(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】単一粒子自動ラマン捕捉分析
(51)【国際特許分類】
G01N 15/02 20060101AFI20230831BHJP
G01N 21/65 20060101ALI20230831BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230831BHJP
C07K 5/08 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
G01N15/02 A
G01N21/65
G01N21/64 E
C07K5/08
(21)【出願番号】P 2020570740
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2019066106
(87)【国際公開番号】W WO2019243375
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-03-28
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522109157
【氏名又は名称】インペリアル カレッジ イノベーションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンズ, モリ―
(72)【発明者】
【氏名】ペンデルス, イェレ
(72)【発明者】
【氏名】ペンス, アイザック
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0004559(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02930496(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0260513(US,A1)
【文献】米国特許第07515269(US,B1)
【文献】国際公開第2017/144886(WO,A1)
【文献】Daniel P. Cherney, Travis E. Bridges, and Joel M. Harris,Optical Trapping of Unilamellar Phospholipid Vesicles: Investigation of the Effect of Optical Forces on the Lipd Membrane Shape by Confocal-Raman Microscopy,Analytical Chemistry,Analytical Chemistry,2004年09月01日,Vol.76、No.17,4920-4928
【文献】JellePenders, Isaac J. Pence, et al,Single Particle Automated Raman Trapping Analysis,Nature Communications,Nature Communications,2018年10月15日,Vol.9、Nr:1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/02
G01N 15/00
G01N 21/62~21/74
C07K 1/00~19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子分析の自動化された方法であって、
(i)電磁放射ビームを粒子搬送媒体上に集束させて、前記ビーム内の候補粒子を捕捉するための粒子捕捉ゾーンを画定することと、
(ii)
粒子捕捉を示す閾値を超える所定のスペクトルプロファイルの存在を検出するのに十分なラマン応答データ収集手順を実行することを含む、粒子捕捉をテストするための第1のデータ取得手順を実行することと、
(iii)粒子捕捉が検出されない場合、ステップ(ii)を繰り返すことと、
(iv)粒子捕捉が検出された場合、前記捕捉された粒子から粒子データを取得することと、
(v)前記粒子を前記粒子捕捉ゾーンから放出するために、
電磁放射ビーム強度をサブ捕捉レベルまで低減することと、
(vi)前記粒子搬送媒体中の連続する粒子に対してステップ(i)~(v)を繰り返すことと、を含む方法。
【請求項2】
ステップ(iv)は、
少なくとも1つの分析モダリティを使用して前記粒子データを捕捉するための第2のデータ
取得手順を実行することをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のデータ取得手順は、前記第1のデータ取得手順よりも大きな信号対雑音比を容易にするラマン応答データ収集手順を実行することを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(iv)で取得された前記粒子データは、前記第1のデータ取得手順からのデータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(v)は、前記
電磁放射ビーム強度をサブ捕捉レベルまで低減した後、以前に捕捉された粒子が前記粒子捕捉ゾーンから周囲の媒体に移送されるのに十分な遅延期間待機することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のデータ取得手順は、より高い信号対雑音比のための長期間のデータ捕捉、スペクトル的に拡張されたデータの収集、前記第1のデータ取得手順とは異なるモダリティを使用するデータの収集、平均化のための複数の期間のデータ捕捉、信号対雑音比を増大するための変更されたレーザ出力によるデータの収集のうちのいずれか1つ以上を含むデータ収集手順を実行することを含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項7】
前記異なるモダリティは、蛍光スペクトルおよび光吸収スペクトルのうちの1つ以上を含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(ii)で使用された前記閾値を判定するための較正手順をさらに含み、前記較正手順は、(i)前記ビームに対する標的粒子のラマン応答と(ii)前記ビームに対する標的粒子をともなわない前記粒子搬送媒体のラマン応答とを区別するスペクトル特徴を確立することとを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記較正手順は、前記区別を提供する前記ラマン応答の1つ以上のスペクトル特徴を判定することを含み、前記スペクトル特徴は、1つ以上のピーク振幅と、複数のピーク振幅と、前記ラマン応答スペクトルの1つ以上の部分下の領域と、前記ラマン応答スペクトルの少なくとも一部のプロファイルと、を含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(ii)で使用された前記閾値を判定するための較正手順をさらに含み、前記較正手順は、その中に粒子をともなわない前記粒子搬送媒体から基準スペクトルを取得することと、その中に粒子をともなう前記粒子搬送媒体からテストスペクトルを取得することと、前記基準スペクトルと前記テストスペクトルとの差を判定することと、前記差が前記基準スペクトルのノイズ閾値よりも大きい場合、粒子が捕捉されたと判定することと、をさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記ノイズ閾値よりも大きく、したがって(i)前記ビームに対する標的粒子のラマン応答と(ii)前記ビームに対する標的粒子をともなわない前記粒子搬送媒体のラマン応答とを区別する前記テストスペクトルにおいてスペクトル特徴を確立することをさらに含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
捕捉された粒子のサイズを判定するために、前記第1および/または第2のデータ取得手順で取得された前記第1のデータおよび/または前記第2のデータを使用することをさらに含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項13】
捕捉された粒子のサイズを判定することは、粒子捕捉が検出されたときに、粒子をその中にともなわない前記粒子搬送媒体に特徴的なスペクトル応答信号の減少を判定することを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
粒子をその中にともなわない前記粒子搬送媒体
に特徴的な前記スペクトル
応答信号は、前記粒子搬送媒体内に分散されたマーカからのスペクトル信号を含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記マーカは、過塩素酸イオンを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(iv)の後、捕捉された粒子において化学変化を開始し、かつステップ(iv)を繰り返すこと、または
ステップ(v)の後、前記粒子搬送媒体中の前記粒子において化学変化を開始し、かつステップ(i)~(v)を繰り返すこと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(iv)を繰り返すことにより、捕捉された粒子における化学変化をモニタリングすること、または
ステップ(i)~(v)を繰り返すことにより、前記粒子搬送媒体中の前記粒子における化学変化をモニタリングすること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(v)は、前記ビームを無効化または遮断することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
粒子捕捉/データ取得装置であって、
電磁放射ビームを生成するための電磁放射源と、
前記ビームを粒子捕捉ゾーンに向けるための集束素子と、
前記粒子捕捉ゾーンからの信号応答を検出するように構成された検出器と、
請求項1~18のいずれかに記載の方法を実施するように構成された制御システムと、
を備える、粒子捕捉/データ取得装置。
【請求項20】
コンピュータプログラムであって、電子データ送信またはコンピュータ可読媒体によって配布可能であり、前記プログラムが粒子捕捉/データ取得装置にロードされるときに、前記装置に請求項1~
18のいずれか一項に記載の手順を実行させるように適合されたコンピュータプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕捉された粒子からのデータ取得および捕捉された粒子の分析を可能にするための電磁ビームにおける粒子の捕捉および保持に関する。
【背景技術】
【0002】
溶液中のナノ粒子などの粒子の分析は、広範囲の研究分野のために重要なステップである。本開示の文脈における「粒子」という表現は、マイクロ粒子およびナノ粒子、ならびに電磁ビーム勾配力捕捉効果を使用して一般に捕捉することができる他の任意の物体、特にリポソームやポリマーソームなどの薬物送達システム用のポリマー粒子および小胞、ならびに細胞外小胞やエクソソームを包含することを意図する。
【0003】
粒子のサイジングと組成分析は、通常、ある範囲のレーザベース回折および分光技術を組み合わせることによって実現される。動的光散乱(DLS)およびナノ粒子追跡分析(NTA)は、一般に粒子集団サイズ分布1~3を判定するために採用されているが、組成分析は、粒子の種類およびサイズに応じて、とりわけ質量分析(MS)技術および(フーリエ変換)-赤外線(IR)分光法4~6を使用して実行することができる。サイジングと組成分析のための複数の技術への依存は、これらが濃度、調合、感度などの試料要件において異なるという欠点をもたらす。特にナノ粒子の場合、集団の不均一性はその機能と適用性に深刻な影響を与える可能性があり、これらの従来のバルク分析技術7、8では解決することができない。
【0004】
本発明の目的は、データ取得およびその後の分析のために粒子を捕捉および保持する能力の改善を容易にする方法および装置を提供することである。
【0005】
一態様によれば、本発明は、粒子分析の自動化された方法であって、
(i)電磁放射ビームを粒子搬送媒体上に集束させて、ビーム内の候補粒子を捕捉するための粒子捕捉ゾーンを画定することと、
(ii)粒子捕捉をテストするための第1のデータ取得手順を実行することと、
(iii)粒子捕捉が検出されない場合、ステップ(ii)を繰り返すことと、
(iv)粒子捕捉が検出された場合、捕捉された粒子から粒子データを取得することと、
(v)粒子を粒子捕捉ゾーンから放出するために、光ビーム強度をサブ捕捉レベルまで低減することと、
(vi)粒子搬送媒体中の連続する粒子に対してステップ(i)~(v)を繰り返すことと、を含む方法を提供する。
【0006】
ステップ(iv)は、少なくとも1つの分析モダリティを使用して粒子データを捕捉するための第2のデータ取得手順を実行することをさらに含み得る。ステップ(iv)で取得された粒子データは、第1のデータ取得手順からのデータを含み得る。第1のデータ取得手順は、粒子捕捉を示す閾値を超える所定のスペクトルプロファイルの存在を検出するのに十分なラマン応答データ収集手順を実行することを含み得る。ステップ(v)は、光ビーム強度をサブ捕捉レベルまで低減した後、以前に捕捉された粒子が粒子捕捉ゾーンから周囲の媒体に移送されるのに十分な遅延期間待機することをさらに含み得る。第2のデータ取得手順は、第1のデータ取得手順よりも大きな信号対雑音比を容易にするラマン応答データ収集手順を実行することを含み得る。第2のデータ取得手順は、より高い信号対雑音比のための長期間のデータ捕捉、スペクトル的に拡張されたデータの収集、第1のデータ取得手順とは異なるモダリティを使用するデータの収集、平均化のための複数の期間のデータ捕捉、信号対雑音比を増大するための変更されたレーザ出力によるデータの収集のうちのいずれか1つ以上を含むデータ収集手順を実行することを含み得る。異なるモダリティは、蛍光スペクトルおよび光吸収スペクトのうちの1つ以上を含み得る。
【0007】
本方法は、ステップ(ii)で使用された閾値を判定するための較正手順をさらに含み得、較正手順は、(i)ビームに対する標的粒子のラマン応答と(ii)ビームに対する標的粒子をともなわない粒子搬送媒体のラマン応答とを区別するスペクトル特徴を確立することとを含む。較正手順は、区別を提供するラマン応答の1つ以上のスペクトル特徴を判定することを含み、スペクトル特徴は、1つ以上のピーク振幅と、複数のピーク振幅と、ラマン応答スペクトルの1つ以上の部分下の領域と、ラマン応答スペクトルの少なくとも一部のプロファイルと、を含み得る。
【0008】
本方法は、ステップ(ii)で使用された閾値を判定するための較正手順をさらに含み得、較正手順は、その中に粒子をともなわない粒子搬送媒体から基準スペクトルを取得することと、その中に粒子をともなう粒子搬送媒体からテストスペクトルを取得することと、基準スペクトルとテストスペクトルとの差を判定することと、差が基準スペクトルのノイズ閾値よりも大きい場合、粒子が捕捉されたと判定することと、を含む。本方法は、ノイズ閾値よりも大きく、したがって(i)ビームに対する標的粒子のラマン応答と(ii)ビームに対する標的粒子をともなわない粒子搬送媒体のラマン応答とを区別するテストスペクトルにおいてスペクトル特徴を確立することをさらに含み得る。
【0009】
本方法は、捕捉された粒子のサイズを判定するために、第1および/または第2のデータ取得手順で取得された第1のデータおよび/または第2のデータを使用することをさらに含み得る。捕捉された粒子のサイズを判定することは、粒子捕捉が検出されたときに、粒子をその中にともなわない粒子搬送媒体に特徴的なスペクトル応答信号の減少を判定することを含み得る。粒子搬送媒体のスペクトル信号特性は、粒子搬送媒体内に分散されたマーカからのスペクトル信号を含み得る。マーカは、過塩素酸イオンを含み得る。
【0010】
本方法は、ステップ(iv)の後、捕捉された粒子において化学変化を開始し、かつステップ(iv)を繰り返すこと、またはステップ(v)の後、粒子搬送媒体中の粒子において化学変化を開始し、かつステップ(i)~(v)を繰り返すこと、をさらに含み得る。
【0011】
本方法は、ステップ(iv)を繰り返すことにより、捕捉された粒子における化学変化をモニタリングすること、またはステップ(i)~(v)を繰り返すことにより、粒子搬送媒体中の粒子における化学変化をモニタリングすること、をさらに含み得る。
【0012】
ステップ(v)は、ビームを無効化または遮断することを含み得る。
【0013】
別の態様によれば、本発明は、粒子捕捉/データ取得装置を提供し、粒子捕捉/データ取得装置は、
電磁放射ビームを生成するための電磁放射源と、
ビームを粒子捕捉ゾーンに向けるための集束素子と、
粒子捕捉ゾーンからの信号応答を検出するように構成された検出器と、
上記で定義された方法のいずれかを実施するように構成された制御システムと、を備える。
【0014】
別の態様によれば、本発明は、コンピュータプログラムを提供し、コンピュータプログラムは、電子データ送信またはコンピュータ可読媒体によって配布可能であり、プログラムが粒子捕捉/データ取得装置にロードされるときに、装置に上記で定義された方法のいずれか1つの手順を実行させるように適合されたコンピュータプログラムコード手段を備える。
【0015】
本発明の実施形態をこれより、例として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】粒子分析用の自動粒子捕捉システムの高レベルの概略図を示す。
【
図3】
図1のシステムを使用した自動粒子捕捉およびデータ取得のためのプロセスフローを図示するフロー図を示す。
【
図4】
図3のプロセスフローのさまざまな段階の概略図を示す。
【
図5】
図1のシステムを使用したリポソームおよびポリマーソームの組成分析の結果を示し、(a)は、DPPCリポソーム(緑μ±σ、n=649)および50%dーDPPCリポソーム(赤μ±σ、n=340)のオフセット平均ラマンスペクトル)である。(b)は、期待値最大化に基づくガウス2成分混合分析であって、44%がDPPC、56%がd-DPPCとして分類された、DPPCおよびd-DPPCリポソーム(n=828)の50-50v/v%混合物のCーDピーク位置(2105cm
-1)でのCCDカウントのバイモーダルヒストグラムである。(c)は、DPPCおよびdーDPPCリポソームの50-50v/v%混合物のウォード法クラスタリング樹状図(n=828)である。(d)は、ABAポリマーソームの(赤、99=N)およびABA-ヘパリンポリマーソーム(青、N=98)のオフセット平均ラマンスペクトルであり、挿入図は930および1070cm
-1付近のヘパリン信号を示す矢印をともなう領域のクローズアップを示す。(e)は、ABAおよびABA-ヘパリンポリマーソーム(n=263)、成分1(上)および成分2(下)の50-50v/v%混合物の2成分PCA分解分析である。(f)は、ウォード法クラスタリング後のPCAスコア(赤のABA様、青のABA-ヘパリン様)である。
【
図6】
図1のシステムを使用するポリスチレンナノ粒子の官能化分析の結果であって、(a)は、PSナノ粒子(青の球体)の官能化パスの概略図である。アミン官能基粒子は、2-イミノチオラン(トラウト試薬)で処理され、スルフヒドリル官能基粒子になる(I)。5、5’-ジチオ-ビス-(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)を添加すると、ジスルフィド結合が形成され(II)、システイン-チロシン-チロシン(CYY)からなるトリペプチドと交換され得る(III)。トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)をジスルフィド含有粒子に添加すると、スルフヒドリル官能基が戻る。(b)は、スルフヒドリル官能基(黒、n=201)、ジスルフィドおよびニトロ安息香酸(赤、n=119)、およびジスルフィドおよびCYY官能基粒子(青、n=122)をともなう捕捉されたPS粒子の平均オフセットラマンスペクトルである。特徴的なS-Sストレッチ(452、512cm
-1)、チロシンリング呼吸(C=C840、860cm
-1)、およびS-H曲げ(936cm
-1)振動を示す帯域。(c)は、TCEPをジスルフィドおよびニトロ安息香酸官能基(オレンジ、n=119)、ならびにCYY官能基(緑、n=115)に添加した後のスルフヒドリルのスルフヒドリル官能基(黒、n=201)回復をともなう捕捉されたPS粒子の平均オフセットラマンスペクトルである。
【
図7】
図1のシステムを使用した溶液マーカを介したサイジング分析の結果を示し、(a)は、溶液中の、50nm(赤の円形)、100nm(青の三角形)、200nm(オレンジのひし形)のポリスチレン粒子、および50mM過塩素酸ナトリウムを含むPBSバックグラウンド(黒の四角)の150個の捕捉の過塩素酸比の散布図である。(b)は、線形フィット(R
2=0.99)が赤で示された、対数粒子体積に対する平均過塩素酸比である。(c)は、50nm(赤、53.6±13.1nm)、100nm(青、83.0±15.7nm)、および200nm(オレンジ、162.8±41.5nm)のポリスチレン粒子のDLS数分布である。(d~f)は、DLS(暗)によって測定され、50nm(d)、100nm(e)、および200nm(f)のポリスチレン粒子のそれぞれのガウスフィットを含むラマンスペクトル(明)からの較正曲線から計算された粒子サイズのヒストグラムである。
【
図8】
図1のシステムを使用するオンライン動的反応モニタリングからの結果であって、(a)は、プロパルギルアミンとのEDC-NHS結合を介したアルキン部分をともなうPSナノ粒子の官能化およびその後のアジド酢酸とのCuAAC反応によるトリアゾール生成物の形成の概略図である。(b)は、カルボン酸官能基(黒、n=100)をともない、かつアルキン官能化後(青、n=100)の捕捉されたPS粒子のオフセット平均ラマンスペクトルである。2129cm
-1において最大値をともなうアルキンピーク領域のクローズアップを示す挿入図。(c)は、単一粒子捕捉集団の動態のアルキンピーク強度(青の球体、2129cm
-1)、アジドピーク強度(赤の四角、2116cm
-1)、およびトリアゾール生成物(黄色の三角形、1331cm
-1)の経時的な動的トレースであり、(d)は、単一粒子動態である。
【
図9】ラマンスペクトルの単一の検出された特徴を使用して、
図1のシステムの第1のセットアップ/較正手順のアルゴリズムを示す。
【
図10】ラマンスペクトルの二重の検出された特徴を使用した、
図1のシステムの第2のセットアップ/較正手順のアルゴリズムを示す。
【
図11】
図1のシステムの自動セットアップ/較正手順のアルゴリズムを示す。
【
図12】SPARTA(以下で定義)ポリマーソーム組成分析、PLSDA分類の結果であり、ABAおよびABA-ヘパリンポリマーソーム(n=263)の50-50v/v%混合物の3成分PLSDA分類分析を示す。(a)は、PLSDA成分1、2、および3(上から下)であり、(b)は、成分1および2のPLSDAスコア、ならびに純粋なABA(赤、n=99)およびABA-ヘパリン(青、n=98)捕捉実行を使用してモデル化した、ポリマーソーム様ABA(赤)およびABA-ヘパリン(青)の分類である。
【
図13】捕捉数に対する分類結果を示す。PCAベースのウォード法クラスタリングによってABA(赤)およびABA-ヘパリン(青)の集団に分類された、ABAおよびABA-ヘパリンポリマーソーム(n=263)の50-50v/v%混合物の捕捉数に対するPCA成分1。プロットは、経時的な両方の粒子の捕捉のランダムな分布を示す。
【
図14】連続官能化中のポリスチレン粒子のDLS数分布の結果を示す。スルフヒドリル官能基(μ±σ)(黒、157.5±34.9nm)、ジスルフィドおよびニトロ安息香酸(赤、166.1±46.6nm)、ならびにジスルフィドおよびCYY官能基粒子(青、156.6±43.5nm)をともなうPS粒子に対するDLS数分布のガウスフィット、ジスルフィドおよびニトロ安息香酸官能基(オレンジ、162.1±36.6nm)、ならびにCYY官能基(緑、160.3±40.9nm)へのTCEPの添加後のスルフヒドリルの回復。
【
図15】過塩素酸ラマンスペクトルの結果を示す。各々に50mM過塩素酸ナトリウムを補った、PBS(黒、n=234)および200nmポリスチレンビーズ(赤、n=300)の平均ラマンスペクトル。過塩素酸は、938cm
-1において単一の明確な溶液マーカピークを付与する。
【
図16】クマリン色素クリックの蛍光分析結果を示す。3-アジド-7-ヒドロキシクマリン(Abs/Em=404/477nm)とプロパルギルアミンで官能化された200nmポリスチレン粒子との銅触媒クリック反応により、トリアゾール生成物の形成時に蛍光が発生し、(n=3、μ±σ)クリック条件(青)、色素がない場合(赤)または硫酸銅がない場合(緑)、蛍光に変化はない。
【
図17】合成後0、7、25日目でのリポソーム、ハイブリッド小胞、ヤヌス型デンドリマーソーム(平均±標準偏差)のSPARTA分析結果を示し、複数の脂質およびポリマー成分で構成された粒子の経時的な安定性研究のためのSPARTAの能力を示す。
【
図18】個別に捕捉されたハイブリッド小胞の成分スコアを示すSPARTAスペクトルの非負最小二乗分析を示す。合成直後および7日目に、集団の一貫したスコアが得られた。25日目までに、これらの粒子は捕捉効率が低下するように見え、脂質とデンドリマーのスコア比が一貫して高くなった。これは、粒子の安定性の変化を示す。
【
図19】非悪性乳房上皮細胞株MCF10A(緑、n=151)および2つの乳癌細胞株MDA-MB-231(赤、n=84)およびJIMT1(青、n=169)に由来するEVのSPARTAスペクトル(平均±標準偏差)を示す。
【
図20】A)非悪性乳腺上皮細胞株MCF10A(緑、n=151)および2つの乳癌細胞株MDA-MB231(赤、n=84)およびJIMT1(青、n=169)に由来するEVに対するSPARTA測定値のPLSDA多変量解析、およびB)PLSDA成分の疑似スペクトルLV1およびLV2を示す。
【
図21】可変PA/PC比(平均±標準偏差)をともなうキュボソームのSPARTA分析の結果を示し、これは、PA組成の増加とともに徐々に減少するPCからの718cm-1での第三次アミンピークの明確な存在を示す。
【
図22】オンライン動的反応モニタリング機能の一部として、SPARTAを使用して酵素反応速度を測定する方法を示す。キュボソームに80、40、または20U/mLをスパイクした。変換は、エンドポイントコントロール(15%PC~15%PA)を含む、PCからPAへの酵素濃度依存変換を示す単一粒子スケールでSPARTAを使用して視覚化することができる。
【0017】
本明細書に記載されているのは、単一粒子ベースでサイズ分析および/または組成分析を提供するように構成されたラマン分光法に基づく包括的なナノ粒子分析システムまたはプラットフォームである。サイズ分析および組成分析は同時に実行され得る。ラマン分光法は、入射レーザ光子の非弾性散乱に基づく無標識組成データを提供し得る確立された特性化技術であり、複合3D画像化9を使用する場合に、単純な粉末から細胞までの試料に適用されてきた。得られたラマンスペクトルは、試料の化学成分の分子指紋を提供する。基板の寄与を交絡させることなく個々の粒子を調べるために、ラマン分光法を光捕捉と組み合わせて適用することができる。粒子は、レーザ集束によって生成された放射圧により浮揚または捕捉され得る10、11。レイリー限界(r≪λ)におけるナノ粒子は、溶液と比較した粒子の分極率の違いにより捕捉され、それが双極子勾配力につながる。この力は、レーザ強度に比例し、焦点ボリュームからの距離が増加するにつれて減少し、レーザ12の焦点で粒子を光捕捉に向ける。ラマン分光法の場合、これは理想的である。粒子トラップをもたらすレーザを同時に使用して、粒子のラマンスペクトルを取得することができるためである。これは、微小液滴13、14やシリコンナノ粒子15などのさまざまなマイクロサイズおよびナノサイズの粒子を調査する幅広い研究のきっかけとなった。特に興味深いのは、ラマン分光法を使用して、リポソーム12、16やポリマーソーム17、18などの薬物送達システムのために配される小胞構造の組成および不均一性を分析することである。これらの粒子は、さまざまな組成、サイズ範囲、および物理的特性をともなう小胞を得るために、広範囲の両親媒性分子から作ることができる16、19。ラマン分光法を使用して、数マイクロメートルサイズのポリマーソームの組成を分析できることが以前に示されている20。しかし、最近の進歩にもかかわらず、単一粒子分析のためにラマン分光法を使用することには、大きな制限がある。つまり、粒子をレーザ内に手動で捕捉するか、または基板から持ち上げる必要があるという事実である21、22。これにより、プロセスが遅く、かつ労働集約的であるため、分析し得る粒子の数が大幅に制限される。粒子スループットが非常に限られているため、十分な統計的検出力をともなう組成の不均一性の調査も妨げられる。
【0018】
粒子組成分析に加えて、以前の研究では、光学的に捕捉された粒子のスペクトルを長期間にわたってモニタリングすることにより、粒子表面で発生する動的なイベントまたは反応を調査する可能性が示された。例として、重合反応の観察23、固相粒子支援ペプチド合成24、またはリポソーム中の分析物濃度の測定25が含まれる。捕捉された粒子のさらなる分析は、過塩素酸イオンなどの溶液マーカの添加によるマイクロメートルサイズのリポソームに対する光捕捉力の影響の調査を含む12。加えて、過塩素酸イオンは、周囲の溶質濃度を測定するための内部標準として使用されており25、脂質膜に対して不浸透性であることが示されている26。
【0019】
単一ナノ粒子の大規模な積分サイズおよび組成特性化の必要不可欠性に対処するために、本発明者らは、単一粒子自動ラマン捕捉分析(本明細書では、SPARTAと称する)のための分析システムまたはプラットフォームを開発した。SPARTAは、粒子の標識付けや改変を必要とせずに、溶液中の個々のナノ粒子の高スループットルーチン分析を可能にする。ここでは、リポソームとポリマーソームシステムの組成の徹底分析、およびSPARTAプラットフォームを使用して混合物を分離し、粒子の不均一性を調査する機能を実証する。粒子組成分析に加えて、SPARTAプラットフォームは、ポリスチレンナノ粒子の連続的な官能化のモニタリング、および粒子表面におけるクリック反応の動態の追跡に理想的であることを示す。最後に、高スループットの測定機能を活用することにより、過塩素酸の添加を根本的に新しい方法で使用し得、捕捉された粒子の単一粒子サイジングを可能にし得ることを実証する。SPARTAは、試料間および試料内の不均一性、複合混合物、オンライン反応モニタリング、および単一粒子の統合された同時サイジングを詳細に分析するための、多数のエキサイティングな新しい用途をもたらす。
【0020】
図1は、特にラマン分光分析に適用可能な、粒子分析用の自動粒子捕捉システムの高レベルの概略図を示す。システム1は、電磁放射線源2を備え、これは、本例では、光源であり、より好ましくはレーザである。二色性ミラー3は、集束素子8を介してレーザ放射線4を分析用の試料5に向ける。照射された試料5からの電磁放射線6は、二色性ミラー3を介して検出器7に向けられる。レーザビームの波長での試料5からの弾性散乱放射線は、検出器7で好適なフィルタ(図示せず)によってフィルタ除去され、ラマン散乱放射線は、検出器7の検出デバイスまで通過する。
【0021】
基板10は、分析用の試料5を受容するために提供され、例えば、試料の蒸発を制限するために、好適なカバー11で覆われてもよい。使用される場合、カバー11は、電磁放射線4、6に対して透過的である。別の例では、カバーは、システムの対物レンズであり得る集束素子8を備え得、その結果、試料は、対物レンズと直接接触することができる(例えば、水浸)。試料5は、内部の分析用の粒子15を搬送し得る任意の流体媒体12を備える。「搬送し得る」という表現は、流体媒体12自体の中またはそれによる粒子の移動または移送を可能にしながら、媒体内の粒子15の懸濁液を提供し得る任意の流体媒体12を包含することを意図する。例えば、粒子15の移動/移送は、媒体12内での拡散によるものであってもよく、もしくは媒体の流れまたは両方の組み合わせによるものであってもよい。図示の例では、試料5の体積が基板10上で概して静的である場合、拡散は、衝突ビーム4に対する粒子15の移動の主要なメカニズムであり得る。他の配置では、基板10は、流体媒体12およびその中に懸濁された粒子15の移動をマイクロ流体制御するように構成され得、例えば、マイクロ流体チャネルを使用して、試料を所定の位置に移動させる。好ましくは、流体媒体12は、液体である。液体は、水または少量の溶媒(例えば、エタノールまたはジメチルスルホキシド)の添加をともなってもよい水ベースの緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水または4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸)などの「非不透明」または「非大量散乱」液体であり得る。
【0022】
制御システム16は、レーザ2および検出器7に結合されて、以下に説明する機能を可能にする。
【0023】
図2に見られるように、集束された電磁放射ビーム(例えば、レーザビーム20)は、粒子15が懸濁している媒体12を通過する。ビーム20は、その焦点にウエスト部分21を有し、これは、粒子15が光捕捉効果または単一ビーム勾配力捕捉効果を使用して保持され得る粒子取り込みゾーン22を画定する。高度に集束されたビーム20は、例えば粒子15などの微細な誘電体物体を物理的に保持および移動するために、例えば屈折率の不一致に依存する引力または反発力を提供する。捕捉ビームの波長よりも小さい直径のナノ粒子の場合、メカニズムは双極子吸収および光の再放射に基づくと理解することができる。
【0024】
重要な態様は、粒子捕捉、粒子の存在の検証、および捕捉された粒子15からのデータ取得のための自動化されたプロセスを、個々の粒子だけでなく、数十、数百、または数千の粒子に対して連続して繰り返し提供する方法である。
図3は、自動粒子捕捉およびデータ取得のプロセスフローを示し、
図4は、プロセスフローにおけるさまざまな段階の概略図を示す。
【0025】
第1のステップでは、電磁放射ビーム20(以下、「レーザビーム」20として例示される)がオンに切り替えられ、試料5に焦点を合わせて、ビームウエスト21における粒子捕捉ゾーン22を画定する(ステップ31)。第1のデータ取得手順(ステップ32)において、ラマン散乱放射線信号6が、検出器7で検出される。このラマン信号の少なくとも一部(例えばスペクトル部分)は、粒子15が捕捉されたかどうかを判定するために閾値に対してテストされる(ステップ33)。粒子捕捉テストの詳細については、以下で考察する。ラマン信号から粒子が検出されない場合、および粒子捕捉が所定の回数を超えて失敗しなかった場合(ステップ34)、プロセスが繰り返されて、閾値に対してラマン信号をテストする(ステップ32)。第1のデータ取得手順(ステップ32)が連続する間には短い捕捉待機期間(ステップ35)があり得、粒子15が、一般的な移送メカニズム、例えば媒体12内の粒子15の拡散によって、粒子捕捉ゾーン22に移動する時間を与えることができる。
【0026】
ステップ33で、粒子15がラマン信号で検出された場合、第2のデータ取得手順が実行される(ステップ36)。第2のデータ取得手順もまた、ラマン散乱放射線信号を検出することを含み得る。好ましくは、第2のデータ取得手順(ステップ36)は、第1のデータ取得手順(ステップ32)よりもはるかに高品質のデータ信号取得手順を含む。より高品質のデータ捕捉は、例えば、(i)第1のデータ収集手順よりも高い信号対雑音比を得るための長期間のデータ捕捉、(ii)スペクトル的に拡張されたデータ、すなわち、より広い周波数帯域幅または周波数の選択にわたるデータの収集、(iii)異なるモダリティ、例えば、ラマン分光信号以外のモダリティを使用したデータの収集、(iv)平均化のための複数期間のデータ捕捉、(v)信号対雑音比を高めるためのレーザ出力の変更、(vi)第1のデータ取得手順からのデータの信号対雑音比を改善するための、第1のデータ取得手順のデータに追加され、それと結合されたデータの収集のうちの任意の1つ以上を含み得る。そのような他のモダリティは、例えば、蛍光信号/スペクトル、吸収信号/スペクトル、および他の光学分光技術を含み得る。第2のデータ取得手順36の間に取得されたデータは、続いて捕捉されたデータセットを用いて後で分析するために格納されてもよく(ステップ36a)、またはリアルタイムもしくは疑似リアルタイムでオンザフライで処理/分析されてもよい。
【0027】
第2のデータ取得手順(ステップ36)の後、ビーム20は無効にされ(ステップ37)、捕捉された粒子15が、脱出待機期間または脱出遅延期間(ステップ38)の間に粒子捕捉ゾーン22から脱出することを可能にする。
【0028】
一配置では、第1のデータ取得手順(ステップ32)は、1~2秒の期間のラマンスペクトルデータを収集することを含み、第2のデータ取得手順(ステップ36)は、5~10秒の期間のラマンスペクトルデータを収集することを含む。これらの時間は、さまざまな要因、例えば、組成またはサイズによる粒子のラマン散乱の強度、結果として生じるデータの必要な信号対雑音比、または結果として生じるデータの他の外部制約または要件を最適化するように調整することができる。
【0029】
より一般的には、第1のデータ取得手順(ステップ32)は、粒子が存在しない状態で取得されるスペクトルプロファイルと比較して、閾値を超えるペクトルプロファイルを感知することによって、粒子の存在の検出を可能にするのに十分な程度(例えば、積分期間にわたって)にラマン応答信号を収集することを含み得る。スペクトルプロファイルは、1つのピークもしくは複数のピークの振幅および/もしくは形状、1つまたは1つ以上のピーク下の領域、ラマンスペクトルの1つ以上の部分下の領域、スペクトルの少なくとも一部の形状、またはいくつかの他の特徴を含み得る。
【0030】
プロセスループ(ステップ31~35)は、ステップ34でテストされた、所定の回数i(例えば、サンプリング期間の数にわたって)繰り返すことができる。許容される反復回数は、いくつかの要因に従って判定することができ、所定の反復回数(ステップ39)内で粒子を検出できない場合、後で説明するように、プロセス全体または再較正プロセスの再開を引き起こす可能性がある。
【0031】
ステップ37におけるビーム20の無効化は、例えば、レーザのオンおよびオフにするためのレーザの直接制御によって、またはビームを遮断または他の方法で減衰させることによって達成され得る。これに関して、特にステップ37において、ビーム20を完全に遮断する必要はなく、単にビームをサブ捕捉レベル、すなわち、ビーム勾配力捕捉効果によって粒子捕捉ゾーン22に粒子を保持するには不十分な強度レベルまで低減または減衰することに留意されたい。これは、例えば、レーザから出射し、ミラー3の前のビーム経路内に挿入される変調デバイス(図示せず)によって達成され得る(
図1)。
【0032】
いくつかの場合において、第1のデータ収集手順中に捕捉されたデータは、第2のデータ収集手順の要件にも有用である、十分な信号対雑音比を有し得る。そのような場合、システムは、第2のデータ取得手順(ステップ36)の代わりに、第1のデータ取得手順のデータを必要な高信号対雑音比データとして使用/取得し、後の分析またはリアルタイム処理のためにこのデータを保存するように構成され得る(ステップ36a)。
【0033】
図4は、
図3に示す手順のより詳細な態様を示す。画像42は、媒体12と、その中に分散された粒子15と、を含む試料5を表す。画像43は、粒子捕捉ゾーン22において粒子を捕捉できなかったビーム20を表す。この失敗は、検出器7によって検出されたラマン信号43aが、粒子の存在を示すであろうラマンスペクトル43aにおける所定の帯域43cで所定の閾値43bを達成できないことによって示される。対照的に、画像44は、粒子捕捉ゾーン22において粒子15aを捕捉したビーム20を表し、これは、ラマンスペクトルの所定の帯域44cで閾値44bを超えて上昇するラマン信号44aの検出によって示される。画像45は、第2のデータ取得手順36を表し、その間に捕捉された粒子15aが粒子捕捉ゾーン22内に長期間保持され、その間により高品質のデータ信号45aの取得が行われ、例えば、上で考察されたように、より高い信号対雑音比および/または他の特性を有する。画像42に戻る制御パス46は、レーザビーム20の無効化、および最初に捕捉された粒子の放出後に新しい粒子を捕捉するための粒子捕捉プロセスへの回帰を表す。
【0034】
セットアップ/較正
粒子捕捉プロセスの開始前に、システム1は、ステップ33の粒子捕捉検出条件を判定するための好適な較正手順でセットアップされ得る。このセットアップは、手動で実行されてもよく、自動化されたプロセスを使用して実行されてもよい。粒子捕捉検出条件は、ラマンスペクトルの単一の検出された特徴または複数の検出された特徴に依存し得る。
図9に示すように、試料5に対して実行されるセットアップ/較正プロセスは、システム1にいくつかの収集パラメータを入力することから始まる(ステップ91)。これらの収集パラメータは、(i)迅速な収集統合期間、すなわち、ステップ32の第1のデータ取得手順中のデータの収集のための期間(例えば、1~2秒)と、(ii)レーザ無効化時間、すなわちステップ38の脱出待機または遅延期間(例えば、0.5秒)と、(iii)高SNR積分時間、すなわち、ステップ36の第2のデータ収集手順中のデータ収集の期間と、(iv)捕捉の試行回数、すなわち、ステップ31~35のループで許可された反復回数(例えば、10)と、を含む。
【0035】
ついで、セットアップ捕捉シーケンスが開始され(ステップ92)、そこで、システムは、粒子が捕捉されるまで、粒子の捕捉を繰り返し試みる。この捕捉は、例えば、標的粒子を示すことが先験的に知られているラマン応答スペクトルの一部において、得られたスペクトルの有意な変化を観察することによって検証することができる。これは、例えば、試料5のバックグラウンド信号とは大幅に異なるスペクトル信号/ピークの出現によって、または先験的に既知の/予想されたピーク(例えば、ポリスチレン粒子の捕捉を試みたときの既知のポリスチレンピークの出現)の認識によって検証することができる。ついで、スペクトルを検査して、最適なピーク(例えば、
図4の41c)、または粒子捕捉ゾーン内の粒子の存在を最もよく特徴付ける他のスペクトル特徴、例えば特定のラマンスパイク41cを判定することができる。換言すれば、選択されたスペクトル特徴は、ビーム20に対する標的粒子のラマン応答と、ビームに対する標的粒子をともなわない粒子搬送媒体のラマン応答とを区別するものである。選択されたスペクトル特徴は、1つのピーク振幅、複数のピーク振幅、スペクトルの1つ以上の部分を下回る領域、スペクトルの少なくとも一部のプロファイル、または他のいくつかの特徴を含み得る(ステップ93)。ついで、ベースラインより上の閾値レベル41bが決定され(ステップ94)、これは、粒子捕捉を示すピークの値と、粒子捕捉なしのスペクトル(例えば、スペクトル43a)の通常レベルとの間にある。ついで、
図3の自動捕捉シーケンスを開始することができる(ステップ95)。
【0036】
粒子捕捉を検出するために複数の閾値を利用する代替のセットアップ/較正プロセスを
図10に示す。ボックス100~104によって示されるプロセスステップは、ステップ90~94に対応する。このプロセスでは、ステップ104で第1の閾値を確立した後、レーザを無効にして(ステップ105)、第1のテスト粒子を放出し、新しい粒子を捕捉し(ステップ106)、粒子捕捉ゾーンにおける粒子の存在を特徴付ける、すなわち、ステップ103のものとは異なる粒子捕捉シグネチャを有する新しいスペクトル特徴を求めて選択する(ステップ108)。ついで、ベースラインを超える第2の閾値レベルがその特徴に対して判定され(ステップ109)、
図3の自動捕捉シーケンスが開始され得る(ステップ95)。
【0037】
代替の自動セットアップ/較正プロセスを
図11に示す。このプロセスでは、ステップ110、111は、
図9のステップ90および91に対応する。この自動プロセスでは、粒子の捕捉を手動で検証する必要はない。ステップ112で捕捉シーケンスが開始され、スペクトルを取得するためにデータ取得手順が実行される(
図3のステップ31および32と同様)。この取得されたスペクトルは、粒子をともなわない媒体の試料から以前に取得された基準スペクトルと比較される。取得されたスペクトルからの基準スペクトルの自動スペクトル減算が実行される(ステップ113)。スペクトル減算下の領域が基準スペクトルのノイズ閾値よりも大きい場合、成功した捕捉が想定され(ステップ114)、閾値41bは、例えば、それが基準スペクトルと最も強度に異なる場合、取得されたスペクトルの一部またはすべてから確立され得る。ついで、
図3の自動捕捉シーケンスを開始することができる(ステップ115)。
【0038】
図1を参照して上記で概説したように、システムは、自動単一粒子捕捉およびラマンスペクトルの取得のために、レーザ2、検出器(カメラおよび分光器)7が制御システム16によって同時に制御されるハイエンド共焦点ラマン分光法セットアップに基づく。包括的な粒子分析のためのSPARTAの適用を可能にするために、
図2に概略的に示すように、3つの異なる操作モードを展開することができる。
【0039】
画像24によって示される第1のモードは、溶液中の単一粒子の高品質ラマンスペクトルの取得による官能化および組成分析24a、24bを含み、粒子15b~15gの範囲によって示されるそれらの組成の調査および特定の官能基の存在の検証を可能にするものであり、例えば15b、15c、15dは、(異なる色で示すように)異なる組成を有し、15e、15f、15gは、コア組成が同じであるが、(異なる色のコロナで示すように)表面上の官能基が異なる。SPARTAシステム1は、従来の手動技術を使用して各粒子を捕捉する必要がある既存の手動システムと比較して、数百の粒子の自動分析を可能にするという重要な利点を有する。分析可能な粒子数の自動化およびスケールアップにより、単一粒子ベースおよび粒子の複合混合物の母集団レベルの両方で粒子分散を分析する手段が可能となる。
【0040】
画像25によって示されるSPARTAシステム1の第2のモードは、溶液マーカを媒介させたサイジング分析である。高スループット単粒子分析を過塩素酸イオン標準と組み合わせることにより、本発明者らは、その組成情報を取得するのと同時に、粒子捕捉ゾーン22内の粒子15のサイズを推定し得ることを示した。粒子捕捉ゾーン22に入る粒子15は、その過塩素酸イオン溶液の体積(媒体12に対応する)を粒子捕捉ゾーン22から変位させる。既知のサイズの捕捉粒子に対する、ラマンスペクトルの過塩素酸信号の減少を測定することにより、ビーム20の共焦点体積よりも小さいという条件で、ラマンスペクトルの過塩素酸信号を粒子捕捉ゾーン22の粒子15のサイズに関連付けるための検量線を取得することができる。これにより、組成データを同時に収集しながら単一粒子ベースでの粒子のサイジングが可能になり、これまでいくつかの分析手法を組み合わせて使用する必要があり、サイズおよび組成を粒子ごとのベースで比較することができなかった粒子サイズおよび組成の直接取得および相関が可能になる。したがって、一般的な態様では、捕捉された粒子のサイズは、粒子捕捉が検出されたときに、内部に粒子をともなわない粒子搬送媒体に特徴的なスペクトル応答信号の減少を測定することによって判定することができる。内部に粒子をともなわない粒子搬送媒体に特徴的なスペクトル応答信号は、溶液マーカが標的粒子のスペクトル応答とは異なるスペクトル応答を有する、粒子搬送媒体内の溶液マーカのスペクトル応答信号を含み得る。
【0041】
画像26に示すSPARTAシステム1の第3のモードは、オンラインの動的反応モニタリングであり、単一粒子上の動的イベントの進行を追跡する。これは、反応の継続中に単一の粒子を粒子捕捉ゾーン内に保持するか、後続の時点で新しい粒子を捕捉して、粒子ごとに反応の進行を比較することによって実現し得る。この手法の単一粒子サンプリングの態様により、反応速度の調査が可能になり、触媒の利用可能性によって制限される反応の場合のように、反応が各粒子上で同じ速度で同時に発生するのか、特定の単一粒子で同時に発生するのかを特定することができる。これらの結果は、従来の方法で追跡できるバルクダイナミクスとさらに相関させることができる。
【0042】
前述のアプリケーション領域を容易にするために、
図4に関連して前で考察されたように、捕捉プロセスに対する広範な制御が提供される。スペクトル取得の前に、ユーザーは、セットアップおよび/または較正手順の一部として、例えばソフトウェアインターフェースを通していくつかのパラメータを定義することができる。これらのパラメータは、必要とされる第2のデータ取得手順(ステップ36)の取得の数(n
a)(例えば、データ捕捉が必要とされる粒子の数)と、粒子を捕捉するための反復の回数(すなわち、プロセスステップ31~35の反復の回数)と、第2のデータ収集手順のパラメータ(高SNR取得の持続時間)と、各粒子捕捉間のレーザ無効化の持続期間(ステップ37)と、を含み得る。
【0043】
自動粒子捕捉認識を可能にするために、画像41(
図4)に示す較正プロセスを実行することができる。初期粒子15aが捕捉され得、スペクトル41aにおける特徴的なピーク41cが、その中央値の高さ、またはノイズ/バックグラウンドレベルを超える高さとともに、閾値41bとして選択される。これにより、選択されたピーク44cが反復取得中に閾値強度44bを超える場合、粒子捕捉のテスト(ステップ33)が提供される。次に、取得反復ループが開始される(ステップ31~35)。閾値化ピークが反復スペクトル43aの閾値強度43bを超えていない場合、最大10回の反復を実行することができる。これらの反復のいずれかの間にピーク信号43cが選択された閾値43bを超えられなかった場合、粒子捕捉は失敗として登録され、レーザは一時的に無効にされ得る(ステップ35a)。成功した粒子捕捉が認識されると(画像44)、捕捉された粒子15の高SNRスペクトルを得る(ステップ36)ために、より長い取得が行われる。レーザをオフにすることでビームを一時的に無効にして(ステップ37)、粒子を拡散させる。この反復プロセスでは、粒子捕捉が成功した場合にのみ、より長い高SNRスペクトルの取得が許可されるため、捕捉の試行および取得のターンオーバーがはるかに高くなることを可能にする。捕捉された各粒子について、取得パラメータ、時間、および反復回数は、画像47に示すように、検証および後処理に使用するために、高SNRスペクトルデータとともに捕捉ログファイルに記録することができる。反復回数は、反復回数チェックにおいて適切なレーザ無効化時間を検証するために使用される。閾値化強度の最初の設定が低すぎた場合は、スペクトルを閾値後処理にかけて、「誤検出」捕捉を拾い出すこともできる。宇宙スパイクの除去、ベースライン減算、および正規化を含む、従来のラマンスペクトル処理を後で実行することができる。
【0044】
適切なレーザ無効化時間(ステップ37)により、粒子捕捉が一時的に解除され、粒子が拡散する。これは、粒子の重複分析を回避するために重要となり得る。
図4bに見られるように、無効化時間37が短すぎる場合、例えばレーザが点滅するだけの場合、成功した捕捉の90%以上が第1の反復において発生することになる。これは、同じ粒子が拡散し得る前に繰り返し捕捉されている可能性が高いことを表す。0.5~1秒のレーザ無効化時間は、
図4cに見られる0.5秒のレーザ無効化時間の場合のように、第1の反復回数で粒子捕捉の1%未満を確実に達成するのに十分であることがわかる。これは、文献
27で報告されている拡散速度と一致している。したがって、好ましいレーザ無効化時間は、少なくとも0.5秒である。
図4cに見られるように、粒子捕捉のピーク確率は6回の捕捉試行で発生する。加えて、スペクトルを取得する反復回数は、例えば、レーザ出力の変動により、スペクトルのピーク強度に影響を与えないことが検証された。これは、
図4dに見られるように、各反復回数における捕捉の1450cm
-1(CH
2振動)での特徴的なピークのピーク強度を比較することによって行われた。反復回数1の捕捉を除いて、成功した捕捉の反復回数によるピーク強度への大きな影響はない。
【0045】
官能化および組成分析
SPARTAシステムの主要な動作モードは、
図2の画像24、24a、24bに概略的に示す単一粒子の官能化および組成分析である。ここでは、さまざまな組成の粒子(粒子15b、15c、15d)、または同じコア組成をともなうが、さまざまな表面官能基をともなう粒子(粒子15e、15f、15g)のいずれかが分析される。これは、1、2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)リポソーム、およびd-DPPCリポソームと呼ばれるDPPC含有量に対して50%重水素化DPPCを含むリポソームを捕捉することによって実証された。2つの試料のラマンスペクトル(
図5a)では、d-DPPCリポソームのスペクトルにおける約2105cm
-1付近で明確なC-D信号が観察され得るが、これはDPPCリポソームには存在しない。高スループットの自動操作により、粒子の混合物を分析および分離することができる。これを実証するために、DPPCリポソームおよびd-DPPCリポソームの50-50v/v%混合物を作った。SPARTAを用いて、数百の粒子を捕捉し、2105cm
-1でのC-D振動の強度のヒストグラムに基づくガウス混合分析によってスペクトルを分析した。これにより、DPPCおよびd-DPPCの捕捉のそれぞれ44%および56%をカバーするヒストグラム(
図5b)の明確な二峰性分布が得られ、混合物を明確に分離し得ることが示された。代替的に、ウォードの樹状図(
図5c)に見られるように、混合物はクラスター分析によって分離することができ、重水素化されていない集団および重水素化された集団に関連するスペクトルの2つの主要なクラスターが示される。重水素化されていないクラスのスペクトルでは、小さな重水素信号が観察され、これは、重水素化されたリポソームと重水素化されていないリポソームとの間の脂質交換に起因する可能性がある。重水素含有分子は非常に強力なラマン散乱体
28であるため、検出可能なラマン信号を生成するために必要な重水素化分子の割合はごくわずかである。
【0046】
SPARTAを用いて、組成のより微妙な違いも検出することができる。これは、ナノ粒子分析、特にナノ材料の組成の正確な定義が最も重要であるが、しばしば実現が難しいナノ医療の分野で高い関連性がある。これを実証するために、ポリマーソームの2つの製剤を作った。1つは、ポリ(2-メチルオキサゾリン-b-ジメチルシロキサン-b-2-メチルオキサゾリン)(PMOXA-b-PDMS-b-PMOXA)であって、ABAとも表記されるものであり、もう1つは、Najerらによって記載された
29ように調製された、ABAに25重量%のPDMS-b-ヘパリンを補充したものであって、ABA-ヘパリンポリマーソームと称されるものである。粒子のSPARTA分析(
図5d)は、両方の調製物のPDMS(表2)に起因すると考えられ得る特徴的なピークを示した。ABA-ヘパリンポリマーソームから得られたスペクトルでは、挿入図の矢印で示されているように、追加のピークが見られ、ヘパリンの糖単位に割り当てられる。さらに、490および709cm
-1でのPDMSピークの正規化されたスペクトルの曲線下の平均面積(表2)は、ABA-ヘパリンポリマーソームの方が低く、ABAポリマーソームと比較して1:0.898の比率である。これは、PMOXA-b-PDMS-b-PMOXAおよびPDMS-b-ヘパリンブロック共重合体の分子量および添加量から計算した、ABAおよびABA-ヘパリンポリマーソームのそれぞれ83および70重量%PDMSに対応する1:0.843の理論比と極めてよく一致している。次に、ABAおよびABA-ヘパリンポリマーソームの50-50v/v%混合物を作り、SPARTAで分析した。これらの混合物は、主成分分析(PCA)などの教師なし分類、または純粋な母集団からのデータを使用してモデルを構築し、続いて混合物中の粒子から得られたスペクトルを分類するために適用される主要最小二乗判別分析(PLSDA)などの教師あり方法のいずれかによって分解することができる。2成分PCAモデル(
図5e)は、主にPDMS組成の変動に基づいて、2つのクラスターに明確に区別されていることを示す。PCAベースのウォード法クラスタリングでは、スペクトルの49%がABA様ポリマーソームとして分類され、47%がABA-ヘパリン様ポリマーソームとして分類され、4%がこれらのクラスターのいずれにも属さないものとして分類された(
図5f)。PLSDAを使用して、ベネチアンブラインドクロス確認(10分割)によってABAポリマーソームに対して100%の感度および97.9%の特異性を達成した純粋な粒子のモデルに基づいて、取得したスペクトルの38%をABAポリマーソームとして、62%をABA-ヘパリンポリマーソームとして分類した(
図12)。いずれかのタイプのポリマーソームが時間依存性なしにランダムに捕捉されたことを検証するために、PCA成分1のスコアを捕捉数に対してプロットした。その結果、ポリマーソームクラスが経時的にランダムに分布し、どちらの組成でも経時的に偏りがないことが証明された(
図13)。
【0047】
SPARTAは、デンドリマー小胞などの機能性膜粒子の調査にも使用することができる。小胞膜中のポリマーおよび脂質成分の組み合わせは、それらが増大した強靭性、透過性および表面機能性を提供する薬物送達、感知または他の用途が可能な刺激応答性粒子に追加の可能性を与え得る。ハイブリッド小胞は、より伝統的な脂質とヤヌス型デンドリマーを組み合わせた膜特性の微調整を可能にする。異なる化学組成とサイズとの不一致によって、課題が生じる。さらに、そのような新規粒子を送達媒介物として使用することを目的として、安定性が重要である。
【0048】
ここでは、脂質小胞、ヤヌス型デンドリマー小胞、およびハイブリッド小胞はすべて、同一の捕捉パラメータを使用したSPARTAシステムおよび手法で測定された。
図17のデータは、脂質およびポリマーの組み合わせを含む、さまざまな錯体製剤の個々の小胞の集団を捕捉することで、明確なスペクトルプロファイルが得られたことを実証する。分析は、捕捉効率がすべての小胞で最初の7日間維持されたが、デンドリマーおよびハイブリッド粒子では25日間で大幅に低下したことを示す。これは、この時間枠での組成間の粒子安定性の検出可能な変化を示す。
【0049】
「捕捉効率」という用語は、閾値を超える捕捉信号をもたらし、かつ記録されている高SNR捕捉スペクトルの取得をもたらした、開始された捕捉取得のパーセンテージを示すために使用される。この実験では、アルゴリズムは、高SNR捕捉取得を開始する前に、粒子が安定して捕捉されているかどうかを検出する10回の試行を開始した。信号が閾値を超えなかった場合、捕捉は記録されず、次の取得が試行された。したがって、捕捉効率は、開始された取得の過程で一貫したパラメータを使用して試料がどの程度確実に捕捉されたかを示す(通常は実行ごとに200~300)。
【0050】
同じ捕捉パラメータを使用して異なる時間に粒子を捕捉する効率を比較することにより、経時的な試料間の試料の安定性/一貫性を評価することができる。例として、200の捕捉を開始し、150の捕捉が成功した場合(つまり、10回の試行の1つで閾値を超え、高SNRスペクトルが記録された場合)、捕捉効率は75%となる。これはシステムパラメータに大きく依存する(例えば、閾値が低いと、人為的に効率が高くなる可能性がある)ため、一貫性を比較するには、システムパラメータを同一にする必要がある。
【0051】
いくつかの化学的に異なる成分で構成された複合粒子を個別に測定し、粒子ごとに成分の特徴を抽出した。
図18では、信号は、既知のハイブリッド小胞成分の非負最小二乗(NNLS)フィッティングに基づいて成分フィットに分解される。フィッティングは、粒子ごとに、合成後に経時的に発生した安定性/組成の相対的な変化を示す。
【0052】
細胞外小胞(EV)も、SPARTAによって分析した。EVは、実質上すべてのタイプの細胞から排出される脂質、タンパク質、および核酸の混合物からなる複合小胞であり、この例では、約30~300nmのサイズ範囲(アポトーシス小体は最大1000nm)のエクソソームおよび微小胞の混合物で構成される。非悪性乳房上皮細胞(MCF10A)および2つの乳癌細胞株(MDA-MB-231およびJIMT1)を体外培養し、ウシ血清由来EVによる汚染を避けるために、EVを無血清条件下で生成および採取した。EVは限外ろ過を介して濃縮し、サイズ排除クロマトグラフィを使用して精製し、EV画分から可溶性タンパク質を除去した。約1E11p/mlの濃度のEVをSPARTAで分析した結果、
図19に示す個々のEVの詳細な組成スペクトルが得られた。
【0053】
部分最小二乗判別分析(PLSDA)を使用して、EVスペクトル母集団間の統計的差異を調査した。PLSDAを用いてモデルを構築して、割り当てられたEV母集団を可能な限りクラスタリングかつ分類するようにし、試料EVのスペクトルがクラスの1つ(特異性および感度)に該当するとどの程度良く予測し得るかを計算する。これらの計算は、MatlabのPLSツールボックス(Eigenvector Research)を用いて実行された。PLSDAモデルは、潜在変数(LV1およびLV2)として疑似スペクトルを構築し、スペクトルへのLVの関連する寄与に基づいて各試料スペクトルにスコアを割り当てることによって構築される。
【0054】
図20に示すように、癌性(MDA-MB-231およびJIMT1)EVと非癌性(MCF10A)EVとの間にクラスタリングおよび分離があり、癌性EV母集団内で明確な区別があった。
図20Aでは、クラスターは十分に分離されており、MF10Aのスコアは、LV1およびLV2で負、MDA-MB-231は、LV1ではほとんど負で、LV2では正、JIMT1は、LV1では正で、LV2では混合される。LVでの正のスコアは、試料スペクトルが
図20BにプロットされているLV疑似スペクトルに似ていることを意味する。LVでの負のスコアは、試料スペクトルがLVの逆(または負のピーク)に似ていることを意味する。このように、MCF10AとMDA-MB-231とのEVの違いは、LV2の負または正の寄与のいずれかにあることがわかる。この分析から、(例えば)試料がどの程度異なるか、試料がさまざまなクラスターにどの程度良く分類されるか、どのスペクトル特徴がこの違いに最も寄与するかを判断することができる。
【0055】
さらに、EVクラスター間のクロス確認された感度および特異性は、>94%であった(表1)。これは、単一EVの特性化のためのSPARTAの機能を実証する。
【表1】
【0056】
感度および特異性は、PLSDA分析から直接得られ、クラスター内の試料をどの程度良く区別することができるかを統計的に定量化する。感度は、真陽性(クラス1であり、かつクラス1として識別される)と偽陰性(クラス1であり、かつクラス1として識別されない)との比率であり、次のように計算される。
【数1】
【0057】
特異性は、真陰性(クラス1ではなく、かつクラス1として識別されない)と偽陽性(クラス1ではないが、クラス1として識別される)との比率であり、次のように計算される。
【数2】
【0058】
これらの数値(パーセンテージを示すために100を掛けることもある)は、診断テストがどの程度良く機能するかを示すために、文献で頻繁に使用される。この場合、SPARTAは癌性EVと非癌性EVとをどの程度良く区別するか、かつ2つの癌タイプをどの程度良く区別するかに関連している。
【0059】
小胞系に加えて、多種多様な固体ナノ粒子の組成およびサイジングは、薬物送達から触媒作用までの幅広い用途で非常に重要である
30、31。成功したナノ粒子官能化の分析および検証のためのSPARTAプラットフォームの使用を有効にするために、ジスルフィド交換を介したポリスチレン(PS)ナノ粒子の順次官能化に基づくモデルシステムを考案した(
図6a)。平均サイズが200nmの市販のアミン官能化PS粒子を、2-イミノチオランの添加によりスルフヒドリル官能化した。遠心分離および再懸濁による精製後、936cm
-1付近のS-H曲げ振動から生じるスペクトルの信号からわかるように、スルフヒドリルの存在を検証するSPARTAプラットフォームを用いて粒子を分析した(表2)(黒)(
図6b)。次に、スルフヒドリル官能化粒子と反応してジスルフィド結合を形成する超過量の5、5’-ジチオ-ビス-(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)を添加した。さらに精製した後、ラマンスペクトル(赤)は、ジスルフィド結合の明確な存在を示した。これらの結合は動的共有結合であるため、スルフヒドリル官能基を含む別の部分を添加すると交換可能である。ナノ粒子のペプチド官能化は、特に薬物送達の分野
32、33で望ましく、かつ広く使用されている戦略であるため、システインおよび2つのチロシン(CYY)からなるトリペプチドの添加によってこれを実証した。システイン残基は、スルフヒドリル官能基を提供し、チロシンは、芳香族C=C結合により特徴的なラマンピークを呈示する。精製された粒子にペプチドを添加すると、溶液は、特徴的に黄色に変わり、2-ニトロ-5-チオベンゾエト-ジアニオン(TNB
2-)が形成されたことを実証した。これは、ジスルフィド交換が起こったことを示し、粒子へのトリペプチドの特定の結合を確認した。精製後、特徴的なチロシンピーク(青)の存在を示す、粒子のラマンスペクトルを取得した。サイクルを完了するために、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)をジスルフィド含有粒子溶液のいずれかに添加して、スルフヒドリル官能基を回復させることができる(
図6c)。各ステップで、粒子のサイズ分布がDLSによって測定され、連続的な官能化および精製中の粒子の安定性が検証された(
図14)。
【表2】
【0060】
溶液マーカを介したサイジング分析
SPARTAシステムの第2のモードでは、高SNR組成スペクトルの取得とともに、トラップ内の粒子サイズを同時に推定することができる。
図2の画像25に示すように、トラップに入る粒子は、共焦点ボリュームから、周囲の溶液のうちのそれ自体と同じボリュームを変位させ、それは、測定されたスペクトルにおける過塩素酸信号の減少につながる。過塩素酸は、938cm
-1付近に単一の鋭いラマンピークがあるため、この用途に特に好適である(
図15)。ポリスチレン信号は、共焦点ボリューム内の粒子サイズが大きくなると増加するため、過塩素酸信号は、以下に従うスペクトルへの比率の寄与によって最もよく定量化される:過塩素酸の
【数3】
。ここで、A
tは、スペクトルの曲線下の領域全体であり、A
pは、過塩素酸のピークのための領域である。A
pがゼロに近づくと、比率は増加し(トラップが粒子で完全に埋まる)、A
pがA
tに近づくと、比率はゼロになる(粒子なし)。
【0061】
モデルシステムとして、溶液に50mMの過塩素酸ナトリウムを添加した後、SPARTAプラットフォームを用いて200、100、および50nmのポリスチレン粒子を分析した。過塩素酸の比率はさまざまなサイズ間で異なり、重複が最小限の帯域幅内にあることがわかった(
図7a)。平均比は、対数粒子体積(メーカー指定のサイズから計算)に対してプロットすることができ、優れた線形相関(R
2=0.99)が得られる(
図7b)。検量線の線形フィットを使用して、SPARTAシステムで捕捉された個々の粒子の粒子サイズを推定することができる。これらのサイズを、粒子の対応するDLS数分布(
図7c)と同一にビニングし、サイズ分布のヒストグラム(
図7d~7f)を生成した。DLSおよびSPARTAのサイズ測定値を比較する主な手段は、分布の広さである。これは、標準偏差(σ)および平均(μ)の商の2乗である多分散指数(PDI)によって特徴付けることができる。各粒子サイズについて、SPARTA溶液マーカを介したサイジング分析によって得られたPDIは、DLSによって測定されたものよりも大幅に低く、正確な単一粒子サイジング分析に対するSPARTAの能力を実証する。
【0062】
オンライン動的反応モニタリング
SPARTAプラットフォームの第3の用途は、
図2の画像26に概略的に示すように、反応のタイムスケール中の単一粒子上で、または母集団からのさまざまな単一粒子の連続サンプリングを介した、オンライン動的反応モニタリングの機能である。これにより、2つの異なる反応シナリオを区別することができる。この場合、母集団全体で反応が同時に均一に進行するシナリオ、および異なる粒子上で反応が順次開始されるシナリオである。
【0063】
モデルシステムを使用して、銅触媒によるアジドーアルキン付加環化(CuAAC)反応のダイナミクスを調査した。これは、ナノ粒子の官能化に頻繁に採用されるクリック反応の一種である
34、35。EDCーNHSを介したプロパルギルアミンと平均サイズ200nmのカルボキシル化PS粒子との結合を介して、アルキン官能基をともなうポリスチレン粒子が得られた。続いて、このアルキンを銅触媒の存在下でアジド含有部分と反応させ、トリアゾール環を形成させた(
図8a)。SPARTAによって、2129cm
-1において特徴的なラマンピークを示すポリスチレン粒子のアルキン官能化の成功を検証した(
図8b)。続いて、単一粒子を順次捕捉するか、単一粒子をトラップ内に連続的に保持しながら、CuAAC反応を実施した。反応物のアルキンおよびアジドの両方の信号は、経時的に明らかに減少し、トリアゾール生成物のピーク強度は逆の傾向で増加する(
図8c)。約8分後に、反応を観察した。代わりにトラップ内に単一の粒子を保持し、反応の継続期間中連続的にスペクトル変化をモニタリングするようにシステムを適応させると、同様の反応の傾向がもたらされたが、触媒の活性化と約30~60秒の第1のスペクトルの取得との間の追加のリードタイムを考慮すると、2分以内に反応が完了することを示した。さらに、アルキン官能化粒子での反応が成功したことを検証するために、3-アジド-7-ヒドロキシクマリンのトリアゾール生成物は特徴的な蛍光発光(Abs/Em=404/477nm)をもたらすので、UV-VIS蛍光によって3-アジド-7-ヒドロキシクマリンと粒子との反応をモニタリングした。色素および反応条件の存在下では、蛍光は徐々に増加し、30分以内に横ばいになり始める(
図16)。
【0064】
SPARTAは、キュボソーム小胞の分析にも使用された。キュボソームは、コレステロール、モノオレイン、およびさまざまな比率のホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジン酸(PA)で構成される立方相脂質ナノ粒子である。
図21に示すように、このPA/PCの比率は、SPARTAを使用して単一粒子ベースで明確に視覚化された。主な違いは、PCヘッドグループに起因する718cmー1における第三級アミンピークの変化であり、PA/PC比の増加とともに減少した。
【0065】
さまざまなキュボソーム製剤の組成分析に加えて、SPARTAを使用して、酵素を介したPCの加水分解のダイナミクスを追跡してPAヘッドグループを形成した。対照試料および試料を加水分解する酵素をスパイクした試料を測定し、酵素活性の反応速度をナノ粒子基板上で測定した。ここでは、個々の粒子が捕捉され、測定され、放出された。ついで、粒子を捕捉ボリュームの外側に拡散させてから、別の粒子を引き続き捕捉して測定した。
図22の結果は、酵素の濃度が異なると、個々の粒子上で測定された反応速度が大幅に変化したことを示す。このように個々の粒子を追跡することにより、試料内の不均一性および時間の関数としてのキュボソーム/ナノ粒子の組成に対する酵素(または潜在的に他の活性因子)の活性を理解することができる。
【0066】
考察
SPARTAプラットフォームは、回折限界よりも小さい粒子の同時無標識多重パラメータ、非破壊特性化を可能にする。これは、光捕捉の効率と、組成および官能化を測定するためのラマン分光法の確立された感度、ならびに自動化による高スループットとを兼ね備える。さまざまなリポソームおよびポリマーソームの組成を含む複数のナノ粒子製剤の効率的な捕捉およびスペクトル分析、ならびにポリスチレン粒子の連続的な化学的官能化を実証した。同時に、溶液マーカとして過塩素酸を添加することにより、単一粒子のラマン散乱のみに基づいて粒子サイズおよび分布を評価することが初めて可能となった。さらに、母集団試料または個々のナノ粒子のいずれかの表面上で発生する銅化学クリック反応をモニタリングすることにより、このプラットフォームの時間分析機能を実証した。これらの粒子の大きな試料の自動評価は、ナノ粒子システムの不均一性への新しい洞察を提供し、亜集団を調査し、無数の試料設計の動的組成変化をモニタリングすることができる。
【0067】
SPARTAプラットフォームは、粒子上の動的プロセスを追跡するための無標識の化学的および時間的分解能をともなう単一モダリティ内のナノ粒子の化学組成、官能化、およびサイズを研究する最初の自動化システムを表す。SPARTAプラットフォームは、ポリマーおよび脂質システムに最適であるが、独自の振動スペクトルをともなう広範囲の粒子製剤に合わせて拡張することができる。本明細書に記載の技術は、基本的な特性によって制限される。この技術は、粒子捕捉力勾配を生成するための濁度の低い試料、重複しないスペクトル特性をともなう組成、数分から数時間までの間に発生する動的プロセス、および低レベルのバックグラウンドが捕捉された粒子の測定に寄与するように十分に低い試料濃度に特に適している。これらの考慮事項の各々は、評価のためのナノ粒子システムの慎重な選択および準備によって軽減することができる。
【0068】
複合ナノ粒子用のSPARTAプラットフォームの展開は、これらのシステムの複雑な構成、サイズ、および動的プロセスに関する多重化された情報を提供し、基本的な理解を向上させる。実際、SPARTAプラットフォームは、自動化された方法で、1回の実験で個別に捕捉された数百の粒子からの豊富なラマンスペクトルを提供する。要するに、粒子の組成、官能化、サイズ、および動態に関して、多面的なSPARTAプラットフォームから得られる補足情報は、薬物の開発および送達、材料科学、ならびに細胞生物学をはじめとする分野に重大な影響を与える多大な可能性を秘めている。
【0069】
方法および装置は、特にレーザビームを含む電磁放射ビームを使用するものとして説明されてきたが、可視スペクトルまたはそれを超える、赤外線またはUVスペクトルなどの他の光源を使用してもよい。使用する光源に応じて、最大50nm、100nm、300nm、500nm、または1ミクロンの粒子サイズを捕捉して分析することができる。ラマンベースの検出モダリティの場合、波長785nmの電磁放射源を最適に使用して、例えば50~300nmの範囲の粒子サイズを分析することができる(ただし、これらは厳しい制限ではない)。一般に、粒子は、捕捉されたときに好適に検出可能なラマン信号を生成するのに十分な大きさである必要があるが、ビームによって捕捉されないほど大きくてはならない。粒子サイズの下限は、半径とともに急速に低下する共焦点ボリュームの相対的な占有によって決定される。この制限を下回ると、周囲の粒子からの信号に大きく寄与する可能性があるためである。粒子サイズの上限は、共焦点ピンホールによって決定される。本明細書に記載の実験は、500nm付近の共焦点体積幅で実施されたが、これは、より大きなピンホールをとることによって拡張してもよく、したがって、より大きな粒子から全粒子スペクトルの取得が可能になる。いくつかの大きな粒子(例えば、1ミクロンの粒子)は、依然としてビームで捕捉され得るが、ウエスト部分21の共焦点ボリューム内に完全には収まっていない場合があり、粒子全体が分析されない状態をもたらす可能性がある。したがって、状況によっては、単一粒子分析をビームウエスト直径と一致するサイズ、例えば300nmに制限することが望ましい場合がある。粒子からのラマン応答信号を不明瞭にする応答信号を生成しないという条件で、任意の好適な粒子搬送媒体を使用することができる。粒子搬送媒体は、特にオンライン動的反応モニタリングの例において、粒子との反応のための活性成分を含み得る。
【0070】
他の実施例は意識的に添付の特許請求の範囲に含まれるものとなっている。
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【0071】
本明細書で明らかに先に公表された文献のリストまたは考察は、その文献が最新技術の一部であるか、または共通の一般知識であることを認めるものと必ずしも解釈されるべきではない。
【0072】
他の方法
SPARTAラマン顕微分光器
共焦点ラマンスペクトル取得を、ラマン顕微分光器(alpha300R+、WITec、ウルム、ドイツ)で実施した。使用した光源は、63×/1.0NAの水浸顕微鏡対物レンズ(W Plan-Apochromat、Zeiss、オーバーコッヘン、ドイツ)をともなう785nmレーザ(Toptica XTRA II)であった。散乱光は、600g/mm回折格子分光器(UHTS 300、WITec、ウルム、ドイツ)をともなう100μmファイバを介して収集し、スペクトルは、試料に対して3cm-1のスペクトル分解能および85mWのレーザ出力をともなう熱電冷却された背面照明CCDカメラ(iDus DU401-DD、Andor、ベルファスト、英国)を使用して取得した。レーザ制御は、直列接続およびカスタムMatlab(2016b)スクリプトを介して遠隔制御で行った。
【0073】
SPARTA標準試料の調製
SPARTA分析では、通常200μlの粒子溶液が必要とされ、測定時間にもよるが、そのうちの約半分を定常的に回収した。理想的な粒子濃度は、1ミリリットルあたり1・1010~1・1012粒子、またはポリスチレン粒子の場合は、固形分0.1~0.01%程度であると判定された。試料溶液を22mmのカバーガラスに置き、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を1滴加えた標準的な顕微鏡スライドに取り付けた。試料は、測定のために水浸対物レンズの下に置いた。
【0074】
SPARTA標準データ分析
次の前処理手順は、SPARTAプラットフォームを用いて取得されたすべてのスペクトルに適用された。取得中のスペクトルの中心は、1000cm-1に標準設定し、生データは、励起信号を省略するために、350~1825cm-1の範囲に切り捨てた。アルキン修飾を含む測定では、スペクトルの中心を1500cm-1にシフトし、測定範囲は606~2254cm-1となった。ピーク振幅および第二派生物に基づく自動スクリプトを採用して、宇宙スパイクを除去し、続いて、手動の目視検査を行った。スペクトルバックグラウンドは曲線適合(Whittakerフィルタ、λ=100,000)を介して減算し、ノイズはSavitzky-Golayフィルタ(3ポイント、1次)を使用して平滑化した。得られたスペクトルは、過塩素酸比の計算を介して組み込まれるSPARTAサイジング分析を除いて、曲線下の領域を介して正規化した。その後の統計分析(階層クラスター分析、主成分分析、多変量曲線回帰、部分最小二乗判別分析)は、PLS Toolbox(Eigenvector Research、Inc.)を使用して実施された。
【0075】
DPPCおよびd-DPPCリポソームの調製
以下の標準的な手順に従ってリポソームを調製した。脂質の5mg/mlストック溶液(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)および1,2-ジパルミトイル-d62-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC-d62、ここではd-DPPCと称する)、(Avanti Polar Lipids Inc.アラバマ、米国)、およびコレステロール(Sigma-Aldrich、英国)をクロロホルムで製造し、使用前にアルゴン下で20℃で保存した。DPPCリポソームの場合、脂質膜は、500μlのDPPCストック溶液および43μlのコレステロール保存溶液を10mlの丸底フラスコに加えて作り、85:15mol%のDPPC:コレステロールのモル比となった。d-DPPCリポソームの場合、250μlのDPPCストックおよび250μlのd-DPPCストックを使用した結果、42.5:42.5:15mol%//DPPC:d-DPPC:コレステロールの比率となった。クロロホルムを窒素流下で蒸発させて脂質薄膜を形成した。再水和の前に、脂質フィルムを凍結乾燥機(Labconco、ミズーリ、米国)で一晩凍結乾燥した。フィルムを1mlのPBSで水和し、1分間振とうし、1分間超音波処理した。ついで、溶液を、60℃でメッシュサイズ200nmのポリカーボネート膜(Avanti Polar Lipids Inc.アラバマ、米国)を通して31回押し出した。リポソームサイズ分布および粒子濃度は、ナノ粒子追跡分析(NTA)を介して判定した。
【0076】
ポリマーソームの調製
PMOXA-b-PDMS-b-PMOXAポリマーソーム(さらにABAと表記)は、ポリ(2-メチルオキサゾリン-b-ジメチルシロキサン-b-2-メチルオキサゾリン)(Mn・103=0.5-b-4.8-b-0.5)トリブロック共重合体(P18140D-MOXZDMSMOXZ、Polymer Source Inc.、ケベック、カナダ)から調製した。エタノール中のトリブロック共重合体の6mg/mlストック溶液の1mlを、5ml丸底フラスコに加えた。ABA-ヘパリンポリマーソームは、以前Najerらによって記載されたように(Najer、A.et al.Nanomimics of Host Cell Membranes Block Invasion and Expose Invasive Malaria Parasites.ACS Nano 8、12560-12571(2014))合成した25重量%のPDMS-b-ヘパリン(Mw=5kDa-b-11kDa)ブロック共重合体を配合することによって作った。5mlの丸底フラスコ内で、6mg/ml ABAストックの1mlを、エタノール中のPDMS-b-ヘパリンブロックコポリマーの4mg/mlストックの0.5mlと混合した。ポリマー溶液を、ロータリーエバポレータで50℃および20mbarで約15分間乾燥させた。続いて、ポリマーフィルムを、激しく撹拌しながら、1.2mlのPBS中で72時間再水和した。ポリマー溶液を、0.45μmシリンジフィルタ(Millex-HV 13mm PVDF、Merck KGaA、ドイツ)でろ過し、メッシュサイズ200nmのポリカーボネート膜(Avanti Polar Lipids Inc.アラバマ、米国)で5回押し出した。続いて、メッシュサイズ100nmのポリカーボネート膜を31回通過させた。ポリマーソームは、PBS中のサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)(Sepharose 2B(Sigma-Aldrich、英国)を充填した10×300mmカラム)によってさらに精製し、1mlの留分を収集した。ポリマーソームのサイズ分布は、DLSおよびNTAによって分析された。
【0077】
ナノ粒子追跡分析(NTA)
ナノ粒子追跡分析(NS300、532nmレーザ、Malvern、英国)は、PBS中の1ml試料の30秒動画を3回取得することによって実行された。カメラレベルは13~14の間に保ち、画面ゲインは1、検出閾値は5に設定された。試料を測定のためにミリリットル当たり1×108~1×109粒子の最適測定範囲内まで希釈した。Nanosight NTA 3.0ソフトウェア(Malvern、英国、2014年)を使用して測定値を分析した。
【0078】
動的光散乱(DLS)
動的光散乱(ZEN3600 Zetasizer、マルヴァーン、英国)は、400μlの溶液をともなう使い捨てのセミマイクロキュベット(Brand GMBH、ドイツ)内で、173°の散乱角でNIBSによる3回の測定値(各々10~15回の取得)の取得と平均化によって実行された。測定値は、Zetasizer Software v.7.02(マルヴァーン、英国、2013年)を使用して取得した。数値分布を使用して、粒子サイズ分布を検証および比較した。
【0079】
システインーチロシンーチロシン(CYY)トリペプチドの調製
CYYトリペプチドは、リンクアミドMBHA樹脂ならびに保護されたシステインおよびチロシンアミノ酸(AGTC Bioproducts Ltd.)上でFmoc保護基化学を使用した標準的な固相ペプチド合成によって合成した。簡単に説明すると、Fmoc脱保護を、DMF中の20v%ピペリジンで10分間行い、続いてDMFとDCMで2回洗浄した。アミノ酸結合を、DMF中のFmoc保護アミノ酸(4当量)、HBTU(3.75当量)、およびDIEA(6当量)を用いて2時間行い、このプロセスをシーケンスに従って繰り返した。ペプチドを樹脂から切断し、トリフルオロ酢酸(TFA)95%、トリイソプロピルシラン2.5%、および水2.5%で4時間脱保護した。ロータリーエバポレータを使用してTFAを除去し、ペプチドを沈殿させ、冷ジエチルエーテル200mLおよび2×50mLで洗浄した。精製のために、ペプチドを0.1%TFAをともなう超純水中の4.9%ACNの溶液に溶解し、5μmの孔径と100Åの粒子サイズをともなうC18 Gemini 150×21.2mmカラム(Phenomenex、カリフォルニア、米国)をともなう逆相分取高性能液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所、日本)を使用して精製した。移動相は、15ml/分で0.1%TFAを含む超純水であり、15分間の分析中に、移動相中の0.1%TFAを含むACNの濃度は、0~3分で0%、3~12分で0~100%、12~13分で100%、13~15分で0%であった。液体クロマトグラフィ質量分析(LCMS、Agilent、カリフォルニア、米国)を使用して、HPLC留分の正しい質量をチェックし(観測MW=447.2、予測[CYY]H+=447.16)、純粋なペプチド留分を混合し、回転蒸発させてACNを除去し、凍結乾燥(Labconco、ミズーリ、USA)によって凍結乾燥した。
【0080】
ポリスチレン粒子の連続官能化
アミンで官能化された0.2μmのポリスチレン粒子(PolybeadAmino 0.20μm、Polysciences Inc.)を、2-イミノチオランを用いてさらに官能化した。PBS中の2ミリモルEDTAの反応緩衝液を作り、2M NaOHを用いてpH8に調整し、そこから2-イミノチオランの6mg/ml溶液を調製した。官能化のために、780μlの反応バッファを、200μlの0.20μmポリスチレン粒子(2.6%固形分(w/v))および20μlの2-イミノチオラン溶液と混合し、室温で一晩反応させた。これにより、スルフヒドリル官能化粒子の0.5%固形分(w/v)溶液が得られ、これをさらにPBSで10倍に希釈し、精製した。特に明記しない限り、精製は、14,000rcfで10分間の遠心分離によって行い、その後ペレットをPBSに再分散させた。再分散は、30秒間のボルテックスと、1分間の超音波処理によって促進され、透明な溶液を得た。各精製ステップの後、SPARTAの前に、動的光散乱(DLS)測定を実行して、凝集がないことを検証した。SPARTA実験パラメータを、1秒の反復取得時間、10秒の高SNR取得時間、および1秒のレーザ無効化時間に設定して、最低100個の成功した捕捉スペクトルを取得した。粒子をさらに10mgの5,5-ジチオ-ビス-(2-ニトロ安息香酸(DTNB)を用いて処理して、スルフヒドリル官能基とTNBアニオンとの間にジスルフィド結合を形成した。粒子を精製し、SPARTAを実行してジスルフィド結合の形成を検証した。トリペプチド官能基は、TNB官能化粒子を2mgのCYY(Mw=446.16g/mol、4.5mM)で処理することによって得られた。トリペプチド官能基を観察するために、精製後にSPARTAを実行した。官能化の可逆性を実証するために、100μlのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP、0.5M、中性pH Bond-Breake(商標)、ThermoFischer Scientific)をTNB官能化粒子に添加し、ジスルフィド結合の切断を示す溶液を明るい黄色に変えた。同様に、粒子とトリペプチドとの間のジスルフィド結合を切断した。精製後、スルフヒドリル官能基の回復をSPARTAによって検証した。
【0081】
ポリスチレン粒子に対する動的クリック反応
カルボキシル官能化0.2μmポリスチレン粒子(Polybeadカルボキシレート0.20μm、Polysciences Inc.)を、EDC-NHS結合を使用してプロパルギルアミンで官能化した。PBS中の20mg/mlの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよび20mg/mlのn-ヒドロキシスクシンイミドの溶液を作り、各々の40μlを、200μlのポリスチレン粒子(2.6%固形分)および800μlのPBSに添加した。溶液をサーモミキサー上で室温で振とうし、30分後に20μlのニートプロパルギルアミンを加えた。一晩連続的に振とうしながら反応を進行させた。合成液を10倍に希釈して精製した。14,000rcfで10分間遠心分離して精製を行い、その後ペレットをPBS中に再分散させた。再分散は、30秒間のボルテックスおよび1分間の超音波処理によって支援された。精製後、SPARTAの前に、凝集がないことを検証するためにDLSトレースを取得した。溶液は、PBS中の100mM硫酸銅、100mMアスコルビン酸ナトリウム、および0.5M重炭酸カリウムで作られた。2ーアジド酢酸(Sigma-Aldrich、英国)と同等のモル濃度の水酸化ナトリウムの1M溶液を添加することによって、アジドアセテートを作った。母集団クリック反応は、PBS中で100倍に希釈した200μlのアルキン官能化ポリスチレン粒子に、2.88μlの100mMアスコルビン酸ナトリウム、1.80μlの100mM硫酸銅、および0.5μlのニートアジド酢酸を添加してトリアゾールを形成することにより実施された。pHを7に調整するために、KHCO3の0.5M溶液の液滴を加えた。単一粒子ホールドクリック反応は、7.46μlのアジドアセテート(0.5μlのニートアジド酢酸に等しい)を添加して実行し、それ以上のpH調整は必要なかった。
【0082】
UV-Vis分析によるクリック反応モニタリング
3-アジド-7-ヒドロキシクマリン(Jena Bioscience GmbH、ドイツ)を使用して、アルキン官能化ポリスチレンナノ粒子上でCuAAC反応が発生するかどうかを確認した。これを行うために、得られたトリアゾール生成物(Abs/Em=404/477nm)の蛍光をUV-Vis分光法でモニタリングした。96ウェルプレートで、PBS中の精製アルキン官能化ポリスチレン粒子の1000倍希釈液200μlを、水中の2.88μlの100mMアスコルビン酸ナトリウム、1.80μlの100mM硫酸銅、および5μlの3-アジド-7-ヒドロキシクマリン1μMと混合した。対照として、3-アジド-7-ヒドロキシクマリンまたは硫酸銅を除いて、同時に測定を行った。蛍光を30分以上モニタリングし、15秒間隔で測定した。
【0083】
SPARTAによるハイブリッド小胞分析
ハイブリッド小胞、ヤヌス型デンドリマーソーム、およびスフィンゴミエリンーコレステロールリポソームを、DPBSでの薄膜水和法を介して、必要に応じて精製のために順次ボルテックスおよびその後のサイズ排除を介して調製した。室温での安定性アッセイは、1ヶ月間にわたる安定性を示す。ナノ粒子トラッキング分析を使用して試料濃度を測定し、測定まで4℃で保存した。
【0084】
SPARTAプロトコルでは、PBS中の150μLの試料を約1013粒子/mLで利用した。捕捉評価時間を1.5秒に設定し、その後、閾値を超える捕捉が10秒の積分時間で記録され、高SNRスペクトルが得られた。捕捉シーケンスは概して、200個の捕捉で開始し、完了するまで自動的に進行した。取得したスペクトルは、宇宙スパイクの除去、バックグラウンド減算、平滑化、および正規化のためのカスタムMATLAB(登録商標)(2016a/b)スクリプトを使用して処理した。NNLSフィッティングは、ネイティブおよびカスタムの両方のMatlabスクリプトを介して、個々の成分から取得された純粋なスペクトルに基づいて実行した。
【0085】
SPARTAによるキュボソーム分析
モノオレイン、コレステロール、およびホスファチジルコリンとホスファチジン酸との組み合わせを含む組成物は、超音波処理および均質化法を利用して形成された。簡単に説明すると、超音波処理を介したキュボソームの形成には、所望の組成の脂質を溶媒に共溶解し、窒素下で溶媒を蒸発させ、凍結乾燥機を使用して過剰な水分を除去して、脂質膜を作成することが含まれる。これに、所望の緩衝液中での水和、事前に溶解された安定化ポリマーの添加、および分散液を形成するためのチップ超音波処理/均質化が続く。容量制限のため、少量の超音波処理チップを利用する。SPARTA分析の前に、キュボソームを室温で保った。ホスホリパーゼD(Streptomyces chromofuscus由来)を、使用前に-80℃で冷凍保存した。個々の実験では、試料250μLあたりの総脂質濃度は0.1mg/mLで、適切な量のMg/Ca緩衝DPBSおよび既知の濃度のPLDと混合して、酵素活性、1つのキュボソーム組成、および脂質変換をモニタリングした。
【0086】
SPARTA測定は、10秒の高SNR積分時間、1秒の反復時間、および1秒のレーザ無効化時間で、酵素スパイクキュボソーム試料の200μl試料で実行された。概して、200個の捕捉が開始されたが、この数は、試料に追加された酵素の予想される活性および濃度に応じて変更した。スペクトルは、キャッチアンドリリース(母集団サンプリング)および捕捉アンドホールド(単一粒子経時変化)の両方の方法で取得され、酵素反応速度のモニタリングが可能になった。取得したスペクトルは、宇宙スパイクの除去、バックグラウンド減算、平滑化、および正規化のためのカスタムMATLAB(登録商標)(2016a/b)スクリプトを使用して処理された。
【0087】
SPARTAによる細胞外小胞分析
MDA-MB-231およびMCF10A細胞株は、ATCC(マナッサス、バージニア州、米国)から取得した。JIMT-1は、DSMZ(ブラウンシュヴァイク、ドイツ)から取得した。MDA-MB-231およびJIMT-1細胞は、10%(v/v)FBS、20mM HEPES、および1xペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco、Thermo Fischer UK)を添加したDMEM中で培養した。MCF10A細胞を、5%(v/v)馬血清(Gibco)、20ng/mL EGF(Peprotech)、0.5μg/mLヒドロコルチゾン(Sigma Aldrich)、100ng/mLコレラを毒素(Sigma Aldrich)、10μg/mLインスリン(Sigma Aldrich)、および1xペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を補ったDMEM/F12(Gibco)中で維持した。細胞を、37℃および5%CO2で培養し、2日ごとに培地を交換した。EV分離の前に、細胞を無血清培地で2日間コンフルエントになるまで培養した後、馴化培地を収集し、1500xgで5分間遠心分離し、0.45μmボトルトップフィルタを使用してろ過した。スピンろ過(Amicon Ultra-15、100kDa)を使用して培地を約500~1000倍に濃縮し、500μLを直径1cm、長さ30cmのSepharoseCL2B(Sigma Aldrich UK)カラムでのサイズ排除クロマトグラフィにより精製した。1mLのカラム留分を収集し、ナノ粒子追跡分析(Nanosight NS300)を使用してEV含有留分を判定し、これとBCAタンパク質定量アッセイ(Thermo Fisher UK)との相関を調べた。SPARTA分析の前に、EVは-80℃で冷凍保存した。
【0088】
SPARTA測定は、20秒の高信号対雑音比積分時間、1秒の反復時間、および1秒のレーザ無効化時間で精製されたEVの200μL試料で実行された。200個の捕捉を開始し、各測定日に10回の測定のためにPBSバックグラウンドを収集した。取得したスペクトルは、宇宙スパイクの除去、バックグラウンド減算、平滑化、および正規化のためのカスタムMATLAB(登録商標)(2016a/b)スクリプトを使用して処理された。PLSDAモデリングは、PLS Toolbox(Eigenvector Research)を使用して実行された。