(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/655 20210101AFI20230831BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20230831BHJP
【FI】
H01M50/655
H01M50/103
(21)【出願番号】P 2021111650
(22)【出願日】2021-07-05
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 健介
(72)【発明者】
【氏名】野中 太貴
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-277936(JP,A)
【文献】特開2014-011074(JP,A)
【文献】特開2014-093230(JP,A)
【文献】特開2020-087781(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0160393(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/655
H01M 50/103
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体および電解液と、
前記電極体および前記電解液を収納し、前記電解液用の注液孔を有する外装缶と、
前記外装缶にカシメ固定され、前記注液孔を封止する封止部材と、
前記外装缶と前記封止部材との間に位置する環状のシール部材とを備え、
前記封止部材は、前記注液孔に挿入される軸部と、前記外装缶の外側において前記軸部の径方向外側に位置する鍔部と、前記鍔部から前記外装缶側に突出する略環状の凸部とを含み、
前記封止部材を前記外装缶にカシメ固定した状態において、前記凸部の少なくとも先端側は前記シール部材に埋め込まれ、
前記封止部材を前記外装缶にカシメ固定する前の状態において、前記封止部材の前記凸部と前記シール部材とを当接させたとき、前記外装缶の内側の空間と前記外装缶の外側の空間とを連通させる連通路が前記凸部または前記シール部材に形成される、電池。
【請求項2】
前記連通路は、前記凸部の径方向に延びる貫通孔を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記凸部の突出方向の一部であって前記凸部の根元側に位置する部分に形成される、請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記連通路は、前記凸部の周方向の一部に形成された切り欠き部を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記連通路は、前記シール部材の周方向の一部の厚みを減じた凹部を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
前記連通路の断面積は、前記凸部の最外周の周長と前記凸部の高さとの積の5%以上10%以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の外装缶に電解液を注液した後、電解液注液孔を封止部材により封止する構造が従来から採用されている。このような構造は、たとえば特開2010-277936号公報(特許文献1)、特開2014-11074号公報(特許文献2)、および国際公開第2014/033822号公報(特許文献3)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-277936号公報
【文献】特開2014-11074号公報
【文献】国際公開第2014/033822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構造のように、封止部材が外装缶にカシメ固定される場合と、特許文献2,3に記載の構造のように、封止部材が外装缶に溶接固定される場合とがある。
【0005】
封止部材が外装缶にカシメ固定される場合、外装缶の密閉性を確保するため、カシメ不良の発生させないことが求められる。本技術の目的は、カシメ不良の発生が抑制された電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術に係る電池は、電極体および電解液と、電極体および電解液を収納し、電解液用の注液孔を有する外装缶と、外装缶にカシメ固定され、注液孔を封止する封止部材と、外装缶と封止部材との間に位置する環状のシール部材とを備える。封止部材は、注液孔に挿入される軸部と、外装缶の外側において軸部の径方向外側に位置する鍔部と、鍔部から外装缶側に突出する略環状の凸部とを含む。封止部材を外装缶にカシメ固定した状態において、凸部の少なくとも先端側はシール部材に埋め込まれる。封止部材を外装缶にカシメ固定する前の状態において、封止部材の凸部とシール部材とを当接させたとき、外装缶の内側の空間と外装缶の外側の空間とを連通させる連通路が凸部またはシール部材に形成される。
【発明の効果】
【0007】
本技術によれば、注液孔を封止する封止部材を外装缶にカシメ固定する電池においてカシメ不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】正極板および負極板からなる電極体を示す平面図である。
【
図6】電極体と正極集電部材および負極集電部材との接続構造を示す図である。
【
図7】封口板への正極集電部材および負極集電部材の取付構造を示す図である。
【
図8】
図7におけるVIII-VIII断面図である。
【
図10】封口板と電極体とが接続された状態を示す図である。
【
図11】封止部材を外装缶にカシメ固定する前の状態を示す図である。
【
図12】封止部材を外装缶にカシメ固定した状態を示す図である。
【
図13】カシメ固定される封止部材を示す図である。
【
図20】カシメ固定される前の封止部材およびワッシャを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0010】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。
【0011】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0012】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池など他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。
【0013】
図1は、角形二次電池1の斜視図である。
図2は、
図1におけるII-II断面図である。
【0014】
図1,
図2に示すように、角形二次電池1は、電池ケース100と、電極体200と、絶縁シート300と、正極端子400と、負極端子500と、正極集電部材600と、負極集電部材700と、カバー部材800と、封止部材900とを含む。
【0015】
電池ケース100は、開口を有する有底角筒状の角形外装体110と、角形外装体110の開口を封口する封口板120とからなる。角形外装体110および封口板120は、それぞれ金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製とすることが好ましい。
【0016】
封口板120には、電解液注液孔121が設けられる。電解液注液孔121から電池ケース100内に電解液が注液された後、電解液注液孔121は、封止部材900(リベット)により封止される。
【0017】
封口板120には、ガス排出弁122が設けられる。ガス排出弁122は、電池ケース100内の圧力が所定値以上となった際に破断する。これにより、電池ケース100内のガスが電池ケース100外に排出される。
【0018】
電極体200は、電解液とともに電池ケース100内に収容されている。電極体200は、正極板と負極板がセパレータを介して積層されたものである。電極体200と角形外装体110の間には樹脂製の絶縁シート300が配置されている。
【0019】
電極体200の封口板120側の端部には、正極タブ210Aおよび負極タブ210Bが設けられている。
【0020】
正極タブ210Aと正極端子400とは、正極集電部材600を介して電気的に接続されている。正極集電部材600は、第1正極集電体610および第2正極集電体620を含む。なお、正極集電部材600は、1つの部品から構成されてもよい。正極集電部材600は、金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製とすることがより好ましい。
【0021】
負極タブ210Bと負極端子500とは、負極集電部材700を介して電気的に接続されている。負極集電部材700は、第1負極集電体710および第2負極集電体720を含む。なお、負極集電部材700は、1つの部品から構成されてもよい。負極集電部材700は、金属製であることが好ましく、銅または銅合金製であることがより好ましい。
【0022】
正極端子400は、樹脂製の外部側絶縁部材410を介して封口板120に固定されている。負極端子500は、樹脂製の外部側絶縁部材510を介して封口板120に固定されている。
【0023】
正極端子400は金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製であることがより好ましい。負極端子500は金属製であることが好ましく、銅または銅合金製であることがより好ましい。負極端子500が、電池ケース100の内部側に配置される銅または銅合金からなる領域と、電池ケース100の外部側に配置されるアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる領域を有するようにしてもよい。
【0024】
カバー部材800は、第1正極集電体610と電極体200との間に位置する。カバー部材800は、負極集電体側に設けられてもよい。また、カバー部材800は必須の部材ではなく、適宜省略が可能である。
【0025】
図3は、電極体200を構成する正極板200Aの平面図である。正極板200Aは、矩形状のアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に正極活物質(たとえばリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等)、結着材(ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等)、および導電材(たとえば炭素材料等)を含む正極活物質合剤層が形成された本体部220Aを有する。本体部の端辺から正極芯体が突出しており、この突出した正極芯体が正極タブ210Aを構成する。正極タブ210Aにおける本体部の220Aと隣接する部分には、アルミナ粒子、結着材、および導電材を含む正極保護層230Aが設けられている。正極保護層230Aは、正極活物質合剤層の電気抵抗よりも大きな電気抵抗を有する。正極活物質合剤層は導電材を含まなくてもよい。正極保護層230Aは必ずしも設けられなくてもよい。
【0026】
図4は、電極体200を構成する負極板200Bの平面図である。負極板200Bは、矩形状の銅箔からなる負極芯体の両面に負極活物質合剤層が形成された本体部220Bを有する。本体部220Bの端辺から負極芯体が突出しており、この突出した負極芯体が負極タブ210Bを構成する。
【0027】
図5は、正極板200Aおよび負極板200Bからなる電極体200を示す平面図である。
図5に示すように、電極体200は、一方の端部において各々の正極板200Aの正極タブ210Aが積層され、各々の負極板200Bの負極タブ210Bが積層されるように作製される。正極板200Aおよび負極板200Bは、たとえば各々50枚程度ずつ重ねられる。正極板200Aと負極板200Bとは、ポリオレフィン製の矩形状のセパレータを介して交互に積層される。なお、長尺のセパレータをつづら折りして用いてもよい。
【0028】
図6は、電極体200と正極集電部材600および負極集電部材700との接続構造を示す図である。
図6に示すように、電極体200は、第1電極体要素201(第1積層群)および第2電極体要素202(第2積層群)により構成される。第1電極体要素201および第2電極体要素202の外面にもセパレータが各々配置される。
【0029】
第1電極体要素201の複数枚の正極タブ210Aが第1正極タブ群211Aを構成する。第1電極体要素201の複数枚の負極タブ210Bが第1負極タブ群211Bを構成する。第2電極体要素202の複数枚の正極タブ210Aが第2正極タブ群212Aを構成する。第2電極体要素202の複数枚の負極タブ210Bが第2負極タブ群212Bを構成する。
【0030】
第1電極体要素201と第2電極体要素202の間に、第2正極集電体620と第2負極集電体720とが配置される。第2正極集電体620は、第1開口620Aおよび第2開口620Bを有する。第1正極タブ群211Aおよび第2正極タブ群212Aが、第2正極集電体620上に溶接接続され、溶接接続部213が形成される。第1負極タブ群211Bおよび第2負極タブ群212Bが、第2負極集電体720上に溶接接続され、溶接接続部213が形成される。溶接接続部213は、たとえば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等により形成し得る。
【0031】
図7は、封口板120への正極集電部材600および負極集電部材700の取付構造を示す図である。
図8は、
図7におけるVIII-VIII断面を示す。
図9は、
図7におけるIX-IX断面を示す。
【0032】
まず、
図7,
図8を参照して、封口板120への正極集電部材600の取付について説明する。
【0033】
封口板120の外面側に樹脂製の外部側絶縁部材410が配置される。封口板120の内面側に第1正極集電体610、および樹脂製の絶縁部材630(正極集電体ホルダ)が配置される。次に、正極端子400が、外部側絶縁部材410の貫通孔、封口板120の正極端子取り付け孔、第1正極集電体610の貫通孔、および絶縁部材630の貫通孔に挿入される。そして、正極端子400の先端に位置するカシメ部400Aが第1正極集電体610上にカシメ接続される。これにより、正極端子400、外部側絶縁部材410、封口板120、第1正極集電体610、および絶縁部材630が固定される。なお、正極端子400および第1正極集電体610のカシメ接続された部分は、レーザ溶接等により溶接接続されることが好ましい。なお、第1正極集電体610はザグリ穴610Aを有し、カシメ部400Aはザグリ穴610A内に設けられる。
【0034】
さらに、第2正極集電体620の一部が第1正極集電体610と重なるように、第2正極集電体620が絶縁部材630上に配置される。第2正極集電体620に設けられた第1開口620Aにおいて、第2正極集電体620は第1正極集電体610にレーザ溶接等により溶接接続される。
【0035】
図8に示すように、絶縁部材630は、電極体200側に突出する筒状部630Aを有する。筒状部630Aは、第2正極集電体620の第2開口620Bを貫通し、電解液注液孔121と連通する孔部630Bを規定する。
【0036】
封口板120に正極集電部材600を取り付ける際は、まず、第1正極集電体610が封口板120上の絶縁部材630に接続される。続いて、電極体200に接続された第2正極集電体620が第1正極集電体610に取り付けられる。このとき、第2正極集電体620の一部が第1正極集電体610と重なるように第2正極集電体620が絶縁部材630上に配置される。続いて、第2正極集電体620に設けられた第1開口620Aの周囲が、レーザ溶接等により第1正極集電体610に溶接接続される。
【0037】
次に、
図7および
図9を参照して、封口板120への負極集電部材700の取付について説明する。
【0038】
封口板120の外面側に樹脂製の外部側絶縁部材510が配置される。封口板120の内面側に第1負極集電体710、および樹脂製の絶縁部材730(負極集電体ホルダ)が配置される。次に、負極端子500が、外部側絶縁部材510の貫通孔、封口板120の負極端子取り付け孔、第1負極集電体710の貫通孔、および絶縁部材730の貫通孔に挿入される。そして、負極端子500の先端に位置するカシメ部500Aが第1負極集電体710上にカシメ接続される。これにより、負極端子500、外部側絶縁部材510、封口板120、第1負極集電体710、および絶縁部材730が固定される。なお、負極端子500および第1負極集電体710のカシメ接続された部分は、レーザ溶接等により溶接接続されることが好ましい。
【0039】
さらに、第2負極集電体720の一部が第1負極集電体710と重なるように、第2負極集電体720が絶縁部材730上に配置される。第2負極集電体720に設けられた第1開口720Aにおいて、第2負極集電体720は第1負極集電体710にレーザ溶接等により溶接接続される。
【0040】
封口板120に負極集電部材700を取り付ける際は、まず、第1負極集電体710が封口板120上の絶縁部材730に接続される。続いて、電極体200に接続された第2負極集電体720が第1負極集電体710に取り付けられる。このとき、第2負極集電体720の一部が第1負極集電体710と重なるように第2負極集電体720が絶縁部材730上に配置される。続いて、第2負極集電体720に設けられた第1開口720Aの周囲が、レーザ溶接等により第1負極集電体710に溶接接続される。
【0041】
図10は、封口板120と電極体200とが接続された状態を示す図である。上述したように、正極集電部材600および負極集電部材700を介して第1電極体要素201および第2電極体要素202が封口板120に取り付けられる。これにより、
図10に示すように、第1電極体要素201および第2電極体要素202が封口板120に接続され、電極体200と正極端子400および負極端子500とが電気的に接続される。
【0042】
図10に示す状態から、第1電極体要素201と第2電極体要素202とが1つに纏められる。このとき、第1正極タブ群211Aと第2正極タブ群212Aとが互いに異なる方向に湾曲させられる。第1負極タブ群211Bと第2負極タブ群212Bとが互いに異なる方向に湾曲させられる。
【0043】
第1電極体要素201と第2電極体要素202とは、テープ等により1つに纏められ得る。代替的に、第1電極体要素201と第2電極体要素202とを、箱状ないし袋状に成形した絶縁シート内に配置することで1つに纏めることができる。さらに、第1電極体要素201と第2電極体要素202とを接着により固定することができる。
【0044】
1つに纏められた第1電極体要素201と第2電極体要素202とが絶縁シート300で包まれ、角形外装体110に挿入される。その後、封口板120が角形外装体110に溶接接続され、角形外装体110の開口が封口板120により封口され、密閉された電池ケース100が形成される。
【0045】
その後、封口板120に設けられた電解液注液孔121から非水電解液が電池ケース100に注液される。非水電解液としては、たとえば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびジメチルカーボネート(DMC)を含むものが用いられる。
【0046】
非水電解液が注液された後、電池ケース100内の減圧工程を経て、電解液注液孔121は封止部材900により封止される。以上の工程の実施により、角形二次電池1は完成する。
【0047】
図11は、封止部材900を電池ケース100の封口板120にカシメ固定する前の状態を示す図であり、
図12は、封止部材900を封口板120にカシメ固定した状態を示す図である。
図13は、カシメ固定される封止部材900を示す図である。
【0048】
図11~
図13に示すように、封止部材900は、マンドレル部900Aと、軸部910と、鍔部920と、リブ930(凸部)とを含む。
【0049】
軸部910は、電解液注液孔121に挿入され、封口板120にカシメ固定される。鍔部920は、封口板120の外側において軸部910の径方向外側に位置する。リブ930は、環状に形成され、鍔部920から封口板120側に突出する。リブ930は、その一部に不連続な部分を含むように略環状に形成されてもよい。
【0050】
マンドレル部900Aは、たとえばアルミニウム合金(A3003)などの金属材料から構成される。軸部910、鍔部920、およびリブ930は、たとえばステンレス(SUS430)などの金属材料から構成される。
【0051】
図11,
図12に示すように、封止部材900の鍔部920と封口板120との間にワッシャ1000(シール部材)が設けられる。ワッシャ1000は、封止部材900のリブ930よりも軟質の素材により構成される。ワッシャ1000は、たとえばPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂材料から構成される。
【0052】
図11に示すように、封止部材900を電池ケース100の封口板120にカシメ固定する前の状態において、リブ930の先端とワッシャ1000とが当接する。封止部材900の軸部910が封口板120にカシメ固定された状態においては、
図12に示すように、リブ930はワッシャ1000に埋め込まれる。この状態において、封止部材900の鍔部920はワッシャ1000に密着し、ワッシャ1000は封口板120に密着する。これにより、角形外装体110が密閉され、角形外装体110内の電解液が漏れ出すことが防止される。
【0053】
図11に示す状態において、封止部材900の軸部910、鍔部920、およびリブ930ならびにワッシャ1000に囲まれる空間1100に電解液(主として、減圧工程時に吸い上げられたもの)が存在することがある。このとき、封止部材900が押し込まれても電解液は圧縮されないため、電解液を逃がすための適切な対応が採られない場合、封止部材900のリブ930がワッシャ1000に十分に埋め込まれず、角形外装体110が十分に密閉されない状態で封止部材900の軸部910が封口板120にカシメ固定される状態(本明細書においては、この状態を「カシメ不良」と称する場合がある。)が生じ得る。
【0054】
本実施の形態に係る角形二次電池1においては、後述の連通路940,1010を設けることにより、上述のカシメ不良の発生を抑制している。
【0055】
図14は、封止部材900の断面図である。
図14に示すように、封止部材900のリブ930には、連通路940が形成されている。封止部材900を封口板120にカシメ固定する前の状態において、封止部材900のリブ930とワッシャ1000とを当接させたとき、連通路940は、電池ケース100の内側の空間と電池ケース100の外側の空間とを連通させる。
【0056】
電池ケース100の内側の空間と電池ケース100の外側の空間とを連通させる連通路940が形成されることにより、封止部材900のカシメ固定時に、封止部材900の鍔部920と封口板120の上面との間に残置した電解液の外部への逃げ道が形成され、カシメ不良の発生が抑制される。
【0057】
封止部材900がカシメ固定された状態では、リブ930はワッシャ1000に埋め込まれるため、連通路940は塞がれる。ただし、カシメ固定された封止部材900およびワッシャ1000を封口板120から取り外して分解することにより、カシメ固定前の連通路940の存在を確認することが可能である。
【0058】
次に、
図15から
図19を参照して、連通路940の例について説明する。
【0059】
図15~18の例において、連通路940は、リブ930の径方向に延びる貫通孔により構成される。貫通孔は、リブ930の突出方向の一部であってリブ930の根元側に位置する部分に形成されている。
【0060】
封止部材900のカシメ固定を行う際、リブ930の先端側からワッシャ1000に埋め込まれる。貫通孔をリブ930の根元側に形成することにより、カシメ固定の完了直前まで安定して電解液の逃げ道を確保できる。
【0061】
貫通孔は、
図15に示すように、略四角形の断面形状を有してもよいし、
図16に示すように、略三角形の断面形状を有してもよいし、
図17に示すように、略台形の断面形状を有してもよいし、
図18に示すように、略半円形の断面形状を有してもよい。
【0062】
カシメ固定の完了直前まで安定して電解液の逃げ道を確保する観点から、連通路940の断面形状としては、
図16~
図18に示すように、リブ930の先端側よりもリブ930の根元側の方が幅広のものであることが好ましい。
【0063】
図19の例において、連通路940は、リブ930の周方向の一部に形成された切り欠き部により構成される。
図19に示す連通路940によっても、カシメ固定の完了直前まで安定して電解液の逃げ道を確保できる。
【0064】
図20は、カシメ固定される前の封止部材900およびワッシャ1000を示す図である。一例として、封止部材900の鍔部920の高さ(H1)は0.9mm程度であり、リブ930の高さ(H2)は0.2mm程度であり(H2<H1)、ワッシャ1000の厚み(T)は0.4mm程度である(T>H2)。
【0065】
連通路940の高さ(H3)はリブ930の高さ(H2)の範囲内においてできるだけ高いことが好ましく、リブ930の高さ(H2)の50%以上程度であることが好ましい。
【0066】
一例として、連通路940の断面積は、リブ930の最外周の周長とリブ930の高さ(H2)との積の5%以上10%以下程度である。
【0067】
連通路940の高さおよび断面積を所定の範囲に設定することにより、カシメ固定時の電解液の逃げ道を安定して確保することができる。
【0068】
図21,
図22は、ワッシャ1000の一例を示す図である。
図21はワッシャ1000の上面であり、
図22は、ワッシャ1000の斜視図である。
【0069】
図21、
図22に示すように、ワッシャ1000の周方向の一部の厚みを減じた凹部からなる連通路1010が形成されている。封止部材900を封口板120にカシメ固定する前の状態において、封止部材900のリブ930とワッシャ1000とを当接させたとき、連通路1010は、電池ケース100の内側の空間と電池ケース100の外側の空間とを連通させる。ワッシャ1000に形成された連通路1010によっても、封止部材900に形成された連通路940と同様の効果を奏することができる。
【0070】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 角形二次電池、100 電池ケース、110 角形外装体、120 封口板、121 電解液注液孔、122 ガス排出弁、200 電極体、200A 正極板、200B 負極板、201 第1電極体要素、202 第2電極体要素、210A 正極タブ、210B 負極タブ、211A 第1正極タブ群、211B 第1負極タブ群、212A 第2正極タブ群、212B 第2負極タブ群、213 溶接接続部、220A,220B 本体部、230A 正極保護層、300 絶縁シート、400 正極端子、400A カシメ部、410 外部側絶縁部材、500 負極端子、500A カシメ部、510 外部側絶縁部材、600 正極集電部材、610 第1正極集電体、610A ザグリ穴、620 第2正極集電体、620A 第1開口、620B 第2開口、630 絶縁部材、630A 筒状部、630B 孔部、700 負極集電部材、710 第1負極集電体、720 第2負極集電体、720A 第1開口、730 絶縁部材、800 カバー部材、900 封止部材、900A マンドレル部、910 軸部、920 鍔部、930 リブ、940 連通路、1000 ワッシャ、1010 連通路、1100 空間。