(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】電力グリッド用の電力サポート装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/30 20060101AFI20230831BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230831BHJP
H02J 3/18 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H02J3/30
H02M7/48 R
H02J3/18 185
(21)【出願番号】P 2022559396
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2020059432
(87)【国際公開番号】W WO2021197607
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モン,ローシュエン
(72)【発明者】
【氏名】ヘスラー,ジャン-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】インニェストレーム,グンナル
(72)【発明者】
【氏名】ケイル,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,トン
(72)【発明者】
【氏名】スン,セオドア
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-124048(JP,A)
【文献】国際公開第2018/072843(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02463978(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02280166(EP,A1)
【文献】国際公開第2012/093942(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0121353(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0214827(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0292852(US,A1)
【文献】国際公開第2010/077145(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
H02M 7/42 - 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力グリッド(24)用の電力サポート装置(10)であって、前記電力サポート装置(10)は、
各々が各自のAC側および各自のDC側を有する第1、第2、第3および第4の電圧源コンバータ(14、18、30、32)と、
前記第1、第2、第3および第4の電圧源コンバータ(14、18、30、32)の前記DC側を相互接続するためのDCリンク(16)と、
各々が複数の設定可能な位置を有する第1および第2のスイッチング装置(20、34)と、
第1の同期マシン(12)と、
第2の同期マシン(28)とを含み、
前記第2の電圧源コンバータ(18)の前記AC側を前記電力グリッド(24)に接続し、前記第1のスイッチング装置(20)を前記第1の同期マシン(12)、前記第1の電圧源コンバータ(14)の前記AC側および前記電力グリッド(24)に接続することによって、前記第1の電圧源コンバータ(14)をマシン側コンバータに構成し、前記第2の電圧源コンバータ(18)をグリッド側コンバータに構成し、
前記第4の電圧源コンバータ(32)の前記AC側を前記電力グリッド(24)に接続し、前記第2のスイッチング装置(34)を前記第2の同期マシン(28)、前記第3の電圧源コンバータ(30)の前記AC側および前記電力グリッド(24)に接続することによって、前記第3の電圧源コンバータ(30)をマシン側コンバータに構成し、第4の電圧源コンバータ(32)をグリッド側コンバータに構成し、
前記第1のスイッチング装置(20)は、前記第1の同期マシン(12)を前記電力グリッド(24)にまたは前記第1の電圧源コンバータ(14)の前記AC側に選択的に接続するように動作可能であり、前記第1の同期マシン(12)は、前記第1のスイッチング装置(20)の第1の設定可能な位置では前記電力グリッド(24)に接続され、前記第1のスイッチング装置(20)の第2の設定可能な位置では前記第1の電圧源コンバータ(14)の前記AC側に接続され、
前記第2のスイッチング装置(34)は、前記第2の同期マシン(28)を前記電力グリッド(24)にまたは前記第3の電圧源コンバータ(30)の前記AC側に選択的に接続するように動作可能であり、前記第2の同期マシン(28)は、前記第2のスイッチング装置(34)の第1の設定可能な位置では前記電力グリッド(24)に接続され、前記第2のスイッチング装置(34)の第2の設定可能な位置では前記第3の電圧源コンバータ(30)の前記AC側に接続される、電力サポート装置(10)。
【請求項2】
前記第1のスイッチング装置(20)が前記第2の設定可能な位置に設定されているときに、前記電力サポート装置(10)は、無効電力および慣性サポートを前記電力グリッド(24)に提供するように構成され
、慣性は、前記第1および前記第2の電圧源コンバータ(14、18)並びに前記DCリンク(16)を介して前記第1の同期マシン(12)から送達される、請求項1に記載の電力サポート装置(10)。
【請求項3】
前記第1のスイッチング装置(20)が前記第1の設定可能な位置に設定されているときに、前記第1の同期マシン(12)は、無効電力サポートを提供する前記第2の電圧源コンバータ(18)と並行して、無効電力および慣性を前記電力グリッド(24)に提供するように構成される、請求項1または2に記載の電力サポート装置(10)。
【請求項4】
前記第1の電圧源コンバータ(14)は、前記第2の電圧源コンバータ(18)と並行して、前記第1の同期マシン(12)からの前記慣性および無効電力と共に無効電力サポートを前記電力グリッド(24)に提供するように構成される、請求項3に記載の電力サポート装置(10)。
【請求項5】
前記第2のスイッチング装置(34)が前記第2の設定可能な位置に設定されているときに、前記電力サポート装置(10)は、無効電力および慣性サポートを前記電力グリッド(24)に提供するように構成され
、慣性は、前記第3および第4の電圧源コンバータ(30、32)並びに前記DCリンク(16)を介して前記第2の同期マシン(28)から送達される、請求項1から4のいずれか一項に記載の電力サポート装置(10)。
【請求項6】
前記第2のスイッチング装置(34)が前記第1の設定可能な位置に設定されているときに、前記第2の同期マシン(28)は、無効電力サポートを提供する前記第4の電圧源コンバータ(32)と並行して、慣性および無効電力を前記電力グリッド(24)に提供するように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の電力サポート装置(10)。
【請求項7】
前記第3の電圧源コンバータ(34)は、前記第2の電圧源コンバータ(18)と並行して、前記第2の同期マシンからの前記慣性および無効電力と共に無効電力サポートを前記電力グリッド(24)に提供するように構成される、請求項6に記載の電力サポート装置(10)。
【請求項8】
前記第2のスイッチング装置(28)の前記第1および前記第2の設定可能な位置は、前記第1のスイッチング装置(20)と同様に設定される、請求項1から7のいずれか一項に記載の電力サポート装置(10)。
【請求項9】
前記第2のスイッチング装置(34)の前記第1および前記第2の設定可能な位置は、前記第1のスイッチング装置(20)の前記第1および前記第2の設定可能な位置と逆に設定される、請求項1から8のいずれか一項に記載の電力サポート装置(10)。
【請求項10】
前記電力グリッド(24)をサポートする有効電力を供給するまたは受け取るためのさらなるコンバータ(40)を介して前記DCリンク(16)に接続されたエネルギー貯蔵システム(38)をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の電力サポート装置(10)。
【請求項11】
各グリッド側電圧源コンバータ(18、32)を前記電力グリッドに接続するための第1のトランス(TRA)をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の電力サポート装置(10)。
【請求項12】
前記第1のトランス(TRA)は、単巻線トランスである、請求項11に記載の電力サポート装置(10)。
【請求項13】
各同期マシン(12、28)および各グリッド側コンバータ(14、30)を前記電力グリッド(24)に接続するための第2のトランス(TRB)をさらに含む、請求項11または12に記載の電力サポート装置(10)。
【請求項14】
前記第2のトランス(TRB)は、各同期マシン(12、28)につながる第1のバスに接続される第1グループの巻線と、各グリッド側コンバータ(14、30)につながる第2のバスに接続される第2グループの巻線と、前記電力グリッド(24)に接続される第3グループの巻線とを含む3巻線トランスである、請求項13に記載の電力サポート装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に、電力グリッドのサポートに関する。より詳しくは、本発明は、電力グリッド用の電力サポート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
同期マシンは、慣性を有する電力グリッドをサポートするために使用されることが知られている。
【0003】
通常、そのようなサポートを実現するための方法は、トランスを介して、同期マシンを電力グリッドに直接に接続することである。
【0004】
また、スイッチング装置および電力コンバータを介して同期マシンを電力グリッドに接続することも知られている。この場合、スイッチング装置は、同期マシンをコンバータに接続するかまたはコンバータを完全にバイパスする。従って、同期マシンを直接にまたはコンバータを介して電力グリッドに接続することができる。例えば、WO2018/072843は、このような接続の一例を開示しており、バイパスの場合、電力コンバータが全く使用されない。
【0005】
しかしながら、例えば、周波数の安定性および短絡レベルの向上のために、異なる方法で電力グリッドをサポートする必要がある可能性がある。また、電力グリッドをサポートするために使用されるグリッドサポート装置の数をしばしば制限する必要がある。さらに、サポート装置を電力グリッドに接続する柔軟性を高める必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の概要
本発明は、電力サポート装置を電力グリッドに接続することを可能にする柔軟性を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、電力グリッド用の電力サポート装置によって達成される。この電力サポート装置は、
AC側およびDC側を有する第1の電圧源コンバータと、
AC側およびDC側を有する第2の電圧源コンバータと、
第1および第2の電圧源コンバータのDC側を相互接続するためのDCリンクと、
複数の設定可能な位置を有する第1のスイッチング装置と、
第1の同期マシンとを含み、
第2の電圧源コンバータのAC側を電力グリッドに接続し、第1のスイッチング装置を第1の同期マシン、第1の電圧源コンバータのAC側および電力グリッドに接続することによって、第1の電圧源コンバータをマシン側コンバータに構成し、第2の電圧源コンバータをグリッド側コンバータに構成し、第1のスイッチング装置は、第1の同期マシンを電力グリッドにまたは第1の電圧源コンバータのAC側に選択的に接続するように動作可能であり、第1の同期マシンは、第1のスイッチング装置の第1の設定可能な位置では電力グリッドに接続され、第1のスイッチング装置の第2の設定可能な位置では第1の電圧源コンバータのAC側に接続される。
【0008】
第1の変形例によれば、第1のスイッチング装置が第2の設定可能な位置に設定されているときに、電力サポート装置は、無効電力および慣性サポートを電力グリッドに提供するように構成され、慣性は、第1および第2の電圧源コンバータ並びにDCリンクを介して第1の同期マシンから送達される。
【0009】
第2の変形例によれば、第1のスイッチング装置が第1の設定可能な位置に設定されているときに、第1の同期マシンは、無効電力サポートを提供する第2の電圧源コンバータと並行して、電力グリッドに慣性および無効電力を提供するように構成される。したがって、第1の同期マシンは、慣性を電力グリッドに直接に提供するように構成されてもよく、第2の電圧源コンバータは、この慣性の提供と並行して無効電力サポートを提供するように構成されてもよい。
【0010】
第3の変形例によれば、第1の電圧源コンバータは、第2の電圧源コンバータと並行して、第1の同期マシンからの慣性および無効電力と共に無効電力サポートを電力グリッドに提供するように構成される。第1のスイッチング装置が第1の電圧源コンバータのAC側を電力グリッドに接続するための第3の設定可能な位置に設定されているときに、第1の電圧源コンバータは、これを行うように構成され、第1のスイッチング装置は、第1の設定可能な位置と共に第3の設定可能な位置を有してもよい。
【0011】
別の変形例によれば、電力サポート装置は、第2の同期マシンと、第3のマシン側電圧源コンバータと、第4のグリッド側電圧源コンバータと、第1のスイッチング装置と同じ設定可能な位置を有する第2のスイッチング装置とをさらに含む。この場合、第3の電圧源コンバータのDC側は、DCリンクを介して第4の電圧源コンバータのDC側に接続され、第1または第2の設定可能な位置が設定されているときに、第2のスイッチング装置は、第2の同期マシンを電力グリッドにまたは第3の電圧源コンバータのAC側に選択的に接続するように動作可能である。
【0012】
第2のスイッチング装置が第2の設定可能な位置に設定されているときに、電力サポート装置は、無効電力および慣性サポートを電力グリッドに提供するように構成され、慣性は、第3および第4の電圧源コンバータおよびDCリンクを介して第2の同期マシンから送達されることが可能である。
【0013】
同様に、第2のスイッチング装置が第1の設定可能な位置に設定されているときに、第2の同期マシンは、無効電力サポートを提供する第4の電圧源コンバータと並行して、電力グリッドに慣性および無効電力を提供するように構成される。これによって、第2の同期マシンは、慣性を電力グリッドに直接に提供するように構成されてもよく、第4の電圧源コンバータは、この慣性供給と並行して無効電力サポートを提供するように構成されてもよい。
【0014】
電力サポート装置が、第2の同期マシンと、第3のマシン側電圧源コンバータと、第4のグリッド側電圧源コンバータと、第2のスイッチング装置とを含む場合、第2のスイッチング装置の第1および第2の設定可能な位置は、第1のスイッチング装置と同様に設定されてもよい。代替的には、第2のスイッチング装置の第1および第2の設定可能な位置は、第1のスイッチング装置の第1および第2の設定可能な位置と逆に設定されてもよい。
【0015】
電力サポート装置が、第2の同期マシンと、第3のマシン側電圧源コンバータと、第4のグリッド側電圧源コンバータと、第2のスイッチング装置とを含む場合、第3の電圧源コンバータは、第2の電圧源コンバータと並行して、第2の同期マシンからの慣性および無効電力と共に無効電力サポートを電力グリッドに提供するように構成されてもよい。第2のスイッチング装置が第1の電圧源コンバータのAC側を電力グリッドに接続するための第3の設定可能な位置を有するときに、第3の電圧源コンバータは、これを行うように構成されてもよく、第2のスイッチング装置は、第1の設定可能な位置と共に第3の設定可能な位置を有してもよい。
【0016】
別の変形例によれば、電力サポート装置は、さらなるコンバータを介してDCリンクに接続されたエネルギー貯蔵システムを含むことができる。さらなるコンバータは、電力グリッドをサポートするために、エネルギー貯蔵システムから有効電力を受け取るまたはエネルギー貯蔵システムに有効電力を供給するように構成されてもよい。
【0017】
別の変形例によれば、電力サポート装置は、スイッチング装置と第2および第4のグリッド側電圧源コンバータとを電力グリッドに接続するための接続装置をさらに含んでもよい。この接続装置は、第1のトランス、および必要に応じて第2のトランスをさらに含んでもよい。
【0018】
第1のトランスは、各グリッド側電圧源コンバータを電力グリッドに接続するように設けられてもよく、単巻線トランスであってもよい。
【0019】
第2のトランスは、各同期マシンおよび各グリッド側コンバータを電力グリッドに接続するために設けられてもよい。第2のトランスは、各同期マシンにつながる第1のバスに接続される第1グループの巻線と、各グリッド側コンバータにつながる第2のバスに接続される第2グループの巻線と、電力グリッドに接続される第3グループの巻線とを含む3巻線トランスであってもよい。
【0020】
本発明は、多くの利点を有する。本発明は、グリッドサポート装置を電力グリッドに接続する柔軟性を増大させる。これによって、電力グリッドをサポートするために使用され得る異なる動作モードを実現するために、限られた数の電力サポート装置をより柔軟且つ多目的な方法で使用することができる。これらのモードを通じて、電力サポート装置に含まれるグリッド支援装置をより効率的に使用することができる。
【0021】
以下、添付の図面を参照して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】電力グリッドに接続され、第1のスイッチング装置を含む第1のバージョンの電力サポート装置を概略的に示す図である。
【
図2】電力グリッドに接続された第1のバージョンの電力サポート装置を概略的に示す図である(図中、第1のスイッチング装置は、より詳細に示されている)。
【
図3】第2のバージョンの電力サポート装置を概略的に示す図である。
【
図4】第1のモードで動作するように接続された第3のバージョンの電力サポート装置を概略的に示す図である。
【
図5】第2のモードで動作するように接続された第3のバージョンの電力サポート装置を概略的に示す図である。
【
図6】第3のモードで動作するように接続された第3のバージョンの電力サポート装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
以下、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の変形例に従って、第1の変形例の電力サポート装置10を示す。電力サポート装置10は、交流(AC)側および直流(DC)側を有する第1の電圧源コンバータVSC1 14と、同様にAC側およびDC側を有する第2の電圧源コンバータVSC2とを含み、第1のVSC14のDC側と第2のVSC18のDC側とは、DCリンクDCL16を介して相互接続される。第2のVSC18のAC側は、サポートされる電力グリッドPG24、この場合AC電力グリッドに接続される。この接続は、第1のトランスTRAを含む接続装置CA22を介して実現される。この場合、第2のVSC18のAC側を電力グリッド24に接続することは、第1のトランスTRAを介して実現される。第1のスイッチング装置SWA1 20は、少なくとも1つの第1のスイッチSW1を含み、第1のスイッチング装置20は、第1の同期マシン12、第1のVSC14のAC側およびサポートされるグリッドに接続される。第1の同期マシンは、フライホイールを含んでもよく、含まなくてもよい。
図1に示す例において、第1のVSC14のAC側は、第1の同期マシン12に接続され、第1のスイッチング装置20の第1のスイッチSW1は、第1のVSC14のAC側と第2のVSC18のAC側との間に接続される。第1のVSC14のAC側が第1の同期マシン12に面しているため、第1のVSC14は、マシン側VSCとして見なされれてもよく、第2のVSC18のAC側が電力グリッド24に面しているため、第2のVSC18は、グリッド側VSCとして見なされてもよい。第1の同期マシン12、VSC14およびVSC18は、グリッドをサポートするために使用される装置であるため、グリッドサポート装置として見なされてもよい。
【0025】
第1のスイッチング装置20は、複数の設定可能な位置を有し、第1の同期マシン12を電力グリッド24にまたは第1のVSC14のAC側に選択的に接続するように動作可能である。第1の同期マシン12は、スイッチング装置20の第1の設定可能な位置または配置で電力グリッド24に接続され、第1のスイッチング装置20の第2の設定可能な位置または配置で第1のVSC14のAC側に接続される。第1のスイッチング装置20の第1のスイッチSW1が閉合されているとき、第1のスイッチング装置20は、第1の設定可能な位置にある。この場合、第1の同期マシン12は、接続装置22、すなわち、この場合は第1のトランスTRAを介して、電力グリッド24に接続される。第1のトランスTRAは、電力サポート装置16内の各グリッド側電圧源コンバータを電力グリッド24に接続するために設けられてもよい。第1のスイッチSW1が開放されているとき、第1のスイッチング装置20は、第2の設定可能な位置にある。この場合、同期マシン12は、第1のVSC14のAC側に接続される。また、第2のVSC18は、第1のスイッチング装置の両方の位置では、第1のトランスTRAを介して電力グリッドに接続される。第1のスイッチSW1が第1の設定可能な位置にあるとき、すなわち、閉合されているとき、第1のVSC14のAC側は、接続装置20を介して電力グリッドに接続されてもよい。
【0026】
第1のスイッチング装置20の第1のスイッチSW1が開放され、第1のスイッチング装置20が第2の設定可能な位置に設定されているとき、電力サポート装置10は、第1のモードで動作している。この場合、電力サポート装置10は、無効電力および慣性サポートを電力グリッドに提供するように構成され、慣性は、第1の電圧源コンバータ14、第2の電圧源コンバータ18およびDCリンク16を介して、第1の同期マシン12から送達される。このモードにおいて、同期マシン12およびVSC14とVSC18の対は、広い周波数範囲で無効電力および慣性を電力グリッドに提供する第1のサポート機能を提供する。これは、電力グリッドの周波数が不安定であるとき、例えば電力グリッドの周波数が高い周波数変化率(ROCOF)を有するときに有用である。
【0027】
しかしながら、第1のスイッチSW1が閉合され、第1のスイッチング装置20が第2の設定可能な位置に設定されているときに、電力サポート装置10は、第2のモードで動作する。この場合、第1の同期マシン12は、第2の電圧源コンバータ18と並行して、必要に応じて無効電力サポートを電力グリッド24に提供する第1の電圧源コンバータと並行して、慣性を電力グリッド24に提供する。この第2のモードにおいて、第1の同期マシン12は、第1のVSC14、第2のVSC18およびDCリンク16を使用せずに、慣性を電力グリッドに提供する。また、この設定において、第1の同期マシン12は、無効電力を電力グリッドに供給することもできる。しかしながら、VSC14とVSC18の対は、依然として機能しており、少なくとも第2のVSC18、必要に応じて第1のVSC14を用いて、第1の同期マシン12によって供給された慣性および無効電力と並行して、無効電力を供給することができる。これは、故障の場合に短絡電流を電力グリッド24に供給するために使用されてもよい。これは、電力グリッドが低い短絡レベル(SCL)を有する場合に有利である。
【0028】
したがって、第1の変形例に係る電力サポート装置10は、高いレベルの柔軟性を有することが分かる。バイパススイッチが開放されているときの第1のスイッチング装置の第1の設定可能な位置において、第1の同期マシンは、周波数に応答して、広い範囲で速度を変化することによって相当量の合成慣性を電力グリッドに供給することができるフライホイール貯蔵ユニットとして動作することができる。一方、バイパススイッチが閉合されているときの第1のスイッチング装置の第2の設定可能な位置において、同期マシンは、例えばSCLが閾値に達した場合に、電力グリッドに直接に接続される同期コンデンサとして動作することができる。それに加えて、コンバータは、無効電力サービスを提供するために完全に利用されてもよい。これにより、第1のスイッチSW1が閉合されているときに、グリッドサポート装置の大部分、必要に応じて全ては、すなわち、第2のVSC18、第1の同期マシン12および場合によって第1のVSC14を使用することができる。したがって、電力サポート装置10は、ネットワーク慣性が低い場合、拡張STATCOMとして使用されてもよく、短絡レベルが低い場合、STATCOMおよび同期コンデンサとして使用されてもよい。STATCOMとは、静的VAR補償器、すなわち、無効電力サポート装置の略称である。
【0029】
図2は、第1の変形例をより詳細に示す単線図である。この場合、第1のスイッチング装置20は、第1の同期マシン12を接続装置CA22に選択的に接続するための第1のスイッチSW1.1と、第1の同期マシン12を第1のVSC14のAC側に選択的に接続するための第2のスイッチSW1.2とを含む。第1のスイッチング装置20は、第1のVSC14のAC側を接続装置22に選択的に接続するための第3のスイッチSW1.3をさらに含む。第1のスイッチSW1.1は、閉合されているとき、第1のスイッチング装置20の第1の設定可能な位置を提供し、第1の同期マシン12を接続装置22につながる第1のACバスと相互接続する。第3のスイッチSW1.3は、閉合されているとき、第1のスイッチング装置20の第3の設定可能な位置を提供し、第1のVSC14のAC側を接続装置22につながる第2のACバスと相互接続する。第2のスイッチSW1.2は、閉合されているとき、第1のスイッチング装置20の第2の設定可能な位置を提供する。
【0030】
また、第1のVSC14のDC側は、DCリンク16を介して第2のVSCのDC側に接続され、第2のVSC18のAC側は、第3のACバスを介して接続装置22に接続される。接続装置22は、第2のVSC18のAC側を電力グリッド24に接続するための前述した第1のトランス(図示せず)を含む。第1の同期マシン12および第1のVSC14のAC側を電力グリッドに接続することを可能にするために、接続装置22は、第2のトランス(図示せず)をさらに含んでもよい。しかしながら、この場合でも、第1のトランスのみを使用してもよい。
【0031】
図3は、第2の変形例のサポート装置を概略的に示す単一線図である。この場合、サポート装置は、第1の同期マシン12と、第1のスイッチング装置20と、
図2と同様に接続された第1のVSC14および第2のVSC18とを含む。また、この場合、サポート装置は、第2の同期マシン28と、第2のスイッチング装置SWA2 34と、第3の電圧源コンバータVSC3 30と、第4の電圧源コンバータVSC4 32とを含む。第3のVSC30は、マシン側VSCであり、第4のVSC32は、グリッド側VSCである。第2のスイッチング装置34は、第1のスイッチング装置と同じ設定可能な位置を有する。これにより、第2のスイッチング装置34は、第1または第2の設定可能な位置に設定されたときに、第2の同期マシン28を電力グリッド24にまたは第3のVSC30のAC側に選択的に接続するように動作可能である。したがって、第2のスイッチング装置34は、第2の同期マシン28を接続装置CA22に選択的に接続するための第1のスイッチSW2.1と、第2の同期マシン12を第3のVSC30のAC側に選択的に接続するための第2のスイッチSW2.2と、第3のVSC30のAC側を接続装置22に選択的に接続するための第3のスイッチSW2.3とを含む。この場合、第1のスイッチSW2.1は、第2の同期マシン28を第1のACバスと相互接続し、第3のスイッチSW2.3は、第3のVSC30のAC側を第2のACバスと相互接続する。
【0032】
第4のVSC32のAC側は、第4のACバスを介して接続装置22に接続され、第4のACバスは、前述した第1のトランス(図示せず)に接続されてもよい。
【0033】
最後に、能動的な電力供給エンティティ36は、エネルギー貯蔵システム38と、さらなるコンバータ40とを含む。この場合、さらなるコンバータ40は、DC/DCコンバータである。エネルギー貯蔵システム38は、さらなるコンバータ40を介してDCリンク16に接続される。電力供給エンティティ36は、任意なものであり、省略されてもよい。エネルギー貯蔵システム38は、設けられた場合、第2のVSC18および/または第4のVSC32を介して、および/または第1のVSC14および/または第3のVSC30を介して、有効電力を電力グリッドに供給するために使用されてもよい。したがって、エネルギー貯蔵システム38は、グリッドサポート装置として見なされてもよい。エネルギー貯蔵システムは、1つ以上のバッテリ、1つ以上のフライホイール、および/または1つ以上のスーパーキャパシタを含んでもよい。なお、能動的な電力供給エンティティ36は、第1の変形例の電力サポート装置に含まれてもよい。
【0034】
第2の変形例の電力サポート装置の代替形態によれば、第3のVSC30は、専用DCリンクを介して第4のVSC32に接続されてもよい。したがって、第1のVSC14は、第1のDCリンクを介して第2のVSC18に接続され、第3のVSC30は、第2のDCリンクを介して第4のVSC32に接続される。エネルギー貯蔵システムを使用する場合、能動的な電力供給エンティティは、DCリンクの一方または両方に接続されてもよい。
【0035】
別の可能性は、第1のスイッチSW1.1およびSW1.3が閉合され、第2のスイッチSW1.2およびSW2.2が開放されているとき、第1のスイッチング装置20の第3のスイッチSW1.3および第2のスイッチング装置34の第3のスイッチSW2.3が開放されてもよいことである。
【0036】
上述したように、電力サポート装置は、電力グリッドをサポートできる柔軟性を高める。
図4~6は、電力グリッドをサポートするために使用することができる第3のバージョンの電力サポート装置を概略的に示す。第3のバージョンは、第2のバージョンと同様である。提供されるサポートに対する理解を改善するために、第2のバージョンに対して多く簡略化されている。スイッチング装置は、省略されており、接続装置のトランスは、使用されるときに示されている。また、電力供給エンティティ36は、省略されている。さらに、第2のVSC18および第4のVSC32は、同一のDCグリッドからの電力を供給するため、第1のトランスTRAを介して電力グリッド24に接続された1つのコンバータとして見なされる。
【0037】
図4は、周波数安定性制御を提供する第1の動作モード用に構成された電力サポート装置を示す。第3の変形例の電力サポート装置がこの第1のモードに従って動作するときに、第1の同期マシン12は、第1のVSC14のAC側に接続され、第2の同期マシン28は、第3のVSC30のAC側に接続される。これにより、第1のスイッチング装置20の第1のスイッチSW1.1および第3のスイッチSW1.3、および第2のスイッチング装置34の第1のスイッチSW2.1および第3のスイッチSW2.3は、開放され、第2のスイッチSW1.2およびSW2.2は、閉合されている。これによって、第1のスイッチング装置および第2のスイッチング装置の第1、第2および第3の設定可能な位置は、同様に設定される。この場合、同期マシン12および28は、第1のVSC14および第3のVSC30を介して、慣性をDCリンクに供給し、第2のVSC18および第4のVSC32は、この慣性を電力グリッド24に転送する。この場合、第2のVSC18および第4のVSC32の一方または両方は、電力グリッド24の無効電力補償も提供する。この場合、フライホイールを含むまたは含まない同期マシン12および28は、貯蔵ユニットを形成し、第1のVSC14、第2のVSC18、第3のVSC30および第4のVSC32は、インターフェイス接続コンバータである。主な機能は、電力グリッドと有効および無効電力を交換することによって、電圧安定性を維持し、ROCOFを軽減することである。
【0038】
図5は、短絡電流サポートを提供する第2のモードに従って動作するときの第3の変形例の電力サポート装置を示す。この場合、第1のスイッチング装置20および第2のスイッチング装置34の第1および第3のスイッチは、閉合されており、第1のスイッチング装置20および第2のスイッチング装置34の第2のスイッチは、開放されている。この場合、第1のスイッチング装置および第2のスイッチング装置の第1、第2および第3の設定可能な位置も、同様に設定される。これにより、第1の同期マシン12および第2の同期マシン28は、第1のACバスに接続され、第1のVSC14のAC側および第3のVSC30のAC側は、第2のACバスに接続される。第1のACバスは、第2のトランスTRBの第1組の巻線につながり、第2のACバスは、第2のトランスTRBの第2組の巻線につながる。第2のトランスTRBにおいて、第1組の巻線および第2組の巻線は、第3組の巻線に磁気的に結合され、第3組の巻線は、電力グリッド24に接続される。したがって、第2のトランスTRBは、各同期マシンおよび各マシン側コンバータを電力グリッド24に接続するためのトランスである。第2のトランスTRBが3巻線トランスであるため、安全のために、マシン側コンバータ14および30から同期マシン12および28を切り離すことができる。この変形例において、第1のVSC14および第3のVSC30は、ダブルY構成で第2のトランスTRBに接続されるため、ダブルYコンバータであり、第2のVSC18および第4のVSC32も、同様にダブルY構成で第1のトランスTRAに接続されるため、ダブルYコンバータである。ダブルYコンバータは、Y状に接続された2組の相脚を含むコンバータである。この場合、一方の組の相脚は、対応するトランスと第1のDC電位を有するDCリンクの第1のラインとの間にY状に接続され、他方の組の相脚は、トランスと第2のDC電位を有するDCリンクの第2のラインとの間にY状に接続される。第1のトランスTRAにおいて、VSC18のAC側およびVSC32のAC側は、電力グリッド24に接続された第2組の巻線に磁気的に結合された同じ組の巻線に接続される。したがって、第1のトランスTRAは、2巻線トランスである。
【0039】
この構成の場合、同期マシン12および28は、同期コンデンサとして機能し、共に慣性源を形成する。一方、第1のVSC14および第3のVSC30は、第1の無効電力源/シンクを形成し、第2のVSCおよび第4のVSCは、第2の無効電力源/シンクを形成する。この場合、VSCは、STATCOMとして動作することができる。全ての電力源/シンクは、互いに並行して電力グリッドをサポートすることができることが分かる。このモードにおいて、同期マシン12および28は、第2のトランスTRBを介してグリッド24に直接に接続され、同期コンデンサとして動作する。第1のVSC14、第2のVSC18、第3のVSC30および第4のVSC32は、全てグリッド24に接続され、通常のSTATCOMとして動作する。
【0040】
図6は、第3のハイブリッド動作モードを示す。この場合、第1の同期マシン12および第1のVSC14は、
図5と同様に接続され、第2の同期マシン28および第3のVSC30は、
図4と同様に接続される。これを達成するために、第1のスイッチング装置20の第1および第3のスイッチは、閉合され、第1のスイッチング装置20の第2のスイッチは、開放される。これにより、第1の同期マシン12は、第1のACバスに接続され、第1のVSC14のAC側は、第2のACバスに接続され、両方のバスは、第2のトランスTRBにつながる。しかしながら、第2のスイッチング装置34の第1のスイッチおよび第3のスイッチは、開放され、第2のスイッチング装置34の第2のスイッチは、閉合されている。したがって、第2のスイッチング装置の第1、第2および第3の設定可能な位置は、第1のスイッチング装置の第1、第2および第3の設定可能な位置と逆に設定される。これにより、第2の同期マシン28は、第3のVSC30のAC側に接続される。
【0041】
この場合、第1の同期マシン12および第1のVSC30は、短絡電流レベルサポートを提供するために並列に接続された2つのソースであり、第2の同期マシン28は、第2のVSC18、第3のVSC30および第4のVSC32と共に周波数安定性制御を提供する。このモードにおいて、電力サポート装置は、周波数応答機能、電圧調整機能、およびSCL強化機能を同時に提供する。
【0042】
図3、4、5および6から分かるように、フライホイールを含むまたは含まない同期マシンは、直接にまたは電圧源コンバータの形にした電力コンバータを介して、電力グリッドに接続することができる。したがって、マシン側コンバータは、同期マシンと直列に接続されたインターフェイス接続コンバータとして、または同期マシンと並行して接続されたSTATCOMとして使用されてもよい。
【0043】
上述したように、接続されたマシンに対して3つの動作モードを設定することができる。
【0044】
1.高速周波数応答または合成慣性応答(FFR/SIR)モードである第1のモード。マシンは、マシン側コンバータを介して接続され、周波数またはROCOFイベントに応答して有効電力を提供する。グリッド側コンバータは、有効電力と無効電力の両方を電力グリッドに供給するように構成されてもよい。
【0045】
2.SCL強化(SCLE)モードである第2のモード。マシンは、トランスを介してグリッドに接続され、グリッドSCLを強化するための同期コンデンサとして動作する。同時に、マシン側コンバータは、トランスを介してグリッドに接続され、電圧安定性をさらに強化するための通常のSTATCOMとして動作することができる。
【0046】
3.ハイブリッドモードである第3のモード。一部のマシンは、トランスを介して接続され、同期コンデンサとして動作し、残りのマシンは、逆並列(back-to-back)コンバータを介して接続され、慣性を電力グリッドに送達する。
【0047】
電力グリッドの慣性が低いときに、FFR/SIRモードを使用することができる。電力グリッドのSCLが低いときに、SCLEモードを使用することができる。両方のサービスを提供したいときに、ハイブリッドモードを使用することができる。さらに、
図3に示すように、追加のエネルギー資源38、例えば、スーパーキャップ、フライホイールおよびバッテリをDCリンク16に接続することによって、システムの機能を拡張することができる。
【0048】
したがって、電力サポート装置は、3種のフレキシブルAC伝送システム(FACTS)装置、すなわち、同期コンデンサ、フライホイール貯蔵システム、およびSTATCOMの変形可能な統合を提供するため、(数秒の時間範囲の)有効電力および無効電力の両方を提供すると共に、ネットワークSCLを強化することができる。
【0049】
上述したFACTS装置の各々は、それ自体ではグリッドサービスの全ての将来の需要を満たすことができない。
【0050】
同期コンデンサ技術は、単純な制御システムを含み、例えば電圧降下を軽減するために高い無効電力過負荷を一時的に提供することに加えて、短絡電流を用いてSCLを強化することができる。しかしながら、同期コンデンサは、STATCOMの電圧調整速度に比べて電圧調整速度が遥かに遅いため、フライホイールが取り付けられても、電力グリッドに提供される慣性がかなり制限される。
【0051】
STATCOM技術は、電力電子機器の使用に頼るFACTSである。STATCOM技術は、対称動作領域および高速応答制御システムを含む。電力ネットワーク内の外乱の場合、応答は、設定点変更および動的電圧サポートの両方に対して高速である。また、STATCOM技術は、過電圧シナリオの場合の無効電力の高吸収に加えて、外乱中(故障期間)および外乱後(故障回復期間)の無効電力の非常に快速な吸収/注入を提供することができる。さらに、STATCOM技術は、能動的なフィルタリング、フリッカ補償、および電力振動減衰(POD)などの機能を含むことができる。しかしながら、STATCOMは、周波数サービスのための有効電力またはSCLを増加させるための短絡電流を提供する機能を有しない。
【0052】
電力コンバータを介してグリッドに接続されたフライホイールを有する同期マシンは、高いROCOFを軽減し、安定性を維持するために電力グリッドに慣性を提供するための高速の有効電力注入/吸収能力を有する。しかしながら、貯蔵ユニットは、コンバータを介してグリッドに接続されるため、短絡電流を制限し、短絡電流の提供およびSCLの強化に関する有用性を低下する。
【0053】
全ての3種のグリッドサポート装置の単純な並列化は、全ての要件を満たすことができるが、柔軟性が制限され、コストが高くなり、サイズが大きくなる。上記から分かるように、電力サポート装置は、グリッドサポート装置の柔軟な組み合わせであり、それらを最大に利用することができる。
【0054】
以下の例は、電力サポート装置の汎用性を示す。
同期マシン12および28は、70MVA、13.8kV、3kA、50Hzであってもよく、フライホイールを含む場合、20~50Hzの350MW.sの有効エネルギーを提供する。同期マシンの過電流能力は、10秒間に3p.u.であり、一時的な電流ピークは、20p.u.である。
【0055】
マシン側VSC14および30は、50MVA、13.8kVacであってもよい。
グリッド側VSC18および32は、140MVA、13.8kVacであってもよい。
【0056】
ベース値は、70MVA、13kV、3kAである。
図4に示すSIRモードにおいて、2つの同期マシン12および28は、第1のVSC14、第2のVSC18、第3のVSC30、および第4のVSC32を介して接続され、合成慣性を提供する。総有効電力は、1.43p.u.であり、無効電力は、1.43p.u.であり、一時的な短絡電流は、3p.u.であり、総エネルギーは、700MW.sであり得る。
【0057】
図5に示すSCLEモードにおいて、2つの同期マシン12および28は、第2のトランスTRBを介して接続され、2つのマシン側コンバータ14および30は、グリッド側コンバータ18および32と共に、STATCOMとして動作する。総有効電力は、ゼロであり、無効電力は、5.43p.u.であり、一時的な短絡電流は、40p.u.であり、10秒間の短絡電流は、6p.u.であり、総エネルギーは、(48~50Hzのマシン速度変動を仮定する場合)66MW.sである。
【0058】
図6に示すハイブリッドモードにおいて、一方の同期マシン、例えば第1のマシン12は、第2のトランスTRBを介して接続され、他方のマシン、この場合に第2のマシン28は、マシン側コンバータ18および32を介して接続される。このモードにおいて、総有効電力は、0.72p.u.であり、総無効電力は、3.57p.u.であり、一時的な短絡電流は、20p.u.であり、10秒間の短絡電流は、3p.u.であり、総エネルギーは、350MW.sである。
【0059】
電力サポート装置を開発するための動機は、電力グリッドが直面している現在および将来の課題に基づいている。非同期発電機の広範の応用および従来の発電機の退役は、電力システムの有効慣性を低下させ、周波数安定性の悪化およびROCOFの増加をもたらした。さらに、システムの慣性は、システムの一日中の総需要によって変化する。
【0060】
他方では、電力グリッドは、電力グリッド内の同期発電機の数が少ないことに起因して、伝送レベルにおけるSCLの低下を期待している。分配レベルにおける最大SCLは、より多くの非同期発電機の接続および需要の増加に起因して増加する傾向があるが、伝送レベルからのSCL寄与が分配レベルに対して主要であるため、分配レベルにおける最小SCLも低下する。最終的な結果として、伝送レベルおよび分配レベルの両方におけるSCLの変動は、一日中および一年中に大きくなる。また、低いSCLは、伝送保護(保護のトリガが遅れるまたは保護なし)およびコンバータに接続している発電機(低SCLにおける電圧不安定性によって故障中の位相ロックループの誤った基準)に悪影響を及ぼし、最終的に、システム全体の安全性に影響を及ぼすことも周知である。したがって、システムのSCLを維持できる解決策が非常に重要である。
【0061】
以下、電力グリッドの状態および/または伝送システムオペレータ(TSO)の設定を検討するために、電力サポート装置の例示的な24時間の動作を示す。
【0062】
朝0~6時の間に、慣性およびSCLの両方は、低レベルであり得る。したがって、電力サポート装置は、ハイブリッドモードで動作し、SCL強化および慣性応答の両方をグリッドに提供することができる。この期間中、発電機は、低レベルで発電するため、周波数応答のために多くの余地を確保することができ、したがって、SCL強化は、より高い優先度を有し得る。
【0063】
朝6~12時の間に、慣性およびSCLの両方は、高レベルであり得る。したがって、電力サポート装置は、ハイブリッドモードで動作することができる。この期間中、発電機は、高レベルで発電するため、周波数応答のために確保できる余地が少なくなり、したがって、合成慣性モードは、より高い優先度を有し得る。
【0064】
午後12~18時の間に、グリッド慣性は、高レベルであり得るが、SCLは、夏期に低レベル(低消費)に達することができる。したがって、電力サポート装置は、SCL強化モードで動作することができる。
【0065】
夕方18~24時の間、グリッド慣性は、低レベルであり得るが、SCLは、高レベルに達し得る。したがって、電力サポート装置は、合成慣性モードで動作することができる。
【0066】
全体的な動作によって、電力サポート装置は、システム要素を最大に利用し、機能を拡張すると共に、周波数安定性およびSCLを維持するように電力グリッドを支援することができる。したがって、電力サポート装置は、合成慣性応答、電圧調整サービスおよび短絡寄与を同時にまたはグリッド条件/TSOの設定に従って提供することができる。
【0067】
異なるモードの切換えは、1つ以上の制御ユニットによって制御されてもよい。具体的には、1つ以上の制御ユニットは、スイッチング装置を制御することができる。このような制御ユニットは、コンピュータ命令に従って動作するプロセッサ、例えば1つ以上の個別の構成要素として実現されてもよい。しかしながら、制御ユニットは、プログラムメモリを有するプロセッサの形で実装されてもよい。プログラムメモリは、プロセッサ上で実行されると、所望の制御機能を実行するコンピュータプログラムコードを含む。このようなコンピュータプログラムコードを記憶するコンピュータプログラム製品は、プロセッサにロードされると制御ユニットとして動作するコンピュータプログラムコードを記憶するための1つ以上のCD ROMディスクまたは1つ以上のメモリスティックなどのデータ記憶媒体として提供することができる。
【0068】
上記の議論から、多数の方法で本発明を変更できることが明らかである。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲のみによって限定される。