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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ブレーキ液圧制御装置及び鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/02 20060101AFI20230831BHJP
   B60T 8/40 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B60T17/02
B60T8/40 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022502335
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 IB2021051231
(87)【国際公開番号】W WO2021171131
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2020031443
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】小高 幹矢
(72)【発明者】
【氏名】篤 浩明
(72)【発明者】
【氏名】下山 耕作
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102007001733(DE,A1)
【文献】特開2009-196625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/00 - 17/22
B60T 8/00 - 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ液の流路(26)が形成されている基体(80)と、
ステータ(41)と、ロータ(44)と、前記ロータ(44)に固定された出力軸(45)と、を含み、前記流路(26)に設けられているポンプ装置(31)の駆動源であるモータ(40)と、
前記モータ(40)の制御基板(76)と、
前記制御基板(76)が収納され、前記基体(80)に接続されたハウジング(85)と、
を備えた鞍乗型車両(100)用のブレーキ液圧制御装置(70)であって、
前記モータ(40)は、ブラシレスモータであって、前記基体(80)と前記ハウジング(85)とで囲まれる空間内に配置されており、
前記ロータ(44)には、前記出力軸(45)の第1端部(45a)及び第2端部(45b)の両方が前記ロータ(44)から突出する状態で、前記出力軸(45)が固定され、
前記モータ(40)は、
前記第1端部(45a)と前記ロータ(44)との間において前記出力軸(45)を回転自在に支持する第1軸受(46)と、
前記第2端部(45b)と前記ロータ(44)との間において前記出力軸(45)を回転自在に支持する第2軸受(47)と、
前記基体(80)とは別部材で構成され、前記ステータ(41)及び前記ロータ(44)が収納され、前記第1軸受(46)及び前記第2軸受(47)を保持するモータハウジング(50)と、
を備え、
当該ブレーキ液圧制御装置(70)は、さらに、前記出力軸(45)の回転状態を検出する検出機構(60)を備え、
前記基体(80)には、前記ハウジング(85)側に開口する第1凹部(84)が形成さており、
前記モータ(40)の前記第1軸受(46)は、出力軸線方向の一端側が前記モータハウジング(50)から外方へ突出した状態で該モータハウジング(50)に保持され、前記第1軸受(46)の前記モータハウジング(50)から突出した領域の少なくとも一部が前記第1凹部(84)に挿入されている
ブレーキ液圧制御装置(70)。
【請求項2】
前記ポンプ装置(31)は、直進往復運動をするピストン(31a)を含み、
前記出力軸(45)のうちの、前記第1軸受(46)によって支持される箇所と前記第1端部(45a)との間の領域に、前記ピストン(31a)の端部を受ける偏心体(48)が付設され、
前記出力軸(45)のうちの、前記偏心体(48)が付設された箇所と前記第1端部(45a)との間の領域は、支持されていない
請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置(70)。
【請求項3】
前記第1軸受(46)は、前記第1凹部(84)に嵌合されている
請求項1又は請求項2に記載のブレーキ液圧制御装置(70)。
【請求項4】
前記第1軸受(46)は、前記第1凹部(84)に、隙間嵌めで嵌合されている
請求項3に記載のブレーキ液圧制御装置(70)。
【請求項5】
前記モータハウジング(50)は、外方へ突出するフランジ(51)を備え、
前記基体(80)には、前記ハウジング(85)側に開口し、前記フランジ(51)が挿入された第2凹部(81)が形成さており、
前記第2凹部(81)の内周面に形成された塑性変形部(82)と前記第2凹部(81)の底部(83)との間で前記フランジ(51)が挟持されて、前記モータ(40)が前記基体(80)に固定されている
請求項3又は請求項4に記載のブレーキ液圧制御装置(70)。
【請求項6】
前記検出機構(60)は、
前記出力軸(45)と共に回転する回転要素(61)と、
前記回転要素(61)の回転位置を検出するセンサ(62)と、
を備え、
前記回転要素(61)は、前記出力軸(45)と前記制御基板(76)との間に位置し、
前記センサ(62)は、前記制御基板(76)に実装されている
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置(70)。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置(70)を備えている
鞍乗型車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両用のブレーキ液圧制御装置、及び、該ブレーキ液圧制御装置を備えた鞍乗型車両に関する。
【0002】
従来の車両には、ブレーキシステムをアンチロックブレーキ動作させるためのブレーキ液圧制御装置を備えているものがある。このブレーキ液圧制御装置は、車両の搭乗者がブレーキレバー等の入力部を操作している状態において、ブレーキ液回路内のブレーキ液の圧力を増減させて、車輪に発生する制動力を調整する。このようなブレーキ液圧制御装置のなかには、ブレーキ液回路の一部を構成する流路、ブレーキ液回路内のブレーキ液の増圧を行うポンプ装置の駆動源であるモータ、及び該モータの制御基板等をユニット化したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、ユニット化されたブレーキ液圧制御装置は、ブレーキ液の流路が形成されている基体と、ブレーキ液の流路に設けられているポンプ装置の駆動源であるモータと、モータの制御基板と、制御基板を収納するハウジングと、を備えている。ブレーキ液圧制御装置の基体は、略直方体形状をしており、1つの面にハウジングが取り付けられている。ここで、ハウジングが取り付けられる基体の当該面を第1面とする。また、基体における第1面の反対面を、第2面とする。このように第1面及び第2面を定義した場合、従来のブレーキ液圧制御装置においては、ポンプ装置の駆動源であるモータは、基体の第2面に取り付けられている。すなわち、ユニット化されたブレーキ液圧制御装置においては、ポンプ装置の駆動源であるモータは、基体及びハウジングの外部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-15077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の一種である鞍乗型車両は、自動四輪車等の車両と比べて、部品レイアウトの自由度が低く、ブレーキ液圧制御装置の搭載の自由度が低い。このため、鞍乗型車両に搭載されるブレーキ液圧制御装置に対して、小型化の要請が強まっているという課題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、鞍乗型車両用のブレーキ液圧制御装置であって、従来よりも小型化することが可能なブレーキ液圧制御装置を得ることを第1の目的とする。また、本発明は、このようなブレーキ液圧制御装置を備えた鞍乗型車両を得ることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、ブレーキ液の流路が形成されている基体と、ステータと、ロータと、前記ロータに固定された出力軸と、を含み、前記流路に設けられているポンプ装置の駆動源であるモータと、前記モータの制御基板と、前記制御基板が収納され、前記基体に接続されたハウジングと、を備えた鞍乗型車両用のブレーキ液圧制御装置であって、前記モータは、ブラシレスモータであって、前記基体と前記ハウジングとで囲まれる空間内に配置されており、前記ロータには、前記出力軸の第1端部及び第2端部の両方が前記ロータから突出する状態で、前記出力軸が固定され、前記モータは、前記第1端部と前記ロータとの間において前記出力軸を回転自在に支持する第1軸受と、前記第2端部と前記ロータとの間において前記出力軸を回転自在に支持する第2軸受と、前記ステータ及び前記ロータが収納され、前記第1軸受及び前記第2軸受を保持するモータハウジングと、を備え、当該ブレーキ液圧制御装置は、さらに、前記出力軸の回転状態を検出する検出機構を備え、前記基体には、前記ハウジング側に開口する第1凹部が形成さており、前記モータの前記第1軸受は、前記第1凹部に挿入されている。
【0008】
また、本発明に係る鞍乗型車両は、本発明に係るブレーキ液圧制御装置を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るブレーキ液圧制御装置においては、モータは、基体とハウジングとで囲まれる空間内に配置されている。このため、本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、従来のブレーキ液圧制御装置よりも小型化することができる。
【0010】
ところで、本発明に係るブレーキ液圧制御装置のモータは、ブラシレスモータとなっている。このため、本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、モータの出力軸の回転状態を検出する検出機構が必要となる。そして、検出機構によって出力軸の回転状態を精度良く検出するためには、基体とハウジングとで囲まれる空間内にモータを配置する際の位置精度が重要となる。ここで、基体とハウジングとで囲まれる空間内では、モータの配置スペースが限られる。そこで、本発明に係るブレーキ液圧制御装置では、モータの第1軸受を基体の第1凹部に挿入して、モータを位置決めしている。出力軸を回転自在に支持する第1軸受は、元来、モータが備えているものである。すなわち、本発明に係るブレーキ液圧制御装置では、モータが元来備えている第1軸受を用いて、モータを位置決めしている。このため、本発明に係るブレーキ液圧制御装置においては、基体とハウジングとで囲まれる空間内にブラシレスモータを配置する際でも、モータの位置精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載される鞍乗型車両の構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置のユニット化されている部分が鞍乗型車両に搭載されている状態において、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置のユニット化されている部分を上方から見た図であり、一部を断面で示した図である。
図4図3のA部拡大図である。
図5図4のB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係るブレーキ液圧制御装置及び鞍乗型車両について、図面を用いて説明する。
【0013】
なお、以下では、本発明が自動二輪車に採用される場合を説明するが、本発明は自動二輪車以外の他の鞍乗型車両に採用されてもよい。自動二輪車以外の他の鞍乗型車両とは、例えば、エンジン及び電動モータのうちの少なくとも1つを駆動源とする自動三輪車、及びバギー等である。また、自動二輪車以外の他の鞍乗型車両とは、例えば、自転車である。自転車とは、ペダルに付与される踏力によって路上を推進することが可能な乗物全般を意味している。つまり、自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。また、自動二輪車又は自動三輪車は、いわゆるモータサイクルを意味し、モータサイクルには、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。また、以下では、ブレーキ液圧制御装置が2系統の液圧回路を備えている場合を説明しているが、ブレーキ液圧制御装置の液圧回路の数は2系統に限定されない。ブレーキ液圧制御装置は、1系統のみの液圧回路を備えていてもよく、また、3系統以上の液圧回路を備えていてもよい。
【0014】
また、以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明に係るブレーキ液圧制御装置及び鞍乗型車両は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。また、各図においては、同一の又は類似する部材又は部分に、同一の符号を付している、又は、符号を付すことを省略している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。また、重複する説明については、適宜簡略化又は省略している。
【0015】
実施の形態.
以下に、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置を備えた鞍乗型車両用のブレーキシステムを説明する。
【0016】
<鞍乗型車両用ブレーキシステムの構成及び動作>
本実施の形態に係るブレーキシステムの構成及び動作について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載される鞍乗型車両の構成を示す図である。図2は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成を示す図である。
【0017】
図1及び図2に示されるように、ブレーキシステム10は、例えば自動二輪車である鞍乗型車両100に搭載される。鞍乗型車両100は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、を含む。
【0018】
ブレーキシステム10は、ブレーキレバー11と、ブレーキ液が充填されている第1液圧回路12と、ブレーキペダル13と、ブレーキ液が充填されている第2液圧回路14と、を含む。すなわち、ブレーキシステム10は、2つのブレーキ液回路(第1液圧回路12、第2液圧回路14)を備えている。ブレーキレバー11は、ハンドル2に設けられており、使用者の手によって操作される。第1液圧回路12は、前輪3と共に回動するロータ3aに、ブレーキレバー11の操作量に応じたブレーキ力を生じさせるものである。ブレーキペダル13は、胴体1の下部に設けられており、使用者の足によって操作される。第2液圧回路14は、後輪4と共に回動するロータ4aに、ブレーキペダル13の操作量に応じたブレーキ力を生じさせるものである。
【0019】
なお、ブレーキレバー11及びブレーキペダル13は、ブレーキの入力部の一例である。例えば、ブレーキレバー11に換わるブレーキの入力部として、胴体1に設けられているブレーキペダル13とは別のブレーキペダルを採用してもよい。また例えば、ブレーキペダル13に換わるブレーキの入力部として、ハンドル2に設けられているブレーキレバー11とは別のブレーキレバーを採用してもよい。また、第1液圧回路12は、後輪4と共に回動するロータ4aに、ブレーキレバー11の操作量、又は、胴体1に設けられているブレーキペダル13とは別のブレーキペダルの操作量に応じたブレーキ力を生じさせるものであってもよい。また、第2液圧回路14は、前輪3と共に回動するロータ3aに、ブレーキペダル13の操作量、又は、ハンドル2に設けられているブレーキレバー11とは別のブレーキレバーの操作量に応じたブレーキ力を生じさせるものであってもよい。
【0020】
第1液圧回路12と第2液圧回路14とは、同じ構成になっている。このため、以下では、代表して、第1液圧回路12の構成を説明する。
第1液圧回路12は、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、胴体1に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示略)を動作させるホイールシリンダ24と、を含む。
【0021】
第1液圧回路12において、マスタシリンダ21及びホイールシリンダ24は、マスタシリンダ21と基体80に形成されているマスタシリンダポートMPとの間に接続される液管、基体80に形成されている主流路25、及び、ホイールシリンダ24と基体80に形成されているホイールシリンダポートWPとの間に接続される液管を介して連通する。また、基体80には、副流路26が形成されている。ホイールシリンダ24のブレーキ液は、その副流路26を介して、主流路25の途中部である主流路途中部25aに逃がされる。また、本実施の形態においては、基体80には、増圧流路27が形成されている。マスタシリンダ21のブレーキ液は、その増圧流路27を介して、副流路26の途中部である副流路途中部26aに供給される。
【0022】
主流路25のうちの主流路途中部25aよりもホイールシリンダ24側の領域には、インレットバルブ28が設けられている。インレットバルブ28の開閉動作によって、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。副流路26のうちの副流路途中部26aよりも上流側の領域には、上流側から順に、アウトレットバルブ29と、ブレーキ液を貯留するアキュムレータ30とが設けられている。アウトレットバルブ29の開閉動作によって、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。また、副流路26のうちの副流路途中部26aよりも下流側の領域には、ポンプ装置31が設けられている。主流路25のうちの主流路途中部25aよりもマスタシリンダ21側の領域には、切換バルブ32が設けられている。切換バルブ32の開閉動作によって、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。増圧流路27には、増圧バルブ33が設けられている。増圧バルブ33の開閉動作によって、増圧流路27を流通するブレーキ液の流量が制御される。
【0023】
また、主流路25のうちの切換バルブ32よりもマスタシリンダ21側の領域には、マスタシリンダ21のブレーキ液の液圧を検出するためのマスタシリンダ液圧センサ34が設けられている。また、主流路25のうちのインレットバルブ28よりもホイールシリンダ24側の領域には、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を検出するためのホイールシリンダ液圧センサ35が設けられている。
【0024】
つまり、主流路25は、インレットバルブ28を介してマスタシリンダポートMP及びホイールシリンダポートWPを連通させるものである。また、副流路26は、ホイールシリンダ24のブレーキ液を、アウトレットバルブ29を介してマスタシリンダ21に逃がす流路の一部又は全てと定義される流路である。また、増圧流路27は、マスタシリンダ21のブレーキ液を、増圧バルブ33を介して副流路26のうちのポンプ装置31の上流側に供給する流路の一部又は全てと定義される流路である。
【0025】
インレットバルブ28は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所でのブレーキ液の流通を開放から閉鎖に切り替える電磁バルブである。アウトレットバルブ29は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所を介して副流路途中部26aへ向かうブレーキ液の流通を閉鎖から開放に切り替える電磁バルブである。切換バルブ32は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所でのブレーキ液の流通を開放から閉鎖に切り替える電磁バルブである。増圧バルブ33は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所を介して副流路途中部26aへ向かうブレーキ液の流通を閉鎖から開放に切り替える電磁バルブである。
【0026】
第1液圧回路12のポンプ装置31と、第2液圧回路14のポンプ装置31とは、共通のモータ40によって駆動される。すなわち、モータ40は、ポンプ装置31の駆動源である。
【0027】
基体80と、基体80に設けられている各部品(インレットバルブ28、アウトレットバルブ29、アキュムレータ30、ポンプ装置31、切換バルブ32、増圧バルブ33、マスタシリンダ液圧センサ34、ホイールシリンダ液圧センサ35、モータ40等)と、制御装置(ECU)75と、によって、ブレーキ液圧制御装置70が構成される。なお、本実施の形態では、インレットバルブ28、アウトレットバルブ29、アキュムレータ30、ポンプ装置31、切換バルブ32、増圧バルブ33、マスタシリンダ液圧センサ34、ホイールシリンダ液圧センサ35、及びモータ40等を総称して、ブレーキ液の液圧制御機構と称する場合がある。すなわち、ブレーキ液の液圧制御機構とは、第1液圧回路12及び第2液圧回路14のブレーキ液の液圧を制御する際に用いられる機構である。
【0028】
制御装置75は、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。また、制御装置75は、基体80に取り付けられていてもよく、また、基体80以外の他の部材に取り付けられていてもよい。また、制御装置75の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0029】
なお、後述のように、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70では、制御装置75の少なくとも一部が、制御基板76で構成されている。また、本実施の形態では、制御基板76は、モータ40の起動及び停止等を制御する機能を有する。すなわち、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、モータ40の制御基板76を備えていると言うこともできる。また、本実施の形態では、制御基板76は、ブレーキ液の液圧制御機構を構成する各部品の制御も行う。すなわち、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、ブレーキ液の液圧制御機構の制御基板76を備えていると言うこともできる。
【0030】
例えば、通常状態では、制御装置75によって、インレットバルブ28、アウトレットバルブ29、切換バルブ32、及び増圧バルブ33が非通電状態に制御される。その状態で、ブレーキレバー11が操作されると、第1液圧回路12において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ3aに押し付けられて、前輪3が制動される。また、ブレーキペダル13が操作されると、第2液圧回路14において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が後輪4のロータ4aに押し付けられて、後輪4が制動される。
【0031】
制御装置75には、各センサ(マスタシリンダ液圧センサ34、ホイールシリンダ液圧センサ35、車輪速センサ、加速度センサ等)の出力が入力される。制御装置75は、その出力に応じて、モータ40、各バルブ等の動作を司る指令を出力して、減圧制御動作、増圧制御動作等を実行する。
【0032】
例えば、制御装置75は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の過剰又は過剰の可能性が生じた場合に、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を減少させる動作を実行する。その際、制御装置75は、第1液圧回路12において、インレットバルブ28を通電状態に制御し、アウトレットバルブ29を通電状態に制御し、切換バルブ32を非通電状態に制御し、増圧バルブ33を非通電状態に制御しつつ、モータ40を駆動する。また、制御装置75は、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の過剰又は過剰の可能性が生じた場合に、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を減少させる動作を実行する。その際、制御装置75は、第2液圧回路14において、インレットバルブ28を通電状態に制御し、アウトレットバルブ29を通電状態に制御し、切換バルブ32を非通電状態に制御し、増圧バルブ33を非通電状態に制御しつつ、モータ40を駆動する。
【0033】
これにより、ブレーキ液圧制御装置70は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を制御して、第1液圧回路12のアンチロックブレーキ動作を実行することが可能である。また、ブレーキ液圧制御装置70は、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を制御して、第2液圧回路14のアンチロックブレーキ動作を実行することが可能である。すなわち、ポンプ装置31の駆動源であるモータ40は、少なくとも第1液圧回路12及び第2液圧回路14の液圧を低下させる際に駆動する。換言すると、ポンプ装置31は、少なくとも第1液圧回路12及び第2液圧回路14の液圧を低下させるものである。
【0034】
また例えば、制御装置75は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の不足又は不足の可能性が生じた場合に、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を増加させる動作を実行する。その際、制御装置75は、第1液圧回路12において、インレットバルブ28を非通電状態に制御し、アウトレットバルブ29を非通電状態に制御し、切換バルブ32を通電状態に制御し、増圧バルブ33を通電状態に制御しつつ、モータ40を駆動する。また、制御装置75は、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の不足又は不足の可能性が生じた場合に、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を増加させる動作を実行する。その際、制御装置75は、第2液圧回路14において、インレットバルブ28を非通電状態に制御し、アウトレットバルブ29を非通電状態に制御し、切換バルブ32を通電状態に制御し、増圧バルブ33を通電状態に制御しつつ、モータ40を駆動する。
【0035】
これにより、ブレーキ液圧制御装置70は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を制御して、第1液圧回路12の自動増圧動作を実行することが可能である。また、ブレーキ液圧制御装置70は第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を制御して、第2液圧回路14の自動増圧動作を実行することが可能である。
【0036】
<ブレーキ液圧制御装置の構成>
ブレーキ液圧制御装置70は、基体80、モータ40、及び制御基板76がユニット化されている。なお、本実施の形態においては、基体80に設けられているモータ40以外の各部品(インレットバルブ28、アウトレットバルブ29、アキュムレータ30、ポンプ装置31、切換バルブ32、増圧バルブ33、マスタシリンダ液圧センサ34、ホイールシリンダ液圧センサ35等)も、基体80及び制御基板76とユニット化している。以下では、ブレーキ液圧制御装置70のユニット化されている部分の構成について説明していく。
【0037】
図3は、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置のユニット化されている部分が鞍乗型車両に搭載されている状態において、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置のユニット化されている部分を上方から見た図であり、一部を断面で示した図である。
上述の基体80は、例えばアルミ等の金属で形成されており、例えば略直方体の形状をしている。この基体80は、第1面80a及び第2面80bを備えている。第1面80aには、ハウジング85が接続されている。また、ハウジングには、制御基板76が収納されている。第2面80bは、第1面80aの反対面である。なお、基体80の各面は、段差部を含んでいてもよく、また、曲面部を含んでいてもよい。
【0038】
基体80には、モータ40が取り付けられている。このモータ40は、ステータ41、ロータ44、出力軸45、軸受46、軸受47及びモータハウジング50を備えている。ステータ41には、略円筒状の貫通孔が形成されている。ロータ44は、略円筒形状をしており、ステータ41の貫通孔内に、ステータ41に対して回転自在に配置されている。このロータ44には、出力軸45が固定されている。出力軸45は、該出力軸45の端部45a及び端部45bの両方がロータ44から突出する状態で、ロータ44に固定されている。
【0039】
軸受46は、端部45aとロータ44との間において、出力軸45を回転自在に支持している。軸受47は、端部45bとロータ44との間において、出力軸45を回転自在に支持している。モータハウジング50は、モータ40の外郭を構成するものである。本実施の形態では、モータハウジング50は、金属で形成された金属部50aと、樹脂を含む材料で形成された樹脂部50bと、を備えている。金属部50aは、例えば、板金加工によって形成される。また、樹脂部50bは、例えば、モールド成型によって形成される。モータハウジング50には、ステータ41及びロータ44が収納されている。また、モータハウジング50は、軸受46及び軸受47を保持している。具体的には、軸受46は、樹脂部50bに保持されている。また、軸受47は、金属部50aに保持されている。また、本実施の形態では、軸受46は、該軸受46の一部がモータハウジング50から出力軸45の端部45a側へ突出するように、モータハウジング50に保持されている。
【0040】
ここで、従来のモータは、出力軸を回転自在に支持する一対の軸受(本実施の形態に係る軸受46及び軸受47に相当)を備えている。そして、従来のモータにおいては、出力軸は、一対の軸受のうちの少なくとも1つに対して、隙間嵌めで嵌合されている。本実施の形態に係るモータ40においても、従来のモータと同様に、出力軸45を軸受46及び軸受47に嵌合する際、軸受46及び軸受47のうちの少なくとも1つに対して、出力軸45を隙間嵌めで嵌合している。具体的には、本実施の形態においては、モータ40の出力軸45は、軸受46にしまり嵌めで嵌合されていると共に、軸受47に隙間嵌めで嵌合されている。
【0041】
本実施の形態に係るモータ40は、ブラシレスモータである。モータ40としてブラシレスモータを用いることにより、モータ40としてブラシ付きモータを用いた場合と比べ、ブレーキ液圧制御装置70を長寿命化することができる。本実施の形態では、モータ40がブラシレスモータであるので、ステータ41がコイル42を備えている。また、コイル42は、制御基板76と図示せぬ配線又は端子等で接続されている。制御基板76からコイル42に電力供給されると、コイル42に電流が流れて磁界が発生する。この磁界がロータ44に作用することにより、ロータ44及び出力軸45は、回転軸45cを中心に回転する。そして、ロータ44及び出力軸45が回転することにより、ポンプ装置31は、次のように駆動する。
【0042】
ポンプ装置31は、直進往復運動をするピストン31aを備えている。また、モータ40の出力軸45には、軸受46によって支持される箇所と端部45aとの間の領域に、ピストン31aの端部を受ける偏心体48が付設されている。偏心体48の中心軸は、回転軸45cに対して偏心している。このため、ロータ44及び出力軸45と共に偏心体48が回転すると、偏心体48の外周面に押し付けられているポンプ装置31のピストン31aが往復動することで、ブレーキ液がポンプ装置31の吸込側から吐出側に搬送される。
【0043】
なお、モータ40は、上述の構成以外の構成を備えていてもよい。例えば、モータ40は、遊星歯車等の複数の歯車を備え、これらの歯車を介して、出力軸45と偏心体48とを接続してもよい。また例えば、モータ40は、モータハウジング50の外方に、モータ40の構成を覆うカバーを備えていてもよい。
【0044】
ここで、従来のブレーキ液圧制御装置においては、ポンプ装置の駆動源であるモータは、基体の第2面に取り付けられている。すなわち、従来のブレーキ液圧制御装置においては、ポンプ装置の駆動源であるモータは、基体及びハウジングの外部に設けられている。一方、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70においては、モータ40は、基体80の第1面80aに取り付けられている。このため、基体80にハウジング85が接続された状態においては、モータ40は、基体80とハウジング85とで囲まれる空間内に配置されることとなる。このようにモータ40を配置することにより、従来のブレーキ液圧制御装置と比べ、ブレーキ液圧制御装置70を小型化することができる。
【0045】
また、本実施の形態においては、出力軸45のうちの、偏心体48が付設された箇所と端部45aとの間の領域は、自由である。換言すると、出力軸45のうちの、偏心体48が付設された箇所と端部45aとの間の領域は、軸受によって支持されていない。このため、当該軸受の配置スペースが基体80に不要となり、ブレーキ液圧制御装置70をさらに小型化することができる。
【0046】
また、従来のブレーキ液圧制御装置においては、モータは、ボルト締結によって、基体に固定されている。具体的には、従来のブレーキ液圧制御装置のモータのフランジ部には、複数の貫通孔が形成されている。貫通孔のそれぞれには、ボルトが挿入されている。また、従来のブレーキ液圧制御装置の基体には、複数の雌ネジ部が形成されている。そして、従来のブレーキ液圧制御装置においては、モータのフランジ部の貫通孔に挿入されているボルトのそれぞれを基体の雌ネジ部にねじ込むことにより、ボルトの頭部と基体とでモータのフランジ部が挟持され、モータが基体に固定される。
【0047】
本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70においても、従来と同様に、ボルト締結によって、基体80にモータ40を固定してもよい。しかしながら、本実施の形態では、所謂カシメによって、基体80にモータ40を固定している。ここで、出力軸45の回転軸45c方向をスラスト方向とする。カシメによって基体80にモータ40を固定している部分は、主に、スラスト方向の荷重を支持する。具体的には、モータ40のモータハウジング50は、外方へ突出するフランジ51を備えている。より具体的には、モータハウジング50の金属部50aが、外方へ突出するフランジ51を備えている。基体80には、フランジ51が挿入される凹部81が形成されている。なお、凹部81の底部83は、段差部を含んでいてもよく、また、曲面部を含んでいてもよい。上述のように、本実施の形態では、モータ40は、基体80とハウジング85とで囲まれる空間内に配置されている。このため、凹部81は、ハウジング85側に開口している。また、凹部81の内周面には、塑性変形部82が形成されている。本実施の形態に係る塑性変形部82は、モータ40の外周面から離れる方向に凹部81の内周面をずらす段部となっている。例えば、塑性変形部82は、凹部81の内周面に90°ピッチで配置されている。
【0048】
基体80にモータ40を固定する場合、出力軸45に付設された偏心体48が基体80内に位置するように、モータハウジング50のフランジ51が凹部81に挿入される。そして、モータハウジング50のフランジ51は、凹部81の底部83に当接するまで、凹部81に挿入される。この状態で、凹部81の塑性変形部82の第1面80a側の空間に治具が挿入されて、その塑性変形部82が加圧により塑性変形される。これにより、凹部81の内周面に形成された塑性変形部82と凹部81の底部83との間でモータハウジング50のフランジ51が挟持されて、モータ40が基体80に固定される。このようにカシメによって基体80にモータ40を固定することにより、モータ40を固定するためのボルトが不要となり、該ボルトがねじ込まれる雌ネジ部を基体80に形成することも不要となる。したがって、ブレーキ液圧制御装置70をさらに小型化することができる。
【0049】
ところで、従来より、ブラシレスモータを用いる場合、ブラシレスモータの出力軸の回転状態を検出する検出機構が設けられる。本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70においても、ブラシレスモータであるモータ40の出力軸45の回転状態を検出するため、検出機構60を備えている。具体的には、本実施の形態では、検出機構60を用いて、出力軸45の回転状態として、出力軸45の回転位置及び回転速度を検出している。
【0050】
検出機構60は、出力軸45と共に回転する回転要素61と、回転要素61の回転位置を検出するセンサ62と、を備えている。回転要素61としては、従来の検出機構で用いられている種々の回転要素を用いることができる。同様に、センサ62としては、従来の検出機構で用いられている種々のセンサを用いることができる。例えば、回転要素61として、永久磁石を用いることができる。この場合、センサ62として、例えば、ホール素子を用いたセンサを用いることができる。また、例えば、回転要素61として、貫通孔が形成されたディスク、あるいは、反射板が取り付けられたディスクを用いることができる。この場合、センサ62として、例えば、発光素子及び受光素子を用いたセンサを用いることができる。
【0051】
検出機構60によって出力軸45の回転状態を精度良く検出するためには、基体80とハウジング85とで囲まれる空間内にモータ40を配置する際の位置精度が重要となる。ここで、基体80とハウジング85とで囲まれる空間内では、モータ40の配置スペースが限られる。そこで、本実施の形態では、次のように、基体80とハウジング85とで囲まれる空間内にモータ40を配置している。
【0052】
基体80には、ハウジング85側に開口する凹部84が形成さている。本実施の形態では、凹部81の底部83に、凹部84が形成されている。そして、モータ40の軸受46が、凹部84に挿入されている。詳しくは、上述のように、軸受46は、該軸受46の一部がモータハウジング50から出力軸45の端部45a側へ突出するように、モータハウジング50に保持されている。そして、軸受46のモータハウジング50から突出している部分が、凹部84に挿入されている。出力軸45を回転自在に支持する軸受46は、元来、モータ40が備えているものである。すなわち、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70では、モータ40が元来備えている軸受46を用いて、モータ40を位置決めしている。このため、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70においては、基体80とハウジング85とで囲まれる空間内にモータ40を配置する際でも、モータ40の位置精度を向上させることができる。
【0053】
また、本実施の形態では、軸受46は、凹部84に嵌合されている。このように構成することにより、モータ40の位置精度をさらに向上させることができる。また、このように構成することにより、次の効果を得ることもできる。ポンプ装置31の駆動源であるモータ40の出力軸45には、ポンプ装置31を駆動する際に、偏心体48を介して、ポンプ装置31のピストン31aから荷重が作用する。軸受46が凹部84に嵌合されていることにより、モータ40におけるカシメで基体80に固定されている箇所に加えて、軸受46と凹部84との間でも、当該荷重を受けることができる。このため、軸受46が凹部84に嵌合されていることにより、ブレーキ液圧制御装置70の信頼性を向上させることができる。また、本実施の形態では、軸受46は、凹部84に、隙間嵌めで嵌合されている。このように構成することにより、軸受46を凹部84に嵌合することが容易となり、ブレーキ液圧制御装置70の組み立て工数を低減することができる。
【0054】
なお、モータ40の出力軸45は、軸受46にしまり嵌めで嵌合されていると共に、軸受47にしまり嵌めで嵌合されていてもよい。これにより、ポンプ装置31を駆動する際に出力軸45に荷重が作用した際、出力軸45の心振れを抑制することができる。すなわち、出力軸45と共に回転する回転要素61の心振れも抑制される。したがって、出力軸45の回転状態をさらに精度良く検出することができる。
【0055】
また、本実施の形態では、回転要素61は、出力軸45と制御基板76との間に位置している。具体的には、本実施の形態では、回転要素61は、出力軸45の端部45bに取り付けられている。回転要素61が出力軸45と制御基板76との間に位置することにより、センサ62を制御基板76に実装することができる。これにより、センサ62を実装するために制御基板76以外の制御基板を設ける必要がなくなり、ブレーキ液圧制御装置70をさらに小型化できる。
【0056】
ところで、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70を知った当業者は、基体80とハウジング85とで囲まれる空間内にモータ40を配置することにより、モータ40のコイル42が過度に温度上昇してしまうことを懸念するかもしれない。しかしながら、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、モータ40のコイル42の温度上昇を抑制することができる。具体的には、上述のように、モータ40のステータ41は、コイル42を備えている。また、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70のステータ41は、モールド材でコイル42を覆うモールド部43を備えている。また、このモールド部43はモータハウジング50に接触している。本実施の形態では、モールド部43は、モータハウジング50の金属部50a及び樹脂部50bの双方に接触している。モータハウジング50は、モールド部43以外の何らかの物に必ず接触している。このため、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70においては、コイル42の発した熱が、モールド部43及びモータハウジング50を通って、モータハウジング50との接触物に伝わることとなる。
【0057】
コイル42の断面形状は、略円形状である。このため、モールド部43を備えていない場合、コイル42の外周面とモータハウジング50とが接触していても、コイル42とモータハウジング50との接触面積は小さくなる。具体的には、コイル42の断面で観察した場合、断面略円形状のコイル42とモータハウジング50とは、点接触となる。このため、モールド部43を備えていない場合、コイル42の外周面とモータハウジング50とが接触していても、コイル42からモータハウジング50に伝わる熱の量は少ない。一方、モールド部43を備えている場合、モールド部43は、コイル42の外周面の多くの範囲に接触することができる。また、モールド部43は、コイル42とモータハウジング50とが直接接触する場合の面積よりも大きな範囲で、モータハウジング50と接触することができる。
【0058】
このため、モールド部43を備えることにより、コイル42とモータハウジング50とが直接接触する場合と比べ、コイル42からモータハウジング50に伝わる熱の量を増大できる。したがって、モールド部43を備えることにより、コイル42の発した熱を、モールド部43及びモータハウジング50を介してモータハウジング50との接触物に十分に伝達することができる。このため、モールド部43を備えることにより、基体80とハウジング85とで囲まれる空間の外部にコイル42の発した熱を放出することができ、モータ40のコイル42の温度上昇を抑制することができる。
【0059】
なお、モールド部43のモールド材の具体的な種類は、特に限定されない。例えば、モールド材として、ガラス又は金属等を用いることができる。また例えば、モールド材として、樹脂を含む材料を用いてもよい。本実施の形態では、モールド部43のモールド材として、ガラスファイバー入りの樹脂を用いている。モールド部43のモールド材として、樹脂を含む材料を用いることにより、モールド部43の成型が容易となる。なお、本実施の形態では、モールド部43とモータハウジング50の樹脂部50bとを、モールド成型によって一体形成している。
【0060】
ここで、本実施の形態では、モータハウジング50は、基体80と接触している。基体80は、ブレーキ液圧制御装置70を構成する部品のなかでも、大きな方の部品である。また、基体80は、金属製である。このため、モータハウジング50が基体80と接触していることにより、基体80とハウジング85とで囲まれる空間の外部にコイル42の発した熱をより放出しやすくなり、モータ40のコイル42の温度上昇をさらに抑制することができる。
【0061】
また、本実施の形態では、上述のように、モータハウジング50に保持された軸受46は、基体80に接触している。このため、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70においては、コイル42の発した熱は、モールド部43、モータハウジング50及び軸受46を通る経路でも、基体80に伝わることができる。このため、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、モータ40のコイル42の温度上昇をさらに抑制することができる。
【0062】
ところで、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、少なくとも1つの板バネ90を備えている。そして、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、板バネ90を用いて制御基板76のアースをとり、制御基板76の帯電を抑制している。以下、図3と、後述の図4及び図5と、を用いて、板バネ90周辺の構成について説明する。
【0063】
図4は、図3のA部拡大図である。また、図5は、図4のB矢視図である。すなわち、図4は、ブレーキ液圧制御装置70のユニット化されている部分が鞍乗型車両100に搭載されている状態において、ブレーキ液圧制御装置70のユニット化されている部分における板バネ90周辺を上方から見た図である。また、図5は、ブレーキ液圧制御装置70のユニット化されている部分が鞍乗型車両100に搭載されている状態において、ブレーキ液圧制御装置70のユニット化されている部分における板バネ90周辺を横方向から見た図である。
【0064】
板バネ90は、金属製である。なお、板バネ90の材質は、導電性であれば金属に限定されず、繊維強化樹脂等であってもよい。ここで、ブレーキ液圧制御装置70は、基体80とハウジング85とで囲まれている空間内に配置され、基体80に電気的に接続されている部品を備えている。以下、基体80とハウジング85とで囲まれている空間内に配置され、基体80に電気的に接続されている部品を、電気的接続部品と称する。このように電気的接続部品を定義した場合、板バネ90は、制御基板76と電気的接続部品との間に設けられている。なお、電気的接続部品とは、例えば、インレットバルブ28、アウトレットバルブ29、切換バルブ32及び増圧バルブ33のピストンである。また例えば、電気的接続部品とは、モータハウジング50である。本実施の形態では、板バネ90は、制御基板76とモータハウジング50との間に設けられている。以下、電気的接続部品の一例としてモータハウジング50を用い、板バネ90の詳細構成について説明していく。
【0065】
板バネ90は、制御基板76とモータハウジング50との対向方向に、伸縮自在となっている。また、板バネ90の自由長は、制御基板76とモータハウジング50との間の距離よりも長くなっている。すなわち、板バネ90は、制御基板76とモータハウジング50とで圧縮された状態となっている。そして、板バネ90の端部93は制御基板76に接続されており、板バネ90の端部94はモータハウジング50に接続されている。具体的には、本実施の形態では、板バネ90の端部94はモータハウジング50の金属部50aに接続されている。
【0066】
詳しくは、板バネ90の端部93は、制御基板76に、電気的に接続されている。また、板バネ90の端部93は、制御基板76に半田付けされており、制御基板76と機械的にも接続されている。なお、板バネ90の端部93が制御基板76に接続されているとは、板バネ90の端部93が制御基板76に直接接続されている状態のみならず、板バネ90の端部93が制御基板76に間接的に接続されている状態も含む。例えば、板バネ90の端部93と制御基板76とを長期にわたって安定して電気的に接続するため、板バネ90の端部93と制御基板76との間に、銀等の酸化しにくい材料で形成された部材を設けることも考えられる。このような場合でも、本実施の形態では、板バネ90の端部93が制御基板76に接続されているという。
【0067】
また、板バネ90の端部94は、モータハウジング50に、電気的に接続されている。なお、板バネ90の端部94がモータハウジング50に接続されているとは、板バネ90の端部94がモータハウジング50に直接接続されている状態のみならず、板バネ90の端部94がモータハウジング50に間接的に接続されている状態も含む。例えば、板バネ90の端部94とモータハウジング50とを長期にわたって安定して電気的に接続するため、板バネ90の端部94とモータハウジング50との間に、銀等の酸化しにくい材料で形成された部材を設けることも考えられる。このような場合でも、本実施の形態では、板バネ90の端部94がモータハウジング50に接続されているという。
【0068】
すなわち、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70においては、制御基板76は、板バネ90及びモータハウジング50を介して、基体80に電気的に接続されている。このため、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、制御基板76のアースをとることができ、制御基板76の帯電を抑制することができる。
【0069】
ここで、従来のブレーキ液圧制御装置には、制御基板と電気的接続部品との間に金属製のコイルスプリングを設け、制御基板のアースをとるものが提案されている。ここで、コイルスプリングは、振動によって、該コイルスプリングの伸縮方向と垂直な方向に変形しやすい。コイルスプリングの伸縮方向とは、制御基板と電気的接続部品との対向方向である。そして、コイルスプリングが該コイルスプリングの伸縮方向と垂直な方向に変形すると、コイルが制御基板及び電気的接続部品の少なくとも一方に接していない状態となるため、制御基板のアースをとることができなくなる。このため、従来のブレーキ液圧制御装置は、制御基板と電気的接続部品との間に配置されている部材に貫通孔を形成し、該貫通孔にコイルスプリングを挿入している。これにより、コイルスプリングが貫通孔の内壁によって保持されるため、ブレーキ液圧制御装置が振動した場合でも、コイルスプリングが該コイルの伸縮方向と垂直な方向に変形することを抑制できる。
【0070】
このため、コイルスプリングを用いて制御基板のアースをとる従来のブレーキ液圧制御装置は、制御基板と電気的接続部品との間に配置されている部材に、コイルスプリングが挿入される貫通孔を形成する必要がある。この貫通孔は、内壁によってコイルスプリングを保持する必要があるため、加工する際の位置精度及び寸法精度に高い精度が求められる。このため、コイルスプリングを用いて制御基板のアースをとる従来のブレーキ液圧制御装置は、制御基板と電気的接続部品との間に配置されている部材を有する部品の製造コストが増加してしまい、ブレーキ液圧制御装置の製造コストが増加してしまう。
【0071】
一方、板バネ90は、コイルスプリングに比べて、該板バネ90の伸縮方向と垂直な方向に変形しにくい。このため、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、板バネ90が該板バネ90の伸縮方向と垂直な方向に変形することを抑制するために、制御基板76とモータハウジング50との間に配置されている部材に形成された貫通孔に、板バネ90を挿入する必要がない。すなわち、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70においては、制御基板76とモータハウジング50との間に配置されている部材に、貫通孔を形成する必要がない。また、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70においては、制御基板76とモータハウジング50との間に配置されている部材に形成された貫通孔に板バネ90が挿入される構成とする場合であっても、貫通孔の内壁によって板バネ90を保持させる必要がない。このため、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70においては、制御基板76とモータハウジング50との間に配置されている部材に形成された貫通孔に板バネ90が挿入される構成とする場合であっても、貫通孔を加工する際の位置精度及び寸法精度は、コイルスプリングを保持する従来の貫通孔と比べ、低いものでよい。すなわち、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70においては、コイルスプリングを用いて制御基板のアースをとる従来のブレーキ液圧制御装置と比べ、制御基板76とモータハウジング50との間に配置されている部材を有する部品の製造コストを削減できる。したがって、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、コイルスプリングを用いて制御基板のアースをとる従来のブレーキ液圧制御装置と比べ、製造コストの増加を抑制することができる。
【0072】
また、本実施の形態では、上述のように、電気的接続部品としてモータハウジング50を用いている。板バネ90と電気的接続部品とを安定して電気的に接続するには、電気的接続部品における板バネ90の端部94が接触する箇所は、平面であることが好ましい。モータハウジング50は、板バネ90の端部94が接触する箇所を平面に形成しやすいので、制御基板76のアースをとることの安定性が向上する。
【0073】
また、本実施の形態では、板バネ90は、端部93に、制御基板76と接触する平面部96を備えている。平面部96を備えることにより、板バネ90と制御基板76との接触面積が増加するため、制御基板76のアースをとることの安定性が向上する。また、本実施の形態では、板バネ90は、端部94に、モータハウジング50と接触する平面部97を備えている。平面部97を備えることにより、板バネ90とモータハウジング50との接触面積が増加するため、制御基板76のアースをとることの安定性が向上する。
【0074】
なお、板バネ90を該板バネ90の幅方向に観察した際の形状は、円弧形状等、種々の形状とすることができる。なお、板バネ90の幅方向とは、板バネ90の形成材料である板部材の幅方向である。図4では紙面直交方向が板バネ90の幅方向となり、図5では紙面左右方向が板バネ90の幅方向となる。ここで、本実施の形態に係る板バネ90は、次のような形状となっている。板バネ90は、端部93と端部94との間の少なくとも一カ所において、該板バネ90の厚さ方向に曲がった折り曲がり部95を備えている。なお、板バネ90の厚さ方向とは、板バネ90の形成材料である板部材の厚さ方向である。すなわち、板バネ90が1つの折り曲がり部95を備えている場合、板バネ90を該板バネ90の幅方向に観察した際の形状は、略V字形状となる。また、板バネ90が複数の折り曲がり部95を備えている場合、板バネ90を該板バネ90の幅方向に観察した際の形状は、ジグザグ形状となる。板バネ90をこのような形に形成することにより、板バネ90の形成が容易となる。
【0075】
また、本実施の形態では、板バネ90として、第1板バネ91及び第2板バネ92を備えている。そして、第1板バネ91及び第2板バネ92は、折り曲がり部95の曲がる方向が互いに逆となっている。ブレーキ液圧制御装置70が振動する際に、板バネ90の伸縮方向と垂直な方向への板バネ90の変形を観察すると、板バネ90の幅方向への変形と比べ、板バネ90の幅方向と垂直な方向へ変形しやすい。板バネ90の幅方向と垂直な方向とは、図4では紙面左右方向となる。また、ブレーキ液圧制御装置70が振動する際、板バネ90は、折り曲がり部95の曲がる方向により、図4の紙面左方向への変形しやすさと、図4の紙面右方向への変形のしやすさとが異なる。そこで、本実施の形態では、第1板バネ91及び第2板バネ92が、折り曲がり部95の曲がる方向が互いに逆となっている。このように第1板バネ91及び第2板バネ92を構成することにより、図4の紙面左右方向において、互いの曲がりやすい方向が逆となる。このため、このように第1板バネ91及び第2板バネ92を構成することにより、第1板バネ91及び第2板バネ92の全体としては、図4の紙面左右方向の両方向に対して変形しにくくなる。したがって、このように第1板バネ91及び第2板バネ92を構成することにより、制御基板76のアースをとることの安定性が向上する。なお、本実施の形態では、第1板バネ91の平面部96と第2板バネ92の平面部96とは、一体化されている。また、第1板バネ91の平面部97と第2板バネ92の平面部97とは、一体化されている。
【0076】
ここで、本実施の形態において、第1板バネ91及び第2板バネ92の折り曲がり部95の曲がる方向が互いに逆となっているとは、第1板バネ91及び第2板バネ92の折り曲がり部95の曲がる方向が厳密に逆になっているという意味ではない。具体的には、本実施の形態における第2板バネ92は、制御基板76とモータハウジング50との対向方向に沿った仮想線を回転基準として、第1板バネ91を180度回転させた姿勢となっている。これに限らず、第2板バネ92は、制御基板76とモータハウジング50との対向方向に沿った仮想線を回転基準として、第1板バネ91を180度よりも小さい角度で回転させた姿勢となっていてもよい。この際、第2板バネ92は、制御基板76とモータハウジング50との対向方向に沿った仮想線を回転基準として、第1板バネ91を90度よりも大きく回転させた姿勢であればよい。第2板バネ92がこのような姿勢になっている場合でも、本実施の形態では、第1板バネ91及び第2板バネ92の折り曲がり部95の曲がる方向が互いに逆となっていると称することとする。
【0077】
また、図5に示すように、第1板バネ91の幅方向と垂直な方向に第1板バネ91及び第2板バネ92を観察した際、本実施の形態では、第1板バネ91及び第2板バネ92は、互いが重なり合わないように配置されている。これに限らず、第1板バネ91の幅方向と垂直な方向に第1板バネ91及び第2板バネ92を観察した際、第1板バネ91及び第2板バネ92は、互いが重なり合っていてもよい。また、図4に示すように、第1板バネ91の幅方向に第1板バネ91及び第2板バネ92を観察した際、本実施の形態では、第1板バネ91及び第2板バネ92は、互いが重なり合うように配置されている。これに限らず、第1板バネ91の幅方向に第1板バネ91及び第2板バネ92を観察した際、第1板バネ91及び第2板バネ92は、互いが重なり合っていなくてもよい。
【0078】
ここで、本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、板バネ90の姿勢が図3図5で示す姿勢で、鞍乗型車両100に搭載される。具体的には、鞍乗型車両100にブレーキ液圧制御装置70が搭載された際、板バネ90は、該板バネ90の幅方向が水平にならない姿勢となっている。より詳しくは、本実施の形態では、鞍乗型車両100にブレーキ液圧制御装置70が搭載された際、板バネ90は、該板バネ90の幅方向が上下方向に沿うよう姿勢となっている。
【0079】
鞍乗型車両100は、走行中、上下方向に振動しやすい。一方、折り曲がり部95が形成されている板バネ90は、上述のように、板バネ90の幅方向と垂直な方向へ変形しやすい。このため、鞍乗型車両100にブレーキ液圧制御装置70が搭載された際、板バネ90の幅方向が水平にならない姿勢にすることにより、板バネ90が変形しやすい方向が、鞍乗型車両100の走行中に振動が大きくなりやすい上下方向とは異なる方向となる。このため、鞍乗型車両100にブレーキ液圧制御装置70が搭載された際、板バネ90の幅方向が水平にならない姿勢にすることにより、板バネ90がモータハウジング50と接触しない状態になることをより抑制でき、制御基板76のアースをとることの安定性が向上する。
【0080】
<ブレーキ液圧制御装置の効果>
本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70の効果について説明する。
【0081】
本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、ブレーキ液の副流路26が形成されている基体80と、副流路26に設けられているポンプ装置31の駆動源であるモータ40と、モータ40の制御基板76と、基体80に接続されたハウジング85と、を備えている。モータ40は、ステータ41と、ロータ44と、ロータ44に固定された出力軸45と、を含む。制御基板76は、ハウジング85に収納されている。モータ40は、ブラシレスモータであって、基体80とハウジング85とで囲まれる空間内に配置されている。ロータ44には、出力軸45の第1端部である端部45a及び第2端部である端部45bの両方がロータ44から突出する状態で、出力軸45が固定されている。また、モータ40は、第1軸受である軸受46と、第2軸受である軸受47と、モータハウジング50と、を備えている。軸受46は、端部45aとロータ44との間において出力軸45を回転自在に支持するものである。軸受47は、端部45bとロータ44との間において出力軸45を回転自在に支持するものである。モータハウジング50には、ステータ41及びロータ44が収納されている。また、モータハウジング50は、軸受46及び軸受47を保持している。ブレーキ液圧制御装置70は、さらに、出力軸45の回転状態を検出する検出機構60を備えている。また、基体80には、ハウジング85側に開口する第1凹部である凹部84が形成さている。そして、モータ40の軸受46は、凹部84に挿入されている。
【0082】
このように構成されたブレーキ液圧制御装置70は、基体80とハウジング85とで囲まれる空間内にモータ40が配置されているので、従来のブレーキ液圧制御装置よりも小型化することができる。また、このように構成されたブレーキ液圧制御装置70は、モータ40が元来備えている軸受46を凹部84に挿入して、モータ40を位置決めしている。このため、このように構成されたブレーキ液圧制御装置70は、基体80とハウジング85とで囲まれる空間内にモータ40を配置する際でも、モータ40の位置精度を向上させることができる。
【0083】
好ましくは、ポンプ装置31は、直進往復運動をするピストン31aを含む。また、出力軸45のうちの、軸受46によって支持される箇所と端部45aとの間の領域に、ピストン31aの端部を受ける偏心体48が付設されている。そして、出力軸45のうちの、偏心体48が付設された箇所と端部45aとの間の領域は、自由となっている。このように構成することにより、出力軸45の当該領域を回転自在に支持する軸受の配置スペースが基体80に不要となり、ブレーキ液圧制御装置70をさらに小型化することができる。
【0084】
好ましくは、軸受46は、凹部84に嵌合されている。このように構成することにより、モータ40の位置精度をさらに向上させることができる。また好ましくは、軸受46は、凹部84に、隙間嵌めで嵌合されている。このように構成することにより、軸受46を凹部84に嵌合することが容易となり、ブレーキ液圧制御装置70の組み立て工数を低減することができる。
【0085】
好ましくは、モータハウジング50は、外方へ突出するフランジ51を備えている。基体80には、ハウジング85側に開口し、フランジ51が挿入された第2凹部である凹部81が形成さている。そして、凹部81の内周面に形成された塑性変形部82と凹部81の底部83との間でフランジ51が挟持されて、モータ40が基体80に固定されている。このように構成することにより、モータ40を固定するためのボルトが不要となり、該ボルトがねじ込まれる雌ネジ部を基体80に形成することも不要となる。したがって、ブレーキ液圧制御装置70をさらに小型化することができる。
【0086】
好ましくは、検出機構60は、出力軸45と共に回転する回転要素61と、回転要素61の回転位置を検出するセンサ62と、を備えている。回転要素61は、出力軸45と制御基板76との間に位置している。そして、センサ62は、制御基板76に実装されている。このように構成することにより、センサ62を実装するために制御基板76以外の制御基板を設ける必要がなくなり、ブレーキ液圧制御装置70をさらに小型化できる。
【0087】
以上、実施の形態において本発明に係るブレーキ液圧制御装置及び鞍乗型車両の一例を説明したが、本発明に係るブレーキ液圧制御装置及び鞍乗型車両は、実施の形態の説明に限定されない。例えば、実施の形態の全て又は一部が組み合わされて、本発明に係るブレーキ液圧制御装置及び鞍乗型車両が構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 胴体、2 ハンドル、3 前輪、3a ロータ、4 後輪、4a ロータ、10 ブレーキシステム、11 ブレーキレバー、12 第1液圧回路、13 ブレーキペダル、14 第2液圧回路、21 マスタシリンダ、22 リザーバ、23 ブレーキキャリパ、24 ホイールシリンダ、25 主流路、25a 主流路途中部、26 副流路、26a 副流路途中部、27 増圧流路、28 インレットバルブ、29 アウトレットバルブ、30 アキュムレータ、31 ポンプ装置、31a ピストン、32 切換バルブ、33 増圧バルブ、34 マスタシリンダ液圧センサ、35 ホイールシリンダ液圧センサ、40 モータ、41 ステータ、42 コイル、43 モールド部、44 ロータ、45 出力軸、45a 端部、45b 端部、45c 回転軸、46 軸受、47 軸受、48 偏心体、50 モータハウジング、50a 金属部、50b 樹脂部、51 フランジ、60 検出機構、61 回転要素、62 センサ、70 ブレーキ液圧制御装置、75 制御装置、76 制御基板、80 基体、80a 第1面、80b 第2面、81 凹部、82 塑性変形部、83 底部、84 凹部、85 ハウジング、90 板バネ、91 第1板バネ、92 第2板バネ、93 端部、94 端部、95 折り曲がり部、96 平面部、97 平面部、100 鞍乗型車両、MP マスタシリンダポート、WP ホイールシリンダポート。
図1
図2
図3
図4
図5