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特許7340690電気的な機械を運転するためのコントロールユニット、電気的な機械および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】電気的な機械を運転するためのコントロールユニット、電気的な機械および方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/16 20160101AFI20230831BHJP
【FI】
H02P23/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022509698
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2020068508
(87)【国際公開番号】W WO2021032349
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】102019212493.3
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】エムデ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュミットレイン,アンドレアス
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-73422(JP,A)
【文献】特開2003-348873(JP,A)
【文献】特開平8-168288(JP,A)
【文献】特開2005-46000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な機械を運転するためのコントロールユニットであって、前記機械(1)が、回転子(2)、固定子(4)およびパワーエレクトロニクス(7)を有しており、前記回転子(2)が、ハウジング内に回転可能に軸受けされた軸(3)に相対回動不能に配置されており、前記固定子(4)がハウジングに固定的に配置されていて、少なくとも3つの相(U,V,W)を備えた固定子巻線(5)を有しており、前記パワーエレクトロニクス(7)が複数のスイッチ素子を有していて、これらのスイッチ素子によって前記相(U,V,W)が電気エネルギアキュムレータ(6)に電気的に接続されている/接続可能であって、前記コントロールユニット(8)が、第1のコンピュータユニット(10)と第2のコンピュータユニット(11)とを有していて、これらのコンピュータユニット(10,11)を用いて前記スイッチ素子を制御するための制御信号を決定するために構成されている形式のものにおいて、
前記第1のコンピュータユニット(10)が、前記回転子(2)のための目標回転数(RPMSoll)および前記回転子(2)の実際回転数に依存して、前記相(U,V,W)のための目標電圧ベクトルの量|U|を決定するために構成されており、前記第2のコンピュータユニット(11)が、前記第1のコンピュータユニット(10)に通信技術的に接続されていて、前記目標電圧ベクトルの量|U|および前記回転子(2)の実際回転角度(φIst)に依存して、前記制御信号を決定するために構成されており、
前記コントロールユニット(8)がマイクロコントローラ(8)として構成されており、
前記第1のコンピュータユニット(10)が前記マイクロコントローラ(8)のメインコンピュータユニット(10)であり、
前記第1のコンピュータユニット(10)が第1のサイクルタイムを有していて、前記第2のコンピュータユニット(11)が第2のサイクルタイムを有しており、前記第2のサイクルタイムが前記第1のサイクルタイムよりも短いことを特徴とする、電気的な機械を運転するためのコントロールユニット。
【請求項2】
前記第2のコンピュータユニット(11)が、前記マイクロコントローラ(8)のサブコンピュータユニット(11)、特にタイマー(11)であることを特徴とする、請求項1記載のコントロールユニット。
【請求項3】
前記電気的な機械(1)の特に回転角度センサ(9)と通信技術的に接続されている/接続可能である装置(16)が設けられており、前記第2のコンピュータユニット(11)が、前記装置(16)によって受信されたデータに依存して前記実際回転角度(φIst)を算出するために構成されていることを特徴とする、請求項1または2記載のコントロールユニット。
【請求項4】
前記第1のコンピュータユニット(10)が、少なくとも1つの許容可能な最大相電流(IMax)を決定し、かつ決定された前記最大相電流(IMax)を前記第2のコンピュータユニット(11)にプリセットするために構成されており、前記第2のコンピュータユニット(11)が、前記制御信号を前記最大相電流(IMax)に依存して決定するために構成されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のコントロールユニット。
【請求項5】
前記第1のコンピュータユニット(10)が、少なくとも1つの目標整流角度(φOffset)を決定し、かつ前記第2のコンピュータユニット(11)に前記決定された目標整流角度(φOffset)をプリセットするために構成されており、前記第2のコンピュータユニット(11)が、前記制御信号を前記目標整流角度(φOffset)に依存して決定するために構成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のコントロールユニット。
【請求項6】
回転子(2)と固定子(4)とパワーエレクトロニクス(7)とを備えた電気的な機械(1)であって、前記回転子(2)が、ハウジング内に回転可能に軸受けされた軸(3)に相対回動不能に配置されており、前記固定子(4)がハウジングに固定的に配置されていて、少なくとも3つの相(U,V,W)を備えた固定子巻線(5)を有しており、前記パワーエレクトロニクス(7)が複数のスイッチ素子を有していて、これらのスイッチ素子によって前記相(U,V,W)が電気エネルギアキュムレータ(6)に電気的に接続されている/接続可能である形式のものにおいて、
請求項1から5までのいずれか1項記載のコントロールユニット(8)が設けられていることを特徴とする、電気的な機械(1)
【請求項7】
前記回転子(2)の前記実際回転角度(φIst)を監視するための回転角度センサ(9)が設けられていることを特徴とする、請求項6記載の電気的な機械
【請求項8】
回転子(2)と固定子(4)とパワーエレクトロニクス(7)とコントロールユニット(8)とを備えた電気的な機械(1)を運転するための方法であって、前記回転子(2)が、ハウジング内に回転可能に軸受けされた軸(3)に相対回動不能に配置されており、前記固定子(4)がハウジングに固定的に配置されていて、少なくとも3つの相(U,V,W)を備えた固定子巻線(5)を有しており、前記パワーエレクトロニクス(7)が複数のスイッチ素子を有しており、これらのスイッチ素子を制御するための制御信号が前記コントロールユニット(8)によって決定され、前記スイッチ素子は、前記制御信号に依存して、前記相(U,V,W)を前記スイッチ素子によって選択的に、電気エネルギアキュムレータ(6)に電気的に接続するかまたは前記電気エネルギアキュムレータ(6)から電気的に分離する方法において、
前記回転子(2)のための目標回転数(RPMSoll)および前記回転子(2)の実際回転数に依存して、前記相(U,V,W)のための目標電圧ベクトルの量(|U|)を、前記コントロールユニット(8)の第1のコンピュータユニット(10)によって決定し、前記目標電圧ベクトルの前記量(|U|)および前記回転子(2)の実際回転角度(φIst)に依存して、前記制御信号を、前記第1のコンピュータユニット(10)に通信技術的に接続された、前記コントロールユニット(8)の第2のコンピュータユニット(11)によって決定し、
前記コントロールユニット(8)がマイクロコントローラ(8)として構成されており、
前記第1のコンピュータユニット(10)が前記マイクロコントローラ(8)のメインコンピュータユニット(10)であり、
前記第1のコンピュータユニット(10)が第1のサイクルタイムを有していて、前記第2のコンピュータユニット(11)が第2のサイクルタイムを有しており、前記第2のサイクルタイムが前記第1のサイクルタイムよりも短い、ことを特徴とする、電気的な機械(1)を運転するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的な機械を運転するためのコントロールユニットであって、この電気的な機械が、回転子、固定子およびパワーエレクトロニクスを有しており、回転子が、ハウジング内に回転可能に軸受けされた軸に相対回動不能に配置されており、固定子がハウジングに固定的に配置されていて、少なくとも3つの相を備えた固定子巻線を有しており、パワーエレクトロニクスが複数のスイッチ素子を有していて、これらのスイッチ素子によって相が電気エネルギアキュムレータに電気的に接続されている/接続可能であって、コントロールユニットが、第1のコンピュータユニットと第2のコンピュータユニットとを有していて、コンピュータユニットを用いてスイッチ素子を制御するためのコントロールユニットを決定するために構成されている形式のものに関する。
【0002】
本発明はさらに、このような形式のコントロールユニットを有する電気的な機械に関する。
【0003】
さらに本発明は、このような形式のコントロールユニットを用いて電気的な機械を運転するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
電気的な機械は、一般的に回転子および固定子を有している。回転子は、ハウジング内に回転可能に軸受けされた軸に相対回動不能に配置されている。固定子はハウジングに固定的に配置されており、従って回転子と固定子とは互いに回転可能である。大抵の場合、固定子は、少なくとも3つの相を備えた固定子巻線を有している。この場合、これらの相は、相への適切な通電によって回転子が駆動可能であるかまたは回転可能であるように、回転子のまわりに分配して配置されている。相への適切な通電を保証するために、複数のスイッチ素子を備えたパワーエレクトロニクスが設けられている。パワーエレクトロニクスまたはスイッチ素子によって、相は電気エネルギアキュムレータに電気的に接続されているかまたはエネルギアキュムレータから電気的に分離されている。
【0005】
電気的な機械を運転するために、従来技術によれば、第1のコンピュータユニットと第2のコンピュータユニットとを有するコントロールユニットが公知であって、この場合、コントロールユニットは、コンピュータユニットを用いてスイッチ素子を制御するための制御信号を決定するために構成されている。この場合、公知のコントロールユニットによれば、一般的な形式で第1のコンピュータユニットは、回転子のための目標回転数、回転子の実際回転数および回転子の実際回転角度に依存して、個別の相のための目標相電圧を決定するために構成されている。第2のコンピュータユニットは、決定された目標相電圧に依存して、スイッチ素子を制御するための制御信号を決定するために構成されている。制御信号に依存してスイッチ素子を制御することによって、相は所望の目標相電圧で負荷される。このために、例えばパワーエレクトロニクスのスイッチ素子がパルス幅変調されて接続される。
【発明の概要】
【発明の効果】
【0006】
請求項1の特徴を有する本発明によるコントロールユニットは、制御信号を決定するために第1のコンピュータユニットにおいて必要とされる計算能力を、公知のコントロールユニットと比較して低下させることができるという利点を有している。本発明によれば、このために、第1のコンピュータユニットが、回転子のための目標回転数および回転子の実際回転数に依存して、相のための目標電圧ベクトルの量を決定するために構成されており、第2のコンピュータユニットが、目標電圧ベクトルの量および回転子の回転角度に依存して、制御信号を決定するために構成されている。このために本発明によれば、第2のコンピュータユニットは第1のコンピュータユニットと通信技術的に接続されているので、第1のコンピュータユニットは第2のコンピュータユニットに目標電圧ベクトルの量を供給することができる。この場合、目標回転数とは、制御信号に依存してスイッチ素子の制御によって得られるべき、プリセットされた回転数であると解釈されてよい。目標電圧ベクトルは、目標相電圧に対応する電圧ベクトルである。例えば目標相電圧は、目標電圧ベクトルによって、回転子と一緒に回転する座標または固定子に固定された座標に記述される。この場合、第1のコンピュータユニットによって、目標電圧ベクトルの量だけが決定される。好適な形式で、第2のコンピュータユニットは、目標電圧ベクトルの配向および/または個別の目標相電圧を算出するために構成されている。この場合、制御信号は好適には、パワーエレクトロニクスの制御時に、制御信号に依存して正弦波形の変化を有するそれぞれ1つの電気的な実際相電圧を各相に印加するように決定される。
【0007】
好適な実施例によれば、コントロールユニットは、マイクロコントローラとして構成されている。つまり、コントロールユニットは、電気的な構成部品、すなわち第1のコンピュータユニットも第2のコンピュータユニットも有するマイクロコントローラである。この場合、コンピュータユニットは、特にマイクロコントローラの同一のプリント配線板上に配置されている。マイクロコントローラとしてのコントロールユニットの構成により、コントロールユニットは取り付けスペースを節約して構成されている。
【0008】
好適な形式で、第1のコンピュータユニットは、マイクロコントローラのメインコンピュータユニットである。第1のコンピュータユニットがメインコンピュータユニットであることによって、制御信号を決定するために、マイクロコントローラのメインコンピュータユニットの、低下された計算能力を必要とするだけである。従って、メインコンピュータユニットは、さもなければメインコンピュータユニットによって実行しようとする計算プロセスのために、なお十分な計算能力を有している。
【0009】
好適な形式で、第2のコンピュータユニットは、マイクロコントローラのサブコンピュータユニットである。このような形式のサブコンピュータユニットは通常は、周辺ユニットとしていずれにしてもマイクロコントローラ内に既に含まれている。従って、追加しなければ設けられていない、制御信号を決定するためのコンピュータユニットは、必要ない。好適な形式で、サブコンピュータユニットは、マイクロコントローラのタイマーである。タイマーは特に短いサイクルタイムを有しているので、制御信号間で短い時間間隔を保って時間的に連続する制御信号が決定可能である。これにより、電気的な機械の精確な閉ループ制御がコントロールユニットによって可能である。
【0010】
好適な実施例によれば、第1のコンピュータユニットが第1のサイクルタイムを有していて、第2のコンピュータユニットが第2のサイクルタイムを有しており、この場合、第2のサイクルタイムが第1のサイクルタイムよりも短い。時間的に連続する制御信号を決定する際に、制御信号間の特に短い時間間隔が有利である。時間的に連続する目標電圧ベクトルの量を算出する際に、このような短い時間間隔は必要ない。従って、より短い第2のサイクルタイムを有する第2のコンピュータユニット、およびより長い第1のサイクルタイムを有する第1のコンピュータユニットを設ければ、特に好適である。特に、第1のコンピュータユニットは、低速の第1の制御器または回転数制御器を形成し、第2のコンピュータユニットは、第1の制御器と比較して高速の制御器を形成する。第1のコンピュータユニットは、例えば概ね1msのサイクルタイムを有している。第2のコンピュータユニットは、例えば概ね50μsのサイクルタイムを有している。
【0011】
好適な実施例によれば、コントロールユニットが1つの装置を有しており、この場合、第2のコンピュータユニットは、この装置によって受信されたデータに依存して回転子の実際回転角度を算出するために構成されている。実際回転角度は第2のコンピュータユニットによって制御信号を決定するために必要とされているので、第2のコンピュータユニットは、特に第2のコンピュータユニットの短いサイクルタイムに基づいて回転角度を算出するために特に適している。この装置は特に電気的な機械の回転角度センサと通信技術的に接続されている/接続可能であるので、回転角度センサによって検出されたデータは装置に供給可能である。
【0012】
好適な実施例によれば、第1のコンピュータユニットが、少なくとも1つの許容可能な最大相電流を決定し、かつこの決定された最大相電流を第2のコンピュータユニットにプリセットするために構成されており、この場合、第2のコンピュータユニットが、制御信号を最大相電流に依存して決定するために構成されている。この場合、最大相電流とは、複数の相を通って流れる電流の最大許容可能な値であると解釈されてよい。最大相電流をプリセットすることによって、回転子の実際回転数の特に滑らかな変化が得られる。
【0013】
好適な実施例によれば、第1のコンピュータユニットが、少なくとも1つの目標整流角度を決定し、この決定された目標整流角度を第2のコンピュータユニットにプリセットするために構成されており、第2のコンピュータユニットが、制御信号を目標整流角度に依存して決定するために構成されている。この場合、目標整流角度とは、複数の相を予め整流するためにプリセットされる角度であると解釈されてよい。所望の予整流または目標整流角度は、通常は回転数に依存してプリセットされる。目標電圧ベクトルの量を決定するための第1のコンピュータユニットの目標回転数および実際回転数はいずれにしても既知であるので、第1のコンピュータユニットは、目標整流角度を決定するために特に適している。
【0014】
本発明による電気的な機械は、回転子と固定子とパワーエレクトロニクスとを有しており、この場合、回転子は、ハウジング内に回転可能に軸受けされた軸に相対回動不能に配置されており、固定子は、ハウジングに固定的に配置されていて、少なくとも3つの相を備えた固定子巻線を有しており、パワーエレクトロニクスが複数のスイッチ素子を有していて、これらのスイッチ素子によって相が電気エネルギアキュムレータに電気的に接続されている/接続可能であって、本発明によるコントロールユニットによって請求項9の特徴を備えていることを特徴としている。このことから、既に前述した利点も得られる。その他の好適な特徴および特徴の組み合わせは、前記説明および請求項から得られる。
【0015】
好適な実施例によれば、この機械は、回転子の実際回転角度を監視するための回転角度センサを有している。好適な形式で、回転角度センサは、回転子と共に回転する測定値発信器、特に磁界発生器と、ハウジングに固定された受信器、特に磁界感知素子とを有している。
【0016】
回転子と固定子とパワーエレクトロニクスとコントロールユニットとを備えた電気的な機械を運転するための本発明による方法であって、回転子が、ハウジング内に回転可能に軸受けされた軸に相対回動不能に配置されており、固定子がハウジングに固定的に配置されていて、少なくとも3つの相を備えた固定子巻線を有しており、パワーエレクトロニクスが複数のスイッチ素子を有しており、スイッチ素子を制御するための制御信号がコントロールユニットによって決定され、スイッチ素子が制御信号に依存して、複数の相がスイッチ素子によって選択的に電気エネルギアキュムレータに電気的に接続されるかまたは電気エネルギアキュムレータから電気的に分離されるようになっている、方法は、請求項11の特徴に従って、回転子のための目標回転数および回転子の実際回転数に依存して、複数の相のための目標電圧ベクトルの量をコントロールユニットの第1のコンピュータユニットによって決定し、目標電圧ベクトルの量および回転子の実際回転角度に依存して制御信号を、第1のコンピュータユニットに通信技術的に接続された、コントロールユニットの第2のコンピュータユニットによって決定することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】コントロールユニットを有する電気的な機械を示す図である。
図2】コントロールユニットの概略的な詳細図である。
図3】電気的な機械を運転するための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を用いて本発明を詳しく説明する。
【0019】
図1は、電気的な機械1の概略図を示す。この機械1はここでは電気的に整流された機械1である。この機械1は回転子2を有しており、この回転子2はここでは永久磁石である。回転子2は回転子軸3に配置されており、この回転子軸3は、機械1の図示していないハウジング内に軸受けされている。この機械1は、さらに固定子巻線5を備えた固定子4を有している。固定子巻線5は、図1に図示された実施例によれば、3つの相U,VおよびWを有している。相U,VおよびWは、回転子2が相U,VおよびWの適切な通電によって駆動可能または回転可能であるように、回転子2の周囲に分配して配置されている。
【0020】
機械1に、電気エネルギアキュムレータ6が対応配設されている。エネルギアキュムレータ6は、機械1のパワーエレクトロニクス7を用いて、相U,VおよびWに電気的に接続されている/接続可能である。このために、パワーエレクトロニクス7は、例えば相U,VおよびWの数に相当する数のハーフブリッジを有しており、この場合、各ハーフブリッジはそれぞれ2つの半導体スイッチを有していて、各相U,VおよびWは、それぞれ1つの別のハーフブリッジによってエネルギアキュムレータ6に接続されている/接続可能である。
【0021】
機械1はさらに、回転子2の実際回転角度φIstを監視するために回転角度センサ9を有している。回転角度センサ9は、例えば測定値発信器としての磁界発生器と、受信器としての磁界感知素子とを有している。
【0022】
さらに、電気的な機械1は電流測定装置17を有しており、この電流測定装置17は、相U,VおよびWを通って流れる電気的な実際相電流ISumを検出するために構成されている。ここでは、電流測定装置17はパワーエレクトロニクス7と電気的に接続されていて、パワーエレクトロニクス7の領域内の実際相電流ISumを検出するために構成されている。
【0023】
また、機械1はコントロールユニット8を有しており、このコントロールユニット8は、パワーエレクトロニクス7のスイッチ素子を制御するための制御信号を決定し、かつこの制御信号に依存してパワーエレクトロニクス7を制御するために構成されている。コントロールユニット8は、通信技術的に回転角度センサ9と接続されているので、コントロールユニット8に、回転角度センサ9によって検出された、制御信号を算出するためのデータが供給可能である。コントロールユニット8はさらに、電流測定装置17と通信技術的に接続されているので、コントロールユニット8に検出された実際相電流ISumが供給可能である。
【0024】
図2は、コントロールユニット8の概略的な詳細図を示す。コントロールユニット8はマイクロコントローラ8である。マイクロコントローラ8は、マイクロコントローラ8のメインコンピュータユニット10である第1のコンピュータユニット10と、マイクロコントローラ8のタイマー11またはサブコンピュータユニット11である第2のコンピュータユニット11とを有している。この場合、コンピュータユニット10と11とは、そのサイクルタイムに関して相異している。第1のコンピュータユニット10は、第2のコンピュータユニット11の第2のサイクルタイムよりも長い第1のサイクルタイムを有している。
【0025】
この場合、第1のコンピュータユニット10は、回転子2のための目標回転数RPMSollおよび回転子2の実際回転数に依存して、相U,VおよびWのための目標電圧ベクトルの量|U|を決定するために構成されている。第2のコンピュータユニット11は、第1のコンピュータユニット10に通信技術的に接続されていて、目標電圧ベクトルの特定された量|U|および回転子2の実際回転角度φIstに依存して制御信号を決定するために構成されている。
【0026】
このために、第1のコンピュータユニット10は、量算出ユニット12、整流角度プリセットユニット13および最大電流プリセットユニット14を有している。第2のコンピュータユニット11は、制御信号決定ユニット15と、回転子角度算出ユニット16である装置16とを有している。
【0027】
コントロールユニット8は、回転子角度算出ユニット16によって回転角度センサ9と通信技術的に接続されている。回転子角度算出ユニット16は、回転角度センサ9によって検出されたデータに依存して回転子2の実際回転角度φIstを算出するために構成されている。また、回転子角度算出ユニット16は、制御信号決定ユニット15および量算出ユニット12に実際回転角度φIstを供給するために、これらのユニット15および12と通信技術的に接続されている。
【0028】
コントロールユニット8は、制御信号決定ユニット15によって通信技術的に電流測定装置17に接続されているので、この電流測定装置17によって検出された、制御信号決定ユニット15の実際相電流ISumが供給可能である。
【0029】
量算出ユニット12は、実際回転角度φIstに依存して、または実際回転角度φIstの変化に依存して、回転子2の実際回転数を算出するために構成されている。さらに、量算出ユニット12は、回転子2のための目標回転数RPMSollを受信するために構成されている。このために、量算出ユニット12は、図示していない別のコントロールユニットに通信技術的に接続されている。量算出ユニット12は、目標回転数RPMSollおよび実際回転数に依存して、目標電圧ベクトルの量|U|を決定するために構成されている。出力側で、量算出ユニット12は、整流角度プリセットユニット13、最大電流プリセットユニット14および制御信号決定ユニット15に、特定された量|U|を供給するために、これらのユニット13,14および15と通信技術的に接続されている。
【0030】
整流角度プリセットユニット13は、制御信号決定ユニット15と通信技術的に接続されているので、整流角度プリセットユニット13の実際相電流ISumは制御信号決定ユニット15によって供給可能である。整流角度プリセットユニット13は、受信した量|U|および受信した実際相電流ISumに依存して目標整流角度φOffsetを算出し、かつ制御信号決定ユニット15の目標整流角度φOffsetを供給するために構成されている。
【0031】
最大電流プリセットユニット14は、受信した量|U|に依存して許容可能な電気的な最大相電流IMaxを決定し、かつ制御信号決定ユニット15に許容可能な最大相電流IMaxを供給するために構成されている。
【0032】
最後に制御信号決定ユニット15は、量|U|、目標整流角度φOffset、許容可能な最大相電流IMax、実際回転角度φIstおよび実際相電流ISumに依存して、パワーエレクトロニクス7のスイッチ素子のための制御信号を決定するために構成されている。
【0033】
以下に図3に関連して、コントロールユニット8により電気的な機械1を運転するための好適な方法について、フローチャートを用いて説明する。
【0034】
第1のステップS1で、回転角度センサ9は回転子2の実際回転角度φIstを監視する。
【0035】
第2のステップS2で、第2のコンピュータユニット11は、回転角度センサ9によって検出されたデータに依存して、回転子2の実際回転角度φIstを算出する。さらに、算出された実際回転角度φIstは、ステップS2で第1のコンピュータユニット10に供給される。
【0036】
第3のステップS3で、第1のコンピュータユニット10は実際回転角度φIstに依存して回転子2の実際回転数を算出する。選択的に、ステップS3は好適な形式で省かれる。この場合、実際回転数は好適な形式で第2のコンピュータユニット11によって既にステップS2で算出され、第2のコンピュータユニット11によって算出された実際回転数が第1のコンピュータユニット10に供給される。
【0037】
ステップS4で、第1のコンピュータユニット10は、回転子2のための目標回転数RPMSollおよび回転子2の実際回転数に依存して、目標電圧ベクトルの量|U|を決定する。さらに、決定された量|U|は、ステップS4で第2のコンピュータユニット11に供給される。
【0038】
ステップS5で、第2のコンピュータユニット11は、量|U|および実際回転角度φIstに依存して、パワーエレクトロニクス7のスイッチ素子を制御するための制御信号を決定する。
【0039】
最後にステップS6で、パワーエレクトロニクス7のスイッチ素子は、決定された制御信号に依存して制御されるので、相U,VおよびWは、スイッチ素子によって電気エネルギアキュムレータ6と電気的に接続されるかまたは電気エネルギアキュムレータ6から電気的に分離される。
【0040】
好適な形式で、ステップS1乃至S6は連続的に実施される。その結果から、コントロールユニット8によって相U,VおよびWの通電の好適な閉ループ制御が得られる。第1のコンピュータユニット10は、第2のコンピュータユニット11と比較して、より長いサイクルタイムを有しているので、時間的にすぐに連続して決定される目標電圧ベクトルの量|U|の間の時間間隔は、時間的にすぐに連続して決定される、パワーエレクトロニクス7のための制御信号の間の時間間隔よりも大きい。
【符号の説明】
【0041】
1 電気的な機械
2 回転子
3 回転子軸
4 固定子
5 固定子巻線
6 電気エネルギアキュムレータ
7 パワーエレクトロニクス
8 コントロールユニット、マイクロコントローラ
9 回転角度センサ
10 第1のコンピュータユニット、メインコンピュータユニット
11 第2のコンピュータユニット、サブコンピュータユニット、タイマー
12 量算出ユニット
13 整流角度プリセットユニット
14 最大電流プリセットユニット
15 制御信号決定ユニット
16 回転子角度算出ユニット、装置
17 電流測定装置
U,V,W 相
φIst 実際回転角度
Sum 実際相電流
RPMSoll 目標回転数
|U| 目標電圧ベクトルの量
φOffset 目標整流角度
RPMSoll 回転子2のための目標回転数
図1
図2
図3