(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】塞栓装置およびそのコイル
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
A61B17/12
(21)【出願番号】P 2021520110
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(86)【国際出願番号】 CN2019110019
(87)【国際公開番号】W WO2020073902
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】201811170237.9
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516346171
【氏名又は名称】マイクロポート・ニューロテック(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ユエンイー
(72)【発明者】
【氏名】ペン,ユンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ペン
(72)【発明者】
【氏名】ジャー,シュー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イーチュン ブルース
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/086479(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/105479(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/178282(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/086477(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B17/12-17/138
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる平面に配置された少なくとも4つの構造要素を連結することにより形成されるコイルであって、
前記少なくとも4つの構造要素は、少なくとも2つのC型要素と、少なくとも1つのO型要素と、少なくとも1つのΩ型要素とを含み、
前記少なくとも2つのC型要素は、2つの隣接する平面に配置され、順次連結されてS型構造を形成し、
前記Ω型要素は、前記C型要素の開口部よりも小さい開口部を有
し、
前記構造要素の総数は6つであり、前記C型要素の数は2つであり、
前記コイルが、それぞれ異なる平面に配置された、O型要素と、Ω型要素と、C型要素と、C型要素と、Ω型要素と、Ω型要素とを順次連結することにより形成されるコイル。
【請求項2】
異なる平面に配置された少なくとも4つの構造要素を連結することにより形成されるコイルであって、
前記少なくとも4つの構造要素は、少なくとも2つのC型要素と、少なくとも1つのO型要素と、少なくとも1つのΩ型要素とを含み、
前記少なくとも2つのC型要素は、2つの隣接する平面に配置され、順次連結されてS型構造を形成し、
前記Ω型要素は、前記C型要素の開口部よりも小さい開口部を有し、
前記構造要素の総数は8つであり、前記C型要素の数は6つであり、
前記コイルが、それぞれ異なる平面に配置された、O型要素と、C型要素と、C型要素と、C型要素と、C型要素と、C型要素と、C型要素と、Ω型要素とを順次連結することにより形成されるコイル。
【請求項3】
前記S型構造が配置される前記2つの隣接する平面は、60°~120°の角度を形成する、請求項1
又は2に記載のコイル。
【請求項4】
前記S型構造が配置される前記2つの隣接する平面によって形成される前記角度は、90°である、請求項
3に記載のコイル。
【請求項5】
前記Ω型要素は、円周の75%以上100%未満の弧長を有し、
前記C型要素は、円周の50%以上75%未満の弧長を有する、請求項1
又は2に記載のコイル。
【請求項6】
6つの前記構造要素が6面体を構成し、前記6面体の3つの軸のそれぞれには、1つのΩ型要素が配置されている、請求項
1に記載のコイル。
【請求項7】
前記コイルは管状体を巻くことによって形成される、請求項1~
5のいずれか一項に記載のコイル。
【請求項8】
前記管状体は金属、合金、またはポリマーフィラメントを螺旋状に巻くことにより形成される、請求項
7に記載のコイル。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載されるコイルを少なくとも1つ含む塞栓装置。
【請求項10】
前記塞栓装置は複数のコイルを含み、前記複数のコイルは並べられて且つ端部と端部とが連結され、任意の隣接する2つのコイルにおいて、1つのコイルは他のコイルに対して前記塞栓装置の軸の周りにねじられる、請求項
9に記載の塞栓装置。
【請求項11】
任意の隣接する2つのコイルにおいて、1つのコイルは他のコイルに対して前記塞栓装置の軸の周りに0°~90°の角度ねじられる、請求項
10に記載の塞栓装置。
【請求項12】
前記塞栓装置の最遠端に配置される前記構造要素は、前記O型要素である、請求項
9に記載の塞栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の分野に関し、特に頭蓋内動脈瘤の治療で使用するための塞栓装置およびそのコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
頭蓋内動脈瘤としても知られる脳動脈瘤は、我々の健康にとって深刻な脅威である。画像技術および血管内で使用するための生体材料の開発により、危険性がより低く、外傷がより少ないために、血管内インターベンションが頭蓋内動脈瘤の第1選択の治療としてクリッピング術に取って代わってきている。
【0003】
現在、動脈瘤の治療は通常、コイルによって遂行される。動脈瘤の塞栓形成の過程において、対応する形状が所定の形状のコイルにより動脈瘤内に形成され、その結果、所望の塞栓形成効果を達成する。このような治療において、コイルの初期充填密度が塞栓形成効果の長期安定性を決定する1つの重要な要素であり、コイル充填密度が高いほど、より良い臨床治療成果をもたらすことができる。
【0004】
既存のコイルは3次元および2次元の構造を含む。大抵の場合、所望のコイル形状は特定の3次元構造と2次元構造との両方の組み合わせで構成される。3次元構造は動脈瘤の内腔に安定したフレームを構築し、動脈瘤のネックと2次元構造とに支持力を提供するように設計され、所望の充填密度を達成するために動脈瘤の空き空間を埋めている。しかしながら、既存のコイルの3次元構造には、安定したバスケット形成と適合性のある充填との両方を達成することが難しいという著しい欠点がある。たとえば、それらの構造要素は単純な8の字形、O型、またはΩ型コイルであり、圧縮することが難しく、不十分な適合性のため、様々な形状およびサイズの異なる動脈瘤の塞栓形成にはそれらのコイルは適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これを考慮して、本発明は十分な安定性と満足のいく適合性との両方を備え、異なる形状およびサイズの動脈瘤に適応することができ、安定し、適合性があり、密度の高い塞栓形成を可能にする、塞栓装置およびそのコイルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、異なる平面に配置された少なくとも4つの構造要素を連結することにより形成されるコイルが提案されている。前記少なくとも4つの構造要素は、少なくとも2つのC型要素と、少なくとも1つのO型要素またはΩ型要素とを含み、前記少なくとも2つのC型要素は、2つの隣接する平面に配置され、順次連結されてS型構造を形成する。
【0007】
さらに、前記S型構造が配置される前記2つの隣接する平面は、60°~120°の角度を形成することが好ましい。
【0008】
さらに、前記S型構造が配置される前記2つの隣接する平面の角度は、80°~100°であることが好ましい。
【0009】
さらに、前記S型構造が配置される前記2つの隣接する平面によって形成される前記角度は、90°であることが好ましい。
【0010】
さらに、前記コイルにおいて、前記Ω型要素は前記C型要素の開口部より小さい開口部を有することが好ましい。
【0011】
さらに、前記Ω型要素は、円周の75%以上100%未満の弧長を有し、前記C型要素は、円周の50%以上75%未満の弧長を有することが好ましい。
【0012】
さらに、前記コイルにおいて、前記構造要素の総数は6つであり、前記C型要素の数は2つであることが好ましい。
【0013】
さらに、6つの前記構造要素が3つの軸を有する6面体を構成し、前記6面体の3つの軸のそれぞれには、1つのΩ型要素が配置されることが好ましい。
【0014】
さらに、前記コイルにおいて、前記コイルは、それぞれが異なる平面に配置される、O型要素と、Ω型要素と、一方のC型要素と、他方のC型要素と、他のΩ型要素と、さらに他のΩ型要素とを順次連結することによって形成されることが好ましい。
【0015】
さらに、前記コイルにおいて、前記構造要素の総数は8つであり、前記C型要素の数は6つであることが好ましい。
【0016】
さらに、前記コイルにおいて、前記コイルは、それぞれが異なる平面に配置された、O型要素と、C型要素の1つと、C型要素の他の1つと、C型要素のさらにもう1つと、C型要素のさらにもう1つと、C型要素のさらにもう1つと、C型要素の残り1つと、Ω型要素とを順次連結することによって形成されることが好ましい。
【0017】
さらに、前記コイルは管状体を巻くことによって形成されることが好ましい。
【0018】
さらに、前記管状体は金属、合金、またはポリマーフィラメントを螺旋状に巻くことにより形成されることが好ましい。
【0019】
本発明の一態様によれば、上記記載されるコイルを少なくとも1つ含む塞栓装置が提案される。
【0020】
さらに、前記塞栓装置は複数のコイルを含み、前記複数のコイルは並べられて且つ端部と端部とが連結され、任意の隣接する2つのコイルにおいて、1つのコイルは他のコイルに対して前記塞栓装置の軸の周りにねじられることが好ましい。
【0021】
さらに、前記塞栓装置において、任意の隣接する2つのコイルにおいて、1つのコイルは他のコイルに対して前記塞栓装置の軸の周りに0°~90°の角度ねじられることが好ましい。
【0022】
さらに、前記塞栓装置において、前記塞栓装置の最遠端に配置される前記構造要素は前記O型要素であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
提案された塞栓装置およびそのコイルにおいて、コイルは異なる平面に配置された少なくとも4つの構造要素を連結することにより形成され、前記少なくとも4つの構造要素は、少なくとも2つのC型要素と、少なくとも1つのO型要素またはΩ型要素とを含み、前記少なくとも2つのC型要素は、2つの隣接する平面に配置され、順次連結されてS型構造を形成する。3次元のS型構造は非常に可撓性および圧縮性が高く、コイルの形状を簡単に変化させ、様々な動脈瘤形状に適合させる。さらに、Ω型要素およびO型要素は圧縮に対する耐性が高く、強い支持力を提供することができ、コイルの十分な安定性を確保することができる。両タイプの構造要素の利点により、コイルは優れた安定性と優れた適合性との両方を有する。そのため、それは様々な形状およびサイズの動脈瘤に適応することができ、安定し、適合性があり、密度の高い塞栓形成を可能にする。
【0024】
また、S型構造が配置される2つの隣接する平面は、好ましくは60°~120°の角度、より好ましくは90°の角度を形成する。これにより、S型構造の空間的可撓性能のさらなる向上をもたらすことができ、従ってコイルの適合性の向上をもたらすことができる。
【0025】
さらに、塞栓装置は複数のコイル、たとえば2個から10個のコイルを含んでもよく、任意の隣接する2つのコイルにおいて1つのコイルは他のコイルに対して前記塞栓装置の軸の周りにねじられる。これによって、塞栓装置の安定性を更に良くし、その結果、さらに良好な動脈瘤塞栓形成効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0026】
添付した図面は、本発明をよりよく理解するために提供されているもので、決してそれを限定するものではない。これらの図面は以下の通りである。
これらの図面において、10、20、30はコイル、11はΩ型要素、12はC型要素、13はO型要素を示している。
【
図1】6面体の形状を有する本発明の実施形態1に係るコイルの構造概略図である。
【
図3】
図1のコイル内の2つのC型要素からなるS型構造を模式的に示す。
【
図4】5面体の形状を有する本発明の実施形態2に係るコイルの簡略図である。
【
図5】ねじられていない2つの6面体形状のコイルを含む、本発明の実施形態4に係る塞栓装置の簡略図である。
【
図6】2つのコイルがねじられている、
図5の塞栓装置の図である。
【
図7】ねじられている2つの5面体形状のコイルを含む、本発明の実施形態4に係る塞栓装置の簡略図である。
【
図8】ねじられていない2つの8面体形状のコイルを含む、本発明の実施形態4に係る塞栓装置の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、添付した図面を参照して、特定の実施形態として以下に今まで以上に詳細に説明される。本発明の利点および特徴は、以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。なお、図は必ずしも正確な縮尺で描かれているわけではなく、非常に簡略化された形式で提供されており、開示された実施形態を説明するにあたり利便性および明確さを容易にすることのみを目的としている。
【0028】
本明細書および添付の請求項で使用される場合、単数形は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数のものを含む。本明細書および添付の請求項で使用される場合、「または」という用語は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その意味に「および/または」を含み広く用いられる。「C型」という用語は、円弧、楕円弧、異なる曲率を有する円弧からなるもの、および部分的に線形および部分的に弓状であるものを含むがそれらに限定されない形状の半円の開ループまたは類似の開ループを指すことを意図している。「Ω型」という用語は、「C型」のものよりも小さい開口部を有する開ループを指すことを意図している。同様に、Ω型の開ループは、円弧を含むがそれに限定されない形状でもよい。「O型」という用語は、円、楕円または不規則な形状を含むがそれらに限定されない形状の閉ループを指すことを意図している。当業者は、「閉ループ」という用語が、対向する端部を一緒に合わせることにより形成されるものよりもむしろ、全長にわたって継ぎ目のないループを指すことを意図していることを認識するであろう。
【0029】
以下の説明では、本発明のより完全な理解を提供するために、多数の具体的詳細を述べる。しかしながら、本発明が1以上のこれらの具体的詳細なく実施され得ることは当業者には明らかであろう。他の例では、本発明の不必要な曖昧さを回避するために、周知の技術特性は説明されていない。
【0030】
本発明を詳細に説明する前に、本発明の主要な原理および概念を最初に簡潔に説明する。3次元のコイル形状は、異なる平面に配置される2次元Ω型構造と3次元S型構造とを連結することにより形成され得る。Ω型構造は構造的に安定しており、コイルは良好な構造安定性を維持できる。それと共に、3次元S型構造は良好な可撓性と圧縮性とを有し、コイルに高い適合性を付与する。この構造により、コイルは安定したバスケット形成と適合性のある充填との両方を達成することができ、高密度のパッキング効果により異なる形状およびサイズの様々な動脈瘤に適応できる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、コイルは異なる平面に配置された少なくとも4つの構造要素を連結することにより形成される。少なくとも4つの構造要素は、少なくとも2つのC型要素と、少なくとも1つのO型要素またはΩ型要素とを含む。少なくとも2つのC型要素は、2つの隣接する平面に配置され、順次連結されてS型構造を形成する。本明細書において、「O型要素」という用語は、閉ループ構造を指し、実際にコイルの同じ平面に配置された複数のΩ型要素またはC型要素で構成され得る。たとえば、O型要素は1.5個分のΩ型要素または2つのC型要素で構成されてもよい。「Ω型要素」と「C型要素」は共に開ループ構造であり、各C型要素はΩ型要素の開口部より大きい開口部を有するため、C型要素はΩ型要素よりも高い圧縮性を有する。
【0032】
本発明の実施形態によれば、コイルは管状体を巻くことによって形成される。
【0033】
<実施形態1>
図1から
図3に示されるように、本実施形態に係るコイル10は、6面に配置された3種類の構造要素を連結することにより形成される。構造要素はO型、Ω型、およびC型要素13、11、12を含む。1つのO型要素13と少なくとも2つのC型要素12とがあり、O型、Ω型、およびC型要素13、11、12の総数は6つである。6つの構造要素は、コイル10が一般に6面体として見えるように、それぞれ6つの平面に配置される。6面体の例は正6面体、平行6面体、および不規則な6面体に限定されない。他の実施形態では、6つの構造要素はまた、8面体などの少なくとも7つの平面を有する多面体のそれぞれの6つの面に配置されてもよい。
【0034】
O型要素13、Ω型要素11、およびC型要素12は、コイル10の最遠端(すなわち、押し込みロッドから最も遠く離れた端部)でのO型要素13の好適な配置(すなわち、O型要素13は、結果として生じるコイルの良好な安定性を効果的に確保することが可能な管状体の形成において先端となる構造要素であることが好ましい)と、コイル10の適合性を高めることができる、隣接する平面に配置された2つのC型要素12による少なくとも1つの3次元S型構造の形成とを含むいくつかの要件を満たす限り、多くの形態で配置可能である。
図3に示されるように、2つのC型要素12は斜めに(好ましくは、互いに接線方向に)連結されてもよい。3次元S型構造は高い可撓性と高い圧縮性とを含む良好な変形特性を有し、それはコイル10の適合性の向上を促進し、様々な動脈瘤の塞栓形成要件への適応を容易にする。それと共に、Ω型要素11およびO型要素13の高い圧縮抵抗は、動脈瘤の内腔へ留まる間、コイルの十分な安定性を確保することができる。
【0035】
各Ω型要素11は、C型要素12よりも小さい開口部を有することに留意されたい。言い換えると、各Ω型要素11は、C型要素12の開口部よりも小さい開口部を有する開ループである。好ましくは、各Ω型要素11は対応する円周の長さの75%以上100%未満の弧長を有する。そのため、圧縮することが難しく、安定しており、コイルの安定性の向上を促進する。各C型要素12は、より大きい開口部を有し、対応する円周の長さの50%以上75%未満の弧長を有することが好ましい。そのため、圧縮しやすく、適合している。このように、これらのタイプの構造要素の両方を組み込むことで、コイルは良好な安定性と良好な適合性との両方を有することができる。
【0036】
図1に示される実施形態では、コイル10の中に1つのO型要素13と、2つのC型要素12と、3つのΩ型要素11とがあり、それらは以下の順序(O型要素13、Ω型要素11の1つ、一方のC型要素12、他方のC型要素12、Ω型要素11の他の1つ、およびΩ型要素11の残りの1つ)で順次連結される。一方のC型要素12は6面体の上側に配置されてもよく、他方のC型要素12は6面体の後側、すなわち
図1で見ると最も遠い側に配置されてもよい。この配置は、3つのΩ型要素11が6面体のそれぞれの軸上に配置され、1つのO型要素は軸の1つに配置されるという点で有利である。これにより、3次元S型構造により保証されるコイル10の良好な全体的な適合性に加えて、コイル10の良好な安定性を確保することができる。
【0037】
好ましくは、S型構造が配置される2つの隣接する平面は、60°~120°の角度を形成する。実施形態によっては、S型構造が配置される2つの隣接する平面の角度は、80°~100°でもよい。実施形態によっては、S型構造が配置される2つの隣接する平面の角度は、80°、90°、または100°でもよい。これに加えて、S型構造が配置される2つの隣接する平面の角度が90°である場合、S型構造は3次元空間で最も高い可撓性を有することになり、結果としてコイル10のより良い適合性をもたらす。
【0038】
上述した構成とは別に、代替の実施形態では、コイル10は1つのO型要素13と、3つのC型要素12と、2つのΩ型要素11とを、以下の順序(O型要素13、一方のΩ型要素11、C型要素12の1つ、C型要素12の他の1つ、他方のΩ型要素11、およびC型要素12の残りの1つ)で順次連結することにより構成されてもよい。さらに代替の実施形態では、コイル10は1つのO型要素13と、4つのC型要素12と、1つのΩ型要素11とを、以下の順序(O型要素13、Ω型要素11、C型要素12の1つ、C型要素12の他の1つ、C型要素12のさらなる1つ、およびC型要素12の残りの1つ)で順次連結することにより構成されてもよい。さらなる代替の実施形態では、コイル10は1つのO型要素13と、3つのC型要素12と、2つのΩ型要素11とを、以下の順序(O型要素13、C型要素12の1つ、C型要素12の他の1つ、一方のΩ型要素11、他方のΩ型要素11、およびC型要素12の残りの1つ)で順次連結することにより構成されてもよい。当然のことながら、たとえば3つのC型要素12のように奇数のC型要素12の場合、各C型要素12はΩ型要素11の開口部より大きい開口部を有するので、C型要素12の数が多いほど、コイル10の変形性能は良くなる。
【0039】
概して、6面体は、
図1に示されるようにX、Y、Z軸などの3つの軸を有してもよい。正6面体の場合、3つの軸は互いに直交している。良好な安定性と十分な適合性との両方を達成するために、平面のうち2つの隣接する平面にそれぞれのC型要素12を配置することにより1つのS型構造を形成することに加え、軸の対応する1つに双方が垂直な平面のうち対向する各対の平面に、1つのΩ型要素11と1つのC型要素12とが、それぞれ配置されていることが好ましい。具体的には、塞栓装置が1つのコイル10のみを含む場合、またはコイル10が塞栓装置の最遠(または最近)端に配置される場合、先頭の最初の要素(または、コイル10が最近端に配置される場合は後端の要素)は、塞栓装置がその端で十分な安定性を有することを確保するために、閉ループであることが好ましい。他の例では、O型要素13はΩ型要素11で置き換えられてもよく、またはO型要素13は先端の要素でなくてもよい。さらに、コイル10は2つ以上のO型要素13を含んでもよい。O型要素13はコイルの管状体を巻くことによって形成される螺旋構造である。本明細書で使用される場合、「螺旋構造」という用語は、
図1に示されるように1.5個分のΩ型要素11で構成される構造のような同じまたは異なる直径の複数のΩ型要素11またはC型要素12で構成される構造を指すと解釈することができる。閉ループはコイルの安定性を高めることができる。
【0040】
また、6面体は、要素のうち2つの対応する隣接する要素が配置される各対の平面の間に90°の角度を有することが好ましい。6面体は好ましくは正6面体、すなわち立方体である。当業者は、本明細書の教示に照らして上述の要素配置に適切な修正を行い、異なる要素配置を有するコイル10を得てもよいが、これも本発明の範囲内となることが意図されている。
【0041】
<実施形態2>
図4に示されるように、本実施形態に係るコイル20は、5面に配置された3種類の構造要素を連結することにより形成される。同じく、構造要素はO型、Ω型、およびC型要素13、11、12を含む。1つのO型要素13と少なくとも2つのC型要素12とがあり、O型、Ω型、およびC型要素13、11、12の総数は5つである。5つの構造要素は、5面体構造のコイル20を実現するために、それぞれ5つの平面に配置される。本明細書中に、コイル20は5面体として現れる。他の実施形態では、5つの構造要素はまた、6面体などの少なくとも6つの平面を有する多面体のそれぞれの5つの平面に配置されてもよい。
【0042】
5面体では、O型要素13、Ω型要素11、およびC型要素12はまた、多くの形態で配置可能で、その配置は実質的に実施形態1と同じ要件に従ってもよい。それらがどのように配置されるかについてのさらに詳細な説明は以下に明記される。
【0043】
一実施形態では、コイル20は1つのO型要素13と、2つのC型要素12と、2つのΩ型要素11とを、以下の順序(O型要素13、一方のΩ型要素11、一方のC型要素12、他方のC型要素12、および他方のΩ型要素11)で順次連結することにより構成されてもよい。一方のC型要素12は5面体の上側に配置されてもよく、他方のC型要素12は5面体の後側、すなわち
図4で見ると最遠側に配置されてもよい。S型構造のより高い可撓性を達成するために、上側は好ましくは側面と90°の角度を形成する。この配置では、5面体の3つの軸のそれぞれに、1つのΩ型要素11またはO型要素13が配置される。これにより、3次元S型構造により保証されるコイル20の良好な全体的な適合性に加えて、コイル20の良好な安定性を確保することができる。5面体の各側面は好ましくは5面体の底側と上側との両方に垂直である一方、側面間の角度は任意の特定の数値に限定されない。側面のうち2つの隣接する側面は、90°の角度を形成してもよい。
【0044】
代替の実施形態では、コイル20は1つのO型要素13と、2つのC型要素12と、2つのΩ型要素11とを、以下の順序(O型要素13、一方のC型要素12、他方のC型要素12、一方のΩ型要素11、および他方のΩ型要素11)で順次連結することにより構成されてもよい。さらに代替の実施形態では、コイル20は1つのO型要素13と、3つのC型要素12と、1つのΩ型要素11とを、以下の順序(O型要素13、C型要素12の1つ、C型要素12の他の1つ、C型要素12の残りの1つ、およびΩ型要素11)で順次連結することにより構成されてもよい。さらなる代替の実施形態では、コイル20は1つのO型要素13と、3つのC型要素12と、1つのΩ型要素11とを、以下の順序(O型要素13、Ω型要素11、C型要素12の1つ、C型要素12の他の1つ、およびC型要素12の残りの1つ)で順次連結することにより構成されてもよい。
【0045】
同じく、当業者は、本明細書の教示に照らして上述の要素配置に適切な修正を行い、異なる要素配置を有するコイル20を得ることができるが、これも本発明の範囲内となることが意図されている。さらに、本実施形態では、O型要素13は、塞栓装置の最遠端または最近端に配置されない限り、Ω型要素11に置き換えられてもよく、または先端の要素でなくてもよい。さらに、コイルは2つ以上のO型要素13を含んでもよい。
【0046】
<実施形態3>
本実施形態に係るコイル30は、8面に配置された3種類の構造要素を連結することにより形成される。同じく、構造要素はO型、Ω型、およびC型要素13、11、12を含む。1つのO型要素13と少なくとも2つのC型要素12とがあり、O型、Ω型、およびC型要素13、11、12の総数は8つである。8つの構造要素は、8面体構造のコイル30を実現するために、それぞれ8つの平面に配置される。本明細書中に、コイル30は一般に、8面体として現れる。構造要素が多面体のそれぞれ8つの平面に配置される限り、8面体は正8面体に限定されない。
【0047】
8面体では、O型要素13、Ω型要素11、およびC型要素12はまた、多くの形態で配置可能で、その配置は実質的に実施形態1と同じ要件に従ってもよい。それらがどのように配置されるかについてのさらに詳細な説明は以下に明記される。
【0048】
好適な実施形態では、コイル30は1つのO型要素13と、6つのC型要素12と、1つのΩ型要素11とを、以下の順序(O型要素13、C型要素12の1つ、C型要素12の他の1つ、C型要素12のさらなる1つ、C型要素12のさらなる1つ、C型要素12のさらなる1つ、C型要素12の残りの1つ、およびΩ型要素11)で順次連結することにより構成されてもよい。隣接する各対のC型要素12は、それぞれ隣接する対の平面に配置され、それぞれ隣接する対のC型要素12が配置される隣接する各対の平面は、100°~120°の範囲で、より好ましくは109°~110°の範囲で角度を形成してもよい。代替の実施形態では、コイル30は1つのO型要素13と、5つのC型要素12と、2つのΩ型要素11とを、以下の順序(O型要素13、一方のΩ型要素11、C型要素12の1つ、C型要素12の他の1つ、C型要素12のさらなる1つ、C型要素12のさらなる1つ、C型要素12の残りの1つ、および他方のΩ型要素11)、または以下の順序(O型要素13、C型要素12の1つ、C型要素12の他の1つ、C型要素12のさらなる1つ、他方のΩ型要素11、C型要素12のさらなる1つ、C型要素12のさらなる1つ、およびC型要素12の残りの1つ)で、順次連結することにより構成されてもよい。
【0049】
本実施形態では、コイル30は、より多くのC型要素12を含むので、より適合性がある。6面体または5面体と比較して、8面体は追加のC型要素12を配置できるより多くの平面を有しており、その結果、コイルの適合性が向上する。
【0050】
当然、本発明は上記の配置に限定されず、当業者は、修正された説明が異なる配置を有するコイルに適用可能となるように、その詳細に適切な修正を行うことにより上記の説明を修正してもよい。実施形態1、2と同様に、O型要素13は、塞栓装置の最遠端または最近端に配置されない限り、Ω型要素11に置き換えられてもよい、または先端の要素でなくてもよい。さらに、コイルは2つ以上のO型要素13を含んでもよい。
【0051】
5面体、6面体および8面体形状のコイルが実施形態1から3で提案されるが、コイルの適合性のさらなる向上をもたらすために追加のC型要素を配置できる、より多くの平面を有する他の多面体形状もまた可能であるため、本発明はそれに限定されない。本発明によれば、コイルは、多面体の4つの平面に配置されて連結された、少なくとも4つの構造要素から構成されなければならない。
【0052】
また、一つのコイル内のC型要素は、たとえば、直径または弧長に関して同じまたは異なるサイズを有してもよく、複数のΩ型要素がある場合、それらは同じまたは異なるサイズを有してもよい。一実施形態では、コイルの管状体は、直径0.008インチの金属コアロッドに直径が0.001インチ~0.0035インチの白金タングステン合金フィラメントを密に巻くことによって、一次コイルとして形成してもよい。その後、一次コイル(すなわち、管状体)は、互いに連結されたO型、Ω型、およびS型の構造要素からなる多面体形状を有するコイルを形成するよう、所定の形状に成形されてもよい。
【0053】
<実施形態4>
本実施形態による塞栓装置は、動脈瘤の内腔における血栓形成による動脈瘤の治療のための実施形態1から3のコイル10、20または30を含む。実施形態4では、少なくとも1つのコイル、好ましくは複数のコイルを含み、任意の隣接する対のコイルにおいて、一方が他方に対して塞栓装置の軸の周りにねじられるような方法で、複数のコイルが並べられて且つ端部と端部とが連結されてもよい。この設計により、塞栓装置は様々な方向で安定性を向上させ、結果として塞栓装置の全体的な安定性を増加させる。塞栓装置は異なる平面で動脈瘤の内腔を満たすことができるため、その充填を均一にすることができる。また、ねじる能力は塞栓装置の適合性の向上を意味する。医師は特定の動脈瘤の形状およびサイズに適した塞栓装置の選ぶべき構成を選択することができる。
【0054】
図5に示されるように、塞栓装置は2つ以上のコイル10の組み合わせであってもよく、コイル10の任意の2つのうち、一方は塞栓装置の軸の周りに、好ましくは0°~90°の角度、より好ましくは30°、45°、60°、または90°ねじられてもよい。これにより、塞栓装置は全体の安定性を向上させ、適合性を強化することができる。2つのコイル10は、金属、合金、またはポリマーフィラメントを螺旋状に巻くことによって作られる一つのコイル管状体(すなわち、一次コイル)から形成されてもよいことに留意されたい。
図6は互いに対してねじられている2つの6面体形状のコイル10の簡略図であり、
図7は同じく互いに対してねじられている2つの5面体形状のコイル20の簡略図である。明らかに、一つのコイルで構成されるものに比べて、2つ以上の相互にねじられているコイル20から構成される塞栓装置は、より高い安定性およびより良い高密度の充填性能を有する。同じく、
図8に示されるように、塞栓装置は2つ以上の8面体形状のコイル30の組み合わせから構成されてもよい。
図8では、より容易な例解のため、8面体形状のコイル30が簡略化された方法で描写されている。
【0055】
本実施形態では、並んで配置されたコイル10は同じまたは異なるサイズおよび形状であってもよい。2つのコイル10は異なる構造を有するよう
図5に示されるが、本発明はこれに限定されない。
【0056】
要約すれば、本発明の実施形態に係る塞栓装置およびそのコイルにおいて、各コイルは異なる平面に配置された少なくとも4つの構造要素を連結することにより形成され、少なくとも4つの構造要素は、少なくとも2つのC型要素と、少なくとも1つのO型要素またはΩ型要素とを含み、少なくとも2つのC型要素は、2つの隣接する平面に配置され、順次連結されてS型構造を形成する。3次元のS型構造は非常に可撓性および圧縮性が高く、コイルの形状を簡単に変化させ、様々な動脈瘤形状に適合させる。さらに、Ω型要素およびO型要素は圧縮に対する耐性が高く、強い支持力を提供することができ、コイルの十分な安定性を確保することができる。これらのすべてによって、コイルは安定し、適合性があり、密度の高い塞栓形成を可能にする。さらに、各塞栓装置は複数のコイル、たとえば2個から10個のコイルを含んでもよく、任意の隣接する2個は塞栓装置の軸の周りに互いに対してねじられる。これにより、塞栓装置の充填適合性だけでなく、充填された塞栓装置のより高い全体的な安定性も向上され、結果としてさらに良い動脈瘤塞栓形成効果が生じる。
【0057】
本明細書に開示される実施形態は、漸進的な方式で説明され、各実施形態の説明は他の実施形態との違いに焦点を当てている。実施形態の間で、それらの同一または類似の部分については参照することができる。
【0058】
上記で提示された説明は、本発明のいくつかの好適な実施形態の説明に過ぎず、いかなる意味においてもその範囲を限定するものではない。上記の教示に基づいて当業者によって行われたありとあらゆる変更および修正は、添付の請求項に定義されている範囲に含まれる。