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特許7340578冷却ファンの制御システム、作業機械、および冷却ファンの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】冷却ファンの制御システム、作業機械、および冷却ファンの制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20230831BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20230831BHJP
   F01P 5/04 20060101ALI20230831BHJP
   F01P 7/04 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F9/00 M
F01P5/04 C
F01P7/04 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021166699
(22)【出願日】2021-10-11
(65)【公開番号】P2023057272
(43)【公開日】2023-04-21
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北條 厚
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/026627(WO,A1)
【文献】特開平11-107753(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0026548(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/00
F01P 5/04
F01P 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される作業機と、
前記エンジンの回転数とは独立して回転数を制御可能に構成される冷却ファンと、
前記冷却ファンを制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記エンジンの周波数と、前記冷却ファンの周波数とを取得し、
前記コントローラは、前記作業機が停止している状態において、前記エンジンの回転数が閾値よりも大きく、前記冷却ファンの周波数が前記エンジンの周波数に対し所定の範囲内にあるとき、前記冷却ファンの周波数を変更して、前記冷却ファンの周波数を取得した時点よりも前記冷却ファンと前記エンジンとの周波数の差を大きくするように、冷却ファンを制御する、冷却ファンの制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記冷却ファンの周波数を前記所定の範囲の下限以下に変更する、請求項1に記載の冷却ファンの制御システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記冷却ファンの周波数を前記所定の範囲の下限に変更する、請求項2に記載の冷却ファンの制御システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記エンジンの回転数が前記閾値よりも小さい第2閾値以下にまで低下すると、前記冷却ファンの周波数を変更する制御を解除する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷却ファンの制御システム。
【請求項5】
前記冷却ファンは、作業機械に搭載されており、
前記コントローラは、前記作業機械を作動させるためのオペレータからの指令が与えられると、前記冷却ファンの周波数を変更する制御を解除する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の冷却ファンの制御システム。
【請求項6】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される作業機と、
前記エンジンの回転数とは独立して回転数を制御可能に構成される冷却ファンと、
前記冷却ファンを制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記エンジンの周波数と、前記冷却ファンの周波数とを取得し、
前記コントローラは、前記作業機が停止している状態において、前記エンジンの回転数が閾値よりも大きく、前記冷却ファンの周波数が前記エンジンの周波数に対し所定の範囲内にあるとき、前記冷却ファンの周波数を変更して、前記冷却ファンの周波数を取得した時点よりも前記冷却ファンと前記エンジンとの周波数の差を大きくするように、冷却ファンを制御する、作業機械。
【請求項7】
エンジンと、前記エンジンによって駆動される作業機と、前記エンジンの回転数とは独立して回転数を制御可能に構成される冷却ファンとを備える作業機械における、前記冷却ファンの制御方法であって、
前記作業機が動作しているか否かを判断することと、
前記エンジンの周波数を取得することと、
前記冷却ファンの周波数を取得することと、
前記作業機が停止している状態において、前記エンジンの回転数が閾値よりも大きく、前記冷却ファンの周波数が前記エンジンの周波数に対し所定の範囲内にあるとき、前記冷却ファンの周波数を変更して、前記冷却ファンの周波数を取得した時点よりも前記冷却ファンと前記エンジンとの周波数の差を大きくするように、冷却ファンを制御することと、を備える、冷却ファンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却ファンの制御システム、作業機械、および冷却ファンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作動流体の冷却のために送風を行う冷却ファンの制御システムは、たとえば、国際公開2007/026627号(特許文献1)に記載されている。この文献には、作業機レバーに対する操作状態に基づいて作業機構の休止状態が検出された場合に、冷却ファンの回転数を調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2007/026627号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧駆動式の冷却ファンは、エンジンが高速で回転されている状態でも、冷却装置をそれほど冷却する必要のない場合に冷却ファンが高速で回転されるとエンジン出力が無駄に消費されるため、冷却ファンの回転数を小さくするように制御されていた。エンジンが比較的高速で回転するときに冷却ファンの回転数を制御するのが油圧駆動式の冷却ファンのメリットであるにも拘らず、冷却ファンとエンジンとの間で共振が発生する可能性があり、課題であった。
【0005】
本開示では、共振を抑制でき、かつ冷却ファンの冷却能力を確保できる、冷却ファンの制御システム、作業機械、および冷却ファンの制御方法が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、エンジンと、エンジンによって駆動される作業機と、エンジンの回転数とは独立して回転数を制御可能に構成される冷却ファンと、冷却ファンを制御するコントローラとを備える、冷却ファンの制御システムが提案される。コントローラは、エンジンの周波数と、冷却ファンの周波数とを取得する。コントローラは、作業機が停止している状態において、エンジンの回転数が閾値よりも大きく、冷却ファンの周波数がエンジンの周波数に対し所定の範囲内にあるとき、冷却ファンの周波数を変更して、冷却ファンの周波数を取得した時点よりも冷却ファンとエンジンとの周波数の差を大きくするように、冷却ファンを制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、共振を抑制でき、かつ冷却ファンの冷却能力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に基づく作業機械の構成を概略的に示す側面図である。
図2図1に示される作業機械のシステムの概略構成を示すブロック図である。
図3】コントローラの機能構成を説明するブロック図である。
図4】冷却ファンの周波数の制御に係る処理の流れを示すフローチャートである。
図5】操作レバーの操作と冷却ファンの回転数との関係を示すグラフである。
図6】エンジンの回転数と実施形態の冷却ファンの回転数制御の実行または解除との関係を示すグラフである。
図7】エンジンの回転数と、エンジンおよび冷却ファンの周波数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0010】
<作業機械の構成>
図1は、本開示の実施形態に基づく作業機械の一例としての油圧ショベル100の構成を概略的に示す側面図である。図1に示されるように、本実施の形態の油圧ショベル100は、走行体1と、旋回体2と、作業機3とを主に有している。走行体1と旋回体2とにより、油圧ショベル100の車体が構成されている。
【0011】
走行体1は左右一対の履帯装置1aを有している。この左右一対の履帯装置1aの各々は履帯を有している。左右一対の履帯が回転駆動されることにより油圧ショベル100が自走する。
【0012】
旋回体2は走行体1に対して旋回自在に設置されている。この旋回体2は、運転室(キャブ)2aと、運転席2bと、エンジンルーム2cと、カウンタウェイト2dとを主に有している。運転室2aは、旋回体2のたとえば前方左側(車両前側)に配置されている。運転室2aの内部空間には、オペレータが着座するための運転席2bが配置されている。
【0013】
エンジンルーム2cおよびカウンタウェイト2dの各々は、運転室2aに対して旋回体2の後方側(車両後側)に配置されている。エンジンルーム2cは、エンジンユニット(エンジン、排気処理構造体など)を収納している。エンジンルーム2cの上方はエンジンフードにより覆われている。カウンタウェイト2dは、エンジンルーム2cの後方に配置されている。
【0014】
作業機3は、旋回体2の前方側であって運転室2aのたとえば右側にて軸支されている。作業機3は、たとえばブーム3a、アーム3b、バケット3c、ブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、バケットシリンダ4cなどを有している。ブーム3aの基端部(一端)は、ブームボトムピン5aにより旋回体2に回転可能に連結されている。アーム3bの基端部(一端)は、ブームトップピン5bによりブーム3aの先端部(他端)に回転可能に連結されている。バケット3c(の一端)は、アームトップピン5cによりアーム3bの先端部(他端)に回転可能に連結されている。
【0015】
本実施形態においては、作業機3を基準として、油圧ショベル100の各部の位置関係について説明する。
【0016】
作業機3のブーム3aは、旋回体2に対して、ブームボトムピン5aを中心に回転移動する。旋回体2に対して回動するブーム3aの特定の部分、たとえばブーム3aの先端部が移動する軌跡は円弧状であり、その円弧を含む平面が特定される。油圧ショベル100を平面視した場合に、当該平面は直線として表される。この直線の延びる方向が、油圧ショベル100の車体の前後方向、または旋回体2の前後方向であり、以下では単に前後方向ともいう。油圧ショベル100の車体の左右方向(車幅方向)、または旋回体2の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向であり、以下では単に左右方向ともいう。油圧ショベル100の車体の上下方向、または旋回体2の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向であり、以下では単に上下方向ともいう。
【0017】
前後方向において、車体から作業機3が突き出している側が前方向であり、前方向と反対方向が後方向である。前方向を視て左右方向の右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0018】
前後方向とは、運転室2a内の運転席2bに着座したオペレータの前後方向である。左右方向とは、運転席2bに着座したオペレータの左右方向である。上下方向とは、運転席2bに着座したオペレータの上下方向である。運転席2bに着座したオペレータに正対する方向が前方向であり、運転席2bに着座したオペレータの背後方向が後方向である。運転席2bに着座したオペレータが正面に正対したときの右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。運転席2bに着座したオペレータの足元側が下側、頭上側が上側である。
【0019】
ブーム3aは、ブームシリンダ(ブーム油圧シリンダ)4aにより駆動可能である。この駆動により、ブーム3aは、ブームボトムピン5aを中心に旋回体2に対して上下方向に回動可能である。アーム3bは、アームシリンダ(アーム油圧シリンダ)4bにより駆動可能である。この駆動により、アーム3bは、ブームトップピン5bを中心にブーム3aに対して上下方向に回動可能である。バケット(アタッチメント)3cは、バケットシリンダ(アタッチメント油圧シリンダ)4cにより駆動可能である。この駆動によりバケット3cは、アームトップピン5cを中心にアーム3bに対して上下方向に回動可能である。このように作業機3は駆動可能である。
【0020】
ブームボトムピン5aは、油圧ショベル100の車体に支持されている。ブームボトムピン5aは、旋回体2のフレームの一対の縦板(図示せず)に支持されている。ブームトップピン5bは、ブーム3aの先端に取り付けられている。アームトップピン5cは、アーム3bの先端に取り付けられている。ブームボトムピン5a、ブームトップピン5bおよびアームトップピン5cは、いずれも左右方向に延びている。ブームボトムピン5aはブームフートピンとも呼ばれる。
【0021】
作業機3は、バケットリンク3dを有している。バケットリンク3dは、第1リンク部材3daと、第2リンク部材3dbとを有している。第1リンク部材3daの先端と第2リンク部材3dbの先端とは、バケットシリンダトップピン3dcを介して、相対回転可能に連結されている。バケットシリンダトップピン3dcは、バケットシリンダ4cの先端に連結されている。したがって第1リンク部材3daおよび第2リンク部材3dbは、バケットシリンダ4cにピン連結されている。
【0022】
第1リンク部材3daの基端は、第1リンクピン3ddによりアーム3bに回転可能に連結されている。第2リンク部材3dbの基端は、第2リンクピン3deによりバケット3cの根元部分のブラケットに回転可能に連結されている。
【0023】
ブームシリンダ4aのヘッド側に、圧力センサ6aが取り付けられていてもよい。圧力センサ6aは、ブームシリンダ4aのシリンダヘッド側油室40A内の作動油の圧力(ヘッド圧)を検出することができる。ブームシリンダ4aのボトム側に、圧力センサ6bが取り付けられていてもよい。圧力センサ6bは、ブームシリンダ4aのシリンダボトム側油室40B内の作動油の圧力(ボトム圧)を検出することができる。圧力センサ6a,6bは、ヘッド圧とボトム圧とからなる作動油圧力情報を後述のコントローラ30に出力する。
【0024】
アームシリンダ4bのヘッド側に、圧力センサ6cが取り付けられていてもよい。圧力センサ6cは、アームシリンダ4bのシリンダヘッド側油室内の作動油の圧力(ヘッド圧)を検出することができる。アームシリンダ4bのボトム側に、圧力センサ6dが取り付けられていてもよい。圧力センサ6dは、アームシリンダ4bのシリンダボトム側油室内の作動油の圧力(ボトム圧)を検出することができる。圧力センサ6c,6dは、ヘッド圧とボトム圧とからなる作動油圧力情報を後述のコントローラ30に出力する。
【0025】
バケットシリンダ4cのヘッド側に、圧力センサ6eが取り付けられていてもよい。圧力センサ6eは、バケットシリンダ4cのシリンダヘッド側油室内の作動油の圧力(ヘッド圧)を検出することができる。バケットシリンダ4cのボトム側に、圧力センサ6fが取り付けられていてもよい。圧力センサ6fは、バケットシリンダ4cシリンダボトム側油室内の作動油の圧力(ボトム圧)を検出することができる。圧力センサ6e,6fは、ヘッド圧とボトム圧とからなる作動油圧力情報を後述のコントローラ30に出力する。
【0026】
ブーム3a、アーム3bおよびバケット3cには、それぞれの位置および姿勢の情報を得るための位置センサが設けられていてもよい。位置センサは、ブーム3a、アーム3bおよびバケット3cのそれぞれの位置を得るためのブーム情報、アーム情報およびアタッチメント情報を、後述のコントローラ30に出力する。
【0027】
ブームシリンダ4aに、位置センサとして、ストロークセンサ7aが取り付けられていてもよい。ストロークセンサ7aは、ブームシリンダ4aにおけるシリンダ4aaに対するシリンダロッド4abの変位量をブーム情報として検出する。アームシリンダ4bに、位置センサとして、ストロークセンサ7bが取り付けられていてもよい。ストロークセンサ7bは、アームシリンダ4bにおけるシリンダロッドの変位量をアーム情報として検出する。バケットシリンダ4cに、位置センサとして、ストロークセンサ7cが取り付けられていてもよい。ストロークセンサ7cは、バケットシリンダ4cにおけるシリンダロッドの変位量をアタッチメント情報として検出する。
【0028】
位置センサは、角度センサであってもよい。ブームボトムピン5aの周囲に、角度センサ9aが取り付けられていてもよい。ブームトップピン5bの周囲に、角度センサ9bが取り付けられていてもよい。アームトップピン5cの周囲に、角度センサ9cが取り付けられていてもよい。角度センサ9a,9b,9cは、ポテンショメータであってもよく、ロータリーエンコーダであってもよい。角度センサ9a,9b,9cは、ブーム3aなどの回転角情報(ブーム情報、アーム情報およびアタッチメント情報)を、後述のコントローラ30に出力する。
【0029】
図1に示されるように、側方視において、ブームボトムピン5aとブームトップピン5bとを通る直線(図1中に二点鎖線で図示)と、上下方向に延びる直線(図1中に破線で図示)とのなす角度を、ブーム角θbとする。ブーム角θbは、通常、鋭角である。ブーム角θbは、旋回体2に対するブーム3aの角度を表す。ブーム角θbは、ストロークセンサ7aの検出結果から算出することができ、また角度センサ9aの測定値から算出することができる。
【0030】
側方視において、ブームボトムピン5aとブームトップピン5bとを通る直線と、ブームトップピン5bとアームトップピン5cとを通る直線(図1中に二点鎖線で図示)とのなす角度を、アーム角θaとする。アーム角θaは、側方視でアーム3bが回動する領域におけるブーム3aに対するアーム3bの角度を表す。アーム角θaは、ストロークセンサ7bの検出結果から算出することができ、また角度センサ9bの測定値から算出することができる。
【0031】
側方視において、ブームトップピン5bとアームトップピン5cとを通る直線と、アームトップピン5cとバケット3cの刃先とを通る直線(図1中に二点鎖線で図示)とのなす角度を、バケット角θkとする。バケット角θkは、側方視でバケット3cが回動する領域におけるアーム3bに対するバケット3cの角度を表す。バケット角θkは、ストロークセンサ7cの検出結果から算出することができ、また角度センサ9cの測定値から算出することができる。
【0032】
<システム構成>
次に、作業機械のシステムの概略構成について図2を用いて説明する。図2は、図1に示される作業機械のシステムの概略構成を示すブロック図である。
【0033】
本実施形態におけるシステムは、冷却ファン21を制御するためのシステムである。実施形態におけるシステムは、図1に示される作業機械の一例としての油圧ショベル100と、図2に示されるコントローラ30とを含んでいる。コントローラ30は、油圧ショベル100に搭載されていてもよい。コントローラ30は、油圧ショベル100の外部に設置されていてもよい。コントローラ30は、油圧ショベル100の作業現場に配置されてもよく、油圧ショベル100の作業現場から離れた遠隔地に配置されてもよい。
【0034】
エンジン15は、旋回体2に搭載されている。エンジン15は、エンジンルーム2c内に収納されている。エンジン15は、たとえばディーゼルエンジンである。エンジン15への燃料の噴射量が制御されることにより、エンジン15の出力が制御される。エンジン15は、油圧ショベル100の動作の駆動源である。エンジン15の発生する駆動力によって、走行体1が走行し、旋回体2が走行体1に対して旋回し、また作業機3が動作する。実施形態においては、エンジン15は直列6気筒である。
【0035】
エンジン15に、油圧ポンプ23が連結されている。エンジン15の回転により、油圧ポンプ23が回転作動される。油圧ポンプ23が作動されることにより、油圧ポンプ23から電磁比例制御バルブ24を介して油圧モータ22に作動油が供給されて、油圧モータ22が回転される。油圧モータ22は、冷却ファン21を回転させるためのモータである。実施形態においては、冷却ファン21の羽根枚数は6枚である。冷却ファン21、油圧モータ22および油圧ポンプ23は、旋回体2に搭載されている。
【0036】
冷却ファン21は、油圧モータ22によって回転駆動される。冷却ファン21は、作動油を動力伝達媒体として駆動される油圧駆動ファンである。冷却ファン21は、エンジン15の出力軸に直結しておらず、したがってエンジン15の回転数とは独立して回転数を自在に制御可能に構成されている。具体的には、油圧ポンプ23から油圧モータ22へ供給される作動油の流量に応じて、冷却ファン21の回転数がコントロールされる。
【0037】
インテークエアクーラ25は、エンジン15内に吸引される空気を冷却する。オイルクーラ26は、油圧モータ22および油圧ポンプ23を循環する作動油を冷却する。ラジエータ27は、エンジン15の冷却水を冷却する。インテークエアクーラ25、オイルクーラ26およびラジエータ27は、冷却ファン21に対向配置されている。油圧モータ22によって冷却ファン21が回転されることにより、インテークエアクーラ25、オイルクーラ26およびラジエータ27に対して、冷却のための送風が行われる。
【0038】
油圧モータ22を動作させるための作動油、エンジン15を冷却するための冷却水、および、エンジン15に供給される空気は、エンジン15の作動に関与する作動流体の一例である。冷却ファン21は、作動流体の冷却のために送風を行う。
【0039】
冷却水の経路内に、水温センサ28が設けられている。作動油の経路内に、油温センサ29が設けられている。エンジン15には、エンジン回転数センサ31が付設されている。エンジン15の回転時に、水温センサ28により冷却水の温度が検出され、油温センサ29により作動油の温度が検出され、エンジン回転数センサ31によりエンジン15の回転数が検出される。これらの検出結果は、コントローラ30に対して出力される。
【0040】
冷却ファン21には、ファン回転数センサ32が付設されている。冷却ファン21の回転時に、ファン回転数センサ32により冷却ファン21の回転数が検出される。この検出結果は、コントローラ30に対して出力される。
【0041】
油圧ショベル100は、オペレータによって操作される操作装置33を備えている。操作装置33は、たとえば運転室2a内に配置されている。操作装置33は、作業機3の動作のために操作される作業機操作装置と、旋回体2の旋回動作のために操作される旋回操作装置と、走行体1の動作のために操作される走行操作装置とを含んでいる。作業機操作装置および旋回操作装置は、たとえば操作レバーである。走行操作装置は、たとえば操作ペダルである。
【0042】
操作検出部33Aは、操作装置33の操作量を検出する。操作装置33が操作レバーの場合、操作検出部33Aは、操作レバーの中立位置からの傾きの方向および角度を検出する。操作装置33が操作ペダルの場合、操作検出部33Aは、操作ペダルの踏み込み量を検出する。この検出結果は、コントローラ30に対して出力される。
【0043】
操作検出部33Aは、たとえばポテンショメータなどの変位センサであってもよい。操作装置33は、電気式の操作装置に限られず、パイロット油圧方式の操作装置であってもよい。この場合、操作検出部33Aは、パイロット油の圧力を検出する油圧センサであってもよい。
【0044】
コントローラ30は、図示しないCPU(中央処理装置)および記憶部34などを有している。記憶部34には、冷却ファン21の動作を制御するためのプログラム、およびそのプログラムの実行に必要な各種データが記憶されている。記憶部34にはまた、作業実行にともなって発生するワーキングデータが一時的に記憶される。
【0045】
図3は、コントローラ30の機能構成を説明するブロック図である。実施形態に基づくコントローラ30は、図3に示されるように、作業機状態判別部30Aと、エンジン周波数取得部30Bと、ファン周波数取得部30Cと、共振周波数設定部30Dと、演算処理部30Eと、ファン制御指令部30Fと、タイマ30Tとを含んでいる。
【0046】
作業機状態判別部30Aは、作業機3が動作しているかまたは停止しているかの状態を判別する。エンジン周波数取得部30Bは、エンジン回転数センサ31により検出されたエンジン15の回転数に基づいて、エンジン15の周波数を取得する。ファン周波数取得部30Cは、ファン回転数センサ32により検出された冷却ファン21の回転数に基づいて、冷却ファン21の周波数を取得する。共振周波数設定部30Dは、エンジン15の周波数に対して共振が発生し得る周波数の範囲を設定する。
【0047】
演算処理部30Eは、冷却ファン21の周波数の制御に係る各種の演算を実行する。ファン制御指令部30Fは、冷却ファン21に対して制御信号を出力する。タイマ30Tは、時刻を計時する。演算処理部30Eは、タイマ30Tから現在時刻を読み出すことが可能である。
【0048】
<冷却ファン21の制御>
以上の構成を備えている実施形態の油圧ショベル100における、コントローラ30による冷却ファン21の制御について、以下に説明する。図4は、冷却ファン21の周波数の制御に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
図4に示されるように、ステップS1において、作業機3の動作のために操作される操作レバーが中立状態であるか否かの判断が行われる。コントローラ30に、操作検出部33Aが検出した操作レバーの中立位置からの傾きが入力される。作業機状態判別部30Aは、操作検出部33Aの検出結果に基づいて、作業機3の状態を判別する。具体的に、作業機状態判別部30Aは、操作レバーが中立状態から傾けられているとの検出結果に基づいて、操作レバーに対する操作がされており、作業機3を作動させるためのオペレータからの指令が与えられており、従って作業機3が動作していることを判別する。また作業機状態判別部30Aは、操作レバーが中立状態であるとの検出結果に基づいて、操作レバーに対する操作がされておらず、従って作業機3が停止していることを判別する。
【0050】
操作レバーが中立状態であると判断されると(ステップS1においてYES)、次にステップS2において、所定時間が経過したか否かの判断が行われる。図5は、操作レバーの操作と冷却ファン21の回転数との関係を示すグラフである。図5の横軸は時間を示し、図5の縦軸は冷却ファン21の目標回転数を示す。
【0051】
演算処理部30Eは、タイマ30Tから時刻を読み出す。演算処理部30Eは、ステップS1において操作レバーが中立状態であると初めて判断された時刻から現在時刻までに経過した時間を計算する。演算処理部30Eは、記憶部34から、時間の経過にかかる閾値(所定時間T1)を読み出す。演算処理部30Eは、操作レバーが中立の状態で経過した時間が所定時間T1を越えたか否かを判断する。所定時間T1は、たとえば4秒である。
【0052】
操作レバーが中立であり作業機3が停止している状態で経過した時間が所定時間T1を越えていないと判断されると(ステップS2においてNO)、ステップS1の処理に戻る。そして、ステップS1の操作レバーが中立状態か否かの判断と、ステップS2の所定時間T1を経過したか否かの判断とが繰り返される。
【0053】
操作レバーが中立であって作業機3が停止している状態で所定時間T1が経過し、従って作業機3が停止している状態が所定時間継続したと判断されると(ステップS2においてYES)、次にステップS3において、エンジン15の周波数が取得される。コントローラ30に、エンジン回転数センサ31により検出されたエンジン15の回転数が入力される。エンジン周波数取得部30Bは、エンジン15の回転数に基づいて、エンジン15の周波数を計算する。この計算は、エンジン15の周波数をFe、エンジン15の回転数をNe、エンジン15の気筒数をCとして、以下の計算式に基づいて行われる。
【0054】
Fe=Ne×C/2×60
次にステップS4において、エンジン15の回転数Neが第1閾値よりも大きいか否かの判断が行われる。図6は、エンジン15の回転数と実施形態の冷却ファン21の周波数制御の実行または解除との関係を示すグラフである。図6の横軸はエンジン15の回転数を示す。図6の縦軸における、レバー中立時ロジックのONとは、実施形態の冷却ファン21の周波数制御を実行する設定を示す。図6の縦軸における、レバー中立時ロジックのOFFとは、実施形態の冷却ファン21の周波数制御を解除する設定を示す。
【0055】
演算処理部30Eは、記憶部34から、エンジン15の回転数Neに係る第1閾値TH1を読み出す。演算処理部30Eは、エンジン回転数センサ31により検出されたエンジン15の回転数Neと、第1閾値TH1とを比較して、エンジン15の回転数Neが第1閾値TH1よりも大きいか否かを判断する。第1閾値TH1は、たとえば1400rpmである。
【0056】
エンジン15の回転数Neが第1閾値TH1よりも大きいと判断されると(ステップS4においてYES)、次にステップS5において、冷却ファン21の周波数が取得される。ファン周波数取得部30Cは、冷却ファン21の回転数に基づいて、冷却ファン21の周波数を計算する。この計算は、冷却ファン21の周波数をFf、冷却ファン21の回転数をNf、冷却ファン21の羽根枚数をBとして、以下の計算式に基づいて行われる。
【0057】
Ff=Nf×B/60
冷却ファン21は、インテークエアクーラ25、オイルクーラ26およびラジエータ27に対して、冷却のための送風を行う。インテークエアクーラ25の作動流体である空気の温度、オイルクーラ26の作動流体である作動油の温度、または、ラジエータ27の作動流体である冷却水の温度に従って、目標の冷却ファン21の回転数Nfが設定される。ファン周波数取得部30Cは、上記の計算式を用いて、目標の冷却ファン21の回転数Nfに対応する目標の冷却ファン21の周波数Ffを計算する。
【0058】
図7は、エンジン15の回転数Neと、エンジン15の周波数Feおよび冷却ファン21の周波数Ffとの関係を示すグラフである。図7の横軸はエンジン15の回転数Neを示し、図7の縦軸はエンジン15の周波数Feおよび冷却ファン21の周波数Ffを示す。
【0059】
上述した計算式に従うと、エンジン15の気筒数は一定であるので、エンジン15の周波数Feは、エンジン15の回転数Neに比例する。冷却ファン21の周波数Ffは、エンジン15の周波数Feとは独立して、図7に示される最大値以下の値に設定が可能である。冷却ファン21の周波数Ffとエンジン15の周波数Feとの差が小さいと、冷却ファン21とエンジン15との間で共振が発生する可能性がある。
【0060】
共振周波数設定部30Dは、エンジン15の周波数Feに対して共振が発生し得る所定の周波数の範囲を設定する。共振周波数設定部30Dは、図7に示される、共振が発生し得る冷却ファン21の周波数Ffの上限値および下限値を設定する。共振周波数設定部30Dはたとえば、エンジン15の周波数Fe±10Hz以内の範囲を、共振が発生し得る範囲として設定してもよい。つまり、図7に破線で示される共振が発生し得る範囲の上限は、エンジン15の周波数Fe+10Hzであってもよい。図7に一点鎖線で示される共振が発生し得る範囲の下限は、エンジン15の周波数Fe-10Hzであってもよい。
【0061】
演算処理部30Eは、ステップS6において、冷却ファン21の周波数Ffが、エンジン15の周波数Feに対して共振が発生し得る周波数の範囲の上限値よりも大きいか否かを判断する。演算処理部30Eは、ステップS7において、冷却ファン21の周波数Ffが、エンジン15の周波数Feに対して共振が発生し得る周波数の範囲の下限値よりも大きいか否かを判断する。つまり、ステップS6,S7においては、冷却ファン21の周波数Ffが、エンジン15の周波数Feに対して共振が発生し得る範囲内にあるか否かの判断が行われる。
【0062】
冷却ファン21の周波数Ffが上限値以下であり(ステップS6においてNO)かつ下限値よりも大きい(ステップS7においてYES)と判断されると、すなわち、冷却ファン21の周波数Ffがエンジン15の周波数Feに対して共振が発生し得る所定の範囲内にあると判断されると、ステップS8において、冷却ファン21の周波数Ffが変更される。演算処理部30Eは、冷却ファン21とエンジン15との共振が抑制されるように、ステップS5で冷却ファン21の周波数Ffを取得した時点よりも冷却ファン21の周波数Ffとエンジン15の周波数Feとの差を大きくして、冷却ファン21の周波数Ffが共振が発生し得る範囲から外れるようにする。
【0063】
たとえば演算処理部30Eは、冷却ファン21の周波数Ffを、図7に一点鎖線で示される共振が発生し得る範囲の下限以下に変更することができる。典型的には、演算処理部30Eは、冷却ファン21の周波数Ffを、共振が発生し得る範囲の下限に変更してもよい。
【0064】
冷却ファン21の周波数Ffが上限値より大きい場合(ステップS6においてYES)、または、冷却ファン21の周波数Ffが下限値以下である場合(ステップS7においてNO)、冷却ファン21の周波数Ffの変更はなされない。ステップS5で計算された冷却ファン21の周波数Ffが、そのまま用いられる。
【0065】
ステップS9において、ステップS5で計算された周波数Ff、またはステップS8において変更された周波数Ffに従って、冷却ファン21が制御される。ステップS8で冷却ファン21の周波数Ffが変更された場合、その変更された周波数Ffから、上記の計算式を用いて、目標の冷却ファン21の回転数Nfが計算される。ファン制御指令部30Fから電磁比例制御バルブ24に制御信号が送信されて、油圧ポンプ23から油圧モータ22へ供給される作動油の流量を変更する。供給された作動油によって、油圧モータ22が回転動作する。このようにして、冷却ファン21が、目標の回転数Nfで回転動作するように制御される。
【0066】
次にステップS10において、エンジン15の回転数Neが第2閾値よりも大きいか否かの判断が行われる。図6に示されるように、第2閾値TH2は第1閾値TH1よりも小さい。第2閾値TH2は、たとえば1350rpmである。エンジン15の回転数Neが第1閾値TH1よりも大きい場合に、実施形態に係る冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御が実行される。エンジン15の回転数Neが第1閾値TH1以下に低下しても、エンジン15の回転数Neが第2閾値TH2よりも大きいのであれば、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御が継続される。エンジン15の回転数Neが第2閾値TH2以下にまで低下すると、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御が解除される。
【0067】
演算処理部30Eは、記憶部34から、エンジン15の回転数Neに係る第2閾値TH2を読み出す。演算処理部30Eは、作動流体の温度に従って設定された目標のエンジン15の回転数Neと、第2閾値TH2とを比較して、エンジン15の回転数Neが第2閾値TH2よりも大きいか否かを判断する。
【0068】
エンジン15の回転数Neが第2閾値TH2よりも大きいと判断されると(ステップS10においてYES)、次にステップS11において、操作レバーが中立状態であるか否かの判断が行われる。この判断は、ステップS1と同様に行われる。
【0069】
操作レバーが中立状態であると判断されると(ステップS11においてYES)、ステップS3の処理に戻る。油圧ショベル100を動かすためにオペレータが操作装置33を操作したことで、操作レバーが中立状態から外れたと判断されると(ステップS11においてNO)、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御が解除されて、処理を終了する(エンド)。
【0070】
ステップS1の判断において、操作レバーが中立状態から傾けられており、操作レバーに対する操作がされており、従って作業機3が動作していると判断されると(ステップS1においてNO)、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御は実行されない。ステップS4の判断において、エンジン15の回転数Neが第1閾値TH1以下と判断されると(ステップS4においてNO)、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御は実行されない。ステップS4でエンジン15の回転数Neが第1閾値TH1より大きいと判断された後のステップS10において、エンジン15の回転数Neが第2閾値TH2以下にまで低下したと判断されると(ステップS10においてNO)、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御が解除される。
【0071】
冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御が実行されていない状態においては、作動流体の温度に従って設定された目標の回転数Nfで回転するように、冷却ファン21が制御される。
【0072】
なお図5には、操作レバーが中立の状態で所定時間T1が経過した時点で冷却ファン21の目標回転数を低下させ、その後操作レバーが操作されることで冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御が解除されて、冷却ファン21の目標回転数が低下する前の回転数に戻る挙動が示されている。このとき冷却ファン21の目標回転数は、所定時間T2をかけて徐々に上昇している。所定時間T2は、たとえば2~3秒である。これにより、油圧モータ22に供給される作動油の圧力が急上昇して作動油の流路および各油圧機器に不具合が発生することが、抑制されている。
【0073】
<作用および効果>
上述した説明と一部重複する記載もあるが、実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0074】
図4に示されるように、コントローラ30は、作業機3が停止している状態において、エンジン15の回転数Neが第1閾値TH1よりも大きく、冷却ファン21の周波数Ffがエンジンの周波数Feに対し所定の範囲内にあるとき、冷却ファン21の周波数Ffを変更して、冷却ファン21の周波数を取得した時点よりも冷却ファン21とエンジン15との周波数の差を大きくするように、冷却ファン21を制御する。
【0075】
作業機3が動作している状態では、冷却ファン21により作動流体(作動油)を冷却する冷却能力を優先させる必要があり、またエンジン15の周波数Feが変動することでエンジン15と冷却ファン21の共振は発生しにくい。エンジン15の回転数Neが第1閾値TH1以下であれば、エンジン15と冷却ファン21との共振は発生しにくい。冷却ファン21の周波数Ffがエンジン15の周波数Feに対して共振が発生し得る範囲になければ、共振を抑制するための制御を実行する必要はない。そのため、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御は実行されない。冷却ファン21の回転数Nfを小さくして冷却能力を低下させる運転が行われる時間が短縮されるので、冷却ファン21の冷却能力を確保することができる。
【0076】
作業機3が停止しており、エンジン15の回転数Neが第1閾値TH1よりも大きく、かつ、冷却ファン21の周波数Ffがエンジン15の周波数Feに対して共振が発生し得る範囲にあれば、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御が実行される。これにより、エンジン15と冷却ファン21との共振を回避でき、振動および異音の発生を防止することができる。
【0077】
図4に示されるように、コントローラ30は、冷却ファン21の周波数Ffを、所定の範囲の下限以下に変更してもよい。冷却ファン21の周波数Ffを、エンジン15の周波数Feに対して共振が発生し得る範囲の下限以下にすることで、エンジン15と冷却ファン21との共振を確実に回避できる。また、冷却ファン21の回転数Nfを低速にして、冷却ファン21の回転駆動に用いる動力を低減することで、燃費を向上することができる。
【0078】
図4に示されるように、コントローラ30は、冷却ファン21の周波数Ffを、所定の範囲の下限に変更してもよい。エンジン15と冷却ファン21との共振を確実に回避できる範囲での最大の回転数Nfで冷却ファン21を回転させることで、冷却ファン21の冷却能力の低下を抑制することができる。
【0079】
図4,6に示されるように、コントローラ30は、エンジン15の回転数Neが第1閾値TH1よりも小さい第2閾値TH2以下にまで低下すると、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御を解除してもよい。冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御を実行するための第1閾値TH1と、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御を解除するための第2閾値TH2とを異ならせて、第1閾値TH1と第2閾値TH2との間に差を設けるヒステリシス特性とする。これにより、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御の実行と解除とが、エンジン15の回転数Neのばらつきで頻繁に切り替わることを回避できるので、不必要なエラーの発生を防止することができる。
【0080】
図1,2に示されるように、冷却ファン21は、油圧ショベル100に搭載されている。図4に示されるように、コントローラ30は、油圧ショベル100を作動させるためのオペレータからの指令が与えられると、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御を解除してもよい。作業機3が動作している状態では、共振を抑制するための制御を実行する必要がない。冷却ファン21の回転数Nfを小さくして冷却能力を低下させる運転が行われる時間を短縮することで、冷却ファン21の冷却能力を確保することができる。
【0081】
上記実施形態では、ステップS1,S2において、作業機3が停止している状態が所定時間T1継続したと判断されたときに、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御を実行する例を説明した。冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御を実行するための条件として、エンジン回転数センサ31により検出されたエンジン15の回転数Neが一定である状態が所定時間継続したと判断されることを加えてもよい。エンジン15の回転数Neが変動していると、エンジン15と冷却ファン21との共振が発生しにくく、共振が発生しても短時間で解消されるので、共振が問題になることが少ない。作業機3が停止していることを判断することでエンジン15の回転数Neが一定であると推定されるが、エンジン回転数センサ31の検出結果に基づいて判断することで、エンジン15の回転数Neが一定であることをより精度よく判断することができる。
【0082】
作業機3が旋回体2に対して相対的に停止しているが、走行体1の駆動により油圧ショベル100が自走しているときには、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御を実行しない制御としてもよい。油圧ショベル100では、自走中にエンジン15と冷却ファン21との共振が発生するとしても、自走する頻度が低いので、共振が問題になることが少ない。また、作業機3が旋回体2に対して相対的に停止しているが、旋回体2が走行体1に対して旋回しているときには、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御を実行しない制御としてもよい。油圧ショベル100では、旋回体2の旋回中にエンジン15と冷却ファン21との共振が発生するとしても、旋回する角度は90°が多く短時間で旋回が終了するので、共振が問題になることが少ない。冷却ファン21の回転数Nfを小さくして冷却能力を低下させる運転が行われる時間を短縮することで、冷却ファン21の冷却能力を確保することができる。
【0083】
上記実施形態では、ステップS11において、作業機3を動作させるために操作レバーが操作されたと判断されたときに、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御を解除する例を説明した。この判断に加えて、旋回体2を旋回動作させるための旋回操作装置または走行体1を動作させるための走行操作装置が操作されたときにも、冷却ファン21の周波数Ffを変更する制御を解除してもよい。旋回中または走行中のエンジン15と冷却ファン21との共振が問題になることは少ないので、冷却ファン21の回転数Nfを小さくして冷却能力を低下させる運転が行われる時間を短縮することで、冷却ファン21の冷却能力を確保することができる。
【0084】
上記実施形態では、作業機3の動作のために操作される操作レバーが中立状態であるか否かを検出することで、作業機3が動作しているかまたは停止しているかを判断した。この例に限られず、ブーム3a、アーム3bおよびバケット3cの位置および姿勢の情報を得るための位置センサの検出結果に基づいて、作業機3の動作または停止を判断してもよい。位置センサは、たとえば図1を参照して説明した、ストロークセンサ7a,7b,7c、角度センサ9a,9b,9cのいずれかまたは組み合わせであってもよい。位置センサが異なる時刻に検出した作業機3の姿勢を比較して、作業機3の姿勢が異なると、作業機3が動作していると判断されてもよい。
【0085】
または、図1を参照して説明した、圧力センサ6a,6b,6c,6d,6e,6fにより検出される作動油圧力情報が経時的に変動することで、作業機3が動作していると判断されてもよい。ブームシリンダ4a、アームシリンダ4bおよびバケットシリンダ4cに作動油を供給する油圧ポンプの吐出圧が変動していることが検知されると、作業機3が動作していると判断されてもよい。油圧ショベル100は、作業機3を撮像する撮像装置を備えてもよく、この場合、撮像装置の撮像した画像を解析することによって、作業機3が動作しているか停止しているかを判断してもよい。
【0086】
上記実施形態では、冷却ファン21は油圧駆動ファンであるが、これに限られず、エンジン15の回転数Neに対して冷却ファン21の回転数Nfが自在に制御できるものであればよい。たとえば、冷却ファン21は電動ファンであってもよい。エンジン15の出力軸に連結されたオルタネータが、エンジン15で発生した駆動力で発電し、オルタネータの発電した電力で電動モータが駆動されて、冷却ファン21を回転させてもよい。
【0087】
本開示の思想を適用可能な作業機械は、油圧ショベル100に限られず、ブルドーザ、ホイールローダ、モータグレーダまたはエンジン式フォークリフトなどの、エンジンと冷却ファンとを備える他の種類の作業機械であってもよい。
【0088】
以上のように実施形態について説明を行ったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1 走行体、2 旋回体、3 作業機、3a ブーム、3b アーム、3c バケット、4a ブームシリンダ、4b アームシリンダ、4c バケットシリンダ、6a,6b,6c,6d,6e,6f 圧力センサ、7a,7b,7c ストロークセンサ、9a,9b,9c 角度センサ、15 エンジン、21 冷却ファン、22 油圧モータ、23 油圧ポンプ、24 電磁比例制御バルブ、25 インテークエアクーラ、26 オイルクーラ、27 ラジエータ、28 水温センサ、29 油温センサ、30 コントローラ、30A 作業機状態判別部、30B エンジン周波数取得部、30C ファン周波数取得部、30D 共振周波数設定部、30E 演算処理部、30F ファン制御指令部、30T タイマ、31 エンジン回転数センサ、32 ファン回転数センサ、33 操作装置、33A 操作検出部、34 記憶部、100 油圧ショベル、T1,T2 所定時間、TH1 第1閾値、TH2 第2閾値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7