が存在していた。この場合、結晶混合物をエタノール:酢酸エチルの溶媒混合物で繰り返し晶析させた。
よって、上記の方法は頑健ではなく、再現性もなく、形態A+Bの混合物が得られることが多い。
【0011】
特許文献3は、トレプロスチニル、トレプロスチニルNa、およびトレプロスチニルジエタノールアミン塩の製造について記載している。
トレプロスチニルジエタノールアミン塩を製造するために、トレプロスチニルの酢酸エチル溶液を、ジエタノールアミンの無水エタノール中溶液で処理し、得られた懸濁液を還流温度に加熱し、すべての構成成分を溶解させながらその温度を15分間保持した。次いでこの溶液をゆっくりと、18時間の間、室温に冷却した。析出した白色の結晶物質をろ別し、酢酸エチルで洗浄し、50℃で24時間真空乾燥させた。収率76%。塩の物性は示されていない。
【0012】
特許文献4は、トレプロスチニル、トレプロスチニルNa、およびトレプロスチニルジエタノールアミン塩の製造について開示している。
ジエタノールアミンの水溶液に、トレプロスチニルのアセトン溶液を25~30℃で添加した。場合により、この溶液に種晶添加し、次いで温度を保持しながら15分間撹拌した。結晶懸濁液を0~5℃に冷却し、90分間の撹拌後に結晶をろ別し、洗浄し、乾燥させた。収率:79%、多形体A。
トレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形体Aの結晶をアセトン中に懸濁させ、次いで還流温度で約0.2%の量のエタノールを懸濁液に添加した。還流温度での6時間の撹拌の後、続いて25~30℃に冷却し、結晶をろ別し、洗浄し、乾燥させた。収率100%、多形体B。
上記の方法では、トレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形体Bは、二段階でしか製造できなかった。
【0013】
特許文献5に記載される方法では、塩を形成するために、トレプロスチニルおよびジエタノールアミンをエタノールおよび酢酸エチルに70℃で溶解させ、30分間の撹拌後に溶液を55℃に冷却し、1重量%のトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形体Bの種晶を種晶添加し、懸濁液を55℃で1時間撹拌し、室温に冷却した。16時間の撹拌後に結晶をろ別し、洗浄し、乾燥させた。収率:93%。結晶の物性(融点、X線粉末図、DSC、TGA)は示されていない。
上記の方法ではやはり、頑健ではなく再現性がないことがわかっている特許文献3の方法と同様に、エタノール-酢酸エチルの混合物が晶析に使用され、多くの場合、形態A+Bの混合物が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特許明細書WO2005/007081
【文献】特許明細書WO2009/078965
【文献】特許明細書WO2014/089385
【文献】特許明細書IN2014CH02963-A
【文献】特許明細書US2016/0152548
【非特許文献】
【0015】
【文献】Drugs、2012、72(18)2351-2363
【文献】http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Orphan_designation/2009/10/WC500005505.pdf
【文献】Organic Process&Development、2009、13、242-249(Crystallization Process Development for Stable Polymorph of Treprostinil;Batra,H.;Penmasta,R.;Phares,K.;Staszewski,J.;Tuladhar,S.M,;D.A.Walsh、United Therapeutics)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者らの目的は、結晶質トレプロスチニルジエタノールアミン塩を製造するための、頑健で再現性の良い方法を開発し、塩のより安定な多形形態Bを一段階でもたらすこと(すなわち、一連の種晶添加、貧溶媒添加、冷却、およびろ過を含む、一段階のトレプロスチニルジエタノールアミン塩の晶析)であった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
トレプロスチニルジエタノールアミン塩は、2種の多形形態に晶析し得ることが文献からわかっている。低い方の融点(融点103℃)を有する多形形態は準安定性の形態Aであり、一方、高い方の融点(融点107℃)を有するものは熱力学的により安定な形態Bであり、したがって、医薬活性成分を製造するには多形体Bが望ましい形態である。
【0018】
しかしながら、熱力学的により安定な形態Bの製造は容易な仕事ではなく:適切な溶媒-貧溶媒比を見出し、還流温度で溶解を実行し、形態Bの種晶添加を適用し、幾つかの温度段階で制御された方式での極めてゆっくりした冷却を行っても、この方法が、すべての場合において、より安定な形態Bをもたらすことが保証されない。文献によって示されるように、所定のパラメータに厳密に従っても、形態AおよびBが共に晶析し、望ましい多形体が、結晶形AおよびBの混合物から追加的な操作工程(晶析の繰り返し、結晶懸濁液の長い撹拌)の後に最終的に得られることがよく起こり得る。
【0019】
本発明者らは、文献のデータを整理し、様々な溶媒または溶媒混合物を使用することによって結晶形のうちどれが得られるのかを調査した。(表I.)
【0020】
【表1】
【表2】
【0021】
単純化されており、晶析の温度プロファイルを含有していない表Iから、以下の結論を導き出すことができる:
・ 特許文献1(1)の晶析方法によって、形態A、または形態A+Bの混合物が生じる。望ましい形態Bは、その後結晶懸濁液を数日撹拌することによって得ることができた。
・ 非特許文献3の刊行物(2)によれば:
○ 室内実験において、主として得られる形態Aおよびまた形態A+Bの混合物は、イソプロパノールと共にまたはイソプロパノール:メチルtert-ブチルエーテルの混合物と共に長く撹拌する効果に基づいて形態Bに十分に転移したが、スケールアップ中には形態Bを得ることができなかった。
○ イソプロパノール:メチルtert-ブチルエーテルの混合物からの晶析によって、形態Aがもたらされた。
○ EtOH:アセトンの混合物(1:7の比率の混合物)からの晶析によって、概して形態Bが生じるが、時として形態A+Bの混合物が得られた。その場合、形態Bの結晶が一様に得られるまで、晶析を繰り返さなければならなかった。方法では、溶液には結晶形態Bを種晶添加しなければならず、複雑な温度プロファイルに従わなければならず、全晶析には3日間かかった。しかしながら、溶媒比を少し変えただけで形態A+Bの混合物の晶析を引き起こすおそれがあったことから、方法は頑健ではない。室内実験において決定されたEtOH:アセトン=1:7の溶媒混合物の代わりに、EtOH:アセトン=1:10の混合物がスケールアップ中に選択されたことは、驚くべきことである。
○ EtOH:酢酸エチルの混合物(1:7の比率の混合物)からの晶析によって、概して形態Bが生じるが、ある場合には形態A+Bの混合物が得られた。その場合、形態Bの結晶が一様に得られるまで、晶析を繰り返さなければならなかった。方法では、溶液には結晶形態Bを種晶添加しなければならず、複雑な温度プロファイルに従わなければならず、全晶析には、より短い時間、約1.5日間を要した。しかしながら、方法は、この溶媒混合物でも頑健ではない。何故なら、溶媒比を少し変えただけで形態A+Bの混合物の晶析をもたらすおそれがあったからである。この方法でも、室内実験において最も適していることが見出された溶媒比(EtOH:酢酸エチル=1:7)ではなく、スケールアップには別の溶媒比(EtOH:酢酸エチル=1:8)が選択されたことは、驚くべきことである。
・ 特許文献2(WO2009/078965A1)(3)では、トレプロスチニルジエタノールアミン塩の晶析は、EtOH:酢酸エチル=1:7の混合物で実行された。形態Bが晶析しない場合、晶析を繰り返さなければならなかった。よって方法は頑健ではない。
・ 特許文献3(WO2014/089385A2)(4)では、トレプロスチニルジエタノールアミン塩の晶析は、EtOH:酢酸エチル=1:8の混合物で実行された。結晶形は特徴付けられていないが、文献データからこの方法が形態Bの製造には頑健ではないことがわかっている。
・ 特許文献4(5)によれば、トレプロスチニルジエタノールアミン塩は、形態Aをもたらすアセトン:水の混合物から晶析された。結晶形Aは、アセトン:EtOHの混合物中で撹拌すると、形態Bに転移した。
・ 特許文献5(US2016/0152548A1)(6)の方法では、トレプロスチニルジエタノールアミン塩は、EtOH:酢酸エチル=1:7の溶媒混合物で晶析された。記載によれば、形態Bが得られたが、文献データからこの方法が頑健ではないことがわかっている。
【0022】
しかしながら、工業的な実装には、頑健で単純であり、スケーラブルで再現性のある、実行しやすい科学技術が不可欠である。
【0023】
上記に鑑みて、熱力学的により安定な結晶質多形体Bの形態の式Iのトレプロスチニルジエタノールアミン塩を、あらゆる場合において一段階で再現性良くもたらす方法を開発することを目的とした。
【0024】
トレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Bを製造するための方法を開発するために、数多くの実験を実行した。本発明者らの目的は、多形体Bが単独で晶析するような溶媒を使用して塩の形成を行うことであった。
実験では、トレプロスチニル(II)1.0gを、選択された溶媒に溶解させた。この溶液に、ジエタノールアミン(IV)0.3gを添加し、反応混合物を35℃で30分間撹拌した。この均質な溶液に、貧溶媒の第1の部分を添加し、次いで混合物を室温に冷却し、トレプロスチニルジエタノールアミン塩(I)の多形体Bを種晶添加した。1~2時間の撹拌後に貧溶媒の第2の部分を結晶懸濁液に添加し、室温での撹拌をさらに16~24時間継続した。
トレプロスチニルジエタノールアミン(I)の結晶をろ別し、洗浄し、45℃で真空乾燥させた。結晶形は、DSCおよびX線粉末回折(XRPD)の調査によって決定した。
【0025】
驚いたことに、文献に記載された溶媒を使用すると形態AおよびBが両方形成されたのに対して、貧溶媒(メチルターシャリーブチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ジイソプロピルエーテル、アセトニトリル)のいずれかを有するメタノールから、形態Bのみが晶析することが見出された(X線粉末回折図については、図1を参照されたい)。
【0026】
【表3】
【0027】
トルエンは、トレプロスチニルジエタノールアミン塩を晶析させるのに適した貧溶媒ではないことに注意すべきである。トルエンを使用すると、結晶形態の塩を得ることができなかった。
トレプロスチニルジエタノールアミン塩の結晶質多形形態Bを製造するのに最も適した溶媒はメタノールであることが見出された。何故なら、この溶媒から晶析を実行すると、常に一様に形態Bが晶析するからである。
貧溶媒として、メチルターシャリーブチルエーテルを選択した。何故なら、技術的理由からこの溶媒が最も適していると判明したからである。
トレプロスチニルジエタノールアミン塩の形成は、メタノール-メチルターシャリーブチルエーテルを溶媒-貧溶媒混合物として使用することによって1g規模で4回繰り返し、次いで方法を、トレプロスチニル(II)70g(実施例7)から開始してスケールアップした。あらゆる場合において、塩の多形形態Bが一様に得られた。
【0028】
このように、本方法は、頑健で再現性があり、望ましい形態Bを一段階で与える。
加えて、本方法は、先行技術の方法で使用されていた、プログラムされた冷却が不要であるために、技術的により簡便である。
【0029】
本方法の頑健性をさらに正当化するために、トレプロスチニルジエタノールアミン塩の製造を1g規模で5回繰り返した。晶析の貧溶媒であるメチルターシャリーブチルエーテルの量は、広範に変動させた。
トレプロスチニル(II)をメタノール(4ml)に溶解させ、ジエタノールアミン(0.3g)をこの溶液に添加した。塩の形成の完了後、メチルターシャリーブチルエーテルの第1の部分を添加した(15ml)。溶液をろ過し、メチルターシャリーブチルエーテルの第2の部分を滴加して晶析を完了させた。
すべての場合において、XRPDおよびDSCによって証明されるようにトレプロスチニルジエタノールアミンの形態Bが晶析した。形態Bの特性ピーク、すなわち17.2°2シータがXRPDパターンに存在する一方で、形態Aの特性ピークは全く見られない。さらに、DSCは、すべての場合において105℃付近以上の温度で吸熱ピークを示している。
【0030】
【表4】
【0031】
晶析は、エタノール-酢酸エチルの溶媒-貧溶媒混合物も使用して実行した。この場合、文献データと一致して、形態A+Bの混合物が得られた(例13)。このトレプロスチニルジエタノールアミン塩の形態AおよびBの混合物をメタノール-メチルターシャリーブチルエーテルの溶媒混合物から晶析した場合、一様にこの塩の多形形態Bが得られた(例14)。
トレプロスチニルジエタノールアミン塩を水性メタノール(約30%の水)に溶解させ、アセトンでの析出を実行することによって、やはり多形形態Bを一様に得たが、収率は61%しかなかった(例15)。
トレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Bは、塩をメタノールに溶解させ、この溶液をメチルターシャリーブチルエーテルにより45℃で乳白色にし、次いで晶析を室温で完了させた場合でも得られた(収率87%)(例16)。
しかしながら、メタノール-メチルターシャリーブチルエーテルの溶媒混合物から-70℃で晶析させると、低融点で高吸湿性の結晶が得られた。この形態を多形形態Cと命名する(例17)。多形形態Cは、DSC曲線に基づくと融点86~88℃を有する安定性の低い形態であり、DSC管の中で、より安定で、より融点の高い(101~103℃)形態に転移する。
【0032】
上記に基づいて、本発明の主題は、トレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Bを製造するための方法であって:
a.トレプロスチニルをメタノールに溶解させ、
b.工程a)の溶液に、ジエタノールアミンまたはそのメタノール溶液を添加し、
c.工程b)の反応混合物を、溶解するまで撹拌し、
d.工程c)における塩の形成が完了したら、非プロトン性溶媒の第1の部分を溶液に添加し、
e.工程d)の溶液をろ過して不溶性の不純物を除去し、
f.工程e)のろ液にトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Bを種晶添加し、
g.工程f)で得られた結晶懸濁液に、非プロトン性溶媒の第2の部分を添加し、
h.工程g)の懸濁液を、晶析が完了するまで撹拌し、
i.結晶を分離し、洗浄し、乾燥させる
工程を含む、方法である。
【0033】
本発明のさらなる主題は、トレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Aまたは多形形態AおよびBの混合物を多形形態Bに一様に転移させるための方法であって:
a.トレプロスチニルジエタノールアミン塩をメタノールに溶解させ、
b.工程a)の溶液に、非プロトン性溶媒の第1の部分を添加し、
c.工程b)の溶液をろ過して不溶性の不純物を除去し、
d.工程c)のろ液にトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Bを種晶添加し、
e.工程d)の結晶懸濁液に、非プロトン性溶媒の第2の部分を添加し、
f.工程e)の懸濁液を、晶析が完了するまで撹拌し、
g.結晶を分離し、洗浄し、乾燥させる
工程を含む、方法である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、トレプロスチニルおよびジエタノールアミン、またはトレプロスチニルジエタノールアミン塩の溶解を、25~50℃、有利には30~40℃で行う。
非プロトン性溶媒に関しては、メチルターシャリーブチルエーテル、ジイソプロピルエーテルのようなエーテル、アセトンのようなケトン系溶媒、酢酸エチルのようなエステル系溶媒、またはアセトニトリル、好ましくはメチルターシャリーブチルエーテルを適用する。
溶媒(メタノール):貧溶媒比は、好ましくは1:4~20、より好ましくは1:5~15、さらにより好ましくは1:7~11である。
本発明による方法のある実施形態では、トレプロスチニルジエタノールアミン塩の結晶形態Bは、以下の方式で製造される。トレプロスチニルをメタノールに35℃で溶解させ、固体ジエタノールアミン塩基をそれに添加し、溶解するまで混合物を35℃で撹拌する。次いで、貧溶媒、メチルターシャリーブチルエーテルの第1の部分をそれに添加し、この溶液をろ過し、ろ液の溶液にトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Bを種晶添加し、混合物を室温で撹拌する。結晶懸濁液に貧溶媒の第2の部分を添加し、晶析が完了するまで混合物を室温で撹拌する。トレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態Aまたは多形形態AおよびBの混合物を、メタノール-メチルターシャリーブチルエーテルから再晶析させると、トレプロスチニルジエタノールアミン塩の形態Bが得られる。
【0035】
以前の方法と比較して、本方法の利点は以下の通りである:
・ 方法は、単純で頑健であり、スケーラブルで再現性が良い
・ それは、望ましい形態Bを一段階でもたらす
・ 複雑な加熱-冷却プロファイルが不要であるため、適用をスケールアップしやすい
・ 以下が不要である:後続の結晶形の転移
○ 晶析の繰り返し、および/または
○ 結晶懸濁液の長い撹拌、および/または
○ 複雑な加熱-冷却プロファイル
・ それは、望ましい、より安定な多形形態Bの再現性をもたらす
・ 方法は、以下によってトレプロスチニルジエタノールアミン塩の形態Bを得るのに等しく適している
○ トレプロスチニルおよびジエタノールアミン(IV)から開始する塩の形成、それに続く得られた塩の晶析
○ 晶析による、形態Aまたは形態A+Bの混合物の形態Bへの一様な転移。
【0036】
本発明の詳細を以下の実施例によって説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
本発明による方法に適用される測定の条件:
X線回折図:
開始位置[°2シータ]:2.0084
終了位置[°2シータ]:39.9864
測定の温度[℃]:25.00
アノードの材料:Cu
K-アルファ1[L]:1.54060
K-アルファ2[L]:1.54443
DSC:
機器:METTLER TOLEDO DSC1 STARe System、Stare basic V9.30
方法:開始温度:30℃
最終温度:150℃
加熱速度:5℃/分
量:2~6mg、穴開きアルミニウム坩堝(40μl)
NMR:
機器:Bruker Avance III 500MHz
溶媒:DMSO
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】溶媒としてのメタノールおよび様々な貧溶媒から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の様々な多形形態のX線粉末回折パターンを示す図である(例1~6):1.1:MeOH/メチルターシャリーブチルエーテル1.2:MeOH/アセトン1.3:MeOH/酢酸エチル1.4:MeOH/ジイソプロピルエーテル1.6:MeOH/アセトニトリル“A”:トレプロスチニルジエタノールアミンの多形形態A“B”:トレプロスチニルジエタノールアミンの多形形態B
図2】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのXRPDパターンを示す図である(実施例7)。
図3】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのDSC曲線を示す図である(ピーク:106.56℃、実施例7)。
図4】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのXRPDパターンを示す図である(実施例8)。
図5】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのDSC曲線を示す図である(ピーク:106.23℃、実施例8)。
図6】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのXRPDパターンを示す図である(実施例9)。
図7】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのDSC曲線を示す図である(ピーク:105.37℃、実施例9)。
図8】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのXRPDパターンを示す図である(実施例10)。
図9】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのDSC曲線を示す図である(ピーク:104.91℃、実施例10)。
図10】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのXRPDパターンを示す図である(実施例11)。
図11】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのDSC曲線を示す図である(ピーク:106.10℃、実施例11)。
図12】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのXRPDパターンを示す図である(実施例12)。
図13】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのDSC曲線を示す図である(ピーク:107.42℃、実施例12)。
図14】EtOH/酢酸エチルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態A+BのXRPDパターンを示す図である(例13)。
図15】EtOH/酢酸エチルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態A+BのDSC曲線を示す図である(ピーク:103.84℃および105.94℃、例13)。
図16】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのDSC曲線を示す図である(ピーク:107.34℃、例14)。
図17】MeOH/水/アセトンの混合物から晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのDSC曲線を示す図である(ピーク:106.56℃、例15)。
図18】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から40℃~50℃で晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態BのDSC曲線を示す図である(ピーク:106.23℃、例16)。
図19】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から-70℃で晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態CのXRPDパターンを示す図である(例17)。
図20】MeOH/メチルターシャリーブチルエーテルの混合物から-70℃で晶析させたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の多形形態CのDSC曲線を示す図である(ピーク:87.66℃および102.58℃、例17)。
図21】DMSO中500MHzで取得したトレプロスチニルジエタノールアミン塩の13CおよびH NMRデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
実施例
トレプロスチニルジエタノールアミン塩(I)
(1R,2R,3aS,9aS)-2-[2-ヒドロキシ-1-[3(S)-ヒドロキシオクチル]-2,3,3a,4,9,9a-ヘキサヒドロ-1H-ベンゾ[f]インデン-5-イルオキシ]酢酸ジエタノールアミン塩の製造
【0039】
実施例1(JIM-562/1)
トレプロスチニル(II)1gをメタノール4mlに室温で溶解させた。この溶液にジエタノールアミン(IV)0.3gを添加し、反応混合物を35±5℃で30分間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル(TBME)15mlを添加した。この溶液をろ過し、多形形態Bの結晶約10mgを種晶添加し、懸濁液を室温で2時間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル20mlを滴加した。撹拌を室温で16~24時間継続し、次いで結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:1.15g(91%)、無色結晶、多形形態Bに相当する。
【0040】
実施例2(JIM-562/2)
トレプロスチニル(II)1gをメタノール4mlに室温で溶解させた。この溶液にジエタノールアミン(IV)0.3gを添加し、反応混合物を35±5℃で30分間撹拌し、次いでアセトン15mlを添加し、この溶液をろ過し、多形形態Bの結晶約10mgを種晶添加し、室温で2時間撹拌し、次いでアセトン30mlを滴加した。懸濁液を室温で16~24時間撹拌し、次いで結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:0.92g(73%)、無色結晶、多形形態Bに相当する。
【0041】
実施例3(JIM-562/3)
トレプロスチニル(II)1gをメタノール4mlに室温で溶解させた。この溶液にジエタノールアミン(IV)0.3gを添加し、反応混合物を35±5℃で30分間撹拌し、次いで酢酸エチル15mlを添加し、この溶液をろ過し、多形形態Bの結晶約10mgを種晶添加し、室温で2時間撹拌し、次いで酢酸エチル20mlを滴加した。懸濁液を室温で16~24時間撹拌し、次いで結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:1.16g(92%)、無色結晶、多形形態Bに相当する。
【0042】
実施例4(JIM-562/4)
トレプロスチニル(II)1gをメタノール6mlに室温で溶解させた。この溶液にジエタノールアミン(IV)0.3gを添加し、反応混合物を35±5℃で30分間撹拌し、次いでジイソプロピルエーテル(DIPE)10mlを添加し、この溶液をろ過し、多形形態Bの結晶約10mgを種晶添加し、室温で2時間撹拌し、次いでジイソプロピルエーテル20mlを滴加した。懸濁液を室温で16~24時間撹拌し、次いで結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:1.20g(95%)、無色結晶、多形形態Bに相当する。
【0043】
実施例5(JIM-562/5)
トレプロスチニル(II)1gをメタノール6mlに室温で溶解させた。この溶液にジエタノールアミン(IV)0.3gを添加し、反応混合物を35±5℃で30分間撹拌し、次いでトルエン10mlを添加し、この溶液をろ過し、多形形態Bの結晶約10mgを種晶添加し、室温で2時間撹拌し、次いでトルエン30mlを滴加した。晶析は起こらなかった。
【0044】
実施例6(JIM-562/6)
トレプロスチニル(II)1gをメタノール4mlに室温で溶解させた。この溶液にジエタノールアミン(IV)0.3gを添加し、反応混合物を35±5℃で30分間撹拌し、次いでアセトニトリル15mlを添加し、この溶液をろ過し、多形形態Bの結晶約10mgを種晶添加し、室温で2時間撹拌し、次いでアセトニトリル20mlを滴加した。懸濁液を室温で16~24時間撹拌し、次いで結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:1.15g(91%)、無色結晶、多形形態Bに相当する。
【0045】
例1~6に記載される通りに製造されたトレプロスチニルジエタノールアミン塩の粉末X線回折図を図1に例示する。
【0046】
実施例7
トレプロスチニル(II)70gをメタノール280mlに25±5℃で溶解させた。この溶液にジエタノールアミン(IV)20.73gを添加し、反応混合物を35±5℃で30分間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル(TBME)1050mlを添加した。この溶液をろ過して、撹拌器を備えた器具に入れ、多形形態Bの結晶約700mgを種晶添加し、室温で2時間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル1400mlを滴加した。撹拌を室温で16~24時間継続し、次いで結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:87.2g(98%)、無色結晶、多形形態Bに相当する。
DSC曲線を図3に、X線粉末回折図を図2に示す。
トレプロスチニルジエチルアミン塩の13CおよびH NMRデータを図21に例示する。
【0047】
実施例8
トレプロスチニル(II)1gをメタノール4mlに25±5℃で溶解させた。この溶液にジエタノールアミン(IV)0.3gを添加し、反応混合物を35±5℃で30分間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル(TBME)15mlを添加した。この溶液をろ過して、撹拌器を装着した器具に入れ、多形形態Bの結晶約10mgを種晶添加し、室温で2時間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル20mlを滴加した。撹拌を室温で16~24時間継続し、次いで結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:1.15g(91%)、無色結晶、多形形態Bに相当する。
DSC曲線を図5に、X線粉末回折図を図4に示す。
【0048】
実施例9
トレプロスチニル(II)1gをメタノール4mlに25±5℃で溶解させた。この溶液にジエタノールアミン(IV)0.3gを添加し、反応混合物を35±5℃で30分間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル(TBME)15mlを添加した。この溶液をろ過して、撹拌器を装着した器具に入れ、多形形態Bの結晶約10mgを種晶添加し、室温で2時間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル25mlを滴加した。撹拌を室温で16~24時間継続し、次いで結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:1.15g(91%)、無色結晶、多形形態Bに相当する。
DSC曲線を図7に、X線粉末回折図を図6に示す。
【0049】
実施例10
トレプロスチニル(II)1gをメタノール4mlに25±5℃で溶解させた。この溶液にジエタノールアミン(IV)0.3gを添加し、反応混合物を35±5℃で30分間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル(TBME)15mlを添加した。この溶液をろ過して、撹拌器を装着した器具に入れ、多形形態Bの結晶約10mgを種晶添加し、室温で2時間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル29mlを滴加した。撹拌を室温で16~24時間継続し、次いで結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:1.16g(92%)、無色結晶、多形形態Bに相当する。
DSC曲線を図9に、X線粉末回折図を図8に示す。
【0050】
実施例11
トレプロスチニル(II)1gをメタノール4mlに25±5℃で溶解させた。この溶液にジエタノールアミン(IV)0.3gを添加し、反応混合物を35±5℃で30分間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル(TBME)15mlを添加した。この溶液をろ過して、撹拌器を装着した器具に入れ、多形形態Bの結晶約10mgを種晶添加し、室温で2時間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル9mlを滴加した。撹拌を室温で16~24時間継続し、次いで結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:1.02g(81%)、無色結晶、多形形態Bに相当する。
DSC曲線を図11に、X線粉末回折図を図10に示す。
【0051】
実施例12
トレプロスチニル(II)1gをメタノール4mlに25±5℃で溶解させた。この溶液にジエタノールアミン(IV)0.3gを添加し、反応混合物を35±5℃で30分間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル(TBME)15mlを添加した。この溶液をろ過して、撹拌器を装着した器具に入れ、多形形態Bの結晶約10mgを種晶添加し、室温で2時間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル5mlを滴加した。撹拌を室温で16~24時間継続し、次いで結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:0.95g(75%)、無色結晶、多形形態Bに相当する。
DSC曲線を図13に、X線粉末回折図を図12に示す。
【0052】
実施例13
トレプロスチニル(II)1gをエタノール5mlに室温で溶解させた。この溶液にジエタノールアミン(IV)0.3gを添加し、反応混合物を35±5℃で30分間撹拌し、次いで酢酸エチル15mlを添加し、この溶液をろ過し、多形形態Bの結晶約10mgを種晶添加し、室温で2時間撹拌し、次いで酢酸エチル(EtOH:EtOAc=1:7)20mlを滴加した。懸濁液を室温で16~24時間撹拌し、次いで結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:1.1g(87%)、無色結晶、多形形態AおよびBの混合物。
DSC曲線を図15に、X線粉末回折図を図14に示す。
【0053】
実施例14
トレプロスチニルジエタノールアミン塩(I、多形形態AおよびBの混合物)1gをメタノール4mlに35±5℃で溶解させた。この均質な溶液にメチルターシャリーブチルエーテル15mlを室温で添加し、混合物に多形形態Bの結晶約10mgを種晶添加し、室温で2時間撹拌し、次いでメチルターシャリーブチルエーテル20mlを滴加した。撹拌を室温で16~24時間継続し、次いで結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:1.23g(97%)、無色結晶、多形形態Bに相当する。
DSC曲線を図16に示す。
【0054】
実施例15
トレプロスチニルジエタノールアミン塩0.5gを、メタノール2mlおよび水0.6mlの混合物に室温で溶解させた。この均質な溶液にアセトン20mlを室温で滴加し、乳白色の溶液に多形形態Bの結晶約5mgを種晶添加し、室温で2時間撹拌し、次いでアセトン10mlを滴加した。20時間の撹拌後に結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:0.39g(61%)、無色結晶、多形形態Bに相当する。
DSC曲線を図17に示す。
【0055】
実施例16
トレプロスチニルジエタノールアミン塩0.5gをメタノール2mlに45±5℃で溶解させた。この均質な溶液にメチルターシャリーブチルエーテル20mlを45±5℃で添加し、混合物に多形形態Bの結晶約5mgを種晶添加した。乳白色の溶液を室温に冷却した。20時間の撹拌後に結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:0.55g(87%)、無色結晶、多形形態Bに相当する。
DSC曲線を図18に示す。
【0056】
実施例17
トレプロスチニルジエタノールアミン塩0.5gをメタノール5mlに-70℃で溶解させた。この均質な溶液にメチルターシャリーブチルエーテル30mlを-70℃で添加し、混合物に多形形態Bの結晶約5mgを種晶添加した。2時間の撹拌後に乳白色の溶液を放置して室温に温めた。うまくろ過できない結晶をろ別し、洗浄し、45±5℃で真空乾燥させた。
収率:0.31g(49%)、多形形態Cに相当する。
DSC曲線を図20に、X線粉末回折図を図19に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21