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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】原子力発電所の消火システム
(51)【国際特許分類】
   G21D 3/04 20060101AFI20230831BHJP
   A62C 37/40 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
G21D3/04 V
A62C37/40
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022082382
(22)【出願日】2022-05-19
(62)【分割の表示】P 2018137528の分割
【原出願日】2018-07-23
(65)【公開番号】P2022116105
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀晃
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特許第3264939(JP,B2)
【文献】特開2015-058231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0025212(US,A1)
【文献】特開2013-196255(JP,A)
【文献】特開平08-260755(JP,A)
【文献】特開2010-060224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21D 3/04
A62C 37/00-50
A62C 35/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所の消火システムであって、 前記原子力発電所の消火システムは前記原子力発電所の建屋に設けられ、
スプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管とを有し、前記スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステムと、
前記スプリンクラー用配管に接続される負圧用配管と、
前記スプリンクラー用配管と前記負圧用配管に負圧を供給可能な負圧装置と、
前記スプリンクラー用配管に水を供給するために、前記建屋内に設けられるタンクと、
負圧ポンプにより発生する前記負圧スプリンクラーシステムの負圧を制御するコンピューターと、
を備え、
前記コンピューターは災害に関する情報を受信し、
前記タンクに接続される付加配管のすべてを前記建屋の中に設けることができ、前記付加配管を保護することができ、地震のとき前記建屋の揺れの周期と前記タンクの水の揺れの周期が異なるため、前記建屋の揺れを減衰する、原子力発電所の消火システム。
【請求項2】
原子力発電所の消火システムであって、 前記原子力発電所の消火システムは前記原子力発電所の建屋に設けられ、
スプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管とを有し、前記スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステムと、
前記スプリンクラー用配管に接続される負圧用配管と、
前記スプリンクラー用配管と前記負圧用配管に負圧を供給可能な負圧装置と、
地震のマグニチュードおよび震源から前記建屋までの距離に応じて予想される前記建屋の震度に応じて前記負圧装置により発生する負圧を制御する制御手段とを備えた、原子力発電所の消火システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所の消火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湿式スプリンクラーは、特許第3264939号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3264939号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスプリンクラーシステムでは、スプリンクラーヘッドが故障した場合に、スプリンクラーヘッドから水が放水されるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
原子力発電所の消火システムは、スプリンクラーヘッドと、スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管とを有し、スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステムと、スプリンクラー用配管に接続される負圧用配管と、スプリンクラー用配管と負圧用配管に負圧を供給可能な負圧装置と、スプリンクラー用配管に水を供給し、スプリンクラーヘッドよりも高い位置に設けられたタンクとを備える。
【0006】
なお、常態とは、平常状態をいい、火災が発生していない状態をいう。原子力発電所とは、原子核変換で生じるエネルギーを利用して発電をする施設をいう。
【0007】
このように構成された原子力発電所の消火システムにおいては、スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されているため、加圧空気が満たされている場合と比較してスプリンクラー用配管内に水を早急に充填できるので、早期の放水が可能となる。タンクはスプリンクラーヘッドよりも高い位置に設けられているため、タンクからスプリンクラーヘッドに水を供給するためのポンプが停止したとしても重力の力でタンクからスプリンクラーヘッドに水が供給されるため、電源喪失時においてもスプリンクラーヘッドから水を放水できる。なお、負圧状態とは常圧(1気圧)よりも低い状態をいう。負圧状態であれば液体がスプリンクラー用配管内に存在していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に従った原子力発電所の消火システムの模式図である。
図2】実施の形態3に従った原子力発電所の消火システムの模式図である。
図3】実施の形態4に従った原子力発電所の消火システムの模式図である。
図4】実施の形態5に従った原子力発電所の消火システムの模式図である。
図5】実施の形態6に従った原子力発電所の消火システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
(原子力発電所の消火システムの構成)
図1は、実施の形態1に従った原子力発電所の消火システムの模式図である。図1で示すように、原子力発電所の消火システム1は、原子力発電所の建屋10に設けられる。建
屋10は、下層階である第一区画11と、上層階である第二区画とを有する。
【0010】
負圧スプリンクラーシステム100は、一次配管101と、一次配管101に接続された二次配管102と、二次配管102に設けられたスプリンクラーヘッド103と、一次配管101と二次配管102との境界に設けられたバルブ105と一次配管101に水を送るための水ポンプ106とを有する。
【0011】
一次配管101には水が充填されている。この水は、水ポンプ106により加圧されている。水ポンプ106には消火水槽(図示せず)から水が供給される。建屋10の最上階の高架水槽から水ポンプ106に水が供給されてもよい。
【0012】
一次配管101は、水ポンプ106から建屋10の最上部まで垂直に立ち上がり、各階で分岐されている。この実施の形態では2階建ての建屋10を記載しているが、建屋10の階は2階に限定されない。
【0013】
一次配管101の水は、バルブ105で止められており、バルブ105が開くことで一次配管101の水が二次配管102へ送られる。バルブ105の開閉は、コンピューター302により制御される。
【0014】
二次配管102はバルブ105に接続されている。二次配管102は第二区画12に配置されている。なお、この実施の形態ではバルブ105が第二区画12に配置されている例を示しているが、バルブ105が第一区画11に配置されていてもよい。
【0015】
二次配管102は第二区画12の天井に配置されている。二次配管102には複数のスプリンクラーヘッド103が設けられている。スプリンクラーヘッド103の数は、第二区画12の広さによって決定される。
【0016】
この実施の形態では、第二区画12にスプリンクラーヘッド103が設けられる例を示しているが、第一区画11に二次配管102およびスプリンクラーヘッド103が配置されていてもよい。
【0017】
スプリンクラーヘッド103は、閉鎖型のスプリンクラーヘッドであり、水を放水する孔が複数設けられている。スプリンクラーヘッド103は感熱機構(可溶金属片)を有する。常態では、水を放水する孔と、一次配管101との間はスプリンクラーヘッド103内で遮蔽されている。感熱機構が火災時の火炎により溶融すると遮断が開放される。バルブ105が開かれて一次配管101および二次配管102を経由して水がスプリンクラーヘッド103の孔から放水される。
【0018】
負圧システム200は、負圧用配管201と、負圧用配管201に設けられて建屋10内を負圧にする吸入口203と、負圧用配管201内を負圧にする第一負圧ポンプ204と、負圧用配管201と二次配管102とを接続する接続管205とを有する。区画内に接続管205を設けて負圧用配管201と二次配管102とを接続するだけで、負圧のスプリンクラーシステムを実現することができる。
【0019】
第一負圧ポンプ204は第一区画11に設けられて負圧を発生させる。第一負圧ポンプ204は負圧ポンプにより構成される。この実施の形態では、水ポンプ106および第一負圧ポンプ204は同じ第一区画11に設置されているが、これらが互いに異なる区画に設けられてもよい。
【0020】
第一負圧ポンプ204に接続された負圧用配管201は第一負圧ポンプ204から建屋
10の最上階まで垂直に立ち上がり、各階で分岐されている。各階において負圧用配管201が分岐して各部屋に負圧用配管201が張り巡らされている。第二負圧ポンプ214が負圧用配管201に接続される。第一負圧ポンプ204が例えばメンテナンス時に停止した場合には、第二負圧ポンプ214を用いて負圧用配管201に負圧を供給することができる。原子力発電所の消火システム1はスプリンクラー用配管としての二次配管102と負圧用配管201に負圧を供給するための第一負圧装置としての第一負圧ポンプ204と、負圧用配管201に負圧を供給するための第二負圧装置としての第二負圧ポンプ214とを備える。なお、この実施の形態では、第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプの2つの負圧ポンプが設けられているが、少なくとも第一負圧ポンプ204が設けられていればよい。
【0021】
原子力発電所の建屋10は、事故時に放射性物質を閉じ込める機能を有している。そのため、建屋10内を常時負圧に維持する設計としている。たとえば、出入り口は建屋の負圧を維持するために二重の扉とされている。この実施の形態では、吸入口203から建屋10内の空気を吸入することで建屋10内を負圧にしている。このように建屋10内を負圧に維持するための真空ポンプとして、第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214のいずれかを用いてもよい。建屋10内を負圧にするための吸入口203を接続管205以外に設けてもよい。接続管205は二次配管102を負圧するために必要な内径とされるため、建屋10内を負圧にするための容量を確保できない場合がある。そのため、接続管205とは別の配管を設け、この配管を第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214の少なくともいずれかに接続し、この配管に吸入口203を設けることで建屋10内を負圧にすることが可能である。
【0022】
負圧用配管201と二次配管102とは接続管205により接続されている。接続管205と二次配管102とは接続点202で接続されている。これにより、常態において、二次配管102内は負圧とされている。
【0023】
常態では、二次配管102内が負圧とされ、水が存在しない。負圧とすることで、二次配管102内に水が滞留することを防止できる。仮に二次配管102内に水が滞留したとしても、負圧下では、水の沸点は低くなる。そのため、二次配管102内の水が沸騰して接続管205を介して第一負圧ポンプ204で吸引される。
【0024】
検知システム300は、火災検知器301およびコンピューター302を有する。第二区画12内で火災が発生すると、その熱または煙を火災検知器301が検知する。コンピューター302とバルブ105とが信号線311により接続されている。コンピューター302と水ポンプ106とが信号線312により接続されている。
【0025】
一次配管101には、付加配管402が接続されている。付加配管402はタンク401に接続されている。タンク401には水が溜められている。矢印403で示す方向は鉛直方向上向き方向であり、タンク401はスプリンクラーヘッド103よりも鉛直方向上側に位置している。
【0026】
仮に水ポンプ106が故障したとしてもバルブ105が開けば重力の作用によりタンク401内の水は付加配管402を経由して二次配管102に流れ込んでスプリンクラーヘッド103から水が放水される。
【0027】
水ポンプ106が駆動時に一次配管101内の水に水ポンプ106の水圧が加わって一次配管101の水が付加配管402に流れることがあり得るので、タンク401の位置を高くして一次配管101から付加配管402への水の流れを防止する。または、付加配管402内に逆止弁を設けることで一次配管101から付加配管402への水の流れを防止
できる。
【0028】
付加配管402はこの実施の形態では建屋10の外に設けられているが、付加配管402は建屋10の中に設けられてもよい。この場合は付加配管402内の水の凍結を防止できる。
【0029】
タンク401は建屋10内に設けられていてもよいし、建屋10の外に設けられてもよい。タンク401が建屋10内に設けられている場合には付加配管402のすべてを建屋10の中に設けることができる。その結果、付加配管402を保護することができる。また、地震のときには建屋10が揺れるが、この建屋10の揺れの周期とタンク401の水の揺れの周期が異なるため、建屋10の揺れを減衰することが可能となる。
【0030】
コンピューター302にはアンテナ410が接続されている。アンテナ410は災害に関する情報、たとえば地震に関する情報を受信することができる。たとえば、緊急地震速報はテレビやラジオ、携帯電話等で入手する他に受信端末で入手することができるため、アンテナ410において緊急地震速報を受信できるようにする。災害に関する情報として、津波に関する情報、竜巻に関する情報、ハイジャックに関する情報がある。これらは災害情報としてたとえば、気象庁、国土交通省、警察庁などから提供される。
【0031】
コンピューター302は水ポンプ106ならびに第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214の出力を制御することができる。地震の情報をアンテナ410が受信するとコンピューター302は第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214の少なくとも一方の出力を上昇させる。すなわち地震の後は建屋10内で火災が発生する可能性が高い。二次配管102内の圧力が低ければ低いほど二次配管102に水が充填される速度が速くなる。そのため、第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプの少なくとも一方の出力を上昇させて二次配管102内の真空度を高める(二次配管102内の圧力を低くする)ことで、火事が発生した場合に早急に二次配管102へ水を充填することができる。
【0032】
さらに、地震の後は電源喪失などにより第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214が駆動しないことがある。この場合には二次配管102の内の圧力は徐々に高くなり、最終的には大気圧となる。二次配管102内の圧力が大気圧になるまでの時間は第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214が駆動しなくなったときの二次配管102内の圧力と関連する。第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214が駆動しなくなったときの二次配管102内の圧力が低ければ低いほど、電源喪失後二次配管102内の圧力が大気圧になるまでの時間が長くなる。
【0033】
地震のマグニチュードおよび震央(震源)から原子力発電所の建屋10までの距離に応じて建屋10の震度が変わるため、予想される建屋10の震度に応じて第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214の出力を変更する。その例として、以下のようなテーブルに基づいて第一負圧ポンプおよび第二負圧ポンプの出力を変更することが可能である。
【0034】
【表1】
【0035】
表1中「A」は第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214の出力が最大であることを示す。「B」は第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214の出力が中程度であることを示す。「C」は第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214の出力が災害情報を受信する前よりも大きくするが、「B」よりは小さいことを示す。いずれの場合であっても災害情報をアンテナ410が受信する前と比較して第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214のいずれかの出力を大きくして、受信前よりも二次配管102の圧力を低下させる。
【0036】
このように、建屋10で予想される震度に応じて第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214の出力を決定することによって第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214で余分なエネルギーを消費することを防止できる。
【0037】
コンピューター302がアンテナ410を経由して災害に関する情報を受信した場合には、水ポンプ106の出力を上昇させて一次配管101内の水圧を上昇させてもよい。これによりバルブ105が開いた際に二次配管102に水が早急に充填される。
【0038】
コンピューター302がアンテナ410を経由して災害に関する情報を受信した場合には、水ポンプ106の出力を上昇させてプール(図示せず)の水をタンク401に移動させてもよい。これにより、災害後に電源が喪失した場合であっても確実にタンク401の水を二次配管102に充填できる。
【0039】
上記の原子力発電所の消火システム1は、スプリンクラーヘッド103と、スプリンクラーヘッド103に水を供給するためのスプリンクラー用配管としての二次配管102とを有し、二次配管102が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステム100と、二次配管102に接続される負圧用配管201と、二次配管102と負圧用配管201に負圧を供給可能な負圧装置としての第一負圧ポンプ204と、二次配管102に水を供給し、スプリンクラーヘッド103よりも高い位置に設けられたタンク401とを備える。
【0040】
原子力発電所の消火システム1は、災害に関する情報を受信して災害に関する情報に応じて第一負圧ポンプ204により発生する負圧を制御する制御手段としてのコンピューター302を備える。
【0041】
原子力発電所の消火システム1は、二次配管102と負圧用配管201に負圧を供給可能であり、かつ、建屋内を負圧にする第一負圧ポンプ204を備える。
【0042】
なお、タンク401および付加配管402は必ずしも設けられていなくてもよい。アンテナ410は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0043】
(原子力発電所の消火システムの動作)
第二区画12で火災が発生すると、火災による熱または煙を火災検知器301が検知する。検知された情報は火災検知器301からコンピューター302に送られる。コンピューター302はバルブ105を開くようにバルブ105に信号を与える。コンピューター302は水ポンプ106を駆動させるか、水ポンプ106の駆動力を増大させる。これにより、常態では水が存在せず負圧状態であった二次配管102内に水が充填される。
【0044】
火災による熱は、スプリンクラーヘッド103の感熱機構を溶融させる。これにより、スプリンクラーヘッド103の水放水用の孔と二次配管102とが接続される。スプリンクラーヘッド103の水放水用の孔からは水が放水されて消火することができる。
【0045】
仮に電源喪失した場合には、バルブ105を手動で開けるようにしておく。または別系統の電源を用意してバルブを開けるようにしておく。バルブ105を手動または別系統の電源で開くことでタンク401内の水が付加配管402を経由して二次配管102へ流れる。これにより、スプリンクラーヘッド103から水を放水することができる。
【0046】
(効果)
このように構成された原子力発電所の消火システム1では、第一負圧ポンプ204は建屋10内を負圧にするためのポンプであり、かつ、二次配管102を負圧にするポンプでもある。建屋10を減圧するためのポンプは本来原子力発電所に備わっているものであるため、新たな装備を追加することなく、二次配管102内を負圧にすることができる。
【0047】
電源喪失時に手動でまたは別系統の電源でバルブ105を開くことにより、タンク401の水を付加配管402を経由して二次配管102へ送り、これによりスプリンクラーヘッド103から水を放水できる。その結果、電源喪失時にも火災に対応することができる。
【0048】
接続管205は、負圧用配管201および二次配管102が設けられる第二区画12に設けられる。そのため、負圧用配管201および二次配管102の接続管205を短くすることができ、施工コストを低下させることができる。
【0049】
さらに、常態において二次配管内が常圧または加圧状態の乾式スプリンクラーシステム(予作動式スプリンクラーシステム)と比較して、実施の形態1に従った負圧スプリンクラーシステム100(原子力発電所の消火システム1)は以下の効果がある。常圧乾式スプリンクラーシステムでは、火災時にポンプが作動して二次配管内に水が充填されるが、この時、二次配管内の空気が水で圧縮されるため、スムーズに(短時間で)二次配管内に水が充填されない。これに対して、負圧スプリンクラーシステム100では二次配管102内が負圧であるため、二次配管102内にスムーズに水が充填される。そのため、従来の乾式のスプリンクラー(予作動式スプリンクラー)の欠点であった、スプリンクラーヘッドからの水の散水が遅れるという問題を解決することができる。
【0050】
災害情報をアンテナ410が受信した場合に第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214のいずれかの出力を上昇させて二次配管102の真空度を高めるため、災害時にスプリンクラーヘッド103から水を放水させるまでの時間が短くなる。具体的にはバルブ105が開けられた場合に二次配管102の真空度が高いと一気に二次配管102内に水が流れ込むため、即材にスプリンクラーヘッド103から水を放水できる。さらに吸入口203からの単位時間当たりの空気の吸込み量が多くなるため、災害によって建屋10が損傷した場合であっても、放射性物質が建屋10から外部へ漏れにくくする。
【0051】
(実施の形態2)
実施の形態2の原子力発電所の消火システム1では、負圧用配管201に常態で水が充填されており負圧状態に保たれている。その他の構成は、実施の形態1の原子力発電所の消火システム1と共通している。第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214に直接水が流れ込むことを防止するために、水を通さないが空気を通す膜を第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214と、負圧用配管201との間に設けてもよい。さらに二次配管102に常態で水を充填しておき負圧用配管201に水を充填せず、二次配管102と負圧用配管201との間に水を通さないが空気を通す膜を設けてもよい。以下のいずれの実施の形態でも同様に湿式の負圧スプリンクラーとしてもよい。
【0052】
すなわち、実施の形態2に従った負圧スプリンクラーシステム100は、湿式の負圧スプリンクラーシステムである。負圧用配管201内の圧力が低いため、負圧用配管201
内の水が蒸発しやすい。負圧用配管201内の水が蒸発して減少すると、減少した水を補充するシステムが採用される。たとえば、負圧用配管201の水が減少すれば、水の減少をセンサで検知し、センサがコンピューター302へ信号を送り、コンピューター302がバルブ105を少し開いて負圧用配管201内に水を補給してもよい。
【0053】
1つのスプリンクラーヘッド103が損傷したとする。この場合、接続管205による吸引力が、損傷したスプリンクラーヘッド103から水が漏れようとする力よりも強いので、損傷したスプリンクラーヘッド103から水が放水されない。多数のスプリンクラーヘッド103が同時に損傷した場合には、損傷したスプリンクラーヘッド103から水が放水されるが、同時に多数のスプリンクラーヘッド103が損傷する可能性は極めて低い。
【0054】
(実施の形態3)
図2は、実施の形態3に従った原子力発電所の消火システムの模式図である。実施の形態3では、原子力発電所の消火システム1は、スプリンクラーヘッド103と、スプリンクラーヘッド103に水を供給するためのスプリンクラー用配管としての二次配管102とを有し、二次配管102が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステム100と、スプリンクラー用配管に負圧を供給可能な負圧装置としての第一負圧ポンプ204とを備える。接続点212において、配管211と二次配管102とが接続されている。配管211は第一負圧ポンプ204に接続されている。第一負圧ポンプ204が配管211および二次配管102に負圧を供給することができる。
【0055】
この実施の形態においても、原子力発電所内でのスプリンクラーヘッド103からの水の漏れを防止することができる。
【0056】
(実施の形態4)
図3は、実施の形態4に従った原子力発電所の消火システムの模式図である。実施の形態4では、原子力発電所の消火システム1は、スプリンクラーヘッド103と、スプリンクラーヘッド103に水を供給するためのスプリンクラー用配管としての二次配管102とを有し、スプリンクラー用配管としての二次配管102が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステム100と、原子力発電所内で用いる負圧を供給するための負圧用配管201と、二次配管102と負圧用配管201に負圧を供給可能な第一および第二負圧装置としての第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214とを備える。
【0057】
配管211により第一負圧ポンプ204および第二負圧ポンプ214が二次配管102に接続されている。
【0058】
負圧用配管201上にバルブ209が設けられている。配管211にバルブ219が設けられている。バルブ209および219の開閉はコンピューター302により制御される。
【0059】
通常運転時には、第一負圧ポンプ204が負圧用配管201に負圧を供給し、第二負圧ポンプ214が配管211および二次配管102に負圧を供給するようにバルブ209および219の開閉が制御される。
【0060】
これに対して、第一負圧ポンプ204をメンテナンスで停止させる場合には、第二負圧ポンプ214が負圧用配管201、配管211および二次配管102に負圧を供給するようにバルブ209および219の開閉が制御される。
【0061】
第二負圧ポンプ214をメンテナンスで停止させる場合には、第一負圧ポンプ204が
負圧用配管201、配管211および二次配管102に負圧を供給するようにバルブ209および219の開閉が制御される。
【0062】
(実施の形態5)
図4は、実施の形態5に従った原子力発電所の消火システムの模式図である。実施の形態5では、原子力発電所の消火システム1は、スプリンクラーヘッド103と、スプリンクラーヘッド103に水を供給するためのスプリンクラー用配管としての二次配管102とを有し、スプリンクラー用配管としての二次配管102が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステム100と、原子力発電所内で用いる負圧を供給するための負圧用配管201と、負圧用配管201に負圧を供給可能な第一負圧装置としての第一負圧ポンプ204と、二次配管102と負圧用配管201に負圧を供給可能な第二負圧装置としての第二負圧ポンプ214とを備える。
【0063】
通常運転時には、第一負圧ポンプ204が負圧用配管201に負圧を供給し、第二負圧ポンプ214が配管211および二次配管102に負圧を供給するようにバルブ209の開閉が制御される。
【0064】
これに対して、第一負圧ポンプ204をメンテナンスで停止させる場合には、第二負圧ポンプ214が負圧用配管201、配管211および二次配管102に負圧を供給するようにバルブ209の開閉が制御される。
【0065】
(実施の形態6)
図5は、実施の形態6に従った原子力発電所の消火システムの模式図である。実施の形態6では、原子力発電所の消火システム1は、スプリンクラーヘッド103と、スプリンクラーヘッド103に水を供給するためのスプリンクラー用配管としての二次配管102とを有し、二次配管102が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステム100と、原子力発電所内で用いる負圧を供給するための負圧用配管201と、負圧用配管201に負圧を供給可能な第一負圧装置としての第一負圧ポンプ204と、二次配管102と負圧用配管201に負圧を供給可能な第二負圧装置としての第二負圧ポンプ214と、二次配管102に負圧を供給可能な第三負圧装置としての第三負圧ポンプ218とを備える。
【0066】
通常運転時には、第一負圧ポンプ204が負圧用配管201に負圧を供給し、第二負圧ポンプ214が配管211および二次配管102に負圧を供給するようにバルブ209および219の開閉が制御される。
【0067】
これに対して、第一負圧ポンプ204をメンテナンスで停止させる場合には、第二負圧ポンプ214が負圧用配管201に負圧を供給し、第三負圧ポンプ218が配管211および二次配管102に負圧を供給するようにバルブ209および219の開閉が制御される。
【0068】
第二負圧ポンプ214をメンテナンスで停止させる場合には、第一負圧ポンプ204が負圧用配管201、配管211および二次配管102に負圧を供給し、第三負圧ポンプ218が配管211および二次配管102に負圧を供給するようにバルブ209および219の開閉が制御される。
【0069】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 原子力発電所の消火システム、10 建屋、11 第一区画、12 第二区画、100 負圧スプリンクラーシステム、101 一次配管、102 二次配管、103 スプリンクラーヘッド、105,209,219 バルブ、106 水ポンプ、200 負圧システム、201 負圧用配管、202,212 接続点、203 吸入口、204 第一負圧ポンプ、205 接続管、214 第二負圧ポンプ、218 第三負圧ポンプ、300 検知システム、301 火災検知器、302 コンピューター、311,312
信号線、401 タンク、402 付加配管、403 矢印、410 アンテナ。
図1
図2
図3
図4
図5