(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/675 20180101AFI20230831BHJP
F21S 41/13 20180101ALI20230831BHJP
F21S 41/147 20180101ALI20230831BHJP
F21S 41/151 20180101ALI20230831BHJP
F21S 41/265 20180101ALI20230831BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20230831BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20230831BHJP
F21W 102/145 20180101ALN20230831BHJP
F21W 102/165 20180101ALN20230831BHJP
F21W 102/20 20180101ALN20230831BHJP
【FI】
F21S41/675
F21S41/13
F21S41/147
F21S41/151
F21S41/265
B60Q1/14 Z
F21W102:155
F21W102:145
F21W102:165
F21W102:20
(21)【出願番号】P 2021507129
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007358
(87)【国際公開番号】W WO2020189184
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2019051492
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019051493
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019051494
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】アハメド サイード ファヒン
(72)【発明者】
【氏名】後藤 旬
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021914(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/144144(WO,A1)
【文献】特開2011-040174(JP,A)
【文献】特開2016-004641(JP,A)
【文献】特開2018-156862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
B60Q 1/00- 1/56
F21W 102/155
F21W 102/145
F21W 102/165
F21W 102/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺に可視光を照射するための第一光源と、
前記車両の周辺の情報を取得するために赤外光を出射する第二光源と、
前記第一光源から照射された前記可視光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に前記可視光を走査する回転リフレクタと、を備え、
前記回転リフレクタは、前記第二光源から照射された前記赤外光を反射して前記水平方向に走査
し、
前記可視光により前記仮想鉛直スクリーン上に形成される第一配光パターンのうち集光部を形成する可視光と同一水平軸上に前記赤外光が走査されるように、前記第二光源が配置され、
前記赤外光により前記仮想鉛直スクリーン上に形成される第二配光パターンの一部が、前記第一配光パターンよりも前記仮想鉛直スクリーン上の中央領域から離れた側に形成されている、車両用灯具。
【請求項2】
前記第一光源は、前記可視光を出射する複数の発光素子を含み、
前記仮想鉛直スクリーン上の前記同一水平軸上において所定の配列で複数の可視光の像が出射されるように、前記複数の発光素子が配置されており、
前記同一水平軸上において前記複数の可視光の像の配列の端に前記赤外光の像が照射されるように、前記第二光源が配置されている、請求項
1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第二光源は、前記赤外光を出射する複数の発光素子を含み、
前記同一水平軸上において前記複数の発光素子から出射された赤外光の像が前記第一光源から出射された前記可視光の像を挟むように、前記複数の発光素子が配置されている、請求項
1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記車両用灯具は、左側ヘッドランプと右側ヘッドランプとを含み、
前記左側ヘッドランプは、左側第一光源、左側第二光源、および左側光学部材を有し、
前記右側ヘッドランプは、右側第一光源、右側第二光源、および右側光学部材を有し、
前記左側第二光源は、前記仮想鉛直スクリーン上において前記左側第二光源から出射された赤外光が前記左側第一光源から照射された可視光よりも左側に照射されるように配置されており、
前記右側第二光源は、前記仮想鉛直スクリーン上において前記右側第二光源から出射された赤外光が前記右側第一光源から照射された可視光よりも右側に照射されるように配置されている、請求項1
または請求項2に記載の車両用灯具
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車などの車両に用いられる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光源からの可視光および赤外光源からの赤外光をそれぞれ別個の光学部材によって反射して、可視光および赤外光を車両前方に照射する車両用照明装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような車両用照明装置においては、可視光源の光学系と赤外光源の光学系とがそれぞれ独立して設けられているため、可視光の配光と赤外光の配光とを別個で制御して形成する必要があった。
【0005】
そこで、本開示は、車両周囲の照明用の配光に加えてセンシング用の配光を簡便な構成で実現することが可能な車両用灯具を提供することを目的とする。
【0006】
加えて、このような車両用照明装置において、その小型化には改善の余地があった。
【0007】
そこで、本開示は、照明機能を有する部品とともにセンシング機能を有する部品を内蔵しながらも小型化を実現することが可能な車両用灯具を提供することを目的とする。
【0008】
加えて、このような車両用照明装置において、赤外光によるセンシングの精度向上には改善の余地があった。
【0009】
そこで、本開示は、赤外光によるセンシングの精度向上を実現することが可能な車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の車両用灯具は、
車両の周辺に可視光を照射するための第一光源と、
前記車両の周辺の情報を取得するために赤外光を出射する第二光源と、
前記第一光源から照射された前記可視光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に前記可視光を走査する回転リフレクタと、を備え、
前記回転リフレクタは、前記第二光源から照射された前記赤外光を反射して前記水平方向に走査する。
【0011】
この構成によれば、車両周囲の照明用の可視光の配光に加えてセンシング用の赤外光の配光を簡便な構成で実現することが可能な車両用灯具を提供することができる。
【0012】
本開示の車両用灯具において、
前記可視光により前記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンのうち集光部を形成する可視光と同一水平軸上に前記赤外光が走査されるように、前記第二光源が配置されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、赤外光によるセンサ対象領域のうち最もセンシングが必要な領域を重点的にセンシングすることができる。
【0014】
本開示の車両用灯具において、
前記第一光源は、前記可視光を出射する複数の発光素子を含み、
前記仮想鉛直スクリーン上の前記同一水平軸上において所定の配列で複数の可視光の像が出射されるように、前記複数の発光素子が配置されており、
前記同一水平軸上において前記複数の可視光の像の配列の端に前記赤外光の像が照射されるように、前記第二光源が配置されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、照明用の配光パターンの形成とセンシング用の配光の形成とをより簡便な構成で両立させることができる。
【0016】
本開示の車両用灯具において、
前記第二光源は、前記赤外光を出射する複数の発光素子を含み、
前記同一水平軸上において前記複数の発光素子から出射された赤外光の像が前記第一光源から出射された前記可視光の像を挟むように、前記複数の発光素子が配置されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、赤外光によるセンシング領域を広げることができる。
【0018】
本開示の車両用灯具において、
前記車両用灯具は、左側ヘッドランプと右側ヘッドランプとを含み、
前記左側ヘッドランプは、左側第一光源、左側第二光源、および左側光学部材を有し、
前記右側ヘッドランプは、右側第一光源、右側第二光源、および右側光学部材を有し、
前記左側第二光源は、前記仮想鉛直スクリーン上において前記左側第二光源から出射された赤外光が前記左側第一光源から照射された可視光よりも左側に照射されるように配置されており、
前記右側第二光源は、前記仮想鉛直スクリーン上において前記右側第二光源から出射された赤外光が前記右側第一光源から照射された可視光よりも右側に照射されるように配置されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、左右のヘッドランプに赤外光源をそれぞれ内蔵させることで、車両前方領域における可視光配光パターンおよびセンシング用の赤外光配光パターンを簡便に形成することができる。
【0020】
上記目的を達成するために、本開示の車両用灯具は、
車両の周辺に可視光を照射するための第一光源と、
前記車両の周辺の情報を取得するために赤外光を出射する第二光源と、
前記第一光源から照射された前記可視光と前記第二光源から照射された前記赤外光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に沿って前記可視光および前記赤外光を走査する回転リフレクタと、
前記回転リフレクタにより反射された前記可視光および前記赤外光を透過して前記車両の外部へ出射する第一レンズ部と、
前記第一レンズ部から出射されて前記車両の外部の対象物により反射された赤外光を受光する受光部と、
前記対象物により反射された前記赤外光を前記受光部に向けて透過させる第二レンズ部と、を備えている。
【0021】
この構成によれば、照明機能を有する部品とともにセンシング機能を有する部品を内蔵しながらも小型化を実現することが可能な車両用灯具を提供することができる。
【0022】
本開示の車両用灯具において、
前記第一光源と前記第二光源とが配置された配線基板をさらに備えていてもよい。
【0023】
この構成によれば、車両用灯具の部品点数を削減することができる。
【0024】
本開示の車両用灯具において、
前記受光部は、前記車両用灯具の正面視において、前記第二レンズ部に対応する領域内に配置されていてもよい。
【0025】
この構成によれば、車両用灯具の更なる小型化を実現することができる。
【0026】
上記目的を達成するために、本開示の車両用灯具は、
車両の周辺に可視光を照射するための第一光源と、
前記車両の周辺の情報を取得するために赤外光を出射する第二光源と、
前記第一光源から照射された前記可視光と前記第二光源から照射された前記赤外光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に沿って前記可視光および前記赤外光を走査する回転リフレクタと、
前記第一光源から出射され前記回転リフレクタにより反射された前記可視光を透過して前記車両の外部へ出射する第一レンズ部と、
前記第二光源から出射され前記回転リフレクタにより反射された前記赤外光を透過して前記車両の外部へ出射する第二レンズ部と、
前記第二レンズ部から出射されて前記車両の外部の対象物により反射された赤外光を、前記第二レンズ部を介さずに受光する受光部と、を備えている。
【0027】
この構成によれば、第二レンズ部から出射された赤外光の反射光を、第二レンズ部を介さずに受光部により受光しているため、受光部に対して、赤外光の出射光学系(赤外光源や第二レンズ部)からの迷光が入射されることを抑制することができる。これにより、赤外光によるセンシングの精度を向上させることができる。
【0028】
本開示の車両用灯具において、
前記第一光源が配置された第一配線基板と、
前記第二光源が配置された第二配線基板と、をさらに備えていてもよい。
【0029】
この構成によれば、第一光源の配線基板と第二光源の配線基板とを別個で設けることで、放熱性を高めることができる。
【0030】
本開示の車両用灯具において、
前記対象物により反射された前記赤外光を前記受光部に向けて透過させる第三レンズ部をさらに備えていてもよい。
【0031】
この構成によれば、赤外光の反射光をより効率的に受光部へ受光させることができる。
【0032】
本開示の車両用灯具において、
前記受光部は、前記車両用灯具の正面視において、前記第一レンズ部および前記第二レンズ部とは重複しない位置に配置されていてもよい。
【0033】
この構成によれば、第二レンズ部を介さずに赤外光の反射光を受光部により受光させる構成を簡便に実現することができる。
【0034】
本開示の車両用灯具において、
前記受光部は、前記正面視において、前記第二レンズ部の下部に配置されていてもよい。
【0035】
この構成によれば、第二レンズ部を介さずに赤外光の反射光を受光部により受光させる構成として、受光部を第二レンズ部の下部に配置される構成が好ましい。
【0036】
本開示の車両用灯具において、
前記車両の周辺に可視光を照射するための第三光源をさらに備え、
前記第三光源から照射された前記可視光は、前記回転リフレクタにより反射され、前記仮想鉛直スクリーン上における水平方向に沿って走査され、
前記第一光源から照射された可視光は、前記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンのうち集光部を形成し、前記第三光源から照射された可視光は、前記配光パターンのうち拡散部を形成し、
前記第三光源から出射され前記回転リフレクタにより反射された可視光は、前記第二レンズ部を透過して前記車両の外部へ出射されてもよい。
【0037】
この構成によれば、第二レンズ部が第三光源から出射された可視光を透過する機能と赤外光源から出射された赤外光を透過する機能とを備えることで、車両用灯具の小型化を実現することができる。
【発明の効果】
【0038】
本開示に係る車両用灯具によれば、車両周囲の照明用の可視光の配光に加えてセンシング用の赤外光の配光を簡便な構成で実現することができる。
【0039】
加えて、本開示に係る車両用灯具によれば、照明機能を有する部品とともにセンシング機能を有する部品を内蔵しながらも灯具の小型化を実現することができる。
【0040】
加えて、本開示に係る車両用灯具によれば、赤外光によるセンシングの精度向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本開示の実施形態の一例に係る車両用灯具が搭載された車両システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】第一実施形態に係る車両システムの一部の構成を模式的に示したブロック図である。
【
図3】第一実施形態に係るハイビーム用灯具ユニットの上面図である。
【
図4】
図3のハイビーム用灯具ユニットの一部拡大図である。
【
図5】ハイビーム用灯具ユニットが備える第一配線基板の正面図である。
【
図6】ハイビーム用灯具ユニットが備える第二配線基板の正面図である。
【
図7】第一配線基板に設けられた各可視光発光素子から照射される可視光により、仮想鉛直スクリーン上に形成されるスポット光の像を示す図である。
【
図8】第一配線基板に設けられた各可視光発光素子から照射された可視光が回転リフレクタの回転により走査された状態での仮想鉛直スクリーン上の配光パターンを示す図である。
【
図9】第二配線基板に設けられた各可視光発光素子から照射される可視光により、仮想鉛直スクリーン上に形成されるスポット光の像を示す図である。
【
図10】第二配線基板に設けられた各可視光発光素子から照射された可視光が回転リフレクタの回転により走査された状態での仮想鉛直スクリーン上の配光パターンを示す図である。
【
図11】ロービーム用灯具ユニットおよびハイビーム用灯具ユニットから前方に照射される可視光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示す図である。
【
図12】第一配線基板に設けられた各赤外光発光素子から照射された赤外光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される赤外光のスポット光の像を示す図である。
【
図13】各赤外光発光素子から照射される赤外光が、回転リフレクタの回転により走査された状態での配光パターンを示す図である。
【
図14】第二実施形態に係るハイビーム用灯具ユニットの上面図である。
【
図15】
図14のハイビーム用灯具ユニットの一部構成を省略した正面図である。
【
図16】第三実施形態に係るハイビーム用灯具ユニットの上面図である。
【
図17】第三実施形態の変形例に係るハイビーム用灯具ユニットの一部構成を省略した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本開示を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0043】
図1は、車両1に搭載される車両システム2のブロック図を示している。
図1に示すように、本実施形態に係る車両システム2は、車両制御部3と、ヘッドランプ4と、センサ5と、カメラ6と、レーダ7と、HMI(Human Machine Interface)8と、GPS(Global Positioning System)9と、無線通信部10と、地図情報記憶部11とを備えている。さらに、車両システム2は、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備えている。
【0044】
車両制御部3は、車両1の走行を制御するように構成されている。車両制御部3は、例えば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。電子制御ユニットは、プロセッサとメモリを含むマイクロコントローラと、その他電子回路(例えば、トランジスタ等)を含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)及び/又はGPU(Graphics Processing Unit)である。メモリは、各種車両制御プログラム(例えば、自動運転用の人工知能(AI)プログラム等)が記憶されたROM(Read Only Memory)と、各種車両制御データが一時的に記憶されるRAM(Random Access Memory)を含む。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されている。
【0045】
ヘッドランプ4は、車両1の前部に搭載された照明装置であり、車両1の周囲の道路へ向けて光を照射するランプユニット42と、ランプ制御部43(光源制御部の一例)とを備えている。ランプユニット42およびランプ制御部43の詳細な構成については後述する。
【0046】
例えば、車両制御部3は、所定の条件を満たした場合にランプユニット42の点消灯を制御するための指示信号を生成して、当該指示信号をランプ制御部43に送信する。ランプ制御部43は、受信した指示信号に基づいて、ランプユニット42の点消灯を制御する。
【0047】
センサ5は、加速度センサ、速度センサ、ジャイロセンサ等を備える。センサ5は、車両1の走行状態を検出して、走行状態情報を車両制御部3に出力するように構成されている。センサ5は、運転者が運転席に座っているかどうかを検出する着座センサ、運転者の顔の方向を検出する顔向きセンサ、外部天候状態を検出する外部天候センサ及び車内に人がいるかどうかを検出する人感センサ等をさらに備えてもよい。さらに、センサ5は、車両1の周辺環境の照度を検出する照度センサを備えてもよい。
【0048】
カメラ6は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラ6の撮像は、車両制御部3から送信される信号に基づいて制御される。例えば、カメラ6は、ランプユニット42の点消灯の周波数に合わせたフレームレートにより画像を撮像し得る。これにより、カメラ6は、ランプユニット42の点灯時の画像と消灯時の画像の双方を取得することができる。
【0049】
レーダ7は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ又はレーザーレーダ等である。レーダ7は、LiDAR(Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)を備えていてもよい。LiDARは、一般にその前方に非可視光を出射し、出射光と戻り光とに基づいて、物体までの距離、物体の形状、物体の材質などの情報を取得するセンサである。カメラ6とレーダ7は、車両1の周辺環境(他車、歩行者、道路形状、交通標識、障害物等)を検出し、周辺環境情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0050】
HMI8は、運転者からの入力操作を受付ける入力部と、走行情報等を運転者に向けて出力する出力部とから構成される。入力部は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、車両1の運転モードを切替える運転モード切替スイッチ等を含む。出力部は、各種走行情報を表示するディスプレイである。
【0051】
GPS9は、車両1の現在位置情報を取得し、当該取得された現在位置情報を車両制御部3に出力するように構成されている。無線通信部10は、車両1の周囲にいる他車に関する情報(例えば、走行情報)を他車から受信すると共に、車両1に関する情報(例えば、走行情報)を他車に送信するように構成されている(車車間通信)。また、無線通信部10は、信号機や標識灯等のインフラ設備からインフラ情報を受信すると共に、車両1の走行情報をインフラ設備に送信するように構成されている(路車間通信)。地図情報記憶部11は、地図情報が記憶されたハードディスクドライブ等の外部記憶装置であって、地図情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0052】
車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成する。ステアリングアクチュエータ12は、ステアリング制御信号を車両制御部3から受信して、受信したステアリング制御信号に基づいてステアリング装置13を制御するように構成されている。ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキ制御信号を車両制御部3から受信して、受信したブレーキ制御信号に基づいてブレーキ装置15を制御するように構成されている。アクセルアクチュエータ16は、アクセル制御信号を車両制御部3から受信して、受信したアクセル制御信号に基づいてアクセル装置17を制御するように構成されている。このように、自動運転モードでは、車両1の走行は車両システム2により自動制御される。
【0053】
一方、車両1が手動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、アクセルペダル、ブレーキペダル及びステアリングホイールに対する運転者の手動操作に従って、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を生成する。このように、手動運転モードでは、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号が運転者の手動操作によって生成されるので、車両1の走行は運転者により制御される。
【0054】
次に、車両1の運転モードについて説明する。運転モードは、自動運転モードと手動運転モードとからなる。自動運転モードは、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードとからなる。完全自動運転モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはない。高度運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはあるものの車両1を運転しない。運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御のうち一部の走行制御を自動的に行うと共に、車両システム2の運転支援の下で運転者が車両1を運転する。一方、手動運転モードでは、車両システム2が走行制御を自動的に行わないと共に、車両システム2の運転支援なしに運転者が車両1を運転する。
【0055】
車両1の運転モードは、運転モード切替スイッチを操作することで切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、運転モード切替スイッチに対する運転者の操作に応じて、車両1の運転モードを4つの運転モード(完全自動運転モード、高度運転支援モード、運転支援モード、手動運転モード)の間で切り替える。車両1の運転モードは、自動運転車が走行可能である走行可能区間や自動運転車の走行が禁止されている走行禁止区間についての情報または外部天候状態についての情報に基づいて自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、これらの情報に基づいて車両1の運転モードを切り替える。さらに、車両1の運転モードは、着座センサや顔向きセンサ等を用いることで自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、着座センサや顔向きセンサからの出力信号に基づいて、車両1の運転モードを切り替える。
【0056】
(第一実施形態)
次に、本開示の第一実施形態に係る車両システム2の具体的構成について
図2等を参照して説明する。
図2は、車両システム2の一部の構成を模式的に示したブロック図である。車両システム2に搭載されるヘッドランプ4は、車両前部の左側と右側にそれぞれ設けられるが、図面の簡略化のため、
図2では、左右のヘッドランプのうち左側のヘッドランプのみを図示している。
【0057】
図2に示すように、本実施形態に係る車両システム2は、カメラ6として、可視光により車両1の周辺を撮像可能な可視光カメラ6Aと、赤外光により車両1の周辺を撮像可能な赤外線カメラ6Bとを備えている。なお、可視光カメラ6Aと赤外線カメラ6Bとを設ける代わりに、可視光と赤外光の両方を使用してカラー画像と赤外線画像とを同時に撮像可能な撮像素子を用いた単一のカメラを備えていてもよい。また、車両システム2は、画像処理部18と、モニタ19とを備えている。赤外線カメラ6Bは、赤外線(赤外光)の検出により特に夜間でも車両周囲の撮影が可能なカメラである。画像処理部18は、可視光カメラ6Aや赤外線カメラ6Bにより撮影された映像を処理し、車両制御部3やモニタ19に処理された映像信号を送信する。
【0058】
ヘッドランプ4のランプユニット42は、ロービーム用配光パターンを形成するロービーム用灯具ユニット42Lと、ハイビーム用配光パターンを形成するハイビーム用灯具ユニット42H(車両用灯具の一例)とを備えている。ロービーム用灯具ユニット42Lは、パラボラ型あるいはプロジェクタ型の灯具ユニットである。ロービーム用灯具ユニット42Lは、光源としてハロゲンランプ等のフィラメントを有する白熱灯や、メタルハライドランプ等のHID(High Intensity Discharge)ランプ、LED(Light Emitting Diode)等を用いている。
【0059】
ハイビーム用灯具ユニット42Hは、可視光源44(第一光源、第三光源の一例)と、赤外光源45(第二光源の一例)と、光学部材46と、フォトダイオード47(受光部の一例)と、を備えている。
【0060】
ヘッドランプ4のランプ制御部43は、電子制御ユニット(ECU)により構成されており、車両1の自動運転に係る情報に応じて、ランプユニット42の照明状態を所定の照明状態に設定するように構成されている。ここでいう照明状態とは、ランプユニット42を構成する各発光素子の点消灯や点滅周期等を含む。ランプ制御部43は、図示しない電源に電気的に接続されており、CPUやMPU等のプロセッサとROM及びRAM等のメモリとを含むマイクロコントローラ50と、LEDドライバ51,52と、モータドライバ53と、フォトダイオード47用の電流-電圧変換・増幅回路54と、計測回路55とを含んでいる。LEDドライバ51,52は、可視光源44および赤外光源45を構成する各発光素子(LED)をそれぞれ駆動するためのドライバである。モータドライバ53は、光学部材46(具体的には、後述の回転リフレクタ65)を駆動するためのドライバである。電流-電圧変換・増幅回路54は、フォトダイオード47から出力された電流信号(センサ信号)を電圧信号へと変換し、電圧信号を増幅するための回路である。計測回路55は、赤外光源45を駆動するLEDドライバ52から赤外光源45の駆動信号を受信するとともに、フォトダイオード47からの電流信号が電流-電圧変換・増幅回路54により電圧信号に変換された信号を受信する。そして、計測回路55は、これらの受信信号から、赤外光源45からの赤外光の発光タイミングとフォトダイオード47による赤外光の反射光の受光タイミングとの差分を計測し、その結果をマイクロコントローラ50へ送信する。マイクロコントローラ50は、これらのドライバ51~53や各回路54,55をそれぞれ制御する。なお、本実施形態では、車両制御部3とランプ制御部43は、別個の構成として設けられているが、一体的に構成されてもよい。つまり、ランプ制御部43と車両制御部3は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。
【0061】
図3は、ハイビーム用灯具ユニット42Hの上面図である。
図4は、ハイビーム用灯具ユニット42Hの一部拡大図である。
図3に示すように、ハイビーム用灯具ユニット42Hは、各構成部品を取り付けるためのブラケット60を備えている。ブラケット60は、ハイビーム用灯具ユニット42Hの不図示のハウジングに取り付けられている。ブラケット60には、可視光源44の一部および赤外光源45が設けられた第一配線基板61が取り付けられている。第一配線基板61の右方には、ランプ制御部43の構成部品が収容された制御ボックス63が配置されている。また、ブラケット60の第一配線基板61が取り付けられた箇所とは離隔した箇所には、可視光源44の他の一部が設けられた第二配線基板62が取り付けられている。また、制御ボックス63の一部(ここでは、灯具前方側)には、フォトダイオード47が配置されている。
【0062】
図3および
図4に示すように、ブラケット60の第一配線基板61および第二配線基板62と対向する位置には、光学部材46の一部品である回転リフレクタ65が取り付けられている。さらに、ブラケット60には、光学部材46の他の一部品であるレンズ66が取り付けられている。レンズ66は、回転リフレクタ65よりも灯具前方側に設けられている。レンズ66は、
図3および
図4の右側に図示された第一レンズ部67と、第一レンズ部67の左側において第一レンズ部67と連続して形成された第二レンズ部68とから構成されている。第一レンズ部67および第二レンズ部68は、それぞれ、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズとして構成されている。可視光源44および赤外光源45から出射された光は、回転リフレクタ65により反射され、第一レンズ部67または第二レンズ部68を透過して灯具前方へ照射される。
【0063】
回転リフレクタ65は、モータドライバ53(
図2参照)により回転軸Rを中心に一方向に回転する。回転リフレクタ65は、可視光源44から出射された可視光を回転しながら反射し、灯具前方に所望の配光パターンを形成するように構成されている。また、回転リフレクタ65は、赤外光源45から出射された赤外光を回転しながら反射し、灯具前方に照射するように構成されている。
【0064】
回転リフレクタ65は、反射面として機能する、形状の同じ2枚のブレード65aが筒状の回転部65bの周囲に設けられている。回転リフレクタ65の回転軸Rは、第一レンズ部67の光軸Ax1および第二レンズ部68の光軸Ax2に対して斜めになっている。回転リフレクタ65のブレード65aは、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれて、光軸Ax1,Ax2と反射面とが成す角が変化するように捩られた形状を有している。これにより、ブレード65aが、可視光源44や赤外光源45から出射された光を回転しながら反射することで、各光源の光を用いた走査が可能となる。
【0065】
図5は、第一配線基板61の正面図であり、
図6は、第二配線基板62の正面図である。
図5に示すように、第一配線基板61には、可視光源44として可視光を出射可能な複数(本例では、9つ)の発光素子(以下、可視光LEDと称す)44-1~44-9が配置されている。可視光LED44-1~44-9は、第一配線基板61の正面視において、可視光LED44-1から順に逆U字状となるように配列されている。これらの可視光LED44-1~44-9から出射された光により、ハイビーム用配光パターンのうち集光部が形成される。
【0066】
第一配線基板61には、赤外光源45として赤外光を出射可能な複数(本例では、2つ)の赤外光発光素子(以下、IR-LEDと称す)45-1,45-2が配置されている。IR-LED45-1は、第一配線基板61の正面視において、可視光LED44-3の左側に配置されている。IR-LED45-2は、第一配線基板61の正面視において、可視光LED44-7の右側に配置されている。
【0067】
図6に示すように、第二配線基板62上には、可視光源44として可視光を出射可能な複数(本例では、2つ)の可視光LED44-10,44-11が並列配置されている。これら可視光LED44-10,44-11から出射された光により、ハイビーム用配光パターンのうち拡散部が形成される。
【0068】
可視光源44としての各可視光LED44-1~44-11は、例えば可視光を照射可能な白色LEDから構成されている。可視光源44および赤外光源45としては、LEDの代わりに、EL素子やLD素子などの半導体発光素子を光源として用いることも可能である。特に後述するハイビーム用配光パターンの一部を非照射とするための制御には、点消灯が短時間に精度良く行える光源が好ましい。
【0069】
レンズ66のうち右側の第一レンズ部67は、第一配線基板61上に配置された可視光LED44-1~44-9から出射されて回転リフレクタ65で反射された可視光、およびIR-LED45-1,45-2から出射されて回転リフレクタ65で反射された赤外光が透過可能な位置に配置されている。すなわち、ハイビーム用配光パターンの集光部を形成するための可視光と、赤外光とが、第一レンズ部67を透過して灯具前方に照射される。また、レンズ66のうち左側の第二レンズ部68は、第二配線基板62上に配置された可視光LED44-10,44-11から出射され、回転リフレクタ65で反射された可視光が透過可能な位置に配置されている。すなわち、ハイビーム用配光パターンの拡散部を形成するための可視光が、第二レンズ部68を透過して灯具前方に照射される。なお、レンズ66の形状は、要求される配光パターンや照度分布などの配光特性に応じて適宜選択すればよいが、非球面レンズに代えて、例えば、自由曲面レンズが用いられてもよい。
【0070】
図7は、第一配線基板61に設けられた各可視光LED44-1~44-9から照射される可視光により、例えば車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるスポット光の像を示す図である。
図8は、各可視光LED44-1~44-9から照射された可視光が回転リフレクタ65の回転により走査された状態での仮想鉛直スクリーン上の配光パターンP1を示す図である。
【0071】
各可視光LED44-1~44-9から出射された可視光は、回転リフレクタ65により反射されて、第一レンズ部67を透過することで上下左右に反転して、仮想鉛直スクリーン上に
図7に示すようなスポット光の像を形成する。
図7において、像S1が可視光LED44-1から照射されたスポット光の像であり、像S2が可視光LED44-2から照射されたスポット光の像であり、像S3が可視光LED44-3から照射されたスポット光の像であり、像S4が可視光LED44-4から照射されたスポット光の像であり、像S5が可視光LED44-5から照射されたスポット光の像であり、像S6が可視光LED44-6から照射されたスポット光の像であり、像S7が可視光LED44-7から照射されたスポット光の像であり、像S8が可視光LED44-8から照射されたスポット光の像であり、像S9が可視光LED44-9から照射されたスポット光の像である。像S1~S9は、仮想鉛直スクリーン上においてU字状となるように配列されて照射される。このうち、像S3,S4,S5,S6,S7が仮想鉛直スクリーン上の水平線H-H上に照射される。
【0072】
回転リフレクタ65の回転により、各可視光LED44-1~44-9から出射された可視光のスポット光の像S1~S9が左右方向に走査されると、
図8に示すような配光パターンP1が形成される。配光パターンP1は、後述のハイビーム用配光パターンの集光部として形成される。配光パターンP1のうち、複数の可視光LEDから出射された可視光が重複して照射される箇所が特に照度が高くなる。具体的には、配光パターンP1は、仮想鉛直スクリーン上の垂直線V-Vと水平線H-Hとが交差する箇所が最も照度が高くなるように形成されている。
【0073】
図9は、第二配線基板62に設けられた各可視光LED44-10,44-11から照射される可視光により、仮想鉛直スクリーン上に形成されるスポット光の像を示す図であり、
図10は、各可視光LED44-10,44-11から照射された可視光が回転リフレクタ65の回転により走査された状態での仮想鉛直スクリーン上の配光パターンP2を示す図である。
【0074】
可視光LED44-10および可視光LED44-11から出射された可視光は、回転リフレクタ65により反射されて、第二レンズ部68を透過することで上下左右に反転して、仮想鉛直スクリーン上に
図9に示すようなスポット光の像を形成する。
図9において、像S10が可視光LED44-10から照射されたスポット光の像であり、像S11が可視光LED44-11から照射されたスポット光の像である。像S10および像S11のサイズは、
図7に示す各可視光LED44-1~44-9から出射された可視光のスポット光の像S1~S9のサイズよりも大きくなるように形成されている。左側ヘッドランプに搭載される可視光LED44-10,44-11により形成される像S10および像S11は、仮想鉛直スクリーン上において垂直線V-Vの左側において水平線H-Hに沿って並列して照射される。なお、図示は省略するが、右側ヘッドランプに搭載される可視光LED44-10,44-11により形成される像S10および像S11は、仮想鉛直スクリーン上において垂直線V-Vの右側において水平線H-Hに沿って並列して照射される。
【0075】
回転リフレクタ65の回転により、可視光LED44-10および可視光LED44-11から出射された可視光のスポット光の像S10,S11が左右方向に走査されると、
図10に示すような配光パターンP2が形成される。配光パターンP2は、後述のハイビーム用配光パターンの拡散部の一部として形成される。上述の通り、左側ヘッドランプに搭載される可視光LED44-10,44-11により形成される像S10および像S11は、仮想鉛直スクリーン上において垂直線V-Vの左側に照射されるため、拡散部の一部を形成する配光パターンP2は、集光部を形成する配光パターンP1の照射領域のうち左側の部分に形成される。なお、図示は省略するが、右側ヘッドランプに搭載される可視光LED44-10,44-11により形成される像S10および像S11は、仮想鉛直スクリーン上において垂直線V-Vの右側に照射されるため、拡散部の他の一部は、集光部用配光パターンP1の照射領域のうち右側の部分に形成される。
このように、左側ヘッドランプの可視光LED44-10,44-11の配光(配光パターンP2)と右側ヘッドランプの可視光LED44-10,44-11の配光とが合成されることで、拡散部用配光パターンが形成される。そして、集光部用配光パターンP1と拡散部用配光パターンとが合成されることで
図11に示されるハイビーム用配光パターンが形成される。
【0076】
図11は、ロービーム用灯具ユニット42Lおよびハイビーム用灯具ユニット42Hから前方に照射される可視光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンP3を示している。
【0077】
図11に示される可視光の配光パターンP3は、ロービーム用灯具ユニット42Lおよびハイビーム用灯具ユニット42Hから照射される可視光の合成によって形成される。すなわち、配光パターンP3は、ロービーム用灯具ユニット42Lから照射される可視光のロービーム用配光パターンP4と、ハイビーム用灯具ユニット42Hから照射される可視光のハイビーム用配光パターンP1,P2との合成によって形成される。配光パターンP3は、例えば車両前方の領域のうち対向車100の上部(対向車100の運転者の位置)およびその周辺領域には光が照射されないように、各可視光LED44-1~44-11をその領域に対応するタイミングで消灯することにより、その配光が制御されている。これにより、対向車100のドライバへのグレア光を抑制することができる。
【0078】
図12は、第一配線基板61に設けられた各IR-LED45-1,45-2から照射された赤外光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される赤外光のスポット光の像を示す図である。
図13は、各IR-LED45-1,45-2から照射される赤外光が、回転リフレクタ65の回転により走査された状態での配光パターンP5を示す図である。
【0079】
各IR-LED45-1,45-2から出射された赤外光は、回転リフレクタ65により反射されて、第一レンズ部67を透過することで上下左右に反転して、仮想鉛直スクリーン上に
図12に示すようなスポット光の像を形成する。
図12において、像S
IR1がIR-LED45-1から照射された赤外光のスポット光の像であり、像S
IR2がIR-LED45-2から照射された赤外光のスポット光の像である。像S
IR1,S
IR2は、仮想鉛直スクリーン上の水平線H-H上に一定距離離隔して照射される。
【0080】
回転リフレクタ65の回転により、IR-LED45-1,45-2から出射された赤外光のスポット光の像S
IR1,S
IR2が左右方向に走査されると、
図13に示すような配光パターンP5が形成される。配光パターンP5は、水平線H-H上に形成されている。なお、非可視光である赤外光については、対向車のドライバへのグレア光を考慮する必要はない。そのため、配光パターンP5は、可視光のハイビーム用配光パターンP1,P2の制御に関わらず水平線H-Hの領域の全体を略均一に照射するような配光となっている。
【0081】
配光パターンP5のように水平線H-Hに沿って照射される赤外光は、車両前方に存在する物体(対象物)により反射される。ハイビーム用灯具ユニット42Hが備えるフォトダイオード47は、物体により反射された赤外光を受光して電流信号として出力する。出力された赤外光の電流信号は、電流-電圧変換・増幅回路54により電圧信号へと変換されて更に増幅されて、計測回路55へと送信される。計測回路55は、電流-電圧変換・増幅回路54から送信された電圧信号に基づいて、赤外光の反射光の受光タイミングや当該反射光の光強度に関する信号をマイクロコントローラ50へ送信する。マイクロコントローラ50は、計測回路55から受信した赤外光に関する信号(出射光と戻り光に関する信号)に基づいて、物体までの距離、物体の形状、物体の材質などの情報を取得する。これにより、マイクロコントローラ50は、車両前方の歩行者や対向車の存在を検出することができる。そして、マイクロコントローラ50は、赤外光信号に基づいて検出された車両前方の歩行者や対向車へグレアを与えないように、可視光源44(可視光LED44-1~44-11)の点消灯を制御する。また、マイクロコントローラ50は、赤外光信号に基づいて検出された車両周囲の情報に関する信号を、車両制御部3へ送信する。車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、マイクロコントローラ50から取得した周辺環境情報に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成することができる。
【0082】
以上説明したように、第一実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hは、車両の周辺に可視光を照射するための可視光源44と、車両の周辺の情報を取得するために赤外光を出射する赤外光源45と、可視光源44から照射された可視光を反射しながら回転し、車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に可視光を走査する回転リフレクタ65と、を備えている。また、回転リフレクタ65は、赤外光源45から照射された赤外光を反射して水平方向に走査する。これにより、車両周囲を照明するための可視光の配光パターンP1,P2に加えてセンシング用の赤外光の配光パターンP5を簡便な構成で実現することができる。また、可視光源44と赤外光源45とフォトダイオード47とが単一のハイビーム用灯具ユニット42H内に搭載されているため、可視光の照射と赤外光の照射とを両立しながらハイビーム用灯具ユニット42Hの小型化を実現することができる。
【0083】
本実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hにおいては、ハイビーム用配光パターンのうち集光部を形成する可視光が走査される水平線H-H(水平軸)上に赤外光が走査されるように、赤外光源45が配置されている。これにより、赤外光によるセンサ対象領域のうち最もセンシングが必要な領域を重点的にセンシングすることができる。
【0084】
本実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hにおいては、可視光源44を構成する複数の可視光LED44-1~44-9のうち、可視光LED44-3~44-7は、仮想鉛直スクリーン上の水平線H-H上に複数の可視光の像が出射されるように配置されている。そして、赤外光源45を構成するIR-LED45-1,45-2は、可視光LED44-3~44-7から出射される可視光と同一の水平線H-H(同一水平軸)上において可視光の像の配列の端に赤外光の像が照射されるように、配置されている。より具体的には、赤外光源45を構成するIR-LED45-1およびIR-LED45-2から出射された赤外光の像が、水平線H-H上において可視光LED44-3~44-7から出射された可視光の像を挟むようにIR-LED45-1,45-2が配置されている。これにより、照明用の配光パターンとセンシング用の配光パターンとを、より簡便な構成で形成することができる。加えて、赤外光によるセンシングの領域を広げることができる。
【0085】
なお、上記の第一実施形態においては、左右それぞれのランプユニット42に設けられたハイビーム用灯具ユニット42Hにおいて、IR-LED45-1およびIR-LED45-2から出射された赤外光の像が水平線H-H上において可視光LED44-1~44-9から出射された可視光の像を挟むようにIR-LED45-1,45-2が配置されているが、この例に限られない。例えば、左側のヘッドランプを構成するランプユニットにおいては、仮想鉛直スクリーン上においてIR-LEDから照射された赤外光が可視光LEDから照射された可視光よりも左側に照射されるように少なくとも一つのIR-LEDが配置され、右側のヘッドランプを構成するランプユニットにおいては、仮想鉛直スクリーン上においてIR-LEDから照射された赤外光が可視光LEDから照射された可視光よりも右側に照射されるように少なくとも一つのIR-LEDが配置されるようにしてもよい。このように、左右のヘッドランプのそれぞれに赤外光源45(IR-LED)を内蔵させることで、車両前方領域における可視光配光パターンおよびセンシング用の赤外光配光パターンを簡便に形成することができる。
【0086】
上記の第一実施形態においては、非可視光用光源として赤外光を照射する赤外光源45を例にとって説明したが、この例に限られない。例えば、非可視光用光源として、紫外線やX線などの赤外光以外の非可視光線を照射する光源を採用してもよい。
【0087】
上記の第一実施形態においては、灯具の一例としてヘッドランプ4に備わるハイビーム用灯具ユニット42Hを例にとって説明したが、車両後方に設けられたストップランプやテールランプ等の標識灯として構成されていてもよい。この構成によれば、ストップランプやテールランプとしての配光機能と車両後方の対象物の検知機能とを単一の灯具ユニットで両立することができる。
【0088】
上記の第一実施形態においては、ハイビーム用灯具ユニット42H内に、回転リフレクタ65により反射された可視光および赤外光を透過させるレンズ66が設けられているが、必ずしもレンズ66を設ける必要はない。回転リフレクタ65により反射された可視光および赤外光が、レンズを介することなくハイビーム用灯具ユニット42Hの前方に直接照射される構成としてもよい。
【0089】
上記の第一実施形態においては、車両前方に照射される赤外光が車両前方に存在する物体に反射された場合の戻り光がハイビーム用灯具ユニット42Hに搭載されたフォトダイオード47により受光されているが、この例に限られない。赤外光の戻り光を、ヘッドランプ4とは別の箇所に設けられた赤外線カメラ6Bにより撮影し、撮影された赤外光による白黒映像を画像処理部18で処理することにより、車両制御部3は、車両前方の歩行者や対向車の存在を検出するようにしてもよい。また、赤外線カメラ6Bにより撮影された映像を車内に設けられたモニタ19に表示することで、車両1のドライバが車両前方の歩行者や対向車の存在を確認することもできる。
【0090】
さらに、可視光源44や赤外光源45を構成する各LEDの位置は、
図3に図示されているものに限られず、
図3とは異なる位置に配置されていてもよい。
【0091】
(第二実施形態)
次に、本開示の第二実施形態について、
図14および
図15を参照して説明する。
図14は、第二実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42HAの上面図である。
図15は、ハイビーム用灯具ユニット42HAの一部構成を省略した正面図である。
【0092】
図14に示すように、第二実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42HAは、フォトダイオード47がレンズ66Aのうち第二レンズ部68Aを透過した赤外光の戻り光を受光可能な位置に配置されている構成を備えている点で、フォトダイオード47がレンズ66を介さずに戻り光を受光する位置に配置されている構成を備えている第一実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hと相違する。
【0093】
具体的には、第二実施形態においては、フォトダイオード47は、レンズ66Aのうち第二レンズ部68Aの後面と対向する位置に配置されている。すなわち、
図15に示すように、フォトダイオード47は、ハイビーム用灯具ユニット42HAの正面視において、第二レンズ部68Aに対応する領域内に配置されている。フォトダイオード47がこのような位置に配置されていることにより、第二実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42HAは、第一実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hよりも更なる小型化を実現することができる。
【0094】
このように、第二実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42HAが備えるレンズ66Aは、可視光源44から出射され回転リフレクタ65により反射された可視光と、赤外光源45から出射され回転リフレクタ65により反射された赤外光を透過して灯具前方へ出射する第一レンズ部67と、第一レンズ部67から出射されて車両の外部の対象物により反射された赤外光(戻り光)をフォトダイオード47に向けて透過させる第二レンズ部68Aとから構成されている。この構成によれば、赤外光を用いたセンシング機能を有する部品を内蔵しながらも、ハイビーム用灯具ユニット42HAの小型化を実現することができる。
【0095】
第二実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42HAにおいては、フォトダイオード47は、正面視において、第二レンズ部68Aに対応する領域内に配置されている。フォトダイオード47がこのような位置に配置されていることにより、第二実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42HAは、第一実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hよりも更なる小型化を実現することができる。
【0096】
第二実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42HAにおいては、可視光源44と赤外光源45とが同一の第一配線基板61に搭載されている。これにより、ハイビーム用灯具ユニット42HAの部品点数を削減することができる。
【0097】
第二実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42HAにおいては、第二配線基板62に搭載された可視光源44(可視光LED44-10,44-11)から出射されて回転リフレクタ65により反射された可視光が第二レンズ部68Aを透過して灯具前方へ照射されるとともに、第一配線基板61に搭載された赤外光源45から出射されて車両周囲の対象物により反射された赤外光の戻り光が第二レンズ部68Aを透過してフォトダイオード47により受光される。すなわち、レンズ66Aの第二レンズ部68Aは、発光素子から出射されて拡散部用配光パターンP2を形成する光を透過する機能に加えて、受光素子が受光する戻り光を透過する機能を備えている。このように、第二レンズ部68Aが複数の機能を備えることで、ハイビーム用灯具ユニット42HAの小型化が実現されている。
【0098】
(第三実施形態)
次に、本開示の第三実施形態について、
図16を参照して説明する。
図16は、第三実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42HBの上面図である。
【0099】
図16に示すように、第三実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42HBは、赤外光源45およびフォトダイオード47の配置が、第一実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hや第二実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42HAと相違している。
【0100】
具体的には、ハイビーム用灯具ユニット42HBにおいては、赤外光源45は、第一配線基板61上ではなく、第二配線基板62上に搭載されている。これにより、赤外光源45から出射されて回転リフレクタ65により反射された赤外光は、レンズ66のうち第二レンズ部68を透過して灯具前方へ出射される。
【0101】
ハイビーム用灯具ユニット42HBにおいては、第二レンズ部68のさらに左側にフォトダイオード47と第三レンズ部69が配置されている。なお、
図16においては、第三レンズ部69は、レンズ66と別体として図示されているが、レンズ66と一体化されていてもよい。
【0102】
このように、第三実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42HBが備えるレンズ66は、可視光源44から出射され回転リフレクタ65により反射された可視光を透過して灯具前方へ出射する第一レンズ部67と、赤外光源45から出射され回転リフレクタ65により反射された赤外光を透過して灯具前方へ出射する第二レンズ部68とを備えている。さらに、ハイビーム用灯具ユニット42HBは、第二レンズ部68から出射されて車両外部の対象物により反射された赤外光の戻り光を、第二レンズ部68を介さずに受光するフォトダイオード47をさらに備えている。この構成によれば、第二レンズ部68から出射された赤外光の戻り光を、第二レンズ部68を介さずにフォトダイオード47により受光することができる。そのため、フォトダイオード47に対して、赤外光の出射光学系(赤外光源45や第二レンズ部68)からの迷光が入射されることを抑制し、赤外光によるセンシングの精度を向上させることができる。また、赤外光の戻り光をフォトダイオード47に向けて透過させる第三レンズ部69を備えていることにより、戻り光をより効率的にフォトダイオード47へ受光させることができる。
【0103】
第三実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42HBにおいては、第一配線基板61に可視光源44が配置され、第二配線基板62に赤外光源45が配置されている。このように、可視光源44の配線基板と赤外光源45の配線基板とを別個で設けることで、各光源44,45から発せられた熱の放熱性を高めることができる。
【0104】
なお、
図16では詳細な図示を省略しているが、第二配線基板62には赤外光源45に加えて可視光源44として可視光LED44-10,44-11(
図6参照)が搭載されていてもよい。この構成によれば、レンズ66の第二レンズ部68は、可視光LED44-10,44-11から出射されて拡散部用配光パターンP2を形成する可視光を透過する機能に加えて、赤外光源45から出射された赤外光を透過する機能を備えている。このように、第二レンズ部68が複数の機能を備えることで、ハイビーム用灯具ユニット42HBの小型化が実現されている。
【0105】
ハイビーム用灯具ユニット42HBにおいては、フォトダイオード47が第二レンズ部68を介さずに赤外光の戻り光を受光するための構成として、第二レンズ部68の左側にフォトダイオード47と第三レンズ部69が配置されているが、この例に限られない。
図17は、第三実施形態の変形例に係るハイビーム用灯具ユニット42HCの一部構成を省略した正面図である。
図17に示すように、フォトダイオード47および第三レンズ部69Aは、ハイビーム用灯具ユニット42HCの正面視において、第二レンズ部68の下部領域に配置されていてもよい。熱い空気は上方に向かって流れ、冷たい空気は下方に向かって流れるため、熱対策の面では、フォトダイオード47をハイビーム用灯具ユニット42HCの下部に配置しておくことが好ましい。
【0106】
図16および
図17の例では、赤外光の戻り光を透過する第三レンズ部69がフォトダイオード47に対応して設けられているが、第三レンズ部69を設けずに、フォトダイオード47が赤外光の戻り光を直接受光する構成としてもよい。
【0107】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本開示を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0108】
本出願は、2019年3月19日出願の日本特許出願2019-51492号、2019年3月19日出願の日本特許出願2019-51493号、および2019年3月19日出願の日本特許出願2019-51494号に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。