(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】二次元光学スペクトルにおけるピーク決定
(51)【国際特許分類】
G01J 3/30 20060101AFI20230831BHJP
G01J 3/02 20060101ALI20230831BHJP
G01J 3/18 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
G01J3/30
G01J3/02 C
G01J3/18
(21)【出願番号】P 2022502915
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2020071463
(87)【国際公開番号】W WO2021018992
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-17
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508306565
【氏名又は名称】サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】シュルーター ハンス-ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】グッツォナト アントネッラ
(72)【発明者】
【氏名】クアース ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヒュエルステド ピーター
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0114139(US,A1)
【文献】特開平10-142054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0025121(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103226095(CN,A)
【文献】特開平09-105672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00-3/52
G01N 21/00-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学スペクトルにおけるピーク強度を決定する方法であって、
-光学スペクトルを検出器アレイ上に画像化することによって、スペクトル値の二次元アレイを生成することと、
-前記スペクトル値のアレイの第1の二次元サブアレイを、前記サブアレイが予想される位置を有する前記スペクトルの第1のピークを含むように、選択することと、
-前記第1のサブアレイ内で、前記スペクトル値を補間して、第1の補間されたサブアレイを生成することと、
-前記第1の補間されたサブアレイを使用することによって、前記第1のピークの実際の位置を決定することと、
-前記第1のピークの前記実際の位置および前記予想される位置を使用することによって、オフセットを決定することと、
-前記オフセットを使用することによって、前記スペクトルの第2のピークの予想される位置を調整することと、
-前記スペクトル値のアレイの第2の二次元サブアレイを、前記第2のサブアレイが調整された予想される位置を有する前記第2のピークを含むように、選択することと、
-前記第2のサブアレイ内で、補間されたスペクトル値を使用して、前記第2のピークのピーク強度値を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記検出器アレイが二次元検出器アレイである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の補間されたサブアレイを生成することが、前記スペクトル値を第1の方向および第2の方向に補間することを含み、前記第1の方向および前記第2の方向は直交することが好ましい、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のピークの実際の位置を決定することが、
-前記第1の補間されたサブアレイの最大値を決定することと、
-前記最大値の位置を決定することと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1の補間されたサブアレイを生成することが、前記スペクトル値を第1の方向および第2の方向に補間することを含み、
前記第2のサブアレイ内で、補間されたスペクトル値を使用して、前記第2のピークのピーク強度値を生成することが、
-前記第2のサブアレイ内で、前記第2の方向のみに前記スペクトル値を補間して、第2の補間されたサブアレイを生成することと、
-前記第2の補間されたサブアレイ内で、
前記第1の方向の元のスペクトル値ごとに、補間されたスペクトル値の合計を決定して、一連の合計値を生成することと、
-前記一連の合計値を補間して、補間された一連の合計値を生成することと、
-前記補間された一連の合計値の合計を決定して、前記第2のピークのピーク強度値を生成することと、を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のピークの実際の位置を決定することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のピークの実際の位置を決定することが、
-前記第2の補間されたサブアレイの最大値を決定することと、
-前記最大値の位置を決定することと、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
-前記第2のサブアレイ内で、前記第1の方向にも前記スペクトル値を補間して、拡大された第2の補間されたサブアレイを生成することをさらに含み、
最大値を決定することが、前記拡大された第2の補間されたサブアレイの最大値を決定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1の補間されたサブアレイを生成することが、前記スペクトル値を第1の方向および第2の方向に補間することを含み、
前記第1の方向における前記補間が、3次スプライン補間またはガウス補間を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1の補間されたサブアレイを生成することが、前記スペクトル値を第1の方向および第2の方向に補間することを含み、
前記第2の方向における前記補間が、アキマスプライン補間を含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1の補間されたサブアレイを生成することが、前記スペクトル値を第1の方向および第2の方向に補間することを含み、
最大値を決定することが、前記第2の方向のサブアレイのスペクトル値ごとに、
-前記第1の方向における最大の補間値を決定することを含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
最大値を決定することが、前記第1の方向のサブアレイのスペクトル値ごとに、
-前記第2の方向における補間されたサブアレイの2つの変曲点を決定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記スペクトル値のアレイの二次元サブアレイを、前記サブアレイが予想される位置を有する前記スペクトルのピークを含むように選択することが、
-サブアレイが前記ピークの前記予想される位置と実質的に一致する中心を有するように、前記サブアレイを選択することを含む、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ピークが予想される広がりを有し、
-前記サブアレイが前記ピークの前記予想される広がりの最大部分にわたる範囲を含むように、前記サブアレイを選択することをさらに含み、
前記最大部分が、少なくとも50%であることが好ましく、少なくとも70%であることがより好ましい、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記光学スペクトルが、エシェルスペクトルを含む、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
第1の補間されたサブアレイを生成することが、前記スペクトル値を第1の方向および第2の方向に補間することを含み、
前記第1の方向が、前記エシェルスペクトルの次数の方向に実質的に対応する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のピークの前記予想される位置および/または前記第2のピークの前記予想される位置がメモリユニットから取り出される、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記光学スペクトルが、プラズマを使用して生成され、前記第1のピークおよび/または前記第2のピークが、前記プラズマ中に存在する物質に対応する、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
光学分光法においてオフセットを決定する方法であって、
-検出器アレイを使用することによって、二次元光学スペクトルを検出することと、
-前記検出器アレイにおける、前記スペクトルのピークの予想される位置を含む二次元サブアレイを定義することと、
-前記サブアレイ内で前記スペクトルを補間して、補間された部分的な二次元スペクトルを生成することと、
-前記補間された部分的なスペクトルを使用することによって、前記ピークの実際の位置を決定することと、
-前記ピークの前記実際の位置および前記予想される位置を使用することによって、オフセットを決定することと、を含む、方法。
【請求項20】
-前記スペクトルのさらなるピークの前記予想される位置を含む、さらなる二次元サブアレイを定義することと、
-前記オフセットを使用することによって、前記少なくとも1つのさらなるサブアレイの前記位置を調整することと、をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
プロセッサに、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の方法を実行させるための命令を含む、ソフトウェアプログラム製品。
【請求項22】
光学分光法のためのシステムであって、前記システムが、検出器アレイと、関連するメモリを含むプロセッサと、を含み、前記プロセッサが、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されている、システム。
【請求項23】
光を発生させるためのプラズマ源と、光学スペクトルを生成するためのエシェル回折格子とをさらに備える、請求項22に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元光学スペクトルにおけるピーク決定に関する。より具体的には、本発明は、エシェルスペクトルなどの光学スペクトルのピーク強度を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学分光法は、光源から放出される光または物体によって反射される光の特性を決定し、したがって、それらの光源または物体の特性を決定するために使用されるよく知られた技術である。光学分光法の具体的な例は、エシェル分光法であり、互いに対して90°回転されている2つの回折格子、または回折格子とプリズムが使用される。このような構成を使用している場合、連続波長スペクトルが2つの実質的に垂直な方向に分割され、検出器に投影される二次元スペクトルを生成し得る。通常、CMOS(相補型金属酸化物半導体)検出器チップなどの半導体検出器が使用される。エシェルスペクトルは通常、線、いわゆる次数、およびピークを有し、ほとんどのピークが、次数において存在する。ピークはスペクトルの局所的な最大値あり、一定の原子または分子に対して特有である。エシェルスペクトルのピークの位置は、ピークをもたらす特定の元素または分子を表し、一方、ピークの振幅は、元素または分子の相対量を示す。
【0003】
光学分光法、特にエシェル分光法を使用するときに発生し得る問題は、ドリフトのためにピークが一定しないことがあることである。つまり、温度変化により、回折格子(または回折格子とプリズム)の角度または相対距離が変化し、エシェルスペクトルのピーク位置が変化し得る。結果的に、ピークが、識別されないことがあり、または誤って識別され、ある元素に関連するピークを別の元素に関連するピークと間違えることがある。
【0004】
光学分光法は、ICP(誘導結合プラズマ)光源と組み合わせて使用され、分析される光を提供し得る。ICP光源はこの目的に有利に使用され得るが、大量の熱を発生するという欠点を有する。この熱は、光学分光計の部品の温度を上昇させ、光学分光計にドリフト、したがってオフセットをもたらし得る。このことは通常、誤った結果につながり、光学スペクトルの強度が誤った位置、例えば、ピークではなくピークの隣で決定されることがある。
【0005】
したがって、オフセットを補正できるようにするために、任意のオフセットを正確に測定することが所望される。しかしながら、光学スペクトルのオフセットを測定する場合、検出器の画素サイズが、光学スペクトルの任意のオフセットが少なくとも画素サイズに等しい段差で測定されるという問題を構成している。このことは、必然的にオフセット決定の精度を制限し、したがって任意のドリフト補正の精度を制限する。画素サイズの段差でオフセットを測定することは、一部の用途には十分に正確でないことがわかっている。
【0006】
米国特許第6,029,115号は、選択された一次元サブアレイのスペクトルデータを取得するための検出器を備えた分光測定器を開示している。オフセットデータは、異なる時点でのサブアレイ位置のスペクトルシフトを取得するために決定される。スリット走査が、検出器の画素サイズよりも小さいサブインクリメントを実現するために使用され得る。しかしながら、スリット走査は、非常に正確なステッピングモータを必要とし、これは高価で、それ自体が温度変化によってドリフトを持ち込み得る。
【0007】
米国特許第7,319,519号は、エシェルスペクトルでの波長を校正する方法を開示している。スペクトル線のドリフトを決定するために、基準光源が使用される。ドリフトは次に、回折格子、プリズム、ミラー、および検出器の操作要素を調整することによって、機械的に補正される。しかしながら、ドリフトを機械的に補正することは、面倒であり、それ自体がドリフトの原因となり得るいくつかの部品を含むので、時間がかかり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6,029,115号公報
【文献】米国特許第7,319,519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術の不利な点を克服し、ドリフトの存在下であっても正確かつ信頼性があり、スリット走査、ステッピングモータ、および機械的調整手段の使用を回避することができる、光学スペクトルにおけるピーク強度を決定する方法を提供することを追求する。本発明はまた、光学分光法におけるドリフトを検出する方法、および光学分光法のためのシステムを提供することを追求する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、光学スペクトルにおけるピーク強度を決定する方法を提供し、方法は、
-光学スペクトルを検出器アレイ上に画像化することによって、スペクトル値の二次元アレイを生成することと、
-スペクトル値のアレイの第1の二次元サブアレイを、サブアレイがスペクトルの第1のピークを含むように選択することであって、第1のピークが予想される位置を有する、選択することと、
-第1のサブアレイ内で、スペクトル値を補間して、第1の補間されたサブアレイを生成することと、
-第1の補間されたサブアレイを使用することによって、第1のピークの実際の位置を決定することと、
-第1のピークの実際の位置および予想される位置を使用することによって、オフセットを決定することと、
-オフセットを使用することによって、スペクトルの第2のピークの予想される位置を調整することと、
-スペクトル値のアレイの第2の二次元サブアレイを、第2のサブアレイが第2のピークを含むように選択することであって、第2のピークが、調整された予想される位置を有する、選択することと、
-第2のサブアレイ内で、補間されたスペクトル値を使用して、第2のピークのピーク強度値を生成することと、を含む。
【0011】
第1のサブアレイを使用することによって、第1のピークまたは基準ピークの実際の位置が決定される。第1のピークまたは基準ピークの、予想される位置および実際の位置を使用することによって、スペクトルのオフセットを決定が決定され得る。次に、オフセットを使用して、予想される位置を調整することによって、第2のサブアレイをより正確に位置決めし、したがって第2のピークまたはターゲットピークの強度をより正確に決定する。
【0012】
本発明は、ドリフトによる光学スペクトルのオフセットが実質的に均一であるという、洞察に基づいている。つまり、第2のピークまたはターゲットピークのオフセットは、第1のピークまたは基準ピークのオフセットに実質的に等しい。このことが、基準ピークの決定されたオフセットを、ターゲットピークのオフセットの推定値として使用されることを可能にしている。
【0013】
サブアレイを選択し、スペクトル値を補間して、補間されたサブアレイを生成することによって、ピークの実際の位置が、補間しない場合よりも高い精度で決定され得る。具体的には、補間により、サブ画素の精度でピークの位置を決定することが可能になる。加えて、補間により、特にピークがわずか数画素の幅である場合に、ピーク強度をより正確に決定することが可能になる。任意の丸め誤差は、サブ画素補間を使用することによって低減し得るとともに、丸め誤差に対するドリフトの影響が大幅に低減される。
【0014】
本発明で使用されるような補間は、時間での補間とは対照的に、空間での補間であることに留意されたい。時間での補間は、本発明による方法および装置においても使用され、例えば、時間での介在点の任意のオフセットを決定し得るが、本明細書で説明されるようなスペクトル値の補間は、空間での補間である。
【0015】
本発明は、光路の部品を一定の温度に維持することによって、ドリフトを回避しようとする、高度な温度制御システムの必要性を排除する、さらなる利点を提供する。ドリフトに起因するオフセットを考慮することによって、任意のドリフトの発生は、光学スペクトルのピーク強度を適切に決定することに対して重要性が非常に低い。本発明は、単一の光源、例えば、プラズマを使用することが可能であり、したがって、基準光源の必要性を排除する。本発明は、スリット走査の必要性を排除し、機械的により単純で、人為要素を持ち込む傾向が著しく低い、固定スリットの使用を可能にする。
【0016】
検出器アレイは、二次元検出器アレイであることが好ましい。これにより、スペクトル値の二次元アレイがほぼ即時に生成され得る。しかしながら、一次元検出器アレイが使用され、物理的光学スペクトルが一次元検出器アレイを使用して走査される、実施形態が想定され得る。
【0017】
第1の補間されたサブアレイを生成することは、スペクトル値を第1の方向および第2の方向に補間することを含み得、第1の方向および第2の方向は直交することが好ましい。つまり、第1のピークまたは基準ピークの位置(および可能であれば強度)を決定するために使用される第1のサブアレイを補間する場合、補間は2つの直交する次元、通常はx次元とy次元、で実行され得る。そのような次元の1つ、例えば、x次元は、次数が拡大する方向に実質的に対応し得る。すなわち、x次元と次数のほぼ長手方向とは、それらの間に、小さな角度、例えば、30°未満、好ましくは15°未満の角度を画定し得る。例えば、近接角45°を囲む2つの次元(方向)で、2つの非直交次元のサブアレイを補間することも可能であるが、そのような補間は、一般に、計算面でより過大な労力を要する。
【0018】
上記のように、第1の補間されたサブアレイを生成することは、第1の方向および第2の方向にスペクトル値を補間することを含み得る。つまり、第1の補間されたサブアレイは、2つの方向に補間することによって生成される。いくつかの実施形態では、1つの方向における補間のみで十分であり得、したがって、いくらかの計算量を節約し得る。しかしながら、2つの方向の補間は、ピークの位置と強度の両方に関してより高い精度をもたらす。
【0019】
以下でより詳細に説明するように、第2のサブアレイ内で、補間されたスペクトル値を使用して、第2のピークのピーク強度値を生成することは、1つの方向のみでスペクトル値を補間することを含むことが好ましいことに留意されたい。
【0020】
補間は、ほとんど任意の数の中間(つまり、補間された)スペクトル値を2つの元のスペクトル値間に生成して、実行され得る。いくつかの実施形態では、単一の中間値のみが使用されてもよく、したがって、精度の増加をより小さくして、計算量を削減し得る。典型的な実施形態では、より多くの中間値、例えば、10の中間値などの5~20の中間値が生成されるが、20を超える数がさらに使用され得る。
【0021】
中間値の数は、両方向で同一である必要がないことに留意されたい。上記のように、補間は、一方向にのみ実行されてもよく、他の方向にゼロの中間点を生成し得る。しかしながら、好ましい実施形態は、両方向に補間することを含むが、一方の方向に生成される中間値の数は、例えば、10であり得、一方、他方の方向に生成される中間値の数は、例えば、わずか5であり得る。同様に、第2のサブアレイを補間するときに生成される中間値の数は、第1のサブアレイを補間するときに生成される中間値の数と同じである必要がない。
【0022】
第1のピークの実際の位置を決定することは、第1の補間されたサブアレイの最大値を決定すること、および最大値の位置を決定することを含み得る。
【0023】
最大値を決定することは、例えば、最大のスペクトル値を決定すること、最大のスペクトル値のクラスタを決定すること、またはピークの変曲点から最大値を導出することを含み得る。最大値を決定することは、両方向に実行され得る。最大値の位置を決定することは、最大値のx座標およびy座標などの座標を決定することを含み得る。
【0024】
第2のサブアレイ内で、補間されたスペクトル値を使用して、第2のピークのピーク強度値を生成することは、
-第2のサブアレイ内で、第2の方向のみのスペクトル値を補間して、第2の補間されたサブアレイを生成することと、
-第2の補間されたサブアレイ内で、第1の方向の元のスペクトル値ごとに、補間されたスペクトル値の合計を決定して、一連の合計値を生成することと、
-一連の合計値を補間して、補間された一連の合計値を生成することと、
-補間された一連の合計値の合計値を決定して、第2のピークのピーク強度値を生成することと、を含む。
【0025】
このような実施形態では、スペクトル値は1つの方向にのみ補間される。この方向は、本明細書では第2の方向と呼ばれ、例えば、y方向であり得る。エシェルスペクトルの次数がx方向とほぼ一致する場合、ピーク強度を決定するときに、y方向のみでスペクトルを補間することが有利であることがわかっている。この優先傾向は、ピーク形状および次数全般に基づいており、当然、光学スペクトルに対する検出器アレイの向きに依存することになる。
【0026】
第2の方向に補間することは、ピーク位置を決定するときだけでなく、ピーク強度を決定するときにも、より高い精度をもたらす。同様に、一連の合計値を第1の方向に補間することもまた、より高い精度をもたらす。合計値を補間することが省略されている実施形態が、想定され得る。
【0027】
上記のように第2のピークのピーク強度値を生成することは、サブアレイの少なくとも一部にわたって(補間されたおよび/または元の)スペクトル値を追加することを含み、ピーク値の合計をもたらすことに留意されたい。このことは、2方向でピークのスペクトル値を積分することと等価と見なされ得る。ピーク強度を表す結果の合計は、計算に含まれるスペクトル値の数で除算され、平均ピーク値をもたらし得る。合計されたスペクトル値および平均ピーク値の両方が、一般に最大ピーク値とは異なることになるのは明らかであろう。
【0028】
この方法は、第2のピークの実際の位置を決定することをさらに含み得る。すなわち、強度(すなわち、スペクトル値の振幅の大きさ)に加えて、ピークの位置が決定され得る。ピークの位置は、ピークの最大値の座標を確立することによって決定され得る。したがって、第2のピークの実際の位置を決定することは、第2の補間されたサブアレイの最大値を決定することと、最大値の位置を決定することとを含み得る。
【0029】
上記のように、第2のピークのピーク強度値またはターゲットピークのピーク強度値を生成することは、1つの方向のみでスペクトル値を補間することを含み得、他の方向における補間は、合計値(または平均値)に対して実行され得る。しかしながら、最大値を決定するために、2つの方向にスペクトル値を補間することが好ましい。したがって、本発明の方法は、第2のサブアレイ内で、第1の方向にもスペクトル値を補間して、拡大された第2の補間されたサブアレイを生成することをさらに含み得、最大値を決定することは、拡大された第2の補間されたサブアレイの最大値を決定することを含む。本明細書で使用されているように、第2の補間されたサブアレイという用語は、1つの方向にのみ補間された第2のサブアレイを指し、一方で、拡大された第2のサブアレイという用語は、2つの方向に補間された第2のサブアレイを指す。
【0030】
ガウス補間などの補間のうちのいくつかの種類が、使用され得る。同じ補間手法が、両方向に使用され得る。しかしながら、方向ごとに異なる手法を使用することが、有利であり得る。
【0031】
第1の方向における補間は、三次スプライン補間、好ましくは三次エルミート補間、またはガウス補間を含み得る。第2の方向における補間も、三次スプライン補間を含み得るが、第2の方向においては、アキマスプライン補間が好ましい。いくつかの実施形態では、双三次スプライン補間が、使用され得る。
【0032】
最大値を決定することは、種々の方法で実行され得、最大値が決定される方向で決まり得る。ある実施形態では、最大値を決定することは、第2の方向のサブアレイのスペクトル値ごとに、第1の方向における最大の補間値を決定することを含み得る。すなわち、このような実施形態では、最大値は、第2の方向のスペクトル値ごとに、第1の方向における最も高い補間されたスペクトル値または元のスペクトル値を検索することによって、識別される。
【0033】
別法として、または追加で、最大値を決定することは、第1の方向のサブアレイのスペクトル値ごとに、第2の方向で、補間されたサブアレイの2つの変曲点を決定することを含み得る。このような実施形態では、変曲点は、ピークの存在の指標として使用される。ピークの形状およびアレイ内の方向に応じて、変曲点は、最大値の、具体的には最大値の位置の、より良好な指標であり得る。いくつかの実施形態では、最大値の存在を示すことは、スペクトル値を2乗すること、および(好ましくは補間された)ピークの変曲点を決定することによって、改善され得る。
【0034】
別法として、または追加として、ガウス適合度が、ピーク位置を決定するために使用され得る。例えば、3つ、4つ、または5つの最も高いスペクトル値の集合が、例えば、Nobach and Honkanen、Experiments in Fluids(2005)38:511~515に記載されているようなガウス適合度に使用され得る。
【0035】
スペクトル値のアレイの二次元サブアレイを、サブアレイがスペクトルのピークを含むように選択することであって、ピークが予想される位置を有する、選択することが、サブアレイがピークの予想される位置と実質的に一致する中心を有するように、サブアレイを選択することを含み得る。すなわち、サブアレイは、それがピーク、より具体的には、ピークの予想される位置を中心にするように、配置され得る。
【0036】
サブアレイの寸法または範囲、より具体的には、画素および/またはミリメートルで測定されたその長さおよび幅は、固定され得るか、または(予想される)ピークに応じて変化し得る。いくつかの実施形態では、すべてのサブアレイは、同じ寸法を有し得る。他の実施形態では、異なるサブアレイは、異なる寸法を有し得る。
【0037】
典型的な実施形態では、サブアレイは、検出器アレイよりも実質的に小さい。画素で測定される場合、サブアレイは、検出器アレイの画素数の10%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.1%未満を有し得る。いくつかの実施形態では、サブアレイは5×20画素(すなわち、補間された画素を数に入れない元の画素)のみを測定し得、一方、検出器アレイは、1000×1000画素以上を有し得る。
【0038】
サブアレイの寸法は、特定のピークに適合され得る。ピークは予想される広がりを有し得、方法は、サブアレイがピークの予想される広がりの最大部分にわたる範囲を含むように、サブアレイを選択することをさらに含み得、最大部分は、少なくとも50%であることが好ましく、少なくとも70%であることがより好ましい。範囲は、ある特定の最小強度(つまり、スペクトル値)によって定義され得る。
【0039】
光学スペクトルは、既知の方法で回折格子を使用して取得され得る、エシェルスペクトルを含み得る。しかしながら、他の光学スペクトル、具体的には二次元光学スペクトルも使用され得る。
【0040】
本発明の方法がエシェルスペクトルとともに使用される場合、第1の方向は、エシェルスペクトルの次数の方向に実質的に対応し得る。すなわち、第1の次元と次数のほぼ長手方向とは、それらの間に、小さな角度、例えば、30°未満、好ましくは15°未満の角度を画定し得る。次に、第2の方向は、第1の方向に垂直であり、エシェルスペクトルの次数のほぼ長手方向に実質的に垂直であり得る。そのような実施形態では、第1の方向は、x方向と呼ばれ、第2の方向は、y方向と呼ばれ得る。
【0041】
上記のように、方法は、第1のピークおよび第2のピークの予想される位置ならびに任意のさらなるピークを利用する。これらの予想される位置は、事前に決定され、保存されていてもよい。したがって、第1のピークの予想される位置および/または第2のピークの予想される位置は、メモリユニットから取り出され得る。
【0042】
光学スペクトルは、プラズマを使用して生成され得、一方、第1のピークおよび/または第2のピークは、プラズマ中に存在する物質に対応し得る。
【0043】
本発明はまた、光学分光法におけるオフセットを決定する方法を提供し、方法は、
-検出器アレイを使用することによって、二次元光学スペクトルを検出することと、
-サブアレイがスペクトルのピークの予想される位置を含む、検出器アレイの二次元サブアレイを、定義することと、
-サブアレイ内でスペクトルを補間して、補間された部分的な二次元スペクトルを生成することと、
-補間された部分的なスペクトルを使用することによって、ピークの実際の位置を決定することと、
-ピークの実際の位置および予想される位置を使用することによって、オフセットを決定することと、を含む。
【0044】
オフセットを決定する方法は、
-スペクトルのさらなるピークの予想される位置を含む、さらなる二次元サブアレイを定義することと、
-オフセットを使用することによって、少なくとも1つのさらなるサブアレイの位置を調整することと、をさらに含み得る。
【0045】
本発明はさらに、プロセッサに、上記の主張のいずれかによる方法を実行させるための命令を含む、ソフトウェアプログラム製品を提供する。ソフトウェアプログラム製品は、無形であり得る。プロセッサは、命令を記憶するための関連するメモリを有し得る。
【0046】
本発明は、光学分光法のためのシステムをさらに提供し、システムは、検出器アレイと、関連するメモリを含むプロセッサと、を含み、プロセッサは、上記の方法を実行するように構成されている。このシステムは、光を発生させるためのプラズマ源と、光学スペクトルを生成するための少なくとも1つのエシェル回折格子と、をさらに含み得る。プラズマ源は、誘導結合プラズマ(ICP)源であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明による光学分光システムを概略的に示す。
【
図2】エシェルスペクトルの画像が形成される検出器アレイを概略的に示す。
【
図3A】従来技術による検出器アレイで検出された光学スペクトルのピークを概略的に示す。
【
図3B】従来技術による検出器アレイで検出された光学スペクトルのピークを概略的に示す。
【
図3C】従来技術による検出器アレイで検出された光学スペクトルのピークを概略的に示す。
【
図4】本発明による補間されたピークを概略的に示す。
【
図5】本発明によるサブアレイを備えた検出器アレイを概略的に示す。
【
図6】本発明によるサブアレイの調整を概略的に示す。
【
図7】本発明による方法の例示的な実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、ドリフトによる光学スペクトルのオフセットが実質的に均一であるという、洞察に基づいている。つまり、第2のピークまたはターゲットピークのオフセットは、第1のピークまたは基準ピークのオフセットに実質的に等しい。このことが、基準ピークの決定されたオフセットを、ターゲットピークのオフセットの推定値として使用することを可能にしている。
【0049】
本発明は、ドリフトの量が、検出器アレイの2つの画素の中心間の距離よりも小さい場合でさえ、光学スペクトルの少量のドリフトが、スペクトルピークの測定された強度に対して、比較的大きな影響を有し得るという洞察に、さらに基づく。本発明は、サブアレイを使用してピーク強度を決定する場合、サブアレイの適切な位置決めが、正確な結果を取得するために重要であるという、洞察から利益を得る。本発明はまた、検出された光学スペクトルの補間が、特に、少数の画素のみの幅を有するピークに関してだけではないが、ピーク位置およびピーク強度の両方を決定する精度を大幅に改善できるという、洞察に基づく。
【0050】
図1に概略的に示されている光学分光システム10は、光源11、光学装置12、検出器アレイ13、プロセッサ14、メモリ15、および入力/出力(I/O)ユニット16を含むように示されている。光源11は、誘導結合プラズマ(ICP)源などのプラズマ源であり得る。光学装置12は、光源11によって生成された光のエシェルスペクトルを生成するために、エシェル回折格子およびプリズム(および/またはさらなる回折格子)を含み得る。二次元エシェルスペクトルの画像は、検出器アレイ13上に形成される。このような画像は、
図2を参照して後ほど詳しく説明されることになる。検出器アレイ13は、例えば、CCD(電荷結合デバイス)アレイであり得る。典型的な検出器アレイは、少なくとも約1024×1024画素(1メガ画素)を有するであろう。長方形の検出器アレイは、正方形であってもよいが、必ずしもそうである必要はない。検出器アレイ13は、エシェルスペクトルの検出された光量に対応するスペクトル値を生成し、スペクトル値をプロセッサ14に転送するように構成されている。プロセッサ14は、インテル(登録商標)i5(登録商標)またはその後継機の1つなどの市販のマイクロプロセッサ(μP)によって構成され得る。メモリ15は、好適な半導体メモリであり得、プロセッサ14が本発明による方法の実施形態を実行することを可能にする命令を記憶するために使用され得る。
【0051】
エシェルスペクトルが画像化される検出器アレイ13が
図2に概略的に示されている。エシェルスペクトル20は、
図2においてほぼ水平に延在するいわゆる次数7を含むように示されている。すなわち、次数7は、検出器アレイ13のほぼ第1の方向に延びており、この第1の方向は、
図2の例ではx方向と呼ばれ得る。したがって、次数7は、検出器アレイ13の第2の方向にほぼ垂直に延在し、この第2の方向は、y方向と呼ばれ得る。エシェルスペクトルの次数は、通常、わずかに湾曲しているため、次数が第1および第2の方向に平行または垂直である度合いは、エシェルスペクトル全体で変化し得る。
【0052】
示されている例では、第1の方向(x方向)は、長方形の検出器アレイ13の長辺に平行であり、一方、第2の方向(y方向)は、短辺に平行である。検出器アレイの向きは、二次元スペクトルに最もよく適合するように選択され、第1の方向と第2の方向という用語は、原則として交換可能であることが理解されよう。検出器アレイ13は、検出されたスペクトル値を表す出力信号を生成する検出器要素または画素のアレイを含む。
【0053】
次数7は、光強度が高く、その結果、スペクトル値が高い領域である。次数7は、低い光強度、したがって低いスペクトル値の谷または谷部8によって、分離されている。エシェルスペクトルは通常、特定の物質の特徴である1つ以上のピークを有する。例えば、エシェルスペクトルを生成するために、誘導結合プラズマ(ICP)を使用する場合、通常CO
2を表すピークが存在する。
図2には、第1のピーク1および第2のピーク2が概略的に表されている。実際のエシェルスペクトルでは、通常、3つ以上のピークが存在することになる。各ピークはある次数で配置され、少なくともローカルでは、その次数の最大値を構成する。各ピークは、第1の方向(
図2のx方向)と第2の方向(
図2のy方向)の両方に延在していることがわかる。典型的な実施形態では、ピークは、わずか数画素、例えば、3~5画素の長さおよび幅を有し得ることに留意されたい。
【0054】
異なる物質が、光学スペクトルのさまざまな位置にピークを生成することになる。原則として、これらの位置は物質ごとに固定されているため、物質が、スペクトル内のそのピークの位置に基づいて識別され得る。しかしながら、実際には、これらの位置は、温度差に起因するドリフトにさらされる。部品は、わずかではあっても、温度が変化すると膨張または収縮することが理解されよう。エシェル光学系では、形状のこのような比較的小さな変化が、ピークの位置に明らかに測定可能な変化を引き起こし得る。したがって、ピークの位置と強度の両方が、温度に関連するドリフトのために不正確に測定されることがある。この問題は、ピークの寸法が通常、画素サイズに比べて小さいという事実によって悪化する。上記のように、ピークは、例えば、わずか4画素にわたって延在し得る。したがって、実際のピークが画素の半分の距離にわたってドリフトする場合、ピークが測定される位置は画素全体にわたって移動し得る。加えて、
図3A~
図3Cを参照して示すことになるように、画素に比べて小さいピークのサイズは、ピーク強度を決定するときに誤差を発生しやすい。
【0055】
光学スペクトルのピークの検出は、
図3A~
図3Cに概略的に示されており、ピーク強度は、検出器アレイの単一の方向での距離の関数として示されている。ピーク100は、
図2のピーク1またはピーク2と同一であり得る。
図3Aに概略的に示されているスペクトルピーク100は、例として、最大値102を有するガウスまたはベルカーブ形状101を有することが示されている。このピーク100は、検出器アレイ(
図1および
図2の13)によって検出される。この検出器アレイは、画素幅Wを有する画素を含む。これは、画素が、この画素でのスペクトル値を表す単一の値を生成することを意味する。典型的には、画素は、画素の中心106でのスペクトル値を表す値を生成する。これは、滑らかなガウス形状101が階段形状105によって表されることになり、各段がそれぞれの画素の出力を表すことを意味する。ガウス形状101の中心線107が単一の画素の中心を通る
図3Aの例に示されているように、検出器アレイの画素がピークと整列されている場合、このことは、問題ではない。この特定の事例では、階段形状105の上部は、最大値102と正確に対応し、デジタル化されたピークの階段形状105は、ガウスピーク形状101の中心軸107に関して対称である。ピーク幅は、最大強度の約0.7(すなわち、1/√2)倍に等しい強度(すなわち、振幅)でのピークの幅として定義され得ることに留意されたい。
【0056】
図3Bの例では、検出器アレイはピーク100に対してシフトされているため、最大値102はもはや画素の中心と一致しない。代わりに、最大値102は2つの隣接する画素の間に正確に配置される。その結果、画素出力の階段形状105’は依然として対称であり、ピークの中心線107を中心としているが、2つの中心画素が最大値102から離れる方向に半画素幅の距離(つまり、W/2に等しい距離)でピーク強度を検出するため、その高さはもはやピークの実際の高さに対応しない。
図3Bに示したように、画素の中心線108は、ピーク形状の中心線107から距離W/2だけ離間している。
図3Bの例では、ピークの位置は正しく決定されることになるが、ピークの強度(つまり、最大値102の高さ)は不正確に決定されることになる。
【0057】
図3Cの例では、検出器アレイは、ピーク100に対してシフトされ、その結果、非対称の階段形状105’’をもたらしている。最大値102に最も近い画素の中心線108は、ガウスピーク形状101の中心線107と一致していない。最大値102に最も近い画素の中心線108は、ピーク形状の中心線107からW/2未満の距離だけ離間され、その結果、非対称の画素出力曲線(すなわち、階段形状)105’’および不正確なピーク強度値の両方をもたらす。
【0058】
したがって、画素に比べて小さいピークの寸法が、ピーク強度の決定とピーク位置の決定の両方で誤差につながることがわかる。
図3Aに示すように、非常に特殊な事例でのみ、ピーク強度とピーク位置の両方が正しく決定され得、他のすべての事例では、誤差が発生する。
【0059】
本発明の第1の態様によれば、補間を使用して、誤差を低減し、ピークの強度および位置の両方を決定可能にする精度を改善する。補間を使用することによって、元のスペクトル値の間に挿入され、スペクトル値の補間されたアレイを生成し得る追加のスペクトル値が生成され、したがって、元の値および補間値からなるアレイが生成される。これを
図4に概略的に示す。
【0060】
図4の例は、最大値102が2つの隣接する画素の境界に配置され、対称的な検出されたパルス(すなわち、階段形状)105をもたらすという点で、
図3Bの例と同様である。
図4では、検出器アレイによって生成されたスペクトル値が、スペクトル値109として示されている。これらのスペクトル値109は、画素の中心(
図3Cの106)に対応する値である。本発明によれば、検出されたスペクトル値109は、補間されたスペクトル値111を生成するために使用される。
図4に見られるように、102での実際の最大値と補間された最大値111Mとの差D2は、
図3Bの実際の最大値102と検出されたスペクトル値との差D1よりも大幅に小さい。したがって、測定されたピーク強度での誤差は、補間によって大幅に低減される。
【0061】
ガウス補間、三次スプライン補間、および/またはアキマスプライン補間など、多様な種類の補間が使用され得る。異なる種類の補間が、異なる方向に使用され得る。2つの元の値の間に挿入されるように生成された補間されたスペクトル値の数は、用途に応じて変化し得る。いくつかの用途では、単一の補間されたスペクトル値のみが挿入され得、他の用途では、25個以上の補完されたスペクトル値(つまり、中間値)が挿入され得る。ピークは、最大値の10分の1で全幅など、実質的にその全体の広がりにわたって補間され得るが、最大値を含む限られた範囲にわたって補間されることが好ましい。このピーク範囲Pは、最大値の半分での全幅に等しいこともあるが、最大値の約0.7倍、つまり約1/√2倍での全幅に等しいことが好ましい。
図4では、このピーク幅Pは、偶然2画素の幅と一致しているが、各ピークは異なるピーク幅を有し得ることが理解されよう。
【0062】
本発明のさらなる態様によれば、補間は、検出器アレイによって生成されたすべてのスペクトル値に対して実行されずに、それらの値の部分集合に対してのみ実行される。より具体的には、補間は、スペクトルの特定のピークを含むスペクトル値のサブアレイに対してのみ実行される。このことが、必要とされる計算量を制限しながら、ピークをより正確に決定することを可能にする。
【0063】
図4の例では、ピーク100は孤立したピークである。実際には、ピークは重なり得るので、常にこの状況とは限らない。
【0064】
本発明の方法はさらに、ターゲットまたはサンプルのピークがスペクトル内の別のピークによって干渉され、他のピークが典型的に別の元素に起因する場合、効果的な干渉低減を可能にする。この干渉の低減は、特徴的で正確な位置を対象のピークに関連付けることによって可能になり、それによって対象のピークを干渉するピークから区別する。特徴的な位置は、波長較正によって取得可能であり、一方で、位置の精度は、上記のようにドリフト補正によって大幅に向上され得る。つまり、2つの重なり合うピークは、スペクトル内のそれらのそれぞれの位置に基づいて、識別され得る。
【0065】
本発明の態様によれば、ピークの強度および/または位置は、基準ピークの位置および/または強度から導出された位置決め情報を使用しながら、サブアレイを位置決めことによって決定される。より具体的には、基準ピークの位置を使用して、任意のオフセットを決定し、次にそのオフセットを使用して、ターゲットピークの強度および/または位置を決定するために使用されるサブアレイの位置を調整することができる。
【0066】
サブアレイを使用してオフセットを決定すること、およびオフセットを利用してさらなるサブアレイの位置を調整することが、
図5を参照して説明されることになる。
図2のように、光学スペクトルが画像化される検出器アレイ13が、
図5に概略的に示されている。光学スペクトル20は、谷部または最小値8によって分離された次数7を含むことが示されている。次数は第1のピーク1を持つように示され、一方、別の次数は第2のピーク2を持つように示されている。この例では、第1のピーク1が基準ピークで、第2のピーク2がターゲットピークである。すなわち、第1のピーク1は、例えば、プラズマ中に存在することが知られている第1の物質に対応し得、一方、第2のピーク2は、プラズマ中に存在が検出されるべき第2の物質に対応し得る。第1のピークは、炭素、窒素、アルゴン、または別のプラズマ成分に関連し得る。したがって、光学スペクトル内に存在することが知られている物質に関連するピークが、基準ピークとして使用され、ターゲットピークをより良好に決定するためにドリフトによる任意のオフセットを決定するために使用される。
【0067】
ピークの強度および/または位置を決定するために、サブアレイが使用され得る。
図5の例では、第1のサブアレイ21は、第1のピーク1を含むように位置決めされ、一方、第2のサブアレイ22は、第2のピーク2を含むように位置決めされる。サブアレイは、処理量を減らし(限られた数の画素値のみが処理されるべきであるため)、他のピークの影響を排除するという利点をもたらす。この目的のために、サブアレイの位置と寸法の両方は、問題のピークの最大値および少なくとも大部分の広がりを含むように、一方で、他のピークを可能な限り除外するように、選択されるべきである。
【0068】
第1の物質と第2の物質の両方が、スペクトル内に既知のピーク位置を有する。しかしながら、これらのピークの実際の位置は、ドリフトにより予想される位置と異なり得る。スペクトルを生成する光学装置の部品は、温度が変化するとわずかに膨張または収縮し得るため、スペクトル全体の位置が、検出器アレイに対してドリフトし得る。ドリフトはわずかであり得るが、
図3A~
図3Cの従来技術の例に示されているように、わずかなドリフトでも、測定されたピーク位置およびピーク強度の差異の原因になる可能性がある。
【0069】
サブアレイを使用する場合、ドリフトにより、ピークがそのサブアレイに対して移動することになり、その結果、通常所望されるように、サブアレイはもはや、ピークに中心を置かない。サブアレイの中心から離れる方向にドリフトすることによって、ピークの広がりの一部がサブアレイの外に移動し得るので、ピークの検出された強度および/または位置は、変化し得る。場合によっては、ドリフトによりピークの最大値がサブアレイの外側に配置され得、これは明確に、誤ったピーク強度および/またはピーク位置を検出するという結果をもたらすことになる。本発明は、第1のサブアレイを使用して任意のドリフトを決定し、第2のサブアレイを位置決めするときにドリフトを補正することによって、この問題を解決する。加えて、ピークの強度および/または位置を決定することは、補間を使用することによって、より正確になされる。
【0070】
したがって、本発明によれば、方法は、第1のサブアレイ21が光学スペクトルの第1のピーク1を含むように、スペクトル値のアレイの第1の二次元サブアレイ21を選択することを含み得る。第1のピーク1は、予想される位置を有し、その位置は事前にメモリに記憶されていてもよい。第1のサブアレイ21は、それが第1のピークの最大値を含むように、好ましくはそれが第1のピークに中心を置き、ある程度のドリフトが発生しても、最大値がそれでもサブアレイ内に含まれることになるように、十分な画素をすべての側に残すように選択される。第1のサブアレイ1内で、スペクトル値は、第1のピークの実際の位置を決定するために使用される、第1の補間されたサブアレイを生成するために、補間される。次に、第1のピークの実際の位置と予想される位置を使用することによって、オフセットが決定され、オフセットは、発生していたドリフトを表す。オフセットを使用して、第2のピーク2の予想される位置が調整される。続いて、第2のサブアレイ22が、調整された予想される位置に第2のピーク2を含むように、第2のサブアレイ22が選択される。別法として、第2のサブアレイ22は、第2のピーク2の予想される位置に基づいて選択され得、次に、第2のサブアレイ22の位置は、オフセットを使用して調整され得る。最後に、第2のサブアレイ22の補間されたスペクトル値が、第2のピーク2のピーク強度値を生成するために使用される。
【0071】
上記のように、第1のサブアレイ21は、第1のサブアレイが選択されたときにドリフトが決定されていないので、第2のサブアレイ22よりも大きくてもよい。逆に、本発明は、任意のドリフトを考慮に入れることによって、第2のサブアレイ22を第1のサブアレイ21よりも小さくすることが可能となる。
【0072】
本発明のある態様によるドリフトの補正は、
図6に概略的に示され、初期の(第2の)サブアレイ22’は、(第2の)ピーク2’の予想される位置に中心を置かれる。ドリフトがオフセット30をもたらし、その全面にわたって予想される位置2’がシフトして実際の位置2に到達する。このオフセット30を決定し、それを(第2の)サブアレイ22’に適用することによって、サブアレイ22’もシフトされ、実際の位置2に中心を置くサブアレイ22をもたらす。結果として、ピーク2はサブアレイ22に含まれることになり、ピーク2の強度および/または位置が、正確に決定され得る。サブアレイ22は、実際の位置に中心を置く必要はないが、ある特定の実施形態では、そのように中心を置くことが好ましいことが理解されるであろう。補間を使用することによって、本発明による方法は、ドリフト補正においてサブ画素精度を得ることができる。
【0073】
上記のように、第1のピークまたは基準ピーク(
図5の1)のオフセットは、第2のピークまたはターゲットピーク2のオフセットの推定値として使用され得る。いくつかの実施形態では、第2のサブアレイの位置を調整するために使用されるオフセット(第2のオフセット)は、第1のピークのオフセット(第1のオフセット)と同一である。他の実施形態では、第2のサブアレイに適用されるオフセット(第2のオフセット)は、第1のピークのオフセット(第1のオフセット)から導出されるが、同一ではない。このような実施形態では、第2のオフセットは、補正因子を適用することによって第1のオフセットから導出され得る。
【0074】
そのような補正因子は、第1のピークと第2のピークとの間の距離(例えば、それらの予想される位置の間)に依存し得る。補正因子は、アレイのエッジでまたはその近くで追加の基準ピークを使用して決定され得、その追加の基準ピークのオフセットも決定される。次に、この追加のオフセットと元の基準ピークのオフセット(第1のオフセット)との差が、元の基準ピークからのターゲットピークの距離で乗算され、元の基準ピークからの追加のターゲットピークの距離で除算され、第2のオフセットを補正するための補正因子を生成し得る。この追加のオフセットと元の基準ピークのオフセット(第1のオフセット)との差がゼロの場合、補正因子もゼロであることは明らかであろう。
【0075】
本発明による方法の実施形態では、ターゲットピークのピーク強度を決定することは、(基準ピークの)オフセットを決定した直後に実行されることが好ましい。すなわち、オフセットを決定することおよびピーク強度値を決定することは、実質的に同時に実行されることが好ましい。オフセットを決定することとターゲットピーク強度を決定することの間に実質的に時間間隔を残さないことによって、ドリフトがピーク強度の決定に影響を与え得ないことが保証される。
【0076】
ターゲットピークごとに、基準ピークのオフセットが、再び決定されてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、決定されたオフセットは、複数のピーク決定において使用され得、したがって、同じまたは異なるピークの強度を決定するためにオフセットを再利用し得る。中間ドリフトが予想されない場合、オフセットは2つ以上のターゲットピークに再利用され得る。
【0077】
本発明による方法の例示的な実施形態は、
図7に概略的に示されている。
図7の方法70は70で開始し、その後、スペクトル値のアレイが72で生成される。第1のサブアレイが73で選択され、74で補間される。第1の補間されたサブアレイを使用して、第1のピークまたは基準ピークの実際の位置が、決定される。実際の位置および予想される位置を使用して、第1のピークまたは基準ピークのオフセットが、76で決定される。オフセットを使用して、第2のピークまたはターゲットピークの予想される位置が、77で調整される。次に、78で、第2のサブアレイが選択され、それが79で少なくとも部分的に補間される。すなわち、第2のサブアレイは、79でのみ1つの方向に補間され得るが、いくつかの実施形態では、2つの方向に補間さえ得る。少なくとも部分的に補間された第2のサブアレイを使用して、第2のピーク強度値が80で生成される。方法は81で終了する。
【0078】
ピークの最大値または高さは、ピークの強度と区別され得ることに留意されたい。最大値は、ピーク内の1つ以上の最大スペクトル値を指し得、強度は、ピーク(またはピークの一部)のスペクトル値の合計(または積分値)を指し得る。
【0079】
ピーク強度を生成することは、必ずしもではないが、補間を使用することによって実行されることが好ましい。補間されたスペクトルを使用して、ピークの強度を計算し、第1および第2の方向の両方で補間されたスペクトル値を使用し、これらのスペクトル値(元の値を含む)を集計して、強度にたどり着くことが可能である。しかしながら、本発明のさらなる態様によれば、より効率的な手順が使用され、補間されたスペクトルが、1つの方向でのみ集計することに使用され、次に結果の合計が、補間されて、集計されて、強度値が生成される。
【0080】
したがって、サブアレイの補間されたスペクトル値を使用してピークのピーク強度値を生成することは、補間されたサブアレイを生成するためにのみ、サブアレイのスペクトル値の集合を1つの方向に補間することを含み得る。補間されたアレイが、2方向において補間を使用することによって、既に生成されている場合は、1つの方向に補間値が使用され得、別の補間が省略され得る。いずれの場合も、少なくとも1つの方向に補間されたサブアレイが得られる。次に、第1の方向に補間されたサブアレイの元のスペクトル値ごとに、補完されたスペクトル値の合計(または平均)が決定され、一連の合計(または平均)値が生成され、続いて一連の合計(または平均)値が補間され、補間された一連の合計(または平均)値が生成される。つまり、第2の方向においては、スペクトル値の代わりに合計値(または平均値)が補間される。ピーク強度値は、補間された一連の合計(または平均)値の合計を決定することによって生成される。
【0081】
この手順は、第2のサブアレイを使用することによって第2のピークのピーク強度を生成することに特に有用であるが、付加的にまたは別法として、第1のサブアレイを使用することによって第1のピークのピーク強度を生成するために使用され得る。
【0082】
本発明の態様が、ターゲットピークの特性を決定することを参照して説明されてきた。しかしながら、いくつかの態様は、ターゲットピークの特性を決定することとは独立して使用され得る。例えば、本発明の態様は、例えば、ターゲットピークを使用せずに、基準ピークのみを使用して、光学スペクトルのオフセットを決定するために使用され得る。したがって、光学分光法におけるオフセットを決定する方法は、検出器アレイを使用することによって二次元光学スペクトルを検出することと、サブアレイがスペクトルのピークの予想される位置を含む、検出器アレイの二次元サブアレイを定義することと、を含み得る。サブアレイのスペクトル値の少なくとも一部は、補間された部分的な二次元スペクトルを生成するために補間され得る。次に、補間された部分的なスペクトルを使用して、ピークの実際の位置が、決定され得、ピークの実際の位置および予想される位置を使用することによってオフセットが、続いて決定され得る。
【0083】
本発明によるソフトウェアプログラム製品は、プロセッサが本発明による方法を実行することを可能にする命令を含み得る。ソフトウェアプログラム製品は、インターネットからダウンロードされ得るソフトウェアプログラム製品のように無形である場合があるが、別法として、USBスティックまたはDVDなどの物理的な担体を含み得る。
【0084】
本発明による光学分光計システムは、関連するメモリを含むプロセッサに結合された検出器アレイを含み得る。メモリは、プロセッサが本発明による方法を実行することを可能にする命令を記憶し得る。システムは、プラズマ源などの光源をさらに含み得る。誘導結合プラズマ(ICP)源が、特に好適であり得る。システムは、二次元光学スペクトルを生成するための光学装置をさらに含み得る。そのような光学装置は、エシェルスペクトルを生成するための少なくとも1つのエシェル回折格子を含み得る。光学装置は、さらなる回折格子および/またはプリズムをさらに含み得る。システムは、ディスプレイ画面およびキーボードを含み得る入力/出力(I/O)ユニットをさらに含み得る。
【0085】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更および追加が可能であることが、当業者には理解されよう。