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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】FRP成形システムと方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/34 20060101AFI20230831BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20230831BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20230831BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20230831BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
B29C70/34
B29C43/18
B29C43/34
B29C70/54
B29K105:08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022545255
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2020032887
(87)【国際公開番号】W WO2022044324
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】原田 敬
(72)【発明者】
【氏名】重成 有
(72)【発明者】
【氏名】秋元 豊晴
(72)【発明者】
【氏名】奥村 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 真一
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-222221(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101422(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/18,43/34,70/34,70/54
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状の円弧部分と、該円弧部分に固定される部材と、を有するFRP素材を一体で成形して円弧状のFRP部品を製造するFRP成形システムであって、
前記FRP素材の一部を前記円弧部分に直交する半径方向の間に挟さむ上型及び下型を有し、前記一部を間欠的に圧縮して前記FRP部品を部分的に成形する部分プレス装置と、
前記上型又は前記下型に対する前記部材の位置を位置決めする部材位置決め機構と、
前記部分プレス装置による前記FRP素材の圧縮部分を間欠的に移動する搬送装置と、を備える、FRP成形システム。
【請求項2】
前記上型は、前記円弧部分に密着する下面円弧面と、前記部材の上面形状と嵌合する下面凹溝と、を有し、
前記下型は、前記FRP素材の外面に密着する上面円弧面を有する、請求項1に記載のFRP成形システム。
【請求項3】
前記FRP素材の外面形状と嵌合する内面を有する円弧状の外面治具プレートを備え、
前記下型は、前記外面治具プレートの外面に密着する上面円弧面を有する、請求項1に記載のFRP成形システム。
【請求項4】
前記部材は、前記円弧部分との間に着脱可能なマンドレルを挟み、前記マンドレルの上面に密着する上面部と、前記マンドレルの側面に密着する1対の側面部と、該側面部の下端から外方に延び前記円弧部分の内面に密着する1対の脚部とを有し、
前記下面凹溝は、前記部材の前記上面部、前記側面部、及び前記脚部と嵌合する、請求項2に記載のFRP成形システム。
【請求項5】
前記マンドレルは、前記部材に対して抜き勾配を有する一体構造、又は分割構造である、請求項4に記載のFRP成形システム。
【請求項6】
前記部材は、軸方向に互いに平行に延びる複数のストリンガーである、請求項1に記載のFRP成形システム。
【請求項7】
前記上型又は前記下型を加熱する加熱装置を備え、
前記加熱装置は、前記FRP素材の移動方向に対し、所定の温度分布を有する、請求項1に記載のFRP成形システム。
【請求項8】
前記FRP素材は、熱可塑性樹脂を含むプリプレグであり、
前記温度分布は、前記移動方向の中央部において前記熱可塑性樹脂が流動する溶融温度以上であり、前記中央部の上流側及び下流側において前記熱可塑性樹脂が固化する固化温度以下である、請求項7に記載のFRP成形システム。
【請求項9】
前記FRP素材は、熱硬化性樹脂を含むプリプレグであり、
前記温度分布は、前記移動方向の中央部において前記熱硬化性樹脂が硬化する硬化温度以上である、請求項7に記載のFRP成形システム。
【請求項10】
前記搬送装置は、前記FRP素材を部分的に把持する把持装置と、
前記把持装置を前記FRP部品の移動方向に移動する移動装置と、を有する、請求項1に記載のFRP成形システム。
【請求項11】
円弧状の円弧部分と、該円弧部分に固定される部材と、を有するFRP素材を一体で成形して円弧状のFRP部品を製造するFRP成形システムであって、
前記FRP素材の内面形状と嵌合する外面を有する円弧状の内面治具プレートを備え、
前記内面治具プレートは、前記円弧部分に密着する下面円弧面と、前記部材の上面形状と嵌合する下面凹溝とを有し、
前記FRP素材の一部を前記円弧部分に直交する半径方向の間に挟さむ上型及び下型を有し、前記一部を間欠的に圧縮して前記FRP部品を部分的に成形する部分プレス装置と、
前記部分プレス装置による前記FRP素材の圧縮部分を間欠的に移動する搬送装置と、を備える、FRP成形システム。
【請求項12】
円弧状の円弧部分と、該円弧部分に固定される部材と、を有するFRP素材を一体で成形して円弧状のFRP部品を製造するFRP成形方法であって、
上型又は下型に対する前記部材の位置を位置決めする部材位置決め工程と、
前記FRP素材の一部を前記上型及び前記下型により前記円弧部分に直交する半径方向の間に挟さみ、前記一部を間欠的に圧縮して前記FRP部品を部分的に一体で成形する部分プレス工程と、
前記部分プレス工程による前記FRP素材の圧縮部分を間欠的に移動する搬送工程と、を有し、
前記部分プレス工程と前記搬送工程を繰り返す、FRP成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、円弧状の大型FRP部品を成形するFRP成形システムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材、例えばCFRP(炭素繊維強化プラスチック)は、鉄やアルミなどの金属材料よりも低密度でありながら、力学特性に優れ、比強度が高く、軽くて強い特長を有する。
そのため、近年、アルミニウム合金に代わる構造部材として、航空機、小型船舶、自動車等に用いられている。以下、繊維強化複合材を単に、「FRP」と呼ぶ。
【0003】
例えば、航空機の構造物(胴体、ハッチ、翼、など)は、従来、アルミニウム合金同士をリベットで接合している。しかし、リベットを用いた接合は、作業性が悪く、かつ繊維強化複合材に適用すると、内部の繊維を切断するため引張強度が極端に低下する。
そこで、例えば、特許文献1の手段を用いて大型FRP成形品を製造することが考えられる。
【0004】
特許文献1の「FRP成形品の製造方法」は、サーフェスマット上に、熱可塑性樹脂と強化繊維とを含むシート状のFRP素材を重なるように載せて、加熱装置を用いて加熱する。その後、FRP素材をサーフェスマットに載せたまま、搬送してプレス機の金型にセットする。そして、そのプレス機を用いて、重なったFRP素材とサーフェスマットとを加圧して、強化繊維とサーフェスマットとが熱可塑性樹脂により一体化したFRP成形品を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-009396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
航空機の胴体のような大型FRP部品(半径が1m以上の円弧状のFRP部品)を成形する場合、上述した特許文献1には、以下の問題点があった。
(1)大型FRP部品を加圧できる大型の金型と大型のプレス機が必要になる。
(2)円弧状のFRP部品を成形する場合、成形品の均質化のためにFRP部品の円弧に直交する半径方向に加圧する必要がある。
しかし、この場合、FRP部品の円弧に対し半径方向に加圧する金型は、構造が複雑となる。
また、従来はスキン(円弧部分)と部材(例えばストリンガー)を個別に成形し、後工程で接合していた。そのため、製造工程が複雑化していた。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、部材を有する円弧状のFRP部品(例えば大型FRP部品)を、大型又は複雑な金型を用いることなく、円弧に対し半径方向に加圧して全体を均質に成形することができるFRP成形システムと方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、円弧状の円弧部分と、該円弧部分に固定される部材と、を有するFRP素材を一体で成形して円弧状のFRP部品を製造するFRP成形システムであって、
前記FRP素材の一部を前記円弧部分に直交する半径方向の間に挟さむ上型及び下型を有し、前記一部を間欠的に圧縮して前記FRP部品を部分的に成形する部分プレス装置と、
前記上型又は前記下型に対する前記部材の位置を位置決めする部材位置決め機構と、
前記部分プレス装置による前記FRP素材の圧縮部分を間欠的に移動する搬送装置と、を備える、FRP成形システムが提供される。
【0009】
また本発明によれば、円弧状の円弧部分と、該円弧部分に固定される部材と、を有するFRP素材を一体で成形して円弧状のFRP部品を製造するFRP成形方法であって、
上型又は下型に対する前記部材の位置を位置決めする部材位置決め工程と、
前記FRP素材の一部を前記上型及び前記下型により前記円弧部分に直交する半径方向の間に挟さみ、前記一部を間欠的に圧縮して前記FRP部品を部分的に一体で成形する部分プレス工程と、
前記部分プレス工程による前記FRP素材の圧縮部分を間欠的に移動する搬送工程と、を有し、
前記部分プレス工程と前記搬送工程を繰り返す、FRP成形方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、部材位置決め工程において上型又は下型に対する部材の位置を位置決めし、部分プレス工程において、FRP素材の一部を上型及び下型により円弧部分に直交する半径方向に挟さみ、一部を間欠的に圧縮(加圧)してFRP部品を部分的に一体で成形する。また、搬送工程において、FRP素材の圧縮部分を間欠的に移動する。従って、部材位置決め工程、部分プレス工程、及び搬送工程とを繰り返すことにより、部材を有する円弧状のFRP部品(例えば大型FRP部品)を、小型の金型で成形し製造できる。
【0011】
また、部分プレス工程において、FRP素材の一部を上型及び下型によりFRP部品の円弧部分に直交する半径方向に圧縮(加圧)するので、複雑な金型を用いることなく、部材を有するFRP部品の全体を均質に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明により製造するFRP部品の代表的な斜視図である。
図1B】FRP部品の側面断面図である。
図1C】FRP部品の端面図である。
図2A】外面治具プレートの代表的な斜視図である。
図2B】外面治具プレートの側面断面図である。
図2C】外面治具プレートの端面図である。
図3A図2Aの外面治具プレートの内面にFRP素材が保持された一体治具プレートの代表的な斜視図である。
図3B】一体治具プレートの側面断面図である。
図3C】一体治具プレートの端面図である。
図4図3Cの部分拡大図である。
図5A】本発明によるFRP成形システムの正面図である。
図5B図5Aの側面図である。
図6図5Bの上型の拡大図である。
図7A図5AのA部断面図である。
図7B図7AのB-B線における断面図である。
図8A】上型の温度分布の説明図である。
図8B】下型の温度分布の説明図である。
図9】本発明によるFRP成形方法の全体フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0014】
図1A図1Cは、本発明により製造するFRP部品3の説明図である。
本発明により製造するFRP部品3は、半径が1m以上の円弧状のFRP部品3である。この図において、図1AはFRP部品3の代表的な斜視図、図1Bは側面断面図、図1Cは端面図である。
【0015】
「半径が1m以上の円弧状のFRP部品3」とは、航空機の胴体のような大型FRP部品を意味する。半径は、例えば2mであるが、1~10mであってもよい。軸長(軸方向長さ)は、例えば8mであるが、10cm~20mであってもよい。
【0016】
「円弧状」とは、図1Aに示すように、例えば半径が一定の円弧であるが、厳密に一定ではなく部分的に又は連続的に変化してもよい。円弧の周方向角度(円弧角)は、好ましくは180度以下であるが、後述するプレスフレーム24と干渉しない限りで、180度を超えてもよい。
【0017】
また、この例でFRP部品3は、円弧状の円弧部分5Aと、円弧部分5Aに固定された部材6を有する。
部材6は、この例では円弧部分5Aに固定され軸方向に互いに平行に延びる複数のストリンガー6Aである。部材6の固定は円弧部分5Aの内面、外面を問わない。
また部材6は、ストリンガー6Aに限定されず、他の部材、例えば断面がL型のチャンネルでもよい。
なお、「軸方向」は、厳密な軸方向に限定されず、軸方向に対して傾斜してもよい。
また、円弧部分5Aの半径方向の厚さは、好ましくは一定であるが、部分的に又は連続的に変化してもよい。例えば、航空機の胴体の窓枠、及び、ドア部分を含んでもよい。
【0018】
本発明のFRP成形システム100は、外面治具プレート12を用いる。
図2A図2Cは、外面治具プレート12の説明図である。例として、図2Aは外面治具プレート12の代表的な斜視図であり、図2Bは側面断面図であり、図2Cは端面図である。
【0019】
外面治具プレート12は、円弧状の部材であり、金属又は高耐熱樹脂(例えばポリイミド)からなり、FRP部品3の成形時において、塑性変形しない特性を有する。なお外面治具プレート12は、FRP部品3の成形時において、弾性変形してもよい。
【0020】
図2Aに示すように、外面治具プレート12は、FRP部品3の外面形状3bと嵌合する内面12aを有する。
なお「嵌合する」とは、互いに雄雌の形状であり、密着した際にその間に隙間が生じない関係を意味する。
また、外面治具プレート12は、FRP部品3との間のFRP部品3の板厚変化又は曲率変化に対応した面形状を有する。
【0021】
本発明のFRP成形システム100は、FRP素材2を成形して半径が1m以上の円弧状のFRP部品3を製造する装置である。
FRP素材2は、単層のプリプレグ1又は積層された複数のプリプレグ1からなる。
【0022】
「プリプレグ1」とは、強化繊維(例えば、ガラス繊維や炭素繊維)からなる基材に樹脂を含浸させた中間素材である。本発明において、樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂であるが、熱硬化性樹脂であってもよい。
成形前の樹脂は、熱可塑性樹脂では固化しており、熱硬化性樹脂では軟化(未硬化)している。
【0023】
本発明のFRP成形システム100は、外面治具プレート12の内面12aにFRP素材2が保持された一体部材(以下、「一体治具プレート14」)を用いる。
【0024】
図3A図3Cは、一体治具プレート14の説明図である。この図において、外面治具プレート12の内面12aには、図2A図2CにおけるFRP部品3の位置に、FRP素材2が保持されている。
FRP素材2を保持する手段は、例えばFRP素材2の樹脂自体の接着力により仮付けする。なお、外面治具プレート12の外縁にFRP素材2の外縁を保持する機構を設けてもよい。
【0025】
図3Aは、図2Aの外面治具プレート12の内面12aにFRP素材2が保持された一体治具プレート14の代表的な斜視図であり、図3Bは、一体治具プレート14の側面断面図であり、図3Cは、一体治具プレート14の端面図である。
【0026】
FRP素材2は、外面治具プレート12の内面12aに外面治具プレート12から分離しないように、保持されている。
【0027】
「FRP素材2」は、複数のプリプレグ1を積層し、成形後にFRP部品3となる素材である。
FRP素材2は、FRP部品3と同様に、円弧状の円弧部分5Bと、円弧部分5Bの内面に保持され軸方向に互いに平行に延びる複数のストリンガー6Bと、を有する。
円弧部分5Bとストリンガー6Bは、好ましくは板状部材である。
【0028】
図4は、図3Cの部分拡大図である。なおこの図において、外面治具プレート12は図示を省略している。
この図に示すように、FRP素材2の円弧部分5Bは、FRP部品3の円弧部分5Aの板厚分布に合わせた積層体である。円弧部分5Bは、円弧状の成形形状に合わせて積層したものであるのがよい。
またFRP素材2のストリンガー6Bは、FRP部品3のストリンガー6Aの断面形状に合わせて折り曲げた積層体、成形品、又はプリフォーム品である。
【0029】
FRP素材2の円弧部分5Bの厚さは、FRP部品3の円弧部分5Aの半径方向の厚さに相当し、成形時の厚さ変化を加味して設定される。また、FRP部品3の厚さ変化に応じて、プリプレグ1の積層数を変化させることが好ましい。
FRP素材2の幅は、FRP部品3の円弧の周方向長さに相当する。FRP素材2の長さは、FRP部品3の軸方向長さに相当する。
FRP素材2のストリンガー6Bも、同様である。
【0030】
図4において、ストリンガー6Bは、円弧部分5Bとの間に着脱可能なマンドレル10を挟んでその周方向両端が円弧部分5Bの内面に保持されている。
マンドレル10は、好ましくは断面形状が台形であり、上面10a、斜面10b、及び底面10cを有する。底面10cは、円弧部分5Bの内面に合わせた円弧面であるのがよい。
また、マンドレル10は、ストリンガー6Bに対して抜き勾配を有する一体構造、又は分割構造であるのがよい。「一体構造」とは分割構造をとらない構造を意味する。
【0031】
図4において、ストリンガー6Bは、マンドレル10の台形の上面10aに密着する上面部7aと、台形の斜面10bに密着する1対の側面部7bと、側面部7bの下端から外方に延び円弧部分5Bの内面に密着する1対の脚部7cとを有する。
1対の脚部7cは、円弧部分5Bの内面に保持されている。この保持は、例えば脚部7cの樹脂自体の接着力により仮付けする。
【0032】
なお、ストリンガー6A,6Bの断面形状は、台形に限定されず、後述する上型16と干渉しない限りで別の形状、例えば三角形、上部が円弧状のドーム型でもよい。
また、マンドレル10も同様に、ストリンガー6A,6Bの断面形状に合わせて、台形以外でもよい。
【0033】
図5Aは、本発明によるFRP成形システム100の正面図であり、図5Bは、その側面図である。なお、図5Bは、成形途中を示している。
【0034】
図5A図5Bにおいて、FRP成形システム100は、さらに、上型16及び下型18を備える。
上型16及び下型18は、一体治具プレート14の一部(プレス部分15)を上下方向に間に挟さむ。
【0035】
図6は、図5Bの上型16の拡大図である。
この図に示すように、上型16は、円弧部分5A,5Bに密着する下面円弧面16aと、ストリンガー6A,6Bの上面形状と嵌合する下面凹溝16bと、を有する。
上型16の下面凹溝16bは、ストリンガー6Bの上面部7a、側面部7b、及び脚部7cと嵌合するようになっている。
なお、この図において、上型16の下面に3つの下面凹溝16bが設けられているが、本発明はこれに限定されず、1つ以上であればよい。
また、複数の下面凹溝16bの形状は、完全同一でなくてもよい。
【0036】
図5A図5Bにおいて、下型18は、一体治具プレート14の外面14bに密着する上面円弧面18bを有する。
すなわち、この例で、一体治具プレート14は、外面治具プレート12を含んでおり、上面円弧面18bは、外面治具プレート12の外面12bに密着する。
またこの例で、上型16及び下型18は、一体治具プレート14の軸長(軸方向長さ)の全体を同時に圧縮する。
【0037】
図5A図5Bにおいて、FRP成形システム100は、さらに、部分プレス装置20、部材位置決め機構26、及び搬送装置30を備える。
【0038】
部分プレス装置20は、一体治具プレート14の一部(プレス部分15)をFRP素材2の円弧部分5Bに直交する半径方向(図で上下方向)に間欠的に圧縮してFRP部品3を部分的に成形する。
「間欠的に圧縮」とは、部分プレス装置20と搬送装置30により、一体治具プレート14の圧縮と搬送を繰り返すことを意味する。
【0039】
部分プレス装置20は、上型16と下型18で一体治具プレート14の一部を圧縮する。
この例では、部分プレス装置20は、下面に上型16を固定する上部ボルスター21と、上面に下型18を固定するスライド22と、スライド22を上下に往復動させる液圧ラム23と、上部ボルスター21と液圧ラム23が固定されたプレスフレーム24とを有する。
【0040】
この例では、部分プレス装置20は、上型16に対し下型18を押し上げて一体治具プレート14のプレス部分15を圧縮する。この場合、部分プレス装置20は、下面円弧面16a又は上面円弧面18bの直径方向にプレス部分15を圧縮する。
プレスフレーム24は、一体治具プレート14の圧縮部分を間欠的に移動する際に、一体治具プレート14と干渉しないように、上部構造が設定されている。
なお、一体治具プレート14とプレス上部構造が干渉しない限りで、ボルスタとスライド22、液圧ラム23の上下関係が逆となっても良い。すなわちスライド22と液圧ラム23が上部で、ボルスタが下部にあっても良い。
【0041】
図7A図5AのA部断面図であり、図7B図7AのB-B線における断面図である。
図7A図7Bにおいて、部材位置決め機構26は、上型16又は下型18に対する部材6(この例でストリンガー6B)の位置を位置決めする。
この例で、部材位置決め機構26は、マンドレル10の両端を位置決めする位置決め機構である。
【0042】
例えば、上型16の下面凹溝16bの中央部(中央線CLの上に)に相対する下型18に部材位置決め機構26を固定する。
正確には、上型16の下面凹溝16bとの位置決めが必要なので、部材位置決め機構26が固定される下型18の位置は、上型16の下面凹溝16bに対応する下型18の位置である。
これにより、上型16(下面凹溝16b)と下型18の位置関係が明確となり、相対的に、上型16(下面凹溝16b)に対するマンドレル10(及びストリンガー6B)の位置を決めることができる。
【0043】
マンドレル10の両端には水平に延びる位置決め孔11が設けられている。部材位置決め機構26は、マンドレル10の位置決め孔11に挿入可能であり、軸方向に延びる水平ロッド26aを有する。水平ロッド26aは、水平方向に移動可能であり、水平ロッド26aが位置決め孔11に挿入された状態でマンドレル10の上にストリンガー用素材をセットすることで、円弧部分5Bの内側にストリンガー6Bの位置を正確に位置決めし、保持することができる。
位置決め孔11と水平ロッド26aの断面形状は、円形に限られず、その他の形状(例えば矩形)でもよい。
【0044】
なお、位置決め孔11に水平ロッド26aを挿入した状態で、円弧部分5Bをプレスする場合、位置決め孔11と水平ロッド26aの上下方向のクリアランスは、円弧部分5Bの成形前後の嵩減り量を考慮し、設定することが望ましい。
【0045】
この構成により、マンドレル10を上型16(下面凹溝16b)に対して位置決めし、マンドレル10の上面の部材6(この例でストリンガー6B)との位置決めをすることができる。
なお、部材位置決め機構26は、上型16又は下型18に対し、マンドレル10、部材6(この例でストリンガー6B)を位置決めできる限りで、その他の構造であってもよい。
【0046】
上述した部材位置決め機構26は、下型18に設けられたマンドレル位置決め機構であり、上型16に対するマンドレル10(ストリンガー6B)の位置を正確に位置決めする。これによりFRP素材2の円弧部分5Bに対して、マンドレル10の位置が決まる。
さらに、マンドレル10の上に、ストリンガー用素材をセットすることで、円弧部分5Bの内側にストリンガー6Bの位置を正確に位置決めし、保持することができる。
その後、部材6(ストリンガー6B)に対して、上型16の下面凹溝16bを正確に配置し、圧縮することができる。
【0047】
円弧部分5Bと部材6(この例でストリンガー6B)はいずれもFRP素材であり、仮止めした後これを一体で成形(接着、固定など)することができる。
マンドレル10の役割は、成形圧の負荷時に形状を崩さないためである。そのため、中空構造の部材6の場合にはマンドレル10を用いることが好ましい。
また、部材6が中空構造をとらない形状(例えば断面がL形の部材)の場合には、マンドレル10を省略することができる。
マンドレル10を省略する場合、部材位置決め機構26は、部材6の位置を直接位置決めすることが好ましい。
【0048】
搬送装置30は、部分プレス装置20による一体治具プレート14の圧縮部分(プレス部分15)を間欠的に移動する。
搬送装置30は、把持装置32と移動装置34とを有する。
把持装置32は、一体治具プレート14を部分的に把持する。移動装置34は、把持装置32を一体治具プレート14の移動方向Xに移動する。
【0049】
この例で、一体治具プレート14の移動方向Xは、FRP部品3の円弧に沿った周方向である。移動装置34は、例えば多関節ロボットであり、把持装置32はロボットハンドである。
【0050】
なおこの例で、1対の搬送装置30を、部分プレス装置20の上流側と下流側に設けているが、上流側又は下流側の一方のみでもよい。
また、把持装置32は、一体治具プレート14の非圧縮部分を把持する。この場合、例えば部分プレス装置20による圧縮中に把持部分を移動してもよい。
【0051】
図5A図5Bにおいて、FRP成形システム100は、さらに、上型16又は下型18を加熱する加熱装置40を備える。加熱装置40は、上型16及び下型18を加熱してもよい。
加熱装置40は、一体治具プレート14の移動方向Xに対し、所定の温度分布を有する。
【0052】
図8Aは、上型16の温度分布の説明図であり、図8Bは、下型18の温度分布の説明図である。
この例は、プリプレグ1が熱可塑性樹脂を含む場合である。図8Aは、上型16の下面円弧面16aと下面凹溝16bを示し、図8Bは、下型18の上面円弧面18bを示している。また、図中の符号a,b,cは、予備加熱ゾーン、本成形ゾーン、冷却ゾーンをそれぞれ示している。
【0053】
この例では、上型16及び下型18の温度分布は、一体治具プレート14の移動方向Xの中央部(本成形ゾーンb)において熱可塑性樹脂が流動する溶融温度以上(例えば400℃以上)である。また、移動方向Xの中央部の上流側(予備加熱ゾーンa)及び下流側(冷却ゾーンc)において熱可塑性樹脂が固化する固化温度以下(例えば200℃~400℃未満)である。
【0054】
予備加熱ゾーンaと冷却ゾーンcを固化温度以下にするのは、全体を溶融温度以上にすると、FRP部品3の全体を均質に成形することが困難になるからである。例えば熱伝導率が高いCFRPの場合、圧縮していない部分が伝熱により、軟化することで、例えば、一度加圧圧縮された極小の気泡が面外方向に膨らむ等により、均質に成形することが困難になる。
また、上記の温度分布は、FRP部品3の成形時の温度分布であり、搬送時には、下面円弧面16a又は上面円弧面18bの全面が200℃以下であるのがよい。
【0055】
一方、プリプレグ1が、熱硬化性樹脂を含む場合、プリプレグ1を圧縮しながら硬化させる。そのため、温度分布は、一体治具プレート14の移動方向Xの中央部(本成形ゾーンb)において熱硬化性樹脂が硬化する硬化温度以上である。熱硬化性樹脂の硬化温度は、例えば約180℃である。また、移動方向Xの中央部の上流側(予備加熱ゾーンa)において、硬化温度未満まで予熱する。また熱硬化性樹脂の場合、冷却ゾーンcは不要であり、省略することができる。
【0056】
上述した外面治具プレート12は、必須ではない。FRP部品3の金型接地面側の形状が単純なR形状であれば、外面治具プレート12及び後述する内面治具プレートが不要となる。
この場合、上型16は、円弧部分5A,5Bに密着する下面円弧面16aと、ストリンガー6A,6Bの上面形状と嵌合する下面凹溝16bと、を有し、下型18は、FRP部品3の外面に密着する上面円弧面18bを有する。
また、上述した一体治具プレート14は、FRP素材自体に置き換えられる。
【0057】
FRP素材2の内面形状と嵌合する外面を有する円弧状の内面治具プレートを備えてもよい。
この場合、内面治具プレートは、円弧部分5A,5Bに密着する下面円弧面と、ストリンガー6A,6Bの上面形状と嵌合する下面凹溝と、を有する。
なおこの場合、内面治具プレートの上型側は円弧状とし、上型16の下面も円弧状となる。すなわち上型16の下面を下面円弧面16aや下面凹溝16bに形成する必要はない。
また、上型16又は下型18に対する部材の位置決めも不要である。
FRP部品3の外面に部品(部材)を一体成形する場合も同様である。
上述した外面治具プレート12と内面治具プレートを備えることで、上述した一体治具プレート14は、内面治具プレートと外面治具プレート12の間にFRP素材2が挟まれた一体部品とすることができる。
上述した外面治具プレート12を省略し、内面治具プレートのみを備えることで、上述した一体治具プレート14は、内面治具プレートの外面にFRP素材2が保持された一体部品とすることができる。
【0058】
図9は、本発明によるFRP成形方法の全体フロー図である。
本発明によるFRP成形方法は、FRP素材2を成形して半径が1m以上の円弧状のFRP部品3を製造する方法である。
FRP素材2は、単層のプリプレグ1又は積層された複数のプリプレグ1からなる。
【0059】
この図において、FRP成形方法は、S1~S6の各ステップ(工程)を有する。
【0060】
治具準備工程S1では、FRP部品3の外面形状3bと嵌合する内面12aを有する円弧状の外面治具プレート12を準備する。
【0061】
外面治具プレート12を省略する場合には、ステップS1は省略できる。
上述した内面治具プレートも用いる場合には、FRP部品3の内面形状と嵌合する外面を有する円弧状の内面治具プレートも準備する。
この場合、部材位置決め工程S3は省略できる。
【0062】
治具一体化工程S2では、外面治具プレート12の内面12aにFRP素材2が保持された一体治具プレート14を形成する。
なお、治具一体化工程S2において、外面治具プレート12の内面12aに離型剤(例えば、フッ素系離型剤)を塗布することが好ましい。
【0063】
本発明では、マンドレルの位置決めとプレスを以下の順で実施する。
(1)マンドレルの位置決め、(2)マンドレル上にストリンガー用素材をセット、(3)プレス、(4)搬送、(5)マンドレルの位置決め、(6)マンドレル上にストリンガー用素材をセット、(7)以下、繰り返し。
すなわち、本発明では、上記のように、ストリンガー用素材(6B)はその都度セットする。
【0064】
なお、上記では、位置決め、セット、プレスを繰り返す構成としているが、上型の下面凹溝16bの位置のピッチと一致するように、ストリンガー6Bを円弧部分5Bに仮止めしておけば、位置決めは最初の1回のみで済ますことができる。
【0065】
外面治具プレート12を省略する場合には、ステップS2も省略できる。
上述した内面治具プレートも用いる場合には、内面治具プレートと外面治具プレート12の間にFRP素材2が挟まれた一体治具プレート14を形成する。
この場合、部材位置決め工程S3は省略できる。
【0066】
部材位置決め工程S3では、上型16又は下型18に対する部材6の位置を位置決めする。
例えば部材6がストリンガー6Bである場合、マンドレル10の両端の位置決め孔11に水平ロッド26aを水平に挿入し、水平ロッド26aが位置決め孔11に挿入された状態でマンドレル10の上にストリンガー用素材をセットすることで、円弧部分5Bの内側にストリンガー6Bの位置を正確に位置決めし、保持することができる。
マンドレル10の上に、ストリンガー6Bをセットすることで、円弧部分5Bの内側にストリンガー6Bの位置を正確に位置決めし、保持することができる。
【0067】
例えば、上型16の下面凹溝16bの中央部(中央線CLの上に)に相対する下型18に部材位置決め機構26を固定する。
正確には、上型16の下面凹溝16bとの位置決めが必要なので、部材位置決め機構26が固定される下型18の位置は、上型16の下面凹溝16bに対応する下型18の位置である。
これにより、上型16(下面凹溝16b)と下型18の位置関係が明確となり、相対的に、上型16(下面凹溝16b)に対するマンドレル(ストリンガー)の位置を決めることができる。
【0068】
部分プレス工程S4では、一体治具プレート14(又はFRP素材2)の一部をFRP素材2の円弧部分5Bに直交する半径方向に間欠的に圧縮してFRP部品3を部分的に成形する。
搬送工程S5では、部分プレス工程S3による一体治具プレート14(又はFRP素材2)の圧縮部分(プレス部分15)を間欠的に移動する。
部材位置決め工程S3、部分プレス工程S4、及び搬送工程S5を繰り返して、一体治具プレート14の全部を圧縮してFRP部品3の全体を成形する。
【0069】
さらに、離型工程S6において、一体治具プレート14からマンドレル10と外面治具プレート12を分離して成形されたFRP部品3を取り出す。
外面治具プレート12を省略する場合には、FRP部品3からマンドレル10のみを分離する。
内面治具プレートも使用する場合には、一体治具プレート14からマンドレル10、外面治具プレート12、及び内面治具プレートを分離する。
【0070】
上述した本発明の実施形態によれば、部材位置決め工程S3において上型16又は下型18に対する部材6(例えばストリンガー6B)の位置を位置決めする。次いで、部分プレス工程S4において、FRP素材2の一部を上型16及び下型18により円弧部分5Bに直交する半径方向に挟さみ、一部を間欠的に圧縮(加圧)してFRP部品3を部分的に成形する。また、搬送工程S5において、FRP素材2の圧縮部分(プレス部分15)を間欠的に移動する。従って、部材位置決め工程S3の後、部分プレス工程S4及び搬送工程S5を繰り返すことにより、部材6(例えばストリンガー6A)を有する円弧状のFRP部品3(例えば半径が1m以上の大型FRP部品)を、小型の金型で成形し製造できる。
【0071】
また、部分プレス工程S3において、FRP素材2の一部を上型16及び下型18によりFRP素材2の円弧部分5Bに直交する半径方向に圧縮(加圧)するので、複雑な金型を用いることなく、部材6を有するFRP部品3の全体を均質に成形することができる。
【0072】
なお本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、上述した例では、FRP部品3は円弧状であるが、本発明は、フラット形状のFRP部品にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
a 予備加熱ゾーン、b 本成形ゾーン、c 冷却ゾーン、
CL 中央線、X 移動方向、
1 プリプレグ、2 FRP素材、3 FRP部品、3a 内面形状、
3b 外面形状、5A,5B 円弧部分、6A,6B ストリンガー、
7a 上面部、7b 側面部、7c 脚部、10 マンドレル、
10a 上面、10b 斜面、10c 底面、11 位置決め孔、
12 外面治具プレート、12a 内面、12b 外面、
14 一体治具プレート、14a 内面、14b 外面、
15 プレス部分(圧縮部分)、16 上型、16a 下面円弧面、
16b 下面凹溝、18 下型、18b 上面円弧面、
20 部分プレス装置、21 上部ボルスター、22 スライド、
23 液圧ラム、24 プレスフレーム、
26 部材位置決め機構、26a 水平ロッド、
30 搬送装置、32 把持装置(ロボットハンド)、
34 移動装置(多関節ロボット)、40 加熱装置、
100 FRP成形システム
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9